JP2023101290A - 化粧材及び化粧材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】複数の溝を有し、溝の内部にインキを含む充填部を有する化粧材において、質感の低下を抑制し得る化粧材を提供する。
【解決手段】基材層と、表面保護層とを有する化粧材であって、前記基材層は、前記表面保護層側の面に複数の溝を有し、前記溝のうちの少なくとも一部の溝は、溝の内部に着色剤を含む充填部を有し、前記溝のうち、所定の方向に対して垂直方向±10度の範囲の方向に延びる溝を、垂直方向の溝と定義した際に、前記垂直方向の溝は、溝の底部の算術平均高さの平均が4.0μm以上である、化粧材。
【選択図】図1

Description

本開示は、化粧材及び化粧材の製造方法に関する。
化粧材は、例えば、家具、建具及び壁面等の内装材及び外装材等を装飾するために用いられている。化粧材の中では、所定の質感を付与するために、複数の溝を有し、溝の内部にインキを充填したものがある。
溝の内部にインキを充填した化粧材は、例えば、「化粧材の溝を有する面に着色剤を含む充填部用インキを乗せた後、所定の方向に充填部用インキをかき取る工程」を経ることにより作製することができる。本明細書において、前述した工程のことを「かき取り」又は「ワイピング」と称する場合がある。
化粧材の溝を有する面に着色剤を含む充填部用インキを乗せた際に、溝の一部にインキが充填される。そして、インキをかき取る際に、余分なインキが除去されるとともに、溝の一部にインキを押し込むことができる。
かき取りを経て製造される化粧材として、例えば、特許文献1~2の化粧材が提案されている。
特開平1-314168号公報 国際公開番号WO2021/060530
特許文献1及び2の化粧材は、かき取り方向に垂直方向に延びる溝にインキが充填されない場合があった。このため、特許文献1及び2の化粧材は、インキが充填されない部分が目立ち、質感を満足できるものではなかった。また、化粧材の絵柄によっては、溝が延びる方向が所定の方向に偏る場合がある。このように、溝の方向が所定の方向に偏る化粧材においては、前述した質感の問題は深刻であった。
本開示は、複数の溝を有し、溝の内部にインキを含む充填部を有する化粧材において、質感の低下を抑制できる化粧材を提供することを目的とする。また、本開示は、複数の溝を有し、溝の内部にインキを含む充填部を有する化粧材において、質感の低下を抑制できる化粧材を簡易に製造できる方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本開示は、以下の[1]~[4]を提供する。
[1] 基材層と、表面保護層とを有する化粧材であって、
前記基材層は、前記表面保護層側の面に複数の溝を有し、
前記溝のうちの少なくとも一部の溝は、溝の内部に着色剤を含む充填部を有し、
前記溝のうち、所定の方向に対して垂直方向±10度の範囲の方向に延びる溝を、垂直方向の溝と定義した際に、
前記垂直方向の溝は、溝の底部の算術平均高さの平均が4.0μm以上である、化粧材。
[2] 基材層と、表面保護層とを有する化粧材であって、
前記化粧材は、平面視形状が、長手方向及び短手方向を有する長方形であり、
前記基材層は、前記表面保護層側の面に複数の溝を有し、
前記溝のうちの少なくとも一部の溝は、溝の内部に着色剤を含む充填部を有し、
前記溝のうち、前記長手方向±10度の範囲の方向に延びる溝を、長手方向の溝と定義した際に、
前記長手方向の溝は、溝の底部の算術平均高さの平均が4.0μm以上である、化粧材。
[3] 基材層と、表面保護層とを有する化粧材であって、
前記化粧材はロール状であり、
前記基材層は、前記表面保護層側の面に複数の溝を有し、
前記溝のうちの少なくとも一部の溝は、溝の内部に着色剤を含む充填部を有し、
前記溝のうち、前記化粧材のロールの幅方向±10度の範囲の方向に延びる溝を、幅方向の溝と定義した際に、
前記幅方向の溝は、溝の底部の算術平均高さの平均が4.0μm以上である、化粧材。
[4] 下記の工程1~4を含む、化粧材の製造方法。
工程1:基材層をエンボス版で賦型して、複数の溝を形成する工程。工程1では、前記溝のうち、工程3のかき取り方向に対して垂直方向±10度の範囲の方向に延びる溝を、垂直方向の溝と定義した際に、前記垂直方向の溝が、溝の底部の算術平均高さの平均が4.0μm以上となるようにする。
工程2:基材層のエンボス版で賦型した側の面に、着色剤を含む充填部用インキを乗せる工程。
工程3:所定の方向に充填部用インキをかき取り、前記溝のうち少なくとも一部の溝の内部に、着色剤を含む充填部を形成する工程。
工程4:基材層のエンボス版で賦型した側の面に、表面保護層を形成する工程。
本開示は、複数の溝を有し、溝の内部にインキを含む充填部を有する化粧材において、化粧材の質感の低下を抑制することができる。また、本開示は、複数の溝を有し、溝の内部にインキを含む充填部を有する化粧材の製造方法において、質感の低下を抑制した化粧材を簡易に製造することができる。
本開示の化粧材の一実施形態を示す断面図である。 溝内の充填部に関して、充填部の高さの方向性を説明するための図である。 基材層の溝の平面視形状の一実施形態を示す平面図である。 溝の深さ、幅、長さを算出する手法を説明するための図である。 溝の底部に配置された凸部の一実施形態を示す平面図である。 溝の底部に配置された凸部の一実施形態を示す断面図である。
[化粧材(第1の化粧材)]
本開示に含まれる第1の化粧材は、
基材層と、表面保護層とを有し、
前記基材層は、前記表面保護層側の面に複数の溝を有し、
前記溝のうちの少なくとも一部の溝は、溝の内部に着色剤を含む充填部を有し、
前記溝のうち、所定の方向に対して垂直方向±10度の範囲の方向に延びる溝を、垂直方向の溝と定義した際に、
前記垂直方向の溝は、溝の底部の算術平均高さの平均が4.0μm以上である、ものである。
図1は、本開示の化粧材100の一実施形態を示す断面図である。
図1の化粧材100は、基材層10と、表面保護層40とを有している。図1において、基材層10は、表面保護層40側の面に複数の溝21を有している。図1において、少なくとも一部の溝21は、溝の内部に着色剤を含む充填部22を有している。図1において、基材層10は、透明性樹脂層11、接着剤層12、装飾層13及び着色基材14をこの順に有する多層の基材層である。図1の化粧材100は、基材層10と表面保護層40との間に、プライマー層30を有している。
図1~6は、本開示の第1~3の化粧材に共通する図である。
<基材層>
第1の化粧材の基材層は、表面保護層側の面に複数の溝を有することを要する。前記溝のうちの少なくとも一部の溝は、溝の内部に着色剤を含む充填部を有することを要する。前記溝のうち、所定の方向に対して垂直方向±10度の範囲の方向に延びる溝を、垂直方向の溝と定義した際に、前記垂直方向の溝は、溝の底部の算術平均高さの平均が4.0μm以上であることを要する。
本明細書において、「算術平均高さ」は、ISO 25178-2:2012の算術平均高さを意味する。本明細書において、「算術平均高さ」のことを「Sa」と称する場合がある。
本開示の第1の化粧材は、前記垂直方向の溝の底部のSaの平均を所定の値以上とすることにより、化粧材の質感を良好にすることができる。以下、本開示の第1の化粧材が、質感を良好にできる理由を説明する。
まず、溝の内部に形成される充填部は、高さが偏っている方向と、高さが揃っている方向とがある。本明細書では、充填部の高さが偏っている方向を「所定の方向」としている。また、本明細書では、充填部の高さが揃っている方向を「所定の方向に対して垂直方向」としている。「充填部の高さ」とは、化粧材の厚み方向における充填部の位置を意味する。すなわち、「充填部の高さ」は、充填部の厚みとは異なる場合がある。
「充填部の高さが偏っている」とは、充填部の高さの差分が5μm以上の場合を意味する。充填部の高さの差分が5μm以上である方向として、複数の方向が存在する場合、単位長さ辺りの充填部の高さの差分が最も大きい方向を、「充填部の高さが偏っている」方向とすればよい。「充填部の高さが揃っている」方向は、充填部の高さの差分が5μm未満であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましい。
