JP7112911B2 - 結着樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる静電荷像現像用トナーに使用される結着樹脂組成物の製造方法、結着樹脂組成物、当該結着樹脂組成物を含む静電荷像現像用トナーに関する。
電子写真の分野においては、電子写真システムの発展に伴い、高画質化及び高速化に対応した静電荷像現像用トナーの開発が要求されている。
特許文献1では、軟化点が90~120℃の結着樹脂、着色剤及び融点が60~100℃のワックスを含むトナー原料を溶融混練する工程を含むトナーの製造方法であって、前記結着樹脂がフマル酸及び/又はマレイン酸を50モル%以上含有するカルボン酸成分とアルコール成分とを縮重合させて得られる線状ポリエステルを含有してなり、前記ワックスの含有量が結着樹脂100重量部に対して4重量部以下であり、前記溶融混練を温度の異なる2本のロールを有するオープンロール型混練機を用いて、該オープンロール型混練機の混練の上流側における温度が高い方のロールにおいて、混練の上流側の設定温度が前記結着樹脂の軟化点以下、混練の下流側の設定温度がワックスの融点以上であり、上流側と下流側の設定温度の比(上流側設定温度(℃)/下流側設定温度(℃))が1.0~1.5である、電子写真用トナーの製造方法が記載されている。当該製造方法によれば、定着の際の加圧力が低くても良好な低温定着性を有し、色再現性に優れた良好なカラー画像が得られると記載されている。
特許文献2では、第一の触媒の存在下、有機ジオールと環状アルキレンカーボネートを反応させ、ポリアルキルオキシジオールを形成すること、第二の触媒の存在下、前記ポリアルキルオキシジオールと二酸試薬の1種以上をエステル化反応させること、エステル化反応による反応混合物の酸価を測定すること、得られた混合物と、不飽和二酸を重縮合し、不飽和ポリエステル樹脂を形成すること、を含むトナー樹脂の製造方法が記載されている。
特許文献3では、アルコール成分のモル比が、[芳香族系モノマー>脂肪族モノマー≧0]、酸成分のモル比が、[脂肪族系モノマー>芳香族系モノマー]となるように配合された第1の芳香族系モノマーと第1の脂肪族系モノマーから合成される第1のポリエステル樹脂を含むバインダー樹脂と、離型剤と、着色剤を含むトナー粒子を備えることを特徴とする現像剤が記載されている。当該現像剤によれば、定着オフセット性、光沢性及び高温下における保管特性を改善することが可能と記載されている。
特許文献4によれば、結晶性樹脂、非晶質樹脂、及び離型剤を含有する電子写真用トナーであって、前記結晶性樹脂が、炭素数9以上14以下の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と、炭素数9以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを重縮合させて得られる重縮合系樹脂成分と、スチレン系樹脂成分とを含む結晶性複合樹脂Cを含有し、前記非晶質樹脂が、アルコール成分と、芳香族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを重縮合させて得られる重縮合系樹脂成分と、スチレン系樹脂成分とを含む非晶質複合樹脂Aを含有し、前記トナーの平均円形度が0.940以上であり、前記トナー中の粒径が3μm以下の粒子の含有量が5.0個数%以下である、電子写真用トナーが記載されている。当該トナーによれば、低温定着性及び耐久性に優れ、定着時の用紙巻き付きが抑制されると記載されている。
特開2009-192694号公報 米国公開公報2015/0301467号 特開2009-69827号公報 特開2016-114829号公報
本発明に係る実施形態は、以下の〔1〕~〔3〕に関する。
〔1〕下記工程1及び工程2を含む、結着樹脂組成物の製造方法であって、
前記結着樹脂組成物は、酸価が14mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であるポリエステル樹脂を含み、フマル酸及びマレイン酸の合計含有量が前記結着樹脂組成物に対して700質量ppm以下であり、
下記工程1及び工程2における、下記芳香族アルコールA1と下記芳香族アルコールA2の合計量100モル部に対する、下記フマル酸及びマレイン酸の合計量は95モル部以上105モル部以下である、結着樹脂組成物の製造方法。
工程1: ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含む芳香族アルコールA1と、フマル酸及びマレイン酸から選ばれる少なくとも1種のカルボン酸化合物を混合する工程
工程2: 工程1で得られた混合物に対して、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含む芳香族アルコールA2を更に添加し、混合する工程
〔2〕〔1〕に記載の製造方法により得られた結着樹脂組成物を含む、静電荷像現像用トナー。
〔3〕ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含むアルコール成分と、フマル酸及びマレイン酸から選ばれる少なくとも1種のカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物であるポリエステル樹脂を含む、結着樹脂組成物であって、
前記ポリエステル樹脂は、酸価が14mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であり、
前記結着樹脂組成物は、フマル酸及びマレイン酸の合計含有量が前記結着樹脂組成物に対して700質量ppm以下であり、アルコール成分の合計量100モル部に対する、フマル酸及びマレイン酸の合計量は95モル部以上105モル部以下である、結着樹脂組成物。
電子写真の分野において、よりいっそう省エネルギー化を促進する観点から、優れた低温定着性が求められる。加えて、高温条件下でもトナーが融着しない耐熱保存性、印刷中にトナーが崩壊し画像上にスジが表れないようにするため高い耐久性、及び印刷により高い画像濃度が得られることが、求められる。
低温定着性を高めるために低い分子量の樹脂を用いることが考えられるが、その場合、樹脂のモノマーの一部が残存し、耐熱保存性、耐久性、及び画像濃度が損なわれるという課題を有していた。
本発明の一実施形態は、低温定着性、耐熱保存性、耐久性、及び画像濃度に優れたトナーが得られる、結着樹脂組成物の製造方法、結着樹脂組成物、当該結着樹脂組成物を含む静電荷像現像用トナーに関する。
[結着樹脂組成物の製造方法]
本発明の一実施形態に係る結着樹脂組成物(以下、「結着樹脂組成物A」ともいう)の製造方法は、下記工程1及び工程2を含む。
工程1: ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含む芳香族アルコールA1と、フマル酸及びマレイン酸から選ばれる少なくとも1種のカルボン酸化合物(以下、単に「カルボン酸化合物B」ともいう。)を混合する工程
工程2: 工程1で得られた混合物に対して、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含む芳香族アルコールA2を更に添加し、混合する工程
