JP2023025289A - トナー用結着樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

トナー用結着樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】低温定着性、保存性、及び耐擦過性に優れるトナー用結着樹脂組成物、電子写真用トナー、及び、結着樹脂組成物の製造方法に関する。【解決手段】〔1〕工程1:炭化水素ワックス(I)の存在下で、アルコール成分と、カルボン酸成分と、水酸基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種の基を有する炭化水素ワックス(II)とを重縮合して、ポリエステルと炭化水素ワックス(I)とを含有する混合物を得る工程と、工程2:工程1で得られた混合物に両反応性モノマー及び、スチレンアクリルセグメントを形成するモノマーを添加し付加重合して複合樹脂(A)を含む樹脂組成物を得る工程と、を含み、前記結晶性ポリエステル(C)が、炭素数4以上8以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分と、炭素数4以上6以下の脂肪族ジカルボン酸を含むカルボン酸成分との重縮合物である、トナー用結着樹脂組成物の製造方法、及び〔2〕上記〔1〕に記載の方法で得られるトナー用結着樹脂組成物を含むトナー原料を溶融混練して溶融混合物を得る工程を含む、電子写真用トナーの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられるトナー用結着樹脂組成物、電子写真用トナー、及び結着樹脂組成物の製造方法に関する。
電子写真方式の印刷装置の高速化、省エネルギー化の観点から、低温定着性に優れた電子写真トナーが要求されている。
特許文献1では、ポリエステル樹脂部分とビニル系樹脂部分とを有する非晶質の複合樹脂と結晶性ポリエステルを含有するトナー用結着樹脂組成物であって、前記複合樹脂が、融点が60~110℃である水酸基を有する炭化水素ワックス由来の構造部位を0.5~10質量%含み、前記結晶性ポリエステルが、炭素数6~12の脂肪族ジオールを含む原料モノマーを用いて得られる、トナー用結着樹脂組成物が記載されている。当該トナー用結着樹脂組成物によれば、得られるトナーの低温定着性と保存性を両立できると記載されている。
特許文献2では、ポリエステルセグメント(A1)及びスチレンアクリルセグメント(A2)を有する複合樹脂(A)と、結晶性ポリエステル(C)と、炭化水素ワックス(I)と、を含み、前記ポリエステルセグメント(A1)が、炭化水素ワックス(II)由来の構成単位を有し、前記炭化水素ワックス(II)が、水酸基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種の基を有し、融点が60℃以上130℃以下であり、数平均分子量が400以上である、電子写真トナーが記載されている。当該トナーによれば、低温定着性、高湿下での保存性及び発色性に優れると記載されている。
特開2015-007765号公報 特開2017-090573号公報
電子写真方式の印刷装置では、熱ロール等で加熱し、トナーを紙等の印刷媒体に定着させるが、当該加熱温度を低くすることで消費エネルギーを低下させることができるため、低温定着性が求められる。一方で、低温定着性を高めると、印刷物を高温高湿条件下で重ねて保存すると、表面のトナーが融着し、印刷物が貼り付くという課題が生じやすくなった。更には、印刷物を擦った際の色落ちが観測され、耐擦過性の向上が求められていた。
本発明は、低温定着性、保存性、及び耐擦過性に優れるトナー用結着樹脂組成物、電子写真用トナー、及び、結着樹脂組成物の製造方法に関する。
本発明は、以下の〔1〕~〔3〕に関する。
〔1〕ポリエステルセグメント(A1)及びスチレンアクリルセグメント(A2)を有する複合樹脂(A)と、結晶性ポリエステル(C)と、炭化水素ワックス(I)と、を含み、
前記ポリエステルセグメント(A1)が、水酸基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種の基を有する炭化水素ワックス(II)由来の構成単位を有し、
且つ、
前記結晶性ポリエステル(C)が、炭素数4以上8以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分と、炭素数4以上6以下の脂肪族ジカルボン酸を含むカルボン酸成分との重縮合物である、トナー用結着樹脂組成物。
〔2〕上記〔1〕に記載のトナー用結着樹脂組成物を含有する電子写真用トナー。
〔3〕工程1:炭化水素ワックス(I)の存在下で、アルコール成分と、カルボン酸成分と、水酸基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種の基を有する炭化水素ワックス(II)とを重縮合して、ポリエステルと炭化水素ワックス(I)とを含有する混合物を得る工程と、
工程2:工程1で得られた混合物に両反応性モノマー及び、スチレンアクリルセグメントを形成するモノマーを添加し付加重合して複合樹脂(A)を含む樹脂組成物を得る工程と、
を含み、
前記結晶性ポリエステル(C)が、炭素数4以上8以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分と、炭素数4以上6以下の脂肪族ジカルボン酸を含むカルボン酸成分との重縮合物である、トナー用結着樹脂組成物の製造方法。
本発明によれば、低温定着性、保存性、及び耐擦過性に優れるトナー用結着樹脂組成物、電子写真用トナー、及び、結着樹脂組成物の製造方法を提供することができる。
[トナー用結着樹脂組成物]
本発明のトナー用結着樹脂組成物(以下、単に「結着樹脂組成物」ともいう)は、ポリエステルセグメント(A1)及びスチレンアクリルセグメント(A2)を有する複合樹脂(A)と、結晶性ポリエステル(C)と、炭化水素ワックス(I)と、を含む。
そして、前記ポリエステルセグメント(A1)が、水酸基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種の基を有する炭化水素ワックス(II)由来の構成単位を有する。
加えて、前記結晶性ポリエステル(C)が、炭素数4以上8以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分と、炭素数4以上6以下の脂肪族ジカルボン酸を含むカルボン酸成分との重縮合物である。
以上の構成により、低温定着性、保存性、及び耐擦過性に優れるトナー用結着樹脂組成物等を提供することができる。
本発明の効果が得られる理由は定かではないが以下のように推測できる。
結晶性ポリエステルは、低温定着のためには複合樹脂(A)との親和性の高さが重要である所、炭素数4以上8以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分と、炭素数4以上6以下の脂肪族ジカルボン酸を含むカルボン酸成分との重縮合物である結晶性ポリエステル(C)は、複合樹脂(A)との親和性が高く特に低温定着性に優れる。
また、複合樹脂(A)に結合された、炭化水素ワックス(II)により、微分散化された炭化水素ワックス(I)により、炭素数4以上8以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分と、炭素数4以上6以下の脂肪族ジカルボン酸を含むカルボン酸成分との重縮合物である結晶性ポリエステル(C)が、微結晶化することを見出した。そのため、定着後速やかに結晶性ポリエステル(C)が結晶化し、印字物の保存性が高くなる。そしてこの微結晶化結晶性ポリエステル(C)が、フィラー効果を発現、耐擦過性が高くなると推測される。
本発明において、「結晶性樹脂」とは、示差走査熱量計(DSC)による吸熱の最高ピーク温度(℃)に対する軟化点(℃)の比、すなわち[(軟化点)/(吸熱の最高ピーク温度)]で定義される結晶性指数の値が0.6以上1.4未満、好ましくは0.8以上1.2以下である樹脂をいう。また、「非晶質樹脂」とは、前記結晶性指数の値が1.4以上、又は0.6未満の樹脂をいう。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、実施例に記載する測定方法の条件下で観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。最高ピーク温度が軟化点と20℃以内の差であれば結晶性樹脂の融点とし、軟化点との差が20℃を超えるピークは非晶質ポリエステルのガラス転移温度に起因するピークとする。
なお、本発明において、単に「樹脂」という場合は、結晶性樹脂及び非晶質樹脂の両方を意味する。
「結着樹脂」とは、複合樹脂(A)、非晶質ポリエステル(B)、結晶性ポリエステル(C)等の樹脂成分を意味する。
