JP2024063464A - 化粧シート及び化粧板 - Google Patents

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JP2024063464A JP2022171440A JP2022171440A JP2024063464A JP 2024063464 A JP2024063464 A JP 2024063464A JP 2022171440 A JP2022171440 A JP 2022171440A JP 2022171440 A JP2022171440 A JP 2022171440A JP 2024063464 A JP2024063464 A JP 2024063464A
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Abstract

【課題】化粧シートを見る角度に依存せずに、低艶意匠(ハイマット意匠)を再現できる化粧シート及びその化粧シートを用いた化粧板を提供する。【解決手段】本実施形態に係る化粧シート1は、熱可塑性樹脂を含む基材層2の上に、絵柄模様層3、透明熱可塑性樹脂層4、及び表面保護層6をこの順に形成し、表面保護層6は、硬化型樹脂と艶消し剤とを含み、且つ凹部5を備え、艶消し剤の添加量は、表面保護層6全体の質量100質量部に対して、4質量部以上10質量部以下の範囲内であり、凹部5の深さは、5μm以上100μm以下の範囲内であり、表面保護層6の光沢度は7以下である。【選択図】 図1

Description

本発明は、化粧シート及び化粧板に関する。
古来住宅は、木材や石材など地域の特性による材料を用い、また固有の文化に根ざした様式が人々の住まいであったが、住宅産業の発展とともに工業化が進み、天然素材から人工素材への転換が行われてきた。また近年では、高級な木材や石材を多用することが、森林破壊や環境問題に繋がる恐れがあることも、天然素材の代わりに樹脂製の化粧シートの需要が拡大する一要因となっている。
化粧シートの表面保護層には、密着性や耐傷付き性などの点から熱硬化型樹脂および電離放射線硬化型樹脂が含有され、更に意匠性を付与する目的で表面保護層の表面に凹凸が形成される場合がある(特許文献1を参照)。
ここで、化粧シートの意匠としては、一般に低光沢なほど高級感があり好ましいとされている。つまり、化粧シートの意匠としては、低艶意匠(ハイマット意匠)が高級感があるとされ、非常に好まれている。光沢を下げる一般的な方法として、艶消し剤を表面保護層に含有させたり、表面に凹凸形状を設けたりする方法がある。
特許第5045180号公報
しかし、艶消し剤を含有させる表面保護層の膜厚が厚いほど艶消し剤が表面に位置し難くなり、より多くの艶消し剤を含有させなければならない。
一方、意匠性を持たせるために表面保護層に艶消し剤を添加した場合、艶消し剤と表面保護層の主成分との屈折率の違いによって、これらの界面で光散乱することから内部ヘイズが高くなり、表面保護層の下層に位置する絵柄模様層がすっきりと見えずに意匠感が低下する傾向になる。
さらに、従来技術に係る化粧シートでは、表面保護層に艶消し剤(フィラー)を多く添加することにより、ハイマット意匠を再現していたが、この手法では、化粧シートを見る角度によっては、化粧シート全体が白っぽく見えてしまい(即ち、低艶感が損なわれてしまい)、意匠性に劣る場合があった。これは、艶消し剤(フィラー)が多く添加された表面保護層においては、化粧シート(表面保護層)に入射した光が特定の角度において乱反射し、その結果、化粧シート全体が白っぽく見えると考えられる。
本発明は、上記のような点に着目したもので、化粧シートを見る角度に依存せずに、低艶意匠(ハイマット意匠)を再現できる化粧シート及びその化粧シートを用いた化粧板を提供することを目的としている。
課題を解決するために、本発明の一態様に係る化粧シートは、熱可塑性樹脂を含む基材層の上に、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、及び表面保護層をこの順に形成し、前記表面保護層は、硬化型樹脂と艶消し剤とを含み、且つ凹部を備え、前記艶消し剤の添加量は、前記表面保護層全体の質量100質量部に対して、5質量部以上10質量部以下の範囲内であり、前記凹部の深さは、5μm以上100μm以下の範囲内であり、前記表面保護層の光沢度は7以下であることを特徴とする。
本発明の一態様に係る化粧シートによれば、化粧シートを見る角度に依存せずに、低艶意匠(ハイマット意匠)を再現できる。
