以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
[第1実施形態]
1.全体構成
図1は本発明を適用した第1実施形態に係るシート製造装置100の構成を示す模式図である。
本実施形態に記載のシート製造装置100は、例えば、機密紙などの使用済みの古紙である原料MAを乾式で解繊して繊維化した後、加圧、加熱、切断することによって、新しい紙を製造するのに好適な装置である。原料MAが繊維化されたものに、さまざまな添加物を混合することによって、用途に合わせて、紙製品の結合強度や白色度を向上したり、色、香り、難燃などの機能を付加したりしてもよい。また、紙の密度や厚さ、形状をコントロールして成形することで、A4やA3等の定型サイズのオフィス用紙、名刺用紙など、用途に合わせて、さまざまな厚さ・サイズの紙を製造することができる。
シート製造装置100は、製造部102、及び、制御装置110を備える。102は、シートを製造する。製造部102は、供給部10、粗砕部12、解繊部20、選別部40、第1ウェブ形成部45、回転体49、混合部50、堆積部60、第2ウェブ形成部70、搬送部79、シート形成部80、及び、切断部90を備える。
以下の説明において、原料とは、原料MAを指す。また、シートSの材料とは、製造部102の各部によって原料MAを処理して得られるものであって、シートSとなる前のもの、すなわち、シートSの製造に用いられるものを指す。具体的には、粗砕部12、解繊部20、選別部40、第1ウェブ形成部45、回転体49、混合部50、堆積部60、第2ウェブ形成部70で処理された処理後のものを材料と呼ぶ。材料は、後述する粗砕物、解繊繊物、第1ウェブW1、混合物、第2ウェブW2等を含む。これらの材料がシート形成部80で加圧加熱されたものをシートSと呼ぶ。
また、シート製造装置100は、原料MA及び材料を加湿する加湿部202、204、206、208、210、212を備える。加湿部202、204、206、208、210、212は、上記の材料、及び/または、材料が移動する空間を加湿する。加湿部202、204、206、208、210、212の具体的な構成は任意であり、スチーム式、気化式、温風気化式、超音波式等が挙げられる。
本実施形態では、加湿部202、204、206、208を、気化式または温風気化式の加湿器で構成する。すなわち、加湿部202、204、206、208は、水を湿潤させるフィルター(図示略)を有し、フィルターに空気を通過させることにより、湿度を高めた加湿空気を供給する。また、加湿部202、204、206、208は、加湿空気の湿度を効果的に高めるヒーター(図示略)を備えてもよい。
また、本実施形態では、加湿部210及び加湿部212を、超音波式加湿器で構成する。すなわち、加湿部210、212は、水を霧化する振動部(図示略)を有し、振動部により発生するミストを供給する。
供給部10(原料供給部)は、粗砕部12に原料MAを供給する。シート製造装置100がシートを製造する原料MAは繊維を含むものであればよく、例えば、紙、パルプ、パルプシート、不織布を含む布、或いは織物等が挙げられる。本実施形態ではシート製造装置100が古紙を原料MAとする構成を例示する。古紙とは、少なくとも1回の印刷あるいは筆記等の使用がなされた紙であり、トナーやインクが付着していることが多い。
供給部10は、例えば、原料MAを収容する複数のスタッカー11(収容部)を備える。各々のスタッカー11には、原料MAである古紙が重ねて蓄積される。供給部10は、複数のスタッカー11のいずれかから古紙を粗砕部12に供給できる。
図2は、供給部10の構成を示す模式図である。
供給部10は、原料MAが蓄積される載置台1101と、載置台1101に載置された原料MAを送り出す一対の供給ローラー1111とを備える。供給ローラー1111は、原料MAを1枚ずつピックアップし、検出搬送路1105に送り出す。検出搬送路1105には、測色部391、及び、スキャナー393が配置される。測色部391は、検出搬送路1105に対向して設置され、原料MAの表面の色を計測して計測値を制御装置110(図1)に出力する。スキャナー393は、例えば、検出搬送路1105に対向して設置され、光源(図示略)を備え、検出搬送路1105に向けて光を照射する。スキャナー393は、原料MAの反射光を検出するCCD(Charge Coupled Device)センサーやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサー等で構成されるラインセンサーを備える。スキャナー393は、ラインセンサーにより読み取った画像を制御装置110に出力する。
供給部10は、原料MAを搬送する供給ローラー1112を備え、供給ローラー1112は検出搬送路1105から搬送路1102に原料MAを供給する。
供給部10は、複数のスタッカー11が上下方向に配置された構成を有する。図2の例では4つのスタッカー11が、それぞれ矢印方向にスライド可能に配置される。各々のスタッカー11は、搬送路1102から離れた位置から、搬送路1102に接近あるいは当接する位置に移動可能であり、この位置で、搬送路1102を搬送される原料MAを収容する。スタッカー11の移動は制御装置110によって制御可能である。いずれかのスタッカー11を搬送路1102側に移動させることで、このスタッカー11に原料MAを収容できる。
スタッカー11は、内部に原料MAを蓄積する空間を有する箱形であり、例えば、供給部10から着脱可能なカセットとすることができる。各々のスタッカー11は、内部に収容した原料MAを送り出す給送ローラー11aが設けられる。給送ローラー11aは、スタッカー11の内部の原料MAを供給路1103に1枚ずつ送り出す。
供給路1103は、供給部10の複数のスタッカー11のそれぞれから原料MAが送り出され、これらの原料MAを粗砕部12(図1)に搬送する搬送路である。
供給部10では、ユーザーにより古紙等の原料MAが載置台1101に載置され、シート製造装置100の動作開始により供給ローラー1111が1枚ずつ原料MAを送り出す。原料MAは検出搬送路1105を搬送され、この搬送中に、測色部391が原料MAに対し測色を行い、スキャナー393が原料MAの読み取りを行う。
ここで、制御装置110は、測色部391が測色を行った結果を示す出力値、及び、スキャナー393が読み取った画像を取得する。制御装置110は、測色部391の出力値に基づき原料MAの表面の色を判定し、原料MAの種類を特定する。原料MAの種類とは、例えば、PPC(プレーンペーパーコピー)用紙、クラフト紙、再生紙等である。例えば、制御装置110は、測色部391の出力値から、トナーやインク等がない非印字部の白色度を求め、さらしの有無を推定し、クラフト紙であるか否かを判定できる。ここで、制御装置110は、測色部391の出力値とスキャナー393が読み取った画像との両方に基づき原料MAの種類を判定してもよい。制御装置110は、測色部391の出力値及びスキャナー393が読み取った画像から、原料MAに付着している色材の量、種類(インク、トナー、樹脂トナー等)、原料MAの表面積に占める色材の面積等を検出する。
制御装置110は、供給ローラー1112を駆動して原料MAを搬送路1102に送り出し、さらに、判定した原料MAの種類に対応するスタッカー11を搬送路1102側に移動させる。これにより、原料MAは、種類毎に異なるスタッカー11に収容される。つまり、各々のスタッカー11には、一つの種類の原料MAがまとめて収容される。このため、スタッカー11を選択することで、特定の種類の原料MAを選択できる。スタッカー11では、制御装置110の制御により給送ローラー11aが駆動され、原料MAが供給路1103に送り出され、粗砕部12に供給される。
供給部10の構成において、測色部391、スキャナー393、供給ローラー1111、及び搬送路1102は、後述する原料振分部397(図8)とともに、原料MAを種類ごとに分別する分別部10aを構成する。
図1に戻り、粗砕部12は、供給部10から供給された原料MAを粗砕刃14によって裁断(粗砕)して、粗砕片にする。粗砕刃14は、大気中(空気中)等の気中で原料MAを裁断する。粗砕部12は、例えば、原料MAを挟んで裁断する一対の粗砕刃14と、粗砕刃14を回転させる駆動部とを備え、いわゆるシュレッダーと同様の構成とすることができる。粗砕片の形状や大きさは任意であり、解繊部20における解繊処理に適していればよい。例えば、粗砕部12は、原料MAを、1~数cm四方またはそれ以下のサイズの紙片に裁断する。
粗砕部12は、粗砕刃14により裁断されて落下する粗砕片を受けるシュート(ホッパー)9を有する。シュート9は、例えば、粗砕片が流れる方向(進行する方向)において、徐々に幅が狭くなるテーパー形状を有する。そのため、シュート9は、多くの粗砕片を受けとめることができる。シュート9には、解繊部20に連通する管2が連結され、管2は粗砕刃14によって裁断された粗砕片を、解繊部20に搬送させるための搬送路を形成する。粗砕片はシュート9により集められ、管2を通って解繊部20に移送(搬送)される。
粗砕部12が有するシュート9、或いはシュート9の近傍には、加湿部202により加湿空気が供給される。これにより、粗砕刃14により裁断された粗砕物が、静電気によってシュート9や管2の内面に吸着する現象を抑制できる。また、粗砕刃14が裁断した粗砕物は、加湿された(高湿度の)空気とともに解繊部20に移送されるので、解繊部20の内部における解繊物の付着を抑制する効果も期待できる。また、加湿部202は、粗砕刃14に加湿空気を供給して、供給部10が供給する原料MAを除電する構成としてもよい。また、加湿部202とともにイオナイザーを用いて除電してもよい。
解繊部20は、粗砕部12で裁断された粗砕物を解繊する。より具体的には、解繊部20は、粗砕部12によって裁断された粗砕片を解繊処理し、解繊物を生成する。ここで、「解繊する」とは、複数の繊維が結着されてなる被解繊物を、繊維1本1本に解きほぐすことをいう。解繊部20は、被解繊物に付着した樹脂粒やインク、トナー、にじみ防止剤等の物質を、繊維から分離させる機能をも有する。
解繊部20を通過したものを「解繊物」という。「解繊物」には、解きほぐされた解繊物繊維の他に、繊維を解きほぐす際に繊維から分離した樹脂(複数の繊維同士を結着させるための樹脂)粒や、インク、トナーなどの色剤や、にじみ防止剤、紙力増強剤等の添加剤を含んでいる場合もある。解きほぐされた解繊物の形状は、ひも(string)状や平ひも(ribbon)状である。解きほぐされた解繊物は、他の解きほぐされた繊維と絡み合っていない状態(独立した状態)で存在してもよいし、他の解きほぐされた解繊物と絡み合って塊状となった状態(いわゆる「ダマ」を形成している状態)で存在してもよい。
解繊部20は、乾式で解繊を行う。ここで、液体中ではなく、大気中(空気中)等の気中において、解繊等の処理を行うことを乾式と称する。本実施形態では、解繊部20がインペラーミルを用いる構成とする。具体的には、解繊部20は、高速回転するローター(図示略)、及び、ローターの外周に位置するライナー(図示略)を備える。粗砕部12で裁断された粗砕片は、解繊部20のローターとライナーとの間に挟まれて解繊される。解繊部20は、ローターの回転により気流を発生させる。この気流により、解繊部20は、粗砕片を管2から吸引し、解繊物を排出口24へと搬送できる。解繊物は排出口24から管3に送り出され、管3を介して選別部40に移送される。
このように、解繊部20で生成される解繊物は、解繊部20が発生する気流により解繊部20から選別部40に搬送される。さらに、本実施形態では、シート製造装置100が気流発生装置である解繊部ブロアー26を備え、解繊部ブロアー26が発生する気流により解繊物が選別部40に搬送される。解繊部ブロアー26は管3に取り付けられ、解繊部20から解繊物とともに空気を吸引し、選別部40に送風する。
選別部40は、管3から解繊部20により解繊された解繊物が気流とともに流入する導入口42を有する。選別部40は、導入口42に導入する解繊物を、繊維の長さによって選別する。詳細には、選別部40は、解繊部20により解繊された解繊物のうち、予め定められたサイズ以下の解繊物を第1選別物とし、第1選別物より大きい解繊物を第2選別物として、選別する。第1選別物は繊維または粒子等を含み、第2選別物は、例えば、大きい繊維、未解繊片(十分に解繊されていない粗砕片)、解繊された繊維が凝集し、或いは絡まったダマ等を含む。
本実施形態で、選別部40は、ドラム部41(篩部)と、ドラム部41を収容するハウジング部(覆い部)43と、を有する。
ドラム部41は、モーターによって回転駆動される円筒の篩である。ドラム部41は、網(フィルター、スクリーン)を有し、篩(ふるい)として機能する。この網の目により、ドラム部41は、網の目開き(開口)の大きさより小さい第1選別物と、網の目開きより大きい第2選別物とを選別する。ドラム部41の網としては、例えば、金網、切れ目が入った金属板を引き伸ばしたエキスパンドメタル、金属板にプレス機等で穴を形成したパンチングメタルを用いることができる。
導入口42に導入された解繊物は気流とともにドラム部41の内部に送り込まれ、ドラム部41の回転によって第1選別物がドラム部41の網の目から下方に落下する。ドラム部41の網の目を通過できない第2選別物は、導入口42からドラム部41に流入する気流により流されて排出口44に導かれ、管8に送り出される。
管8は、ドラム部41の内部と管2とを連結する。管8を通って流される第2選別物は、粗砕部12により裁断された粗砕片とともに管2を流れ、解繊部20の導入口22に導かれる。これにより、第2選別物は解繊部20に戻されて、解繊処理される。
また、ドラム部41により選別される第1選別物は、ドラム部41の網の目を通って空気中に分散し、ドラム部41の下方に位置する第1ウェブ形成部45のメッシュベルト46に向けて降下する。
第1ウェブ形成部45(分離部)は、メッシュベルト46(分離ベルト)と、ローラー47と、吸引部(サクション機構)48と、を含む。メッシュベルト46は無端形状のベルトであって、3つのローラー47に懸架され、ローラー47の動きにより、図中矢印で示す方向に搬送される。メッシュベルト46の表面は所定サイズの開口が並ぶ網で構成される。選別部40から降下する第1選別物のうち、網の目を通過するサイズの微粒子はメッシュベルト46の下方に落下し、網の目を通過できないサイズの繊維がメッシュベルト46に堆積し、メッシュベルト46とともに矢印V1方向に搬送される。メッシュベルト46から落下する微粒子は、解繊物の中で比較的小さいものや密度の低いもの(樹脂粒や色剤や添加剤など)を含み、シート製造装置100がシートSの製造に使用しない除去物である。
メッシュベルト46は、シートSを製造する運転動作中には、速度V1で移動する。メッシュベルト46の搬送速度V1、及び、メッシュベルト46による搬送の開始及び停止は、制御装置110により制御される。
ここで、運転動作中とは、シート製造装置100がシートSを製造している間をいう。例えば、シート製造装置100が起動するときに実行される起動シーケンス、シート製造装置100が停止するときに実行される停止シーケンス、および、後述する第2状態(待機状態)を除く動作中をいう。
従って、解繊部20で解繊処理された解繊物は、選別部40で第1選別物と第2選別物とに選別され、第2選別物が解繊部20に戻される。また、第1選別物から、第1ウェブ形成部45によって除去物が除かれる。第1選別物から除去物を除いた残りは、シートSの製造に適した材料であり、この材料はメッシュベルト46に堆積して第1ウェブW1を形成する。
