JP6981612B2 - 電子写真用トナー用結着樹脂組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献2では、非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを含む結着樹脂と、第一の離型剤と、を少なくとも含有し、前記非晶性ポリエステル樹脂に含まれるアルコール成分由来の繰り返し単位に占めるビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物由来の繰り返し単位の割合が50mol%よりも多く100mol%以下であり、前記結晶性ポリエステル樹脂に含まれるアルコール成分由来の繰り返し単位に占める、1,4-ブタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールからなる群より選択される少なくとも一種由来の繰り返し単位の合計量の割合が95mol%以上であり、前記結晶性ポリエステル樹脂に含まれるカルボン酸成分由来の繰り返し単位に占める、テレフタル酸由来の繰り返し単位の割合が3mol%以上20mol%以下であり、1,10-デカンジカルボン酸及び1,8-オクタンジカルボン酸からなる群より選択される少なくとも一種由来の繰り返し単位の合計量の割合が80mol%以上97mol%以下である静電荷像現像用トナーが記載されている。
帯電安定性改善のための手段として、結晶性ポリエステル樹脂の原料として、テレフタル酸(TPA)等の高いガラス転移温度の樹脂が得られる傾向にある芳香族カルボン酸を同時に重縮合することが知られているが(特許文献1)、未だ不十分である。
本発明は、優れた低温定着性及び帯電安定性を有する電子写真用トナー用結着樹脂組成物、電子写真用トナー、及び結晶性ポリエステル樹脂を提供する。
すなわち、本発明は、以下の〔1〕〜〔3〕に関する。
〔1〕結晶性ポリエステル樹脂Cと非晶質樹脂Aとを含有する電子写真用トナー用結着樹脂組成物であって、
前記結晶性ポリエステル樹脂Cが、炭素数が2以上14以下である脂肪族ジオールを60モル%以上95モル%以下と芳香族アルコールを5モル%以上40モル%以下含むアルコール成分と、炭素数が6以上14以下である脂肪族ジカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物である、電子写真用トナー用結着樹脂組成物。
〔2〕〔1〕の結着樹脂組成物を含有する、電子写真用トナー。
〔3〕炭素数が2以上14以下である脂肪族ジオールを60モル%以上95モル%以下と芳香族アルコールを5モル%以上40モル%以下含むアルコール成分と、炭素数が6以上14以下である脂肪族ジカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分とのを重縮合物である、結晶性ポリエステル樹脂。
また、上記効果に加えて、優れた保存性及び画像濃度を有する電子写真用トナー用結着樹脂組成物、電子写真用トナー、及び結晶性ポリエステル樹脂を提供できる。
本発明の電子写真用トナー用結着樹脂組成物(以下、単に「結着樹脂組成物」ともいう)は、結晶性ポリエステル樹脂Cと非晶質樹脂Aとを含有する。
結晶性ポリエステル樹脂Cは、炭素数が2以上14以下である脂肪族ジオールを60モル%以上95モル%以下と芳香族アルコールを5モル%以上40モル%以下含むアルコール成分と、炭素数が6以上14以下である脂肪族ジカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分とのを重縮合物である。
本発明によれば、優れた低温定着性及び帯電安定性を有する電子写真用トナー用結着樹脂組成物が得られる理由は定かではないが以下のように考えられる。
さらに、芳香族アルコールの導入による表面エネルギー低下作用によって、結晶性ポリエステル樹脂の分散性が向上するため、優れた保存性を示し、更には、顔料分散性も向上するため、優れた画像濃度を示す。
樹脂が結晶性であるか非晶質であるかについては、結晶性指数により判定される。結晶性指数は、後述する実施例に記載の測定方法における、樹脂の軟化点と吸熱の最大ピーク温度との比(軟化点(℃)/吸熱の最大ピーク温度(℃))で定義される。結晶性樹脂とは、結晶性指数が0.6以上1.4未満、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、好ましくは1.2以下の樹脂である。非晶質樹脂とは、結晶性指数が1.4以上、又は0.6未満の樹脂である。結晶性指数は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。
「カルボン酸化合物」とは、そのカルボン酸のみならず、反応中に分解して酸を生成する無水物、及びカルボン酸のアルキルエステル(アルキル基の炭素数1以上3以下)も含む概念である。
カルボン酸化合物がカルボン酸のアルキルエステルである場合、カルボン酸化合物の炭素数には、エステルのアルコール残基であるアルキル基の炭素数を算入しない。
「結着樹脂」とは、結晶性ポリエステル樹脂C、及び非晶質樹脂Aを包含するトナー中に含まれる樹脂成分を意味する。
結晶性ポリエステル樹脂C(以下単に「樹脂C」ともいう)は、優れた低温定着性及び帯電安定性を得る観点から、並びに、優れた保存性及び画像濃度を得る観点から、炭素数が2以上14以下である脂肪族ジオールを60モル%以上95モル%以下と芳香族アルコールを5モル%以上40モル%以下含むアルコール成分と、炭素数が6以上14以下である脂肪族ジカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物である。
アルコール成分は、優れた低温定着性及び帯電安定性を得る観点から、並びに、優れた保存性及び画像濃度を得る観点から、炭素数2以上14以下である脂肪族ジオールを60モル%以上95モル%以下と芳香族アルコールを5モル以上40モル%以下含む。
脂肪族ジオールの炭素数は、低温定着性、帯電安定性、保存性及び画像濃度をより向上させる観点から、2以上、好ましくは4以上、より好ましくは6以上であり、そして、14以下、好ましくは12以下である。
