JP7024946B2 - トナー用縮重合樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、低温定着性が良好なトナーは、多量の印刷を行うことで、電子写真システムの現像ロールに、トナーが融着及び/又は固着して、印刷された画像にスジが発生し、耐久性の観点からも課題が生じやすかった。そこで、低温定着性と耐久性とを両立したトナーが要求されている。
例えば、特許文献1には、水酸基が結合した第二級炭素原子を2つ以上有する脂肪族多価アルコールを含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを、エステル化触媒と、互いに隣接する3個の水素原子が水酸基で置換されたベンゼン環を有するピロガロール化合物との存在下で縮重合させて得られる縮重合系樹脂である、電子写真トナー用結着樹脂が記載されている。
また、電子写真用トナーは、包装材料、樹脂フィルム材料等、各種記録媒体に用いられているが、記録媒体を折り曲げた際に、印刷部位が剥がれ落ちて、印刷部位が欠損することを防止するため、印刷物には優れた耐折り曲げ性も要求されている。
そこで、本発明は、低温定着性及び耐久性に優れ、かつ得られる印刷物の耐折り曲げ性に優れるトナー用縮重合樹脂、該トナー用縮重合樹脂を含有する静電荷像現像用トナー及び該トナー用縮重合樹脂の製造方法を提供することを課題とする。
〔1〕Sn-C結合を有していない錫(II)化合物(A)、及び
互いに隣接する5個以上の各炭素原子上の2つの水素原子のうち少なくとも1つがヒドロキシ基で置換されたシクロへキサン環を有する化合物(B)の存在下、炭素数2以上6以下の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを含む原料組成物を縮重合させて得られるトナー用縮重合樹脂。
〔2〕前記〔1〕に記載のトナー用縮重合樹脂を含有する、静電荷像現像用トナー。
〔3〕Sn-C結合を有していない錫(II)化合物(A)、及び
互いに隣接する5個以上の各炭素原子上の2つの水素原子のうち少なくとも1つがヒドロキシ基で置換されたシクロへキサン環を有する化合物(B)の存在下、炭素数2以上6以下の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを含む原料組成物を縮重合させるトナー用縮重合樹脂の製造方法。
本発明のトナー用縮重合樹脂は、Sn-C結合を有していない錫(II)化合物(A)(以下、「化合物(A)」ともいう。)、及び互いに隣接する5個以上の各炭素原子上の2つの水素原子のうち少なくとも1つがヒドロキシ基で置換されたシクロへキサン環を有する化合物(B)(以下、「化合物(B)」ともいう。)の存在下、炭素数2以上6以下の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを含む原料組成物を縮重合させて得られる点に特徴を有している。
なお、本明細書において、「原料組成物」とは、得られる縮重合樹脂の構造中に含まれる原料成分(以下、「モノマー」ともいう。)を意味する。
また、本明細書において、「原料組成物を縮重合させる」とは、少なくとも原料組成物中に含まれるアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合させることを意味する。
また、縮重合時に化合物(A)及び化合物(B)を共存させることにより、化合物(A)の構造が安定化し、高い触媒活性が維持されるため、得られる縮重合樹脂中に含まれる低分子量成分が低減され、前記縮重合樹脂を含有するトナーの耐久性が優れると考えられる。
更に、驚くべきことに、炭素数2以上6以下の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と化合物(B)とを共存させることにより、前記縮重合樹脂を含有するトナーを用いて得られる印刷物の耐折り曲げ性が向上することを見出した。本発明の縮重合樹脂が前記特有の効果を奏する理由は定かではないが、前述したとおり、本発明の縮重合樹脂はエステル価が高く、化合物(B)のヒドロキシ基と相互作用しやすく、また、化合物(B)のヒドロキシ基が屈曲性の高いシクロへキサン環に結合しているため、前記縮重合樹脂の屈曲性が向上した結果、前記縮重合樹脂を含有するトナーを用いて得られる印刷物の耐折り曲げ性も向上したと考えられる。
また、前記縮重合樹脂としては、例えば、ポリエステルユニット(F)と共に、炭素数2以上6以下の脂肪族ジオール以外のアルコール成分に由来するヒドロキシ基と、カルボン酸成分に由来するカルボキシ基との脱水縮合により得られるエステル結合を有するポリエステルユニット(G)を有する縮重合樹脂も含まれる。
また、前記縮重合樹脂としては、例えば、前記ポリエステルユニットと共に、異なるアルコール成分とカルボン酸成分との反応に限らず、異種官能基を1分子内に有するモノマーの縮重合により得られるユニット、例えば、カルボキシ基とヒドロキシ基とを有する乳酸から、脱水縮合により生成するポリ乳酸ユニットを含む樹脂も含まれる。
また、前記縮重合樹脂としては、例えば、前記ポリエステルユニットと共に、付加重合により得られるユニット(以下、「付加重合体ユニット」ともいう。)を有するハイブリッド樹脂も含まれる。当該ハイブリッド樹脂としては、具体的には、前記ポリエステルユニットと、付加重合体ユニットとが部分的に化学結合、好ましくは共有結合したハイブリッド樹脂も含まれる。