吸引部48は、メッシュベルト46の下方から空気を吸引する。吸引部48は、管23を介して集塵部27(集塵装置)に連結される。集塵部27は、微粒子を気流から分離する。集塵部27の下流には、捕集ブロアー28が設置され、捕集ブロアー28は、集塵部27から空気を吸引する集塵用吸引部として機能する。また、捕集ブロアー28が排出する空気は管29を経てシート製造装置100の外に排出される。
この構成では、捕集ブロアー28により、集塵部27を通じて吸引部48から空気が吸引される。吸引部48では、メッシュベルト46の網の目を通過する微粒子が、空気とともに吸引され、管23を通って集塵部27に送られる。集塵部27は、メッシュベルト46を通過した微粒子を気流から分離して蓄積する。
従って、メッシュベルト46の上には第1選別物から除去物を除去した繊維が堆積して第1ウェブW1が形成される。捕集ブロアー28が吸引を行うことで、メッシュベルト46上における第1ウェブW1の形成が促進され、かつ、除去物が速やかに除去される。
ドラム部41を含む空間には、加湿部204により加湿空気が供給される。この加湿空気によって、選別部40の内部で第1選別物を加湿する。これにより、静電力による第1選別物のメッシュベルト46への付着を弱め、第1選別物をメッシュベルト46から剥離し易くすることができる。さらに、静電力により第1選別物が回転体49やハウジング部43の内壁に付着することを抑制することができる。また、吸引部48によって除去物を効率よく吸引できる。
なお、シート製造装置100において、第1解繊物と第2解繊物とを選別し、分離する構成は、ドラム部41を備える選別部40に限定されない。例えば、解繊部20で解繊処理された解繊物を、分級機によって分級する構成を採用してもよい。分級機としては、例えば、サイクロン分級機、エルボージェット分級機、エディクラシファイヤーを用いることができる。これらの分級機を用いれば、第1選別物と第2選別物とを選別し、分離することが可能である。さらに、上記の分級機により、解繊物の中で比較的小さいものや密度の低いもの(樹脂粒や色剤や添加剤など)を含む除去物を、分離して除去する構成を実現できる。例えば、第1選別物に含まれる微粒子を、分級機によって、第1選別物から除去する構成としてもよい。この場合、第2選別物は、例えば解繊部20に戻され、除去物は集塵部27により集塵され、除去物を除く第1選別物が管54に送られる構成とすることができる。
メッシュベルト46の搬送経路において、選別部40の下流側には、加湿部210によって、ミストを含む空気が供給される。加湿部210が生成する水の微粒子であるミストは、第1ウェブW1に向けて降下し、第1ウェブW1に水分を供給する。これにより、第1ウェブW1が含む水分量が調整され、静電気によるメッシュベルト46への繊維の吸着等を抑制できる。
シート製造装置100は、メッシュベルト46に堆積した第1ウェブW1を分断する回転体49を備える。第1ウェブW1は、メッシュベルト46がローラー47により折り返す位置で、メッシュベルト46から剥離して、回転体49により分断される。
第1ウェブW1は繊維が堆積してウェブ形状となった柔らかい材料であり、回転体49は、第1ウェブW1の繊維をほぐして、混合部50で樹脂を混合しやすい状態に加工する。
回転体49の構成は任意であるが、本実施形態では、板状の羽根を有し回転する回転羽形状とすることができる。回転体49は、メッシュベルト46から剥離する第1ウェブW1と羽根とが接触する位置に配置される。回転体49の回転(例えば図中矢印Rで示す方向への回転)により、メッシュベルト46から剥離して搬送される第1ウェブW1に羽根が衝突して分断し、細分体Pを生成する。
なお、回転体49は、回転体49の羽根がメッシュベルト46に衝突しない位置に設置されることが好ましい。例えば、回転体49の羽根の先端とメッシュベルト46との間隔を、0.05mm以上0.5mm以下とすることができ、この場合、回転体49によって、メッシュベルト46に損傷を与えることなく第1ウェブW1を効率よく分断できる。
回転体49によって分断された細分体Pは、管7の内部を下降して、管7の内部を流れる気流によって混合部50へ移送(搬送)される。
また、回転体49を含む空間には、加湿部206により加湿空気が供給される。これにより、管7の内部や、回転体49の羽根に対し、静電気により繊維が吸着する現象を抑制できる。また、管7を通って、湿度の高い空気が混合部50に供給されるので、混合部50においても静電気による影響を抑制できる。
混合部50は、樹脂を含む添加物を供給する添加物供給部52、管7に連通し、細分体Pを含む気流が流れる管54、及び、混合ブロアー56を備える。細分体Pは、上述のように選別部40を通過した第1選別物から除去物を除去した繊維である。混合部50は、細分体Pを構成する繊維に、樹脂を含む添加物を混合する。添加物は、例えば、繊維を結合させる結合材として作用する。
混合部50では、混合ブロアー56によって気流を発生させ、管54中において、細分体Pと添加物とを混合させながら、搬送する。また、細分体Pは、管7及び管54の内部を流れる過程でほぐされて、より細かい繊維状となる。
添加物供給部52には、図7に示すように、添加物を蓄積する添加物カートリッジ501(カートリッジ)が着脱可能に取り付けられる。添加物供給部52は、添加物カートリッジ501内部の添加物を管54に供給する。添加物供給部52に装着された添加物カートリッジ501に添加物を補充する構成を備えてもよい。添加物供給部52の構成については図7を参照して後述する。
添加物カートリッジ501に収容され、添加物供給部52が供給する添加物は、複数の繊維を結着させるための樹脂を含む。添加物に含まれる樹脂は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂であり、例えば、AS樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、などである。これらの樹脂は、単独または適宜混合して用いてもよい。すなわち、添加物は、単一の物質を含んでもよいし、混合物であってもよく、それぞれ単一または複数の物質で構成される、複数種類の粒子を含んでもよい。また、添加物は、繊維状であってもよく、粉末状であってもよい。
添加物に含まれる樹脂は、加熱により溶融して複数の繊維同士を結着させる。従って、樹脂を繊維と混合させた状態で、樹脂が溶融する温度まで加熱されていない状態では、繊維同士は結着されない。
また、添加物供給部52が供給する添加物は、繊維を結着させる樹脂の他、製造されるシートの種類に応じて、繊維を着色するための着色剤や、繊維の凝集や樹脂の凝集を抑制するための凝集抑制剤、繊維等を燃えにくくするための難燃剤を含んでもよい。また、着色剤を含まない添加物は、無色、或いは無色と見なせる程度に薄い色であってもよいし、白色であってもよい。
混合ブロアー56が発生する気流により、管7を降下する細分体P、及び、添加物供給部52により供給される添加物は、管54の内部に吸引され、混合ブロアー56内部を通過する。混合ブロアー56が発生する気流、及び/または、混合ブロアー56が有する羽根等の回転部の作用により、細分体Pを構成した繊維と添加物とが混合され、この混合物(第1選別物と添加物との混合物)は管54を通って堆積部60に移送される。
なお、第1選別物と添加物とを混合させる機構は、特に限定されず、高速回転する羽根により攪拌するものであってもよいし、V型ミキサーのように容器の回転を利用するものであってもよく、これらの機構を混合ブロアー56の前または後に設置してもよい。
堆積部60は、解繊部20で解繊された解繊物を堆積させる。より具合的には、堆積部60は、混合部50を通過した混合物を導入口62から導入し、絡み合った解繊物(繊維)をほぐして、空気中で分散させながら降らせる。さらに、堆積部60は、添加物供給部52から供給される添加物の樹脂が繊維状である場合、絡み合った樹脂をほぐす。これにより、堆積部60は、第2ウェブ形成部70に、混合物を均一性よく堆積させることができる。
堆積部60は、ドラム部61と、ドラム部61を収容するハウジング部(覆い部)63と、を有する。ドラム部61は、モーターによって回転駆動される円筒の篩である。ドラム部61は、網(フィルター、スクリーン)を有し、篩(ふるい)として機能する。この網の目により、ドラム部61は、網の目開き(開口)のより小さい繊維や粒子を通過させ、ドラム部61から下降させる。ドラム部61の構成は、例えば、ドラム部41の構成と同じである。
なお、ドラム部61の「篩」は、特定の対象物を選別する機能を有していなくてもよい。すなわち、ドラム部61として用いられる「篩」とは、網を備えたもの、という意味であり、ドラム部61は、ドラム部61に導入された混合物の全てを降らしてもよい。
ドラム部61の下方には第2ウェブ形成部70が配置される。第2ウェブ形成部70は、堆積部60を通過した通過物を堆積して、第2ウェブW2を形成する。第2ウェブ形成部70は、例えば、メッシュベルト72と、ローラー74と、サクション機構76と、を有する。堆積部60、及び、第2ウェブ形成部70は、ウェブ形成部に相当する。また、ドラム部61は、篩部に相当し、第2ウェブ形成部70(特に、メッシュベルト72)は、堆積部に相当する。
メッシュベルト72は無端形状のベルトであって、複数のローラー74に懸架され、ローラー74の動きにより、図中矢印V2で示す方向に搬送される。メッシュベルト72は、例えば、金属製、樹脂製、布製、あるいは不織布等である。メッシュベルト72の表面は所定サイズの開口が並ぶ網で構成される。ドラム部61から降下する繊維や粒子のうち、網の目を通過するサイズの微粒子はメッシュベルト72の下方に落下し、網の目を通過できないサイズの繊維がメッシュベルト72に堆積し、メッシュベルト72とともに矢印方向に搬送される。メッシュベルト72は、シートSを製造する運転動作中には、一定の速度V2で移動する。運転動作については上述した通りである。
メッシュベルト72の移動速度V2は、第2ウェブW2を搬送する速度と見なすことができ、速度V2は、メッシュベルト72における第2ウェブW2の搬送速度ということができる。
メッシュベルト72の網の目は微細であり、ドラム部61から降下する繊維や粒子の大半を通過させないサイズとすることができる。
サクション機構76は、メッシュベルト72の下方(堆積部60側とは反対側)に設けられる。サクション機構76は、サクションブロアー77を備え、サクションブロアー77の吸引力によって、サクション機構76に下方に向く気流(堆積部60からメッシュベルト72に向く気流)を発生させることができる。
サクション機構76によって、堆積部60により空気中に分散された混合物をメッシュベルト72上に吸引する。これにより、メッシュベルト72上における第2ウェブW2の形成を促進し、堆積部60からの排出速度を大きくすることができる。さらに、サクション機構76によって、混合物の落下経路にダウンフローを形成することができ、落下中に解繊物や添加物が絡み合うことを防ぐことができる。
サクションブロアー77(堆積吸引部)は、サクション機構76から吸引した空気を、図示しない捕集フィルターを通じて、シート製造装置100の外に排出してもよい。或いは、サクションブロアー77が吸引した空気を集塵部27に送り込み、サクション機構76が吸引した空気に含まれる除去物を捕集してもよい。
ドラム部61を含む空間には、加湿部208により加湿空気が供給される。この加湿空気によって、堆積部60の内部を加湿することができ、静電力によるハウジング部63への繊維や粒子の付着を抑え、繊維や粒子をメッシュベルト72に速やかに降下させ、好ましい形状の第2ウェブW2を形成させることができる。
以上のように、堆積部60及び第2ウェブ形成部70(ウェブ形成工程)を経ることにより、空気を多く含み柔らかくふくらんだ状態の第2ウェブW2が形成される。メッシュベルト72に堆積された第2ウェブW2は、シート形成部80へと搬送される。
メッシュベルト72の搬送経路において、堆積部60の下流側には、加湿部212によって、ミストを含む空気が供給される。これにより、加湿部212が生成するミストが第2ウェブW2に供給され、第2ウェブW2が含む水分量が調整される。これにより、静電気によるメッシュベルト72への繊維の吸着等を抑制できる。
シート製造装置100には、メッシュベルト72上の第2ウェブW2を、シート形成部80に搬送する搬送部79が設けられる。搬送部79は、例えば、メッシュベルト79aと、ローラー79bと、サクション機構79cと、を有する。
サクション機構79cは、中間ブロアー318(図8)を備え、中間ブロアー318の吸引力によってメッシュベルト79aに上向きの気流を発生させる。この気流は第2ウェブW2を吸引し、第2ウェブW2は、メッシュベルト72から離れてメッシュベルト79aに吸着される。メッシュベルト79aは、ローラー79bの自転により移動し、第2ウェブW2をシート形成部80に搬送する。
このように、搬送部79は、メッシュベルト72に形成された第2ウェブW2を、メッシュベルト72から剥がして搬送する。
シート形成部80は、堆積部60で堆積させた堆積物からシートSを形成する。より具体的には、シート形成部80は、メッシュベルト72に堆積し搬送部79により搬送された第2ウェブW2(堆積物)を、加圧加熱してシートSを成形する。シート形成部80では、第2ウェブW2が含む解繊物の繊維、及び添加物に対して熱を加えることにより、混合物中の複数の繊維を、互いに添加物(樹脂)を介して結着させる。シート形成部80は、シート成形部、及び、最大荷重搬送部に相当する。
シート形成部80は、第2ウェブW2を加圧する加圧部82、及び、加圧部82により加圧された第2ウェブW2を加熱する加熱部84を備える。
加圧部82は、一対のカレンダーローラー85(加圧ローラー)で構成され、第2ウェブW2を所定のニップ圧で挟んで加圧する。第2ウェブW2は、加圧されることによりその厚さが小さくなり、第2ウェブW2の密度が高められる。一対のカレンダーローラー85の一方は、加圧部駆動モーター335(図8)により駆動される駆動ローラーであり、他方は従動ローラーである。カレンダーローラー85は、加圧部駆動モーター335の駆動力により回転して、加圧により高密度になった第2ウェブW2を、加熱部84に向けて搬送する。
加熱部84は、例えば、加熱ローラー(ヒーターローラー)、熱プレス成形機、ホットプレート、温風ブロアー、赤外線加熱器、フラッシュ加熱器を用いて構成できる。本実施形態では、加熱部84は、一対の加熱ローラー86を備える。加熱ローラー86は、内部または外部に設置されるヒーターによって、予め設定された温度に加温される。一対の加熱ローラー86の一方は加熱部駆動モーター337(図8)により駆動される駆動ローラーであり、他方は従動ローラーである。加熱ローラー86は、カレンダーローラー85によって加圧されたシートSを挟んで熱を与え、シートSを形成する。加熱ローラー86は、加熱部駆動モーター337の駆動力により回転して、シートSを切断部90に向けて搬送する。
なお、加圧部82が備えるカレンダーローラー85の数、及び、加熱部84が備える加熱ローラー86の数は、特に限定されない。
また、シート製造装置100がシートSを製造する工程において、第2ウェブW2とシートSとの境界は任意である。本実施形態では、第2ウェブW2を処理してシートSに形成するシート形成部80において、加圧部82により第2ウェブW2を加圧し、加圧部82により加圧された第2ウェブを、さらに加熱部84により加熱したものをシートSと呼ぶ。すなわち、繊維同士が添加物により結着したものをシートSと呼ぶ。シートSは、切断部90に搬送される。
