JP7064083B2 - 撥水性再生セルロース繊維、その製造方法及びそれを含む繊維構造物 - Google Patents

撥水性再生セルロース繊維、その製造方法及びそれを含む繊維構造物 Download PDF

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Description

本発明は、撥水性を有する撥水性再生セルロース繊維、その製造方法及びそれを含む繊維構造物に関する。
生理用ナプキンや紙オムツ等の衛生材料のトップシートには、従来から、ポリエステル繊維等の撥水性を有する合成繊維が広く用いられていた。近年、生分解性を持った環境配慮素材の需要が強まってきている。
一方、レーヨン繊維等の再生セルロース繊維は生分解性を有するが、撥水性を有しないことから、撥水性を求める用途には向いていなかった。そこで、セルロース繊維に撥水性を付与する検討が行われている。例えば、特許文献1では、容器に水とセルロース繊維をいれ、イソシアネートとフッ素系樹脂を投入し、100~180℃に加熱して、フッ素系樹脂をセルロース繊維に架橋結合させることで、セルロース繊維に撥水性を付与することが提案されている。特許文献2では、セルロース繊維材料を水酸基と反応する化合物で処理し、その後フッ素系撥水剤で処理することで、セルロース繊維材料に撥水性を付与することが提案されている。
特開2002-266241号公報 特開2003-20570号公報
しかし、撥水加工時に130℃以上の温度で熱処理すると、セルロースが劣化する問題があった。また、環境面や安全性の観点から、フッ素フリーの撥水剤を用いることが求められていた。
本発明は、前記従来の問題を解決するため、非フッ素系撥水剤による耐久性の高い撥水性を有するとともに、セルロースの劣化が抑制された撥水性再生セルロース繊維、その製造方法及びそれを含む繊維構造物を提供する。
本発明は、撥水性を有する撥水性再生セルロース繊維であって、前記撥水性再生セルロース繊維は、カルボキシル基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる1以上の酸性基を含有する化合物を含み、繊維表面にはイソシアネート系化合物及び非フッ素系撥水剤が結合しており、前記撥水性再生セルロース繊維は、白色度がHw80以上であることを特徴とする撥水性再生セルロース繊維に関する。
本発明は、また、撥水性を有する撥水性再生セルロース繊維であって、前記撥水性再生セルロース繊維は、カルボキシル基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる1以上の酸性基を含有する化合物を含み、繊維表面にはイソシアネート系化合物及び非フッ素系撥水剤が結合しており、前記撥水性再生セルロース繊維は、JIS L 1015に準じて測定される湿潤時の見掛けヤング率に対する標準時の見掛けヤング率との下記式(1)で示される湿乾ヤング率比が12.0以上であることを特徴とする撥水性再生セルロース繊維に関する。
湿乾ヤング率比=(湿潤時の見掛けヤング率/標準時の見掛けヤング率)×100 (1)
本発明は、また、前記の撥水性再生セルロース繊維の製造方法であって、セルロースを含むビスコース原液に、カルボキシル基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる1以上の酸性基を含有する化合物を混合して紡糸用ビスコース液を調製し、前記紡糸用ビスコース液をノズルより押し出し、凝固再生させてビスコースレーヨン糸条とし、前記ビスコースレーヨン糸条をイソシアネート系化合物及び非フッ素系撥水剤を含む撥水加工用処理液で処理した後、繊維表面が40℃以上110℃以下の温度となるように熱処理することを特徴とする撥水性再生セルロース繊維の製造方法に関する。
本発明は、また、撥水性再生セルロース繊維を含む繊維構造物に関する。
本発明によれば、非フッ素系撥水剤による耐久性の高い撥水性を有するとともに、セルロースの劣化が抑制された撥水性再生セルロース繊維及びそれを含む繊維構造物を提供することができる。
本発明によれば、また、非フッ素系撥水剤による耐久性の高い撥水性を有するとともに、セルロースの劣化が抑制された撥水性再生セルロース繊維を得ることができる。
図1は不織布における水との接触角度を示す模式的説明図である。
本発明の発明者は、レーヨン繊維等の再生セルロース繊維にカルボキシル基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる1以上の酸性基を含有する化合物を含ませるとともに、イソシアネート系化合物及び非フッ素系撥水剤を含む撥水加工用処理液を、繊維表面が40℃以上110℃以下の低い温度となるように熱処理することにより、セルロースの劣化を抑制しつつ、再生セルロース繊維に耐久性の高い撥水性を付与し得ることを見出した。セルロースの劣化の抑制については、再生セルロース繊維の白色度又は後述する湿乾ヤング率比を測定することで確認することができる。再生セルロース繊維の白色度がHw80以上であると、セルロースの劣化が抑制されていることになる。或いは、再生セルロース繊維の湿乾ヤング率比が12.0以上であると、セルロースの劣化が抑制されていることになる。なお、繊維表面が40℃以上110℃以下の温度となるように熱処理するとは、熱処理機の設定温度ではなく、繊維表面に実際に加えられる温度(実温度ともいう。)が40℃以上110℃以下の温度条件で熱処理することをいう。実温度は、公知の接触式表面温度計、非接触式表面温度計、サーモグラフィーなどを用いて測定できる。
具体的には、レーヨン繊維等の再生セルロース繊維にカルボキシル基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる1以上の酸性基を含有する化合物を含ませ、イソシアネート系化合物及び非フッ素系撥水剤を含む撥水加工用処理液を用いることで、繊維表面および内部において、前記酸性基とイソシアネート系化合物が結合するともに、前記酸性基が酸触媒として働くことで、イソシアネート基と水が効率よく反応してアミンを生成する。生成したアミンが様々な副反応を起こすため、繊維表面が40℃以上110℃以下の低い温度となるような熱処理でも、非フッ素系撥水剤の繊維表面における定着性が向上すると推測される。例えば、カルボキシル基、イソシアネート基、及び非フッ素系撥水剤(例えば、アクリル系樹脂を主成分とする炭化水素系撥水剤等)の間では、下記のような反応が起きると予測される。
COOH+NCO+H2O→NH2(アミンが生成)
COOH+NCO→NHCO(アミドが生成)
NH2+NCO→NHCONH(ウレアが生成)
NH2+COO→NH(OH)CO
NH2+COOH→NHCO(アミドが生成)
前記撥水性再生セルロース繊維は、カルボキシル基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる1以上の酸性基を含有する化合物を含む。以下において、特に指定がない場合、「酸性基を含有する化合物」は、カルボキシル基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる1以上の酸性基を含有する化合物を意味する。再生セルロース繊維の作製時に、ビスコース原液に酸性基を含有する化合物を混合して調製した紡糸用ビスコース液を紡糸することで、繊維中に酸性基を含有する化合物を練り込むこと、酸性基を含有する化合物を含む水溶液等に再生セルロース繊維を浸漬して繊維中に酸性基を含有する化合物を含浸させること、酸性基を含有する化合物を含む水溶液等を再生セルロース繊維に噴霧や塗布して再生セルロース繊維に酸性基を含有する化合物を付着させること等により、再生セルロース繊維中に酸性基を含有する化合物を含ませることができる。その中でも、練り込みは、酸性基を含有する化合物が繊維の表面及び内部の全体に均一に混合されて分散していることから、好ましい。
前記カルボキシル基を含有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、再生セルロース繊維にカルボキシル基を付与しやすい観点から、ポリアクリル酸及びアクリル酸-マレイン酸共重合体からなる群から選ばれる1以上であることが好ましい。