ポリエステル及びポリエステルセグメントにおいて、「由来の構成単位」とは、原料モノマーの水酸基又はカルボキシ基が脱水縮合した単位を意味する。
ビスフェノールAは、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンを意味する。
(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートから選ばれる少なくとも1種を意味する。
結着樹脂組成物は、炭化水素ワックス(I)の存在下、アルコール成分と、カルボン酸成分と、水酸基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種の基を有する炭化水素ワックス(II)とを重縮合をすることを経て得られるものであることが好ましい。
結着樹脂組成物は、前述の重縮合後、更に、両反応性モノマー及び、スチレンアクリルセグメントを形成するモノマーを添加し付加重合して複合樹脂(A)を含む樹脂組成物を得ることを経て得られるものであることが好ましい。
<炭化水素ワックス(I)>
本発明のトナー用樹脂組成物は、保存性、及び耐擦過性に優れる観点から、炭化水素ワックス(I)を含有する。炭化水素ワックス(I)としては、例えば、ポリプロピレン系ワックス、ポリエチレン系ワックス等の未変性炭化水素ワックスが挙げられる。
ポリプロピレン系ワックスは、一般のプロピレンの重合によって得る方法、一般成形用の容器等に使用されるポリプロピレンを熱分解して得る方法、一般成形用の容器等に使用されるポリプロピレンの製造時に副生成される低分子量のポリプロピレンを分離生成する方法等により得られるポリプロピレンワックス、又はこれらポリプロピレンワックスの誘導体が挙げられる。ポリプロピレンワックスの誘導体としては、例えば酸化ポリプロピレンワックス、即ち、空気酸化等の方法によりポリプロピレンワックス骨格にカルボキシル基や水酸基等を付与した酸化ポリプロピレンワックスの他に、マレイン酸変性、フマル酸変性、イタコン酸変性、又はスチレン変性等の変性体が挙げられる。これらの中でも、好ましくはポリプロピレンワックス及びマレイン酸変性ポリプロピレンワックスから選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは、ポリプロピレンワックスである。
炭化水素ワックス(I)の融点は、保存性、及び耐擦過性をより向上させる観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは65℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性を高める観点から、好ましくは170℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは120℃以下、更に好ましくは90℃以下である。
なお、炭化水素ワックスの融点の測定方法は、後述する実施例に記載の方法による。
炭化水素ワックス(I)の重量平均分子量は、低温定着性、保存性、及び耐擦過性をより向上させる観点から、好ましくは300以上、より好ましくは500以上、更に好ましくは700以上であり、そして、好ましくは50,000以下、より好ましくは30,000以下、更に好ましくは8,000以下、更に好ましくは1,000以下である。重量平均分子量は、標準試料としてポリスチレンを用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定する。
〔炭化水素ワックス(I)の含有量〕
炭化水素ワックス(I)の含有量は、複合樹脂(A)のアルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは6質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは16質量部以下、更に好ましくは13質量部以下である。
炭化水素ワックス(I)の含有量は、結着樹脂組成物中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更に好ましくは9質量%以下である。
<複合樹脂(A)>
複合樹脂(A)は、ポリエステルセグメント(A1)及びスチレンアクリルセグメント(A2)を有する。ポリエステルセグメント(A1)は、水酸基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種の基を有する炭化水素ワックス(II)由来の構成成分を有する。
複合樹脂(A)は、好ましくは、ポリエステルセグメント(A1)と、スチレンアクリルセグメント(A2)と、ポリエステルセグメント(A1)及びスチレンアクリルセグメント(A2)と結合する両反応性モノマーに由来する構成単位(A3)とを有することが好ましい。
また、本発明の目的を阻害しない範囲内でこれら3つの部位以外の部位を含んでいてもよいが、前記3つの部位のみからなることが好ましい。
〔ポリエステルセグメント(A1)〕
ポリエステルセグメント(A1)は、アルコール成分(A1-al)とカルボン酸成分(A1-ac)との重縮合物である。
≪アルコール成分(A1-al)≫
アルコール成分(A1-al)としては、例えば、脂肪族ジオール、芳香族ジオール、3価以上の多価アルコールが挙げられる。これらのアルコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
アルコール成分(A1-al)は、好ましくはビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含有し、より好ましくは式(I):
Figure 2023025289000001

(式中、OR1及びR1Oはアルキレンオキサイドであり、R1は炭素数2又は3のアルキレン基、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示す正の数を示し、xとyの和は1~16である)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含む。
前記式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。これらの中でも、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物及びビスフェノールAのエチレンオキシド付加物の組み合せが好ましい。
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物と、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物とのモル比(ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物/ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物)は、好ましくは10/90以上、より好ましくは15/85以上、更に好ましくは20/80以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは70/30以下、更に好ましくは50/50以下である。
ポリエステルセグメントA1の前記式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の量は、アルコール成分(A1-al)中、好ましくは80モル%以上、より好ましくは85モル%以上、より好ましくは90モル%以上、より好ましくは100モル%である。
≪カルボン酸成分(A1-ac)≫
カルボン酸成分(A1-ac)としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸、並びにそれらの酸無水物及びそれらのアルキル(炭素数1以上3以下)エステルが挙げられる。これらの中でも、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸が挙げられる。これらの中でも、テレフタル酸が好ましい。
芳香族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分(A1-ac)中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは70モル%以上であり、そして、100モル%以下、好ましくは98モル%以下である。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸が挙げられる。また、炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸として、例えば、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸が挙げられる。これらの中でも、フマル酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸が好ましく、フマル酸がより好ましい。
