JP6569202B2 - 化粧シート、化粧材及び化粧シートの製造方法 - Google Patents

化粧シート、化粧材及び化粧シートの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、化粧シート、化粧材及び化粧シートの製造方法に関する。
家具や台所製品のキャビネット等の表面化粧板としては、一般に木質系材料、無機系材料、合成樹脂系材料、鋼板等の金属系材料等の基材上に、木目調柄等の絵柄を印刷した化粧シートを接着剤で貼り合わせた構造のものが用いられている。
ところで、近年の消費者の高級品指向により、床タイルや壁パネル、あるいは家具や台所製品のキャビネット等に対しても高級感が求められるようになり、これらに用いられる化粧板や化粧シートにおいても、高級感を与える外観を有するものが望まれている。
化粧シートを低艶化する手段としては、(1)サンドブラスト、ケミカルエッチング、及びエンボス等により化粧シートの基材自体を直接凹凸化する手段、(2)基材上に凹凸層を形成する手段等が挙げられる。(2)の手段としては、基材上に粒子及びバインダー樹脂を含む凹凸層を形成する手段、あるいは基材上に透明層を形成した後、該透明層をサンドブラスト、ケミカルエッチング、及びエンボス等により凹凸化する手段等が挙げられる。
上述した低艶化の手段の一例として、特許文献1〜3等が開示されている。
特開2004−167779号公報 特開2004−148632号公報 特開2010−100030号公報
特許文献1及び2には、基材上に、艶消しシリカを含有する電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化物からなる艶調整樹脂層を有する化粧シートが開示されている。
特許文献3には、サンドブラスト処理したエンボス版を用いてエンボス処理してなる化粧シートが開示されている。
特許文献1〜3の化粧シートは、低艶に関しては大きな問題はない。
しかし、艶を低くしすぎると、表面凹凸による光拡散が過度となり白化を生じてしまい、化粧シートの下部に位置する絵柄の階調レベル及び鮮明性が低下し、意匠性を損なうという問題がある。
また、一方で、単に艶を高くした化粧シートは正反射光の強度が強くなり過ぎ、視認者に不快感を与えてしまうという問題がある。
つまり、化粧シートは、艶の付与と白化抑制のバランスを保つことが肝要であり、艶の付与と白化抑制のバランスを保つために化粧シートの表面をマット部とグロス部とに区分けしたものが検討されている。しかし、単に化粧シートの表面をマット部とグロス部とに区分けしただけでは、化粧シートの艶の付与と白化抑制のバランス、そしてグロス部とマット部の視覚的効果を保つことが困難であった。
本発明は、マット部とグロス部の表面の凹凸を管理することにより、マット部とグロス部によるコントラストを制御し、艶の付与と白化抑制のバランスが保たれた化粧シート、化粧材及び化粧シートの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究した結果、化粧シートの表面をマット部とグロス部とに区分けし、マット部及びグロス部を所定の条件とすることにより、上記課題を解決することを見出した。すなわち、本発明は、以下の[1]〜[11]の化粧シート、化粧材及び化粧シートの製造方法を提供する。
[1]基材上に、マット部及びグロス部を備える化粧シートであって、
前記グロス部の表面のカットオフ値を0.08mmとした際のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(グロス部Ra0.08)、前記マット部の表面のカットオフ値を0.08mmとした際のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(マット部Ra0.08)、前記グロス部の表面のカットオフ値を0.8mmとした際のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(グロス部Ra0.8)、及び前記マット部の表面のカットオフ値を0.8mmとした際のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(マット部Ra0.8)が、以下の条件(1)を満たす化粧シート。
マット部Ra0.8/グロス部Ra0.8<マット部Ra0.08/グロス部Ra0.08 (1)
[2]マット部Ra0.08/グロス部Ra0.08からマット部Ra0.8/グロス部Ra0.8を引いた差Aが、以下の条件(2)を満たす[1]の化粧シート。
0.1<A<0.6 (2)
[3]マット部Ra0.08、グロス部Ra0.08、マット部Ra0.8、及びグロス部Ra0.8が、以下の条件(3)、(4)を満たす[1]又は[2]の化粧シート。
1.30≦マット部Ra0.08/グロス部Ra0.08≦1.50 (3)
1.00≦マット部Ra0.8/グロス部Ra0.8≦1.20 (4)
[4]グロス部Ra0.8が、以下の条件(5)を満たし、グロス部Ra0.08が、以下の条件(6)を満たす[1]〜[3]のいずれかの化粧シート。
0.4μm<グロス部Ra0.8<0.7μm (5)
0.15μm<グロス部Ra0.08<0.4μm (6)
[5]マット部Ra0.08、グロス部Ra0.08、マット部Ra0.8、グロス部Ra0.8、前記グロス部の表面のカットオフ値を0.25mmとした際のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(グロス部Ra0.25)、及び前記マット部の表面のカットオフ値を0.25mmとした際のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(マット部Ra0.25)が、以下の条件(7)を満たす[1]〜[4]のいずれかの化粧シート。
マット部Ra0.8/グロス部Ra0.8≦マット部Ra0.25/グロス部Ra0.25≦マット部Ra0.08/グロス部Ra0.08 (7)
[6]前記グロス部の表面のカットオフ値を0.8mmとした際のJIS B0601:1994の十点平均粗さ(グロス部Rz0.8)が以下の条件(8)を満たし、前記マット部の表面のカットオフ値を0.8mmとした際のJIS B0601:1994の十点平均粗さ(マット部Rz0.8)が、以下の条件(9)を満たす[1]〜[5]のいずれかの化粧シート。
2.0μm<グロス部Rz0.8<3.5μm (8)
2.5μm<マット部Rz0.8<4.0μm (9)
[7]基材上に表面保護層を有してなり、前記表面保護層側の面に前記マット部及び前記グロス部を有する[1]〜[6]のいずれかの化粧シート。
[8]前記基材と前記表面保護層との間に意匠層を有する[7]の化粧シート。
