JP2022157494A - 転写シート、並びに、これを用いた化粧材の製造方法及び化粧材 - Google Patents

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優美子 林
Yumiko Hayashi
哲 古田
Satoru Furuta
沙織 宮崎
Saori Miyazaki
泰宏 秋田
Yasuhiro Akita
祥太 西根
Shota Nishine
亮介 西垣
Ryosuke Nishigaki
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Abstract

【課題】優れた艶消効果の視認性及び質感を有し、かつざらざらした触感に優れる転写シート、並びに、これを用いた化粧材の製造方法及び化粧材を提供することを課題とするものである。【解決手段】表面の少なくとも一部に、JIS B0601:2013に規定されるSpc(突起部頂点の算術平均曲率)が、4000mm-1より大きく、Rsm(曲線要素の平均長さ)が、30μm以上である、JIS B0601:2013に規定されるSpc(突起部頂点の算術平均曲率)が、4000mm-1より大きく、Rsm(曲線要素の平均長さ)が、30μm以上である表面形状を有する転写シート、並びに、これを用いた化粧材の製造方法及び化粧材である。【選択図】なし

Description

本発明は、転写シート、並びに、これを用いた化粧材の製造方法及び化粧材に関する。
従来から、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装用部材、外壁、軒天井、屋根、塀、柵等の外装用部材、窓枠、扉、扉枠、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材の他、箪笥、棚、机等の一般家具、食卓、流し台等の厨房家具、又は家電、OA機器等のキャビネット等の表面化粧板、車両の内装又は外装用部材等の表面を装飾し、保護するための物品として、またいわゆる化粧材又は化粧シート等が用いられている。そして、かかる化粧材としては、例えば、所望の機能を有する表面層を有するものが用いられている。
これらの用途に用いられる化粧材には、その意匠性を向上させるために艶消効果(マット効果)を用いて質感を向上させる手法が汎用される。艶消効果を用いた化粧材として、例えば、特許文献1には、基材シートの片面に絵柄層及び隠蔽層を有し、もう一方の面に艶調整層(マット層、グロス層)を有する化粧シートが提案されている。特許文献1の化粧シートでは、艶調整層のマット層とグロス層が有する光沢の差により、絵柄層、隠蔽層を引き立てるという意匠効果が得られており、その実施例では、全面に設けられるマット層には樹脂分100重量部あたりに球形状アルミナ10重量部及び炭酸カルシウム40重量部の合計50重量部の艶消剤を添加したマットインキが用いられている。
また特許文献2には、基材上に、印刷層と透明樹脂層とを順に有し、該透明樹脂層の最表面にエンボス模様を施した化粧材が提案されている。
特開2000-062081号公報 特開2011-073207号公報
艶消効果(マット効果)により質感を向上させる手法としては、前記特許文献1のように艶消剤(matting agent、「マット剤」とも称される。)を用い、それ自体が有する光拡散効果により艶消効果を得る手法、前記特許文献2のようにエンボス加工を施すことで最表面に凹凸形状を形成する手法等が主に挙げられる。
しかし、特許文献1のように艶消剤を用いる場合、艶消効果をより優れたものとするにはその使用量を増加させる必要があるが、その使用量が多くなるにつれて、艶消剤が塗膜から脱落し、かつ塗膜を傷つけることで耐擦傷性が低下し、また艶消剤の欠落による艶変化により傷が目立ちやすくなる、あるいは艶消剤と樹脂との界面の微小間隙に汚染物質が浸透する、さらに艶消剤自体に汚染物質が吸着することで耐汚染性が低下するなどの理由により、表面特性が低下する傾向にある。他方、表面特性の低下を抑制するために使用量を少なくすると艶消効果が低下する傾向にあり、表面特性と艶消効果とは二律相反の関係にある。そのため、艶消剤を用いたマット効果には限界がある。
また、特許文献2のようにエンボス加工を用いる場合、エンボスの版の作製は多大な手間がかかり容易なことではなく、さらに所望の柄ごとに版を作製する必要が生じる。そのため、顧客の需要の多様性に十分に対応しやすい手法であるとはいえない。また、特許文献2のエンボス加工では、製造工程が制約されたり、凹凸形状を付与しようとする物品の材質によっては凹凸形状を付与しにくかったりする場合がある。更に、エンボス加工の場合、エンボス加工対象基材の種類、エンボス加工条件、及びエンボス版上の凹凸形状の組合せ如何によっては、エンボス版上の艷消凹凸形状が忠実に基材上に賦型され無いことにより、十分な艷消を付与出來無い場合も有った。
ところで、顧客の需要の多様性は多岐にわたっており、前記のような視覚的な艶消効果だけでなく、触感表現にも求められるようになっている。例えば、前記特許文献1のような艶消剤を用いる場合、その使用量を増加させることにより、当該艶消剤の輪郭が化粧シートの表面に表出することで、多少粗雑な表面の感触、即ち「ざらつき」を感じさせる触感が発現する場合がある。また特許文献2のようにエンボス加工を用いる場合、エンボス版により賦型される表面の凹凸形状に起因する触感が発現する場合がある。しかし、いずれの場合も触感の表現に着目するものではなく、触感の点で十分な表現ができているとはいえない状況にある。すなわち、従来の化粧シート、化粧材は、優れた艶消効果と触感とを両立し得るものとはいえなかった。本発明においては、触感の中でも特に「ざらざら」した触感に着目した。
本発明は、優れた艶消効果の視認性及び質感を付与し、かつざらざらした触感を付与し得る転写シート、優れた艶消効果の視認性及び質感を有し、かつざらざらした触感を有する化粧材の製造方法並びに当該化粧材を提供することを課題とするものである。
前記課題を解決すべく、本発明は、以下の[1]~[14]を提供する。
[1] 離型性支持体上に転写層を有する転写シートであって、
前記転写層の前記離型性支持体側の表面の少なくとも一部に、JIS B0601:2013に規定されるSpc(突起部頂点の算術平均曲率)が、4000mm-1より大きく、JIS B0601:2013に規定されるRsm(曲線要素の平均長さ)が、30μm以上である、表面形状を有する、転写シート。
[2] 前記表面形状の、JIS B0601:2013に規定される輪郭曲線の山及び高さパラメータであるRz(最大高さ)が、8.00μm以上、30.00μm以下である、[1]に記載の転写シート。
[3] 前記表面形状の、JIS B0601:2013に規定される輪郭曲線の高さ方向のパラメータであるRa(算術平均粗さ)が、1.00μm以上、5.50μm以下である、[1]又は[2]に記載の転写シート。
[4] 前記表面形状を形成する前記転写層の表面が、不規則なシワにより構成される凹凸形状を有する[1]~[3]のいずれか1に記載の転写シート。
[5] 前記不規則なシワが、複数の線条突起部により形成する複数の凸部と、前記複数の線条突起部により囲まれて形成する凹部とにより構成される、[4]に記載の転写シート。
[6] 前記転写層が、前記離型性支持体側から、剥離層及び接着剤層をこの順に有する[1]~[5]のいずれか1に記載の転写シート。
[7] 前記剥離層と前記接着剤層との間に、プライマー層及び装飾層から選ばれる1以上の層を有する[6]に記載の転写シート。
[8] 前記剥離層が、電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物を含む[6]又は[7]に記載の転写シート。
[9] 前記剥離層が、紫外線吸収剤又は光安定剤を含む[6]~[8]のいずれか1に記載の転写シート。
[10] 前記剥離層が、粒子を実質的に含有しない、[6]~[9]のいずれか1に記載の転写シート。
[11] 前記離型性支持体が、支持体上に離型層を有してなる、[1]~[10]のいずれか1に記載の転写シート。
[12] 前記離型層が、電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物を含む[11]に記載の転写シート。
[13] 下記(1)及び(2)の工程を有する、化粧材の製造方法。
(1)[1]~[12]のいずれか1に記載の転写シートの転写層と、被着体とを密着した積層体を得る工程。
(2)前記積層体から離型性支持体を剥離し、被着体上に転写層を有する化粧材を得る工程。
[14] 被着体上に転写層を有する化粧材であって、
前記転写層の前記被着体とは反対側の表面の少なくとも一部に、JIS B0601:2013に規定されるSpc(突起部頂点の算術平均曲率)が、4000mm-1より大きく、JIS B0601:2013に規定されるRsm(曲線要素の平均長さ)が、30μm以上である、表面形状を有する、化粧材。
本発明によれば、優れた艶消効果の視認性及び質感を付与し、かつざらざらした触感を付与し得る転写シートを提供することができる。また、本発明によれば、優れた艶消効果の視認性及び質感を有し、かつざらざらした触感を有する化粧材を簡易に製造することができる。
本発明の転写シートの表面形状を説明するための模式図である。 本発明の転写シートの表面形状を説明するための模式図である。 本発明の転写シートの一実施形態を示す断面図である。 本発明の転写シートの一実施形態を示す平面視における模式図である。 本発明の転写シートの一実施形態を示す断面図である。 本発明の転写シートの一実施形態を示す断面図である。 実施例1で得られた化粧材の表面の光学顕微鏡画像である。 比較例1で得られた化粧材の表面の光学顕微鏡画像である。 比較例2で得られた化粧材の表面の光学顕微鏡画像である。 比較例3で得られた化粧材の表面の光学顕微鏡画像である。 比較例4で得られた化粧材の表面の光学顕微鏡画像である。 比較例5で得られた化粧材の表面の光学顕微鏡画像である。 比較例6で得られた化粧材の表面の光学顕微鏡画像である。
[転写シート]
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と称することがある。)について説明する。なお、本明細書中において、数値範囲の記載に関する「以上」、「以下」及び「~」に係る数値は任意に組み合わせできる数値であり、実施例の数値は数値範囲の上下限に用い得る数値である。
本実施形態の転写シートは、離型性支持体上に転写層を有してなり、前記転写層の前記離型性支持体側の表面の少なくとも一部に、Spc(突起部頂点の算術平均曲率)が、4000mm-1より大きく、Rsm(曲線要素の平均長さ)が、30μm以上である、表面形状を有することを特徴とするものである。
図3は、本発明の転写シート100の一実施形態を示す断面図である。図3の転写シート100は、離型性支持体10上に転写層20を有している。また、図3において、離型性支持体10は、支持体11上に離型層12を有している。また、図3において、転写層20は、離型性支持体10に近い側から、剥離層21、プライマー層22、装飾層23及び接着剤層24をこの順に有している。
図3の転写シートでは、転写層20の離型性支持体10側には、剥離層21が位置している。したがって、図3の転写シートでは、転写層20の離型性支持体10側の表面である、剥離層21の表面の少なくとも一部に、Spc(突起部頂点の算術平均曲率)が、4000mm-1より大きく、Rsm(曲線要素の平均長さ)が、30μm以上である、表面形状を有している。
〔表面形状について〕
本実施形態の転写シートが、転写層の離型性支持体側の表面の少なくとも一部に有する表面形状(以下、単に「転写層の表面形状」又は「表面形状」とも称する。)から説明する。
転写層の表面形状は、被着体に転写層を転写してなる化粧材の表面形状として反映される。なお、前述したように、転写層の表面形状は、被着体に転写層を転写してなる化粧材の表面形状として反映されるが、転写層の表面形状と、化粧材の表面形状とは、完全な同一には限定されず、転写時の熱や圧力の条件如何では多少変動する場合があるが、艶消効果の視認性及び質感、そしてSpcが4000mm-1より大きく、Rsmが30μm以上の、「ざらざらした触感」は保持される。
転写層の表面形状は、JIS B0601:2013に規定されるSpc(突起部頂点の算術平均曲率)が、4000mm-1より大きく、JIS B0601:2013に規定されるRsm(曲線要素の平均長さ)が、30μm以上であることを要する。このような転写層の表面形状を有することで、本実施形態の転写シートは、優れた艶消効果の視認性及び質感(以下、これらをまとめて「艶消効果」と称することがある。)を被着体に付与するとともに、触感として、とりわけ「ざらざら」した触感を被着体に付与することができる。「ざらざら」した触感は官能的な表現であるが、本明細書における「ざらざら」は一般的に「ざらざら」と感じる触感であるもの全てが包含される。具体的には、指の腹で粗面を触れた際に感じる触感を意味し、粗くなめらかではない、ささくれて粗さが感じられるような触感ともいえる。「ざらざら」した触感を有するものとしては、例えば、10~50番手(太番手~中番手)程度の太めの糸を用いたオックスフォード生地等の粗めの綿の布地、あるいは10~50番手程度の太めの糸を用いた麻の生地等が挙げられる。
(Spc(突起部頂点の算術平均曲率))
Spc(突起部頂点の算術平均曲率)は、前記JIS B0601:2013に規定される三次元表面性状パラメータの一つであり、基準領域に含まれる形体画像で山(凸部)と分類された箇所の山頂(突起部頂点)の曲率半径の算術平均値から求められる、山頂の先端部の平均曲率(平均的な鋭さ)である。このためSpcは、半径(mm)の逆数(mm-1)となる。
Spcの値が大きいほど山頂(凸部)の先端部(図1における1a)の曲率は大きく(その逆数の曲率半径は小さく、先端部の形状は鋭く)なる。一方、Spcの値が小さいほど突起部頂点(図1における1b)の曲率は小さく(その逆数の曲率半径は大きく、先端部の形状は鈍く)なる。つまり、Spcの値が小さいほど突起部は丸みを帯びており、平面に近づくため艶は大きくなる。このため、Spcの値にのみ着目して艶を抑えるには、Spcの大きい表面形状(突起部頂点が鋭い表面形状)、すなわち4000mm-1より大きい平面形状とすれば、表面での光の散乱が強くなり、艶が減少する。
Spcの値が小さな表面形状は、突起部頂点が丸みを帯びているため、ソフトな手触りとなるが、大きな値、すなわち4000mm-1より大きくなる(曲率半径が0.25mm未満)と指の腹で触れた際に適度な接触頻度で尖った先端形状を感じることができ、これが指の腹で粗面を触れた際に感じる触感、ソフトな手触りではない、ささくれて粗さが感じられるような触感、すなわち「ざらざら」した触感につながるものと考えられる。但し、斯かる尖った突起部頂点同士の平均間隔接近し過ぎると個々の尖った先端形状の存在が指の腹の触感の分解能の閾値以下となり、個々の突起の尖った触感が失われて、平滑でソフトな触感に移行する。よって、艷消物品の表面形状は、Spc>4000mm-1の要件に加えて、後述の如く、平均突起間隔に対応するRsm(曲線要素の平均長さ)≧30μmの要件も満たす必要がある。
後記するRsm(曲線要素の平均長さ)との関係で、艶消効果及びざらざらした触感を向上させる観点から、Spcは、好ましくは4200mm-1以上、より好ましくは4250mm-1以上であり、より好ましくは4300mm-1以上であり、上限として好ましくは7000mm-1以下であり、好ましくは5000mm-1以下、より好ましくは4500mm-1以下、より更に好ましくは4200mm-1以下である。本明細書におけるSpcの測定にあたり、カットオフ値は0.8mmである。