前記縮重合樹脂は、前記ポリエステルユニットを縮重合樹脂100モル%中、好ましくは50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、より更に好ましくは95モル%以上、そして、好ましくは100モル%以下で有するポリエステルである。
次に、本発明で用いる前述の各種成分について説明する。
本発明で用いるSn-C結合を有していない錫(II)化合物(A)は、縮重合樹脂を得るための重合反応の触媒となる化合物であり、好ましくはSn-O結合を有する錫(II)化合物及びSn-X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有する錫(II)化合物からなる群より選ばれる1種以上、より好ましくはSn-O結合を有する錫(II)化合物である。
Sn-X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有する錫(II)化合物は、塩化錫(II)、臭化錫(II)等のハロゲン化錫(II)が挙げられる。
これらの中では、トナーの耐久性及び得られる印刷物の耐折り曲げ性をより向上させる観点から、好ましくは炭素数2以上28以下のカルボン酸基を有するカルボン酸錫(II)、酸化錫(II)及びハロゲン化錫(II)からなる群より選ばれる1種以上、より好ましくは炭素数2以上28以下のカルボン酸基を有するカルボン酸錫(II)及び酸化錫(II)からなる群より選ばれる1種以上、更に好ましくは炭素数2以上28以下のカルボン酸基を有するカルボン酸錫(II)である。また、低温定着性に優れるトナーを得る観点からは、好ましくは炭素数2以上28以下のカルボン酸基を有するカルボン酸錫(II)である。
ここで、複数の化合物(A)を併用する場合、化合物(A)の使用量(X)は、縮重合反応に使用する該化合物(A)の総量を意味する。
ここで、化合物(A)と共に、以下に説明する化合物(B)を用いることによって、化合物(A)の高い触媒活性が維持され、得られる縮重合樹脂中に含まれる低分子量成分が低減される結果、トナーの耐久性を向上させることが可能になると考えられる。
前述のとおり、互いに隣接する5個以上の各炭素原子上の2つの水素原子のうち少なくとも1つがヒドロキシ基で置換されたシクロへキサン環を有する化合物(B)を化合物(A)と共に用いることで、トナーの耐久性を向上させることが可能になると考えられる。更に、炭素数2以上6以下の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分を用いて得られる縮重合樹脂と化合物(B)との相互作用により、該縮重合樹脂の屈曲性が向上し、該縮重合樹脂を含有するトナーを用いて得られる印刷物の耐折り曲げ性も向上すると考えられる。
すなわち、化合物(B)を化合物(A)と共に用い、炭素数2以上6以下の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分を用いて得られる縮重合樹脂を用いることで、低温定着性及び耐久性、並びに得られる印刷物の耐折り曲げ性の各特性のバランスに優れるトナーを得ることが可能となる。
ここで、複数の化合物(B)を併用する場合、化合物(B)の使用量(Y)は、複数用いる化合物(B)の使用量の合計量(総量)を意味する。
本発明で用いる化合物(A)の使用量(X)及び本発明で用いる化合物(B)の使用量(Y)は、前述した使用量(X)の好適範囲と使用量(Y)の好適範囲とを共に満たすことがより更に好ましい。
前記原料組成物は、炭素数2以上6以下の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを含む。
次に、本発明で用いる原料組成物が含む各種成分について説明する。
前記アルコール成分は、炭素数2以上6以下の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分であり、好ましくは、第二級炭素原子に結合したヒドロキシ基を有する炭素数3以上6以下の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分である。
炭素数2以上6以下の脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3,3-ジメチル-1,2-ブタンジオールが挙げられる。これらの中では、好ましくは1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール及びネオペンチルグリコールからなる群より選ばれる1種以上である。そして、トナーの低温定着性及び耐久性、並びに得られる印刷物の耐折り曲げ性をより向上させる観点から、より好ましくは1,2-プロパンジオール及び1,4-ブタンジオールから選ばれる1種以上、更に好ましくは1,2-プロパンジオールである。
第二級炭素原子に結合したヒドロキシ基を有する炭素数3以上6以下の脂肪族ジオールとしては、例えば、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3,3-ジメチル-1,2-ブタンジオールが挙げられ、好ましくは1,2-プロパンジオール及び2,3-ブタンジオールから選ばれる1種以上、より好ましくは1,2-プロパンジオールである。
