下記に、図面等を参照しながら、実施の形態を説明する。ただし、本開示は、多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定されるべきではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状について模式的に表す場合があるが、これはあくまで一例であり、限定して解釈されるべきではない。
本明細書において、ある部材の上に、他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限り、ある部材に接するように、直上あるいは直下に、他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合と、の両方を含む。また、本明細書において、ある部材の面に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面に」または「面側に」と表記する場合、特に断りの無い限り、ある部材に接するように、直上あるいは直下に、他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合と、の両方を含む。
また、本明細書において、「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されない。例えば、「シート」は、「板」または「フィルム」と呼ばれる部材も含む。
以下、本開示におけるシート、物品、賦形用シート、転写シート、シートの製造方法および物品の製造方法について、詳細に説明する。
A.シート
本開示におけるシートは、表面層を有するシートであって、上記表面層の一方の表面が、皺構造を有し、かつ、水に対する接触角が90.0度以上である表面形状を備え、上記表面層の内部ヘイズが4.0%以下である。
図1は、本開示におけるシートを例示する概略断面図である。図2は、本開示におけるシートの表面層表面の顕微鏡画像である。図1に示すシート10は、表面層1を有しており、表面層1の一方の表面S1は、皺構造を有し、かつ、水に対する接触角が所定の範囲である表面形状を備える。さらに、表面層1の内部ヘイズは所定の範囲である。
従来、樹脂および粒子(マット剤)を含有する防眩層を有する防眩フィルムにおいて、粒子(マット剤)は、一般的に、粒子と樹脂および空気との屈折率差を有し、その粒子の輪郭形状に対応した光線の反射および屈折率差界面による光拡散効果により、光反射を抑制することができる。しかしながら、上述したように、粒子(マット剤)を含有するシートにおいては、内部ヘイズが上昇し、下地視認性が低下してしまう。
一方、本開示におけるシートによれば、表面層が一方の表面に皺構造を有するため、表面層と空気との屈折率差界面での光拡散効果により、光反射を抑制することができる。さらに、本開示においては、表面層の内部ヘイズが所定の値以下である。本開示においては、表面層の皺構造による光拡散効果により、光反射を抑制できるため、従来のようなマット剤を用いる必要がないので、表面層の内部ヘイズを低くすることができる。よって、例えば、シートの観察者とは反対側に視覚対象物を配置した場合には、視覚対象物の視認性を向上させることができる。また、例えば、後述するように、シートが装飾層を有する場合には、装飾層の視認性を向上させることができる。なお、本明細書において、「下地視認性」とは、表面層の表面形状を有する表面側とは反対の面側に位置する、視覚対象物やシート内部における層(例えば装飾層)の視認性をいう。さらには、本開示においては、表面層の皺構造による光拡散効果により、艶消効果が発現され、低艶感を得ることができる。よって、シートに意匠性を付与することもできる。
また、水に対する接触角が90.0度以上であることは、通常、撥水性を有するものと捉えられる。表面層が撥水性を有する表面形状を備えることで、シートの表面に汚れの原因となる物質を含む水が表面に付着したとしても、水を弾くことで、結果として汚れの原因となる物質が除去される。そのため、優れた防汚性が得られる。また、一般的に、撥水性に優れる面は、撥油性にも優れている。よって、本開示におけるシートは、汚れの原因となる物質が油性であっても、優れた防汚性を発揮する。すなわち、本開示におけるシートは、皺構造により発現する撥水性により、汚れの原因となる物質の種類によらず、優れた防汚性を発揮することができる。
従来、防汚性を得るためには、一般的に、撥水剤の使用が考えられる。しかしながら、上述したように、防汚性の向上のために撥水剤を多く使用すると、撥水剤により内部ヘイズが上昇する可能性がある。また、用途によっては、防汚性以外の表面性能、例えば耐擦傷性、強度および耐候性等の性能を満足できない場合がある。さらには、コストが増加することになる。
これに対し、本開示によれば、撥水剤の使用量を極少量としても、皺構造を採用することで防汚性を得ることができる。そのため、本開示によれば、撥水剤の使用による撥水性と、内部ヘイズまたは耐擦傷性、強度および耐候性等の表面性能と、のバランスを考慮する必要がない。したがって、本開示におけるシートは、皺構造により撥水性を発現させることで、優れた防汚性だけでなく、副次的な効果として、例えば内部ヘイズ、耐擦傷性、強度および耐候性等の防汚性以外の優れた表面性能をも、コストを抑えながら獲得することができる。
以下、本開示におけるシートの各構成について説明する。
1.表面層
本開示において、表面層の一方の表面は、皺構造を有し、かつ、水に対する接触角が90.0度以上である表面形状を備える。なお、以下、上記の表面形状を、特定の表面形状と称する場合がある。
本開示におけるシートが積層構造を有する場合には、表面層を最表層として有することが好ましい。また、シートの最表面が、上記の表面形状を有することが好ましい。
(1)表面形状
本開示における表面層が有する表面形状は、皺構造を有し、かつ、水に対する接触角が90.0度以上である。
(a)水に対する接触角
本開示における表面層が有する表面形状において、水に対する接触角は、90.0度以上であり、好ましくは90.5度以上、より好ましくは91.0度以上、さらに好ましくは91.3度以上である。水に対する接触角が上記範囲であると、防汚性が向上する。一方、水に対する接触角が上記範囲より小さいと、撥水性が十分ではなくなるため、優れた防汚性が得られない可能性がある。
ここで、水に対する接触角は、JIS R3257:1999の規定に準拠して測定する。
(b)皺構造の形状
本開示における表面層が有する表面形状において、水に対する接触角が所定の範囲となれば、皺構造の形状は特に限定されないが、皺構造は以下の形状を有することが好ましい。皺構造が以下の形状を有すると、水に対する接触角が所定の範囲となりやすくなる。
皺構造は、不規則な皺による凹凸形状を有することが好ましい。不規則な皺は、複数の突起部により形成する複数の凸部と、複数の突起部により囲まれて形成する凹部と、を有することが好ましい。また、突起部は、線条の突起部を有することが好ましい。
なお、本明細書において、「線条の突起部」とは、突起部の長さと幅との比(長さ/幅)が3以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上であることを意味する。突起部の長さおよび幅の決定方法は後述の通りである。以下、線条の突起部を線条突起部と称する場合がある。
皺構造の具体的な態様としては、例えば図2に示される態様が挙げられる。図2には、表面層の表面形状として、平面視において不規則な皺を有していること;不規則な皺が、湾曲した複数の線条突起部により形成する複数の凸部3と、複数の突起部(複数の凸部3)により囲まれて形成する凹部2とを有すること;湾曲した複数の凸部3の少なくとも一部が、各々蛇行する線条突起部により形成され、蛇行する線条突起部に囲まれるようにして蛇行する凹部2が形成していること;も示されている。表面層の表面形状は、図2に示されるような不規則な皺により構成される皺構造を有することで、水の接触角が所定の範囲となりやすく、防汚性が向上する。
ここで、「湾曲」とは、平面視において、連続する線条の凸部3の延在方向が一方側から他方側に反転している部分を1箇所以上有することを意味する。以下、連続する線条の凸部3の延在方向が一方側から他方側に反転している部分を、反転部分と称する場合がある。反転部分の一例としては、例えば線条の凸部3の平面視形状の幅を無視したとき(幅を0とみなしたとき)に連続曲線で近似される場合に、変曲点を有する形態等が挙げられる。また、反転部分の他の例としては、線条の凸部3の平面視形状の幅を無視したときに直線で近似される場合に、V字型の折線または三角形の一頂点を挟む二辺で近似される部分を有する形態等が挙げられる。
また、「蛇行」とは、平面視において、反転部分を2箇所以上有し、線条の凸部3をその延在方向に進んだときに、互いに隣接する2箇所の反転部分において、交互に線条の凸部3の延在方向が逆向きに反転する部分を有することを意味する。例えば、線条の凸部3の平面視形状の幅を無視したときに連続曲線で近似される場合に、ローマ字「S」で近似される部分を有する形態等が挙げられる。また、線条の凸部3の平面視形状の幅を無視したときに直線で近似される場合に、ローマ字「W」で近似される部分を有する形態等が挙げられる。
本明細書において、「不規則」とは、一定の法則を有する形状、また一定の法則をもって配列される、いわゆるパターン化している、とはいえないことを意味する。不規則ではない形状(規則的な形状)の典型的な例としては、例えば、円柱形状の単位レンズをその長手方向と直行する方向に複数個が互いに隣接して配列した、いわゆるレンチキュラーレンズのように、特定の方向に一定の周期性をもって配列した形状等が挙げられる。よって、本開示において、表面層の表面形状を形成する皺構造が有し得る不規則な皺は、一つの突起部の形状自体が、周期性等の一定の法則をもって形成される形状ではなく、不規則であること;複数の突起部により形成する複数の凸部の形状が、一定の法則をもって形成および配列されるものではなく、不規則であること;このような複数の突起部により囲まれた凹部の形状も不規則であること;を包含する。
表面形状を形成する皺構造において、一つの突起部(一つの凸部)の形状自体、複数の突起部(複数の凸部)の各々の形状およびその配列、複数の突起部により囲まれた凹部の形状のいずれかが不規則であれば、表面層の表面が特定の表面形状となりやすく、防汚性が向上する。これと同様の理由により、いずれもが不規則であることがより好ましい。
上述したように、表面層の一方の表面は、皺構造を有し、実質的には凹凸形状を有する。凹凸形状における凸部と凹部は、凹凸形状における高さ分布の中間値を基準とし、当該中間値を超える高さの領域を凸部、当該中間値以下の高さの領域を凹部と定義する。例えば、表面層の表面の高さと1:1に対応する濃度を有する画像の濃度差(すなわち明度差)を利用して、濃度分布画像で最も濃い部分を階調255とし、濃度分布画像で最も薄い部分を階調0として、階調0~255について、階調0~127を凹部、階調128~255を凸部と、二値化処理して区分すればよい。なお、この場合、高さの中間値に対する濃度の中間値は127となる。
また、例えば図2にも示されるように、皺構造は、不規則ながらもある程度の均質性をもった複数の突起部により形成される複数の凸部と、凸部により囲まれた凹部と、を有することが好ましい。よって、図2に示される凸部(突起部)において、凸部の幅が極端に変化する形状や、凸部の高さが極端に変化する形状は、優れた防汚性を得るにあたり好ましい態様とはいえない。皺構造を構成する皺の形状、すなわち、凸部(突起部)および凹部の形状について、防汚性を向上させる上で有効となり得る具体的な態様について、以下説明する。
凹部の形状は、断面視において、鋭角状でもよく、半円状または半楕円状であってもよく、これらの組合せであってもよい。また、凹部の形状は、断面視において、一つの凸部が一部に凹部を有する形状であってもよい。
一方、凸部の形状は、断面視において、幅の広狭はあるものの、半円または半楕円の形状を有することができる。
凸部の高さ(突起部の高さ)は、例えば、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは2μm以上である。また、凸部の高さは、例えば、10μm以下程度である。また、凸部の幅は、例えば、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上である。また、凸部の幅は、例えば、好ましくは10μm以下、より好ましくは4μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。凸部の高さおよび幅が上記範囲内であると、凹部との関係で、水に対する接触角が所定の範囲となりやすく、防汚性が向上する。
凹部の深さは、例えば、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは2μm以上である。また、凹部の深さは、例えば10μm以下程度である。また、凹部の幅は、例えば、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上である。また、凹部の幅は、例えば、好ましくは10μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2μm以下である。凹部の深さおよび幅が上記範囲内であると、凸部との関係で、表面層の表面が特定の表面形状となりやすく、防汚性が向上する。
凸部の頂から凹部の底までの距離(凸部と凹部との高低差)は、例えば、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは4μm以上である。また、上記距離は、例えば、好ましくは20μm以下、より好ましくは8μm以下、さらに好ましくは7μm以下である。上記距離が上記範囲内であると、表面層の表面が特定の表面形状となりやすく、防汚性が向上する。
ここで、凸部の寸法は、表面層の表面について、任意の10箇所(100μm四方の領域×10箇所)における任意の10の凸部(突起部)、すなわち合計100の凸部の平均値である。また、図2に示されるように、1の凸部(突起部)において、凸部の幅は同じではなく広狭があるため、1の凸部(突起部)の幅は、1の凸部(突起部)における任意の5箇所の幅の平均値とする。1の凸部(突起部)の高さについても同様とする。
また、凹部の寸法は、上記の凸部の寸法と同様に決定する。