脂肪族ジカルボン酸が含まれる場合、脂肪族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分(A1-ac)中、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、更に好ましくは20モル%以上であり、そして、好ましくは40モル%以下、より好ましくは35モル%以下、更に好ましくは30モル%以下である。
3価以上の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸が挙げられる。これらの中でも、トリメリット酸又はその無水物が好ましい。
3価以上の多価カルボン酸の量は、カルボン酸成分(A1-ac)中、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、より好ましくは8モル%以上であり、そして、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、より好ましくは20モル%以下である。
以上のカルボン酸成分の中でも、テレフタル酸、並びに、トリメリット酸又はその無水物の組合せが好ましい。
アルコール成分(A1-al)由来の構成単位に対するカルボン酸成分(A1-ac)由来の構成単位のモル比〔カルボン酸成分/アルコール成分〕は、反応性及び物性調整の観点から、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.3以下、より好ましくは1.1以下、より好ましくは1.0未満である。
なお、物性調整の観点から、アルコール成分には1価のアルコールが適宜含有されていてもよく、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が適宜含有されていてもよい。
≪炭化水素ワックス(II)由来の構成成分≫
ポリエステルセグメント(A1)は、保存性、及び耐擦過性に優れるトナーを得る観点から、水酸基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種の基を有する炭化水素ワックス(II)由来の構成成分を含む。
ポリエステルセグメント(A1)は、炭化水素ワックス(II)由来の構成成分を有することで、炭化水素ワックス(I)を、非晶質化させることができ、低温定着性、保存性及び耐擦過性を向上させることができる。
ポリエステルセグメント(A1)は、好ましくは、アルコール成分とカルボン酸成分と炭化水素ワックス(II)とを重縮合させることで得られるものである。
炭化水素ワックス(II)は、優れた保存性及び耐擦過性を得る観点から、水酸基及びカルボキシ基を有する炭化水素ワックスが好ましい。
以降、「水酸基を有する炭化水素ワックス」は、水酸基以外にカルボキシ基を有していてもよいが、カルボキシ基に基づく酸価と比較して、水酸基に基づく水酸基価が同等又は高いワックスを意味する。また、「カルボキシ基を有する炭化水素ワックス」は、カルボキシ基以外に水酸基を有していてもよいが、水酸基に基づく水酸基価と比較して、カルボキシ基に基づく酸価が高いワックスを含む。
また、水酸基を有するワックスとカルボキシ基を有するワックスを、同時に用いてもよいが、重縮合の反応性の観点から、水酸基を有するワックスの方が好ましい。
水酸基を有する炭化水素ワックス(II)としては、例えば、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス等の炭化水素ワックスを酸化処理により変性させて得られるものである。酸化処理の方法としては、例えば、特開昭62-79267号公報、特開2010-197979号公報記載の方法等が挙げられる。
具体的には、炭化水素ワックスをホウ酸の存在下で、酸素を含有するガスにより液相酸化する方法が挙げられる。水酸基を有する炭化水素ワックス(II)の市販品としては、例えば、「ユニリン700」、「ユニリン425」、「ユニリン550」(以上、ベーカー・ペトロライト社製)、「パラコール6420」、「パラコール6470」、「パラコール6490」(以上、日本精蝋株式会社製)が挙げられる。
水酸基を有する炭化水素ワックス(II)の水酸基価は、好ましくは40mgKOH/g以上、より好ましくは55mgKOH/g以上、より好ましくは65mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは180mgKOH/g以下、より好ましくは150mgKOH/g以下、より好ましくは120mgKOH/g以下、より好ましくは110mgKOH/g以下である。
カルボキシ基を有する炭化水素ワックス(II)は、酸変性ワックスが挙げられ、ポリエチレンワックス等のワックスに、カルボキシ基を導入することで得ることできる。
酸変性の方法としては、例えば、特開2006-328388号公報、特開2007-84787号公報等に記載の方法が挙げられる。具体的には、炭化水素ワックスの溶融物に、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化化合物(反応開始剤)とカルボン酸化合物を添加して反応させることで、カルボキシ基を導入することができる。
反応原料となる炭化水素ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、オレフィン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックスが挙げられる。これらの中でも、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスが好ましい。反応原料となるパラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの市販品としては、例えば、日本精蝋株式会社製の「HNP-11」、「HNP-9」、「HNP-10」、「FT-0070」、「HNP-51」、「FNP-0090」が挙げられる。
カルボキシ基を有する炭化水素ワックス(II)としては、例えば、「ハイワックス1105A」(無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、三井化学株式会社製)が挙げられる。カルボキシ基を有する炭化水素ワックス(II)の酸価は、好ましくは40mgKOH/g以上、より好ましくは50mgKOH/g以上、より好ましくは55mgKOH/g以上であり、そして、トナーの耐熱保存性の観点から、好ましくは180mgKOH/g以下、より好ましくは150mgKOH/g以下、より好ましくは120mgKOH/g以下、より好ましくは100mgKOH/g以下である。
炭化水素ワックス(II)の水酸基価と酸価との合計値は、ポリエステル樹脂の原料モノマーと炭化水素ワックス(II)との反応性を高め、ワックス(A)の分散性を高める観点から、好ましくは40mgKOH/g以上、より好ましくは50mgKOH/g以上、より好ましくは60mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは200mgKOH/g以下、より好ましくは180mgKOH/g以下、より好ましくは160mgKOH/g以下、より好ましくは140mgKOH/g以下である。
炭化水素ワックス(II)の融点は、低温定着性、印刷物の保存性及び印刷物の耐擦過性をより向上させる観点から、好ましくは60℃以上であり、好ましくは65℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは130℃以下であり、好ましくは110℃以下である。
炭化水素ワックス(II)の数平均分子量は、低温定着性、印刷物の保存性及び印刷物の耐擦過性をより向上させる観点から、好ましくは400以上であり、より好ましくは500以上、更に好ましくは600以上であり、そして、好ましくは3000以下、より好ましくは2000以下、更に好ましくは1700以下である。数平均分子量は、標準試料としてポリスチレンを用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定する。
炭化水素ワックス(II)由来の構成成分の量は、複合樹脂(A)のアルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上、更に好ましくは4質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下である。
炭化水素ワックス(I)と炭化水素ワックス(II)由来の構成成分との総量は、複合樹脂(A)のアルコール成分及びカルボン酸成分の合計100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であり、そして、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。