x及びyは、アルキレンオキシドの平均付加モル数であって、それぞれ独立に正の数であり、x及びyの和の平均値は、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは4以下である。
一般式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ただし、低温定着性向上の観点から、一般式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物の含有量は、アルコール成分全量中、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下、更に好ましくは5モル%以下、より更に好ましくは2モル%以下、そして、好ましくは0モル%以上である。そして、一般式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物の含有量は、アルコール成分全量中、より更に好ましくは0モル%である。
前記第二級炭素原子に結合したヒドロキシ基を有する炭素数3以上6以下の脂肪族ジオールの含有量は、低温定着性及び耐久性、並びに得られる印刷物の耐折り曲げ性の各特性のバランスに優れるトナーを得られる観点から、アルコール成分全量中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、より更に好ましくは90モル%以上、そして、好ましくは100モル%以下である。そして、前記第二級炭素原子に結合したヒドロキシ基を有する炭素数3以上6以下の脂肪族ジオールの含有量は、アルコール成分全量中、より更に好ましくは100モル%である。
前記カルボン酸成分としては、例えば、ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸、並びにそれらの無水物及び炭素数1以上3以下のアルキルエステル等の誘導体が挙げられる。本明細書中では、以下に挙げるカルボン酸成分の例について、単にカルボン酸(遊離酸)の名称のみを記載している場合(実施例記載を除く)、そのカルボン酸の無水物及び炭素数1以上3以下のアルキルエステルも含めて記載されているものとする。すなわち、例えば、「トリメリット酸」と記載した場合に、「トリメリット酸、トリメリット酸無水物(「無水トリメリット酸」と同じ。)、及びトリメリット酸の炭素数1以上3以下のアルキルエステル」が記載されているものとする。
ジカルボン酸の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、そして、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である。
芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられ、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、1,5-ペンタン二酸、1,12-ドデカン二酸、アゼライン酸、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸(以下、「アルケニルコハク酸」ともいう。)等が挙げられ、フマル酸、並びに炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸からなる群より選ばれる1種以上がより好ましく、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸からなる群より選ばれる2種以上の混合物であることが更に好ましい。
前記アルケニルコハク酸が有するアルキル基又はアルケニル基の炭素数は、好ましくは8以上、より好ましくは9以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。また、それらのアルキル基又はアルケニル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。前記アルケニルコハク酸の例としては、好ましくはオクテニルコハク酸、ノネニルコハク酸、デセニルコハク酸、ウンデセニルコハク酸、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、トリデセニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、テトラプロペニルコハク酸等が挙げられる。
3価以上の多価カルボン酸としては、トリメリット酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
3価以上の多価カルボン酸の含有量は、低温定着性及び耐久性に優れたトナーを得る観点から、カルボン酸成分全量中、好ましくは1モル%以上、より好ましくは3モル%以上、更に好ましくは4モル%以上であり、そして、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、更に好ましくは20モル%以下である。
カルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、これらの中から2種以上を組み合わせて使用することがより好ましい。なお、得られるポリエステルの分子量や軟化点を調整する観点から、カルボン酸成分には1価のカルボン酸が、適宜含有されていてもよい。
