JP2022008024A - 艶消物品及び艶消物品の製造方法 - Google Patents

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祥太 西根
Shota Nishine
玲子 桜井
Reiko Sakurai
亮介 西垣
Ryosuke Nishigaki
健 小笠原
Takeshi Ogasawara
美幸 飯原
Miyuki Iihara
朝達 洞ヶ瀬
Tomotatsu Dogase
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Abstract

【課題】艶消効果の視認性及び質感に優れ、また所望に応じた各種表面特性を有する艶消物品、多様化する要望に対応し得る賦型に用いられる艶消物品、また艶消物品の製造方法を提供する。【解決手段】シワ形成安定剤を所定量で含有することで、不規則なシワにより構成される凹凸形状を有し、60°グロス値が5.0以下の艶消層を採用する艶消物品、また特定の照射条件により樹脂組成物を硬化させた層を有する艶消物品等の製造方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、艶消物品及び艶消物品の製造方法に関する。
従来から、例えば壁、天井、床等の建築物の内装用部材、外壁、軒天井、屋根、塀、柵等の外装用部材、窓枠、扉、扉枠、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材の他、箪笥、棚、机等の一般家具、食卓、流し台等の厨房家具、台所、トイレ、風呂場、洗面台等の水廻りで用いられる各種家具及び部材、又は家電、OA機器等のキャビネット等の表面化粧板、車両の内装又は外装用部材等の表面を装飾し、保護するための物品として、いわゆる化粧材、化粧シートが用いられている。かかる化粧材、化粧シートとしては、例えば、所望の機能を有する表面層を有するものが用いられており、主に耐擦傷性、耐汚染性及び耐候性等の表面特性、また加工特性等の様々な性能が求められる。
これらの用途に用いられる化粧材、化粧シートには、その意匠性を向上させるために艶消効果(マット効果)を用いて質感を向上させる手法が汎用される。艶消効果を用いた化粧シートとして、例えば、特許文献1には、基材シートの片面に絵柄層及び隠蔽層を有し、もう一方の面に艶調整層(マット層、グロス層)を有する化粧シートが提案されている。特許文献1の化粧シートでは、艶調整層のマット層とグロス層が有する光沢の差により、絵柄層、隠蔽層を引き立てるという意匠効果が得られており、その実施例では、全面に設けられるマット層には樹脂分100重量部あたりに球形状アルミナ10重量部及び炭酸カルシウム40重量部の合計50重量部の艶消剤を添加したマットインキが用いられている。
また特許文献2には、基材上に、印刷層と透明樹脂層とを順に有し、該透明樹脂層の最表面にエンボス模様を施した化粧材が提案されている。
上記の用途に用いられる化粧材、化粧シート等の物品として、例えば耐候性等の表面特性を付与するため、その表面層の形成に硬化性の樹脂を用い、その硬化物を層とする手法がとられている(例えば、特許文献3~5参照)。特許文献3に記載の化粧シートには、電子線硬化性樹脂組成物に電子線を照射して硬化させることで、表面層(トップコート層)を形成することが記載されており、特許文献4には、艶消シリカを含有する電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化物により表面層(艶調整樹脂層)を形成することが記載されている。また、特許文献5には、表面保護層として紫外線硬化性樹脂層を採用することが記載されている。
上記の用途の中でも、外壁、軒天井、屋根、塀、柵等の外装用部材については、屋外で用いられ、風雨、さらには日射による紫外線の影響により色調の変化、樹脂の劣化等の問題が生じることとなる。このような用途において用いる化粧シートについて、その耐光性を向上させる手法として、化粧材の表面保護層中に耐候剤として紫外線吸収剤を添加することが一般的である。また、基本的には室内での使用が想定される内装用部材等の用途であっても、窓際等で日光に晒されるものについては、外装用部材と同様に耐光性が求められる場合がある。
しかし、紫外線吸収剤は経時的に表面保護層からブリードアウト(bleed out)しやすいという問題がある。紫外線吸収剤がブリードアウトすると、べたつきが生じるなど、化粧シートの表面の美観が損なわれるとともに、ブリードアウトした紫外線吸収剤は雨で流出等により徐々に失われ経時的に表面保護層中の紫外線吸収剤濃度が低下することで、耐候性が低下するといった問題が生じる。このような状況下、紫外線吸収剤のブリードアウトを解消するために、例えば特定のベンゾトリアゾール系化合物等から選ばれる電子線反応型紫外線吸収剤を含有する、電子線硬化型樹脂を主成分とした樹脂の硬化層を有する化粧シートが提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の化粧シートによれば、紫外線吸収剤のブリードアウトの問題は解消し得る。
上記の用途に用いられる化粧材、化粧シートには、近年の顧客の高級品志向の高まりに伴い、高級感を有するものが求められるようにもなっている。
高級感を付与する手法としては、その表面に凹凸形状を付与し、質感を高める手法が一般的に採用される。具体的には、賦型シート、エンボス版等を用いたエンボス加工、あるいは凹凸形状を有する層を具備する転写シートを用いて、表面に凹凸形状を有する層を転写して凹凸形状を付与することで、艶消効果(マット効果)を発現させる方法等が挙げられる。例えば、特許文献6には、基材シートの表面に電離放射線硬化性樹脂で凹凸形状を設けた層を有し、剥離する際に凹凸形状が割れたりしないような架橋密度を付与することにより、所望の模様形状を再現する賦型シート、及び該賦型シートを用いたポリエステル化粧板が提案されている。また、特許文献2には、基材上に、印刷層と透明樹脂層とを順に有し、該透明樹脂層の最表面にエンボス模様を施した化粧シートが提案されている。
また、艶消効果(マット効果)を有する化粧材、化粧シートとして、表面に艶消塗膜を形成したシートが、黒板、ホワイトボード(白板)等の各種筆記ボードの表面を構成する筆記(用)シート、反射型スクリーンといった用途に用いられることがある。これらの用途に用いられる艶消塗膜形成シートは、例えば講義室、会議室といった室内に設置された場合に、室内灯等の映り込みが少なくし、また光沢を抑制させることで、筆記ボード、映写スクリーンに表示される文字等の視認性に優れていることが求められる。
例えば、特許文献7及び8には、ホワイトボード筆記層を有するホワイトボードシートが提案されている。特許文献7及び8のホワイトボードシート等をはじめとし、従来品には、光の散乱により、室内灯等の映り込みを抑制し、また光沢を抑制し、筆記ボード、映写スクリーン等に表示される文字等の視認性を向上させるべく、シリカ、炭酸カルシウム等の艶消剤、その他顔料等が表面塗膜中に添加されている。すなわち、従来品は、当該艶消剤による艶消効果によって、室内灯の映り込みや光沢を抑制し、視認性を向上させるというものである。
中でも特に、ホワイトボード等の筆記シートは、マーカーによる筆記と消去に対応するため、適度な表面の濡れ性と易掃除性とを均衡させて、マーカーの筆記性と消去性も求められる。マーカーの筆記性と消去性のためには、その表面はより平滑であることが必要となる。
特開2000-062081号公報 特開2011-073207号公報 特開2000-117905号公報 特開2004-148632号公報 特開2000-103019号公報 特開平2-235744号公報 特公平7-64155号公報 特開平11-28892号公報
艶消効果(マット効果)により質感を向上させる手法としては、上記特許文献1のように艶消剤(matting agent、「マット剤」とも称される。)を用い、それ自体が有する光拡散効果により艶消効果を得る手法、上記特許文献2のようにエンボス加工を施すことで最表面に凹凸形状を形成する手法等が主に挙げられる。
しかし、特許文献1のように艶消剤を用いる場合、艶消効果をより優れたものとするにはその使用量を増加させる必要があるが、その使用量が多くなるにつれて、艶消剤が塗膜から脱落し、かつ塗膜を傷つけることで耐擦傷性が低下するなどの理由により、表面特性が低下する傾向にある。他方、表面特性の低下を抑制するために使用量を少なくすると艶消効果が低下する傾向にあり、表面特性と艶消効果とは二律相反の関係にある。そのため、艶消剤を用いたマット効果には限界がある。
また、特許文献2のようにエンボス加工を用いる場合、エンボスの版の作製は多大な手間がかかり容易なことではなく、さらに所望の柄ごとに版を作製する必要が生じる。そのため、顧客の需要の多様性に十分に対応しやすい手法であるとはいえない。
艶消剤が塗膜から脱落し、かつ塗膜を傷つけることによる耐擦傷性の低下は、例えば建築物の内装用部材の中でも床材の用途、また使用頻度が高い窓枠、扉、扉枠、手すり等の建具部材の用途、また黒板消し(又は白板消し)、マーカーによる摩擦が繰り返して加わるホワイトボードシートにおいて、顕著となる。
また近年、屋外用途の化粧シートは、地球温暖化の影響による平均気温の上昇に伴い、より過酷な日射条件下で用いられるようになっており、従来の化粧材では対応しきれず、その劣化の進行は年々早まる傾向にある。そのため、これまでの紫外線吸収剤のブリードアウトの発生を抑制する設計思想自体は妥当といえるが、これを実現するための手段の見直しが必要になっている。
さらに、表面特性、中でも表面に付着した汚れを除染しやすい易除染性(「消去性」とも称する。)に優れ、かつ艶消効果及び質感にも優れる化粧シートが、例えば汚れが付着しやすい建築物の床材、マーカーによる筆記と消去とが繰り返されるホワイトボード等の分野において要望される中、これに十分対応できる化粧シートは存在しない状況にある。
このように、艶消効果に加えて、さらに所望に応じた表面特性が求められているところ、これに十分対応できる化粧材、化粧シート等の物品は存在しない状況にある。
表面層を形成する硬化性樹脂としては、上記特許文献3~5のように、電離放射線硬化性樹脂、中でも電子線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等が採用される。紫外線を用いて硬化し得る紫外線硬化性樹脂を採用する場合、特許文献5にも開示されるように、通常光重合開始剤を使用することが一般的である。紫外線は電子線等の他の電離放射線に比べてエネルギーが極めて小さいため、光重合開始剤を添加しないと、電離放射線により硬化性を発現するエチレン性不飽和基等の官能基による硬化が促進しないため、目的とする表面特性が得られないためである。このように、表面層を形成する樹脂組成物の硬化方法により、当該樹脂組成物の組成を調整する必要がある中、いかなる樹脂組成物を用いても、優れた表面特性を有する層を形成することが求められている。また、意匠性の向上のため、艶消効果が求められる場合もある。
このような状況下、表面層の硬化に際して光重合開始剤を添加しなくても、優れた表面特性が得られ、また艶消効果の視認性も得られ得る電離放射線硬化性樹脂からなる表面層の形成方法がもとめられていた。
また、顧客の高級品志向が高まっていることについては、より高い質感が求められるようになっている。しかし、特許文献3に記載される賦型フィルムが有する凹凸形状は、撥液性樹脂で所定の絵柄を形成し、次いで無機フィラーを含む2液硬化型樹脂組成物を塗布することで、該撥液性樹脂の撥液効果により該絵柄上の2液硬化型樹脂組成物だけがはじかれることで形成されるものである。そのため、繊細な凹凸形状の形成には限界があるため、優れた艶消効果を付与するには至らず、所望の要求に対応しきれない場合があった。
また、特許文献2のようにエンボス加工を施すことで最表面に凹凸形状を形成する手法の場合、エンボスの版の作製は多大な手間がかかり容易なことではなく、さらに所望の柄ごとに版を作製する必要が生じる。そのため、顧客の需要の多様性に十分に対応しやすい手法であるとはいえない。
上記のホワイトボード筆記層を有するホワイトボードシートに用いられる物品について、艶消効果による優れた視認性を得るために上記のような艶消剤、顔料等を使用する場合、これらの粒子と塗膜樹脂との間にマーカーが染み込みやすく、一度染み込んでしまうと拭き取ってもマーカーを消去できない(マーカー消去性が低下する)という問題が生じやすくなる。また、艶消剤、顔料等の粒子を用いた艶消効果により室内灯等の光の映り込みや光沢を抑制し、視認性を向上させるには、多量の粒子が必要となるため、インクを消去できないという問題はより顕著となる。さらに、多量の粒子を使用すると、艶消剤、顔料等の粒子の形状に対応する形状がより表出し、平滑性が失われるため、マーカー消去性が低下する。このように、艶消剤、顔料等を用いた艶消効果により、室内灯の映り込みや光沢を抑制し、視認性を向上させることと、とりわけマーカー消去性と、には二律相反の関係がある。そのため、上記特許文献1及び2に記載されるホワイトボードシートでは、艶消効果による視認性とマーカー消去性のいずれについても十分ではなく、更なる改良が求められる。
本発明は、艶消効果の視認性及び質感に優れ、所望に応じた各種表面特性を有する艶消物品、及び艶消物品の製造方法を提供することを課題とするものである。
上記課題を解決すべく、本発明は、シワ形成安定剤を所定量で含有することで、不規則なシワにより構成される凹凸形状を有する艶消層を採用することにより、艶消効果の視認性及び質感に優れ、また所望に応じた各種表面特性を有する艶消物品、多様化する要望に対応し得る、賦型に用いられる艶消物品が得られることを見出した。
また、物品の製造方法について、(i)シワ形成安定剤を所定量で含有する樹脂組成物を特定の照射処理を行うことにより艶消層を形成することで、当該艶消層は不規則なシワにより構成される凹凸形状を有するものとなり、艶消効果の視認性及び質感に優れ、所望に応じた各種表面特性を有する艶消物品を容易に得られること、さらには、(ii)光重合開始剤を含まない樹脂組成物であっても、特定の照射処理を行うことにより表面シワ層を形成することで、当該表面シワ層はシワを有するものとなり、所望の表面特性を有し、また艶消効果の視認性をも有し得る艶消物品を容易に得られること、を見出した。
本発明によれば、艶消効果の視認性及び質感に優れ、また所望に応じた各種表面特性を有する艶消物品、多様化する要望に対応し得る賦型に用いられる艶消物品、また艶消物品の製造方法を提供することができる。
本発明の艶消物品の一実施形態を示す平面視における模式図である。 本発明の艶消物品の艶消層の一実施形態を示す断面図である。 本発明の艶消物品の一実施形態を示す断面図である。 本発明の艶消物品の一実施形態を示す断面図である。 実施例1Aで得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 実施例2Aで得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 実施例3Aで得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 比較例1Aで得られた物品の表面の光学顕微鏡画像である。 比較例2Aで得られた物品の表面の光学顕微鏡画像である。 実施例1Bで得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 実施例2Bで得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 実施例3Bで得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 比較例1Bで得られた物品の表面の光学顕微鏡画像である。 比較例2Bで得られた物品の表面の光学顕微鏡画像である。 実施例1Cで得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 実施例2Cで得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 実施例3Cで得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 比較例1Cで得られた物品の表面の光学顕微鏡画像である。 比較例2Cで得られた物品の表面の光学顕微鏡画像である。 実施例1Dで得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 実施例2Dで得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 実施例3Dで得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 比較例1Dで得られた物品の表面の光学顕微鏡画像である。 比較例2Dで得られた物品の表面の光学顕微鏡画像である。 実施例1Eで得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 実施例2Eで得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 実施例3Eで得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 比較例1Eで得られた物品の表面の光学顕微鏡画像である。 比較例2Eで得られた物品の表面の光学顕微鏡画像である。 実施例1Fで得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 実施例2Fで得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 比較例1Fで得られた物品の表面の光学顕微鏡画像である。 比較例2Fで得られた物品の表面の光学顕微鏡画像である。 本発明の艶消物品Gの一実施形態を示す断面図である。 本発明の艶消物品Gの一実施形態を示す断面図である。 実施例1Gで得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 実施例2Gで得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 実施例3Gで得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 比較例1Gで得られた物品の表面の光学顕微鏡画像である。 比較例2Gで得られた物品の表面の光学顕微鏡画像である。 本発明の艶消物品Hの一実施形態を示す断面図である。 本発明の艶消物品Hの一実施形態を示す断面図である。 実施例1Hで得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 実施例2Hで得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 実施例3Hで得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 比較例1Hで得られた物品の表面の光学顕微鏡画像である。 比較例2Hで得られた物品の表面の光学顕微鏡画像である。 実施例1Iで得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 実施例2Iで得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 実施例3Iで得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 比較例1Iで得られた物品の表面の光学顕微鏡画像である。 比較例2Iで得られた物品の表面の光学顕微鏡画像である。 実施例1Jで得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 実施例2Jで得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 実施例3Jで得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 比較例2Jで得られた物品の表面の光学顕微鏡画像である。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と称することがある。)について説明する。なお、本明細書中において、数値範囲の記載に関する「以上」、「以下」及び「~」に係る数値は任意に組み合わせできる数値であり、実施例の数値は数値範囲の上下限に用い得る数値である。
[艶消物品A]
本実施形態の艶消物品は、艶消層を有する艶消物品であって、前記艶消層が、シワ形成安定剤を樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下で含む樹脂組成物の硬化物により構成され、前記艶消層の少なくとも一方の面が不規則なシワにより構成される凹凸形状を有し、前記艶消層の60°グロス値が5.0以下である、という艶消物品(以下、単に「艶消物品A」とも称する。)である。艶消物品Aは、このような構成を有することにより、表面特性、中でも耐擦傷性に優れ、かつ艶消効果の視認性及び質感にも優れるものとなる。
〔艶消層〕
艶消物品Aにおける艶消層は、シワ形成安定剤を樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下で含む樹脂組成物(以下、「艶消層形成用の樹脂組成物」と称することがある。)の硬化物により構成される層である。すなわち、本実施形態において艶消層は、当該艶消層を形成する樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下の含有量で、シワ形成安定剤を含む層である。
(シワ形成安定剤)
シワ形成安定剤は、艶消層の少なくとも一方の表面でシワの形成を安定させることで、艶消物品Aの全面にわたり均一に艶消効果の視認性が発現し、部分的な艶のムラが低減される、安定的な艶消効果の視認性(以下、単に「安定的な艶消効果の視認性」といった表現、これに準ずる表現を用いる場合がある。)とともに、艶消物品Aの全面にわたりシワが安定して形成することによる面状態の均一性(「質感」とも称する。)を付与する機能を有するものである。すなわち、従来技術におけるいわゆる「艶消剤」と本実施形態における「シワ形成安定剤」とは、例えその構成物質、平均粒子径が同じであった場合においても、両者の艶消の機構(作用)、艶消を発現させるための構造、及び使用量と、表面の艶(グロス値)の程度との関係において異なるものとなる。
シワ形成安定剤が有する、上記の「シワの形成を安定させる」ことは、より具体的には、「シワ」の形状及びその幾何学的特性値(シワが有する凹凸形状における個々の突起部(凸部の長さ、幅及びこれらの比)、また例えば、Rz(最大高さ)、Rsm(曲線要素の平均長さ)、Ra(算術平均粗さ)、Ssk(スキューネス)、Sku(クルトシス)等の統計的指標、またこれらの諸特性値又は諸指標、さらにはこれらに起因する艶消表面層の表面の60°グロス値の面内分布(分散σ)等の各種の数値及び指標が、「シワ形成安定剤」を用いることにより、これを用いない場合に比べて収束することを意味する。
また一般に、艶消剤等の粒子を含む樹脂層表面が他の物体と接触し、擦られた場合、表面近傍の粒子が脱落する傾向がある。従って、もっぱら艶消剤の添加によって層表面の艶を低下させる仕様である場合、かかる粒子の脱落によって、他の物体との接触、摩擦時に艶変化を生じることになる。かかる機構による艶変化は、艶消剤の含有量の多い低艶仕様であるほど顕著となってくる。特に、60°グロス値G60が10以下の表面を艶消剤の添加により実現する場合は、樹脂100質量部に対して、(樹脂と艶消剤の種類との分散形態いかんにもよるが、)大体50質量部程度以上の添加が必要になり、他の物体との接触、摩擦時の艶消剤の脱落による艶変化は大きなものとなる。
艶消物品Aにおける艶消層においては、後述の実施例及び比較例でも実証されるように、60°グロス値G60が5.0以下の表面を艶消剤添加により実現する場合でも、樹脂100質量部に対するシワ形成安定剤の含有量は10質量部程度以下、より具体的には6.0質量部以下ですむこととなる。例えば、本発明の実施例においては、シワ形成安定剤の総含有量が最大6質量部で60°グロス値G60が5.0以下、さらには2.0以下という低艶を実現している。なお、後述するが、本明細書において60°グロス値が5.0以下のものを「艶消」と扱うこととする。
従って、艶消物品Aにおいては、後述の実施例及び比較例でも実証されるように、同じ低艶表面を実現する場合、特に60°グロス値G60が10以下、更には5.0以下を実現する場合において、従来の艶消物品に比べて、粒子含有量が大幅に低減されるため、他の物体との接触、摩擦時の艶消剤脱落に起因する艶の変化は少ないものとなる。
上記特許文献1等の従来技術において、艶消表現のために用いられてきた艶消剤は、物理的な形状及び固有の屈折率に起因する光拡散効果により、それ自体が艶消効果を発現するものである。具体的には、一般に艶消剤と称されるものは、一般に艶消剤粒子と周囲の樹脂及び空気との屈折率差を有し、その粒子の輪郭形状に対応した光線の反射及び屈折性界面による光拡散効果により艶消効果の視認性を発現するものである。一方、本実施形態の艶消物品において、シワ形成安定剤は、粒子それ自体による光線の反射及び屈折による光拡散が艶消効果の視認性を発現するのではなく、シワ形成安定剤に起因して艶消層の表面におけるシワの形成を安定させることで、かかる表面と空気との屈折率差界面での光拡散効果により艶消物品に安定的に艶消効果の視認性とともに質感を付与するというものである。よって、本実施形態で用いられるシワ形成安定剤は、それ自体が艶消効果の視認性を発現する艶消剤とは、(仮に、両者の構成物質、平均粒子径が同じであったとしても、)両者の艶消の機構(作用)、艶消を発現させるための構造等は異なるものである。
さらに、「シワ形成安定剤」と「艶消剤」とは、含有量と表面の艶(グロス値)との関係においても異なる。同じ物質Aをシワ形成開始剤AW(W:シワ,wrincleの略称)として用い、これを特定量Cで含有させて表面にシワを形成させた場合の表面の60°グロス値G60° AW(C)は、同物質Aを単なる艶消剤AM(M:マット、matteの略称)として用い、これを当該特定量Cで含有させるも表面にシワが形成しない場合の表面の60°グロス値G60° AM(C)よりも明らかに低下する。すなわち、以下の関係式が成立する。
60° AW(C)<G60° AM(C)
艶消層は、従来艶消剤として用いられてきた剤を含んでもよいが、艶消剤を用いても得られない程度に極めて優れた艶消効果の視認性及び質感が安定的に得られるという発明の効果の特徴を考慮すると、艶消剤を含まないことが好ましい。このように、艶消物品Aは、従来艶消効果の視認性を得るために用いていた艶消剤を実質的に含まなくても、極めて優れた艶消効果の視認性及び質感を有するものであるといえる。そのため、艶消剤を含める(添加する)場合においては、艶消層表面のシワによる艶消効果を補強する程度でたりる。ここで、「艶消剤を含まない」とは、艶消剤を全く含まないことに加えて、含んでいても艶消剤自体の作用効果に基づく艶消効果の視認性を有することがない、具体的には艶消剤の含有量が樹脂100質量部に対して15.0質量部未満、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下であることを意味する。
なお、本願明細書において「艶消剤」は、既述のように粒子の輪郭形状に対応した光線の反射及び屈折性界面による光拡散効果により艶消効果の視認性を発現する観点から、具体的には当該艶消剤が含まれ得る層、すなわち艶消層の厚さの100%超及び30μm超のいずれか小さい方を下限とする平均粒子径を有する粒子を意味する。
シワ形成安定剤は、既述のように艶消剤ではない、平均粒子径が艶消層の厚さの100%以下及び30μm以下のいずれか小さい方を上限とするものである、例えば有機粒子、無機粒子等の各種の粒子を採用することができる。本実施形態において、シワ形成安定剤を用いない場合、シワの形成が不安定となり、全体としてみればシワの形成による優れた艶消効果の視認性及び質感は安定的に得られない。
艶消物品Aで用いられるシワ形成安定剤としては、艶消剤ではない、平均粒子径が艶消層の厚さの100%以下の粒子であれば特に制限なく用いることが可能であり、中でも平均粒子径が1μm以上、かつ前記艶消層の厚さの100%以下及び30μm以下のいずれか小さい方を上限とするシワ形成安定剤1、平均粒子径が1μm未満であるシワ形成安定剤2を用いることが好ましい。本実施形態においては、シワ形成安定剤として、一種又は複数種のシワ形成安定剤1を用いてもよいし、一種又は複数種のシワ形成安定剤2を用いてもよいし、一種又は複数種のシワ形成安定剤1と一種又は複数種のシワ形成安定剤2とを組み合わせて用いてもよい。本実施形態においては、シワの形成を安定させて、安定的に艶消効果の視認性及び質感を向上させる観点から、シワ形成安定剤1及びシワ形成安定剤2の二種のシワ形成安定剤を用いることが好ましい。
シワ形成安定剤としては、例えば有機粒子、無機粒子を用いることができる。
有機粒子を構成する有機物としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル-スチレン共重合体樹脂、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル樹脂、ベンゾグアナミン-メラミン-ホルムアルデヒド縮合物、シリコーン、フッ素系樹脂及びポリエステル系樹脂等が挙げられる。
無機粒子を構成する無機物としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、アルミノシリケート及び硫酸バリウム等が挙げられ、これらの中でも透明性に優れるシリカが好ましい。
シワ形成安定剤の形状としては、特に制限はないが、例えば球形、多面体、鱗片状、不定形等が挙げられる。
シワ形成安定剤の平均粒子径は、シワの形成を安定させて、艶消効果の視認性及び質感を向上させる観点から、上限としては、艶消層の厚さに対しては、好ましくは艶消層の厚さの90%以下、より好ましくは艶消層の厚さの80%以下、更に好ましくは艶消層の厚さの70%以下であり、絶対値については、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは8μm以下、より更に好ましくは7μm以下であり、艶消層の厚さに対する上限と絶対値の上限とを任意に組み合わせた場合のいずれか小さい方とすればよい。例えば、艶消層の厚さの90%以下及び20μm以下のいずれか小さい方を上限としてもよいし、艶消層の厚さの90%以下及び10μm以下のいずれか小さい方を上限とすることもできる。なお、艶消層の厚さについては後述する。また下限として好ましくは1nm以上、より好ましくは3nm以上、更に好ましくは5nm以上である。
既述のようにシワ形成安定剤1及び2に分けて用いる場合、シワ形成安定剤1の平均粒子径は、シワの形成を安定させて、安定的に艶消効果の視認性及び質感を向上させる観点から、好ましくは1.3μm以上、より好ましくは1.5μm以上、更に好ましくは1.8μm以上であり、上限としては既述のとおりである。
また、これと同様の観点から、シワ形成安定剤2の平均粒子径は、好ましくは1nm以上、より好ましくは3nm以上、更に好ましくは5nm以上であり、上限として好ましくは900nm以下、より好ましくは700nm以下、更に好ましくは500nm以下である。
本明細書において、シワ形成安定剤の平均粒子径は、レーザ光回折法による粒度分布測定における質量平均値d50として測定したものである。
シワ形成安定剤の含有量、シワ形成安定剤としてシワ形成安定剤1と2とを併用する場合はこれらの合計の含有量は、艶消層を形成する樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下である。0.5質量部未満であると、シワ形成安定剤の使用効果を得ることができずシワの形成が安定しないため、安定的に艶消効果の視認性及び質感が得られない。他方、6.0質量部を超えると、シワ形成安定の効果が飽和してくるとともに、背景技術とその課題にて述べたような、耐擦傷性、耐汚染性、易除染性(消去性)等の表面特性の低下の影響が増大する傾向がある。さらに、6.0質量部を超えた場合、シワ形成安定剤及び樹脂の種類、艶消層(又は表面シワ層)の形成条件いかんによっては、シワの形成が安定しにくくなり、安定的に艶消効果の視認性及び質感が得られにくくなり、また表面特性が低下する場合もあり得るからである。
