JP6365161B2 - 化粧シート及び化粧材 - Google Patents
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Description
これら化粧シートは、照明等の外光が写り込むと見栄えを損なうことから、表面を凹凸化する等して低艶処理される場合がある。
上述した低艶化の手段の一例として、特許文献1〜3等が開示されている。
特許文献3には、サンドブラスト処理したエンボス版を用いてエンボス処理してなる化粧シートが開示されている。
しかし、艶を低くしすぎると、表面凹凸による光拡散が過度となり白化を生じてしまい、化粧シートの下部に位置する絵柄の階調レベル及び鮮明性が低下し、意匠性を損なうという問題がある。
また、近年、化粧シートには高級感が求められるようになっており、化粧シートの高級感は艶によっても付与される。しかし、単に艶を高くした化粧シートは正反射光の強度が強くなり過ぎ、視認者に不快感を与えるという問題があった。
0.82μm≦Ra2.5≦3.80μm (1)
Ra0.08≦0.39μm (2)
[2]前記凹凸面の任意の方向について、さらに以下の条件(3)を満たす上記[1]に記載の化粧シート。
0.05≦Ra0.08/[Ra2.5−Ra0.08]≦0.50 (3)
[3]前記凹凸面の任意の方向について、カットオフ値を2.5mmとした際のJIS B0601:1994の十点平均粗さ(Rz2.5)が以下の条件(4)を満たす上記[1]又は[2]に記載の化粧シート。
Rz2.5≦15.00μm (4)
[4]前記凹凸面の任意の方向について、カットオフ値を0.08mmとした際のJIS B0601:1994の十点平均粗さ(Rz0.08)が以下の条件(5)を満たす上記[1]〜[3]の何れかに記載の化粧シート。
Rz0.08≦1.80μm (5)
350μm≦Sm2.5 (6)
[6]基材上に凹凸層を有してなり、該凹凸層の表面が前記凹凸面である上記[1]〜[5]の何れかに記載の化粧シート。
[7]前記基材と前記凹凸層との間に意匠層を有してなる上記[6]に記載の化粧シート。
[8]前記意匠層が木目模様を含む上記[7]に記載の化粧シート。
[9]被着材と、上記[1]〜[8]の何れかに記載の化粧シートの凹凸面とは反対側の面とを積層し、一体化してなる化粧材。
[10]床用の化粧材として用いる上記[9]に記載の化粧材。
本発明の化粧シートは、少なくとも一方の表面が凹凸面である化粧シートであって、該凹凸面の任意の方向について、カットオフ値を2.5mmとした際のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(Ra2.5)、及びカットオフ値を0.08mmとした際のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(Ra0.08)が、以下の条件(1)及び(2)を満たすものである。
0.82μm≦Ra2.5≦3.80μm (1)
Ra0.08≦0.39μm (2)
なお、本発明の化粧シートは、少なくとも一方の表面が凹凸面であり、該凹凸面の任意の方向について上記条件(1)及び(2)の条件を満たすものであればよく、図1に示す各層は任意の構成要件である。
本発明の化粧シートは、少なくとも一方の表面が凹凸面であり、該凹凸面の任意の方向について上記条件(1)及び(2)を満たすものである。条件(1)及び(2)は、異なるカットオフ値のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(Ra)を規定している。以下、異なるカットオフ値のRaを規定する技術的意義について説明する。
カットオフ値は、粗さ成分(高周波成分)と、うねり成分(低周波成分)とから構成される断面曲線から、うねり成分(低周波成分)をカットする度合いを示す値である。言い換えると、カットオフ値は、断面曲線からうねり成分(低周波成分)をカットするフィルターの細かさを示す値である。より具体的には、カットオフ値が大きいと、フィルターが粗いため、うねり成分(低周波成分)のうち大きなうねりはカットされるが、小さなうねりはカットされないこととなる。つまり、カットオフ値が大きいと、うねり成分(低周波成分)を含んだ値となる。一方、カットオフ値が小さいと、フィルターが細かいため、うねり成分(低周波成分)のほとんどがカットされることとなる。つまり、カットオフ値が小さいと、うねり成分(低周波成分)を殆ど含まない、粗さ成分(高周波成分)が正確に反映された値となる。