切断部90は、シート形成部80によって成形されたシートSを切断する。本実施形態では、切断部90は、シートSの搬送方向(図中F)と交差する方向にシートSを切断する第1切断部92と、搬送方向Fに平行な方向にシートSを切断する第2切断部94と、を有する。第2切断部94は、例えば、第1切断部92を通過したシートSを切断する。
以上により、所定のサイズの単票のシートSが成形される。切断された単票のシートSは、排出部96へと排出される。排出部96は、所定サイズのシートSを載せるトレイ或いはスタッカーを備える。
上記構成において、加湿部202、204、206、208を1台の気化式加湿器で構成してもよい。この場合、1台の加湿器が生成する加湿空気が、粗砕部12、ハウジング部43、管7、及びハウジング部63に分岐して供給される構成とすればよい。この構成は、加湿空気を供給するダクト(図示略)を分岐して設置することにより、容易に実現できる。また、2台、或いは3台の気化式加湿器によって加湿部202、204、206、208を構成することも勿論可能である。
また、上記構成において、加湿部210、212を1台の超音波式加湿器で構成してもよいし、2台の超音波式加湿器で構成してもよい。例えば、1台の加湿器が生成するミストを含む空気が、加湿部210、及び加湿部212に分岐して供給される構成とすることができる。
また、上述したシート製造装置100が備えるブロアーは、解繊部ブロアー26、捕集ブロアー28、混合ブロアー56、サクションブロアー77、及び、中間ブロアー318に限定されない。例えば、上述した各ブロアーを補助する送風機をダクトに設けることも、勿論可能である。
また、上記構成では、最初に粗砕部12が原料MAを粗砕し、粗砕された粗砕片からシートSを製造するものとしたが、例えば、原料として繊維を用いてシートSを製造する構成とすることも可能である。例えば、解繊部20が解繊処理した解繊物と同等の繊維を原料として、ドラム部41に投入可能な構成であってもよい。また、解繊物から分離された第1選別物と同等の繊維を原料として、管54に投入可能な構成とすればよい。この場合、古紙やパルプ等を加工した繊維をシート製造装置100に供給することで、シートSを製造できる。
2.加熱部の構成
シート製造装置100は、上述のシート形成部80(加熱部84)において、第2ウェブW2(堆積部60により形成された堆積物)を加熱加圧してシートSを形成する。図1の例では、加熱部84は一対の加熱ローラー86として簡略化して描かれている。以下、本実施形態のシート製造装置100の加熱部84について詳細に説明する。
図3、図4は、本実施形態の加熱部84の一例を模式的に示す図である。加熱部84は、回転可能な第1回転体181と、回転可能な第2回転体182と、加熱体183とを有する。第1回転体181及び第2回転体182は、いずれも回転に伴って移動する外周面を有するローラー形状であり、第1回転体181と第2回転体182により第2ウェブW2を挟持して加熱加圧してシートSを形成するように構成される。また、加熱体183は、第2回転体182の外周面を加熱できるように配置される。第1回転体181と加熱体183は、いずれも内部に熱源H(例えば、ハロゲンヒーター)を有する加熱ローラーとなっている。なお、加熱体183により第2回転体182を加熱することに代えて、非接触ヒーター(例えば、赤外線ヒーターやカーボンヒーター)により第2回転体182を加熱してもよい。加熱部84の各熱源Hは、制御装置110の制御により発熱して、第1回転体181及び第2回転体182を加熱する。また、加熱部84は、第1回転体181と第2回転体182の温度(例えば、外周面の温度)を検出する温度センサー309(図8)を有する。制御装置110は、温度センサー309の検出値を取得可能である。
第2回転体182は、回転中心部の芯金184と、その周囲を取り巻くように配置された軟質体185により構成されている。芯金184は、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属で構成され、軟質体185は、シリコンゴム、ウレタンゴム等のゴムで構成されている。また、第1回転体181及び加熱体183は、金属製の中空の芯金187で構成され、その表面には、フッ素コーティングの離型層188が設けられている。
本実施形態の加熱部84は、第1回転体181と第2回転体182がウェブWを挟持して加熱加圧するための第1位置(図3参照)と、第1回転体181と第2回転体182が互いに離間する第2位置(図4参照)とに変位可能に構成されている。第1位置は、第1回転体181及び第2回転体182が第2ウェブW2を挟むことが可能なニップ位置といえる。これに対し、第2位置は、第1回転体181と第2回転体182とが離間してニップが解除された位置ということができる。
本実施形態のシート製造装置100は、加熱部84の位置を変位させるための変位機構を備える。変位機構は、第1回転体181と第2回転体182のいずれか一方を変位させてもよいし、第1回転体181と第2回転体182の両方を変位させてもよい。なお、図3、図4に示すように、第2ウェブW2を支持する支持部186(ガイド)を第1回転体181と第2回転体182の近傍に設けることで、第2位置において第1回転体181と第2回転体182が第2ウェブW2に接触しないようにしてもよい。支持部186は、第1回転体181と第2回転体182の挟持部(ニップ部)に対して第2ウェブW2の搬送方向上流側の位置と搬送方向下流側の位置のそれぞれに設けられる。
図5、図6は、本実施形態の変位機構の一例を模式的に示す図である。
変位機構190は、第1回転体181の回転軸191を回転可能に支持する第1軸受部193と、第2回転体182の回転軸192を回転可能に支持する第2軸受部194と、第1ロッド195aと、第2ロッド195bとを有する。第1軸受部193と第2軸受部194とは、回転軸196周りに回転可能(相対移動可能)に互いに接続されている。第1ロッド195aの一端側は回転軸197a周りに回転可能に第2軸受部194に設けられ、第2ロッド195bの一端側は回転軸197b周りに回転可能に第1軸受部193に設けられている。第1ロッド195aには付勢部材198(バネ)が設けられている。付勢部材198の一端側は回転軸197aに接続され、付勢部材198の他端側は第2ロッド195bの他端側199に接続されている。変位機構190は、第2ロッド195bを回転軸197b周りに回転駆動する駆動部を有する。
図5は、加熱部84が第2位置にあるときの状態を示し、図6は、加熱部84が第1位置にあるときの状態を示している。図5に示す状態(第2位置)において、第2ロッド195bを時計周りに回転させると、図6に示すように、第1回転体181と第2回転体182が互いに接触する第1位置に変位する。このとき、付勢部材198によって、第1軸受部193(第1回転体181)は第2軸受部194(第2回転体182)側に付勢され、第2軸受部194は第1軸受部193側に付勢される。なお、第1位置において、第1回転体181と第2回転体182とは、第2ウェブW2を挟持して加熱加圧することができればよく、互いに接触しなくてもよい。
また、図6に示す状態(第1位置)において、第2ロッド195bを反時計周りに回転させると、第1回転体181と第2回転体182が互いに離間する第2位置に変位する。
図5、図6に示す変位機構190は、シート製造装置100が備えるローラー移動部341(図8)により駆動され、図5の第1位置、及び、図6の第2位置に変位可能である。ローラー移動部341は、例えば、モーターやアクチュエーター等で構成され、制御装置110の制御に従って動作し、上述した駆動部として機能する。つまり、本実施形態では、ローラー移動部341が、第2ロッド195bを回転軸197b周りに回転させ、加熱部84を第1位置と第2位置に切り替える。
本実施形態の加熱部84は、第2位置において第1回転体181及び第2回転体182がそれぞれ回転駆動可能に構成されている。本実施形態のシート製造装置100は、第1回転体181を回転駆動させる駆動部と、第1位置において当該駆動部による駆動力を第2回転体182に伝達することなく、第2位置において当該駆動部による駆動力を第2回転体182に伝達する伝達機構とを備える。駆動部は、例えば、加熱部駆動モーター337(図8)である。また、伝達機構は、加熱部駆動モーター337の駆動力を第1回転体181または第2回転体182に伝達するリンクやギヤを用いることができる。
3.添加物供給部の構成
図7は、添加物供給部52の構成を示す模式図である。
添加物供給部52は、樹脂を含む添加物を収容する添加物収容部としての添加物カートリッジ501を備える。添加物カートリッジ501は、内部が中空とされた箱型に形成され、添加物供給部52の排出部52aの上部に装着される。添加物カートリッジ501が装着された状態で、排出部52aは、添加物カートリッジ501の内部空間に連通し、添加物カートリッジ501内部の添加物が排出部52aに流下する。
排出部52aは、供給管52cを介して管54に接続され、排出部52aから管54に、添加物が流れる構成となっている。排出部52aと供給管52cとの間には、供給調整部52bが配設される。供給調整部52bは、排出部52aから供給管52cへ流入する添加物の量を調整する機構である。例えば、供給調整部52bは、排出部52aから供給管52cへの添加物の流入を止めるシャッター(図示略)、シャッターが開いた状態で排出部52aから添加物を供給管52cへ送り出すスクリューフィーダー(図示略)等を備える構成とすることができる。また、供給調整部52bはシャッターの開度を調整する機構を備えてもよい。
添加物供給部52には、複数の添加物カートリッジ501を装着可能であり、排出部52a、供給調整部52b、及び供給管52cは、各々の添加物カートリッジ501に対応して設けられる。本実施形態では、7個の添加物カートリッジ501を添加物供給部52に装着できる。各々の添加物カートリッジ501に収容される添加物の種類は任意である。例えば、異なる色の添加物をそれぞれ収容した添加物カートリッジ501を装着することで、添加物供給部52から、イエローの添加物、マゼンタの添加物、シアンの添加物をそれぞれ管54に供給できる。また、白色の添加物、無色(プレーン)の添加物等を収容した添加物カートリッジ501を装着してもよいし、他の色の添加物を収容した添加物カートリッジ501を装着してもよい。
添加物供給部52は、添加物供給部52に装着される複数の添加物カートリッジ501のうち、いずれか1以上の添加物カートリッジ501から添加物を供給できる。例えば、制御装置110が添加物供給部52を制御して、イエローの添加物を収容した添加物カートリッジ501、及び、シアンの添加物を収容した添加物カートリッジ501から添加物を供給することで、緑色のシートSを製造できる。
4.制御系の構成
図8は、シート製造装置100の制御系の構成を示すブロック図である。
シート製造装置100が備える制御装置110は、シート製造装置100の各部を制御するメインプロセッサー111を有する。制御装置110は、メインプロセッサー111に接続されるROM(Read Only Memory)112、及びRAM(Random Access Memory)113を備える。メインプロセッサー111は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置であり、ROM112が記憶する基本制御プログラムを実行することにより、シート製造装置100の各部を制御する。メインプロセッサー111は、ROM112、RAM113等の周辺回路や他のIPコアを含むシステムチップとして構成されてもよい。
ROM112は、メインプロセッサー111が実行するプログラムを不揮発的に記憶する。RAM113は、メインプロセッサー111が使用するワークエリアを形成して、メインプロセッサー111が実行するプログラムや処理対象のデータを一時的に記憶する。
不揮発性記憶部120はメインプロセッサー111が実行するプログラムや、メインプロセッサー111が処理するデータを記憶する。
表示パネル116は、液晶ディスプレイ等の表示用のパネルであり、例えば、シート製造装置100の図示しない筐体(本体)の正面に設置される。表示パネル116は、メインプロセッサー111の制御に従って、シート製造装置100の動作状態、各種設定値、警告表示等を表示する。
タッチセンサー117は、タッチ(接触)操作や押圧操作を検出する。タッチセンサー117は、例えば、透明電極を有する圧力感知式あるいは静電容量式のセンサーで構成され、表示パネル116の表示面に重ねて配置される。タッチセンサー117は、操作を検出した場合、操作位置や操作位置の数を含む操作データをメインプロセッサー111に出力する。メインプロセッサー111は、タッチセンサー117の出力により、表示パネル116に対する操作を検出し、操作位置を取得する。メインプロセッサー111は、タッチセンサー117により検出した操作位置と、表示パネル116に表示中の表示データ122とに基づき、GUI(Graphical User Interface)操作を実現する。
制御装置110はセンサーI/F(Interface)114を介して、シート製造装置100の各部に設置されたセンサーに接続される。センサーI/F114は、センサーが出力する検出値を取得してメインプロセッサー111に入力するインターフェイスである。センサーI/F114は、センサーが出力するアナログ信号をデジタルデータに変換するA/D(Analog/Digital)コンバーターを備えてもよい。また、センサーI/F114は、各センサーに駆動電流を供給してもよい。また、センサーI/F114は、各々のセンサーの出力値を、メインプロセッサー111が指定するサンプリング周波数に従って取得し、メインプロセッサー111に出力する回路を備えてもよい。
センサーI/F114には、古紙残量センサー301、添加物残量センサー302、排紙センサー303、水量センサー304、風量センサー306、風速センサー307、及び、温度センサー309が接続される。
古紙残量センサー301は、供給部10の各スタッカー11に蓄積される原料MAの残量を検出するセンサーである。制御装置110は、古紙残量センサー301の検出値に基づいて、各スタッカー11に収容される古紙の有無、或いは残量を検出できる。また、古紙残量センサー301は、載置台1101(図2)に載置された原料MAの量を検出するセンサーを含んでもよい。すなわち、古紙残量センサー301は複数のセンサーを含むユニットであり、複数のスタッカー11及び載置台1101における原料MAの残量を検出する構成であってもよい。
添加物残量センサー302は、添加物供給部52から供給可能な添加物の残量を検出するセンサーであり、複数の添加物カートリッジ501の各々に収容された添加物の残量を検出可能な構成であってもよい。制御装置110は、添加物残量センサー302の検出値に基づき、各々の添加物カートリッジ501における添加物の残量を求めることができ、或いは、添加物の残量が閾値以上か否かを判定することができる。
排紙センサー303は、排出部96が有するトレイ或いはスタッカーに蓄積されたシートSの量を検出する。制御装置110は、例えば、排紙センサー303の検出値に基づいて、排出部96に蓄積されたシートSの量が設定値以上となったと判定した場合に、報知を行うことができる。
