JP7069938B2 - リチウムイオン二次電池用正極およびこれを用いたリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Description
一般式(1):
LiCx ・・・(1)
(上記一般式(1)においてx>12)
図1は、本実施形態にかかるリチウムイオン二次電池1の断面模式図である。図1に示すように、リチウムイオン二次電池1は、発電素子10と外装体20とを有する。発電素子10は、電解液が含浸されている。外装体20は、電解液が外部に漏洩すること、及び、外部の空気及び水分が発電素子10に至ることを防ぐ。
発電素子10は、正極101と負極102とセパレータ103とを有する。図1に示す発電素子10は、一対の正極101と負極102とが、セパレータ103を挟んで対向配置されている。ここでは、正極101及び負極102が1層ずつの例をもとに説明するが、これらの積層数は問わない。
本実施形態に係る正極101は、正極集電体101Aに、正極活物質と、正極用バインダーと、正極用導電助剤と下記一般式(1)で表される炭素材料を含む正極活物質層101Bを有するものである。前記炭素材料は上記正極活物質粒子表面の少なくとも一部を被覆する被覆層として存在していてもよい。
一般式(1):
LiCx ・・・(1)
(上記一般式(1)においてx>12)
(正極集電体)
正極集電体101Aは、導電性の板材であればよく、例えば、アルミニウム又はそれらの合金、ステンレス等の金属薄板(金属箔)を用いることができる。
正極活物質層101Bは、正極活物質、正極用バインダー、正極用導電助剤、下記一般式(1)で表される炭素材料、および正極用添加剤から主に構成されるものである。上記炭素材料は上記正極活物質粒子表面の少なくとも一部を被覆する被覆層として存在していてもよい。
一般式(1):
LiCx ・・・(1)
(上記一般式(1)においてx>12)
正極活物質としては、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、該リチウムイオンのカウンターアニオン(例えば、PF6 -)のドープ及び脱ドープを可逆的に進行させることが可能であれば特に限定されず、公知の電極活物質を使用できる。例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、リチウムマンガンスピネル(LiMn2O4)、及び、化学式:LiNixCoyMnzMaO2(x+y+z+a=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦a≦1、MはAl、Mg、Nb、Ti、Cu、Zn、Crより選ばれる1種類以上の元素)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物Lia(M)b(PO4)c(ただし、M=VOまたはV、かつ、0.9≦a≦3.3、0.9≦b≦2.2、0.9≦c≦3.3)、オリビン型LiMPO4(ただし、Mは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Nb、Ti、Al、Zrより選ばれる1種類以上の元素又はVOを示す)、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)、LiNixCoyAlzO2(0.9<x+y+z<1.1)等の複合金属酸化物が挙げられる。
正極用バインダーとしては、正極活物質同士を結合すると共に、正極活物質層101Bと正極用集電体101Aとを結合している。バインダーは、上述の結合が可能なものであればよく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂や、セルロース、スチレン・ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等を用いてもよい。また、バインダーとして電子伝導性の導電性高分子やイオン伝導性の導電性高分子を用いてもよい。電子伝導性の導電性高分子としては、例えば、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン等が挙げられる。イオン伝導性の導電性高分子としては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物と、LiClO4、LiBF4、LiPF6等のリチウム塩とを複合化させたもの等が挙げられる。
正極用導電助剤としては、正極活物質層101Bの導電性を良好にするものであれば特に限定されず、公知の導電助剤を使用できる。例えば、黒鉛、カーボンブラック等の炭素系材料や、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属微粉、ITO等の導電性酸化物が挙げられる。
本実施形態係る正極活物質被覆層は下記一般式(1)で表される炭素材料を含むものである。