なお、該モル当量比を算出する際、用いるカルボン酸がカルボン酸誘導体の場合は、そのカルボン酸誘導体の原料カルボン酸が有するカルボキシ基のモル当量に換算して算出する。すなわち、例えば、原料としてアルケニル無水コハク酸を用いている場合は、無水物でないアルケニルコハク酸が有するカルボキシ基のモル数を用いて、該モル当量比を算出する。
前記原料組成物は、前記アルコール成分及びカルボン酸成分と共に、その他の原料成分(e)(以下、「成分(e)」ともいう。)を含有してもよい。成分(e)としては、アルコール成分及び/又はカルボン酸成分と共に重縮合する成分に限らず、得られる縮重合樹脂の構造中に含まれる成分であればよい。
成分(e)としては、例えば、前述のとおり、異種官能基を1分子内に有するモノマー、例えば、カルボキシ基とヒドロキシ基とを有する乳酸等を含んでもよく、また、予めポリオール成分と酸成分とが縮重合させたポリエステル成分を含んでいてもよい。予め、ポリオール成分と酸成分とが縮重合されたポリエステル成分を配合することで、前記アルコール成分及び酸成分と反応し、縮重合樹脂の構造中に取り込まれる。
また、前述した原料成分以外の成分(e)としては、例えば、縮重合樹脂がハイブリッド樹脂である場合、ハイブリッド樹脂に含まれる付加重合体ユニットを形成するために用いられるビニル系モノマー、及びポリエステルユニットと付加重合体ユニットとをより結合し易くするために用いられる両反応性モノマー等が挙げられる。
該IV値の測定は、例えば、フェノール/テトラクロロエタン=60/40(質量比)混合溶媒に0.4g/dLの濃度にて試料を溶解し、ウベローデ型粘度計にて測定を行い、以下の式に従って算出することができる。
成分(e)としてPETを用いる場合、本明細書中、PETのモル数は、PET由来のエチレングリコール単位のモル数として算出され、具体的には、PETの使用量(単位:g)を192で除して算出される値を用いる。なお、PET以外のポリエステル成分のモル数の場合も同様に、該ポリエステル成分由来のアルコール単位のモル数として算出される。
本発明のトナー用縮重合樹脂の製造方法は、Sn-C結合を有していない錫(II)化合物(A)、及び互いに隣接する5個以上の各炭素原子上の2つの水素原子のうち少なくとも1つがヒドロキシ基で置換されたシクロへキサン環を有する化合物(B)の存在下、炭素数2以上6以下の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを含む原料組成物を縮重合させる点に特徴を有している。
また、前記製造方法に用いる化合物(A)の使用量、化合物(B)の使用量、及び原料組成物中に含まれる各成分の含有量、並びにそれらの好適な使用量及び含有量は、トナー用縮重合樹脂について前述したものと同様である。
また、付加重合体ユニット部分の付加重合を開始するため、重合開始剤を添加してもよい。
該縮重合樹脂の酸価は、トナーの帯電性の観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは90mgKOH/g以下、より好ましくは85mgKOH/g以下である。
該縮重合樹脂の軟化点及び酸価は、用いる原料の種類、並びにそれらの比率、反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。また、これらの値は、それぞれ、実施例に記載の軟化点の測定方法及びアルケニル無水コハク酸の酸価の測定方法と同じ方法により求められる。
本発明の静電荷像現像用トナーは、前述した本発明の縮重合樹脂を含有する。
本発明の縮重合樹脂は、好ましくは該静電荷像現像用トナーの結着樹脂として用いることができる。該トナーには、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明の縮重合樹脂以外の結着樹脂、例えば、スチレン-アクリル樹脂等のビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等の他の樹脂を含んでもよい。
本発明の縮重合樹脂の含有量は、該静電荷像現像用トナーの結着樹脂全量中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下である。そして、前述の本発明の縮重合樹脂の含有量は、該静電荷像現像用トナーの結着樹脂全量中、より更に好ましくは100質量%である。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のいずれも使用することができる。
無機顔料としては、カーボンブラック、金属酸化物等が挙げられる。
有機顔料としては、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。有機顔料は、好ましくは、C.I.ピグメントイエロー、C.I.ピグメントレッド、C.I.ピグメントオレンジ、C.I.ピグメントバイオレット、C.I.ピグメントブルー、及びC.I.ピグメントグリーンからなる群より選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられる。
