JP6915831B2 - トナー用結着樹脂組成物 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1では、低温定着性、耐高温オフセット性及び耐ブロッキング性に優れ、良好な発色を行うことができることがトナーの特性として要求されることが記載されている。そして、特許文献1では、ガラス転移温度が50〜80℃である非結晶性ポリエステルアミドを主成分とし、融点が140〜280℃の結晶性ポリエステルセグメントとガラス転移点温度が30〜80℃である非結晶性ポリエステルセグメントとからなる重量平均分子量が2万〜20万のポリエステルブロック共重合体を含有することを特徴とするトナー用樹脂組成物が記載されている。
また、特許文献2では、トナー化した際に、耐熱保存性及び電気特性が良好で、ホットオフセット発生温度が高く、かつ低温定着性に優れることがトナーバインダーの特性として求められることが記載されている。そして、特許文献2では、ポリエステル樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)からなり、室温で(B)が(A)中に平均粒径5μm以下で分散しており、200℃まで昇温しても(B)が(A)に相溶しないことを特徴とする電子写真用ポリエステル系トナーバインダーが記載されている。
また、例えば、トナーの低温定着性を向上させるためには、トナー用結着樹脂の分子量を低下させることが知られているが、トナーの機械的強度が低下してしまうという問題がある。
機械的強度が低いトナーを使用した場合、例えば、非磁性一成分現像方式では、現像ローラと、ブレードとの間で該トナーに摩擦や圧力といった負荷がかかり、該トナーが溶融したり、割れてしまうことがある。そして、ブレードにトナーが融着すると、それに起因して現像スジの発生等、画像劣化を誘引するという問題がある(以下、該現象を「ブレードフィルミング」ともいう)。
したがって、低温定着性及び耐久性に優れるトナー、及び該トナーに用いる結着樹脂が求められている。
〔1〕アルコール成分とカルボン酸成分とポリアミドとの反応物であるトナー用結着樹脂であって、
該アルコール成分がビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物をアルコール成分全量中50モル%以上含有し、該ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物と前記ポリアミドとの質量比(BPA−AO/PA)が、1.0以上40以下である、トナー用結着樹脂。
〔2〕前記〔1〕に記載のトナー用結着樹脂を含有する、トナー用結着樹脂組成物。
〔3〕前記〔1〕に記載のトナー用結着樹脂、又は前記〔2〕に記載のトナー用結着樹脂組成物を含有する、トナー。
本発明のトナー用結着樹脂(以下、単に「結着樹脂」ともいう。)は、アルコール成分とカルボン酸成分とポリアミド(PA)との反応物であるトナー用結着樹脂であって、該アルコール成分がビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物(BPA−AO)をアルコール成分全量中50モル%以上含有し、該ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物と前記ポリアミドとの質量比(BPA−AO/PA)が、1.0以上40以下である、トナー用結着樹脂である。
本発明では、ポリアミドの存在下で、カルボン酸成分とビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含有するアルコール成分とを反応させることで、得られるトナー用結着樹脂を含有するトナーの耐久性を悪化させることなく、低温定着性を向上させることができる。
該格別な効果が奏される理由は、次のように推察される。すなわち、ポリアミドの存在下で、カルボン酸成分と該アルコール成分とを重縮合させると、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含有するアルコール成分とカルボン酸成分との反応性が向上し、得られる反応物中に残存する未反応モノマーや低分子量成分の量が低減されると考えられる。
また、ポリアミドのアミノ基とポリエステル中のカルボキシ基若しくはエステル基との反応;ポリアミドのアミノ基とカルボン酸成分中のカルボキシ基との反応;ポリアミド中のアミド基とポリエステル中のエステル基とのエステル−アミド交換反応;といった反応によりポリマー鎖中へアミド基が導入され、反応物であるポリマーの分子間同士に、一段と強固な水素結合が形成されて、該縮合樹脂を結着樹脂として含有するトナーの機械的強度が向上したことが要因であると考えられる。
また、本発明の結着樹脂は、2種以上の樹脂成分を有するハイブリッド樹脂、例えば、カルボン酸成分とアルコール成分とポリアミドとの縮重合により得られるユニットと、付加重合により得られるユニットとが部分的に化学結合、好ましくは共有結合したハイブリッド樹脂も含まれる。
次に、本発明で用いる前述の各種成分について説明する。
本発明に用いるアルコール成分は、次の一般式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物(BPA−AO)をアルコール成分全量中50モル%以上含有する。
該ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物をアルコール成分全量中50モル%以上含有することで、得られる結着樹脂を含有するトナーは、低温定着性及び耐久性が優れる。
x及びyは、アルキレンオキシドの付加モル数であって、それぞれ独立に正の数であり、x及びyの和の平均値は、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは4以下である。また、x個のOR1とy個のR2Oは、それぞれ独立に、同一であっても異なっていてもよい。
一般式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物は、好ましくはビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物(以下、「BPA−PO」ともいう。)及びビスフェノールAのエチレンオキシド付加物(以下、「BPA−EO」ともいう。)からなる群より選ばれる1種以上である。
