JP7069876B2 - 熱可塑性樹脂組成物及び樹脂成形体 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物及び樹脂成形体 Download PDF

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Description

本発明は熱可塑性樹脂組成物に関する。詳しくは、本発明は、変性ポリエステル系熱可塑性エラストマーとエチレン-ビニルアルコール共重合体とを含む熱可塑性樹脂組成物と、この熱可塑性樹脂組成物からなる樹脂成形体、この樹脂成形体を延伸してなるシート状又はフィルム状の成形体、この熱可塑性樹脂組成物からなる層を含む多層積層体に関する。
一般にエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(以下、「EVOH樹脂」と記す)は優れた酸素非透過性および機械的強度等を有する成形加工が容易な熱可塑性樹脂であり、フィルム、シート、容器用材料、紡織繊維、パイプ等の多くの用途に使用されている。しかし、EVOH樹脂は柔軟性が乏しく、特に耐衝撃性が劣る。これらの問題点を解決するため、EVOH樹脂に他の異なる樹脂を配合して成形品の伸縮性および可撓性を向上させる試みがなされている
例えば、ポリエステル系熱可塑性エラストマーは柔軟性を有するため、加硫ゴム代替材料として広い用途への展開がなされており、成形加工も容易であり、低温、高温特性に優れていることから、特許文献1には、EVOH樹脂にポリエステル系熱可塑性エラストマーを不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性して得られる変性ポリエステル系熱可塑性エラストマーを配合した熱可塑性樹脂組成物が記載されており、この熱可塑性樹脂組成物を射出成形した平板は、高いガスバリア性を有し、且つ柔軟性や機械強度などが良好となることが記載されている。
また、特許文献2や特許文献3には、EVOH樹脂にポリエステル系熱可塑性エラストマーを不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性して得られる変性ポリエステル系熱可塑性エラストマーを配合した熱可塑性樹脂組成物を他の樹脂と共押出成形やインフレーション成形して多層積層体としたものは、これを延伸しても良好な外観を保つことが記載されている。
特開2004-002791号公報 特開2005-111925号公報 特開2005-111926号公報
特許文献1~3に記載されている、EVOH樹脂と変性ポリエステル系熱可塑性エラストマーとの熱可塑性樹脂組成物よりなる成形体は、他の樹脂をEVOH樹脂に配合することで引き起こされていたガスバリア性の悪化を防ぐことができ、しかも柔軟性に富むため各種成形方法による成形にも適している。
しかしながら、EVOH樹脂と変性ポリエステル系熱可塑性エラストマーとの熱可塑性樹脂組成物よりなるシートやフィルム状の成形体を延伸すると、延伸前のものよりも延伸後の成形体のガスバリア性が極端に悪化することが判明した。一般的にEVOH樹脂単独の成形体を延伸した場合でも、延伸後の成形体のガスバリア性は延伸前の成形体のガスバリア性よりも劣るが、特許文献1~3に記載のEVOH樹脂と変性ポリエステル系熱可塑性エラストマーとの熱可塑性樹脂組成物の場合は、その悪化の度合いが、EVOH樹脂単独の成形体よりも相当に大きいものである。
また、特許文献1~3に記載のEVOH樹脂と変性ポリエステル系熱可塑性エラストマーとの熱可塑性樹脂組成物よりなる成形体をインフレーション成形等の際に、ニップ部などの屈曲部分が白化する問題もあった。
したがって、本発明の目的は、変性ポリエステル系熱可塑性エラストマーとエチレン-ビニルアルコール共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物であって、高いガスバリア性を有し、適度な柔軟性を有し、延伸シートやフィルムにしてもガスバリア性が悪化せず、インフレーション成形にも最適な熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明者は鋭意検討を重ねた結果、延伸後の成形体のガスバリア性の悪化は、樹脂組成物内部にある空隙が延伸によって気泡となり、これが細孔となることが原因であることを突き止め、EVOH樹脂との配合に使用する変性ポリエステル系熱可塑性エラストマーの硬度と融点に着目し、ある特定の硬度と融点を満足する変性ポリエステル系熱可塑性エラストマーとEVOH樹脂とを配合することで、樹脂組成物内部に気泡を形成しにくいために、延伸した際も成形体内部に空隙が発生しにくくなり、延伸後の成形体のガスバリア性の極端な悪化を抑制でき、その上、材料の強度が上がり、ブロー成形等で生じる成形体の屈曲した際に、材料破壊が抑えられ、白化を抑制することができることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明の要旨は[1]~[11]に存する。
[1] 不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体によりポリエステル系熱可塑性エラストマー(a)を変性して得られる変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)と、エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、該変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)の示差走査熱量計による融解ピーク温度が170℃以上であり、且つ該変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)のJIS-D硬度が40以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
[2] ポリエステル系熱可塑性エラストマー(a)がポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3] ポリエステル系熱可塑性エラストマー(a)に含有されるポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有量が5~60質量%である[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4] ポリエステル系熱可塑性エラストマー(a)の変性がラジカル発生剤の存在下によって行われる[1]~[3]の何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5] ポリエステル系熱可塑性エラストマー(a)の変性において、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(a)100質量部に対し、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体0.01~30質量部とラジカル発生剤0.001~3質量部が使用される[4]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[6] 変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)の規格化された変性率が0.01~15である[1]~[5]の何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物(ここで規格化された変性率は、変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)の変性の程度を表すものであり、規格化された変性率は本明細書記載の方法で求められる。)。
[7] 下記(1)の条件を満たす[1]~[6]の何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
(1) 該熱可塑性樹脂組成物により成形された厚さ1000μm以下のフィルムについて、JIS K7162-2に準拠して測定した酸素ガス透過度が10cm/m・24hr・atm以下
[8] [1]~[7]の何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなる樹脂成形体。
[9] [8]に記載の樹脂成形体を延伸してなるシート状又はフィルム状の延伸成形体。