シワ形成安定剤によるシワの形成を安定させて、安定的に艶消効果の視認性及び質感を向上させる観点から、シワ形成安定剤1及びシワ形成安定剤2の合計の含有量は、艶消層を形成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.75質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは1.2質量部以上であり、上限としては安定的な艶消効果の視認性の向上の観点から、6.0質量部以下であれば特に制限はない。
また、シワ形成安定剤1及びシワ形成安定剤2の各々の含有量としては、合計の含有量が上記範囲内であれば特に制限はないが、シワ形成安定剤2の含有量は樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1.0質量部以上であり、上限として6.0質量部以下であり、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは3.5質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下である。また、シワ形成安定剤1とシワ形成安定剤2との配合割合(シワ形成安定剤1/シワ形成安定剤2)としては、好ましくは0.05~0.95、より好ましくは0.10~0.90、更に好ましくは0.20~0.80、より更に好ましくは0.30~0.70である。
シワ形成安定剤としては、既述のように有機粒子、無機粒子を用い得るが、これらの粒子の種類自体は、従来艶消剤としても用いられるものを含むものともいえ、例えば上記の特許文献1に記載の化粧シートのマット層には、球形状アルミナ、炭酸カルシウムといった艶消剤が用いられている。球形状アルミナ、炭酸カルシウムといった艶消剤が、物理的な形状に起因する光拡散効果により、それ自体が艶消効果の視認性を発現するためには、特許文献1に記載されるように、樹脂分100重量部あたりに球形状アルミナ10重量部及び炭酸カルシウム40重量部の合計50重量部程度の含有量で使用する必要がある。しかし、艶消物品Aにおいては、既述のように少量の含有量としても、すなわち物理的な形状に起因する光拡散効果により、それ自体が艶消効果の視認性及び質感を発現するために必要な含有量より少ない含有量としても、艶消剤により得られる効果に比べて極めて優れた艶消効果の視認性及び質感が得られている。よって、艶消物品Aは、実質的に艶消剤を含まないにも関わらず、表面にシワが安定して形成することにより、艶消剤を用いた場合に比べてより優れた艶消効果の視認性及び質感が安定的に得られている、といえる。
(艶消層の表面形状)
艶消層は、上記の特定のシワ形成安定剤を特定の含有量で含む艶消層形成用の樹脂組成物の硬化物により構成される層であり、既述のように艶消層の表面においてシワの形成が安定することで、シワの形状に起因する光拡散効果により安定的に艶消効果の視認性及び質感を発現する層である。図1は本実施形態の艶消物品Aの一実施形態を示す平面視における模式図であり、実施例で得られた艶消物品Aの表面の画像を模式化したものである。図1には、本実施形態の艶消物品Aは、その表面、すなわち艶消層の表面にシワが形成されていることが示されている。
艶消物品Aは、艶消層の少なくとも一方の面が不規則なシワにより構成される凹凸形状を有する。このようなシワにより構成される凹凸形状は、シワ形成安定剤により形成が安定し、安定的に艶消効果の視認性及び質感を発現することとなる。また、不規則なシワは、複数の突起部により形成する複数の凸部と、複数の突起部により囲まれて形成する凹部と、により構成されていることが好ましく、当該突起部は線条の突起部を有していることが好ましい。本明細書において、「線条の突起部」(以下、「線条突起部」とも称する。)とは、当該突起部の長さと幅との比(長さ/幅)が3以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上であることを意味し、当該長さ及び幅の決定方法は後述の通りである。
本実施形態において、より好ましい不規則なシワは、複数の線条突起部により形成する複数の凸部と、当該複数の線条突起部により囲まれて形成する凹部により構成されるもの、である。
これらのシワに関する態様としては、例えば図1に示される態様が挙げられる。図1には、艶消物品Aの表面、すなわち艶消層の表面に、平面視において不規則なシワを有していること、また不規則なシワが、湾曲した複数の線条突起部により形成する複数の凸部3と、複数の突起部(複数の凸部3)により囲まれて形成する凹部2とを含むことにより構成されていること、また湾曲した複数の凸部3の少なくとも一部が、平面視(図1~3においてはz方向からの観察)において、各々蛇行する線条突起部により形成され、当該蛇行する線条突起部に囲まれるようにして、蛇行する凹部2が形成していることも示されている。本実施形態の艶消物品Aは、図1に示されるシワの形成の安定により安定的に艶消効果の視認性及び質感を発現している。
ここで「湾曲」とは、平面視において、連続する線条の凸部3の延在方向が一方側から他方側に反転している部分を1箇所以上有することを意味する。延在方向が一方側から他方側に反転している部分の例としては、例えば線条の凸部3の平面視形状の幅を無視したとき(幅を0とみなしたとき)に連続曲線で近似される場合に、変曲点を有する形態等が挙げられる。また、線条の凸部3の平面視形状の幅を無視したときに直線で近似される場合に、V字型の折線又は3角形の1頂点を挟む2辺で近似される部分を有する形態等が挙げられる。
また「蛇行」とは、平面視において、連続する線条の凸部3の延在方向が一方側から他方側に反転している部分(以下、「反転部分」とも称する。)を、少なくとも2箇所以上有し、線条の凸部3をその延在方向に進んだときに、互いに隣接する当該2箇所において交互に線条の凸部3の延在方向が逆向きに反転部分する部分を有することを意味する。例えば、線条の凸部3の平面視形状の幅を無視したときに連続曲線で近似される場合に、ローマ字「S」で近似される部分を有する形態等が挙げられる。また、線条の凸部3の平面視形状の幅を無視したときに直線で近似される場合に、ローマ字「W」で近似される部分を有する形態等が挙げられる。
本明細書において、不規則とは、一定の法則を有する形状、また一定の法則をもって配列される、いわゆるパターン化している、とはいえないことを意味する。不規則ではない形状(規則的な形状)の典型的な例としては、例えば円柱形状の単位レンズをその長手方向と直行する方向に複数個が互いに隣接して配列した、いわゆる「レンティキュラーレンズ(lenticular lens)」のように、特定の方向に一定の周期性をもって配列した形状等が挙げられる。よって、本実施形態における不規則なシワは、一つの突起部の形状自体が周期性等の一定の法則をもって形成される形状ではなく不規則であること、また複数の突起部により形成する複数の凸部の形状が一定の法則をもって形成及び配列されるものではなく不規則であること、またこのような複数の突起部により囲まれた凹部の形状も不規則であること、を包含するものである。
艶消物品Aにおいて、一つの突起部(一つの凸部)の形状自体、複数の突起部(複数の凸部)の各々の形状及びその配列、複数の突起部により囲まれた凹部の形状のいずれかが不規則であれば、不規則なシワを有することによる艶消効果の視認性及び質感は得られるが、いずれもが不規則であることが好ましい。艶消物品Aは、不規則なシワを有することにより、その艶消効果の視認性及び質感は向上し、極めて優れた艶消効果の視認性及び質感を安定的に発現するものとなる。
既述のように、艶消層はその少なくとも一方の表面にシワ、すなわち凹凸形状を有する。凹凸形状における凸部と凹部は、例えば艶消物品Aの表面の画像の明度差を利用して、濃度分布画像で最も濃い部分を階調255とし、濃度分布画像で最も薄い部分を階調0として、階調0~255について、階調0~127を凹部、階調128~255を凸部と、二値化処理して区分すればよい。
艶消物品Aの表面は、少なくともその一部に不規則なシワが形成されていることが好ましく、全面にわたって不規則なシワが形成されていることがより好ましい。シワが形成する箇所は、艶消物品Aの表面であれば特に制限はなく、例えば後述する絵柄に応じた箇所(当該絵柄上)だけに限らず、当該表面の少なくとも一部であれば、シワの形成による艶消効果の視認性及び質感は発現する。例えば、後述する絵柄層を有し、かつ一部に不規則なシワが形成する場合、シワは絵柄層の絵柄に応じた箇所(例えば絵柄上)に形成すると、当該絵柄が周囲に比べてより艶消された箇所として視認されるため、意匠性の向上を図ることができる。
また図1にも示されるように、不規則ながらもある程度の均質性をもった複数の突起部により形成される複数の凸部と、当該凸部により囲まれた凹部と、を有していることが好ましい。よって、1の凸部(突起部)において、その幅が極端に変化する形状、その高さが極端に変化する形状は、艶消効果の視認性及び質感を得るにあたり好ましい態様とはいえない。不規則なシワを形成する凸部(突起部)、凹部の形状について、安定的に艶消効果の視認性及び質感を向上させる上で優位となり得る具体的な態様について、以下説明する。
艶消層の少なくとも一方の表面に形成するシワの形状について、その凸部の高さ(突起部の高さ)は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは2μm以上であり、上限としては10μm以下程度である。また、凸部の幅は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、更に好ましくは0.5μm以上であり、上限として好ましくは10μm以下、より好ましくは4μm以下、更に好ましくは3μm以下である。凸部の高さ及び幅が上記範囲内であると、凹部との関係で、安定的に艶消効果の視認性及び質感が向上する。
ここで、凸部の上記寸法は、本実施形態の艶消物品の任意の10箇所(100μm四方の領域×10箇所)における任意の10の凸部(突起部)、すなわち合計100の凸部の平均値である。また、図1に示されるように、1の凸部(突起部)においてその幅は同じではなく広狭があるため、1の凸部(突起部)の幅は、当該1の凸部(突起部)における任意の5箇所の幅の平均値とする。凸部(突起部)の高さについても同様とする。
凹部の深さは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは2μm以上であり、上限としては10μm以下程度である。また、凹部の幅は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、更に好ましくは0.3μm以上であり、上限として好ましくは10μm以下、より好ましくは3μm以下、更に好ましくは2μm以下である。凹部の深さ及び幅が上記範囲内であると、凸部との関係で、安定的に艶消効果の視認性及び質感が向上する。
ここで、凹部の寸法は、上記の凸部の寸法と同様に決定する。
凸部の頂から凹部の底までの距離(凸部と凹部との高低差)は、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、上限として好ましくは20μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは7μm以下である。当該距離が上記範囲内であると、安定的に艶消効果の視認性及び質感が向上する。
ここで、凹部の寸法は、上記の凸部の寸法と同様に決定する。
凸部の占有割合は、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上であり、上限として好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下、更に好ましくは60%以下である。凸部の占有割合が上記範囲内であると、当該凸部に囲まれる凹部の占有割合との関係で、安定的に艶消効果の視認性及び質感が向上する。
ここで、凸部の占有割合は、艶消物品Aの任意の10箇所(100μm四方の領域×10箇所)における凸部の占有割合の平均値である。
凸部及び凹部は、略同一方向及び略同一幅の箇所を有していてもよいが、安定的に艶消効果の視認性及び質感の向上の観点から、その長さは短いことが好ましい。具体的には、略同一方向及び略同一幅の凸部及び凹部が連続する長さは、好ましくは95μm以下、より好ましくは80μm以下、更に好ましくは70μm以下であり、下限として好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは15μm以上である。当該長さが上記範囲内であると、シワがより不規則となるため、安定的に艶消効果の視認性及び質感が向上する。
ここで、艶消物品Aの任意の10箇所(100μm四方の領域×10箇所)における任意の10の凸部及び凹部(すなわち合計100の凸部及び凹部)について、その80%以上が上記の条件を満たすものであることが好ましく、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上、より更に好ましくは95%以上である。また、本明細書における「略同一」の「略」は、概ね同じであることを意味し、枝分かれすることなく、方向の場合は±3°以内の違いを意味し、幅の場合は±5%以内の違いを意味する。
また、100μm四方の領域における凸部(突起部)の数は、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは30以上であり、上限として好ましくは200以下、より好ましくは100以下、更に好ましくは70以下である。当該凸部の数が上記範囲内であると、安定的に艶消効果の視認性及び質感が向上する。
当該凸部の数は、艶消物品Aの10箇所(100μm四方の領域×10箇所)における凸部の数の平均値である。
図2は、艶消物品Aの一実施形態を示す断面図であり、艶消物品をその厚さ方向(同図においてはZ方向)に平行な面で切断した断面図である。
凹部の形状としては、例えば図2の2aのように鋭角状のものでもよいし、また2bのように半円又は半楕円状のものであってもよく、これらの組合せであってもよい。また一つの凸部が一部に凹部を有する、図2の2cのような形状であってもよい。
他方、凸部の形状としては、図2の3a、3bのように幅の広狭はあるものの、半円又は半楕円の形状を呈する。
艶消層の厚さは、安定的に艶消効果の視認性及び質感を発現し得る程度に上記のシワを形成することができる厚さであれば特に制限はないが、作製のしやすさ等も考慮すると、通常1μm以上であり、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上、より更に好ましくは5μm以上であり、上限として好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは150μm以下、より更に好ましくは100μm以下である。
本明細書において、艶消層の厚さは、艶消物品の断面について、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した画像から20箇所の厚さを測定し、20箇所の値の平均値とする。なお、SEMの加速電圧は3kV、倍率は厚さに応じて設定とする。また、他の層の厚さについても同様である。
艶消層は、部分的に設けられるものであってもよいし、全面にわたって設けられるものであってもよいが、安定的な艶消効果の視認性及び質感の向上の観点から、全面にわたって設けられていることが好ましい。
艶消層が部分的に設けられるものである場合、本実施形態の艶消物品Aは実質的に艶消層以外の層として、後述する基材を好ましく有する。
(樹脂)
艶消層を形成する樹脂としては、上記シワ形成安定剤を所定量で含む艶消層形成用の樹脂組成物を形成し、硬化することにより硬化物となり艶消層を構成する樹脂であればよい。このような樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂が挙げられる。艶消層は、艶消物品Aの最表面に設けられ得る層であるため、シワ形成安定剤によりシワを形成しやすい樹脂であることの他、艶消物品として使用性向上の観点から、耐擦傷性、耐汚染性、耐候性等の表面特性、また加工特性を発現しやすい樹脂であることが好ましく、電離放射線硬化性樹脂はこれらの観点から好ましい樹脂である。艶消物品Aは、艶消層に含まれるシワ形成安定剤の含有量が極めて少ないため、その表面特性として、艶消層を形成する樹脂の性能がより直接的に発揮されることとなる。
電離放射線硬化性樹脂は、電離放射線硬化性官能基を有する樹脂のことであり、電離放射線硬化性官能基は電離放射線の照射によって架橋硬化する基であり、例えば(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基などが好ましく挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクロイル基を示す。また、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを示す。
また、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合及び/又は架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も含まれる。
電離放射線硬化性樹脂としては、電子線硬化性樹脂及び紫外線硬化性樹脂が挙げられ、シワ形成安定剤によるシワの形成を安定させて、艶消効果の視認性及び質感を向上させる観点から、紫外線硬化性樹脂が好ましい。
電離放射線硬化性樹脂は、具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー、重合性オリゴマーの中から適宜選択して用いることができる。
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好ましく、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ該官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。(メタ)アクリレートモノマーとしては、(メタ)アクリロイル基を有するものであれば特に限定されないが、例えばジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート(官能基数:2);トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート(官能基数:3);トリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート(官能基数:4);ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を5つ以上有する(メタ)アクリレート(官能基数:5以上)等が挙げられる。
シワの形成を安定させて、安定的に艶消効果の視認性及び質感を向上させる観点、更に耐擦傷性及び耐候性等の表面特性、また加工特性を向上させる観点から、多官能性(メタ)アクリレートモノマーの官能基数は2以上8以下が好ましく、2以上6以下がより好ましく、2以上4以下がさらに好ましく、2以上3以下がよりさらに好ましい。これらの多官能性(メタ)アクリレートは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
重合性オリゴマーとしては、例えば、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ該官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、及びノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー等がある。
これらの重合性オリゴマーは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
シワの形成を安定させて、安定的に艶消効果の視認性及び質感を向上させる観点、更に耐擦傷性及び耐候性等の表面特性、また加工特性を向上させる観点から、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマーがより好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが更に好ましい。
これらの重合性オリゴマーの官能基数は、シワの形成を安定させて、安定的に艶消効果の視認性及び質感を向上させる観点、更に耐擦傷性及び耐候性等の表面特性、また加工特性を向上させる観点から、2以上8以下のものが好ましく、上限としては、6以下がより好ましく、4以下がさらに好ましく、3以下がよりさらに好ましい。
また、これと同様の観点から、これらの重合性オリゴマーの重量平均分子量は、2,500以上7,500以下が好ましく、3,000以上7,000以下がより好ましく、3,500以上6,000以下がさらに好ましい。ここで、重量平均分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された平均分子量である。
艶消物品Aにおいて、艶消層を形成する樹脂としては、上記重合性オリゴマーと重合性モノマーとを組み合わせて用いることが好ましい。この場合、重合性オリゴマーと重合性モノマーとの合計100質量部に対する重合性オリゴマーの含有量は、好ましくは40質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは55質量部以上、より更に好ましくは60質量部以上であり、上限として好ましくは90質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは70質量部以下である。重合性オリゴマーの含有量が上記範囲内であると、シワの形成を安定させて、安定的に艶消効果の視認性及び質感を向上させることができ、更に耐擦傷性及び耐候性等の表面特性、また加工特性を向上させることもできる。
(樹脂組成物)
艶消層は、上記シワ形成安定剤を所定含有量で含む樹脂組成物の硬化物により構成され、当該樹脂組成物は、具体的には上記樹脂と、上記シワ形成安定剤を所定含有量で含むものである。本実施形態で用いられる樹脂組成物は、上記シワ形成安定剤及び樹脂の他、所望の性能等に応じて、他の成分を含んでもよい。
艶消層形成用の樹脂組成物は、例えばその粘度を低下させる等の目的で、単官能性(メタ)アクリレートを含有してもよい。これらの単官能性(メタ)アクリレートは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
また、上記樹脂が紫外線により硬化する紫外線硬化性樹脂である場合、光重合開始剤、光重合促進剤等の添加剤を含むことが好ましい。これらの添加剤を含むことにより、シワの形成が促進され、艶消効果の視認性及び質感が向上する。
光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、チオキサントン類等から選ばれる1種以上が挙げられる。
また、光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速めることができるものであり、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
艶消層は艶消物品Aの最表面に設けられ得る層であることから、耐候性を有する層であることが好ましく、例えば紫外線吸収剤、光安定剤等の各種耐候剤を含むことが好ましい。
紫外線吸収剤としては、化粧シートに汎用される紫外線吸収剤を特に制限なく用いることができ、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。光安定剤としても、化粧シートに汎用される光安定剤を特に制限なく用いることができ、例えばピペリジニルセバケート系光安定剤等のヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。また、これらの紫外線吸収剤、光安定剤は、分子中に(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合を有する反応性官能基を有するものであってもよい。
これらの紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
〔60°グロス値〕
艶消物品Aは、優れた艶消効果の視認性及び質感を有する物品であり、60°グロス値が5.0以下というものである。本明細書において「艶消」は、光沢を視認しにくいことを意味し、物品の色調、柄等によりかわるため一概にはいえないが、例えば60°グロス値が5.0以下のものを「艶消」と扱うものとする。
これまで、例えば黒色その他暗色(「暗色」とは、明度が低く、例えばJIS Z8781-4:2013に準拠して測定されるCIE(国際照明委員会)L表色系におけるL値(以下、単に「L値」と称することがある。)が、通常40以下程度、好ましくは30以下であることを意味する。)を呈する艶消物品では、艶消剤を用いても60°グロス値が20.0以下、好ましくは10.0以下という優れた艶消効果の視認性を得るのは可能ではあるものの、艶消剤を多く使用することから、層形成時のスジ、ムラが発生するため容易に製造できるものではなく、また表面特性が低下するものとなっていた。また例えば黒色その他暗色以外の色調を呈する艶消物品についても、艶消剤を用いても60°グロス値の数値に下限があり、黒色を呈する艶消物品と同様であり、いずれにしても表面特性に優れ、また艶消効果の視認性にも優れる物品を容易に得られなかった。このような傾向は、60°グロス値を小さくするほど顕著となる。
艶消物品Aでは、シワ形成安定剤を用い、かつその含有量を既述のように少量とすることにより、シワの形成を安定させて、安定的に優れた艶消効果の視認性及び質感が得られるに至った。また、シワ形成安定剤の使用量を極めて少量に抑えることで、樹脂組成物の著しい粘度上昇を抑えられることにより、層形成が可能となり、かつシワ形成安定剤に使用される粒子に起因する表面特性の低下への影響も最小限に抑えられているため、艶消層に用いられる樹脂の特性に応じた、優れた耐擦傷性、耐汚染性、耐候性等の表面特性を自ずと有するものとなる。
艶消物品Aは、既述のように色調に応じてかわるものの、前記艶消層側の60°グロス値として5.0以下、更には4.0以下、3.6以下、2.0以下と極めて優れた艶消効果の視認性を発現し得るものである。
また、黒色その他暗色以外の色調を呈する艶消物品についても、上記60°グロス値を有し得るものである。艶消物品Aの前記艶消層側の60°グロス値は、当該物品の最表面を形成する層の表面の60°グロス値と実質的に同じである。また、更に他の層を有し、かつ艶消層より表面側に当該他の層が設けられる場合、60°グロス値は当該他の層の60°グロス値を意味することとなるが、艶消物品Aが特定の60°グロス値を有するのは、実質的には艶消層の構成によるものである。
本明細書において、艶消層側の60°グロス値は、JIS K 5600-4-7:1999に準拠して測定した60°鏡面光沢度のことであり、任意の10箇所におけるグロスメータ等を用いて艶消層側から測定し得る値の平均値である。
また、艶消物品Aの60°グロス値について、その標準偏差(σ)は、0.30未満であることが好ましい。60°グロス値の標準偏差(σ)は、任意の10箇所における60°グロス値のばらつき具合を示す数値であり、小さければ小さいほどばらつきが少ない、すなわちシワの形成がより安定していることを意味する指標となる。後述する実施例でも示されるように、艶消物品Aの60°グロス値の標準偏差(σ)はいずれも0.30未満となっており、シワの形成が安定しており、標準偏差(σ)が小さいことが、優れた表面特性、中でも耐擦傷性に優れ、かつ優れた艶消効果の視認性及び質感を有することにつながる。
表面特性の向上、また艶消効果の視認性及び質感の向上の観点から、60°グロス値の標準偏差(σ)は、好ましくは2.8以下、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2.3以下である。また、下限については、小さければ小さいほど好ましいことから制限は特にないが、艶消層表面の60°グロス値の標準偏差(σ)を完全に0に収束させることは困難であるとともに、そこまでの必要性は高くないことから、60°グロス値の標準偏差(σ)の下限は通常0.05以上とされる。
〔層構成について〕
艶消物品Aは、既述のように特定の艶消層を有する物品であればよく、基材を有することは要しない。すなわち、艶消物品Aは、基材は所望に応じて有するものであり、基材を有しない層構成もとり得る。よって、艶消物品Aの一番単純な層構成は、基材を有しない、艶消層のみの単一層による層構成、具体的にはシワ形成安定剤を樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下で含む樹脂組成物の硬化物により構成され、前記艶消層の少なくとも一方の面が不規則なシワにより構成される凹凸形状を有し、前記艶消層の60°グロス値が5.0以下である艶消層のみの単一層による層構成となる。
(より現実的な層構成)
しかし、艶消物品Aを上記単一層による層構成とする場合、通常は機械的強度、後加工適性、意匠性等の、艶消物品に要求される各種性能を得る選択肢が制約される場合が多い。そのため、艶消物品Aの層構成としては、基材を有する、すなわち基材と艶消層とを有する層構成であることが好ましい。そしてこの場合、図3に示されるように、基材と艶消層とを有し、艶消層の不規則なシワにより構成される凹凸形状を有する面が基材とは反対側の面であることが好ましい。艶消効果の視認性及び質感を向上させることができるからである。
〔基材〕
艶消物品Aは、上記艶消層に加えて、所望に応じて更に基材を有してもよく、既述のように、各種の制約を回避する観点から基材を有することが好ましい。基材は、艶消層を設ける支持体として機能する。
基材の形態(乃至は形状)は、フィルム、シート、板、多面体、多角柱、円柱、錐体、球面、回転楕円体面等の各種形状とすることができ、特に制限はない。なお、フィルム、シート、及び板は、相対的に厚さの薄いものから順にフィルム、シート及び板と称されるが、本明細書中においてはこれら三種を厳密に区別する意義はなく、これらの三種の相違によって本願発明の権利解釈に相違が生じることはない。
本実施形態で用いられる基材としては、通常化粧材、化粧シート等の物品の基材として用いられるものを制限なく採用することができ、例えば、紙、不織布及び織布等の繊維質材料、樹脂、木質系材料、金属、非金属無機材料等からなる基材が代表的に挙げられる。
基材は単層でもよいし、上記材料からなる層を2層以上積層したものであってもよい。基材が2以上の層の積層体の場合、異種材料の層を2層以上積層し、各層の材料の有する諸性能を互いに補完してなるものが好ましい。2層以上積層してなる基材の例としては、以下のA~Jが挙げられる。なお、「/」は各層の界面を示す。
(A)樹脂/木質系材料
(B)樹脂/金属
(C)樹脂/繊維質材料
(D)樹脂/非金属無機材料
(E)樹脂1/樹脂2
(F)金属/木質系材料
(G)金属/非金属無機材料
(H)金属/繊維質材料
(I)金属1/金属2
(J)非金属無機材料/繊維質材料
上記Eにおいて、樹脂1と樹脂2とは互いに別種の樹脂を示す(例えば、樹脂1がオレフィン樹脂、樹脂2がアクリル樹脂)。また、上記Hにおいて、金属1と金属2とは互いに別種の金属を示す(例えば、金属1が銅、金属2がクロム)。
また、基材が積層体である場合、積層体の各構成層の層間に、隣接各層間の接着力を強化するための層として、接着剤層、粘着剤層、プライマー層(アンカー層、易接着層とも称される。)を更に設ける等の構成であってもよい。