水量センサー304は、シート製造装置100が内蔵する給水用タンク(図示略)の水量を検出するセンサーである。制御装置110は、水量センサー304が検出する水量が設定値を下回った場合に、報知を行う。また、水量センサー304は、気化式加湿器343及び/又はミスト式加湿器347のタンク(図示略)の残量を検出可能な構成としてもよい。
風量センサー306は、シート製造装置100の内部を流れる空気の風量を検出する。また、風速センサー307は、シート製造装置100の内部を流れる空気の風速を検出する。制御装置110は、風量センサー306及び風速センサー307の検出値に基づいて、シート製造装置100内部におけるエアーフロー(材料搬送気流)の状態を判定できる。この判定結果に基づき、制御装置110は、解繊部ブロアー26や混合ブロアー56等の回転数を制御して、シート製造装置100内部のエアーフローの状態を適正に保持することができる。
温度センサー309は、加熱部84が備える加熱ローラー86の温度を検出するセンサーである。制御装置110は、温度センサー309の検出値に基づき、加熱ローラー86の温度、すなわち加熱ローラー86により第2ウェブW2を加熱する加熱温度を検出する。
測色部391は、図2に示したように原料MAに対し測色を行う計測器である。測色部391はセンサーI/F114に接続され、検出結果を示す出力値をセンサーI/F114に出力する。
スキャナー393は、図2に示したように原料MAに対し光学的に読み取りを行い、読み取った画像をセンサーI/F114に出力する。
制御装置110は、駆動部I/F115を介して、シート製造装置100が備える各駆動部に接続される。駆動部I/F115には、シート製造装置100が備えるモーター、ポンプ、ヒーター等が接続される。これらを総称して駆動部と呼ぶが、特に、モーター等の物理的変位をもたらすものを駆動部とし、その他のヒーター等を動作部と呼ぶこともできる。なお、以下の説明において、駆動部とは、駆動部I/F115に接続され制御装置110の制御に従って機能を発揮する駆動部及び動作部を含む。
駆動部I/F115は、上述した各駆動部に、駆動IC(Integrated Circuit)を介して接続されてもよい。駆動ICは、例えば、メインプロセッサー111の制御に従って駆動部に駆動電流を供給する回路であり、電力用半導体素子等で構成される。例えば、駆動ICは、インバーター回路や、ステッピングモーターを駆動する駆動回路とすることができ、その具体的構成及び仕様は、接続される駆動部に合わせて適宜に選択すればよい。
粗砕部駆動モーター311は、駆動部I/F115に接続され、制御装置110の制御に従って、原料MAを裁断する裁断刃(図示略)を回転させる。
解繊部駆動モーター313は、駆動部I/F115に接続され、制御装置110の制御に従って、解繊部20が備えるローター(図示略)を回転させる。
給紙モーター315は、供給部10が備える供給ローラー1111、供給ローラー1112、及び、各々のスタッカー11が備える給送ローラー11aを駆動する。給紙モーター315は、複数のモーターを含むユニットであってもよい。給紙モーター315は、制御装置110の制御に従って、供給部10において原料MAを搬送する。
駆動部I/F115には、原料振分部397が接続される。原料振分部397は、制御装置110の制御に従って、供給部10が備える各々のスタッカー11を、個別にスライド移動させる。原料振分部397が搬送路1102側に移動させたスタッカー11には、搬送路1102から原料MAが供給される。
添加物供給モーター317は、駆動部I/F115に接続され、制御装置110の制御に従って、供給調整部52bにおいて添加物を送り出すスクリューフィーダー(図示略)を駆動する。添加物供給モーター317は、供給調整部52bのシャッターを開閉させるものであってもよい。
駆動部I/F115には、解繊部ブロアー26が接続される。同様に、駆動部I/F115には、混合ブロアー56、サクションブロアー77、中間ブロアー318、捕集ブロアー28が駆動部I/F115に接続される。この構成により、解繊部ブロアー26、混合ブロアー56、サクションブロアー77、中間ブロアー318、及び、捕集ブロアー28の始動及び停止を制御装置110が制御できる。中間ブロアー318は、搬送部79のサクション機構79cから吸引を行うブロアーである。制御装置110は、これらの各ブロアーによる吸引の開始/停止を制御でき、各ブロアーの回転数を制御可能な構成であってもよい。
また、駆動部I/F115には、ドラム駆動モーター325、ベルト駆動モーター327、分断部駆動モーター329、ドラム駆動モーター331、ベルト駆動モーター333、加圧部駆動モーター335、及び、加熱部駆動モーター337が接続される。
ドラム駆動モーター325は、ドラム部41を回転させるモーターである。ベルト駆動モーター327は、第1ウェブ形成部45のメッシュベルト46を動作させモーターである。分断部駆動モーター329は、回転体49を回転させるモーターである。ドラム駆動モーター331は、ドラム部61を回転させるモーターである。ベルト駆動モーター333は、メッシュベルト72を駆動するモーターである。また、加圧部駆動モーター335は、加圧部82のカレンダーローラー85を駆動するモーターである。加熱部駆動モーター337は、加熱部84の加熱ローラー86を駆動するモーターである。
制御装置110は、これら各モーターのON/OFFを制御する。また、制御装置110は、上記各モーターの回転数を制御可能な構成であってもよい。
ヒーター339は、加熱ローラー86を加熱するヒーターであり、図3に示した熱源Hに相当する。ヒーター339は駆動部I/F115に接続され、制御装置110は、ヒーター339のON/OFFを制御する。また、ヒーター339が、出力を切替可能な構成であって、制御装置110がヒーター339の出力を制御することが可能な構成であってもよい。
ローラー移動部341は、加熱部84が備える変位機構190(図5、図6)を動作させて、図5の第1位置、及び、図6の第2位置に変位させる。ローラー移動部341は、駆動部I/F115を介して制御装置110に接続され、制御装置110は、ローラー移動部341を制御し、加熱部84の第1位置と、第2位置とを切り替える。
気化式加湿器343は、水を貯留するタンク(図示略)、及び、タンクの水に浸潤されるフィルター(図示略)を備え、このフィルターに送風して加湿する装置である。気化式加湿器343は、駆動部I/F115に接続されるファン(図示略)を有し、制御装置110の制御に従ってフィルターへの送風をON/OFFする。本実施形態では、気化式加湿器343から加湿部202、204、206、208に対し、加湿空気を供給する。従って、加湿部202、204、206、208は、気化式加湿器343が供給する加湿空気を、粗砕部12、選別部40、管54、及び、堆積部60に供給する。なお、気化式加湿器343は、複数の気化式加湿器で構成されてもよい。この場合、それぞれの気化式加湿器の設置場所を、粗砕部12、選別部40、管54、及び、堆積部60のいずれかとしてもよい。
また、気化式加湿器343は、ファンによりフィルターに送風される風を加熱する加湿ヒーター345を備える。加湿ヒーター345は、気化式加湿器343が備えるファン(図示略)とは別に駆動部I/F115に接続される。制御装置110は、気化式加湿器343が備えるファンのON/OFFを制御し、気化式加湿器343の制御とは独立して、加湿ヒーター345のON/OFFを制御する。気化式加湿器343は本発明の加湿器に相当し、加湿ヒーター345は熱源に相当する。
ミスト式加湿器347は、水を貯留するタンク(図示略)、及び、タンクの水に対し振動を与えて霧状の水滴(ミスト)を発生させる振動部(図示略)を備える。ミスト式加湿器347は、駆動部I/F115に接続され、制御部150の制御に従って振動部をON/OFFする。本実施形態では、ミスト式加湿器347から加湿部210、212に対し、ミストを含む空気を供給する。従って、加湿部210、212は、ミスト式加湿器347が供給するミストを含む空気を第1ウェブW1、及び第2ウェブW2のそれぞれに供給する。
給水ポンプ349は、シート製造装置100の外部から水を吸引し、シート製造装置100の内部に備えるタンク(図示略)に水を取り込むポンプである。例えば、シート製造装置100を始動する際に、シート製造装置100を操作するオペレーターが給水用タンクに水を入れてセットする。シート製造装置100は、給水ポンプ349を動作させ、給水用タンクからシート製造装置100内部のタンクに水を取り込む。また、給水ポンプ349は、シート製造装置100のタンクから気化式加湿器343及びミスト式加湿器347に水を供給してもよい。
切断部駆動モーター351は、切断部90の第1切断部92、及び第2切断部94を駆動するモーターである。切断部駆動モーター351は、駆動部I/F115に接続される。
また、制御装置110には、IC読取部119が接続される。IC読取部119は、添加物供給部52に装着される添加物カートリッジ501(図7)の各々に設けられるIC521に対し、データの読み取り、及び、書込を行う。
添加物カートリッジ501の各々には、IC521が取り付けられている。IC521は、データを記憶する記憶領域を備えたICチップであり、添加物カートリッジ501に収容された添加物に関するデータを記憶する。IC521は、接触式のICチップであってもよいし、非接触式のICチップ(例えば、RFID(Radio Frequency IDentifier)を用いてもよい。
IC521が記憶するデータは、添加物カートリッジ501に収容された添加物に関するデータを含む。例えば、添加物カートリッジ501に収容された添加物の色、性質、好適な加熱温度等を含み、これらのデータに相当するコードを含んでもよい。本実施形態では、IC521は、種別データ521a、温度データ521b(加熱温度情報)、及び、残量データ521cを記憶する。種別データ521aは、添加物カートリッジ501が収容する添加物の種別を示すデータを含み、例えば、添加物の色を示す。温度データ521bは、添加物カートリッジ501に収容された添加物に適した加熱温度を示すデータを含む。残量データ521cは、添加物カートリッジ501における添加物の残量を示すデータを含む。残量データ521cは、IC読取部119によって書込および更新が可能である。また、IC521は、各々のIC521に固有の識別情報を記憶してもよい。
IC読取部119は、IC521が記憶するデータの読み取り、及び、IC521に対するデータの書き込み(消去を含む)を行う装置であって、たとえば、接触式または非接触のICリーダー/ライターである。IC読取部119は、例えば、添加物供給部52において装着可能な添加物カートリッジ501の数に対応して、複数設置されてもよい。IC読取部119は、制御装置110の制御に従って、各々の添加物カートリッジ501に装着された複数のIC521のそれぞれから、データを読み取り、読み取ったデータを制御装置110に出力する。
図9は、シート製造装置100の機能ブロック図であり、記憶部140及び制御部150の機能的構成を示す。記憶部140は、不揮発性記憶部120(図8)により構成される論理的な記憶部である。
制御部150、及び、制御部150が有する各種の機能部は、メインプロセッサー111がプログラムを実行することによって、ソフトウェアとハードウェアとの協働により形成される。これらの機能部を構成するハードウェアは、例えば、メインプロセッサー111、及び不揮発性記憶部120が挙げられる。
記憶部140は、設定データ121、表示データ122、添加物設定データ123、及び読取データ124を記憶する。
設定データ121は、シート製造装置100の動作を設定するデータを含む。例えば、設定データ121は、シート製造装置100が備える各種センサーの特性や、各種センサーの検出値に基づきメインプロセッサー111が異常を検出する処理で使用される閾値等のデータを含む。
表示データ122は、メインプロセッサー111が表示パネル116に表示させる画面のデータである。表示データ122は、固定的な画像データであってもよいし、メインプロセッサー111が生成或いは取得するデータを表示する画面表示を設定するデータであってもよい。
添加物設定データ123は、添加物供給部52で添加される添加物の種類や量を制御部150が設定する場合に参照されるデータである。
読取データ124は、IC読取部119によってIC521から読み取られたデータである。読取データ124は、複数のIC521から読み取られたデータを含んでもよい。
図10は、読取データ124の構成例を示す模式図である。
図10に示す例では、読取データ124は、種別データ、温度データ、及び、残量データを含む。種別データはIC521が記憶する種別データ521aをIC読取部119により読み取ったデータである。読取データ124の温度データは温度データ521bである。また、残量データは、残量データ521cを読み取ったデータである。
制御部150は、添加物カートリッジ501が装着された際、或いは、シート製造装置100の電源がONにされたときに、IC読取部119によりIC521の有無を検出する。制御部150は、検出したIC521から種別データ521a、温度データ521b、及び残量データ521cを読み取り、読取データ124として記憶部140に記憶する。読取データ124は、種別データ、温度データ、及び残量データに対応づけて、IC521を識別する識別情報を含んでもよい。IC521の識別情報は、例えばIC521に固有のIDであり、IC521の記憶領域に記憶され、種別データ521a等とともにIC読取部119により読取り可能である。
制御部150は、記憶部140が記憶する読取データ124を更新、編集できる。すなわち、シート製造装置100がシートSを製造することで、添加物カートリッジ501内部の添加物が消費されて減少した場合に、この減少を反映するように、制御部150が読取データ124の残量データを更新してもよい。
制御部150は、添加物カートリッジ501を取り外す処理を行う場合、あるいはシート製造装置100の停止シーケンスにおいて、記憶部140が記憶する読取データ124の残量データを、IC521の残量データ521cに上書きしてもよい。また、制御部150は、シート製造装置100の動作中(シートSの製造中以外を含む)に、所定のタイミングで、読取データ124に含まれる残量データに基づき残量データ521cを上書きする処理を実行してもよい。
読取データ124の種別データは、添加物カートリッジ501を、添加物カートリッジ501に収容された添加物の種別を示し、図10の例では色により区別する。添加物は有色とは限らず、例えば、プレーン(PLAIN)の添加物カートリッジ501は無色または無色に近い色の添加物を収容する。
温度データとしては、各々の添加物カートリッジ501に適した温度を示すTh11~Th15が設定される。Th11、Th12、Th13、Th14、Th15はそれぞれ具体的な温度、或いは温度の範囲を示す数値やコードである。これらの温度は、加熱部84において、各々の添加物に含まれる樹脂を適切な状態で溶融させ、繊維を好ましい強度で接着し、良好な発色を得られるように設定された温度である。読取データ124に含まれる温度データは、温度データ521bそのもの、或いは、温度データ521bを加熱部84の加熱温度に変換したデータのいずれであってもよく、具体的なデータ形式等は任意である。
