JP7060948B2 - 非結晶性ポリエステル樹脂、トナー用結着樹脂及び静電荷像現像用トナー - Google Patents
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Description
本実施形態に係る非結晶性ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸成分と、多価アルコール成分とを含む原料の重縮合物であり、当該多価アルコール成分がエルカ酸ダイマージオールを含む。また、本実施形態のポリエステル樹脂は、エルカ酸ダイマージオールに由来する構造単位を含む。
本明細書においてエルカ酸ダイマージオールとは、エルカ酸ダイマーのカルボキシル基を還元してヒドロキシル基とした化学構造を有するものを言う。エルカ酸ダイマーのカルボキシル基を還元する方法としては、特に制限はないが、エルカ酸ダイマーに触媒存在下で水素添加して還元する方法が挙げられる。エルカ酸ダイマージオールとしては、ダイマー酸由来の炭素-炭素二重結合も水素化した水添ダイマージオールが特に好ましい。
エルカ酸ダイマージオール以外の多価アルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリンなどの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなどの脂環式ジオール;ビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド付加物などの芳香族ジオール類が挙げられる。
多価カルボン酸成分としては、多価カルボン酸、その酸無水物、その酸ハライド、及び、その低級(炭素数1~4)アルキルエステルを挙げることができる。多価カルボン酸成分は、一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
本実施形態の非結晶性ポリエステル樹脂は、上記エルカ酸ダイマージオールを含む上記多価アルコール成分と上記多価カルボン酸成分とを重縮合することによって得られるが、重縮合する原料が、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレートの解重合物、及びポリブチレンテレフタレートの解重合物からなる群より選択される1種以上の化合物を更に含むことができる。原料がこのような化合物を含むことにより、得られる非結晶性ポリエステル樹脂の明度を向上させることができる傾向にある。
本実施形態の非結晶性ポリエステル樹脂は、上記の多価カルボン酸成分を、直接エステル化反応又はエステル交換反応を介して、多価アルコールと重縮合反応させることによって製造することができる。
本実施形態のポリエステル樹脂は非結晶性であるため、ガラス転移点以上の温度域において明確な融点を示さないゴム状領域を有することから、樹脂の流動開始直前まで貯蔵弾性率を保持しやすい性質を有することができる。
本実施形態の非結晶性ポリエステル樹脂は、そのままで、又はポリスチレンやスチレンブタジエン系ポリマー、スチレンアクリル系ポリマー、ポリエステルなどの従来公知の非結晶性樹脂や結晶性ポリエステル樹脂と併用して、トナー用結着樹脂として用いることができ、特には静電荷像現像用トナーの結着樹脂として用いることができる。
本実施形態のトナーは、本実施形態の非結晶性ポリエステル樹脂が含まれる上記本実施形態のトナー用結着樹脂、顔料、及びワックス類等のその他の成分を含有することができる。本実施形態のトナーは静電荷像現像用トナーとして好適である。
(1)酸価
非結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、JIS K 0070(1992)の3.1の中和滴定法に準じ、測定溶媒としてテトラヒドロフラン:水=10:1(体積比)の混合溶媒を用い、この混合溶媒60mLに試料1gを溶解させて測定した。
非結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点を、JIS K7121(1987)の9.3(3)に従いDSCにより測定した。測定装置として示差走査熱量計DSC-6220(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を使用した。
<測定条件>
昇温及び降温速度:10℃/分
昇温プログラム:室温から150℃まで昇温した後、150℃で1分間保持した。次いで、0℃まで降温して0℃で1分間保持し、さらに150℃まで昇温しながら測定した。
雰囲気:窒素気流中(50mL/分)
セル:密閉アルミニウム
試料量:5mg