脂肪族ジオールとしては、α,ω-脂肪族ジオールが好ましい。
α,ω-脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオールが挙げられる。これらの中でも、低温定着性、帯電安定性、保存性及び画像濃度をより向上させる観点から、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,12-ドデカンジオールが好ましく、保存性を向上させる観点から、1,12-ドデカンジオールがより好ましい。
脂肪族ジオールの量は、低温定着性、帯電安定性、保存性及び画像濃度をより向上させる観点から、アルコール成分中、60モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上であり、そして、95モル%以下であり、好ましくは90モル%以下である。
(式中、OR1及びR2Oはオキシアルキレン基であり、R1及びR2はそれぞれ独立にエチレン基又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは4以下である)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物である。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、ビスフェノールA〔2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〕のプロピレンサイド付加物(以下、「BPA-PO」ともいう)、ビスフェノールAのエチレンサイド付加物(以下、「BPA-EO」ともいう)が挙げられる。これらの中でも、ビスフェノールAのエチレンサイド付加物がより好ましい。これらのビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は、1種又は2種以上を用いてもよい。
芳香族アルコールの量は、優れた低温定着性及び帯電安定性を得る観点から、並びに、優れた保存性及び画像濃度を得る観点から、アルコール成分中、5モル%以上、好ましくは8モル%以上、より好ましくは10モル%以上であり、そして、40モル%以下、好ましくは35モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは25モル%以下、更に好ましくは20モル%以下である。
これらのアルコール成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
脂肪族ジカルボン酸化合物の炭素数は、低温定着性、帯電安定性、保存性及び画像濃度をより向上させる観点から、6以上、好ましくは8以上であり、そして、低温定着性及び帯電安定性をより向上させる観点から、14以下、好ましくは12以下、より好ましくは10以下である。
脂肪族ジカルボン酸化合物としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、又は、これらの無水物、これらのアルキルエステル(アルキル基の炭素数1以上3以下)が挙げられる。これらの中でも、低温定着性、帯電安定性、保存性及び画像濃度をより向上させる観点から、直鎖脂肪族ジカルボン酸が好ましく、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸がより好ましく、アジピン酸、セバシン酸が更に好ましく、セバシン酸が更に好ましい。これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
芳香族カルボン酸化合物としては、例えば芳香族モノカルボン酸化合物、芳香族ジカルボン酸化合物、及び3価以上の多価芳香族カルボン酸化合物が挙げられる。
芳香族モノカルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、p−ターシャリーブチル安息香酸又は、そのアルキルエステル(アルキル基の炭素数1以上3以下)が挙げられる。これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
芳香族ジカルボン酸化合物としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、又は、これらの無水物、これらのアルキルエステル(アルキル基の炭素数1以上3以下)が挙げられる。
3価以上の多価芳香族カルボン酸化合物としては、例えば、ピロメリット酸、トリメリット酸、又は、これらの無水物、これらのアルキルエステル(アルキル基の炭素数1以上3以下)が挙げられる。これらの中でもトリメリット酸又はトリメリット酸無水物が好ましい。
これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
樹脂Cの結晶化度は、低温定着性、帯電安定性、保存性及び画像濃度をより向上させる観点から、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、好ましくは60%以上であり、そして、100%以下、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは70%以下である。
樹脂Cは、例えば、樹脂Cの製造時に脂肪族アルコールと脂肪族ジカルボン酸化合物を重縮合した後に芳香族アルコールを添加し重縮合し、樹脂Cの末端に芳香族アルコールを縮合させることで、上記の範囲の結晶化度とすることができる。なお、結晶化度は、実施例に記載の方法により求められる。
樹脂Cの融点は、低温定着性、帯電安定性、保存性及び画像濃度をより向上させる観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下、更に好ましくは110℃以下、更に好ましくは100℃以下であり、そして、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上である。
樹脂Cは、例えば、アルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合により得られる。
