JP7058523B2 - 往復動式圧縮機 - Google Patents

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Description

本開示は、シリンダ内のピストンの往復運動によって流体を圧縮可能な少なくとも1つの気筒を有する往復動式圧縮機に関する。
シリンダ内のピストンの往復運動によって、シリンダ及びピストンによって規定される圧縮室に導入された流体を圧縮可能な往復動式圧縮機が知られている。このような往復動式圧縮機では、例えばエンジンや電動機(モータ)などの動力源から入力される回転運動を、クランクケースに収容されたクランク機構によってピストンの往復運動に変換することで、流体の圧縮が行われる。
圧縮機に要求される性能は年々高まっており、近年では、省エネルギを達成しつつ、より高圧な圧縮気体の需要が増えている。このような需要に対するソリューションのひとつとして、予め大気圧以上に加圧された気体を更に昇圧するためのブースター圧縮機が知られている。ここで往復動式のブースター圧縮機は大気圧以上の気体を圧縮対象とするため、仮にクランクケース内が大気圧であると、シリンダ及びピストンにより規定される圧縮室とクランクケース内との圧力差が大きくなり、クランク機構を構成するクランクシャフトの軸受部材等の部品に大きな負荷がかかってしまい、製品寿命が短くなるおそれがある。また、省エネルギ効果も得られにくい。
そこで往復動式のブースター圧縮機では、クランクケース内を加圧し、圧縮室とクランクケース内との圧力差を軽減することで、吸込行程時における負荷を低減するとともに、省エネルギ効果の向上を図っている。例えば特許文献1では、圧縮室で生成した加圧気体をタンクに蓄積し、その一部をクランクケース内に供給することにより、圧縮室とクランクケースとの圧力差を軽減している。
特開2009-133282号公報
クランクケースに収容されるクランク機構は、回転運動を入力するための回転軸を含む。このような回転軸は、クランクケースを少なからず貫通しており、回転軸が貫通する貫通部にはシール部材が配置されることで、クランクケースの機密性が確保される。上記特許文献1のようにクランクケース内を加圧する場合、クランクケースの内外における圧力差が大きくなるため、貫通部に配置されるシール部材に求められるシール性能も高度なものとなる。特にシール部材の両側に印加される圧力差が大きくなると、シール部材の消耗が促進しやすく、シール寿命が短縮してしまうおそれがある。
本発明の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、加圧されたクランクケースにおいて、長期に渡って良好なシール性能を発揮可能な往復動式圧縮機を提供することを目的とする。
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る回転機械は上記課題を解決するために、
シリンダ内のピストンの往復運動によって流体を圧縮可能な少なくとも1つの気筒を有する往復動式圧縮機であって、
回転軸と、
前記回転軸の回転運動を前記ピストンの往復運動に変換可能なクランク機構と、
大気圧より高圧に設定された内部空間に前記クランク機構を収容し、前記回転軸が貫通する貫通部を有する壁部材を含むクランクケースと、
前記貫通部に前記回転軸の軸方向に沿って配置された第1シール部材及び第2シール部材を含むシール部と、
を備え、
前記第1シール部材及び前記第2シール部材の間に形成される隙間に圧縮気体が供給される。
上記(1)の構成によれば、クランクケースの貫通部に設けられたシール部は、軸方向に沿って配置される第1シール部材及び第2シール部材を有する。そのため、クランクケースの内部空間が高圧に設定された場合であっても、良好なシール効果が得られる。また第1シール部材及び第2シール部材に形成される隙間には圧縮気体が供給されることで、各シール部材の両側における圧力差が緩和される。これにより、各シール部材の消耗が抑制され、長期にわたって良好なシール性能が得られる。
(2)幾つかの実施形態では上記(1)の構成において、
前記圧縮気体は、前記大気圧と前記内部空間の圧力との中間圧に設定される。
上記(2)の構成によれば、シール部を構成する各シール部材の両側における圧力差を効果的に緩和できる。
(3)幾つかの実施形態では上記(1)又は(2)の構成において、
前記クランクケースの前記内部空間を前記隙間に連通する第1連通ラインを介して、前記圧縮気体が前記隙間に供給可能に構成される。
上記(3)の構成によれば、大気圧より高圧になっているクランクケースの内部空間に存在する圧縮気体を第1連通ラインを介して隙間に供給できる。これにより、効率的な構成で上述の往復動式圧縮機を実現できる。
(4)幾つかの実施形態では上記(1)又は(2)の構成において、
前記クランクケースの前記内部空間を加圧するための加圧ラインから分岐する第2連通ラインを介して、前記圧縮気体が前記隙間に供給可能に構成される。