凸部の占有割合は、例えば、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上である。また、凸部の占有割合は、例えば、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下、さらに好ましくは60%以下である。凸部の占有割合が上記範囲内であると、凸部に囲まれる凹部の占有割合との関係で、表面層の表面が特定の表面形状となりやすく、防汚性が向上する。
ここで、凸部の占有割合は、表面層の任意の10箇所(100μm四方の領域×10箇所)における凸部の占有割合の平均値である。
凸部および凹部は、略同一方向および略同一幅の箇所を有していてもよいが、当該箇所の長さは短いことが好ましい。上記長さが短いと、表面層の表面が特定の表面形状となりやすく、防汚性が向上する。具体的には、略同一方向および略同一幅の凸部および凹部が連続する長さは、好ましくは95μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは70μm以下である。また、上記長さは、例えば、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上である。上記長さが上記範囲内であると、皺がより不規則となるため、水に対する接触角を所定の範囲とし、優れた防汚性が得られやすくなる。
ここで、表面層の任意の10箇所(100μm四方の領域×10箇所)における任意の10の凸部および凹部(すなわち合計100の凸部および凹部)について、その80%以上が上記の条件を満たすものであることが好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、よりさらに好ましくは95%以上である。
なお、本明細書における「略同一」の「略」は、概ね同じであることを意味し、枝分かれすることなく、略同一方向は±3°以内をいい、略同一幅は±5%以内をいう。
また、100μm四方の領域における凸部(突起部)の数は、例えば、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、さらに好ましくは30以上である。上記の凸部の数は、例えば、好ましくは200以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは70以下である。上記の凸部の数が上記範囲内であると、表面層の表面が特定の表面形状となりやすく、防汚性が向上する。
ここで、100μm四方の領域における凸部の数は、表面層の10箇所(100μm四方の領域×10箇所)における凸部の数の平均値である。
表面層の一方の表面は、少なくともその一部に皺構造を有することが好ましく、全面にわたって皺構造を有することがより好ましい。
(c)皺構造の表面性状
本開示における表面層が有する表面形状において、水に対する接触角が所定の範囲となれば、皺構造の表面性状は特に限定されないが、皺構造は以下の表面性状を有することが好ましい。
(i)Ra(算術平均粗さ)
表面性状として、JIS B0601:2013に規定される輪郭曲線の高さ方向のパラメータであるRa(算術平均粗さ)が、2.00μm以上であることが好ましい。Ra(算術平均粗さ)は、輪郭曲線の高さ方向のパラメータの一つであり、基準長さにおける輪郭曲線において、平均面からの高低差の平均値である。Ra(算術平均粗さ)の数値が大きくなるほど、表面形状が有する皺構造において凸形状を呈する部分、これに応じて形成する凹部の高低差がより大きくなる傾向を示す。高低差が大きくなると、凸形状を呈する部分が際立つことになるため、水に対する接触角が90.0度以上になりやすく、防汚性が向上する。
上記Ra(算術平均粗さ)は、より好ましくは2.40μm以上、さらに好ましくは2.50μm以上である。一方、上記Ra(算術平均粗さ)の上限は特に限定されないが、製造のしやすさ等も考慮すると、好ましくは5.00μm以下、より好ましくは4.00μm以下、さらに好ましくは3.70μm以下である。
なお、本明細書におけるRa(算術平均粗さ)の測定にあたり、カットオフ値は0.8mmである。また、本明細書において、上記Ra(算術平均粗さ)は、任意の10箇所における測定値の平均値である。
(ii)RSm(曲線要素の平均長さ)
表面性状として、JIS B0601:2013に規定される輪郭曲線の横方向のパラメータであるRSm(曲線要素の平均長さ)が、50.00μm以下であることが好ましい。RSm(曲線要素の平均長さ)は、輪郭曲線の横方向のパラメータであり、基準長さにおける輪郭曲線要素の長さの平均である。RSmが小さいほど、表面形状が有する皺構造において凸形状を呈する部分の頂点がより密に存在する傾向を示す。一の凸形状を呈する部分と他の凸形状を呈する部分との間が近くなることで、これらの凸形状を呈する部分の間に水等が入り込みにくくなるため、結果として水に対する接触角が90.0度以上になりやすく、防汚性が向上する。
上記RSm(曲線要素の平均長さ)は、より好ましくは47.50μm以下、さらに好ましくは45.00μm以下である。上記RSm(曲線要素の平均長さ)の下限は、製造のしやすさ等も考慮すると、好ましくは20.00μm以上、より好ましくは30.00μm以上、さらに好ましくは35.00μm以上である。
なお、本明細書におけるRSm(曲線要素の平均長さ)の測定にあたり、カットオフ値は0.8mmである。また、本明細書において、上記RSm(曲線要素の平均長さ)は、任意の10箇所における測定値の平均値である。
(iii)Spc(突起部頂点の算術平均曲率)
表面性状として、JIS B0601:2013に規定されるSpc(突起部頂点の算術平均曲率)が、4000mm-1以上であることが好ましい。Spc(突起部頂点の算術平均曲率)は、JIS B0601:2013に規定される三次元表面性状パラメータの一つであり、基準領域に含まれる形体画像で山(凸部)と分類された箇所の山頂(突起部頂点)の曲率半径の算術平均値から求められる、山頂の先端部の平均曲率(平均的な鋭さ)である。Spcは、半径(mm)の逆数(mm-1)であり、Spcが大きいほど平均曲率は大きくなるので(半径は小さくなるので)、先端部の形状は鋭くなる。そのため、水に対する接触角が90.0度以上になりやすく、防汚性が向上する。
上記Spc(突起部頂点の算術平均曲率)は、より好ましくは4150mm-1以上、さらに好ましくは4300mm-1以上である。上記Spc(突起部頂点の算術平均曲率)の上限は、製造のしやすさ等も考慮すると、好ましくは7000mm-1以下、より好ましくは6000mm-1以下、さらに好ましくは5000mm-1以下である。
なお、本明細書におけるSpc(突起部頂点の算術平均曲率)の測定にあたり、カットオフ値は0.8mmである。また、本明細書において、上記Spc(突起部頂点の算術平均曲率)は、任意の10箇所における測定値の平均値である。
(2)表面層の物性
(a)内部ヘイズ
本開示における表面層の内部ヘイズは、4.0%以下であり、好ましくは3.6%以下である。一方、表面層の内部ヘイズの下限は、特に限定されないが、実質的に0%以上であることが好ましい。
なお、「実質的に」とは、測定誤差を考慮してということを意味する。
ここで、表面層の内部ヘイズは、JIS K7136:2000に準拠して測定することができる。表面層の内部ヘイズを測定するに際しては、例えば、表面層の特定の表面形状を有する表面に透明層を配置すること等により、凹凸形状を埋めて平坦にする。これにより、表面形状起因のヘイズの影響をなくすことができる。また、表面層の内部ヘイズを測定するに際しては、シートを構成する表面層のみを別途用意する。表面層の内部ヘイズの測定方法の詳細については、実施例の項に記載する。
(b)全光線透過率
本開示における表面層の全光線透過率は、特に限定されないが、90%以上であることが好ましく、92%以上であることがさらに好ましい。
ここで、表面層の全光線透過率は、JIS K7361-1に準拠して測定することができる。
(c)60°グロス値
本開示におけるシートは、特定の表面形状を備える表面層を有することにより、優れた艶消効果が発揮される。なお、「艶消」は、光沢を視認しにくく、低艶感が得られることを意味する。
表面層の表面形状を有する表面の60°グロス値は、例えば、好ましくは10.0以下、より好ましくは7.5以下、さらに好ましくは5.0以下、中でも好ましくは4.0以下、特に好ましくは3.6以下、最も好ましくは2.5以下である。
ここで、表面層の表面形状を有する表面の60°グロス値は、JIS K5600-4-7:1999に準拠して測定した60°鏡面光沢度のことであり、例えばグロスメータ等を用いて測定することができる。表面層の表面形状を有する表面の60°グロス値は、任意の10箇所における測定値の平均値である。
(3)表面層の材料
表面層は、樹脂組成物の硬化物を含有することが好ましい。表面層を樹脂組成物の硬化物で構成することにより、特定の表面形状を有する表面層を形成しやすい。さらに、内部ヘイズが所定の値以下の表面層を得ることができる。
表面層の形成に用いられる樹脂組成物としては、硬化することにより硬化物となる樹脂を含む組成物であればよい。樹脂組成物は、表面層の形成方法に応じて適宜選択される。本開示において、後述するように、表面層の形成方法には、3つの方法がある。第1の方法は、電離放射線による樹脂組成物の硬化によって、特定の表面形状を形成する方法である。また、第2の方法は、賦形用シートを用いた賦形によって、特定の表面形状を形成する方法である。第3の方法は、転写シートを用いて、表面層を転写する方法である。以下、第1の方法に用いられる第1の樹脂組成物、第2の方法に用いられる第2の樹脂組成物、および第3の方法に用いられる第3の樹脂組成物に分けて説明する。
(a)第1の樹脂組成物
第1の樹脂組成物は、電離放射線による硬化により、特定の表面形状を形成可能な組成物である。
(i)樹脂
第1の樹脂組成物に含まれる樹脂は、電離放射線硬化性樹脂であることが好ましい。特定の表面形状を形成しやすいからである。また、電離放射線硬化性樹脂は、表面層の形成がしやすく、耐擦傷性、強度および耐候性等の表面性能、また加工性能を向上させやすいことを考慮しても、好ましい。
電離放射線硬化性樹脂は、電離放射線硬化性官能基を有する樹脂のことであり、電離放射線硬化性官能基は電離放射線の照射によって架橋硬化する基である。例えば(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合を有する官能基等が好ましく挙げられる。
なお、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基またはメタクロイル基を示す。また、(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートを示す。
また、電離放射線とは、電磁波または荷電粒子線のうち、分子を重合及び/又は架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)または電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も含まれる。
電離放射線硬化性樹脂としては、電子線硬化性樹脂および紫外線硬化性樹脂が挙げられる。中でも、紫外線硬化性樹脂が好ましい。表面層の内部ヘイズを減少させることができる。また、皺形成安定剤による皺の形成を安定させて、安定的に防眩効果や艶消効果を向上させることができる。
電離放射線硬化性樹脂は、具体的には、従来、電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー、重合性オリゴマーの中から適宜選択して用いることができる。
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好ましく、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ電離放射線硬化性官能基として、少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
皺の形成を安定させて、安定的に防眩効果や艶消効果を向上させるため、さらに後加工特性、耐擦傷性および耐候性等の表面特性を向上させるため、多官能性(メタ)アクリレートモノマーの官能基数は、2以上8以下が好ましく、2以上6以下がより好ましい。また、上記官能基数であると、皺構造が得られやすくなる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは、単独で、または複数種を組み合わせて用いてもよい。
重合性モノマーは単独で、または複数種を組み合わせて用いることができ、二種以上の重合性モノマーを組み合わせて用いることが好ましい。二種以上の重合性モノマーを組み合わせて用いることで、表面形状が特定の表面形状となりやすく、防汚性が向上する。また、防汚性以外の表面性能、すなわち耐擦傷性、強度および耐候性等の表面性能、また加工性能も向上する。
二種以上の重合性モノマーを組み合わせて用いる場合、単官能モノマーと多官能モノマーとの組合せ、二種以上の多官能モノマーの組合せが好ましく、多官能モノマーと多官能モノマーとの組合せがより好ましい。
多官能モノマーを用いる場合、官能基数は、2以上が好ましい。また、官能基数は、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下である。
単官能モノマーと多官能モノマーとを組み合わせて用いる場合、多官能モノマーの官能基数は、2以下が最も好ましい。すなわち、多官能モノマーの官能基数は2であることが最も好ましい。また、この場合、単官能モノマーおよび多官能モノマーは、(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。
また、二種以上の多官能モノマーを用いる場合、官能基数2のモノマーと、官能基数4のモノマーと、を組み合わせることが最も好ましい。また、この場合、多官能モノマーは、(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。
重合性オリゴマーとしては、例えば、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ電離放射線硬化性官能基として、少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、およびノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー等がある。