JIS B0601で参照するJIS B0633では、表面粗さの程度に応じて、特定のカットオフ値(基準長さ)を採用することが定められている。汎用の化粧シートであればカットオフ値は2.5mmであり、従来の化粧シートでは、カットオフ値2.5mmのみで表面粗さを管理していた。
しかし、一つのカットオフ値のRaに基づいた場合、粗さ成分(高周波成分)、及びうねり成分(低周波成分)の両者を意図した表面凹凸の設計をすることができず、表面形状の設計に限界がある。
本発明では、あえて2つのカットオフ値を用いることにより、粗さ成分(高周波成分)、及びうねり成分(低周波成分)の両者を反映させた表面凹凸の設計を可能としている。
つまり、視認者は、拡散反射強度の絶対値、及び視野の中心付近における拡散反射強度の差により艶を認識し、さらに、艶を認識する範囲が狭すぎず広すぎないことにより高級感を認識している。そして、条件(1)により高級感のある艶を付与し得る。
条件(1)は、1.00μm≦Ra2.5≦3.50μmを満たすことがより好ましく、1.25μm≦Ra2.5≦3.00μmを満たすことがさらに好ましい。
また、本発明において、条件(1)及び(2)、並びに後述するその他の条件は、化粧シートの少なくとも任意の方向において満たしていれば良い。例えば化粧シートを床材として用いる場合、窓に対して垂直な方向(窓から太陽光が差し込む方向)は拡散反射強度が強く、艶の認識に深く関わる点で重要であり、また、扉に対して垂直な方向(扉に向って人間が歩く方向)は人間の視野に入りやすい点で重要である。したがって、任意の方向において、条件(1)及び(2)、並びに後述するその他の条件を満たしていれば、該方向において各条件による効果を十分に発揮できる。
Ra0.08の下限は特に制限されないが、Ra0.08を所定の値以上とした場合、拡散反射強度の分布を緩和し、拡散反射強度の急激な変化に伴う視認性の低下を抑制することができる点で好ましい。例えば、低周波成分の凹凸の中に急激な角度変化を生じる箇所があると、反射強度分布の中で反射強度が急変する角度が生じ、欠陥として認識されるが、Ra0.08を所定の値以上として高周波成分の凹凸を付与することにより、反射強度の急変を緩和し、欠陥として認識させにくくできる。
条件(2)は、0.10μm≦Ra0.08≦0.35μmを満たすことが好ましく、0.20μm≦Ra0.08≦0.35μmを満たすことがより好ましい。
0.05≦Ra0.08/[Ra2.5−Ra0.08]≦0.50 (3)
条件(3)を満たすことで、表面凹凸内に低周波成分と高周波成分が適度に含まれ、白化を生じることなく、均一で滑らかな艶を付与することができる。
条件(3)は、0.10≦Ra0.08/[Ra2.5−Ra0.08]≦0.40を満たすことがより好ましく、0.10≦Ra0.08/[Ra2.5−Ra0.08]≦0.30を満たすことがさらに好ましい。
0.50μm≦Ra2.5−Ra0.08≦3.50μm (3’)
条件(3’)は、0.75μm≦Ra2.5−Ra0.08≦3.00μmを満たすことがより好ましく、1.00μm≦Ra2.5−Ra0.08≦2.75μmを満たすことがさらに好ましい。
Rz2.5≦15.00μm (4)
十点平均粗さ(Rz)は、カットオフ値と等しいサンプリング長さのN倍の評価長さの粗さ曲線をN等分し、区間毎に第1位から第5位までの高さの山頂の平均標高と第1位から第5位までの深さの谷底の平均標高の間隔Rz’を求めたときのN個のRz’の算術平均値である。このように、Rzは、粗さ曲線のうち、標高の高い箇所及び低い箇所に注目した値である。一方、算術平均粗さ(Ra)は、粗さ曲線全体の標高の平均値である。つまり、RzはRaと同様に、粗さ曲線の粗さの程度を示すものの、粗さ曲線の凹凸のランダム性を表していると言える。
