JP7063051B2 - 印刷物及び装飾材 - Google Patents
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上記問題を解消し得るものとして、例えば特許文献1の技術が提案されている。
しかし、特許文献1の化粧材は、着色透明樹脂層の反射率は5%程度しか期待できないものであり(通常の樹脂の反射率は5%程度)、かつ、光輝性絵柄層の鏡面光沢度を着色透明樹脂層の鏡面光沢度よりも低く設計しているため、絵柄が薄暗く感じられるものであった。
また、そもそも特許文献1の化粧材は、光輝性絵柄層が見えないとは言えないものである。すなわち、特許文献1の装飾材の着色透明樹脂層で反射する光の反射率をXとして、着色透明樹脂層を透過して光輝性絵柄層で反射する光の反射率をYとした場合、光輝性絵柄層を有する部分は、光輝性絵柄層を有さない部分に比べて、反射率Yの分だけ反射光量が多くなり、両部分にコントラストが生じるためである。
したがって、特許文献1の化粧材は、意匠性が十分高いと言うことはできない。
[1]印刷物であって、前記印刷物は、パール顔料を含むパール層と、第一反射層と、第二反射層とを有してなり、前記パール層、前記第一反射層及び前記第二反射層の中で、前記パール層は前記印刷物の視認者側に配置され、前記第一反射層は任意のパターンを有し、前記印刷物を前記パール層側から平面視した際に、前記第二反射層が前記第一反射層のパターンを有さない箇所の少なくとも一部に配置されてなり、前記第一反射層及び第二反射層の何れかの層が拡散反射粒子を含む層であり、他方の層が金属鱗片を含む層又は金属膜である、印刷物。
[2]被着材上に上記[1]に記載の印刷物を有する装飾材。
本発明の印刷物は、パール顔料を含むパール層と、第一反射層と、第二反射層とを有してなり、前記パール層、前記第一反射層及び前記第二反射層の中で、前記パール層は前記印刷物の視認者側に配置され、前記第一反射層は任意のパターンを有し、印刷物を前記パール層側から平面視した際に、前記第二反射層が前記第一反射層のパターンを有さない箇所の少なくとも一部に配置されてなり、前記第一反射層及び第二反射層の何れかの層が拡散反射粒子を含む層であり、他方の層が金属鱗片を含む層又は金属膜であるものである。
図1~図5において、印刷物100は、パール顔料を含むパール層30と、第一反射層40と、第二反射層50とを有している。また、図1~図5において、第一反射層40は、任意のパターンを有している。
また、図1~図5において、印刷物100をパール層30側から平面視した際に、第二反射層50は第一反射層40のパターンを有さない箇所に配置されている。例えば、図1、図3~5では、第一反射層40のパール層30とは反対側の全面に第二反射層50が配置されていることから、前述のように、印刷物100をパール層30側から平面視した際に、第二反射層50は第一反射層40のパターンを有さない箇所に配置されている。また、図2では、第一反射層40のパターンの隙間に第二反射層50が配置されていることから、前述のように、印刷物100をパール層30側から平面視した際に、第二反射層50は第一反射層40のパターンを有さない箇所に配置されている。
図2の印刷物100は、バッカー層10(裏面基材11)上に、第一反射層40、第二反射層50及びパール層30を有し、第一反射層40のパターンの隙間に第二反射層50が配置されている。
図3の印刷物100は、裏面基材11及び隠蔽層aからなる隠蔽性を有するバッカー層10a上に、第二反射層50、第一反射層40及びパール層30をこの順に有している。また、図3の印刷物100は、さらに、パール層30上に、着色層b及び硬化膜13からなる光透過性を有する着色保護層60bを有している。
図4の印刷物100は、光透過性を有する保護層60(表面基材12)の視認者側とは反対側に、パール層30、第一反射層40及び第二反射層50をこの順に有している。
図5の印刷物100は、表面基材12及び着色層bからなる光透過性を有する着色保護層60bの視認者とは反対側に、パール層30、第一反射層40及び第二反射層50をこの順に有している。また、図5の印刷物100は、さらに、第二反射層50の視認者とは反対側に、裏面基材11及び隠蔽層aからなる隠蔽性を有するバッカー層10aを有している。
図1~図5の印刷物100は、何れも、第一反射層40を基準として、該層よりもパール層30側から観察するものである。
本発明の印刷物において、フリップする意匠を観察できる理由を説明する。
まず、図6のように、印刷物100の表面に矢印の方向から光が入射したものとする。また、図6の印刷物100は、第一反射層40が拡散反射粒子を含む層であり、第二反射層50が金属鱗片を含む層又は金属膜であるものとして、説明する。