充填部の高さが偏っている方向、及び、充填部の高さが揃っている方向、を備えた化粧材は、例えば、かき取りを経て作製された化粧材において確認することができる。すなわち、化粧材の溝を有する面に着色剤を含む充填部用インキを乗せた後、所定の方向に充填部用インキをかき取った場合、かき取り方向では充填部の高さが偏りやすいのに対して、かき取り方向に対して垂直方向では充填部の高さが揃いやすい。前述したことを、さらに、図2を用いて説明する。図2(a)の化粧材の表面にインキを乗せ、Y-Y’の方向にインキをかき取った場合を考える。この場合、かき取り方向に沿ったY-Y’方向は、図2(b)の断面図のように、インキの高さが偏って充填されやすい。一方、かき取り方向に対して垂直であるX-X’方向は、図2(c)の断面図のように、インキの高さが揃って充填されやすい。
したがって、本開示において、「所定の方向」は「かき取り方向」を意味するともいえる。また、本開示において、「所定の方向に対して垂直方向」とは「かき取り方向に対して垂直方向」を意味するともいえる。
また、基材層の溝のうち、かき取り方向に対して略垂直方向に延びる溝は、インキが充填されにくい。この理由は、かき取りの際に、前記溝はインキがかき出されやすいためである。
したがって、本開示の第1の化粧材において、「所定の方向に対して垂直方向±10度の範囲の方向に延びる溝」は、「かき取りの際に溝にインキが充填されにくい溝(≒かき取り方向に対して垂直方向±10度に延びる溝)」を特定したもの、といえる。
インキが充填されなかった溝(充填部を有さない溝)は、溝の底部の反射光による艶が目立ちやすいため、質感が低下しやすい。
本開示の第1の化粧材は、垂直方向の溝の底部のSaの平均が4.0μm以上である。このため、本開示の第1の化粧材は、垂直方向の溝にインキが充填されなかったとしても、溝の底部の反射光を散乱させることにより、艶が目立つことを抑制することができるため、質感が低下することを抑制できる。
垂直方向の溝の底部のSaの平均は、4.5μm以上であることが好ましく、5.0μm以上であることがより好ましく、5.5μm以上であることがさらに好ましい。
前記Saの平均が大きすぎると、溝の箇所と、溝以外の箇所との明暗差が低下する場合がある。このため、前記Saの平均は、10.0μm以下であることが好ましく、8.0μm以下であることがより好ましい。
本明細書において、溝の底部のSaの平均は、後述する手法で測定できる。
前記垂直方向以外の溝は、溝内に充填部が形成されやすい。このため、全ての溝を前記垂直方向以外の溝にすれば、質感の低下の問題は生じにくいと考えられる。しかし、全ての溝を前記垂直方向以外の溝にした場合、デザインの自由度に欠け、さらには、特定の方向の溝が存在しないことによる違和感が生じるため、質感の高い化粧材を得ることが困難である。
また、垂直方向の溝の形状を、溝内に充填部が形成されやすい形状に調整したり、充填部用インキを変更したり、かき取り条件を変更したりすることによっても、質感の低下を抑制しやすくできると考えられる。しかし、これらの手法では、垂直方向の溝の形状が限定されたり、インキの材料が変更されたりするため、所望の質感が得られない場合がある。
一方、本開示の化粧材は、上述した不具合を生じ難いため、質感の高い化粧材を得やすい。
垂直方向以外の溝についても、溝の底部のSaの平均が上記範囲であることが好ましい。
<<溝の形状等>>
基材層の溝は、形状等は特に制限されない。以下、溝の実施形態を説明する。
溝の平面視形状は特に制限されず、各種の模様が挙げられる。
化粧材全体で表現する意匠が木材の模様の場合、溝の平面視形状は、焼杉の割れ目、導管、秋材及び節から選ばれる1種以上の模様を形成することが好ましい。「焼杉の割れ目」とは、杉板の表面を焼き焦がして炭素層を形成した際に、木目の方向に対して垂直方向に形成されるひび割れのことをいう。
化粧材全体で表現する意匠がトラバーチン等の石の模様の場合、溝の平面視形状は凹陥部であることが好ましい。
図3は、基材層10の溝21の平面視形状の一実施形態を示す図である。
個々の溝が延びる方向は、個々の溝内の任意の2点間距離が最大となる方向を意味する。例えば、図4の溝の場合、点A及び点Bの2点を結ぶ方向が、溝が延びる方向Dとなる。
個々の溝の長さは、個々の溝内の任意の2点間距離が最大となる長さを意味する。図4の溝の場合、点Aと点Bとの距離が、溝の長さとなる。
個々の溝に関して、溝の幅は特に制限されないが、150μm以上1000μm以下であることが好ましく、175μm以上900μm以下であることがより好ましく、200μm以上800μm以下であることがさらに好ましい。
個々の溝に関して、溝の深さは制限されないが、10μm以上100μm以下であることが好ましく、20μm以上95μm以下であることがより好ましく、30μm以上90μm以下であることがさらに好ましい。
個々の溝に関して、溝の長さは制限されないが、1mm以上100mm以下であることが好ましく、2mm以上80mm以下であることがより好ましく、3mm以上50mm以下であることがさらに好ましい。
個々の溝の深さは、例えば、下記A1~A2のステップで算出できる。
A1:個々の溝に関して、溝を横断する方向の高さデータを、ランダムに抽出した5箇所で測定し、高さデータを備えた5つの断面曲線を得る。高さデータは、溝が延びる方向であるDに直交する方向で測定する。例えば、平面視形状が図4の溝の場合、a~eの5箇所において、溝の延伸方向D1と直交する方向である点線方向において、高さデータを測定する。
A2:A1で測定した高さデータから、各測定箇所の最大深さを抽出し、5箇所の最大深さの平均値を、個々の溝の平均深さとする。
個々の溝の幅は、例えば、下記B1で算出できる。
B1:上記A1で測定した5つの断面曲線から、個々の測定箇所の溝の幅を算出する。そして、5箇所の幅の平均値を、個々の溝の幅とする。
垂直方向の溝の底部の算術平均高さの平均は、例えば、下記C1~C3で算出できる。
C1:垂直方向の溝の中から、任意の10の溝を抽出する。
C2:抽出した10の個々の溝の底部の算術平均高さを測定する。測定領域は、500μm×150μmとする。個々の溝において、互いに重複することなく前記測定領域を複数確保できる場合には、複数の算術平均高さを測定する。但し、測定領域は最大で5つとすればよい。
C3:C2の測定結果から、個々の溝の算術平均高さの平均値を算出する。そして、得られた平均値を、個々の溝のSaとする。さらに、抽出した10の溝のSaを平均し、「垂直方向の溝の底部の算術平均高さの平均」を得る。
溝の高さデータ及び断面曲線は、例えば、レーザー顕微鏡で基材層の表面保護層側の面を撮影し、解析することにより得ることができる。レーザー顕微鏡としては、キーエンス社製の3D形状測定機「VK-X1000」が挙げられ、解析アプリケーションとしては、前記測定器に付属のソフトウェアである「形状測定レーザマイクロスコープVK-X100/X200シリーズ解析アプリケーション」が挙げられる。
基材層に存在する全ての溝のうち、所定の方向に対して垂直方向±40度の範囲の方向に延びる溝の割合は、質感をより高めるため、個数基準で80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、97%以上であることがさらに好ましく、100%であることが最も好ましい。
基材層の溝の方向が上記の割合であることは、溝が延びる方向が所定の方向に偏っていることを意味している。このように、本開示の化粧材は、溝の方向が所定の方向に偏る場合であっても、質感を良好にしやすい点で好ましい。
所定の方向に対して垂直方向±40度の範囲の方向に延びる溝のうち、所定の方向に対して垂直方向±10度の範囲の方向に延びる溝の割合は、50%以上95%以下であることが好ましく、70%以上90%以下であることがより好ましい。
所定の方向を基準とした際に、基材層に存在する全ての溝の方向の標準偏差σは、1度以上20度以下であることが好ましく、2度以上15度以下であることがより好ましく、3度以上10度以下であることがさらに好ましい。溝の方向の標準偏差σを前記範囲とすることにより、質感をより高めるとともに、自然物の外観を付与しやすくできる。