一般式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよく、BPA−PO及びBPA−EOを併用するのが好ましい。
一般式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物の含有量は、アルコール成分全量中、50モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、より更に好ましくは98モル%以上、より更に好ましくは100モル%である。
また、BPA−PO及びBPA−EOを併用する場合、BPA−POとBPA−EOの含有量の比(モル比)BPA−PO/BPA−EOは、好ましくは60/40以上、より好ましくは65/35以上、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは85/15以下である。
一般式(I)で表される化合物以外のアルコール成分としては、例えば、脂肪族ジオール、芳香族ジオール、脂環式ジオール、3価以上の多価アルコール、又はそれらの炭素数2以上4以下のアルキレンオキシド(平均付加モル数1以上16以下)付加物が挙げられる。その例としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等の脂肪族ジオール;芳香族ジオール;水素添加ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)等の脂環式ジオール、又はそれらの炭素数2以上4以下のアルキレンオキシド(平均付加モル数2以上12以下)付加物;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ソルビタン等の3価以上の多価アルコール、又はそれらの炭素数2以上4以下のアルキレンオキシド(平均付加モル数1以上16以下)付加物等が挙げられる。
カルボン酸成分としては、例えば、ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸、並びにそれらの無水物及び炭素数1以上3以下のアルキルエステル等の誘導体が挙げられる。本明細書中では、以下に挙げるカルボン酸成分の例について、単にカルボン酸(遊離酸)の名称のみを記載している場合(実施例記載を除く)、そのカルボン酸の無水物及び炭素数1以上3以下のアルキルエステルも含めて記載されているものとする。すなわち、例えば、「トリメリット酸」と記載した場合に、「トリメリット酸、トリメリット酸無水物、及びトリメリット酸の炭素数1以上3以下のアルキルエステル」が記載されているものとする。
ジカルボン酸の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、そして、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である。
芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられ、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、1,5−ペンタン二酸、1,12−ドデカン二酸、アゼライン酸、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸等が挙げられる。
カルボン酸成分は、好ましくはフマル酸、並びに炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸からなる群より選ばれる少なくとも1種、より好ましくは炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸を含有する。該アルキル基又はアルケニル基の炭素数は、好ましくは8以上、より好ましくは10以上であり、そして、好ましくは14以下、より好ましくは16以下である。
炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸の例としては、好ましくはオクテニルコハク酸、ノネニルコハク酸、デセニルコハク酸、ウンデセニルコハク酸、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、トリデセニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、テトラプロペニルコハク酸等が挙げられる。
脂環式ジカルボン酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸を含有する場合、脂肪族ジカルボン酸の含有量は、低温定着性の観点から、カルボン酸成分中、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上であり、そして、好ましくは90モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは60モル%以下である。
3価以上のカルボン酸としては、3価のカルボン酸が好ましく、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸又はこれらの酸無水物、低級アルキル(炭素数1以上3以下)エステル等が挙げられ、これらの中では、トリメリット酸が好ましい。
3価以上のカルボン酸を含有する場合、3価以上のカルボン酸の含有量、好ましくはトリメリット酸の含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは50モル%以下、より好ましくは40モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは20モル%以下である。