繊維質材料の基材としては、例えばクラフト紙、チタン紙、リンター紙、硫酸紙、パラフィン紙、グラシン紙、パーチメント紙、壁紙用裏打紙、薄葉紙、上質紙、和紙、板紙、石膏ボード用原紙等の紙基材が挙げられる。また紙基材としては、その繊維間又は多層の紙基材との層間強度を向上させるため、またケバ(毛羽)立ち防止のために、更にアクリル樹脂、スチレン-ブタジエンゴム、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の各種樹脂を添加(抄造後に樹脂を含浸、又は抄造時に内填)させたものでもよい。このような紙基材としては、紙間強化紙、樹脂含浸紙等が挙げられる。また、繊維質材料層に樹脂層を積層した基材としては、建材分野で汎用される壁紙用裏打紙の表面に、塩化ビニル樹脂層、オレフィン樹脂層、アクリル樹脂層等の各種樹脂層を積層した壁紙原反等も挙げられる。
不織布又は織布の基材としては、例えばガラス、アルミナ、シリカ、炭素等の無機材料により構成される無機繊維、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等の各種合成樹脂により構成される有機繊維、絹、木綿、麻等のタンパク質系又はセルロース系の天然繊維、ガラス繊維、炭素繊維等の各種繊維で構成される不織布又は織布、またこれらの複合体等の基材が挙げられる。
樹脂の基材としては、合成樹脂、天然樹脂等の各種樹脂により構成される基材が挙げられる。合成樹脂としては、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂を用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、アイオノマー等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニル樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレングリコール-テレフタル酸-イソフタル酸共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル樹脂;ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート-ブチル(メタ)アクリレート共重合体等のアクリル樹脂;ナイロン6、ナイロン66等に代表されるポリアミド樹脂;三酢酸セルロース、セロファン、セルロイド等のセルロース系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)等のスチレン系樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂等の熱可塑性樹脂からなる樹脂基材が挙げられる。
硬化性樹脂としては、既述の艶消層を構成し得る電離放射線硬化性樹脂、その他熱硬化性樹脂等が挙げられる。
また、天然樹脂としては、天然ゴム、松脂、琥珀等が挙げられる。
木質系材料の基材としては、杉、檜、松、欅、楢、樫、胡桃、ラワン、チーク、ゴムの木等の各種樹種の木材からなる木材基材が挙げられる。木材基材は、突板と称されるフィルム、又はシート形態、あるいは単板、合板、集成材、パーチクルボード、繊維板等の板形態とすることができる。
金属としては、アルミニウム又はジュラルミン等のアルミニウムを含む合金、鉄又は炭素鋼、ステンレス鋼等の鉄を含む合金、銅又は真鍮、青銅等の銅を含む合金、金、銀、クロム、ニッケル、コバルト、錫、チタン等が挙げられる。また、金属により構成される金属基材としては、これらの金属をめっき等の処理を施したものを用いることもできる。
また、非金属無機材料としては、セメント、ALC(軽量気泡コンクリート)、石膏、珪酸カルシウム、木片セメント等の非セラミック系窯業系材料、陶磁器、土器、硝子、琺瑯等のセラミックス系窯業系材料、石灰岩(大理石を含む。)、花崗岩、安山岩等の天然石等が挙げられる。
基材は、着色されていてもよいし、着色されていなくてもよく(透明でもよく)、着色されている場合、着色の態様には特に制限はなく、透明着色であってもよいし、不透明着色(隠蔽着色)であってもよく、これらは任意に選択できる。
基材は、着色されている場合、着色剤としては、例えば、チタン白等の白色顔料、鉄黒、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、ニッケル-アゾ錯体、アゾメチンアゾ系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等の着色剤が挙げられる。例えば、物品を貼着する被着材の表面色相がばらついている場合に、表面色相を隠蔽し、絵柄層、所望に応じて設けられる広面積装飾層の色調の安定性を向上させたい場合は、白色顔料等の無機顔料を用いればよい。
合成樹脂の着色の場合は、樹脂中への着色剤の添加(混練、練り込み)、樹脂と着色剤とを含む塗料の塗膜の塗布による形成等の、いずれの手段を採用することができる。紙、不織布、又は織布の着色の場合は、パルプや繊維材料との混抄、あるいは塗膜形成等のいずれかの手段、又はこれらの併用により行うことができる。
木材の着色の場合は、染料による染色、あるいは塗膜形成のいずれかの手段、又はこれらの併用により行うことができる。金属の着色の場合、塗膜形成の他、陽極酸化法を用いて表面に金属酸化物皮膜を形成する電解着色法等を採用することができる。また、非金属無機材料の場合、塗膜形成、あるいは基材中への添加のいずれかの手段、又はこれらの併用により行うことができる。
基材には、必要に応じて、添加剤が配合されてもよい。添加剤としては、主に樹脂の場合において、例えば、炭酸カルシウム、クレーなどの無機、水酸化マグネシウムなどの難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。添加剤の配合量は、表面特性、加工特性等を阻害しない範囲であれば特に制限はなく、要求特性等に応じて適宜設定できる。
本実施形態の艶消物品の耐候性を向上させる観点から、上記添加剤の中でも、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤を用いることが好ましい。
紫外線吸収剤、光安定剤としては、上記艶消層に含み得るものとして例示したものが挙げられる。
これらの紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤、その他各種添加剤は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
基材の形状及び寸法は、特に制限なく用途及び所望の諸性能、加工適性に応じて適宜選択すればよい。
基材がフィルム、シート、又は板の形態である基材である場合、物品の設計上の代表的な寸法として厚さがある。かかる厚さについては特に制限はないが、一般的には製造加工適性、機械的強度、使用取扱性及び経済性等の観点から、10μm以上10cm以下程度とすればよい。また、フィルム、シートの形態である場合は、その厚さは、20μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましく、上限として300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。
基材が板の形態である場合は、その厚さは1mm以上2cm以下が好ましい。
また、基材が紙基材の場合、坪量は、通常20~150g/mが好ましく、30~100g/mがより好ましい。
基材は、物品を構成する他の層、物品を積層する被着材との密着性を高めるために、その片面又は両面に、酸化法、凹凸化法等の物理的表面処理、又は化学的表面処理等の表面処理を施したり、プライマー層を形成してもよい。
酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン-紫外線処理法等が挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理が表面処理の効果及び操作性等の観点から好ましい。
〔その他の層〕
艶消物品Aは、上記艶消層の他、上記の基材、さらにはその他の層として、例えばプライマー層、透明性樹脂層、装飾層、接着層等を必要に応じて有し得る。これらの層を有する艶消物品Aの一実施形態を示す断面図を図3及び図4に示す。図3及び4は、艶消物品Aの一実施形態を示す断面図であり、艶消物品1(艶消物品A)をその厚さ方向(同図においてはZ方向)に平行な面で切断した断面図である。
図3に示される艶消物品1(艶消物品A)は、基材5及び艶消層4を順に有しており、図4に示される艶消物品1(艶消物品A)は、基材5、装飾層6、接着層7、透明性樹脂層8、プライマー層9及び艶消層4を順に有している。
(プライマー層)
艶消物品Aは、例えば複数の層により構成される場合、既述のように当該複数の層の層間密着性を向上させるために、プライマー層を有してもよい。
艶消物品Aが艶消層以外の層を有する場合、例えば艶消層と基材とを有する場合、艶消層と基材との間に、層間密着性の向上のため、プライマー層を設けることができる。
プライマー層は、主としてバインダー樹脂から構成され、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を含有してもよい。
バインダー樹脂としては、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体(ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、末端、側鎖に2個以上の水酸基を有する重合体(ポリカーボネートポリオール)由来のウレタン-アクリル共重合体)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂(硝化綿)、酢酸セルロース樹脂等の樹脂が好ましく挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
また、バインダー樹脂は、これら樹脂に、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤等の硬化剤を添加し、架橋硬化したものであってもよい。これらの中でも、アクリルポリオール樹脂等のポリオール系樹脂をイソシアネート系硬化剤で架橋硬化したものが好ましく、アクリルポリオール樹脂をイソシアネート系硬化剤で架橋硬化したものがより好ましい。
プライマー層の厚さは、0.5μm以上10μm以下が好ましく、1μm以上8μm以下がより好ましく、2μm以上6μm以下がさらに好ましい。
艶消物品Aは、被着体との接着性の向上等を目的として、艶消層の少なくとも一方のシワを有する表面とは反対側に、また基材を有する場合は、当該基材の艶消層が設けられる側とは反対側に、プライマー層(「裏面プライマー層」とも称される。)を有することもできる。
(透明性樹脂層)
艶消物品Aは、その強度を高めるため、また後述する装飾層を有する場合は当該装飾層の保護等の観点から、透明性樹脂層を有してもよい。とりわけ、艶消物品Aを床材の用途、また使用頻度が高い窓枠、扉、扉枠、手すり等の建具部材の用途に用いる場合に有効である。
透明性樹脂層は、当該基材と艶消層との間に設ければよく、装飾層を有する場合は、当該装飾層を保護するため、当該装飾層と艶消層との間に設ければよい。
透明性樹脂層を構成する樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(以下、「ABS樹脂」とも称する。)、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられ、これらの中でも加工適性等の観点からポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂が好ましい。また、これらの各種樹脂を2種類以上積層して、又は混合して使用してもよい。
透明性樹脂層は、透明性樹脂層よりも基材側を視認できる程度に透明であればよく、また装飾層を有する場合は当該装飾層を視認できる程度に透明であればよく、無色透明の他、着色透明及び半透明であってもよい。すなわち、本明細書において、「透明性」とは、無色透明の他、着色透明及び半透明も含むことを意味する。
透明性樹脂層は、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤、また着色剤等の添加剤を含有してもよい。これらの耐候剤、着色剤等の添加剤としては、既述のものを用いればよい。
透明性樹脂層の厚さは、装飾層を保護する観点、また加工適性等を考慮すると、20μm以上150μm以下が好ましく、40μm以上120μm以下がより好ましく、60μm以上100μm以下が更に好ましい。
(装飾層)
艶消物品Aは、意匠性を向上させる観点から、装飾層を有してもよい。装飾層は、艶消層のシワを有する少なくとも一方の面とは反対側の面に設ければよく、基材を有する場合は基材と艶消層との間に、また透明性樹脂層を有する場合は装飾層、透明性樹脂層及び艶消層の順に設ければよい。
装飾層は、例えば、全面を被覆する着色層(いわゆるベタ着色層、図4中の「6a」)であってもよいし、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される絵柄層(図4中の「6b」)であってもよい。また、図4に示されるように、ベタ着色層と絵柄層とを組み合わせたものであってもよい。
絵柄層の絵柄(模様)としては、特に制限なく所望に応じた絵柄を採用すればよく、例えば木材板表面の年輪や導管溝等の木目柄、大理石、花崗岩等の石板表面の石目柄、布帛表面の布目柄、皮革表面の皮シボ柄、幾何学模様、文字、図形、またこれらを組み合わせたもの等が挙げられる。
装飾層に用いられるインキとしては、バインダー樹脂に顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を適宜混合したものが使用される。
装飾層のバインダー樹脂としては特に制限はなく、例えば、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等の樹脂が挙げられる。また、1液硬化型樹脂、イソシアネート化合物等の硬化剤を伴う2液硬化型樹脂など、種々のタイプの樹脂を用いることができる。
着色剤としては、隠蔽性及び耐候性に優れる顔料が好ましい。顔料は基材に用いられ得る顔料として例示したものと同様のものを用いることができる。
着色剤の含有量は、装飾層を構成する樹脂100質量部に対して、5質量部以上90質量部以下が好ましく、15質量部以上80質量部以下がより好ましく、30質量部以上70質量部以下がさらに好ましい。
装飾層は、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤、着色剤等の添加剤を含有してもよい。
装飾層の厚さは、所望の絵柄に応じて適宜選択すればよいが、被着材の地色を隠蔽し、かつ意匠性を向上させる観点から、0.5μm以上20μm以下が好ましく、1μm以上10μm以下がより好ましく、2μm以上5μm以下が更に好ましい。
(接着層)
艶消物品Aが、透明性樹脂層を有する場合、基材と透明性樹脂層との間には、両層の密着性を向上するために接着層を有してもよい。
基材と透明性樹脂層との間に、更に装飾層を有する場合、接着層と装飾層との位置関係は特に限定されず、具体的には、基材に近い側から装飾層、接着層及び透明性樹脂層をこの順に有していてもよいし、基材に近い側から接着層、装飾層及び透明性樹脂層をこの順に有していてもよい。
接着層は、例えば、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤等の接着剤から構成することができる。これら接着剤の中でも、ウレタン系接着剤が接着力の点で好ましい。
ウレタン系接着剤としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール等の各種ポリオール化合物と、イソシアネート化合物等の硬化剤とを含む2液硬化型ウレタン樹脂を利用した接着剤が挙げられる。
接着層の厚さは、効率よく所望の接着力を得る観点から、0.1μm以上30μm以下が好ましく、1μm以上15μm以下がより好ましく、2μm以上10μm以下がさらに好ましい。
(艶消物品Aが有する性能)
艶消物品Aは、優れた表面特性、中でも優れた耐擦傷性を有しており、例えば、下記ラビング試験を行う前の前記艶消層側の60°グロス値をGとし、前記ラビング試験を行った後の前記艶消層側の60°グロス値をGとしたときの、グロス値の変化率(|(G-G)|/G×100)が、20%以下であるという、優れた耐擦傷性(特に耐スチールウール性)を有するものである。
(ラビング試験)
摩耗試験機II形(JIS L0849:2013)に艶消物品を土台に配置し、当該艶消物品の艶消層に接触するようにスチールウール#0000をセットして、荷重1500g/cm、移動速度100mm/秒、往復移動距離100mmで30回往復させた。
グロス値の変化率は、ラビング試験の前後におけるグロス値の変化の幅をみることで、艶消物品の耐擦傷性の一つである耐スチールウール性の指標とするものである。グロス値の変化率が大きいほど、ラビング試験後のグロス値が高くなる、すなわち艶消物品の表面が小傷により艶が高くなるため、耐スチールウール性に劣ることを示す。
艶消物品Aは、優れた耐擦傷性を有していることから、グロス値の変化率は、既述のように20%以下となり、更には15%以下、10%以下、8%以下、5%以下となり得る。
〔艶消物品Aの製造方法〕
艶消物品Aは、既述のように、艶消層の単一層による層構成を有する場合、また少なくとも基材を含む層構成を有する場合がある。以下、艶消物品Aの製造方法について、単一層の場合、基材及びその他の層を有する場合、分けて説明する。
まず、単一層の場合は、以下の方法により艶消物品Aを製造することができる。
離型性支持体の離型層を有する面に、上記の艶消層形成用樹脂組成物、すなわち平均粒子径が1μm以上、かつ前記艶消層の厚さの100%以下及び30μm以下のいずれか小さい方を上限とするシワ形成安定剤1と、平均粒子径が1μm未満であるシワ形成安定剤2とを、前記シワ形成安定剤1及びシワ形成安定剤2の合計量として樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下で含む樹脂組成物を塗布して塗布層を形成する工程、少なくとも100nm以上200nm未満の波長光で照射して硬化させて艶消層を形成する、艶消層形成工程を経て製造することが好ましい。また、樹脂組成物が溶剤を含有する場合、塗布層を形成する工程の後、溶剤乾燥工程を経てもよい。
離型層を有する離型性支持体は、艶消物品Aを使用する際に剥離すればよい。
次に、基材及びその他の層を有する場合は、以下の方法により艶消物品Aを製造することができる。
艶消物品Aは、例えば基材(好ましくは基材シート)の一方の主面側に、シワ形成安定剤を樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下で含む、艶消層形成用の樹脂組成物を塗布して塗布層を形成する工程、少なくとも100nm以上200nm未満の波長光で照射して前記塗布層を硬化させて艶消層を形成する、艶消層形成工程を経て製造することが好ましい。また、樹脂組成物が溶剤を含有する場合、塗布層を形成する工程の後、溶剤乾燥工程を経てもよい。
上記艶消物品Aの製造方法は、とりわけ、前記艶消層側の60°グロス値が5.0以下という艶消物品Aを製造する場合に好適な製造方法となり得る。中でも、艶消物品Aの製造方法は、特に、μmオーダーの粒子の添加量が樹脂100質量部に対して6.0質量部以下という低含有量に抑えて、しかも60°グロス値が5.0以下の艶消(低艶、低光沢)の表面を実現し得る点において、従来公知の艶消化粧材、艶消化粧シート等の艶消物品の製造方法とは一線を画するものである。
このような製造方法により、艶消物品Aを容易に得ることが可能となる。具体的には、艶消層の形成にあたり、少なくとも100nm以上200nm未満という低波長(短波長)の紫外線を、艶消層を形成するシワ形成安定剤を含む艶消形成用の樹脂組成物に照射することにより、当該艶消層の少なくとも一方の表面に、シワを形成させることができ、艶消物品(艶消層)に安定的に艶消効果の視認性及び質感を付与しやすくなる。
このような低波長の紫外線を、艶消層形成用の樹脂組成物に照射することにより、艶消層の少なくとも一方の表面においてシワが形成し艶消効果の視認性及び質感が発現する機構についての詳細は不明であるが、以下の機構によるものと推察される。
艶消層形成用の樹脂組成物を所定の厚さで塗布した塗布物に低波長の紫外線を照射すると、当該紫外線のエネルギーが表面部分のみに浸透し、それより下層にはエネルギーが到達しないことにより、当該樹脂組成物の表面部分だけが硬化をはじめることから、表面だけが硬化収縮を生じることで、シワが形成するものと考えられる。このように、シワの形成は、低波長の紫外線の照射により、艶消層形成用の樹脂組成物の表面からの一定の厚み方向のみが硬化した状態において生じていると考えられる。
また、後述する実施例と比較例との対比より、シワ形成安定剤を含まない場合にシワの形成が不安定となり艶消効果の視認性が艶消層の全面にわたって安定して、十分な程度には発現しないことから、当該艶消効果の視認性の安定的な発現は、低波長の紫外線による表面部分のみの硬化だけでは説明できない。すなわち、艶消物品Aがシワを安定的に有することで艶消効果の視認性を発現するには、シワ形成安定剤が含まれることが必要不可欠である。シワ形成安定剤を含まない場合にシワの形成の安定による安定的な艶消効果の視認性が得られていないことを考慮すると、シワ形成安定剤がシワ形成のきっかけとなる核のような機能を有しており、当該核を中心に、上記樹脂組成物の表面部分の樹脂が集まりシワの凸部(突起部)と、凸部(突起部)の形成とともに凹部が形成し、結果としてシワの形成が安定するものと考えられる。そして、このようにして形成したシワは、その形状に起因する光拡散効果により艶消物品Aに艶消効果の視認性を安定的に付与するとともに、質感をも安定的に付与するものと考えられる。
本製造方法で用いられるシワ形成安定剤、シワ形成安定剤を含む艶消層形成用の樹脂組成物は、上記の艶消物品Aで用いられ得るシワ形成安定剤、艶消層形成用の樹脂組成物として説明した内容と同じである。
本製造方法では、艶消層形成用の樹脂組成物を少なくとも100nm以上200nm未満の波長光で照射することが好ましい。この照射により、当該紫外線のエネルギーが表面部分のみに浸透し、それより下層にはエネルギーが到達しないことにより、当該樹脂組成物の表面部分だけが硬化をはじめることから、表面だけが硬化収縮を生じることでシワの形成が安定し、当該樹脂組成物表層はシワを有する硬化物となり、艶消層を構成するものとなる。そして、かかる後、硬化の進行が遅い当該表面近傍部分から深さ方向に離れた深奥部分への硬化が進み、当該樹脂組成物の層は硬化物となり、もって当該樹脂組成物の全厚さにわたり硬化し、かつ表面に光拡散効果を発現するシワを有する艶消層を構成するものとなる。当該深奥部分への硬化の進行を促進する観点からは、後述するように、100nm以上200nm未満の波長光で照射した後、さらに他の照射処理を行うことが好ましい。
少なくとも100nm以上200nm未満の波長光としては、例えば、Ar、Kr、Xe、Ne等の希ガス、F、Cl、I、Br等のハロゲンによる希ガスのハロゲン化物等ガス、又はこれらの混合ガスの放電によって形成される励起状態の2量体、すなわちエキシマ(excimer)からの紫外線波長域の光を含む「エキシマ光」が好ましい。エキシマ光の波長及び光源となるエキシマとしては、例えばArのエキシマから輻射される波長126nmの光(以下、「126nm(Ar)」のように略称する。)、146nm(Kr)、157nm(F)、172nm(Xe)、193nm(ArF)等の波長光を好ましく採用することができる。エキシマ光としては、自然放出光、誘導放出によるコヒーレンス(可干渉性)の高いレーザ光のいずれも用いることができるが、通常自然放出光を用いれば十分である。なお、当該光(紫外線)を放射する放電ランプは、「エキシマランプ」とも称されている。
エキシマ光は波長ピークが単一であり、また通常の紫外線(例えば、メタルハライドランプ、水銀ランプ等から放射される紫外線)と比べて波長の半値幅が狭いことが特徴として挙げられる。このようなエキシマ光を用いることで、シワの形成が安定し、安定的に艶消効果の視認性及び質感が向上する。
シワの形成を安定させて、安定的に艶消効果の視認性及び質感を向上させる観点から、波長としては好ましくは120nm以上、より好ましくは140nm以上、更に好ましくは150nm以上、より更に好ましくは155nm以上であり、上限として200nm未満であり、特に好ましくは、172nm(Xe)である。このように、本製造方法では、安定的に艶消効果の視認性及び質感を向上させる観点から、より低波長の波長光を用いることが好ましく、低波長紫外線(波長:280nm以下)のうち、200nm未満の領域の低波長紫外線が好ましい、ともいえる。
本製造方法において、上記波長光の積算光量は、シワの形成を安定させて、安定的に艶消効果の視認性及び質感を向上させる観点から、好ましくは1mJ/cm以上、より好ましくは10mJ/cm以上、更に好ましくは30mJ/cm以上、より更に好ましくは50mJ/cm以上である。また上限としては特に制限はなく、波長光の照射に必要な灯数を低減し、また生産効率の向上等の生産性の観点から、上限として好ましくは1,000mJ/cm以下、より好ましくは500mJ/cm以下、更に好ましくは300mJ/cm以下である。
また、これと同様の観点から、紫外線出力密度は、好ましくは0.01W/cm以上、より好ましくは0.1W/cm以上、更に好ましくは0.5W/cm以上であり、上限として好ましくは10W/cm以下、より好ましくは5W/cm以下、更に好ましくは3W/cm以下である。
また、上記波長光を照射する際の酸素濃度は、より低いことが好ましく、好ましくは1,000ppm以下、より好ましくは750ppm以下、更に好ましくは500ppm以下、より更に好ましくは300ppm以下である。
本製造方法における艶消層形成工程では、上記の少なくとも100nm以上200nm未満の波長光での照射の他、艶消層形成用の樹脂組成物の硬化に寄与する他の処理を行ってもよい。
例えば、既述の表面部分と表面から深さ方向に離れた深奥部分の硬化の進行度合いの違いによるシワの形成を安定させ、かつ深奥部分への硬化の進行を促進する観点から、例えば200nm以上の波長光、例えば、380nm以上、好ましくは385nm以上400nm以下程度の波長光で予め照射して艶消層形成用の樹脂組成物を全体的に予備硬化させた後に、100nm以上200nm未満の波長光で照射してもよいし、また100nm以上200nm未満の波長光での照射後に、樹脂組成物を更に硬化させるために後硬化を行ってもよい。予備硬化、後硬化については、艶消層に求められる所望の性状(例えば、耐擦傷性、耐汚染性等の表面特性、また加工特性)に応じて採用の要否を適宜決めればよい。また、上記波長光は紫外線に属するものであるが、紫外線に限らず他の電離放射線、例えば電子線等を用いることも可能である。例えば、後硬化においては、艶消層の表面特性の向上の観点から、電子線が好ましく用いられ得る。
本製造方法において、艶消層は、艶消層形成用の樹脂組成物を、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方式で塗布した塗布層(未硬化樹脂層)を、少なくとも100nm以上200nm未満の波長光で照射して形成することができる。
また、本製造方法で得られる艶消物品は、上記の艶消物品Aで採用し得る層として説明した、基材の他、透明性樹脂層等の他の層を有し得る。
例えば、装飾層、接着層及びプライマー層は、各層を形成する組成物を含む塗布液を、上記の公知の方式で塗布し、必要に応じて、乾燥、硬化することにより形成することができる。また、透明性樹脂層を形成する場合は、透明性樹脂層を形成する樹脂フィルムをドライラミネート等により形成することができる。
〔化粧部材A〕
艶消物品Aの代表的な用途としては、艶消物品Aをそのままで、建築物や各種家具、車両、家電製品等の表面を構成する、いわゆる化粧部材として用いることもできるし、また被着材と積層して、複合して、乃至は組み合わせて化粧部材として用いることも可能である(以下、これらの艶消物品Aを用いた化粧部材を「化粧部材A」と称することがある。)。いずれとするかは、所望に応じて決定すればよい。
被着材を有する場合、化粧部材Aは、当該被着材と上記の艶消物品Aとを有するものであり、具体的には、被着材の装飾を要する面と、艶消物品Aの艶消層のシワが形成され艶消効果の視認性及び質感を発現する一方の面とは反対側の面と、を対向させて積層したものである。また、艶消物品Aがシート形態を有している場合は、被着材に積層しやすいという特徴も有している。
(被着材)
被着材としては、上記基材として採用し得るものとして例示した材料から適宜選択される材料からなる部材が挙げられる。
被着材は、上記の中から用途に応じて適宜選択すればよく、壁、天井、床等の建築物の内装用部材又は外壁、屋根、軒天井、柵、門扉等の外装用部材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材を用途とする場合は、木質系材料により構成される木質部材、金属により構成される金属部材及び樹脂により構成される樹脂部材から選ばれる少なくとも一種の部材からなるものが好ましく、玄関ドア等の外装部材、窓枠、扉等の建具を用途とする場合は、金属部材及び樹脂部材から選ばれる少なくとも一種の部材からなるものが好ましい。
被着材の厚さは、用途及び材料に応じて適宜選択すればよく、0.1mm以上100mm以下が好ましく、0.3mm以上5mmがより好ましく、0.5mm以上3mm以下が更に好ましい。
(接着剤層)
被着材と艶消物品Aとは、優れた接着性を得るため、接着剤層を介して貼着されることが好ましい。
接着剤層に用いられる接着剤としては、特に限定されず、公知の接着剤を使用することができ、用途に応じて適宜選択すればよい。例えば、湿気硬化型接着剤、嫌気硬化型接着剤、乾燥硬化型接着剤、UV硬化型接着剤、感熱接着剤(例えば、ホットメルト型接着剤)、感圧接着剤等の接着剤が好ましく挙げられる。
これらの接着剤に用いられる樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレン-アクリル共重合、ポリエステル樹脂、アミド樹脂、シアノアクリレート樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。また、イソシアネート化合物等を硬化剤とする2液硬化型のウレタン系接着剤、エステル系接着剤も適用し得る。
また、接着剤層には、粘着剤を用いることもできる。粘着剤としては、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、ゴム系等の各種粘着剤を適宜選択して用いることができる。
接着剤層の厚さは特に制限はないが、優れた接着性を得る観点から、1μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましく、10μm以上30μm以下が更に好ましい。
(化粧部材Aの製造方法)
化粧部材Aは、艶消物品Aと被着材とを積層する工程を経て製造することができる。
本工程は、被着材と、艶消物品Aとを積層する工程であり、被着材の装飾を要する面と、艶消物品Aの艶消層のシワが形成され艶消効果の視認性及び質感を発現する一方の面とは反対側の面と、また艶消物品Aが基材を有する場合は基材側の面とを対向させて積層する。被着材と艶消物品Aとの積層する方法としては、例えば、接着剤層を介して艶消物品Aを板状の被着材に加圧ローラーで加圧して積層するラミネート方法等が挙げられる。
接着剤としてホットメルト接着剤(感熱接着剤)を用いる場合、接着剤を構成する樹脂の種類にもよるが、加温温度は160℃以上200℃以下が好ましく、反応性ホットメルト接着剤では100℃以上130℃以下が好ましい。また、真空成形加工の場合は加熱しながら行うことが一般的であり、80℃以上130℃以下が好ましく、より好ましくは90℃以上120℃以下である。
(化粧部材Aの用途)