樹脂Cの製造方法は、低温定着性、帯電安定性、保存性及び画像濃度をより向上させる観点から、好ましくは下記工程1及び工程2を含む。
工程1:炭素数2以上14以下の脂肪族ジオールを好ましくは80モル%以上含むアルコール成分A-1と、炭素数6以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物とを重縮合する工程
工程2:得られた重縮合物の水酸基価が好ましくは10mgKOH/g以下になった時点以降に、芳香族アルコールを好ましくは80モル%以上含むアルコール成分A-2を添加し、さらに重縮合する工程
なお、樹脂Cは、上記の工程1及び工程2を含む製造方法で得られるものであることが好ましい。
重縮合の温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは160℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは230℃以下である。
なお、重縮合は、不活性ガス雰囲気中にて行ってもよい。
アルコール成分A-2である芳香族アルコールの含有量は、低温定着性、帯電安定性、保存性及び画像濃度をより向上させる観点から、好ましくは80モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下であり、そして、好ましくは100質量%である。
芳香族アルコールの添加後、さらに重縮合するが重合条件は工程1で示すとおりである。
非晶質樹脂A(以下、単に「樹脂A」ともいう)としては、例えば、非晶質ポリエステル樹脂、変性された非晶質ポリエステル系樹脂が挙げられる。変性された非晶質ポリエステル系樹脂としては、例えば、非晶質ポリエステル樹脂のウレタン変性物、非晶質ポリエステル樹脂のエポキシ変性物、非晶質ポリエステル樹脂セグメントとビニル系樹脂セグメントとを含む複合樹脂が挙げられる。これらの中でも、非晶質ポリエステル樹脂、即ち、変性されていない非晶質ポリエステル樹脂が好ましい。
アルコール成分としては、例えば、芳香族ジオール、直鎖又は分岐の脂肪族ジオール、脂環式ジオール、3価以上の多価アルコールが挙げられる。これらの中でも、芳香族ジオールが好ましい。
芳香族ジオールは、好ましくはビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物であり、より好ましくは式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物である。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、ビスフェノールA〔2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〕のポリオキシプロピレン付加物、ビスフェノールAのポリオキシエチレン付加物が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いてもよい。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の量は、アルコール成分中、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、更に好ましくは100モル%である。
直鎖又は分岐の脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが挙げられる。
脂環式ジオールとしては、例えば、水素添加ビスフェノールA〔2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン〕、水素添加ビスフェノールAの炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイド(平均付加モル数2以上12以下)付加物が挙げられる。
3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールが挙げられる。
これらのアルコール成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
芳香族ジカルボン酸化合物としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、又は、これらの無水物、これらのアルキルエステル(例えば、アルキル基の炭素数1以上3以下)が挙げられる。これらの中でも、テレフタル酸が好ましい。
芳香族ジカルボン酸化合物の量は、カルボン酸成分中、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上であり、そして、100モル%以下である。
これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸化合物の量は、カルボン酸成分中、好ましくは10モル%以上、より好ましくは15モル%以上、更に好ましくは20モル%以上であり、そして、50モル%以下である。
3価以上の多価カルボン酸化合物の量は、カルボン酸成分中、好ましくは3モル%以上、より好ましくは10モル%以上、更に好ましくは15モル%以上であり、そして、好ましくは40モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは25モル%以下である。
樹脂Aの酸価は、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは2.5mgKOH/g以上、更に好ましくは4mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下である。
前述の非晶質樹脂Aの中でも、低温定着性を向上させる観点から、軟化点が10℃以上異なる2種以上の樹脂を含むことが好ましい。軟化点の高い方の樹脂を非晶質樹脂H(以下、単に「樹脂H」ともいう)、軟化点の低い方の樹脂を非晶質樹脂L(以下、単に「樹脂L」ともいう)とする。
結着樹脂組成物は、荷電制御剤を含有していてもよい。
