JP2007136362A - 複合被膜構造及び塗装外装材 - Google Patents

複合被膜構造及び塗装外装材 Download PDF

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Abstract

【課題】 最表面に光触媒性シリコーン系コーティング被膜を形成した低光沢性の複合被膜構造を提供する。
【解決手段】 着色コーティング被膜2。この着色コーティング被膜の表面側に形成される、被膜屈折率が1.50〜1.60の紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜3。紫外線カット性シリコーン系被膜3の表面側に形成される光触媒性シリコーン系コーティング被膜4。これらの少なくとも三層の被膜から複合被膜Aを形成する。光触媒性シリコーン系コーティング被膜4の直下の被膜である紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜3の被膜屈折率を1.50〜1.60の範囲に設定することによって、高反射・高光沢を低減し、低光沢性にすることができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、窯業系外装材などの表面に形成される複合被膜構造及びこの複合被膜構造が形成された塗装外装材に関するものである。
外壁材や屋根材などとして使用されるセメント系等の窯業系外装材などの表面には、その化粧のために着色塗装が施されている。この着色塗装は通常、顔料等を配合した有機塗料をコーティングすることによって行なわれるが、この着色コーティング被膜は有機系であるために、経年にわたる紫外線の作用で劣化し、色褪せが発生してくる。
そこで、この着色コーティング被膜を保護するためにクリヤーの上塗りとして、シリコーン系コーティング剤をコーティングすることが行なわれている。このシリコーン系コーティング被膜は無機質であるため、紫外線に対して劣化が小さく、また保護機能も長期にわたって維持できるため、着色コーティング被膜を紫外線から保護することができるものである。特に、紫外線吸収剤を配合してシリコーン系コーティング被膜を紫外線カット性にすることによって、着色コーティング被膜をより有効に保護することができる(例えば特許文献1参照)。
また最近、光触媒を含有するシリコーン系コーティング剤を、この紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜の上にコーティングして、光触媒性シリコーン系コーティング被膜を形成することが行なわれている。光触媒は紫外線の照射で活性化し、表面に付着した汚れを分解することができるものであり、しかも表面を親水性にするために分解した汚れを雨水などで洗い流すことができ、セルフクリーニング効果を得ることができるものである(例えば特許文献2等参照)。
特許第2574061号公報 特許第2776259号公報
上記のように、窯業系外装材など基材の表面に、一層以上の着色コーティング被膜と、紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜と、光触媒性シリコーン系コーティング被膜とから三層以上の複合被膜を形成することによって、色褪せを防ぐと共に、セルフクリーニング機能を付与した塗装を行なうことができるものである。
このように複合被膜を施した外装材にあって、その表面があまりに高反射・高光沢であると高級感が損なわれるおそれがあり、特に最近では低光沢の艶消し表面の外装材が好まれる傾向にある。
ここで、光触媒としては酸化チタンが代表的なものとして使用されているが、酸化チタンは屈折率が約2.5であり、この酸化チタンを含有する光触媒性シリコーン系コーティング被膜は高屈折率になってしまう。そしてこのように複合被膜の最表面の光触媒性シリコーン系コーティング被膜が高屈折膜であると、複合被膜は高反射・高光沢膜になってしまう。従って、例えば大粒子のシリカを表面に形成させて艶消しにした被膜の上に、光触媒性シリコーン系コーティング被膜を設けるようにすると、光触媒性シリコーン系コーティング被膜を塗装する前の光沢レベルを保つことはできず、低光沢の艶消し表面の外装材に仕上げることが難しいという問題があった。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、最表面に光触媒性シリコーン系コーティング被膜を形成した低光沢性の複合被膜構造を提供することを目的とするものである。
本発明の請求項1に係る複合被膜構造は、少なくとも三層のコーティング被膜からなる複合被膜構造であって、少なくとも一層の着色コーティング被膜と、この着色コーティング被膜の表面側に形成される、被膜屈折率が1.50〜1.60の紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜と、紫外線カット性シリコーン系被膜の表面側に形成される光触媒性シリコーン系コーティング被膜とを具備して成ることを特徴とするものである。
また請求項2の発明は、請求項1において、光触媒性シリコーン系コーティング被膜の屈折率が1.60〜1.75の範囲であることを特徴とするものである。
また請求項3の発明は、請求項1又は2において、紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜が、光拡散手段を有することを特徴とするものである。
また請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜と光触媒性シリコーン系コーティング被膜の界面において、紫外線カット性シリコーン系コーティング剤と光触媒性シリコーン系コーティング剤とが混合された混合層が0.05〜0.5μmの厚みで形成されていることを特徴とするものである。
また請求項5の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜と光触媒性シリコーン系コーティング被膜の二層のヘーズが5.0〜20.0%の範囲であることを特徴とするものである。
また請求項6の発明は、請求項4において、紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜と光触媒性シリコーン系コーティング被膜及びこれらの界面の混合層の三層のヘーズが5.0〜20.0%の範囲であることを特徴とするものである。