[10] [1]~[7]の何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなるA層と、当該A層の片面または両面に積層された他の熱可塑性樹脂組成物からなるB層とを含む多層積層体。
[11] 前記B層を構成する他の熱可塑性樹脂組成物がポリオレフィン用接着樹脂であり、さらにB層上にポリオレフィン系樹脂からなるC層が積層されている[10]に記載の多層積層体。
本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、延伸後の成形体においても高いガスバリア性を維持でき、且つ、インフレーション成形時の白化も抑制できることから、延伸により高品質のシートやフィルム状の成形体を得ることができ、インフレーション成形においてもその加工性や外観の劣化を効果的に抑制することができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明の実施態様の例(代表例)であり、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。また、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
[熱可塑性樹脂組成物]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体によりポリエステル系熱可塑性エラストマー(a)を変性して得られる変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)と、エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、該変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)の示差走査熱量計による融解ピーク温度が170℃以上であり、且つ該変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)のJIS-D硬度が40以上であることを特徴とする。
<変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)>
本発明に係る変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)(以下、「本発明の変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)」と称す場合がある。)は、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体によりポリエステル系熱可塑性エラストマー(a)を変性処理することにより得られる。変性に際しては、好ましくはラジカル発生剤を使用する。この変性反応に際しては、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(a)に不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体が付加するグラフト反応が主として起こるものと考えられるが、他にもポリエステル系熱可塑性エラストマー(a)の末端に不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体が付加する反応や、エステル交換反応、分解反応等も起こるものと考えられる。
ポリエステル系熱可塑性エラストマー(a)としては、ハードセグメントとして芳香族ポリエステル、ソフトセグメントとしてポリアルキレンエーテルグリコールや脂肪族ポリエステルを用いたものが好ましい。特にソフトセグメントとしてポリアルキレンエーテルグリコールを使用したポリエステルポリエーテルブロック共重合体が好ましく、中でも、ブロック共重合体中のポリアルキレンエーテルグリコール成分の含有量が5~60質量%、好ましくは5~50質量%、より好ましくは5~45質量%であることが好ましい。ブロック共重合体中のポリアルキレンエーテルグリコール成分の含有量が60質量%を超えると、硬度が発現しなかったり、射出成形品で表層剥離現象が起こることがあり、含有量が5質量%未満ではエラストマー性が低下し、柔軟性や耐衝撃性が不十分となったり、射出成形品で表層剥離現象が起こることがある。ポリアルキレンエーテルグリコール成分の含有量は、NMRを使用してその水素原子の化学シフトとその含有量に基づいて算出することができる。
上記ポリエステルポリエーテルブロック共重合体としては、i)炭素原子数2~12の脂肪族および/または脂環族ジオールと、ii)芳香族および/または脂肪族ジカルボン酸またはそのアルキルエステルと、iii)数平均分子量が400~6,000のポリアルキレンエーテルグリコールとを原料とし、エステル化反応またはエステル交換反応により得られたオリゴマーを重縮合させたものが好ましく使用される。
上記炭素原子数2~12の脂肪族および/または脂環族ジオールとしては、ポリエステルの原料、特にポリエステル系エラストマーの原料として一般に使用されているものが使用でき、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が例示され、中でも1,4-ブタンジオール、エチレングリコールが好ましく、1,4-ブタンジオールが特に好ましい。これらのジオールは1種または2種以上の混合物として使用することができる。
芳香族ジカルボン酸としては、ポリエステルの原料、特にポリエステル系エラストマーの原料として一般的に使用されているものが使用でき、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等が例示され、中でもテレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸が特に好ましい。これらの芳香族ジカルボン酸は1種または2種以上の混合物として使用することができる。
上記芳香族ジカルボン酸アルキルエステルとしては、上記の芳香族ジカルボン酸のジメチルエステルやジエチルエステル等が使用され、中でもジメチルテレフタレート及び2,6-ジメチルナフタレンジカルボキシレートが好ましい。
上記脂肪族ジカルボン酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸が好ましく、上記脂肪族ジカルボン酸アルキルエステルとしては、シクロヘキサンジカルボン酸のジメチルエステルやジエチルエステル等が好ましい。
また、上記の成分以外に3官能性アルコールやトリカルボン酸またはそのエステルを少量共重合させてもよく、更にアジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸またはそのジアルキルエステルも共重合成分として使用できる。
上記ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、数平均分子量が、通常400~6,000、好ましくは500~4,000、特に好ましくは600~3,000のものが使用される。数平均分子量が400未満では、共重合体のブロック性が不足し、6,000を超えるものは、系内での相分離が起きやすくポリマーの物性が低下する傾向がある。なお、ここで数平均分子量とはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されたものを言う。GPCのキャリブレーションとしては、例えば英国POLYMER LABORATORIES社のPOLYTETRAHYDROFURANキャリブレーションキットを使用することができる。
上記ポリアルキレンエーテルグリコールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2-及び/又は1,3-プロピレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンエーテル)グリコールなどが例示される。
ポリエステル系エラストマーの市販品としては、三菱ケミカル株式会社製「プリマロイ」、東洋紡績株式会社製「ペルプレン」、東レ・デュポン株式会社製「ハイトレル」等が例示される。