着色剤の色相は特に限定されず、イエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、レッド、オレンジ、グリーン等の有彩色顔料をいずれも用いることができる。これらの着色剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
離型剤としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス;マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス等の炭化水素系ワックス又はそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス又はそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらの離型剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
離型剤の融点は、トナーの転写性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは145℃以下、更に好ましくは140℃以下である。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロン(登録商標)N-01」、「ボントロン(登録商標)N-04」、「ボントロン(登録商標)N-07」、「ボントロン(登録商標)N-09」、「ボントロン(登録商標)N-11」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロン(登録商標)P-51」(オリヱント化学工業株式会社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPYCHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリヱント化学工業株式会社製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成工業株式会社製)等;スチレン-アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」(藤倉化成株式会社製)等が挙げられる。
外添剤を用いて、トナー母粒子の表面処理を行う場合、該外添剤の含有量は、トナーの帯電性や流動性の観点から、トナー母粒子100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.08質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
また、トナーを前記外添剤で処理している場合には、前記外添剤で処理する前のトナー母粒子の体積中位粒径(D50)をトナーの体積中位粒径(D50)とする。該体積中位粒径(D50)の値は、実施例に記載の方法により求められる。
前記静電荷像現像用トナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来公知のいずれの方法により得られた静電荷像現像用トナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性を向上させる観点から、溶融混練法による粉砕トナーとして製造することが好ましく、次の工程1及び2を有する製造方法であることがより好ましい。
工程1:トナー用縮重合樹脂を含む結着樹脂及び着色剤、離型剤、電荷調整剤等の各原料を混合し、溶融混練して混練物を得る工程、及び
工程2:工程1で得られた混練物を粉砕する工程
工程1は、トナー用縮重合樹脂を含む結着樹脂及び着色剤、離型剤、電荷調整剤等の各原料を混合し、溶融混練して混練物を得る工程である。該結着樹脂及び着色剤、離型剤、電荷調整剤等の各原料は、本発明のトナー用縮重合樹脂及び静電荷像現像用トナーについて前述したものと同様のものが挙げられ、それらの好適な態様及び配合量(前述の含有量及び使用量と同一量である。)も同様である。
工程1で、溶融混練は、密閉式ニーダー、一軸若しくは二軸の混練機、連続式オープンロール型混練機等の混練機を用いて行うことができるが、着色剤等の結着樹脂中での分散性を向上させる観点から、二軸混練機で行うのが好ましい。二軸混練機としては、二本の混練軸をバレルが覆い隠す閉鎖型の混練機であり、混練軸がスクリューである二軸押出機が挙げられる。
工程1で得られた混練物は粉砕可能な硬度に達するまで適宜冷却し、工程2に供する。
工程2は、工程1で得られた混練物を粉砕する工程である。
工程1で得られた混練物の粉砕は、多段階に分けて行ってもよい。例えば、混練物を、例えば、1mm以上5mm以下に粗粉砕した後、更に所望の粒径に微粉砕してもよい。
粉砕に用いられる粉砕機は特に限定されないが、例えば、粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、ハンマーミル、アトマイザー、ロートプレックス等が挙げられる。
また、微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、流動層式カウンタージェットミル、衝突板式ジェットミル等のジェットミル、回転型機械式ミル等が挙げられる。