以上のようにして得られる化粧部材Aは、任意切断し、表面や木口部にルーター、カッター等の切削加工機を用いて溝加工、面取加工等の任意加飾を施すことができる。そして種々の用途、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装用部材、外壁、軒天井、屋根、塀、柵等の外装用部材、窓枠、扉、扉枠、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材の他、箪笥、棚、机等の一般家具、食卓、流し台等の厨房家具、台所、トイレ、風呂場、洗面台等の水廻りで用いられる各種家具及び部材、又は家電、OA機器等のキャビネット等の表面化粧板、車両の内装、外装用部材等の各種部材として好適に用いられる。艶消物品Aは、シートの形態である場合は、上記の各種部材用の化粧シートとして好適に用いられる。また、艶消物品Aの、表面特性、中でも耐擦傷性に優れ、かつ艶消効果の視認性及び質感にも優れるという特徴を考慮すると、耐擦傷性が特に求められる用途、例えば建築物の内装用部材の中でも床材の用途、また使用頻度が高い窓枠、扉、扉枠、手すり等の建具部材の用途に好適に用いられる。
更に、上記の各種部材の他にも、艶消物品Aは、単体で、又は他の素材と積層乃至は複合化した形態で、包装材料、ディスプレイ用防眩フィルム、白板又は黒板、クレジットカード、キャッシュカード、テレフォンカード、各種証明書類等の各種カード、各種キーボード類の鍵盤、窓、扉、間仕切り等の透明板(窓ガラス等)、人工皮革等に用いることができる。
[艶消物品B]
本実施形態の艶消物品Aの中でも、特に二種のシワ形成安定剤を採用したもの、すなわち、艶消層を有する艶消物品であって、前記艶消層が、平均粒子径が1μm以上、かつ前記艶消層の厚さの100%以下及び30μm以下のいずれか小さい方を上限とするシワ形成安定剤1と、平均粒子径が1μm未満であるシワ形成安定剤2とを、前記シワ形成安定剤1及びシワ形成安定剤2の合計量として樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下で含む樹脂組成物の硬化物により構成され、前記艶消層の少なくとも一方の面が不規則なシワにより構成される凹凸形状を有し、前記艶消層の60°グロス値が5.0以下である、という艶消物品(以下、単に「艶消物品B」とも称する。)が好ましい。艶消物品Bは、このような構成を有することにより、艶消効果の視認性及び質感にも優れるものとなる。
〔艶消層〕
艶消物品Bにおける艶消層は、平均粒子径が1μm以上、かつ前記艶消層の厚さの100%以下及び30μm以下のいずれか小さい方を上限とするシワ形成安定剤1と、平均粒子径が1μm未満であるシワ形成安定剤2とを、前記シワ形成安定剤1及びシワ形成安定剤2の合計量として樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下で含む樹脂組成物の硬化物により構成される層である。すなわち、本実施形態において艶消層は、当該艶消層を形成する樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下の含有量で、シワ形成安定剤1及びシワ形成安定剤2を含む層である。
(シワ形成安定剤)
シワ形成安定剤は、上記艶消物品Aで採用されるものとして説明した、シワ形成安定剤1及びシワ形成安定剤2が採用される。
シワ形成安定剤について、シワ形成安定剤1及びシワ形成安定剤2の平均粒径、種類、含有量等、またシワ形成安定剤を用いることにより発現する効果、シワ形成安定剤と艶消剤との違いについては、上記艶消物品Aについて説明した内容と同じである。
(艶消層の表面形状)
艶消物品Bの艶消層の表面形状は、少なくとも一方の面が不規則なシワにより構成される凹凸を有することを要し、上記艶消物品Aについて説明した内容と同じである。また、艶消物品Aの艶消層の表面形状の説明に用いた図1及び2は、艶消物品Bの艶消層の表面形状にも適用し得る。
(樹脂)
艶消物品Bの艶消層の形成に用いられる樹脂は、上記艶消物品Aについて説明した樹脂に関する内容と同じである。
(樹脂組成物)
艶消物品Bの艶消層の形成に用いられる樹脂組成物は、上記艶消物品Aについて説明した樹脂組成物に関する内容と同じである。
〔60°グロス値〕
艶消物品Bの60°グロス値は、5.0以下であり、上記艶消物品Aについて説明した60°グロス値に関する内容と同じである。よって、60°グロス値の標準偏差(σ)についても同じである。
〔層構成について〕
艶消物品Bの一番単純な層構成、より現実的な層構成等の層構成は、上記艶消物品Aについて説明した層構成に関する内容と同じである。
〔基材〕
艶消物品Bの基材は、上記艶消物品Aについて説明した基材に関する内容と同じである。
〔その他の層〕
艶消物品Bは、艶消層の他、上記の基材、またその他の層として、例えばプライマー層、透明性樹脂層、装飾層、接着層等を必要に応じて有し得る。これらのその他の層は、上記艶消物品Aについて説明したその他の層に関する内容と同じである。よって、図3及び図4に示される層構成は、艶消物品Bにも適用し得る。
〔艶消物品Bの製造方法〕
艶消物品Bの製造方法についても、上記艶消物品Aについて説明した製造方法に関する内容と同じである。
〔化粧部材B〕
艶消物品Bの代表的な用途としては、艶消物品Bをそのままで、建築物や各種家具、車両、家電製品等の表面を構成する、いわゆる化粧部材として用いることもできるし、また被着材と積層して、複合して、乃至は組み合わせて化粧部材として用いることも可能である(以下、これらの艶消物品Bを用いた化粧部材を「化粧部材B」と称することがある。)。いずれとするかは、所望に応じて決定すればよい。
化粧部材Bにおける艶消物品Bの形態、被着材、接着剤層、化粧部材Bの用途等は、上記化粧部材Aにおいて説明した内容と同じである。
[艶消物品C]
本実施形態の艶消物品Aの中でも、特定の一種のシワ形成安定剤を採用したもの、すなわち、艶消層を有する艶消物品であって、前記艶消層が、平均粒子径が1μm以上、かつ前記艶消層の厚さの100%以下及び30μm以下のいずれか小さい方を上限とするシワ形成安定剤1を、樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下で含む樹脂組成物の硬化物により構成され、前記艶消層の少なくとも一方の面が不規則なシワにより構成される凹凸形状を有し、前記艶消層の60°グロス値が5.0以下である、という艶消物品(以下、単に「艶消物品C」とも称する。)が好ましい。艶消物品Cは、このような構成を有することにより、艶消効果の視認性及び質感にも優れるものとなる。
〔艶消層〕
艶消物品Cにおける艶消層は、平均粒子径が1μm以上、かつ前記艶消層の厚さの100%以下及び30μm以下のいずれか小さい方を上限とするシワ形成安定剤1を、樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下で含む樹脂組成物の硬化物により構成される層である。すなわち、本実施形態において艶消層は、当該艶消層を形成する樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下の含有量で、シワ形成安定剤1を含む層である。
(シワ形成安定剤)
シワ形成安定剤は、上記艶消物品Aで採用されるものとして説明した、シワ形成安定剤1が採用される。
シワ形成安定剤について、シワ形成安定剤1の平均粒径、種類、含有量等、またシワ形成安定剤を用いることにより発現する効果、シワ形成安定剤と艶消剤との違いについては、上記艶消物品Aについて説明した内容と同じである。
(艶消層の表面形状)
艶消物品Cの艶消層の表面形状は、少なくとも一方の面が不規則なシワにより構成される凹凸を有することを要し、上記艶消物品Aについて説明した内容と同じである。また、艶消物品Aの艶消層の表面形状の説明に用いた図1及び2は、艶消物品Cの艶消層の表面形状にも適用し得る。
(樹脂)
艶消物品Cの艶消層の形成に用いられる樹脂は、上記艶消物品Aについて説明した樹脂に関する内容と同じである。
(樹脂組成物)
艶消物品Cの艶消層の形成に用いられる樹脂組成物は、上記艶消物品Aについて説明した樹脂組成物に関する内容と同じである。
〔60°グロス値〕
艶消物品Cの60°グロス値は、5.0以下であり、上記艶消物品Aについて説明した60°グロス値に関する内容と同じである。よって、60°グロス値の標準偏差(σ)についても同じである。
〔層構成について〕
艶消物品Cの一番単純な層構成、より現実的な層構成等の層構成は、上記艶消物品Aについて説明した層構成に関する内容と同じである。
〔基材〕
艶消物品Cの基材は、上記艶消物品Aについて説明した基材に関する内容と同じである。
〔その他の層〕
艶消物品Cは、艶消層の他、上記の基材、またその他の層として、例えばプライマー層、透明性樹脂層、装飾層、接着層等を必要に応じて有し得る。これらのその他の層は、上記艶消物品Aについて説明したその他の層に関する内容と同じである。よって、図3及び図4に示される層構成は、艶消物品Cにも適用し得る。
〔艶消物品Cの製造方法〕
艶消物品Cの製造方法についても、上記艶消物品Aについて説明した製造方法に関する内容と同じである。
〔化粧部材C〕
艶消物品Cの代表的な用途としては、艶消物品Cをそのままで、建築物や各種家具、車両、家電製品等の表面を構成する、いわゆる化粧部材として用いることもできるし、また被着材と積層して、複合して、乃至は組み合わせて化粧部材として用いることも可能である(以下、これらの艶消物品Cを用いた化粧部材を「化粧部材C」と称することがある。)。いずれとするかは、所望に応じて決定すればよい。
化粧部材Cにおける艶消物品Cの形態、被着材、接着剤層、化粧部材Cの製造方法、化粧部材Cの用途等は、上記化粧部材Aにおいて説明した内容と同じである。
[艶消物品D]
本実施形態の艶消物品Aの中でも、特定の一種のシワ形成安定剤を採用したもの、すなわち、艶消層を有する艶消物品であって、前記艶消層が、平均粒子径が1μm未満であるシワ形成安定剤を、樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下で含む樹脂組成物の硬化物により構成され、前記艶消層の少なくとも一方の面が不規則なシワにより構成される凹凸形状を有し、前記艶消層の60°グロス値が5.0以下である、という艶消物品(以下、単に「艶消物品D」とも称する。)が好ましい。艶消物品Dは、このような構成を有することにより、艶消効果の視認性及び質感にも優れるものとなる。
〔艶消層〕
艶消物品Dにおける艶消層は、平均粒子径が1μm未満であるシワ形成安定剤を、樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下で含む樹脂組成物の硬化物により構成される層である。すなわち、本実施形態において艶消層は、当該艶消層を形成する樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下の含有量で、平均粒子径が1μm未満であるシワ形成安定剤を含む層である。
(シワ形成安定剤)
シワ形成安定剤は、上記艶消物品Aで採用されるものとして説明した、平均粒子径が1μm未満であるシワ形成安定剤2が採用される。
シワ形成安定剤について、シワ形成安定剤2の平均粒径、種類、含有量等、またシワ形成安定剤を用いることにより発現する効果、シワ形成安定剤と艶消剤との違いについては、上記艶消物品Aについて説明した内容と同じである。
(艶消層の表面形状)
艶消物品Dの艶消層の表面形状は、少なくとも一方の面が不規則なシワにより構成される凹凸を有することを要し、上記艶消物品Aについて説明した内容と同じである。また、艶消物品Aの艶消層の表面形状の説明に用いた図1及び2は、艶消物品Dの艶消層の表面形状にも適用し得る。
(樹脂)
艶消物品Dの艶消層の形成に用いられる樹脂は、上記艶消物品Aについて説明した樹脂に関する内容と同じである。
(樹脂組成物)
艶消物品Dの艶消層の形成に用いられる樹脂組成物は、上記艶消物品Aについて説明した樹脂組成物に関する内容と同じである。
〔60°グロス値〕
艶消物品Cの60°グロス値は、5.0以下であり、上記艶消物品Aについて説明した60°グロス値に関する内容と同じである。よって、60°グロス値の標準偏差(σ)についても同じである。
〔層構成について〕
艶消物品Dの一番単純な層構成、より現実的な層構成等の層構成は、上記艶消物品Aについて説明した層構成に関する内容と同じである。
〔基材〕
艶消物品Dの基材は、上記艶消物品Aについて説明した基材に関する内容と同じである。
〔その他の層〕
艶消物品Dは、艶消層の他、上記の基材、またその他の層として、例えばプライマー層、透明性樹脂層、装飾層、接着層等を必要に応じて有し得る。これらのその他の層は、上記艶消物品Aについて説明したその他の層に関する内容と同じである。よって、図3及び図4に示される層構成は、艶消物品Dにも適用し得る。
〔艶消物品Dの製造方法〕
艶消物品Dの製造方法についても、上記艶消物品Aについて説明した製造方法に関する内容と同じである。
〔化粧部材D〕
艶消物品Dの代表的な用途としては、艶消物品Dをそのままで、建築物や各種家具、車両、家電製品等の表面を構成する、いわゆる化粧部材として用いることもできるし、また被着材と積層して、複合して、乃至は組み合わせて化粧部材として用いることも可能である(以下、これらの艶消物品Dを用いた化粧部材を「化粧部材D」と称することがある。)。いずれとするかは、所望に応じて決定すればよい。
化粧部材Dにおける艶消物品Dの形態、被着材、接着剤層、化粧部材Dの製造方法、化粧部材Dの用途等は、上記化粧部材Aにおいて説明した内容と同じである。
[艶消物品E]
本実施形態の艶消物品は、上記艶消物品Aにおいて、艶消層が艶消易除染層である、という艶消物品(以下、単に「艶消物品E」とも称する。)であり、具体的には、艶消層を有する艶消物品であり、前記艶消層が、シワ形成安定剤を樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下で含む樹脂組成物の硬化物により構成され、前記艶消層の少なくとも一方の面が不規則なシワにより構成される凹凸形状を有し、前記艶消層の60°グロス値が5.0以下であり、前記艶消層が艶消易除染層である、艶消物品である。艶消物品Eは、このような構成を有することにより、表面特性、中でも易除染性に優れ、かつ艶消効果の視認性及び質感にも優れるものとなる。
〔艶消層(艶消易除染層)〕
艶消物品Eにおける艶消層は、特に易除染性を発現する艶消易除染層であり、シワ形成安定剤を樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下で含む樹脂組成物の硬化物により構成される層である。すなわち、本実施形態において艶消層は主に易除染性を発現する艶消易除染層であり、当該艶消易除染層を形成する樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下の含有量で、シワ形成安定剤を含む層である。
(シワ形成安定剤)
シワ形成安定剤は、上記艶消物品Aで採用されるものとして説明した、シワ形成安定剤が採用される。シワ形成安定剤を用いることにより、艶消易除染層の表面におけるシワの形成を安定させることで、かかる表面と空気との屈折率差界面での光拡散効果による艶消効果による視認性とともに、質感が安定的に得られる。また、後述するように、シワを有することにより、優れた易除染性が得られる。
シワ形成安定剤としてシワ形成安定剤1及びシワ形成安定剤2の少なくとも一方を用い得ること、シワ形成安定剤1及びシワ形成安定剤2の平均粒径、シワ形成安定剤の種類、含有量等、またシワ形成安定剤を用いることにより発現する効果、シワ形成安定剤と艶消剤との違いについても、基本的には、上記艶消物品Aについて説明した内容と同じである。
(艶消易除染層の表面形状)
艶消物品Eの艶消易除染層の表面形状は、少なくとも一方の面が不規則なシワにより構成される凹凸を有することを要し、上記艶消物品Aの艶消層について説明した内容と同じである。また、艶消物品Aの艶消層の表面形状の説明に用いた図1及び2は、艶消物品Eの艶消易除染層にも適用し得る。艶消易除染層の表面形状が、上記艶消物品Aの艶消層について説明した表面形状を有することで、表面特性、中でも易除染性、及び艶消効果の視認性及び質感が向上する。
ここで、艶消易除染層の表面形状により得られる効果は、艶消物品Aの艶消層で得られる優れた艶消効果の視認性及び質感を安定的に発現するという効果も挙げられるが、艶消物品Fにおいて重要な効果は易除染性である。
艶消易除染層は既述のように不規則なシワにより構成される凹凸形状を有するものである。そして、不規則なシワは、複数の突起部により形成する複数の凸部と、複数の突起部により囲まれて形成する凹部と、により構成されていることが好ましく、当該突起部は線条の突起部を有していることが好ましい。線条であると、汚染物質をふき取る際に、当該汚染物質が線条のシワに沿って滑らかに移動することで除染しやすくなるため、特に易除染性が向上する。
また、シワは、例えば図1に示されるような線条で滑らかな形状を呈していることから、汚染物質をふき取る際に、当該汚染物質が線条のシワに沿って滑らかに移動することで除染しやすくなるため、易除染性も安定的に発現している。
(樹脂)
艶消物品Eの艶消易除染層の形成に用いられる樹脂は、上記艶消物品Aについて説明した樹脂に関する内容と同じである。
(易除染剤)
艶消物品Eの艶消易除染層は、易除染剤を含むことが好ましい。易除染剤を含まなくても、既述のように、艶消易除染層が有するシワにより優れた易除染性を有するものであるが、易除染剤を用いることで、易除染性が更に向上する。
易除染剤としては、化粧材、化粧シート等の物品に防汚剤、撥液剤等として用いられるもの、例えばフッ素樹脂、シリコーン樹脂及びフッ素-シリコーン共重合樹脂等、またフッ素及びシリコーン非含有の界面活性剤も使用可能である。
中でも、フッ素樹脂が好ましく、加水分解性シリル基を有するフッ素含有ケイ素化合物等が具体的に挙げられる。加水分解性シリル基を有するフッ素含有ケイ素化合物としては、例えば、パーフルオロポリエーテル基、パーフルオロアルキレン基、パーフルオロアルキル基等が、加水分解性シリル基のケイ素原子に、連結基を介して又は直接結合する含フッ素有機基として存在する化合物が挙げられる。なお、パーフルオロポリエーテル基とは、パーフルオロアルキレン基とエーテル性酸素原子とが交互に結合した構造を有する2価の基のことである。
このようなフッ素含有ケイ素化合物としては、例えば、信越化学工業(株)製「KP-801」、「KY-130」、「KY-178」、「X-71-195」、ダイキン工業(株)製「オプツールDSX」、「オプツールDSX-E」、「オプツールUF503」等が商業的に入手可能であり、生産性及び防汚性の観点から、「X-71-195」、「オプツールDSX-E」、「オプツールUF503」が好ましい。
易除染剤の樹脂100質量部に対する含有量は、より効率的に易除染性を向上させる観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上であり、上限として好ましくは25.0質量部以下、より好ましくは15.0質量部以下、更に好ましくは10.0質量部以下である。
(樹脂組成物)
艶消物品Eの艶消易除染層の形成に用いられる樹脂組成物(艶消易除染層形成用の樹脂組成物)は、既述のように易除染剤を含み得ること以外は、上記艶消物品Aについて説明した樹脂組成物に関する内容と同じである。
〔60°グロス値〕
艶消物品Eの60°グロス値は、5.0以下であり、上記艶消物品Aについて説明した60°グロス値に関する内容と同じである。よって、60°グロス値の標準偏差(σ)についても同じである。
〔層構成について〕
艶消物品Eは、上記艶消物品Aと同様に、基材を有することを必須としない。よって、艶消物品Eの一番単純な層構成としては、基材を有しない、艶消易除染層のみの単一層による層構成もとり得る。
また、上記艶消物品Aと同様に、艶消物品Eは、単一層による層構成とする場合、通常は機械的強度、後加工適性、意匠性等の、艶消物品に要求される各種性能を得る選択肢が制約される場合が多い。そのため、艶消物品Eの層構成としては、基材を有する、すなわち基材と艶消層とを有する層構成であることが好ましい。
〔基材〕
艶消物品Eは、上記艶消層に加えて、所望に応じて更に基材を有してもよく、既述のように、各種の制約を回避する観点から基材を有することが好ましい。基材は、艶消層を設ける支持体として機能する。また、艶消物品Eは、通常被着材に貼着して用いることが多いことを考慮すると、基材の形態(乃至は形状)としては、フィルム、シート、板が好ましく、フィルム、シートがより好ましい。
その他、艶消物品Eの基材については、上記艶消物品Aについて説明した基材に関する内容と同じである。
〔その他の層〕
艶消物品Eは、上記の艶消層(艶消易除染層)、基材の他、その他の層として、例えばプライマー層、透明性樹脂層、装飾層、接着層等を必要に応じて有し得る。これらの層を有する艶消物品Eの一実施形態を示す断面図を図3及び図4に示す。図3及び4は、艶消物品Eの一実施形態を示す断面図でもある。艶消物品1(艶消物品E)をその厚さ方向(同図においてはZ方向)に平行な面で切断した断面図である。
図3に示される艶消物品1(艶消物品E)は、基材5及び艶消層(艶消易除染層)4を順に有しており、図4に示される艶消物品1(艶消物品E)は、基材5、装飾層6、接着層7、透明性樹脂層8、プライマー層9及び艶消層(艶消易除染層)4を順に有している。
(プライマー層)
艶消物品Eが有し得るプライマー層は、上記艶消物品Aについて説明したプライマー層に関する内容と同じである。
(透明性樹脂層)
艶消物品Eが有し得る透明性樹脂層は、上記艶消物品Aについて説明した透明性樹脂層に関する内容と同じである。
(装飾層)
艶消物品Eが有し得る装飾層は、上記艶消物品Aについて説明した装飾層に関する内容と同じである。
(接着層)
艶消物品Eが有し得る接着層は、上記艶消物品Aについて説明した接着層に関する内容と同じである。
(艶消物品Eが有する性能)
艶消物品Eは、優れた表面特性、中でも優れた易除染性を有しており、例えば、JIS K6902:2007(熱硬化性樹脂高圧化粧板試験方法)の「15.3 C法」に準拠して、汚染物質としてアセトン(材料番号3)、家庭用アンモニア(材料番号4)、10%くえん酸(材料番号5)、黒油性マーカー(材料番号12)及びクレヨン(材料番号14)を用いて、汚染試験を行い、「15.3.5.2 洗浄手順」に基づく0等級~5等級の基準により洗浄性を評価した場合に、少なくとも3等級以上(3等級~0等級)であるという洗浄性とともに、「15.3.6.2 耐汚染性」に基づく等級5、3及び1の基準により耐汚染性を評価した場合に、少なくとも等級3以上(等級3又は5)という耐汚染性を有するものである。
〔艶消物品Eの製造方法〕
艶消物品Eの製造方法について、艶消易除染層形成用の樹脂組成物に易除染剤が含まれる場合がある点で、上記艶消物品Aとは異なるが、他の点、すなわちシワ形成安定剤の平均粒径、種類、艶消易除染層形成用の樹脂組成物に含まれる樹脂の種類、シワ形成安定剤の含有量、艶消易除染層形成用の樹脂組成物の塗布方法、厚さ、また艶消易除染層形成工程における照射条件等は、上記艶消物品Aの製造方法について説明した内容と同じである。
また、艶消易除染層(艶消層)のみの単一層とする場合、基材及びその他の層を有する場合、の製造方法の工程も、上記艶消物品Aの製造方法について説明した内容と同じである。
〔化粧部材E〕
艶消物品Eの代表的な用途としては、艶消物品Eをそのままで、建築物や各種家具、車両、家電製品等の表面を構成する、いわゆる化粧部材として用いることもできるし、また被着材と積層して、複合して、乃至は組み合わせて化粧部材として用いることも可能である(以下、これらの艶消物品Eを用いた化粧部材を「化粧部材E」と称することがある。)。いずれとするかは、所望に応じて決定すればよい。
化粧部材Eにおける艶消物品Eの形態、被着材、接着剤層、化粧部材Eの製造方法、化粧部材Eの用途等は、上記化粧部材Aにおいて説明した内容と同じである。
[艶消物品F]
本実施形態の艶消物品は、上記艶消物品Aにおいて、艶消層が艶消耐光層であり、艶消耐光層を構成する樹脂組成物が、更にヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を含む、という艶消物品(以下、単に「艶消物品F」とも称する。)であり、具体的には、艶消層を有する艶消物品であり、前記艶消層が、シワ形成安定剤を樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下で含み、かつヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を含む樹脂組成物の硬化物により構成され、前記艶消層の少なくとも一方の面が不規則なシワにより構成される凹凸形状を有し、前記艶消層の60°グロス値が5.0以下であり、前記艶消層が艶消耐光層である、艶消物品である。艶消物品Fは、このような構成を有することにより、耐光性に優れ、かつ艶消効果の視認性及び質感にも優れるものとなる。
〔艶消層(艶消耐光層)〕
艶消物品Fにおける艶消層は、特に耐光性を発現する艶消耐光層であり、シワ形成安定剤を樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下で含み、かつヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を含む樹脂組成物の硬化物により構成される層である。すなわち、本実施形態において艶消層は特に耐光性を発現する艶消耐光層であり、当該艶消易除染層を形成する樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下の含有量で、シワ形成安定剤を含み、かつヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を含む層である。
(シワ形成安定剤)
シワ形成安定剤は、上記艶消物品Aで採用されるものとして説明した、シワ形成安定剤が採用される。シワ形成安定剤を用いることにより、艶消耐光層の表面におけるシワの形成を安定させることで、かかる表面と空気との屈折率差界面での光拡散効果による艶消効果による視認性とともに、質感が安定的に得られる。また後述するように、外装用部材等の屋外の日光、風雨、及び寒熱変化に曝露される環境下で用いられても、従来の艶消剤に比べて、艶の変化が少ないという効果も得られる。
シワ形成安定剤としてシワ形成安定剤1及びシワ形成安定剤2の少なくとも一方を用い得ること、シワ形成安定剤1及びシワ形成安定剤2の平均粒径、シワ形成安定剤の種類、含有量等、またシワ形成安定剤を用いることにより発現する効果、シワ形成安定剤と艶消剤との違いについても、基本的には、上記艶消物品Aについて説明した内容と同じである。
また、艶消物品Fにおいて、その主な用途に関連し、シワ形成安定剤を用いることにより、以下の点で従来の艶消剤に比べて優れた効果が得られる。
艶消物品Fは耐光性に優れる物品であるため、外壁、軒天井、屋根、塀、柵等の外装用部材等の日光、風雨、及び寒熱変化に曝露される環境下で汎用されるものとなる。一般に、艶消剤等の粒子を含む樹脂層を屋外の日光、風雨、及び寒熱変化に曝露させた場合、経時的に表面近傍の粒子が脱落する傾向がある。従って、もっぱら艶消剤の添加によって層表面の艶を低下させる仕様である場合、かかる粒子の脱落によって、屋外曝露経時で艶変化を生じることになる。かかる機構による屋外曝露時の艶変化は、艶消剤の含有量の多い低艶仕様であるほど顕著となってくる。特に、60°グロス値G60が10以下の表面を艶消剤添加により実現する場合、樹脂100質量部に対して、(樹脂と艶消剤との種類と分散形態いかんにもよるが、)大体50質量部程度以上の添加が必要になり、艶消剤の脱落による屋外曝露時の艶変化は大きなものとなる。
艶消物品Fにおける艶消耐光層においては、後述の実施例及び比較例でも実証されるように、60°グロス値G60が5.0以下の表面を艶消剤添加により実現する場合でも、樹脂100質量部に対するシワ形成安定剤の含有量は10質量部程度以下ですむこととなる。例えば、後述する実施例においては、シワ形成安定剤の総含有量が最大6質量部で60°グロス値G60が5.0以下、さらには2.0以下という低艶を実現している。
従って、艶消物品Fにおいては、後述の実施例及び比較例でも実証されるように、同じ低艶表面を実現する場合、特に60°グロス値G60が10以下を実現する場合において、従来の艶消化粧材料、化粧シート等の艶消物品に比べて、粒子含有量が大幅に低減されるため、屋外曝露経時によっても艶の変化は少ないものとなる。
(艶消耐光層の表面形状)
艶消物品Fの艶消耐光層の表面形状は、少なくとも一方の面が不規則なシワにより構成される凹凸を有することを要し、上記艶消物品Aの艶消層について説明した内容と同じである。また、艶消物品Aの艶消層の表面形状の説明に用いた図1及び2は、艶消物品Fの艶消耐光層にも適用し得る。艶消耐光層の表面形状が、上記艶消物品Aの艶消層について説明した表面形状を有することで、耐光性、艶消効果の視認性及び質感が向上する。
(樹脂)
艶消物品Fの艶消耐光層の形成に用いられる樹脂は、上記艶消物品Aについて説明した樹脂に関する内容と同じである。
(紫外線吸収剤)
艶消物品Fの艶消耐光層は、紫外線吸収剤としてヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を含む。当該紫外線吸収剤を含まないと、優れた耐光性が得られない。ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、好ましくは以下一般式(1)で示されるものが挙げられる。
Figure 2022008024000001
一般式(1)中、R11は単結合又は2価の有機基であり、R12は炭化水素基又は-C(=O)OR15で示されるエステル基、-O-C(=O)R16で示されるアシルオキシ基又は-OR17で示されるアルコキシ基であり、R13、R14、R15、R16及びR17は各々独立して1価の有機基であり、n11及びn12は各々独立して0~5の整数である。
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤は、一般式(1)で示されるように、大きい分子構造を有するものであるため、立体障害の観点から、艶消耐光層よりブリードアウトして抜け難いという分子構造上の特性を有している。そのため、艶消物品Fは、優れた耐光性が長期にわたって持続し得るものとなる。
11の2価の有機基としては、アルキレン基、アルケニレン基等の脂肪族炭化水素基が好ましく挙げられ、耐候性の観点から、アルキレン基がより好ましい。これらの脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは1以上、上限として好ましくは20以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは8以下、特に好ましくは4以下である。アルキレン基、アルケニレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状、分岐状が好ましい。
12の1価の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアリールアルキル基等が好ましく挙げられ、アルキル基がより好ましい。アルキル基の炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは6以上であり、上限として好ましくは20以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは12以下である。アルキル基、アルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状、分岐状が好ましく、分岐状がより好ましい。
13及びR14の1価の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアリールアルキル基等が挙げられ、アリール基、アリールアルキル基等の芳香族炭化水素基が好ましく、アリール基が好ましい。
13及びR14のアリール基の炭素数としては、好ましくは6以上、上限として好ましくは20以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である。また、アリールアルキル基の炭素数としては、好ましくは7以上、上限として好ましくは20以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である。