このため、条件(4)は、3.50μm≦Rz2.5≦13.00μmを満たすことがより好ましく、4.50μm≦Rz2.5≦12.00μmを満たすことがさらに好ましい。
Rz0.08≦1.80μm (5)
Rz0.08を1.80μm以下とすることにより、高周波成分のランダム性を抑え、白化を抑制しやすくできる。また、Rz0.08を所定の値以上とした場合、高周波成分のランダム性によって、化粧シートの外観に自然感を付与できるとともに、欠陥を目立ちにくくできる点で好適である。
このため、条件(5)は、0.50μm≦Rz0.08≦1.50μmを満たすことがより好ましく、0.75μm≦Rz0.08≦1.20μmを満たすことがさらに好ましい。
350μm≦Sm2.5 (6)
Sm2.5を350μm以上とすることにより、より艶を感じやすくすることができる。条件(6)は、400μm≦Sm2.5μmを満たすことがより好ましく、500μm≦Sm2.5を満たすことがさらに好ましい。なお、Sm2.5が大きすぎると、化粧シート面内の広い範囲で拡散反射強度が均一化される傾向にあることから、Sm2.5は800μm以下であることが好ましく、700μm以下であることがより好ましい。
型に流し込む材料として硬化性樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物又は電離放射線硬化性樹脂組成物)を用いる場合、型から取り出す前に硬化性樹脂組成物を硬化することが好ましい。
型による凹凸面の形成は、凹凸形状の再現性に優れる点で好ましい。
(c)の手段単独で凹凸面を形成する手段としては、まず、単層の凹凸層で凹凸面を形成する手段が考えられる。具体的には、凹凸層に2種類の粒子を含有させ、それぞれの粒子の凝集度合いが異なるように凝集を制御する手段が考えられる。しかし、複数の粒子の凝集の制御は難しい。このため、(c)の手段単独で凹凸面を形成する場合には、低周波の凹凸を有する層(低周波凹凸層)上に、高周波の凹凸を有する層(高周波凹凸層)を積層することが好ましい。
上述した凹凸面の形成手法の中でも、(c)の手段で形成した低周波凹凸層上に、(c)の手段で高周波凹凸層を積層する手法、(c)の手段で形成した高周波凹凸層に、(a)の手段により低周波成分を付加する手法(この場合の(a)の手段としてはエンボスが好適である)、及び(b)の手段単独による手法が好適である。
基材
基材は特に制限されないが、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等のプラスチックフィルム、紙類、あるいはこれらの複合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリオレフィン樹脂シートが好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン樹脂、エチレン/プロピレン共重合体樹脂、エチレン/プロピレン/ブテン共重合体樹脂、オレフィン熱可塑性エラストマー等が挙げられる。耐候性や、耐擦傷性等の表面保護特性の観点から、ポリプロピレン樹脂が好ましい。これら基材は、意匠性の観点から着色されていてもよい。
また、基材としてプラスチックフィルムを用いる場合、機械的強度の観点から、二軸延伸されたものが好適である。
基材の厚さは、機械的強度及び取り扱い性の観点から、20〜200μmが好ましく、40〜160μmがより好ましく、40〜100μmがさらに好ましい。
また、化粧シートの総厚みは、80〜400μmが好ましく、100〜300μmがより好ましく、130〜250μmがさらに好ましい。