基材層の全面積に対する、溝が形成されている面積の割合は、40%以上90%以下であることが好ましく、50%以上80%以下であることがより好ましく、60%以上70%以下であることがさらに好ましい。
Saを4.0μm以上としやすくするため、溝の底部は、凸部及び/又は凹部を有することが好ましく、凸部を有することがより好ましい。図5は、溝の底部に配置された凸部の一実施形態を示す平面図であり、図6は、溝の底部に配置された凸部の一実施形態を示す断面図である。垂直方向の溝のみならず、垂直方向以外の溝も、底部に凸部及び/又は凹部を有することが好ましい。
溝の底部において、凸部及び/又は凹部は、規則的に配置されていてもよいが、質感をより高めるとともに、自然物の外観を付与しやすくするため、ランダムに配置されていることが好ましい。
凸部の高さ又は凹部の深さは、溝の深さよりも小さいことを前提として、5μm以上30μm以下であることが好ましく、6μm以上27μm以下であることがより好ましく、7μm以上25μm以下であることがさらに好ましい。凸部の高さとは、溝の底部を基準とした凸部の最大高さを意味する。凹部の深さとは、溝の底部を基準とした凹部の最大深さを意味する。
凸部の高さ又は凹部の最大径は、溝の幅よりも狭いことを前提として、10μm以上300μm以下であることが好ましく、20μm以上250μm以下であることがより好ましく、30μm以上200μm以下であることがさらに好ましい。凸部の最大径は、凸部の底面の任意の2点間距離が最大となる長さを意味する。凹部の最大径は、凹部の開口部の任意の2点間距離が最大となる長さを意味する。
凸部の高さ、凹部の深さ、凸部の高さ、凹部の最大径は、レーザー顕微鏡で基材層の表面保護層側の面を撮影し、解析することにより得ることができる。
溝の深さに対する、凸部の高さ又は凹部の深さの比は、0.05以上0.50以下であることが好ましく、0.07以上0.40以下であることがより好ましく、0.10以上0.37以下であることがさらに好ましい。前記比を前記範囲とすることにより、化粧材の質感の低下をより抑制しやすくできる。
<<溝の形成方法>>
基材層の溝は、例えば、基材層をエンボス版で賦型することにより形成することができる。エンボス版は、例えば、金属ロールをレーザー光で彫刻することにより作製できる。基材層の溝は、エンボス版の凸部領域により形成される。エンボス版の凸部領域が、前記凸部よりも微細な凸部及び/又は凹部を有することにより、基材層の溝の底部に凸部及び/又は凹部を形成することができる。前記凸部よりもさらに微細な凸部及び/又は凹部は、例えば、レーザー光による彫刻により形成できる。
金属ロールをレーザー光で彫刻する手法は、例えば、国際公開番号WO2020/203737に記載されている。
エンボス版で賦型する際の温度及び圧力は、基材層の材質によって適宜調整すればよい。基材層の基材及び透明性樹脂層がポリオレフィンであれば、140℃以上180℃以下、10kg/cm以上50kg/cm以下である。
エンボス版による賦型の代表的な方法は例えば次のようなものである。
まず、軟化した基材層の表面にエンボス版を押圧して、エンボス版表面の模様を賦形する。そして基材層を冷却等により固化することにより、基材層に形成した模様を固定する。その後に模様が賦形された基材層からエンボス版から離型する。
<<基材層の層構成>>
基材層は、単層構成であってもよいし、複数の層を積層した多層構成であってもよい。基材層の層構成としては、例えば、下記(1)~(10)が挙げられる。下記(1)~(10)において、「/」は層の界面を示す。下記(1)~(10)の基材層は、左側に記載した層を、表面保護層に向けて配置することが好ましい。
(1)基材の単層
(2)装飾層/基材
(3)基材/装飾層
(4)透明性樹脂層/基材
(5)透明性樹脂層/装飾層/基材
(6)透明性樹脂層/基材/装飾層
(7)透明性樹脂層/接着剤層/基材
(8)透明性樹脂層/接着剤層/装飾層/基材
(9)透明性樹脂層/装飾層/接着剤層/基材
(10)透明性樹脂層/接着剤層/基材/装飾層
―基材―
基材の材質は特に制限されないが、エンボス加工等による溝の形成のしやすさのため、プラスチックフィルム又はプラスチックフィルムと紙との複合体が好ましい。
プラスチックフィルムを構成する樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル等のアクリル樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、三酢酸セルロース、ポリカーボネート等が挙げられる。これらの中でも、印刷適性及び成形加工適性に優れる、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂が好ましい。
基材は透明基材であってもよいし、着色基材であってもよい。また、基材は複数の基材を積層した積層基材であってもよい。なお、基材層の層構成が上記(6)及び(10)の場合、基材を通して装飾層を視認するために、基材として透明基材を用いることが好ましい。
基材の厚みは特に制限はないが、20μm以上200μm以下が好ましく、40μm以上160μm以下がより好ましく、40μm以上100μm以下がさらに好ましい。
基材上には、基材上に設けられる層との密着性を向上させるために、片面又は両面に、物理的処理又は化学的表面処理等の易接着処理を行ってもよい。
―装飾層―
基材層は、化粧材の意匠性を向上させるため、装飾層を有していてもよい。
装飾層は、例えば、全面を被覆する着色層(いわゆるベタ着色層)であってもよいし、種々の模様を有する絵柄層であってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。
装飾層により付与する模様は特に制限されないが、例えば、木材の模様、石の模様等が挙げられる。装飾層によりこれらの模様を形成することで、溝及び充填部に基づく質感をより強調することができる。
装飾層は、例えば、顔料及び染料等の着色剤と、バインダー樹脂とを含む装飾層用インキを塗布、乾燥して形成することができる。装飾層用インキには、必要に応じて、体質顔料、酸化防止剤、可塑剤、触媒、硬化剤、紫外線吸収剤及び光安定剤等の添加剤を混合することができる。
装飾層の着色剤及びバインダー樹脂は特に限定されず、後述の充填部用インキで例示するものと同様のものを用いることができる。
装飾層の厚みは、0.1μm以上20μm以下が好ましく、0.5μm以上10μm以下がより好ましく、1.0μm以上5.0μm以下がさらに好ましい。
―透明性樹脂層―
基材層は、強度を高めるために透明性樹脂層を有していてもよい。
透明性樹脂層を構成する樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられ、これらの中でも加工適性の観点からポリオレフィン系樹脂が好ましい。また、透明性樹脂層は、これら例示の樹脂を混合してもよく、さらには、これら例示の樹脂1種又は2種以上からなる層を積層したものでもよい。
透明性樹脂層のポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(低密度、中密度、高密度)、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレン(低密度、中密度、高密度)、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体が好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。
透明性樹脂層は、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤等の添加剤を含有してもよい。透明性樹脂層が紫外線吸収剤を含む場合、該紫外線吸収剤はトリアジン系化合物であることが好ましく、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物であることがより好ましい。
透明性樹脂層の厚みは、耐擦傷性、加工適正及び耐候性のバランスの観点から、20μm以上150μm以下が好ましく、40μm以上120μm以下がより好ましく、60μm以上100μm以下がさらに好ましい。