15、R16及びR17の1価の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアリールアルキル基等が挙げられ、アルキル基、アルケニル基等の脂肪族炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。R15、R16及びR17がアルキル基、アルケニル基の場合の炭素数としては、好ましくは2以上、より好ましくは4以上であり、上限として好ましくは20以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは12以下である。
上記のR11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17の基は、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、炭素数1以上4以下のアルキル基等の置換基を有していてもよい。
また、n11及びn12は各々独立して1~5の整数であり、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1~2の整数である。n11及びn12が2以上の整数である場合、複数のR13及びR14は同じでもよく、異なっていてもよく、入手容易性の観点から、同じであることが好ましい。
上記一般式(1)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤の中でも、特に以下化学式(2)~(4)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。化学式(2)で示される紫外線吸収剤は、上記一般式(1)において、R11がエチレン基、R12が-O-C(=O)R16で示されるアシルオキシ基(R16が3-ヘプチル基)、R13及びR14が水素原子のものであり、例えば市販品(「アデカスタブLA-46(品番)」、融点:106℃、株式会社ADEKA製)として入手可能である。
Figure 2022008024000002
化学式(3)で示される紫外線吸収剤は、上記一般式(1)において、R11が単結合、R12がイソオクチル基、R13及びR14がフェニル基であり、n11及びn12が1のものであり、例えば市販品(「Tinuvin1600(品番)」、融点:120℃、BASF社製)として入手可能である。
Figure 2022008024000003
化学式(4)で示される紫外線吸収剤は、上記一般式(1)において、R11が単結合、R12がヘキシル基、R13及びR14が水素原子のものであり、例えば市販品(「Tinuvin1577(品番)」、融点:148℃、BASF社製)として入手可能である。
Figure 2022008024000004
艶消物品Fにおいて、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤の含有量は、艶消耐光層形成用の樹脂組成物中の樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは2.0質量部以上、より更に好ましくは3.0質量部以上であり、ブリードアウト抑制の観点から上限として好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは8.0質量部以下、更に好ましくは7.0質量部以下、より更に好ましくは6.0質量部以下である。このように、特定の紫外線吸収剤を採用することにより、紫外線吸収剤のブリードアウトによる喪失を抑制できるため、通常配合される量よりも少量であっても、優れた耐光性が得られる。また、艶消耐光層形成用の樹脂組成物に用いられる樹脂として電離放射線硬化性樹脂を採用することで、更にブリードアウトを抑制できるため、より少量であっても、優れた耐光性が得られることとなる。
(樹脂組成物)
艶消物品Fの艶消耐光層の形成に用いられる樹脂組成物(艶消耐光層形成用の樹脂組成物)は、既述のようにヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を含むこと以外は、上記艶消物品Aについて説明した樹脂組成物に関する内容と同じである。
〔60°グロス値〕
艶消物品Fの60°グロス値は、5.0以下であり、上記艶消物品Aについて説明した60°グロス値に関する内容と同じである。よって、60°グロス値の標準偏差(σ)についても同じである。
〔層構成について〕
艶消物品Fは、上記艶消物品Aと同様に、基材を有することを必須としない。よって、艶消物品Eの一番単純な層構成としては、基材を有しない、艶消耐光層のみの単一層による層構成もとり得る。
また、上記艶消物品Aと同様に、艶消物品Fは、単一層による層構成とする場合、通常は機械的強度、後加工適性、意匠性等の、艶消物品に要求される各種性能を得る選択肢が制約される場合が多い。そのため、艶消物品Fの層構成としては、基材を有する、すなわち基材と艶消層とを有する層構成であることが好ましい。
〔基材〕
艶消物品Fは、上記艶消層に加えて、所望に応じて更に基材を有してもよく、既述のように、各種の制約を回避する観点から基材を有することが好ましい。基材は、艶消層を設ける支持体として機能する。また、艶消物品Fは、通常被着材に貼着して用いることが多いことを考慮すると、基材の形態(乃至は形状)としては、フィルム、シート、板が好ましく、フィルム、シートがより好ましい。
艶消物品Fの基材について、上記艶消物品Aについて説明した基材に関する内容と同じである。
〔その他の層〕
艶消物品Fは、上記の艶消層(艶消耐光層)、基材の他、その他の層として、例えばプライマー層、透明性樹脂層、装飾層、接着層等を必要に応じて有し得る。これらの層を有する艶消物品Fの一実施形態を示す断面図を図3及び図4に示す。図3及び4は、艶消物品Fの一実施形態を示す断面図でもある。艶消物品1(艶消物品F)をその厚さ方向(同図においてはZ方向)に平行な面で切断した断面図である。
図3に示される艶消物品1(艶消物品F)は、基材5及び艶消層(艶消耐光層)4を順に有しており、図4に示される艶消物品1(艶消物品F)は、基材5、装飾層6、接着層7、透明性樹脂層8、プライマー層9及び艶消層(艶消耐光層)4を順に有している。
(プライマー層)
艶消物品Fが有し得るプライマー層は、上記艶消物品Aについて説明したプライマー層に関する内容と同じである。
(透明性樹脂層)
艶消物品Fが有し得る透明性樹脂層は、上記艶消物品Aについて説明した透明性樹脂層に関する内容と同じである。
(装飾層)
艶消物品Fが有し得る装飾層は、上記艶消物品Aについて説明した装飾層に関する内容と同じである。
(接着層)
艶消物品Fが有し得る接着層は、上記艶消物品Aについて説明した接着層に関する内容と同じである。
(艶消物品Fが有する性能)
艶消物品Fは、優れた表面特性、中でも優れた耐光性を有しており、例えば、耐候性試験装置「S-UV(雨あり)」を用いて200時間の耐候性試験を行い、当該耐候性試験を行う前の前記艶消耐光層側の60°グロス値をGとし、当該耐候性試験を行った後の前記艶消耐光層側の60°グロス値をGとしたときの、グロス値の変化率(|(G-G)|/G×100)が、20%以下であるという、優れた耐光性を有するものである。
グロス値の変化率は、耐候性試験の前後におけるグロス値の変化の幅をみることで、艶消物品Fの耐光性の指標とするものである。グロス値の変化率が大きいほど、耐候性試験後のグロス値が高くなる、すなわち艶消物品Fの表面が劣化により艶が高くなるため、耐光性に劣ることを示す。
本実施形態の艶消物品Fは、優れた耐光性を有していることから、グロス値の変化率は、既述のように20%以下となり、更には15%以下、10%以下、8%以下となり得る。
〔艶消物品Fの製造方法〕
艶消物品Fの製造方法について、艶消耐光層形成用の樹脂組成物にヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が含まれる点で、上記艶消物品Aとは異なるが、他の点、すなわちシワ形成安定剤の平均粒径、種類、艶消耐光層形成用の樹脂組成物に含まれる樹脂の種類、シワ形成安定剤の含有量、艶消耐光層形成用の樹脂組成物の塗布方法、厚さ、また艶消耐光層形成工程における照射条件等は、上記艶消物品Aの製造方法について説明した内容と同じである。
また、艶消耐光層(艶消層)のみの単一層とする場合、基材及びその他の層を有する場合、の製造方法の工程も、上記艶消物品Aの製造方法について説明した内容と同じである。
〔化粧部材F〕
艶消物品Fの代表的な用途としては、艶消物品Fをそのままで、建築物や各種家具、車両、家電製品等の表面を構成する、いわゆる化粧部材として用いることもできるし、また被着材と積層して、複合して、乃至は組み合わせて化粧部材として用いることも可能である(以下、これらの艶消物品Fを用いた化粧部材を「化粧部材F」と称することがある。)。いずれとするかは、所望に応じて決定すればよい。
化粧部材Fにおける艶消物品Fの形態、被着材、接着剤層、化粧部材Fの製造方法、化粧部材Fの用途等は、上記化粧部材Aにおいて説明した内容と同じである。
[艶消物品G]
本実施形態の艶消物品は、上記艶消物品Aにおいて、艶消層が艶消筆記層である、という艶消物品(以下、単に「艶消物品G」とも称する。)であり、具体的には、艶消層を有する艶消物品であり、前記艶消層が、シワ形成安定剤を樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下で含む樹脂組成物の硬化物により構成され、前記艶消層の少なくとも一方の面が不規則なシワにより構成される凹凸形状を有し、前記艶消層の60°グロス値が5.0以下であり、前記艶消層が艶消筆記層である、艶消物品である。艶消物品Gは、このような構成を有することにより、艶消効果による視認性と、マーカー消去性とに優れるものとなる。
〔艶消層(艶消筆記層)〕
艶消物品Gにおける艶消層は、特にマーカー消去性を発現する艶消筆記層であり、シワ形成安定剤を樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下で含む樹脂組成物の硬化物により構成される層である。すなわち、本実施形態において艶消層は特にマーカー消去性を発現する艶消筆記層であり、当該艶消筆記層を形成する樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下の含有量で、シワ形成安定剤を含む層である。
(シワ形成安定剤)
シワ形成安定剤は、上記艶消物品Aで採用されるものとして説明した、シワ形成安定剤が採用される。シワ形成安定剤を用いることにより、艶消筆記層の表面におけるシワの形成を安定させることで、かかる表面と空気との屈折率差界面での光拡散効果による艶消効果による視認性とともに、マーカー消去性が安定的に得られる。
シワ形成安定剤としてシワ形成安定剤1及びシワ形成安定剤2の少なくとも一方を用い得ること、シワ形成安定剤1及びシワ形成安定剤2の平均粒径、シワ形成安定剤の種類、含有量等、またシワ形成安定剤を用いることにより発現する効果、シワ形成安定剤と艶消剤との違いについても、基本的には、上記艶消物品Aについて説明した内容と同じである。
(艶消筆記層の表面形状)
艶消物品Gの艶消筆記層の表面形状は、少なくとも一方の面が不規則なシワにより構成される凹凸を有することを要し、上記艶消物品Aの艶消層について説明した内容と同じである。また、艶消物品Aの艶消層の表面形状の説明に用いた図1及び2は、艶消物品Gの艶消筆記層にも適用し得る。艶消筆記層の表面形状が、上記艶消物品Aの艶消層について説明した表面形状を有することで、艶消効果による視認性及びマーカー消去性が向上する。
ここで、艶消筆記層の表面形状により得られる効果は、艶消物品Aの艶消層で得られる優れた艶消効果の視認性及び質感を安定的に発現するという効果も挙げられるが、艶消物品Gにおいて重要な効果はマーカー消去性である。
艶消筆記層は既述のように不規則なシワにより構成される凹凸形状を有するものである。そして、不規則なシワは、複数の突起部により形成する複数の凸部と、複数の突起部により囲まれて形成する凹部と、により構成されていることが好ましく、当該突起部は線条の突起部を有していることが好ましい。線条であると、マーカーをふき取る際に、当該マーカーが線条のシワに沿って滑らかに移動することで消去しやすくなるため、特にマーカー消去性が向上する。
また、シワは、例えば図1に示されるような線条で滑らかな形状を呈していることから、マーカーをふき取る際に、当該マーカーが線条のシワに沿って滑らかに移動することで消去しやすくなるため、マーカー消去性も安定的に発現している。
(樹脂)
艶消物品Gの艶消筆記層の形成に用いられる樹脂は、上記艶消物品Aについて説明した樹脂に関する内容と同じである。
(樹脂組成物)
艶消物品Gの艶消筆記層の形成に用いられる樹脂組成物(艶消筆記層形成用の樹脂組成物)は、上記艶消物品Aについて説明した樹脂組成物に関する内容と同じである。
〔60°グロス値〕
艶消物品Gの60°グロス値は、5.0以下であり、上記艶消物品Aについて説明した60°グロス値に関する内容と同じである。よって、60°グロス値の標準偏差(σ)についても同じである。
〔層構成について〕
艶消物品Gは、上記艶消物品Aと同様に、基材を有することを必須としない。よって、艶消物品Gの一番単純な層構成としては、基材を有しない、艶消易除染層のみの単一層による層構成もとり得る。
また、上記艶消物品Aと同様に、艶消物品Gは、単一層による層構成とする場合、通常は機械的強度、後加工適性、意匠性等の、艶消物品に要求される各種性能を得る選択肢が制約される場合が多い。そのため、艶消物品Gの層構成としては、基材を有する、すなわち基材と艶消層とを有する層構成であることが好ましい。
〔基材〕
艶消物品Gは、上記艶消層に加えて、所望に応じて更に基材を有してもよく、既述のように、各種の制約を回避する観点から基材を有することが好ましい。基材は、艶消層を設ける支持体として機能する。また、艶消物品Gは、通常被着材に貼着して用いることが多いことを考慮すると、基材の形態(乃至は形状)としては、フィルム、シート、板が好ましく、フィルム、シートがより好ましい。
その他、艶消物品Gの基材について、基材を構成する材料等は、上記艶消物品Aについて説明した基材に関する内容と同じである。
また、艶消物品Gで用いられる基材は、その形態シートである基材(基材シート)と着色層とを有するものであることが好ましい。この場合、上記着色剤を含むインキを用いて、所望の色調となるように着色層を設ければよい。
着色層に用いられるインキとしては、バインダー樹脂に上記の着色剤、また体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を適宜混合したものが使用される。
基材シートが有する着色層の形成に用いられるインキのバインダー樹脂としては特に制限はなく、例えば、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等の樹脂が挙げられる。また、1液硬化型樹脂、イソシアネート化合物等の硬化剤を伴う2液硬化型樹脂など、種々のタイプの樹脂を用いることができる。
着色剤の含有量は、着色層を構成する樹脂100質量部に対して、5質量部以上90質量部以下が好ましく、15質量部以上80質量部以下がより好ましく、30質量部以上70質量部以下がさらに好ましい。
着色層は、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤等の添加剤を含有してもよい。
着色層の厚さは、所望の色調等に応じて適宜選択すればよいが、被着材の地色を隠蔽し、かつ意匠性を向上させる観点から、0.5μm以上20μm以下が好ましく、1μm以上10μm以下がより好ましく、2μm以上5μm以下が更に好ましい。
また、上記着色層の形成以外の方法として、合成樹脂の着色の場合は、樹脂中への着色剤の添加(混練、練り込み)、樹脂と着色剤とを含む塗料の塗膜の塗布による形成等の、いずれの手段を採用することができる。紙、不織布、又は織布の着色の場合は、パルプや繊維材料との混抄、あるいは塗膜形成等のいずれかの手段、又はこれらの併用により行うことができる。
木材の着色の場合は、染料による染色、あるいは塗膜形成のいずれかの手段、又はこれらの併用により行うことができる。金属の着色の場合、塗膜形成の他、陽極酸化法を用いて表面に金属酸化物皮膜を形成する電解着色法等を採用することができる。また、非金属無機材料の場合、塗膜形成、あるいは基材中への添加のいずれかの手段、又はこれらの併用により行うことができる。
基材シートが有する着色層は、基本的には全面を被覆するいわゆるベタ着色層からなる層であるが、所望に応じて種々の模様、例えばドットパターン等の模様を有する絵柄層を有してもよい。
〔その他の層〕
艶消物品Gは、上記の艶消層(艶消筆記層)、基材の他、その他の層として、例えばプライマー層、透明性樹脂層、装飾層、接着層等を必要に応じて有し得る。これらの層を有する艶消物品Gの一実施形態を示す断面図を図34及び図35に示す。艶消物品1(艶消物品G)をその厚さ方向(同図においてはZ方向)に平行な面で切断した断面図である。
図34に示される艶消物品1(艶消物品G)は、基材5(基材シート51と着色層52との二層積層構成)及び艶消層(艶消筆記層)4を順に有しており、図35に示され艶消物品1(艶消物品G)は、着色してなる基材シート5(基材シート51と着色層52との二層積層構成)、接着層6、透明性樹脂層7、プライマー層8及び艶消層(艶消筆記層)4を順に有している。
(プライマー層)
艶消物品Gが有し得るプライマー層は、上記艶消物品Aについて説明したプライマー層に関する内容と同じである。
(透明性樹脂層)
艶消物品Gが有し得る透明性樹脂層は、上記艶消物品Aについて説明した透明性樹脂層に関する内容と同じである。
(装飾層)
艶消物品Gが有し得る装飾層は、上記艶消物品Aについて説明した装飾層に関する内容と同じである。
(接着層)
艶消物品Gが有し得る接着層は、上記艶消物品Aについて説明した接着層に関する内容と同じである。
(艶消物品Gが有する性能)
艶消物品Gは、優れたマーカー消去性を有しており、例えば、JIS S6052:2014で規定される「ペン先形状が丸芯で、かつ、中字1)の黒のマーカー」(注1)中字とは筆記線の太さが、約1.5mm~2.5mmのもの)を用いて、以下のa)~c)の方法に従い行ったマーカーの落ちやすさの試験を行い、当該試験前と、試験後の色差(ΔEab)が3.0以下であるという、優れたマーカー消去性を有するものである。
(マーカーの落ちやすさの試験)
a)当該マーカーでシートの艶消筆記層を2cm×4cmの範囲で塗りつぶす。
b)塗りつぶしてから1分経過後、未使用のメラミンフォーム製白板用イレーザー(2cm×2cm、ホワイトボード用激落ちイレーサー(オート株式会社))を用いて消去する。
c)上記a)及びb)を50回繰り返す。
色差(ΔEab)は、試験前の明度及び色度の測定値をL 、a 及びb とし、上記試験後の明度及び色度の測定値をL 、a 及びb としたときに、以下の数式により得られる算出値である。
ΔEab=〔(L -L +(a -a +(b -a 1/2
また、L、a、bは、JIS Z8781-5:2013の色の表示方法に規定されたものであり、市販の分光測色計(例えば、分光色彩計・色差計「SE6000」(型番)、日本電色工業株式会社製)等を用いて測定することができる。
〔艶消物品Gの製造方法〕
艶消物品Gの製造方法について、シワ形成安定剤の平均粒径、種類、艶消筆記層形成用の樹脂組成物に含まれる樹脂の種類、シワ形成安定剤の含有量、艶消筆記層形成用の樹脂組成物の塗布方法、厚さ、また艶消筆記層形成工程における照射条件等は、上記艶消物品Aの製造方法について説明した内容と同じである。
また、艶消筆記層(艶消層)のみの単一層とする場合、基材及びその他の層を有する場合、の製造方法の工程も、上記艶消物品Aの製造方法について説明した内容と同じである。
〔化粧部材G〕
艶消物品Gの代表的な用途としては、艶消物品Gを単体で、又は被着材と積層して、複合して、乃至は組み合わせた形態で、白板、黒板等の筆記ボードが挙げられる(以下、これらの艶消物品Gを用いた化粧部材を「化粧部材G」と称することがある。)。いずれの形態とするかは、所望に応じて決定すればよい。
被着材を有する場合、化粧部材G(筆記ボード)は、当該被着材と上記の本実施形態の艶消物品Gとを有するものであり、具体的には、被着材の筆記性を要する面と、艶消物品Gの艶消筆記層のシワが形成され視認性及びマーカー消去性を発現する一方の面とは反対側の面と、を対向させて積層したものである。
被着材としては、上記化粧部材Aにおいて採用され得る被着材として説明したものから適宜選択すればよいが、筆記ボードという用途を考慮すると、各種素材の平板、シート(又はフィルム)等が好ましい。被着材の厚さは、用途及び材料に応じて適宜選択すればよく、0.1mm以上100mm以下が好ましく、0.3mm以上5mmがより好ましく、0.5mm以上3mm以下が更に好ましい。
また、本実施形態の艶消物品Gは被着材への積層のしやすさ等を考慮すると、既述のようにシート形態を有していることが好ましい。
その他、化粧部材Gにおける艶消物品Gの形態、被着材、接着剤層、化粧部材Gの製造方法等は、上記化粧部材Aにおいて説明した内容と同じである。
以上のようにして得られる化粧部材G(筆記ボード)は、任意切断し、表面や木口部にルーター、カッター等の切削加工機を用いて溝加工、面取加工、また曲げ加工等の任意加飾を施すことができる。
[艶消物品H]
本実施形態の艶消物品は、上記艶消物品Aにおいて、艶消層が艶消賦型層である、という艶消物品(以下、単に「艶消物品H」とも称する。)であり、具体的には、艶消層を有する艶消物品であり、前記艶消層が、シワ形成安定剤を樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下で含む樹脂組成物の硬化物により構成され、前記艶消層の少なくとも一方の面が不規則なシワにより構成される凹凸形状を有し、前記艶消層の60°グロス値が5.0以下であり、前記艶消層が艶消賦型層である、艶消物品である。艶消物品Hは、このような構成を有することにより、顧客の多様化する要望に容易に対応でき、優れた艶消効果の視認性及び質感を付与するもの、すなわち賦型シートとして用いられる。
〔艶消層(艶消賦型層)〕
艶消物品Hにおける艶消層は、顧客の多様化する要望に容易に対応でき、優れた艶消効果の視認性及び質感を付与する艶消賦型層であり、シワ形成安定剤を樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下で含む樹脂組成物の硬化物により構成される層である。すなわち、本実施形態において艶消層は顧客の多様化する要望に容易に対応でき、優れた艶消効果の視認性及び質感を付与する艶消賦型層であり、当該艶消賦型層を形成する樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下の含有量で、シワ形成安定剤を含む層である。
(シワ形成安定剤)
シワ形成安定剤は、上記艶消物品Aで採用されるものとして説明した、シワ形成安定剤が採用される。シワ形成安定剤を用いることにより、艶消筆記層の表面におけるシワの形成を安定させることで、かかる表面と空気との屈折率差界面での光拡散効果による艶消効果による視認性とともに、質感を付与し得るものとなる。
その他、シワ形成安定剤としてシワ形成安定剤1及びシワ形成安定剤2の少なくとも一方を用い得ること、シワ形成安定剤1及びシワ形成安定剤2の平均粒径、シワ形成安定剤の種類、含有量等、またシワ形成安定剤を用いることにより発現する効果、シワ形成安定剤と艶消剤との違いについても、基本的には、上記艶消物品Aについて説明した内容と同じである。
(艶消賦型層の表面形状)
艶消物品Hの艶消賦型層の表面形状は、少なくとも一方の面が不規則なシワにより構成される凹凸を有することを要し、上記艶消物品Aの艶消層について説明した内容と同じである。また、艶消物品Aの艶消層の表面形状の説明に用いた図1及び2は、艶消物品Hの艶消賦型層にも適用し得る。艶消賦型層の表面形状が、上記艶消物品Aの艶消層について説明した表面形状を有することで、顧客の多様化する要望に容易に対応でき、優れた艶消効果の視認性及び質感を付与することができる。
(樹脂)
艶消物品Hの艶消賦型層の形成に用いられる樹脂は、上記艶消物品Aについて説明した樹脂に関する内容と同じである。
(樹脂組成物)
艶消物品Hの艶消賦型層の形成に用いられる樹脂組成物(艶消賦型層形成用の樹脂組成物)は、上記艶消物品Aについて説明した樹脂組成物に関する内容と同じである。
また、艶消物品Hについては、艶消物品Hを用いて賦型した後、当該艶消物品Hを剥離する必要があるため、艶消賦型層は剥離性を有することが好ましい。このような観点から、艶消賦型層には、離型剤が含まれることが好ましい、すなわち艶消賦型層形成用の樹脂組成物には、離型剤が含まれていることが好ましい。離型剤としては、フッ素系離型剤、シリコーン系離型剤等が挙げられ、より安価かつ高い離型性を得る観点から、シリコーン系離型剤が好ましい。
シリコーン系離型剤としては、ポリシロキサン構造を基本構造とするものが挙げられ、中でもその側鎖及び末端の少なくともいずれかに有機基が導入された変性シリコーンオイルが好ましく、両末端に有機基が導入された変性シリコーンオイルがより好ましい。有機基としては、より質感の高い意匠性を得る観点から、(メタ)アクリル基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、カルビノール基、フェノール基、カルボキシル基等の反応性官能基、ポリエーテル基、アラルキル基、フロロアルキル基、アルキル基、脂肪酸アミド基、フェニル基等の非反応性基官能基等が好ましく挙げられる。中でも反応性官能基が好ましく、特に(メタ)アクリル基が好ましい、すなわち特に(メタ)アクリル変性シリコーンオイルが好ましい。また、これらの有機基は窒素原子、硫黄原子、水酸基、アルキル基等の置換基を有していてもよい。
離型剤の含有量は、艶消賦型層を形成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.5~3質量部、更に好ましくは1~2質量部である。離型剤の含有量が上記範囲内であると、効率的に離型剤の添加効果が得られる。
〔60°グロス値〕
艶消物品Hの60°グロス値は、5.0以下であり、上記艶消物品Aについて説明した60°グロス値に関する内容と同じである。よって、60°グロス値の標準偏差(σ)についても同じである。艶消物品Hは主に賦型シートとして用いられるものであるから、艶消物品Hの60°グロス値は、艶消物品Hが付与し得る60°グロス値(賦型した対象物の60°グロス値)であることも意味する。
本実施形態の艶消賦型シートが、シワの形成の安定により安定的に艶消効果及び質感を有していれば、これを用いて賦型した化粧材も同様に、安定的に艶消効果の視認性及び質感を有する高級感のある化粧材となり得る。また、賦型シートが有する60°グロス値とは、これを用いて得られる化粧材が有する60°グロス値とは、両者の色調が同様のものであれば、多少の相違は発生するが、基本的には同じ程度になる。
〔層構成について〕
艶消物品Hは、上記艶消物品Aと同様に、基材を有することを必須としない。よって、艶消物品Hの一番単純な層構成としては、基材を有しない、艶消賦型層のみの単一層による層構成もとり得る。
また、上記艶消物品Aと同様に、艶消物品Hは、単一層による層構成とする場合、通常は機械的強度、後加工適性、意匠性等の、艶消物品に要求される各種性能を得る選択肢が制約される場合が多い。そのため、艶消物品Hの層構成としては、基材を有する、すなわち基材と艶消層とを有する層構成であることが好ましい。
〔基材〕
艶消物品Hは、上記艶消層に加えて、所望に応じて更に基材を有してもよく、既述のように、各種の制約を回避する観点から基材を有することが好ましい。基材は、艶消層を設ける支持体として機能する。また、艶消物品Hは、通常被着材に貼着して用いることが多いことを考慮すると、基材の形態(乃至は形状)としては、フィルム、シート、板が好ましく、フィルム、シートがより好ましい。
その他、艶消物品Hの基材について、基材を構成する材料等は、上記艶消物品Aについて説明した基材に関する内容と同じである。
〔その他の層〕
艶消物品Hは、上記の艶消層(艶消賦型層)、基材の他、その他の層として、例えばプライマー層、樹脂層、接着層等を必要に応じて有し得る。これらの層を有する艶消物品Hの一実施形態を示す断面図を図41及び図42に示す。艶消物品1(艶消物品H)をその厚さ方向(同図においてはZ方向)に平行な面で切断した断面図である。
図41に示される艶消物品1(艶消物品H)は、基材5及び艶消賦型層4を順に有しており、図42に示される艶消物品1(艶消物品H)は、基材5、接着層6、樹脂層7、プライマー層8及び艶消賦型層4を順に有している。なお、艶消物品Hは既述ように賦型シートとして用いられるものであり、他の艶消物品とは異なり、それ自体を化粧部材として用いることはないため、装飾層は有しなくてもよい。
(プライマー層)
艶消物品Hが有し得るプライマー層は、上記艶消物品Aについて説明したプライマー層に関する内容と同じである。
(樹脂層)
艶消物品Hは、賦型シートとして用いられるため、その強度を高めるため樹脂層を有してもよい。艶消物品Hを賦型シートとして繰り返し使用する場合には、耐久性が求められるため、樹脂層を有することは有効である。
樹脂層は、当該基材シートと艶消賦型層との間に設ければよい。
その他の例えば樹脂の種類等については、上記艶消物品Aについて説明した透明性樹脂層に関する内容と同じである。
(接着層)
艶消物品Hが有し得る接着層は、上記艶消物品Aについて説明した接着層に関する内容と同じである。
〔艶消物品Hの製造方法〕
艶消物品Hの製造方法について、シワ形成安定剤の平均粒径、種類、艶消賦型層形成用の樹脂組成物に含まれる樹脂の種類、シワ形成安定剤の含有量、艶消賦型層形成用の樹脂組成物の塗布方法、厚さ、また艶消賦型層形成工程における照射条件等は、上記艶消物品Aの製造方法について説明した内容と同じである。
また、艶消賦型層(艶消層)のみの単一層とする場合、基材及びその他の層を有する場合、の製造方法の工程も、上記艶消物品Aの製造方法について説明した内容と同じである。
〔艶消化粧材H〕
艶消物品Hは既述のように賦型シートとして用いられるものであり、他の艶消物品と異なり、それ自体を化粧部材として用いることはない。艶消物品Hを用いて賦型したものを、艶消化粧材Hと称し、以下その製造方法について説明する。
(艶消化粧材Hの製造方法)
艶消化粧材Hの製造方法は、既述の艶消物品Hを賦型シートとして用いて賦型することを特徴とするものである。艶消物品Hは、艶消化粧材の製造方法において、賦型シートとして好適に用いられる。艶消物品Hは、シワの形成の安定により安定的に艶消効果の視認性及び質感を有することから、これを用いて賦型して得られる艶消化粧材Hは、艶消効果の視認性及び質感のある高級感を有するものとなる。
艶消化粧材Hの製造方法における好ましい態様の一つとしては、艶消物品Hをローラーに配置したエンボスローラーを用いて賦型する態様が挙げられる。これにより賦型対象部材に、艶消物品Hが有するシワを賦型し、当該シワによる安定的な艶消効果の視認性及び質感のある高級感を付与することが可能となる。
この場合、艶消物品Hは、エンボス版の代替品として機能するため、賦型対象部材としては、エンボス版を用いて表面に凹凸形状を付与するものであれば、特に制限なく使用可能である。
また、艶消化粧材Hの製造方法における他の好ましい態様の一つとしては、樹脂組成物を含浸した基材と、艶消物品Hとを、当該艶消物品Hの艶消賦型層と、基材とが対向するように配置し、加熱加圧成形して樹脂組成物を硬化させた後、当該艶消物品Hを剥離することで賦型する態様が挙げられる。本態様は、主に主に箪笥、棚、机等の一般家具の表面化粧板、扉(ドア)等の建具、各種カウンター等に用いられる、メラミン樹脂化粧板、ジアリルフタレート(DAP)樹脂化粧板、ポリエステル化粧板、グアナミン樹脂化粧板、フェノール樹脂化粧板等の熱硬化性樹脂化粧板の製造方法に好適に採用される方法である。