Spcの測定は、転写層の表面形状の任意の箇所の長方形(1024μm×768μm)について、形状解析レーザ顕微鏡を用いて測定される測定値であり、測定条件は適宜調整することができ、例えば実施例に記載の条件にて測定することが可能である。また、後述するRsm(曲線要素の平均長さ)、Rz(最大高さ)及びRa(算術平均粗さ)も同様に測定することが可能である。
(Rsm(曲線要素の平均長さ))
Rsm(曲線要素の平均長さ)は、前記JIS B0601:2013に規定される三次元表面性状パラメータのうち、輪郭曲線の横方向のパラメータであり、基準長さにおける輪郭曲線要素の長さの平均である。Rsmが大きいほど基準長さに含まれる凸部(図2における2a及び2b)が少なくなる。このため、Rsmが大きい表面形状は、凸部の突起部頂点が疎に存在することになる。このように凸部が散在することにより、すなわち30μm以上とすることで、指の腹で触れた際に適度な接触頻度で尖った先端形状を感じることができ、これが指の腹で粗面を触れた際に感じる触感、ソフトな手触りではない、ささくれて粗さが感じられるような触感、すなわち「ざらざら」した触感につながるものと考えられる。また、相対的に凹部を有することとなるため、艶消効果も得られているものと考えられる。
更に、Rsmを小さくすると、基準長さ内に含まれる凸部の数が大きくなる。すると表面に多くの凸部を形成することとなり、精密な製造工程が必要となる。このため、Rsmを30μm以上とすることで、製造工程も簡略化することが可能となる。
本実施形態において、Spcを大きくすることで、艶消効果を改善しつつ、「ざらざら」した触感を得ることができるが、Spcを大きくても、Rsmが小さければ、突起部頂点が密に存在するため、表面を指で撫でた場合、指と接触する面積が大きくなるため、ソフトタッチ感が発現してしまう。このため、Spc(突起部頂点の算術平均曲率)を4000mm-1より大きくし、Rsm(曲線要素の平均長さ)を30μm以上とすることで、艶消効果及び「ざらざら」した触感を高いレベルで両立することができるようになったと考えられる。
前記のSpcとの関係で、艶消効果及び「ざらざら」した触感を向上させる観点から、Rsmは、下限として好ましくは32.0μm以上、より好ましくは35.0μm以上、更に好ましくは37.5μm以上であり、上限値としては、好ましくは60.0μm以下、より好ましくは50.0μm以下、更に好ましくは40.0μm以下である。上限値を前記の範囲とすることにより、平面形状は「ざらざら」した触感を発現し、また製造も過度に困難になることなく好ましい。なお、本明細書におけるRsmの測定にあたり、カットオフ値は0.8mmである。
(シワ(皺))
本実施形態の転写層の表面形状は、後述する図4に示される平面視にて視認される微小なシワ(皺)を有することが好ましい。このシワは、不規則な凹凸形状であることが好ましい。本実施形態の転写層の表面形状について、Spc(突起部頂点の算術平均曲率)及びRsm(曲線要素の平均長さ)、好ましくは後述する、Rz(最大高さ)及びRa(算術平均粗さ)は、当該微小なシワ(皺)を有することで特定の数値範囲内となりやすく、他方、当該微小なシワ(皺)は、特定の数値範囲内のSpc(突起部頂点の算術平均曲率)及びRsm(曲線要素の平均長さ)、また好ましくは特定の数値範囲内の、Rz(最大高さ)及びRa(算術平均粗さ)を有することで、形成しやすくなる。このように、Spc(突起部頂点の算術平均曲率)及びRsm(曲線要素の平均長さ)等と微小なシワ(皺)とは、表裏一体の関係にあるといえる。そして、このような表面形状を有することで、「ざらざら」した触感とともに艶消効果が向上することとなる。
(Rz(最大高さ))
本実施形態において、転写層の表面形状として、JIS B0601:2013に規定される輪郭曲線の横方向のパラメータであるRz(最大高さ)が、8.00μm以上、30.00μm以下であることが好ましい。
Rz(最大高さ)は、輪郭曲線の山及び高さパラメータの一つであり、基準長さにおける輪郭曲線の中で、最も高い山の高さと最も深い谷の深さとの和である。Rz(最大高さ)の数値が大きいほど、谷(凹部)からみて形状が大きい(高い)凸部が存在し、そのような凸部が多く存在する傾向があることを示す指標となる。よって、前記Spc(突起部頂点の算術平均曲率)及びRsm(曲線要素の平均長さ)を満足する表面形状において、Rz(最大高さ)が8.00μm以上、30.00μm以下であると、前記のSpc(突起部頂点の算術平均曲率)及びRsm(曲線要素の平均長さ)の規定による凸部の先端形状の尖った形状であるという特徴が強調され、ざらざらした触感が向上する。また艶消効果も向上する。
艶消効果及びざらざらした触感の向上の観点から、Rz(最大高さ)は、好ましくは8.50μm以上、より好ましくは9.00μm以上、更に好ましくは9.50μm以上であり、上限として好ましくは26.00μm以下、より好ましくは24.00μm以下、更に好ましくは22.00μm以下である。なお、本明細書におけるRz(最大高さ)の測定にあたり、カットオフ値は0.8mmである。
(Ra(算術平均粗さ))
本実施形態において、転写層の表面形状として、JIS B0601:2013に規定される輪郭曲線の横方向のパラメータであるRa(算術平均粗さ)が、1.00μm以上、5.50μm以下であることが好ましい。
Ra(算術平均粗さ)は、輪郭曲線の高さ方向のパラメータの一つであり、基準長さにおける輪郭曲線において、平均面からの高低差の平均値である。Ra(算術平均粗さ)の数値が小さいほど、転写層の表面形状における凸部、これに応じて形成する凹部の高低差がより小さくなり、より滑らかで均一な形状となる傾向があることを示す指標である。よって、前記Spc(突起部頂点の算術平均曲率)及びRsm(曲線要素の平均長さ)を満足する転写層の表面形状において、Ra(算術平均粗さ)が1.00μm以上、5.50μm以下であると、転写層の表面形状が有する凸部の形状をより均一かつ穏やかなものがより多く存在することになるため、突飛な触感が抑えられ、特にざらざらした触感が向上する。また艶消効果も向上する。
艶消効果及びざらざらした触感の向上の観点から、Ra(算術平均粗さ)は、好ましくは5.25μm以下、より好ましくは5.00μm以下、更に好ましくは4.50μm以下であり、下限として好ましくは1.00μm以上、より好ましくは1.50μm以上、更に好ましくは1.75μm以上である。なお、本明細書におけるRa(算術平均粗さ)の測定にあたり、カットオフ値は0.8mmである。
(転写層の表面形状)
本実施形態の転写層の表面形状は、シワを有することが好ましい。既述のように転写層の表面においてシワの形成が安定することで、シワの形状に起因する光拡散効果により安定的に艶消効果を発現し、ざらざらした触感をも発現する層となる。図4は本実施形態の転写シートの一実施形態を示す平面視における模式図であり、実施例で得られた化粧材の転写層側の表面の画像を模式化したものである。図4には、本実施形態の転写層の表面にシワが形成されていることが示されている。ここで、「平面視」は、図3、5及び6に示されるXYZ座標系で、Z軸正方向から転写層の表面を見ることを意味する。
転写層の少なくとも一方の表面に発現するシワは、前記表面形状、すなわち前記の特定の数値範囲内にあるSpc及びRsm、好ましくは前記の特定の数値範囲内にあるその他Rz、Raを有する表面形状を呈するものであれば特に制限はなく、シワの発現により前記表面形状を有するものとなるため、安定的に艶消効果を発現し、かつざらざらした触感をも発現することとなる。
シワについて、前記表面形状を発現し、艶消効果を向上させ、かつざらざらした触感を向上させる観点から、転写層の少なくとも一方の表面は、不規則なシワにより構成される凹凸形状を有することが好ましく、不規則なシワは、複数の突起部により形成する複数の凸部と、複数の突起部により囲まれて形成する凹部と、により構成されていることが好ましく、当該突起部は線条の突起部を有していることが好ましい。本明細書において、「線条の突起部」(以下、「線条突起部」とも称する。)とは、当該突起部の長さと幅との比(長さ/幅)が3以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上であることを意味し、当該長さ及び幅の決定方法は後述の通りである。
本実施形態において、より好ましい不規則なシワは、複数の線条突起部により形成する複数の凸部と、当該複数の線条突起部により囲まれて形成する凹部により構成されるもの、である。
これらのシワに関する態様としては、例えば図4に示される態様が挙げられる。図4には、転写層の表面に、平面視において不規則なシワを有していること、また不規則なシワが、湾曲した複数の線条突起部により形成する複数の凸部2と、複数の突起部(複数の凸部2)により囲まれて形成する凹部3とを含むことにより構成されていること、また湾曲した複数の凸部2の少なくとも一部が、各々蛇行する線条突起部により形成され、当該蛇行する線条突起部に囲まれるようにして、蛇行する凹部3が形成していることも示されている。本実施形態の転写シートを構成する転写層は、図4に示されるシワの形成の安定により安定的に艶消効果を発現し、かつざらざらした触感をも発現している。
ここで「湾曲」とは、平面視において、連続する線条の凸部2の延在方向が一方側から他方側に反転している部分を1箇所以上有することを意味する。延在方向が一方側から他方側に反転している部分の例としては、例えば線条の凸部2の平面視形状の幅を無視したとき(幅を0とみなしたとき)に連続曲線で近似される場合に、変曲点を有する形態等が挙げられる。また、線条の凸部2の平面視形状の幅を無視したときに直線で近似される場合に、V字型の折線又は3角形の1頂点を挟む2辺で近似される部分を有する形態等が挙げられる。
また「蛇行」とは、平面視において、連続する線条の凸部2の延在方向が一方側から他方側に反転している部分(以下、「反転部分」とも称する。)を、少なくとも2箇所以上有し、線条の凸部2をその延在方向に進んだときに、互いに隣接する当該2箇所において交互に線条の凸部2の延在方向が逆向きに反転部分する部分を有することを意味する。例えば、線条の凸部2の平面視形状の幅を無視したときに連続曲線で近似される場合に、ローマ字「S」で近似される部分を有する形態等が挙げられる。また、線条の凸部2の平面視形状の幅を無視したときに直線で近似される場合に、ローマ字「W」で近似される部分を有する形態等が挙げられる。
本明細書において、不規則とは、一定の法則を有する形状、また一定の法則をもって配列される、いわゆるパターン化している、とはいえないことを意味する。不規則ではない形状(規則的な形状)の典型的な例としては、例えば円柱形状の単位レンズをその長手方向と直行する方向に複数個が互いに隣接して配列した、いわゆる「レンティキュラーレンズ(lenticular lens)」のように、特定の方向に一定の周期性をもって配列した形状等が挙げられる。よって、本実施形態における不規則なシワは、一つの突起部の形状自体が周期性等の一定の法則をもって形成される形状ではなく不規則であること、また複数の突起部により形成する複数の凸部の形状が一定の法則をもって形成及び配列されるものではなく不規則であること、またこのような複数の突起部により囲まれた凹部の形状も不規則であること、を包含するものである。
本実施形態の転写シートを構成する転写層において、一つの突起部(一つの凸部)の形状自体、複数の突起部(複数の凸部)の各々の形状及びその配列、複数の突起部により囲まれた凹部の形状のいずれかが不規則であれば、不規則なシワを有することによる艶消効果、かつざらざらした触感は得られるが、いずれもが不規則であることが好ましい。本実施形態の転写シートは、転写層の表面に不規則なシワを有することにより、その艶消効果の視認性及び質感は向上し、極めて優れた艶消効果を安定的に発現し、かつざらざらした触感を発現するものとなる。
既述のように、転写層はその少なくとも一方の表面にシワ、すなわち凹凸形状を有する。凹凸形状における凸部と凹部は、例えば本実施形態の転写層の表面の画像の明度差を利用して、濃度分布画像で最も濃い部分を階調255とし、濃度分布画像で最も薄い部分を階調0として、階調0~255について、階調0~127を凹部、階調128~255を凸部と、二値化処理して区分すればよい。前記画像は、被着体に転写層を転写した後に撮影すればよい。
本実施形態の転写層の表面は、少なくともその一部に不規則なシワが形成されていることが好ましく、全面にわたって不規則なシワが形成されていることがより好ましい。シワが形成する箇所は、転写層の表面であれば特に制限はなく、例えば後述する絵柄に応じた箇所(当該絵柄上)だけに限らず、転写層の表面の少なくとも一部であれば、シワの形成による艶消効果及びざらざらした触感は発現する。
例えば、後述する装飾層を有し、かつ一部に不規則なシワが形成する場合、シワは装飾層の絵柄に応じた箇所(例えば絵柄上)に形成すると、当該絵柄が周囲に比べてより艶消された箇所として視認されるため、意匠性の向上を図ることができる。
また図4にも示されるように、不規則ながらもある程度の均質性をもった複数の突起部により形成される複数の凸部と、当該凸部により囲まれた凹部と、を有していることが好ましい。よって、1の凸部(突起部)において、その幅が極端に変化する形状は、前記の表面形状になりにくく、艶消効果の視認性及び質感を得るにあたり好ましい態様とはいえないし、またざらざらした触感を得るにあたっても好ましい態様とはいえない。不規則なシワを形成する凸部(突起部)、凹部の形状について、安定的に艶消効果を向上させ、かつざらざらした触感を向上させる上で優位となり得る具体的な態様について、以下説明する。シワが以下の形状を有することにより、前記表面形状を呈しやすくなり、艶消効果及びざらざらした触感が向上する。
転写層の少なくとも一方の表面に形成するシワの形状について、その凸部の高さ(突起部の高さ)は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは2μm以上であり、上限としては10μm以下程度である。また、凸部の幅は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、更に好ましくは0.5μm以上であり、上限として好ましくは10μm以下、より好ましくは4μm以下、更に好ましくは3μm以下である。凸部の高さ及び幅が前記範囲内であると、前記表面形状を呈しやすくなり、凹部との関係で、安定的に艶消効果が向上し、かつざらざらした触感が向上する。
ここで、凸部の前記寸法は、本実施形態の転写シートの任意の10箇所(100μm四方の領域×10箇所)における任意の10の凸部(突起部)、すなわち合計100の凸部の平均値である。また、図3に示されるように、1の凸部(突起部)においてその幅は同じではなく広狭があるため、1の凸部(突起部)の幅は、当該1の凸部(突起部)における任意の5箇所の幅の平均値とする。凸部(突起部)の高さについても同様とする。
凹部の深さは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは2μm以上であり、上限としては10μm以下程度である。また、凹部の幅は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、更に好ましくは0.3μm以上であり、上限として好ましくは10μm以下、より好ましくは3μm以下、更に好ましくは2μm以下である。凹部の深さ及び幅が前記範囲内であると、前記表面形状を呈しやすくなり、凸部との関係で、安定的に艶消効果が向上し、かつざらざらした触感が向上する。
ここで、凹部の寸法は、前記の凸部の寸法と同様に決定する。