制御部150は、後述するように、シートSの製造に用いる添加物を収容した添加物カートリッジ501に対応する読取データ124の温度データに基づき、加熱部84の加熱温度を設定する。これにより、加熱部84において第2ウェブW2を適切な温度で加熱し、第2ウェブW2に含まれる添加物を十分に溶融させることができ、高品質のシートSを製造できる。Th11~Th15の具体的な温度は添加物の具体的性質により異なるが、室温に近い温度で添加物が溶融することは実用上あまりないので、いわゆる室温とされる温度よりも高い。例えば、摂氏100度を超える温度となることは珍しくない。
制御部150は、オペレーティングシステム(OS)151、表示制御部152、操作検出部153、検出制御部154、データ取得部155、駆動制御部156、及び、加熱制御部157の機能を有する。
オペレーティングシステム151の機能は、記憶部140が記憶する制御プログラムの機能であり、その他の制御部150の各部は、オペレーティングシステム151上で実行されるアプリケーションプログラムの機能である。
表示制御部152は、表示データ122に基づいて表示パネル116に画像を表示させる。
操作検出部153は、タッチセンサー117に対する操作が検出された場合に、検出された操作位置に対応するGUI操作の内容を判定する。
検出制御部154は、センサーI/F114に接続される各種センサーの検出値を取得する。また、検出制御部154は、センサーI/F114に接続されるセンサーの検出値について、予め設定された閾値(設定値)と比較して判定を行う。検出制御部154は、判定結果が、報知を行う条件に該当する場合には、表示制御部152に報知内容を出力して、表示制御部152によって画像やテキストによる報知を行わせる。
データ取得部155は、IC読取部119によりIC521からデータの読取りを行う。
駆動制御部156は、駆動部I/F115を介して接続される各駆動部の始動(起動)及び停止を制御する。また、駆動制御部156は、解繊部ブロアー26や混合ブロアー56等に対して、回転数の制御を行う構成であってもよい。
加熱制御部157は、加熱部84の加熱ローラー86により第2ウェブW2を加熱する温度を制御する。加熱制御部157は、加熱部84による加熱温度を設定する。ここで、加熱制御部157が設定する温度は、制御の目標となる目標温度ということができる。加熱制御部157は、温度センサー309の検出値を取得し、加熱部84の加熱温度が設定した目標温度となるように、ヒーター339を制御する。
加熱制御部157が行う温度制御の精度についてはシートSの品質を満足できる程度であればよい。具体的には、加熱制御部157は、ヒーター339のON/OFFの切り替え、及び/または、ヒーター339の出力制御により、加熱ローラー86の温度を、設定した目標温度を含む所定の温度範囲内に維持する。この所定の温度範囲の大きさ、及び、目標温度からの差は、適宜に設定される。例えば、目標温度に対する上記所定の温度範囲の設定方法や条件を、設定データ121に含めて記憶部140に記憶し、この設定に従って加熱制御部157が制御を行う構成とすることができる。また、加熱制御部157は、加湿ヒーター345のON/OFFを制御してもよい。
5.シート製造装置の動作
続いて、シート製造装置100の動作について説明する。
図11は、表示パネル116により表示される画面の例を示す図であり、シート製造装置100を操作するユーザー(オペレーター)が操作を行うための操作画面160を示す。
図11の操作画面160は、シート製造装置100の電源が投入された後、表示パネル116によって表示され、シート製造装置100がシートSの製造を行う間や、後述する第2状態においても継続して表示されてもよい。
操作画面160には、動作指示部161、カートリッジ情報表示部162、シート設定部163、及び、報知部164が配置される。動作指示部161、カートリッジ情報表示部162及びシート設定部163はユーザーが操作を行うためのGUIを構成する。表示パネル116に操作画面160を表示することにより、タッチセンサー117は、操作検出部153(図9)とともに受付部を構成する。
動作指示部161は、シート製造装置100の動作を指示するためのボタン(操作部)として機能する開始指示ボタン161a、停止指示ボタン161b、中断指示ボタン161c、及び、待機指示ボタン161dを含む。
シート設定部163は、シート製造装置100が製造するシートSの条件を指示するためのボタン(操作部)として機能する色設定部163a、厚さ設定部163b、及び、原料設定部163cを有する。
動作指示部161及びシート設定部163に配置された各操作部は、物理ボタンとしてシート製造装置100の筐体に設置されてもよい。本実施形態では一例として、上記の各操作部を表示パネル116及びタッチセンサー117によりGUI(アイコン)として設けた例を説明する。
色設定部163aは、シートSの色を指定するための操作部である。図11の例では、ユーザーが色設定部163aを操作することにより、プルダウンメニューによって、シートSの色を、予め設定された複数の色から選択できる。制御部150は、操作検出部153により、色設定部163aの操作により選択された色を取得する。
色設定部163aで選択可能な色は、添加物供給部52に装着された添加物カートリッジ501に対応して設定されてもよい。例えば、添加物供給部52に、白色の添加物を収容した添加物カートリッジ501とプレーン(無色)の添加物を収容した添加物カートリッジ501とが装着された場合、色設定部163aでは、「白色」と「グレー」とが選択可能になる構成が挙げられる。
駆動制御部156は、選択された色に対応して、添加物供給部52に装着された添加物カートリッジ501の添加物のうち、使用する添加物の種類、及び、複数種類の添加物を使用する場合の各添加物の割合を決定する。駆動制御部156は、使用する添加物の種類、及び、複数種類の添加物を使用する場合の各添加物の割合に基づいて、各々の添加物カートリッジ501から供給する添加物の量を決定し、決定した量に基づき添加物供給モーター317を制御する。例えば、駆動制御部156は、色設定部163aで「白色」が選択された場合は白色の添加物を収容する添加物カートリッジ501を供給元として設定する。「グレー」が選択された場合には、プレーンの添加物を収容する添加物カートリッジ501を供給元として設定する。
厚さ設定部163bは、シートSの厚さを指定するための操作部である。図11の例では、ユーザーが厚さ設定部163bを操作することにより、プルダウンメニューによって、シートSの厚さ、予め設定された複数段階の厚さから選択できる。制御部150は、操作検出部153により、厚さ設定部163bの操作により選択された厚さを取得する。駆動制御部156は、選択された厚さに対応して、堆積部60においてメッシュベルト72に堆積させる第2ウェブW2の厚さ、及び/または、加圧部82で第2ウェブW2に与える荷重等の条件を決定する。駆動制御部156は、決定した条件に対応して、ドラム駆動モーター331の回転速度及びベルト駆動モーター333の回転速度、加圧部駆動モーター335の動作条件等を制御する。
原料設定部163cは、シートSの製造に用いる原料MAを指定するための操作部である。図11の例では、ユーザーが原料設定部163cを操作することにより、プルダウンメニューによって、シートSの原料MAの種類を、予め設定された複数の種類から選択できる。原料設定部163cで選択可能な原料MAは、供給部10がスタッカー11に収容する原料MAである。すなわち、原料設定部163cにおける選択は、供給部10において原料MAを送り出すスタッカー11の選択に対応する。制御部150は、操作検出部153により、原料設定部163cの操作により選択された原料MAの種類を取得する。駆動制御部156は、選択された種類の原料MAを収容するスタッカー11を選択し、選択したスタッカー11から原料MAが供給されるように給紙モーター315を制御する。
また、シート設定部163には、上述した各ボタンの他に、製造するシートSの枚数を指定するボタンやシートSのサイズ(大きさ)を指定するボタンを配置してもよく、その他のシートSに係る条件を指定するためのボタンを配置してもよい。
開始指示ボタン161aは、シートSの製造の開始を指示するボタンである。開始指示ボタン161aは、例えば、シート設定部163の操作によってシートSに係る条件が指定された後に操作され、指定された条件に基づくシートSの製造の開始を指示する。なお、シート設定部163において、デフォルトの指定値が予め設けられ、シート設定部163の操作が行われない状態で開始指示ボタン161aが操作された場合、シート製造装置100が、デフォルトの指定値に基づきシートSの製造を開始してもよい。
停止指示ボタン161bは、シート製造装置100の動作の停止を指示するボタンである。なお、シート製造装置100の筐体には、表示パネル116とは別にシート製造装置100の電源をON/OFFする電源スイッチ(図示略)を備えてもよい。この場合、停止指示ボタン161bは、シート製造装置100の停止を指示するボタンとして機能するが、停止指示ボタン161bによりシート製造装置100の電源オフを指示できる構成であってもよい。停止指示ボタン161bの操作によりシート製造装置100がシートSの製造を停止した場合、シート設定部163で設定されたシートSに係る条件はクリアされ、デフォルトの指定値(初期値)に戻る。
中断指示ボタン161cは、シート製造装置100がシートSの製造を実行している間に、シートSの製造を一時的に停止させる。中断指示ボタン161cが操作され、シート製造装置100がシートSの製造を停止した場合、シート設定部163で設定されたシートSに係る条件は保持される。この状態で、開始指示ボタン161aが操作されると、制御部150は、シート製造装置100により中断指示ボタン161cが操作される前と同じ条件に従ってシートSの製造を開始(再開)する。
待機指示ボタン161dは、シート製造装置100がシートSの製造をしていない状態、すなわち停止した状態で、後述する第2状態への移行を指示するボタンである。
シート製造装置100によりシートSを製造する一連の動作を「ジョブ」と呼ぶ。ジョブは、シート設定部163の操作またはデフォルト値により指定された条件のシートSを製造する動作を指す。具体的には、開始指示ボタン161aの操作に応じて動作を開始してから、シート設定部163の操作で指定された枚数のシートSの製造を完了するまで、或いは、停止指示ボタン161bの操作により停止するまでの動作を、ジョブと呼ぶ。製造するシートSの枚数が指定された場合、ジョブの終端が明らかに特定される。シートSの枚数が指定されず停止指示ボタン161bが操作された場合、あるいは、指定された枚数のシートSの製造を完了する前に停止指示ボタン161bが操作された場合、事前の設定はないが、ジョブが終了する。中断指示ボタン161cが操作された場合、シート製造装置100はジョブを中断するが、終了しない。このため、中断指示ボタン161cの操作に応じてシートSの製造を止めた後、開始指示ボタン161aが操作されると、シート製造装置100は、シートSの製造を再開し、具体的には中断指示ボタン161cの操作の前と同じ条件でシートSを製造する。つまり、中断指示ボタン161cはジョブを一時的に停止させるが、その後に開始指示ボタン161aが操作されればジョブは継続する。
カートリッジ情報表示部162は、添加物供給部52に装着(セット)された添加物カートリッジ501に関する情報を表示する表示部である。
カートリッジ情報表示部162には、添加物供給部52に装着可能な添加物カートリッジ501の数に対応して、添加物カートリッジ501を模したカートリッジ画像162aが表示される。カートリッジ画像162aには、添加物の種類(例えば、色)を示す文字列、及び、添加物の残量を示す残量ゲージ162bが表示される。また、添加物供給部52に装着された添加物カートリッジ501の数が装着可能な数より少ない場合、装着されていない添加物カートリッジ501に対応するカートリッジ画像162aはブランク表示される。
さらに、カートリッジ情報表示部162には、各々のカートリッジ画像162aに対応して、カートリッジ選択部162cが配置される。
カートリッジ選択部162cは、シートSの製造に使用する添加物として選択された添加物を収容する添加物カートリッジ501を表示する表示部として機能する。また、カートリッジ選択部162cは、ユーザーの操作によって、シートSの製造に使用する添加物を指定する操作部としても機能する。ユーザーの操作、或いは、制御部150が実行する処理によって選択された添加物カートリッジ501に対応するカートリッジ選択部162cには、選択されたことを示す記号が表示される。
報知部164は、ユーザーに報知する内容がテキストや画像により表示される表示領域である。報知部164には、例えば、添加物カートリッジ501の交換を要求するメッセ-ジ等が表示される。
図12は、シート製造装置100の動作を示すフローチャートである。図13、図15、図17、図18、及び図19は、シート製造装置100の動作を示すフローチャートであり、特に、図12の処理を詳細に示す。
シート製造装置100の電源がオンにされると(ステップST11)、表示制御部152は、表示パネル116に操作画面160を表示させる(ステップST12)。
ここで、制御部150は、供給部10により原料MAをスタッカー11に振り分ける原料処理を実行する。
図13は、シート製造装置100の動作を示すフローチャートであり、特に、原料処理を詳細に示す。
制御部150は、古紙残量センサー301によって載置台1101に載置された原料MAの有無を判定する(ステップST31)。制御部150は、原料MAがないと判定した場合(ステップST31;No)、原料処理を終了する。
載置台1101に原料MAがあると判定した場合(ステップST31;Yes)、制御部150は、供給ローラー1111によって原料MAを載置台1101から搬送路1102に搬送させる(ステップST32)。
搬送路1102を原料MAが搬送される間、制御部150の制御により、測色部391が原料MAの表面の測色を実行し(ステップST33)、スキャナー393が原料MAをスキャンする(ステップST34)。
制御部150は、測色部391の測色の結果およびスキャナー393がスキャンした画像を解析することにより、原料MAの種類(紙種)を判定する(ステップST35)。
制御部150は、判定した紙種に対応するスタッカー11を選択し(ステップST36)、原料振分部397を動作させて、選択したスタッカー11を搬送路1102側に移動させる(ステップST37)。これにより、ステップST35で判定された原料MAが、ステップST36で選択されたスタッカー11に収容される。その後、制御部150はステップST31に戻る。
制御部150は、図13のステップST32~ST37の動作を連続的に実行してもよい。すなわち、搬送路1102に原料MAが存在する状態で、次の原料MAを載置台1101から搬送して、測色及びスキャンを実行してもよい。この場合、より高速に多数の原料MAをスタッカー11に振り分けることができる。
図12に戻り、操作検出部153は、ユーザーによる操作画面160に対する操作を検出して、この操作による入力を受け付ける処理を行い、操作内容を取得する(ステップST14)。
制御部150は、駆動制御部156及び加熱制御部157の機能により、ステップST14で操作検出部153が取得した操作内容に基づいて、シート製造装置100の動作条件を設定する(ステップST15)。
ステップST15で制御部150が実行する処理として、3通りの処理が挙げられる。これらの処理を、第1の処理、第2の処理、第3の処理として順次説明する。