荷電制御剤は、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリヱント化学工業株式会社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリヱント化学工業株式会社製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成工業株式会社製)等;スチレン−アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」(藤倉化成株式会社製)等が挙げられる。
これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。
荷電制御剤の中でも、負帯電性荷電制御剤が好ましく、ベンジル酸化合物の金属化合物又はサリチル酸化合物の金属化合物がより好ましい。
結着樹脂組成物は、着色剤を含有していてもよい。
着色剤としては、染料、顔料のいずれであってもよく、好ましくは顔料である。具体的には、例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエローが挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。
結着樹脂組成物は、離型剤を含有していてもよい。
離型剤は、好ましくはワックスである。離型剤としては、例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス;マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス等の炭化水素系ワックス又はそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス又はそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。
離型剤の融点は実施例に記載の方法による。
トナーは、前述の結着樹脂組成物を含有し、好ましくは前述の結着樹脂組成物を含有するトナー粒子を含有する。各成分の好適含有量は、前述の結着樹脂組成物における好適な含有量と同様である。
トナー粒子の体積中位粒径(D50)は、高画質の画像を得る観点から、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは9μm以下、更に好ましくは8μm以下である。
外添剤としては、例えば、疎水性シリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化セリウム、カーボンブラック等の無機材料微粒子、及びポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、シリコーン樹脂等のポリマー微粒子が挙げられる。これらの中でも、疎水性シリカが好ましい。
外添剤を用いる場合、外添剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。
トナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法、乳化凝集法等の公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。
工程1:樹脂C及び樹脂Aを含むトナー原料を溶融混練する工程、及び
工程2:工程1で得られた溶融混合物を粉砕、分級しトナー粒子を得る工程
を含む。
溶融混練の温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上であり、そして、好ましくは160℃以下、好ましくは140℃以下である。
工程1の溶融混練には、密閉式ニーダー、一軸押出機、又は二軸押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができる。結晶を溶融混合する観点から、高温条件に設定することのできる二軸押出機が好ましい。
工程1で得られた溶融混合物を、粉砕が可能な程度に冷却した後、続く工程2に供する。
粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、例えば、ハンマーミル、アトマイザー、ロートプレックスが挙げられる。微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、例えば、流動層式ジェットミル、衝突板式ジェットミル、回転型機械式ミルが挙げられる。粉砕効率の観点から、流動層式ジェットミル、及び衝突板式ジェットミルを用いることが好ましく、衝突板式ジェットミルを用いることがより好ましい。
トナーは、必要に応じて、流動化剤等を外添剤としてトナー粒子表面に添加処理する。
樹脂等の各物性値については次の方法により測定した。
樹脂の酸価及び水酸基価は、JIS K0070:1992の方法に基づき測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070:1992の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
(1)軟化点
フローテスター「CFT-500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
(2)吸熱の最大ピーク温度
示差走査熱量計「Q-100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、20℃から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した試料をそのままの温度で1分間維持し、その後、昇温速度10℃/分で180℃まで昇温しながら測定する。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最大ピーク温度とする。
(3)ガラス転移温度