一般式(1):
LiCx ・・・(1)
(上記一般式(1)においてx>12)
(負極集電体)
負極集電体102Aは、導電性を有する材料により構成されていればよく、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン等の金属箔を用いることができる。
負極活物質層102Bは、負極活物質、負極用バインダー、および負極用導電助剤から主に構成されるものである。
負極活物質層102Bに用いる負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵・放出(析出・溶解、合金化・非合金化)可能な化合物であればよく、公知の負極活物質を使用できる。負極活物質としては、例えば、リチウム金属、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛)、カーボンナノチューブ、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温度焼成炭素等の炭素材料、アルミニウム、シリコン、スズ等のリチウムと化合することのできる金属、シリコン酸化物SiOx(0<x<2)、二酸化スズ等の酸化物を主体とする非晶質の化合物、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)等を含む粒子が挙げられる。
負極活物質と負極活物質、負極活物質と導電助剤、負極活物質と負極集電体102Aとを接着させるために、負極活物質層102Bにはバインダーを添加する。バインダーに要求される特性としては、電解液に溶解または極端に膨潤しないこと、耐還元性があること、接着性が良いことが挙げられる。負極活物質層102Bに用いられるバインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはそのコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸(PA)及び共重合体、ポリアクリル酸(PA)及び共重合体の金属イオン架橋体、無水カルボン酸をグラフト化したポリプロピレン(PP)及びポリエチレン(PE)、またはこれらの混合物などが挙げられる。中でも、ポリアミドイミドが好ましい。尚、ポリイミドは、前駆体のポリアミック酸として添加し、電極形成後に熱処理してポリイミドとなる。
負極用導電助剤としては特に限定はなく、上記で記載した正極用導電助剤と同様のものを用いることができる。
セパレータ103は、電気絶縁性の多孔質構造から形成されていればよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリオレフィンからなるフィルムの単層体、積層体や上記樹脂の混合物の延伸膜、或いはセルロース、ポリエステル及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種の構成材料からなる繊維不織布が挙げられる。
電解液は、発電素子10内に含浸される。電解液には、リチウム塩等を含む電解質溶液(電解質水溶液、有機溶媒を使用する非水系電解質溶液)を使用することができる。
非水電解質溶液は、非水溶媒に電解質が溶解されており、非水溶媒として環状カーボネートと、鎖状カーボネートと、を含有してもよい。
電解質としては、例えば、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiCF3SO3、LiCF3CF2SO3、LiC(CF3SO2)3、LiN(CF3SO2)2、LiN(CF3CF2SO2)2、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)、LiN(CF3CF2CO)2、LiBOB(リチウムビスオキサレートボラート)等のリチウム塩が使用できる。尚、これらのリチウム塩は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。特に、電離度の観点から、LiPF6を含むことが好ましい。
外装体20は、その内部に発電素子10及び電解液を密封するものである。外装体20は、電解液の外部への漏出や、外部からの電池1内部への水分等の侵入等を抑止するものである。
端子30、31は、アルミニウム、ニッケルなどの導電材料から形成されている。端子は、一方が正極端子30、他方が負極端子31である。端子30、31の一端(内側端部)は発電素子10に接続され、他端(外側端部)は外装体20の外部に延出する。2つの端子30、31は、それぞれ同じ方向に延出してもよいし、異なる方向に延出してもよい。正極端子30は正極集電体101Aに接続され、負極端子31は負極集電体102Aに接続される。接続方法は特に問わず、溶接、ネジ止め等を用いることができる。
本実施形態にかかるリチウムイオン二次電池1は、例えば以下のような方法で製造することができる。