樹脂組成物を含浸した基材としては、例えば熱硬化性樹脂を含浸させた繊維基材又は紙基材を採用することができる。
樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂としては、常温又は加熱することにより硬化するものであれば特に制限なく使用することができ、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、メラミン-尿素樹脂、グアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が好ましく挙げられ、メラミン樹脂、尿素樹脂、メラミン-尿素樹脂、グアナミン樹脂、スルホンアミド樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられ、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、グアナミン樹脂、フェノール樹脂等は中でも汎用される樹脂である。
上記の樹脂組成物を含浸した基材に加えて、補強層として、熱硬化性樹脂を含浸させた繊維基材又は紙基材を用いてもよく、この場合の熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂が好ましい、すなわちメラミン樹脂化粧板等のコア紙として汎用される、フェノール樹脂含浸紙が好ましい。より具体的には、例えば坪量150~250g/mのクラフト紙に、フェノール樹脂を含浸させて、100~140℃程度で乾燥させることにより得られるもの等が挙げられる。また補強層として用いる熱硬化性樹脂を含浸させた繊維基材又は紙基材は、一枚でも、複数枚を用いてもよい。
加熱加圧成形の条件としては、使用する熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜調整すればよく、特に制限はないが、通常100℃以上200℃以下、好ましくは120℃以上160℃以下の温度条件で、圧力は0.1MPa以上、好ましくは0.49MPa以上であり、上限としては好ましくは1.47MPa以下程度であり、時間は10秒から120分間である。
その他、樹脂化粧板を形成する各構成は、従来の樹脂化粧板で採用される構成に従えばよく、特に制限はない。
以上のようにして得られる艶消化粧材Hは、任意切断し、表面や木口部にルーター、カッター等の切削加工機を用いて溝加工、面取加工等の任意加飾を施すことができる。そして種々の用途、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装用部材、外壁、軒天井、屋根、塀、柵等の外装用部材、窓枠、扉、扉枠、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材の他、箪笥、棚、机等の一般家具、食卓、流し台等の厨房家具、又は家電、OA機器等のキャビネット等の表面化粧板、車両の内装、外装用部材、更に包装材料、ディスプレイ用防眩フィルム等に用いることができる。すなわち、本実施形態の艶消物品Hは、これらの各種部材に凹凸形状を賦型するための賦型シートとして好適に用いられる。
また、艶消化粧材Hのうち、樹脂化粧板については、主に箪笥、棚、机等の一般家具の表面化粧板、扉(ドア)等の建具、各種カウンター等に好適に用いられる。
[艶消物品の製造方法I]
本実施形態の艶消物品の製造方法は、
シワ形成安定剤を、樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下で含み、かつ光重合開始剤を含む樹脂組成物を、以下(1)及び(2)の照射処理を順に行い、前記樹脂組成物を硬化させて艶消層を形成する工程を含む、
前記艶消層の少なくとも一方の面が不規則なシワにより構成される凹凸形状を有し、
前記艶消層の60°グロス値が5.0以下である艶消物品を製造する、
ことを特徴とするものである(以下、単に「製造方法I」と称することがある。)。
(1)100nm以上200nm未満の波長光の照射処理
(2)電子線及び200nm以上400nm以下の波長光の少なくとも一方での照射処理
このような工程を含む製造方法により、優れた表面特性とともに、優れた艶消効果の視認性及び質感を有する艶消物品を容易に製造することが可能となる。
製造方法Iは、上記艶消物品Aの製造方法として説明した製造方法に比べて、上記(2)の照射処理を要する点で異なるが、その他の(1)の照射処理、シワ形成安定剤、艶消層及びその表面形状、艶消層を形成する樹脂及び樹脂組成物、得られる艶消物品の60°グロス値、得られる艶消物品を構成する各層等については、基本的に上記艶消物品Aで説明した内容と同じである。
以下、製造方法Iについて、更に詳細に説明する。
〔艶消層を形成する工程〕
艶消層を形成する工程は、シワ形成安定剤を、樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下で含み、かつ光重合開始剤を含む樹脂組成物を、上記(1)及び(2)の照射処理を順に行い、前記樹脂組成物を硬化させて、艶消層を形成するものである。
製造方法Iは、所定量のシワ形成安定剤及び光重合開始剤を含む樹脂組成物を上記(1)及び(2)の二種の照射処理を順に行い、当該樹脂組成物を硬化させて、少なくとも一方の面にシワを有する艶消層を形成する、艶消層を形成する工程を有することで、優れた表面特性とともに、優れた艶消効果の視認性及び質感を有する艶消物品を容易に製造することを可能とするものである。すなわち、製造方法Iにより得られる艶消物品(以下、製造方法Iにより得られる艶消物品を、「艶消物品I」と称することがある。)が有する艶消層は、所定量のシワ形成安定剤及び光重合開始剤を含む樹脂組成物を上記(1)及び(2)の二種の照射処理を順に行い、当該樹脂組成物を硬化させて得られる、少なくとも一方の面に不規則なシワにより構成される凹凸形状を有する層である、といえる。
(シワ形成安定剤)
製造方法Iにおいて、シワ形成安定剤は、上記艶消物品Aで採用されるものとして説明した、シワ形成安定剤が採用される。
シワ形成安定剤としてシワ形成安定剤1及びシワ形成安定剤2の少なくとも一方を用い得ること、シワ形成安定剤1及びシワ形成安定剤2の平均粒径、シワ形成安定剤の種類、含有量等、またシワ形成安定剤を用いることにより発現する効果、シワ形成安定剤と艶消剤との違いについても、基本的には、上記艶消物品Aについて説明した内容と同じである。
(艶消層の表面形状)
製造方法Iにより得られる艶消物品Iの艶消層の表面形状は、少なくとも一方の面が不規則なシワにより構成される凹凸を有することを要し、上記艶消物品Aの艶消層について説明した内容と同じである。また、艶消物品Aの艶消層の表面形状の説明に用いた図1及び2は、艶消物品Iの艶消層にも適用し得る。艶消層の表面形状が、上記艶消物品Aの艶消層について説明した表面形状を有することで、艶消物品Iは優れた表面特性とともに、優れた艶消効果の視認性及び質感を有するものとなる。
(樹脂)
製造方法Iにおいて、艶消層の形成に用いられる樹脂は、上記艶消物品Aについて説明した樹脂に関する内容と同じである。
(光重合開始剤)
製造方法Iにおいて、艶消層は、シワ形成安定剤を所定量で含み、かつ光重合開始剤を含む樹脂組成物を硬化させて形成する層であることから、光重合開始剤を含む。光重合開始剤を含むことを要する点で、上記艶消物品Aとは異なる。
光重合開始剤を用いて艶消層を形成する樹脂組成物中の樹脂を適度に硬化させることで、主にシワ形成安定剤を用いることで発現する艶消層のシワを保持し、製造方法Iにより得られる艶消物品Iの艶消効果の視認性及び質感を優れたものとし得る。また、樹脂組成物の硬化を促進させることから、優れた表面特性も得られることとなる。特に、後述する(2)の照射処理において、紫外線の照射を採用する場合、光重合開始剤を含むことは優れた表面特性を得る点で有効である。
光重合開始剤としては、上記艶消物品Aの艶消層を構成する樹脂組成物に含み得る光重合開始剤として例示したもの、すなわちアセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、チオキサントン類等、またこれらを基本構造として有する化合物等が挙げられる。
本実施形態において、光重合開始剤としては、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることが可能である。
光重合開始剤の含有量は、シワの形状を保持し、安定的に艶消効果を向上させる観点から、艶消層を形成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であり、上限として好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは1.5質量部以下、より更に好ましくは1.0質量部以下である。
(樹脂組成物)
製造方法Iにおいて、艶消層の形成に用いられる樹脂組成物(艶消層形成用の樹脂組成物)は、既述のように光重合開始剤を含むことを要する点で上記艶消物品Aとは異なるものの、他の含み得る各種耐候剤等の添加剤等については、上記艶消物品Aについて説明した樹脂組成物に関する内容と同じである。
(照射処理)
本実施形態の製造方法Iは、既述の艶消層を形成する樹脂組成物を硬化させて艶消層を形成するにあたり、以下の(1)及び(2)の照射処理を順に行うことを要する。
(1)100nm以上200nm未満の波長光の照射処理
(2)電子線及び200nm以上400nm以下の波長光の少なくとも一方での照射処理
上記(1)の照射処理は、上記艶消物品Aの製造方法において説明した(1)の照射処理に関する内容と同じであり、艶消層の形成にあたり、(1)の照射処理により、100nm以上200nm未満という低波長の紫外線を、艶消層を形成するシワ形成安定剤及び光重合開始剤を含む艶消形成用の樹脂組成物に照射することにより、当該艶消層の少なくとも一方の表面に、シワを形成させることができる。
上記(2)の照射処理を要することについては、上記(1)の照射処理に続いて、(2)の照射処理を行うことにより、電子線及び上記低波長よりも長い波長の波長光(紫外線)の少なくとも一方を照射することで、シワが保持された樹脂組成物をそのまま硬化させることができるため、優れた表面特性とともに、安定的に優れた艶消効果の視認性及び質感を有する艶消物品Iを容易に製造することが可能となる。
本実施形態の製造方法Iにおいて、上記(1)の照射処理の後、(2)の電子線及び200nm以上400nm以下の波長の紫外線の少なくとも一方での照射処理が行われる。既述のように、(2)の照射処理により、上記(1)の照射処理により形成したシワの形状をそのまま硬化させて優れた艶消効果の視認性及び質感が安定的に得られるとともに、艶消層を形成する樹脂が硬化することで、優れた表面特性が得られることとなる。
(2)の照射処理で採用される電子線の照射条件としては、艶消層形成用の樹脂組成物が硬化すれば特に制限はないが、電子線の加速電圧は好ましくは10kV以上、より好ましくは30kV以上、更に好ましくは50kV、より更に好ましくは75kV以上であり、上限として好ましくは300kV以下、より好ましくは250kV以下、更に好ましくは200kV以下である。電子線の加速電圧が上記範囲内であると、シワの形状をそのまま保持しやすくなるので安定的に艶消効果の視認性及び質感が向上し、艶消層形成用の樹脂組成物の硬化により優れた表面特性が効率的に得られる。
また、これと同様の観点から、電子線の照射線量は、好ましくは5kGy以上、より好ましくは10kGy以上、更に好ましくは15kGy以上であり、上限として好ましくは150kGy以下、より好ましくは125kGy以下、更に好ましくは100kGy以下である。
電子線源としては、上記照射条件を発揮し得るものであれば特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、また直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
(2)照射処理で採用される200nm以上400nm以下の紫外線は、例えば超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯等を光源とする紫外線照射装置を用いて照射することができる。また、200nm以上400nm以下のエキシマ光、例えば222nm(KrCl)、247nm(KrF)、308nm(XeCl)等の波長光を用いてもよい。
(2)照射処理で採用される紫外線の波長としては、好ましくは330nm以上であり、上限として好ましくは390nm以下である。紫外線の波長が上記範囲内であると、シワの形状をそのまま保持しやすくなるので安定的に艶消効果の視認性及び質感が向上し、艶消層形成用の樹脂組成物の硬化により優れた表面特性が効率的に得られる。
これと同様の観点から、(2)の照射処理に用いられ得る紫外線照射装置の出力は、好ましくは50W/cm以上、より好ましくは100W/cm以上であり、上限として好ましくは300W/cm以下、より好ましくは200W/cm以下である。また、照射速度は、好ましくは1r/min以上であり、より好ましくは3r/min以上であり、上限として好ましくは50r/min以下、より好ましくは10r/min以下である。
本実施形態の製造方法Iにおいて、(2)の照射処理としては、電子線及び紫外線の少なくとも一方での照射処理を行えば、優れた表面特性とともに、優れた艶消効果の視認性及び質感が安定的に得られる。
本実施形態の製造方法Iは、上記(1)及び(2)の照射処理の前に、(3)予備硬化のための照射処理を行ってもよい。(3)予備硬化のための照射処理を行うことで、艶消層の艶消効果の視認性及び質感が向上し、また表面特性も向上する。(3)予備硬化のための照射処理において用いられる波長光としては、例えば320nm超の波長光、好ましくは320nm超400nm以下、より好ましくは385nm以上400nm以下の波長光が挙げられる。この波長光を用いて予め照射して艶消層形成用の樹脂組成物を全体的に予備硬化させることができる。
予備硬化については、艶消層に求められる所望の性状(例えば、加工特性、耐汚染性等の表面特性)に応じて採用の要否を適宜決めればよい。また、上記波長光は紫外線に属するものであるが、紫外線に限らず他の電離放射線、例えば電子線等を用いることも可能である。
本実施形態の製造方法Iにおいて、艶消層は、艶消層形成用の樹脂組成物を、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方式で塗布した塗布層(未硬化樹脂層)を、上記(1)及び(2)の照射処理を順に行うこととなる。
本実施形態の製造方法により得られる艶消化粧材が、後述する基材を有する場合、艶消層形成用の樹脂組成物は当該基材の少なくとも一方の主面側に塗布すれば、当該主面側に艶消剤が形成される。
(60°グロス値)
製造方法Iにより得られる艶消物品Iの60°グロス値は、5.0以下であり、上記艶消物品Aについて説明した60°グロス値に関する内容と同じである。よって、60°グロス値の標準偏差(σ)についても同じである。
本実施形態の製造方法Iによれば、シワ形成安定剤を既述のように少量とし、また光重合開始剤を含む樹脂組成物を採用し、かつ上記(1)及び(2)の特定条件による照射処理を行うことにより、優れた艶消効果の視認性及び質感が安定的に得られるに至った。また、シワ形成安定剤の使用量を少量に抑えることで、樹脂組成物の著しい粘度上昇を抑えられることにより、層形成が容易に可能となり、艶消層に用いられる樹脂の特性に応じた、優れた耐汚染性、耐擦傷性、耐候性等の表面特性を自ずと有するものとなる。
〔他の層の形成〕
製造方法Iにより得られる艶消物品Iは、後述するように、基材、その他透明性樹脂層等の他の層を有し得る。他の層を有する場合の製造方法について、例えば後述する図3及び図4に示される艶消物品を例にとって説明する。図3及び4は、本実施形態の製造方法Iにより得られる艶消物品Iの一実施形態を示す断面図であり、艶消物品1(艶消物品I)をその厚さ方向(同図においてはZ方向)に平行な面で切断した断面図である。
図3に示される基材5及び艶消層4を有する艶消物品であれば、基材の一方の主面側に、艶消層形成用の樹脂組成物を塗布し、上記(1)及び(2)の照射処理を順に行うことで、当該樹脂組成物を硬化させて、艶消層を形成することで、図3に示される艶消物品が得られる。
図4に示される基材5、装飾層6、接着層7、透明性樹脂層8、プライマー層9及び艶消層4を有する艶消物品であれば、基材の一方の主面上に、装飾層、接着層を形成する組成物を含む塗布液を、上記公知の方式で塗布し、必要に応じて、乾燥、硬化して、装飾層及び接着層を形成する。次いで、当該接着層上に透明性樹脂層を形成する樹脂フィルムをドライラミネートにより形成し、透明性樹脂層上にプライマー層を形成する組成物を上記の公知の方式で塗布し、必要に応じて、乾燥、硬化することによりプライマー層を形成する。さらに、プライマー層上に、艶消層形成用の樹脂組成物を塗布し、上記(1)及び(2)の照射処理を順に行うことで、当該樹脂組成物を硬化させて、艶消層を形成することで、図4に示される艶消物品が得られる。なお、所望の性能に応じて不要な層があれば、適宜省略して製造すればよい。
図3及び4は、いずれも艶消物品Iが基材を有する艶消物品であることが示されているが、後述するように基材を有しない、すなわち艶消層のみの単一層による層構成もとり得る。この場合の艶消物品Iの製造方法は、上記艶消物品Aにおいて説明した、単一層による層構成をとる場合の製造方法に関する内容と同様、離型性支持体の離型層を有する面に、艶消層形成用の樹脂組成物を塗布する塗布層の形成工程、当該樹脂組成物を硬化させて艶消層を形成する艶消層形成工程を有するものとすればよく、当該硬化の際に上記(1)及び(2)の照射処理を順に行えばよい。また、必要に応じて溶剤乾燥工程を有してもよいこと、艶消物品Iを使用する際に剥離層を有する離型性支持体を剥離して用いればよいことも、同じである。
〔その他の層〕
製造方法Iにより得られる艶消物品Iは、既述のように上記艶消層の他、その他の層として、例えば基材、プライマー層、透明性樹脂層、装飾層、接着層等を必要に応じて有し得る。製造方法Iで製造し得る艶消物品Iが有し得る、上記の各層について説明する。
〔基材〕
艶消物品Iは、上記艶消物品Aで説明したのと同様に、上記艶消層に加えて、所望に応じて更に基材を有してもよく、既述のように、各種の制約を回避する観点から基材を有することが好ましい。すなわち、艶消物品Iの一番単純な層構成は、艶消物品Aと同様、基材を有しない、艶消層のみの単一層による層構成となる。また基材を有する場合、既述のように、艶消効果の視認性及び質感を向上させる観点から、艶消層のシワを有する少なくとも一方の面とは反対側の面に基材を有することが好ましい。
艶消物品Iで採用され得る基材は、上記艶消物品Aについて説明した基材に関する内容と同じである。
(プライマー層)
艶消物品Iが有し得るプライマー層は、上記艶消物品Aについて説明したプライマー層に関する内容と同じである。
(透明性樹脂層)
艶消物品Iが有し得る透明性樹脂層は、上記艶消物品Aについて説明した透明性樹脂層に関する内容と同じである。
(装飾層)
艶消物品Iが有し得る装飾層は、上記艶消物品Aについて説明した装飾層に関する内容と同じである。
(接着層)
艶消物品Iが有し得る接着層は、上記艶消物品Aについて説明した接着層に関する内容と同じである。
〔化粧部材I〕
製造方法Iにより得られる艶消物品Iの代表的な用途としては、艶消物品Iをそのままで、建築物や各種家具、車両、家電製品等の表面を構成する、いわゆる化粧部材として用いることもできるし、また被着材と積層して、複合して、乃至は組み合わせて化粧部材として用いることも可能である(以下、これらの艶消物品Iを用いた化粧部材を「化粧部材I」と称することがある。)。いずれとするかは、所望に応じて決定すればよい。
化粧部材Iにおける艶消物品Iの形態、被着材、接着剤層、化粧部材Iの製造方法、化粧部材Iの用途等は、上記化粧部材Aにおいて説明した内容と同じである。
[物品の製造方法J]
本実施形態の物品の製造方法は、
光重合開始剤を含まない樹脂組成物を、以下(1)及び(2)の照射処理を順に行い、前記樹脂組成物を硬化させて、表面シワ層を形成する工程を含む、
ことを特徴とするものである(以下、単に「製造方法J」と称することがある。)。
(1)100nm以上200nm未満の波長光の照射処理
(2)電子線及び200nm以上400nm以下の波長光の少なくとも一方での照射処理
このような工程を含む製造方法により、優れた表面特性を有する化粧材を容易に製造することが可能となる。また、表面層の硬化に際して上記(1)及び(2)の特性の照射処理を採用することにより、光重合開始剤を添加しなくても、優れた表面特性が得られ、また艶消効果の視認性をも得られることとなる。
製造方法Jは、上記艶消物品Aの製造方法として説明した製造方法に比べて、樹脂組成物に光重合開始剤を含む場合がないこと、また上記(2)の照射処理を要する点で異なるが、その他の(1)の照射処理、シワ形成安定剤、艶消層(製造方法Jにおける「表面シワ層」に該当する。)及びその表面形状、艶消層(表面シワ層)を形成する樹脂及び樹脂組成物、得られる物品の60°グロス値、得られる物品を構成する各層等については、基本的に上記艶消物品Aで説明した内容と同じである。
以下、製造方法Jについて、更に詳細に説明する。
〔表面シワ層を形成する工程〕
表面シワ層を形成する工程は、光重合開始剤を含まない樹脂組成物を、上記(1)及び(2)の照射処理を順に行い、前記樹脂組成物を硬化させて、表面シワ層を形成するものである。
製造方法Jは、光重合開始剤を含まない樹脂組成物を上記(1)及び(2)の二種の照射処理を順に行い、当該樹脂組成物を硬化させて、少なくとも一方の面にシワを有する表面シワ層を形成する、表面シワ層を形成する工程を有することで、優れた表面特性を有する物品を容易に製造することを可能とするものである。すなわち、製造方法Jにより得られる物品が有する表面シワ層は、光重合開始剤を含まない樹脂組成物を上記(1)及び(2)の二種の照射処理を順に行い、当該樹脂組成物を硬化させて得られる、少なくとも一方の面にシワを有する層である、といえる。
また、表面シワ層には、後述するように好ましくはシワ形成安定剤が含まれる。シワ形成安定剤が含まれなくても、上記二種の照射処理を順に行うことで、表面シワ層はシワを有するものとなるが、シワ形成安定剤が含まれることにより、シワの形成が安定しやすくなる。そして、シワの形成が安定することで、表面シワ層の少なくとも一方の面が不規則なシワにより構成される凹凸形状を有し、また表面シワ層の60°グロス値が5.0以下となり、安定的に優れた艶消効果の視認性が得られやすくなる。
表面シワ層が有するシワは、艶消効果の視認性を発揮し得るものであり、製造方法Jによれば、光重合開始剤を含まない樹脂組成物を特定の二種の照射処理を行うことで、当該樹脂組成物を硬化させて優れた表面特性が得られるだけでなく、表面シワ層が有するシワによって、艶消効果の視認性をも得られ得ることとなる。
表面シワ層におけるシワの形成を促進し、安定的に艶消効果の視認性を得るために、表面シワ層形成用の樹脂組成物には、シワ形成安定剤を含むことが好ましい。まず、シワ形成安定剤について説明する。
(シワ形成安定剤)
製造方法Jにおいて、好ましく用いられるシワ形成安定剤は、上記艶消物品Aで採用されるものとして説明した、シワ形成安定剤が採用される。
シワ形成安定剤としてシワ形成安定剤1及びシワ形成安定剤2の少なくとも一方を用い得ること、シワ形成安定剤1及びシワ形成安定剤2の平均粒径、シワ形成安定剤の種類等、またシワ形成安定剤を用いることにより発現する効果、シワ形成安定剤と艶消剤との違いについても、基本的には、上記艶消物品Aについて説明した内容と同じである。
シワ形成安定剤を用いる場合、その含有量は、表面シワ層を形成する樹脂100質量部に対して好ましくは0.5質量以上6.0質量部以下である。その他好ましい範囲は、上記艶消物品Aについて説明した内容と同じである。
(表面シワ層の表面形状)
製造方法Jにより得られる物品J(以下、単に「物品J」とも称する。)の表面シワ層は、光重合開始剤を含まない表面シワ層形成用の樹脂組成物、好ましくはシワ形成安定剤を含む樹脂組成物の硬化物により構成される層である。既述のように特定の二種の照射処理によりシワが形成することで、光重合開始剤を含まなくても、またシワ形成安定剤を含まなくても、当該樹脂組成物の硬化が進行することで、優れた表面特性が得られるだけでなく、シワの形状に起因する光拡散効果により艶消効果を発現する層となる。そして、更にシワ形成安定剤を用いることで当該シワの形成が安定し、安定的に艶消効果の視認性を発現し得る層となる。
物品Jの表面シワ層の表面形状については、基本的に上記艶消物品Aの艶消層について説明した内容と同じである。図1及び2は、製造方法Jにより得られる物品Jの表面シワ層にも適用し得る。
図1は製造方法Jにより得られる物品Jの一実施形態を示す平面視における模式図であり、実施例で得られた物品の表面の画像を模式化したものである。図1には、製造方法Jにより得られる物品Jは、その表面、すなわち表面シワ層の表面にシワが形成されていることが示されている。
物品Jの表面シワ層の表面形状について、シワ形成安定剤が含まれない場合であっても、表面シワ層の少なくとも一方の表面は、不規則なシワにより構成される凹凸形状を有している。そして、シワ形成安定剤が含まれると、不規則なシワにより構成される凹凸形状がより安定的に発現することとなり、安定的に艶消効果の視認性を発現し得る。このように、物品Jにおいて、表面シワ層は、シワ形成安定剤が含まれていなくても、文字通りシワを有する層であり、艶消効果の視認性を発現し得る層となるが、シワ形成安定剤を用いることで、当該シワは安定的に形成するため、安定的に艶消効果の視認性が発現し得る層になる、といえる。
(樹脂)
製造方法Jにおいて、艶消層の形成に用いられる樹脂は、上記艶消物品Aについて説明した樹脂に関する内容と同じである。
(樹脂組成物)
製造方法Jにおいて、艶消層の形成に用いられる樹脂組成物(艶消層形成用の樹脂組成物)は、光重合開始剤を含むものではなく、光重合開始剤を含む場合がない点で上記艶消物品Aとは異なるものの、他の含み得る各種耐候剤等の添加剤等については、上記艶消物品Aについて説明した樹脂組成物に関する内容と同じである。
(照射処理)
製造方法Jでは、上記(1)及び(2)の照射処理を順に行うことを要する。これらの照射処理については、上記製造方法Iで説明した照射処理に関する内容と同じである。なお、上記製造方法Iでは(3)予備硬化のための照射処理を所望に応じて行ってもよいが、製造方法Jにおいては(3)予備硬化は不要である。
(60°グロス値)
製造方法Jにより得られる物品Jは、表面シワ層が有するシワによる艶消効果の視認性を有するものであり、当該効果の視認性はシワ形成安定剤を用いることで向上するものである。物品Jの60°グロス値としては、好ましくは5.0以下であり、物品Jは艶消し効果の視認性を有する艶消物品といえる。その他、物品Jの60°グロス値については、基本的に、上記艶消物品Aについて説明した60°グロス値に関する内容と同じである。よって、60°グロス値の標準偏差(σ)についても同じである。
本実施形態の製造方法Jによれば、光重合開始剤を含まない樹脂組成物を採用し、かつ上記(1)及び(2)の特定条件による照射処理を行うことにより、表面シワ層の表面にシワを形成することで、艶消効果の視認性が得られるに至った。また、好ましく用いられるシワ形成安定剤により、シワによる艶消効果の視認性が安定的に得られることとなり、またその使用量は既述のように少量に抑えることで、樹脂組成物の著しい粘度上昇を抑えられることにより、層形成が容易に可能となり、表面シワ層に用いられる樹脂の特性に応じた、優れた耐汚染性、耐擦傷性、耐候性等の表面特性を自ずと有するものとなる。
〔他の層の形成〕
製造方法Jにおける他の層の形成については、上記製造方法Iについて説明した他の層の形成に関する内容と同じである。
よって、製造方法Jにより得られる艶消物品Jは、図3及び4に示されるように基材及びその他の層を有する層構成をとり得るし、また艶消層のみの単一層による層構成もとり得る。艶消層のみの単一層による層構成をとる場合、基材及びその他の層を有する層構成をとる場合の、製造方法は、いずれも上記製造方法Iについて説明した内容と同じである。
〔その他の層〕
製造方法Jにより得られる艶消物品Jは、既述のように上記艶消層の他、その他の層として、例えば基材、プライマー層、透明性樹脂層、装飾層、接着層等を必要に応じて有し得る。製造方法Jで製造し得る艶消物品Jが有し得る、上記の各層について説明する。
〔基材〕
艶消物品Jは、上記艶消物品Aで説明したのと同様に、上記艶消層に加えて、所望に応じて更に基材を有してもよく、既述のように、各種の制約を回避する観点から基材を有することが好ましい。すなわち、艶消物品Jの一番単純な層構成は、艶消物品Aと同様、基材を有しない、艶消層のみの単一層による層構成となる。また基材を有する場合、既述のように、艶消効果の視認性及び質感を向上させる観点から、艶消層のシワを有する少なくとも一方の面とは反対側の面に基材を有することが好ましい。
艶消物品Jで採用され得る基材は、上記艶消物品Aについて説明した基材に関する内容と同じである。
(プライマー層)
艶消物品Jが有し得るプライマー層は、上記艶消物品Aについて説明したプライマー層に関する内容と同じである。
(透明性樹脂層)
艶消物品Jが有し得る透明性樹脂層は、上記艶消物品Aについて説明した透明性樹脂層に関する内容と同じである。
(装飾層)
艶消物品Jが有し得る装飾層は、上記艶消物品Aについて説明した装飾層に関する内容と同じである。
(接着層)
艶消物品Jが有し得る接着層は、上記艶消物品Aについて説明した接着層に関する内容と同じである。
〔化粧部材J〕
製造方法Jにより得られる物品Jの代表的な用途としては、艶消物品Jをそのままで、建築物や各種家具、車両、家電製品等の表面を構成する、いわゆる化粧部材として用いることもできるし、また被着材と積層して、複合して、乃至は組み合わせて化粧部材として用いることも可能である(以下、これらの艶消物品Jを用いた化粧部材を「化粧部材J」と称することがある。)。いずれとするかは、所望に応じて決定すればよい。
化粧部材Jにおける艶消物品Jの形態、被着材、接着剤層、化粧部材Jの製造方法、化粧部材Jの用途等は、上記化粧部材Aにおいて説明した内容と同じである。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法:60°グロス値)
実施例及び比較例で得られた物品について、グロスメータ(「マイクログロス(機種名)」、BYKガードナー社製)を用いて、K 5600-4-7:1999に準拠して60°鏡面光沢度を任意の10点で測定し、当該10点の平均値を60°グロス値とした。
(60°グロス値の標準偏差(σ))
実施例及び比較例で得られた物品について、グロスメータ(「マイクログロス(機種名)」、BYKガードナー社製)を用いて、K 5600-4-7:1999に準拠して60°鏡面光沢度を任意の10点で測定し、当該10点の測定値をもとに標準偏差(σ)を算出した。標準偏差(σ)の値は、シワの形成の安定性の指標となり、0.3以下であるとシワの形成の安定性が高く、0.30未満であるとシワの形成の安定性が十分ではないと判断できる。
(質感(面状態の均一性)の評価)
実施例及び比較例で得られた物品について、任意の成人20人に表面の質感(面状態の均一性)について評価させて、以下の基準で評価した。
A:18人以上が、面状態が均一であり、艶消効果の視認性が高いと評価した。
B:15人以上17人以下が、面状態が均一であり、艶消効果の視認性が高いと評価した。
C:14人以下が、面状態が均一であり、艶消効果の視認性が高いと評価した。
(耐擦傷性(耐スチールウール性)の評価)
実施例1A~3A及び比較例1A及び2Aで得られた物品について、下記のラビング試験を行った。下記ラビング試験を行う前の前記艶消層側の60°グロス値をGとし、前記ラビング試験を行った後の前記艶消層側の60°グロス値をGとしたときの、グロス値の変化率(|(G-G)|/G×100)を算出した。20%以下であれば優れた耐スチールウール性を有するものとして、合格とした。
(ラビング試験)