結晶性ポリエステル樹脂の融点は、示差走査熱量計DSC-6220(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)により得られる温度に対する熱量のグラフにおける、融解吸熱ピーク頂点の温度を融点とした。測定条件は(2)ガラス転移点の場合と同様とした。
非結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量を以下の方法にしたがって測定した。即ち、ポリエステル樹脂2mgをテトラヒドロフラン5mLに加えて溶解させ、重量平均分子量を、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)HLC-8220GPC(東ソー株式会社製)により、ポリスチレン換算にて求めた。また、重量平均分子量が500以下である成分の割合を検出ピークの面積比より算出した。
<測定条件>
検出装置:RI検出器
移動相:テトラヒドロフラン
カラム:Tsk-gel Super HZ 2000を2本とTsk-gel Sup
er HZ 4000を1本とを直列に接続した。
サンプルインジェクターとカラムの温度:40℃
RI検出器の温度:35℃
サンプル注入量:5μL
流速:0.25mL/分
測定時間:40分
高架式フローテスターCFT-500(株式会社島津製作所製)を用い、ダイ(長さ1.0mm、直径φ0.5mm)を取り付けたシリンダー内に、非結晶性ポリエステル樹脂を1.0g入れ、85℃で5分間保持した後、3℃/分で昇温しながら、プランジャーにより25kgの荷重を加えて溶融粘度を測定し、溶融粘度が10000Pa・sとなる温度、及び1000Pa・sとなる温度を測定した。
試料として非結晶性ポリエステル樹脂の10質量%THF溶液を作製した。分光光度計(UV-Vis Lambda650S、パーキンエルマー社製)を用い、THFをブランクとして、波長域400~700nmにおける試料の透過率を測定し、これをL*a*b*表色系に変換し、明度(ΔL*値)を算出した。
(7)粒度分布
非結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂の分散液中の、ポリエステル樹脂の粒度分布を、レーザー回折式粒度分布測定装置(LA-920、堀場製作所製)を用いて測定した。測定方法としては、分散液を適当な濃度になるまでセルに投入し、約2分間待って、セル内の濃度がほぼ安定になったところで測定した。
GSDv=(D84v/D16v)0.5
(8)平均円形度評価
トナーの形状をシスメックス(SYSMEX)社のFPIA-3000装備を利用して測定し、トナーの円形度を下記式に基づいて計算した。なお、円形度値は、0~1の値であり、円形度値が1に近いほど球形に近づくが、トナーの性能面から0.96~0.98程度であることが好ましい。
円形度(circularity)=2×(π×面積)0.5/周囲長
コールターカウンター(Coulter counter)であるマルチサイザIII(ベックマン-コールター社製)測定機を使用し、次の測定条件で、トナー粒子の粒度分布の指標である体積平均粒度D50vを測定した。
電解液:ISOTON II
Aperture Tube:100μm
測定粒子数:30,000
実施例及び比較例で調製したトナーに対し、定着特性(低温定着性及び耐ホットオフセット性)、耐熱保管性及びワックス分散性を下記基準に基づいて評価した。
温度25℃、55%RHの相対湿度の条件下での部屋で、実施例及び比較例のトナーを、プロセス速度と温度調節ができるように改造したDocuPrint C3350(富士ゼロックス社製)のトナーカートリッジにセットし、単色ベタ画像の現像トナー量が0.70ミリグラム/cm2となるように調整した後、未定着画像(2.5cm×4cm)を紙に印刷した。印刷画像は、カラー画像ではなく、同じシアントナーで二層を積層した画像で評価を行った。
定着性(%)=(テープ剥離後の光学密度/テープ剥離前の光学密度)×100
各温度での画像濃度を測定し、定着性が90%以上となる最低温度を最低定着温度とし、下記評価基準で評価した。最低定着温度が低いほど低温定着性が優れていることを意味する。
5 :最低定着温度≦110℃
4 :110℃<最低定着温度≦120℃
3 :120℃<最低定着温度≦130℃
2 :130℃<最低定着温度≦140℃
1 :140℃<最低定着温度
また、高温オフセット(ホットオフセット)が発生する最低温度をホットオフセット温度とし、下記評価基準で評価した。なお、ホットオフセットは、未定着画像を定着させた後、白色紙を同様の条件で定着装置に供給し、トナー汚れが白色紙に発生したかどうかを肉眼で観察して評価した。
5 :190℃≦ホットオフセット発生温度
4 :180℃≦ホットオフセット発生温度<190℃
3 :170℃≦ホットオフセット発生温度<180℃