炭化水素ワックス(I)の配合量が、低温定着性、保存性、及び耐擦過性に優れるトナーを得る観点から、炭化水素ワックス(I)及び炭化水素ワックス(II)の合計配合量に対して、好ましくは25質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下である。
〔スチレンアクリルセグメント(A2)〕
スチレンアクリルセグメント(A2)は、優れた低温定着性、高湿下での保存性及び耐擦過性を得る観点から、スチレン化合物及び(メタ)アクリレートを含む原料モノマーの付加重合物である。
原料モノマーは、好ましくは、スチレン化合物、及び、炭素数6以上22以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを含み、より好ましくは、スチレン及び炭素数6以上22以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを含む。
スチレン化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン等が挙げられ、好ましくはスチレンである。
(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は、好ましくは6以上、より好ましくは7以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下である。
(メタ)アクリレートは、好ましくは(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸パルミチル、及び(メタ)アクリル酸ラウリルから選ばれる1種以上であり、より好ましくは(メタ)アクリル酸オクチル、及び(メタ)アクリル酸ステアリルから選ばれる1種以上であり、より好ましくは(メタ)アクリル酸オクチルである。
スチレンアクリルセグメント(A2)の原料モノマーとしては、上記のモノマーと共に、他のビニル系モノマーを併せて用いることができる。
他のビニル系モノマーとしては、エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸のエステル;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N-ビニルピロリドン等のN-ビニル化合物類等が挙げられる。
スチレンアクリルセグメント(A2)の原料モノマー中の、スチレン化合物の量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上であり、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。
スチレンアクリルセグメント(A2)の原料モノマー中の、炭素数6以上22以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
スチレンアクリルセグメント(A2)の原料モノマー中の、スチレン化合物及び炭素数6以上22以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの総含有量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは99質量%以上であり、そして、100質量%以下である。
〔両反応性モノマー由来の構成単位(A3)〕
複合樹脂(A)は、更に、両反応性モノマー由来の構成単位(A3)を含むことが好ましい。複合樹脂(A)の原料モノマーとして両反応性モノマーを用いると、当該両反応性モノマーがポリエステルセグメント(A1)とスチレンアクリルセグメント(A2)との両方と反応することにより、複合樹脂(A)を良好に製造することができる。
すなわち、本発明の複合樹脂(A)は、ポリエステルセグメント(A1)の原料モノマーと、スチレンアクリルセグメント(A2)の原料モノマーと、両反応性モノマーとを重合させることにより得られるものが好ましい。これにより、複合樹脂(A)は、両反応性モノマー由来の構成単位(A3)を介してポリエステルセグメント(A1)とスチレンアクリルセグメント(A2)とが結合し、ポリエステルセグメント(A1)とスチレンアクリルセグメント(A2)とが均一に分散したものとなり、発色性が良好なものとなる。
両反応性モノマーとしては、分子内に、カルボキシ基、水酸基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選ばれる1種以上の官能基と、エチレン性不飽和結合とを有する化合物が挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、好ましくは水酸基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種の基とエチレン性不飽和結合とを有する化合物、より好ましくはカルボキシ基とエチレン性不飽和結合とを有する化合物である。
具体的には、両反応性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。重縮合反応及び付加重合反応の反応性の観点から、アクリル酸又はメタクリル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
両反応性モノマーの量は、ポリエステルセグメント(A1)の原料モノマー100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。
複合樹脂(A)中のポリエステルセグメント(A1)とスチレンアクリルセグメント(A2)との質量比[(A1)/(A2)]は、好ましくは60/40以上、より好ましくは65/35以上、更に好ましくは70/30以上であり、そして、好ましくは98/2以下、より好ましくは95/5以下、更に好ましくは90/10以下、より好ましくは85/15以下である。
なお、上記質量比の計算において、ポリエステルセグメント(A1)の質量は、ポリエステルセグメント(A1)の原料モノマーの合計量から、縮合反応時の脱水量を除去した値を用い、また、スチレンアクリルセグメント(A2)の質量は、スチレンアクリルセグメント(A2)の原料モノマー及び重合開始剤の合計量を用いる。また、必要により用いられる両反応性モノマーは、ポリエステルセグメント(A1)の質量として算出される。
複合樹脂(A)中の、ポリエステルセグメント(A1)、スチレンアクリルセグメント(A2)、及び両反応性モノマー由来の構成単位(A3)の含有量の合計は、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、より好ましくは99モル%以上、より好ましくは100モル%である。
〔結着樹脂の製造方法〕
トナー用結着樹脂組成物の製造方法は、低温定着性、保存性、及び耐擦過性に優れるトナー用結着樹脂組成物を得る観点から、好ましくは、
工程1:炭化水素ワックス(I)の存在下で、アルコール成分と、カルボン酸成分と、水酸基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種の基を有する炭化水素ワックス(II)とを重縮合して、ポリエステルと炭化水素ワックス(I)とを含有する混合物を得る工程と、
工程2:工程1で得られた混合物に両反応性モノマー及び、スチレンアクリルセグメントを形成するモノマーを添加し付加重合して複合樹脂(A)を含む樹脂組成物を得る工程と、
を含む。
上記の製造方法において、結晶性ポリエステル(C)が、炭素数4以上8以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分と、炭素数4以上6以下の脂肪族ジカルボン酸を含むカルボン酸成分との重縮合物である。
(重縮合)
重縮合においては、必要に応じて、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)、酸化ジブチル錫、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のエステル化触媒をアルコール成分及びカルボン酸成分の合計量100質量部に対し0.01質量部以上5質量部以下;没食子酸(3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸と同じ。)等のエステル化助触媒をアルコール成分及びカルボン酸成分の合計量100質量部に対し0.001質量部以上0.5質量部以下用いて重縮合してもよい。
重縮合の温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは160℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下である。
なお、重縮合は、不活性ガス雰囲気中にて行ってもよい。