変性に用いる不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等の不飽和カルボン酸;コハク酸2-オクテン-1-イル無水物、コハク酸2-ドデセン-1-イル無水物、コハク酸2-オクタデセン-1-イル無水物、マレイン酸無水物、2,3-ジメチルマレイン酸無水物、ブロモマレイン酸無水物、ジクロロマレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、1-ブテン-3,4-ジカルボン酸無水物、1-シクロペンテン-1,2-ジカルボン酸無水物、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物、3,4,5,6,-テトラヒドロフタル酸無水物、exo-3,6-エポキシ-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、endo-ビシクロ[2.2.2]オクト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸無水物等の不飽和カルボン酸無水物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルへキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、グリシジル(メタ)アクリレート、マレイン酸ジメチル、マレイン酸(2-エチルへキシル)、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸エステル等が例示される。中でも、不飽和カルボン酸無水物が好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」の表現は「アクリル又はメタクリル」を意味する。
これらの不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体は、変性すべきポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する共重合体や、変性条件に応じて適宜選択することができ、また二種以上を併用してもよい。この不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体は有機溶剤等に溶解して添加してもよい。
変性に用いる不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体の配合量は、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(a)100質量部に対し好ましくは0.01~30質量部、より好ましくは0.05~5質量部、更に好ましくは0.1~1質量部である。不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体の配合量が0.01質量部以上であれば、充分な変性を行うことができ、得られた変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)とエチレン-ビニルアルコール共重合体(B)を配合して良好な相溶性を得ることができ、これを配合して得られる熱可塑性樹脂組成物の射出成形品の表面に表層剥離現象が現れることが防止される。不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体の配合量が30質量部以下であれば、生成する変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)の溶融時の粘度が抑制され、これとエチレン-ビニルアルコール共重合体(B)とを配合して得られる熱可塑性樹脂組成物の成形性が良好となる。
本発明において、変性を行うために使用されるラジカル発生剤としては、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、2,5-ジメチルへキサン-2,5-ジヒドロペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルオキシ)ヘキサン、3,5,5-トリメチルへキサノイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシベンゾエート、ベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジブチルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、過酸化カリウム、過酸化水素等の有機および無機過酸化物、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(イソブチルアミド)ジハライド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、アゾジ-tert-ブタン等のアゾ化合物、およびジクミル等の炭素ラジカル発生剤等が例示される。
上記のラジカル発生剤は、変性処理に使用するポリエステル系熱可塑性エラストマー(a)の種類、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体の種類および変性条件に応じて適宜選択することができ、二種以上を併用してもよい。ラジカル発生剤は有機溶剤等に溶解して添加することもできる。
変性に用いるラジカル発生剤の配合量は、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(a)100質量部に対し、好ましくは0.001~3質量部、より好ましくは0.005~0.5質量部、更に好ましくは0.01~0.2質量部、特に好ましくは0.01~0.1質量部である。ラジカル発生剤の配合量が0.001質量部以上であれば、変性が十分に起こり、得られた変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)とエチレン-ビニルアルコール共重合体(B)を配合した場合に十分な相溶性を得ることができ、得られる熱可塑性樹脂組成物の射出成形品の表面に層状剥離現象が現れることが防止される。ラジカル発生剤の配合量が3質量部以下であれば、生成する変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)の溶融時の粘度が抑制され、これとエチレン-ビニルアルコール共重合体(B)とを配合して得られる熱可塑性樹脂組成物の成形性が良好となる。
ポリエステル系熱可塑性エラストマー(a)と変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)とラジカル発生剤を使用して変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)を得るための変性方法としては、溶融混練反応法、溶液反応法、懸濁分散反応法などの公知の種々の反応方法を使用することができ、中でも溶融混練反応法が好ましい。
溶融混練反応法で変性を行なう場合、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等を使用して、所定の配合比でポリエステル系熱可塑性エラストマー(a)と、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体とラジカル発生剤を均一に混合した後、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、一軸または二軸等の多軸混練押出機等の通常の混練機を使用して混合物を溶融混練する。必要に応じ、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体とラジカル発生剤を有機溶剤に溶解して反応に供してもよい。
溶融混練は、樹脂が熱劣化しない様に、通常100℃~300℃、好ましくは120℃~280℃、特に好ましくは150℃~250℃の範囲で行う。
本発明の変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)のJIS-D硬度(JIS K6253に従って測定したデュロメータ タイプDによる硬度)は、40以上であることを特徴とし、好ましくは45以上であり、より好ましくは50以上である。変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)のJIS-D硬度が40未満であると、これを用いた熱可塑性樹脂組成物を延伸した際のガスバリア性が劣化したり、インフレーション成形した際にその成形体の屈曲部に白化が生じる恐れがある。