2 :160℃≦ホットオフセット発生温度<170℃
1 :ホットオフセット発生温度<160℃
トナーを、50℃、15時間、相対湿度80%に維持した後、パウダーテスター(モデル名:PT-S、ホソカワミクロンPOWDER SYSTEMS)を使用して、以下のトナー流動性の評価に基づき、トナーの耐熱保存性を評価した。
凝集度={(a×1.0+b×0.6+c×0.2)÷2}×100
a=53ミクロンメッシュ上に残ったトナー量(g)
b=45ミクロンメッシュ上に残ったトナー量(g)
c=38ミクロンメッシュ上に残ったトナー量(g)
トナー流動性の評価基準
5 :凝集度10未満であり、非常に流動性が良好な状態
4 :凝集度10以上20未満、流動性が良好な状態
3 :凝集度20以上40未満、流動性が若干良好でない状態
2 :凝集度40以上60未満、流動性が良好でない状態
1 :凝集度60以上、流動性がなく、一部ブロッキングした状態
トナー粒子中のワックスを以下の方法で観察した。
ワックス分散性の評価基準
5 :0.5μm以下
4 :0.5μm超1μm以下
3 :1μm超3μm以下
2 :3μm超5μm以下
1 :5μm超
(実施例1)
予め十分乾燥させた反応容器に、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2.3モル付加物554g、イソフタル酸272g、後述のエルカ酸ダイマージオール32gを仕込み、窒素通気中で攪拌しながら180℃になるまで加熱した。ここで、触媒として、チタンラクテート(オルガチックスTC-310、マツモトファインケミカル社製、チタンラクテート濃度44質量%)を1.7g仕込み、250℃まで昇温し、最終的に反応容器内の圧力が2kPa以下になるまで減圧し、250℃で所定の重量平均分子量になるまで重縮合反応を行い、非結晶性ポリエステル樹脂(A-1)を得た。
表1及び2に示すように原料及び組成(仕込み量)を変えた以外は実施例1と同様にして、非結晶性ポリエステル樹脂(A-2)~(A-7)をそれぞれ得た。なお、触媒の仕込み量は、多価アルコール成分、多価カルボン酸成分及びその他の成分の合計モル数を100としたときに添加される量である。
表2に示すように原料及び組成(仕込み量)を変えた以外は、実施例1と同様にして非結晶性ポリエステル樹脂(R-1)~(R-6)をそれぞれ得た。
回収PET:重量平均分子量65,000
C18不飽和脂肪酸ダイマージオール:「プリポール 2033」(クローダ社製、商品名)
エルカ酸ダイマージオール:以下の調製例1により製造したものである。
エルカ酸ダイマー「プリポール 1004」(クローダ社製、商品名)300gに市販の銅-クロム酸化物触媒「N202D」(日揮触媒化成株式会社製)を5.63g、10質量%水酸化カリウムメタノール溶液を、水酸化カリウムがエルカ酸ダイマーに対し60ppmとなるように加え、1000mLオートクレーブ中で、水素圧25MPa、反応温度275℃、水素を5L/minで流し、反応を10時間行った。反応は液相懸濁床方式で行った。
反応終了後、反応器を冷却し、オートクレーブを開放して反応液を抜き出し、加圧濾過により触媒を回収し、反応物であるエルカ酸ダイマージオールを得た。
(製造例1)
予め十分乾燥させた反応容器に、1,9-ノナンジオール438g、1,10-デカンジカルボン酸562gを仕込み、窒素通気中で攪拌しながら150℃になるまで加熱した。ここで、触媒として、n-テトラブトキシチタンを、1,10-デカンジカルボン酸のモル数を100としたときに0.05モルとなる量で仕込み、210℃まで昇温し、最終的に反応容器内の圧力が2kPa以下になるまで減圧し、210℃で1.5時間重縮合反応を行い、結晶性ポリエステル樹脂(C)を得た。融点は、示差走査熱量計DSC-6220(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)により測定し、68℃であった。
(調製例LA-1)
4口フラスコに、非晶性ポリエステル樹脂(A-1)を60質量部、メチルエチルケトン48質量部及び2-プロピルアルコール12質量部を入れ、スリーワンモーターで攪拌させながら、樹脂を溶解させた後、5質量%アンモニア水溶液を26質量部加えた。さらに、イオン交換水94質量部を徐々に加えて、転相乳化を行った後、脱溶媒を行った。その後、イオン交換水を加えて固形分濃度を30質量%に調整し、非結晶性ポリエステル樹脂分散液(LA-1)を得た。分散液中の樹脂粒子の体積平均粒径(D50v)は155nm、体積粒度分布指標(GSDv)は1.15であった。
非結晶性ポリエステル樹脂A-2~A-7、R-1~R-6を用いた以外は非結晶性ポリエステル樹脂分散液(LA-1)と同様にして、非結晶性ポリエステル樹脂分散液LA-2~LA-7、LR-1~LR-6それぞれを得た。