示差走査熱量計「Q-100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却する。次に昇温速度10℃/分で150℃まで昇温しながら測定する。吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
以下の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、樹脂の重量平均分子量Mwを求める。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、樹脂をクロロホルムに溶解させる。ついで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター「FP-200」(住友電気工業株式会社製)を用いて濾過して不溶成分を除き、試料溶液とする。
(2)分子量測定
下記装置を用いて、溶離液としてクロロホルムを、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定化させる。そこに試料溶液100μLを注入して測定する。試料の分子量は、あらかじめ作製した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の分子量が既知の単分散ポリスチレン(東ソー株式会社製;2.63×103、2.06×104、1.02×105、ジーエルサイエンス株式会社製;2.10×103、7.00×103、5.04×104)を標準試料として作成したものを用いる。
測定装置:「CO-8010」(東ソー株式会社製)
分析カラム:「GMHXL」+「G3000HXL」(いずれも東ソー株式会社製)
示差走査熱量計「Q100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温した後、200℃から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次いで、試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定し、吸熱の最大ピーク温度を融点とする。
トナー粒子の体積中位粒径(D50)は以下の方法で測定する。
測定機:「コールターマルチサイザーII」(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)5質量%電解液
分散条件:分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させる。
測定条件:ビーカーに電解液100mLと分散液を加え、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度で、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
粉末X線回折(XRD)測定装置「Rigaku RINT 2500VC X-RAY diffractometer」(株式会社リガク製)を用いて、X線源:Cu/Kα-radiation、管電圧:40kV、管電流:120mA、測定範囲:回折角(2θ)5〜40°、走査速度は5.0°/minで連続スキャン法によりピーク強度を測定する。なお、試料は、溶融状態の結晶性ポリエステル樹脂を25℃で空冷し、粉砕した直後、測定する。得られたX線回折より、下記式より算出される値を結晶性ポリエステル樹脂の結晶化度とする。
製造例C1〜C8、C53、C54、C55〔樹脂C-1〜C-8、C-53、C-54、C-55〕
表1に示すBPA-EO又はBPA-PO以外の原料モノマーを、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、140℃で2時間保温した後に140℃から200℃まで10℃/hrで昇温し、その後200℃で2時間重縮合反応させ、さらにエステル化触媒を投入し、200℃、8.0kPaにて水酸基価が3mgKOH/g以下に達するまで反応を行った。その後、BPA-EO又はBPA-POを添加し、1時間常圧で反応させた後、8kPaにて所望の軟化点まで反応を行い、結晶性ポリエステル樹脂C-1〜C-8、C-53、C-54、C-55を得た。
表に1示す原料モノマー、及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、140℃で2時間保温した後に140℃から200℃まで10℃/hrで昇温し、その後200℃で2時間縮重合反応させ、さらに200℃、8.0kPaにて所望の軟化点まで反応を行い、結晶性ポリエステル樹脂C-51、C-52を得た。
表2に示すアジピン酸以外の原料モノマー及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、210℃で1時間保温した後に210℃から235℃まで10℃/hrで昇温し、その後235℃で5時間縮重合反応させ、さらに235℃、8.0kPaにて1時間反応を行った。180℃まで冷却した後、アジピン酸を投入した。投入後、180℃に保持したまま、1時間反応を行った後、180℃から210℃まで10℃/hrで昇温し、210℃、10kPaにて所望の軟化点に達するまで反応を行って、樹脂A-1を得た。
表2に示す原料モノマー及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、210℃で1時間保温した後に210℃から235℃まで10℃/hrで昇温し、その後235℃で5時間縮重合反応させ、さらに235℃、8.0kPaにて所望の軟化点に達するまで反応を行って、樹脂A-2を得た。
実施例1〜12、比較例1〜5
結着樹脂として表3に示す配合比の樹脂を合計100質量部、負帯電性荷電制御剤「ボントロンE-81」(オリヱント化学工業株式会社製)1質量部、着色剤「Pigment Blue 15:3」(大日精化工業株式会社製)5質量部、及び離型剤「HNP-9」(日本精蝋株式会社製、パラフィンワックス、融点:80℃)2質量部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出し機を用い、ロール回転速度200r/min、ロール内の加熱温度100℃で溶融混練した。混合物の供給速度は20kg/h、平均滞留時間は約18秒であった。得られた溶融混練物を冷却、粗粉砕した後、ジェットミルにて粉砕し、分級して、体積中位粒径(D50)が8μmのトナー粒子を得た。