分級に好適に用いられる分級機としては、気流式分級機、慣性式分級機、篩式分級機等が挙げられる。分級の際、粉砕が不十分で除去された粉砕物は再度粉砕工程に供してもよく、必要に応じて粉砕と分級を繰り返してもよい。
工程2で得られたトナー母粒子は、静電荷像現像用トナーとしてそのまま用いることもできるが、工程2で得られるトナー母粒子を更に外添剤を用いて処理してもよい。
該処理方法は特に限定されないが、トナー母粒子と外添剤とを、回転羽根等の攪拌具を備えた混合機を用いて処理することが好ましく、好ましくはヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速混合機、より好ましくはヘンシェルミキサーを用いて混合する方法が挙げられる。
該トナー母粒子及び該外添剤は、本発明の静電荷像現像用トナーについて前述したものと同様のものが挙げられ、トナー母粒子及び外添剤の好適な態様及び添加量も同様である。
アルケニル無水コハク酸の酸価は、JIS K 0070-1992に記載の方法に基づき測定した。ただし、測定溶媒のみJIS K 0070-1992に規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
示差走査熱量計「DSC Q20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量した。該試料を昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで-10℃まで冷却した後、該試料を昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し測定した。そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最高ピーク温度を離型剤の融点とした。
フローテスター「CFT-500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
トナーの体積中位粒径(D50)は、次のとおり測定した。
・測定装置:「コールターマルチサイザー(登録商標)III」(ベックマン・コールター株式会社製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:「コールターマルチサイザー(登録商標)IIIバージョン3.51」(ベックマン・コールター株式会社製)
・電解液:「アイソトン(登録商標)II」(ベックマン・コールター株式会社製)
・分散液:ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン(登録商標)109P」〔花王株式会社製、HLB(グリフィン法)=13.6〕を前記電解液に溶解させ、濃度5質量%の分散液を得た。
・分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製した。
・測定条件:前記試料分散液を、前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、得られた粒度分布から体積中位粒径(D50)を求めた。
合成例1
(アルキレン化合物(a)の製造)
プロピレンテトラマー(新日本石油株式会社(現JXエネルギー株式会社)製、商品名:「ライトテトラマー」)を用いて、183℃以上208℃以下の加熱条件で分留してアルキレン化合物(a)を得た。
得られたアルキレン化合物(a)は、後述するガスクロマトグラフィー質量分析において、40個のピークを有していた。アルキレン化合物の分布は、特開2014-013384号公報の「アルキレン化合物Aの質量分析ガスクロマトグラフィーによる分析」に記載の方法に則って測定し、主たる成分が、C9H18:0.5質量%、C10H20:4質量%、C11H22:20質量%、C12H24:66質量%、C13H26:9質量%、C14H28:0.5質量%であることを確認した。
(アルケニル無水コハク酸の製造)
1Lの日東高圧株式会社製オートクレーブにアルキレン化合物(a) 542.4g、無水マレイン酸 157.2g、抗酸化剤「チェレックス-O」(製品名、SC有機化学株式会社製、Triisooctyl phosphite) 0.4g、重合禁止剤としてブチルハイドロキノン 0.1gを仕込み、加圧窒素置換(0.2MPaG)を3回繰り返した。続いて、60℃で撹拌開始後、230℃まで1時間かけて昇温して6時間反応を行った。反応温度到達時の圧力は、0.3MPaGであった。反応終了後、80℃まで冷却し、常圧(101.3kPaabs)に戻して1Lの四つ口フラスコに移しかえた。180℃まで撹拌しながら昇温し、1.3kPaabsにて残存アルキレン化合物を1時間で留去した。続いて、室温(25℃)まで冷却後、常圧(101.3kPaabs)に戻して、目的物のアルケニル無水コハク酸 406.1gを得た。酸価より求めたアルケニル無水コハク酸の平均分子量は268であった。
実施例1~12、比較例1~4