第1~第3の処理の説明において、本実施形態では、原料MAの種類をPPC用紙、樹脂を含む再生紙(樹脂含有再生紙)、及びクラフト紙に分け、PPC用紙を、印字比率が20%未満(0~20%)の紙と印字比率が20%以上の紙とで異なる種類とする。これら4種類の原料MAがA~Dのスタッカー11に分けて収容される。
樹脂含有再生紙は、PPC用紙等の紙が、使用後にシート製造装置100またはその他の装置によって再生紙に加工された紙であり、再生紙を製造する工程で樹脂(シート製造装置100では添加物)が混合された紙を指す。樹脂含有再生紙は、再生紙を原料としてシート製造装置100またはその他のシート製造装置によって再生されたものであってもよい。つまり、樹脂含有再生紙は、シート製造装置100またはその他のシート製造装置によって複数回の再生加工をされた繊維や樹脂を含むこともある。
第1~第3の処理で、制御部150は、原料MAの種類、及び、使用する添加物に対応して、加熱部84の加熱温度を設定する。シート製造装置100は、加熱部84で、第2ウェブW2に含まれる樹脂を溶融させることによって繊維と樹脂とを溶融結合させる。溶融結合に必要な熱量は、下記式(11)に示す大小関係が挙げられる。
樹脂含有再生紙>PPC用紙(印字比率20%以上)>PPC用紙(印字比率20%未満) …(11)
樹脂含有再生紙は原料MAの状態で含んでいる樹脂が多い。また、印字比率が高いPPC用紙は、トナー等の樹脂を含む色材が多く付着しており、この色材の樹脂の影響で、溶融結合に必要な熱量が大きい。
また、原料MAの種類でも熱容量は異なる。すなわち、PPC用紙や、使用後のPPC用紙を再生した樹脂含有再生紙は、白色度向上や印字品質向上のための添加剤、填料、サイズ剤の補助材料が含まれることが多い。これらの補助材料も、溶融結合に必要な熱量を増加させる影響がある。補助材料の観点を加味すると、溶融結合に必要な熱量は、下記式(12)に示す大小関係が挙げられる。
樹脂含有再生紙>PPC用紙>クラフト紙 …(12)
これらを総合すると、各々の原料MAについて、溶融結合に必要な熱量に下記式(13)の関係が成立する。
樹脂含有再生紙>PPC用紙(印字比率20%以上)>PPC用紙(印字比率20%未満)>クラフト紙 …(13)
溶融結合に必要な熱量は、加熱部84により第2ウェブW2に与えられる熱量であり、具体的には、下記式(14)の関係が考慮される。
熱量=加熱時間×加熱温度 …(14)
つまり、加熱部84における加熱時間と、加熱部84の加熱温度とを決定する場合に、原料MAの種類ごとに必要とされる熱量を考慮することが好ましい。
また、加熱部84で樹脂を加熱溶融させる場合の加熱温度の目安として、樹脂すなわち添加物のガラス転移点温度Tgが挙げられる。ガラス転移点温度Tgは、結合材として作用する樹脂、すなわち添加物の溶融しやすさを示す。
このため、加熱部84で第2ウェブW2を加熱する条件として、加熱温度を決定する場合には、必要な熱量を満たすだけでなく、加熱温度がガラス転移点温度Tgを満たす必要がある。逆の表現では、ガラス転移点温度Tgが低い添加物を使用すれば、第2ウェブW2を溶融結合し易い状態とすることができ、溶融結合に必要な熱量を補償できる。
例えば、原料MAがクラフト紙である場合にガラス転移点温度Tg=TgAである添加物を使用し、原料MAがPPC用紙(印字比率20%未満)である場合にガラス転移点温度Tg=TgBである添加物を使用すると仮定する。この例では原料MAがPPC用紙(印字比率20%以上)である場合にガラス転移点温度Tg=TgCである添加物を使用し、原料MAが樹脂含有再生紙である場合にガラス転移点温度Tg=TgDである添加物を使用する。この例において、ガラス転移点温度Tgについて下記式(15)のようにすればよい。
TgA>TgB>TgC>TgD …(15)
式(15)に示す関係を適用すると、溶融結合に必要な熱量が大きい原料MA(上記式(13))ほど、ガラス転移点温度Tgが低い添加物が使用される。この場合、添加物のガラス転移点温度Tgが低いので、溶融結合に必要な熱量が低くなり、加熱部84における加熱温度が低くても溶融結合しやすくなる。従って、加熱時間を延長させることなく十分に第2ウェブW2を溶融結合させ、高品質のシートSを製造できる。
第1~第3の処理は、上記の知見に基づき、加熱部84における加熱温度を、原料MAの種類や添加物に対応して適切に設定する例を示す。
[1]第1の処理
第1の処理は、一種類の添加物を使用する場合に、原料MAの種類に応じて異なる加熱温度を設定する処理である。
図14は、添加物設定データ123の一例としての添加物設定データ123aの構成例を示す模式図である。また、図15はシート製造装置100の動作を示すフローチャートであり、ステップST15で実行される第1の処理を示す。
図14に示す添加物設定データ123aは、供給部10が備える各々のスタッカー11に対応付けて、原料MAの種類(紙種)、印字比率、加熱部84の加熱温度、及び、使用する添加物カートリッジ501を示す情報を含む。添加物カートリッジ501を示す情報は、IC521の識別情報であってもよい。
添加物設定データ123aは、第1の処理に対応する添加物設定データ123である。詳細には、1つの添加物カートリッジ501について、4種類の原料MAに対応する設定温度を定めるデータを含む。
図14の例では、添加物設定データ123aに、印字比率が20%未満のPPC用紙、印字比率が20%以上のPPC用紙、樹脂を含む再生紙、及びクラフト紙の4種類の原料MAに対応する加熱温度が含まれる。この加熱温度は、原料MAの種類ごとに溶融結合に必要な熱量を満たすように設定される温度である。
図14の例では、添加物設定データ123aが、No.1の添加物カートリッジ501を使用する場合の加熱温度を含む構成を例示する。上記式(13)に従い、PPC用紙(印字比率20%未満)の加熱温度Th21、PPC用紙(印字比率20%以上)の加熱温度Th22、樹脂含有再生紙の加熱温度Th23、及びクラフト紙の加熱温度Th24には下記式(16)の関係が成り立つ。
Th23>Th22>Th21>Th24 …(16)
添加物設定データ123aが、No.1以外の添加物カートリッジ501の各々について、原料MAの種類毎に加熱温度を含む構成であってもよい。また、複数の添加物を使用する場合に対応して、複数の添加物カートリッジ501の組合せに対応して、原料MAの種類毎に加熱温度を含む構成であってもよい。
ところで、加熱部84の加熱温度は、IC521から読み取られた読取データ124に基づき決定される。このため、添加物設定データ123aが含む加熱温度の値Th21~Th24は、加熱温度そのものではなく、温度差、或いは温度の補正値と呼べる値である。駆動制御部156は、読取データ124に含まれる温度データに対し、Th21~Th24を加算することで、いわば温度データを原料MAの種類に合わせて補正し、原料MAの種類に対応する加熱温度を設定する。具体例を挙げると、添加物設定データ123aのTh21~Th24の値は、それぞれ、+5℃、+10℃、+20℃、±0℃とすることができる。
この例で、No.1の添加物カートリッジ501のIC521から読み取られた温度データが150℃である場合、PPC用紙(印字比率20%未満)の加熱温度は150℃に5℃を加算して155℃となる。また、PPC用紙(印字比率20%以上)の加熱温度は150℃に10℃を加算して160℃となる。樹脂含有再生紙の加熱温度は150℃に20℃を加算して170℃となり、クラフト紙の加熱温度は150℃である。添加物設定データ123aのTh21~Th24の値は負の値であってもよい。添加物設定データ123aを用いることにより、制御部150は、IC521から読み取った温度データ、すなわち添加物に適した加熱温度に基づき、原料MAの種類に対応する加熱温度を設定できる。
図15は、添加物設定データ123aに基づき、動作条件を設定する処理を示す。
制御部150は、ステップST14で取得した操作内容に基づき、シートSの製造に使用する原料MAの種類を特定する(ステップST41)。原料MAの種類は、例えば、シート設定部163の原料設定部163cの操作に基づき特定される。制御部150は、添加物供給部52に装着された添加物カートリッジ501のうち、使用する添加物カートリッジ501を特定する(ステップST42)。添加物カートリッジ501は、例えば、シート設定部163の色設定部163aの操作に基づき特定される。ここで、制御部150は、特定した添加物カートリッジ501から供給する単位時間当たりの添加物の量を特定してもよい。
制御部150は読取データ124を参照し、ステップST42で特定した添加物カートリッジ501に装着されているIC521から読み取った温度データを取得する(ステップST43)。
制御部150は、ステップST41で特定した原料MAの種類、及び、ステップST42で特定した添加物カートリッジ501に基づき、添加物設定データ123aを参照して、加熱部84の加熱温度を決定する(ステップST44)。すなわち、制御部150は、添加物設定データ123aにおいて、使用する添加物カートリッジ501及び原料MAの種類に対応して設定された加熱温度を取得する。制御部150は、添加物設定データ123aから取得した加熱温度と、ステップST43で取得した温度データとに基づき、加熱温度を決定する。
制御部150は、ステップST42で特定した添加物カートリッジ501、添加物カートリッジ501からの添加物の添加量、及び、ステップST44で決定した加熱温度を、製造部102の動作条件として設定する(ステップST45)。設定された動作条件は、例えば記憶部140に記憶される。
[2]第2の処理
第2の処理は、加熱温度が一定である場合に、原料MAの種類に応じて添加物カートリッジ501を設定する処理である。加熱温度が一定の場合とは、例えば、加熱部84の仕様により加熱温度の変更が容易でない場合や、設定可能な加熱温度の範囲が狭い場合等が挙げられる。
図16は、添加物設定データ123の一例としての添加物設定データ123bの構成例を示す模式図である。また、図17はシート製造装置100の動作を示すフローチャートであり、ステップST15で実行される第2の処理を示す。
図16に示す添加物設定データ123bは、供給部10が備える各々のスタッカー11に対応付けて、原料MAの種類(紙種)、印字比率、加熱部84の加熱温度、及び、使用する添加物カートリッジ501を示す情報を含む。添加物カートリッジ501を示す情報は、IC521の識別情報であってもよい。
図16の添加物設定データ123bは、加熱部84の加熱温度が4種類の原料MAについて共通の場合に使用される。添加物設定データ123bは、印字比率が20%未満のPPC用紙、印字比率が20%以上のPPC用紙、樹脂を含む再生紙、及びクラフト紙の各々について、使用する添加物カートリッジ501を設定する。加熱温度が共通の温度Th27に設定されるため、原料MAの種類ごとに、溶融結合に必要な熱量を満たすように、添加物カートリッジ501が選択される。
第2の処理では、同色の添加物を収容する複数の添加物カートリッジ501から、いずれかの添加物カートリッジ501が選択される。例えば、同色の添加物を収容する複数の添加物カートリッジ501が添加物供給部52に装着される場合が挙げられる。また、制御部150は、第2の処理で、添加物供給部52に装着されていない添加物カートリッジ501を含む複数の添加物カートリッジ501から、いずれかを選択してもよい。この場合、報知部164等によりユーザーに添加物カートリッジ501の交換を案内する構成であってもよい。
図16の例では、原料MAの種類に対応して1つの添加物カートリッジ501が設定される。
添加物設定データ123bが含む加熱温度の設定値Th27は、読取データ124に含まれる温度データに対する温度差、或いは温度の補正値であってもよいが、ここでは原料MAの種類や加熱部84の仕様に対応する固定値とする。
図17は、添加物設定データ123bに基づき、動作条件を設定する処理を示す。
制御部150は、ステップST41と同様に、ステップST14で取得した操作内容に基づき、シートSの製造に使用する原料MAの種類を特定する(ステップST51)。制御部150は、添加物設定データ123bを参照して、加熱温度の設定値を取得する(ステップST52)。
制御部150は、ステップST51で特定した原料MAの種類、及び、ステップST52で特定した加熱温度に基づき、添加物設定データ123bに従って、使用する添加物カートリッジ501を決定する(ステップST53)。具体的には、制御部150は、加熱温度の設定値と原料MAの種類とに対応する1の添加物カートリッジ501を選択する。
制御部150は、添加物カートリッジ501、添加物カートリッジ501からの添加物の添加量、及び、加熱温度を、製造部102の動作条件として設定する(ステップST54)。設定された動作条件は、例えば記憶部140に記憶される。
[3]第3の処理
図18は、シート製造装置100の動作を示すフローチャートであり、ステップST15で実行される第3の処理を示す。
第3の処理は、第1の処理と第2の処理とを組み合わせた処理である。第3の処理では、シート製造装置100の加熱温度の基準値あるいは許容される温度範囲が設定される。制御部150は、加熱温度が基準値の近傍または温度範囲内となるように、原料MAの種類に合わせて動作条件を設定する。
すなわち、制御部150は、ステップST14で取得した操作内容に基づき、シートSの製造に使用する原料MAの種類を特定する(ステップST61)。制御部150は、添加物供給部52に装着された添加物カートリッジ501のうち、使用する添加物カートリッジ501を特定する(ステップST62)。添加物カートリッジ501は、例えば、シート設定部163の色設定部163aの操作に基づき特定される。ここで、制御部150は、特定した添加物カートリッジ501から供給する単位時間当たりの添加物の量を特定してもよい。
制御部150は、添加物設定データ123に設定される加熱温度の設定値を取得する(ステップST63)。ステップST63で取得される設定値は、加熱温度の基準となる温度あるいは許容される温度範囲である。
制御部150は、読取データ124を参照し、ステップST62で特定した添加物カートリッジ501のIC521から読み取った温度データを取得する(ステップST64)。
制御部150は、原料MAの種類、加熱温度の設定値、及び、ステップST64で取得した温度データに基づき、加熱部84の加熱温度を決定する(ステップST65)。ステップST65で、制御部150は、添加物設定データ123において、原料MAに対応する加熱温度と添加物カートリッジ501の組合せを決定する。
制御部150は、添加物カートリッジ501、添加物の添加量、加熱温度を、製造部102の動作条件として設定する(ステップST66)。設定された動作条件は、例えば記憶部140に記憶される。
制御部150は、ステップST15において、第1~第3の処理のいずれかを実行する。制御部150は、第1~第3の処理から、実行する処理を選択可能な構成であってもよい。この場合、制御部150は、操作画面160の操作、或いは、事前の設定に従って、実行する処理を選択し、選択した処理をステップST15で実行する。また、制御部150は、第1~第3の処理のうちいずれか1または2の処理のみを実行可能な構成であってもよい。
図12に戻り、制御部150は、起動シーケンスを実行する(ステップST16)。起動シーケンスで、制御部150は、センサーI/F114に接続された各種センサーの初期化、及び、検出開始のための処理を実行する。また、起動シーケンスは、駆動部I/F115に接続された各駆動部の動作の初期化、及び、シートSの製造を開始することが可能な状態に各駆動部を移行させる制御を含む。この起動シーケンスにおいて、制御部150は、ヒーター339の電源をONに切り替えて昇温を開始する。また、制御部150は、加湿ヒーター345の電源をONに切り替えて昇温を開始する。