上記(4)の構成によれば、クランクケースを加圧するための圧縮気体を、クランクケースに接続された加圧ラインから分岐する第2連通ラインを介して隙間に供給できる。これにより、効率的な構成で上述の往復動式圧縮機を実現できる。
(5)幾つかの実施形態では上記(1)又は(2)の構成において、
前記少なくとも一気筒の吸気側を前記隙間に連通する第3連通ラインを介して、前記圧縮気体が前記隙間に供給可能に構成される。
上記(5)の構成によれば、例えばブースター圧縮機のように、予め加圧された流体が吸気側に供給される圧縮機では、当該吸気側に供給される圧縮気体を第3連通ラインを介して隙間に供給できる。これにより、効率的な構成で上述の往復動式圧縮機を実現できる。
(6)幾つかの実施形態では上記(1)又は(2)の構成において、
前記少なくとも一気筒の吐出側を前記隙間に連通する第4連通ラインを介して、前記圧縮気体が前記隙間に供給可能に構成される。
上記(6)の構成によれば、気筒で生成された圧縮気体を第4連通ラインを介して隙間に供給できる。これにより、効率的な構成で上述の往復動式圧縮機を実現できる。
(7)幾つかの実施形態では上記(1)又は(2)の構成において、
前記少なくとも一気筒は、第1圧力の加圧気体を生成可能な低圧側気筒と、前記第1圧力より高圧な第2圧力の加圧気体を生成可能な高圧側気筒と、を含み、
前記第1気筒の吐出側と前記第2気筒の吸気側とを連通する中間通路を前記隙間に連通する第5連通ラインを介して、前記圧縮気体が前記隙間に供給可能に構成される。
上記(7)の構成によれば、低圧側気筒及び高圧側気筒の間を接続する中間通路から第5連通ラインを介して、低圧側気筒で生成された圧縮気体を隙間に供給できる。これにより、効率的な構成で上述の往復動式圧縮機を実現できる。
(8)幾つかの実施形態では上記(7)の構成において、
前記中間通路上に設置された中間冷却器を更に備え、
前記第4連通ラインは、前記中間通路のうち前記中間冷却器より下流側を前記隙間に連通するように構成される。
上記(8)の構成によれば、中間冷却器で冷却された温度の低い圧縮気体を隙間に供給できる。これにより、シール部の冷却も同時に行うことができる。
(9)幾つかの実施形態では上記(1)から(8)のいずれか1構成において、
前記内部空間は、前記低圧側気筒に対応する第1空間と、前記高圧側気筒に対応する第2空間と、を含み、
前記壁部材は、前記第1空間と前記第2空間とを隔離する前記クランクケースの内壁である。
上記(9)の構成によれば、低圧側気筒に対応する第1空間と高圧側気筒に対応する第2空間とを隔離するための内壁に設けられたシール部において、長期にわたって良好なシール性能が得られる。
(10)幾つかの実施形態では上記(1)から(8)のいずれか一構成において、
前記壁部材は、前記クランクケースの前記内部空間を外部空間から隔離するための外壁である。
上記(9)の構成によれば、クランクケースの内部空間を外部空間から隔離するための外壁に設けられたシール部において、長期にわたって良好なシール性能が得られる。
本発明の少なくとも一実施形態によれば、加圧されたクランクケースにおいて、長期に渡って良好なシール性能を発揮可能な往復動式圧縮機を提供できる。
本発明の一実施形態に係る往復動式圧縮機の外観を示す斜視図である。 図1のA-A断面図である。 図1の往復動式圧縮機における流体の流れを概略的に示す模式図である。 クランクケースの貫通部における従来のシール構造の一例を示す模式図である。 クランクケースの貫通部における従来のシール構造の他の例を示す模式図である。 図2の貫通部近傍の拡大断面図である。 図6の第1変形例である。 図6の第2変形例である。 図6の第3変形例である。 図6の第4変形例である。 図6の第5変形例である。 図6の第6変形例である。
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
また例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
図1は、本発明の一実施形態に係る往復動式圧縮機(以下、適宜「圧縮機」と称する)1の外観を示す斜視図であり、図2は図1のA-A断面図であり、図3は図1の圧縮機1における流体の流れを概略的に示す模式図である。
圧縮機1はシリンダ内のピストンの往復運動によって流体を圧縮可能な少なくとも1つの気筒2を有する往復動式圧縮機である。圧縮機1の圧縮対象となる流体は、例えば空気などの気体であり、吸気菅4から取り込まれる。本実施形態では、圧縮機1はブースター圧縮機であり、吸気菅4には、予め大気圧より高圧になるように加圧された圧縮気体が供給される。
尚、以下の説明では圧縮機1がオイルフリー式である場合について述べるが、特段の記載がない限りにおいて、油潤滑式にも適用可能である。