なお、該モル当量比を算出する際、用いるカルボン酸がカルボン酸誘導体の場合は、そのカルボン酸誘導体の原料カルボン酸が有するカルボキシ基のモル当量に換算して算出する。すなわち、例えば、原料としてアルケニル無水コハク酸を用いている場合は、無水物でないアルケニルコハク酸が有するカルボキシ基のモル数を用いて、該モル当量比を算出する。
本発明に用いるポリアミドは、前述のとおり、得られる反応物中のポリマー鎖中に取り込まれる構造を形成する原料の一部として用いられる。
ポリアミドとしては、ジアミンとジカルボン酸(二塩基酸)との重縮合物からなるか、又はラクタム若しくはアミノカルボン酸からなるか、又はこれらの2種以上の重縮合体若しくは共重合体からなるものが挙げられる。ポリアミドとしては、脂肪族ポリアミド又は芳香族ポリアミドが挙げられ、好ましくは脂肪族ポリアミドである。
脂肪族ジアミンとしては、例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンが挙げられる。
芳香族・環状構造を有するジアミンとしては、例えば、メタキシリレンジアミンが挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、ヘプタンジカルボン酸、オクタンジカルボン酸、ノナンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸が挙げられる。
芳香族・環状構造を有するとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。
ラクタムとしては、炭素数6以上12以下のラクタム類が挙げられ、また、アミノカルボン酸としては炭素数6以上12以下のアミノカルボン酸が挙げられる。例えば、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、α−ピロリドン、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム、ε−エナントラクタム等が挙げられる。
また、用いるポリアミドの融点は、好ましくは150℃以上、より好ましくは170℃以上、更に好ましくは190℃以上であり、そして、好ましくは270℃以下、より好ましくは250℃以下、更に好ましくは240℃以下である。
本発明の結着樹脂は、前記アルコール成分が含有する前記ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物(BPA−AO)と前記ポリアミド(PA)との質量比(BPA−AO/PA)は、1.0以上40以下である。該質量比(BPA−AO/PA)が、該範囲を満たすことによって、得られるトナー用結着樹脂を含有するトナーの耐久性及び低温定着性を向上させることができる。
同様の観点から、該質量比(BPA−AO/PA)は、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上であり、そして、好ましくは35以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは20以下である。
本発明の結着樹脂のガラス転移点は、トナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、更に好ましくは50℃以上であり、そして、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下、更に好ましくは70℃以下、より更に好ましくは65℃以下である。
本発明の結着樹脂の酸価は、トナーの帯電性の観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは2mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、より更に好ましくは25mgKOH/g以下である。
本発明の結着樹脂の数平均分子量(Mn)は、トナーの低温定着性及び耐久性を向上させる観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは1,500以上、更に好ましくは2,000以上であり、そして、好ましくは6,000以下、より好ましくは5,000以下、より更に好ましくは4,000以下である。
該結着樹脂の軟化点、ガラス転移点、酸価、及び数平均分子量は、原料の種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、また、これらの値は、実施例に記載の方法により求められる。
前記結着樹脂は、前記アルコール成分と前記カルボン酸成分と前記ポリアミドとを反応させて得られる反応物である。原料であるアルコール成分及びカルボン酸成分、並びにポリアミドの好適な態様及び好適な含有量は前述のとおりである。
反応は、不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じて、エステル化触媒、エステル化助触媒、任意に重合禁止剤等の存在下、好ましくは160℃以上260℃以下の温度で反応させて製造することができる。該反応温度は、より好ましくは160℃以上、更に好ましくは180℃以上、より更に好ましくは200℃以上であり、そして、より好ましくは260℃以下、更に好ましくは250℃以下、より更に好ましくは245℃以下である。
Sn-C結合を有していない錫化合物としては、例えば、シュウ酸錫(II)、酢酸錫(II)、オクタン酸錫(II)、2−エチルヘキサン酸錫(II)、ラウリル酸錫(II)、ステアリン酸錫(II)、オレイン酸錫(II)等の炭素数2以上28以下のカルボン酸基を有するカルボン酸錫(II);オクチロキシ錫(II)、ラウロキシ錫(II)、ステアロキシ錫(II)、オレイロキシ錫(II)等の炭素数2以上28以下のアルコキシ基を有するアルコキシ錫(II);酸化錫(II);塩化錫(II)、臭化錫(II)等のハロゲン化錫(II);硫酸錫(II)が挙げられる。
これらの中では、好ましくは炭素数2以上28以下のカルボン酸基を有するカルボン酸錫(II)、より好ましくは2−エチルヘキサン酸錫(II)である。
チタン化合物としては、例えば、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)が挙げられる。