制御部150は、ヒーター339の温度が、目標温度であるステップST14で設定した加熱温度に達したか否かを判定し(ステップST17)、目標温度に達していない間は(ステップST17;No)、待機する。この待機中、制御部150は、他の駆動部の制御を行うことは勿論可能である。
目標温度に達したと判定した場合(ステップST17;Yes)、制御部150は、シート製造装置100によるシートSの製造すなわちジョブを開始する(ステップST18)。
シートSの製造開始後、制御部150は、操作画面160に対する操作により、製造部102の動作条件の変更を生じる入力を検出する(ステップST19)。具体的には、制御部150は、操作画面160によるシートSの種類の変更の入力を検出する。この入力がない場合(ステップST19;No)、制御部150は、ジョブが完了したか否かを判定する(ステップST20)。例えば、ステップST14で製造するシートSの数が指定され、指定された数のシートSの製造が完了した場合には、ジョブが完了する。停止指示ボタン161bが操作された場合もジョブが完了する。
ジョブが完了していない場合(ステップST20;No)、制御部150はステップST19に戻る。ジョブが完了した場合(ステップST20;Yes)、制御部150は、停止シーケンスを実行して、シート製造装置100を停止状態に移行させる(ステップST21)。停止シーケンスでは、製造部102の各駆動部を停止させる。
なお、ステップST21で実行する停止シーケンスは、停止指示ボタン161bの操作が行われたときに割り込み処理として実行できる。
また、ジョブの実行中に、シート設定部163の操作によってシートSの種類についての入力を検出した場合(ステップST19;Yes)、制御部150は、製造部102の動作条件を変更する条件変更処理を行う(ステップST22)。
ステップST22で実行される条件変更処理を図19に詳細に示す。
操作検出部153は、ユーザーの操作による入力を受け付ける処理を行い、操作内容を取得する(ステップST71)。
制御部150は、ステップST71で操作検出部153が取得した操作内容に基づいて、動作条件を設定する(ステップST72)。この処理はステップST15と同様である。このため、シート製造装置100は、シートSを製造している間に、原料MAの種類を変更する入力を受け付けて、動作条件を変更できる。
制御部150は、ステップST72の処理で、原料MA及び添加物の少なくともいずれかに関する設定を変更したか否かを判定する(ステップST73)。ステップST72で、制御部150は、添加物供給部52で添加される添加物、及び、供給部10から供給される原料MAが変更されるような設定の変更がされたか否かを判定する。
原料MA及び添加物の少なくともいずれかに関する設定が変更された場合(ステップST73;Yes)、制御部150は、変更後の動作条件に対応するように添加物供給部52からの添加物の供給を実行させ(ステップST74)、ステップST75に移行する。ステップST72で原料MA及び添加物の少なくともいずれかに関する設定が変更されなかった場合(ステップST74;No)、制御部150はステップST75に移行する。
ステップST75で、制御部150は、ステップST72で加熱部84の加熱温度に関する設定を変更したか否かを判定する(ステップST75)。加熱温度に関する設定が変更された場合(ステップST75;Yes)、制御部150はヒーター339を制御して加熱ローラー86の温度変更を開始する(ステップST76)。制御部150は、ヒーター339の温度が、目標温度に達したか否かを判定し(ステップST77)、加熱温度に達していない間は(ステップST77;No)、待機する。この待機中、制御部150は、他の駆動部の制御を行うことは勿論可能である。
ヒーター339の温度が目標温度に達した場合(ステップST77;Yes)、制御部150は、図12に戻る。一方、ステップST72で加熱部84の加熱温度に関する設定を変更していない場合(ステップST75;No)、図12に戻る。
図20は、シート製造装置100の動作例を示すタイミングチャートであり、特に、加熱ローラー86の温度の変化を示す。図20の縦軸は加熱ローラー86の温度を示す。この温度は、例えば温度センサー309により検出される温度である。横軸は時間の経過を示す。
縦軸における温度T1は、シートSの製造に適した温度であり、加熱制御部157が、製造するシートSの条件に合わせて設定する目標温度である。温度T2は、動作条件が変更された場合に、変更後の動作条件に対応して新たに設定される目標温度である。一方、温度T0はシート製造装置100が設置される場所の周囲温度を示し、シート製造装置100が停止した状態における加熱ローラー86の温度の目安である。すなわち、シート製造装置100が停止した状態における加熱ローラー86の温度を、温度T0として示す。
図20のタイミングチャートにおいて、温度パターンGは、加熱制御部157の制御により加熱温度を、温度T1から、温度T1より高温の温度T2に変更する場合の加熱ローラー86の温度変化を示す。時刻t1は、制御部150が加熱ローラー86の昇温を開始するタイミングである。このタイミングは、例えば、シート設定部163の操作により入力された条件が確定したタイミングであり、ステップST72で動作条件を設定(更新)した場合に、更新した動作条件が確定されるタイミングに相当する。
時刻t2は、加熱ローラー86の温度が温度T2に達したタイミングである。従って、時刻t1から時刻t2までの期間TE1が、設定された条件を実現するために要した時間である。
制御部150は、期間TE1において、シート製造装置100によるシートSの製造をいったん中断させる制御を行ってもよい。
また、期間TE1において、制御部150は、シート製造装置100の動作状態を、シートSの製造を行う状態とは異なる動作状態としてもよい。
図21は、シート製造装置100の動作状態の例を示す図である。
図中、供給部は供給部10を指し、例えば給紙モーター315の状態を指す。粗砕部は粗砕部12を指し、例えば粗砕部駆動モーター311の状態を指す。解繊部は解繊部20を指し、具体的には解繊部駆動モーター313の状態を指すが、解繊部ブロアー26の状態を含めて解繊部20の動作状態としてもよい。選別部は選別部40を指し、具体的にはドラム駆動モーターの状態を指す。第1ウェブ形成部は第1ウェブ形成部45を指し、具体的にベルト駆動モーター327の状態を指すが、捕集ブロアー28の状態を含めて第1ウェブ形成部45の動作状態としてもよい。回転体は回転体49を駆動する分断部駆動モーター329の回転状態を指す。
混合部は混合部50の状態を指し、具体的には添加物供給部52を駆動する添加物供給モーター317及び混合ブロアー56の動作状態を指す。堆積部は堆積部60を指し、具体的にはドラム部61を動かすドラム駆動モーター331の動作状態を指す。第2ウェブ形成部は第2ウェブ形成部70を指し、具体的にはベルト駆動モーター333の動作状態を指すが、サクションブロアー77の状態を含めて第2ウェブ形成部70の動作状態としてもよい。加圧部は加圧部82を指し、具体的には加圧部駆動モーター335の動作状態を指すが、加圧部82による荷重の状態を含んでもよい。加熱部は加熱部84を指し、具体的には、それぞれ加熱部駆動モーター337の動作状態、及び、ヒーター339の状態を指す。また、図中の切断部は切断部90を指し、具体的には切断部駆動モーター351の動作状態を指すが、切断部90においてシートSを搬送する搬送部(図示略)の動作状態を含んでもよい。排出部は排出部96にシートSを搬送する搬送部(図示略)の動作状態を指す。また、加湿ヒーターは加湿ヒーター345の状態を指す。
また、図21は、各駆動部の通電状態に限定されず、制御部150が各部を駆動させる制御の状態を示している。例えば、加熱部84の加熱についてのON、OFFは、ヒーター339への通電のON、OFFではなく、制御部150がヒーター339による加熱を行うための制御を行っているか否かを示す。このため、実際にヒーター339に通電されていない瞬間があったとしても、制御部150がヒーター339による加熱を行うための制御を行う間、動作状態はONである。他の駆動部についても同様である。
本実施形態のシート製造装置100の動作状態は、第1状態、第2状態、及び第3状態の3通りである。第1状態は、シート製造装置100がシートSを製造している状態であり、運転状態に相当する。また、第1状態を、通常状態と呼ぶこともできる。第1状態では、図21に示すように、シート製造装置100の各部がONとなっていて、駆動される。
これに対し、第2状態(中断状態)は、上述した待機状態に相当し、制御部150の制御によって実行される。
制御部150は、加熱ローラー86の加熱温度を変更する場合であって、変更後の加熱温度に達するまでの間、すなわち期間TE1において、シート製造装置100を第2状態に遷移させる。第2状態では、少なくとも原料MA、材料およびシートSの搬送に係る駆動部がOFFである。また、第2状態では、少なくともヒーター339がONであり、より好ましくは加湿ヒーター345がONである。
これにより、加熱ローラー86の温度が目標温度に達するまでの間、搬送を停止して、エネルギー消費を節約することができる。
制御部150は、期間TE1以外にも、シート製造装置100の動作状態を第2状態に移行させる制御を実行してもよい。制御部150は、例えば、操作画面160で待機指示ボタン161dが操作された場合に、シート製造装置100を第1状態から第2状態に遷移させてもよい。
なお、図21に示すように、停止状態では、駆動部I/F115に接続された各駆動部(ヒーター339および加湿ヒーター345を含む)がOFFとされる。
図12に戻り、制御部150は、ステップST22で動作条件を変更した後、シートSの製造を実行し(ステップST23)、ステップST20に移行する。
図20に示した例では、加熱ローラー86の加熱温度を温度T1から温度T2まで昇温する場合を示したが、いったん加熱ローラー86の加熱温度を温度T1よりも低い温度でシート製造装置100を待機させてもよい。
例えば、ステップST72で添加物の種類が変更され、添加物の変更に時間を要する場合がある。具体的には、添加物を変更するためにシート製造装置100に装着された添加物カートリッジ501を交換する場合がある。このような場合、制御部150は、添加物カートリッジ501を交換する作業が完了するまでの間、シート製造装置100によるシートSの製造を止める必要がある。本実施形態では、制御部150が、シート製造装置100を第2状態として待機し、添加物カートリッジ501の交換が完了してから第1状態に復帰する。そして、第2状態で待機する間に、いったん加熱ローラー86の加熱温度を、温度T1、T2のいずれよりも低い温度で維持する。
図22は、シート製造装置100の動作例を示すタイミングチャートであり、特に、加熱ローラー86の温度の変化を示す。図20と同様、図22の縦軸は加熱ローラー86の温度を示し、縦軸における温度T1、T2、T0は図20と同様である。
温度T3は、待機中の目標温度として加熱制御部157が設定する温度である。温度T3は温度T1及び温度T2より低温である。例えば、制御部150は、温度T1及び温度T2のうちいずれか低い側に比べ、予め設定された温度差T*(例えば10℃)だけ低い温度を温度T3とする。また、制御部150は、予め設定された温度を温度T3として設定してもよい。温度T3の設定値あるいは温度T*の設定値は、例えば設定データ121に含めて記憶部140に記憶される。
図22のタイミングチャートにおいて、温度パターンG1に示すように、加熱ローラー86の温度は、第1状態ではT1に維持される。時刻t11で第2状態への移行が開始されると、制御部150は目標温度を温度T3とするので、加熱ローラー86の温度は低下する。その後、加熱制御部157の制御により、第2状態では加熱ローラー86の温度が温度T3に維持される。
時刻t12で第1状態への移行が開始されると、加熱ローラー86の昇温が開始される。加熱ローラー86の温度がT2に達したタイミング(時刻t13)で、駆動制御部156は、原料MA、材料およびシートSの搬送に係る駆動部の動作を開始させて、シート製造装置100が第1状態に移行し、シートSの製造が開始される。
温度パターンG1において、添加物の変更が完了してからシート製造装置100がシートSの製造を開始するまでの待ち時間は、時刻t12から時刻t13までの期間TE12に相当する。
温度パターンG2は、比較例として、シート製造装置100が停止した状態から加熱ローラー86の温度を温度T2まで昇温する例を示す。停止状態で、加熱ローラー86の温度は周囲温度である温度T0に近い温度である。時刻t12で第1状態への移行が開始され、加熱ローラー86を温度T0から昇温させると、加熱ローラー86の温度が目標温度である温度T2に達するのは時刻t14となる。温度パターンG1、G2において、ヒーター339を含む加熱部84の構成は共通であるから、昇温パターン、すなわち温度上昇の傾斜はほぼ同一である。従って、温度パターンG2において、加熱ローラー86の温度は、温度パターンG1の時刻t12-t13間と同じ傾きで上昇し、加熱ローラー86の温度が目標温度T2に達する時刻t14は、時刻t13より後となる。温度パターンG1において、加熱ローラー86の昇温を開始してからシートSの製造を開始するまでの待ち時間は期間TE12に相当し、温度パターンG2における待ち時間は期間TE13に相当する。期間TE13は、期間TE12よりも長いことが明らかである。
つまり、添加物の変更など、シート製造装置100によるシートSの製造を止めて待機させる必要があり、待機する時間が長い場合には、シート製造装置100を第2状態で待機させることで、速やかにシートSの製造を開始できる。
図22に示したように、シート製造装置100は、制御部150の制御によって駆動部I/F115に接続された各駆動部が動作する第1状態と、各駆動部が停止する停止状態とに加え、第2状態を実行可能な構成としてもよい。第2状態では、シート製造装置100の一部、例えばヒーター339、及び、加湿ヒーター345の動作状態がONに維持され、例えば、加熱ローラー86の温度を、周囲温度より高温に維持できる。このため、第2状態からシートSの製造を開始すると、停止状態からシートSの製造を開始する場合に比べ、より短時間でシートSの製造が可能となり、待ち時間を短縮できる。
また、第2状態では、加湿ヒーター345をONに維持することにより、気化式加湿器343の温度を、シート製造装置100の設置場所の気温(周囲温度)よりも高温に維持できる。このため、気化式加湿器343の温度が好ましい温度に上昇するまでシートSの製造を開始しない構成であれば、ヒーター339について説明した内容と同様に、シートSの製造開始までの待ち時間を短縮できる。
また、加熱ローラー86が温度T2に達するまで、制御部150は、ヒーター339及び加湿ヒーター345以外の駆動部、より詳細には、材料、及びシートSの搬送を行う駆動部を停止させる。このため、原料MAや材料の変更に対応して加熱ローラー86の温度が変わるまで、シートSの製造を行わない。これにより、加熱部84における加熱不良となる材料を減らすことができる。
以上、説明したように、第1実施形態のシート製造装置100は、原料MAを解繊する解繊部20と、解繊部20により解繊された解繊物と添加物とを混合させる混合部50と、を備える。シート製造装置100は、混合部50により混合された混合物を加熱する加熱部84と、加熱部84の温度を制御する制御部150と、を有する。制御部150は、加熱部84の加熱温度を、解繊部20により解繊される原料MAの種類に応じた温度に設定する。