―接着剤層―
基材層は、層間密着性を向上するために接着剤層を有していてもよい。
接着剤層は、例えば、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤等の汎用の接着剤から構成することができる。これら接着剤の中でも、ウレタン系接着剤が接着力の点で好ましい。
ウレタン系接着剤としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール等の各種ポリオール化合物と、イソシアネート化合物等の硬化剤とを含む2液硬化型ウレタン樹脂を利用した接着剤が挙げられる。
接着剤層の厚みは、0.1μm以上30μm以下が好ましく、1μm以上15μm以下がより好ましく、2μm以上10μm以下がさらに好ましい。
基材層の表面保護層とは反対側の面の形状は特に限定されず、平滑であってもよいし、溝が形成されていてもよい。
<充填部>
溝のうちの少なくとも一部の溝は、溝の内部に着色剤を含む充填部を有することを要する。溝の内部に充填部を有することにより、化粧材の質感を高めることができる。
溝のうち、充填部を有する溝の割合は、個数基準で、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。なお、上述したように、充填部を有する溝の割合を極めて高くしようとすると、溝の形状が限定されたり、インキの材料が変更されたりする場合がある。また、本開示の化粧材は、充填部を有さない溝が存在しても、質感が低下することを抑制できる。このため、充填部を有する溝の割合は、個数基準で、99%以下であることが好ましい。
溝に着色剤を含む充填部を形成する手段は、例えば、基材層の溝を有する側の面に、着色剤及びバインダー樹脂等を含む充填部用インキを塗布し、ドクター刃等のかき取り用の刃で前記インキをかき取る手段が挙げられる。この際、刃の材質及び刃を当てる角度等を調整することにより、溝に充填されるインキの量を調整することができる。インキを溝に押込みやすくするため、刃の材質は柔らかい方が好ましい。同様に、インキを溝に押込みやすくするため、基材層に対する刃の角度は、基材層の進行方向側に傾けることが好ましい。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料、あるいは染料等が挙げられる。
着色剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、1質量部以上90質量部以下であることが好ましく、2質量部以上50質量部以下であることがより好ましい。
着色剤の色は特に限定されないが、暗色系の着色剤が好ましい。暗色系の着色剤は、溝を暗くすることができるため、化粧材の面内の明度のコントラストを高めることができる。暗色とは、濃灰色、深緑色、紺色、黒色、濃紫色、えんじ色、茶色等の低明度、低彩色の暗い感じのする色のことをいう。
着色剤として暗色系の着色剤を用いた場合、充填部を有さない溝が目立ちやすくなる傾向がある。しかし、本開示の化粧材は、溝の底部のSaが所定の範囲であるため、暗色系の着色剤を用いても、充填部を有さない溝が目立ちやすくなることを抑制できる。
バインダー樹脂としては、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、アルキド樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂及びゴム系樹脂等が挙げられる。
充填部は、質感をより高めるため、マット剤を含んでいてもよい。充填部がマット剤を含む場合、充填部を有する溝と、充填部を有さない溝との差がより目立ちやすくなる。しかし、本開示の化粧材は、溝の底部のSaが所定の範囲であるため、充填部がマット剤を含んでいても、充填部を有さない溝が目立ちやすくなることを抑制できる。
マット剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン及び硫酸バリウム等の無機粒子;アクリルビーズ及びスチレンビーズ等の有機粒子が挙げられる。マット剤の平均粒子径は1μm以上20μm以下が好ましい。本明細書において、平均粒子径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値d50を意味する。
マット剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、2質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
充填部は、質感を長期に渡って維持しやすくするため、紫外線吸収剤及び光安定剤の少なくとも何れかを含むことが好ましい。
紫外線吸収剤としては、無機系紫外線吸収剤、有機系紫外線吸収剤が挙げられる。
無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5nm以上120nm以下の、酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。
有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物等が挙げられる
紫外線吸収剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、10質量部以上40質量部以下であることがより好ましい。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。光安定剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、10質量部以上40質量部以下であることがより好ましい。
<表面保護層>
化粧材は、表面保護層を有する。
表面保護層は、化粧材の耐擦傷性を良好にするため、硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましい。
硬化性樹脂組成物としては、熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物、電離放射線硬化性樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物、及びこれらの混合物が挙げられる。中でも、表面保護層の架橋密度を高め、耐擦傷性等の表面特性を向上させるため、電離放射線硬化性樹脂組成物が好ましい。また無溶媒で塗布することができ、取り扱いが容易であるため、電離放射線硬化性樹脂組成物の中でも電子線硬化性樹脂組成物がより好ましい。
熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含む組成物であり、加熱により、硬化する樹脂組成物である。熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物には、これら硬化性樹脂に、必要に応じて硬化剤が添加される。
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性官能基を有する化合物(以下、「電離放射線硬化性化合物」ともいう)を含む組成物である。電離放射線硬化性官能基としは、電離放射線の照射によって架橋硬化する基であり、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基などが好ましく挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクロイル基を示す。また、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを示す。
また、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も含まれる。
電離放射線硬化性化合物は、具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー、重合性オリゴマーの中から適宜選択して用いることができる。