前記ポリアクリル酸としては、例えば、ポリアクリル酸の未中和物、すなわち、ポリアクリル酸のカルボキシル基がH型になっているポリアクリル酸のH型を用いることが好ましい。なお、ポリアクリル酸のカルボキシル基のHの部位が部分的にNa等の金属イオン又はイオン性の化合物で置換されてもよい。以下において、特に指定がない場合、ポリアクリル酸はポリアクリル酸の未中和物を意味する。前記ポリアクリル酸としては、主体としてカルボキシル基が主鎖に付いた構造であり、高分子の分子量に対するカルボキシル基の寄与が最大の化合物を用いることができ、例えば理論カルボキシル基の量が72g/mol以上のポリアクリル酸を用いることが好ましい。
前記アクリル酸-マレイン酸共重合体は、アクリル酸及びアクリル酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種(以下において、アクリル酸系単量体とも記す。)を含むエチレン性不飽和単量体と、マレイン酸、マレイン酸塩及び無水マレイン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種(以下において、マレイン酸系単量体とも記す。)を含むエチレン性不飽和単量体の重合体であってもよく、アクリル酸及びアクリル酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種と、マレイン酸、マレイン酸塩及び無水マレイン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むエチレン性不飽和単量体の重合体であってもよい。また、繊維にカルボキシル基を付与しやすい観点から、アクリル酸-マレイン酸共重合体は、アクリル酸及びアクリル酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むエチレン性不飽和単量体と、マレイン酸及びマレイン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むエチレン性不飽和単量体の重合体、及び/又は、アクリル酸及びアクリル酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種と、マレイン酸及びマレイン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むエチレン性不飽和単量体の重合体であることが好ましい。また、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、前記アクリル酸-マレイン酸重合体は、アクリル酸系単量体、マレイン酸系単量体以外の他の単量体を共重合したものであってもよい。前記他の単量体は、例えば、不飽和モノカルボン酸系単量体であってもよい。
前記アクリル酸-マレイン酸共重合体は、重量平均分子量が5000以上500000以下であることが好ましく、6000以上250000以下であることがより好ましく、10000以上100000以下であることがさらに好ましく、30000以上80000以下であることが特に好ましい。重量平均分子量が上述した範囲内であると、再生セルロース中に練り込みやすい上、洗濯した場合や染色・洗濯した場合でもカルボキシル基を含有する化合物の脱落や変性が起こりにくい。
前記アクリル酸-マレイン酸共重合体は、マレイン酸を5質量%以上95質量%以下含むことが好ましく、20質量%以上80質量%以下含むことがより好ましく、30質量%以上70質量%以下含むことがさらに好ましく、40質量%以上60質量%以下含むことが特に好ましい。アクリル酸-マレイン酸共重合体におけるマレイン酸の含有量が前記範囲であると、再生セルロース繊維にカルボキシル基を付与しやすい。再生セルロース繊維中に、アクリル酸-マレイン酸共重合体を同質量含ませた場合、マレイン酸比率が高いアクリル酸-マレイン酸共重合体を含ませることが、H型カルボキシル基の量も多くなるため好ましい。
本発明において、アクリル酸-マレイン酸共重合体中のマレイン酸比率は、アクリル酸-マレイン酸共重合体中の有機物成分がアクリル酸とマレイン酸のみであると仮定し、下記のように測定算出することができる。
(1)試料(アクリル酸-マレイン酸共重合体塩を含む水溶液)4~5mL程度をガラス製のバイアル瓶に入れて、110℃で20時間加熱して乾燥させる。
(2)約50mg程度の乾燥試料を約0.7mL程度の重水に溶解する。
(3)試料の重水溶液に対してFT-NMR装置(日本電子株式会社製、JMTC-300/54/SS)を用いて1H-NMR分析を行い、高分子主鎖中のメチレン基炭素とメチン基炭素の存在比率から、アクリル酸成分(A)とマレイン酸成分(M)の組成比を求める。測定回数は16回とし、平均値を求める。
前記スルホン酸基を含む化合物としては、特に限定されないが、例えば、ナフタリンスルホン酸塩、ポリスチレンスルホン酸塩、フェノールスルホン酸塩、ジヒドロキシジフェニルスルホン、ヒドロキシフェニルスルホンのホルマリン縮合物等を用いることができる。
前記撥水性再生セルロース繊維において、前記カルボキシル基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる1以上の酸性基を含有する化合物の含有量は、例えば、セルロース100質量%に対して1質量%以上35質量%以下であることが好ましく、3質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上25質量%以下であることがさらに好ましい。前記撥水性再生セルロース繊維において、前記カルボキシル基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる1以上の酸性基を含有する化合物の含有量がセルロース100質量%に対して1質量%未満では、酸性基による効果が発揮しにくい傾向があり、35質量%を超えると、繊維強度が低下するため細繊化できない恐れがある。
前記撥水性再生セルロース繊維において、カルボキシル基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる1以上の酸性基の総量は、好ましくは0.30mmol/g以上1.60mmol/g以下であり、より好ましくは0.35mmol/g以上1.50mmol/g以下であり、さらに好ましくは0.40mmol/g以上1.40mmol/g以下である。カルボキシル基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる1以上の酸性基の総量が上述した範囲内であると、酸性基による効果が発揮しやすい。前記撥水性再生セルロース繊維において、酸性基は、上述したとおり、イソシアネート系化合物が結合し、繊維表面が40℃以上110℃以下の低い温度となるような熱処理でも、非フッ素系撥水剤の繊維表面の定着性を向上させるとともに、再生セルロース繊維にアンモニア消臭性及びpH緩衝性を付与する効果を発揮する。本発明において、カルボキシル基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる1以上の酸性基の総量は、後述するとおりに測定算出する。
前記非フッ素系撥水剤としては、特に限定されないが、例えば、炭化水素系撥水剤が好ましい。炭化水素系撥水剤としては、例えば、エステル結合を介して存在する炭化水素基の炭素数が12以上の(メタ)アクリル酸エステルを単量体の基本単位として含むポリマーからなる炭化水素系撥水剤を用いることが好ましい。前記炭化水素基の炭素数は、24以下であることがより好ましく、21以下であることがさらに好ましい。前記炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、飽和炭化水素であっても不飽和炭化水素であってもよく、更には脂環式又は芳香族の環状を有していてもよい。これらの中でも、直鎖状であるものが好ましく、直鎖状のアルキル基であるものがより好ましい。本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを意味する。