皺の形成を安定させて、安定的に防眩効果や艶消効果を向上させるため、および表面層の内部ヘイズを減少させるため、さらに後加工特性、耐擦傷性及び耐候性等の表面特性を向上させるため、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマーがより好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーがさらに好ましい。
重合性オリゴマーは、単独で、または複数種を組み合わせて用いることができ、一種の重合性オリゴマーを単独で用いることが好ましい。
皺の形成を安定させて、安定的に防眩効果や艶消効果を向上させるため、および表面層の内部ヘイズを減少させるため、さらに加工特性、耐擦傷性および耐候性等の表面特性を向上させるために、重合性オリゴマーの官能基数は、2以上8以下が好ましく、2以上6以下がより好ましく、2以上4以下がさらに好ましい。
また、上記と同様の目的のため、重合性オリゴマーの重量平均分子量は、2,500以上7,500以下が好ましく、3,000以上7,000以下がより好ましく、3,500以上6,000以下がさらに好ましい。
ここで、重量平均分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された平均分子量である。
樹脂としては、重合性オリゴマーと重合性モノマーとを組み合わせて用いることが好ましい。この場合、重合性オリゴマーは、多官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであることが好ましく、多官能性ウレタンアクリレートオリゴマーであることがより好ましい。また、重合性モノマーは、多官能の重合性モノマーであることが好ましく、多官能性(メタ)アクリレートモノマーであることがより好ましく、多官能アクリレートモノマーであることがさらに好ましい。皺の形成を安定させて、安定的に防眩効果や艶消効果を向上させ、および表面層の内部ヘイズを減少させ、さらに加工特性、耐擦傷性および耐候性等の表面特性を向上させることもできる。
重合性オリゴマーと重合性モノマーとを組み合わせて用いる場合には、重合性オリゴマーと重合性モノマーとの合計100質量部に対する重合性オリゴマーの含有量は、好ましくは40質量部以上、より好ましくは50質量部以上、さらに好ましくは55質量部以上、よりさらに好ましくは60質量部以上である。また、上記の重合性オリゴマーの含有量は、好ましくは90質量部以下、より好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは70質量部以下である。
また、重合性オリゴマーを組み合わせて用いることもでき、官能基数の異なる二種の重合性オリゴマーを組み合わせて用いることが好ましい。この場合、重合性オリゴマーの全量100質量部に対する官能基数のより大きい重合性オリゴマーの含有量は、好ましくは50質量部以上、より好ましくは55質量部以上、さらに好ましくは60質量部以上、よりさらに好ましくは65質量部以上である。
(ii)他の成分
(皺形成安定剤)
本開示における表面層は、皺形成安定剤を含んでもよいし、含まなくてもよい。
表面層が皺形成安定剤を含まない場合には、内部ヘイズを確実に低減することができる。
一方、表面層が皺形成安定剤を含む場合には、表面層の表面に皺を安定的に形成することができる。なお、皺形成安定剤を用いなくても表面層に皺構造を形成することはできるが、皺形成安定剤を用いることで、形成された皺構造が安定化され、安定的な防眩効果や艶消効果、そして表面層の全面にわたり皺が安定して形成することによる面状態の均一性を付与することができる。この場合、内部ヘイズを低減するためには、表面層中の樹脂と皺形成安定剤との屈折率差を同程度とすること、および、皺形成安定剤の真球度を高くすること、の少なくとも一方または両方を行うことが好ましい。
なお、「皺形成安定」とは、皺の形状および皺の幾何学的特性値(個々の突起部の長さ、幅、および長さと幅の比)、および皺の表面性状(Ra、RSm、Spc等)について、その面内分布(分散σ)が、皺形成安定剤を添加することにより、無添加の場合に比べて、収束することを意味する。これにより、後述する表面形状の60°グロス値の面内分布(分散σ)も収束することとなる。皺形成安定剤は、光を拡散して、光反射の抑制および艶消しを行うものではなく、皺構造を安定化させるために添加するものである。
よって、従来技術におけるいわゆる「マット剤」と本開示における「皺形成安定剤」とは、例えその構成物質、平均粒径が同じまたは類似であった場合においても、両者の光反射抑制および艶消の機構(作用)、光反射抑制および艶消を発現させるための構造、ならびに使用量と、表面の艶(グロス値)の程度との関係において異なるものとなる。
従来技術において、光反射抑制や艶消のために用いられてきたマット剤は、物理的な形状に起因する光拡散効果により、それ自体が防眩効果や艶消効果を発現するものである。具体的には、一般にマット剤と称される粒子は、一般に粒子と周囲の樹脂および空気との屈折率差を有し、その粒子の輪郭形状に対応した光線の反射および屈折性界面による光拡散効果により、防眩効果や艶消効果を発現する。このため、表面層にマット剤を用いてしまうと、外光(入射光)がマット剤により拡散してしまい、コントラストが低下してしまう。
一方、皺形成安定剤は、粒子それ自体による光線の反射および屈折による光拡散が防眩効果や艶消効果を発現するのではなく、皺形成安定剤に起因して表面層の表面における皺の形成を安定させることで、かかる表面と空気との屈折率差界面での光拡散効果により、シートに安定的に防眩効果および艶消効果を付与するというものである。よって、本開示で用いられる皺形成安定剤は、それ自体が防眩効果および艶消効果を発現するマット剤とは、(仮に、両者の構成物質、平均粒径が同じまたは類似であったとしても、)両者の光反射抑制および艶消の機構(作用)、光反射抑制および艶消を発現させるための構造等は異なる。
さらに、「皺形成安定剤」と「マット剤」とは、含有量と表面の艶(グロス値)との関係においても異なる。同じ物質Aを皺形成開始剤AW(W:皺,wrincle)として用い、これを特定量Cで含有させて表面に皺を形成させた場合の表面の60°グロス値G60°
AW(C)は、同物質Aを単なるマット剤AMとして用い、これを特定量Cで含有させるも表面に皺が形成しない場合の表面の60°グロス値G60°
AM(C)よりも明らかに低下する。すなわち、以下の関係式が成立する。
G60°
AW(C)<G60°
AM(C)
皺形成安定剤としては、マット剤ではなく、具体的には、平均粒径が表面層の厚さの100%以下および30μm以下のいずれか小さい方を上限とするものであれば、特に制限なく用いることができる。
ここで、皺形成安定剤等の粒子の平均粒径とは、表面層の厚さ方向の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、加速電圧3.0kV、拡大倍率5万倍の条件で観察し、無作為に選択した100個の粒子の非凝集体について測定した粒径の平均値(算術平均径)である。なお、粒径は、粒子の断面を任意の平行な2本の直線で挟んだときに、その2本の直線間距離が最大となるような2本の直線の組み合わせにおける直線間距離を測定した値である。
皺形成安定剤としては、例えば有機粒子、無機粒子を用いることができる。有機粒子を構成する有機物としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル-スチレン共重合体樹脂、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル樹脂、ベンゾグアナミン-メラミン-ホルムアルデヒド縮合物、シリコーン、フッ素系樹脂およびポリエステル系樹脂等が挙げられる。樹脂と皺形成安定剤の屈折率差を小さくし、表面層の内部ヘイズを減少させるためには、有機粒子を用いることが好ましい。無機粒子を構成する無機物としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、アルミノシリケートおよび硫酸バリウム等が挙げられる。中でも、透明性に優れるシリカが好ましい。表面層の強度を向上させるためには、無機粒子を用いることが好ましい。
皺形成安定剤の形状としては、特に限定されないが、例えば球形、多面体、鱗片状、不定形等が挙げられる。表面層の内部ヘイズを減少させるためには、球状が好ましい。球状であることにより、皺形成安定剤による反射光の拡散が抑えられ、コントラストの低下が生じにくくなると考えられるからである。
表面層の内部ヘイズを減少させるためには、皺形成安定剤の真球度は、10%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。皺形成安定剤の真球度の下限値は、特に限定されないが、入手容易性から、0.1%以上であることが好ましく、0.5%以上であることがより好ましい。
ここで、「真球度」とは、任意に選んだ10個の粒子の、各粒子の外形の真円からのずれの程度を平均した値である。具体的には、各粒子の電子顕微鏡写真による、各粒子の表面に接する最小の外接円(最小外接円)の半径に対する、最小外接円と粒子表面の各点との半径方向の距離の最大値の割合(%)をいう。
皺形成安定剤として、シリカを用いる場合には、窒素吸着法によるBET法による比表面積は小さい方が好ましい。光拡散が抑えられるためである。比表面積は、50m2/g以上800m2/g以下であることが好ましく、100m2/g以上500m2/g以下であることがより好ましい。
同様に、光拡散が抑えられるため、吸油量が小さい方が好ましい。吸油量は、700ml/100g以下であることが好ましく、600ml/100g以下であることがより好ましい。ここで、吸油量は、JIS K6217-4「オイル吸収量の求め方」に記載の方法により決定する。
皺形成安定剤の表面は光拡散を抑えるために、有機化合物により被覆されていてもよい。防眩効果および艶消効果のため、ならびに表面層の内部ヘイズを減少させるため、平均粒径が表面層の厚さの100%以下および30μm以下のいずれか小さい方を上限とする皺形成安定剤について、その平均粒径により区別される二種の皺形成安定剤の少なくともいずれかを用いることが好ましい。二種の皺形成安定剤は、具体的には、平均粒径が1μm以上、かつ表面層の厚さの100%以下および30μm以下のいずれか小さい方を上限とする第1の皺形成安定剤、および、平均粒径が1μm未満である第2の皺形成安定剤である。二種の皺形成安定剤の少なくともいずれかを用いれば、皺の形成が安定し、安定的に優れた防眩効果および艶消効果が得られ、また表面層の内部ヘイズを減少させることができる。
第1の皺形成安定剤の平均粒径は、1μm以上、かつ表面層の厚さの100%以下および30μm以下のいずれか小さい方を上限とする。安定的に防眩効果および艶消効果を向上させ、表面層の内部ヘイズを減少させることができるため、第1の皺形成安定剤の平均粒径は、好ましくは1.3μm以上、より好ましくは1.5μm以上、さらに好ましくは1.8μm以上である。また、第1の皺形成安定剤の平均粒径は、表面層の厚さに対しては、好ましくは表面層の厚さの90%以下、より好ましくは表面層の厚さの80%以下、さらに好ましくは表面層の厚さの70%以下である。また、第1の皺形成安定剤の平均粒径は、絶対値については、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは8μm以下、よりさらに好ましくは7μm以下である。第1の皺形成安定剤の平均粒径は、表面層の厚さに対する上限と絶対値の上限とを任意に組み合わせた場合のいずれか小さい方とすればよい。例えば、表面層の厚さの90%以下および20μm以下のいずれか小さい方を上限としてもよいし、表面層の厚さの90%以下および10μm以下のいずれか小さい方を上限とすることもできる。なお、表面層の厚さについては後述する。
また、第2の皺形成安定剤の平均粒径は、1μm未満である。皺の形成を安定させて、安定的に防眩効果および艶消効果を向上させ、表面層の内部ヘイズを減少させるため、第2の皺形成安定剤の平均粒径は、好ましくは1nm以上、より好ましくは3nm以上、さらに好ましくは5nm以上である。また、第2の皺形成安定剤の平均粒径は、好ましくは900nm以下、より好ましくは700nm以下、さらに好ましくは500nm以下である。平均粒径が可視光付近またはそれ以下であると、可視光に対する表面層の内部ヘイズが減少するため好ましい。
皺形成安定剤による皺の形成を安定させて、安定的に防眩効果および艶消効果を向上させ、表面層の内部ヘイズを減少させるためには、皺形成安定剤(第1の皺形成安定剤と第2の皺形成安定剤とを併用する場合はこれらの合計含有量)の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.75質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上、よりさらに好ましくは1.2質量部以上である。また、上記の皺形成安定剤の含有量の上限は、安定的な防眩効果および艶消効果の向上、また表面層の内部ヘイズを減少させるためには、特に限定されないが、例えば樹脂組成物の塗布性、また効率的に防眩効果および艶消効果を向上させるため、樹脂100質量部に対して、好ましくは25.0質量部以下、より好ましくは15.0質量部以下、さらに好ましくは10.0質量部以下、特に好ましくは7.5質量部以下、最も好ましくは6.0質量部以下である。
第1の皺形成安定剤と第2の皺形成安定剤とを併用する場合、第1の皺形成安定剤および第2の皺形成安定剤の各々の含有量としては、合計の含有量が上記範囲内であれば特に限定されない。第2の皺形成安定剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上である。また、第2の皺形成安定剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは7.5質量部以下、さらに好ましくは5.0質量部以下、特に好ましくは3.5質量部以下である。また、第1の皺形成安定剤と第2の皺形成安定剤との配合割合としては、これらの合計量を100質量部とした場合の第1の皺形成安定剤の配合量が、好ましくは0.0質量部以上、0.95質量部以下、より好ましくは0.10質量部以上、0.90質量部以下、さらに好ましくは0.20質量部以上、0.80質量部以下、特に好ましくは0.30質量部以上、0.70質量部以下である。