圧縮機1は、少なくとも1つの気筒2を有する。本実施形態では、圧縮機1は複数の気筒2を有する。複数の気筒2は、低圧側気筒2LP1、2LP2、2LP3と、高圧側気筒2HPと、を含む。圧縮機1は多段圧縮型であり、図3に示されるように、吸気菅4から供給される圧縮気体(圧力P0)は、上流側に配置された低圧側気筒LP1、LP2、LP3に分岐されてそれぞれ圧力P1(>P0)に加圧される。低圧側気筒LP1、LP2、LP3から吐出された圧力P1の圧縮気体は、中間冷却器82a、82bで冷却された後、高圧側気筒HPで圧力P2(>P1)に更に加圧される。
尚、本実施形態では、圧縮機1が3つの低圧側気筒2LP1、2LP2、2LP3と、1つの高圧側気筒2HPとを備える場合について説明するが、低圧側気筒及び高圧側気筒の数は適宜変更可能である。
各気筒2は、外部に配置されたエンジンや電動機(モータ)などの動力源から入力される動力によって駆動される。このような動力源からの動力は、図1に示されるように、圧縮機1の背面側に設けられたフライホイールプーリ6を介して入力される。フライホイールプーリ6は、動力源の出力軸と駆動ベルト(不図示)を介して接続されている。
フライホイールプーリ6は、径方向に沿って延在する少なくとも一つのブレードを有しており、動力源によって回転駆動されると、当該ブレードによって圧縮機1に対して流れる冷却風8を形成可能なシロッコファンとして機能するように構成されている。尚、冷却風8の流れ方向は逆でもよい。
動力源によってフライホイールプーリ6が回転駆動されると、当該回転運動はクランクケース10に収容されたクランク機構12によって往復運動に変換され、各気筒2に伝達される。図2に示されるように、クランク機構12はフライホイールプーリ6に連結される回転軸であるクランク軸14を有する。
クランク軸14は、クランクケース10に対して回転可能に支持されるメインジャーナル16と、各気筒2に対応する複数のクランクピン18と、を備える。具体的には、複数のクランクピン18は、低圧側気筒2LP1、2LP2、2LP3に対応するクランクピン18a、18b、18cと、高圧側気筒HPに対応するクランクピン18dとを含む。
クランク軸14は、クランクピン18a、18b、18cが設けられた第1ジャーナル部材20と、クランクピン18dが設けられた第2ジャーナル部材22とが、互いに結合されることで構成されている。第2ジャーナル部材22は、第1ジャーナル部材20の先端が軸方向に挿入可能な挿入穴24を有する。第2ジャーナル部材22の挿入穴24の内壁又は第1ジャーナル部材20の外表面の少なくとも一方には、キー溝(不図示)が設けられている。キー溝にはキー部材が挿入されることで、第1ジャーナル部材20及び第2ジャーナル部材22が互いに固定可能に構成されている。
このようにクランク軸14を、互いに独立した第1ジャーナル部材20及び第2ジャーナル部材22を結合して構成することで、クランクピン18a、18b、18cと、クランクピン18dとのストローク径を異ならしめることができる。本実施形態では、第2ジャーナル部材22に設けられたクランクピン18dは、第1ジャーナル部材20に設けられたクランクピン18a、18b、18cより大きなストロール径を有するように構成されている。
低圧側気筒2LP1、2LP2、2LP3に対応するクランクピン18a、18b、18cは、クランク軸14の周方向に沿って等位相(120度間隔)に配置される。そのため、第1ジャーナル部材20は、バランスウエイトを設けることなく単体でバランス調整が可能となっている。一方、第2ジャーナル部材22は、単一のクランクピン18dしか有さないため、バランス調整のためのバランスウエイト26が設けられている。
尚、第2ジャーナル部材22が第1ジャーナル部材20のように複数のクランクピンを有する場合には、複数のクランクピンを周方向に沿って等位相に配置することで、バランスウエイト26を省略又は縮小してもよい。また第1ジャーナル部材20が、第2ジャーナル部材22のように単一のクランクピンを有する場合には、第1ジャーナル部材20にもバランスウエイトを設けてもよい。
複数のクランクピン18a、18b、18cを有する第1ジャーナル部材20は、更に複数の部材が組み合わされることで構成されてもよい。本実施形態では、第1ジャーナル部材20は、クランクピン18cが設けられた本体部材28に対して、クランクピン18a、18bが設けられた連結部材30が組みつけられた構成を有する。連結部材30は、第1ジャーナル部材20と第2ジャーナル部材22との連結部32とは反対側から本体部材28に挿入可能となっている。
クランクピン18a、18b、18cには、3つの低圧側気筒2LP1、2LP2、2LP3に対応するコネクティングロッド34a、34b、34cが軸受36a、36b、36cを介して、それぞれ回動可能に取り付けられている。クランクピン18dには、高圧側気筒2HPに対応するコネクティングロッド34dが軸受36dを介して、回動可能に取り付けられている。