前記の(メタ)アクリル酸エステル単量体は、前記ポリマーを構成する単量体単位の全量に対して80質量%以上100質量%以下であることが好ましい。また、前記炭化水素系撥水剤の重量平均分子量は10万以上であることが好ましく、50万以上であることがより好ましい。前記炭化水素系撥水剤は、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの共重合体であってもよい。
前記炭化水素系撥水剤としては、炭化水素系撥水剤粒子が水中に分散した撥水剤組成物として用いることができる。前記撥水剤組成物は、界面活性剤、有機溶剤を含んでもよい。このような撥水剤組成物としては、例えば、ネオシードNRシリーズ(日華化学株式会社製)等の市販品を用いてもよい。
前記撥水性再生セルロース繊維において、前記非フッ素系撥水剤の付着量は、例えば、セルロース100質量%に対して0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上8質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以上6質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以上2質量%以下であることがさらにより好ましい。前記非フッ素系撥水剤の付着量が上記範囲内であると、撥水性が良好になるとともに、繊維が剛直になりにくい。
前記非フッ素系撥水剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を適宜に組み合わせて用いても良い。
前記イソシアネート系化合物としては、例えば、イソシアネート基を有する化合物及びブロックドイソシアネート基を有する化合物等の架橋剤を用いることができる。前記イソシアネート系化合物は、
イソシアネート基を有する化合物としては、ブチルイソシアネート、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ナフタレンイソシアネート等のモノイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート及びこれらのイソシアヌレート環である三量体や、トリメチロールプロパンアダクト体が挙げられる。
ブロックドイソシアネート基を有する化合物としては、上記イソシアネート基を有する化合物をブロック化剤でイソシアネート基を保護した化合物が挙げられる。このとき用いられるブロック化剤としては、2級又は3級アルコール類、活性メチレン化合物、フェノール類、オキシム類、ラクタム類等の有機系ブロック化剤や、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム等の重亜硫酸塩等が挙げられる。ブロックドイソシアネート基は、反応性の高いイソシアネート基がマスキングされており、通常120~180℃の熱処理によりブロックが解離するが、本発明においては、セルロース中にカルボキシル基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる1以上の酸性基を有するので、繊維表面が40℃以上110℃以下の低温でブロックが解離すると推定される。よって、ブロックドイソシアネート基は、前記撥水性再生セルロース繊維の表面において、ブロックが解離された状態で存在する。
前記撥水性再生セルロース繊維において、前記イソシアネート系化合物の付着量は、例えば、セルロース100質量%に対して0.010質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.020質量%以上3.0質量%以下であることがより好ましく、0.03質量%以上2.0質量%以下であることがさらに好ましく、0.05質量%以上1.0質量%以下であることがさらにより好ましい。前記非フッ素系撥水剤の付着量が上記範囲内であると、撥水性の耐久性(以下において、耐久撥水性とも記す。)が良好になるとともに、繊維が剛直になりにくい。
前記イソシアネート系化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を適宜に組み合わせて用いても良い。
前記非フッ素系撥水剤と前記イソシアネート系化合物の質量比(非フッ素系撥水剤:イソシアネート系化合物)は、特に限定されないが、例えば、撥水性及びその耐久性を向上させる観点から、3:1以上7:1以下であることが好ましく、4:1以上6:1以下であることがより好ましい。
前記撥水性再生セルロース繊維は、特に限定されないが、例えば、セルロースを含むビスコース原液(原料ビスコース)に、カルボキシル基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる1以上の酸性基を含有する化合物を混合して紡糸用ビスコース液を調製し、前記紡糸用ビスコース液をノズルより押し出し、凝固再生させてビスコースレーヨン糸条とし、前記ビスコースレーヨン糸条をイソシアネート系化合物及び非フッ素系撥水剤を含む撥水加工用処理液で処理した後、繊維表面が40℃以上110℃以下の温度となるように熱処理することで作製することができる。
原料ビスコースは、例えば、セルロースを7質量%以上10質量%以下、水酸化ナトリウムを5質量%以上8質量%以下、二硫化炭素を2質量%以上3.5質量%以下含んでもよい。このとき、必要に応じて、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、二酸化チタン等の添加剤を使用することもできる。原料ビスコースの温度は18℃以上23℃以下に保持するのが好ましい。
カルボキシル基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる1以上の酸性基を含有する化合物の添加量は、原料ビスコース中のセルロース100質量%に対して1質量%以上35質量%以下であることが好ましく、3質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上25質量%以下であることがさらに好ましい。上述した範囲内であると、繊維強度を高くしつつ、カルボキシル基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる1以上の酸性基を含有する化合物を繊維に効果的に練り込むことができる。
前記ビスコースレーヨン糸条は、例えば通常の円形ノズルを用いて製造することができる。紡糸ノズルとしては、目的とする生産量にもよるが、直径0.05mm以上0.12mm以下であり、ホール数が1000以上20000以下である円形ノズルを用いることが好ましい。また、異型断面のノズルを使用してもよい。前記紡糸ノズルを用いて、前記紡糸用ビスコース液を紡糸浴中に押し出して紡糸し、凝固再生させる。紡糸速度は30m/分以上80m/分以下の範囲が好ましい。また、延伸率は39%以上55%以下が好ましい。ここで延伸率とは、延伸前のスライバー速度を100としたとき、延伸後のスライバー速度をどこまで速くしたかを示すものである。倍率で示すと、延伸前が1、延伸後は1.39倍以上1.55倍以下となる。
紡糸浴(ミューラー浴)としては、例えば、硫酸を95g/L以上130g/L以下、硫酸亜鉛を10g/L以上17g/L以下、硫酸ナトリウム(芒硝)を290g/L以上370g/L以下含む強酸性浴を用いることが好ましい。より好ましい硫酸濃度は、95g/L以上120g/L以下である。
前記のようにして得られたビスコースレーヨン糸条(再生セルロース繊維)を所定の長さにカットし、通常、精練処理を行う。精練工程は、一般的に、熱水処理、水洗、水硫化処理(脱硫)、漂白、酸洗い、及び水洗の順で行うことができる。なお、漂白、及び酸洗いは省略してもよい。