本発明の変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)の示差走査熱量計による融解ピーク温度は170℃以上であることを特徴とし、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上である。変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)の融解ピーク温度が170℃未満であると、これを用いた熱可塑性樹脂組成物を延伸した際のガスバリア性が劣化したり、インフレーション成形した際にその成形体の屈曲部に白化が生じる恐れがある。なお、変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)の融解ピーク温度の上限は、エチレン-ビニルアルコール共重合体の柔軟化の観点から効果が低下することが考えられることにより、通常220℃程度である。
本発明の変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)の変性の程度は、以下に説明する赤外吸収スペクトル法により求められ、下記式(1)によって算出される値(以下「規格化された変性率」と記す)として、好ましくは0.01~15、より好ましくは0.03~2.5、更に好ましくは0.1~2.0、特に好ましくは0.2~1.8である。規格化された変性率が0.01以上であれば、前述した表層剥離が起こり難く、15以下であれば機械的強度を維持することができる。
規格化された変性率 = A1786/(Ast×r) (1)
式(1)において、A1786は、変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)からなる厚さ20μmのフィルムについて1786cm-1の波数で測定したピーク強度であり、Astは、標準試料(ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有量が65質量%である飽和ポリエステル系エラストマー)からなる厚さ20μmのフィルムについて規準波数で測定したピーク強度である。規準波数としては、変性による影響を受けず、かつ、その近傍に重なり合う様な吸収ピークの無い波数を選択する。rは、変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)中のポリエステルセグメントのモル分率を、上記標準試料中のポリエステルセグメントのモル分率で除した値であり、標準試料で1となる。
具体的には、以下の方法で変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)の規格化された変性率の値を求める。すなわち、厚さ20μmのフィルム状の試料を100℃で15時間減圧乾燥して未反応物を除去した後、赤外吸収スペクトルを測定する。得られたスペクトル上で1786cm-1の波数に現れる酸無水物由来のカルボニル基の伸縮振動による吸収ピーク(1750~1820cm-1の範囲にある吸収帯の両側の山裾を結んだ接線をベースラインとする)のピーク高さを算出して「ピーク強度A1786」とする。一方、標準試料(ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有量が65質量%である飽和ポリエステル系エラストマー)からなる厚さ20μmのフィルムについて、同様に赤外線吸収スペクトルを測定する。得られたスペクトル上で、例えばベンゼン環を含む芳香族ポリエステル系エラストマーの場合、規準波数のピークとして872cm-1に現れるベンゼン環のC-Hの面外変角による吸収ピーク(850~900cm-1の範囲にある吸収帯の両側の山裾を結んだ接線をベースラインとする)を使用し、ピーク高さを算出して「ピーク強度Ast」とする。
得られたピーク強度A1786及びピーク強度Astから、式(1)に従って規格化された変性率を算出する。rは、上述の様に変性ポリエステル系エラストマー中のポリエステルセグメントのモル分率を上記標準試料中のポリエステルセグメントのモル分率で除した値であり、各試料のポリエステルセグメントのモル分率mrは、ポリエステルセグメント及びポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの重量分率(w1及びw2)と両セグメントを構成する単量体単位の分子量(e1及びe2)とから、下記式(2)によって求める。
mr=(w1/e1)/[(w1/e1)+(w2/e2)] (2)
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)の1種を含むものであってもよく、構成成分の種類や物性等の異なるものの2種以上を含むものであってもよい。
<エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)>
本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成するエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH樹脂)(b)は、通常、エチレン-酢酸ビニル共重合体を鹸化して得られる。EVOH樹脂(B)としては、エチレン含量が通常10~70モル%、好ましくは20~60モル%であり、酢酸ビニル成分の鹸化率が95モル%以上の共重合体が好適である。エチレン含量が10モル%以上であれば、高湿度状態でのガスバリア性が十分となりやすく、70モル%以下であれば十分なガスバリア性を得ることができる。また、鹸化度が95モル%以上であればガスバリア性、耐湿性および熱安定性を十分に得ることができる。
EVOH樹脂(B)のメルトフローレート(MFR)(JIS K7210、230℃、荷重2.16kg)は、0.5~100g/10分、特に1~60g/10分であるのが好ましい。MFRが0.5g/10分以上であれば、成形性に優れ、得られる成形体の外観が良好となりやすく、100g/10分以下であれば、十分なガスバリア性を得ることができる。
本発明の変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)はEVOH樹脂(B)の1種を含むものであってもよく、エチレン含量やMFR等の物性の異なるものの2種以上を含むものであってもよい。
<変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)とEVOH樹脂(B)の配合比率>
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれる変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)とEVOH樹脂(B)の含有量は、変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)とEVOH樹脂(B)との合計100質量%に対して、変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)の含有量が5~95質量%で、EVOH樹脂(B)の含有量が95~5質量%であることが好ましく、変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)の含有量が5~45質量%で、EVOH樹脂(B)の含有量が95~55質量%であることがより好ましく、変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)の含有量が5~30質量%で、EVOH樹脂(B)の含有量が95~70質量%であることが更に好ましい。
変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)とEVOH樹脂(B)とを上記範囲で含むことで、柔軟性、耐衝撃性およびガスバリア性すべてにバランス良く優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
EVOH樹脂(B)の含有量が少なく、変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)が多過ぎると、ガスバリア性が不十分となり、逆にEVOH樹脂(B)が多く、変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)が少な過ぎると柔軟性が得られず、耐衝撃性も低くなる。なお、上記のEVOH樹脂(B)の配合比率の範囲内において、さらに用途に応じてEVOH樹脂(B)の配合比率を選択することができる。例えば、柔軟性、高耐衝撃性および適度なガスバリア性を所望する場合には、変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)を比較的多く配合してもよい。