結着樹脂組成物Aは、酸価が14mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であるポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂A)を含み、フマル酸及びマレイン酸の合計含有量が700質量ppm以下である。
更に上記工程1及び工程2における、芳香族アルコールA1と芳香族アルコールA2の合計量100モル部に対する、フマル酸及びマレイン酸の合計量は95モル部以上105モル部以下である。
上述の本発明に係る実施形態によれば、得られるトナーの低温定着性、耐熱保存性、耐久性、及び画像濃度に優れる結着樹脂組成物の製造方法、結着樹脂組成物、当該結着樹脂組成物を含む静電荷像現像用トナーが提供される。
その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
ポリエステル樹脂は、優れた低温定着性を発揮する材料として注目されている。カルボン酸成分として、フマル酸及びマレイン酸から選ばれる少なくとも1種のカルボン酸化合物Bを含むポリエステル樹脂は、脂肪族のもつ柔軟性のため低温定着性に優れるものの、アルコール成分に対して前記カルボン酸化合物を一定量以上添加した場合は、残存カルボン酸化合物が存在するために、耐久性、保存性、及び画像濃度が低下してしまう。上記特許文献1の製造方法では、残存カルボン酸化合物を低減させているが、このためには厳しい減圧条件下及び長時間反応が必要となり、その結果、ポリエステル樹脂の軟化点が高くなりすぎてしまい、低温定着性が損なわれてしまう。
本発明の一実施形態に係る製造方法では、芳香族アルコールを、少なくとも2回に分けて添加することで、アルコールに対してカルボン酸化合物Bを一定量以上添加した場合でも残存カルボン酸化合物Bを低減させることに成功し、低温定着性を損ねることなく、耐久性、耐熱保存性及び画像濃度が両立できることを見出した。芳香族アルコールと、カルボン酸化合物Bを混合し、重縮合反応を進行させることで、カルボン酸化合物Bの反応及び昇華により当該カルボン酸はある程度まで低減させられるが、更に芳香族アルコールを添加すると、残ったカルボン酸化合物Bは、モノマーである芳香族アルコールと瞬時に反応し、オリゴマー化することが推測される。これにより、残存カルボン酸化合物Bが低減することで、着色剤分散性も向上する結果、耐熱耐久性、保存性及び画像濃度に優れると考えられる。更に、カルボン酸化合物Bがポリエステル樹脂のカルボン酸成分として含まれるため、従来持っていた優れた低温定着性も保持できる。
酸価が14mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることで、ポリエステル樹脂の分子量が適度に範囲となりつつ、残存カルボン酸化合物Bの量を低減し、優れた低温定着性、耐熱耐久性、保存性及び画像濃度が得られると考えられる。
本明細書における各種用語の定義等を以下に示す。
樹脂が結晶性であるか非晶性であるかについては、結晶性指数により判定される。結晶性指数は、後述する実施例に記載の測定方法における、樹脂の軟化点と吸熱の最高ピーク温度との比(軟化点(℃)/吸熱の最高ピーク温度(℃))で定義される。結晶性樹脂とは、結晶性指数が0.6以上1.4未満、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、好ましくは1.2以下の樹脂である。非晶性樹脂とは、結晶性指数が1.4以上、又は0.6未満、好ましくは1.5以上、又は0.5以下、より好ましくは1.6以上、又は0.5以下の樹脂である。結晶性指数は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。結晶性指数は、実施例に記載の樹脂の軟化点と吸熱の最高ピーク温度の測定方法により得られた値から算出することができる。
明細書中、「結着樹脂」とは、結着樹脂組成物Aを含む、トナー中に含まれる樹脂成分を意味する。
<工程1>
工程1では、トナーの低温定着性、耐熱保存性、耐久性、及び画像濃度の観点から、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含む芳香族アルコールA1と、フマル酸及びマレイン酸から選ばれる少なくとも1種のカルボン酸化合物を混合する。
工程1は、好ましくは、前記芳香族アルコールA1と、前記カルボン酸化合物を200℃以上230℃未満の温度T1で2時間以上5時間未満、混合する工程である。
芳香族アルコールA1は、好ましくはビスフェノールのアルキレンオキシド付加物を含み、より好ましくは式(I):
Figure 0007112911000001

〔式中、OR及びROはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン基及びプロピレン基から選ばれる少なくとも1種であり、x及びyはアルキレンオキシドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上であり、好ましくは1.5以上であり、そして、16以下であり、好ましくは8以下、より好ましくは4以下である。〕で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含む。
なお、ビスフェノールAとは、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンである。
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物としては、例えば、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いてもよい。これらの中でも、低温定着性及び耐熱保存性をより向上させる観点から、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物が好ましい。
ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物の含有量は、芳香族アルコールA1中、好ましくは40モル%以上、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、そして、更に好ましくは100モル%である。
工程1では、その他のアルコール成分を含んでいてもよい。
その他のアルコール成分としては、例えば、脂肪族ポリオールが挙げられる。
脂肪族ポリオールとしては、例えば、炭素数2以上20以下の脂肪族ジオール、グリセリン等の3価以上の脂肪族アルコールが挙げられる。
脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブテンジオール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが挙げられる。