本発明に係る塗装外装材は、窯業系外装材の表面に、請求項1乃至6のいずれかに記載の複合被膜構造が形成されて成ることを特徴とするものである。
本発明によれば、光触媒性シリコーン系コーティング被膜の直下の被膜である紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜の被膜屈折率を1.50〜1.60の範囲に設定することによって、高反射・高光沢を低減し、低光沢性にすることができるものである。すなわち、紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜の屈折率が1.50未満であると、光触媒シリコーン系コーティング被膜の屈折率との差が大きくなり、両被膜の光干渉によって高反射になって高光沢になると共に、また紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜の屈折率が1.60を超えて大きくなると、高屈折率による高反射によって高光沢になるものである。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明において、着色コーティング被膜を形成するコーティング剤としては、特に制限されることなく任意のものを用いることができるが、アクリル系樹脂などの有機樹脂に顔料を配合した、有機系着色コーティング剤を用いるのが一般的である。
また本発明において、紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜を形成するコーティング剤としては、例えば特許第2574061号公報に開示されているものを用いることができるものである。すなわち、
(A)一般式 RSiX4−n(I)
(式中、Rは同一または異種の置換もしくは非置換の炭素数1〜8の1価炭化水素基を示し、nは0〜3の整数、Xは加水分解性基を示す)
で表わされる加水分解性オルガノシランを有機溶媒または水に分散されたコロイダルシリカ中でX1モルに対し水0.001〜0.5モルを使用する条件下で部分加水分解してなる、加水分解性基が残存しているオルガノシランのシリカ分散オリゴマー有機溶剤溶液と、
(B)平均組成式 R Si(OH)(4−a−b)/2(II)
(式中、Rは同一または異種の置換もしくは非置換の炭素数1〜8の1価の炭化水素基を示し、aおよびbはそれぞれ0.2≦a≦2、0.0001≦b≦3、a+b<4の関係を満たす数である)
で表わされる、分子中にシラノール基を含有するポリオルガノシロキサンの有機溶剤溶液と、
(C)触媒
とを必須成分とし、実質的に水を含まない、有機溶液型コーティング剤を用いることができる。
(A)成分のシリカ分散オリゴマーは被膜形成に際して、硬化反応に預かる官能性基としての加水分解性基(X)を有するベースポリマーの主成分である。これは有機溶媒または水(有機溶媒と水との混合溶媒も含む)に分散されたコロイダルシリカに、上記一般式(I)で表される加水分解性オルガノシランの1種または2種以上を加え、コロイダルシリカ中の水あるいは別途添加された水で、該加水分解性オルガノシランを部分加水分解することで得られる。
上記の一般式(I)で表される加水分解性オルガノシラン中の基Rは炭素数1〜8の置換または非置換の1価の炭化水素基を示し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基、3−フェニルプロピル基などのアラルキル基;フェニル基、トリル基のようなアリール基;ビニル基、アリル基のようなアルケニル基;クロロメチル基、γ−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基のようなハロゲン置換炭化水素基およびγ−メタクリロキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、γ−メルカプトプロピル基などの置換炭化水素基などを例示することができる。これらの中でも合成の容易さ、あるいは入手の容易さから炭素数1〜4のアルキル基およびフェニル基が好ましい。
加水分解性基のXとしてはアルコキシ基、アセトキシ基、オキシル基、エノキシ基、アミノ基、アミノキシ基、アミド基などが挙げられる。入手の容易さおよびシリカ分散オリゴマー溶液を調製しやすいことからアルコキシ基が好ましい。 このような加水分解性オルガノシランとしては、一般式(I)中のnが0〜3の整数であるモノ−、ジ−、トリ−、テトラ−の各官能性のアルコキシシラン類、アセトキシシラン類、オキシムシラン類、エノキシシラン類、アミノシラン類、アミノキシシラン類、アミドシラン類などが挙げられる。入手の容易さおよびシリカ分散オルガノシランオリゴマー溶液を調製しやすいことからアルコキシシラン類が好ましい。
特に、n=0のテトラアルコキシシランとしてはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどが例示でき、n=1のオルガノトリアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどが例示できる。また、n=2のジオルガノジアルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシランなどが例示でき、n=3のトリオルガノアルコキシシランとしてはトリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルイソプロポキシシラン、ジメチルイソブチルメトキシシランなどが例示できる。さらに一般にシランカップリング剤とよばれるオルガノシラン化合物もアルコキシシラン類に含まれる。
これらの一般式(I)で表される加水分解性オルガノシランのうち50モル%以上がn=1で表される3官能性のものであることが好ましく、より好ましくは60モル%以上であり、最も好ましくは70モル%以上である。これが50モル%未満では十分な塗膜硬度が得られないと共に、乾燥硬化性が劣り易いことがある。