凸部の頂から凹部の底までの距離(凸部と凹部との高低差)は、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、上限として好ましくは20μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは7μm以下である。当該距離が前記範囲内であると、前記表面形状を呈しやすくなり、安定的に艶消効果が向上し、かつざらざらした触感が向上する。
ここで、凹部の寸法は、前記の凸部の寸法と同様に決定する。
凸部の占有割合は、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上であり、上限として好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下、更に好ましくは60%以下である。凸部の占有割合が前記範囲内であると、前記表面形状を呈しやすくなり、当該凸部に囲まれる凹部の占有割合との関係で、安定的に艶消効果が向上し、かつざらざらした触感が向上する。
ここで、凸部の占有割合は、本実施形態の転写シートの任意の10箇所(100μm四方の領域×10箇所)における凸部の占有割合の平均値である。
凸部及び凹部は、略同一方向及び略同一幅の箇所を有していてもよいが、艶消効果の向上、かつざらざらした触感の向上の観点から、その長さは短いことが好ましい。具体的には、略同一方向及び略同一幅の凸部及び凹部が連続する長さは、好ましくは95μm以下、より好ましくは80μm以下、更に好ましくは70μm以下であり、下限として好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは15μm以上である。当該長さが前記範囲内であると、シワがより不規則となるため、安定的に艶消効果が向上し、かつざらざらした触感が向上する。
ここで、本実施形態の転写シートの任意の10箇所(100μm四方の領域×10箇所)における任意の10の凸部及び凹部(すなわち合計100の凸部及び凹部)について、その80%以上が前記の条件を満たすものであることが好ましく、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上、より更に好ましくは95%以上である。また、本明細書における「略同一」の「略」は、概ね同じであることを意味し、枝分かれすることなく、方向の場合は±3°以内の違いを意味し、幅の場合は±5%以内の違いを意味する。
また、100μm四方の領域における凸部(突起部)の数は、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは30以上であり、上限として好ましくは200以下、より好ましくは100以下、更に好ましくは70以下である。当該凸部の数が前記範囲内であると、安定的に艶消効果が向上し、かつざらざらした触感が向上する。
当該凸部の数は、本実施形態の転写シートの10箇所(100μm四方の領域×10箇所)における凸部の数の平均値である。
図5は、本実施形態の転写シートを構成する転写層20の一実施形態を示す断面図であり、転写層をその厚さ方向(同図においてはZ方向)に平行な面で切断した断面図である。
凹部の形状としては、例えば図5の3aのように鋭角状のものでもよいし、また3bのように半円又は半楕円状のものであってもよく、これらの組合せであってもよい。また一つの凸部が一部に凹部を有する、図5の3cのような形状であってもよい。
他方、凸部の形状としては、図5の2c、2dのように幅の広狭はあるものの、半円又は半楕円の形状を呈する。
(転写層の表面形状の形成)
転写層の表面形状は、後記する基本艶消層の表面形状に基づいて形成することが好ましい。基本艶消層をまず作製し、その後転写層の表面を形成すると、シワ形成安定剤等を含有させず、かつ所望の表面形状を形成することができる。つまり、転写層には後記する基本艶消層の形成に必要なシワ形成安定剤などを含有させる必要がなくなる。また、転写層を構成する樹脂も基本艶消層とは異なり、選択肢が増える。このように基本艶消層を作製することにより、転写層は紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤等を添加することにより耐候性を向上させるような樹脂組成とすることができるため好ましい。
転写層の表面形状に関して、Spc(突起部頂点の算術平均曲率)、Rsm(曲線要素の平均長さ)、Rz(最大高さ)及びRa(算術平均粗さ)が好ましい範囲を満たすようにするためには、離型性支持体の表面形状を設計することが好ましい。転写層の表面構造は、離型性支持体の表面形状を反映した形状となるためである。
前記のパラメータのうち、Spcの値は、離型性支持体の凹部形状が転写層の凸部形状となるため、離型性支持体の凹部形状を調製することが好ましい。
離型性支持体の凹部形状の調整方法について、説明する。
物品の表面形状Aは、1回反転すると前記形状Aと相補的な表面形状となる。そして、前記相補的な表面形状を更に反転すると、表面形状Aと同一の表面形状に戻る(前記の「同一」とは、完全な同一に限定されないが、Spc及びRsmが特定の範囲内に収まることにより、当初表面形状が有する艶消効果の視認性、質感及びざらざらの触感が保持される程度の誤差を許容する同一を意味する。)。すなわち、物品の表面形状は、2回反転すると元の表面形状に戻る。この2回反転を利用して、転写層の表面形状の凸部形状を調製すればよい。
このため、まず、基本となる艶消層(以下、「基本艶消層」とも称する。)を作製し、次いで、前記基本艶消層の表面形状を反転させた表面形状を、離型性支持体の表面形状とすることが好ましい。基本艶消層の表面形状を反転した表面形状を有する離型性支持体は、例えば、下記(1-1)~(1-2)、(2-1)~(2-3)、(3-1)~(3-2)の3つの方法で製造することができる。
(1-1)Spc及びRsm等のパラメータを満たす、基本艶消層Aを作製する。
(1-2)基本艶消層Aを離型性支持体の表面に押し当て、離型性支持体の表面に、基本艶消層Aの表面形状を反転させた形状を賦型する。基本艶消層Aは後記する基本艶消層に該当する。
離型性支持体として、好ましくは支持体上に離型層を有する積層体を用い、基本艶消層Aを離型層の表面に押し当てる際に、離型層を未硬化の状態にし、その後硬化すれば、離型層の表面(=離型性支持体の表面)に、基本艶消層Aの表面形状を反転させた形状を賦型することができる。
(2-1)Spc及びRsm等のパラメータを満たす、基本艶消層Aを作製する。
(2-2)基本艶消層Aと同一の表面形状の型Aを作製する。基本艶消層Aと同一の表面形状の型Aは、例えば、基本艶消層Aの表面形状を反転した型Bを作製し、さらに、型Bの表面形状を反転した型を作製することにより得ることができる。型Bの表面形状を反転した型は、型Aである。型A及び型Bは、電気鋳造等の汎用の型の作製方法により作製できる。
(2-3)型Aを離型性支持体の表面に押し当て、離型性支持体の表面に、型Aの表面形状(=基本艶消層Aの表面形状)を反転させた形状を賦型する。離型性支持体として、好ましくは支持体上に離型層を有する積層体を用い、型Aを離型層の表面に押し当てる際に、離型層を未硬化の状態にし、その後硬化すれば、離型層の表面(=離型性支持体の表面)に、型Aの表面形状(=基本艶消層Aの表面形状)を反転させた形状を賦型することができる。
(3-1)Spc及びRsm等のパラメータを満たす表面形状をシミュレーションにより設計し、設計した表面形状をレーザ微細加工で再現した型Cを作製する。
(3-2)型Cを離型性支持体の表面に押し当て、離型性支持体の表面に、型Cの表面形状(=Spc及びRsm等のパラメータを満たす表面形状)を反転させた形状を賦型する。離型性支持体として、好ましくは支持体上に離型層を有する積層体を用い、型Cを離型層の表面に押し当てる際に、離型層を未硬化の状態にし、その後硬化すれば、離型層の表面(=離型性支持体の表面)に、型Cの表面形状(=Spc及びRsm等のパラメータを満たす表面形状)を反転させた形状を賦型することができる。
前記(3-1)として、前記(3-2)の型Cで賦型される表面形状をシミュレーションにより設計し、設計した表面形状をレーザ微細加工で再現した型C’を作製し、離型性支持体として用い、反転させた形状を賦型してもよい。
基本艶消層の厚さは、安定的に艶消効果を発現し、かつざらざらした触感を発現し得る程度に前記のシワを形成することができる厚さであれば特に制限はないが、作製のしやすさ等も考慮すると、通常1μm以上であり、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上、より更に好ましくは5μm以上であり、上限として好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは150μm以下、より更に好ましくは100μm以下である。
本明細書において、艶消層の厚さは、転写シートの断面について、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した画像から20箇所の厚さを測定し、20箇所の値の平均値とする。なお、SEMの加速電圧は3kV、倍率は厚さに応じて設定とする。また、他の層の厚さについても同様である。
基本艶消層は、その全面に前記の表面形状を呈する層であり、本実施形態の転写層が表面の少なくとも一部に表面形状を有するものであることから、転写層の表面の少なくとも一部に設けられていればよく、その全面に設けられていてもよい。本実施形態の転写層が、前記剥離層を有する場合、当該剥離層の表面の少なくとも一部に設けられるものであればよく、またその全面にわたって設けられるものであってもよい。
艶消層は、転写層において需要者が視認し、また触れる箇所に設けられていれば、すなわち前記表面形状は、化粧材において需要者が視認し、また触れる箇所に設けられていれば、艶消効果及びざらざらした触感という発明の効果は得られることとなる。
また、基材がフィルム、シート、又は板の形状を呈する場合も、基本艶消層は、化粧材において需要者が視認し、また触れる箇所に設けられていればよく、その一方の面の少なくとも一部に設けられていればよく、その全面に設けられていてもよく、艶消効果及びざらざらした触感の向上の観点から、図3、5及び6に示されるように、一方の面の全面にわたって設けられていることが好ましい。
(基本艶消層)
前記(1-1)~(1-2)、(2-1)~(2-3)の製造方法については、「離型支持体の凹部形状の調製」に用いられる基本艶消層は、
(1)基本艶消層の表面に微小なシワ構造を形成する、
ことが好ましい。
さらに、基本艶消層は、
(2)基本艶消層形成用の樹脂組成物の組成配合、特に重合性モノマー及び重合性オリゴマーの種類、官能基数、分子量、シワ形成安定剤の有無、シワ形成安定剤を使用する場合は当該シワ形成剤の粒径及び含有量を適正化する、
(3)基本艶消形成用の樹脂組成物の照射条件、特に基本艶消層の表面部分を硬化収縮させ得る100nm以上380nm以下の波長光の波長、積算考量、紫外線出力密度等を適正化する、
(4)前記の他、基本艶消層を形成する基材の種類及び厚さ、基本艶消層の厚さ等を適正化する、
ことが好ましい。
これらを適正化することにより、基本艶消層の表面形状(=本実施形態の転写層の表面形状)について、Spc(突起部頂点の算術平均曲率)及びRsm(曲線要素の平均長さ)を前記特定の数値範囲内とし、好ましくは後述するRz(最大高さ)及びRa(算術平均粗さ)を所定の数値範囲内としやすくなる。
基本艶消層は、樹脂組成物の硬化物、好ましくは硬化物樹脂を含む硬化性樹脂組成物の硬化物により構成される層であることが好ましい。
基本艶消層を形成する前記樹脂組成物としては、優れた艶消効果を有し、かつざらざらした触感に優れる基本艶消層を得る観点から、樹脂及びシワ形成安定剤を含む樹脂組成物(以下、「基本艶消層形成用の樹脂組成物」と称することがある。)が好ましい。すなわち、基本艶消層は、樹脂及びシワ形成安定剤を含む層であることが好ましい。
(シワ形成安定剤)
シワ形成安定剤は、基本艶消層の少なくとも一方の表面でシワの形成を安定させることにより、基本艶消層の全面にわたり均一に艶消効果の視認性が発現し、部分的な艶のムラが低減される、安定的な艶消効果の視認性(以下、単に「安定的な艶消効果の視認性」といった表現、これに準ずる表現を用いる場合がある。)と、面状態の均一性(「質感」とも称する。)とを付与する機能を有するものである。そして、基本艶消層に形成するシワは、そのまま転写層(剥離層)が有するシワとなるため、転写シートのざらざらした触感の発現にも大きく寄与する。すなわち、後述する基本艶消層の艶消効果の視認性、質感、ざらざらした触感の向上は、そのまま本実施形態の転写シートが付与し得る艶消効果の視認性、質感、ざらざらした触感の発現にも大きく寄与する。
よって、従来技術におけるいわゆる「艶消剤」と、本実施形態における「シワ形成安定剤」とは、例えその構成物質、平均粒子径が同じであった場合においても、両者の艶消の機構(作用)、艶消を発現させるための構造、及び使用量と、表面の艶(グロス値)の程度との関係において異なるものとなる。また、シワを形成することにより、ざらざらした触感を発現させる点でも、「艶消剤」とは異なるものである。
前記特許文献1等の従来技術において、艶消表現のために用いられてきた艶消剤は、物理的な形状に起因する光拡散効果により、それ自体が艶消効果の視認性を発現するものである。具体的には、一般に艶消剤と称されるものは、一般に艶消剤粒子と周囲の樹脂及び空気との屈折率差を有し、その粒子の輪郭形状に対応した光線の反射及び屈折性界面による光拡散効果により艶消効果の視認性を発現するものである。一方、本実施形態のシワ形成安定剤は、粒子それ自体による光線の反射及び屈折による光拡散が艶消効果の視認性を発現するのではなく、シワ形成安定剤に起因して艶消層の表面におけるシワの形成を安定させることで、かかる表面と空気との屈折率差界面での光拡散効果により艶消層に安定的に艶消効果の視認性とともに質感を付与するというものである。よって、本実施形態で用いられるシワ形成安定剤は、それ自体が艶消効果の視認性を発現する艶消剤とは、(仮に、両者の構成物質、平均粒子径が同じであったとしても、)両者の艶消の機構(作用)、艶消を発現させるための構造等は異なるものである。
さらに、「シワ形成安定剤」と「艶消剤」とは、含有量と表面の艶(グロス値)との関係においても異なる。同じ物質Aをシワ形成開始剤AW(W:シワ,wrincle)として用い、これを特定量Cで含有させて表面にシワを形成させた場合の表面の60°グロス値G60° AW(C)は、同物質Aを単なる艶消剤AMとして用い、これを当該特定量Cで含有させるも表面にシワが形成しない場合の表面の60°グロス値G60° AM(C)よりも明らかに低下する。すなわち、以下の関係式が成立する。
60° AW(C)<G60° AM(C)
剥離層は、従来艶消剤として用いられてきた剤を含んでもよいが、艶消剤を含まないことが好ましい。このように、本実施形態の剥離層は、従来艶消効果の視認性を得るために用いていた艶消剤を実質的に含まなくても、極めて優れた艶消効果の視認性及び質感を有するものであるといえる。ここで、「艶消剤を含まない」とは、艶消剤を全く含まないことに加えて、含んでいても艶消剤自体の作用効果に基づく艶消効果の視認性を有することがない、具体的には艶消剤の含有量が樹脂100質量部に対して15.0質量部未満、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下であることを意味する。
本明細書において「艶消剤」は、既述のように頭出しの効果により凸部を形成する観点から、具体的には当該艶消剤が含まれ得る層、すなわち艶消層の厚さの100%超及び30μm超のいずれか小さい方を下限とする平均粒子径を有する粒子を意味する。