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好ましく、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ該官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
重合性オリゴマーとしては、例えば、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ該官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー等がある。
これらの重合性オリゴマーは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。加工特性と耐擦傷性及び耐候性を向上させる観点からは、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、及びアクリル(メタ)アクリレートオリゴマーから選ばれる1種以上が好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマーから選ばれる1種以上がより好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーがさらに好ましい。
電離放射線硬化性樹脂組成物中には、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度を低下させる等の目的で、単官能性(メタ)アクリレートを併用することができる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
電離放射線硬化性化合物が紫外線硬化性化合物である場合には、電離放射線硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤や光重合促進剤等の添加剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、チオキサントン類等から選ばれる1種以上が挙げられる。
また、光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速めることができるものであり、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
表面保護層は、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、マット剤、着色剤等の添加剤を含有してもよい。
表面保護層の厚みは、加工特性、耐擦傷性及び耐候性のバランスの観点から、1.5μm以上30μm以下が好ましく、2μm以上15μm以下がより好ましく、3μm以上10μm以下がさらに好ましい。
<プライマー層>
基材層と表面保護層との間には、密着性を良好にするため、プライマー層を有していてもよい。
プライマー層は、主としてバインダー樹脂から構成される。プライマー層は、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を含有してもよい。
プライマー層のバインダー樹脂としては、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体(ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、末端、側鎖に2個以上の水酸基を有する重合体(ポリカーボネートポリオール)由来のウレタン-アクリル共重合体)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂(硝化綿)、酢酸セルロース樹脂等の樹脂が好ましく挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。また、バインダー樹脂は、これら樹脂に、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤等の硬化剤を添加し、架橋硬化したものであってもよい。これらの中でも、アクリルポリオール樹脂等のポリオール系樹脂をイソシアネート系硬化剤で架橋硬化したものが好ましく、アクリルポリオール樹脂をイソシアネート系硬化剤で架橋硬化したものがより好ましい。
プライマー層の厚みは、0.5μm以上10μm以下が好ましく、0.7μm以上8μm以下がより好ましく、1μm以上6μm以下がさらに好ましい。
<裏面プライマー層>
本開示の化粧材は、化粧材と各種の被着材との接着性を向上させるため、基材層の表面保護層とは反対側に、裏面プライマー層を有していてもよい。
裏面プライマー層の形成に用いられる材料としては特に限定されず、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂等が挙げられる。
裏面プライマー層の厚みは、0.5μm以上5.0μm以下であることが好ましく、1μm以上3μm以下であることがより好ましい。
表面保護層、装飾層、プライマー層、接着剤層及び裏面プライマー層は、各層を形成する組成物を含むインキを、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方式で塗布し、必要に応じて、乾燥、硬化することにより形成することができる。
透明性樹脂層は、例えば、加熱溶融押出しにより形成することができる。
[化粧材(第2の化粧材)]
本開示に含まれる第2の化粧材は、
基材層と、表面保護層とを有する化粧材であって、
前記化粧材は、平面視形状が、長手方向及び短手方向を有する長方形であり、
前記基材層は、前記表面保護層側の面に複数の溝を有し、
前記溝のうちの少なくとも一部の溝は、溝の内部に着色剤を含む充填部を有し、
前記溝のうち、前記長手方向±10度の範囲の方向に延びる溝を、長手方向の溝と定義した際に、
前記長手方向の溝は、溝の底部の算術平均高さの平均が4.0μm以上である、ものである。
<基材層>
第2の化粧材の基材層は、表面保護層側の面に複数の溝を有することを要する。前記溝のうちの少なくとも一部の溝は、溝の内部に着色剤を含む充填部を有することを要する。 前記溝のうち、前記長手方向±10度の範囲の方向に延びる溝を、長手方向の溝と定義した際に、前記長手方向の溝は、溝の底部の算術平均高さの平均が4.0μm以上であることを要する。
本開示の第2の化粧材は、前記長手方向の溝の底部のSaの平均を所定の値以上とすることにより、化粧材の質感を良好にすることができる。以下、本開示の第2の化粧材が、質感を良好にできる理由を説明する。
平面視形状が、長手方向及び短手方向を有する長方形である化粧材では、質感を強調するため、溝が延びる方向を、長手方向を基準として所定の角度以内の方向にすることが好ましい。一方、製造工程上の理由で、前述した平面視形状の化粧材の溝に着色剤を含むインキを充填する際に、インキのかき取り方向を長手方向に対して垂直方向とする場合がある。
第1の化粧材で説明したように、基材層の溝のうち、かき取り方向に対して略垂直方向に延びる溝は、インキが充填されにくい。
すなわち、本開示の第2の化粧材において、「長手方向±10度の範囲の方向に延びる溝」は、「かき取りの際に溝にインキが充填されにくい溝(≒かき取り方向に対して垂直方向±10度に延びる溝)」を特定したもの、といえる。
インキが充填されなかった溝(充填部を有さない溝)は、溝の底部の反射光による艶が目立ちやすいため、質感が低下しやすい。
本開示の第2の化粧材は、長手方向の溝の底部のSaの平均が4.0μm以上である。このため、本開示の第2の化粧材は、長手方向の溝にインキが充填されなかったとしても、溝の底部の反射光を散乱させることにより、艶が目立つことを抑制することができるため、質感が低下することを抑制できる。
長手方向の溝の底部のSaの平均は、4.5μm以上であることが好ましく、5.0μm以上であることがより好ましく、5.5μm以上であることがさらに好ましい。
前記Saの平均が大きすぎると、溝の箇所と、溝以外の箇所との明暗差が低下する場合がある。このため、前記Saの平均は、10.0μm以下であることが好ましく、8.0μm以下であることがより好ましい。
長手方向以外の溝についても、溝の底部のSaの平均が上記範囲であることが好ましい。