図7は、上記の前提条件において、図6の(i)の方向(光が入射する方向)、(ii)の方向、及び(iii)の方向(入射光の正反射の方向)から印刷物100を視認した場合の、各方向における、3つの層(パール層30、第一反射層40及び第二反射層50)の反射光の強度を示す図である。図7中、実線の矢印はパール層30の反射光強度、一点鎖線の矢印は第一反射層40の反射光強度、点線の矢印は第二反射層50の反射光強度を示し、矢印が長いほど反射光強度が強いことを示している。また、図7の(a)は第一反射層40を有する箇所、図7の(b)は第一反射層40を有さない箇所の反射強度を示している。
図7(a)において、(i)の方向及び(ii)の方向の反射強度が大きい理由は、第一反射層40中の拡散反射粒子によって入射光が様々な方向に反射されるためである。また、第一反射層40を有さない箇所では、第二反射層50による反射が生じるが、第二反射層の反射は略正反射に支配される。このため、第一反射層40を有さない箇所においては、(i)の方向及び(ii)の方向の反射強度が小さくなる。したがって、(i)の方向及び(ii)の方向においては、第一反射層を有する箇所と第一反射層を有さない箇所との反射強度の差が大きくなり、第一反射層40のパターンが視認されることになる。
一方、(iii)の方向においては、図7(a)の各層の反射光強度の合計と、図7(b)の各層の反射光強度の合計との差が少なくなることが分かる。そして、パール層30による反射は、この差を少なくするのに重要な役割を果たしている(パール層30の反射が存在しないと、第一反射層40の反射強度と第二反射層50の反射強度の差が目立ちやすくなる)。したがって、(iii)の方向においては、第一反射層40を有する箇所と第一反射層40を有さない箇所との明るさの違いが認識し難くなり、第一反射層40のパターンが視認されにくくなる。
なお、上記の前提条件では、第一反射層が拡散反射粒子を含む層であり、第二反射層が金属鱗片を含む層又は金属膜であるものとしたが、第一反射層が金属鱗片を含む層又は金属膜であり、第二反射層が拡散反射粒子を含む層であっても、同様の効果を得ることができる。この場合、(i)の方向及び(ii)では第一反射層40のネガのパターンが視認され、(iii)の方向では第一反射層40のネガのパターンが視認されにくくなる結果、フリップする意匠を観察できることになる。
パール層はパール顔料を含む層である。また、パール層、第一反射層及び第二反射層の中でパール層は印刷物の視認者側に配置される。
パール顔料は、雲母(マイカ)の鱗状の微粒子の表面に二酸化チタン等の高屈折率材料からなる被覆層を有する薄板状微粒子が挙げられ、光透過性を有している。このため、パール層中にパール顔料を含むことにより、光が多重反射され、印刷物に金属や真珠のような光沢感を付与でき、しかも角度に応じてパール層を通過する光の距離が増減することによって多重反射の度合いが変化するため、意匠性を高めることができる。
また、上述したように、パール層は、正反射方向において、第一反射層を有する箇所と第一反射層を有さない箇所との反射強度の差を小さくし、フリップを発現するのに重要な役割を果たしている。また、パール層が存在することで、第一反射層を有する箇所と第一反射層を有さない箇所との色味や光沢感の違いが緩和され、常にパターンが観察されることを抑制することもできる。
白色パール顔料は、雲母の被覆層が二酸化チタン等の無色高屈折率材料であり、かつ被覆層の厚みが0.1~0.15μm程度と比較的薄いものであり、光のほぼすべての波長を反射するため、白色もしくは銀色に見える。
干渉パール顔料は、雲母の被覆層が二酸化チタン等の無色高屈折率材料であり、かつ被覆層の厚みが白色パール顔料よりも厚く、0.15μm超のものである。干渉パール顔料は被覆層の厚みの違いによって、反射光及び透過光が変化し、種々の干渉色を生じる。干渉パール顔料は虹彩色パール顔料と呼ばれる場合もある。
着色パール顔料は、有彩色であり、雲母の被覆層を酸化第二鉄等の有色高屈折率材料としたもの、白色パール顔料の周囲をさらに酸化第二鉄等の有色高屈折率材料もしくはその他の有色顔料で被覆したもの、又は、雲母の被覆層中に顔料やその他の着色剤を添加したもの等がある。
パール顔料の含有量を10質量%以上とすることにより、金属や真珠のような光沢感を付与しやすくできるとともに、フリップを発現させやすくできる。また、パール顔料の含有量を60質量%以下とすることにより、第一反射層及び第二反射層に到達する光量を十分なものとしてフリップを発現させやすくできるとともに、塗膜強度の低下を抑制できる。
パール層の厚みを0.2μm以上とすることにより、金属や真珠のような光沢感を付与しやすくできるとともに、フリップを発現させやすくできる。また、パール層の厚みを20μm以下とすることにより、第一反射層及び第二反射層に到達する光量を十分なものとしてフリップを発現させやすくできる。
パール層並びに後述する第一反射層及び第二反射層等の厚みは、例えば、印刷物の断面写真を撮像し、任意の10箇所の平均値から算出できる。