工程1において、芳香族アルコールA1の量は、耐熱保存性及び耐久性をより向上させる観点から、芳香族アルコールA1及び芳香族アルコールA2の合計100モル部に対して、好ましくは60モル部以上、より好ましくは65モル部以上、更に好ましくは70モル部以上、更に好ましくは75モル部以上、更に好ましくは80モル部以上、更に好ましくは85モル部以上であり、そして、低温定着性及び画像濃度をより向上させる観点から、好ましくは99モル部以下、より好ましくは95モル部以下、更に好ましくは93モル部以下である。
工程1において、カルボン酸化合物Bは、好ましくは少なくともフマル酸を含む。
カルボン酸化合物B中、フマル酸の量は、耐熱保存性、耐久性、及び画像濃度をより向上させる観点から、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、更に好ましくは98モル%以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、100モル%以下であり、更に好ましくは100モル%である。
工程1で添加するカルボン酸成分としては、カルボン酸化合物B以外の他のカルボン酸成分を含有していてもよい。
他のカルボン酸としては、例えば、カルボン酸化合物B以外のジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸が挙げられる。
ジカルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸が挙げられる。これらの中でも、芳香族ジカルボン酸、及び、直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が挙げられる。
直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、アゼライン酸、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸が挙げられる。炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸としては、例えば、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸が挙げられる。
3価以上の多価カルボン酸としては、好ましくは3価のカルボン酸であり、例えばトリメリット酸又はその無水物が挙げられる。
これらのカルボン酸成分は、これらの1種又は2種以上を用いてもよい。
カルボン酸成分中、カルボン酸化合物Bの合計量は、耐熱保存性、耐久性、及び画像濃度をより向上させる観点から、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、更に好ましくは98モル%以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、100モル%以下であり、更に好ましくは100モル%である。
工程1において、芳香族アルコールA1に対する、カルボン酸化合物Bのモル比[カルボン酸化合物B/芳香族アルコールA1]が、低温定着性、耐熱保存性、耐久性、及び画像濃度をより向上させる観点から、好ましくは0.95以上、より好ましくは1以上、更に好ましく1.1以上であり、そして、好ましくは1.6以下、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.4以下、更に好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.2以下である。
工程1において、温度T1は、低温定着性、耐熱保存性、耐久性、及び画像濃度をより向上させる観点から、好ましくは200℃以上、より好ましくは205℃以上、更に好ましくは210℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは230℃未満、より好ましくは225℃以下、更に好ましくは220℃以下、更に好ましくは215℃以下である。
このような温度T1において、芳香族アルコールA1とカルボン酸化合物Bとを混合することで、カルボン酸化合物Bが消費され、後述の工程2における芳香族アルコールA2の添加による効果を顕著に高めることができ、低温定着性、耐熱保存性、耐久性、及び画像濃度をより向上させられる。
温度T1での保持時間は、低温定着性、耐熱保存性、耐久性、及び画像濃度をより向上させる観点から、好ましくは2時間以上、より好ましくは2.5時間以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは5時間未満、より好ましくは4時間以下、更に好ましくは3.5時間以下である。
温度T1での保持時間は、規定する温度T1の範囲内の温度であった時間を意味する。
工程1は、エステル化触媒の存在下混合することが好ましい。工程1では、更に助触媒を用いてもよい。
エステル化触媒としては、例えば、モノブチル錫オキサイド、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物が挙げられる。これらの中でも、モノブチル錫オキサイドが好ましい。
エステル化触媒の量は、芳香族アルコールA1、芳香族アルコールA2を含むアルコール成分、及びカルボン酸化合物Bを含むカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.6質量部以下である。
エステル化触媒とともに用い得るエステル化助触媒としては、例えば、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2',3,4-テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート等のカテキン誘導体が挙げられる。
エステル化助触媒の量は、芳香族アルコールA1、芳香族アルコールA2を含むアルコール成分、及びカルボン酸化合物Bを含むカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
また工程1では、好ましくは重合禁止剤を用いる。
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン等のハイドロキノン系化合物、カテコール、2-t-ブチルカテコール等のカテコール系化合物が挙げられる。
重合禁止剤の量は、芳香族アルコールA1、芳香族アルコールA2を含むアルコール成分、及びカルボン酸化合物Bを含むカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
工程1は、不活性ガス雰囲気中でおこなってもよい。
<工程2>
工程2では、工程1で得られた混合物に対して、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含む芳香族アルコールA2を更に添加し、混合する。
工程2は、好ましくは、工程1で得られた混合物に対して、180℃以上225℃未満の温度T2でビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含む芳香族アルコールA2を更に添加し、系内の樹脂の軟化点が90℃以上105℃以下の範囲内になるまで混合する工程である。
芳香族アルコールA2の好適例は、芳香族アルコールA1の例示と同様である。
ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物の含有量は、芳香族アルコールA2中、好ましくは40モル%以上、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、そして、更に好ましくは100モル%である。
工程2の芳香族アルコールA2の添加量は、低温定着性、耐久性、及び画像濃度をより向上させる観点から、芳香族アルコールA1及び芳香族アルコールA2の合計100モル部に対して、好ましくは1モル部以上、より好ましくは2モル部以上、更に好ましくは3モル部以上、更に好ましくは5モル部以上であり、そして、好ましくは40モル部以下、より好ましくは35モル部以下、更に好ましくは30モル部以下、更に好ましくは20モル部以下、更に好ましくは15モル部以下である。
工程1の芳香族アルコールA1の量と工程2の芳香族アルコールA2の量とのモル比(A1/A2)は、低温定着性、耐熱保存性、耐久性、及び画像濃度をより向上させる観点から、好ましくは65/35以上、より好ましくは70/30以上、更に好ましくは80/20以上、更に好ましくは85/15以上であり、そして、好ましくは99/1以下、より好ましくは98/2以下、更に好ましくは95/5以下である
芳香族アルコールA1の量と芳香族アルコールA2の量との合計量100モル部に対する、フマル酸及びマレイン酸の合計量は、優れた耐熱保存性、耐久性、及び画像濃度を得る観点から、95モル部以上、好ましくは97モル部以上、より好ましくは99モル部以上、更に好ましくは100モル部以上、更に好ましくは101モル部以上であり、そして、105モル部以下、好ましくは104モル部以下、より好ましくは103モル部以下である。
工程2において、温度T2は、低温定着性、耐熱保存性、耐久性、及び画像濃度をより向上させる観点から、好ましくは180℃以上、より好ましくは185℃以上、更に好ましくは188℃以上であり、そして、好ましくは225℃未満、より好ましくは210℃以下、更に好ましくは200℃以下、更に好ましくは195℃以下である。
工程1における温度T1と工程2における温度T2との差[T1-T2]は、低温定着性、耐熱保存性、及び耐久性をより向上させる観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは5℃以上、更に好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、そして、好ましくは45℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは35℃以下、更に好ましくは30℃以下、更に好ましくは25℃以下である。
温度T2での保持時間は、耐熱保存性、及び耐久性をより向上させる観点から、好ましくは1時間以上、より好ましくは1.5時間以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは6時間以下、より好ましくは4時間以下、更に好ましくは3時間以下である。
温度T2での保持時間は、工程2におけるカルボン酸添加後、上述に規定する温度T2の範囲内の温度であった時間を意味する。
温度T2での混合は、低温定着性、耐熱保存性、耐久性、及び画像濃度をより向上させる観点から、好ましくは、系内の樹脂の軟化点が90℃以上105℃以下の範囲内になるまで行う。
工程2の混合終了時の系内の樹脂の軟化点は、耐熱保存性、及び耐久性をより向上させる観点から、好ましくは95℃以上、より好ましくは98℃以上、更に好ましくは100℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは105℃以下、より好ましくは104℃以下、更に好ましくは103℃以下、更に好ましくは102℃以下である。
工程2は、工程1と同様に、エステル化触媒の存在下混合することが好ましい。工程2では、更に助触媒の存在下混合してもよい。また工程2では、重合禁止剤の存在下混合してもよい。
エステル化触媒、助触媒、重合禁止剤は、工程1と同様である。
工程2は、不活性ガス雰囲気中でおこなってもよい。
工程2では、減圧条件で、混合することが好ましい。工程2における圧力は、好ましくは2kPa以上、より好ましくは3kPa以上であり、そして、好ましくは20kPa以下、より好ましくは15kPa以下、更に好ましくは12kPa以下である。
[結着樹脂組成物A]
上述の製造方法により得られる結着樹脂組成物Aは、トナーの低温定着性、耐熱保存性、耐久性、及び画像濃度の観点から、酸価が14mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であるポリエステル樹脂A(以下、単に「ポリエステル樹脂A」ともいう)を含む。
そして、結着樹脂組成物Aは、上述の物性に加えて、トナーの低温定着性、耐熱保存性、耐久性、及び画像濃度の観点から、フマル酸及びマレイン酸の合計含有量が、結着樹脂組成物Aに対して、700質量ppm以下である。
フマル酸及びマレイン酸の合計含有量は、耐熱保存性、耐久性、及び画像濃度をより向上させる観点から、結着樹脂組成物A中、700質量ppm以下、好ましくは650質量ppm以下、より好ましくは600質量ppm以下、更に好ましくは550質量ppm以下、更に好ましくは500質量ppm以下、更に好ましくは450質量ppm以下であり、そして、好ましくは10質量ppm以上、より好ましくは50質量ppm以上、更に好ましくは100質量ppm以上、更に好ましくは200質量ppm以上、更に好ましくは300質量ppm以上である。
フマル酸及びマレイン酸の合計含有量の測定方法は、実施例に記載の方法による。
結着樹脂組成物A中のフマル酸及びマレイン酸の合計含有量は、前述の製造方法に示すように、例えば、前述の工程1及び工程2を含む方法により得ることができる。
ポリエステル樹脂Aは、例えば、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含むアルコール成分と、フマル酸及びマレイン酸から選ばれる少なくとも1種のカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物である。
ポリエステル樹脂Aは、好ましくは非晶性である。
ポリエステル樹脂Aの酸価は、低温定着性をより向上させる観点から、14mgKOH/g以上、好ましくは16mgKOH/g以上、より好ましくは17mgKOH/g以上、更に好ましくは18mgKOH/g以上であり、そして、耐熱保存性、耐久性、及び画像濃度をより向上させる観点から、30mgKOH/g以下、好ましくは28mgKOH/g以下、より好ましくは25mgKOH/g以下、更に好ましくは22mgKOH/g以下である。
ポリエステル樹脂Aの軟化点は、耐熱保存性、耐久性、及び画像濃度をより向上させる観点から、好ましくは90℃以上、より好ましくは95℃以上、更に好ましくは98℃以上、更に好ましくは100℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは105℃以下、より好ましくは104℃以下、更に好ましくは103℃以下、更に好ましくは102℃以下である。