正極101の製造方法は、複合化工程と、スラリー作製工程と、電極塗布工程と、圧延工程と、を備える。
複合化工程では、正極活物質と被覆炭素材料とをせん断力を加えながら混合し、前記炭素材料が変質しない程度に複合化粒子の密度を高めながら、正極活物質の表面に均一に前記炭素材料を付着させる。
次に、正極活物質と被覆炭素材料とからなる複合化粒子にバインダー及びそれらの種類に応じた溶媒、例えばPVDFの場合はN-メチル-2-ピロリドン等の溶媒を混合して、スラリーを作製する。
ドクターブレード、スロットダイ、ノズル、グラビアロール等の公知の方法の中から適宜選択した方法を用いて、上述のスラリーを正極集電体101A上に塗布する。塗布の量やライン速度の調整により、正極の活物質担持量を調整することができる。続いて、正極集電体101A上に塗布されたスラリー中の溶媒を除去する。除去法は特に限定されず、スラリーが塗布された正極集電体101Aを、例えば60℃~150℃で乾燥させればよい。
最後にロールプレスにより圧延を行い、正極101が完成する。このとき、ロールを加熱しバインダーを柔らかくすることにより、より高い電極密度を得ることができる。ロールの温度は100℃~200℃の範囲が好ましい。
負極102は、上述の複合化工程を除いた、スラリー作製工程、電極塗布工程、及び圧延工程により作製することができる。尚、各工程は、正極101と同様の条件にて作製可能である。
次いで、外装体20を作製する。外装体20の作製方法は、まず、熱融着樹脂層201、金属層202、耐熱樹脂層203となるそれぞれのフィルムを準備する。次に、各層間の接着を行う。接着には、耐電解質性の接着剤(ウレタン系接着剤など)を使用できる。特に信頼性が必要な場合、樹脂層201、203と金属層202との間には接着剤を使用せずに、樹脂層201、203自体に接着性を有する酸(無水マレイン酸)変性樹脂を使用することが好ましい。そして、各層を積層して得られた外装体用ラミネートフィルムの長手方向の中心部分で熱融着樹脂層201を内側にして折り、長手方向の左右の端部を200℃で熱融着することで、外装体20が作製される。
(正極の作製)
正極活物質として平均粒径10μmのLiCoO2、下記一般式(1)においてx=24の被覆炭素材料としてLi:C=1:24となるように作製したグラフェンを正極活物質LiCoO2に対して1.2質量部使用し、10度に傾斜させたホソカワミクロン製メカノフュージョンを用いて、回転数2500rpm条件下で複合化をおこなった。得られた複合化粒子をSEMで観察したところ、LiCoO2の粒径(DA)は約10μm、被覆層の厚み(DB)は約30nmであった。このときの正極活物質粒子の平均粒径(DA)被覆層の厚み(DB)の比はDB/DA=0.003となる。次に、前述した炭素被覆層が形成されている正極活物質LiCoO285質量部、カーボンブラック5質量部、PVDF10質量部をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に分散させ、正極活物質層形成用のスラリーを調整した。このスラリーを、厚さ20μmのアルミ金属箔の一面に、正極活物質の塗布量が9.0mg/cm2となるように塗布し、100℃で乾燥することで正極活物質層を形成した。その後、ローラープレスによって加圧成形し、正極を作製した。
一般式(1):
LiCx ・・・(1)
(上記一般式(1)においてx>12)
天然黒鉛90質量部、カーボンブラック5質量部、PVDF5質量部をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に分散させ、負極活物質層形成用のスラリーを調整した。上記スラリーを、厚さ20μmの銅箔の一面に、負極活物質の塗布量が6.0mg/cm2となるように塗布し、100℃で乾燥することで負極活物質層を形成した。その後、ローラープレスによって加圧成形し、負極を作製した。
体積比でEC/DEC=3/7となるように混合し、これに1mol/Lの濃度となるようにLiPF6を溶解させた。その後、この溶液に対し、添加剤としてジフルオロリン酸リチウム(LiPO2F2)を1.0×10-2mol/Lの濃度となるように添加し、電解液を作製した。
上記で作製した正極および負極と、それらの間にポリエチレン微多孔膜からなるセパレータを挟んでアルミラミネートパックに入れた。このアルミラミネートパックに、上記で作製した電解液を注入した後、真空シールし、実施例1の評価用リチウムイオン二次電池を作製した。
上記で作製した評価用リチウムイオン二次電池について、二次電池充放電試験装置(北斗電工株式会社製)を用い、充電レート1.0C(25℃で定電流充電を行ったときに1時間で充電終了となる電流値)の定電流充電で電池電圧が一般的に高電位とされる4.5Vとなるまで充電を行い、放電レート1.0Cの定電流放電で電池電圧が2.8Vとなるまで放電を行った。上記充放電終了後の放電容量を検出し、サイクル試験前の電池容量Q1を求めた。