バインダー樹脂は、ポリエチレン系樹脂や塩素化ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン系樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、フッ化ビニリデン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アルキッド系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、熱硬化型ポリ(メタ)アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂、マレイン酸樹脂、ニトロセルロースやエチルセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルオキシエチルセルロース等の繊維素系樹脂、塩化ゴムや環化ゴム等のゴム系樹脂、石油系樹脂、ロジン、カゼイン等の天然樹脂等から選ばれる一種以上が上げられる。
第一反射層40は、任意のパターンを有する。
任意のパターンは特に限定されず、木目模様、石目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布地模様、幾何学模様等が挙げられる。図8のパターンはストライプ模様である。
第二反射層は、例えば、図1、図3~5に示すように、第一反射層40のパール層30とは反対側の全面に配置したり、図2に示すように、第一反射層40のパターンの隙間に配置したりすることができる。所定の性能を満たす印刷物を簡易かつ安定に製造する観点から、第二反射層は、第一反射層のパール層とは反対側の全面に配置することが好ましい。
拡散反射粒子を含む層を第一反射層及び第二反射層の何れとするかは特に制限はない。なお、第一反射層のパール層とは反対側の全面に第二反射層を配置する構成とする場合、第一反射層を拡散反射粒子を含む層として、第二反射層を金属鱗片を含む層又は金属膜とすることによって、印刷物の隠蔽性を高め、かつ、印刷物の光沢感を高めることができる点で好ましい。
拡散反射粒子は、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、鉛白等の白色顔料が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
拡散反射粒子の形状は、あらゆる方向に拡散反射しやすくする観点から、球状であることが好ましい。
本明細書において、拡散反射粒子の平均粒子径は、溶液中に分散した粒子を動的光散乱方法で測定し、粒子径分布を累積分布で表したときの50%粒子径(d50:メジアン径)である。50%粒子径は、例えば、Microtrac粒度分析計(日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
拡散反射粒子の含有量を1質量%以上とすることにより、拡散反射粒子を含む層による反射強度を高くして、フリップを発現させやすくできる。また、拡散反射粒子の含有量を60質量%以下とすることにより、塗膜強度の低下を抑制できる。
拡散反射粒子を含む層の厚みを0.2μm以上とすることにより、拡散反射粒子を含む層による反射強度を高くして、フリップを発現させやすくできる。また、拡散反射粒子を含む層の厚みを20μm以下とすることにより、印刷物を薄膜化しやすくできる。
金属鱗片の材質としては、アルミニウム、金、銀、真鍮、チタン、クロム、ニッケル、ニッケルクロム、ステンレス等の金属や合金が挙げられる。これらの中でも、拡散反射粒子を含む層との色味を近くすることによって、正反射方向におけるパターンの不可視化をより確実なものとしやすい、アルミニウム、銀及びニッケルが好適である。
また、層中での配列の観点から、金属鱗片の平均厚みは、0.50μm以下であることが好ましく、0.10μm以下であることがより好ましく、0.08μm以下であることがさらに好ましく、0.05μm以下であることがよりさらに好ましい。また、金属鱗片の平均厚みは、取り扱い性及び光沢の観点から、0.01μm以上であることが好ましく、0.02μm以上であることがより好ましい。
レーザ干渉式の三次元形状解析装置としては、例えば、キーエンス社製の商品名「形状解析レーザ顕微鏡 VK-Xシリーズ」が挙げられる。
金属鱗片の含有量を5質量%以上とすることにより、印刷物の隠蔽性及び光沢感を良好にしやすくできるとともに、フリップを発現しやすくできる。また、金属鱗片の含有量を40質量%以下とすることにより、塗膜強度の低下を抑制できる。
金属鱗片を含む層の厚みを0.2μm以上とすることにより、印刷物の隠蔽性及び光沢感を良好にしやすくできるとともに、フリップを発現しやすくできる。また、金属鱗片を含む層の厚みを20μm以下とすることにより、第一反射層を有する箇所と第一反射層を有さない箇所との反射強度の差が大きくなることを抑制し、フリップを発現させやすくできるとともに、印刷物を薄膜化しやすくできる。