(A)成分中のコロイダルシリカはコーティング剤の硬化被膜の硬度を高くするために配合することが好ましいものである。このようなコロイダルシリカとしては水分散性あるいはアルコールなどの非水系の有機溶媒分散性コロイダルシリカが使用できる。一般にこの様なコロイダルシリカは固形分としてのシリカを20〜50重量%含有しており、この値からシリカ配合量を決定できる。また、水分散性コロイダルシリカを使用する場合、固形分以外の成分として存在する水は(A)成分の有機ケイ素化合物の加水分解に用いることができる。これらは通常水ガラスから作られるが、このようなコロイダルシリカは市販品を容易に入手することができる。また有機溶媒分散コロイダルシリカは前記水分散性コロイダルシリカの水を有機溶媒と置換することで容易に調製することができる。このような有機溶剤分散コロイダルシリカも水分散コロイダルシリカ同様に市販品として容易に入手する事ができる。コロイダルシリカが分散している有機溶媒の種類は、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール(IPAとも言う)、n−ブタノール、イソブタノール等の低級脂肪族アルコール類;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコール誘導体;ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコールの誘導体及びジアセトンアルコール等を挙げることができ、これらからなる群より選ばれた1種もしくは2種以上のものを使用することができる。これらの親水性有機溶剤と併用してトルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトオキシムなども用いることができる。
(A)成分中においてコロイダルシリカはシリカ分として好ましくは5〜95重量%の範囲で含有される。より好ましくは10〜90重量%、最も好ましくは20〜85重量%の範囲である。含有量が5重量%未満であると所望の被膜硬度が得られず、また95重量%を超えるとシリカの均一分散が困難となり、(A)成分がゲル化などの不都合を招来することがある。
(A)成分のシリカ分散オリゴマーは、通常、加水分解性オルガノシランを水分散コロイダルシリカまたは有機溶媒分散コロイダルシリカ中で部分加水分解して得る事ができる。加水分解性オルガノシランに対する水の使用量は、加水分解性基(X)1モルに対して水0.001〜0.5モルである。その割合が0.001モル未満だと十分な部分加水分解物が得られず、0.5モルを超えると部分加水分解物の安定性が悪くなることがある。部分加水分解する方法は特に限定されず、加水分解性オルガノシランとコロイダルシリカとを混合して、必要量の水を添加配合すればよく、このとき部分加水分解反応は常温で進行する。部分加水分解反応を促進させるため60〜100℃に加温してもよい。さらに部分加水分解反応を促進させる目的で、塩酸、酢酸、ハロゲン化シラン、クロロ酢酸、クエン酸、安息香酸、ジメチルマロン酸、蟻酸、プロピオン酸、グルタン酸、グリコール酸、マレイン酸、マロン酸、トルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸および無機酸を触媒に用いてもよい。
(A)成分は長期的に安定して性能を得るためには、液のpHを2.0〜7.0、より好ましくはpH2.5〜6.5、さらにより好ましくはpH3.0〜6.0にするとよい。pHがこの範囲外であると、特に水の使用量がX1モルに対し0.3モル以上で(A)成分の長期的な性能低下が著しくなることがある。(A)成分のpHがこの範囲外にあるときは、この範囲より酸性側であれば、アンモニア、エチレンジアミン等の塩基性試薬を添加して調整すれば良く、塩基性側のときも塩酸、硝酸、酢酸等の酸性試薬を用いて調整すれば良い。しかし、その調整方法は特に限定されるものではない。
(B)成分のポリオルガノシロキサンは上記の平均組成式(II)で表すことが出来る。(II)式中Rとしては上記(I)中のRと同じものが例示されるが、好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、ビニル基、γ−グリシドキシプロピル基、γ−メタクリロキシプロピル基、γ−アミノプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基などの置換炭化水素基、より好ましくはメチル基およびフェニル基である。また、式中aおよびbはそれぞれ上記の関係を満たす数であり、aが0.2未満またはbが3を超えると硬化被膜にクラックを生じるなどの不都合があり、またaが2を超え4以下の場合またはbが0.0001未満では硬化がうまく進行しない。
このようなシラノール基含有ポリオルガノシロキサンは、たとえば、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、もしくはこれらに対応するアルコキシシランの1種もしくは2種以上の混合物を公知の方法により大量の水で加水分解することで得ることができる。シラノール基含有ポリオルガノシロキサンを得るのに、アルコキシシランを用いて公知の方法で加水分解した場合、加水分解されないアルコキシ基が微量に残る場合がある。つまりシラノール基と極微量のアルコキシ基が共存するようなポリオルガノシロキサンが得られる事もあるが、この様なポリオルガノシロキサンを用いても差支えない。
(C)成分である硬化触媒は、上記(A)成分と(B)成分との縮合反応を促進し、被膜を硬化させるものである。このような触媒としては、アルキルチタン酸塩、オクチル酸錫およびジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジマレエート等のカルボン酸の金属塩;ジブチルアミン−2−ヘキソエート、ジメチルアミンアセテート、エタノールアミンアセテート等のアミン塩;酢酸テトラメチルアンモニウム等のカルボン酸第4級アンモニウム塩;テトラエチルペンタミンのようなアミン類;N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミン系シランカップリング剤;p−トルエンスルホン酸、フタル酸、塩酸等の酸類;アルミニウムアルコキシド、アルミニウムキレート等のアルミニウム化合物、水酸化カリウムなどのアルカリ触媒;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、チタニウムテトラアセチルアセトネート等のチタニウム化合物、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルモノクロロシラン等のハロゲン化シラン等があるが、これらの他に(A)成分および(B)成分との縮合反応に有効なものであれば特に制限はない。