本発明の実施形態に係る化粧シート、及びその化粧シートを基材に貼り付けた化粧板の構成を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態に係る凹部を形成するためのエンボス版のエンボス形状を模式的に示す斜視図である。
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、及び構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
本実施形態の化粧シート1は、図1に示すように、熱可塑性樹脂を含む基材層2の上に、絵柄模様層3、透明熱可塑性樹脂層4、及び表面保護層6をこの順に積層された状態に形成されている。表面保護層6は、機能的に第1表面保護層6aと第2表面保護層6bの2層に区画されていてもよい。なお、図1ではその表記を省略しているが、絵柄模様層3と透明熱可塑性樹脂層4との間に透明接着層を備えていてもよい。
[化粧板8]
化粧板8は、図1に示すように、化粧シート1を基材7に貼り合わせることで構成される。
[基材7]
基材7としては、南洋材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(以後MDF)、日本農林規格に規定される普通合板が使用可能である。また、木紛添加オレフィン系樹脂からなる基材も使用可能である。基材7の厚さは3~25mm程度が好適である。基材は、アルミなどの金属板、金属製の複合版であっても良い。
[基材層2]
基材層2は、熱可塑性樹脂を含むシート状の層である。熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、既知の熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体又はその鹸化物、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体等のポリオレフィン系共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート、共重合ポリエステル(代表的には1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂である通称PET-G)等のポリエステル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン、6,10-ナイロン、12-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、セルロースアセテート、ニトロセルロース等の繊維素誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン-テトラフロロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂等が挙げられる。
そして、基材層2は、このような熱可塑性樹脂を1種、又はこれらから選ばれる2種又は3種以上の共重合体や混合物、複合体、積層体等を使用して形成することができる。基材層2に難燃剤や紫外線吸収剤等を混入して、難燃性または防褪色性を保持させることもできる。
特に、溶融押し出し装置での生産性、環境適合性、機械強度、耐久性、価格等を考慮すれば、熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂がより好ましい。これにより、廃棄時に燃焼させてもダイオキシンが発生しない。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂がある。
熱可塑性樹脂は、有機顔料及び無機顔料の少なくともいずれかを混合して着色されている着色ポリプロピレンであることが好ましい。
基材層2を着色することで、化粧シート1を貼り合せる基材の表面を隠蔽し、また絵柄模様層3の下地色として色相を適宜、選択することができる。即ち、化粧シート1には一般に、貼り付けられる基材7の表面の色彩や欠陥に対する隠蔽性が必要とされる場合が多い。
目的の化粧シート1に十分な隠蔽性を持たせるために、基材層2を構成する熱可塑性樹脂に隠蔽性顔料を添加することにより、基材層2を隠蔽性とすることができる。また、基材層2を隠蔽性とする代わりに、基材層2の表面又は裏面に、隠蔽性顔料を含有する印刷インキ組成物又は塗料による隠蔽層を設けても良いし、両者を併用することも勿論可能である。また逆に、基材層2を透明又は半透明の材質から構成し、隠蔽性の層を設けないことにより、貼り付けられる基材7の表面の色調や質感を活かすことができる透明又は半透明の化粧シート1とすることも、勿論可能である。