必要に応じて、精練工程後のレーヨン繊維糸条を、pH調整処理し、繊維のpHを8.0以下に調整してもよい。pH調整処理は、pHが6.0以下の緩衝液に繊維を浸漬することで行うことができる。浸漬時の浴比は、特に限定されないが、1:10以上1:30以下であることが好ましく、より好ましくは1:15以上1:25以下である。また、浸漬時間は、特に限定されないが、0.5分以上50分以下であることが好ましく、より好ましくは1分以上20分以下である。前記pH調整用緩衝液としては、特に限定されないが、例えば、酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液等一般的な緩衝溶液を使用することが可能であるが、緩衝溶液中にナトリウムを含んでいることが望ましい。pH調整用緩衝液に浸漬した後、水洗を施し、乾燥処理してもよい。
前記再生セルロース繊維(撥水加工の前)において、H型カルボキシル基及び/又はH型スルホン酸基の量は、好ましくは0.20mmol以上1.60mmol/g以下であり、より好ましくは0.30mmol/g以上1.50mmol/g以下であり、さらに好ましくは0.35mmol/g以上1.40mmol/g以下である。また、上記再生セルロース繊維において、塩型カルボキシル基及び/又は塩型スルホン酸基の量は、好ましくは1.0mmol/g以下であり、より好ましくは0.35mmol/g以下であり、さらに好ましくは0.015mmol/g以上0.20mmol/g以下である。
前記再生セルロース繊維(撥水加工の前)において、カルボキシル基及び/又はスルホン酸基の総量に対するH型カルボキシル基及び/又はH型スルホン酸基の量の割合は、45%以上100%以下であることが好ましく、より好ましくは80%以上98%以下であり、さらに好ましくは90%以上95%以下である。H型カルボキシル基及び/又はH型スルホン酸基の量の割合が上述した範囲内であると、後述する撥水加工工程において、カルボキシル基及び/又はスルホン酸基とイソシアネート基が結合しやすいうえ、カルボキシル基及び/又はスルホン酸基が酸触媒として働き、イソシアネート基と水が効率よく反応して生成したアミンが様々な副反応を起こしやすくなり、耐久撥水性を高めることができる。
精練工程の後に、撥水加工を行う。まずは、前記ビスコースレーヨン糸条をイソシアネート系化合物及び非フッ素系撥水剤を含む撥水加工用処理液で処理して、イソシアネート系化合物及び非フッ素系撥水剤を付着させる。撥水加工用処理液による処理方法は特に限定されず、例えば、浸漬、噴霧、シャワー塗布等の加工方法が挙げられる。前記撥水加工用処理液による処理は、イソシアネート系化合物及び非フッ素系撥水剤を繊維へ付着させやすい観点から、前記ビスコースレーヨン糸条の水分率が100質量%以上180質量%以下の条件で行うことが好ましく、水分率が120質量%以上150質量%以下の条件で行うことがより好ましい。
前記撥水加工用処理液において、前記非フッ素系撥水剤と前記イソシアネート系化合物は水などの溶媒に分散されている。処理液に占める前記非フッ素系撥水剤の濃度は、特に限定されないが、0.15質量%以上40質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、0.35質量%以上35質量%以下である。処理液の濃度が上記範囲内にあると、非フッ素系撥水剤とイソシアネート系化合物の付着量が調整しやすいこと、及び熱処理時に水など溶媒を蒸発させる際に繊維表面の温度を低温に調整しやすく、好ましい。
前記非フッ素系撥水剤の使用量は、要求される撥水性の度合いに応じて適宜調整可能であるが、再生セルロース繊維100質量%に対して、非フッ素系撥水剤(撥水剤として、撥水剤組成物を用いた場合でも、非フッ素系撥水剤のみ)が0.1質量%以上10質量%以下となるように調整することが好ましく、0.2質量%以上8.0質量%以下となるように調整することがより好ましい。非フッ素系撥水剤の付着量が上述した範囲内であると、撥水性を付与しやすいとともに再生セルロース繊維の柔らかさを保持することができる。
前記イソシアネート系化合物(例えば、イソシアネート基を有する化合物及びブロックドイソシアネート基を有する化合物等の架橋剤)の使用量は、特に限定されないが、再生セルロース繊維の柔らかさを保持しやすい観点から、再生セルロース繊維100質量%に対して、0.010質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以上3.0質量%以下であることがより好ましい。
前記撥水加工用処理液において、特に限定されないが、耐久撥水性を高めるとともに、再生セルロース繊維の柔らかさを保持する観点から、前記非フッ素系撥水剤と前記イソシアネート系化合物の質量比(非フッ素系撥水剤:イソシアネート系化合物)は、例えば、3:1以上7:1以下であることが好ましく、4:1以上6:1以下であることがより好ましい。
次に、繊維表面が40℃以上110℃以下の温度となるように熱処理する。熱処理の温度(実温度)におけるより好ましい実温度の下限は、繊維表面が50℃以上であり、さらに好ましい実温度の下限は、繊維表面が60℃以上である。より好ましい実温度の上限は、繊維表面が100℃未満であり、さらに好ましくは95℃以下であり、さらにより好ましくは90℃以下である。熱処理温度が上述した範囲内であると、イソシアネート系化合物及び非フッ素系撥水剤を繊維に強固に結合させるとともに、繊維が黄変する等の熱による繊維の変質が抑えられる。前記撥水加工用処理液が水分を含む場合は、水を除去するために行う乾燥処理を熱処理とすることができる。
撥水加工の後、撥水性が損なわない程度で必要に応じて油剤を付与してもよい。また、前記撥水性再生セルロース繊維は、染色してもよい。染色は、特に限定されず、例えば、一般的なセルロース繊維の反応染色方法やカチオン染色方法で行うことができる。
前記撥水性再生セルロース繊維は、特に限定されないが、例えば、単繊維繊度が0.3dtex以上8.0dtex以下であることが好ましい。より好ましくは0.6dtex以上6.0dtex以下であり、さらに好ましくは0.7dtex以上3.6dtex以下である。単繊維繊度が0.3dtex未満であると、延伸時に単繊維切れが発生しやすい傾向にある。単繊維繊度が8.0dtexを越えると、繊維の再生状態が不良になりやすく、繊維の色相等が悪くなる場合がある。
前記撥水性再生セルロース繊維は、白色度がHw80以上であり、セルロースの風合いを保持する観点から、Hw80以上Hw90以下であることが好ましい。一般の再生セルロース繊維の場合、撥水加工を行う場合、120℃以上、撥水耐久性を向上させるには170℃以上の条件下で架橋剤を反応させる必要があり、高温に晒すことにより白色度が著しく低下する(Hw80未満)。本発明では、特定の酸性基を含む再生セルロースを用いるので、セルロースの劣化を抑制することができ、その結果、白色度がほぼ低下しない傾向にある。
前記撥水性再生セルロース繊維は、JIS L 1015に準じて測定される標準時の引張強さ(以下、乾強度ともいう。)は1.5cN/dtex以上3.0cN/dtex以下であることが好ましい。より好ましくは1.7cN/dtex以上2.7cN/dtex以下である。湿潤時の引張強さ(以下、湿強度ともいう。)で0.6cN/dtex以上2.0cN/dtex以下であることが好ましい。より好ましくは0.8cN/dtex以上1.8cN/dtex以下である。
前記撥水性再生セルロース繊維は、JIS L 1015に準じて測定される標準時の伸び率(以下、乾伸度ともいう。)は15%以上25%以下であることが好ましい。より好ましくは16%以上24%以下である。湿潤時の伸び率(以下、湿伸度ともいう。)で15%以上40%以下であることが好ましい。より好ましくは18%以上35%以下である。
引張強さ及び伸び率が上記範囲内にあると、紡糸性が良好で、且つ製品強度が良好になりやすい。