金属鱗片を含む層、並びに、上述したパール層及び拡散反射粒子を含む層は、例えば、各層を構成する材料を含むインキを用いて印刷することにより形成できる。
金属膜を構成する金属としては、インジウム、スズ、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金、真鍮、クロム及び亜鉛等の金属、並びに、これらの合金等が挙げられる。これらの中でも、拡散反射粒子を含む層との色味を近くすることによって、正反射方向におけるパターンの不可視化をより確実なものとしやすい、アルミニウム、銀及びニッケルが好適である。
金属膜のOD値は0.5~1.6であることが好ましく、0.6~1.5であることがより好ましく、0.8~1.4であることがさらに好ましい。
金属膜のOD値を0.5以上とすることにより、印刷物の隠蔽性及び光沢感を良好にしやすくできるとともに、フリップを発現しやすくできる。また、金属膜のOD値を1.6以下とすることにより、金属の質感が過度になることを抑制するとともに、第一反射層を有する箇所と第一反射層を有さない箇所との反射強度の差が大きくなることを抑制し、フリップを発現させやすくできる。
このように、本発明の印刷物100は、第一反射層40及び第二反射層50が透けるようにして観察した場合、第一反射層40を有する領域と、第二反射層50を有する領域とを有する。なお、第一反射層40を有する領域と、第二反射層50を有する領域との間に隙間があってもよい。
バッカー層は、パール層、第一反射層及び第二反射層の視認者側とは反対側に、必要に応じて配置される層である。バッカー層は、例えば、印刷物の取り扱い性を良好にしたり、印刷物に強度を付与したり、印刷物に成形性を付与したりすることなどを目的として形成することができる。
バッカー層を構成する裏面基材としては、アクリル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(以下「ABS樹脂」と表記することもある)、アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等のプラスチックフィルム、紙類等の基材の単層であってもよいし、これら基材を組み合わせた多層構造であってもよい。バッカー層を構成する裏面基材としては、射出成形等の三次元成形を考慮するとプラスチックフィルムが好ましく、その中でもABS樹脂からなるプラスチックフィルムが好ましい。
バッカー層を構成する裏面基材が紙の場合、その坪量は、好ましくは80~600g/m2、より好ましくは230~550g/m2である。上記範囲内とすることで、印刷物の強度及び加工適性のバランスを良好にすることができる。
隠蔽性を有するバッカー層は、裏面基材の単層であってもよいし、図3及び図5に示すように、裏面基材11上に隠蔽層aを形成してなる構成であってもよい。
また、バッカー層は着色されていてもよい。
バッカー層の一態様に含まれる隠蔽層は、主として、バインダー樹脂及び着色剤を含む。
隠蔽層は、例えば、バインダー樹脂、顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したインキを用いて印刷することにより形成できる。なお、隠蔽性を高める観点から、着色剤は顔料であることが好ましい。
隠蔽層のバインダー樹脂は、パール層のバインダー樹脂と同様のものを用いることができる。着色剤は汎用のものを用いることができる。
隠蔽層の厚みは、0.1~20μm程度の範囲で適宜調整することができる。
光透過性を有する保護層は、印刷物の取り扱い性を良好にしたり、印刷物に耐擦傷性を付与したりすることなどを目的として、パール層、第一反射層及び第二反射層の視認者側に必要に応じて配置される層である。保護層が光透過性であることを要する理由は、印刷物のパターンを視認するためである。
以下、本明細書において、「光透過性を有する保護層」のことを「保護層」と略称する場合がある。
保護層の一例である表面基材としては、プラスチックフィルムが挙げられる。保護層としてのプラスチックフィルムは、光透過性を有するものであれば制限なく使用することができ、バッカー層で例示したプラスチックフィルムと同様のものが挙げられる。また、保護層としてのプラスチックフィルムは、光透過性、耐光性及び耐擦傷性の観点から、アクリルフィルムが好ましい。
保護層としてのプラスチックフィルムの厚みは、好ましくは10~250μmであり、より好ましくは20~100μmである。
保護層の一例である表面基材は、光透過性を有する限り着色されていてもよい。
保護層の一例である硬化性樹脂組成物の硬化膜は、硬化性樹脂を含有する硬化性樹脂組成物を架橋硬化することにより形成することができる。