ポリエステル樹脂Aのガラス転移温度は、耐熱保存性、耐久性、及び画像濃度をより向上させる観点から、好ましくは45℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは55℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下、更に好ましくは70℃以下、更に好ましくは65℃以下、更に好ましくは60℃以下である。
ポリエステル樹脂Aの重量平均分子量Mwは、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは25,000以下、より好ましくは20,000以下、更に好ましくは18,000以下、更に好ましくは17,000以下であり、そして、耐熱保存性、耐久性、及び画像濃度をより向上させる観点から、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上、更に好ましくは13,000以上、更に好ましくは15,000以上である。
ポリエステル樹脂Aの数平均分子量Mnは、耐熱保存性、耐久性、及び画像濃度をより向上させる観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上、更に好ましくは3,000以上、更に好ましくは3,500以上、更に好ましくは3,600以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは7,000以下、より好ましくは5,000以下、更に好ましくは4,500以下、更に好ましくは4,000以下、更に好ましくは3,800以下である。
ポリエステル樹脂Aの多分散度(Mw/Mn)は、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.5以上、更に好ましくは3.5以上、更に好ましくは4.0以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、更に好ましくは8以下、更に好ましくは6以下、更に好ましくは5.5以下、更に好ましくは5以下、更に好ましくは4.8以下である。
軟化点、ガラス転移温度、酸価、重量平均分子量、数平均分子量、多分散度の測定方法は、実施例に記載の方法による。
ポリエステル樹脂Aの含有量は、結着樹脂組成物Aに対して、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上、更に好ましくは実質的に100質量%である。
[静電荷像現像用トナー]
得られた結着樹脂組成物Aは、静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう)に用いられる。本発明の実施形態に係るトナーは、結着樹脂組成物Aを含む。
より具体的には、本発明の実施形態に係るトナーは、例えば、結着樹脂組成物Aを含むトナー粒子と、外添剤とを含有していてもよい。
トナーの結着樹脂中の、結着樹脂組成物Aの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下である。
<結着樹脂H>
上述の結着樹脂組成物Aに加えて、トナーは、軟化点が20℃以上高い結着樹脂Hを更に含んでいてもよい。
結着樹脂Hの軟化点は、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下、更に好ましくは135℃以下であり、そして、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは130℃以上である。
結着樹脂Hと結着樹脂組成物Aの軟化点の差は、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは25℃以上、更に好ましくは30℃以上であり、そして、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、更に好ましくは40℃以下である。
結着樹脂Hを含む場合、結着樹脂組成物Aと結着樹脂Hとの質量比(結着樹脂組成物A/結着樹脂H)は、好ましくは10/90以上、より好ましくは20/80以上、更に好ましくは25/75以上であり、そして、好ましくは80/20以下、より好ましくは60/40以下、更に好ましくは50/50以下である。
トナーの結着樹脂中の、結着樹脂組成物A及び結着樹脂Hの合計含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下である。
トナーには、荷電制御剤、着色剤、離型剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が含まれていてもよい。これらの中でも、荷電制御剤、着色剤、離型剤が好ましい。なお、これらの添加剤は、トナー粒子に含まれていることが好ましい。
<荷電制御剤>
荷電制御剤としては、例えば、正帯電性荷電制御剤、負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリヱント化学工業株式会社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリヱント化学工業株式会社製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成工業株式会社製)等;スチレン-アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」(藤倉化成株式会社製)が挙げられる。
また、負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(保土谷化学工業株式会社製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット株式会社製)等;サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「ボントロンE-304」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)、「TN-105」(保土谷化学工業株式会社製)等;銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等;有機金属化合物が挙げられる。
荷電制御剤の中でも、負帯電性荷電制御剤が好ましく、ベンジル酸化合物の金属化合物又はサリチル酸化合物の金属化合物がより好ましい。
荷電制御剤の含有量は、トナー中の結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
<着色剤>
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン-Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が用いることができる。トナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。
着色剤の含有量は、トナー中の結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
<離型剤>