シワ形成安定剤としては、艶消剤ではない、平均粒子径が基本艶消層の厚さの100%以下及び30μm以下のいずれか小さい方を上限とするものであれば特に制限なく用いることができる。
艶消効果及びざらざらした触感を向上させる観点から、平均粒子径が基本艶消層の厚さの100%以下及び30μm以下のいずれか小さい方を上限とするシワ形成安定剤について、その平均粒子径により区別される二種のシワ形成安定剤の少なくともいずれかを用いることが好ましい。二種のシワ形成安定剤は、具体的には、平均粒子径が1μm以上、かつ前記艶消層の厚さの100%以下及び30μm以下のいずれか小さい方を上限とするシワ形成安定剤1、及び平均粒子径が1μm未満であるシワ形成安定剤2である。本実施形態においては、二種のシワ形成安定剤の少なくともいずれかを用いれば、シワの形成が安定し、安定的に優れた艶消効果が得られ、またざらざらした触感も得られる。本実施形態においては、シワ形成安定剤1、シワ形成安定剤2を単独で、またはシワ形成安定剤1とシワ形成安定剤2とを併用することができ、艶消効果及びざらざらした触感を向上させる観点から、シワ形成安定剤1が好ましく、シワ形成安定剤1とシワ形成安定剤2とを併用することもできる。
シワ形成安定剤としては、例えば有機粒子、無機粒子を用いることができる。
有機粒子を構成する有機物としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル-スチレン共重合体樹脂、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル樹脂、ベンゾグアナミン-メラミン-ホルムアルデヒド縮合物、シリコーン、フッ素系樹脂及びポリエステル系樹脂等が挙げられる。
無機粒子を構成する無機物としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、アルミノシリケート及び硫酸バリウム等が挙げられ、これらの中でも透明性に優れるシリカが好ましい。
シワ形成安定剤の形状としては、特に制限はないが、例えば球形、多面体、鱗片状、不定形等が挙げられる。
シワ形成安定剤1の平均粒子径は、1μm以上、かつ前基本記艶消層の厚さの100%以下及び30μm以下のいずれか小さい方を上限とする。安定的に艶消効果を向上させ、ざらざらした触感を向上させる観点から、シワ形成安定剤1の平均粒子径は、好ましくは1.3μm以上、より好ましくは1.5μm以上、更に好ましくは1.8μm以上であり、上限としては、基本艶消層の厚さに対しては、好ましくは基本艶消層の厚さの90%以下、より好ましくは基本艶消層の厚さの80%以下、更に好ましくは基本艶消層の厚さの70%以下であり、絶対値については、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは8μm以下、より更に好ましくは7μm以下であり、基本艶消層の厚さに対する上限と絶対値の上限とを任意に組み合わせた場合のいずれか小さい方とすればよい。例えば、基本艶消層の厚さの90%以下及び20μm以下のいずれか小さい方を上限としてもよいし、基本艶消層の厚さの90%以下及び10μm以下のいずれか小さい方を上限とすることもできる。なお、基本艶消層の厚さについては後述する。
また、シワ形成安定剤2の平均粒子径は、1μm未満である。シワの形成を安定させて、安定的に艶消効果を向上させ、ざらざらした触感を向上させる観点から、シワ形成安定剤2の平均粒子径は、好ましくは1nm以上、より好ましくは3nm以上、更に好ましくは5nm以上であり、上限として好ましくは900nm以下、より好ましくは700nm以下、更に好ましくは500nm以下である。
本明細書において、シワ形成安定剤の平均粒子径は、レーザ光回折法による粒度分布測定における質量平均値d50として測定したものである。
シワ形成安定剤によるシワの形成を安定させて、安定的に艶消効果を向上させ、ざらざらした触感を向上させる観点から、シワ形成安定剤(シワ形成安定剤1とシワ形成安定剤2とを併用する場合はこれらの合計含有量)の含有量は基本、艶消層を形成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.75質量部以上、更に好ましくは1.0質量部以上、より更に好ましくは1.2質量部以上であり、上限としては安定的な艶消効果の向上、またざらざらした触感の向上の観点からは特に制限はないが、例えば基本艶消層形成用の樹脂組成物の塗布性等による化粧材の生産性、また効率的に艶消効果の視認性及び質感を向上させる観点から、好ましくは25.0質量部以下、より好ましくは15.0質量部以下、更に好ましくは10.0質量部以下、より更に好ましくは7.5質量部以下、特に好ましくは6.0質量部以下である。
シワ形成安定剤1とシワ形成安定剤2とを併用する場合、シワ形成安定剤1及びシワ形成安定剤2の各々の含有量としては、合計の含有量が前記範囲内であれば特に制限はないが、シワ形成安定剤2の含有量は樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1.0質量部以上であり、上限として好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは7.5質量部以下、更に好ましくは5.0質量部以下、より更に好ましくは3.5質量部以下である。また、シワ形成安定剤1とシワ形成安定剤2との配合割合は、これらの合計量を100質量部とした場合のシワ形成安定剤1の配合量として、好ましくは0.05~0.95質量部、より好ましくは0.10~0.90質量部、更に好ましくは0.20~0.80質量部、より更に好ましくは0.30~0.70質量部である。
シワ形成安定剤としては、既述のように有機粒子、無機粒子を用い得るが、これらの粒子の種類自体は、従来艶消剤としても用いられるものを含むものともいえ、例えば前記の特許文献1に記載の化粧シートのマット層には、球形状アルミナ、炭酸カルシウムといった艶消剤が用いられている。球形状アルミナ、炭酸カルシウムといった艶消剤が、物理的な形状に起因する光拡散効果により、それ自体が艶消効果の視認性を発現するためには、特許文献1に記載されるように、樹脂分100重量部あたりに球形状アルミナ10重量部及び炭酸カルシウム40重量部の合計50重量部程度の含有量で使用する必要がある。しかし、本実施形態においては、既述のように少量の含有量としても、すなわち物理的な形状に起因する光拡散効果により、それ自体が艶消効果の視認性を発現するために必要な含有量より少ない含有量としても、艶消剤により得られる効果に比べて極めて優れた艶消効果が得られており、更にざらざらした触感をも得られている。よって、本実施形態の艶消層は、実質的に艶消剤を含まないにも関わらず、表面にシワが安定して形成することにより、艶消剤を用いた場合に比べてより優れた艶消効果の視認性が安定的に得られていると同時に質感も得られ、更にざらざらした触感をも得られている、といえる。
(樹脂)
基本艶消層を形成する樹脂としては、前記シワ形成安定剤を所定量で含む基本艶消層形成用の樹脂組成物を形成し、硬化することにより硬化物となり基本艶消層を構成する樹脂であればよい。このような樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂が挙げられる。上述したように、基本艶消層自体を賦型シートとして用いる場合(前記の1-2)、基本艶消層を基準として型を製造する場合がある(前記の2-2)。このため、艶消層を形成する樹脂は、加工特性等の表面特性を発現しやすい樹脂であることが好ましく、電離放射線硬化性樹脂はこれらの観点から好ましい樹脂である。基本艶消層は、艶消効果、ざらざらした触感を保持して、転写シートに所望の形状をそのまま付与し得ることができるので、転写シートを用いて得られる化粧材にも所望の形状をそのまま付与し得る。
電離放射線硬化性樹脂は、電離放射線硬化性官能基を有する樹脂のことであり、電離放射線硬化性官能基は電離放射線の照射によって架橋硬化する基であり、例えば(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基などが好ましく挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクロイル基を示す。また、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを示す。
また、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合及び/又は架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も含まれる。
電離放射線硬化性樹脂としては、電子線硬化性樹脂及び紫外線硬化性樹脂が挙げられ、シワ形成安定剤によるシワの形成を安定させて、安定的に艶消効果を向上させる観点、ざらざらした触感を向上させる観点から、紫外線硬化性樹脂が好ましい。
電離放射線硬化性樹脂は、具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー、重合性オリゴマーの中から適宜選択して用いることができる。
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好ましく、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ該官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
シワの形成を安定させて、安定的に艶消効果を向上させる観点、ざらざらした触感を向上させる観点、また、艶消効果、ざらざらした触感を有する形状を転写シートにより着実に付与する観点から、多官能性(メタ)アクリレートモノマーの官能基数は2以上8以下が好ましく、2以上6以下がより好ましく、2以上4以下がさらに好ましく、2以上3以下がよりさらに好ましい。また、前記官能基数であると、特に前記の表面形状が得られやすく、ざらざらした触感を向上させやすくなる。
これらの多官能性(メタ)アクリレートは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
重合性オリゴマーとしては、例えば、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ該官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、及びノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー等がある。
これらの重合性オリゴマーは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
シワの形成を安定させて、安定的に艶消効果を向上させる観点、ざらざらした触感を向上させる観点、また、艶消効果、ざらざらした触感を有する形状を転写シートにより着実に付与する観点から、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマーがより好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが更に好ましい。
これらの重合性オリゴマーの官能基数は、シワの形成を安定させて、安定的に艶消効果を向上させる観点、ざらざらした触感を向上させる観点、
また、艶消効果、ざらざらした触感を有する形状を転写シートにより着実に付与する観点から、2以上8以下のものが好ましく、上限としては、6以下がより好ましく、4以下が更に好ましい。
また、これと同様の観点から、これらの重合性オリゴマーの重量平均分子量は、2,500以上7,500以下が好ましく、3,000以上7,000以下がより好ましく、3,500以上6,000以下が更に好ましい。ここで、重量平均分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された平均分子量である。
本実施形態において、基本艶消層を形成する樹脂としては、前記重合性オリゴマーを単独で、前記重合性モノマーを単独で、また前記重合性オリゴマーと重合性モノマーとを組み合わせて用いることができるが、シワの形成を安定させて、安定的に艶消効果を向上させる観点、ざらざらした触感を向上させる観点、また、艶消効果、ざらざらした触感を有する形状を転写シートにより着実に付与する観点から、前記重合性モノマーを単独で、また前記重合性オリゴマーと重合性モノマーとを組み合わせて用いることが好ましい。重合性オリゴマーとしては多官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく、多官能性ウレタンアクリレートオリゴマーがより好ましいく、また重合性モノマーとしては多官能の重合性モノマーが好ましく、多官能性(メタ)アクリレートモノマーがより好ましく、多官能アクリレートモノマーが更に好ましい。
組み合わせて用いる場合、これと同様の観点から、重合性オリゴマーと重合性モノマーとの合計100質量部に対する重合性オリゴマーの含有量は、好ましくは40質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは55質量部以上、より更に好ましくは60質量部以上であり、上限として好ましくは90質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは70質量部以下である。
(樹脂組成物)
基本艶消層は、前記シワ形成安定剤を所定含有量で含む樹脂組成物の硬化物により構成されることが好ましく、当該樹脂組成物は、好ましくは前記樹脂と、前記シワ形成安定剤を所定含有量で含むものである。前記樹脂組成物は、前記シワ形成安定剤及び樹脂の他、所望の性能等に応じて、他の成分を含んでもよい。
基本艶消層形成用の樹脂組成物は、例えばその粘度を低下させる等の目的で、単官能性(メタ)アクリレートを含有してもよい。これらの単官能性(メタ)アクリレートは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
また、前記樹脂が紫外線により硬化する紫外線硬化性樹脂である場合、光重合開始剤、光重合促進剤等の添加剤を含むことが好ましい。これらの添加剤を含むことにより、紫外線を用いても(電離放射線を用いなくても)樹脂を硬化させることができ、実用に資する表面特性が得られる。
光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、チオキサントン類等から選ばれる1種以上が挙げられる。
また、光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速めることができるものであり、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
(基本艶消層の形成方法)
基本艶消層の形成方法は、前記の樹脂及びシワ形成安定剤を含む基本艶消層形成用の樹脂組成物の層を、少なくとも100nm以上380nm以下の波長光で照射して形成する基本艶消層形成工程を備える。
当該形成方法により、例えば図5に示されるような表面形状を有する基本艶消層を形成することができる(図5の転写層は、基本艶消層の表面形状を2回反転して得られたものである。すなわち、図5の転写層の表面形状は、基本艶消層の表面形状と同一である。ここでいう同一は前記のとおりである。)。例えば、前記の基本艶消層形成用の樹脂組成物を、基材上に塗布し、当該基材上に当該樹脂組成物の層を形成し、前記の波長光を照射して基本艶消層を形成すれば、基材と基本艶消層とを有する積層体を製造することができる。
本形成方法は、基本艶消層側の60°グロス値が20.0以下、10.0以下、さらにはそれ以下という艶消効果を有し、かつざらざらした触感を有する基本艶消層を形成する場合に好適である。