[9]被着材と、[1]〜[8]のいずれかの化粧シートの前記表面保護層を有する面とは反対側の面とを積層し、一体化してなる化粧材。
[10](1)基材上に直接又は他の層を介して、電子線硬化性樹脂組成物Aを含む第1表面保護層形成用インキを塗工して第1表面保護層を形成する工程と、
(2)前記第1表面保護層上に部分的に、電子線硬化性樹脂組成物Bを含む第2表面保護層形成用インキを塗工して第2表面保護層を形成する工程と、
(3)前記第1表面保護層及び前記第2表面保護層上側から電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物A及び電子線硬化性樹脂組成物Bの硬化を進行させる工程とを含み、
少なくとも前記電子線硬化性樹脂組成物A及び電子線硬化性樹脂組成物Bの硬化を進行させた後には、前記第1表面保護層が露出した箇所がマット部となり、前記第2表面保護層が露出した箇所がグロス部となる、化粧シートの製造方法。
[11]前記第1表面保護層形成用インキの塗布量が1〜10g/m2であり、前記第2表面保護層形成用インキの塗布量が1〜5g/m2である、[10]の化粧シートの製造方法。
本発明によれば、マット部とグロス部の表面の凹凸を管理することにより、マット部とグロス部によるコントラストを制御し、艶の付与と白化抑制のバランスが保たれた化粧シート、化粧材及び化粧シートの製造方法を提供することができる。
本発明の化粧シートの一実施形態を示す断面図である。
[化粧シート]
本発明の化粧シートは、基材上に、マット部及びグロス部を備える化粧シートであって、グロス部の表面のカットオフ値を0.08mmとした際のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(グロス部Ra0.08)、マット部の表面のカットオフ値を0.08mmとした際のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(マット部Ra0.08)、グロス部の表面のカットオフ値を0.8mmとした際のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(グロス部Ra0.8)、及びマット部の表面のカットオフ値を0.8mmとした際のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(マット部Ra0.8)が、以下の条件(1)を満たすものである。
マット部Ra0.8/グロス部Ra0.8<マット部Ra0.08/グロス部Ra0.08 (1)
図1は、本発明の化粧シート10の一実施形態を示す断面図である。図1の化粧シート10は、基材1の一方の面に、意匠層2、透明性樹脂層3、表面保護層4を有する。表面保護層4は、透明性樹脂層3上に設けられた第1表面保護層40と、第1表面保護層40上の一部に設けられた第2表面保護層41とを有する。図1の化粧シート10においては、例えば、第1表面保護層40が露出した箇所がマット部となり、第2表面保護層41が露出した箇所がグロス部となる。
なお、本発明の化粧シートは、少なくとも一方の表面にマット部及びグロス部があり、マット部及びグロス部が上記条件(1)の条件を満たすものであればよく、図1に示す各層は任意の構成要件である。
マット部及びグロス部の条件
本発明の化粧シートは、少なくとも一方の表面にマット部及びグロス部があり、マット部及びグロス部が上記条件(1)を満たすものである。条件(1)は、異なるカットオフ値のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(Ra)を規定している。以下、異なるカットオフ値のRaを規定する技術的意義について説明する。
カットオフ値は、粗さ成分(高周波成分)と、うねり成分(低周波成分)とから構成される断面曲線から、うねり成分(低周波成分)をカットする度合いを示す値である。言い換えると、カットオフ値は、うねり成分(低周波成分)をカットするフィルターの細かさを示す値である。より具体的には、カットオフ値が大きいと、フィルターが粗いため、うねり成分(低周波成分)のうち大きなうねりはカットされるが、小さなうねりはカットされないこととなる。つまり、カットオフ値が大きいと、うねり成分(低周波成分)を含んだ値となる。一方、カットオフ値が小さいと、フィルターが細かいため、うねり成分(低周波成分)のほとんどがカットされることとなる。つまり、カットオフ値が小さいと、うねり成分(低周波成分)を殆ど含まない、粗さ成分(高周波成分)が正確に反映された値となる。
JIS B0601で参照するJIS B0633では、表面粗さの程度に応じて、特定のカットオフ値(基準長さ)を採用することが定められている。汎用の化粧シートであればカットオフ値は2.5mmであり、従来の化粧シートでは、カットオフ値0.8mmのみで表面粗さを管理していた。
しかし、一つのカットオフ値のRaに基づいた場合、粗さ成分(高周波成分)、及びうねり成分(低周波成分)の両者を意図した表面凹凸の設計をすることができず、表面形状の設計に限界がある。
本発明では、あえて異なるカットオフ値を用いることにより、粗さ成分(高周波成分)、及びうねり成分(低周波成分)の両者を反映させた表面凹凸の設計を可能としている。
以下、高周波成分と低周波成分の役割を説明する。
まず、反射光の角度ごとの反射強度(拡散反射強度分布)の分布状態の基本を形成するのは低周波成分である。低周波成分を殆ど含まない場合、拡散反射強度分布は狭くなり、正反射方向に反射光が集中する。その結果、正反射方向及び正反射方向近傍の反射強度が強すぎて、視認者は不快感を受ける。一方、低周波成分が多すぎる場合、拡散反射強度分布が広くなり過ぎる。その結果、正反射方向及び正反射方向近傍の反射強度が低下して、艶を感じなくなる。したがって、低周波成分で表面形状を制御することが重要である。
次に、高周波成分は、低周波成分で形成した拡散反射強度分布を和らげる役割を有する。具体的には、低周波成分のみによる拡散反射強度分布は、特定の角度を超えると急激に反射強度が低下してしまう(角度ごとの拡散反射強度を図示すると、釣鐘型となる)。このため、艶のON、OFFが急速に現れ、視認者が不快に感じる場合がある(人工物のようにも感じられる)。ここで高周波成分の拡散反射強度は、裾の広がったスカート型なので、低周波成分に高周波成分が重畳されると、拡散反射強度分布は、反射強度が全体に低下すると共に裾(大きな角度)が広がった状態となり、艶のON、OFFを緩やかにして、視認性をより良好にすることができる。なお、拡散角度が大きいほど急激に白化を招くので、特に、大きな拡散となりやすい高周波の裾は過度にならないようにする必要がある。