離型剤としては、例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス;マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス等の炭化水素系ワックス又はそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス又はそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いてもよい。
離型剤の融点は、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは145℃以下である。
離型剤の含有量は、トナー中の結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上であり、そして、結着樹脂中への分散性の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは7質量部以下である。
トナー粒子の体積中位粒径(D50)は、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、更に好ましくは10μm以下である。
トナー粒子をトナーとしてそのまま用いることもできるが、流動化剤等を外添剤としてトナー粒子表面に添加処理したものをトナーとして使用することが好ましい。
外添剤としては、例えば、疎水性シリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化セリウム、カーボンブラック等の無機材料微粒子、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、シリコーン樹脂等のポリマー微粒子が挙げられる。これらの中でも、疎水性シリカが好ましい。
外添剤を含有する場合、外添剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4.5質量部以下、更に好ましくは4質量部以下である。
トナーは、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる。トナーは、一成分系現像剤として、又はキャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。
[トナーの製造方法]
トナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法、乳化凝集法等の公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。
粉砕トナーである場合、トナーの製造方法は、例えば
工程a:結着樹脂組成物Aを含むトナー原料を溶融混練する工程、及び
工程b:工程aで得られた溶融混合物を粉砕、分級しトナー粒子を得る工程
を含む。
工程aでは、トナー原料中に、結着樹脂H、離型剤、荷電制御剤及び着色剤等のその他添加剤を含んでいてもよい。これらのトナー原料は、あらかじめヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機で混合した後、混練機に供給することが好ましい。
溶融混練の温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは110℃以上であり、そして、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下である。
工程aの溶融混練には、密閉式ニーダー、一軸押出機、又は二軸押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができる。結晶を溶融混合する観点から、高温条件に設定することのできる二軸押出機が好ましい。
工程aで得られた溶融混合物を、粉砕が可能な程度に冷却した後、続く工程bに供する。
工程bの粉砕は、多段階に分けて行ってもよい。例えば、溶融混合物を硬化させて得られた樹脂混練物を、1mm以上5mm以下に粗粉砕した後、更に所望の粒径に微粉砕してもよい。
粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、例えば、ハンマーミル、アトマイザー、ロートプレックスが挙げられる。微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、例えば、流動層式ジェットミル、衝突板式ジェットミル、回転型機械式ミルが挙げられる。粉砕効率の観点から、流動層式ジェットミル、又は衝突板式ジェットミルを用いることが好ましく、衝突板式ジェットミルを用いることがより好ましい。
分級に用いられる分級機としては、例えば、ロータ式分級機、気流式分級機、慣性式分級機、篩式分級機が挙げられる。分級工程の際、粉砕が不十分で除去された粉砕物は再度粉砕工程に供してもよく、必要に応じて粉砕工程と分級工程を繰り返してもよい。
得られたトナー粒子は、流動化剤等を外添剤としてトナー粒子表面に添加処理してもよい。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
樹脂等の物性は、以下の方法により測定した。
[測定方法]
〔樹脂の酸価〕
樹脂の酸価は、JIS K0070:1992の方法に基づき測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070:1992の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
〔樹脂の軟化点及びガラス転移温度〕
(1)軟化点
フローテスター「CFT-500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
(2)吸熱の最高ピーク温度
示差走査熱量計「DSC 2 STAR」(Mettler-Toledo株式会社製)を用いて、室温(20℃)から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した試料をそのままの温度で1分間維持し、その後、昇温速度10℃/分で180℃まで昇温しながら測定する。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とする。
(3)ガラス転移温度
示差走査熱量計「DSC 2 STAR」(Mettler-Toledo株式会社製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した。次に昇温速度10℃/分で150℃まで昇温しながら測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
〔ゲル浸透クロマトグラフィー法により測定される分子量分布:樹脂の数平均分子量、重量平均分子量、多分散度〕