基材層2を着色するための着色剤としては有機顔料、無機顔料(酸化チタンを含む)が使用できる。
また、基材層2には紫外線吸収剤を添加してもよく、その紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリシラート系、シアノアクリレート系、ホルムアミジン系オキザニリド系及びヒンダードアミン系が使用できる。これらの紫外線吸収剤の中でも、特にベンゾトリアゾール系、オキザニリド系やヒンダードアミン系及びこれらの混合物が紫外線吸収性に優れ、またオレフィン樹脂などとの相溶性にも優れるため好ましく使用できる。
また、基材層2には難燃剤を添加してもよく、その難燃剤としては、無機系(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン等)、リン系(有機系:リン酸エステル、リン酸アンモニウム等、無機系:赤リン系)、反応型(ビニル付加重合させるビニル化合物、カルボン酸基、水酸基、エポキシ基などの官能基を有し、高分子の一部原料:共重合モノマー:として使用されるもの)などが使用できる。これらの難燃剤の中でも、樹脂への相溶性、難燃効果及び環境面の安全性等の点において優れる水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好ましく使用できる。
ここで、基材層2がポリプロピレン樹脂から構成される場合には、その有機固形分質量が44g/m以上67g/m以下であることが好ましい。この範囲にすることで、基材層2としてポリプロピレン樹脂を使用しても確実に不燃性を確保することが出来る。また、この場合、基材層2の厚さは50μm以上75μm以下が好ましい。
基材層2の厚さは、加工性及び不燃性等の観点から、30μm以上70μm以下が好ましい。不燃性の観点からは、50μm以上70μm以下がより好ましい。
[絵柄模様層3]
絵柄模様層3は既知の印刷手法を用いて行うことができ、基材層2が巻取りの状態で用意できる場合には、ロールツーロールの印刷装置で印刷を行うことができる。印刷手法は特に限定するものではないが、生産性や絵柄の品位を考慮すれば、例えばグラビア印刷法を用いることができる。
絵柄模様は、化粧板としての意匠性を考慮して任意の絵柄模様を採用すればよく、木質系の絵柄であれば各種木目が好んで用いられることが多く、木目以外にもコルクを絵柄模様とすることもできる。例えば、大理石などの石材の床や建具をイメージしたものであれば、大理石の石目などの絵柄模様として用いられることもある。また天然材料の絵柄模様以外にそれらをモチーフとした人工的絵柄模様や幾何学模様などの人工的絵柄模様も用いることができる。
印刷インキについては、特に限定するものではないが、印刷方式に対応したインキ(例えば、ウレタンインキ)を適宜選ぶことができる。とくに基材層2に対する密着性や印刷適性また化粧板としての耐候性を考慮して選択することが好ましい。
また必要な場合には、絵柄模様層3と透明接着層(図示せず)との接着性向上、あるいは絵柄模様層3と透明熱可塑性樹脂層4との接着性向上を目的として、絵柄模様層3の上に第2の接着層を設けても良い。第2の接着層に用いる樹脂は特に限定するものではないが、例えば2液硬化型ウレタン樹脂などを用いることができ、例えばコーティング装置やグラビア印刷装置などを用いて設けることができる。
[透明接着層]
透明接着層(図示せず)は、基材層2と絵柄模様層3、あるいは絵柄模様層3の絵柄によっては基材層2と透明熱可塑性樹脂層4の接着を強固にする目的で設けられてもよい。この接着が強固であることによって、化粧シート1に対し曲面や直角面に追随する曲げ加工性を付与することができる。
[透明熱可塑性樹脂層4]
透明熱可塑性樹脂層4は、例えば、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、またポリオレフィン系のポリプロピレン樹脂あるいはポリエチレン樹脂、ポリエステル系のポリエチレンテレフタレート樹脂やポリブチレンテレフタレート樹脂などを用いることができる。なかでも環境適合性や加工性、価格の点でポリオレフィン系樹脂を好ましく用いることができる。
透明熱可塑性樹脂層4を構成する樹脂のグレードや組成は、そのほかにシーティングの容易さや印刷適性、曲げ加工に対する適性を考慮して選択することができる。特に曲げ加工性においては曲げ部の白化や割れが発生しないことを考慮して選択することが重要である。