これらの他、リンター紙、板紙、石膏ボード用原紙、又は紙の表面に塩化ビニル樹脂層を設けたビニル壁紙原反等、建材分野で使われることの多い各種紙が挙げられる。さらには、事務分野や通常の印刷、包装等に用いられるコート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙、又は和紙等を用いることもできる。また、これらの紙とは区別されるが、紙に似た外観と性状を持つ各種繊維の織布や不織布も基材として使用することができる。各種繊維としてはガラス繊維、石綿繊維、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、若しくは炭素繊維等の無機質繊維、又はポリエステル繊維、アクリル繊維、若しくはビニロン繊維等の合成樹脂繊維が挙げられる。
凹凸層は、樹脂成分を含むことが好ましく、必要に応じてさらに粒子を含むことが好ましい。
また、凹凸層は、例えば、低周波凹凸層上に、高周波凹凸層が積層されてなるような多層構成であってもよい。
凹凸層の総厚みは、付与する凹凸形状、あるいは凹凸層よりも基材側に位置する層(熱可塑性樹脂層等)の構成により異なるため一概には言えないが、0.1〜60μmが好ましく、10〜45μmがより好ましく、10〜35μmがさらに好ましい。
凹凸層の厚みは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影した断面の画像から20箇所の厚みを測定し、20箇所の値の平均値から算出できる。測定する膜厚がμmオーダーの場合、SEMを用いることが好ましく、nmオーダーの場合、TEM又はSTEMを用いることが好ましい。SEMの場合、加速電圧は1〜10kV、倍率は1000〜7000倍とすることが好ましく、TEM又はSTEMの場合、加速電圧は10〜30kV、倍率は5万〜30万倍とすることが好ましい。後述する意匠層及び隠蔽層等の厚みも同様にして算出できる。
熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物には、これら硬化性樹脂に、必要に応じて硬化剤が添加される。
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、なかでも多官能(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。
多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートモノマーであればよく、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が好ましく挙げられる。これらの(メタ)アクリレートモノマーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
以上の重合性(メタ)アクリレートオリゴマーの内、多官能ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーが好ましい。多官能ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、優れた表面保護特性を付与することができ、また製造過程において化粧シートの収縮を抑制できるためである。
多官能(メタ)アクリレートオリゴマーの官能基数は2以上であれば特に制限はないが、表面保護特性及び製造時の収縮抑制の観点から、2〜8が好ましく、より好ましくは2〜6である。
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤等を用いることができる。
低周波凹凸層は、凹凸層を低周波凹凸層及び高周波凹凸層の積層構成とする際の下層としての役割、あるいは、低周波凹凸層上に上述した手段(a)により高周波成分を付与する際の、下地となる低周波凹凸層としての役割を有する。
低周波凹凸層の粒子は表面凹凸をし得るものであれば、有機粒子及び無機粒子の何れも用いることができる。有機粒子としては、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル−スチレン共重合体、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ベンゾグアナミン−メラミン−ホルムアルデヒド縮合物、シリコーン、フッ素系樹脂及びポリエステル系樹脂等からなる粒子が挙げられる。無機粒子としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア及びチタニア等からなる粒子が挙げられる。これら粒子の中でも、優れた低艶感が得られ、また容易に調達できて安価であるとの観点から無機粒子が好適であり、無機粒子の中でもシリカが好適である。