以下の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定する。当該結果から、樹脂の数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、多分散度Mw/Mnを求める。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、樹脂をテトラヒドロフランに溶解させる。ついで、この溶液をポアサイズ0.45μmのフッ素樹脂フィルター「Syringe Filter」(American Chromatography Supplies株式会社製)を用いて濾過して不溶成分を除き、試料溶液とする。
(2)分子量測定
下記装置を用いて、溶離液としてテトラヒドロフランを、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定化さる。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作製した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の分子量が既知の単分散ポリスチレン(東ソー株式会社製;分子量「2.63×103」、「2.06×104」、「1.02×105」、ジーエルサイエンス株式会社製;分子量「2.10×103」、「7.00×103」、「5.04×104」)を標準試料として作成したものを用いる。
測定装置:「HLC-8320 GPC EcoSEC」(東ソー株式会社製)
分析カラム:「TSKgel Guard Super HZ-L」+「TSKgel Super HZM-H」+「TSKgel Super HZ3000」(いずれもTOSOH Biosciences LLC)
〔トナー粒子及びトナーの体積中位粒径(D50)〕
トナー粒子及びトナーの体積中位粒径(D50)は以下の方法で測定した。
測定機:「コールターマルチサイザーII」(ベックマンコールター株式会社製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:「コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19」(ベックマンコールター株式会社製)
電解液:「アイソトンII」(ベックマンコールター株式会社製)
分散液:「エマルゲン109P」(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)の5質量%電解液
分散条件:分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させる。
測定条件:ビーカーに電解液100mLと分散液を加え、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度で、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
〔結着樹脂組成物中のフマル酸及びマレイン酸の合計含有量〕
(1)試料溶液の調製
(1-1)試料(樹脂)を0.3g秤量し、テトラヒドロフランを添加して3mLの溶液に調製する。
(1-2)調製した溶液をふた付き試験管に移し入れ、続いてイオン交換水3mLを加える。
(1-3)試験管内の混合液を、タッチミキサーを用いてよく攪拌し、遠心分離機を用いて分相させ、下層(水相)を試料溶液として分取する。
(2)検量線の作成
フマル酸及びマレイン酸を、それぞれ0.1~1.5gを0.1刻みで合計30サンプル秤量し、イオン交換水でそれぞれ正確に100mLとする。これらの高速液体クロマトグラフィー測定結果を用いて、1~15mg/Lの検量線溶液を用いて検量線を作成した。検量線は、フマル酸及びマレイン酸由来のピーク面積と、サンプル濃度との関係をプロットして作成した。
(3)溶離液の調製
リン酸0.1質量%水溶液1mLをイオン交換水1Lに溶解させたものを溶離液とした。
(4)高速液体クロマトグラフィー測定
装置: Varian株式会社
オートサンプラー: 注入量 20μL 、分析時間 15分
ポンプ: 流速 1.0m /min
カラムオーブン: 40℃
カラム: Tosoh Bioscience-P/N-17202-4.6mm IDX25cmX5μm
検出器: UVD 210nm
(5)フマル酸及びマレイン酸の合計含有量の算出
測定により得られたチャート中のピーク面積と検量線とを対比し、フマル酸及びマレイン酸の試料溶液中の濃度を算出し、更に下記の式から樹脂中に含まれるフマル酸及びマレイン酸の残存量が、質量分率(質量ppm)として求められる。
フマル酸及びマレイン酸の残存量(質量ppm)=[試料溶液中のフマル酸及びマレイン酸の濃度(mg/L)×0.003(L)]/300mg×106
[結着樹脂組成物の製造]
実施例A1~A11, 比較例A52〔結着樹脂組成物A-1~A-11, A-52〕
表1に示すアルコール成分A1、カルボン酸成分、エステル化触媒、及び重合禁止剤を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れた。窒素雰囲気、常圧下、180℃で1時間保温した後に2時間かけて表中に示す温度T1に昇温した後、表に示すT1保持時間、温度T1を保持した。その後、温度T2とした後、アルコール成分A2を投入し、表に示すT2保持時間、温度T2を保持した後、10kPaにて表に示す軟化点まで反応を行って結着樹脂組成物A-1~A-11, A-52を得た。各種物性を測定し表1に示した。
比較例A51, A53, A54〔結着樹脂組成物A-51, A-53, A-54〕
表1に示すアルコール成分A1、カルボン酸成分、エステル化触媒、及び重合禁止剤を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れた。窒素雰囲気、常圧下、180℃で1時間保温した後に2時間かけて表中に示す温度T1に昇温した後、表に示すT1保持時間、温度T1を保持した。その後、10kPaにて表に示す軟化点まで反応を行って結着樹脂組成物A-51, A-53, A-54を得た。各種物性を測定し表1に示した。
Figure 0007112911000002
Figure 0007112911000003
Figure 0007112911000004
製造例H1〔樹脂H-1〕
表2に示すアルコール成分、酸成分、エステル化触媒、及び重合禁止剤を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れた。窒素雰囲気、常圧下、180℃で1時間保温した後に3時間かけて表中に示す温度T1に昇温した後、表に示すT1保持時間、温度T1を保持した。その後210℃8.0kPaで1時間反応させた後、温度T2に設定し、トリメリット酸無水物を投入後、表に示す時間保持した後、10kPaにて表に示す軟化点まで反応を行って樹脂H-1を得た。各種物性を測定し表2に示した。
Figure 0007112911000005
[トナーの製造]
実施例B1~B12,比較例B1~B4