本発明は、上述したような低周波成分及び高周波成分の性質に鑑み、マット部及びグロス部の低周波成分及び高周波成分が条件(1)を満たすようにすることにより、上記課題を解決したものである。
条件(1)は、カットオフ値を0.8mmとした際の算術平均粗さの比率であるマット部Ra0.8/グロス部Ra0.8が、カットオフ値を0.08mmとした際の算術平均粗さの比率であるマット部Ra0.08/グロス部Ra0.08より小さいことを示す。
条件(1)を満たさないことは、マット部の高周波成分に対してグロス部の高周波成分が十分に少なくないこと、あるいはマット部の低周波成分に対してグロス部の低周波成分が少ないことを意味している。つまり、条件(1)を満たさない場合、グロス部はマット部に比べて高周波成分が十分に少なくないため、マット部よりも艶を十分に高くすることができない。さらに、条件(1)を満たさない場合、グロス部は低周波成分により光を拡散できず、正反射方向の反射強度が強くなり過ぎてしまう。したがって、条件(1)を満たす本願発明は、マット部に比べてグロス部の艶を十分に高くできるとともに、過度な艶により視認者に不快感を与えることも防止できる。
本発明の化粧シートは、条件(1)の効果をより発揮しやすくする観点から、[(グロス部Ra0.8−グロス部Ra0.08)/グロス部Ra0.8]が、0.40以上であることが好ましく、0.45以上であることがより好ましい。
また、本発明の化粧シートは、条件(1)の効果をより発揮しやすくする観点から、[(マット部Ra0.8−マット部Ra0.08)/マット部Ra0.8]が、0.40未満であることが好ましく、0.35未満であることがより好ましい。
本発明の化粧シートは、マット部Ra0.8/グロス部Ra0.8からマット部Ra0.08/グロス部Ra0.08を引いた差Aが、以下の条件(2)を満たすことが好ましい。条件(2)を満たすことにより高級感のある艶を付与することができ、正反射光の強度を抑制して視認者に不快感を与えることを防止できるので好ましい。
0.1<A<0.6 (2)
条件(2)は、0.15<A<0.55を満たすことがより好ましく、0.2<A<0.5を満たすことがさらに好ましい。
本発明の化粧シートは、マット部Ra0.08/グロス部Ra0.08が、以下の条件(3)を満たし、マット部Ra0.8/グロス部Ra0.8が、以下の条件(4)を満たすことが好ましい。
条件(3)の下限を満たすことにより、グロス部の高周波成分が抑制されることになり、高級感のある艶を付与することができる。また、条件(3)の上限を満たすことにより、拡散反射強度の分布を緩和し、拡散反射強度の急激な変化に伴う視認性の低下を抑制することができる。
条件(4)の下限を満たすことにより、グロス部の低周波成分が残存することになり、正反射光の強度を抑制して視認者に不快感を与えることを防止できる。また、条件(4)の上限を満たすことにより、拡散反射強度の分布の範囲を広げて、良好な艶感を視認者に与えることができる。
1.30≦マット部Ra0.08/グロス部Ra0.08≦1.50 (3)
1.00≦マット部Ra0.8/グロス部Ra0.8≦1.20 (4)
条件(3)は、1.35≦マット部Ra0.08/グロス部Ra0.08≦1.50を満たすことがより好ましく、1.35≦マット部Ra0.08/グロス部Ra0.08≦1.45を満たすことがさらに好ましい。
条件(4)は、1.05≦マット部Ra0.8/グロス部Ra0.8≦1.20を満たすことがより好ましく、1.05≦マット部Ra0.8/グロス部Ra0.8≦1.15を満たすことがさらに好ましい。
グロス部Ra0.8の値が低い場合は、グロス部で反射される拡散反射強度分布の範囲が狭くなるので、正反射強度が強くなり過ぎるため視認者に不快感を与えてしまうので好ましくない。
一方、グロス部Ra0.8の値が高い場合は、反射光の分布範囲内において各角度における拡散反射強度が小さくなり、視認者は艶を感じにくくなってしまうので好ましくない。
つまり、低周波成分であるグロス部Ra0.8が以下の条件(5)を満たすことにより高級感のある艶を付与することができるので好ましい。
0.4μm<グロス部Ra0.8<0.7μm (5)
条件(5)は、0.45μm<グロス部Ra0.8<0.65μmを満たすことがより好ましく、0.5μm<グロス部Ra0.8<0.6μmを満たすことがさらに好ましい。
グロス部Ra0.08の値が高い場合は、グロス部で反射される拡散反射強度分布の裾が広くなり、白化や反射強度低下による艶感の低下を生じる。
グロス部Ra0.08の下限は特に制限されないが、グロス部Ra0.08を所定の値以上とした場合、拡散反射強度の分布を緩和し、拡散反射強度の急激な変化に伴う視認性の低下を抑制することができる点で好ましい。例えば、低周波成分の凹凸の中に急激な角度変化を生じる箇所があると、反射強度分布の中で反射強度が急変する角度が生じ、欠陥として認識されるが、グロス部Ra0.08を所定の値以上として高周波成分の凹凸を付与することにより、反射強度の急変を緩和し、欠陥として認識させにくくできる。グロス部Ra0.08が以下の条件(6)を満たすことにより高級感のある艶を付与することができ、正反射光の強度を抑制して視認者に不快感を与えることを防止できるので好ましい。
0.15μm<グロス部Ra0.08<0.4μm (6)
条件(6)は、0.18μm<グロス部Ra0.08<0.38μmを満たすことがより好ましく、0.2μm<グロス部Ra0.08<0.35μmを満たすことがさらに好ましい。
なお、本発明において、条件(1)〜(6)、及び後述するその他の条件は、10回測定を行った際の平均値とする。
本発明の化粧シートは、グロス部の表面のカットオフ値を0.25mmとした際のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(グロス部Ra0.25)に対する、マット部の表面のカットオフ値を0.25mmとした際のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(マット部Ra0.25)の比率(マット部Ra0.25/グロス部Ra0.25)が、以下の条件(7)を満たすことが好ましい。
マット部Ra0.8/グロス部Ra0.8≦マット部Ra0.25/グロス部Ra0.25≦マット部Ra0.08/グロス部Ra0.08 (7)
条件(7)を満たすことは、マット部とグロス部との低周波成分と中周波成分との関係、マット部とグロス部との中周波成分と高周波成分との関係が類似することを意味している。つまり、条件(7)を満たすことは、マット部及びグロス部は、高周波〜低周波の間で極端な変化を示さず、マット部及びグロス部の外観を滑らかにすることができる。