また、低周波の凹凸を形成しやすくする観点から、低周波凹凸層中では粒子が適度に凝集していることが好ましい。粒子を適度に凝集させる観点からは、粒子としては、表面処理等をしていない未処理シリカ等が好適である。
低周波凹凸層の厚みは、低周波凹凸層中の粒子の平均粒子径に対して、40〜2000%であることが好ましく、100〜1000%であることがより好ましい。
粒子の平均粒子径を算出する際において、算出する平均粒子径がμmオーダーの場合、SEMを用いることが好ましく、nmオーダーの場合、TEM又はSTEMを用いることが好ましい。SEMの場合、加速電圧は1〜10kV、倍率は1000〜7000倍とすることが好ましく、TEM又はSTEMの場合、加速電圧は10〜30kV、倍率は5万〜30万倍とすることが好ましい。
低周波調整層は、樹脂成分を含有し、粒子を実質的に含有しないことが好ましく、粒子を完全に含有しないことがより好ましい。
高周波凹凸層は、凹凸層を低周波凹凸層及び高周波凹凸層の積層構成とする際の上層としての役割、あるいは、高周波凹凸層上に上述した手段(a)により低周波成分を付与する際の、下地となる層としての役割を有する。
高周波凹凸層の粒子は、低周波凹凸層の粒子として例示した機粒子及び無機粒子の何れも用いることができる。これらの中でも、優れた低艶感が得られ、また容易に調達できて安価であるとの観点から無機粒子が好適であり、無機粒子の中でもシリカが好適である。
また、高周波の凹凸を形成しやすくする観点から、高周波凹凸層中では粒子が凝集せずに分散していることが好ましい。粒子を分散させる観点からは、粒子としては、表面を疎水化処理したシリカが好適である。
高周波凹凸層中の粒子の平均粒子径は、0.1〜20μmが好ましく、0.3〜10μmがより好ましく、0.3〜5μmがさらに好ましい。なお、高周波の凹凸を形成しやすくする観点から、一次粒子の平均粒子径が前記範囲を満たすことが好ましい。
高周波凹凸層の厚みは、高周波凹凸層中の粒子の平均粒子径に対して、150〜700%であることが好ましく、400〜700%であることがより好ましい。
高周波調整層は、樹脂成分を含有し、粒子を実質的に含有しないことが好ましく、粒子を完全に含有しないことがより好ましい。
意匠層は、化粧シートの意匠性を高めることを目的として、必要に応じて設けられる。意匠層は、例えば基材と凹凸層との間に設けられる。
意匠層としては、着色層、絵柄層等が挙げられる。これらの層は、同一種または異種の層を積層する等して、適宜組み合わせて用いてもよい。
着色層の形成に用いられるインキとしては、バインダーに顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したものが使用される。
バインダーとしては特に制限はなく、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
着色剤としては、化粧シートの用途や絵柄層との色の相性等から適宜選択すればよいが、例えばカーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。
熱可塑性樹脂層は、基材や意匠層の保護のために、必要に応じて、基材と凹凸層との間、あるいは意匠層と凹凸層との間に設けられる。
熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂としては、各種熱可塑性樹脂を用いることができるが、ポリオレフィン樹脂が好適である。
ポリオレフィン樹脂としては、基材を構成する材料として例示したポリオレフィン樹脂を好ましく採用することができる。これらのポリオレフィン樹脂のうち、ポリプロピレン樹脂が好ましく、ホモポリプロピレン樹脂がより好ましい。