1,2-プロパンジオール(以下、「1,2-PD」ともいう。)を1502g、テレフタル酸を2296g(1,2-PD 100モルに対して70モル)、及び、前記アルケニル無水コハク酸を1012g(1,2-PD 100モルに対して19モル)、並びに、表1に示す化合物(A)(触媒)又はその他化合物(触媒)、並びに、化合物(B)又はその他化合物を、表1に示す使用量で、窒素導入管、98℃の熱水を通した分留管を装着した脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、180℃で1時間保温した後に180℃から210℃まで10℃/時間で昇温し、その後210℃で10時間縮重合させた。その後、無水トリメリット酸を190g(1,2-PD 100モルに対して5モル)添加し、210℃で1時間反応させた後、更に210℃で10kPaの減圧下にて軟化点115℃まで反応を行って、ポリエステルを得た。
1,2-PDを975g、ポリエチレンテレフタレート「RAMAPET L1」」(Indorama Ventures社製、IV値:0.60)を1648g(1,2-PD 60モルに対して40モル)、テレフタル酸を1069g(1,2-PD 60モルに対して30モル)、前記アルケニル無水コハク酸を1099g(1,2-PD 60モルに対して19モル)、表1に示す化合物(A)(触媒)及び化合物(B)を、表1に示す使用量で、窒素導入管、98℃の熱水を通した分留管を装着した脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、180℃で1時間保温した後に180℃から210℃まで10℃/時間で昇温し、その後210℃で10時間縮重合させた。その後、無水トリメリット酸を206g(1,2-PD 60モルに対して5モル)添加し、210℃で1時間反応させた後、更に210℃で10kPaの減圧下にて軟化点115℃まで反応を行って、ポリエステルを得た。
1,2-PDを1188g、1,4-ブタンジオールを352g(1,2-PD 80モルに対して20モル)、テレフタル酸を2271g(1,2-PD 80モルに対して70モル)、前記アルケニル無水コハク酸を1001g(1,2-PD 80モルに対して19モル)、表1に示す化合物(A)(触媒)及び化合物(B)を、表1に示す使用量で、窒素導入管、98℃の熱水を通した分留管を装着した脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、180℃で1時間保温した後に180℃から210℃まで10℃/時間で昇温し、その後210℃で10時間縮重合させた。その後、無水トリメリット酸を188g(1,2-PD 80モルに対して5モル)添加し、210℃で1時間反応させた後、更に210℃で10kPaの減圧下にて軟化点115℃まで反応を行って、ポリエステルを得た。
1,2-PDを712g、ネオペンチルグリコールを974g(1,2-PD 50モルに対して50モル)、テレフタル酸を2176g(1,2-PD 50モルに対して70モル)、前記アルケニル無水コハク酸を959g(1,2-PD 50モルに対して19モル)、表1に示す化合物(A)(触媒)及び化合物(B)を、表1に示す使用量で、窒素導入管、98℃の熱水を通した分留管を装着した脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、180℃で1時間保温した後に180℃から210℃まで10℃/時間で昇温し、その後210℃で10時間縮重合させた。その後、無水トリメリット酸を180g(1,2-PD 50モルに対して5モル)添加し、210℃で1時間反応させた後、更に210℃で10kPaの減圧下にて軟化点115℃まで反応を行って、ポリエステルを得た。
各実施例、各比較例で得られたポリエステル100質量部に対して、カーボンブラック「MOGUL(登録商標) L」(キャボット社製)4質量部、負帯電性荷電制御剤「ボントロン(登録商標) S-34」(オリヱント化学工業株式会社製)1質量部、及びポリプロピレンワックス「NP-105」(三井化学株式会社製、融点140℃)2質量部を、ヘンシェルミキサーで均一に混合し、混合物を得た。
得られた混合物を、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出機を用い、スクリュー回転速度200r/min、バレル設定温度80℃で溶融混練し、溶融混練物を得た。混合物の供給速度は20kg/時間、平均滞留時間は約18秒であった。
得られた溶融混練物を冷却、粗粉砕した後、ジェットミルにて粉砕し、分級して、体積中位粒径(D50)が7.5μmの粉体(トナー母粒子)を得た。
複写機「AR-505」(シャープ株式会社製)の定着機を装置外での定着が可能なように改良した装置にトナーを実装し、未定着の状態で印刷物を得た(印字面積:2cm×12cm、付着量:0.5mg/cm2)。その後、総定着圧が40kgfになるように調整した定着機(定着速度300mm/秒)を用い、定着ロールの温度を100℃から240℃へと5℃ずつ順次上昇させながら、各温度で未定着状態の印刷物の定着試験を行った。得られた印刷物の画像部分にセロハン粘着テープ「ユニセフセロハン」(三菱鉛筆株式会社製、幅:18mm、JIS Z1522)を貼り付け、定着機の定着ロールとは別の、30℃に設定した定着ローラーに通過させた後、前記セロハン粘着テープを剥がした。前記セロハン粘着テープを貼る前の画像部分の反射画像濃度と、セロハン粘着テープを剥がした後の画像部分の反射画像濃度とを反射濃度計「RD-915」(グレタグマクベス社製)を用いて測定し、両者の比率((テープ剥離後の反射画像濃度/テープ貼付前の反射画像濃度)×100)が最初に90%を越える定着ロールの温度を最低定着温度とした。最低定着温度が低いほど、低温定着性が優れる。なお、定着紙には、「CopyBond SF-70NA」(シャープ株式会社製、75g/m2)を使用した。