摩耗試験機II形(JIS L0849:2013)に、得られた物品を土台に配置し、当該艶消物品の艶消層に接触するようにスチールウール#0000をセットして、荷重1500g/cm、移動速度100mm/秒、往復移動距離100mmで30回往復させた。
(耐擦傷性(耐スクラッチ性)の評価)
実施例1A~3A及び比較例1A及び2Aで得られた物品について、塗料接着試験機(「ホフマンスクラッチハードネステスター(製品名)」、BYK Gardner社製)を用いて引掻き試験を実施し、連続的な引掻き傷(スクラッチ)が発生しない最大荷重を測定した。最大荷重が大きいほど、耐擦傷性(耐スクラッチ性)が優れていることを示す。
(易除染性の評価)
実施例1E~3E及び比較例1E及び2Eで得られた物品について、JIS K6902:2007(熱硬化性樹脂高圧化粧板試験方法)の「15.3 C法」に準拠して、汚染物質としてアセトン(材料番号3)、家庭用アンモニア(材料番号4)、10%くえん酸(材料番号5)、黒油性マーカー(材料番号12)及びクレヨン(材料番号14)を用いて、汚染試験を行い、「15.3.5.2 洗浄手順」に基づく0等級~5等級の基準により洗浄性を評価した。0等級に近いほど、清浄性に優れていることを示す。
また、「15.3.6.2 耐汚染性」に基づく等級5、3及び1の基準により耐汚染性を評価した。等級5に近いほど、耐汚染性に優れていることを示す。
以上を易除染性の評価とした。
(耐光性の評価)
実施例1F~3F及び比較例1F~3Fで得られた物品について、耐候性試験装置「S-UV(雨あり)」を用いて200時間の耐候性試験を行った。当該耐候性試験を行う前の前記艶消耐光層側の60°グロス値をGとし、当該耐候性試験を行った後の前記艶消耐光層側の60°グロス値をGとしたときの、グロス値の変化率(|(G-G)|/G×100)を算出した。20%以下であれば優れた耐光性を有するものとして、合格とした。
(マーカー消去性の評価)
実施例1G~3G、比較例1G及び2Gで得られた物品について、JIS S6052:2014で規定される黒のマーカーを用いて、以下のa)~c)の方法に従い行ったマーカーの落ちやすさの試験を行い、当該試験前と、試験後の明度及び色度を分光測色計(「SE6000」(型番)、日本電色工業株式会社製)を用いて測定し、以下の算出式により色差(ΔEab)を算出した。
ΔEab=〔(L -L +(a -a +(b -a 1/2
(マーカーの落ちやすさの試験)
a)当該マーカーでシートの艶消筆記層を2cm×4cmの範囲で塗りつぶす。
b)塗りつぶしてから1分経過後、未使用のメラミンフォーム製白板用イレーザー(2cm×2cm、ホワイトボード用激落ちイレーサー(オート株式会社))を用いて消去する。
c)上記a)及びb)を50回繰り返す。
[実施例1A]
コロナ放電処理を施したポリプロピレンシート(厚さ:100μm)を基材とし、当該基材の一方の面に、印刷インキ(バインダー樹脂:2液硬化型アクリル-ウレタン樹脂)をグラビア法で塗布して着色層(厚さ:3μm)を設け、当該着色層上に、アクリル樹脂及びウレタン樹脂をバインダー樹脂として含む樹脂組成物を塗布してプライマー層(厚さ:2μm)を設け、当該プライマー層上に、艶消層形成用の樹脂組成物(多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー):65質量部、単官能アクリレートモノマー:35質量部、シワ形成安定剤1(シリカ粒子、平均粒子径:3μm):3.0質量部、シワ形成安定剤2(シリカ粒子、平均粒子径:5nm):3.0質量部、光重合開始剤(ベンゾフェノン系):0.8質量部)を、グラビア法により塗布し(塗布量:5g/m(乾燥時))、次いでLEDから構成されるUV照射装置を用いて紫外線を照射し(波長:395nm、紫外線量:6W/cm)、次いでエキシマ光照射装置を用いて紫外線を照射し(波長:172nm(Xe)、紫外線出力密度:1W/cm、積算光量:10~100mJ/cm、窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下))、次いで更に高圧水銀灯を用いて照射して(波長:365nm、紫外線出力密度:200W/cm)、基材上に艶消層を設け、基材と艶消層とを有する艶消物品を得た。得られた艶消物品について、上記方法にて60°グロス値及びグロス値の変化率を測定した。測定結果を表1Aに示す。
[実施例2A及び3A]
実施例1Aにおいて、艶消層形成用の樹脂組成物中のシワ形成安定剤を表1Aに示される使用量とした以外は、実施例1Aと同様にして、艶消物品を得た。得られた艶消物品の艶消層側の60°グロス値及びグロス値の変化率を表1Aに示す。
[比較例1A]
実施例1Aにおいて、艶消層形成用の樹脂組成物中のシワ形成安定剤の使用量を0質量部とした、すなわちシワ形成安定剤を使用しなかった以外は、実施例1Aと同様にして、物品を得た。得られた物品の艶消層側の60°グロス値及びグロス値の変化率を表1Aに示す。
[比較例2A]
実施例1Aにおいて、艶消層形成用の樹脂組成物中のシワ形成安定剤の使用量を0質量部とし、代わりに艶消剤(平均粒子径:8.0μm)を15.0質量部使用し、電子線(加速電圧:75kV、照射線量:30kGy(3Mrad))のみを照射した以外は、実施例1Aと同様にして、物品を得た。得られた物品の艶消層側の60°グロス値及びグロス値の変化率を表1Aに示す。
Figure 2022008024000005
表1Aの結果から、本実施形態の艶消物品Aは、その艶消層側の60°グロス値が2.0以下となっており、艶消効果の視認性に極めて優れた物品であることが確認された。耐擦傷性については、グロス値の変化率はいずれも20%以下、耐スクラッチ性は400gとなっており、優れた耐擦傷性(耐スチールウール性及び耐スクラッチ性)を有するものであることも確認された。また、標準偏差(σ)は0.30未満であるためシワの形成が安定していることも確認されており、シワの形成の安定が艶消効果の視認性、質感及び耐擦傷性につながっているものと考えられる。
一方、シワ形成安定剤を含まない比較例1Aの物品は、図8に示されるようにその表面にはシワが若干発生していたものの、安定的に艶消効果の視認性が得られず、部分的にグロス値が実施例と同じ部分は存在したが、部分的に高艶な部分があり面状態が不安定であり、質感に優れるものとはいえないものであった。不安定なことについては、グロス値の標準偏差が0.30以上であることからも分かる。
艶消剤を含む比較例2Aの物品は15.0質量部と実施例におけるシワ形成安定剤の含有量より多い量を含有させても、艶消層に相当する表面の層にシワの形成がなく、その60°グロス値は8.3と実施例の艶消物品のグロス値に劣っており、また質感にも劣るものであることが確認された。また、比較例2Aの物品のグロス値の変化率は23.7%、耐スクラッチ性は300gであり、耐擦傷性に劣るものであることが確認された。
また実施例1A~3Aの光学顕微鏡画像(各々図5~7)によれば、これらの実施例の艶消物品はその表面に不規則なシワを有していることが確認できる。一方、比較例1Aの光学顕微鏡画像(図8)によれば既述のように、その表面にはシワが若干発生しており、部分的に実施例と同様のシワを有する領域はあるものの、シワの形成が不安定であり(均一でなく)、シワがない領域と混在していることが分かる。また、比較例2Aの光学顕微鏡画像(図9)によれば、実施例の艶消物品のようなシワは確認されず、艶消剤の輪郭形状に対応した凸形状が確認された。この結果から、本実施形態の艶消物品Aは、その表面のシワに起因して極めて優れた艶消効果の視認性が発現していることが確認された。また、本実施形態の艶消物品Aは、シワの形成により、表面の質感が高く、高級感のあるものとなったが、比較例1Aの物品の表面にはシワが若干発生していたものの、安定的に艶消効果が得られず、表面の質感が単調であり、高級感のあるものとはいえなかった。
[実施例1B]
コロナ放電処理を施したポリプロピレンシート(厚さ:100μm)を基材とし、当該基材の一方の面に、印刷インキ(バインダー樹脂:2液硬化型アクリル-ウレタン樹脂)をグラビア法で塗布して着色層(厚さ:3μm)を設け、当該着色層上に、アクリル樹脂及びウレタン樹脂をバインダー樹脂として含む樹脂組成物を塗布してプライマー層(厚さ:2μm)を設け、当該プライマー層上に、艶消層形成用の樹脂組成物(多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー):65質量部、単官能アクリレートモノマー:35質量部、シワ形成安定剤1(シリカ粒子、平均粒子径:3μm):3.0質量部、シワ形成安定剤2(シリカ粒子、平均粒子径:5nm):3.0質量部、光重合開始剤(ベンゾフェノン系):0.8質量部)を、グラビア法により塗布し(塗布量:5g/m(乾燥時))、次いでLEDから構成されるUV照射装置を用いて紫外線を照射し(波長:395nm、紫外線量:6W/cm)、次いでエキシマ光照射装置を用いて紫外線を照射し(波長:172nm(Xe)、紫外線出力密度:1W/cm、積算光量:10~100mJ/cm、窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下))、次いで更に高圧水銀灯を用いて照射して(波長:365nm、紫外線出力密度:200W/cm)、基材上に艶消層を設け、基材と艶消層とを有する艶消物品を得た。得られた艶消物品について、艶消層側から60°グロス値を測定したところ、1.4であった。
[実施例2B及び3B]
実施例1Bにおいて、艶消層形成用の樹脂組成物中のシワ形成安定剤を表1Bに示される使用量とした以外は、実施例1Bと同様にして、艶消物品を得た。得られた艶消化粧材の艶消層側の60°グロス値及び質感の評価を表1Bに示す。また、質感の評価も表1Bに示す。
[比較例1B]
実施例1Bにおいて、艶消層形成用の樹脂組成物中のシワ形成安定剤の使用量を0質量部とした、すなわちシワ形成安定剤を使用しなかった以外は、実施例1Bと同様にして、物品を得た。得られた物品の艶消層側の60°グロス値及び質感の評価を表1Bに示す。
[比較例2B]
実施例1Bにおいて、艶消層形成用の樹脂組成物中のシワ形成安定剤の使用量を0質量部とし、代わりに艶消剤(平均粒子径:8.0μm)を15.0質量部使用し、電子線(加速電圧:75kV、照射線量:30kGy(3Mrad))のみを照射した以外は、実施例1Bと同様にして、物品を得た。得られた物品の艶消層側の60°グロス値及び質感の評価を表1Bに示す。
Figure 2022008024000006
表1Bの結果から、本実施形態の艶消物品Bは、その艶消層側の60°グロス値が1.8以下となっており、艶消効果の視認性に極めて優れた物品であり、質感にも優れるものであることが確認された。また、標準偏差(σ)は0.30未満であるためシワの形成が安定していることも確認されており、シワの形成の安定が艶消効果の視認性及び質感につながっているものと考えられる。
一方、シワ形成安定剤を含まない比較例1Bの物品は、図13に示されるようにその表面にはシワが若干発生していたものの、安定的に艶消効果の視認性が得られず、部分的にグロス値が実施例と同じ部分は存在したが、部分的に高艶な部分があり面状態が不安定であり(均一でなく)、質感に優れるものとはいえないものであった。不安定なことについては、グロス値の標準偏差が0.30以上であることからも分かる。
また、艶消剤を含む比較例2Bの物品は15.0質量部と実施例におけるシワ形成安定剤の含有量より多い量を含有させても、艶消層に相当する表面の層にシワの形成がなく、その60°グロス値は8.3と実施例の艶消物品のグロス値に劣っており、質感にも劣るものであることが確認された。
また実施例1B~3Bの光学顕微鏡画像(各々図10~12)によれば、これらの実施例の艶消化粧材はその表面に不規則なシワを有していることが確認できる。一方、比較例1Bの光学顕微鏡画像(図13)によれば既述のように、その表面にはシワが若干発生しており、部分的に実施例と同様のシワを有する領域はあるものの、シワの形成が不安定であり(均一でなく)、シワがない領域と混在していることが分かる。また、比較例2Bの光学顕微鏡画像(図14)によれば、実施例の艶消物品Bのようなシワは確認されず、艶消剤の輪郭形状に対応した凸形状が確認された。この結果から、本実施形態の艶消物品Bは、その表面のシワに起因して極めて優れた艶消効果の視認性及び質感が発現していることが確認された。
[実施例1C]
コロナ放電処理を施したポリプロピレンシート(厚さ:100μm)を基材とし、当該基材の一方の面に、印刷インキ(バインダー樹脂:2液硬化型アクリル-ウレタン樹脂)をグラビア法で塗布して着色層(厚さ:3μm)を設け、当該着色層上に、アクリル樹脂及びウレタン樹脂をバインダー樹脂として含む樹脂組成物を塗布してプライマー層(厚さ:2μm)を設け、当該プライマー層上に、艶消層形成用の樹脂組成物(多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー):65質量部、単官能アクリレートモノマー:35質量部、シワ形成安定剤(シリカ粒子、平均粒子径:3μm):3.0質量部、光重合開始剤(ベンゾフェノン系):0.8質量部)を、グラビア法により塗布し(塗布量:5g/m(乾燥時))、次いでLEDから構成されるUV照射装置を用いて紫外線を照射し(波長:395nm、紫外線量:6W/cm)、次いでエキシマ光照射装置を用いて紫外線を照射し(波長:172nm(Xe)、紫外線出力密度:1W/cm、積算光量:10~100mJ/cm、窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下))、次いで更に高圧水銀灯を用いて照射して(紫外線出力密度:200W/cm)、基材上に艶消層を設け、基材と艶消層とを有する艶消物品を得た。得られた艶消物品について、艶消層側から60°グロス値を測定したところ、1.5であった。また、質感の評価も表1Cに示す。
[実施例2C及び3C]
実施例1Cにおいて、艶消層形成用の樹脂組成物中のシワ形成安定剤を表1Cに示される使用量とした以外は、実施例1Cと同様にして、艶消物品を得た。得られた艶消物品の艶消層側の60°グロス値及び質感の評価を表1Cに示す。
[比較例1C]
実施例1Cにおいて、艶消層形成用の樹脂組成物中のシワ形成安定剤の使用量を0質量部とした、すなわちシワ形成安定剤を使用しなかった以外は、実施例1Cと同様にして、物品を得た。得られた物品の艶消層側の60°グロス値及び質感の評価を表1Cに示す。
[比較例2C]
実施例1Cにおいて、艶消層形成用の樹脂組成物中のシワ形成安定剤の使用量を0質量部とし、代わりに艶消剤(平均粒子径:8.0μm)を15.0質量部使用し、電子線(加速電圧:75kV、照射線量:30kGy(3Mrad))のみを照射した以外は、実施例1Cと同様にして、物品を得た。得られた物品の艶消層側の60°グロス値及び質感の評価を表1Cに示す。
Figure 2022008024000007
表1Cの結果から、本実施形態の艶消物品Cは、その艶消層側の60°グロス値が1.8以下となっており、艶消効果の視認性に極めて優れた物品であることが確認された。また、標準偏差(σ)は0.30未満であるためシワの形成が安定していることも確認されており、シワの形成の安定が艶消効果の視認性及び質感につながっているものと考えられる。
一方、シワ形成安定剤を含まない比較例1Cの物品は、図18に示されるようにその表面にはシワが若干発生していたものの、安定的に艶消効果の視認性が得られず、部分的にグロス値が実施例と同じ部分は存在したが、部分的に高艶な部分があり面状態が不安定であり(均一でなく)、質感に優れるものとはいえないものであった。不安定なことについては、グロス値の標準偏差が0.30以上であることからも分かる。
また、艶消剤を多量に含む比較例2Cの化粧材は艶消層に相当する表面の層にシワの形成がなく、その60°グロス値は8.3と実施例の艶消物品のグロス値に劣っており、質感にも劣るものであることが確認された。
また実施例1C~3Cの光学顕微鏡画像(各々図15~17)によれば、これらの実施例の艶消物品はその表面に不規則なシワを有していることが確認できる。一方、比較例1Cの光学顕微鏡画像(図18)によれば既述のように、その表面にはシワが若干発生しており、部分的に実施例と同様のシワを有する領域はあるものの、シワの形成が不安定であり(均一でなく)、シワがない領域と混在していることが分かる。また、比較例2Cの光学顕微鏡画像(図19)によれば、実施例の艶消物品のようなシワは確認されず、艶消剤の輪郭形状に対応した凸形状が確認された。この結果から、本実施形態の艶消物品Cは、その表面のシワに起因して極めて優れた艶消効果の視認性及び質感が発現していることが確認された。
[実施例1D]
コロナ放電処理を施したポリプロピレンシート(厚さ:100μm)を基材とし、当該基材の一方の面に、印刷インキ(バインダー樹脂:2液硬化型アクリル-ウレタン樹脂)をグラビア法で塗布して着色層(厚さ:3μm)を設け、当該着色層上に、アクリル樹脂及びウレタン樹脂をバインダー樹脂として含む樹脂組成物を塗布してプライマー層(厚さ:2μm)を設け、当該プライマー層上に、艶消層形成用の樹脂組成物(多官能ウレタンアクリレートオリゴマー(官能基数:4):65質量部、多官能アクリレートモノマー(官能基数:4):35質量部、シワ形成安定剤(シリカ粒子、平均粒子径:5nm):5.0質量部、光重合開始剤(ベンゾフェノン系):0.8質量部)を、グラビア法により塗布し(塗布量:5g/m(乾燥時))、次いでLEDから構成されるUV照射装置を用いて紫外線を照射し(波長:395nm、紫外線量:6W/cm)、次いでエキシマ光照射装置を用いて紫外線を照射し(波長:172nm(Xe)、紫外線出力密度:1W/cm、積算光量:10~100mJ/cm、窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下))、次いで更に高圧水銀灯を用いて照射して(紫外線出力密度:200W/cm)、基材上に艶消層を設け、基材と艶消層とを有する艶消物品を得た。得られた艶消物品について、艶消層側から60°グロス値を測定したところ、1.5であった。
[実施例2D及び3D]
実施例1Dにおいて、艶消層形成用の樹脂組成物中のシワ形成安定剤を表1Dに示される使用量とした以外は、実施例1Dと同様にして、艶消物品を得た。得られた艶消物品の艶消層側の60°グロス値及び質感の評価を表1Dに示す。また、質感の評価も表1Dに示す。
[比較例1D]
実施例1Dにおいて、艶消層形成用の樹脂組成物中のシワ形成安定剤の使用量を0質量部とした、すなわちシワ形成安定剤を使用しなかった以外は、実施例1Dと同様にして、物品を得た。得られた物品の艶消層側の60°グロス値及び質感の評価を表1Dに示す。
[比較例2D]
実施例1Dにおいて、艶消層形成用の樹脂組成物中のシワ形成安定剤の使用量を0質量部とし、代わりに艶消剤(平均粒子径:8.0μm)を15.0質量部使用し、電子線(加速電圧:75kV、照射線量:30kGy(3Mrad))のみを照射した以外は、実施例1Dと同様にして、物品を得た。得られた物品の艶消層側の60°グロス値及び質感の評価を表1Dに示す。
Figure 2022008024000008
表1Dの結果から、本実施形態の艶消物品Dは、その艶消層側の60°グロス値が2.0以下となっており、艶消効果の視認性に極めて優れた物品であり、質感にも優れるものであることが確認された。また、標準偏差(σ)は0.30未満であるためシワの形成が安定していることも確認されており、シワの形成の安定が艶消効果の視認性及び質感につながっているものと考えられる。
一方、シワ形成安定剤を含まない比較例1Dの物品は、図23に示されるようにその表面にはシワが若干発生していたものの、安定的に艶消効果の視認性が得られず、部分的にグロス値が実施例と同じ部分は存在したが、部分的に高艶な部分があり面状態が不安定であり(均一でなく)、質感に優れるものとはいえないものであった。不安定なことについては、グロス値の標準偏差が0.30以上であることからも分かる。
また、艶消剤を含む比較例2Dの化粧材は15.0質量部と実施例におけるシワ形成安定剤の含有量より多い量を含有させても、艶消層に相当する表面の層にシワの形成がなく、その60°グロス値は8.3と実施例の艶消物品のグロス値に劣っており、質感にも劣るものであることが確認された。
また実施例1D~3D光学顕微鏡画像(各々図20~22)によれば、これらの実施例の艶消化粧材はその表面の全面にわたって不規則なシワを均一に有していることが確認できる。一方、比較例1Dの光学顕微鏡画像(図23)によれば既述のように、その表面にはシワが若干発生しており、部分的に実施例と同様のシワを有する領域はあるものの、シワの形成が不安定であり(均一でなく)、シワがない領域と混在していることが分かる。また、比較例2Dの光学顕微鏡画像(図24)によれば、実施例の艶消物品のようなシワは確認されず、艶消剤の輪郭形状に対応した凸形状が確認された。この結果から、本実施形態の艶消物品Dは、その表面のシワに起因して極めて優れた艶消効果の視認性及び質感が発現していることが確認された。
[実施例1E]
コロナ放電処理を施したポリプロピレンシート(厚さ:100μm)を基材とし、当該基材の一方の面に、印刷インキ(バインダー樹脂:2液硬化型アクリル-ウレタン樹脂)をグラビア法で塗布して着色層(厚さ:3μm)を設け、当該着色層上に、アクリル樹脂及びウレタン樹脂をバインダー樹脂として含む樹脂組成物を塗布してプライマー層(厚さ:2μm)を設け、当該プライマー層上に、艶消易除染層形成用の樹脂組成物(多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー):65質量部、単官能アクリレートモノマー:35質量部、シワ形成安定剤1(シリカ粒子、平均粒子径:3μm):3.0質量部、シワ形成安定剤2(シリカ粒子、平均粒子径:5nm):3.0質量部、光重合開始剤(ベンゾフェノン系):0.8質量部)を、グラビア法により塗布し(塗布量:5g/m(乾燥時))、次いでLEDから構成されるUV照射装置を用いて紫外線を照射し(波長:395nm、紫外線量:6W/cm)、次いでエキシマ光照射装置を用いて紫外線を照射し(波長:172nm(Xe)、紫外線出力密度:1W/cm、積算光量:10~100mJ/cm、窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下))、次いで更に高圧水銀灯を用いて照射して(波長:365nm、紫外線出力密度:200W/cm)、基材上に艶消易除染層を設け、基材(シート)と艶消易除染層とを有する艶消物品を得た。得られた艶消物品について、上記方法にて60°グロス値を測定した。測定結果を表1Eに示す。また、上記方法にて易除染性を評価した。評価結果を表1Eに示す。
[実施例2E及び3E]
実施例1Eにおいて、艶消易除染層形成用の樹脂組成物中のシワ形成安定剤を表1Eに示される使用量とした以外は、実施例1Eと同様にして、艶消物品を得た。得られた艶消物品について、上記方法にて60°グロス値を測定した。測定結果を表1Eに示す。また、上記方法にて易除染性を評価した。評価結果を表1Eに示す。
[比較例1E]
実施例1Eにおいて、艶消易除染層形成用の樹脂組成物中のシワ形成安定剤の使用量を0質量部とした、すなわちシワ形成安定剤を使用しなかった以外は、実施例1Eと同様にして、物品を得た。得られた物品について、上記方法にて60°グロス値を測定した。測定結果を表1Eに示す。また、上記方法にて易除染性を評価した。評価結果を表1Eに示す。
[比較例2E]
実施例1Eにおいて、艶消易除染層形成用の樹脂組成物中のシワ形成安定剤の使用量を0質量部とし、代わりに艶消剤(平均粒子径:8.0μm)を15.0質量部使用し、電子線(加速電圧:75kV、照射線量:3c0kGy(3Mrad))のみを照射した以外は、実施例1Eと同様にして、物品を得た。得られた物品について、上記方法にて60°グロス値を測定した。測定結果を表1Eに示す。また、上記方法にて易除染性を評価した。評価結果を表1Eに示す。
Figure 2022008024000009
表1Eの結果から、本実施形態の艶消物品Eは、その艶消易除染層側の60°グロス値が1.8以下となっており、艶消効果の視認性に極めて優れた物品であることが確認された。易除染性について、洗浄性は黒油性マーカー及びクレヨンでは3等級となったものの、他の汚染物質については0等級であり優れた清浄性を有しており、また耐汚染性は全ての汚染物質について等級5であり優れた耐汚染性を有していることから、優れた易除染性を有していることが確認された。
また、標準偏差(σ)は0.30未満であるためシワの形成が安定していることも確認されており、シワの形成の安定が艶消効果の視認性、質感及び耐汚染性につながっているものと考えられる。
一方、シワ形成安定剤を含まない比較例1Eの物品は、図28に示されるようにその表面にはシワが若干発生していたものの、安定的に艶消効果の視認性が得られず、部分的にグロス値が実施例と同じ部分は存在したが、部分的に高艶な部分があり面状態が不安定であり、質感に優れるものとはいえないものであった。不安定なことについては、グロス値の標準偏差が0.30以上であることからも分かる。
艶消剤を含む比較例2Eの物品は15.0質量部と実施例におけるシワ形成安定剤の含有量より多い量を含有させても、艶消易除染層に相当する表面の層にシワの形成がなく、その60°グロス値は8.3と実施例の艶消物品のグロス値に劣っており、また質感にも劣るものであることが確認された。
また、比較例2Eの物品の易除染性について、黒油性マーカー及びクレヨンの洗浄性は各々4等級及び5等級であり、耐汚染性は各々等級3及び等級1であり、易除染性に劣るものであることが確認された。
また実施例1E~3Eの光学顕微鏡画像(各々図25~27)によれば、これらの実施例の艶消物品はその表面に不規則なシワを有していることが確認できる。一方、比較例1Eの光学顕微鏡画像(図28)によれば既述のように、その表面にはシワが若干発生しており、部分的に実施例と同様のシワを有する領域はあるものの、シワの形成が不安定であり(均一でなく)、シワがない領域と混在していることが分かる。また、比較例2Eの光学顕微鏡画像(図29)によれば、実施例の艶消物品のようなシワは確認されず、艶消剤の輪郭形状に対応した凸形状が確認された。この結果から、本実施形態の艶消物品Eは、その表面のシワに起因して極めて優れた艶消効果の視認性が発現していることが確認された。また、本実施形態の艶消物品Eは、シワの形成により、表面の質感が高く、高級感のあるものとなったが、比較例1Eの物品の表面にはシワが若干発生していたものの、安定的に艶消効果の視認性が得られず、表面の質感が単調であり、高級感のあるものとはいえなかった。
[実施例1F]
コロナ放電処理を施したポリプロピレンシート(厚さ:100μm)を基材とし、当該基材の一方の面に、印刷インキ(バインダー樹脂:2液硬化型アクリル-ウレタン樹脂)をグラビア法で塗布して着色層(厚さ:3μm)を設け、当該着色層上に、アクリル樹脂及びウレタン樹脂をバインダー樹脂とて含む樹脂組成物を塗布してプライマー層(厚さ:2μm)を設け、当該プライマー層上に、艶消耐光層形成用の樹脂組成物(多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー):65質量部、単官能アクリレートモノマー:35質量部、シワ形成安定剤1(シリカ粒子、平均粒子径:3μm):3.0質量部、シワ形成安定剤2(シリカ粒子、平均粒子径:5nm):3.0質量部、紫外線吸収剤(商品名:アデカスタブLA-46、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、株式会社ADEKA製)1.0質量部、光重合開始剤(ベンゾフェノン系):0.8質量部)を、グラビア法により塗布し(塗布量:5g/m(乾燥時))、次いでLEDから構成されるUV照射装置を用いて紫外線を照射し(波長:395nm、紫外線量:6W/cm)、次いでエキシマ光照射装置を用いて紫外線を照射し(波長:172nm(Xe)、紫外線出力密度:1W/cm、積算光量:10~100mJ/cm、窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下))、次いで更に高圧水銀灯を用いて照射して(波長:365nm、紫外線出力密度:200W/cm)、基材上に艶消耐光層を設け、基材シートと艶消耐光層とを有する艶消物品を得た。得られた艶消物品について、上記方法にて60°グロス値及びグロス値の変化率を測定した。測定結果を表1Fに示す。また上記の方法により評価した評価結果を表1Fに示す。
[実施例2F及び3F]
実施例1Fにおいて、艶消耐光層形成用の樹脂組成物中のシワ形成安定剤を表1Fに示される使用量とした以外は、実施例1Fと同様にして、艶消物品を得た。得られた艶消物品の艶消耐光層側の60°グロス値及びグロス値の変化率を表1Fに示す。また上記の方法により評価した評価結果を表1Fに示す。
[比較例1F]
実施例1Fにおいて、艶消耐光層形成用の樹脂組成物中のシワ形成安定剤の使用量を0質量部とした、すなわちシワ形成安定剤を使用しなかった以外は、実施例1Fと同様にして、物品を得た。得られた物品の艶消耐光層側の60°グロス値及びグロス値の変化率を表1Fに示す。また上記の方法により評価した評価結果を表1Fに示す。
[比較例2F]
実施例1Fにおいて、艶消耐光層形成用の樹脂組成物中のシワ形成安定剤の使用量を0質量部とし、代わりに艶消剤(平均粒子径:8.0μm)を15.0質量部使用し、高圧水銀灯を用いた紫外線(波長:365nm、紫外線出力密度:200W/cm)のみを照射した以外は、実施例1Fと同様にして、物品を得た。得られた物品の艶消耐光層側の60°グロス値及びグロス値の変化率を表1Fに示す。また上記の方法により評価した評価結果を表1Fに示す。
[比較例3F]
実施例1Fにおいて、艶消耐光層形成用の樹脂組成物中の紫外線吸収剤の使用量を0質量部とした、すなわち紫外線吸収剤を使用しなかった以外は、実施例1Fと同様にして、物品を得た。得られた物品の艶消耐光層側の60°グロス値及びグロス値の変化率を表1Fに示す。また上記の方法により評価した評価結果を表1Fに示す。
Figure 2022008024000010
表1Fの結果から、本実施形態の艶消物品Fは、その艶消耐光層側の60°グロス値が1.8以下であることから艶消効果の視認性に極めて優れており、また質感にも優れる物品であることが確認された。耐光性については、グロス値の変化率はいずれも20%以下であることから、優れた耐光性を有するものであることも確認された。
また、標準偏差(σ)は0.30未満であるためシワの形成が安定していることも確認されており、シワの形成の安定が艶消効果の視認性、質感及び耐光性につながっているものと考えられる。
一方、シワ形成安定剤を含まない比較例1Fの物品は、図33に示されるようにその表面にはシワが若干発生していたものの、安定的に艶消効果の視認性が得られず、部分的にグロス値が実施例と同じ部分は存在したが、部分的に高艶な部分があり面状態が不安定であり、質感に優れるものとはいえないものであった。不安定なことについては、グロス値の標準偏差が0.30以上であることからも分かる。
艶消剤を含む比較例2Fの物品は15.0質量部と実施例におけるシワ形成安定剤の含有量より多い量を含有させても、艶消耐光層に相当する表面の層にシワの形成がなく、その60°グロス値は8.3と、実施例の艶消物品のグロス値に劣っており、実施例におけるシワ形成安定剤の使用量より多い量の艶消剤を用いても、実施例の60°グロス値には至らないことが確認された。また、紫外線吸収剤を含まない比較例3Fの物品は、シワ形成安定剤を含むことから試験前の60°グロス値は1.4と小さく、また質感に優れるものではあったが、60°グロス値が64.3%も増加し、耐光性に優れるものとはいえないものであった。
また実施例1F及び2Fの光学顕微鏡画像(各々図30及び31)によれば、これらの実施例の艶消物品はその表面に不規則なシワを均一に有していることが確認できる。一方、比較例1Fの光学顕微鏡画像(図32)によれば既述のように、その表面にはシワが若干発生しており、部分的に実施例と同様のシワを有する領域はあるものの、シワの形成が不安定であり(均一でなく)、シワがない領域と混在していることが分かる。また、比較例2Fの光学顕微鏡画像(図33)によれば、実施例の艶消物品のようなシワは確認されず、艶消剤の輪郭形状に対応した凸形状が確認された。この結果から、本実施形態の艶消物品Fは、その表面のシワに起因して極めて優れた艶消効果の視認性が発現していることが確認された。