熱可塑性樹脂層の厚さは、基材や意匠層の保護、機械的強度、取り扱い性等の観点から、5〜200μmであることが好ましく、10〜150μmであることがより好ましく、10〜100μmであることがさらに好ましい。
接着剤層は、熱可塑性樹脂層の密着性を向上させるために、必要に応じて、基材と熱可塑性樹脂層との間、あるいは意匠層と熱可塑性樹脂層との間に設けられる。
接着剤層で使用する接着剤は、基材、意匠層、及び熱可塑性樹脂層を構成する材料に応じて適宜選択することができ、例えばポリエチレン、ポリプロピレンエラストマー等のα-ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。なかでも、密着性や耐熱性等の観点から、ポリエステル樹脂が好適であり、そのなかでも2液硬化性ポリウレタン樹脂が好適である。
接着剤層の厚さは、使用する接着剤の種類等により異なるが、通常は0.1〜30μm程度とすることが好ましく、1〜15μmとすることがより好ましい。
プライマー層は、凹凸層の密着性を向上させるために、必要に応じて、熱可塑性樹脂層と凹凸層との間、基材と凹凸層との間等に設けられる。
プライマー層は樹脂を主成分とすることが好ましい。プライマー層の樹脂としては、エステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。また、プライマー層の樹脂は2液硬化性樹脂でもよい。これらの樹脂のうち、密着性の観点から2液硬化性樹脂が好ましい。
2液硬化性樹脂としては、主剤に硬化剤を添加して硬化する樹脂であれば特に制限はなく、主剤がポリオール(多価アルコール)であり、硬化剤がイソシアネート硬化剤である2液硬化性ウレタン樹脂が好ましい。
プライマー層の厚さは、通常0.5〜20μm程度であり、1〜10μmが好ましい。
裏面プライマー層は、基材と各種の被着材との接着性を向上させる目的で好ましく設けられる層であり、化粧シートの凹凸面とは反対側の面(例えば、基材の凹凸層とは反対側の面)に設けられる。
裏面プライマー層の形成に用いられる材料としては特に限定されず、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂等が挙げられ、被着材の材質によって、適宜選択すればよい。
また、裏面プライマー層の厚さは、1〜5μmであることが好ましく、1〜3μmであることがより好ましい。
本発明の化粧材は、被着材と、上述した本発明の化粧シートの凹凸面とは反対側の面とを積層し、一体化してなるものである。
被着材は、例えば、木材単板、木材合板、パーチクルボード、MDF(中密度繊維板)等の木質板;石膏板、石膏スラグ板等の石膏系板;珪酸カルシウム板、石綿スレート板、軽量発泡コンクリート板、中空押出セメント板等のセメント板;パルプセメント板、石綿セメント板、木片セメント板等の繊維セメント板;陶器、磁器、土器、硝子、琺瑯等のセラミックス板;鉄板、亜鉛メッキ鋼板、ポリ塩化ビニルゾル塗布鋼板、アルミニウム板、銅板等の金属板;ポリオレフィン樹脂板、アクリル樹脂板、ABS板、ポリカーボネート板等の熱可塑性樹脂板;フェノール樹脂板、尿素樹脂板、不飽和ポリエステル樹脂板、ポリウレタン樹脂板、エポキシ樹脂板、メラミン樹脂板等の熱硬化型樹脂板;フェノール樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等の樹脂を、硝子繊維不織布、布帛、紙、その他の各種繊維質基材に含浸硬化して複合化したいわゆるFRP板等が挙げられ、これらを単独で用いてもよく、これらの2種以上を積層した複合基板として用いてもよい。
実施例及び比較例で作製した化粧シートについて、以下の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
(1)表面粗さ測定(カットオフ値2.5mm)
表面粗さ測定器(東京精密社製、商品名:SURFCOM FLEX−50A)を用いて、下記の測定条件により、化粧シートの凹凸層側の最表面のJIS B0601:1994のRa、Rz、及びSmを測定した。なお、木目導管模様のエンボス加工を行った化粧シート(実施例1、比較例5)については、木目導管模様の配列方向と垂直な方向で測定し、それ以外の化粧シートについては任意の方向で測定した。