本発明のシート製造装置、及び、シート製造装置の制御方法を適用したシート製造装置100によれば、原料MAを解繊して、解繊された解繊物と添加物とを混合させて加熱する場合の加熱温度を、原料MAの種類に応じた温度に設定する。これにより、シート製造装置100においてシートを製造する条件として、加熱温度を適切に設定することができ、高品質のシートを製造できる。
また、シート製造装置100は、種類の異なる添加物を個別に収容し、添加物を混合部50に供給する添加物供給部52を備える。制御部150は、解繊部20により解繊される原料MAの種類に応じて、複数種類の添加物から少なくとも一の種類の添加物を選択し、選択した添加物を添加物供給部52により供給させる。これにより、種類の異なる添加物から原料MAに適する添加物を選択して使用できるので、より高品質のシートを製造できる。
また、シート製造装置100は、原料MAを解繊する解繊部20と、種類の異なる添加物を個別に収容し、添加物を供給する添加物供給部52と、を有する。シート製造装置100は、解繊部20により解繊された解繊物と、添加物供給部52により供給される添加物とを混合させる混合部50と、混合部50により混合された混合物を加熱する加熱部84と、を有する。また、シート製造装置100は、混合部50に供給する添加物を選択し、添加物供給部52により供給させる制御部150を有する。制御部150は、解繊部20により解繊される原料MAの種類に応じて、複数種類の添加物から少なくとも一の種類の添加物を選択して添加物供給部52により供給させる。
本発明のシート製造装置、及び、シート製造装置の制御方法を適用したシート製造装置100によれば、原料MAを解繊して、解繊された解繊物と添加物とを混合させて加熱することによりシートを製造する場合に、原料MAに適する添加物を選択して使用できる。これにより、シート製造装置100においてシートを製造する条件として、添加物の種類を適切に設定することができ、高品質のシートを製造できる。
また、制御部150は、解繊部20により解繊される原料MAの種類と、加熱部84の加熱温度とに基づいて、複数種類の添加物から少なくとも一の種類の添加物を選択する。これにより、加熱温度を原料MAの種類と添加物とに応じた適切な温度に設定し、高品質のシートを製造できる。
また、制御部150は、解繊部20により解繊される原料MAの種類に応じて、加熱部84の温度を変更する。これにより、加熱温度を原料MAの種類に応じた適切な温度に設定し、高品質のシートを製造できる。
また、シート製造装置100は、それぞれ種類の異なる添加物を収容した複数の添加物カートリッジ501を有し、添加物供給部52は、制御部150の制御によりいずれか1以上の添加物カートリッジ501から添加物を供給する。制御部150は、複数の添加物カートリッジ501のうち使用する1以上の添加物カートリッジ501を設定する。制御部150は、設定した添加物カートリッジ501のIC521から加熱温度情報を取得し、取得した加熱温度情報に基づいて加熱部84の温度を設定する。これにより、製造するシートの種類に応じた添加物を使用してシートを製造することができ、添加物に適した加熱温度を設定することができるので、高品質のシートを製造できる。
また、シート製造装置100は、原料MAの種類に係る入力を受け付けるタッチセンサー117及び操作検出部153部を備える。制御部150は、タッチセンサー117及び操作検出部153により受け付けた入力に応じて、原料MAの種類を設定する。これにより、入力に対応して原料MAの種類を設定し、設定した原料MAに適した条件でシートを製造することができ、高品質のシートを製造できる。
また、制御部150は、シート製造装置100がシートを製造している状態で、タッチセンサー117及び操作検出部153により受け付けた入力に応じて、原料MAの種類を変更する。これにより、シートを製造している状態で、入力に応じて原料MAの種類を変更することができる。
また、シート製造装置100は、原料MAを種類ごとに分別する分別部10aと、分別部10aにより分別された原料MAを種類ごとに供給する供給部10と、を備える。解繊部20は、供給部10から供給される原料MAを解繊する。これにより、原料MAを種類ごとに分別して供給することが可能なため、原料MAに適した条件でシートを製造できる。
ところで、シート製造装置100では、シートSの製造開始(ジョブ開始)からシートSの品質が安定するまでに時間を要することがある。この間に製造されたシートSは所望の品質に達していない可能性があるので、排出部96から供給部10に戻して原料MAとすることが推奨される。シートSの製造に係る条件が変更された場合、加熱ローラー86の加熱不足が生じ得るが、加熱ローラー86が昇温される間の材料やシートSの搬送を停止させることで、加熱不足となるシートSを減少させることができる。これにより、原料MAに戻されるシートSの量を減らすことができる。
シートSの製造に係る条件が変更されることにより、使用される添加物の種類、各添加物の量や割合が変化する場合、変更後の条件に基づき添加物が添加された材料がシートSとして排出部96に排出されるまでには、時間がかかる。例えば、添加物供給部52で添加する添加物の量や種類を変更すると、変更された材料が加熱部84に達するまでには、材料が添加物供給部52から加熱部84に搬送されるまでの長さに対応する時間がかかる。つまり、時刻t13において添加物供給部52と加熱部84との間に存在する材料(細分体Pと添加物の混合物、及び第2ウェブW2を含み、これを残存材料という)は、動作条件が変更される前の条件で添加物が混合された材料である。
残存材料は、変更後の動作条件に対応する温度T2で加熱されるため、材料に適した温度とは異なる温度で加熱されることになる。そこで、制御部150は、残存材量を含むシートSを、排出部96において、好ましい状態(良品)のシートSとは異なる位置に排出する動作、或いは、排出部96から供給部10に戻す動作を行ってもよい。或いは、残存材量を含むシートSが全て排出部96に排出された後、良品のシートSが排出部96に排出されるタイミングで、報知部164により報知を行ってもよい。例えば、制御部150は、排出部96から排出されるシートSの長さをカウントし、時刻t13以後に排出されたシートSの長さが、添加物供給部52と排出部96との間の距離を超えたときに、残存材量を含むシートSの排出が完了したと判定してもよい。
[第2実施形態]
図23は、本発明を適用した第2実施形態に係るシート製造装置100の動作を示すフローチャートである。第2実施形態のシート製造装置100は、上記第1実施形態で説明したシート製造装置100と共通の構成を具備するので、その構成については図示及び説明を省略する。
第2実施形態において、シート製造装置100は、図19に示した動作に代えて、図23の動作を実行する。すなわち、操作画面160の操作によりシートSの条件が変更された場合に割り込み制御で図23の動作を実行する。以下の説明で、図19の動作と共通するステップには同ステップ番号を付す。
図23に示す動作は、ステップST72で動作条件のうち加熱温度が変更された場合に、加熱ローラー86を昇温する過程で、加熱ローラー86のニップを解除する動作を行う例である。第2実施形態では、説明の便宜のため、ステップST72で加熱温度が変更されたことに対応する動作を示すが、ステップST72で添加物に関する設定の変更がされた場合に、この変更に対応する動作を実行することももちろん可能である。
操作検出部153は、ユーザーの操作による入力を受け付ける処理を行い、操作内容を取得する(ステップST71)。
制御部150は、ステップST71で操作検出部153が取得した操作内容に基づいて、動作条件を設定する(ステップST72)。
制御部150は、ステップST72の処理で、加熱部84の加熱温度に関する設定を変更したか否かを判定する(ステップST81)。加熱温度に関する設定が変更された場合(ステップST81;Yes)、制御部150は、変更後の設定に対応して目標温度を変更し(ステップST82)、これにより加熱ローラー86の温度が変更後の目標温度に合わせて昇温される。
ここで、制御部150は、第2状態への移行を開始する(ステップST83)。制御部150は、ローラー移動部341を動作させて、加熱ローラー86のニップを解除させる(ステップST84)。詳細には、第1回転体181(図3、図4)及び第2回転体182(図3、図4)を、図3に示す第1位置から、図4に示す第2位置まで移動させる。
その後、制御部150は、シート製造装置100の各部を、図21に示した第2状態に合わせて停止させる(ステップST85)。
制御部150は、ヒーター339の温度が、目標温度に達したか否かを判定し(ステップST86)、加熱温度に達していない間は(ステップST86;No)、待機する。この待機中、制御部150は、他の駆動部の制御を行うことは勿論可能である。
ヒーター339の温度が目標温度に達した場合(ステップST86;Yes)、制御部150は、ローラー移動部341を動作させて、加熱ローラー86をニップさせる(ステップST87)。詳細には、第1回転体181及び第2回転体182を、図4に示す第2位置から、図3に示す第1位置まで移動させる。
その後、制御部150は、シート製造装置100の各部を第1状態に移行させて、図12の動作に戻る。また、ステップST81で、加熱温度に関する設定が変更されていないと判定した場合(ステップST81;No)、制御部150は図12の動作に戻る。
第2状態において、材料及びシートSの搬送を停止して加熱ローラー86を昇温させる間、加熱ローラー86には第2ウェブW2が接触している。このため、変更後の加熱温度と変更前の加熱温度との差が大きい場合など、第2ウェブW2が過度の熱履歴を受け、溶融過多が発生し、例えば、加熱ローラー86への第2ウェブW2の張り付きや変色を生じる可能性がある。また、加熱ローラー86の温度をスムーズに昇温させ、加熱ローラー86の表面の温度を均一化させる観点でも、第2ウェブW2が加熱ローラー86に接触していないことが好ましい。
図23に示したように、加熱ローラー86を昇温する過程でニップを解除すると、昇温中において加熱ローラー86への第2ウェブW2の接触状態を解除することができる。これにより、加熱ローラー86の温度をスムーズに昇温させ、加熱ローラー86の表面の温度を均一化させることができる。
また、ステップST84でニップを解除してから、ステップST87で加熱ローラー86をニップさせるまでの間、加熱ローラー86を回転させてもよい。すなわち、加熱ローラー86を空回し駆動させてもよい。空回し駆動は、加熱ローラー86の表面の温度をより均一化させる効果がある。特に、図3に示した加熱体183のように、加熱ローラー86を外部の加熱手段により加熱する構成では、効果的である。
また、駆動制御部156の制御によって、シート製造装置100が第2状態から第1状態に移行する場合に、加熱部84を第2位置から第1位置へ変位させる場合、目標温度を一時的に変更してもよい。
一対の加熱ローラー86がニップされる際に、温度の低下が生じることが知られている。このため、加熱制御部157は、第2状態においてヒーター339により加熱ローラー86を昇温させる過程で、加熱ローラー86の温度を、目標温度である温度T1よりも高温まで昇温してもよい。より具体的には、加熱制御部157は、ステップST82で設定する目標温度を、ステップST72の設定に対応する目標温度よりも高温の温度(ここでは温度T2´とする)に設定する。そして、加熱ローラー86の温度が目標温度である温度T2´に達したタイミングで、駆動制御部156が加熱部84を第1位置に変位させ(ステップST87)、加熱制御部157が目標温度を、変更後の動作条件に対応する温度T2に設定する。温度T2´は、温度T2が決定された後、予め設定された温度差ΔTを温度T2に加算することで求めることができる。温度差ΔTは、ニップによる温度低下を加味して決定され、予め、例えば設定データ121に含まれて記憶しておけばよい。
これにより、加熱部84が第1位置に変位したタイミングでシート製造装置100を第1状態に移行させ、速やかにシートSの製造を開始しても、製造開始直後から、加熱部84において確実に第2ウェブW2を加熱できる。このため、加熱不良のシートSの量を減らすことができる。
停止状態からシートSの製造を開始する場合にも、同様に、加熱制御部157は、シート製造装置100が第1状態に移行するまでの間、一時的に、シートSに係る条件に対応する目標温度よりも高温に設定することで、同様の効果が得られる。
第2実施形態の動作において、シート製造装置100は、本発明のシート製造装置およびシート製造装置の制御方法が適用され、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、上記各実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明を実施する具体的態様に過ぎず、本発明を限定するものではなく、上記実施形態で説明した構成の全てが本発明の必須構成要件であることも限定されない。また、この発明は上記実施形態の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
例えば、上記各実施形態では、種類毎に原料MAを収容する収容部としてスタッカー11を備える構成を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、解繊部20により解繊された原料が外部から供給される構成であってもよい。この構成では、解繊された原料を収容したカートリッジ(図示略)を複数備え、これらのカートリッジから切り替えてドラム部41に原料としての解繊物を供給してもよい。また、原料として細分体Pを外部から管54に供給する構成としてもよい。
また、上記各実施形態のシート製造装置100は、原料MAを気中で解繊することにより材料を得て、この材料と樹脂とを用いてシートSを製造する乾式のシート製造装置100として説明した。本発明の適用対象はこれに限定されず、水等の溶媒中に繊維を含む原料を溶解または浮遊させ、この原料をシートに加工する、いわゆる湿式のシート製造装置にも適用できる。また、気中で解繊された繊維を含む材料をドラムの表面に静電気等により吸着させ、ドラムに吸着された原料をシートに加工する静電方式のシート製造装置にも適用できる。これらのシート製造装置では、シートに加工される前またはシート状の材料を搬送する工程において、上記実施形態の構成を適用可能である。これらのシート製造装置において、原料を加熱する加熱部を有する構成であれば、この加熱部の温度を制御する制御部に本発明を適用できる。
また、シート製造装置100は、シートSに限らず、硬質のシート或いは積層したシートで構成されるボード状、或いは、ウェブ状の製造物を製造する構成であってもよい。また、シートSは、パルプや古紙等を原料MAとする紙であってもよく、天然繊維または合成樹脂製の繊維を含む不織布であってもよい。また、シートSの性状は特に限定されず、筆記や印刷を目的とした記録紙(例えば、いわゆるPPC用紙)として使用可能な紙であってもよいし、壁紙、包装紙、色紙、画用紙、ケント紙等であってもよい。また、シートSが不織布である場合、一般的な不織布のほか、繊維ボード、ティッシュペーパー、キッチンペーパー、クリーナー、フィルター、液体吸収材、吸音体、緩衝材、マット等としてもよい。