(付加重合)
付加重合においては、スチレンアクリルセグメント(A2)の原料モノマー及び両反応性モノマーを付加重合する。
付加重合の温度は、好ましくは110℃以上、より好ましくは130℃以上であり、そして、好ましくは220℃以下、より好ましくは200℃以下である。また、重合の後半に反応系を減圧することにより、反応を促進させることが好ましい。
付加重合の重合開始剤としては、例えば、ジ-tert―ブチルパーオキサイド等の過酸化物、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物等の公知の重合開始剤を使用することができる。
重合開始剤の使用量は、スチレンアクリルセグメント(A2)の原料モノマー100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
〔複合樹脂(A)の物性〕
複合樹脂(A)の酸価は、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、更に好ましくは10mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下である。
複合樹脂(A)の水酸基価は、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、更に好ましくは10mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは50mgKOH/g以下、より好ましくは45mgKOH/g以下、更に好ましくは40mgKOH/g以下である。
複合樹脂(A)の軟化点は、好ましくは70℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは110℃以上であり、そして、好ましくは160℃以下、より好ましくは155℃以下、更に好ましくは150℃以下である。
複合樹脂(A)のガラス転移温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、更に好ましくは50℃以上であり、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは85℃以下、更に好ましくは70℃以下である。
なお、酸価、水酸基価、融点、軟化点及びガラス転移温度は、原料モノマー組成、分子量、触媒量等の調整又は反応条件の選択により容易に調整することができる
また、複合樹脂(A)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。2種以上併用する場合、軟化点はその混合物を実施例に記載の方法によって求めた値である。
〔複合樹脂(A)の含有量〕
トナー用樹脂組成物中の複合樹脂(A)の含有量は、全結着樹脂に対して、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは65質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
<非晶質ポリエステル(B)>
本発明の結着樹脂組成物は、好ましくは、非晶質ポリエステル(B)を含む。
非晶質ポリエステル(B)は、例えば、アルコール成分(B-al)とカルボン酸成分(B-ac)との重縮合物である。
アルコール成分(B-al)及びカルボン酸成分(B-ac)の好適な例等は、上述の樹脂(A)のアルコール成分(A-al)及びカルボン酸成分(B-ac)と同様である。
非晶質ポリエステル(B)は、公知の方法により製造でき、例えば、前述の樹脂(A)に示した重縮合反応の条件で製造することができる。
〔非晶質ポリエステル(B)の物性〕
非晶質ポリエステル(B)の酸価は、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、より好ましくは20mgKOH/g以下である。
非晶質ポリエステル(B)の水酸基価は、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは8mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは50mgKOH/g以下、より好ましくは45mgKOH/g以下、より好ましくは40mgKOH/g以下である。
非晶質ポリエステル(B)の軟化点は、好ましくは70℃以上、より好ましくは90℃以上、より好ましくは110℃以上であり、そして、好ましくは140℃以下、より好ましくは135℃以下、より好ましくは130℃以下である。
非晶質ポリエステル(B)のガラス転移温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、より好ましくは50℃以上であり、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは85℃以下、より好ましくは70℃以下である。
なお、酸価、水酸基価、軟化点及びガラス転移温度は、原料モノマー組成、分子量、触媒量等の調整又は反応条件の選択により容易に調整することができる
また、非晶質ポリエステル(B)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。2種以上併用する場合、軟化点及びガラス転移温度はその混合物を実施例に記載の方法によって求めた値である。
〔非晶質ポリエステル(B)の含有量〕
トナー用結着樹脂組成物中の非晶質ポリエステル(B)の含有量は、全結着樹脂に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、更に好ましくは55質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
<結晶性ポリエステル(C)>
結晶性ポリエステル(C)は、低温定着性、保存性、及び耐擦過性に優れる結着樹脂組成物を得る観点から、炭素数4以上8以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分と、炭素数4以上6以下の脂肪族ジカルボン酸を含むカルボン酸成分との重縮合物である。
〔アルコール成分(C-al)〕
炭素数4以上8以下の脂肪族ジオールとしては、例えば、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオールが挙げられる。これらの中でも、低温定着性、印刷物の保存性、及び印刷物の擦過性をより向上させる観点から、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールが好ましく、1,6-ヘキサンジオールがより好ましい。
炭素数4以上8以下の脂肪族ジオールの含有量は、アルコール成分(C-al)中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、そして、100質量%以下であり、そして、更に好ましくは100質量%である。
その他のアルコール成分(C-al)としては、例えば、炭素数2以上3以下の脂肪族ジオール、炭素数10以上の脂肪族ジオール、芳香族ジオール、3価以上の多価アルコールが挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。
他の脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、水素添加ビスフェノールAが挙げられる。
芳香族ジオールとしては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのプロピレンオキサイド付加物、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。
3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンが挙げられる。
〔カルボン酸成分(C-ac)〕
炭素数4以上6以下の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸が挙げられる。これらの中でも、コハク酸、フマル酸が好ましい。
炭素数4以上6以下の脂肪族ジカルボン酸の含有量は、カルボン酸成分(C-ac)中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、そして、100質量%以下であり、そして、更に好ましくは100質量%である。
その他のカルボン酸成分(C-ac)としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸;脂肪族炭化水素基を有するコハク酸等の炭素数8以上の直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸等の脂環式ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸から選ばれる1種以上が好ましい。