なお、インキのかき取り方向を長手方向に対して垂直な方向とした場合においては、前記長手方向以外の溝に関しては、溝内に充填部が形成されやすい。このため、全ての溝を前記長手方向以外の溝にすれば、充填率の問題は生じないと考えられる。しかし、全ての溝を前記長手方向以外の溝にした場合、デザインの自由度に欠け、さらには、特定の方向の溝が存在しないことによる違和感が生じるため、質感の高い化粧材を得ることが困難である。
また、長手方向の溝の形状を、溝内に充填部が形成されやすい形状に調整したり、充填部用インキを変更したり、かき取り条件を変更したりすることによっても、質感の低下を抑制しやすくできると考えられる。しかし、これらの手法では、長手方向の溝の形状が限定されたり、インキの材料が変更されたりするため、所望の質感が得られない場合がある。
一方、本開示の化粧材は、上述した不具合を生じ難いため、質感の高い化粧材を得やすい。
<<溝の形状等>>
第2の化粧材の溝は、形状等は特に制限されない。第2の化粧材の溝の実施形態は、特に言及しない限り、第1の化粧材の溝の実施形態と同様である。同様に、第2の化粧材の溝の底部の凸部及び/又は凹部の実施形態は、特に言及しない限り、第1の化粧材の溝の底部の凸部及び/又は凹部の実施形態と同様である。
基材層に存在する全ての溝のうち、長手方向±40度の範囲の方向に延びる溝の割合は、質感をより高めるため、個数基準で80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、97%以上であることがさらに好ましく、100%であることが最も好ましい。
基材層の溝の方向が上記の割合であることは、溝が延びる方向が長手方向に偏っていることを意味している。このように、本開示の第2の化粧材は、溝の方向が長手方向に偏る場合であっても、質感を良好にしやすい点で好ましい。
長手方向±40度の範囲の方向に延びる溝のうち、長手方向±10度の範囲の方向に延びる溝の割合は、50%以上95%以下であることが好ましく、70%以上90%以下であることがより好ましい。
長手方向を基準とした際に、基材層に存在する全ての溝の方向の標準偏差σは、1度以上20度以下であることが好ましく、2度以上15度以下であることがより好ましく、3度以上10度以下であることがさらに好ましい。溝の方向の標準偏差σを前記範囲とすることにより、質感をより高めるとともに、自然物の外観を付与しやすくできる。
Saを4.0μm以上としやすくするため、溝の底部は、凸部及び/又は凹部を有することが好ましく、凸部を有することがより好ましい。長手方向の溝のみならず、長手方向以外の溝も、底部に凸部及び/又は凹部を有することが好ましい。
本開示の第2の化粧材に関して、溝の形成方法、充填部、基材層の層構成、表面保護層、装飾層、透明性樹脂層、プライマー層及び裏面プライマー層の実施形態は、特に言及しない限り、第1の化粧材の実施形態と同様である。
[化粧材(第3の化粧材)]
本開示に含まれる第3の化粧材は、
基材層と、表面保護層とを有する化粧材であって、
前記化粧材はロール状であり、
前記基材層は、前記表面保護層側の面に複数の溝を有し、
前記溝のうちの少なくとも一部の溝は、溝の内部に着色剤を含む充填部を有し、
前記溝のうち、前記化粧材のロールの幅方向±10度の範囲の方向に延びる溝を、幅方向の溝と定義した際に、
前記幅方向の溝は、溝の底部の算術平均高さの平均が4.0μm以上である、ものである。
<基材層>
第3の化粧材の基材層は、表面保護層側の面に複数の溝を有することを要する。前記溝のうちの少なくとも一部の溝は、溝の内部に着色剤を含む充填部を有することを要する。 前記溝のうち、前記幅方向±10度の範囲の方向に延びる溝を、幅方向の溝と定義した際に、前記幅方向の溝は、溝の底部の算術平均高さの平均が4.0μm以上であることを要する。
本開示の第3の化粧材は、前記幅方向の溝の底部のSaの平均を所定の値以上とすることにより、化粧材の質感を良好にすることができる。以下、本開示の第3の化粧材が、質感を良好にできる理由を説明する。
ロール状の化粧材は、装飾層により模様を形成する場合がある。ロール状の化粧材の模様は、通常は、ロールの長さ方向に模様がつながるようにして形成される。ロールの長さ方向は、ロールの幅方向に対して垂直方向である。また、ロールの長さ方向は、化粧材の製造工程において、ロールを流す方向である。このため、ロール状の化粧材では、模様の方向と区別することにより質感を強調するため、溝が延びる方向を、ロール状の幅方向を基準として所定の角度以内の方向にすることが好ましい。一方、ロール状の化粧材の溝に着色剤を含むインキを充填する際には、製造工程上の理由で、インキのかき取り方向は、ロールの幅方向に対して垂直な方向となる。
第1の化粧材で説明したように、基材層の溝のうち、かき取り方向に対して略垂直方向に延びる溝は、インキが充填されにくい。
すなわち、本開示の第3の化粧材において、「幅方向±10度の範囲の方向に延びる溝」は、「かき取りの際に溝にインキが充填されにくい溝(≒かき取り方向に対して垂直方向±10度に延びる溝)」を特定したもの、といえる。
インキが充填されなかった溝(充填部を有さない溝)は、溝の底部の反射光による艶が目立ちやすいため、質感が低下しやすい。
本開示の第3の化粧材は、幅方向の溝の底部のSaの平均が4.0μm以上である。このため、本開示の第3の化粧材は、幅方向の溝にインキが充填されなかったとしても、溝の底部の反射光を散乱させることにより、艶が目立つことを抑制することができるため、質感が低下することを抑制できる。
幅方向の溝の底部のSaの平均は、4.5μm以上であることが好ましく、5.0μm以上であることがより好ましく、5.5μm以上であることがさらに好ましい。
前記Saの平均が大きすぎると、溝の箇所と、溝以外の箇所との明暗差が低下する場合がある。このため、前記Saの平均は、10.0μm以下であることが好ましく、8.0μm以下であることがより好ましい。
幅方向以外の溝についても、溝の底部のSaの平均が上記範囲であることが好ましい。
なお、前記幅方向以外の溝に関しては、溝内に充填部が形成されやすい。このため、全ての溝を前記幅方向以外の溝にすれば、充填率の問題は生じないと考えられる。しかし、全ての溝を前記幅方向以外の溝にした場合、デザインの自由度に欠け、さらには、特定の方向の溝が存在しないことによる違和感が生じるため、質感の高い化粧材を得ることが困難である。
また、幅方向の溝の形状を、溝内に充填部が形成されやすい形状に調整したり、充填部用インキを変更したり、かき取り条件を変更したりすることによっても、質感の低下を抑制しやすくできると考えられる。しかし、これらの手法では、幅方向の溝の形状が限定されたり、インキの材料が変更されたりするため、所望の質感が得られない場合がある。
一方、本開示の化粧材は、上述した不具合を生じ難いため、質感の高い化粧材を得やすい。
<<溝の形状等>>
第3の化粧材の溝は、形状等は特に制限されない。第3の化粧材の溝の実施形態は、特に言及しない限り、第1の化粧材の溝の実施形態と同様である。同様に、第3の化粧材の溝の底部の凸部及び/又は凹部の実施形態は、特に言及しない限り、第1の化粧材の溝の底部の凸部及び/又は凹部の実施形態と同様である。
基材層に存在する全ての溝のうち、幅方向に対して垂直方向±40度の範囲の方向に延びる溝の割合は、質感をより高めるため、個数基準で80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、97%以上であることがさらに好ましく、100%であることが最も好ましい。
基材層の溝の方向が上記の割合であることは、溝が延びる方向が幅方向に偏っていることを意味している。このように、本開示の第3の化粧材は、溝の方向が幅方向に偏る場合であっても、質感を良好にしやすい点で好ましい。
幅方向±40度の範囲の方向に延びる溝のうち、幅方向±10度の範囲の方向に延びる溝の割合は、50%以上95%以下であることが好ましく、70%以上90%以下であることがより好ましい。
幅方向を基準とした際に、基材層に存在する全ての溝の方向の標準偏差σは、1度以上20度以下であることが好ましく、2度以上15度以下であることがより好ましく、3度以上10度以下であることがさらに好ましい。溝の方向の標準偏差σを前記範囲とすることにより、質感をより高めるとともに、自然物の外観を付与しやすくできる。