本発明の化粧シートは、グロス部の表面のカットオフ値を0.8mmとした際のJIS B0601:1994の十点平均粗さ(グロス部Rz0.8)が以下の条件(8)を満たし、前記マット部の表面のカットオフ値を0.8mmとした際のJIS B0601:1994の十点平均粗さ(マット部Rz0.8)が、以下の条件(9)を満たすことが好ましい。
2.0μm<グロス部Rz0.8<3.5μm (8)
2.5μm<マット部Rz0.8<4.0μm (9)
十点平均粗さ(Rz)は、カットオフ値と等しいサンプリング長さのN倍の評価長さの粗さ曲線をN等分し、区間毎に第1位から第5位までの高さの山頂の平均標高と第1位から第5位までの深さの谷底の平均標高の間隔Rz’を求めたときのN個のRz’の算術平均値である。このように、Rzは、粗さ曲線のうち、標高の高い箇所及び低い箇所に注目した値である。一方、算術平均粗さ(Ra)は、粗さ曲線全体の標高の平均値である。つまり、RzはRaと同様に、粗さ曲線の粗さの程度を示すものの、粗さ曲線の凹凸のランダム性を表していると言える。
条件(8)、(9)の上限を満たすことにより、低周波成分のランダム性を抑え、艶にムラを生じさせにくくできる。また、条件(8)、(9)の下限を満たすことにより、低周波成分のランダム性によって、化粧シートの外観に自然感を付与できるとともに、化粧シートの欠陥を目立ちにくくできる点で好適である。
本発明の化粧シートは、JIS Z 8741:1997に準じて測定したグロス部の光沢度が5%〜30%であり、マット部の光沢度が0.5%〜3%であることが好ましい。
グロス部の形状は、例えば、木目導管模様、ヘアライン、梨地等が挙げられる。グロス部の大きさ、ピッチ等は、グロス部の形状等により適宜選定することが好ましい。
表面保護層
表面保護層は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含有してなるものであり、化粧シートの最表面に位置するように、必要に応じて基材上に設けられる。
電離放射線硬化性樹脂組成物は少なくとも電離放射線硬化性樹脂を含有してなるものである。
電離放射線硬化性樹脂としては、従来電離放射線硬化性の樹脂として慣用されている樹脂を用いることができ、例えば、電離放射線硬化性官能基である(メタ)アクリロイル基を有してなる(メタ)アクリレート系樹脂を用いることができる。なお、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
(メタ)アクリレート系樹脂としては、ウレタン(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレート等のモノマー、オリゴマー及びプレポリマーが挙げられる。
これら(メタ)アクリレート系樹脂の中でも、透明性樹脂層等との密着性及び塗膜強度のバランスの観点からは、ウレタンアクリレート、アクリルアクリレート、ポリエステルアクリレート及びエポキシアクリレート等のアクリロイル基を有するアクリレート系樹脂が好適であり、その中でもウレタン(メタ)アクリレートが好適である。
なお、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能である。本発明では、電離放射線硬化性樹脂の中でも、電子線で硬化する電子線硬化性樹脂が好適である。電子線硬化性樹脂は、表面保護層中に紫外線吸収剤を添加しても硬化が阻害されず、また、無用剤化もしやすい点で優れている。電子線硬化性樹脂は、無用剤で使用可能であるため、流動性を制御しやすく、高周波成分を消しやすいため好ましい。
電離放射線硬化性樹脂組成物が紫外線硬化性である場合には、電離放射線硬化性組成物は、光重合開始剤や光重合促進剤等の添加剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α−ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α−アシルオキシムエステル、チオキサンソン類等から選ばれる1種以上が挙げられる。
また、光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速めることができるものであり、例えば、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
表面保護層中には、電離放射線硬化性樹脂の硬化物を、表面保護層の全固形分中の70質量%以上含有することが好ましく、80質量%以上含有することがより好ましく、90質量%以上含有することがさらに好ましい。
表面保護層の厚みは、表面保護層の耐擦傷性等の観点から、1〜15μmであることが好ましく、2〜10μmであることがより好ましく、3〜8μmであることがさらに好ましい。
表面保護層の厚みが1μm未満の場合、表面保護層の塗膜強度を高くすることができず、耐溶剤性、耐擦傷性等の表面諸物性が低下してしまう。表面保護層の厚みが15μmを超える場合、化粧シートの製造時にカールが生じ、生産安定性が不十分となる場合がある。また、表面保護層の厚みが15μmを超える場合、表面保護層から溶剤が揮発しにくくなり、残留した溶剤が電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋阻害を起こし、表面保護層の塗膜強度を高くすることができず、耐溶剤性、耐擦傷性等の表面諸物性が低下してしまう。
電離放射線硬化性樹脂組成物中には、上述したアクリレート系樹脂以外の電離放射線硬化性樹脂を含有していてもよい。ただし、上述した本発明の効果を発揮しやすくするため、表面保護層の全固形分に対して、上述したアクリレート系樹脂の硬化物を50質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上含有することがより好ましく、90質量%以上含有することがさらに好ましい。
また、表面保護層中には、本発明の効果を阻害しない範囲で、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の電離放射線硬化性樹脂以外の樹脂成分、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有してもよい。
基材
基材は特に制限されないが、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等のプラスチックフィルム、紙類、あるいはこれらの複合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリオレフィン樹脂シートが好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン樹脂、エチレン/プロピレン共重合体樹脂、エチレン/プロピレン/ブテン共重合体樹脂、オレフィン熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。耐候性や、耐擦傷性などの表面保護特性の観点から、ポリプロピレン樹脂が好ましい。これら基材は、意匠性の観点から着色されていてもよい。