一般の再生セルロース繊維では、撥水加工を行う場合、120℃以上、撥水耐久性を向上させるには170℃以上の条件下で架橋剤を反応させる必要があり、高温に晒すことにより撥水剤のフィルム化および架橋結合が強固に起こるので、標準時(乾燥状態)では繊維全体の剛直性や強度は増すものの、熱によるセルロースの非晶部分等の劣化によりセルロース自体の強度は低下している。そのため、湿潤時のように、水による膨潤や非晶部分の水素結合の切断等によりセルロース自体の強度が低下するのに加えて、熱による劣化の影響により湿強度が著しく低下する傾向にある。本発明においては、セルロース中にカルボキシル基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる1以上の酸性基を有しており、100℃以下の低温で所定の撥水加工ができるので、架橋結合により繊維の剛直性や強度が増す一方、セルロース自体への熱によるダメージが少なく、湿強度の低下が少ない傾向にある。
前記撥水性再生セルロース繊維は、JIS L 1015に準じて測定される標準時の見掛けヤング率(以下、乾ヤング率(DY)ともいう。)は3500MPa以上8500MPa以下であることが好ましい。より好ましくは4000MPa以上8000MPa以下である。湿潤時の見掛けヤング率(以下、湿ヤング率(WY)ともいう。)は800MPa以上1300MPa以下であることが好ましい。より好ましくは900MPa以上1200MPa以下である。見掛けヤング率が上記範囲内にあると、繊維自体の柔らかさを保持しつつ適度なコシを繊維に付与することができる。
見掛けヤング率における湿潤時/標準時(湿乾)の比率がセルロース自体の劣化を抑制しつつ撥水剤を強固に結合させるファクターとして表され、下記式で示される。
湿乾ヤング率比=(WY/DY)×100 (1)
見掛けヤング率は、繊維の初期の引張に対する剛直さを示すのであり、セルロースそのものと、架橋結合による撥水剤の強度が相俟って乾ヤング率(DY)は大きくなる傾向にあるが、湿ヤング率(WY)はセルロースの水による膨潤や非晶部分の水素結合の切断等により初期の引張に対する剛直性が低下するとともに、熱による非晶部分の劣化の影響が相俟って小さくなる傾向にある。よって、本発明のように、セルロースの劣化を抑制することにより、WYの低下が抑制される結果、WY/DYは高くなる傾向にある。WY/DYは、12.0以上であることが好ましい。より好ましくは、12.5以上である。
前記撥水性再生セルロース繊維は、耐久撥水性に優れる観点から、撥水性再生セルロース繊維100質量%からなる水流交絡不織布の水との接触角度が65度以上であることが好ましく、70度以上であることがより好ましく、75度以上であることがさらに好ましく、80度以上であることがさらにより好ましい。
前記撥水性再生セルロース繊維は、消臭性に優れる観点から、好ましくはアンモニア消臭率が70%以上であり、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、さらにより好ましくは95%以上である。本発明において、アンモニア消臭率とは、一般社団法人繊維評価技術協議会(JTETC)のSEK繊維製品認定基準(平成30年4月1日改訂版)で定めている測定方法により測定するアンモニア減少率をいう。
前記撥水性再生セルロース繊維は、pH緩衝性に優れる観点から、pH4~9の範囲でpH緩衝性を有することが好ましく、pH4~10の範囲でpH緩衝性を有することがより好ましい。
前記撥水性再生セルロース繊維は、長繊維状又は短繊維状の形態で提供され、繊維構造物を形成することができる。前記長繊維状としては、例えば、トウ、フィラメント、不織布等が挙げられ、前記短繊維状としては、例えば、湿式抄紙用原綿、エアレイド不織布用原綿、カード用原綿等が挙げられる。
前記繊維構造物は、特に限定されないが、前記撥水性再生セルロース繊維を10質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは20質量%以上50質量%以下含み、さらに好ましくは25質量%以上40質量%以下含む。撥水性再生セルロース繊維の含有率が低いと該繊維による撥水性、アンモニア消臭性及びpH緩衝性等の性能が発揮されにくくなり、撥水性再生セルロース繊維の含有率が高いとレーヨンの風合いが前面に出ることで、製品によってはそのドレープ性により繊維集合体の張りが損なわれてしまう恐れがある。
前記繊維構造物は、前記撥水性再生セルロース繊維を含むことで、撥水性を発揮する。前記繊維構造物を熱処理することで、撥水性再生セルロース繊維の撥水性をより向上させ、ひいては繊維構造物の撥水性をより向上させることができる。
前記繊維構造物は、特に限定されないが、例えば、トウ、フィラメント、紡績糸、中綿(詰め綿)、紙、不織布、織物、編物等が挙げられ、紡績糸、不織布、織物又は編物であることが好ましく、編物、織物及び不織布からなる群から選ばれる一種の布帛であることがより好ましい。
前記繊維構造物が織物や編物である場合、前記撥水性再生セルロース繊維のみで構成されていてもよく、他の繊維を含んでもよい。前記再生セルロース繊維以外の他の再生セルロース繊維、天然繊維、合繊繊維等が挙げられる。他の再生セルロース繊維としては、例えば、レーヨン、キュプラ、溶剤紡糸セルロース、ポリノジック等が挙げられる。天然繊維としては、例えば、コットン、麻、ウール、シルク、パルプ等が挙げられる。合成繊維としては、例えば、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維等が挙げられる。前記合成繊維は、単一繊維であってもよく、複合繊維であってもよい。織物や編物の組織は特に限定されない。例えば、編物では、丸編み、横編み、経編み(トリコット)が、織物では、平織、綾織、繻子織が、本発明の風合い効果がよく発揮できることから好ましい繊維構造物の形態である。
前記繊維構造物が不織布である場合、前記撥水性再生セルロース繊維のみで構成されていてもよく、他の繊維と混綿してもよい。前記再生セルロース繊維以外の他の再生セルロース繊維、天然繊維、合繊繊維等が挙げられる。他の再生セルロース繊維としては、例えば、レーヨン、キュプラ、溶剤紡糸セルロース、ポリノジック等が挙げられる。天然繊維としては、例えば、コットン、麻、ウール、シルク、パルプ等が挙げられる。合成繊維としては、例えば、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維等が挙げられる。前記合成繊維は、単一繊維であってもよく、複合繊維であってもよい。不織布の形態としては、例えば、湿式不織布(湿式抄紙)、エアレイド不織布、水流交絡不織布、ニードルパンチ不織布、熱接着不織布(エアスルー、熱ロール、エンボスロールなど)等が挙げられる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
[紡糸用ビスコース液の調製]
アクリル酸-マレイン酸共重合体塩の水溶液(株式会社日本触媒製の「アクアリック TL400」、重量平均分子量が50000のアクリル酸-マレイン酸共重合体ナトリウムを40質量%含む水溶液、粘度:1990mPa・s、アクリル酸-マレイン酸共重合体ナトリウム中のマレイン酸の含有量が45質量%)を、アクリル酸-マレイン酸共重合体塩がセルロース100質量%に対して12質量%になるように、原料ビスコースへ添加し、混合機にて攪拌混合を行い、紡糸用ビスコース液を調製した。温度は20℃に保った。原料ビスコースは、セルロース8.5質量%、水酸化ナトリウム5.7質量%、二硫化炭素2.8質量%を含んでいた。なお、実施例及び比較例において、粘度は、東京計器株式会社製のB型粘度計を用い、20℃で測定した。また、カルボキシル基を含有する化合物の重量平均分子量は、後述するとおりに測定算出した。
[紡糸工程]
得られた紡糸用ビスコース液を、2浴緊張紡糸法により、紡糸速度60m/分、延伸率50%で紡糸して、繊度1.4dtexのビスコースレーヨンの糸条を得た。第1浴(紡糸浴)としては、硫酸100g/L、硫酸亜鉛15g/L、硫酸ナトリウム350g/Lを含むミューラー浴(50℃)を用いた。また、ビスコースを吐出する紡糸口金には、円形ノズル(孔径0.06mm、ホール数4000)を用いた。
[精練工程]
前記で得られたビスコースレーヨンの糸条を、繊維長38mmにカットし、熱水処理後に水洗を行い、水硫化ソーダをシャワーして脱硫を実施した。得られた処理綿を再度水洗し、次亜塩素酸ソーダで漂白し、酸洗い後水洗した。その後、圧縮ローラーで繊維を絞り、水分率が130%になるようにした。前記再生セルロース繊維(撥水加工の前)において、カルボキシル基の総量に対するH型カルボキシル基の割合は、93%であった。また、H型カルボキシル基量は、1.00mmol/gであった。