皺形成安定剤としては、上述のように、有機粒子、無機粒子を用いることができるが、これらの粒子の種類自体は、従来、マット剤としても用いられるものを含むものともいえる。マット剤が、物理的な形状に起因する光拡散効果により、それ自体が防眩効果および艶消効果を発現するためには、多く使用する必要がある。しかし、本開示においては、上述のように少量の含有量としても、すなわち物理的な形状に起因する光拡散効果により、それ自体が防眩効果および艶消効果を発現するために必要な含有量より少ない含有量としても、マット剤により得られる効果に比べて極めて優れた防眩効果および艶消効果が得られている。よって、本開示のシートは、実質的にマット剤を含まないにも関わらず、表面に皺が安定して形成することにより、マット剤を用いた場合に比べてより優れた防眩効果および低艶感が安定的に得られ、表面層の内部ヘイズを減少させることができる、といえる。
(光重合開始剤および光重合促進剤)
樹脂が紫外線硬化性樹脂である場合、樹脂組成物は、光重合開始剤、光重合促進剤等を含むことができる。
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、チオキサントン類等から選ばれる1種以上が挙げられる。
また、光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速めることができるものである。光重合促進剤としては、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
光重合開始剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上である。また、光重合開始剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは1.5質量部以下、特に好ましくは1.0質量部以下である。光重合開始剤の含有量が上記範囲内であると、効率的に光重合開始剤を使用する効果が得られる。また、光重合促進剤の含有量は、上記の光重合開始剤と同様である。
(耐候剤)
表面層は、例えば紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤を含むことができる。これにより、表面層に耐候性を付与することができる。紫外線吸収剤としては、特に限定されず、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。光安定剤としては、特に限定されず、例えば、ピペリジニルセバケート系光安定剤等のヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。また、紫外線吸収剤、光安定剤は、分子中に(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合を有する反応性官能基を有していてもよい。紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤は、単独で、または複数種を組み合わせて用いることができる。
紫外線吸収剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、さらに好ましくは2.0質量部以上、特に好ましくは3.0質量部以上である。また、紫外線吸収剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは8.0質量部以下、さらに好ましくは7.0質量部以下、特に好ましくは6.0質量部以下である。紫外線吸収剤の含有量が上記範囲内であると、効率的に紫外線吸収剤を使用する効果が得られる。また、光安定剤の含有量は、上記の紫外線吸収剤と同様である。
(撥水剤)
表面層は、防汚性を向上させるため、撥水剤を含むことができる。撥水剤としては、例えば、シリコーン系撥水剤、フッ素系撥水剤、ワックスエマルション系撥水剤等が挙げられる。撥水剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.8質量部以下、さらに好ましくは0.6質量部以下である。また、撥水剤の含有量の下限は、樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上とすればよい。表面層が発現する防汚性は、あくまで表面形状が有する皺構造により、水に対する接触角を所定の範囲とすることにより得られる。すなわち、本開示における表面層は、撥水剤を用いなくても、優れた防汚性を発現する。よって、撥水剤を使用することはできるが、その使用量は少なければ少ないほど好ましい。内部ヘイズをより一層低減することができるからである。
(b)第2の樹脂組成物
第2の樹脂組成物は、賦形用シートを用いた賦形により、特定の表面形状を形成可能な組成物である。賦形により特定の表面形状を形成可能であるため、第2の樹脂組成物は第1の樹脂組成物よりも比較的自由に選択することができる。
(i)樹脂
第2の樹脂組成物に含まれる樹脂としては、特定の表面形状を賦形することが可能な樹脂であれば特に限定されず、硬化性樹脂を用いることができる。硬化性樹脂としては、例えば、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。
電離放射線硬化性樹脂としては、上記第1の樹脂組成物に用いられる電離放射線硬化性樹脂と同様である。
熱硬化性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、尿素メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。
(ii)他の成分
(光重合開始剤および光重合促進剤)
樹脂が紫外線硬化性樹脂である場合、樹脂組成物は、光重合開始剤、光重合促進剤等を含むことができる。光重合開始剤および光重合促進剤については、上記第1の樹脂組成物に用いられる光重合開始剤および光重合促進剤と同様である。
(硬化剤)
樹脂が熱硬化性樹脂である場合、樹脂組成物は、硬化剤を含むことができる。硬化剤は、熱硬化性樹脂の種類等に応じて適宜選択される。
(耐候剤)
表面層は、例えば紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤を含むことができる。耐候剤については、上記第1の樹脂組成物に用いられる耐候剤と同様である。
(撥水剤)
表面層は、防汚性を向上させるため、撥水剤を含むことができる。撥水剤については、上記第1の樹脂組成物に用いられる撥水剤と同様である。
(c)第3の樹脂組成物
第3の樹脂組成物は、転写シートを用いて表面層を転写する方法に用いられる組成物である。第3の樹脂組成物は、上記の第2の樹脂組成物と同様とすることができる。また、転写シートについては後述する。
(4)表面層
表面層の厚さは、特定の表面形状を形成することができ、内部ヘイズが所定の値以下となる厚さであれば特に限定されないが、形成のしやすさ等も考慮すると、通常、1μm以上であり、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは4μm以上、特に好ましくは5μm以上である。また、表面層の厚さは、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下、特に好ましくは100μm以下である。表面層の厚さが上記範囲内であると、表面形状が特定の表面形状となりやすく、防汚性が向上する。また、表面層の厚さが上記範囲内であると、表面層を形成しやすく、耐擦傷性、強度および耐候性等の表面性能、また加工性能も得られやすくなる。
また、表面層の厚さの好ましい範囲は、表面層の形成方法によっても異なる。後述する第1の方法の場合、表面層の厚さは、例えば、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは3μm以上である。一方、この場合、表面層の厚さは、例えば、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは50μm以下である。
後述する第2の方法の場合、表面層の厚さは、例えば、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは20μm以上である。一方、この場合、表面層の厚さは、例えば、好ましくは300μm以下であり、より好ましくは250μm以下である。
ここで、表面層の厚さは、シートの断面について、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した画像から20箇所の厚さを測定し、20箇所の値の平均値とする。なお、SEMの加速電圧は3kV、倍率は厚さに応じて設定とする。また、他の層の厚さについても同様である。
本開示におけるシートが、後述するように基材層をさらに有する場合、表面層は、シートに対して、部分的に配置されていてもよく、全面に配置されていてもよい。中でも、表面層は、シートの全面に配置されていることが好ましい。
(5)表面層の形成方法
(a)第1の方法
第1の方法は、電離放射線による樹脂組成物の硬化によって、特定の表面形状を形成する方法である。第1の方法では、上記第1の樹脂組成物を用いることができる。第1の方法は、基材層の一方の面側に、第1の樹脂組成物を塗布して塗布層を形成する塗布層形成工程と、電離放射線による照射処理により塗布層を硬化させて、特定の表面形状を有する表面層を形成する表面層形成工程とを有することが好ましい。
(i)塗布層形成工程
塗布層形成工程において、第1の樹脂組成物の塗布方法としては、例えば、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方法が挙げられる。
塗布層の厚さは、表面層の厚さと同様とすることができる。
また、第1の樹脂組成物が溶剤を含有する場合、第1の樹脂組成物の塗布後に、溶剤を乾燥させてもよい。
(ii)表面層形成工程
表面層形成工程では、上記塗布層を、電離放射線による照射処理により硬化させて、特定の表面形状を有する表面層を形成する。
照射処理としては、少なくとも以下(1)および(2)の照射処理をこの順に行うことが好ましい。
(1)100nm以上200nm未満の第1の波長光の照射処理
(2)電子線および200nm以上400nm以下の第2の波長光の少なくとも一方での照射処理
上記(1)および(2)の照射処理を行うことで、表面形状が特定の表面形状となりやすく、防汚性が向上しやすくなる。
少なくとも上記(1)および(2)の照射処理により照射を行うことで、優れた防汚性を発現する表面形状が得られやすくなる機構についての詳細は不明であるが、以下の機構によるものと推察される。
まず、上記(1)の低波長(短波長)の紫外線による照射処理を行うと、紫外線のエネルギーが表面部分のみに浸透し、それより下層にはエネルギーが到達しないことにより、塗布層の表面部分だけが硬化をはじめることから、表面だけが硬化収縮を生じることで、皺構造が形成するものと考えられる。このように、皺構造の形成は、低波長(短波長)の紫外線の照射により、塗布層の表面からの一定の厚さ方向のみが硬化した状態において生じていると考えられる。
続いて、上記(2)の電子線および高波長(長波長)の200nm以上400nm以下の紫外線の少なくとも一方による照射処理を行うことで、塗布層の表面において形成した皺構造が保持された状態で、硬化の進行が遅い表面近傍部分から深さ方向に離れた深奥部分への硬化を促進させることができる。
上記(1)の照射処理によっても、塗布層は全厚さにわたり硬化物となり、表面層となり得るが、上記(2)の照射処理をさらに組み合わせることで、硬化状態が向上する。その結果、表面層の表面に皺構造が発現し、かつ皺構造により水に対する接触角が所定の範囲となり、優れた防汚性を発現する表面形状が得られやすくなると考えられる。さらに、全厚さにわたり硬化物となる、また硬化状態が向上することで、防汚性以外の表面性能、すなわち耐擦傷性、強度および耐候性等の表面性能、また加工性能も向上すると考えられる。
上記(1)の照射処理において採用される、100nm以上200nm未満の第1の波長光としては、例えば、Ar、Kr、Xe、Ne等の希ガス、F、Cl、I、Br等のハロゲンによる希ガスのハロゲン化物等ガス、またはこれらの混合ガスの放電によって形成される励起状態の2量体、すなわちエキシマ(excimer)からの紫外線波長域の光を含む「エキシマ光」が好ましい。エキシマ光の波長および光源となるエキシマとしては、例えばAr2のエキシマから輻射される波長126nmの光(以下、「126nm(Ar2)」のように略称する。)、146nm(Kr2)、157nm(F2)、172nm(Xe2)、193nm(ArF)等の波長光を好ましく採用することができる。エキシマ光としては、自然放出光、誘導放出によるコヒーレンス(可干渉性)の高いレーザ光のいずれも用いることができるが、通常自然放出光を用いれば十分である。なお、これらの光(紫外線)を放射する放電ランプは、「エキシマランプ」とも称されている。
エキシマ光は波長ピークが単一であり、また通常の紫外線(例えば、メタルハライドランプ、水銀ランプ等から放射される紫外線)と比べて波長の半値幅が狭いことが特徴として挙げられる。このようなエキシマ光を用いることで、皺構造を発現させやすくなり、かつ皺構造により水に対する接触角が所定の範囲となり、優れた防汚性が得られやすくなる。
上記と同様の理由から、第1の波長光の波長は、好ましくは120nm以上、より好ましくは140nm以上、さらに好ましくは150nm以上、よりさらに好ましくは155nm以上である。また、第1の波長光の波長は、200nm未満であり、特に好ましくは、172nm(Xe2)である。このように、皺構造を発現させやすくし、かつ皺構造により水に対する接触角を所定の範囲とし、優れた防汚性を得られやすくするためには、より低波長(短波長)の波長光を用いることが好ましく、低波長(短波長)の紫外線(波長:280nm以下)のうち、200nm未満の領域の低波長(短波長)の紫外線が好ましい、ともいえる。