[実施例1G]
コロナ放電処理を施したポリプロピレンシート(厚さ:100μm)を基材とし、当該基材の一方の面に、印刷インキ(バインダー樹脂:2液硬化型アクリル-ウレタン樹脂)をグラビア法で塗布して着色層(厚さ:3μm)を設け、当該着色層上に、アクリル樹脂及びウレタン樹脂をバインダー樹脂とて含む樹脂組成物を塗布してプライマー層(厚さ:2μm)を設け、当該プライマー層上に、艶消筆記層形成用の樹脂組成物(多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー):65質量部、単官能アクリレートモノマー:35質量部、シワ形成安定剤1(シリカ粒子、平均粒子径:3μm):3質量部、シワ形成安定剤2(シリカ粒子、平均粒子径:5nm):3質量部、光重合開始剤(ベンゾフェノン系):0.8質量部)を、グラビア法により塗布し(塗布量:5g/m(乾燥時))、次いでLEDから構成されるUV照射装置を用いて紫外線を照射し(波長:395nm、紫外線量:6W/cm)、次いでエキシマ光照射装置を用いて紫外線を照射し(波長:172nm(Xe)、紫外線出力密度:1W/cm、積算光量:10~100mJ/cm、窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下))、次いで更に高圧水銀灯を用いて照射して(波長:365nm、紫外線出力密度:200W/cm)、基材上に艶消筆記層を設け、基材と艶消筆記層とを有する艶消物品を得た。得られた艶消物品について、上記方法にて60°グロス値を測定した。測定結果を表1Gに示す。また、上記方法にてマーカー消去性を評価した。評価結果を表1Gに示す。
[実施例2G及び3G]
実施例1Gにおいて、艶消筆記層形成用の樹脂組成物中のシワ形成安定剤を表1Gに示される使用量とした以外は、実施例1Gと同様にして、艶消物品を得た。得られた艶消物品について、上記方法にて60°グロス値を測定した。測定結果を表1Gに示す。また、上記方法にてマーカー消去性を評価した。評価結果を表1Gに示す。
[比較例1G]
実施例1Gにおいて、艶消筆記層形成用の樹脂組成物中のシワ形成安定剤の使用量を0質量部とした、すなわちシワ形成安定剤を使用しなかった以外は、実施例1Gと同様にして、物品を得た。得られた物品について、上記方法にて60°グロス値を測定した。測定結果を表1Gに示す。また、上記方法にてマーカー消去性を評価した。評価結果を表1Gに示す。
[比較例2G]
実施例1Gにおいて、艶消筆記層形成用の樹脂組成物中のシワ形成安定剤の使用量を0質量部とし、代わりに艶消剤(平均粒子径:8.0μm)を15.0質量部使用し、電子線(加速電圧:75kV、照射線量:30kGy(3Mrad))のみを照射した以外は、実施例1Gと同様にして、物品を得た。得られた物品について、上記方法にて60°グロス値を測定した。測定結果を表1Gに示す。また、上記方法にてマーカー消去性を評価した。評価結果を表1Gに示す。
Figure 2022008024000011
表1Gの結果から、本実施形態の艶消物品Gは、その艶消筆記層側の60°グロス値が2.0以下となっており、艶消効果による視認性に優れた物品であることが確認された。またマーカー消去性について、色差は小さく、優れており、また質感にも優れていることも確認された。
また、標準偏差(σ)は0.30未満であるためシワの形成が安定していることも確認されており、シワの形成の安定が艶消効果の視認性、質感及びマーカー消去性につながっているものと考えられる。
一方、シワ形成安定剤を含まない比較例1の物品は、図39に示されるようにその表面にはシワが若干発生していたものの、安定的に艶消効果による視認性が得られず、部分的にグロス値が実施例と同じ部分は存在したが、部分的に高艶な部分があり面状態が不安定であり(均一でなく)、質感に優れるものとはいえないものであった。不安定なことについては、グロス値の標準偏差が0.30以上であることからも分かる。
艶消剤を含むとともに表面にエキシマ光を照射しなかった比較例2Gの物品は艶消筆記層に相当する表面の層にシワの形成がなく、その60°グロス値は8.3と実施例の筆記シートのグロス値に劣っており、艶消効果による視認性に劣り、また質感にも劣るものであることが確認された。
また、比較例2Gの物品のマーカー消去性について、色差が大きく、劣るものであることも確認された。
また実施例1G~3Gの光学顕微鏡画像(各々図36~38)によれば、これらの実施例の艶消物品はその表面に不規則なシワを均一に有していることが確認できる。一方、比較例1Gの光学顕微鏡画像(図39)によれば既述のように、その表面にはシワが若干発生しており、部分的に実施例と同様のシワを有する領域はあるものの、シワの形成が不安定であり(均一でなく)、シワがない領域と混在していることが分かる。また、比較例2Gの光学顕微鏡画像(図40)によれば、実施例の艶消物品のようなシワは確認されず、艶消剤の輪郭形状に対応した凸形状が確認された。この結果から、本実施形態の艶消物品Gは、その表面のシワに起因して極めて優れた艶消効果による視認性が発現しており、また優れたマーカー消去性も発現し、質感に優れていることが確認された。
[実施例1H]
コロナ放電処理を施したPETシート(厚さ:100μm)を基材とし、当該基材の一方の面に、アクリル樹脂及びウレタン樹脂をバインダー樹脂として含む樹脂組成物を塗布してプライマー層(厚さ:2μm)を設け、当該プライマー層上に、艶消賦型層形成用の樹脂組成物(多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー):65質量部、単官能アクリレートモノマー:35質量部、シワ形成安定剤(シリカ粒子、平均粒子径:3μm):1.0質量部、光重合開始剤(ベンゾフェノン系):0.8質量部)を、グラビア法により塗布し(塗布量:5g/m(乾燥時))、次いでLEDから構成されるUV照射装置を用いて紫外線を照射し(波長:395nm、紫外線量:0.6W/cm)、次いでエキシマ光照射装置を用いて紫外線を照射し(波長:172nm(Xe)、紫外線出力密度:1W/cm、積算光量:10~100mJ/cm、窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下))、次いで更に高圧水銀灯を用いて照射して(波長:365nm、紫外線出力密度:200W/cm)、基材シート上に艶消賦型層を設け、基材(シート)と艶消賦型層とを有する艶消物品を得た。
次に、チタン紙原紙(「PM-602K(商品名」、KJ特殊紙株式会社製、坪量:60g/m、厚さ:100μm)に、メラミンホルムアルデヒド樹脂60質量部、水35質量部及びイソプロピルアルコール5質量部を含む熱硬化性の未硬化樹脂組成物を、含浸装置を用いて当該未硬化樹脂組成物が60g/m(乾燥時)の割合となるように含浸し、乾燥させることにより樹脂含浸化粧シートを得た。
得られた樹脂含浸化粧シートを、補強層(クラフト紙にフェノール樹脂からなる液体状の未硬化樹脂組成物に含浸させて得られた坪量245g/mのフェノール樹脂含浸コア紙(「太田コア」、太田産業株式会社製)を3枚重ねたもの)上に、チタン紙原紙と補強層とが接するように積層し、更に当該樹脂含浸化粧シートの装飾層と、艶消物品の艶消賦型層とが対向するように積層した。これを、2枚の鏡面板で挟み、熱プレス機を用いて、圧力0.98MPa、加熱温度150℃で10分間加熱成型をし、未硬化樹脂組成物を熱硬化性樹脂させることにより、メラミン樹脂を含有する硬化樹脂層を形成した。熱硬化性樹脂層から艶消物品を剥離することにより、艶消物品の艶消賦型層が有する形状(艶消表面)が賦型された、樹脂化粧材(メラミン樹脂化粧板)を得た。得られた艶消化粧材の艶消表面が賦型された側の表面について、上記方法で60°グロス値を測定した。測定結果を表1Hに示す。
[実施例2H]
実施例1Hにおいて、艶消賦型層形成用の樹脂組成物中のシワ形成安定剤を表1Hに示される使用量とした以外は、実施例1Hと同様にして、艶消物品を得た。得られた艶消物品を用いて、実施例1Hと同様にして艶消化粧材(メラミン樹脂化粧板)を得た。また、得られた艶消化粧材の60°グロス値を表1Hに示す。
[比較例1H]
実施例1Hにおいて、艶消賦型層形成用の樹脂組成物中のシワ形成安定剤の使用量を0質量部とした以外は、実施例1Hと同様にして物品を得た。得られた物品を用いて、実施例1Hと同様にして化粧材(メラミン樹脂化粧板)を得た。また、得られた化粧材の60°グロス値を表1Hに示す。
[比較例2H]
実施例1Hにおいて、艶消賦型層形成用の樹脂組成物中のシワ形成安定剤の使用量を0質量部とし、代わりに艶消剤(平均粒子径:5.0μm)を15.0質量部使用したものを用い、高圧水銀灯を用いて紫外線を照射(波長:365nm、紫外線出力密度:200W/cm)した以外は、実施例1Hと同様にして物品を得た。得られた物品を用いて、実施例1Hと同様にして化粧材(メラミン樹脂化粧板)を得た。また、得られた化粧材の60°グロス値を表1Hに示す。
Figure 2022008024000012
表1Hの結果から、本実施形態の艶消物品Hは、これを用いて得られた艶消化粧材の60°グロス値が1.4~1.8となっており、極めて優れた艶消効果の視認性を付与し得る艶消物品であることが確認された。
また、標準偏差(σ)は0.30未満であるためシワの形成が安定していることも確認されており、シワの形成の安定が艶消効果の視認性、質感の付与につながっているものと考えられる。
一方、シワ形成安定剤を含まない比較例1Hの物品は、図46に示されるようにその表面にはシワが若干発生していたものの、安定的に艶消効果の視認性が得られず、優れた質感を付与できるものではなかった。安定的に得られないことについては、グロス値の標準偏差が0.30以上であることからも分かる。
艶消剤を含む比較例2Hの物品は15.0質量部と実施例におけるシワ形成安定剤の含有量より多い量を含有させても、艶消賦型層に相当する表面の層にシワの形成がなく、これを用いて得られた化粧材60°グロス値は8.3と、実施例におけるシワ形成安定剤よりも多量に艶消剤を用いたにもかかわらず、実施例の艶消賦型シートのグロス値に劣っており、また質感にも劣るものであることが確認された。
また実施例1H~3Hの光学顕微鏡画像(各々図43~45)によれば、これらの実施例の艶消賦型シートはその表面に不規則なシワを均一に有していることが確認できる。一方、比較例1Hの光学顕微鏡画像(図46)によれば既述のように、その表面にはシワが若干発生しており、部分的に実施例と同様のシワを有する領域はあるものの、シワの形成が不安定であり(均一でなく)、シワがない領域と混在していることが分かる。また、比較例2Hの光学顕微鏡画像(図47)によれば、実施例の艶消物品のようなシワは確認されず、艶消剤の輪郭形状に対応した凸形状が確認された。この結果から、本実施形態の艶消物品Hは、その表面のシワに起因して極めて優れた艶消効果の視認性が発現しており、当該表面の優れた艶消効果の視認性及び質感を付与し得るものであることが確認された。
[実施例1I]
コロナ放電処理を施したポリプロピレンシート(厚さ:100μm)を基材とし、当該基材の一方の面に、印刷インキ(バインダー樹脂:2液硬化型アクリル-ウレタン樹脂)をグラビア法で塗布して着色層(厚さ:3μm)を設け、当該着色層上に、アクリル樹脂及びウレタン樹脂をバインダー樹脂として含む樹脂組成物を塗布してプライマー層(厚さ:2μm)を設け、当該プライマー層上に、艶消層形成用の樹脂組成物(多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー):65質量部、単官能アクリレートモノマー:35質量部、シワ形成安定剤(シリカ粒子、平均粒子径:3μm):3質量部、光重合開始剤(ベンゾフェノン系):0.8質量部)を、グラビア法により塗布し(塗布量:5g/m(乾燥時))、次いでLEDから構成されるUV照射装置を用いて紫外線を照射し(波長:395nm、紫外線量:6W/cm)、次いでエキシマ光照射装置を用いて紫外線を照射(波長:172nm(Xe)、紫外線出力密度:1W/cm、積算光量:10~100mJ/cm、窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下))して(1)の照射処理を行い、次いで電子線(加速電圧:75kV、照射線量:30kGy(Mrad))を照射して(2)の照射処理を行い、基材上に艶消層を設け、基材と艶消層とを有する艶消物品を得た。得られた艶消物品について、艶消層側から60°グロス値を測定したところ1.5であった。
[実施例2I及び3I]
実施例1Iにおいて、艶消層形成用の樹脂組成物中のシワ形成安定剤を表1Iに示される使用量とした以外は、実施例1Iと同様にして、艶消物品を得た。得られた艶消物品の艶消層側の60°グロス値及び質感の評価を表1Iに示す。
[実施例4I]
実施例1Iにおいて、電子線を、高圧水銀灯を用いた紫外線(波長:365nm、紫外線出力密度:200W/cm)にかえた以外は、実施例1Iと同様にして、艶消物品を得た。得られた艶消物品の艶消層側の60°グロス値及び質感の評価を表1Iに示す。
[比較例1I]
実施例1Iにおいて、艶消層形成用の樹脂組成物中のシワ形成安定剤の使用量を0質量部とした、すなわちシワ形成安定剤を使用しなかった以外は、実施例1Iと同様にして、物品を得た。得られた物品の艶消層側の60°グロス値及び質感の評価を表1Iに示す。
[比較例2I]
実施例1Iにおいて、シワ形成安定剤の使用量を0質量部とし、艶消剤(平均粒子径:8.0μm)を15.0質量部使用し、(1)の照射処理を行わず、電子線(加速電圧:75kV、照射線量:30kGy(3Mrad))のみを照射した以外は、実施例1Iと同様にして、物品を得た。得られた物品の艶消層側の60°グロス値及び質感の評価を表1Iに示す。
[比較例3I]
実施例1Iにおいて、(2)の照射処理(電子線の照射)を行わなかった以外は、実施例1Iと同様にして、物品を得た。得られた物品の艶消層側の60°グロス値及び質感の評価を表1Iに示す。
[比較例4I]
実施例1Iにおいて、(1)の照射処理を行わなかった以外は、実施例1Iと同様にして、物品を得た。得られた物品の艶消層側の60°グロス値及び質感の評価を表1Iに示す。
[比較例5I]
実施例4Iにおいて、(1)の照射処理の照射を行わなかった以外は、実施例4Iと同様にして、物品を得た。得られた物品の艶消層側の60°グロス値及び質感の評価を表1Iに示す。
Figure 2022008024000013

*1,表面の層が硬化せず、グロス値を測定できず、また質感の評価もできなかった。
表1Iの結果から、実施例の艶消物品は、その艶消層側の60°グロス値が2.0以下となっており、艶消効果の視認性に極めて優れ、質感にも優れた物品であることが確認された。以上より、本実施形態の製造方法Iにより得られた艶消物品Iは、優れた表面特性とともに、優れた艶消効果の視認性を有するものであることが確認され、また本実施形態の製造方法Iによれば艶消物品Iを容易に製造し得ることも確認された。
一方、シワ形成安定剤を含まない比較例1Iの物品は、図51に示されるようにその表面にはシワが若干発生していたものの、安定的に艶消効果の視認性は得られず、部分的にグロス値が実施例と同じ部分は存在したが、部分的に高艶な部分があり面状態が不安定であり(均一でなく)、質感に優れるものとはいえなかった。艶消剤を含む比較例2Iの物品は15.0質量部と実施例におけるシワ形成安定剤の含有量より多い量を含有させても、艶消層に相当する表面の層にシワの形成がなく、60°グロス値は8.3と実施例の艶消物品のグロス値に劣っており、また質感にも劣るものであることが確認された。(2)の照射処理を行わなかった比較例3Iでは最表面だけシワを形成し硬化したものの、表面層の内部が未硬化であったため60°グロス値を測定することはできず、表面特性に劣るものであり、また質感の評価もできないものであった。また、(1)の照射処理を行わず、(2)の電子線の照射処理を行った比較例4I、(1)の照射処理を行わず、(2)の紫外線の照射処理を行った比較例5Iの物品ではシワが形成しなかったためグロス値が極端に高く、艶消効果の視認性は得られず、一方グロス値が高いために質感の評価(面状態の均一性)についての問題は目立ちにくく、良好な結果となった。
実施例1I~3Iの光学顕微鏡画像(各々図48~50)によれば、これらの実施例の艶消物品はその表面に不規則なシワを有していることが確認できる。一方、比較例1Iの光学顕微鏡画像(図51)によれば既述のように、その表面にはシワが若干発生しており、部分的に実施例と同様のシワを有する領域はあるものの、シワの形成が不安定であり(均一でなく)、シワがない領域と混在していることが分かる。また、比較例2Iの光学顕微鏡画像(図52)によれば、実施例の艶消物品のようなシワは確認されず、艶消剤の輪郭形状に対応した凸形状が確認された。この結果から、本実施形態の製造方法Iにより得られる艶消物品Iは、その表面のシワに起因して極めて優れた艶消効果が発現していることが確認された。
[実施例1J]
コロナ放電処理を施したポリプロピレンシート(厚さ:100μm)を基材とし、当該基材の一方の面に、印刷インキ(バインダー樹脂:2液硬化型アクリル-ウレタン樹脂)をグラビア法で塗布して着色層(厚さ:3μm)を設け、当該着色層上に、アクリル樹脂及びウレタン樹脂をバインダー樹脂として含む樹脂組成物を塗布してプライマー層(厚さ:2μm)を設け、当該プライマー層上に、表面シワ層形成用の樹脂組成物(多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー):65質量部、単官能アクリレートモノマー:35質量部、シワ形成安定剤(シリカ粒子、平均粒子径:3μm):3質量部)を、グラビア法により塗布し(塗布量:5g/m(乾燥時))、エキシマ光照射装置を用いて紫外線を照射(波長:172nm(Xe)、紫外線出力密度:1W/cm、積算光量:10~100mJ/cm、窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下))して(1)の照射処理を行い、次いで電子線(加速電圧:75kV、照射線量:30kGy(3Mrad))を照射して(2)の照射処理を行い、基材上に表面シワ層を設け、基材と表面シワ層とを有する物品を得た。得られた物品について、表面シワ層側から60°グロス値を測定したところ1.5であった。
[実施例2J及び3J]
実施例1Jにおいて、表面シワ層形成用の樹脂組成物中のシワ形成安定剤を表1Jに示される使用量とした以外は、実施例1Jと同様にして、物品を得た。得られた物品の表面シワ層側の60°グロス値を表1Jに示す。
[実施例4J]
実施例1Jにおいて、電子線を、高圧水銀灯を用いた紫外線(波長:365nm、紫外線出力密度:200W/cm)にかえた以外は、実施例1Jと同様にして、物品を得た。得られた物品の表面シワ層側の60°グロス値を表1Jに示す。
[比較例1J]
実施例1Jにおいて、(2)照射処理を行わなかった以外は、実施例1Jと同様にして、物品を得た。得られた物品の表面シワ層側の60°グロス値を表1Jに示す。
[比較例2J]
実施例1Jにおいて、(1)照射処理を行わなかった以外は、実施例1Jと同様にして、物品を得た。得られた物品の表面シワ層側の60°グロス値を表1Jに示す。
[比較例3J]
実施例4Jにおいて、(1)照射処理を行わなかった以外は、実施例4Jと同様にして、物品を得た。得られた物品の表面シワ層側の60°グロス値を表1Jに示す。
Figure 2022008024000014

*1,グロス値を測定できなかった。
表1Jの結果から、実施例の物品は、表面シワ層形成用の樹脂組成物が硬化し表面シワ層を形成するものとなり、その表面シワ層側の60°グロス値が2.0以下となっており、表面特性に優れており、また艶消効果の視認性に極めて優れた物品であることが確認された。以上より、本実施形態の製造方法Jにより得られた物品Jは、優れた表面特性とともに、優れた艶消効果の視認性を有するものであることが確認され、また本実施形態の製造方法Jによれば物品を容易に製造し得ることも確認された。
一方、(2)の照射処理を行わなかった比較例1Jの物品は、最表面だけシワを形成し硬化したものの、表面層の内部が未硬化であったため60°グロス値を測定することはできなかった。(1)の照射処理を行わなかった比較例2Jの物品は、シワが形成せず表面シワ層を有するものではなく(図56も参照。)、60°グロス値は47.2と艶消効果を有するものではなかった。(1)の照射処理を行わず、(2)の照射処理を紫外線で行った比較例3Jの物品は、シワが形成せず、また硬化しなかったため、60°グロス値を測定することはできなかった。また、既述のように比較例1J及び3Jは表面層が未硬化であるため、優れた表面特性を有するものではなかった。
実施例4Jと比較例3Jとの対比から、(1)照射処理を行うことで、光重合開始剤を含まなくても、紫外線領域の波長光を照射するだけで、表面シワ層が硬化して形成するという特異な効果が確認できた。
実施例1J~3Jの光学顕微鏡画像(各々図53~55)によれば、これらの実施例の物品はその表面に不規則なシワを有しており、この結果から、本実施形態の製造方法Jにより得られる物品Jは、その表面のシワに起因して極めて優れた艶消効果の視認性が発現していることが確認された。また、比較例2Jの光学顕微鏡画像(図56)において、シワ形成安定剤が粒状に確認することができるが、シワが形成しておらず、表面シワ層を有するものではなく、実施例1J~3Jの図53~55と比べて、その表面の形態は全く異なるものであり、シワ形成安定剤がシワ形成安定剤としての機能を果たしていないことが確認できた。
本実施形態の艶消物品、また本実施形態の製造方法により得られる艶消物品等は、種々の用途、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装用部材、外壁、軒天井、屋根、塀、柵等の外装用部材、窓枠、扉、扉枠、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材の他、箪笥、棚、机等の一般家具、食卓、流し台等の厨房家具、台所、トイレ、風呂場、洗面台等の水廻りで用いられる各種家具及び部材、又は家電、OA機器等のキャビネット等の表面化粧板、車両の内装、外装用部材等の各種部材として好適に用いられる。
更に、上記の各種部材の他にも、艶消物品等は、単体で、又は他の素材と積層乃至は複合化した形態で、包装材料、ディスプレイ用防眩フィルム、白板又は黒板、クレジットカード、キャッシュカード、テレフォンカード、各種証明書類等の各種カード、各種キーボード類の鍵盤、窓、扉、間仕切り等の透明板(窓ガラス等)、人工皮革等に用いることができる。

Claims (46)

  1. 艶消層を有する艶消物品であって、前記艶消層が、シワ形成安定剤を樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下で含む樹脂組成物の硬化物により構成され、
    前記艶消層の少なくとも一方の面が不規則なシワにより構成される凹凸形状を有し、
    前記艶消層の60°グロス値が5.0以下である、艶消物品。
  2. 前記シワ形成安定剤が、平均粒子径が1μm以上、かつ前記艶消層の厚さの100%以下及び30μm以下のいずれか小さい方を上限とするシワ形成安定剤1を含む請求項1に記載の艶消物品。
  3. 前記シワ形成安定剤が、平均粒子径が1μm未満のシワ形成安定剤2を含む請求項1又は2に記載の艶消物品。
  4. 前記不規則なシワが、複数の線条突起部により形成する複数の凸部と、前記複数の線条突起部により囲まれて形成する凹部とにより構成される、請求項1~3のいずれか1項に記載の艶消物品。
  5. 前記艶消層が、艶消剤を含まない請求項1~4のいずれか1項に記載の艶消物品。
  6. 前記艶消層が、全面にわたって設けられる請求項1~5のいずれか1項に記載の艶消物品。
  7. 前記樹脂が、電離放射線硬化性樹脂である請求項1~6のいずれか1項に記載の艶消物品。
  8. 更に基材を有する請求項1~7のいずれか1項に記載の艶消物品。
  9. 前記艶消層の前記基材側とは反対側の面が、不規則なシワにより構成される凹凸形状を有する請求項8に記載の艶消物品。
  10. 前記基材が、合成樹脂シートである請求項8又は9に記載の艶消物品。
  11. 前記基材と、前記艶消層と、の間に、更に透明性樹脂層を有する請求項8~10のいずれか1項に記載の艶消物品。
  12. 下記ラビング試験を行う前の前記艶消層側の60°グロス値をGとし、前記ラビング試験を行った後の前記艶消層側の60°グロス値をGとしたときの、グロス値の変化率(|(G-G)|/G×100)が、20%以下である請求項1~11のいずれか1項に記載の艶消物品。
    (ラビング試験)
    摩耗試験機II形(JIS L0849:2013)に艶消物品を土台に配置し、当該艶消物品の艶消層に接触するようにスチールウール#0000をセットして、荷重1500g/cm、移動速度100mm/秒、往復移動距離100mmで30回往復させた。
  13. 床材又は建具部材に用いられる請求項1~12のいずれか1項に記載の艶消物品。
  14. 被着材と、請求項1~12のいずれか1項に記載の艶消物品とを、前記被着材と、前記艶消物品の基材とが接着剤層を介して対向するように有する床材。
  15. 被着材と、請求項1~12のいずれか1項に記載の艶消物品とを、前記被着材と、前記艶消物品の基材とが接着剤層を介して対向するように有する建具部材。
  16. 前記艶消層が艶消易除染層である、請求項1~11のいずれか1項に記載の艶消物品。
  17. 前記艶消易除染層が、フッ素樹脂、シリコーン樹脂及びフッ素-シリコーン共重合樹脂から選ばれる少なくとも一種の易除染剤を含む請求項16に記載の艶消物品。
  18. 前記易除染剤が、前記樹脂100質量部に対して0.5質量部以上25.0質量部以下で含まれる請求項17に記載の艶消物品。
  19. 前記艶消層が艶消耐光層であり、前記艶消耐光層を構成する樹脂組成物が、更にヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を含む請求項1~11のいずれか1項に記載の艶消物品。
  20. 前記ヒドロキシトリアジン系紫外線吸収剤が、以下一般式(1)で示されるものである請求項19に記載の艶消物品。
    Figure 2022008024000015

    (一般式(1)中、R11は単結合又は2価の有機基であり、R12は炭化水素基又は-C(=O)OR15で示されるエステル基、-O-C(=O)R16で示されるアシルオキシ基又は-OR17で示されるアルコキシ基であり、R13、R14、R15、R16及びR17は各々独立して1価の有機基であり、n11及びn12は各々独立して0~5の整数である。)
  21. 前記艶消層が艶消筆記層である、請求項1~11のいずれか1項に記載の艶消物品。
  22. 基材が、基材シートと着色層とを有する請求項21に記載の艶消物品。
  23. 筆記ボードに用いられる請求項21又は22に記載の艶消物品。
  24. 前記艶消層が艶消賦型層であり、賦型に用いられる、請求項1~11のいずれか1項に記載の艶消物品。
  25. 請求項24に記載の艶消物品を用いて賦型する、艶消物品の製造方法。
  26. 前記賦型が、前記艶消物品をローラーに配置したエンボスローラーを用いて行うものである、請求項25に記載の艶消物品の製造方法。
  27. 樹脂組成物を含浸した基材と、前記艶消物品とを、前記艶消物品の艶消賦型層と前記基材とが対向するように配置し、加熱加圧成形して前記樹脂組成物を硬化させた後、前記艶消物品を剥離する、請求項26に記載の艶消物品の製造方法。
  28. 前記樹脂組成物が、メラミン樹脂又はジアリルフタレート樹脂(DAP)を含む請求項27に記載の艶消物品の製造方法。
  29. シワ形成安定剤を、樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下で含み、かつ光重合開始剤を含む樹脂組成物を、以下(1)及び(2)の照射処理を順に行い、前記樹脂組成物を硬化させて艶消層を形成する工程を含む、
    前記艶消層の少なくとも一方の面が不規則なシワにより構成される凹凸形状を有し、
    前記艶消層の60°グロス値が5.0以下である、
    艶消物品の製造方法。
    (1)100nm以上200nm未満の波長光の照射処理
    (2)電子線及び200nm以上400nm以下の波長光の少なくとも一方での照射処理
  30. 前記(1)の波長光が、100nm以上185nm以下の波長光である請求項29に記載の艶消物品の製造方法。
  31. 前記(2)の照射処理が、電子線の照射処理である請求項29又は30に記載の艶消物品の製造方法。
  32. 前記照射処理の前に、(3)予備硬化のための照射処理を行う請求項29~31のいずれか1項に記載の艶消物品の製造方法。
  33. 前記(3)予備硬化のための照射処理が、320nm超400nm以下の波長光の照射処理である請求項32に記載の艶消物品の製造方法。
  34. 前記光重合開始剤の含有量を、前記樹脂100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下で含む請求項29~33のいずれか1項に記載の艶消物品の製造方法。
  35. 前記シワ形成安定剤が、平均粒子径が1μm以上、かつ艶消層の厚さの100%以下及び30μm以下のいずれか小さい方を上限とするシワ形成安定剤1を含む請求項29~34のいずれか1項に記載の艶消物品の製造方法。
  36. 前記シワ形成安定剤が、平均粒子径が1μm未満のシワ形成安定剤2を含む請求項29~35のいずれか1項に記載の艶消物品の製造方法。
  37. 前記樹脂組成物を基材の少なくとも一方の主面側に塗布し、前記艶消層を前記基材の少なくとも一方の主面側に形成する請求項29~36のいずれか1項に記載の艶消物品の製造方法。
  38. 前記不規則なシワが、複数の線条突起物により形成する複数の凸部と、前記複数の線条突起部により囲まれて形成する凹部とにより構成される請求項29~37のいずれか1項に記載の艶消物品の製造方法。
  39. 光重合開始剤を含まない樹脂組成物を、以下(1)及び(2)の照射処理を順に行い、前記樹脂組成物を硬化させて、表面シワ層を形成する工程を含む、物品の製造方法。
    (1)100nm以上200nm未満の波長光の照射処理
    (2)電子線及び200nm以上400nm以下の波長光の少なくとも一方での照射処理
  40. 前記樹脂組成物が、平均粒子径が前記表面シワ層の厚さの100%以下及び30μm以下のいずれか小さい方を上限とするシワ形成安定剤を、樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下で含むものであり、前記表面シワ層の少なくとも一方の面が不規則なシワにより構成される凹凸形状を有し、前記表面シワ層の60°グロス値が5.0以下である、請求項39に記載の物品の製造方法。
  41. 前記(2)の照射処理が、200nm以上400nm以下の波長光の照射処理である請求項39又は40に記載の物品の製造方法。
  42. 前記シワ形成安定剤が、平均粒子径が1μm以上、かつ前記表面シワ層の厚さの100%以下及び30μm以下のいずれか小さい方を上限とするシワ形成安定剤1を含む請求項40又は41に記載の物品の製造方法。
  43. 前記シワ形成安定剤が、平均粒子径が1μm未満のシワ形成安定剤2を含む請求項40~42のいずれか1項に記載の物品の製造方法。
  44. 前記樹脂組成物を基材の少なくとも一方の主面側に塗布し、前記表面シワ層を前記基材の少なくとも一方の主面側に形成する請求項39~43のいずれか1項に記載の物品の製造方法。
  45. 前記表面シワ層の前記基材側とは反対側の面が、不規則なシワにより構成される凹凸形状を有する請求項44に記載の物品の製造方法。
  46. 前記不規則なシワが、複数の線条突起物により形成する複数の凸部と、前記複数の線条突起部により囲まれて形成する凹部とにより構成される請求項45に記載の物品の製造方法。
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