〔低温定着性〕
非磁性一成分現像装置「OKI MICROLINE 5400」(株式会社沖データ社製)にトナーを実装し、トナー付着量を0.45±0.03mg/cm2に調整して、4.1cm×13.0cmのベタ画像を「J紙」(富士ゼロックス株式会社製)に印字した。定着機を通過する前にベタ画像を取り出して未定着画像を得た。得られた未定着画像を「Microline3010」(株式会社沖データ社製)の定着機を改造した外部定着機にて、定着ロールの温度を100℃に設定し、240mm/secの定着速度で定着させた。その後、定着ロール温度を105℃に設定し、同様の操作を行った。これを200℃まで5℃ずつ上昇させながら、各温度で未定着画像の定着処理を行ない、定着画像を得た。各温度で定着させた画像にメンディングテープ(住友スリーエム株式会社製)を付着させた後、500gの円筒上の重石(接触面積4cm2)を載せることにより、十分にテープを定着画像に付着させた。その後、ゆっくりとメンディングテープを定着画像より剥がし、テープ剥離後の画像の光学反射密度を反射濃度計「RD-915」(マクベス社製)を用いて測定した。あらかじめテープを貼る前の画像についても光学反射密度を測定しておき、その値との比([テープ剥離後の反射密度/テープ貼付前の反射密度]×100)が最初に90%を超える定着ロールの温度を最低定着温度とし、低温定着性の指標とした。結果を表3に示す。
トナーを温度25℃、相対湿度50%の環境下で72時間放置した。
トナー0.6gとシリコーンフェライトキャリア(関東電化工業株式会社製、平均粒子径:90μm)19.4gとを50mL容のポリエチレン製の容器に入れ、ボールミルを用いて250r/minで混合し、60秒、3600秒混合後のトナーの帯電量を、以下の方法により、Q/Mメーター(EPPING社製)を用いて測定した。
所定の混合時間後、Q/Mメーター付属のセルに規定量のトナーとキャリアの混合物を投入し、目開き32μmのふるい(ステンレス製、綾織、線径:0.0035mm)を通してトナーのみを90秒間吸引した。そのとき発生するキャリア上の電圧変化をモニターし、〔90秒後の総電気量(μC)/吸引されたトナー量(g)〕の値を帯電量(μC/g)とした。
混合時間60秒後の帯電量と混合時間3600秒後の帯電量の比率(混合時間3600秒後の帯電量/混合時間60秒後の帯電量)を算出した。帯電量の比率が1に近いほど、帯電安定性に優れる。
20mL容の容器(直径約3cm)にトナー4gを入れ、温度55℃、相対湿度60%の環境下で72時間放置した。放置後、トナー凝集の発生程度を目視にて観察し、以下の評価基準より保存性を評価した。結果を表3に示す。
(評価基準)
A:48時間後及び72時間後も凝集は全く認められない。
B:48時間後で凝集は認められないが72時間後ではわずかに凝集が認められる。
C:48時間後で凝集は認められないが72時間後では明らかに凝集が認められる。
D:48時間以内で凝集が認められる。
上質紙「J紙A4サイズ」(富士ゼロックス株式会社製)に市販のプリンタ「Microline(登録商標)5400」(株式会社沖データ製)を用いて、トナーの紙上の付着量が0.42〜0.48mg/cm2となるベタ画像を出力し、印刷物を得た。
次に、定着器の温度を130℃に設定し、A4縦方向に1枚あたり1.5秒の速度でトナーを定着させて、印刷物を得た。
出力した印刷物の定着画像部分の反射画像濃度を、測色計「SpectroEye」(GretagMacbeth社製、光射条件;標準光源D50、観察視野2°、濃度基準DINNB、絶対白基準)を用いて測定した。反射画像濃度の値が大きいほど、画像濃度に優れる。
Claims (5)
- 結晶性ポリエステル樹脂Cと非晶質樹脂Aとを含有する電子写真用トナー用結着樹脂組成物を製造する方法であって、
前記結晶性ポリエステル樹脂Cが、炭素数が2以上14以下である脂肪族ジオールを60モル%以上95モル%以下と芳香族アルコールを5モル%以上40モル%以下含むアルコール成分(ただし、分子内にエステル基及びカルボキシ基を有さない)と、炭素数が6以上14以下である脂肪族ジカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物であり、
前記非晶質樹脂Aが、軟化点が10℃以上異なる2種の樹脂を含み、
下記工程1及び工程2を含む製造方法で前記結晶性ポリエステル樹脂Cを得る、電子写真用トナー用結着樹脂組成物の製造方法。
工程1:炭素数2以上14以下の脂肪族ジオールを80モル%以上含むアルコール成分A-1と、炭素数6以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物とを重縮合する工程
工程2:得られた重縮合物の水酸基価が10mgKOH/g以下になった時点以降に、芳香族アルコールを80モル%以上含むアルコール成分A-2を添加し、さらに重縮合する工程 - 前記結晶性ポリエステル樹脂Cの結晶化度が、40%以上100%以下である、請求項1に記載の電子写真用トナー用結着樹脂組成物の製造方法。
- 前記芳香族アルコールが、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物である、請求項1又は2に記載の電子写真用トナー用結着樹脂組成物の製造方法。
- 前記脂肪族ジカルボン酸化合物が、直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物である、請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真用トナー用結着樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真用トナー用結着樹脂組成物の製造方法によって得られる結着樹脂組成物を使用する、電子写真用トナーの製造方法。
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