第1の波長光の積算光量は、好ましくは1mJ/cm2以上、より好ましくは2mJ/cm2以上、さらに好ましくは5mJ/cm2以上である。また、第1の波長光の積算光量の上限は、特に限定されない。第1の波長光の照射に必要な灯数を低減し、また生産効率の向上等の生産性を考慮すると、第1の波長光の積算光量は、好ましくは1,000mJ/cm2以下、より好ましくは300mJ/cm2以下、さらに好ましくは100mJ/cm2以下、特に好ましくは10mJ/cm2以下である。
紫外線照度は、好ましくは1mW/cm2以上、より好ましくは5mW/cm2以上、さらに好ましくは10mW/cm2以上である。また、紫外線照度は、好ましくは10W/cm2以下、より好ましくは3W/cm2以下、さらに好ましくは1W/cm2以下である。特に生産性を考慮すると、紫外線照度は、500mW/cm2以下が好ましく、300mW/cm2以下がより好ましく、150mW/cm2以下がさらに好ましい。
また、第1の波長光を照射する際の酸素濃度は、より低いことが好ましく、好ましくは1,000ppm以下、より好ましくは750ppm以下、さらに好ましくは500ppm以下、特に好ましくは300ppm以下である。
表面層形成工程では、上記(1)の100nm以上200nm未満の第1の波長光での照射処理の後、上記(2)電子線および200nm以上400nm以下の第2の波長光の少なくとも一方での照射処理を行うことが好ましい。
上記(2)の照射処理で採用される電子線の照射条件としては、樹脂組成物が硬化すれば特に限定されない。電子線の加速電圧は、好ましくは10kV以上、より好ましくは30kV以上、さらに好ましくは50kV、よりさらに好ましくは75kV以上である。また、電子線の加速電圧は、好ましくは300kV以下、より好ましくは250kV以下、さらに好ましくは200kV以下である。電子線の加速電圧が上記範囲内であると、皺構造の形状をそのまま保持したまま硬化物となりやすくなるので、皺構造により水に対する接触角が所定の範囲となり、優れた防汚性が得られやすくなる。また、防汚性以外の表面性能、すなわち耐擦傷性、強度および耐候性等の表面性能、また加工性能が向上する。また、上記と同様の理由により、電子線の照射線量は、好ましくは5kGy以上、より好ましくは10kGy以上、さらに好ましくは15kGy以上である。また、電子線の照射線量は、好ましくは150kGy以下、より好ましくは125kGy以下、さらに好ましくは100kGy以下である。
電子線源としては、上記照射条件を発揮し得るものであれば特に限定されず、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、また直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
上記(2)の照射処理で採用される200nm以上400nm以下の第2の波長光は、例えば超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯等を光源とする紫外線照射装置を用いて照射することができる。また、200nm以上400nm以下のエキシマ光、例えば222nm(KrCl)、247nm(KrF)、308nm(XeCl)等の波長光を用いてもよい。
上記(2)の照射処理で採用される第2の波長光の波長としては、好ましくは330nm以上、390nm以下である。第2の波長光の波長が上記範囲内であると、皺構造の形状をそのまま保持しやすくなるので、皺構造により水に対する接触角が所定の範囲となり、優れた防汚性が得られやすくなる。また、防汚性以外の表面性能、すなわち耐擦傷性、強度及び耐候性等の表面性能、また加工性能も向上する。上記と同様の理由により、紫外線照射装置の出力は、好ましくは50W/cm以上、より好ましくは100W/cm以上である。また、紫外線照射装置の出力は、好ましくは300W/cm以下、より好ましくは200W/cm以下である。また、照射速度は、好ましくは1r/min以上であり、より好ましくは3r/min以上である。また、照射速度は、好ましくは50r/min以下、より好ましくは10r/min以下である。
また、上記(1)および(2)の照射処理の前に、(3)予備硬化のための照射処理を行ってもよい。上記(3)の予備硬化のための照射処理により塗布層を全体的に予備硬化しておくことで、樹脂組成物に適度な粘性を付与することとなる。そのため、上記(1)の照射処理により形成した皺構造のダレが抑制され、皺構造の保持をより良好な状態とすることができる。
上記(3)の予備硬化のための照射処理において採用される電離放射線の波長光は、例えば320nm超の波長光であればよく、好ましくは320nm超400nm以下、より好ましくは385nm以上400nm以下の波長光(紫外線)が挙げられる。上記(3)の照射処理において、上記波長光(紫外線)を用いることで、塗布層の全体的な予備硬化を効率的に行うことができる。
上記(3)の照射処理における紫外線照度は、好ましくは0.01W/cm2以上、より好ましくは0.1W/cm2以上、さらに好ましくは0.3W/cm2以上である。また、紫外線照度は、好ましくは5W/cm2以下、より好ましくは3W/cm2以下、さらに好ましくは2W/cm2以下である。紫外線照度が上記範囲内であると、塗布層が完全に硬化することなく、塗布層の全体的な予備硬化を効率的に行うことができる。
上記(3)の照射処理で採用される波長光は、例えば超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯、LEDライト等を光源とする紫外線照射装置を用いて照射することができる。
以上のようにして、特定の表面形状を備える表面層が得られる。
(b)第2の方法
第2の方法は、賦形用シートを用いた賦形によって、特定の表面形状を形成する方法である。第2の方法では、上記第2の樹脂組成物を用いることができる。第2の方法としては、特定の表面形状を備える賦形層を有する賦形用シートを準備する賦形用シート準備工程と、基材層の一方の面側に、第2の樹脂組成物を塗布して塗布層を形成する塗布層形成工程と、塗布層と賦形用シートの賦形層とが接した状態で塗布層を硬化する賦形工程と、賦形用シートを剥がし、特定の表面形状を有する表面層を形成する剥離工程とを有することが好ましい。
(i)賦形用シート準備工程
賦形用シートとしては、後述する「C.賦形用シート」と同様であるため、ここでの説明は省略する。
(ii)塗布層形成工程
塗布層形成工程については、上記第1の方法における塗布層形成工程と同様とすることができる。
(iii)賦形工程
賦形工程においては、塗布層と賦形用シートの賦形層とが接した状態で塗布層を硬化する。硬化方法としては、第2の樹脂組成物の組成等に応じて適宜選択することができる。例えば、第2の樹脂組成物が電離放射線硬化性樹脂を含む場合、電離放射線照射による硬化方法を用いることができる。また、第2の樹脂組成物が熱硬化性樹脂を含む場合、加熱による硬化方法を用いることができる。
(iv)剥離工程
剥離工程では、賦形用シートを剥がすことにより、特定の表面形状を有する表面層が形成される。賦形用シートの剥離速度や剥離時の温度等の条件、ならびに、剥離手段については特に限定されず、公知の手段を適宜選定し、その手段に応じた各条件を設定することができる。
2.他の層
本開示におけるシートは、表面層以外の他の層を有していてもよい。他の層としては、例えば、基材層、透明樹脂層、装飾層、接着層、セパレータ層、プライマー層等が挙げられる。本開示におけるシートの層構成は、用途によって適宜設計することができ、特定の機能を有する他の層をさらに有していてもよい。
3.好ましい態様
本開示におけるシートの好ましい態様として、シート全体が透明である第1態様と、シートが装飾層を有する第2態様とが挙げられる。以下、各態様について説明する。
(1)シートの第1態様
本態様のシートにおいては、シート全体が透明である。図3および図4は、本態様のシートを例示する概略断面図である。図3に示すシート10Aは、厚さ方向Dtにおいて、表面層1および基材層4を有する。図4に示すシート10Aは、厚さ方向Dtにおいて、表面層1、基材層4および接着層6をこの順に有する。本態様においては、シート全体が透明であるため、シートにおいて表面層が表面形状を有する表面とは反対側に視覚対象物を配置した場合に、視覚対象物の視認性を向上させることができる。
(a)層構成
以下、本態様のシートにおける表面層以外の構成について説明する。
(i)基材層
本態様のシートは、表面層の表面形状を有する表面とは反対側の面に基材層を有していてもよい。基材層は、表面層を支持する部材である。基材層の一方の面に表面層が配置されていることで、表面層を容易に形成することができる。また、シートが基材を有することで、機械的強度、後加工適性等の各種性能が向上するので、シートとしての使用性が向上する。
本態様において、基材層は、透明である。基材層は視覚対象物を視認できる程度に透明であればよく、無色透明の他、着色透明および半透明であってもよい。すなわち、本明細書において、「透明」とは、無色透明の他、着色透明および半透明も含むことを意味する。
基材層の全光線透過率は、例えば、90%以上であることが好ましく、92%以上であることがより好ましい。
ここで、基材層の全光線透過率は、JIS K7361-1に準拠して測定することができる。
基材層は、軟質基材であってもよく、硬質基材であってもよい。軟質基材の場合、被着体に対する追従性が良好となる。したがって、被着体の被着面が曲面または凹凸面等を有する場合であっても、シートと被着体との密着性を高めることができる。
なお、軟質基材とは、引張弾性率が4000MPa以下である基材をいう。軟質基材の引張弾性率は、3500MPa以下であることが好ましく、3000MPa以下であることがより好ましい。一方、硬質基材とは、引張弾性率が4000MPaより大きい基材をいう。
ここで、基材層の引張弾性率は、JIS K7127に準拠して測定することができる。基材層の引張弾性率の測定方法の詳細については、シートの引張弾性率の測定方法と同様とすることができる。
基材層の材質としては、樹脂、ガラスが挙げられる。基材層の種類は、シートの用途に応じて適宜選択される。
基材層を構成する樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、アイオノマー、各種オレフィン系熱可塑性エラストマー等のオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニル樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、エチレングリコール-テレフタル酸-イソフタル酸共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等のアクリル樹脂;ナイロン6、ナイロン66等に代表されるポリアミド樹脂;三酢酸セルロース、セロファン、セルロイド等のセルロース樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)等のスチレン樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、目的とする基材層の剛性等に応じて、適宜選択される。
基材層は、必要に応じて、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、難燃剤、滑剤、発泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。添加剤の含有量は、表面特性、加工特性等を阻害しない範囲であれば特に制限はなく、要求特性等に応じて適宜設定できる。中でも、シートの耐候性を向上させる観点から、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤を用いることが好ましい。紫外線吸収剤、光安定剤としては、上記表面層に用いられる紫外線吸収剤、光安定剤と同様である。
基材層は、単層であってもよく、2層以上の積層体であってもよい。例えば、基材層は、透明樹脂基材と、透明性樹脂層とを有していてもよい。シートの強度を高めることができるためである。
基材層の厚さは、特に限定されないが、例えば、10μm以上300μm以下であることが好ましく、20μm以上200μm以下であることがより好ましく、40μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。なお、基材層の厚さは、基材層が2層以上の積層体である場合、基材層全体の厚さをいう。
基材層は、基材層に接する層との密着性、例えば表面層との密着性、接着層との密着性を高めるために、表面処理が施されていてもよい。また、基材層が2層以上の積層体である場合、隣接する各層間の密着性を高めるために、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、例えば、酸化法、凹凸化法等の物理的表面処理、化学的表面処理等が挙げられる。酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン-紫外線処理法等が挙げられる。凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、基材層の種類に応じて適宜選択されるが、表面処理の効果および操作性等を考慮すると、一般にはコロナ放電処理が好ましい。
また、基材層が透明樹脂基材と透明性樹脂層とを有する場合、透明性樹脂層の形成方法としては、透明樹脂基材の一方の面に樹脂組成物を塗布して透明性樹脂層を形成する方法や、透明性樹脂層として樹脂フィルムを用い、透明樹脂基材の一方の面に樹脂フィルムをドライラミネート等により積層する方法が挙げられる。
(ii)接着層
本態様のシートは、基材層の表面層とは反対の面側に、接着層を有していてもよい。接着層は、シートを被着体に貼付するための部材である。
本態様において、接着層は、透明である。接着層は視覚対象物を視認できる程度に透明であればよく、無色透明の他、着色透明および半透明であってもよい。
接着層に用いられる接着剤としては、硬化型接着剤、感圧型接着剤等が挙げられる。具体的には、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤等が挙げられる。また、接着層として、OCA(Optically Clear Adhesive)またはOCR(Optically Clear Resin)等を用いることもできる。
接着層の厚さは、効率よく所望の接着力を得る観点から、5μm以上100μm以下が好ましく、10μm以上75μm以下がより好ましく、20μm以上50μm以下がさらに好ましい。