(A)成分および(B)成分の配合割合は、(A)成分1〜99重量部に対して(B)成分99〜1重量部が好ましく、より好ましくは(A)成分5〜95重量部に対して(B)成分95〜5重量部、最も好ましくは(A)成分10〜90重量部に対して(B)成分90〜10重量部である(ただし、(A)成分と(B)成分の合計は100重量部である)。(A)成分が1重量部未満であると常温硬化性に劣り、また十分な被膜硬度が得られない。一方、99重量部を超えると硬化性が不安定でかつ良好な塗膜が得られないことがある。
また、(C)成分の添加量は(A)成分と(B)成分との合計100重量部に対して0.0001〜10重量部であることが好ましい。より好ましくは0.0005〜8重量部であり、最も好ましくは0.0007〜5重量部である。0.0001重量部未満だと常温で硬化しないことがあり、また、10重量部を越えると耐熱性、耐候性が悪くなることがある。
(A)成分のシリカ分散オリゴマーに含有される加水分解性基と(B)成分のシラノール基とは、(C)成分の硬化触媒存在下で、常温もしくは低温(たとえば、温度100℃以下)加熱することにより縮合反応して硬化被膜を形成する。従って、湿気硬化タイプのコーティング剤のように常温で硬化するときにも湿度の影響をほとんど受けない。また加熱処理により縮合反応を促進して硬化被膜を形成することができる。
このコーティング剤は、取扱いの容易さから各種有機溶媒で希釈されて使用できる。有機溶媒の種類は、(A)成分あるいは(B)成分の一価炭化水素基の種類もしくは分子量の大きさによって選定することができる。このような有機溶媒としてはコロイダルシリカの分散溶媒として示したもの等を挙げることができ、これらからなる群より選ばれた1種もしくは2種以上のものを使用することができる。これらの親水性有機溶剤と併用してトルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトオキシムなども例示することができる。
上記のコーティング剤には紫外線吸収剤を配合し、紫外線カット性のシリコーン系コーティング剤として使用する。紫外線吸収剤としては、特に限定されるものではないが、例えば酸化亜鉛微粒子を用いることができる。紫外線吸収剤の配合量は特に限定されないが、コーティング剤の乾燥固形分に対して0.1〜50重量%の範囲が好ましい。
またこの紫外線カット性シリコーン系コーティング剤には光拡散手段を含有させることができる。この光拡散手段としては、紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜を艶消しに形成することができるものであれば何でもよいが、例えばシリカ粒子などの金属酸化物粒子を配合することによって、紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜をして光拡散性に形成することができる。光拡散手段としてシリカ粒子などの金属酸化物粒子を用いる場合、金属酸化物粒子としては粒子径が1〜50μmの大粒子径のものが好ましく、また金属酸化物粒子の配合量は特に限定されないが、コーティング剤の乾燥固形分に対して1〜20重量%の範囲が好ましい。
また、本発明において、光触媒性シリコーン系コーティング被膜を形成するコーティング剤としては、例えば特許第2776259号公報に開示されているものを用いることができるものである。すなわち、
一般式:Si(OR [1]
で表されるケイ素化合物、および/または、コロイド状シリカが、非水系の有機溶媒に分散した有機溶媒分散性であるコロイダルシリカを20〜200重量部、
一般式:RSi(OR [2]
で表されるケイ素化合物を100重量部、
一般式:R Si(OR [3]
で表されるケイ素化合物を0〜60重量部の割合で含有すると共に、光触媒を含有するコーティング剤を用いることができる(上記R、Rは1価の炭化水素基を示す)。
上記ケイ素化合物は一般式が下式[4]で表されるものである。
一般式:R Si(OR4−n [4]
(n=0〜3を示し、R、Rは1価の炭化水素基を示す。)
前式[4]のR、Rは1価の炭化水素基を示す限り限定はされないが、Rとして炭素数1〜8の置換または非置換の炭化水素基を示す。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基等のアラルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ビニル基、アリル基等のアニケニル基、クロロメチル基、γ−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換炭化水素基、及び、γ−メタクリロキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、γ−メルカプトプロピル基等の置換炭化水素基が挙げられる。なかでも合成の容易さ、または、入手の容易さから炭素数1〜4のアルキル基、及び、フェニル基が好ましい。
前式[6]のRには炭素数1〜4のアルキル基を主原料にするものが用いられる。特に、n=0のテトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等が例示され、n=1のオルガノトリアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等が例示される。さらに、n=2のジオルガノジアルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン等が例示され、n=3のトリオルガノアルコキシシランとしては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルイソプロポキシシラン、ジメチルイソブチルメトキシシラン等が例示される。
上記R、Rは前式[1]、[2]、[3]において、同一の炭化水素基でもよいし、異なっていてもよい。
上記コーティング剤の調製は、例えば、前式[1]、[2]、[3]で表されるケイ素化合物を溶剤で希釈し、硬化剤として水または触媒を添加し、加水分解、及び、重縮合反応を行い調製される。これらケイ素化合物の重量平均分子量(Mw)はポリスチレン換算で算出される。この調製の際に、無機塗料の重量平均分子量(Mw)をポリスチレン換算で900以上にする。重量平均分子量(Mw)がポリスチレン換算で900未満であると、重縮合反応の際に硬化収縮が大きくなり、焼き付けした無機塗料の塗膜にクラックが発生し易くなる。