[撥水加工]
まず、非フッ素系撥水剤として炭化水素系撥水剤組成物(日華化学株式会社製「ネオシードNR-158」)を用い、イソシアネート系化合物としてブロックイソシアネート系架橋剤(日華化学株式会社製「NKアシストNY-30」、固形分濃度40質量%)を用い、撥水剤(撥水剤粒子):架橋剤(固形分)の質量比が5:1になるように混合して撥水加工用処理液を得た。次に、撥水加工用処理液(50℃)中に上記で得られた水分率が130%の繊維を30秒間浸漬した。繊維:撥水加工用処理液の浴比は1:10になるようにした。その後、圧縮ローラーで、繊維に対する撥水剤(固形分)の付着率が1質量%になるように繊維を絞った後、60℃に設定した乾燥機で2時間乾燥処理を施し、繊維Aを得た。このときの実温度は60℃であった。得られた撥水性再生セルロース繊維におけるカルボキシル基の総量は、0.97mmol/gであった。
[不織布の作製]
繊維Aを用いて、ランダムカード機で、ランダムウェブを作製した。得られたウェブを水流交絡機に通し、ノズル孔径0.13mmのオリフィスが1mm間隔で配列されたノズルにより、ウェブの一方の面に3MPa、5MPaの高圧水流を各1回噴射し、他方の面に5MPaの高圧水流を1回噴射した後、自然乾燥させることで、表1に示す目付、厚み及び比容積を有する不織布Aを得た。
(実施例2)
撥水加工において、乾燥処理を100℃に設定した乾燥機で10分間行った以外は、実施例1と同様にして、繊維Bを得た。このときの実温度は85℃であった。得られた撥水性再生セルロース繊維におけるカルボキシル基の総量は、0.97mmol/gであった。また、繊維Bを用いた以外は、実施例1と同様にして、表1に示す目付、厚み及び比容積を有する不織布Bを得た。
(実施例3)
撥水加工において、圧縮ローラーで、繊維に対する撥水剤及び架橋剤(固形分)の付着率が0.1質量%になるように繊維を絞った以外は、実施例2と同様にして、繊維Cを得た。得られた撥水性再生セルロース繊維におけるカルボキシル基の総量は、1.06mmol/gであった。また、繊維Cを用いた以外は、実施例1と同様にして、表1に示す目付、厚み及び比容積を有する不織布Cを得た。
(実施例4)
精練工程において、次亜塩素酸ソーダで漂白し、酸洗い及び水洗した後、15質量%の炭酸ソーダ水溶液中(20℃)に10分間浸漬し、その後、圧縮ローラーで繊維を絞り、水分率が130%になるようにした以外は、実施例2と同様にして、繊維Dを得た。撥水加工前の再生セルロース繊維におおいて、カルボキシル基の総量に対するH型カルボキシル基の割合は20%であり、H型カルボキシル基量は、0.21mmol/gであった。得られた撥水性再生セルロース繊維におけるカルボキシル基の総量は、0.96mmol/gであった。また、繊維Dを用いた以外は、実施例1と同様にして、表1に示す目付、厚み及び比容積を有する不織布Dを得た。
(実施例5)
アクリル酸-マレイン酸共重合体塩の水溶液に代えて、ナフタリンスルホン酸塩を、セルロース100質量%に対して8質量%になるように原料ビスコースへ添加し、混合機にて攪拌混合を行い、紡糸用ビスコース液を調製し、紡糸工程において、紡速を60m/分にし、紡糸浴中の硫酸濃度を110g/Lにし、次亜塩素酸ソーダでの漂白処理を実施しなかったこと以外は、実施例2と同様にして、繊維Eを得た。また、繊維Eを用いた以外は、実施例1と同様にして、表1に示す目付、厚み及び比容積を有する不織布Eを得た。撥水加工前の再生セルロース繊維において、スルホン酸基の総量に対するH型スルホン酸基の割合は80%であり、H型スルホン酸基量は、0.68mmol/gであった。得られた撥水性再生セルロース繊維におけるスルホン酸基の総量は、0.77mmol/gであった。
(実施例6)
アクリル酸-マレイン酸共重合体塩の水溶液に代えて、アニオン性アクリル樹脂水溶液粘度2130mPa・s)をアニオン性アクリル樹脂がセルロース100質量%に対して10質量%になるように原料ビスコースへ添加し、混合機にて攪拌混合を行い、紡糸用ビスコース液を調製し、紡糸工程において、紡速を60m/分にし、紡糸浴中の硫酸濃度を110g/Lにした以外は、実施例2と同様にして、繊維Fを得た。また、繊維Fを用いた以外は、実施例1と同様にして、表1に示す目付、厚み及び比容積を有する不織布Fを得た。撥水加工前の再生セルロース繊維におおいて、カルボキシル基の総量に対するH型カルボキシル基の割合は78%であり、H型カルボキシル基量は、0.80mmol/gであった。得られた撥水性再生セルロース繊維におけるカルボキシル基の総量は、0.93mmol/gであった。
(実施例7)
アクリル酸-マレイン酸共重合体塩の水溶液に代えて、ポリアクリル酸(荒川化学工業株式会社製の「タマノリG-37」)を、主成分がセルロース100質量%に対して6質量%となるように、原料ビスコースへ添加し、混合機にて攪拌混合を行い、紡糸用ビスコース液を調製し、紡糸工程において、紡速を70m/分にした以外は、実施例2と同様にして、繊維G(繊度1.7dtex)を得た。タマノリG-37は、ポリアクリル酸の未中和物の水分散液であり、20℃において、pHは1.7~2.5、比重は1.027、粘度は3,000~6,000mPa・sである。また、タマノリG-37において、主成分であるポリアクリル酸(未中和物)の濃度は8.5質量%であった。また、繊維Gを用いた以外は、実施例1と同様にして、表1に示す目付、厚み及び比容積を有する不織布Gを得た。撥水加工前の再生セルロース繊維において、カルボキシル基の総量に対するH型カルボキシル基の割合は57%であり、H型カルボキシル基量は、0.42mmol/gであった。得られた撥水性再生セルロース繊維におけるカルボキシル基の総量は、0.67mmol/gであった。
(実施例8)
アクリル酸-マレイン酸共重合体塩の水溶液を、アクリル酸-マレイン酸共重合体塩がセルロース100質量%に対して5質量%になるように、原料ビスコースへ添加した以外は、実施例1と同様にして、繊維Xを得た。また、繊維Xを用いた以外は、実施例1と同様にして、表1に示す目付、厚み及び比容積を有する不織布Xを得た。撥水加工前の再生セルロース繊維において、カルボキシル基の総量に対するH型カルボキシル基の割合は、94%であり、H型カルボキシル基量は、0.53mmol/gであった。得られた撥水性再生セルロース繊維におけるカルボキシル基の総量は、0.51mmol/gであった。
(実施例9)
紡糸工程において、紡糸速度を50m/分にし、撥水加工において、乾燥処理を100℃に設定した乾燥機で10分間行った以外は、実施例8と同様にして、繊維Y(1.7dtex)を得た。このときの実温度は85℃であった。得られた撥水性再生セルロース繊維におけるカルボキシル基の総量は、0.52mmol/gであった。また、繊維Yを用いた以外は、実施例8と同様にして、表1に示す目付、厚み及び比容積を有する不織布Yを得た。
(比較例1)
アクリル酸-マレイン酸共重合体塩の水溶液に代えて、二酸化チタン(堺化学工業株式会社製「TITONE」)をセルロース100質量%に対して0.5質量%となるように、原料ビスコースへ添加し、混合機にて攪拌混合を行い、紡糸用ビスコース液を調製し、紡糸工程において、紡速を60m/分にし、紡糸浴中の硫酸濃度を110g/Lにした以外は、実施例2と同様にして、繊維Hを得た。また、繊維Hを用いた以外は、実施例1と同様にして、表1に示す目付、厚み及び比容積を有する不織布Hを得た。
(比較例2)
撥水加工において、撥水加工用処理液としてアクリル系撥水剤(日華化学株式会社製「ネオシードNR-158」)のみを用い、繊維に対する撥水剤粒子の付着率が1質量%になるようにした以外は、実施例2と同様にして、繊維Iを得た。また、繊維Iを用いた以外は、実施例1と同様にして、表1に示す目付、厚み及び比容積を有する不織布Iを得た。
(比較例3)
撥水加工を行わず、精練工程において、圧縮ローラーで繊維を絞った後、100℃で15分間乾燥した以外は、比較例1と同様にして、繊維Jを得た。また、繊維Jを用いた以外は、実施例1と同様にして、表1に示す目付、厚み及び比容積を有する不織布Jを得た。