透明熱可塑性樹脂層4の形成は、例えば押出し機を用いて形成することができる。そして、透明熱可塑性樹脂層4を押出し形成すると同時に、図2に例示する各種エンボス版(凹状エンボス版)を用いて透明熱可塑性樹脂層4の表面に凹部を形成してもよい。ここで、透明熱可塑性樹脂層4の厚さは、加工性及び不燃性等の観点から、20μm以上70μm以下が好ましく、20μm以上50μm以下がより好ましい。
透明熱可塑性樹脂層4によって、化粧シート1は意匠的に厚さや深みが出る効果を有するほか、化粧シート1の耐候性、耐磨耗性能を向上させることができる。
なお、上述した凹部は、透明熱可塑性樹脂層4を押出し形成すると同時に、図2に例示する各種エンボス版(凹状エンボス版)を用いて透明熱可塑性樹脂層4の表面に形成する場合に限定されるものではなく、透明熱可塑性樹脂層4上に表面保護層6を形成した後、図2に例示する各種エンボス版(凹状エンボス版)を用いて表面保護層6の表面に凹部5を形成してもよい。
[表面保護層6]
透明熱可塑性樹脂層4の上には表面保護層6を設ける。表面保護層6は単層でも良く、また複数の層を重ねて設けるのでも良い。図1(b)で示した部分断面図では、表面保護層6として、第1表面保護層6aおよび第2表面保護層6bの2層が設けられる場合を例示している。すなわち、表面保護層6は、基材層2側の第1表面保護層6aと、第1表面保護層6aの上に積層する第2表面保護層6bとに機能的に区画されていてもよい。第1表面保護層6aと第2表面保護層6bとは、それぞれ複数の層から構成されても構わない。
表面保護層6の総厚さは、3μm以上10μm以下が好ましく、5μm以上8μm以下がより好ましい。表面保護層6の総厚さが上記数値範囲内であれば、下層側の第1表面保護層6aの厚さは1μm以上5μm以下となっていてもよいし、上層側の第2表面保護層6bの厚さは1μm以上5μm以下となっていてもよい。本実施形態では、第2表面保護層6bの厚さは、第1表面保護層6aの厚さより薄くなっていれば好ましい。
また、表面保護層6は、凹部5を備えている。凹部5は、上述のように、透明熱可塑性樹脂層4を形成する際に、図2に例示した各種エンボス版を用いて凹部を形成し、その凹部形状を維持するように表面保護層6を設けることで形成されてもよい。あるいは、透明熱可塑性樹脂層4上に表面保護層6を設けた後に、図2に例示した各種エンボス版を用いて凹部5を形成してもよい。
こうして形成された凹部5の深さは、5μm以上100μm以下の範囲内であれば好ましく、15μm以上50μm以下の範囲内であればより好ましく、35μm以上50μm以下の範囲内であればさらに好ましい。凹部5の深さが上記数値範囲内であれば、化粧シート1を見る角度によって低艶感が損なわれないため、意匠性が損なわれる(白っぽく見える)ことがない。
なお、表面保護層6における凹部5の占有率、即ち表面保護層6の表面全体の面積における凹部5が形成された領域の面積の比率(凹部5が形成された領域の面積/表面保護層6の表面における面積)は、30%以上70%以下であれば好ましく、50%以上70%以下であればより好ましく、60%以上70%以下であればさらに好ましい。凹部5の占有率が上記数値範囲内であれば、化粧シート1を見る角度によって低艶感が損なわれないため、意匠性が損なわれる(白っぽく見える)ことがない。
凹部5の平面視における形状は、特に制限されるものではなく、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸(花崗岩劈開面等)、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等であってもよい。つまり、凹部5の平面視における形状は、図2に例示した市松模様のように連続する格子パターンであってもよいし、連続するドットパターンであってもよい。あるいは、凹部5の平面視における形状は、不連続がランダムパターンであってもよい。
[第1表面保護層6a]
第1表面保護層6aは、硬化型樹脂として熱硬化型樹脂を含む。第1表面保護層6aは、樹脂成分として実質的に硬化型樹脂から構成されることが好ましい。実質的とは例えば質量比と80%以上を指す。第1表面保護層6aは、例えば、熱硬化型樹脂と2液硬化型ウレタン系樹脂とから構成される。
[艶消し剤]
第1表面保護層6aを構成する樹脂には、艶消し剤(フィラー)が添加されている。耐候剤や耐擦傷剤等の各種添加剤も併せて添加することも可能である。