上記コーティング剤は、前式[1]で表されるケイ素化合物と併用、または、代わりにコロイド状シリカを成分とすることができる。上記コロイド状シリカは、アルコール等の非水系の有機溶媒に分散した有機溶媒分散性のコロイダルシリカである。上記コロイダルシリカは固形分としてのシリカを20〜50重量%含有している。有機溶媒分散性のコロイダルシリカは有機溶媒を水と置換することで容易に調製できる。上記コロイダルシリカが分散している有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等の低級脂肪族アルコール類、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコール誘導体、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコールの誘導体、及び、ジアセトンアルコール等が挙げられ、これらの1種、もしくは2種以上が用いられる。さらに、親水性の有機溶媒と併用してトルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトオキシム等も用いることができる。なお、上記コロイダルシリカの上記配合量は、分散媒も含んだ重量である。
コーティング剤を調製する際に硬化剤として水が汎用されるが、この水の量は、コーティング剤中に45重量%以下が好ましく、25重量%以下がより好ましい。
コーティング剤を調製する際に用いられる有機溶剤は、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等の低級脂肪族アルコール類、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコール誘導体、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコールの誘導体、及び、ジアセトンアルコール等が挙げられ、これらの1種、もしくは2種以上が用いられる。さらに、親水性の有機溶媒と併用してトルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトオキシム等も用いることができる。
上記のコーティング剤を調製する際は、コーティング剤のpHを3.8〜6とすることが望ましい。このpH範囲であるとコーティング剤の保存性が良く、このpH範囲外であると調製期間から塗布できる期間が限られてしまう。このpHの調整方法は限定しないが、例えば、材料を混合した際にpHが3.8未満となった場合、アンモニア等の塩基性試薬を添加して調整すればよく、pHが6を超えた場合、塩酸等の酸性試薬を添加して調整すればよい。また、pHによっては分子量が小さい状態で反応の進行が遅くなった場合、加熱して反応を促進してもよいし、酸性試薬でpHを下げて反応を進めた後に、塩基性試薬を添加して所定のpHとしてもよい。
そしてこのコーティング剤に光触媒を含有させることによって、光触媒性のシリコーン系コーティング剤として使用することができるものであり、光触媒としては酸化チタンを用いるのが一般的であるが、酸化チタンの他に、酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化ゲルマニウム、酸化鉛、酸化カドミウム、酸化銅、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ロジウム、酸化レニウムなどを挙げることもできる。光触媒の配合量は特に限定されないが、コーティング剤の乾燥固形分に対して10〜90重量%の範囲が好ましく、より好ましくは30〜70重量%である。
しかして、窯業系外装材などの基材1の表面に、必要に応じてプライマー塗装などを施した後、着色コーティング剤を塗装することによって着色コーティング被膜2を設け、この着色コーティング被膜2の表面に紫外線カット性のシリコーン系コーティング剤を塗装することによって紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜3を設け、さらに紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜3の表面に光触媒性のシリコーン系コーティング剤を塗装することによって光触媒性シリコーン系コーティング被膜4を設けて、図1に示すような複合被膜Aを基材1の表面に形成することができるものである。塗装の方法は特に制限されるものではなく、スプレー法、ロールコーター、フローコーターなど任意の方法を採用することができる。
この複合被膜Aにおいて、各被膜の膜厚は特に限定されるものではないが、着色コーティング被膜2は3〜60μm、紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜3は1〜10μm、光触媒性シリコーン系コーティング被膜4は0.05〜1μmの範囲が好ましい。
そして本発明において、紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜3の屈折率は1.50〜1.60の範囲に設定されるものである。ここで、一般的にシリコーン系樹脂の屈折率は1.45〜1.50の範囲にあり、紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜3の屈折率が1.50〜1.60の範囲になるように調整するために、紫外線カット性シリコーン系コーティング剤に高屈折率微粒子を混合することが有効である。高屈折率微粒子としては、屈折率の高さから酸化チタン(屈折率2.4〜2.7)、酸化アルミニウム(屈折率1.8)、酸化亜鉛(屈折率1.9〜2.0)、酸化ジルコニウム(屈折率2.0)等を使用することができる。これらの中でも、酸化亜鉛は紫外線カット機能も有するので、紫外線カット機能と屈折率調節機能を同時に達成できて好ましい。
このように紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜3の屈折率を1.50〜1.60の範囲に設定することによって、最表面の光触媒性シリコーン系コーティング被膜4が酸化チタン等の光触媒を含有して高い屈折率を有するものであっても、複合被膜Aの表面での光の反射を抑制して、複合被膜Aを低光沢性に形成することができるものである。すなわち、紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜3の屈折率が1.50未満であると、光触媒シリコーン系コーティング被膜4の屈折率との差が大きくなり、両被膜3,4の光干渉によって高反射になって高光沢になるものである。また紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜3の屈折率が1.60を超えて大きくなると、高屈折率による高反射によって高光沢になるものである。