尚、紙等の繊維質材料の基材の場合、液状の艶消層形成用樹脂組成物を塗工した際に、該液状組成物が基材中に浸透することによって、基材表面の繊維の凹凸形状の影響が艶消層表面に現出して、所望のSpc及びRsmの値が得られ無い場合が有り得る。このような場合には、繊維質材料の基材の艶消層形成側表面に、公知の浸透防止用樹脂層を塗工等の方法により形成することが好ましい。斯かる浸透防止用樹脂層形成用樹脂としては、例えば、2液硬化型ウレタン樹脂を挙げることができる。
当該艶消層の形成方法により、基本艶消層を容易に得ることが可能となる。具体的には、基本艶消層の形成にあたり、少なくとも100nm以上380nm以下という短波長の紫外線を、基本艶消層を形成するシワ形成安定剤を含む艶消形成用の樹脂組成物に照射することにより、当基本該艶消層の少なくとも一方の表面に、シワを形成させることができ、基本艶消層に艶消効果及びざらざらした触感を付与することが可能となる。
このような短波長の紫外線を、艶消層形成用の樹脂組成物に照射することにより基本、艶消層の少なくとも一方の表面においてシワが形成し艶消効果及びざらざらした触感が発現する機構についての詳細は不明であるが、以下の機構によるものと推察される。
基本艶消層形成用の樹脂組成物を所定の厚さで塗布した塗布層に短波長の紫外線を照射すると、当該紫外線のエネルギーが表面部分のみに浸透し、それより下層にはエネルギーが到達しないことにより、当該樹脂組成物の表面部分だけが硬化をはじめることから、表面だけが硬化収縮を生じることで、シワが形成するものと考えられる。このように、シワの形成は、短波長の紫外線の照射により、基本艶消層形成用の樹脂組成物の表面からの一定の厚み方向のみが硬化した状態において生じていると考えられる。
また、後述する実施例と比較例との対比より、シワ形成安定剤を含まない場合にシワの形成が不安定となり、艶消効果の視認性及び質感が基本艶消層の全面にわたって安定して、十分な程度には発現せず、またざらざらした触感を十分に発現しないことから、当該艶消効果及びざらざらした触感の安定的な発現は、短波長の紫外線による表面部分のみの硬化だけでは説明できない。すなわち、前記基本艶消層がシワを安定的に有することで艶消効果及びざらざらした触感を発現するには、シワ形成安定剤が含まれることが必要不可欠である。シワ形成安定剤を含まない場合にシワの形成による安定的な艶消効果及びざらざらした触感が得られていないことを考慮すると、シワ形成安定剤がシワ形成のきっかけとなる核のような機能を有しており、当該核を中心に、前記樹脂組成物の表面部分の樹脂が集まりシワの凸部(突起部)と、凸部(突起部)の形成とともに凹部が形成し、結果としてシワの形成が安定し、安定的に艶消効果及びざらざらした触感が発現するものと考えられる。
基本艶消層の形成方法では、基本艶消層形成用の樹脂組成物を少なくとも100nm以上380nm以下の波長光で照射する。この照射により、既述のように当該紫外線のエネルギーが表面部分のみに浸透し、それより下層にはエネルギーが到達しないことにより、当該樹脂組成物の表面部分だけが硬化をはじめることから、表面だけが硬化収縮を生じることでシワの形成が安定し、当該樹脂組成物表層は硬化物となり、基本艶消層を構成するものとなる。そして、かかる後、硬化の進行が遅い当該表面近傍部分から深さ方向に離れた深奥部分への硬化が進み、当該樹脂組成物の層は硬化物となり、もって当該樹脂組成物の全厚さにわたり硬化し、かつ表面に光拡散効果を発現し、ざらざらした触感を発現するシワを有する基本艶消層を構成するものとなる。当該深奥部分への硬化の進行を促進する観点からは、後述するように、100nm以上380nm以下の波長光で照射した後、さらに他の照射処理を行うことが好ましい。
少なくとも100nm以上380nm以下の波長光としては、例えば、Ar、Kr、Xe、Ne等の希ガス、F、Cl、I、Br等のハロゲンによる希ガスのハロゲン化物等ガス、又はこれらの混合ガスの放電によって形成される励起状態の2量体、すなわちエキシマ(excimer)からの紫外線波長域の光を含む「エキシマ光」が好ましい。エキシマ光の波長及び光源となるエキシマとしては、例えばArのエキシマから輻射される波長126nmの光(以下、「126nm(Ar)」のように略称する。)、146nm(Kr)、157nm(F)、172nm(Xe)、193nm(ArF)、222nm(KrCl)、247nm(KrF)、308nm(XeCl)、351nm(XeF)等の波長光を好ましく採用することができる。エキシマ光としては、自然放出光、誘導放出によるコヒーレンス(可干渉性)の高いレーザ光のいずれを用いることができるが、通常自然放出光を用いれば十分である。なお、当該光(紫外線)を放射する放電ランプは、「エキシマランプ」とも称されている。
エキシマ光は波長ピークが単一であり、また通常の紫外線(例えば、メタルハライドランプ、水銀ランプ等から放射される紫外線)と比べて波長の半値幅が狭いことが特徴として挙げられる。このようなエキシマ光を用いることで、シワの形成が安定し、安定的に艶消効果が向上し、ざらざらした触感も向上する。
シワの形成を安定させて、安定的に艶消効果を向上させ、ざらざらした触感を向上させる観点から、波長としては好ましくは120nm以上、より好ましくは140nm以上、更に好ましくは150nm以上、より更に好ましくは155nm以上であり、上限として好ましくは320nm以下、より好ましくは300nm以下、更に好ましくは250nm以下、より更に好ましくは200nm未満であり、最も好ましくは、172nm(Xe)である。このように、本実施形態では、安定的に艶消効果を向上させ、ざらざらした触感を向上させる観点から、より短波長の波長光を用いることが好ましく、中波長紫外線(波長:280~320nm)、短波長紫外線(波長:280nm以下)がより好ましく、短波長紫外線が更に好ましい、ともいえる。短波長紫外線は、波長200nm未満が好ましい。
前記波長光の積算光量は、シワの形成を安定させて、安定的に艶消効果を向上させ、ざらざらした触感を向上させる観点から、好ましくは1mJ/cm以上、より好ましくは10mJ/cm以上、更に好ましくは30mJ/cm以上、より更に好ましくは50mJ/cm以上である。また上限としては特に制限はなく、波長光の照射に必要な灯数を低減し、また生産効率の向上等の生産性の観点から、上限として好ましくは1,000mJ/cm以下、より好ましくは500mJ/cm以下、更に好ましくは300mJ/cm以下である。これと同様の観点から、紫外線出力密度は、好ましくは0.001W/cm以上、より好ましくは0.01W/cm以上、更に好ましくは0.03W/cm以上であり、上限として好ましくは10W/cm以下、より好ましくは5W/cm以下、更に好ましくは3W/cm以下である。
また、前記波長光を照射する際の酸素濃度は、より低いことが好ましく、好ましくは1,000ppm以下、より好ましくは750ppm以下、更に好ましくは500ppm以下、より更に好ましくは300ppm以下である。
基本艶消層形成工程では、前記の少なくとも100nm以上380nm以下の波長光での照射の他、基本艶消層形成用の樹脂組成物の硬化に寄与する他の処理を行ってもよい。
例えば、既述の表面部分と表面から深さ方向に離れた深奥部分の硬化の進行度合いの違いによるシワの形成を安定させ、かつ深奥部分への硬化の進行を促進する観点から、例えば380nmを超える波長光、好ましくは385nm以上400nm以下程度の波長光で予め照射して基本艶消層形成用の樹脂組成物を全体的に予備硬化させた後に、100nm以上380nm以下の波長光で照射してもよいし、また100nm以上380nm以下の波長光での照射後に、樹脂組成物を更に硬化させるために後硬化を行ってもよい。予備硬化、後硬化については、基本艶消層に求められる所望の性状(例えば、加工特性、耐汚染性等の表面特性)に応じて採用の要否を適宜決めればよい。また、前記波長光は紫外線に属するものであるが、紫外線に限らず他の電離放射線、例えば電子線等を用いることも可能である。例えば、後硬化においては、基本艶消層の表面特性の向上の観点から、電子線が好ましく用いられ得る。
基本艶消層の形成方法において、基本艶消層は、艶消層形成用の樹脂組成物を、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方式で塗布した塗布層(未硬化樹脂層)を、少なくとも100nm以上380nm以下の波長光で照射して形成することができる。
<離型性支持体>
離型性支持体は、被着体に転写層を転写した後に、転写層から剥離される。離型性支持体の表面形状は、本実施形態の転写シートが被着材に付与し得る表面形状を反転した形状、すなわち転写層の表面形状を反転した形状である。また、離型性支持体の表面形状は、既述のように、好ましくは基本艶消層により形成される。
離型性支持体は、単層構造であってもよいし、二層以上の構造であってもよい。離型性支持体は、支持体上に離型層を有する構成が好ましい。
〔支持体〕
支持体の材質は特に制限されず、紙、繊維、金属、ガラス、セラミックス及び樹脂等が挙げられる。これらの中でも、樹脂を材質とする支持体は、離型層を形成しやすく、かつ、転写後の剥離作業性が良好なため好適である。以下、樹脂を材質とする支持体をプラスチックシートと称する。フィルム、シート、及び板は、相対的に厚さの薄いものから順にフィルム、シート及び板と称されるが、本明細書中においてはこれら三種を厳密に区別する意義はなく、これらの三種の相違によって本願発明の権利解釈に相違が生じることはない。
支持体の厚さには特に制限はない。すなわち、本実施形態における支持体は、マイクロメートル単位の厚みが薄い支持体であってもよいし、ミリメートル単位以上の厚みが厚い支持体であってもよい。
支持体は、着色されていてもよいし、着色されていなくてもよい。また、支持体が着色されている場合、着色の態様には特に制限はなく、透明着色であってもよいし、不透明着色(隠蔽着色)であってもよい。
プラスチックフィルムを構成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、アイオノマー、各種オレフィン系熱可塑性エラストマー等のオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合等の塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、エチレングリコール-テレフタル酸-イソフタル酸共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等のアクリル樹脂、ナイロン6又はナイロン66等で代表されるポリアミド樹脂、三酢酸セルロース、セロファン、セルロイド等のセルロース系樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)等のスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合、エチレン-ビニルアルコール共重合、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂及びポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの中でもポリエステル樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂の中でもポリエチレンテレフタレートが好ましい。
プラスチックフィルムの厚みは特に限定されないが、転写シートの取り扱い性を向上させるために、10μm以上200μm以下であることが好ましく、15μm以上150μm以下であることがより好ましく、30μm以上125μm以下であることがさらに好ましい。
支持体は、離型層との密着性を高めるために、その片面又は両面に、酸化法、凹凸化法等の物理的表面処理、又は化学的表面処理等の表面処理を施したり、易接着剤層を形成してもよい。
〔離型層〕
離型層は、離型性支持体と、転写層との剥離性を良好にするため、及び転写層(剥離層)に表面形状を与えるための「型」としての機能を発現するため、必要に応じて設けられる層である。
離型層は、転写層との剥離性を良好にするため、及び転写層(剥離層)の全面に表面形状を与えるため、支持体の全面にわたって設けられていることが好ましい。
離型層は、樹脂を含むことが好ましく、樹脂及び離型剤を含むことがより好ましい。
(樹脂)
離型層は、樹脂を主成分とすることが好ましい。主成分とは、離型層を構成する全固形分の50質量%以上であることを意味し、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。
離型層は、耐久性を良好にするために、前記樹脂として、硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましい。
離型層に含まれる樹脂の全量に対して、硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、より好ましくは100質量%である。
硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物としては、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物、電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物が挙げられる。
電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物は、耐擦傷性をより良好にしやすい点で好ましい。
熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含む組成物であり、加熱により、硬化する樹脂組成物である。熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ウレタンアクリル樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらは単独で、又は複数種を組み合わせて使用できる。また、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物は、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤等の硬化剤を添加したものであってもよい。
離型層の電離放射線硬化性樹脂としては、艶消層の電離放射線硬化性樹脂として例示したものが挙げられる。
(離型剤)
離型剤としては、フッ素系離型剤、シリコーン系離型剤等が挙げられ、より安価かつ高い離型性を得る観点から、シリコーン系離型剤が好ましい。
シリコーン系離型剤としては、ポリシロキサン構造を基本構造とするものが挙げられ、中でもその側鎖及び末端の少なくともいずれかに有機基が導入された変性シリコーンオイルが好ましく、両末端に有機基が導入された変性シリコーンオイルがより好ましい。有機基としては、より質感の高い意匠性を得る観点から、(メタ)アクリル基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、カルビノール基、フェノール基、カルボキシル基等の反応性官能基、ポリエーテル基、アラルキル基、フロロアルキル基、アルキル基、脂肪酸アミド基、フェニル基等の非反応性基官能基等が好ましく挙げられる。中でも反応性官能基が好ましく、特に(メタ)アクリル基が好ましい、すなわち特に(メタ)アクリル変性シリコーンオイルが好ましい。また、これらの有機基は窒素原子、硫黄原子、水酸基、アルキル基等の置換基を有していてもよい。