Saを4.0μm以上としやすくするため、溝の底部は、凸部及び/又は凹部を有することが好ましく、凸部を有することがより好ましい。幅方向の溝のみならず、幅方向以外の溝も、底部に凸部及び/又は凹部を有することが好ましい。
本開示の第3の化粧材に関して、溝の形成方法、充填部、基材層の層構成、表面保護層、装飾層、透明性樹脂層、プライマー層及び裏面プライマー層の実施形態は、特に言及しない限り、第1の化粧材の実施形態と同様である。
<化粧材の用途>
本開示の化粧材は、そのままで、あるいは被着材に貼り合わせた積層体として、各種の用途に用いることができる。
各種の用途としては、壁、天井、床等の建築物の内装材;窓枠、扉、手すり等の建具;家具;家電製品、OA機器等の筐体;玄関ドア等の外装材等が挙げられる。
被着材としては、木質板;石膏系板;セメント板;繊維セメント板;セラミックス板;鉄板、金属板;樹脂板;FRP板等が挙げられる。
[化粧材の製造方法]
本開示の化粧材の製造方法は、下記の工程1~4を含む。
工程1:基材層をエンボス版で賦型して、複数の溝を形成する工程。工程1では、前記溝のうち、工程3のかき取り方向に対して垂直方向±10度の範囲の方向に延びる溝を、垂直方向の溝と定義した際に、前記垂直方向の溝が、溝の底部の算術平均高さの平均が4.0μm以上となるようにする。
工程2:基材層のエンボス版で賦型した側の面に、着色剤を含む充填部用インキを乗せる工程。
工程3:所定の方向に充填部用インキをかき取り、前記溝のうち少なくとも一部の溝の内部に、着色剤を含む充填部を形成する工程。
工程4:基材層のエンボス版で賦型した側の面に、表面保護層を形成する工程。
<工程1>
工程1は、基材層をエンボス版で賦型して、複数の溝を形成する工程である。
工程1では、工程3のかき取り方向に対して垂直方向±10度の範囲の方向に延びる溝に関して、前記溝の底部の算術平均高さの平均が4.0μm以上となるように、溝を形成する。
溝の幅、溝の深さ、溝の底部の算術平均高さは、概ね、エンボス版の形状に支配される。このため、エンボス版は、賦型した基材層の溝の底部の算術平均高さが、所定の範囲を満たす形状とすることが好ましい。エンボス版の形状を制御しやすくするため、エンボス版は、金属ロールをレーザー光で彫刻することにより作製することが好ましい。
工程1のエンボス条件は特に限定されない。エンボス条件の実施形態として、温度が140℃以上180℃以下、圧力が10kg/cm以上50kg/cm以下、が挙げられる。
<工程2>
工程2は、基材層のエンボス版で賦型した側の面に、着色剤を含む充填部用インキを乗せる工程である。
工程2において、一部の溝内にはインキが充填される。
充填部用インキは、着色剤の他に、バインダー樹脂及び溶剤を含むことが好ましい。
<工程3>
工程3は、所定の方向に充填部用インキをかき取り、前記溝のうち少なくとも一部の溝の内部に、着色剤を含む充填部を形成する工程である。
工程3のかき取りより、余分なインキを除去するとともに、溝の一部にインキを押し込むことができる。
インキをかき取る手段としては、ドクター刃等のかき取り用の刃を用いることが好ましい。
基材層に対する刃の角度は、基材層の垂直方向を基準として、好ましくは3度以上45度以下、より好ましくは5度以上30度以下である。なお、基材層の進行方向側に傾いた場合をプラス、基材層の進行方向とは反対側に傾いた場合をマイナスと表記している。
刃の材質は、金属、ゴム及び樹脂等が挙げられ、この中でも金属が好ましい。
基材層に対して刃を当てる圧力は、インキのスジ及びムラが生じない範囲で適宜調整することができる。
工程3において、基材層のかき取り用の刃が位置する側とは反対側には、断面円形のロールを配置することが好ましい。ロールの材質は、金属、ゴム及び樹脂等が挙げられる。
工程3の途中、または、工程3の完了後かつ工程4の開始前に、充填部用インキのバインダー樹脂を硬化する工程を有することが好ましい。
<工程4>
工程4は、基材層のエンボス版で賦型した側の面に、表面保護層を形成する工程である。
表面保護層は、例えば、表面保護層を構成する成分を含むインキを、汎用の塗布手段で塗布して塗膜を形成し、必要に応じて、前記塗膜を乾燥及び硬化することにより、形成することができる。
基材層と表面保護層との間にプライマー層を有する場合、工程3と工程4との間に、プライマー層を形成することが好ましい。
本開示は、例えば、以下の[1]~[10]を提供する。
[1] 基材層と、表面保護層とを有する化粧材であって、
前記基材層は、前記表面保護層側の面に複数の溝を有し、
前記溝のうちの少なくとも一部の溝は、溝の内部に着色剤を含む充填部を有し、
前記溝のうち、所定の方向に対して垂直方向±10度の範囲の方向に延びる溝を、垂直方向の溝と定義した際に、
前記垂直方向の溝は、溝の底部の算術平均高さの平均が4.0μm以上である、化粧材。
[2] 前記垂直方向の溝は、溝の底部の算術平均高さの平均が4.0μm以上10.0μm以下である、[1]に記載の化粧材。
[3] 前記垂直方向の溝が、溝の底部に凸部及び/又は凹部を有する、[1]又は[2]に記載の化粧材。
[4] 前記垂直方向の溝の深さに対する、前記凸部の高さ又は前記凹部の深さの比が、0.05以上0.50以下である、[3]に記載の化粧材。
[5] 前記充填部がマット剤を含む、[1]~[4]の何れかに記載の化粧材。
[6] 前記充填部が、紫外線吸収剤及び光安定剤の少なくとも何れかを含む、[1]~[5]の何れかに記載の化粧材。
[7] 前記基材層と前記表面保護層との間にプライマー層を有する、[1]~[6]の何れかに記載の化粧材。
[8] 基材層と、表面保護層とを有する化粧材であって、
前記化粧材は、平面視形状が、長手方向及び短手方向を有する長方形であり、
前記基材層は、前記表面保護層側の面に複数の溝を有し、
前記溝のうちの少なくとも一部の溝は、溝の内部に着色剤を含む充填部を有し、
前記溝のうち、前記長手方向±10度の範囲の方向に延びる溝を、長手方向の溝と定義した際に、
前記長手方向の溝は、溝の底部の算術平均高さの平均が4.0μm以上である、化粧材。
[9] 基材層と、表面保護層とを有する化粧材であって、
前記化粧材はロール状であり、
前記基材層は、前記表面保護層側の面に複数の溝を有し、
前記溝のうちの少なくとも一部の溝は、溝の内部に着色剤を含む充填部を有し、
前記溝のうち、前記化粧材のロールの幅方向±10度の範囲の方向に延びる溝を、幅方向の溝と定義した際に、
前記幅方向の溝は、溝の底部の算術平均高さの平均が4.0μm以上である、化粧材。
[10] 下記の工程1~4を含む、化粧材の製造方法。
工程1:基材層をエンボス版で賦型して、複数の溝を形成する工程。工程1では、前記溝のうち、工程3のかき取り方向に対して垂直方向±10度の範囲の方向に延びる溝を、垂直方向の溝と定義した際に、前記垂直方向の溝が、溝の底部の算術平均高さの平均が4.0μm以上となるようにする。
工程2:基材層のエンボス版で賦型した側の面に、着色剤を含む充填部用インキを乗せる工程。
工程3:所定の方向に充填部用インキをかき取り、前記溝のうち少なくとも一部の溝の内部に、着色剤を含む充填部を形成する工程。
工程4:基材層のエンボス版で賦型した側の面に、表面保護層を形成する工程。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。なお、「部」は特に断りのない限り質量基準である。
1.測定、評価
1-1.溝の形状の測定、溝の底部のSaの測定
実施例及び比較例の化粧材を構成する基材層に関して、垂直方向の溝の中から任意の10個の溝を選択した。10個の溝に関して、明細書本文の記載に従い、溝の幅、溝の深さ、溝の長さ、溝の底部の算術平均高さを測定し、平均値を算出した。10個の溝の平均値を表1に示す。さらに、実施例の化粧材を構成する基材層に関して、溝の底部の凸部の高さ、溝の底部の凸部の最大径を算出した。比較例の化粧材を構成する基材層は、溝の底部に凸部を形成していないため、凸部の高さ、凸部の最大径は測定しなかった。