また上記のように紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜3にシリカ粒子等を含有させて、光拡散性を付与することによって、複合被膜Aをより低光沢性に形成することができるものである。
ここで、光触媒性シリコーン系コーティング被膜4の屈折率はとくに制限されるものではないが、光触媒性シリコーン系コーティング被膜4とその直下の紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜3の屈折率の差は小さいほうが、光の反射を抑制して、複合被膜Aを低光沢性に形成するうえで好ましい。このために、光触媒性シリコーン系コーティング被膜4の屈折率は1.60〜1.75の範囲に設定するのが好ましい。光触媒性シリコーン系コーティング被膜4に含有させる光触媒の量を、光触媒性能を発現するレベルで少なくすることによって、光触媒性シリコーン系コーティング被膜4の屈折率を1.60〜1.75の範囲に調整することができるものである。
また、上記の複合被膜Aにおいて、紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜3と光触媒性シリコーン系コーティング被膜4の二層においてそのヘーズ(拡散透過率/直行透過率)が5.0〜20.0%の範囲になるように設定するのが好ましい。ヘーズを調整する方法は特に限定されるものではないが、例えば、紫外線カット性シリコーン系コーティング剤に光散乱性粒子を混合させる方法や、紫外線カット性シリコーン系コーティング剤を塗布した後の硬化を不完全な状態で止め、この上に光触媒性シリコーン系コーティング剤を塗布した際に、紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜3と光触媒性シリコーン系コーティング被膜4の界面が混ざり合って白化することを利用する方法などがある。光散乱性粒子としては、シリカ(屈折率1.45)、酸化アルミニウム(屈折率1.8)、酸化チタン(屈折率2.4〜2.7)、ITO(屈折率1.9〜2.0)、ATO(屈折率1.9〜2.0)、酸化ジルコニウム(屈折率2.0)等の金属酸化物、メチルシリコーン微粒子(屈折率1.45〜1.50)などを用いることができるが、特に、可視域に吸収のない無色透明なものが好ましい。光散乱性粒子は大きいものほど散乱強度は強くなるが、あまりに大きいとヘーズが大きくなり過ぎて、紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜3が白くなり、下地の着色コーティング被膜2が白ボケしてしまうので、光散乱性粒子の粒子径は50μm以下であることが好ましく、20μm以下がより好ましい。光散乱性粒子の粒子径の下限は、十分に散乱強度が得られる粒子径であれば好く、1μm以上が好ましい。
紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜3と光触媒性シリコーン系コーティング被膜4の二層のヘーズが5.0%未満であると、複合被膜Aを所望の低光沢性に形成することが難しい。逆にヘーズが20.0%を超えると、紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜3が白く濁り、下地の着色コーティング被膜2が見え難くなって発色が落ちてくるものである。
図2は本発明の他の実施の形態を示すものであり、紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜3と光触媒性シリコーン系コーティング被膜4の界面において、紫外線カット性シリコーン系コーティング剤と光触媒性シリコーン系コーティング剤とが混合された混合層5を形成するようにしたものである。その他の構成は上記のものと同じである。
この混合層5は、紫外線カット性シリコーン系コーティング剤を塗布した後に、紫外線カット性シリコーン系コーティング剤が完全に乾燥しないうちに、光触媒性シリコーン系コーティング剤を塗布することによって、両者の界面で紫外線カット性シリコーン系コーティング剤と光触媒性シリコーン系コーティング剤が混ざり合うことによって形成することができるものであり、この混合層5の厚みは0.05〜0.5μmに設定するのが好ましい。
このように光触媒性シリコーン系コーティング被膜4と、その直下の紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜3の界面を混合させると、白ボケ(完全な白色ではなく半透明の樹脂のようなもの)した混合層5が形成されるものであり、複合被膜Aをより低光沢性に形成することができるものである。この混合層5の厚みが0.05μm未満であると、混合層5を形成することによる低光沢性の効果を十分に得ることができないものであり、逆に混合層5の厚みが0.5μmを超えると、白ボケの効果が過剰になり、着色コーティング層2が隠蔽されて着色による化粧が損なわれるおそれがある。
このように紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜3と光触媒性シリコーン系コーティング被膜4の界面に混合層5を形成した複合被膜Aでは、紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜3と、光触媒性シリコーン系コーティング被膜4と、混合層5の三層においてそのヘーズ(拡散透過率/直行透過率)が5.0〜20.0%の範囲になるように設定するのが好ましい。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(実施例1)
(紫外線カット性シリコーン系コーティング剤の調製)
攪拌機、加温ジャケット、コンデンサー及び温度計を付けたフラスコ中に、メタノール分散コロイダルシリカゾル(粒子径10〜20nm、固形分30重量%、水分0.5重量%:日産化学工業社製「MT−ST」)100重量部、メチルメトキシシラン68重量部、水10.8重量部を投入し、攪拌しながら65℃で約5時間かけて部分加水分解を行なった後、冷却することにより(A)成分を得た。この液は、室温で48時間放置したときの固形分が36重量%であった。