接着層の形成方法としては、接着剤組成物を塗布する方法や、接着フィルムをドライラミネート等により積層する方法が挙げられる。
(iii)プライマー層
本態様のシートは、シートを構成する複数の層の層間密着性を向上させるために、プライマー層を有してもよい。例えば、シートが基材層を有する場合、プライマー層は表面層と基材層との間に配置されてもよい。
プライマー層は、主としてバインダー樹脂から構成され、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を含有してもよい。
バインダー樹脂としては、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体(ポリマー主鎖にカーボネート結合を
有し、末端、側鎖に2個以上の水酸基を有する重合体(ポリカーボネートポリオール)由来のウレタン-アクリル共重合体)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂(硝化綿)、酢酸セルロース樹脂等が挙げられる。これらは、単独で、または複数種を組み合わせて用いることができる。
また、バインダー樹脂としては、上記の樹脂に、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤等の硬化剤を添加し、架橋硬化させる樹脂であってもよい。例えば、アクリルポリオール樹脂等のポリオール系樹脂をイソシアネート系硬化剤で架橋硬化させる樹脂が好ましく、アクリルポリオール樹脂をイソシアネート系硬化剤で架橋硬化させる樹脂がより好ましい。
プライマー層の厚さは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは2μm以上である。また、プライマー層の厚さは、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、さらに好ましくは6μm以下である。
プライマー層の形成方法としては、樹脂組成物を塗布し、必要に応じて、乾燥、硬化する方法が挙げられる。
(iv)セパレータ層
本態様のシートは、接着層の基材層とは反対側の面に、セパレータ層を有していてもよい。セパレータ層は、接着層を保護する部材であり、シートを被着体に貼付する際には剥離される。セパレータ層としては、従来公知のものを使用することができる。
(b)シートの物性
(i)全光線透過率
本態様のシートは、透明である。具体的には、シートの全光線透過率は、85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。このように全光線透過率が高いことにより、透明性が良好なシートとすることができる。
なお、シートの全光線透過率とは、シートがセパレータ層を有する場合は、セパレータ層を除く、シートの全光線透過率である。
ここで、シートの全光線透過率は、JIS K7361-1に準拠して測定することができる。
(ii)内部ヘイズ
本態様のシートは透明であるため、下地視認性を高めるために、シート全体の内部ヘイズも低いことが好ましい。具体的には、シートの内部ヘイズは、10%以下であることが好ましく、6%以下であることがより好ましい。一方、シートの内部ヘイズの下限は、特に限定されないが、実質的に0%以上であることが好ましい。
なお、シートの内部ヘイズとは、シートがセパレータ層を有する場合は、セパレータ層を除く、シートの内部ヘイズである。
ここで、シートの内部ヘイズは、JIS K7136:2000に準拠して測定することができる。シートの内部ヘイズを測定するに際しては、例えば、表面層の特定の表面形状を有する表面に透明層を配置すること等により、凹凸形状を埋めて平坦にする。これにより、表面形状起因のヘイズの影響をなくすことができる。シートの内部ヘイズの測定方法の詳細については、表面層の内部ヘイズの測定方法と同様とすることができる。
(iii)引張弾性率
本態様のシートの引張弾性率は、例えば、4000MPa以下であることが好ましく、3500MPa以下であることがより好ましく、3000MPa以下であることがさらに好ましい。シートの引張弾性率が上記範囲であることにより、被着体に対する追従性が良好となる。したがって、被着体の被着面が曲面または凹凸面等を有する場合であっても、シートと被着体との密着性を高めることができる。
なお、シートの引張弾性率とは、シートがセパレータ層を有する場合は、セパレータ層を除く、シートの引張弾性率である。
ここで、シートの引張弾性率は、JIS K7127に準拠して測定することができる。シートの引張弾性率の測定方法の詳細については、実施例の項に記載する。
(c)用途
本態様のシートは、例えば、防眩フィルム、保護フィルム、オーバーレイフィルム、各種機能性フィルム等に用いることができる。
(2)シートの第2態様
本態様のシートは、装飾層を有する。図5および図6は、本態様のシートを例示する概略断面図である。図5に示すシート10Bは、厚さ方向Dtにおいて、表面層1、透明性樹脂層5、装飾層7、基材層4、接着層6およびセパレータ層8をこの順に有する。図6に示すシート10Bは、厚さ方向Dtにおいて、表面層1および基材層4を有し、基材層4が装飾層7を兼ねている。本態様においては、シートを構成する装飾層の視認性を向上させることができる。
(a)層構成
以下、本態様のシートにおける表面層以外の構成について説明する。
(i)基材層
本態様のシートは、表面層の表面形状を有する表面とは反対側の面に基材層を有していてもよい。基材層は、表面層を支持する部材である。基材層の一方の面に表面層が配置されていることで、表面層を容易に形成することができる。また、シートが基材層を有することで、機械的強度、後加工適性、意匠性等の各種性能が向上するので、シートとしての使用性が向上する。
基材層は、軟質基材であってもよく、硬質基材であってもよい。
基材層は、特に限定されず、樹脂基材、ガラス基材、金属基材、繊維基材等が挙げられる。基材層の種類は、シートの用途に応じて適宜選択される。
樹脂基材に用いられる樹脂としては、各種の合成樹脂、天然樹脂等が挙げられる。合成樹脂としては、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂が挙げられる。シートの製造適性、取扱い適性、後加工適性等を考慮すると、熱可塑性樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、アイオノマー、各種オレフィン系熱可塑性エラストマー等のオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニル樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、エチレングリコール-テレフタル酸-イソフタル酸共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等のアクリル樹脂;ナイロン6、ナイロン66等に代表されるポリアミド樹脂;三酢酸セルロース、セロファン、セルロイド等のセルロース樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)等のスチレン樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
天然樹脂としては、天然ゴム、松脂、琥珀等が挙げられる。
また、硬化性樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。電離放射線硬化性樹脂および熱硬化性樹脂については、上記表面層に用いられる電離放射線硬化性樹脂および熱硬化性樹脂と同様とすることができる。
金属基材に用いられる金属としては、例えば、アルミニウムまたはジュラルミン等のアルミニウム合金;鉄または炭素鋼、ステンレス鋼等の鉄合金;銅または真鍮、青銅等の銅合金;金、銀、クロム、ニッケル、コバルト、錫、チタニウム等が挙げられる。金属基材は、表面にめっき皮膜または陽極酸化皮膜を有していてもよい。
繊維基材に用いられる繊維質材料としては、例えば、薄葉紙、クラフト紙、上質紙、和紙、チタン紙、リンター紙、硫酸紙、パラフィン紙、パーチメント紙、グラシン紙、壁紙用裏打紙、板紙、石膏ボード用原紙等の紙;ポリエステル樹脂繊維、アクリル樹脂繊維、絹、木綿、麻等のタンパク質またはセルロース系の天然繊維、ガラス繊維、炭素繊維等の繊維からなる織布または不織布等挙げられる。繊維基材には、アクリル樹脂、スチレン-ブタジエンゴム、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の各種樹脂が添加されていてもよい。繊維基材が紙基材である場合、紙基材の繊維間の強度、または紙基材と他の基材との層間強度を向上させることができる。また、毛羽立ちを抑制できる。樹脂の添加方法としては、抄造後に樹脂を含浸させてもよく、抄造時に樹脂を内填させてもよい。樹脂を添加した紙基材としては、例えば紙間強化紙、樹脂含浸紙等が挙げられる。
繊維基材の場合、繊維基材の表面層側の面に、透過防止用層樹脂層が配置されていることが好ましい。浸透防止用樹脂層に用いられる樹脂としては、例えば、2液硬化型ウレタン樹脂を挙げることができる。透過防止用層樹脂層は、塗工等の方法により形成することができる。
基材層は、必要に応じて、添加剤を含有してもよい。樹脂基材の場合、添加剤としては、例えば、無機充填剤、難燃剤、滑剤、発泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤等が挙げられる。各種添加剤は、単独で、または複数種を組み合わせて用いることができる。添加剤の含有量は、表面特性、加工特性等を阻害しない範囲であれば特に制限はなく、要求特性等に応じて適宜設定できる。
耐候性を向上させるため、上記添加剤の中でも、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤を用いることが好ましい。紫外線吸収剤、光安定剤としては、上記表面層に用いられるものと同様とすることができる。
基材層は、単層であってもよく、2層以上の積層体であってもよい。積層体の場合、基材層は、同じ種類の基材を2層以上有していてもよく、異なる種類の基材を2層以上有していてもよい。
本態様において、基材層は、後述の装飾層を兼ねることができる。
基材層は、透明であってもよく、不透明であってもよい。基材層が不透明である場合には、基材層が装飾層になり得る。
また、基材層は着色されていてもよい。基材層が着色されている場合には、基材層が装飾層になり得る。着色の態様には特に限定されず、透明着色であってもよく、不透明着色(隠蔽着色)であってもよく、これらは任意に選択できる。
基材層が着色されている場合、着色剤を含有することができる。着色剤としては、例えば、チタン白等の白色顔料、鉄黒、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、ニッケル-アゾ錯体、アゾメチンアゾ系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料等の有機顔料または染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。例えば、シートを積層する被着体の表面色相がばらついている場合に、表面色相を隠蔽し、装飾層の色調の安定性を向上させたい場合は、白色顔料等の無機顔料を用いればよい。
基材層は、基材層に接する層との密着性、例えば装飾層との密着性、接着層との密着性を高めるために、表面処理が施されていてもよい。表面処理については、上記第1態様のシートにおける基材層と同様である。
また、基材層が積層体である場合、隣接する各層の接着性を向上させるために、各層間に、第2の接着層またはプライマー層が配置されていてもよい。
基材層の厚さは、特に限定されず、基材層の材料等に応じて適宜選択される。樹脂を含有する基材層の場合、基材層の厚さは、例えば、10μm以上300μm以下であることが好ましく、20μm以上200μm以下であることがより好ましく、40μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。また、基材層が紙基材である場合、坪量は、通常、20g/m2以上150g/m2以下が好ましく、30g/m2以上100g/m2以下がより好ましい。
(ii)装飾層
本態様のシートは、表面層の特定の表面形状を有する表面とは反対の面側に、装飾層を有する。装飾層により、シートに意匠を付与することができる。装飾層は、表面層の特定の表面形状を有する表面とは反対の面側に配置されていればよく、例えば、装飾層は基材層と表面層との間に配置されていてもよく、また後述するようにシートが透明性樹脂層を有する場合は、装飾層は基材層と透明性樹脂層との間に配置されていてもよい。
装飾層としては、例えば、着色層であってもよく、絵柄層であってもよく、金属層であってもよい。また、装飾層は、着色層と絵柄層とを有していてもよい。
着色層は、シートの全面に配置された、いわゆるベタ着色層であってもよい。着色層は、バインダー樹脂と着色剤とを含有することができる。着色層は、塗布法により形成することができる。
絵柄層の絵柄(模様)としては、特に限定されず、例えば、木材板表面の年輪や導管溝等の木目柄;大理石、花崗岩等の石板表面の石目柄;布帛表面の布目柄;皮革表面の皮シボ柄;幾何学模様;文字;図形;これらの組み合わせ等が挙げられる。
絵柄層は、バインダー樹脂と着色剤とを含有することができる。絵柄層は、印刷法により形成することができる。
着色層および絵柄層に用いられるバインダー樹脂としては、特に限定されず、例えば、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等の樹脂が挙げられる。また、1液硬化型樹脂、イソシアネート化合物等の硬化剤を伴う2液硬化型樹脂等、種々の樹脂を用いることができる。
着色層および絵柄層に用いられる着色剤としては、顔料、染料が挙げられる。中でも、着色剤は、隠蔽性および耐候性に優れる顔料であることが好ましい。顔料については、上記基材層に用いられる顔料と同様とすることができる。着色剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、5質量部以上90質量部以下であることが好ましく、15質量部以上80質量部以下であることがより好ましく、30質量部以上70質量部以下であることがさらに好ましい。