エステル化触媒の使用量は、反応性の観点から、原料モノマーであるアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは1.0質量部以下である。
エステル化助触媒の使用量は、反応性の観点から、原料モノマーであるアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
重合禁止剤としては、4−tert−ブチルカテコール等を使用することができる。
重合禁止剤の使用量は、原料モノマーであるアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.8質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。
本発明のトナー用結着樹脂組成物(以下、単に「結着樹脂組成物」ともいう。)は、前記本発明の結着樹脂を含有する。
また、本発明のトナー用結着樹脂組成物は、軟化点や結晶性の相違する複数種の樹脂が配合されていてもよく、得られるトナーの低温定着性及び耐久性を両立させる観点から、軟化点が異なる2種以上の樹脂を含むことが好ましく、軟化点が20℃以上異なる2種以上の樹脂を含むことがより好ましく、軟化点が30℃以上異なる2種以上の樹脂を含むことが更に好ましい。
本発明で、「非晶質樹脂」とは、結晶性指数の値が1.4以上、又は0.6未満の樹脂をいう。該結晶性指数は、実施例に記載の方法により求められる。
本発明の結着樹脂組成物は、軟化点が異なる非晶質樹脂H及び非晶質樹脂Lを含有し、該非晶質樹脂H及び該非晶質樹脂Lから選ばれる少なくとも1種が前記本発明の結着樹脂を含有することがより好ましく、該非晶質樹脂H及び該非晶質樹脂Lの両方が前記本発明の結着樹脂を含有することが更に好ましい。
なお、前記本発明の結着樹脂以外の該非晶質樹脂H及び該非晶質樹脂Lとしては、非晶質ポリエステルが好ましい。該非晶質ポリエステルとしては、前述の本発明の結着樹脂で例示したアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させて得られる非晶質ポリエステルが挙げられる。
軟化点の高い方の非晶質樹脂H(以下、単に「樹脂H」ともいう。)の軟化点は、得られるトナーの耐久性向上の観点から、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは130℃以上であり、そして、低温定着性向上の観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下、更に好ましくは135℃以下である。
軟化点の低い方の非晶質樹脂L(以下、単に「樹脂L」ともいう。)の軟化点は、耐久性の観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは85℃以上、更に好ましくは90℃以上であり、そして、低温定着性向上の観点から、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは110℃以下である。
結着樹脂組成物中の樹脂Hと樹脂Lとの質量比(樹脂H/樹脂L)は、得られるトナーの低温定着性及び耐久性を両立させる観点から、好ましくは10/90以上、より好ましくは20/80以上、更に好ましくは25/75以上であり、そして好ましくは60/40以下、より好ましくは50/50以下、更に好ましくは40/60以下である。
前記結着樹脂組成物は、更に、結晶性樹脂C(以下、単に「樹脂C」ともいう。)を含有することが好ましい。
本発明で、「結晶性樹脂」とは、前記結晶性指数の値が0.6以上、好ましくは0.8以上であり、そして、1.4未満、好ましくは1.2以下である樹脂をいう。該結晶性指数は、実施例に記載の方法により求められる。
樹脂Cは、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物である結晶性ポリエステルが好ましく、該アルコール成分として、前述のアルコール成分を用いることができるが、それらの中では脂肪族ジオールを含むポリエステルが好ましい。また、該カルボン酸成分としては、前述のカルボン酸成分を用いることができるが、それらの中では脂肪族ジカルボン酸を含む結晶性ポリエステルが好ましい。
樹脂Cの融点は、得られるトナーの耐久性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは65℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、そして、得られるトナーの低温定着性の観点から、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下、更に好ましくは100℃以下、より更に好ましくは90℃以下である。
結着樹脂組成物中の前記樹脂H、樹脂L及び樹脂Cの合計含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下である。なお、該合計含有量は、樹脂H、樹脂L及び樹脂Cのうち、結着樹脂組成物中に含まれる樹脂の合計含有量であり、例えば、樹脂Cを含まない場合には、樹脂H及び樹脂Lの合計含有量である。
また、前記樹脂H及び樹脂Lの合計含有量中、前記本発明の結着樹脂の含有量は、好ましくは25質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上であり、そして、100質量%以下である。
本発明のトナー(以下、単に「トナー」ともいう。)は、前述のトナー用結着樹脂、又は前述のトナー用結着樹脂組成物を含有する。
該トナーには、本発明の効果を損なわない範囲で、前述のトナー用結着樹脂又は前述のトナー用結着樹脂組成物で説明した以外の結着樹脂、例えば、スチレン−アクリル樹脂等のビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等の他の樹脂を含んでもよい。
前述の結着樹脂又は結着樹脂組成物の含有量は、該静電荷像現像用トナーの結着樹脂全量中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができる。