<その他の成分>
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、上記の変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)及びEVOH樹脂(B)以外に、本発明の目的・効果を損なわない範囲で、目的に応じて、他の樹脂成分やゴム成分、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ガラス繊維等のフィラー、パラフィンオイル等の可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、架橋剤、架橋助剤、着色剤、難燃剤、分散剤、帯電防止剤、防菌剤、蛍光増白剤等の任意の付加的配合材料を1種以上添加することができる。中でも、フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系、芳香族アミン系等の酸化防止剤を1種以上添加することが好ましい。
<熱可塑性樹脂組成物の製造方法>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、例えば上述のポリエステル系熱可塑性エラストマー(a)を変性する場合と同様に、変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)及びEVOH樹脂(B)、さらに必要に応じて付加的配合材料を所定の比率で配合した後、十分に混合し、次いで溶融混練することにより得られる。また、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(a)の変性に際して、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(a)と、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体とラジカル発生剤に加えてEVOH樹脂(B)を配合し、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(a)の変性により生成した変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)とEVOH樹脂(B)とから熱可塑性樹脂組成物の製造とを同時に行うこともできる。通常は、変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)をまず製造し、次いでこれをEVOH樹脂(B)と混練する方法が、より優れた特性を示す熱可塑性樹脂組成物を得ることができる観点から好ましい。
<熱可塑性樹脂組成物の物性>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は優れたガスバリア性を有する。特に、EVOH樹脂(B)の配合比率が、変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)とEVOH樹脂(B)との合計100質量%に対して70~95質量%においてガスバリア性がより優れたものとなる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物のガスバリア性は、本発明の熱可塑性樹脂組成物により成形された厚さ1000μm以下のフィルムについて、JIS K7162-2に準拠して後述の実施例に示す測定法で測定した酸素ガス透過度として、好ましくは10cm/m・24hr・atm以下、より好ましくは1cm/m・24hr・atm以下、特に好ましくは0.5cm/m・24hr・atm以下である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は優れた透明性を有する。特に、EVOH樹脂(B)の配合比率が、変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)とEVOH樹脂(B)との合計100質量%に対して70~95質量%において透明性がより優れたものとなる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の透明性は、本発明の熱可塑性樹脂組成物よりなる厚さ20μmのフィルムについてJIS K7105に準拠して測定したヘーズとして、好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下、特に好ましくは6%以下である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は優れた耐衝撃性を有する。特に、変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)の配合比率が変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)とEVOH樹脂(B)との合計100質量%に対して1~45質量%において耐衝撃性がより優れたものとなる。
[樹脂成形体・延伸成形体]
本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いて本発明の樹脂成形体を成形する方法には特に制限はなく、射出成形、押出成形、真空成形、中空成形等の常法に行って成形することができる。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物よりなる樹脂成形体は、これを更に延伸してシート状又はフィルム状の成形体としてもよく、この場合の延伸方法としても特に制限はなく、常法に従って行うことができる。
例えば、未延伸の本発明の樹脂成形体を冷却固化後、インライン、又はオフラインで80~200℃の延伸温度まで再加熱し、テンター、プラグおよび圧縮空気等を用い一軸方向、あるいは二軸方向に少なくとも面積比で4倍以上延伸を行い、一軸又は二軸延伸成形したフィルム、シート等の延伸成形体を得る方法が挙げられる。延伸倍率としては、面積比で通常4~50倍であり、好ましくは5~20倍である。延伸倍率が2倍未満では前述した延伸の効果は得られず、60倍を超えると成形時に破断が生じることがあるなど延伸成形体の強度が低下する傾向となる。
インフレーションフィルムを製造する場合は、インフレ同時二軸延伸法、Tダイフィルムの場合はテンター同時二軸延伸法、ロールおよびテンターに因る逐次二軸延伸法等の方法を用いることができる。
また、本発明の延伸成形体は必要に応じて、延伸後再加熱、すなわちヒートセットを行うことにより更に耐熱性を向上させ(ただし、収縮性はやや低下する)こともできる。また、本発明の延伸成形体と別途製造されたフィルム又はシートを積層して積層体とすることもできる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物から製造される樹脂成形体及び延伸成形体は、その優れたガスバリア性、透明性、耐衝撃性から、各種の工業用部品や包装材料として使用することができる。具体的には食品用包装容器や医療用包装容器、レトルト容器等に好ましく使用することができる。また、自動車内装部品、自動車外装部品、自動車機能部品、家電部品、電気機器、電子部品、電線、建材、スポーツ用品、日用品、繊維、チューブ等として使用することができる。
[多層積層体]
本発明の熱可塑性樹脂組成物を使用してフィルム、シート、ボトル、パイプ等を製造する場合、単独で使用することはもちろん、他の材料と複合化した多層積層体として使用してもよい。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、多層積層体の接着層としても使用することができる。多層積層体の接着層として使用する場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物からなるA層と、当該A層の片面または両面に積層された他の熱可塑性樹脂組成物からなるB層を含む多層積層体であることが好ましい。B層を構成する他の熱可塑性樹脂組成物としては、ポリエステル、もしくはこれを含有する熱可塑性樹脂組成物またはポリエステル系熱可塑性エラストマー樹脂、ポリオレフィン用接着樹脂、EVOH樹脂、もしくはEVOH樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物が例示される。