表3に示す樹脂を混合した結着樹脂100質量部、着色剤「ECB-301」(大日精化株式会社(日本)製、C.I.ピグメントブルー15:3)5質量部、負帯電性荷電制御剤「LR-147」(日本カーリット株式会社(日本)製)1質量部、離型剤「NP-105」(三井化学株式会社製、ポリプロピレンワックス、融点:140℃)2質量部を、ヘンシェルミキサーによく攪拌した後、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出機を用いて溶融混練した。ロールの回転速度は200r/min、ロール内の加熱温度は120℃であり、混合物の供給速度は10kg/hr、平均滞留時間は約18秒であった。得られた混練物を冷却ローラーで圧延冷却した後、ジェットミルで体積中位粒径(D50)6.5μmのトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100質量部に、外添剤として、疎水性シリカ「アエロジル R-972」(日本アエロジル株式会社(日本)製)1.0質量部及び疎水性シリカ「SI-Y」(日本アエロジル株式会社(日本)製)1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで3600r/min、5分間混合することにより、外添剤処理を行い、体積中位粒径(D50)6.5μmのトナーを得た。
[評価]
〔低温定着性〕
得られたトナーを複写機「AR-505」(シャープ株式会社(日本)製)に実装し、トナー付着量が0.7mg/cm2の未定着画像(2cm×12cm)を得た。複写機「AR-505」(シャープ株式会社(日本)製)の定着機をオフラインで定着可能なように改良した定着機(定着速度200mm/sec)を用い、定着温度を90℃から240℃へと5℃ずつ順次上昇させながら、各定着温度で定着試験を行った。定着紙には、「CopyBond SF-70NA」(シャープ株式会社(日本)製、75g/m2)を使用した。
最低定着温度は500gの荷重をかけた底面が15mm×7.5mmの砂消しゴムで、定着機を通して定着された画像を5往復擦り、擦る前後の光学反射密度を反射濃度計「RD-915」(マクベス社(スイス)製)を用いて測定し、両者の比率(擦り後/擦り前)が最初に70%を越える定着ローラーの温度を最低定着温度とし、低温定着性を評価した。
〔耐熱保存性〕
トナー10gを半径12mmの円筒型容器に入れ、上から100gのおもりをのせ、50℃及び相対湿度60%の環境で72時間保持した。パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社(日本)製)に、上から順に、篩いA(目開き250μm)、篩いB(目開き150μm)、篩いC(目開き75μm)の3つの篩を重ね合わせて設置し、篩いA上にトナー10gを乗せて60秒間振動を与えた。篩いA上に残存したトナー質量WA(g)を、篩いB上に残存したトナー質量WB(g)を、篩いC上に残存したトナー質量WC(g)を、それぞれ測定し、下記式に従って算出される値(α)をもとに、耐熱保存性を評価した。値(α)が1に近いほど、耐熱保存性に優れる。
α=1-(WA+WB×0.6+WC×0.2)/10
〔耐久性〕
現像装置「ページプレストN-4」(カシオ計算機株式会社(日本)製,定着:接触定着方式,現像:非磁性一成分現像方式,現像ロール径:2.3cm)にトナーを実装し、温度32℃、相対湿度85%の環境下にて黒化率5.5%の斜めストライプのパターンを連続して印刷した。途中、500枚ごとに黒ベタ画像を印字し、画像上のスジの有無を確認した。印刷は、画像上にスジが発生した時点で中止し、最高9000枚まで行った。画像上にスジが目視にて観察された時点までの印字枚数を、現像ロールにトナーが融着又は固着したことによりスジが発生した枚数とし、耐久性を評価した。数値が大きいほど、トナーの耐久性に優れる。
〔画像濃度〕
複写機「AR-505」(シャープ株式会社(日本)製)にトナーを実装し、未定着の状態で画像を取り出した(印字面積:2cm×12cm、付着量:0.5mg/cm2)。当該複写機の定着機をオフラインで、160℃で200mm/secで用紙に定着させた。なお、定着紙には、「CopyBond SF-70NA」(シャープ株式会社(日本)製、75g/m2)を使用した。
定着画像の画像濃度を、透過濃度計「TR-927」(グレタグマクベス社製)を用いて測定した。なお、画像濃度の測定に透過濃度計を利用したのは、反射濃度計ではある一定以上の濃度になるとすぐに飽和してしまうのに対し、透過濃度計は着色剤の分散等を敏感に感知するためである。画像濃度が高いほど優れる。
Figure 0007112911000006
以上、実施例と比較例を対比すると、実施例の結着樹脂組成物を用いたトナーは、比較例の結着樹脂組成物を用いたトナーと比較して、低温定着性、耐熱保存性、耐久性、及び画像濃度のすべてにおいて優れた結果を示すことが理解できる。

Claims (8)

  1. 下記工程1及び工程2を含む、結着樹脂組成物の製造方法であって、
    前記結着樹脂組成物は、酸価が14mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であるポリエステル樹脂を含み、未反応のフマル酸及び未反応のマレイン酸の合計含有量が前記結着樹脂組成物に対して700質量ppm以下であり、
    下記工程1及び工程2における、下記芳香族アルコールA1と下記芳香族アルコールA2の合計量100モル部に対する、下記フマル酸及び下記マレイン酸の合計量は95モル部以上105モル部以下である、結着樹脂組成物の製造方法。
    工程1: ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含む芳香族アルコールA1と、フマル酸及びマレイン酸から選ばれる少なくとも1種のカルボン酸化合物を混合する工程
    工程2: 工程1で得られた混合物に対して、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含む芳香族アルコールA2を更に添加し、混合する工程
  2. 前記工程1の芳香族アルコール量A1と前記工程2の芳香族アルコール量A2とのモル比(A1/A2)が、65/35以上99/1以下である、請求項1に記載の結着樹脂の製造方法。
  3. 前記工程1が、前記芳香族アルコールA1と、前記カルボン酸化合物を200℃以上230℃未満の温度T1で混合する工程である、請求項1に記載の製造方法。
  4. 前記工程1が、前記芳香族アルコールA1と、前記カルボン酸化合物を200℃以上230℃未満の温度T1で2時間以上5時間未満、混合する工程である、請求項1に記載の製造方法。
  5. 前記工程2が、180℃以上225℃未満の温度T2で前記芳香族アルコールA2を更に添加し、混合する工程である、請求項1に記載の製造方法。
  6. 前記工程2が、180℃以上225℃未満の温度T2で前記芳香族アルコールA2を更に添加し、系内の樹脂の軟化点が90℃以上105℃以下の範囲内になるまで混合する工程である、請求項1に記載の製造方法。
  7. 請求項1に記載の製造方法により得られた結着樹脂組成物を用いた、静電荷像現像用トナーの製造方法
  8. 工程a:前記結着樹脂組成物を含むトナー原料を溶融混練する工程、及び
    工程b:工程aで得られた溶融混合物を粉砕、分級しトナー粒子を得る工程
    を含む、請求項7に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
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