硬化性樹脂としては、2液硬化型樹脂等の熱硬化性樹脂の他、電離放射線硬化性樹脂等が好ましく用いられ、これらの複数種を組み合わせた、例えば、電離放射線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂とを併用する、又は硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを併用する、いわゆるハイブリッドタイプであってもよい。
硬化性樹脂としては、保護層を構成する樹脂の架橋密度を高め、より優れた耐傷性及び耐候性等の表面特性とを得る観点から、電離放射線硬化性樹脂が好ましく、また、取り扱いが容易との観点から、電子線硬化性樹脂がより好ましい。
電離放射線硬化性樹脂としては、具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー、重合性オリゴマーの中から適宜選択して用いることができる。
多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ該官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーが挙げられ、より優れた耐傷性及び耐候性等の表面特性を得る観点から、アクリロイル基を有するアクリレートモノマーが好ましい。
保護層の一例である硬化性樹脂組成物の硬化膜は、光透過性を有する限り着色されたものであってもよい。
印刷物100は、図3及び図5に示すように、着色層bを有していてもよい。
また、着色層は光透過性を有することが好ましく、パール層よりも視認者側に配置することがより好ましい。すなわち、着色層は、図3及び図5に示すように、表面基材12又は硬化性樹脂組成物の硬化膜13と組み合わせて、光透過性を有する着色保護層60bを構成することが好ましい。
パール層よりも視認側に光透過性を有する着色層を形成することにより、印刷物全体の色味を調整し、意匠性を良好にすることができる。また、光透過性を有する着色層を、単色又は多色のパターンで形成することにより、意匠性をさらに高めることができる。
着色層は、例えば、バインダー樹脂、顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したインキを用いて印刷することにより形成できる。着色剤は、パール層、第一反射層及び第二反射層の反射強度のバランスを保つ観点からは染料であることが好ましい。一方、耐光性の観点からは、着色剤は顔料であることが好ましい。
着色層のバインダー樹脂は、パール層のバインダー樹脂と同様のものを用いることができる。着色剤は汎用のものを用いることができる。
着色層の厚みは、0.1~20μm程度の範囲で適宜調整することができる。
印刷物は、パール層、第一反射層及び第二反射層を保護するための保護層以外の透明層、各層の密着性を高めるためのプライマー層、被着材との密着性を良好にするための接着剤層等のその他の層を有していてもよい。
以下、印刷物の具体的な層構成を例示する。なお、「/」は各層の界面を意味する。また、第一反射層を基準としてパール層を有する側が視認者側に位置するものとする。
(1)バッカー層/第二反射層/第一反射層/パール層
(2)バッカー層/第一反射層及び第二反射層(第二反射層は第一反射層のパターンを有さない箇所に配置)/パール層
(3)保護層/パール層/第一反射層/第二反射層
(4)保護層/パール層/第一反射層及び第二反射層(第二反射層は第一反射層のパターンを有さない箇所に配置)
(5)保護層/パール層/第一反射層/第二反射層/バッカー層
(6)保護層/パール層/第一反射層及び第二反射層(第二反射層は第一反射層のパターンを有さない箇所に配置)/バッカー層
本発明の装飾材は、被着材上に上述した本発明の印刷物を有するものである。
装飾材は、印刷物の第一反射層を基準としてパール層を有する側とは反対側と、被着材とが対向するようにして積層し、一体化することが好ましい。
被着材の形状は、平面状に限られず、三次元形状及び曲面状であってもよい。
また、印刷物の各種被着材への積層方法として、印刷物を三次元成形性のある材料から形成し、インサート成形や射出成形同時加飾等の公知の手段によって、被着材の成形と同時に印刷物を積層する方法を採用することもできる。
蛍光灯の照明下で、実施例及び比較例の印刷物を様々な角度から観察した。各印刷物がどのように見えたのかを表1に説明する。
[実施例1]
裏面基材としてABS樹脂フィルム(厚み400μmm)を用意して、該シートの一方の面上の全面に、下記処方の隠蔽層形成用インキをグラビアコート法により塗布、乾燥し、厚み1~2μmの隠蔽層を形成し、裏面基材及び隠蔽層からなる隠蔽性を有するバッカー層を得た。
次いで、隠蔽性を有するバッカー層の隠蔽層上の全面に、下記処方の第二反射層形成用インキをグラビアコート法により塗布、乾燥し、厚み1~2μmの第二反射層を形成した。
次いで、第二反射層上に、下記処方の第一反射層形成用インキをグラビアコート法により塗布、乾燥し、幾何学模様のパターンを備えた厚み1~2μmの第一反射層を形成した。