染料としては、アジン系染料、アントラキノン系染料、ペリノン系染料、ローダミン染料等が挙げられ、例えば、C.I.ソルベントブラック5、C.I.ソルベントブラック7、スピリットブラックSB、トルイジンブルー、C.I.ソルベントブルー11、12、35、59、74、1−アミノアントラキノン、2−アミノアントラキノン、ヒドロキシエチルアミノアントラキノン、C.I.ソルベントバイオレット47、ソルベントオレンジ60、ソルベントオレンジ78、ソルベントオレンジ90、ソルベントバイオレット29、ソルベントレッド135、ソルベントレッド162、ソルベントレッド179、ローダミン−Bベース、等が挙げられる。
無機顔料としては、カーボンブラック、金属酸化物等が挙げられる。
有機顔料としては、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。有機顔料は、好ましくは、C.I.ピグメントイエロー、C.I.ピグメントレッド、C.I.ピグメントオレンジ、C.I.ピグメントバイオレット、C.I.ピグメントブルー、及びC.I.ピグメントグリーンからなる群から選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられる。
着色剤の含有量は、静電荷像現像用トナーの画像濃度を向上させる観点から、結着樹脂の合計100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
離型剤としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス;マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス等の炭化水素系ワックス又はそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス又はそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらの離型剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
離型剤の融点は、トナーの転写性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下である。
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8.0質量部以下、更に好ましくは7.0質量部以下である。
荷電制御剤は、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロン(登録商標)N−01」、「ボントロン(登録商標)N−04」、「ボントロン(登録商標)N−07」、「ボントロン(登録商標)N−09」、「ボントロン(登録商標)N−11」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロン(登録商標)P−51」(オリヱント化学工業株式会社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPYCHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP−B」(オリヱント化学工業株式会社製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ−2001」、「PLZ−8001」(以上、四国化成工業株式会社製)等;スチレン−アクリル系樹脂、例えば「FCA−701PT」(藤倉化成株式会社製)等が挙げられる。
前記トナーには、流動性を向上させるために、更に外添剤を含有させてもよい。該外添剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化スズ、酸化亜鉛等の無機微粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の樹脂粒子等の有機微粒子が挙げられる。前記静電荷像現像用トナーは、これらの外添剤を単独で又は2種以上を含有していてもよい。これらの外添剤の中では、シリカが好ましく、疎水化処理された疎水性シリカであることがより好ましい。
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
該外添剤の平均粒子径は、トナーの帯電性や流動性の観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上であり、そして、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下、更に好ましくは90nm以下である。該外添剤の平均粒子径の値は、実施例に記載の方法により求められる。
外添剤を用いて、トナー母粒子の表面処理を行う場合、該外添剤の含有量は、トナーの帯電性や流動性の観点から、トナー母粒子100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下である。
前記トナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性を向上させる観点から、溶融混練法による粉砕トナーとして製造することが好ましく、次の工程1及び2を有する製造方法であることがより好ましい。
工程1:前記結着樹脂又は結着樹脂組成物(以下、単に「結着樹脂等」ともいう。)及び着色剤、必要に応じて、離型剤、電荷調整剤等の原料を混合し、溶融混練して混練物を得る工程、及び
工程2:工程1で得られた混練物を粉砕する工程
工程1は、前記結着樹脂等及び着色剤、必要に応じて、離型剤、電荷調整剤等の各原料を混合し、溶融混練して混練物を得る工程である。該結着樹脂等及び着色剤、離型剤、電荷調整剤等の各原料は、本発明の結着樹脂、結着樹脂組成物及びトナーについて前述したものと同様のものが挙げられ、それらの好適な態様及び配合量(前述の含有量と同一量である。)も同様である。