表面保護層6の光沢調整に用いる艶消し剤としては例えばシリカ、樹脂ビーズ、ガラスビーズが挙げられ、中でもシリカが好適である。また、前述の硬化型樹脂とシリカとの質量固形分比は最終用途の化粧シート1としての要求光沢値によるので限定的でないが、硬化型樹脂(第1表面保護層6aを構成する樹脂)100質量部に対し、艶消し剤としてシリカを4質量部以上10質量部以下、好ましくは5質量部以上10質量部以下、より好ましくは6質量部以上10質量部以下含有する。
また、艶消し剤は、第1表面保護層6aのみに含まれていれば好ましい。第1表面保護層6aのみに含まれていれば、艶消し剤の剥落等が生じにくい。
一般に化粧シート1の光沢値は低い方が高意匠のものとして好まれており、数値範囲に厳密な限定は無いが、おおよそ10以下のものが高意匠とされる場合が多い。
また表面保護層6のヘイズ値が高い場合、絵柄模様層3を視認することが困難となる。したがって表面保護層6のヘイズ値は60%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましい。ここで、ヘイズ値とは、被測定物質に可視光を照射した時の全光透過率に対する拡散透過率の割合を示す。なお、この値が低いほど透明性を示す。本実施形態では、ヘイズ値は、JIS K 7105に準拠して測定したものである。
ここで、樹脂ビーズからなる艶消し剤としては、アクリル系、スチレン系、ウレタン系、シリコーン系等が例示できる。この場合、表面保護層6のマトリックス樹脂と同じ系の樹脂からなる艶消し剤を使用することが、マトリックス樹脂との親和性や分散性、屈折率が近似し透明性を阻害しないこと等から好ましい。
例えば、表面保護層6のマトリックス樹脂がアクリル系樹脂の場合には、艶消し剤として、例えばアクリル系架橋粒子を使用する。
アクリル系架橋粒子は、特開昭56-36535号公報等に記載されている様な、分子中に1個の重合性二重結合を有する非架橋性単量体と、分子中に2個以上の重合性二重結合を有する架橋性単量体との混合物を懸濁重合することによって得られる、平均粒径(D50)35~500μm、好ましくは40~200μm程度の架橋高分子からなる粒子である。
[第2表面保護層6b]
また、第2表面保護層6bは、熱硬化型樹脂及び電離放射線硬化型樹脂の少なくとも一方の硬化型樹脂を含む。第2表面保護層6bは、樹脂成分として実質的に硬化型樹脂から構成されることが好ましい。特に第2表面保護層6bに含有する硬化型樹脂として、熱硬化型樹脂及び電離放射線硬化型樹脂の両方を含み、質量比で、硬化型樹脂の半分以上が電離放射線硬化型樹脂であることが好ましい。
上層側の第2表面保護層6bには、艶消し剤を含有しない。第2表面保護層6bに艶消し剤を添加しても良いが、その場合には、単位体積当たりの艶消し剤の含有量が、第1表面保護層6aにおける単位体積当たりの艶消し剤の含有量の半分以下に抑えることが好ましく、第1表面保護層6aにおける単位体積当たりの艶消し剤の含有量の1/5以下に抑えることがより好ましく、第1表面保護層6aにおける単位体積当たりの艶消し剤の含有量の1/10以下に抑えることがさらに好ましい。
電離放射線硬化型樹脂としては特に限定されず、紫外線、電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に含むプレポリマー(オリゴマーを含む)及び/又はモノマーを主成分とする透明性樹脂が使用できる。これらのプレポリマー又はモノマーは、単体又は複数を混合して使用できる。硬化反応は、通常、架橋硬化反応である。
具体的には、前記プレポリマー又はモノマーとしては、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物が挙げられる。また、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによるポリエン/チオール系のプレポリマーも好ましい。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの分子量としては、通常250~100000程度が好ましい。
ラジカル重合性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、単官能モノマーとして、メチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、多官能モノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物等のエポキシ系樹脂、脂肪酸系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂のプレポリマーが挙げられる。また、チオールとしては、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオールが挙げられる。ポリエンとしては、例えば、ジオール及びジイソシアネートによるポリウレタンの両端にアリルアルコールを付加したものが挙げられる。