結晶性ポリエステル(C)のアルコール成分(C-al)の水酸基に対するカルボン酸成分(C-ac)のカルボキシ基のモル比(カルボキシ基/水酸基)は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.75以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下である。
〔結晶性ポリエステル(C)の製造方法〕
結晶性ポリエステル(C)は、公知の方法により製造でき、例えば、前述の樹脂(A)に示した重縮合反応の条件で製造することができる。
〔結晶性ポリエステル(C)の物性〕
結晶性ポリエステル(C)の酸価は、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、更に好ましくは10mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下である。
結晶性ポリエステル(C)の水酸基価は、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、更に好ましくは10mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは50mgKOH/g以下、より好ましくは40mgKOH/g以下、更に好ましくは30mgKOH/g以下である。
結晶性ポリエステル(C)の軟化点は、低温定着性、印刷物の保存性、及び印刷物の擦過性をより向上させる観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは85℃以上、更に好ましくは100℃以上であり、そして、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下、更に好ましくは120℃以下である。
なお、酸価、水酸基価、及び軟化点は、原料モノマー組成、分子量、触媒量等の調整又は反応条件の選択により容易に調整することができる
また、結晶性ポリエステル(C)は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。2種以上併用する場合、軟化点はその混合物を実施例に記載の方法によって求めた値である。
〔結晶性ポリエステル(C)の含有量〕
結着樹脂組成物中の結晶性ポリエステル(C)の含有量は、全結着樹脂に対して、低温定着性、及び耐擦過性を向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは6質量%以上、更に好ましくは8質量%以上であり、そして、保存性を向上させる観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
<その他、任意成分>
結着樹脂組成物は、電子写真用トナーに用いられる公知の樹脂、例えば、ポリエステル、スチレン-アクリル共重合体、エポキシ、ポリカーボネート、ポリウレタン等を含有していてもよい。
[電子写真用トナー]
電子写真用トナーは、結着樹脂組成物を含有する。
電子写真用トナーは、例えば、トナー粒子、及び外添剤を含有する。
電子写真用トナーは、更に、着色剤、ワックス(III)、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が適宜含有されていてもよい。
なお、本明細書において、ポリエステル系樹脂及び任意で使用される上記の公知の樹脂を含む樹脂成分を「結着樹脂」と称する場合がある。結着樹脂中の複合樹脂(A)、非晶質ポリエステル(B)及び結晶性ポリエステル(C)の合計の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、より好ましくは100質量%である。
(着色剤)
着色剤としては、特に制限はなく公知の着色剤が挙げられ、目的に応じて適宜選択することができる。具体的には、カーボンブラック、無機系複合酸化物、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、及びマラカイトグリーンオクサレート等の種々の顔料;アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、インジコ系、チオインジコ系、フタロシアニン系、アニリン ブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアジン系、及びチアゾール系等の各種染料が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
トナー中の着色剤の含有量は、トナーの画像濃度を向上させる観点から、全結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
(ワックス(III))
ワックス(III)としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン;シリコーンワックス;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド;植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;鉱物又は石油系ワックス;エステルワックス等の合成ワックス等が挙げられる。なお、ポリプロピレンは、炭化水素ワックス(I)と同じものを使用してもよい。
植物系ワックスとしては、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等が挙げられ、トナーの離型性及び低温定着性を向上させる観点から、カルナウバワックスが好ましい。
鉱物又は石油系ワックスとしては、モンタンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等が挙げられ、トナーの離型性及び低温定着性を向上させる観点から、パラフィンワックスが好ましい。
これらのワックスは、1種又は2種以上を用いてもよいが、2種以上を併用することが好ましい。トナーの離型性及び低温定着性を向上させる観点から、パラフィンワックスが好ましい。
ワックス(III)の融点は、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは75℃以上であり、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは85℃以下である。
ワックス(III)の融点は、実施例に記載の方法によって求められる。2種以上併用する場合、融点は、得られるトナーに含有されるワックス中、最も質量比の大きいワックスの融点を、本発明におけるワックスの融点とする。なお、全てが同一の比率の場合は、最も低い融点の値を本発明におけるワックスの融点とする。
ワックス(III)の量は、トナー中の結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、そして、カブリを低減する観点から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。
(荷電制御剤)
荷電制御剤としては、クロム系アゾ染料、鉄系アゾ染料、アルミニウムアゾ染料、及びサリチル酸金属錯体等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。
荷電制御剤の含有量は、全結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
トナー粒子の体積中位粒径(D50)は、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、更に好ましくは10μm以下である。
<外添剤>
トナーには、流動性を向上させるために、更に外添剤を含有させてもよい。外添剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化スズ、酸化亜鉛等の無機材料の微粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の樹脂粒子等の有機微粒子が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。これらの外添剤の中では、シリカが好ましく、疎水化処理剤で処理された疎水性シリカであることがより好ましい。
疎水化処理剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシランが挙げられる。これらの中でもヘキサメチルジシラザンが好ましい。
外添剤を用いて、トナー粒子の表面処理を行う場合、該外添剤の含有量は、トナーの帯電性や流動性の観点から、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.08質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