上記の測定は、レーザー顕微鏡で基材層の表面保護層側の面を撮影し、解析することにより実施した。レーザー顕微鏡は、キーエンス社製の3D形状測定機「VK-X1000」を用いた。解析アプリケーションは、前記測定器に付属のソフトウェアである「形状測定レーザマイクロスコープVK-X100/X200シリーズ解析アプリケーション」を用いた。算術平均高さを算出する際には、5倍のレンズにて溝を観察し、測定領域は500μm×150μmとした。
1-2.質感
実施例及び比較例で得られた化粧材について、化粧材の表面の質感を評価した。任意の成人20人が、下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
AA:充填部を有さない溝が気にならず、質感が良好と答えた人が18人以上であった。
A:充填部を有さない溝が気にならず、質感が良好と答えた人が15~17人であった。
B:充填部を有さない溝が気にならず、質感が良好と答えた人が11~14人であった。
C:充填部を有さない溝が気にならず、質感が良好と答えた人が10人以下であった。
2.エンボス版の作製
エンボス版1~2を作製した。
エンボス版1~2は、何れも、表面に銅層をメッキした鉄製のロールをレーザー光で彫刻した後、表面を硬質クロムメッキ処理して作製した。エンボス版1は、エンボス版の凸部領域においてレーザー光を照射し、前記凸部よりも微細な凹部を形成した。エンボス版2は、エンボス版の凸部領域において、前記凸部よりも微細な凹部を形成することを目的としたレーザー光は照射しなかった。エンボス版の凸部領域は、基材層に溝を形成する領域に相当する。エンボス版の凸部領域に形成された微細な凹部領域は、溝の底部に凸部を形成する領域に相当する。
3.化粧材の作製
[実施例1]
着色基材(厚さ60μmの白色ポリプロピレンフィルム)上に、グラビア多色印刷により、黒色系インキによる導管溝模様の絵柄層、及び、茶褐色系インキによる導管部以外の木肌模様からなる絵柄層を形成し、合計厚み1μmの木材模様の装飾層を形成した。
次いで、装飾層上に接着剤層(ポリエステル樹脂、厚さ:5μm)を形成した。次いで、接着剤層上に、透明性樹脂層(透明ポリプロピレン樹脂シート、厚さ:80μm)を押出しラミネート方式で積層し、着色基材、装飾層、接着剤層及び透明性樹脂層をこの順に有する基材層を得た。
次いで、透明性樹脂層を加熱して軟化状態にし、上記「2」で作製したエンボス版1を用いて透明性樹脂層側の面からエンボス処理を施し、透明性樹脂層側の面に複数の溝を形成した。
次いで、透明性樹脂層側の面に、黒褐色の充填部用インキを乗せた後、基材層に対して垂直となるようにドクター刃を押し当て、充填部用インキを掻き取り、余分なインキを除去するとともに、溝にインキを押し込んだ。次いで、インキを乾燥、硬化した。充填部用インキは、バインダー樹脂として、アクリル及びウレタンの共重合樹脂を含み、顔料として、カーボンブラック、キナクリドン及びイソインドリノンを含み、添加剤として、紫外線吸収剤、光安定剤、シリカ、沈降防止剤、分散剤を含むものである。
次いで、透明性樹脂層側の面に、コロナ放電処理を施した後、透明性樹脂層上に、下記のプライマー層用組成物を塗布、乾燥し、厚み4μmのプライマー層を形成した。
<プライマー層用組成物>
100質量部の組成物X(ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体及びアクリルポリオールからなる組成物と、ヘキサメチレンジイソシアネートとを、100:5の質量割合で混合した組成物)と、希釈溶剤とを混合してなる組成物。
次いで、プライマー層上に、下記の表面保護層用組成物を塗布し、電子線を照射して表面保護層用組成物を架橋硬化させることにより、厚み5μmの表面保護層を形成し、実施例1の化粧材を得た。
<表面保護層用組成物>
・電離放射線硬化性樹脂組成物 100部
(重量平均分子量4000の3官能ウレタンアクリレートオリゴマー)
・マット剤 15部
(平均粒子径6μmのシリカ)
[比較例1]
エンボス版1をエンボス版2に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の化粧材を得た。比較例1の基材層の溝が充填部を有する割合と、実施例1の基材層の溝が充填部を有する割合とは、略同一の50%であった。
表1の結果から、実施例1の化粧材は、複数の溝を有し、溝の内部にインキを含む充填部を有する化粧材において、質感の低下を抑制できることが確認できる。
一方、比較例1の化粧材は、垂直方向の溝の底部のSaが4.0μm未満であるため、底部の反射光が目立ち、質感が低下してしまうものであった。なお、比較例1の化粧材は、垂直方向の溝の底部が完全な平滑ではない。第1の理由は、レーザー光でエンボス版の凸部領域を形成する際に、前記凸部領域に若干の段差が形成されるためである。第2の理由は、エンボス版の凸部領域の頂部が平滑であっても、エンボス加工時に溝内に若干の段差が形成されるためである。
10:基材層
11:透明性樹脂層
12:接着剤層
13:装飾層
14:着色基材
21:溝
22:充填部
23:凸部
30:プライマー層
40:表面保護層
100:化粧材

Claims (10)

  1. 基材層と、表面保護層とを有する化粧材であって、
    前記基材層は、前記表面保護層側の面に複数の溝を有し、
    前記溝のうちの少なくとも一部の溝は、溝の内部に着色剤を含む充填部を有し、
    前記溝のうち、所定の方向に対して垂直方向±10度の範囲の方向に延びる溝を、垂直方向の溝と定義した際に、
    前記垂直方向の溝は、溝の底部の算術平均高さの平均が4.0μm以上である、化粧材。
  2. 前記垂直方向の溝は、溝の底部の算術平均高さの平均が4.0μm以上10.0μm以下である、請求項1に記載の化粧材。
  3. 前記垂直方向の溝が、溝の底部に凸部及び/又は凹部を有する、請求項1又は2に記載の化粧材。
  4. 前記垂直方向の溝の深さに対する、前記凸部の高さ又は前記凹部の深さの比が、0.05以上0.50以下である、請求項3に記載の化粧材。
  5. 前記充填部がマット剤を含む、請求項1~4の何れかに記載の化粧材。
  6. 前記充填部が、紫外線吸収剤及び光安定剤の少なくとも何れかを含む、請求項1~5の何れかに記載の化粧材。
  7. 前記基材層と前記表面保護層との間にプライマー層を有する、請求項1~6の何れかに記載の化粧材。
  8. 基材層と、表面保護層とを有する化粧材であって、
    前記化粧材は、平面視形状が、長手方向及び短手方向を有する長方形であり、
    前記基材層は、前記表面保護層側の面に複数の溝を有し、
    前記溝のうちの少なくとも一部の溝は、溝の内部に着色剤を含む充填部を有し、
    前記溝のうち、前記長手方向±10度の範囲の方向に延びる溝を、長手方向の溝と定義した際に、
    前記長手方向の溝は、溝の底部の算術平均高さの平均が4.0μm以上である、化粧材。
  9. 基材層と、表面保護層とを有する化粧材であって、
    前記化粧材はロール状であり、
    前記基材層は、前記表面保護層側の面に複数の溝を有し、
    前記溝のうちの少なくとも一部の溝は、溝の内部に着色剤を含む充填部を有し、
    前記溝のうち、前記化粧材のロールの幅方向±10度の範囲の方向に延びる溝を、幅方向の溝と定義した際に、
    前記幅方向の溝は、溝の底部の算術平均高さの平均が4.0μm以上である、化粧材。
  10. 下記の工程1~4を含む、化粧材の製造方法。
    工程1:基材層をエンボス版で賦型して、複数の溝を形成する工程。工程1では、前記溝のうち、工程3のかき取り方向に対して垂直方向±10度の範囲の方向に延びる溝を、垂直方向の溝と定義した際に、前記垂直方向の溝が、溝の底部の算術平均高さの平均が4.0μm以上となるようにする。
    工程2:基材層のエンボス版で賦型した側の面に、着色剤を含む充填部用インキを乗せる工程。
    工程3:所定の方向に充填部用インキをかき取り、前記溝のうち少なくとも一部の溝の内部に、着色剤を含む充填部を形成する工程。
    工程4:基材層のエンボス版で賦型した側の面に、表面保護層を形成する工程。
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