着色層および絵柄層は、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤、体質顔料、安定剤、可塑剤、硬化剤、触媒等の添加剤を含有してもよい。
金属層に用いられる金属材料としては、例えば、アルミニウム、クロム、錫、インジウム等が挙げられる。金属層は、蒸着法により形成することができる。
装飾層の厚さは、所望の意匠および装飾層の種類に応じて適宜選択される。装飾層が着色層および絵柄層の少なくともいずれかを有する場合、被着体の地色を隠蔽し、かつ意匠性を向上させることを考慮すると、装飾層の厚さは、例えば、0.5μm以上20μm以下であることが好ましく、1μm以上10μm以下であることがより好ましく、2μm以上5μm以下であることがさらに好ましい。
(iii)透明性樹脂層
本態様のシートは、表面層と装飾層との間に透明性樹脂層を有していてもよい。透明性樹脂層により、シートの強度を高めたり、装飾層を保護したりすることができる。
透明性樹脂層は、装飾層を視認できる程度に透明であればよく、無色透明の他、着色透明および半透明であってもよい。
透明性樹脂層としては、上記第1態様のシートにおける透明性樹脂層と同様であるため、ここでの説明は省略する。
(iv)接着層
本態様のシートは、基材層の装飾層とは反対の面側に、接着層を有していてもよい。接着層は、シートを被着体に貼付するための部材である。
接着層は、透明であってもよく、不透明であってもよい。
接着層に用いられる接着剤および接着層の厚さについては、上記第1態様のシートにおける接着層と同様である。
(v)プライマー層
本態様のシートは、シートを構成する複数の層の層間密着性を向上させるために、プライマー層を有してもよい。プライマー層としては、上記第1態様のシートにおけるプライマー層と同様である。
(vi)セパレータ層
本態様のシートは、接着層の基材層とは反対側の面に、セパレータ層を有していてもよい。セパレータ層は、接着層を保護する部材であり、シートを被着体に貼付する際には剥離される。セパレータ層としては、上記第1態様のシートにおけるセパレータ層と同様である。
(b)シートの物性
本態様のシートにおいては、装飾層の視認性を高めるために、装飾層よりも表面層側に位置する層のすべてを有する積層体の内部ヘイズも低いことが好ましい。具体的には、上記積層体の内部ヘイズは、10%以下であることが好ましく、6%以下であることがより好ましい。一方、上記積層体の内部ヘイズの下限は、特に限定されないが、実質的に0%以上であることが好ましい。
上記積層体は、装飾層よりも表面層側に位置するすべての層を有する。例えば図5においては、上記積層体は、表面層1と透明樹脂層5とを有する。
ここで、上記積層体の内部ヘイズの測定方法は、上記第1態様のシートの内部ヘイズの測定方法と同様とすることができる。
本態様のシートの引張弾性率としては、上記第1態様のシートの引張弾性率と同様である。
(c)用途
本態様のシートは、例えば、化粧シート、装飾シート、人工皮革等に用いることができる。
B.物品
本開示における物品は、2つの実施態様を有する。以下、各実施態様に分けて説明する。
I.物品の第1実施態様
本実施態様の物品は、表面に、上述のシートを有し、上記シートが、上記表面層の上記表面形状を有する表面が観察者側になるように配置される。
本実施態様の物品であれば、上述のシートを有するため、下地視認性および防汚性に優れたものとなる。さらに、低艶感が得られ、意匠性も付与することができる。
図7(a)は、本実施態様の物品を例示する概略断面図であり、物品が上述の第1態様のシートを有する例である。図7(a)に示す物品100Aは、表面に、第1態様のシート10Aを有する。物品100Aにおいて、シート10Aは、シート10Aの接着層6を介して物品本体20に貼り合わされている。
本実施態様の物品が第1態様のシートを有する場合は、第1態様のシートが透明であるため、物品本体が視認可能となる。この場合、優れた防汚性が得られつつ、被着体である物品本体の視認性を向上させることができる。
図7(b)は、本実施態様の物品を例示する概略断面図であり、物品が上述の第2態様のシートを有する例である。図7(b)に示す物品100Bは、表面に、第2態様のシート10Bを有する。物品100Bにおいて、シート10Bは、シート10Bの接着層6を介して物品本体20に貼り合わされている。
本実施態様の物品が第2態様のシートを有する場合は、第2態様のシートが装飾層を有するため、意匠性を付与することができる。この場合、優れた防汚性が得られつつ、シートを構成する装飾層の視認性を向上させることができる。さらに、低艶感が得られるので、意匠性を高めることができる。
以下、本実施態様の物品の各構成について説明する。
1.シート
本開示におけるシートは、物品の表面に配置される。シートは、表面層の表面形状を有する表面が観察者側になるように配置される。
シートについては、上述した「A.シート」に記載した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
2.物品
本実施態様の物品は、屋外で使用されるものであってもよいし、屋内で使用されるものであってもよい。上記シートは防汚性に優れるため、屋外で使用される物品の保護および装飾に好適に用いられる。
上記シートが第1態様のシートである場合、物品は、視覚されることを目的とした、視覚対象物である、あるいは、観察者と視覚対象物との間に配置される物品であることが好ましい。視覚対象物である物品としては、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置、LED表示装置等の表示装置;道路標識、工事標識等の標識;看板;塗装部材;化粧部材;車両のインストルメントパネル;時計;等が挙げられる。ここで、塗装部材とは、塗装された建材、家具等を意味する。また、化粧部材とは、化粧シートにより装飾された建材、家具等を意味する。また、観察者と視覚対象物との間に配置される物品としては、例えば、ショーケース、ショーウィンドウ、窓等が挙げられる。
また、上記シートが第2態様のシートである場合、物品は、一般的に、装飾可能な面を有する。このような物品としては、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装用部材;外壁、屋根、軒天井、柵、門扉等の外装用部材;窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材;箪笥、棚、机等の一般家具;食卓、流し台等の厨房家具;台所、トイレ、風呂場、洗面台等の水廻りで用いられる各種家具及び部材;家電、OA機器等のキャビネット等の表面化粧板;車両の内装又は外装用部材;等が挙げられる。
物品において、シートが配置される面は、例えば、平面であってもよく、曲面であってもよく、凹凸面であってもよい。
II.物品の第2実施態様
本実施態様の物品は、表面に、表面層を有する物品であって、上記表面層の観察者側の表面が、皺構造を有し、かつ、水に対する接触角が90.0度以上である表面形状を備え、上記表面層の内部ヘイズが4.0%以下である。
図8は、本実施態様の物品の一例を示す概略断面図である。図8に示す物品100Cは、表面に、表面層1を有し、表面層1の観察者側の表面S1が、皺構造を有し、かつ、水に対する接触角が所定の範囲である表面形状を備え、表面層1の内部ヘイズが所定の範囲である。物品100Cにおいては、物品本体20の表面に直に表面層1が配置されている。
本実施態様の物品であれば、表面層が特定の表面形状を有し、表面層の内部ヘイズが所定の値以下であるため、被着体である物品本体の視認性および防汚性に優れたものとなる。さらに、低艶感が得られ、意匠性も付与することができる。
以下、本実施態様の物品の各構成について説明する。
1.表面層
本実施態様における表面層としては、上述した「A.シート 1.表面層」に記載した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本実施態様における表面層の形成方法としては、電離放射線による樹脂組成物の硬化によって、特定の表面形状を形成する方法が挙げられる。この表面層の形成方法については、上述した「A.シート 1.表面層 (5)表面層の形成方法 (a)第1の方法」に記載した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
また、本実施態様における表面層の形成方法は、賦形用シートを用いて、特定の表面形状を有する表面層を形成する方法であってもよい。
また、本実施態様における表面層の形成方法は、転写シートを用いて、表面層を転写する方法であってもよい。この表面層の形成方法については、後述する「F.物品の製造方法」に記載した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
2.物品
本実施態様の物品としては、上記第1実施態様の物品と同様であるため、ここでの説明は省略する。
C.賦形用シート
本開示における賦形用シートは、2つの実施態様を有する。以下、各実施態様について説明する。
I.賦形用シートの第1実施態様
本実施態様の賦形用シートは、賦形層を有する賦形用シートであって、上記賦形層の一方の表面が、皺構造を有し、かつ、水に対する接触角が90.0度以上である表面形状を備える。
図9は、本実施態様における賦形用シートの一例を示す概略断面図である。図9に示す賦形用シート30は、賦形層31を有し、賦形層31の一方の表面S31が、皺構造を有し、かつ、水に対する接触角が所定の範囲である表面形状を備える。また、賦形用シート30は、賦形層31の上記表面形状を有する表面S31とは反対側の面に、支持層32を有している。
本実施態様における賦形用シートを用いることにより、被賦形体に、皺構造を有し、かつ、水に対する接触角が所定の範囲である特定の表面形状を賦形することが可能となる。したがって、本実施態様における賦形用シートを用いて賦形されたシートは、上述した理由より、防汚性に優れたものとなる。また、本実施態様における賦形用シートを用いて賦形されたシートは、マット剤、撥水剤等を添加する必要がないため、シートの内部ヘイズを低減することが可能となる。さらに、本実施態様における賦形用シートの賦形層は、水に対する接触角が所定の範囲である表面形状を備えるため、賦形後の剥離が容易となるという効果も奏する。
以下、本実施態様における賦形用シートの各構成について説明する。
1.賦形層
本実施態様における賦形層は、一方の表面が、皺構造を有し、かつ、水に対する接触角が90.0度以上である表面形状を備える。表面形状、賦形層の材料および形成方法については、上述した表面層と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
2.支持層
本実施態様における賦形用シートは、賦形層の表面形状を有する表面とは反対側の面に、支持層を有することができる。支持層は、賦形層を支持する部材である。
支持層は、シートを作製する際の賦形工程に耐えうる強度を有するものであれば特に限定されない。支持層としては、具体的には、上述のシートにおける基材層と同様とすることができる。
また、支持層は、透明であってもよく、不透明であってもよい。被賦形体が電離放射線硬化性樹脂を含む場合、支持層は透明であることが好ましい。
II.賦形用シートの第2実施態様
本実施態様における賦形用シートは、一方の表面が、皺構造を有し、かつ、水に対する接触角が90.0度以上である表面形状を備え、内部ヘイズが4.0%以下である表面層を有するシートにおける上記表面層を、賦形によって形成するための賦形用シートである。
賦形用シートとしては、例えば、上述した第1実施態様の賦形用シートと同様のものが挙げられる。このような賦形用シートを用いることにより、上述した理由により、シートにおける表面層に皺構造を有し、かつ、水に対する接触角が所定の範囲である特定の表面形状を賦形することが可能となる。さらに、表面層の内部ヘイズを4.0%以下と低減することが可能となる。
D.転写シート
本開示における転写シートは、離型性支持体と、転写部と、を有する転写シートであって、上記転写部が、上記離型性支持体側の最表面に表面層を有し、上記表面層の上記離型性支持体側の表面が、皺構造を有し、かつ、水に対する接触角が90.0度以上である表面形状を備え、上記表面層の内部ヘイズが4.0%以下である。
図10は、本開示における転写シートの一例を示す概略断面図である。図10に示す転写シート40は、離型性支持体42と転写部41とを有する。離型性支持体42は、支持部材43と凹凸層44とを有している。転写部41は、表面層1と、プライマー層9と、装飾層7と、第2の接着層45と、を厚さ方向Dtにおいて、この順に有する。表面層1は、離型性支持体42側の表面S1が、皺構造を有し、かつ、水に対する接触角が90.0度以上である表面形状を備える。また、表面層1の内部ヘイズは4.0%以下である。
1.転写部
転写部は、少なくとも、離型性支持体側の最表面に表面層を有する。表面層としては、上述した「A.シート 1.表面層」に記載した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。転写部は、表面層の離型性支持体側とは反対側に、表面層以外の他の層を有していてもよい。他の層としては、プライマー層、装飾層、接着層、第2の接着層等が挙げられる。これらの他の層としては、上記第1態様のシートおよび上記第2態様のシートで例示したものと同様である。なお、接着層は、シートを被着体に貼付するための部材である。また、第2の接着層は、シートを構成する各層間の接着性を高めるための部材である。
2.離型性支持体
離型性支持体は、転写部を基材へ転写するための支持体となるものである。離型性支持体は、凹凸層と、凹凸層を支持する支持部材と、を有する。また、本開示において、離型性支持体は、転写部の表面層を形成するための部材としての機能を有していてもよい。すなわち、離型性支持体としては、上述した「C.賦形用シート」と同様のものを用いることができ、上記凹凸層としては賦形用シートにおける賦形層と同様のもの、上記支持部材としては賦形用シートにおける支持層と同様のものを用いることができる。
E.シートの製造方法
本開示におけるシートの製造方法は、2つの実施態様を有する。以下、各実施態様について説明する。
I.シートの製造方法の第1実施態様