電離放射線硬化型樹脂を硬化させるために用いる電離放射線としては、電離放射線硬化型樹脂(組成物)中の分子を硬化反応させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子が用いられる。通常は紫外線又は電子線を用いればよいが、可視光線、X線、イオン線等を用いてもよい。
紫外線源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用できる。紫外線の波長としては、通常190~380nmが好ましい。
電子線源としては、例えば、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が使用できる。その中でも、特に100~1000keV、好ましくは100~300keVのエネルギーをもつ電子を照射できるものが好ましい。
2液硬化型ウレタン系樹脂としては特に限定されないが、中でも主剤としてOH基を有するポリオール成分(アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール等)と、硬化剤成分であるイソシアネート成分(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート等)とを含むものが使用できる。
表面保護層6には、必要に応じて、耐侯剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤等を含んでもよい。
本実施形態では、硬化型樹脂を含む表面保護層6に添加する艶消し剤の量(添加量)を特定の数値範囲内とすることで、低艶意匠(ハイマット意匠)を付与する。一方、表面保護層6に添加する艶消し剤の量(添加量)が多いほど、化粧シート1を見る角度によっては、化粧シート1全体が白っぽく見えてしまい(低艶感が損なわれてしまい)、意匠性に劣る場合がある。
本発明態様によれば、表面保護層6に形成する凹部5の深さを特定の数値範囲内に調整することで、化粧シートを見る角度に依存せずに、低艶意匠(ハイマット意匠)を再現できる。
つまり、本実施形態であれば、凹部形状を表面保護層6に賦形することにより、表面保護層6に添加される艶消し剤の量(フィラー量)に関わらず、ハイマット意匠を再現できる。
また、表面保護層6に添加される艶消し剤の量(フィラー量)を相対的に少なくすることができるため、見る角度によって白っぽく見える程度を低減することができる。つまり、見る角度に依存することなく、低艶意匠(ハイマット意匠)を再現できる。
さらに、表面保護層6に添加される艶消し剤の量(フィラー量)を相対的に少なくすることが可能となるため、建材に要求される耐候性においても向上が期待できる。
また、第1表面保護層6aの層厚及び第2表面保護層6bの層厚の合計である表面保護層6の総厚が3μm以上10μm以下の範囲内であり、第1表面保護層6aに艶消し剤が添加されている場合には、より低艶意匠(ハイマット意匠)を再現できる。
更に、艶消し剤の添加量が、第1表面保護層6a全体の質量100質量部に対して5質量部以上10質量部以下の範囲内である場合には、さらに低艶意匠(ハイマット意匠)を再現できる。
更に、凹部5の深さが15μm以上50μm以下の範囲内である場合には、より確実に低艶意匠(ハイマット意匠)を再現できる。
[実施例]
次に、本発明に基づく実施例について説明する。
[実施例1]
基材層2として厚さ55μmの顔料配合ランダムポリエチレンシート(リケンテクノス社製)を使用し、その片面に絵柄模様層3としてウレタンインキ(東洋インキ社製「ラミスター」)で木目印刷をグラビア印刷機により印刷して設けた。
次に、絵柄模様層3上に、透明熱可塑性樹脂層4としてホモポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社製)を押出し機を用いて成形し、そのホモポリプロピレン樹脂を押し出すと同時に、市松模様(1辺が10μm×10μm)のエンボス版を用いて凹部(深さ35μm)を形成した。
次に、透明熱可塑性樹脂層4の上に、第1表面保護層6aとして、紫外線硬化型アクリルウレタン樹脂100質量部(DICグラフィックス社製)をイソシアネート系硬化剤(DICグラフィックス社製)および艶消しシリカ(エボニックジャパン社製)6質量部)と混合した塗液を乾燥後の厚さ約4μmになるよう塗工して塗膜形成し、その後メタルハライドランプにて紫外線照射を行って第1表面保護層6aを硬化させた。