E=Q2/Q1×100 ・・・(2)
正極活物質の種類と粒径によって適宜メカノフュージョンの回転数、処理時間を変えることで、DBを制御し、DB/DAが表1の通り変化したことを除いて、実施例1と同様にリチウムイオン二次電池を作製した。そして、上述の条件で500回の充放電試験を行い、容量維持率を算出した。
表1のように上記一般式(1)においてLiCxのxの値を変化させた炭素材料を用いたことを除いて、実施例1と同様にリチウムイオン二次電池を作製した。そして、上述の条件で500回の充放電試験を行い、容量維持率を算出した。
表1のように被覆層を形成する炭素材料変化させたことを除いて、実施例1と同様にリチウムイオン二次電池を作製した。そして、上述の条件で500回の充放電試験を行い、容量維持率を算出した。
表1のように被覆炭素材料量を変化させたことを除いて、実施例1と同様にリチウムイオン二次電池を作製した。そして、上述の条件で500回の充放電試験を行い、容量維持率を算出した。尚、被覆炭素材料量は、正極活物質と炭素材料の合計重量に対する比率(重量%)で示される。またメカノフュージョンの回転数、処理時間を変えることで、DBを一定値に保つことが可能となった。
表1のように様々な平均粒径(DA)を有する正極活物質を使用し、メカノフュージョンの回転数、処理時間を変えることで、被覆層の厚み(DB)を制御し、DB/DAを変化させたことを除いて、実施例1と同様にリチウムイオン二次電池を作製した。そして、上述の条件で500回の充放電試験を行い、容量維持率を算出した。
表1のように様々な平均粒径(DA)を有する正極活物質を使用し、被覆層の厚み(DB)を制御したことを除いて、実施例1と同様にリチウムイオン二次電池を作製した。そして、上述の条件で500回の充放電試験を行い、容量維持率を算出した。尚、メカノフュージョンの回転数、処理時間を変えることで、DB/DAを一定値に保つことが可能となった。
表1のように正極活物質と被覆炭素材料の複合化工程で複合化処理を行わなかったことを除いて、実施例1と同様にリチウムイオン二次電池を作製した。そして、上述の条件で500回の充放電試験を行い、容量維持率を算出した。
表1のように被覆炭素材料として上記一般式(1)を満たさず、層状炭素でない炭素材料を使用したことを除いて、実施例1と同様にリチウムイオン二次電池を作製した。そして、上述の条件で500回の充放電試験を行い、容量維持率を算出した。
表1のように被覆炭素材料として上記一般式(1)を満たさない炭素材料を使用したことを除いて、実施例1と同様にリチウムイオン二次電池を作製した。そして、上述の条件で500回の充放電試験を行い、容量維持率を算出した。
表1のように被覆炭素材料を使用せず、複合化も行わなかったことを除いて、実施例1と同様にリチウムイオン二次電池を作製した。そして、上述の条件で500回の充放電試験を行い、容量維持率を算出した。
10 発電素子
101 正極
101A 正極集電体
101B 正極活物質層
102 負極
102A 負極集電体
102B 負極活物質層
103 セパレータ
20 外装体
201 熱融着樹脂層
202 金属層
203 耐熱樹脂層
30 正極端子
31 負極端子
Claims (7)
- 正極活物質としてリチウム金属複合酸化物と、下記一般式(1)で表される炭素材料を含有することを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極。
一般式(1):
LiCx ・・・(1)
(上記一般式(1)においてx>12) - 前記炭素材料が層状炭素であるグラフェン、多層グラフェンもしくはグラファイトの少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
- 前記正極活物質の総質量に対する前記炭素材料の割合が0.1質量%~10質量%である請求項1乃至2のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池正極。
- 前記炭素材料は前記正極活物質粒子表面の少なくとも一部を被覆する被覆層として存在していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池正極。
- 前記正極活物質粒子の平均粒径(DA)に対する前記被覆層の平均厚み(DB)が0.001≦DB/DA≦0.5を満たすことを特徴とする請求項4に記載のリチウムイオン二次電池正極。
- 前記被覆層の平均厚みが10nm≦DB≦500nmである請求項4に記載のリチウムイオン二次電池正極。
- 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の正極と、負極と、セパレータと、電解質をと有するリチウムイオン二次電池。
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