離型剤の含有量は、離型層を形成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.5~3質量部、更に好ましくは1~2質量部である。離型剤の含有量が前記範囲内であると、効率的に離型剤の添加効果が得られる。
離型層の表面形状は、転写層の表面形状を反転した形状となる。このため、離型層は所定の厚みを有することが好ましい。離型層の厚みは、通常1μm以上であり、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上、より更に好ましくは5μm以上であり、上限として好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは150μm以下、より更に好ましくは100μm以下である。
本明細書において、離型層の厚さは、転写シートの断面について、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した画像から20箇所の厚さを測定し、20箇所の値の平均値とする。なお、SEMの加速電圧は3kV、倍率は厚さに応じて設定とする。また、他の層の厚さについても同様である。
〔その他の層〕
本実施形態の転写シートを構成する離型性支持体は、支持体及び離型層以外の層を有していてもよい。支持体及び離型層以外の層としては、帯電防止層、易接着層等が挙げられる。
<転写層>
転写層は、被着体に転写される層である。
転写層は、少なくとも剥離層を有することが好ましい。また、転写層は、離型性支持体側から、剥離層及び接着剤層をこの順に有することがより好ましい。さらに、転写層は、前記剥離層と前記接着剤層との間に、プライマー層及び装飾層から選ばれる1以上の層を有することがより好ましい。前記剥離層と前記接着剤層との間に、プライマー層及び装飾層を有する場合、前記プライマー層の位置を前記装飾層より前記剥離層側とすることが好ましい。
また、転写層は、さらにその他の機能層を有してもよい。その他の機能層としては、防眩層、防汚層、応力緩和層、帯電防止層、ガスバリア層、防曇層及び透明導電層等が挙げられる。
〔剥離層〕
剥離層は、被着体に転写された際に、転写層の最表面に位置する層であり、また、被着材に表面形状を付与し得る層である。このため、剥離層は、耐擦傷性、耐候性及び耐汚染性等の表面特性が良好であることが好ましい。
剥離層は、樹脂を主成分とすることが好ましい。主成分とは、剥離層を構成する全固形分の50質量%以上であることを意味し、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。
剥離層は、耐擦傷性等の表面特性が得られ、かつ表面形状を保持しやすく、所望の表面形状を付与しやすくするために、前記樹脂として、硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましい。
剥離層に含まれる樹脂の全量に対して、硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、より好ましくは100質量%である。
硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物としては、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物、電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物が挙げられる。
熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物は、紫外線吸収剤の使用制限がないため、耐候性を良好にしやすい点で好ましい。
電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物は、耐擦傷性等の表面特性が得られ、かつ表面形状を保持しやすく、所望の表面形状を付与しやすくできる点で好ましい。中でも、電子線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物は、耐擦傷性をより良好にしつつ、紫外線吸収剤の使用制限がないため、耐候性を良好にしやすい点で好ましい。
剥離層の熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物としては、離型層の熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物として例示したものが挙げられる。
少なくとも熱硬化性樹脂を含む組成物であり、加熱により、硬化する樹脂組成物である。
剥離層の電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物としては、艶消層の電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物として例示したものが挙げられる。
剥離層は、艶消し剤及びシワ形成安定剤等の粒子を含んでいてもよいが、前記粒子を実質的に含有しないことが好ましい。剥離層中に粒子を実質的に含まないことにより、粒子の脱落をきっかけとして、剥離層の耐擦傷性、耐候性及び耐汚染性等が低下することを抑制できる。また、艶消剤が含まれなくても、表面形状により十分な艶消効果が得られるため、特に艶消剤は不要である。
剥離層が粒子を実質的に含有しないとは、粒子の含有量が剥離層を構成する全固形分の1質量%以下であることを意味し、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0質量%である。
剥離層は、耐候性を良好にするために、紫外線吸収剤又は光安定剤を含むことが好ましく、紫外線吸収剤及び光安定剤を含むことがより好ましい。紫外線吸収剤及び光安定剤は、汎用の化合物を用いることができる。紫外線吸収剤の中では、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物が好ましい。光安定剤の中では、ヒンダードアミン系化合物が好ましい。
剥離層中の紫外線吸収剤の含有量は、剥離層の樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上15質量部以下が好ましく、0.1質量部以上10質量部以下がより好ましく、1質量部以上7質量部以下がさらに好ましい。
剥離層中の光安定剤の含有量は、剥離層の樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上15質量部以下が好ましく、0.1質量部以上10質量部以下がより好ましく、1質量部以上7質量部以下がさらに好ましい。
剥離層の厚みは、転写シートの取り扱い性、並びに、剥離層の耐擦傷性及び耐候性を向上させるために、1.5μm以上30μm以下が好ましく、2μm以上20μm以下がより好ましく、3μm以上15μm以下がさらに好ましい。
〔接着剤層〕
接着剤層は、被着体に転写層を転写しやすくするため、必要に応じて形成される層である。例えば、被着体に転写シートの転写層を転写する際に、被着体と転写シートとの間に、別途用意した接着剤を用いる場合には、転写層は接着剤層を有していなくてもよい。また、接着剤を用いることなく、転写層と被着体とを密着できる場合には、転写層は接着剤層を有していなくてもよい。
転写層が接着剤層を有する場合、転写層を構成する層の中で、離型性支持体から最も離れた位置に接着剤層を形成することが好ましい。接着剤層は、後述する装飾層の機能を兼ねることもできる。
接着剤層としては、感圧接着剤層、硬化系の接着剤層、及び感熱接着剤層が挙げられる。こられの中でも、転写シートの取り扱い性及び転写層と被着体との密着性を向上させるために、感熱接着剤層であることが好ましい。感熱接着剤層は、ヒートシール層と呼ばれる場合もある。
接着剤層が感圧接着剤層の場合、接着剤層に粘着剤を含むことが好ましい。
粘着剤としては、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、ゴム系等の粘着剤を適宜選択して使用できる。
接着剤層が硬化系の接着剤層の場合、接着剤層に熱硬化性接着剤を含むことが好ましい。
熱硬化型接着剤としては、熱によって化学反応が生じて架橋する性質を有する組成物を含むものが好ましく、例えば、2液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエ-テルウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤等を例示できる。なお、2液硬化型ウレタン系接着剤を構成するウレタン系樹脂は、ポリオール(多価アルコール)を主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするポリウレタンである。
接着剤層が感熱接着剤層の場合、接着剤層に熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレン-アクリル共重合、ポリエステル樹脂、アミド樹脂、シアノアクリレート樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて使用できる。これらの中でも、耐候性が良好なアクリル樹脂が好ましい。
前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、10,000以上200,000以下が好ましく、50,000以上150、000以下が好ましく、80,000以上120,000以下がより好ましい。前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量が前記の範囲内であると、コーティング適性が良好になり、接着剤層を良好な状態で形成しやすくなる。さらに、前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量が前記の範囲内であると、接着剤層と被着体との密着性を向上しやすくできる。
接着剤層の厚みは、1μm以上10μm以下が好ましく、2μm以上8μm以下がより好ましく、3μm以上7μm以下がさらに好ましい。接着剤層の厚みが前記範囲内であると、接着剤層と被着体との密着性を良好にしやすくできるとともに、転写シートの取り扱い性を良好にしやすくできる。
接着剤層には、必要に応じて着色剤を含有させてもよい。
接着剤層が着色剤を含むことにより、接着剤層単体、あるいは接着剤層と後述する装飾層との組み合わせにより、転写層の意匠性を高め、また転写層の隠蔽性を向上させて被着材の表面の色、外観を隠蔽することができる。
着色剤としては、特に制限は無く、例えば、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、ニッケルアゾ錯体、フタロシアニンブルー、アゾメチンアゾブラック等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片等の金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片等の真珠光沢(パール)顔料;等が挙げられる。
着色剤の含有量は、接着剤層を構成する樹脂100質量部に対して、5質量部以上90質量部以下が好ましく、15質量部以上80質量部以下がより好ましく、20質量部以上70質量部以下がさらに好ましい。
着色剤の含有量が5質量部以上であることにより、転写層の意匠性を良好にしやすくできる。また、着色剤の含有量が90質量部以下であることにより、接着剤層の接着力の低下を抑制しやすくできる。
〔プライマー層〕
転写層は、転写層を構成する層同士の密着性を良好にするため、転写層各層に、必要に応じて既述の酸化法、凹凸化法等の物理的表面処理、化学的表面処理等の表面処理を施す、またこれらの各層の層間に易接着層としてプライマー層を設けてもよく、またこれらの表面処理とプライマー層とを組み合わせて採用してもよい。プライマー層は、例えば、剥離層と接着剤層との層間に形成することができる。剥離層と接着剤層との間に、プライマー層及び装飾層を有する場合、プライマー層の位置装飾層よりも剥離層側とすることが好ましい。
プライマー層が剥離層と接着層との間に形成されることにより、転写層の層間密着性が良好となり、転写層の耐候性及び耐久性を向上できる。
プライマー層は、主としてバインダー樹脂から構成され、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を含有してもよい。
バインダー樹脂としては、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体(ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、末端、側鎖に2個以上の水酸基を有する重合体(ポリカーボネートポリオール)由来のウレタン-アクリル共重合体)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂(硝化綿)、酢酸セルロース樹脂等の樹脂が好ましく挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
また、バインダー樹脂は、これら樹脂に、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤等の硬化剤を添加し、架橋硬化したものであってもよい。
これらの中でも、ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体が好ましい。
ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体は、例えば、下記(1)及び(2)の工程により得ることができる。ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体は、柔軟性が良好である点、剥離層の硬化収縮に追従しやすい点、耐候性が良好である点、などにおいて好ましい。
(1)ポリカーボネートジオールと(ジ)イソシアネートを反応させてポリカーボネート系ポリウレタン高分子を得る。
(2)前記ポリカーボネート系ポリウレタン高分子と、アクリルモノマーとをラジカル重合させ、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体を得る。
(ジ)イソシアネートとしては、例えば、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、n-イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート、o又はp-イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート等の芳香族イソシアネート;1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;脂環式イソシアネート;等が挙げられる。
アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体中のアクリル成分とウレタン成分の質量比は、ウレタン成分:アクリル成分の質量比を95:5~30:70の範囲とすることが好ましく、93:7~50:50の範囲とすることがより好ましく、90:10~60:40の範囲とすることがさらに好ましい。アクリル成分とウレタン成分の質量比を前記範囲とすることにより、プライマー層が過度に硬い塗膜となることがなく、十分な加工適性が得られ、剥離層上にプライマー層を形成する場合には剥離層とプライマー層の密着性が向上するため好ましい。
プライマー層はブロッキング防止剤を含むことが好ましい。ブロッキング防止としては、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム等の無機粒子、有機粒子が挙げられる。これらの中でも無機粒子が好ましく、無機粒子の中でもシリカが好ましい。