さらに、第1表面保護層6aの上に、第2表面保護層6bとして、紫外線硬化型アクリルウレタン樹脂(DICグラフィックス社製)とイソシアネート系硬化剤(DICグラフィックス社製)とを混合した塗液を、乾燥後の厚さ約2μmになるよう塗工して塗膜形成し、その後メタルハライドランプにて紫外線照射を行って第2表面保護層6bを硬化させた。
このとき、表面保護層6の表面から測定した光沢値が7になるよう、第1表面保護層6aの層厚と第2表面保護層6bの層厚とを調整した。また、表面保護層6に形成された凹部5の深さは15μmであった。また、艶消しシリカの添加量は、表面保護層6全体の質量100質量部に対して4質量部であった。
こうして、顔料が配合されたランダムポリエチレンを含む基材層2の上に、絵柄模様層3、透明熱可塑性樹脂層4、及び表面保護層6をこの順に形成し、表面保護層6は、紫外線硬化型アクリルウレタン樹脂と艶消しシリカとを含み、且つ凹部5を備え、艶消しシリカの添加量は、表面保護層6全体の質量100質量部に対して4質量部であり、表面保護層6の凹部5の深さは15μmであり、表面保護層6の光沢度は7以下である、実施例1の化粧シート1を得た。
[実施例2]
表面保護層6の凹部5の深さを35μmにした以外は、実施例1と同様の手順で実施例2の化粧シート1を作製した。
[実施例3]
表面保護層6の凹部5の深さを50μmにした以外は、実施例1と同様の手順で実施例3の化粧シート1を作製した。
[実施例4]
艶消しシリカの添加量を、表面保護層6全体の質量100質量部に対して、10質量部にした以外は、実施例1と同様の手順で実施例4の化粧シート1を作製した。
[実施例5]
表面保護層6の凹部5の深さを5μmにした以外は、実施例1と同様の手順で実施例5の化粧シート1を作製した。
[実施例6]
表面保護層6の凹部5の深さを100μmにした以外は、実施例1と同様の手順で実施例6の化粧シート1を作製した。
[実施例7]
第1表面保護層6aの層厚及び第2表面保護層6bの層厚の合計である表面保護層6の総厚を3μmにした以外は、実施例1と同様の手順で実施例7の化粧シート1を作製した。
[実施例8]
第1表面保護層6aの層厚及び第2表面保護層6bの層厚の合計である表面保護層6の総厚を10μmにした以外は、実施例1と同様の手順で実施例8の化粧シート1を作製した。
[実施例9]
艶消しシリカの添加量を、第1表面保護層6a全体の質量100質量部に対して、5質量部にし、第1表面保護層6aの厚さを5μmとし、第2表面保護層6bの厚さを1μmとした以外は、実施例1と同様の手順で実施例9の化粧シート1を作製した。
[実施例10]
艶消しシリカの添加量を、第1表面保護層6a全体の質量100質量部に対して、10質量部にした以外は、実施例1と同様の手順で実施例10の化粧シート1を作製した。
[比較例1]
第1表面保護層6aにおける艶消しシリカの含有量を30質量部にすることで、表面保護層6全体の質量100質量部に対して艶消しシリカの含有量を15質量部に調整し、且つ梨地(直径10μmの凹部がランダムに配置された模様)のエンボス版を用いて凹部を形成した以外は、実施例1と同様の手順で比較例1の化粧シート1を作製した。なお、比較例1において、表面保護層6の凹部5の深さを15μmであった。
[比較例2]
第1表面保護層6aにおける艶消しシリカの含有量を30質量部にすることで、表面保護層6全体の質量100質量部に対して艶消しシリカの含有量を15質量部に調整し、且つ梨地(直径10μmの凹部がランダムに配置された模様)のエンボス版を用いて凹部を形成した以外は、実施例1と同様の手順で比較例2の化粧シート1を作製した。なお、比較例2において、表面保護層6の凹部5の深さを35μmであった。
[比較例3]
第1表面保護層6aにおける艶消しシリカの含有量を30質量部にすることで、表面保護層6全体の質量100質量部に対して艶消しシリカの含有量を15質量部に調整し、且つ梨地(直径10μmの凹部がランダムに配置された模様)のエンボス版を用いて凹部を形成した以外は、実施例1と同様の手順で比較例2の化粧シート1を作製した。なお、比較例3において、表面保護層6の凹部5の深さを50μmであった。
[比較例4]
第1表面保護層6aにおける艶消しシリカの含有量を18質量部にすることで、表面保護層6全体の質量100質量部に対して艶消しシリカの含有量を12質量部に調整し、且つ市松模様(1辺が10μm×10μm)のエンボス版を用いて凹部を形成した以外は、実施例1と同様の手順で比較例4の化粧シート1を作製した。なお、比較例4において、表面保護層6の凹部5の深さを15μmであった。