[表面粗さ検出部の触針]
東京精密株式会社製の商品名DM43801(先端曲率半径:2μm、頂角:60度、材質:ダイヤモンド)
[表面粗さ測定器の測定条件]
・基準長さ(粗さ曲線のカットオフ値λc):2.5mm
・評価長さ(基準長さ(カットオフ値λc)×5):12.5mm
・触針の送り速さ:0.6mm/s
・予備長さ:(カットオフ値λc)×2
・縦倍率:1000倍
・横倍率:20倍
表面粗さ測定器(東京精密社製、商品名:SURFCOM FLEX−50A)を用いて、下記の測定条件により、実施例及び比較例で作製した化粧シートの凹凸層側の最表面のJIS B0601:1994のRa及びRzを測定した。なお、木目導管模様のエンボス加工を行った化粧シート(実施例1、比較例5)については、木目導管模様の配列方向と垂直な方向で測定し、それ以外の化粧シートについては任意の方向で測定した。
[表面粗さ検出部の触針]
東京精密株式会社製の商品名DM43801(先端曲率半径:2μm、頂角:60度、材質:ダイヤモンド)
[表面粗さ測定器の測定条件]
・基準長さ(粗さ曲線のカットオフ値λc):0.08mm
・評価長さ(基準長さ(カットオフ値λc)×5):0.4mm
・触針の送り速さ:0.6mm/s
・予備長さ:(カットオフ値λc)×2
・縦倍率:5000倍
・横倍率:500倍
化粧シートを凹凸面が上を向くように水平な台に置き、45度の角度から蛍光灯で化粧シートの凹凸面を照射した。蛍光灯の光の正反射方向となる位置から化粧シートの艶及び白化の度合いを観察した。各化粧シートの艶、白化の見え方を表1に示す。
[実施例1]
基材として着色ポリプロピレンシート(厚さ:60μm,ランダムポリプロピレン樹脂)を用意して、該シートの一方の面に、プライマー剤(アクリルウレタン樹脂系)を用いてグラビアコート法により裏面プライマー層(厚さ:2μm)を設けた。次いで、該裏面プライマー層を設けた面とは反対側の面に、グラビアコート法により、木目模様の絵柄層(厚さ:3μm)、接着剤層(ポリエステル樹脂,厚さ:5μm)を順次形成した。 次いで、接着剤層上に、熱可塑性樹脂層(透明ポリプロピレン樹脂シート、厚さ:80μm)を押出しラミネート方式で積層した。
次いで、透明ポリオレフィン樹脂シートの表面に、コロナ放電処理を施した後、2液硬化性ウレタン樹脂組成物を塗布してプライマー層(厚さ:2μm)を形成し、裏面プライマー層、着色ポリプロピレンシート、絵柄層、接着剤層、透明ポリプロピレン樹脂シート/プライマー層を順に有する積層体Aを得た。
・2官能ウレタンアクリレートオリゴマー 80部
(重量平均分子量:1500,ガラス転移温度:−55℃)
・6官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー 20部
(重量平均分子量:1500,ガラス転移温度:200℃以上)
(「UA306H(商品名)」,共栄社化学株式会社製)
・無機粒子 14部
(疎水化処理シリカ、平均粒子径:3μm,細孔容量:5ml/g以上)
レーザー微細加工技術により凹凸を形成した型を作製した。該型に、凹凸層塗布液2(高周波凹凸層塗布液1から無機粒子を除いたもの)を流し込んだ後、該型に上記積層体Aのプライマー層側の面を重ね合わせた。
次いで、電子線照射装置を用いて、酸素濃度:200ppm、加速電圧:175keV、照射量:5Mradの条件で電子線を照射して電離放射線硬化性樹脂組成物の未硬化樹脂層を硬化させた後、型から積層体A及び凹凸層を取り出し、積層体A上に凹凸層(厚さ:15μm)を有する化粧シートを得た。
実施例1のエンボス加工を行わないことに変更した以外は、実施例1と同様にして、化粧シートを得た。
比較例1の高周波凹凸層塗布液中の無機粒子を下記に変更した以外は、比較例1と同様にして、化粧シートを得た。
・無機粒子(未処理シリカ、平均粒子径:9μm、細孔容量:5ml/g以上)