(比較例4)
撥水加工において、乾燥処理を170℃で10分間行った以外は、比較例1と同様にして、繊維Kを得た。また、繊維Kを用いた以外は、実施例1と同様にして、表1に示す目付、厚み及び比容積を有する不織布Kを得た。
(比較例5)
撥水加工を行わず、精練工程において、圧縮ローラーで繊維を絞った後、100℃で15分間乾燥した以外は、実施例1と同様にして、繊維Lを得た。
繊維A~K、X及びYの白色度及び撥水性を下記のように測定し、その結果を下記表1に示した。また、不織布A~K、X及びYの目付、厚み、撥水性、接触角度(撥水角度とも称される。)及び剛軟度を下記のように測定し、その結果を下記表1に示した。また、繊維A、B、J~L、Yの引張強さ(強度)、伸び率(伸度)及び見かけヤング率を下記のように測定し、その結果を下記表2に示した。なお、実施例において、撥水加工前後の再生セルロース繊維におけるカルボキシル基の総量、H型カルボキシル基の量及び塩型カルボキシル基の量は、下記のように測定した。繊維Yのアンモニア消臭性及び不織布YのpH緩衝性を下記の評価し、その結果を下記表3及び表4に示した。
(繊維の白色度)
繊維の白色度は、JIS Z 8722に準じ、コニカミノルタ株式会社製「色彩色差計CR-410」を用いて測定した。定義されているXYZ表色系(Yxy表色系)Y,x,yを用い、下記式より白色度を算出した。
白色度=(1-x-y)×Y/1.18×y
測定は、測定専用容器(20cm×20cm×高さ14cmの黒色容器)に試料綿200gを入れ、塊状がなくなるように解繊し、試料綿が一定の厚みになるように詰め込んだものを用いた。
(繊維の撥水性)
(1)原綿1gを採取し軽く丸めた。
(2)300mLビーカーに水300mLを入れ、水面から1cmの高さから採取したサンプルを静かに落とした。ビーカー底から水面までの高さは7cmであった。
(3)10分間原綿の状態を観察し、原綿がビーカーの底に着くまでの時間(浸水時間)を計測し、下記の3段階の基準で撥水性を評価した。
○:10分以上沈降なし、撥水性良好
△:吸水はしたが底まで沈降なし、撥水性あり
×:10分以内に底まで沈降、撥水性なし
(不織布の目付、厚み及び比容積)
目付及び厚みは、JIS L 1913に準じて測定した。なお、厚みは0.5kPaの荷重下で測定した。比容積は、目付及び厚みの値に基づいて算出した。
(不織布の撥水性)
不織布表面に水を1滴(0.049mL)垂らし、10秒後の水滴の状態を観察し、下記の3段階基準で評価した。
○:水滴の形状が着水時から変化なし、撥水性良好
△:水滴の形状が着水時に比べ広がっているが、吸水なし、撥水性あり
×:吸水している、撥水性なし
(不織布の水との接触角度)
(1)25mLビュレット(アズワン製)にイオン交換水を入れ、ビュレット台にセットした。
(2)ビュレットの先端と不織布の距離が1cmになるようセットした。
(3)イオン交換水を1滴(0.049mL)滴下し、着水から10秒後に、図1に示すように、不織布10の水滴20との接触角度αを測定した。測定はn=2で行い、また水滴の左右両方ともの接触角度を測定し、それらを平均した。
(不織布の剛軟度)
不織布をタテ・ヨコそれぞれが2cm巾×15cmになるようにカットし、JIS L1096の45°カンチレバー法に準拠して、タテ方向(機械方向、MD)、ヨコ方向(機械方向に直交する方法、CD)の剛軟度を測定した。また、タテ方向及びヨコ方向の平均値を算出した。
(重量平均分子量の測定)
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、以下の条件で測定し、重量平均分子量(Mw)を求めた。重量平均分子量を算出する際には、GPCで得られたチャート上の分子量300以上の部分を重合体と定義して求めた。
カラム:GF-7MHQ(昭和電工株式会社製)。
移動相:リン酸水素二ナトリウム12水和物34.5g、及び、リン酸二水素ナトリウム2水和物46.2g(いずれも試薬特級)に純水を加えて全量を5,000gとし、その後0.45ミクロンのメンブランフィルターで濾過した水溶液。
検出器:UV 214nm(日本ウォーターズ(株)30 製、モデル481型)。
ポンプ:L-7110(日立(株)製)。
流量:0.5mL/min。
温度:35℃。
検量線:ポリアクリル酸ソーダ標準サンプル(創和科学株式会社製)。
(引張強さ、伸び率、見かけヤング率)
JIS L 1015に準じて測定した。
(カルボキシル基の総量の測定)
(1)1mol/Lの塩酸水溶液(pH0.1)50mLに試料1.2gを浸漬、撹拌して5分間放置した。その後、再び撹拌して水溶液のpHが2.5になるように調整した。これにより、試料(繊維)におけるカルボキシル基はすべてH型として存在することになる。次に、試料を水洗し、定温送風乾燥機で105℃、2時間乾燥させて、絶乾にした。試料を水洗することにより、繊維に付着している過剰の塩酸がすべて除去されることになる。
(2)ビーカーにイオン交換水100mL、塩化ナトリウム0.4g、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液20mLを入れた。
(3)(1)で作製した試料1gを精秤[W1(g)]し、撹拌子に巻きつかない大きさまで細かく切断して、(2)で準備したビーカーに入れ、スターラーで15分間撹拌した。これにより、試料(繊維)におけるカルボキシル基は全て塩型に変換されることになる。撹拌した試料は吸引ろ過した。ろ過液を60mL採って、指示薬にフェノールフタレインを使用して0.1mol/Lの塩酸水溶液で滴定し、滴定量をX1(mL)とした。
(4)下記式に基づいてカルボキシル基の総量Y(mmol/g)を算出した。このように、水酸化ナトリウムの総量から残余の水酸化ナトリウムの量を差し引くことにより求めた水酸化ナトリウムの量は、試料(繊維)における全体のカルボキシル基の量に対応することになる。
カルボキシル基の総量Y(mmol/g)=[[(0.1×20)-(0.1×X1)]×(120/60)]/W1
(H型カルボキシル基の量及び塩型カルボキシル基の量の測定)
(1)試料を水洗し、定温送風乾燥機で105℃、2時間乾燥させて、絶乾にした。
(2)ビーカーにイオン交換水100mL、塩化ナトリウム0.4g、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液20mLを入れた。
(3)試料1gを精秤[W2(g)]し、撹拌子に巻きつかない大きさまで細かく切断して、(2)で準備したビーカーに入れ、スターラーで15分間撹拌した。撹拌した試料は吸引ろ過した。ろ過液を60mL採って、指示薬にフェノールフタレインを使用して0.1mol/Lの塩酸水溶液で滴定し、滴定量をX2(mL)とした。
(4)下記式に基づいてH型カルボキシル基の量Z(mmol/g)、塩型カルボキシル基の量U(mmol/g)、H型カルボキシル基の量の割合(%)及び塩型カルボキシル基の量の割合(%)を算出した。
H型カルボキシル基の量Z(mmol/g)=[{(0.1×20)-(0.1×X2)]×(120/60)]/W2
塩型カルボキシル基の量U(mmol/g)=カルボキシル基の総量Y(mmol/g)-H型カルボキシル基の量Z(mmol/g)
H型カルボキシル基の量の割合(%)={H型カルボキシル基の量Z(mmol/g)]
/{カルボキシル基の総量Y(mmol/g)]×100
塩型カルボキシル基の量の割合(%)={塩型カルボキシル基の量U(mmol/g)]
/{カルボキシル基の総量Y(mmol/g)]×100
(アンモニア消臭性)
アンモニア消臭性の評価は、一般社団法人繊維評価技術協議会(JTETC)のSEKマーク繊維製品認定基準(平成30年4月1日改訂版)で定める機器分析試験法(検知管法)に準拠して行った。具体的には、次のように評価した。試料(原綿)0.30gを5Lのテドラーバックに入れて密封した。次に、シリンジを用いて規定の初期濃度になるようにアンモニアガス3Lをテドラーバックに注入した。アンモニアガスを注入してから2時間後に、テドラーバックのアンモニアガスガスの濃度を検知管により測定した。同様に空試験を行った。そして、空試験における測定値及び試料を用いた場合の測定値を用い、下記式によりアンモニアの減少率を求めた。アンモニアの初期濃度は、100ppmであった。