ブロッキング防止剤の平均粒子径は、0.1~10μm程度が好ましく、より好ましくは0.5~8μm、さらに好ましくは0.5~5μmの範囲である。ブロッキング防止剤の粒子径は、レーザ光回折法による粒度分布測定における質量平均値d50として測定したものである。
ブロッキング防止剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して0.1~30質量部の範囲が好ましく、より好ましくは1~25質量部、さらに好ましくは3~20質量部、特に好ましくは5~15質量部である。
プライマー層の厚さは、0.5μm以上10μm以下が好ましく、1μm以上8μm以下がより好ましく、2μm以上6μm以下がさらに好ましい。
〔装飾層〕
転写層は、意匠性を高めるため、装飾層を有していてもよい。装飾層は、剥離層と接着剤層との間に形成することが好ましい。
装飾層は転写シートの全面に形成しても良いし、一部のみに形成してもよい。
装飾層としては、インキをベタ塗りしてなる着色層;インキを模様として印刷してなる絵柄層;金属薄膜;等が挙げられる。
装飾層により表現する絵柄(模様)としては、木材板表面の年輪及び導管溝等の木目模様;大理石、花崗岩等の石板表面の石目模様;布帛表面の布目模様;皮革表面の皮シボ模様;目地溝を含むタイル貼り模様;目地溝を含む煉瓦積模様;砂目模様;梨地模様;互いに平行な方向に伸びる凹條部及び凸條部を複数配列させてなる模様(いわゆる「万線状凹凸模様」又は「光線彫模様」);幾何学模様、文字、図形、水玉及び花柄等の抽象柄模様;等が挙げられる。
着色層及び絵柄層に用いられるインキとしては、バインダー樹脂に顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を適宜混合したものが使用される。
着色層及び絵柄層のバインダー樹脂としては特に制限はなく、例えば、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等の樹脂が挙げられる。また、1液硬化型樹脂、イソシアネート化合物等の硬化剤を伴う2液硬化型樹脂など、種々のタイプの樹脂を使用できる。
着色剤としては、特に制限は無く、接着剤層で例示した着色剤を好適に使用できる。
着色剤の含有量は、装飾層を構成する樹脂100質量部に対して、5質量部以上90質量部以下が好ましく、15質量部以上80質量部以下がより好ましく、30質量部以上70質量部以下がさらに好ましい。
着色層及び絵柄層は、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤等の添加剤を含有してもよい。
着色層及び絵柄層の厚みは、所望の絵柄に応じて適宜選択すればよいが、意匠性を向上させるために、0.5μm以上20μm以下が好ましく、1。0μm以上10μm以下がより好ましく、1.5μm以上5μm以下がさらに好ましい。特に、被着材の色及び外観を隠蔽する必要がある場合には、含有する着色剤の種類及び含有量のいかんにもよるが、着色層及び絵柄層の厚さは1.5μm以上とすることが好ましい。
金属薄膜としては、金、銀、銅、錫、鉄、ニッケル、クロム、コバルト等の金属元素単体の薄膜;前記金属元素の2種以上を含む合金の薄膜;等が挙げられる。合金としては、例えば、真鍮、青銅、ステンレス鋼等が挙げられる。
金属薄膜の膜厚は、0.1μm以上1μm以下程度とできる。
上述した剥離層、プライマー層、接着剤層及び装飾層は、例えば、各層を形成する組成物を含む塗布液を、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方式で離型性支持体上に塗布し、必要に応じて、乾燥、硬化することにより形成できる。
<セパレータ>
転写シートは、転写層の離型性支持体とは反対側にセパレータを有していてもよい。
接着剤層が感圧接着層の場合、転写層上にセパレータを有することにより、転写シートをロール状に巻き取った際にブロッキングを防ぎやすくしたり、転写シートが不用意に他の物体に貼りつくことを防ぎやすくしたりできる。
セパレータは、例えば本実施形態の転写シートが図3で示される層構成を有する場合、接着剤層24に接するように設けられる。そして、転写シートを用いる際にセパレータを剥がし、表出した接着剤層と被着材とを当接し、積層するようにして使用する。
セパレータの材質は、転写層と剥離可能な材質であれば特に制限されることなく、プラスチックフィルムが好適に用いられる。
セパレータとして用いるプラスチックフィルムとしては、上述の支持体で例示したものと同様のものを使用できる。セパレータは、転写層と接する表面が、離型剤等で離型処理されていることが好ましい。離型剤としては、フッ素系離型剤及びシリコーン系離型剤等の公知の離型剤を使用できる。
セパレータの厚みは特に限定されないが、転写シートの取り扱い性を向上させるために、10μm以上200μm以下であることが好ましく、15μm以上150μm以下であることがより好ましく、20μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。
〔60°グロス値〕
本実施形態の転写シートは、優れた艶消効果の視認性を有する転写層を被着体に形成できるものである。本明細書において「艶消」は、光沢を視認しにくいことを意味し、転写層の色調等によりかわるため一概にはいえないが、例えば60°グロス値が20.0以下、好ましくは10.0以下程度であれば一般的に「艶消」と扱うものとする。また、本実施形態の転写シートは、艶消を付与するものであるため、前記60°グロス値は本実施形態の転写シートが付与し得る60°グロス値(被着体に転写層を転写してなる化粧材の60°グロス値)を意味する。
本実施形態の転写シートを構成する転写層が、シワの形成の安定により安定的に艶消効果及び質感を有していれば、被着体に転写層を転写してなる化粧材も同様に、安定的に艶消効果の視認性及び質感を有する高級感のある化粧材となり得る。
転写シートを構成する離型性支持体の60°グロス値と、被着体に転写層を転写してなる化粧材の60°グロス値とは、両者の色調が同様のものであれば、多少の相違は発生するが、基本的には同じ程度になる。
これまで、例えば黒色等の暗色を呈する化粧材であれば、艶消層に艶消剤を含有させることにより、60°グロス値が20.0以下、好ましくは10.0以下という優れた艶消効果の視認性を付与することは可能ではある。「暗色」とは、明度が低く、例えばJIS Z8781-4:2013に準拠して測定されるCIE(国際照明委員会)L表色系におけるL値(以下、単に「L値」と称することがある。)が、通常40以下程度、好ましくは30以下であることを意味する。しかし、艶消剤を多く使用することから、艶消層形成時のスジ、ムラが発生するため、容易に製造できるものとはならず、また艶消層の強度が低下する問題があった。また、暗色以外の色調を呈する化粧材については、艶消層に艶消剤を含有させても60°グロス値の低減には限界があった。
このような傾向は、60°グロス値を小さくするほど顕著となる。そのため、艶消剤を用いる従来技術においては、製造上の理由等から艶消剤の使用量を抑制する必要があるため、より優れた艶消効果の視認性を得ることはできない状況にあった。
本実施形態では、基本艶消層を形成する際に、所定の平均粒子径を有する二種のシワ形成安定剤を組み合わせて用い、かつその含有量を既述のように少量とすることにより、安定的に極めて優れた艶消効果の視認性及び質感が得られるに至っただけでなく、ざらざらした触感も得られている。また、シワ形成安定剤の使用量を極めて少量に抑えることで、樹脂組成物の著しい粘度上昇を抑えられることにより、艶消層の生産性を向上することにもなる。
本実施形態の転写シートを用いて得られた化粧材の60°グロス値は、既述のように色調に応じてかわるため一概に規定することはできないが、例えば黒色その他暗色を呈する場合は、転写層側の60°グロス値として10.0以下、更に7.5以下、5.0以下、4.0以下、3.6以下、2.0以下と極めて優れた艶消効果の視認性を発現し得るものである。また、黒色その他暗色以外の色調を呈する化粧材についても、前記60°グロス値を有し得るものである。
本明細書において、転写層側の60°グロス値は、JIS K 5600-4-7:1999に準拠して測定した60°鏡面光沢度のことであり、任意の10箇所におけるグロスメータ等を用いて転写層側から測定し得る値の平均値である。なお、60°グロス値を測定する際には、サンプルの背面の反射を抑制するために、測定サンプルの背面に、接着剤層を介して黒色板を貼り合わせることが好ましい。
[転写シートの製造方法]
本実施形態の転写シートは、例えば以下のようにして製造することができる。以下の製造方法は、図3に示される層構成を有する転写シートの製造を想定したものである。
離型性支持体の形成工程、剥離層の形成工程、プライマー層の形成工程、装飾層の形成工程及び接着剤層の形成工程を経て製造することができる。
離型性支持体の形成工程は、前記転写層の表面形状の形成方法で説明したとおりであり、別途基本艶消層を作製しておき、支持体に離型層形成用の樹脂組成物を塗布し、当該塗布した面に基本艶消層の表面形状を賦型し、紫外線等を照射して硬化させる。なお、離型性支持体が離型層を有さず、支持体だけである場合は、支持体に前記表面形状を設ければよいことはいうまでもない。離型層の硬化の条件は、離型層の樹脂組成物の種類に応じて適宜選択すればよく、加熱、紫外線、電子線等の電離放射線を照射して硬化させればよい。
ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70~300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。照射線量は、電離放射線硬化性樹脂の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5~300kGy(0.5~30Mrad)、好ましくは10~50kGy(1~5Mrad)の範囲で選定される。
電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
また、電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190~380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が用いられる。
次いで、硬化させた離型層上に、剥離層形成用樹脂組成物を塗布し前記の離型層と同様に硬化させればよい。
前記したプライマー層、接着剤層及び装飾層は、例えば、各層を形成する組成物を含む塗布液を、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方式で各層上に塗布し、必要に応じて、乾燥、硬化することにより形成できる。
[化粧材の製造方法]
本実施形態の化粧材の製造方法は、下記(I)及び(II)の工程を有する。
(I)上述した本実施形態の転写シートの転写層側と、被着体とを密着した積層体を得る工程。
(II)前記積層体から離型性支持体を剥離し、被着体上に転写層を有する化粧材を得る工程。
工程(I)の被着体については、特に限定されることなく、樹脂、紙、不織布、織布、木材、金属、非金属無機材料等を材質とする被着体を適宜選択できる。
樹脂を被着体として用いる場合には、転写シートの転写層と被着体との密着性を向上させるために、所望により、片面又は両面に酸化法及びや凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理を施すことができる。
被着体の形状は特に限定されることなく、シート形状等の平板状のものであってもよく、また、曲面板、多角柱等の三次元形状を有するものであってもよい。
工程(I)において、転写シートの転写層側と、被着体とは、例えば、転写層の接着剤層により密着させることができる。転写層が接着剤層を有さない場合、工程(I)において、転写層と被着体との間に、接着剤を介在させればよい。
工程(I)の一実施形態としては、下記(a1)及び(a2)の工程を順に有する、ラミネート法による方法が挙げられる。
(a1)平板上の被着体上に、転写シートの転写層側の面を接し、重ね合わせる工程。
(a2)転写シートの離型性支持体側から加熱及び/又は加圧し、前記平板上の被着体と前記転写シートの転写層とを密着させる工程。
また、工程(I)の他の実施形態としては、下記(z1)~(z4)の工程を順に要する、インモールド成形による方法が挙げられる。インモールド成形では、工程z2で流し込む樹脂が被着体となる。
(z1)転写シートの転写層側をインモールド成形用金型の内側に向けて配置する工程。
(z2)前記インモールド成形用金型内に樹脂を射出注入する工程。
(z3)前記転写シートと、前記樹脂とを一体化させて、前記転写シートの転写層と前記樹脂とを密着させ、樹脂成形体を形成する工程。
(z4)前記樹脂成形体を前記インモールド成形用金型から取り出す工程。
なお、転写シートが、転写層の離型性支持体とは反対側にセパレータを有する場合、前記(1)の工程の前に、下記(0)の工程を有することが好ましい。
(0)転写シートからセパレータを剥離する工程。
以上のようにして得られる化粧材は、任意切断し、表面や木口部にルーター、カッター等の切削加工機を用いて溝加工、面取加工等の任意加飾を施すことができる。そして種々の用途、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装用部材、外壁、軒天井、屋根、塀、柵等の外装用部材、窓枠、扉、扉枠、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材の他、箪笥、棚、机等の一般家具、食卓、流し台等の厨房家具、又は家電、OA機器等のキャビネット等の表面化粧板、車両の内装、外装用部材、看板、防音壁、更に包装材料、ディスプレイ用防眩フィルム等に用いることができる。すなわち、本実施形態の転写シートは、これらの各種部材に凹凸形状を転写するための転写シートとして好適に用いられる。
また、化粧材のうち、樹脂化粧板については、主に箪笥、棚、机等の一般家具の表面化粧板、扉(ドア)等の建具、各種カウンター等に好適に用いられる。
[化粧材]
本実施形態の化粧材は、被着体上に転写層を有する化粧材であって、前記転写層の前記被着体とは反対側の表面の少なくとも一部に、JIS B0601:2013に規定されるSpc(突起部頂点の算術平均曲率)が、4000mm-1より大きく、JIS B0601:2013に規定されるRsm(曲線要素の平均長さ)が、30μm以上である、表面形状を有するものである。
図6は、本発明の化粧材200の一実施形態を示す断面図である。図6の化粧材200は、被着体30上に転写層20を有している。また、図6において、転写層20は、被着体30に近い側から、接着剤層24、装飾層23、プライマー層22及び剥離層21をこの順に有している。
図6の化粧材では、転写層20の被着体30とは反対側の表面には、剥離層21が位置している。したがって、図6の化粧材では、剥離層21の被着体30とは反対側の表面の少なくとも一部に、Spc(突起部頂点の算術平均曲率)が、4000mm-1より大きく、Rsm(曲線要素の平均長さ)が、30μm以上である、表面形状を有している。
本実施形態の化粧材を構成する被着体としては、本実施形態の化粧材の製造方法で例示した被着体が挙げられる。本実施形態の化粧材を構成する転写層としては、本実施形態の転写シートで例示した転写層が挙げられる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
1.評価
1-1.表面形状の測定