攪拌機、加温ジャケット、コンデンサー、滴下ロート及び温度計を取り付けたフラスコに水1000重量部、アセトン50重量部を仕込み、更にメチルトリクロロシラン149.3重量部をトルエン200重量部に溶解して調製した溶液を攪拌下に滴下しながら60℃で加水分解した。滴下が終了してから40分後に攪拌を止めた。次に反応液を分液ロートに移し入れて静置させ、2層に分離した下層の塩酸水を分液除去し、後に残ったオルガノシロキサンのトルエン溶液に残留している水と塩酸を減圧ストリッピングにより過剰のトルエンとともに除去することによって、シラノール含有ポリオルガノシロキサンのトルエン60重量%溶液として(B)成分を得た。
上記の(A)成分50重量部、(B)成分50重量部を混合した溶液を、攪拌下で、シリコーン塗料分散酸化亜鉛(粒子径10〜200nm、固形分32重量%:堺化学社製)25重量部に滴下した。この溶液に、触媒としてN−β−アミノエチル−アミノプロピルメチルジメトキシシラン2重量部を投入し、イソプロピルアルコールで固形分20重量%になるように希釈して、紫外線カット性シリコーン系コーティング剤を得た。
この紫外線カット性シリコーン系コーティング剤を、ガラス基材(後述の実施例1のものと同じ)に、スプレー法で乾燥膜厚が約10μmの厚さになるように塗布し、120℃で20分間乾燥して得られた紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜について、その屈折率を測定機器として薄膜測定装置(Fi1mmetrics社製「F20」)を用いて測定した。またこの紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜について、そのヘーズ値を測定機器としてヘーズメーター(日本電色工業社製「NDH2000」)を用いて測定した。その結果、屈折率は1.54、へーズ値は2.0%であった。
(光触媒性シリコーン系コーティング剤の調製)
テトラエトキシシラン208重量部にメタノール356重量部を加え、さらに水18重量部及び0.01N塩酸18重量部を混合し、ディスパーを用いて、2時間攪拌した。得られた溶液を、攪拌下で、水分散アナターゼ型酸化チタンゾル(粒子径7nm、固形分30重量%:石原産業社製)200重量部に滴下し、イソプロピルアルコールで固形分1重量%になるように希釈して、光触媒性シリコーン系コーティング剤を得た。
この光触媒性シリコーン系コーティング剤を、ガラス基材(後述の実施例1のものと同じ)に、スプレー法で乾燥膜厚が約0.1μmの厚さになるように塗布し、120℃で20分間乾燥して得られた光触媒性シリコーン系コーティング被膜の屈折率を測定した。その結果、屈折率は1.65であった。
そして、着色コーティング剤として(関西ペイント社製「IMコート4100」、ストレートグレー色)を用い、厚み2mmのフロートガラス(屈折率1.53)からなるガラス基材の表面に、スプレー法で乾燥膜厚が約30μmの厚さになるように塗布し、十分に室温養生してから120℃で20分乾燥させることによって、着色コーティング被膜を形成した。
次に、この着色コーティング被膜の上に、上記の紫外線カット性シリコーン系コーティング剤をスプレー法で乾燥膜厚が約10μmの厚さになるように塗布し、十分に室温養生してから120℃で20分乾燥させることによって、紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜を形成した。
次に、この紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜の上に、上記の光触媒性シリコーン系コーティング剤をスプレー法で乾燥膜厚が約0.1μmの厚さになるように塗布し、十分に室温養生してから120℃で20分乾燥させることによって、光触媒性シリコーン系コーティング被膜を形成した。
このようにしてガラス基材に形成した3層構造の複合被膜について、5°正反射の視感反射率を測定機器として分光光度計(目立製作所製「U−3400」)を用いて測定し、また60°グロス光沢を測定機器としてグロスメーター(日本電色工業製GLOSS METER)を用いて測定した。その結果、視感反射率は6.8%、グロス光沢は73であった。
また、紫外線カット性シリコーン系コーティング剤と光触媒性シリコーン系コーティング剤を、同じ膜厚、乾燥条件でガラス基材の表面に順次塗装して形成して得た、紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜と光触媒性シリコーン系コーティング被膜の二層について、ヘーズ値を測定したところ、ヘーズ値は2.5%であった。
(実施例2)
実施例1の(光触媒性シリコーン系コーティング剤の調製)において、水分散アナターゼ型酸化チタンゾルを360重量部用いて、酸化チタン量が120重量部となるように光触媒性シリコーン系コーティング剤を調製した。
そしてこの光触媒性シリコーン系コーティング剤を用いる以外は、実施例1と同様にして、3層構造の複合被膜を形成した。得られた複合被膜の視感反射率は5.3%、グロス光沢は68であった。また光触媒性シリコーン系コーティング被膜の屈折率は1.60、へーズ値は2.3%であった。
(実施例3)
実施例2において、光触媒性シリコーン系コーティング被膜を0.2μmの厚さになるように形成した以外は、実施例2と同様にして3層構造の複合被膜を形成した。得られた複合被膜の視感反射率は5.5%、グロス光沢は70であった。また光触媒性シリコーン系コーティング被膜の屈折率は1.60、へーズ値は2.4%であった。
(実施例4)
実施例2において、光触媒性シリコーン系コーティング被膜を0.3μmの厚さになるように形成した以外は、実施例2と同様にして3層構造の複合被膜を形成した。得られた複合被膜の視感反射率は5.5%、グロス光沢は71であった。また光触媒性シリコーン系コーティング被膜の屈折率は1.60、へーズ値は2.6%であった。
(実施例5)
実施例1の(紫外線カット性シリコーン系コーティング剤の調製)において、シリコーンモノマー分散微粒子酸化亜鉛を50重量部用いて酸化亜鉛量が2倍量となるように紫外線カット性シリコーン系コーティング剤を調製した。