印刷機「ページプレスト(登録商標) N-4」(カシオ計算機株式会社製、定着:接触定着方式、現像:非磁性一成分現像方式、現像ロール径:2.3cm)にトナーを実装し、温度32℃、湿度85%の環境下にて黒化率5.5%の斜めストライプのパターンを連続して印刷した。途中、500枚ごとに黒ベタ画像を印字し、画像上のスジの有無を確認した。印刷は、画像上にスジが発生した時点で中止し、最高9000枚まで行った。画像上にスジが目視にて観察された時点までの印字枚数を、現像ロールにトナーが融着及び/又は固着したことによりスジが発生した枚数とし、耐久性を評価した。すなわち、スジの発生しない枚数が多いほど、トナーの耐久性が高いものと判断できる。
複写機「AR-505」(シャープ株式会社製)の定着機を装置外での定着が可能なように改良した装置にトナーを実装し、未定着の状態で印刷物を得た(印字面積:20cm×20cm、付着量:0.5mg/cm2)。その後、総定着圧が40kgfになるように調整した定着機(定着速度300mm/秒)を用い、定着ロールの温度を160℃として定着させた。この画像を、50g/cm2で30秒間内側に折り曲げ、再度開き、破損した画像を柔らかい布でふき取った後の、画像欠損の幅の最大値を印刷物の耐折り曲げ性の指標とした。画像欠損の幅の最大値が小さいほど、印刷物の耐折り曲げ性が良好である。なお、定着紙には、「CopyBond SF-70NA」(シャープ株式会社製、75g/m2)を使用した。
互いに隣接する5個以上の各炭素原子上の2つの水素原子のうち少なくとも1つがヒドロキシ基で置換されたシクロへキサン環を有する化合物(B)の存在下、炭素数2以上6以下の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを含む原料組成物を縮重合させて得られたポリエステル(実施例1~15)を結着樹脂として含有する静電荷像現像用トナーは、低温定着性及び耐久性に優れ、かつ該トナーを用いて得られた印刷物の耐折り曲げ性に優れていることがわかる。
それに対して、化合物(A)ではなくSn-C結合を有する錫化合物を用いて縮重合させて得られたポリエステル(比較例1)を結着樹脂として含有する静電荷像現像用トナーは、該トナーを用いて得られた印刷物の耐折り曲げ性が、実施例1~15で示すポリエステルを結着樹脂として含有するトナーよりも劣ることがわかる。
また、化合物(B)を用いず、又は化合物(B)以外の化合物を用いて縮重合させて得られたポリエステル(比較例2~4)を結着樹脂として含有する静電荷像現像用トナーは、耐久性、及び印刷物の耐折り曲げ性が、いずれも実施例1~15で示すポリエステルを結着樹脂として含有するトナーよりも劣ることがわかる。
Claims (8)
- Sn-C結合を有していない錫(II)化合物(A)、及び
互いに隣接する5個以上の各炭素原子上の2つの水素原子のうち少なくとも1つがヒドロキシ基で置換されたシクロへキサン環を有する化合物(B)の存在下、炭素数2以上6以下の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを含む原料組成物を縮重合させるトナー用縮重合樹脂の製造方法であって、
前記化合物(A)が、炭素数2以上28以下のカルボン酸基を有するカルボン酸錫(II)、酸化錫(II)及びハロゲン化錫(II)からなる群より選ばれる1種以上であり、
前記化合物(B)が、イノシトール、イノソース、及びクエルシトール、並びにそれらの誘導体からなる群より選ばれる1種以上であり、
前記カルボン酸成分が、ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸、並びにそれらの無水物及び炭素数1以上3以下のアルキルエステル等の誘導体からなる群より選ばれる1種以上であり、
前記原料組成物100質量部に対して、前記化合物(B)の使用量(Y)が0.001質量部以上1質量部以下である、トナー用縮重合樹脂の製造方法。 - 前記化合物(A)が、炭素数2以上28以下のカルボン酸基を有するカルボン酸錫(II)である、請求項1に記載のトナー用縮重合樹脂の製造方法。
- 前記原料組成物100質量部に対して、前記化合物(A)の使用量(X)が0.01質量部以上2質量部以下である、請求項1又は2に記載のトナー用縮重合樹脂の製造方法。
- 前記化合物(B)の使用量(Y)と前記化合物(A)の使用量(X)との質量比(Y/X)が0.01以上0.5以下である、請求項1~3のいずれかに記載のトナー用縮重合樹脂の製造方法。
- 前記化合物(B)がイノシトールである、請求項1~4のいずれかに記載のトナー用縮重合樹脂の製造方法。
- 前記脂肪族ジオールが、第二級炭素原子に結合したヒドロキシ基を有する炭素数3以上6以下の脂肪族ジオールを含む、請求項1~5のいずれかに記載のトナー用縮重合樹脂の製造方法。
- 前記原料組成物が、ポリエチレンテレフタレートを含む、請求項1~6のいずれかに記載のトナー用縮重合樹脂の製造方法。
- 請求項1~7のいずれかに記載の製造方法により得られるトナー用縮重合樹脂を使用する、静電荷像現像用トナーの製造方法。
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