特に、B層を構成する他の熱可塑性樹脂組成物がポリエステル樹脂、好ましくはポリエチレンテレフタレート樹脂から成り、A層の両面にB層が積層されている構造を有する多層積層体は、優れた機能を有し、各種フィルム、シート、ボトル等に有用である。
上記B層を構成するポリエステル樹脂としては、一般にジカルボン酸又はその低級アルキルエステル、酸ハライド、無水物等の誘導体と、グリコールとを縮合させることにより製造された熱可塑性ポリエステルが挙げられる。
上記ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、p-カルボキシフェノ酢酸、p,p’-ジカルボキシジフェニル、p,p’-ジカルボキシジフェニルスルホン、p-カルボキシフェノキシ酢酸、p-カルボキシフェノキシプロピオン酸、p-カルボキシフェノキシ酪酸、p-カルボキシフェノキシ吉草酸、p-カルボキシフェノキシヘキサン酸、p,p’-ジカルボキシジフェニルメタン、p,p’-ジカルボキシジフェニルプロパン、p,p’-ジカルボキシジフェニルオクタン、3-アルキル-4-(β-カルボキシエトキシ)-安息香酸、2,6-ナフタリンジカルボン酸及び2,7-ナフタリンジカルボン酸などの芳香族および脂肪族ジカルボン酸が例示され、これらのジカルボン酸は2種以上混合して使用してもよく、中でもテレフタル酸が特に好ましい。
上記グリコールとしては、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,6-ヘキシレングリコール、1,10-デカメチレングリコール及び1,12-ドデカメチレングリコール等の2~12個の炭素原子を有する直鎖アルキレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコールが例示される。また、p-キシリレングリコール、ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、又はこれら化合物のアルキル置換誘導体などの芳香族グリコールによって、上記直鎖アルキレングリコールの一部または全部を置換してもよい。これらの中で好ましいグリコールは、炭素原子数2~4の直鎖アルキレングリコールである。
B層を構成するポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。このようなポリエステル樹脂の市販品としては、三菱ケミカル(株)製「ノバペックス」、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ノバドゥール」、ポリプラスチックス(株)製「ジュラネックス」、イーストマンケミカル(株)製「PET-G」等が例示される。
本発明の多層積層体は、本発明の熱可塑性樹脂組成物からなるA層の片面又は両面に、前述の本発明の変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)を含む熱可塑性樹脂組成物よりなるB層が積層されたものであってもよい。この場合、B層を構成する熱可塑性樹脂組成物は、EVOH樹脂(B)を含まないこと以外は本発明の熱可塑性樹脂組成物と同様の構成とすることができる。以下、この変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)を含みEVOH樹脂(B)を含まない熱可塑性樹脂組成物を「本発明の接着性熱可塑性樹脂組成物」と称す場合がある。
このような本発明の多層積層体は従来公知の種々の方法で製造することができる。例えば、A層を構成する本発明の熱可塑性樹脂組成物とB層を構成する他の熱可塑性樹脂組成物とを共押出する共押出成形法、本発明の熱可塑性樹脂組成物からなるシートやフィルム(A層)にB層を構成する他の熱可塑性樹脂組成物を押出ラミネートする方法、その逆に他の熱可塑性樹脂組成物からなるシートやフィルム(B層)にA層を構成する本発明の熱可塑性樹脂組成物を押出ラミネートする方法が挙げられる。
さらに、インフレーション成形法、ブロー成形法、回転成形法、プレス成形法、射出成形法(インサート射出成形法、二色射出成形法、コアバック射出成形法、サンドイッチ射出成形法、インジェクションプレス成形法)等の各種成形法を使用して本発明の多層積層体を製造することもできる。
本発明の多層積層体から製造される成形体は、例えば各種の工業用部品や包装材料として使用することができる。具体的には食品用包装容器や医療用包装容器、レトルト容器などに好ましく使用することができる。また、自動車内装部品、自動車外装部品、自動車機能部品、家電部品、電気機器、電子部品、電線、建材、スポーツ用品、日用品、繊維、延伸または未延伸フィルム、シート、ボトル、パイプ、チューブ等として使用することができる。
本発明の多層積層体を使用してフィルム、シート、ボトル、パイプ等を製造する場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物よりなるA層の片面または両面に積層されている本発明の接着性熱可塑性樹脂組成物からなるB層の上に基材樹脂からなるC層を積層してもよい。本発明の変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)を含む本発明の接着性熱可塑性樹脂組成物よりなるB層は、種々の樹脂に対し良好な接着性を示す。そのため、C層を構成する基材樹脂としては種々の樹脂が使用でき、ポリエステル、もしくはこれを含有する熱可塑性樹脂組成物またはポリエステル系エラストマー樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、EVOH樹脂、もしくはEVOH樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物が例示される。
特に、C層を構成する他の熱可塑性樹脂組成物がポリエステル樹脂、好ましくはポリエチレンテレフタレート樹脂からなる多層積層体は、優れた機能を有し、各種フィルム、シート、ボトル等に有用である。
上記C層を構成するポリエステル樹脂としては、前述のB層を構成するポリエステル樹脂として説明した熱可塑性ポリエステルが挙げられる。
また、B層の積層されていないA層表面にポリオレフィン用接着樹脂からなるD層が積層され、さらにD層上にポリオレフィン系樹脂からなるE層が積層されている多層積層体は優れた機能を有し、各種フィルム、シート、ボトル、パイプ等に有用である。特に、基材樹脂からなるC層/本発明の接着性熱可塑性樹脂組成物からなるB層/本発明の熱可塑性樹脂組成物からなるA層/ポリオレフィン用接着樹脂からなるD層/ポリオレフィン系樹脂からなるE層からなる5種5層の多層積層体は、上述の用途に好適に使用される。
上記D層を構成するポリオレフィン用接着樹脂は通常、変性ポリオレフィン樹脂にて構成される。かかる変性ポリオレフィン樹脂は、エチレン成分および/またはプロピレン成分を主たる構成成分としたポリオレフィン樹脂にα,β-不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体を共重合および/またはグラフト重合させて製造される。
上記のポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン-1共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-エチルアクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸ナトリウム共重合体などが例示される。
上記の共重合されるα,β-不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体としては、アクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸亜鉛、酢酸ビニル、グリシジルメタクリレート等が例示され、分子鎖中に40モル%以下の範囲で共重合されていてもよい。共重合変性ポリオレフィン樹脂としては、例えばエチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-エチルアクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸ナトリウム共重合体などが例示される。