[電子写真トナーの製造方法]
トナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法、乳化凝集法等の公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。
粉砕トナーである場合、トナーの製造方法は、例えば
工程A:前述の結着樹脂組成物を含むトナー原料を溶融混練する工程、及び
工程B:工程Bで得られた溶融混合物を粉砕、分級しトナー粒子を得る工程
を含む。
工程Aでは、トナー原料中に、荷電制御剤及び着色剤等のその他添加剤を含んでいてもよい。これらのトナー原料は、あらかじめヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機で混合した後、混練機に供給することが好ましい。
溶融混練の温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上であり、そして、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下である。
工程Aの溶融混練には、密閉式ニーダー、一軸押出機、又は二軸押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができる。結晶を溶融混合する観点から、高温条件に設定することのできる二軸押出機が好ましい。
工程Aで得られた溶融混合物を、粉砕が可能な程度に冷却した後、続く工程Bに供する。
工程Bの粉砕は、多段階に分けて行ってもよい。例えば、溶融混合物を硬化させて得られた樹脂混練物を、1mm以上5mm以下に粗粉砕した後、更に所望の粒径に微粉砕してもよい。
粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、例えば、ハンマーミル、アトマイザー、ロートプレックスが挙げられる。微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、例えば、流動層式ジェットミル、衝突板式ジェットミル、回転型機械式ミルが挙げられる。粉砕効率の観点から、流動層式ジェットミル、及び衝突板式ジェットミルを用いることが好ましく、衝突板式ジェットミルを用いることがより好ましい。
分級に用いられる分級機としては、例えば、ロータ式分級機、気流式分級機、慣性式分級機、篩式分級機が挙げられる。分級工程の際、粉砕が不十分で除去された粉砕物は再度粉砕工程に供してもよく、必要に応じて粉砕工程と分級工程を繰り返してもよい。
トナーは、流動化剤等を外添剤としてトナー粒子表面に添加処理されていることが好ましい。
トナーは、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる。トナーは、一成分系現像剤として、又はキャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。
樹脂等の各物性値については次の方法により測定、評価した。
[測定方法]
〔炭化水素ワックスの融点(Mp)〕
示差走査熱量計「DSC210」(セイコーインスツル株式会社製)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/minで昇温し、融解熱の最大ピーク温度を融点とした。
〔炭化水素ワックスの酸価及び水酸基価〕
炭化水素ワックスの酸価及び水酸基価は、JIS K0070:1992の方法に基づき測定した。但し、測定溶媒のみJIS K0070:1992の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、クロロホルムに変更した。
〔結着樹脂、及び結着樹脂と炭化水素ワックスとを含有する混合物の酸価及び水酸基価〕
樹脂、及び結着樹脂と炭化水素ワックスとを含有する混合物の酸価及び水酸基価は、JIS K0070:1992の方法に基づき測定した。但し、測定溶媒のみJIS K0070:1992の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
〔結着樹脂、及び結着樹脂とワックスとを含有する混合物の軟化点及びガラス転移温度〕
(1)軟化点
フローテスター「CFT-500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
(2)吸熱の最大ピーク温度
示差走査熱量計「Q-100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、室温(20℃)から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した試料をそのままの温度で1分間維持し、その後、昇温速度10℃/分で180℃まで昇温しながら測定した。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最大ピーク温度とした。
(3)ガラス転移温度
示差走査熱量計「Q-100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した。次に昇温速度10℃/分で150℃まで昇温しながら測定した。吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
〔トナー粒子の体積中位粒径(D50)〕
トナー粒子の体積中位粒径(D50)は以下の方法で測定した。
測定機:「コールターマルチサイザーII」(ベックマン・コールター株式会社製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:「コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19」(ベックマン・コールター株式会社製)
電解液:「アイソトンII」(ベックマン・コールター株式会社製)
分散液:「エマルゲン109P」(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)5質量%電解液
分散条件:分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させる。
測定条件:ビーカーに電解液100mLと分散液を加え、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度で、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
[複合樹脂(A)の製造]
製造例A1~A3、A81~A82(樹脂A-1~A-3、A-81~A-82の製造)
表1に示すトリメリット酸無水物以外のポリエステルセグメント(A1)の原料モノマー(P)、炭化水素ワックス(II)(変性ワックス)、及び炭化水素ワックス(I)(ワックス)を、窒素導入管を装備した脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、160℃まで昇温した。その後、アクリル酸(両反応性モノマー)、スチレンアクリルセグメント(A2)の原料モノマー(V)及び重合開始剤の混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下した。滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を熟成させた。次いで、200℃まで上昇させ、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫40g及び没食子酸4gを入れた後、230℃まで昇温し6時間重縮合反応させ、更に230℃、8.0kPaにて1時間反応を行った。180℃まで冷却した後、トリメリット酸無水物を投入し、180℃から210℃まで10℃/時間で昇温し、210℃にて1時間反応を行い、210℃、10kPaにて表に示す軟化点まで反応を行って、樹脂A-1~A-3、A-81~A-82を得た。各種物性を測定し、表1に示した。
Figure 2023025289000002
なお、表中に示す炭化水素ワックスの詳細な情報は以下のとおりである。
〔炭化水素ワックス(I)〕
HNP-9:パラフィンワックス(日本精蝋株式会社製、融点75℃)
〔炭化水素ワックス(II)〕
パラコール6490:水酸基及びカルボキシル基を有する炭化水素ワックス(日本精蝋株式会社製、水酸基価97mgKOH/g、酸価18mgKOH/g、融点76℃、数平均分子量(Mn)800)
[非晶質ポリエステル(B)の製造]
製造例B1(樹脂B-1の製造)