工程1で、溶融混練は、密閉式ニーダー、一軸若しくは二軸の混練機、連続式オープンロール型混練機等の混練機を用いて行うことができるが、着色剤等の結着樹脂組成物中での分散性を向上させる観点から、二軸混練機で行うのが好ましい。二軸混練機としては、二本の混練軸をバレルが覆い隠す閉鎖型の混練機であり、混練軸がスクリューである二軸押出機が挙げられる。
工程1で得られた混練物は粉砕可能な硬度に達するまで適宜冷却し、工程2に供する。
工程2は、工程1で得られた混練物を粉砕する工程である。
工程1で得られた混練物の粉砕は、一段階で行ってもよく、又は多段階に分けて行ってもよい。例えば、混練物を、例えば、1mm以上5mm以下に粗粉砕した後、更に所望の粒径に微粉砕してもよい。
粉砕に用いられる粉砕機は特に限定されないが、例えば、粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、ハンマーミル、アトマイザー、ロートプレックス等が挙げられる。
また、微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、流動層式カウンタージェットミル、衝突板式ジェットミル等のジェットミル、回転型機械式ミル等が挙げられる。
粉砕物は、更に分級し、所望の粒径に調整することが好ましい。
分級に好適に用いられる分級機としては、気流式分級機、慣性式分級機、篩式分級機等が挙げられる。分級の際、粉砕が不十分で除去された粉砕物は再度粉砕工程に供してもよく、必要に応じて粉砕と分級を繰り返してもよい。
工程2で得られたトナー母粒子は、トナーとしてそのまま用いることもできるが、工程2で得られるトナー母粒子を更に外添剤を用いて処理してもよい。
該処理方法は特に限定されないが、トナー母粒子と外添剤とを、回転羽根等の攪拌具を備えた混合機を用いて処理することが好ましく、好ましくはヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速混合機、より好ましくはヘンシェルミキサーを用いて混合する方法が挙げられる。
該トナー母粒子及び該外添剤は、本発明の静電荷像現像用トナーについて前述したものと同様のものが挙げられ、トナー母粒子及び外添剤の好適な態様及び添加量も同様である。
各樹脂の酸価は、JIS K 0070−1992に記載の方法に基づき測定した。ただし、測定溶媒のみJIS K 0070−1992に規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
(1)軟化点
フローテスター「CFT−500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
(2)結晶性指数
示差走査熱量計「Q100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、室温(25℃)から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで試料をそのまま1分間静止させ、その後、昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度(1)として、(軟化点(℃))/(吸熱の最大ピーク温度(1)(℃))により、結晶性指数を求めた。
(3)融点及びガラス転移点
示差走査熱量計「Q100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで、試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度(2)とした。
結晶性ポリエステルの場合には、該吸熱の最大ピーク温度(2)を融点とした。
また、非晶質ポリエステルの場合に、該ピークが観測される時はそのピークの温度を、該ピークが観測されずに段差が観測される時は該段差部分の曲線の最大傾斜を示す接線と該段差の低温側のベースラインの延長線との交点の温度をガラス転移点とした。
なお、原料ポリアミドの融点を測定する際は、熱量測定開始前に行う樹脂の溶融温度を300℃まで昇温した。
以下の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、樹脂の数平均分子量(Mn)を求めた。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、試料をテトラヒドロフラン(非晶質樹脂)又はクロロホルム(結晶性樹脂)に、40℃で溶解させる。次いで、この溶液を孔径0.20μmのPTFEタイプメンブレンフィルター「DISMIC(登録商標)−25JP」(東洋濾紙株式会社製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2)分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてテトラヒドロフラン(非晶質樹脂)又はクロロホルム(結晶性樹脂)を、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン〔東ソー株式会社製の「A−500」(5.0×102)、「A−1000」(1.01×103)、「A−2500」(2.63×103)、「A−5000」(5.97×103)、「F−1」(1.02×104)、「F−2」(1.81×104)、「F−4」(3.97×104)、「F−10」(9.64×104)、「F−20」(1.90×105)、「F−40」(4.27×105)、「F−80」(7.06×105)、「F−128」(1.09×106)〕を標準試料として作成したものを用いる。なお、括弧内の値は分子量を示す。
・測定装置:「HLC−8220GPC」(東ソー株式会社製)
・分析カラム:「TSKgel GMHXL」+「TSKgelG3000HXL」(いずれも東ソー株式会社製)
示差走査熱量計「DSC Q20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量した。該試料を昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで−10℃まで冷却した後、該試料を昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し測定した。そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最高ピーク温度を離型剤の融点とした。