また、基材としてプラスチックフィルムを用いる場合、機械的強度の観点から、二軸延伸されたものが好適である。
基材の厚さは、機械的強度及び取り扱い性の観点から、20〜200μmが好ましく、40〜160μmがより好ましく、40〜100μmがさらに好ましい。
ポリプロピレン樹脂としては、ホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂、あるいはポリプロピレン結晶部を有し、かつプロピレン以外の炭素素2〜20のα−オレフィン共重合体などが好ましく挙げられる。その他、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなどを15モル%以上含むプロピレン−α−オレフィン共重合体、例えばエチレン/プロピレン共重合体、エチレン/プロピレン/ブテン共重合体なども挙げられる。
基材に用いる紙類としては、薄葉紙、クラフト紙、チタン紙等が挙げられる。これらの紙基材は、紙基材の繊維間ないしは他層と紙基材との層間強度を強化したり、ケバ立ち防止のため、これら紙基材に、更に、アクリル樹脂、スチレンブタジエンゴム、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂を添加(抄造後樹脂含浸、又は抄造時に内填)させたものでもよい。例えば、紙間強化紙、樹脂含浸紙等である。
これらの他、リンター紙、板紙、石膏ボード用原紙、又は紙の表面に塩化ビニル樹脂層を設けたビニル壁紙原反等、建材分野で使われることの多い各種紙が挙げられる。さらには、事務分野や通常の印刷、包装等に用いられるコート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙、又は和紙等を用いることもできる。また、これらの紙とは区別されるが、紙に似た外観と性状を持つ各種繊維の織布や不織布も基材として使用することができる。各種繊維としてはガラス繊維、石綿繊維、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、若しくは炭素繊維等の無機質繊維、又はポリエステル繊維、アクリル繊維、若しくはビニロン繊維等の合成樹脂繊維が挙げられる。
意匠層
意匠層は、化粧シートの意匠性を高めることを目的として、必要に応じて設けられる。意匠層は、例えば基材と表面保護層との間に設けられる。
意匠層としては、着色層、絵柄層等が挙げられる。これらの層は、同一種または異種の層を積層するなどして、適宜組み合わせて用いてもよい。
着色層は、全面ベタの層であり、主として隠蔽性を付与する目的を有する。着色層は、印刷等で形成することができる。
着色層の形成に用いられるインキとしては、バインダーに顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したものが使用される。
バインダーとしては特に制限はなく、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
着色剤としては、化粧シートの用途や絵柄層との色の相性等から適宜選択すればよいが、例えばカーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。
絵柄層は印刷等で形成される。絵柄層の模様(絵柄パターン)としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等があり、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様もある。本発明においては、凹凸面による作用との相乗効果の観点から、木目模様が好ましい。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色、および黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成される。絵柄層を用いるインキは、着色層と同様のものを用いることができる。
意匠層の厚みは、意匠層の形態と、目的とする意匠性とを考慮して、0.1〜20μm程度の範囲で適宜調整することができる。意匠層中には、本発明の効果を阻害しない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有しても良い。
透明性樹脂層
透明性樹脂層は、基材や意匠層の保護のために、必要に応じて、基材と表面保護層との間、あるいは意匠層と表面保護層との間に設けられる。
透明性樹脂層を形成する材料としては、各種熱可塑性樹脂を用いることができるが、ポリオレフィン樹脂が好適である。
ポリオレフィン樹脂としては、基材を構成する材料として例示したポリオレフィン樹脂を好ましく採用することができる。これらのポリオレフィン樹脂のうち、ポリプロピレン樹脂が好ましく、ホモポリプロピレン樹脂がより好ましい。
透明性樹脂層は、必要に応じて、着色剤を含んだ熱可塑性樹脂組成物により構成されていてもよく、意匠層の視認性が確保されていれば半透明であってもよい。また、熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、その他の添加剤、例えば、充填剤、難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤などを含んでいてもよい。
透明性樹脂層の厚さは、基材や装飾層の保護、機械的強度、取り扱い性等の観点から、5〜200μmであることが好ましく、10〜150μmであることがより好ましく、10〜100μmであることがさらに好ましい。
なお、本発明の化粧シートに対して、さらにエンボス処理等で賦型を行ってもよい。
[化粧シートの製造方法]
本発明の化粧シートの製造方法は、(1)基材上に直接又は他の層を介して、電子線硬化性樹脂組成物Aを含む第1表面保護層形成用インキを塗工して第1表面保護層を形成する工程と、(2)第1表面保護層上に部分的に、電子線硬化性樹脂組成物Bを含む第2表面保護層形成用インキをで塗工して第2表面保護層を形成する工程と、(3)第1表面保護層及び第2表面保護層上側から電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物A及び電子線硬化性樹脂組成物Bの硬化を進行させる工程とを含む。