本実施態様のシートの製造方法は、基材層と、表面層とを有し、上記表面層の上記基材層とは反対側の表面が、皺構造を有し、かつ、水に対する接触角が90.0度以上である表面形状を備え、上記表面層の内部ヘイズが4.0%以下である、シートの製造方法であって、賦形層を有し、上記賦形層の一方の表面が、上記表面層の上記表面形状が反転した第2の表面形状を備える、賦形用シートを準備する賦形用シート準備工程と、上記基材層の一方の面側に、樹脂組成物を塗布して塗布層を形成する塗布層形成工程と、上記塗布層と上記賦形用シートの上記賦形層とが接した状態で上記塗布層を硬化する賦形工程と、上記賦形用シートを剥がす剥離工程と、を有する。
図11は、本実施態様におけるシートの製造方法の一例を示す工程フロー図である。まず、図11(a)に示すように、賦形用シート30を準備する。次に、図11(b)に示すように、基材層4の一方の面側に、樹脂組成物を塗布して塗布層1′を形成する。次に、図11(c)に示すように、上記塗布層1′と上記賦形用シート30の賦形層31とが接した状態で上記塗布層1′を硬化する。これにより、賦形層31の表面形状が、塗布層1′の表面に賦形される。次に、図11(d)に示すように、賦形用シート30を剥がすことにより、一方の表面S1が、皺構造を有し、かつ、水に対する接触角が90.0度以上である表面形状を備え、内部ヘイズが4.0%以下である表面層1を形成する。
本実施態様のシートの製造方法によれば、優れた下地視認性および防汚性を有するシートを容易に製造することができる。
1.賦形用シート準備工程
本工程で準備する賦形用シートとしては、特定の表面形状を有する表面層を形成可能であれば特に限定されないが、例えば、上述した「C.賦形用シート」と同様のものが挙げられる。このような賦形用シートを用いて賦形することにより、表面層に、皺構造を有し、かつ、水に対する接触角が所定の範囲である特定の表面形状を賦形することが可能となり、防汚性に優れたものとなる。さらに、上述した理由により、表面層の内部ヘイズを低減することが可能となり、表面層の内部ヘイズを4.0%以下とすることができる。
2.塗布層形成工程
本工程における基材層としては、上述した第1態様のシートにおける基材層および上述した第2態様のシートにおける基材層が挙げられる。
また、本工程における樹脂組成物としては、上記第2の樹脂組成物を使用することができる。
塗布層形成工程としては、上述した「A.シート 1.表面層 (5)表面層の形成方法 (b)第2の方法」と同様である。
3.賦形工程および剥離工程
賦形工程および剥離工程としては、上述した「A.シート 1.表面層 (5)表面層の形成方法 (b)第2の方法」と同様である。
4.シート
本実施態様において製造されるシートとしては、上述した第1態様のシートおよび第2態様のシートが挙げられる。
II.シートの製造方法の第2実施態様
本実施態様のシートの製造方法は、表面層を有するシートの製造方法であって、上述の転写シートを準備する転写シート準備工程と、被転写基材の一方の面と、上記転写シートの上記転写部側の面とが向き合うように、上記転写シートを上記被転写基材に積層する積層工程と、上記転写シートから上記離型性支持体を剥離する剥離工程と、を有する。
図12は、図10に示す転写シート40を用いた場合の、本実施態様におけるシートの製造方法の一例を示す工程フロー図である。まず、図12(a)に示すように、転写シート40を準備する。次に、図12(b)に示すように、被転写基材として基材層4を用い、基材層4の一方の面と、転写シート40の転写部41側の面とが対向するように、転写シート40を基材層4に積層させる。次に、図12(c)に示すように、転写シート40から離型性支持体42を剥離する。これにより、基材4層と、少なくとも表面層1を有する転写部41と、を有するシート10が得られる。
本実施態様のシートの製造方法によれば、優れた下地視認性および防汚性を有するシートを容易に製造することができる。
1.転写シート準備工程
本工程で準備する転写シートは、上述した「D.転写シート」と同様である。
2.積層工程
本工程における被転写基材としては、上述した第1態様のシートにおける基材層および上述した第2態様のシートにおける基材層が挙げられる。また、被転写基材は、セパレータ層であってもよく、接着層およびセパレータ層の積層体であってもよい。
積層工程においては、転写シートを接着層または第2の接着層を介して被転写基材に積層することができる。接着層や第2の接着層は、予め、転写シートと一体化させてもよく、被転写基材と一体化させてもよい。
転写シートおよび被転写基材を積層する方法としては、例えば、ラミネート法が挙げられる。ラミネート法では、例えば、転写シートおよび被転写基材の積層体を、転写シート側から加圧する。この際、加熱を行ってもよい。加熱および加圧の方法としては、例えば、ロール転写装置を用いる方法が挙げられる。
3.剥離工程
本工程においては、転写シートから離型性支持体を剥離する。これにより、図12(c)に示すように、一方の表面S1が、皺構造を有し、かつ、水に対する接触角が90.0度以上である表面形状を備え、内部ヘイズが4.0%以下である表面層1と、基材層4とを有するシート10を得ることができる。
4.シート
本実施態様において製造されるシートとしては、上述した第1態様のシートおよび第2態様のシートが挙げられる。
F.物品の製造方法
本開示における物品の製造方法は、表面に、表面層を有する物品の製造方法であって、上述の転写シートを準備する転写シート準備工程と、物品本体の表面と、上記転写シートの上記転写部側の面とが向き合うように、上記転写シートを上記物品本体に積層する積層工程と、上記転写シートから上記離型性支持体を剥離する剥離工程と、を有する。
図13は、本開示における物品の製造方法の一例を示す工程フロー図である。まず、図13(a)に示すように、転写シート40を準備する。転写シート40は、図10に示す転写シート40において、第2の接着層45が、シートを被着体に貼付するための接着層6である転写シートである。次に、図13(b)に示すように、物品本体20の表面と、転写シート40の転写部41側の面とが対向するように、転写シート40を物品本体20に積層させる。次に、図13(c)に示すように、転写シート40から離型性支持体42を剥離する。これにより、表面に、少なくとも表面層1を有する転写部41を有する物品100が得られる。
1.転写シート準備工程
本工程で準備する転写シートは、上述した「D.転写シート」と同様である。
2.積層工程
本工程における物品本体としては、上述した物品として用いられるものであれば特に限定されない。
積層工程においては、物品本体の表面と、転写シートの転写部側の面とが向き合うように、転写シートを物品本体に接着層を介して積層する。接着層は、予め、転写シートと一体化させてもよく、物品本体と一体化させてもよい。
転写シートおよび物品本体を積層する方法としては、例えば、ラミネート法が挙げられる。ラミネート法では、例えば、転写シートおよび物品本体の積層体を、転写シート側から加圧する。この際、加熱を行ってもよい。
3.剥離工程
本工程においては、転写シートから離型性支持体を剥離する。これにより、図12(c)に示すように、一方の表面S1が、皺構造を有し、かつ、水に対する接触角が90.0度以上である表面形状を備え、内部ヘイズが4.0%以下である表面層1を有する物品100を得ることができる。
4.物品
本実施態様において製造される物品としては、上記第1実施態様の物品および上記第2実施態様の物品と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本開示は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
[実施例1]
基材層として、コロナ放電処理を施した、厚さ60μmの透明ポリプロピレンシートを用いた。基材層上に、下記組成を有する表面層用樹脂組成物Aを、乾燥時塗布量5g/m2で塗布し、塗布層を形成した。塗布層に対して、LEDから構成されるUV照射装置を用いて紫外線を照射(LED-UV照射、波長395nm、最大照度0.6W/cm2、積算光量30~100mJ/cm2)して、予備硬化を行った。次いで、エキシマ光照射装置を用いて紫外線を照射した(エキシマ照射、波長172nm(Xe2)、紫外線出力密度30mW/cm2、積算光量5~100mJ/cm2、窒素雰囲気)。さらに、電子線を照射して(加速電圧100~150kV、照射線量30~100kGy)、基材層上に表面層を形成した。基材層の表面層側の面とは反対の面(裏面)に、透明粘着剤を乾燥時厚さ30μmとなるように塗布し、接着層を形成した。これにより、表面層と基材層と接着層とをこの順に有するシートを得た。なお、実施例1のシートの光学顕微鏡画像によれば、その表面に皺構造を有していることが確認された。
(表面層用樹脂組成物A)
・3官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(多官能オリゴマーA) 30質量部
・単官能アクリレートモノマー(単官能モノマー) 40質量部
・2官能アクリレートモノマー(多官能モノマー) 30質量部
・光重合開始剤(ベンゾフェノン系) 0.8質量部
・撥水剤(シリコーン系) 0.5質量部
[実施例2~実施例4]
照射処理を、表1に示される処理に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、シートを得た。
[実施例5~実施例7]
表面層用樹脂組成物を、表1に示される組成に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、シートを得た。なお、表1中、多官能オリゴマーBおよび皺形成安定剤は、以下の通りである。
・多官能オリゴマーB:芳香族基を有する3官能(メタ)アクリレートモノマー
・皺形成安定剤:シリカ粒子、平均粒子径3μm
[実施例8]
基材層を、コロナ放電処理した、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートシートに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、シートを得た。
[比較例1~2]
照射処理を、表1に示される処理に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、シートを得た。
[比較例3]
表面層用樹脂組成物に、マット剤(シリカ粒子、平均粒径3μm、給油率200mL/100g)を20質量部添加した以外は、実施例1と同様の方法で、シートを得た。
[評価]
(1)水に対する接触角
JIS R3257:1999の規定に準拠して、実施例および比較例で得られたシートについて、接触角計(「DM 500(型番)」、協和界面科学株式会社製)を用いて、水の接触角を測定した。具体的には、実施例および比較例で得られたシートについて、表面層の皺構造を有する表面形状を備える面に、1.5μLの純水を滴下し、着滴1秒後に、θ/2法に従って、滴下した液滴の左右端点と頂点を結ぶ直線の、固体表面に対する角度から接触角を算出した。5回測定した平均値を、接触角の値とした。
(2)内部ヘイズ
実施例および比較例のシートの作製において、接着層を形成せずに、表面層および基材層を有するシートを得た。次に、シートの表面層の皺構造を有する表面に、透明粘着剤(パナック社製、PD-S1、厚さ25μm)を介して、厚さ80μmのTACフィルム(富士フイルム社製、TD80UL)を貼り付けることによって凹凸形状をつぶして平坦にした。これにより、表面形状起因のヘイズの影響をなくした、内部ヘイズ測定用サンプルを作製した。作製したサンプルのヘイズを測定して、表面層の内部ヘイズを求めた。ヘイズ測定時の光入射面は基材層側とした。測定装置はヘイズメーター(HM-150、村上色彩技術研究所製)を用い、JIS K7136:2000に準拠して測定した。
(3)表面形状
実施例および比較例で得られたシートの、Ra(算術平均粗さ)及びRSm(曲線要素の平均長さ)は、JIS B0601:2013に準拠し、具体的には以下の方法により測定した。任意の10箇所の長方形(1024μm×768μm)の試料について、形状解析レーザ顕微鏡(「VK-X150(制御部)/VK-X160(測定部)」、株式会社キーエンス製)を用い、対物レンズ:50倍、レーザ波長:658nm、測定モード:表面形状モード、測定ピッチ:0.13μm、測定品質:高速モードにて測定した。任意の10箇所の測定値の平均値を、Ra(算術平均粗さ)及びRSm(曲線要素の平均長さ)とした。
(4)防汚性
実施例および比較例で得られたシートについて、下記の防汚試験を行った。JAS特殊合板汚染A試験に準拠し、試験片のシートを水平に置いた後、試験片の表面に一般市販品の事務用青色インキ、黒色油性インキ(いずれも、JIS S6037:2006に規定される「マーキングペン」に該当するものである。)、および赤クレヨン(JIS S6026:2007に規定される「クレヨン及びパス」に該当するもの又はこれと同等の性能を有するものである。)を用いて、各々幅10mmの線を引き、4時間放置した。その後、エタノールを含ませた布で拭取った。汚染残りがない場合をAとし、少なくともいずれかについて汚染残りが発生した場合をCとして評価した。
(5)下地視認性
実施例および比較例で得られたシートの各サンプルを、木目調化粧シート上に貼付けた。そして、下地の木目調化粧シートの意匠を損なうことなく確認できるかを評価した。意匠を明瞭に確認できる場合をAとし、意匠が濁り、明瞭に確認できない場合をCとして評価した。
(6)貼付性
実施例および比較例で得られたシートの各サンプルを、表面に凹凸のあるエンボス形状を有する壁紙上に貼付けた。そして、シートを、下地の凹凸に由来する気泡が混入することなく貼り付けられるかを評価した。シートを凹凸に追従するように貼り付けられる場合をAとし、気泡が混入した場合をCとして評価した。
表1の結果から、実施例1~8のシートは、優れた下地視認性および防汚性を有することが確認された。一方、水に対する接触角が90.0度未満である表面形状を備える表面層を有する比較例1および比較例2のシートは、防汚性に劣るものとなった。また、マット剤を多く含み、内部ヘイズが4.0%より大きい比較例3は、下柄視認性に劣るものとなった。また、基材層がポリエチレンテレフタレートシートである実施例8は、基材層がポリプロピレンシートである実施例1~7のシートに比べ、貼付性に劣るものとなった。