トナーの体積中位粒径(D50)は、次のとおり測定した。
・測定装置:「コールターマルチサイザー(登録商標)III」(ベックマンコールター株式会社製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:「コールターマルチサイザー(登録商標)IIIバージョン3.51」(ベックマンコールター株式会社製)
・電解液:「アイソトン(登録商標)II」(ベックマンコールター株式会社製)
・分散液:ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン(登録商標)109P」〔花王株式会社製、HLB(グリフィン法)=13.6〕を前記電解液に溶解させ、濃度5質量%の分散液を得た。
・分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製した。
・測定条件:前記試料分散液を、前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、得られた粒度分布から体積中位粒径(D50)を求めた。
外添剤の平均粒子径は、個数平均粒子径を指し、流動化剤及び外添剤の走査型電子顕微鏡(SEM)写真から測定した、500個の粒子の粒径の数平均値を流動化剤及び外添剤の平均粒子径とした。長径と短径がある場合は、長径を指す。
非磁性一成分現像装置「MICROLINE(登録商標)5400」(株式会社沖データ製)にトナーを実装し、トナー付着量を0.45±0.03mg/cm2に調整して、4.1×13.0cmのベタ画像を「J紙」(富士ゼロックス株式会社製)に印刷した。定着機を通過する前にベタ画像を取り出して未定着画像を得た。
得られた未定着画像を、「MICROLINE(登録商標) 3010」(株式会社沖データ製)の定着機を改造した外部定着機にて、定着ロールの温度を100℃に設定し、240mm/秒の定着速度で定着させた。その後、定着ロール温度を105℃に設定し、同様の操作を行った。定着ロール温度を200℃まで5℃ずつ上昇させながら、各温度で未定着画像の定着処理を行い、定着画像を得た。
各温度で定着させた画像にメンディングテープ(「Scotch(登録商標)メンディングテープ810」(商品名)、スリーエムジャパン株式会社製)を付着させた後、500gの円柱状の重石(径φ5cm)を載せることにより、十分にテープを定着画像に付着させた。その後、ゆっくりとメンディングテープを定着画像より剥がし、テープ剥離後の画像の反射濃度を反射濃度計「RD−915」(グレタグマクベス社製)を用いて測定した。予めテープを貼る前の画像についても反射濃度を測定しておき、その値との比([テープ剥離後の反射濃度/テープ貼付前の反射濃度]×100)が最初に90%を超える時の定着ロールの温度を最低定着温度とし、低温定着性の指標とした。得られた結果を表5に示す。最低定着温度が低いほど低温定着性に優れることを示す。
非磁性一成分現像装置「MICROLINE(登録商標)5400」(株式会社沖データ製)にトナーを実装し、35℃、相対湿度50%の環境下にて、0.3%の印字率で耐刷試験を行った。
1時間毎にベタ画像を印字し、ブレードフィルミングに起因する白スジの発生がないかを観察して評価し、トナーの耐久性を評価した。該試験は、白スジの発生が確認された時点で中止し、最長で10時間まで行った。得られた結果を表5に示す。表5に示す時間が長いほど耐久性に優れることを示す。
製造例1〜5、8、11、12、13及び16
(樹脂L−1〜L−5、L−8、L−11、H−1、H−2、及びH−5の製造)
それぞれ、表1〜3に示す無水トリメリット酸を除く原料モノマー、原料ポリアミド、触媒、及び助触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10Lの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで昇温し、10時間反応を行った。反応率が80%以上に到達したのを確認し、更に、減圧下8kPaにて1時間反応を行った。220℃まで冷却した後、更に、無水トリメリット酸を添加し、減圧下8kPaにて所望の軟化点になるまで反応を行い、非晶質ポリエステルである各樹脂を得た。
なお、反応率とは、生成反応水量/理論生成水量×100の値をいう。以下、各製造例に記載の「反応率」についても同様である。
(樹脂L−6の製造)
表1に示すフマル酸、無水トリメリット酸を除く原料モノマー、原料ポリアミド、触媒、及び助触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10Lの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで昇温し、7時間反応を行った。反応率が80%以上に到達したのを確認し、180℃まで冷却を行い、フマル酸、無水トリメリット酸、及び4−tert−ブチルカテコール(原料モノマー総量100質量部に対して0.5質量部)4.0gを添加し、3時間かけて210℃に昇温した後、減圧下8kPaにて所望の軟化点まで反応を行い、非晶質ポリエステルである樹脂L−6を得た。
(樹脂L−7の製造)
表2に示す原料モノマー、原料ポリアミド、触媒、及び助触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10Lの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで昇温し、10時間反応を行った。反応率が80%以上に到達したのを確認し、減圧下8kPaにて所望の軟化点まで反応を行い、非晶質ポリエステルである樹脂L−7を得た。
(樹脂L−9、L−10、H−3、及びH−4の製造)