[比較例5]
表面保護層6の凹部5の深さを3μmにした以外は、実施例1と同様の手順で比較例5の化粧シート1を作製した。
[比較例6]
表面保護層6の凹部5の深さを110μmにした以外は、実施例1と同様の手順で比較例6の化粧シート1を作製した。
<評価用化粧板9の作成>
上記実施例1~実施例10、比較例1~比較例6で作製した各化粧シート1を、厚さ3mmのMDF(広葉樹)からなる基材の表面に貼り合わせて、それぞれを化粧板とした。
ここで、接着剤として、2液水性エマルジョン接着剤(中央理化工業(株)製リカボンド(登録商標)「重量比:BA-10L/BA-11B=100:2.5」)を使用し、その接着剤をウエット状態で100g/mの塗工量で塗布して貼り合わせた。次いで24時間養生して評価用化粧板8とした。
<評価方法および評価基準>
上述した方法で得た各評価用化粧板8を以下の方法により評価した。
(1)意匠性評価:光沢計(60°)にて光沢値を測定した。
光沢値が、2以下(ハイマット)の場合:◎、3~7の場合:〇、7超(グロス)の場合:×
本実施例では、「◎」及び「〇」を合格とした。
(2)見る角度によって、白く見えないかどうか(化粧シートを見る角度に依存せずに、低艶意匠を再現できるかどうか)の評価:トリグロスにて光沢値を測定した。
トリグロスにて測定した光沢値が、ΔE<5の場合:◎、ΔE<10の場合:〇、ΔE≧10の場合:×
本実施例では、「◎」及び「〇」を合格とした。
<評価結果>
評価結果を表1に示す。
Figure 2024063464000002
本発明に基づく化粧シート1である実施例1~実施例10においては、いずれも表面物性に関する評価項目において△以上の評価結果であり、良好な表面物性を示している。特に、実施例1~実施例10においては、いずれも見る角度によって、白っぽく見えなかった。
一方、比較例1~比較例6においては、見る角度によって、白っぽく見えた。
つまり、化粧シートを見る角度に依存せずに、低艶意匠(ハイマット意匠)を再現できる化粧シートを作製するためには、艶消しシリカの添加量を、表面保護層6全体の質量100質量部に対して、4質量部以上10質量部以下の範囲内に設定し、且つ表面保護層6に形成された凹部5の深さを5μm以上100μm以下の範囲内に設定することが必要であることを示している。
以上の結果から、本実施形態によれば、化粧シートを見る角度に依存せずに、低艶意匠(ハイマット意匠)を再現できる化粧シート1およびそれを用いた化粧板を提供することが可能であることを検証することができた。
1 化粧シート
2 基材層
3 絵柄模様層
5 透明熱可塑性樹脂層
6 表面保護層
6a 第1表面保護層
6b 第2表面保護層
7 基材
8 化粧板(評価用化粧板)

Claims (5)

  1. 熱可塑性樹脂を含む基材層の上に、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、及び表面保護層をこの順に形成し、
    前記表面保護層は、硬化型樹脂と艶消し剤とを含み、且つ凹部を備え、
    前記艶消し剤の添加量は、前記表面保護層全体の質量100質量部に対して、4質量部以上10質量部以下の範囲内であり、
    前記凹部の深さは、5μm以上100μm以下の範囲内であり、
    前記表面保護層の光沢度は7以下であることを特徴とする化粧シート。
  2. 前記表面保護層は、前記基材層の上に積層した第1表面保護層と、前記第1表面保護層の上に積層した第2表面保護層とで構成され、
    前記第1表面保護層の層厚及び前記第2表面保護層の層厚の合計である前記表面保護層の総厚は、3μm以上10μm以下の範囲内であり、
    前記第1表面保護層に前記艶消し剤が添加されていることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
  3. 前記艶消し剤の添加量は、前記第1表面保護層全体の質量100質量部に対して、5質量部以上10質量部以下の範囲内であることを特徴とする請求項2に記載の化粧シート。
  4. 前記凹部の深さは、15μm以上50μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項3に記載の化粧シート。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の化粧シートを基材に貼り合わせた化粧板。
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