実施例及び比較例で得られた化粧材の剥離層側の表面形状の、Spc(突起部頂点の算術平均曲率)、Rsm(曲線要素の平均長さ)、Rz(最大高さ)及びRa(算術平均粗さ)を測定した。測定領域は、化粧材表面の任意の箇所の長方形(1024μm×768μm)について、形状解析レーザ顕微鏡(「VK-X150(制御部)/VK-X160(測定部)」、株式会社キーエンス製)を用い、対物レンズ:50倍、レーザ波長:658nm、測定モード:表面形状モード、測定ピッチ:0.13μm、測定品質:高速モードにて測定した。
また、Rsm(曲線要素の平均長さ)、Rz(最大高さ)及びRa(算術平均粗さ)のカットオフ値は0.8mmとした。
化粧材の剥離層側の表面形状は、転写層の離型性支持体側の表面形状とみなすことができる。
1-2.60°グロス値
実施例及び比較例で得られた化粧材のポリカーボネート樹脂板の背面に、接着剤層を介して黒色板を貼り合わせたサンプルを作製した。前記サンプルの剥離層側から、グロスメータ(「マイクログロス(機種名)」、BYKガードナー社製)を用いて、K 5600-4-7:1999に準拠して60°鏡面光沢度を測定した。
1-3.耐候性試験前の質感の評価
実施例及び比較例で得られた化粧材について、任意の成人20人に表面の質感(面状態の均一性)について評価させて、以下の基準で評価した。
A:18人以上が、面状態が均一であり、艶消効果の視認性が高いと評価した。
B:15人以上17人以下が、面状態が均一であり、艶消効果の視認性が高いと評価した。
C:14人以下が、面状態が均一であり、艶消効果の視認性が高いと評価した。
1-4.耐候性試験後の質感の評価
実施例及び比較例で得られた化粧材について、下記の耐候性試験を実施した。耐候性試験後の化粧材について、1-3と同一の基準で、表面の質感(面状態の均一性)を評価した。
<耐候性試験>
耐候性試験装置(ダイプラ・ウィンテス株式会社製の商品名「メタルウェザー」)を用いて、耐候性試験を実施した。耐候性試験では、下記の「紫外線照射工程」、「結露工程」、「水噴霧工程」を1サイクルとして、500時間経過するまで前記サイクルを繰り返し実施した。
《紫外線照射工程》
照度:60mW/cm、ブラックパネル温度:63℃、槽内湿度:50%RH、時間:20時間
《結露工程》
照度:0mW/cm、ブラックパネル温度:30℃、槽内湿度:98%RH、時間:4時間
《水噴霧工程》
結露工程の前後10秒間、水を噴霧する。
(ざらざら触感の評価)
実施例及び比較例で得られた化粧材について、ざらざらした触感の基準となる触感の基準として、40番手の綿糸を用いたオックスフォード生地を用い、任意の成人20人に表面の触感について評価させて、以下の基準で評価した。
A:18人以上が、基準に近い触感であり、ざらざらした触感であると評価した。
B:15人以上17人以下が、基準に近い触感であり、ざらざらした触感であると評価した。
C:14人以下が、基準に近い触感であり、ざらざらした触感であると評価した。
2.艶消層の作製、艶消層からの型の作製
[基本艶消層]
建材用着色薄紙原紙(厚さ:30μm)を基材とし、当該基材の一方の面に、アクリル樹脂及びウレタン樹脂をバインダー樹脂として含む樹脂組成物を塗布、乾燥して、易接着層(厚さ:2μm)を形成した。
易接着層上に、後記の基本艶消層形成用の樹脂組成物1を、グラビア法により塗布し(塗布量:5μm(乾燥時))、次いでLEDから構成されるUV照射装置を用いて紫外線を照射し(波長:395nm、紫外線量:6W/cm)、次いでエキシマ光照射装置を用いて紫外線を照射し(波長:172nm(Xe)、紫外線出力密度:1W/cm、積算光量:10~100mJ/cm、窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下))、次いで更に高圧水銀灯を用いて紫外線を照射して(紫外線出力密度:200W/cm)、基材上に艶消層を有する積層体(1)を得た。
支持体(コロナ放電処理を施したPETシート。厚さ:100μm)の一方の面に、アクリル樹脂及びウレタン樹脂をバインダー樹脂として含む樹脂組成物を塗布、乾燥して、易接着層(厚さ:2μm)を形成した。
次いで、易接着層上に、下記の積層体(2)(離型層形成用)の硬化性樹脂をグラビア法により塗布し、塗膜を形成し(塗布量:5μm(乾燥時))、支持体上に易接着層及び未硬化の離型層を有する積層体(2)を得た。
次いで、積層体(2)の未硬化の塗膜(未硬化の離型層)に、得られた積層体(1)の基本艶消層側の面をドライラミネートし、積層体(2’)を得た。
次いで、積層体(2’)を構成する積層体(2)のPET側から電子線(加圧電圧:175KeV、5Mrad(50kGy))を照射して、未硬化の硬化性樹脂を硬化させた。
次いで、積層体(2’)から積層体(1)を剥離し、支持体上に、易接着層及び離型層を有する、実施例1で用いる離型支持体を得た。離型支持体の表面には、基本艶消層の表面形状を反転した形状が賦型されている。
<基本艶消層形成用の樹脂組成物1>
・多官能ウレタンアクリレートオリゴマー(官能基数:4)を60質量部
・多官能アクリレートモノマー(2官能)を30質量部
・単官能アクリレートモノマーを10質量部
・シワ形成安定剤(シリカ粒子、平均粒子径:5nm)3質量部
・光重合開始剤(ベンゾフェノン系)を0.8質量部
<積層体(2)(離型層形成用)の硬化性樹脂>
・ウレタンアクリレートオリゴマー 100部
・反応性アクリル変性シリコーンオイル 0.5部(剥離剤として使用)
3.転写シート及び化粧材の作製
[実施例1]
上記で得た離型性支持体の離型層上に、後記の剥離層形成用の樹脂組成物1を塗布して未硬化樹脂層を形成し、電子線(加圧電圧:175KeV、5Mrad(50kGy))を照射して未硬化樹脂層を硬化させて、剥離層(厚さ:5μm)を形成した。その後、剥離層上にコロナ照射を実施した。
次いで、コロナ照射した剥離層上に、後記のプライマー層形成用の樹脂組成物を塗布、乾燥し、厚さ2.5μmのプライマー層を形成した。
次いで、前記プライマー層上に、アクリル樹脂(PMMA、重量平均分子量:96,000)を塗布、乾燥し、厚さ4μmのヒートシール性を有する接着剤層を形成した。接着層剤を形成後、常温にて24時間エージングすることで、実施例1の転写シートを得た。
実施例1の転写シートの接着剤層と、被着体であるポリカーボネート板(厚さ:2mm、AGC社製、商品名「カーボポリッシュ」)の一方の面とを対向させ、積層した。その後、転写シート側より、ラミネーター(ナビタス株式会社製、ロール式熱転写機、商品名「RT-300」)を用い、ラミロール温度160℃、搬送速度1.5m/minの条件で熱しながら加圧し、転写シートの転写層と被着体を密着した積層体を得た。
次いで、前記積層体から離型性支持体を剥離し、実施例1の化粧材を得た。実施例1の化粧材は、被着体上に転写層を有している。
<剥離層形成用の樹脂組成物1>
・電離放射線硬化性樹脂(2官能ウレタンオリゴマー):100質量部
・紫外線吸収剤(BASF社、商品名:Tinuvin479):0.5質量部
・光安定剤(BASF社、商品名:Tinuvin123):0.3質量部
<プライマー層形成用の樹脂組成物>
・ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体:100質量部
(重量平均分子量50,000)
・紫外線吸収剤(BASF社、商品名:Tinuvin479):20質量部
・紫外線吸収剤(BASF社、商品名:Tinuvin400):15質量部
・光安定剤(BASF社、商品名:Tinuvin123):3.5質量部
・ブロッキング防止剤(平均粒子径3μmのシリカ):10質量部
・溶剤:適量
[実施例2]
実施例1において、剥離層形成用の樹脂組成物1を剥離層形成用の樹脂組成物2に変更した以外は同様にして、実施例2の化粧材を得た。
<剥離層形成用の樹脂組成物2>
・2官能ウレタンアクリレートオリゴマー:40質量部
・6官能ウレタンアクリレートオリゴマー:60質量部
・紫外線吸収剤(BASF社、商品名:Tinuvin479):2質量部
・光安定剤(日本乳化剤株式会社、商品名:サノール LS-3410):3質量部
[比較例1]
前記『2』の[艶消層1]において、基材をPETシート(東洋紡株式会社製コスモシャイン(登録商標)A4160(50μm))に変更し、当該基材の易接着面に、前記艶消層形成用の樹脂組成物1をグラビア法により塗布(塗布量:18μm(乾燥時))した以外は実施例1と同様にして、比較例1の離型性支持体、転写シート及び化粧材を得た。
[比較例2]
比較例1において、前記艶消層形成用の樹脂組成物1の塗布量を5μm(乾燥時)とした以外は同様にして、比較例2の離型性支持体、転写シート及び化粧材を得た。
[比較例3]
実施例1において、前記『2』の[艶消層1]の基材をコロナ放電処理を施したポリプロピレンシート(PP、厚さ:100μm)に変更し、当該基材の一方の面にプライマー層形成用の樹脂組成物(ウレタン樹脂、塗布量:2μm(乾燥時))を塗工し、プライマー層上に前記艶消層形成用の樹脂組成物1を塗布(塗布量:5μm(乾燥時))した以外は同様にして、比較例3の離型性支持体、転写シート及び化粧材を得た。
[比較例4]
比較例2において、前記『2』の[艶消層1]のLEDから構成されるUV照射装置を用いた紫外線の照射を行わない以外は同様にして、比較例4の離型性支持体、転写シート及び化粧材を得た。
[比較例5]
比較例1において、艶消層形成用の樹脂組成物1を、後記する基本艶消層形成用の樹脂組成物2に変更した以外は同様にして、比較例5の離型性支持体、転写シート及び化粧材を得た。
<基本艶消層形成用の樹脂組成物2>
・多官能ウレタンアクリレートオリゴマー(官能基数:7)を60質量部
・多官能アクリレートモノマー(2官能)を30質量部
・単官能アクリレートモノマーを10質量部
・シワ形成安定剤(シリカ粒子、平均粒子径:5nm)15質量部
・光重合開始剤(ベンゾフェノン系)を0.8質量部
[比較例6]
比較例5において、前記艶消層形成用の樹脂組成物2の塗布量を5μm(乾燥時)とした以外は同様にして、比較例6の離型性支持体、転写シート及び化粧材を得た。
実施例1~2及び比較例1~6で得られた離型性支持体、転写シート及び化粧材について、Spc(突起部頂点の算術平均曲率)、Rsm(曲線要素の平均長さ)、Rz、Ra及び60°グロス値の測定結果、質感(耐候性試験前)、質感(耐候性試験後)及びざらざら触感の評価を行った。これらの結果を第1表に示す。
図7~13に、実施例1及び比較例1~6で得られた化粧材の表面の顕微鏡写真を示す。
Figure 2022157494000001
第1表の結果から、本実施形態の艶消物品は、その艶消層側の60°グロス値が1.3~1.4となっており、艶消効果の視認性に極めて優れた物品であり、質感にも優れるものであることが確認された。また、ざらざらした触感にも優れたものであることも確認された。
一方、Rsmが30μm未満である比較例1~3の艶消物品は、質感が劣りざらざらした触感も得られないことがわかった。Rsmが30μm以上であるものの、Spcが4000mm-1以下である比較例4~6の艶消物品は、60°グロス値は3.5~5.6なり、質感が、比較例1~3の艶消物品よりも更に劣ることが分かった。また比較例4~6の艶消物品は、ざらざらした触感も実施例1より劣るものであることがわかった。
本実施形態の転写シートは、優れた艶消効果の視認性及び質感を付与し、かつざらざらした触感を付与し得るため、種々の用途、壁、天井、床等の建築物の内装用部材、外壁、軒天井、屋根、塀、柵等の外装用部材、窓枠、扉、扉枠、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材の他、箪笥、棚、机等の一般家具、食卓、流し台等の厨房家具、又は家電、OA機器等のキャビネット等の表面化粧板、車両の内装、外装用部材等の各種部材用の化粧部材として、また、前記の建築物等に用いられる化粧部材の他、本実施形態の転写シートを他の素材(被着材)と積層、複合、又は組み合わせた形態で、包装材料、ディスプレイ用防眩フィルム、白板(ホワイトボード)又は黒板、クレジットカード、キャッシュカード、テレフォンカード、各種証明書類等の各種カード、各種キーボードの鍵盤、窓、扉、間仕切り等の透明板(窓硝子等)、看板、防音壁、人工皮革等として好適に用いられる。
1a:突起部頂点(Spc大)
1b:突起部頂点(Spc小)
2:凸部
2a:凸部(Rsm小)
2b:凸部(Rsm大)
2c、2d:凸部
3:凹部
3a~3c:凹部
10:離型性支持体
11:支持体
12:離型層
20:転写層
21:剥離層
22:プライマー層
23:装飾層
24:接着剤層
30:被着材
100:転写シート
200:化粧材

Claims (14)

  1. 離型性支持体上に転写層を有する転写シートであって、
    前記転写層の前記離型性支持体側の表面の少なくとも一部に、JIS B0601:2013に規定されるSpc(突起部頂点の算術平均曲率)が、4000mm-1より大きく、JIS B0601:2013に規定されるRsm(曲線要素の平均長さ)が、30μm以上である、表面形状を有する、転写シート。
  2. 前記表面形状の、JIS B0601:2013に規定される輪郭曲線の山及び高さパラメータであるRz(最大高さ)が、8.00μm以上、30.00μm以下である、請求項1に記載の転写シート。
  3. 前記表面形状の、JIS B0601:2013に規定される輪郭曲線の高さ方向のパラメータであるRa(算術平均粗さ)が、1.00μm以上、5.50μm以下である、請求項1又は2に記載の転写シート。
  4. 前記表面形状を形成する前記転写層の表面が、不規則なシワにより構成される凹凸形状を有する請求項1~3のいずれか1項に記載の転写シート。
  5. 前記不規則なシワが、複数の線条突起部により形成する複数の凸部と、前記複数の線条突起部により囲まれて形成する凹部とにより構成される、請求項4に記載の転写シート。
  6. 前記転写層が、前記離型性支持体側から、剥離層及び接着剤層をこの順に有する請求項1~5のいずれか1項に記載の転写シート。
  7. 前記剥離層と前記接着剤層との間に、プライマー層及び装飾層から選ばれる1以上の層を有する請求項6に記載の転写シート。
  8. 前記剥離層が、電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物を含む請求項6又は7に記載の転写シート。
  9. 前記剥離層が、紫外線吸収剤又は光安定剤を含む請求項6~8のいずれか1項に記載の転写シート。
  10. 前記剥離層が、粒子を実質的に含有しない、請求項6~9のいずれか1項に記載の転写シート。
  11. 前記離型性支持体が、支持体上に離型層を有してなる、請求項1~10のいずれか1項に記載の転写シート。
  12. 前記離型層が、電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物を含む請求項11に記載の転写シート。
  13. 下記(1)及び(2)の工程を有する、化粧材の製造方法。
    (1)請求項1~12のいずれか1項に記載の転写シートの転写層と、被着体とを密着した積層体を得る工程。
    (2)前記積層体から離型性支持体を剥離し、被着体上に転写層を有する化粧材を得る工程。
  14. 被着体上に転写層を有する化粧材であって、
    前記転写層の前記被着体とは反対側の表面の少なくとも一部に、JIS B0601:2013に規定されるSpc(突起部頂点の算術平均曲率)が、4000mm-1より大きく、JIS B0601:2013に規定されるRsm(曲線要素の平均長さ)が、30μm以上である、表面形状を有する、化粧材。
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