減少率(%)=[(2時間後の空試験における測定値-2時間後の試料を用いた場合の測定値)/2時間後の空試験における測定値}×100
(pH緩衝性)
(1)試料(不織布)を1cm角に切った。
(2)1cm角の試料を3枚重ね、pH4、5、6、7、8、9及び10に調整したpH標準液をそれぞれ0.1ml滴下し、30~60秒浸漬させた。
(3)pH標準液に浸漬させた試料のpHをpH計(HORIBA製、「LAQUAtwinB-712」)で測定した。測定はn=4で行い、それらの値を平均した。
Figure 0007064083000001
Figure 0007064083000002
Figure 0007064083000003
Figure 0007064083000004
表1の結果から分かるように、カルボキシル基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる1以上の酸性基を含有する化合物を含み、繊維表面にはイソシアネート系化合物及び非フッ素系撥水剤が結合している実施例の繊維は、繊維の白色度がHw80以上であり、原綿及び不織布のいずれの状態でも撥水性を有していた。実施例の繊維を用いた不織布(比容積13.0cm3/g以上15.0cm3/g以下)の水との接触角度は65度以上であり、耐久性の高い撥水性を有していた。表3の結果から分かるように、実施例の繊維は、高いアンモニア消臭性を有していた。表4の結果から分かるように、実施例の繊維を用いた不織布は、pH4~10の範囲において、高いpH緩衝性を有していた。
イソシアネート系化合物及び非フッ素系撥水剤で撥水加工を行っているが、カルボキシル基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる1以上の酸性基を含有する化合物を含まない比較例1の繊維は、原綿の状態では撥水性を有するが、不織布の状態では撥水性を有せず、撥水性の耐久性に劣っていた。カルボキシル基を含有する化合物を含んでいるが、非フッ素系撥水剤のみで撥水加工を行った比較例2の繊維も、原綿の状態では撥水性を有するが、不織布の状態では撥水性を有せず、撥水性の耐久性に劣っていた。カルボキシル基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる1以上の酸性基を含有する化合物を含まず、撥水加工も行っていない比較例3の繊維は、原綿及び不織布のいずれの状態でも撥水性を有していなかった。カルボキシル基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる1以上の酸性基を含有する化合物を含まないが、撥水工程において、熱処理を170℃で行った比較例4の繊維は、原綿及び不織布のいずれの状態でも撥水性を有していたが、白色度がHw80未満であった。
表2の結果から分かるように、カルボキシル基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる1以上の酸性基を含有する化合物を含み、繊維表面にはイソシアネート系化合物及び非フッ素系撥水剤が結合している実施例1~2の繊維は、同じカルボキシル基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる1以上の酸性基を含有する化合物を含む比較例5と比べても、乾湿強度、乾湿伸度、及び湿ヤング率において同程度の値であり、セルロース自体が劣化することはなかった。特に、実施例2は乾ヤング率が比較例5よりも高く、剛直な繊維であった。また、実施例1は乾ヤング率が比較例5よりも低いものの、比較例3の通常のレーヨンと同程度であり、実用上十分な値であった。
また、カルボキシル基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる1以上の酸性基を含有する化合物を含まないが、撥水工程において、熱処理を170℃で行った比較例4の繊維は、撥水加工を行っていない比較例3に比べて、湿強度及び湿ヤング率が低下しており、湿乾ヤング率比(WY/DY)が大幅に低下していることから、セルロース自体が高熱に晒されることで、非晶部分が劣化したものと考えられる。一方、実施例のWY/DYはセルロース自体の劣化が抑制されているため、12以上を満たしていた。
本発明の撥水性再生セルロース繊維は、例えば、紡績糸、編物、織物、不織布、トウ、フィラメント、中綿(詰め綿)、紙等の繊維構造物に用いることができる。また、本発明の繊維構造物は、衣料、化粧パフ、フェイスマスク、表面シート,セカンドシート,吸収体,バックシート等の衛生材料に用いることができる。
10 不織布
20 水滴

Claims (9)

  1. 撥水性を有する撥水性再生セルロース繊維であって、
    前記撥水性再生セルロース繊維は、カルボキシル基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる1以上の酸性基を含有する化合物を含み、繊維表面にはイソシアネート系化合物及び非フッ素系撥水剤が結合しており、
    前記撥水性再生セルロース繊維は、白色度がHw80以上であることを特徴とする撥水性再生セルロース繊維。
  2. 撥水性を有する撥水性再生セルロース繊維であって、
    前記撥水性再生セルロース繊維は、カルボキシル基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる1以上の酸性基を含有する化合物を含み、繊維表面にはイソシアネート系化合物及び非フッ素系撥水剤が結合しており、
    前記撥水性再生セルロース繊維は、JIS L 1015に準じて測定される湿潤時の見掛けヤング率に対する標準時の見掛けヤング率との下記式(1)で示される湿乾ヤング率比が12.0以上であることを特徴とする撥水性再生セルロース繊維。
    湿乾ヤング率比=(湿潤時の見掛けヤング率/標準時の見掛けヤング率)×100 (1)
  3. 前記非フッ素系撥水剤は、炭化水素系撥水剤である請求項1又は2に記載の撥水性再生セルロース繊維。
  4. 前記非フッ素系撥水剤は、エステル結合を介して存在する炭化水素基の炭素数が12以上の(メタ)アクリル酸エステルを単量体の基本単位として含むポリマーからなる炭化水素系撥水剤である請求項1~3のいずれか1項に記載の撥水性再生セルロース繊維。
  5. 前記カルボキシル基を含有する化合物は、ポリアクリル酸及びアクリル酸-マレイン酸共重合体からなる群から選ばれる1以上である請求項1~のいずれか1項に記載の撥水性再生セルロース繊維。
  6. 前記撥水性再生セルロース繊維100質量%からなる水流交絡不織布の水との接触角度が65度以上である請求項1~のいずれか1項に記載の撥水性再生セルロース繊維。
  7. 請求項1~のいずれか1項に記載の撥水性再生セルロース繊維の製造方法であって、
    セルロースを含むビスコース原液に、カルボキシル基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる1以上の酸性基を含有する化合物を混合して紡糸用ビスコース液を調製し、前記紡糸用ビスコース液をノズルより押し出し、凝固再生させてビスコースレーヨン糸条とし、
    前記ビスコースレーヨン糸条をイソシアネート系化合物及び非フッ素系撥水剤を含む撥水加工用処理液で処理した後、繊維表面が40℃以上110℃以下の温度となるように熱処理することを特徴とする撥水性再生セルロース繊維の製造方法。
  8. 前記イソシアネート系化合物は、ブロックドイソシアネート基を有するブロックドイソシアネート系架橋剤である請求項に記載の撥水性再生セルロース繊維の製造方法。
  9. 請求項1~のいずれか1項に記載の撥水性再生セルロース繊維を含む繊維構造物。
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