本発明の化粧シートの製造方法によって製造される化粧シートは、少なくとも電子線硬化性樹脂組成物A及び電子線硬化性樹脂組成物Bの硬化を進行させた後には、第1表面保護層が露出した箇所がマット部となり、第2表面保護層が露出した箇所がグロス部となる。
工程(1)では、基材上に直接又は他の層を介して、電子線硬化性樹脂組成物Aを含む第1表面保護層用インキにより第1表面保護層を形成する。
第1表面保護層用インキは、さらに本発明の効果を阻害しない範囲で、希釈溶剤、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を含有してもよい。
工程(1)をより具体的に説明すると、まず、基材上に直接又は他の層を介して、第1表面保護層形成用の第1表面保護層用インキを塗布する。
第1表面保護層用インキを塗布する手段は、ディップコート、ロールコート、バーコート、ダイコート、グラビアコート、ブレードコート、エアナイフコート等の公知のコーティング手段が挙げられる。
第1表面保護層用インキが希釈溶剤を含有する場合、塗布後に乾燥を行う。第1表面保護層の乾燥条件は、40〜80℃で5〜60秒程度である。
第1表面保護層用インキとしては、粒子を含んだ電子線硬化性樹脂を用いることができる。電離放射線硬化性樹脂は、上述と同様のものを使用できる。
粒子は第1表面保護層の表面に凹凸をし得るものであれば、有機粒子及び無機粒子の何れも用いることができる。有機粒子としては、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル−スチレン共重合体、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ベンゾグアナミン−メラミン−ホルムアルデヒド縮合物、シリコーン、フッ素系樹脂及びポリエステル系樹脂等からなる粒子が挙げられる。無機粒子としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア及びチタニア等からなる粒子が挙げられる。これら粒子の中でも、優れた低艶感が得られ、また容易に調達できて安価であるとの観点から無機粒子が好適であり、無機粒子の中でもシリカが好適である。
表面保護層中の粒子の含有量は、グロス部以外の箇所を低艶化する観点から、該層を形成する全固形分中の10〜40質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましく、10〜20質量%であることがさらに好ましい。
表面保護層中の粒子の平均粒子径は、グロス部以外の箇所を低艶化する観点から、1〜12μmが好ましく、1〜5μmがより好ましく、1〜3μmがさらに好ましい。
第1表面保護層の厚みは、表面性能及び生産性の観点から、1〜10μmが好ましく、2〜8μmがより好ましく、2〜5μmがさらに好ましい。
工程(2)では、第1表面保護層上に、電子線硬化性樹脂組成物Bを含む第2表面保護層用インキを部分的に塗工することにより第2表面保護層を形成する。第2表面保護層は、第1表面保護層を適度な範囲の凹凸に収める。
第2表面保護層用インキは、さらに本発明の効果を阻害しない範囲で、希釈溶剤、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を含有してもよい。
工程(2)をより具体的に説明すると、まず、第1表面保護層上に、第2表面保護層形成用の第2表面保護層用インキを塗布する。
第2表面保護層用インキを塗布する手段は、ディップコート、ロールコート、バーコート、ダイコート、グラビアコート、ブレードコート、エアナイフコート等の公知のコーティング手段が挙げられる。
第2表面保護層用インキが希釈溶剤を含有する場合、塗布後に乾燥を行う。第2表面保護層の乾燥条件は、40〜80℃で5〜60秒程度である。
第2表面保護層用インキとしては、インキ中の全固形分中の樹脂が80%以上であることが好ましく、100%であることがより好ましい。電子線硬化性樹脂は上述と同様のものが使用できる。
第2表面保護層の厚みは、表面性能の観点から、1〜5μmが好ましく、1.5〜3μmがより好ましく、1.5〜2.5μmがさらに好ましい。
第2表面保護層の厚みが薄すぎると所望の表面物性が出ない場合や、意匠感が出ない場合等の懸念が生じる。また、厚すぎると第1表面保護層との高低差が大きくなるため、汚染物質が隙間に入り込むことで耐汚染性が低下することや、引っかかり易くなることで耐傷性等が低下する。
上記の化粧シートの製造方法によれば、第1表面保護層上に電子線硬化性樹脂を用いて第2表面保護層を形成するため、第1表面保護層上の高周波成分は、電子線硬化性樹脂組成物Bを含む第2表面保護層形成用インキにより埋没して少なくなる。電子線硬化性樹脂は、流動性を制御しやすいため、流動性を調整することにより高周波成分が埋めやすいという性質を有する。一方、第1表面保護層上の低周波成分は、電子線硬化性樹脂組成物Bを含む第2表面保護層形成用インキにより埋没しにくいため、第2表面保護層形成用インキの塗工による影響を受けにくい。このことより、上記の条件(1)〜(9)に合致する好ましい化粧シートを製造することができる。
その他の化粧シートの製造方法としては、型による成型を採用することができる。
型による化粧シートの製造方法は、まず、表面保護層の凹凸面と相補的な形状からなる型を作製し、当該型に凹凸面を形成する材料を流し込んだ後、型から取り出すことにより形成することができる。ここで、該材料として表面保護層を構成する材料を用い、型に該材料を流し込んだ後に基材等を重ね合わせ、表面保護層を基材等ごと型から取り出せば、基材上に表面保護層を有する化粧シートを得ることができる。
型に流し込む材料として硬化性樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物又は電離放射線硬化性樹脂組成物)を用いる場合、型から取り出す前に硬化性樹脂組成物を硬化することが好ましい。
型による表面保護層の凹凸の形成は、凹凸形状の再現性に優れる点で好ましい。
[化粧材]
本発明の化粧材は、被着材と、上述した本発明の化粧シートの基材の面とを積層し、一体化してなるものである。
被着材は、例えば、木材単板、木材合板、パーチクルボード、MDF(中密度繊維板)などの木質板;石膏板、石膏スラグ板などの石膏系板;珪酸カルシウム板、石綿スレート板、軽量発泡コンクリート板、中空押出セメント板などのセメント板;パルプセメント板、石綿セメント板、木片セメント板などの繊維セメント板;陶器、磁器、土器、硝子、琺瑯などのセラミックス板;鉄板、亜鉛メッキ鋼板、ポリ塩化ビニルゾル塗布鋼板、アルミニウム板、銅板などの金属板;ポリオレフィン樹脂板、アクリル樹脂板、ABS板、ポリカーボネート板などの熱可塑性樹脂板;フェノール樹脂板、尿素樹脂板、不飽和ポリエステル樹脂板、ポリウレタン樹脂板、エポキシ樹脂板、メラミン樹脂板などの熱硬化型樹脂板;フェノール樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂などの樹脂を、硝子繊維不織布、布帛、紙、その他の各種繊維質基材に含浸硬化して複合化したいわゆるFRP板などが挙げられ、これらを単独で用いてもよく、これらの2種以上を積層した複合基板として用いてもよい。