(調製例LC)
4口フラスコに、結晶性ポリエステル樹脂(C)60質量部、メチルエチルケトン32質量部及び2-プロピルアルコール8質量部を入れ、スリーワンモーターで攪拌させながら、樹脂を溶解させた後、5質量%アンモニア水溶液を8質量部加えた。さらに、イオン交換水180質量部を徐々に加えて、転相乳化を行った後、脱溶媒を行った。その後、イオン交換水を加えて固形分濃度を30質量%に調整し、結晶性ポリエステル樹脂分散液(LC)を得た。分散液中の樹脂粒子の体積平均粒径(D50v)は165nm、体積粒度分布指標(GSDv)は1.23であった。
SUS製容器に、シアン顔料(PB 15:4)60質量部及びアニオン界面活性剤(ネオゲンRK、第一工業製薬社製)10質量部と、イオン交換水と、直径1mmのガラスビーズとを投入し、常温を保ちながら10時間振とうした後、ナイロンメッシュでガラスビーズを分離し、シアン顔料分散液を得た。
パラフィンワックス(HNP-9、日本精鑞社製)100質量部及びアニオン性界面活性剤(ネオゲンRK、第一工業社製)5質量部をイオン交換水に110℃で加熱溶融させた後、ホモジナイザー装置(ゴーリーン社製、商品名:ホモジナイザー、30MPa)で分散処理を行い、離型剤分散液を得た。
(実施例8)
3L反応器に、脱イオン水764g、非結晶性ポリエステル樹脂分散液(LA-1)702g、及び結晶性ポリエステル樹脂分散液(LC)112gを入れ、350rpmで撹拌した。反応器に、シアン顔料分散液77g及び離型剤分散液80gを入れた後、0.3N濃度の硝酸水溶液30g(0.3mol)及び凝集剤としてポリ塩化アルミニウム25g(濃度10質量%)をさらに入れ、ホモジナイザーを利用して撹拌し、1℃/分の速度で50℃まで加熱した。その後、0.03℃/分の速度で、凝集反応液の温度を上昇させ、凝集反応を続け、4~5μmの体積平均粒径を有する一次凝集トナーを形成した。
表3及び4に示すとおり、非結晶性ポリエステル樹脂分散液(LA-1)の代わりに、非結晶性ポリエステル樹脂分散液(LA-2)~(LA-7)又は非結晶性ポリエステル樹脂分散液(LR-1)~(LR-6)を用いた以外は実施例8と同様にして、トナー(TN-2)~(TN-16)をそれぞれ得た。
また、実施例15及び16と、比較例12及び13との対比から、エルカ酸ダイマージオールに由来する構造単位を含む非結晶性ポリエステルは、ワックスを増量させても分散性が良好であり、耐熱保管性に優れる。
Claims (7)
- 芳香族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸の酸無水物、芳香族ジカルボン酸の酸ハライド、又は芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルを含む多価カルボン酸成分と、多価アルコール成分とを含む原料の重縮合物であるポリエステル樹脂であって、前記多価アルコール成分がエルカ酸ダイマージオールを含み、
前記芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルのアルキル基の炭素数が1~4個である、非結晶性ポリエステル樹脂。 - 前記原料が、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートの解重合物、及びポリブチレンテレフタレートの解重合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、請求項1に記載の非結晶性ポリエステル樹脂。
- 前記原料における前記エルカ酸ダイマージオールの含有量が0.2~10モル%である、請求項1又は2に記載の非結晶性ポリエステル樹脂。
- 芳香族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸の酸無水物、芳香族ジカルボン酸の酸ハライド、又は芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルに由来する構造単位と、エルカ酸ダイマージオールに由来する構造単位を含み、
前記芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルのアルキル基の炭素数が1~4個である、非結晶性ポリエステル樹脂。 - 請求項1~4のいずれか一項に記載の非結晶性ポリエステル樹脂を含有する、トナー用結着樹脂。
- 請求項1~4のいずれか一項に記載の非結晶性ポリエステル樹脂が水系媒体中で分散又は乳化されている、分散液又は乳化液。
- 請求項5に記載のトナー用結着樹脂を含む、静電荷像現像用トナー。
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