そしてこの紫外線カット性シリコーン系コーティング剤を用いる以外は、実施例1と同様にして、3層構造の複合被膜を形成した。得られた複合被膜の視感反射率は6.5%、グロス光沢は72であった。また紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜の屈折率は1.58、光触媒性シリコーン系コーティング被膜の屈折率は1.65、へーズ値は4.5%であった。
(実施例6)
実施例1において、紫外線カット性シリコーン系コーティング剤を塗布し、50℃で20分の条件で乾燥した後に、光触媒性シリコーン系コーティング剤を塗布するようにした以外は、実施例1と同様にして、3層構造の複合被膜を形成した。このものでは、紫外線カット性シリコーン系コーティング剤が完全に乾燥していない状態で光触媒性シリコーン系コーティング剤を塗布しているため、紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜と光触媒性シリコーン系コーティング被膜の界面に厚み0.05μmの混合層が形成されていた。
このようにして得られた複合被膜の視感反射率は6.0%、グロス光沢は33、へーズ値は17.8%であった。
(実施例7)
実施例1の(紫外線カット性シリコーン系コーティング剤の調製)において、(A)成分と(B)成分の混合液と酸化亜鉛とを混合した後に、艶消し材として、大粒子径シリカ粒子(粒子径10μm)20重量部を投入して混合するするようにした以外は、同様にして紫外線カット性シリコーン系コーティング剤を調製した。
そしてこの紫外線カット性シリコーン系コーティング剤を用いる以外は、実施例1と同様にして、3層構造の複合被膜を形成した。得られた複合被膜の視感反射率は5.5%、グロス光沢は7.8、へーズ値は25.0%であった。
(比較例1)
光触媒性シリコーン系コーティング剤を用いない他は、実施例1と同様にして、着色コーティング被膜と紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜の2層からなる複合被膜を形成した。得られた複合被膜の視感反射率は5.0%、グロス光沢60、へーズ値は2.0%であった。
(比較例2)
実施例1の(紫外線カット性シリコーン系コーティング剤の調製)において、酸化亜鉛を混合しない以外は同様にして紫外線カット性シリコーン系コーティング剤を得た。
そしてこの紫外線カット性シリコーン系コーティング剤を用いる以外は、実施例1と同様にして、3層構造の複合被膜を形成した。得られた複合被膜の視感反射率は8.5%、グロス光沢は89、へーズ値は2.3%であった。また紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜の屈折率は1.47であった。
上記の実施例1〜7及び比較例1〜2で得た複合被膜の視感反射率、グロス光沢をまとめて表1に示す。
Figure 2007136362
表1にみられるように、紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜の屈折率が小さい比較例2のものは、視感反射率とグロス光沢が高く、光沢が高いものであった。一方、各実施例のものは視感反射率とグロス光沢が、光触媒性シリコーン系コーティング被膜を形成しない比較例1と同程度に低いものであり、低光沢性の複合被膜が形成されていることが確認される。特に実施例6では紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜と光触媒性シリコーン系コーティング被膜の界面に混合層を形成しているためにグロス光沢が小さく、また実施例7では紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜にシリカ粒子を含有させているためにグロス光沢が小さく、より低光沢性の複合被膜を得ることができるものであった。
本発明の実施の形態の一例を示す概略断面図である。 本発明の実施の形態の他の一例を示す概略断面図である。
符号の説明
1 基材
2 着色コーティング被膜
3 紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜
4 光触媒性シリコーン系コーティング被膜
5 混合層

Claims (7)

  1. 少なくとも三層のコーティング被膜からなる複合被膜構造であって、少なくとも一層の着色コーティング被膜と、この着色コーティング被膜の表面側に形成される、被膜屈折率が1.50〜1.60の紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜と、紫外線カット性シリコーン系被膜の表面側に形成される光触媒性シリコーン系コーティング被膜とを具備して成ることを特徴とする複合被膜構造。
  2. 光触媒性シリコーン系コーティング被膜の屈折率が1.60〜1.75の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の複合被膜構造。
  3. 紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜が、光拡散手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の複合被膜構造。
  4. 紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜と光触媒性シリコーン系コーティング被膜の界面において、紫外線カット性シリコーン系コーティング剤と光触媒性シリコーン系コーティング剤とが混合された混合層が0.05〜0.5μmの厚みで形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の複合被膜構造。
  5. 紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜と光触媒性シリコーン系コーティング被膜の二層のヘーズが5.0〜20.0%の範囲であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の複合被膜構造。
  6. 紫外線カット性シリコーン系コーティング被膜と光触媒性シリコーン系コーティング被膜及びこれらの界面の混合層の三層のヘーズが5.0〜20.0%の範囲であることを特徴とする請求項4に記載の複合被膜構造。
  7. 窯業系外装材の表面に、請求項1乃至6のいずれかに記載の複合被膜構造が形成されて成ることを特徴とする塗装外装材。
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