次いで、第一反射層及び第二反射層を覆うようにして、下記処方のパール層形成用インキをグラビアコート法により塗布、乾燥し、厚み1~2μmのパール層を形成した。
次いで、パール層上の全面に、下記処方の着色層形成用インキをグラビアコート法により塗布、乾燥し、厚み1~2μmの光透過性を有する着色層を形成した。
次いで、着色層上の全面に、下記処方の硬化膜形成用インキをグラビアコート法により塗布し、電子線を照射して電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させ、厚み10μmの硬化膜を形成し、着色層及び硬化膜からなる光透過性を有する保護層を形成し、実施例1の印刷物を得た。
・酸化チタン及び酸化鉄の混合物 70部
・塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂とアクリル樹脂との混合物 30部
・溶剤 適量
金属鱗片(アルミニウム)を含む樹脂組成物(金属鱗片とバインダー樹脂との質量比が20:80)を溶剤で希釈したインキ
・拡散反射粒子 40部
(球状酸化チタン、平均粒子径0.7μm)
・塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂とアクリル樹脂との混合物 60部
・溶剤 適量
・白色パール顔料 30部
(平均粒子径30μm)
・塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂とアクリル樹脂との混合物 70部
・溶剤 適量
・着色剤 40部
(カーボンブラックと赤色系有機顔料との混合物)
・塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂とアクリル樹脂との混合物 60部
・溶剤 適量
・アクリルシリコーンアクリレート(質量平均分子量20,000) 70部
・6官能のウレタンアクリレートオリゴマー(質量平均分子量5,000) 30部
上記第一反射層形成用インキを用いて第二反射層を形成し、上記第二反射層形成用インキを用いて第一反射層を形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の印刷物を得た。
上記第一反射層形成用インキを、下記の第一反射層形成用インキAに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の印刷物を得た。
<第一反射層形成用インキA>
・拡散反射粒子 20部
(球状酸化チタン、平均粒子径0.7μm)
・塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂とアクリル樹脂との混合物 80部
・溶剤 適量
第二反射層を形成せず、隠蔽層上に第一反射層を形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の印刷物を得た。
第二反射層を形成せず、また、隠蔽層上に、上記第二反射層形成用インキを用いて第一反射層を形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の印刷物を得た。
パール層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例3の印刷物を得た。
12:光透過性基材
13:硬化膜
a:隠蔽層
b:着色層
10:バッカー層
10a:隠蔽性を有するバッカー層
30:パール層
40:第一反射層
50:第二反射層
60:光透過性を有する保護層
60b:光透過性を有する着色保護層
100:印刷物
Claims (5)
- 印刷物であって、
前記印刷物は、パール顔料を含むパール層と、第一反射層と、第二反射層とを有してなり、前記パール層、前記第一反射層及び前記第二反射層の中で、前記パール層は前記印刷物の視認者側に配置され、
前記印刷物は、さらにバッカー層を有し、前記バッカー層の視認者側に、前記第二反射層、前記第一反射層及び前記パール層を有し、
前記第一反射層は任意のパターンを有し、
前記印刷物を前記パール層側から平面視した際に、前記第二反射層が前記第一反射層のパターンを有さない箇所の少なくとも一部に配置されてなり、
前記第一反射層及び第二反射層の何れかの層が拡散反射粒子を含む層であり、他方の層が金属鱗片を含む層又は金属膜である、印刷物。 - 前記バッカー層が隠蔽性を有する、請求項1に記載の印刷物。
- 前記パール層の視認者側に、光透過性を有する保護層を有する、請求項1又は2に記載の印刷物。
- 前記光透過性を有する保護層が着色されてなる請求項3に記載の印刷物。
- 被着材上に請求項1~4の何れか1項に記載の印刷物を有する装飾材。
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