実施例1のエンボスロールを砂目模様に変更した以外は、実施例1と同様にして、化粧シートを得た。エンボス加工により形成された凹部の形状は、凹部の短辺方向の間口の幅をb1(μm)、凹部の短辺方向底部の幅をb2(μm)、凹部の深さをh(μm)、凹部の長辺方向の間口の幅sとし、測定長10mmで任意の10箇所の凹部について各々測定して得られた測定値の平均値としたとき、凹部の面積比率:50%,幅b2/深さh:8.4,幅b2/幅b1:0.29,深さh:15μm,幅b1/幅s:0.5×10-2を有する砂目模様であった。
実施例1の高周波凹凸層塗布液中の無機粒子を下記に変更し、エンボスロールを比較例3とは別の砂目模様に変更した以外は、実施例1と同様にして、化粧シートを得た。エンボス加工により形成された凹部の形状は、凹部の短辺方向の間口の幅をb1(μm)、凹部の短辺方向底部の幅をb2(μm)、凹部の深さをh(μm)、凹部の長辺方向の間口の幅sとし、測定長10mmで任意の10箇所の凹部について各々測定して得られた測定値の平均値としたとき、凹部の面積比率:50%,幅b2/深さh:7.5,幅b2/幅b1:0.26,深さh:16μm,幅b1/幅s:0.6×10-2を有する砂目模様であった。
・無機粒子(未処理シリカ、平均粒子径:11μm、細孔容量:1ml/g)
実施例1のエンボスロールを実施例1とは別の木目模様に変更した以外は、実施例1と同様にして、化粧シートを得た。エンボス加工により形成された凹部の形状は、凹部の短辺方向の間口の幅をb1(μm)、凹部の短辺方向底部の幅をb2(μm)、凹部の深さをh(μm)、凹部の長辺方向の間口の幅sとし、測定長10mmで任意の10箇所の凹部について各々測定して得られた測定値の平均値としたとき、凹部の面積比率:50%,幅b2/深さh:2.4,幅b2/幅b1:0.13,深さh:21μm,幅b1/幅s:2.1×10-2を有する木目模様であった。
2:意匠層
3:接着剤層
4:熱可塑性樹脂層
5:凹凸層
51:低周波凹凸層
52:高周波凹凸層
10:化粧シート
Claims (10)
- 少なくとも一方の表面が凹凸面である化粧シートであって、該凹凸面の任意の方向について、カットオフ値を2.5mmとした際のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(Ra2.5)、及びカットオフ値を0.08mmとした際のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(Ra0.08)が、以下の条件(1)及び(2)を満たす化粧シート。
0.82μm≦Ra2.5≦3.80μm (1)
Ra0.08≦0.39μm (2) - 前記凹凸面の任意の方向について、さらに以下の条件(3)を満たす請求項1に記載の化粧シート。
0.05≦Ra0.08/[Ra2.5−Ra0.08]≦0.50 (3) - 前記凹凸面の任意の方向について、カットオフ値を2.5mmとした際のJIS B0601:1994の十点平均粗さ(Rz2.5)が以下の条件(4)を満たす請求項1又は2に記載の化粧シート。
Rz2.5≦15.00μm (4) - 前記凹凸面の任意の方向について、カットオフ値を0.08mmとした際のJIS B0601:1994の十点平均粗さ(Rz0.08)が以下の条件(5)を満たす請求項1〜3の何れか1項に記載の化粧シート。
Rz0.08≦1.80μm (5) - 前記凹凸面の任意の方向について、カットオフ値を2.5mmとした際のJIS B0601:1994の凹凸の平均間隔(Sm2.5)が以下の条件(6)を満たす請求項1〜4の何れか1項に記載の化粧シート。
350μm≦Sm2.5 (6) - 基材上に凹凸層を有してなり、該凹凸層の表面が前記凹凸面である請求項1〜5の何れか1項に記載の化粧シート。
- 前記基材と前記凹凸層との間に意匠層を有してなる請求項6に記載の化粧シート。
- 前記意匠層が木目模様を含む請求項7に記載の化粧シート。
- 被着材と、請求項1〜8の何れか1項に記載の化粧シートの凹凸面とは反対側の面とを積層し、一体化してなる化粧材。
- 床用の化粧材として用いる請求項9に記載の化粧材。
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