上記のグラフトされるα,β-不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸あるいはこれらの酸無水物、または、これらの酸のエステル等が例示される。これらの変性用化合物の中では、特に無水マレイン酸が好適に使用される。また、グラフト量は、ポリオレフィン樹脂に対し0.01~25重量%、好ましくは0.05~1.5重量%の範囲から選択される。
グラフト反応は、常法に従い、例えばポリオレフィン樹脂とα,β-不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体とを樹脂温度150~300℃で溶融混合することにより行われる。グラフト反応に際しては、反応を効率よく行なわせるために、例えばα,α’-ビス-t-ブチルペルオキシ-p-ジイソプロピルベンゼン等の有機過酸化物を0.001~0.05重量%配合する。
上記E層を構成するポリオレフィン系樹脂としては、炭素数2~4のα-オレフィンであるエチレン、プロピレン、1-ブテンの単独あるいはこれらを主成分とする結晶性の重合体が例示される。これらのポリオレフィンとしては、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン及びポリ-1-ブテンが例示されるが、これらはいずれも単独重合体に限らず、それらオレフィンを主成分とする限り、他の炭素数2~20のα-オレフィンあるいは酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン等のビニル化合物との共重合体であってもよく、また無水マレイン酸、マレイン酸、アクリル酸などの不飽和カルボン酸あるいはその誘導体でグラフト変性されたグラフト共重合体でもよい。さらにこれらのポリオレフィンは混合物であってもよい。また、これらのポリオレフィン樹脂を架橋した架橋ポリオレフィン樹脂であってもよい。
前記ポリエチレンの具体例としては、例えば高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体などが例示される。これらの中では、LDPE、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体などが透明性、低温ヒートシール性に優れるので好ましく、とりわけ密度が0.910~0.960g/cmおよび融点が100~135℃の範囲のものが好ましい。なお、ポリエチレンのメルトフローレート(MFR)(JIS K2710、190℃、荷重2.16kg)は特に限定はされないが、成形性の点から、通常0.01~30g/10分、好ましくは0.1~10g/10分の範囲である。
前記ポリプロピレンの具体例としては、ポリプロピレン(プロピレンホモポリマー)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテンランダム共重合体およびプロピレン-1-ブテンランダム共重合体などのプロピレンランダムコポリマー(プロピレン含有量が通常90モル%以上、好ましくは95モル%以上)、プロピレン-エチレンブロック共重合体(エチレン含有量が通常5~30モル%)が例示される。これらの中で、透明性が優れる観点からホモポリマー及びランダムコポリマーが好ましく、特に融点が130~140℃のランダムコポリマーがヒートシール性に優れるので好ましい。なお、ポリプロピレンのメルトフローレート(MFR)(JIS K2710,230℃、荷重2.16kg)は特に限定はされないが、成形性の点から、通常0.5~30g/10分、好ましくは0.5~10g/10分の範囲である。
前記ポリ1-ブテンの具体例としては、1-ブテン単独重合体、1-ブテン-エチレン共重合体、1-ブテン-プロピレン共重合体および1-ブテン-4-メチル-1-ペンテン共重合体が例示される。なお、ポリ-1-ブテンのメルトフローレート(MFR)(JIS K2710、230℃、荷重2.16kg)は特に限定はされないが、成形性の点から、通常0.01~100g/10分、好ましくは0.03~30g/10分の範囲である。
上記のC層、D層およびE層を有する多層積層体を製造する方法としては、本発明の多層積層体を構成する本発明の熱可塑性樹脂組成物及び本発明の接着性熱可塑性樹脂組成物と他の熱可塑性樹脂組成物とを共押出する方法、本発明の多層積層体に基づくシートやフィルムに他の溶融状態の熱可塑性樹脂組成物を押出ラミネートする方法、その逆に他の熱可塑性樹脂組成物のシートやフィルムに本発明の溶融状態の多層積層体を押出ラミネートする方法が挙げられる。また、本発明の多層積層体のシートやフィルムに接着剤を使用して他の熱可塑性樹脂をドライラミネートしてもよい。
本発明の多層積層体は、種々の成形方法により、延伸積層体、チューブ、パイプ、ボトル等に成形することができる。以下に各成形体の製造に関し説明する。
延伸積層体の製造:
本発明の多層積層体を延伸して延伸積層体(以下、「本発明の延伸積層体」と称す場合がある。)とすることにより、B層(接着性層)のより優れた融着性を発揮することができる。延伸積層体を製造する方法としては、従来より公知の種々の方法を採用することができる。例えば、上記の様にして得られた未延伸の多層積層体(シート又はフィルム)を冷却固化後、インライン又はオフラインで60~160℃の延伸温度まで再加熱し、テンター、プラグ及び圧縮空気などを使用して、一軸方向または二軸方向に面積比で1.5倍以上の延伸を行い、一軸または二軸延伸成形したフィルム、カップ、ボトル等の成形体を得ることができる。延伸倍率としては、面積比で通常1.5~50倍、好ましくは1.5~20倍である。延伸倍率が1.5倍未満では、延伸による接着性層のより優れた融着性の効果は得られず、延伸倍率が50倍を越えると成形時に破断が生じることがあり、延伸積層体の強度が低下する傾向となる。
具体的には、インフレーションフィルムの場合はインフレ同時二軸延伸法などにより製造でき、Tダイフィルムの場合はテンター同時二軸延伸法、ロール及びテンターによる逐次二軸延伸法などにより製造できる。カップの製造の場合は、金型内で圧縮空気などのみによる圧空成形法、プラグと圧縮空気を併用するSPPF成形法などにより製造できる。
また、本発明の延伸積層体は必要に応じて、延伸後再加熱、すなわちヒートセットを行うことにより更に耐熱性が向上する(収縮性はやや低下する)。また、本発明の延伸積層体と別途製造されたフィルムを積層して積層体とすることもできる。
チューブの製造:
本発明の多層積層体を使用した多層チューブの成形方法としては、各層を構成する本発明の熱可塑性樹脂組成物及び本発明の接着性熱可塑性樹脂組成物と他の熱可塑性樹脂または樹脂組成物とを共押出する方法が挙げられる。上記方法により製造された多層チューブは、耐低温衝撃性、透明性、耐屈曲疲労性およびガスバリアー性に優れ、洗顔料、歯磨き粉、ハンドクリーム等の医療品または医薬部外品用チューブ、わさび、からし、生姜などの食料品用チューブとして使用することができる。
パイプの製造:
本発明の多層積層体を使用した多層パイプの成形方法としては、本発明の多層積層体を構成する本発明の熱可塑性樹脂組成物及び本発明の接着性熱可塑性樹脂組成物と他の熱可塑性樹脂組成物とを共押出する方法が挙げられる。上記方法により製造された多層パイプは、耐低温衝撃性、耐屈曲疲労性およびガスバリアー性に優れ、床暖房、給水給湯用、工業用パイプとして使用することができる。
ブロー成形によるボトル等の製造:
本発明の多層積層体を使用し、例えば、 本発明の多層積層体を使用し、例えば、B層/A層/B層の3層積層構造やC層/B層/A層/B層/C層の5層積層構造となるよう射出成形によってプリフォームに成形した後、延伸ブロー成形することによって、又は、押出成形によって成形したパリソンをブロー成形することによって、或いは、積層パイプを縦方向に延伸後、金型内で圧縮空気などにより横方向に延伸するパイプ延伸法によって、ボトルを製造することができる。得られた多層ボトルは、優れたガスバリア性、耐衝撃性、透明性を有し、炭酸飲料、アルコール飲料、醤油、ソース、みりん、ドレッシング等の液体調味料などの容器として使用することができる。更に、ヒートセットを施すことにより、果汁飲料、茶やミネラルウォーター等の飲料用容器として、好適に使用することができる。
以下、実施例を用いて本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。
[原材料]
実施例、比較例及び参考例で用いた樹脂組成物の原材料は次の通りである。