それぞれ、表2又は3に示す無水トリメリット酸を除く原料モノマー、原料ポリアミド、触媒、及び助触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10Lの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、180℃まで昇温し、5時間反応を行った後、230℃まで10℃/hrの速度で段階的に昇温を行った。230℃にて反応率が80%以上に到達したのを確認し、210℃まで冷却した後、更に、無水トリメリット酸を添加し、減圧下8kPaにて所望の軟化点になるまで反応を行い、非晶質ポリエステルである各樹脂を得た。
(樹脂C−1の製造)
表4に示す原料モノマー、及び触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10Lの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、140℃まで昇温し、5時間反応を行った後、200℃まで10℃/hrの速度で段階的に昇温を行った。その後、減圧下8kPaにて所望の軟化点になるまで反応を行い、結晶性ポリエステルである樹脂C−1を得た。
(樹脂C−2の製造)
表4に示す原料モノマー、触媒、及び重合禁止剤を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10Lの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、140℃まで昇温し、5時間反応を行った後、200℃まで10℃/hrの速度で段階的に昇温を行った。その後、減圧下8kPaにて所望の軟化点になるまで反応を行い、結晶性ポリエステルである樹脂C−2を得た。
実施例1〜14、及び比較例1〜4
結着樹脂として、表5に示す配合比で、各製造例で得られた樹脂L、樹脂H及び必要に応じて樹脂Cを合計100質量部含有する結着樹脂組成物に対して、着色剤「Pigment blue 15:3」(大日精化工業株式会社製)5質量部、負帯電性荷電制御剤「ボントロン(登録商標) E−81」(オリヱント化学工業株式会社製)1質量部、及び離型剤「HNP−9」(日本精▲蝋▼株式会社製、パラフィンワックス、融点:80℃)2質量部を、ヘンシェルミキサーで均一に混合し、混合物を得た。
得られた混合物を、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出機を用い、スクリュー回転速度200r/min、バレル設定温度100℃で溶融混練し、溶融混練物を得た。混合物の供給速度は20kg/hr、平均滞留時間は約18秒であった。
得られた溶融混練物を冷却、粗粉砕した後、ジェットミルにて粉砕し、分級して、体積中位粒径(D50)が8μmの粉体(トナー母粒子)を得た。
それに対して、結着樹脂組成物が含有する各結着樹脂の原料としてポリアミドを用いていない比較例1のトナーは低温定着性及び耐久性が劣っていることがわかる。
また、結着樹脂組成物として、ポリエステル樹脂の原料モノマーであるアルコール成分としてビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を用いていない結着樹脂のみを含有する比較例2のトナーも、低温定着性及び耐久性が劣っていることがわかる。
そして、結着樹脂組成物が含有する各結着樹脂の原料中、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物とポリアミドとの質量比(BPA−AO/PA)が、1.0未満である比較例3、及び40超えである比較例4は、いずれも、低温定着性及び耐久性が劣っていることがわかる。
Claims (8)
- 軟化点が異なる非晶質樹脂H及び非晶質樹脂Lを含有する、トナー用結着樹脂組成物であって、
該非晶質樹脂H及び該非晶質樹脂Lから選ばれる少なくとも1種が、アルコール成分とカルボン酸成分とポリアミドとの反応物であるトナー用結着樹脂を含有し、
該アルコール成分がビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物をアルコール成分全量中50モル%以上含有し、該ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物と前記ポリアミドとの質量比(BPA−AO/PA)が、1.0以上40以下であり、
該トナー用結着樹脂組成物が、該非晶質樹脂H及び該非晶質樹脂Lの両方に該トナー用結着樹脂を含有するものであるか、あるいは該非晶質樹脂H及び該非晶質樹脂Lのうち、一方に該トナー用結着樹脂を含有し、もう一方に非晶質ポリエステルを含有するものであり、
該非晶質ポリエステルが下記一般式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含有するアルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物である、トナー用結着樹脂組成物。
(式中、OR 1 及びR 2 Oはそれぞれ独立に炭素数1以上4以下のアルキレンオキシ基であり、x及びyはそれぞれ独立に正の数であり、x及びyの和の平均値は1以上16以下であり、x個のOR 1 とy個のR 2 Oはそれぞれ独立に、同一であっても異なっていてもよい。) - 前記ポリアミドの融点が、150℃以上270℃以下である、請求項1に記載のトナー用結着樹脂組成物。
- 前記ポリアミドが、脂肪族ポリアミドである、請求項1又は2に記載のトナー用結着樹脂組成物。
- 前記トナー用結着樹脂におけるカルボン酸成分が、3価以上の多価カルボン酸を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載のトナー用結着樹脂組成物。
- 前記トナー用結着樹脂におけるカルボン酸成分が、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載のトナー用結着樹脂組成物。
- 更に、結晶性樹脂Cを含有する、請求項1〜5のいずれかに記載のトナー用結着樹脂組成物。
- 前記結晶性樹脂Cの融点が120℃以下である、請求項6に記載のトナー用結着樹脂組成物。
- 請求項1〜7のいずれかに記載のトナー用結着樹脂組成物を含有する、トナー。
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