化粧シートの各種被着材への積層方法としては特に限定されるものではなく、例えば接着剤によりシートを被着材に貼着する方法などを採用することができる。接着剤は、被着材の種類などに応じて公知の接着剤から適宜選択すれば良い。例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマーなどのほか、ブタジエン−アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴムなどが挙げられる。
化粧材は、例えば、壁、天井、床などの建築物の内装材;窓枠、扉、手すりなどの建具;家具;家電製品、OA機器などの筐体;玄関ドアなどの外装材として好ましく用いることができる。なかでも建築物の内装材として用いることが好ましい。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。なお、「部」は特に断りのない限り質量基準である。
1.測定及び評価
実施例及び比較例で作製した化粧シートについて、以下の測定及び評価を行った。
(1)表面粗さ測定(カットオフ値0.8mm)
株式会社東京精密製の商品名ハンディサーフE−35Aを用いて、下記の測定条件により、実施例及び比較例で作製した化粧シートの表面保護層のマット部及びグロス部のJIS B0601:1994のRa及びRzを測定した。10回測定を行った結果及び平均値を表1に示す。
[表面粗さ検出部の触針]
株式会社東京精密製:商品名ハンディサーフE−35A(先端曲率半径:5μm、頂角:90度、材質:ダイヤモンド)
[表面粗さ測定器の測定条件]
・基準長さ(粗さ曲線のカットオフ値λc):0.8mm
・評価長さ(基準長さ(カットオフ値λc)×5):4.0mm
・触針の送り速さ:0.6mm/s
・前予備長さ:(カットオフ値λc)/3
・後予備長さ:(カットオフ値λc)/3
・縦倍率:2000倍
・横倍率:10倍
(2)表面粗さ測定(カットオフ値0.25mm)
株式会社東京精密製の商品名ハンディサーフE−35Aを用いて、下記の測定条件により、実施例及び比較例で作製した化粧シートの表面保護層のマット部及びグロス部のJIS B0601:1994のRa及びRzを測定した。10回測定を行った結果及び平均値を表2に示す。
[表面粗さ検出部の触針]
株式会社東京精密製:商品名ハンディサーフE−35A(先端曲率半径:5μm、頂角:90度、材質:ダイヤモンド)
[表面粗さ測定器の測定条件]
・基準長さ(粗さ曲線のカットオフ値λc):0.25mm
・評価長さ(基準長さ(カットオフ値λc)×5):1.25mm
・触針の送り速さ:0.6mm/s
・前予備長さ:(カットオフ値λc)/3
・後予備長さ:(カットオフ値λc)/3
・縦倍率:2000倍
・横倍率:10倍
(3)表面粗さ測定(カットオフ値0.08mm)
株式会社東京精密製の商品名ハンディサーフE−35Aを用いて、下記の測定条件により、実施例及び比較例で作製した化粧シートの表面保護層のマット部及びグロス部の最表面のJIS B0601:1994のRa及びRzを測定した。10回測定を行った結果及び平均値を表3に示す。
[表面粗さ検出部の触針]
株式会社東京精密製:商品名ハンディサーフE−35A(先端曲率半径:5μm、頂角:90度、材質:ダイヤモンド)
[表面粗さ測定器の測定条件]
・基準長さ(粗さ曲線のカットオフ値λc):0.08mm
・評価長さ(基準長さ(カットオフ値λc)×5):0.4mm
・触針の送り速さ:0.6mm/s
・前予備長さ:(カットオフ値λc)/3
・後予備長さ:(カットオフ値λc)/3
・縦倍率:2000倍
・横倍率:10倍
(4)比率の算出
上記の表面粗さ測定の平均値の結果に基づいて、所望の比率の算出を行った。比率の算出結果を表4に示す。
(5)艶、白化
化粧シートを表面保護層が上を向くように水平な台に置き、45度の角度から蛍光灯で化粧シートの表面保護層を照射した。蛍光灯の光の正反射方向となる位置から化粧シートの艶及び白化の度合いを観察した。各化粧シートの艶、白化の見え方を表4に示す。
2.化粧シートの作製
[実施例1]
基材として両面コロナ放電処理を施したポリプロピレン基材シートを用意して、該シートの一方の面に、2液硬化型のアクリル−ウレタン樹脂からなる印刷インキで意匠層としての絵柄層を設けた。次いで、絵柄層を設けた面とは反対側の面に、プライマー層を設けた。
次いで、絵柄層上にウレタン樹脂系接着剤を乾燥後の厚みが3μmとなるように塗工し、透明性接着剤層を設けた。そして、ポリプロピレン系樹脂をTダイ押出し機により加熱溶融押出しし、厚みが80μmとなるようにポリプロピレンからなる透明性樹脂層を設けた。
透明性樹脂層の表面にコロナ放電処理を施した後、コロナ放電処理面にアクリル−ウレタン系樹脂溶液をグラビア印刷法により乾燥後の厚みが1μmとなるように塗工して表面保護層形成用プライマー層を設けた。表面保護層形成用プライマー層の上に、電子線硬化性樹脂組成物Aを含む第1表面保護層形成用インキとして、ウレタンアクリレート系電子線硬化型樹脂をグラビアコート方式により固形分が3g/m2となるように塗工・乾燥して未硬化の第1表面保護層を設けた。そして、第1表面保護層上に部分的に、電子線硬化性樹脂組成物Bを含む第2表面保護層形成用インキとして、ウレタンアクリレート系電子線硬化型樹脂をグラビアコート方式により固形分が2g/m2となるように塗工・乾燥して未硬化の第2表面保護層を設けた。
その後、酸素濃度200ppmの環境下において、未硬化の第1表面保護層及び第2表面保護層に加速電圧125KeV、5Mradの条件で電子線を照射して樹脂硬化させ厚さ5μmの表面保護層を形成した。
<第1表面保護層形成用インキの組成>
第1表面保護層形成用インキの組成としては、二重結合当量10,000のウレタンアクリレートと、二重結合当量500のウレタンアクリレートとの質量比が40:60のものを用いた。第1表面保護層形成用インキは、平均粒子径3μmのシリカを含有し、シリカの含有量は全固形分中の15質量%である。
<第2表面保護層形成用インキの組成>
第2表面保護層形成用インキの組成としては、二重結合当量10,000のウレタンアクリレートと、二重結合当量500のウレタンアクリレートとの質量比が5:95のものを用いた。第2表面保護層形成用インキは、平均粒子径3μmのシリカを含有し、シリカの含有量は全固形分中の4質量%である。