表2に示すトリメリット酸無水物以外の原料モノマー、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)を入れ、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー、窒素導入管、及び脱水管を装備した10リットル溶の四つ口フラスコ中、窒素雰囲気にてマントルヒーター中235℃で6時間重縮合させた。その後、200℃にてトリメリット酸無水物を添加した後、210℃に昇温し、重縮合反応を行い、表に示す軟化点に達するまで反応させて、樹脂B―1を得た。各種物性を測定し、表2に示した。
Figure 2023025289000003
[結晶性ポリエステル(C)の製造]
製造例C1~C3、C81~C82(樹脂C-1~C-3、C-81~C-82の製造)
表3に示すアルコール成分を窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、120℃に加熱した。120℃にて、表に示すカルボン酸成分を添加し、更に200℃まで10時間かけて加熱した。ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)を添加し、1時間200℃にて反応させた後、8.3kPaにて1時間反応させて、結晶性樹脂C-1~C-3、C-81~C-82を得た。各種物性を測定し、表3に示した。
Figure 2023025289000004
[トナーの製造]
実施例1~5及び比較例1~4(トナー1~5、81~84の製造)
表4に示す比率で、樹脂100質量部、着色剤「ECB-301」(大日精化工業株式会社製)5質量部、荷電制御剤「LR-147」(日本カーリット株式会社製)1質量部、離型剤「カルナウバワックス C1」(加藤洋行株式会社製、融点:80℃)1質量部を、ヘンシェルミキサーでよく撹拌した後、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出機を用いて溶融混練した。
ロールの回転速度は200r/min、ロール内の加熱設定温度は90℃であり、混練物の温度は140℃、混練物の供給速度は10kg/時、平均滞留時間は約18秒であった。得られた混練物を140℃から50℃まで1.5時間で冷却し、50℃で、冷却ローラーで圧延冷却した後、45℃で4時間静置後、ジェットミルで体積中位粒径(D50)5.5μmのトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100質量部に対し、外添剤「アエロジル R-972」(疎水性シリカ、日本アエロジル社製、個数平均粒子径:16nm)1.5質量部及び「SI-Y」(疎水性シリカ、日本アエロジル株式会社製、個数平均粒子径:40nm)1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで3600r/min、5分間混合することにより、外添剤処理を行い、トナー1~5、81~84を得た。
[評価方法]
〔低温定着性〕
複写機「AR-505」(シャープ株式会社製)の定着機を装置外での定着が可能なように改良した装置にトナーを実装し、未定着の状態で印刷物を得た(印字面積:2cm×12cm、付着量:0.5mg/cm)。その後、総定着圧が40kgfになるように調整した定着機(定着速度450mm/sec)を用い、定着ロールの温度を100℃から240℃へと5℃ずつ順次上昇させながら、各温度で未定着状態の印刷物の定着試験を行った。得られた印刷物の画像部分にセロハン粘着テープ「ユニセフセロハン」(三菱鉛筆株式会社製、幅:18mm、JIS Z 1522:2009)を貼り付け、30℃に設定した定着ローラーに通過させた後、テープを剥がした。なお、定着紙には、「CopyBond SF-70NA」(シャープ株式会社製、75g/m)を使用した。
テープを貼る前と剥がした後の光学反射密度を反射濃度計「RD-915」(グレタグマクベス社製)を用いて測定し、両者の比率(剥離後/貼付前×100)が最初に90%を超える定着ローラーの温度を最低定着温度とした。
最低定着温度が低いほど、低温定着性に優れ、最低定着温度は、120℃以下が好ましく、115℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましい。
〔印刷物の保存性〕
複写機「AR-505」(シャープ株式会社製)にトナーを実装し、未定着で画像出しを行った(印刷面積:2cm×12cm、付着量:0.5mg/cm)。前記複写機の定着機をオフラインで、140℃、20mm/secで100枚の定着を行った。なお、定着紙には「CopyBond SF-70NA」(シャープ株式会社製、75g/m)を使用した。得られた100枚の印刷物を重ね、更に、その上に、3kgの重り(接触面積15cm×15cm)を載せ、50℃、相対湿度50%の環境下で12時間放置した。放置の間、4時間毎に印刷物同士の融着の有無を確認し、以下の評価基準に従って、印刷物の保存性を評価した。なお、以下の評価基準において、重ねた印刷物100枚のうち1枚でも貼り付いていたら、融着すると判断した。
(評価基準)
A:印刷後、12時間放置しても融着しない。
B:印刷後、8時間放置で融着する。
C:印刷後、4時間放置で融着する。
〔印刷物の耐擦過性〕
評価紙として「Business4200」(秤量105g/m、ゼロックス社製)を用い、トナーの載り量を0.50mg/cmとしたベタ画像を140℃に温調した定着器に通して定着させた。得られた定着画像をカナキン3号で2kg荷重(接触面積900mm)をかけて100往復擦る。
擦過前後の光学反射密度を反射濃度計「RD-915」(マクベス社製)を用いて測定し、下記式から、画像濃度の低下率(%)を算出し、定着画像の耐擦過性を評価した。画像濃度の低下率が低いほど、耐擦過性に優れ、低下率は、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、3%以下が更に好ましい。
画像濃度の低下率(%)=(1-(擦り後の反射濃度/擦り前の反射濃度))×100
Figure 2023025289000005
本発明の実施例の電子写真トナーによれば、比較例のものと比較して、低温定着性、印刷物の保存性及び印刷物の擦過性に優れた電子写真トナーが得られることがわかる。

Claims (6)

  1. 工程1:炭化水素ワックス(I)の存在下で、アルコール成分と、カルボン酸成分と、水酸基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種の基を有する炭化水素ワックス(II)とを重縮合して、ポリエステルと炭化水素ワックス(I)とを含有する混合物を得る工程と、
    工程2:工程1で得られた混合物に両反応性モノマー及び、スチレンアクリルセグメントを形成するモノマーを添加し付加重合して複合樹脂(A)を含む樹脂組成物を得る工程と、
    工程3:工程2で得られた樹脂組成物と、結晶性ポリエステル(C)と、を混合する工程と、
    を含む、トナー用結着樹脂組成物の製造方法であって、
    前記トナー用結着樹脂組成物が、ポリエステルセグメント(A1)及びスチレンアクリルセグメント(A2)を有する複合樹脂(A)と、結晶性ポリエステル(C)と、炭化水素ワックス(I)と、を含み、
    前記ポリエステルセグメント(A1)が、水酸基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種の基を有する炭化水素ワックス(II)由来の構成単位を有し、
    且つ、
    前記結晶性ポリエステル(C)が、炭素数4以上8以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分と、炭素数4以上6以下の脂肪族ジカルボン酸を含むカルボン酸成分との重縮合物である、トナー用結着樹脂組成物の製造方法。
  2. 前記炭化水素ワックス(I)の配合量が、前記炭化水素ワックス(I)及び前記炭化水素ワックス(II)の合計配合量に対して、25質量%以上80質量%以下である、請求項1に記載のトナー用結着樹脂組成物の製造方法。
  3. 前記炭化水素ワックス(II)の水酸基価と酸価との合計値が、40mgKOH/g以上200mgKOH/g以下である、請求項1又は2に記載のトナー用結着樹脂組成物の製造方法。
  4. 前記炭素数4以上8以下の脂肪族ジオールが、1,4-ブタンジオール又は1,6-ヘキサンジオールである、請求項1~3のいずれかに記載のトナー用結着樹脂組成物の製造方法。
  5. 前記炭素数4以上6以下の脂肪族ジカルボン酸が、コハク酸又はフマル酸である、請求項1~4のいずれかに記載のトナー用結着樹脂組成物の製造方法。
  6. 工程A:請求項1~5のいずれかに記載の方法で得られるトナー用結着樹脂組成物を含むトナー原料を溶融混練して溶融混合物を得る工程、及び
    工程B:工程Aで得られた溶融混合物を粉砕、分級しトナー粒子を得る工程
    を含む、電子写真用トナーの製造方法。
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