<変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)>
A-1:無水マレイン酸変性芳香族ポリエステル系熱可塑性エラストマー
三菱ケミカル(株)製「モディック GQ730」
A-2:無水マレイン酸変性芳香族ポリエステル系熱可塑性エラストマー
合成品
A-3:無水マレイン酸変性芳香族ポリエステル系熱可塑性エラストマー
三菱ケミカル(株)製「モディック GQ131」
A-4:無水マレイン酸変性芳香族ポリエステル系熱可塑性エラストマー
三菱ケミカル(株)製「モディック GQ430」
上記の無水マレ酸変性ポリエステル系熱可塑性エラストマーの物性を下記表1にまとめて示す。
Figure 0007069876000001
<エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)>
B-1:EVOH樹脂
日本合成化学工業株式会社製「ソアノールDC3203RB」
エチレン含量32モル%
MFR3.8g/10分(温度230℃、荷重2.16kg)
B-2:EVOH樹脂
株式会社クラレ製「エバールH171B」
エチレン含量38モル%
MFR3.5g/10分(温度230℃、荷重2.16kg)
[物性評価]
実施例、比較例及び参考例において、得られたフィルムの物性評価は、以下に示す方法によって行った。
(1)酸素ガス透過度
<樹脂組成物のフィルム成形>で成形したフィルム(延伸前)及び<延伸フィルムの成形>で得られた延伸フィルム(延伸後)について、JIS K7162-2に準拠し、MOCON社製「OX-TRAIN 2/21」を用い温度23℃、湿度50%RH、透過面積50cmまたは5cmの条件で測定した。尚、測定下限値(ND)は0.01cm/(m・24h・atm)である。
(2)フィルム折り曲げ時の白化の評価
<樹脂組成物のフィルム成形>で成形したフィルムを、縦:100mm、横:100mmに切り出し、縦横それぞれ50mmの位置で十字に折り曲げ白化の程度を目視で確認し、白化が見られないものを「○」、明らかに白化しているのものを「×」とした。
[実施例1]
<樹脂組成物のフィルム成形>
無水マレイン酸変性芳香族ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A-1)10質量部と、EVOH樹脂(B-1)90質量部とを、テクノベル社製の二軸押出し機「KZW15」(スクリュー径15mmφ、同方向2軸L/D=45)にて、設定温度220~240℃、回転数100~200rpmで押し出し、150mmφの冷却ロールにてロール温度40~60℃、ライン速度1~10m/minで引き取り、表2に示す厚さのフィルムを得た。
<延伸フィルムの成形>
上記で得られたフィルムについてテンター式の二軸延伸装置(東洋精機製)を用いて、縦×横の延伸倍率が3×3倍の二軸延伸を行い、表2に示す厚さの延伸フィルムを得た。延伸条件は、予熱温度80~180℃で、予熱時間10秒、延伸速度3~4m/minの設定で行った。
得られたフィルムの評価結果を表2に示す。
[実施例2、比較例1~3、参考例1,2]
樹脂組成物原料配合を表2に示す通り変更したこと以外は実施例1と同様にフィルム成形及び延伸を行った(ただし、比較例1,2ではフィルム成形のみ)。
得られたフィルムの評価結果を表2に示す。
Figure 0007069876000002
表2より次のことが分かる。
変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)として融解ピーク温度及びJIS-D硬度が低いものを用いた比較例1,2では、白化の問題がある。比較例3では延伸によりガスバリア性が著しく低下する。
これに対して、融解ピーク温度及びJIS-D硬度が本発明の規定を満たす変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)を用いた実施例1,2では、延伸後もガスバリア性に優れ、白化の問題もない。
上記の実施例では、押出フィルムについて白化の有無を評価したが、この押出フィルムについても、折り曲げたときに白化が見られないことから、インフレーション成形を行っても白化の問題は起こらないと考えられる。
なお、EVOH樹脂(B)のみを用いた参考例1,2は、ガスバリア性に優れ白化の問題もないが、EVOH樹脂は柔軟性に劣るものである。

Claims (10)

  1. 不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体によりポリエステル系熱可塑性エラストマー(a)を変性して得られる変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)と、エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、
    該変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)の示差走査熱量計による融解ピーク温度が170℃以上であり、且つ該変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)のJIS-D硬度が40以上であり、
    該不飽和カルボン酸の誘導体が、不飽和カルボン酸無水物及び/又は不飽和カルボン酸エステルであり、
    該熱可塑性樹脂組成物中の変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)とエチレン-ビニルアルコール共重合体(B)との合計100質量%に対して、変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A)の含有量が5~45質量%で、エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)の含有量が95~55質量%であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. ポリエステル系熱可塑性エラストマー(a)がポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. ポリエステル系熱可塑性エラストマー(a)に含有されるポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有量が5~60質量%である請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. ポリエステル系熱可塑性エラストマー(a)の変性がラジカル発生剤の存在下によって行われる請求項1~3の何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. ポリエステル系熱可塑性エラストマー(a)の変性において、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(a)100質量部に対し、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体0.01~30質量部とラジカル発生剤0.001~3質量部が使用される請求項4に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 下記(1)の条件を満たす請求項1~5の何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
    (1) 該熱可塑性樹脂組成物により成形された厚さ1000μm以下のフィルムについて、JIS K7162-2に準拠して測定した酸素ガス透過度が10c ・24hr・atm以下
  7. 請求項1~6の何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなる樹脂成形体。
  8. 請求項7に記載の樹脂成形体を延伸してなるシート状又はフィルム状の延伸成形体。
  9. 請求項1~6の何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなるA層と、当該A層の片面または両面に積層された他の熱可塑性樹脂組成物からなるB層とを含む多層積層体。
  10. 前記B層を構成する他の熱可塑性樹脂組成物がポリオレフィン用接着樹脂であり、さらにB層上にポリオレフィン系樹脂からなるC層が積層されている請求項9に記載の多層積層体。
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