表1〜表4から、実施例1の化粧シートは、条件(1)〜(9)に合致するものであることが分かる。したがって、実施例1の化粧シートは、適度な艶により高級感を有しつつ、正反射光の強度が強すぎることにより視認者に不快感を与えないものであることが分かる。さらに、実施例1の化粧シートは、白化により絵柄の階調レベル及び鮮明性の低下を抑制でき、絵柄の視認性を損なわないものであることが分かる。
本発明の化粧シートは、艶による高級感を有しつつ、正反射光の強度が抑制され、さらに白化を生じることがない点で有用である。
1:基材
2:意匠層
3:透明性樹脂層
4:表面保護層
41:第1表面保護層
42:第2表面保護層
10:化粧シート

Claims (10)

  1. 基材上に、マット部及びグロス部を備える化粧シートであって、
    前記マット部及び前記グロス部を構成する表面保護層が粒子を含有し、
    前記グロス部の表面のカットオフ値を0.08mmとした際のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(グロス部Ra0.08)、前記マット部の表面のカットオフ値を0.08mmとした際のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(マット部Ra0.08)、前記グロス部の表面のカットオフ値を0.8mmとした際のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(グロス部Ra0.8)、及び前記マット部の表面のカットオフ値を0.8mmとした際のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(マット部Ra0.8)が、以下の条件(1)を満たし、
    マット部Ra 0.08 /グロス部Ra 0.08 からマット部Ra 0.8 /グロス部Ra 0.8 を引いた差Aが、以下の条件(2)を満たす化粧シート。
    マット部Ra0.8/グロス部Ra0.8<マット部Ra0.08/グロス部Ra0.08 (1)
    0.1<A<0.6 (2)
  2. マット部Ra0.08、グロス部Ra0.08、マット部Ra0.8、及びグロス部Ra0.8が、以下の条件(3)、(4)を満たす請求項1に記載の化粧シート。
    1.30≦マット部Ra0.08/グロス部Ra0.08≦1.50 (3)
    1.00≦マット部Ra0.8/グロス部Ra0.8≦1.20 (4)
  3. グロス部Ra0.8が、以下の条件(5)を満たし、グロス部Ra0.08が、以下の条件(6)を満たす請求項1又は2に記載の化粧シート。
    0.4μm<グロス部Ra0.8<0.7μm (5)
    0.15μm<グロス部Ra0.08<0.4μm (6)
  4. マット部Ra0.08、グロス部Ra0.08、マット部Ra0.8、グロス部Ra0.8、前記グロス部の表面のカットオフ値を0.25mmとした際のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(グロス部Ra0.25)、及び前記マット部の表面のカットオフ値を0.25mmとした際のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(マット部Ra0.25)が、以下の条件(7)を満たす請求項1〜のいずれか1項に記載の化粧シート。
    マット部Ra0.8/グロス部Ra0.8≦マット部Ra0.25/グロス部Ra0.25≦マット部Ra0.08/グロス部Ra0.08 (7)
  5. 前記グロス部の表面のカットオフ値を0.8mmとした際のJIS B0601:1994の十点平均粗さ(グロス部Rz0.8)が以下の条件(8)を満たし、前記マット部の表面のカットオフ値を0.8mmとした際のJIS B0601:1994の十点平均粗さ(マット部Rz0.8)が、以下の条件(9)を満たす請求項1〜のいずれか1項に記載の化粧シート。
    2.0μm<グロス部Rz0.8<3.5μm (8)
    2.5μm<マット部Rz0.8<4.0μm (9)
  6. 基材上に表面保護層を有してなり、前記表面保護層側の面に前記マット部及び前記グロス部を有する請求項1〜のいずれか1項に記載の化粧シート。
  7. 前記基材と前記表面保護層との間に意匠層を有する請求項に記載の化粧シート。
  8. 被着材と、請求項1〜のいずれか1項に記載の化粧シートの前記表面保護層を有する面とは反対側の面とを積層し、一体化してなる化粧材。
  9. (1)基材上に直接又は他の層を介して、電子線硬化性樹脂組成物A及び粒子を含む第1表面保護層形成用インキを塗工して第1表面保護層を形成する工程と、
    (2)前記第1表面保護層上に部分的に、電子線硬化性樹脂組成物B及び粒子を含む第2表面保護層形成用インキを塗工して第2表面保護層を形成する工程と、
    (3)前記第1表面保護層及び前記第2表面保護層上側から電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物A及び電子線硬化性樹脂組成物Bの硬化を進行させる工程とを含み、
    少なくとも前記電子線硬化性樹脂組成物A及び電子線硬化性樹脂組成物Bの硬化を進行させた後には、前記第1表面保護層が露出した箇所がマット部となり、前記第2表面保護層が露出した箇所がグロス部となり、
    前記グロス部の表面のカットオフ値を0.08mmとした際のJISB0601:1994の算術平均粗さ(グロス部Ra 0.08 )、前記マット部の表面のカットオフ値を0.08mmとした際のJISB0601:1994の算術平均粗さ(マット部Ra 0.08 )、前記グロス部の表面のカットオフ値を0.8mmとした際のJISB0601:1994の算術平均粗さ(グロス部Ra 0.8 )、及び前記マット部の表面のカットオフ値を0.8mmとした際のJISB0601:1994の算術平均粗さ(マット部Ra 0.8 )が、以下の条件(1)を満たし、
    マット部Ra 0.08 /グロス部Ra 0.08 からマット部Ra 0.8 /グロス部Ra 0.8 を引いた差Aが、以下の条件(2)を満たす、化粧シートの製造方法。
    マット部Ra 0.8 /グロス部Ra 0.8 <マット部Ra 0.08 /グロス部Ra 0.08 (1)
    0.1<A<0.6 (2)
  10. 前記第1表面保護層形成用インキの塗布量が1〜10g/mであり、前記第2表面保護層形成用インキの塗布量が1〜5g/mである、請求項に記載の化粧シートの製造方法。
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