クランク機構12では、フライホイールプーリ6から動力が入力されると、クランク軸14の回転運動は、コネクティングロッド34a、34b、34c、34dを介して、各気筒2に伝達される。各気筒2は、略円筒形状を有するシリンダ38と、シリンダ38内に配置されたピストン40とを備える。ピストン40はコネクティングロッドの一端に接続されており、クランク軸14の回転運動はシリンダ38内のピストン40の往復運動に変換される。各気筒2では、シリンダ38及びピストン40によって規定される圧縮室42に導入された流体が、ピストン40の往復運動によって圧縮される。
尚、ピストン40は、例えばコンポジットピストン(複合樹脂ピストン)であり、不図示のピストンリング合い口を圧縮時に、理論的に洩れない位置で固定する方法が採用されている。
尚、図2では3つの低圧側気筒のうち低圧側気筒2LP1の詳細構造のみが示されているが、低圧側気筒2LP2及び2LP3も同様である。
クランクケース10の内部空間50は、低圧側気筒2LP1、2LP2、2LP3に対応する第1空間50aと、高圧側気筒HPに対応する第2空間50bと、に分割されている。第1空間50a及び第2空間50bは、クランクケース10の一部を構成する隔壁52によって仕切られている。隔壁52は、クランク軸14が貫通する貫通部52aを有する。
クランク軸14は、クランクケース10に対して軸受54、56によって回転可能に支持される。軸受54は、クランクケース10のうちフライホイールプーリ6側に設けられた貫通部10aに配置されており、軸受56は隔壁52の貫通部52aに設けられている。このようにクランク軸14はクランクケース10に対して2点支持されている。
クランクケース10の貫通部10aには、クランクケース10の内部空間50(第1空間50a)の外部に対する機密性を確保するためのシール部58が配置されている。また隔壁52の貫通部52aには、クランクケース10の第1空間50a及び第2空間50bの間の機密性を確保するためのシール部60が配置されている。
クランクケース10の内部空間50(第1空間50a及び第2空間50b)は、大気圧以上の圧縮気体が供給されることで、各気筒2の圧縮室(シリンダ38とピストン40とによって規定される空間)との圧力差が減少するように構成されている。すなわち圧縮機1はクランクケース加圧型の圧縮機である。このように内部空間50と圧縮室との圧力差を低減することにより、各気筒2の吸い込み行程時の負荷を抑制するとともに、高い省エネ効果が得られる。
本実施形態では図3に示されるように、吸気菅から取り込まれた流体(予め圧力P0に加圧された気体)はまずクランクケース10の第1空間50aに供給され、第1空間50aの加圧が行われる。また第1空間50aは配管51a、51b、51cを介して低圧側気筒2LP1、2LP2、2LP3の吸気側にそれぞれ接続されており、第1空間50aにある圧縮気体(圧力P0)が各低圧側気筒2LP1、2LP2、2LP3に供給されるように構成されている。
各低圧側気筒2LP1、2LP2、2LP3で加圧された圧縮気体(圧力P1)は、それぞれ配管53a、53b、53cを介して中間冷却器82a、82bに送られる。中間冷却器82a、82bでは低圧側気筒2LP1、2LP2、2LP3で加圧された圧縮気体(圧力P1)の冷却が行われ、冷却後の圧縮気体(圧力P1)は、配管55a、55bを介してクランクケース10の第2空間50bに送られ、第2空間50bの加圧に用いられる。第2空間50bは、配管57を介して高圧側気筒HPの吸気側に接続されており、第2空間50bにある圧縮気体(圧力P1)が高圧側気筒2HPに供給される。高圧側気筒2HPで加圧された圧縮気体(圧力P2)は配管59から需要先(不図示)に吐出される。
上述したように、内部空間50は隔壁52によって第1空間50a及び第2空間50bに分割されているので、第1空間50aは低圧側気筒LP1、LP2、LP3に対応する圧力値に加圧されるとともに、第2空間50bは高圧側気筒HPに対応する圧力値に加圧される。このように圧縮機1では、内部空間50を隔壁52で分割することで、第1空間50a及び第2空間50bの加圧値を各気筒に適した値に独立に設定できる。
このようなクランクケース圧縮型の圧縮機1では、クランクケース12内外の圧力差が大きくなるため、シール部58、60に求められるシール性能も高度なものとなる。またシール部58、60の両側における圧力差が大きくなると、シール部58、60の消耗が促進し、シール寿命が短縮してしまうおそれがある。
ここで図4は貫通部10aにおける従来のシール構造の一例を示す模式図である。図4では上述の圧縮機1と対応する箇所に共通の符号を付与し、構造が簡略的に示されている。貫通部10aに設けられたシール部58’は1重リップのシール部材からなる。本発明者の検証によれば、シール部58’に印加される圧力が0.6MPa、クランク軸14の回転速度が1000rpmの場合、シール部58’の限界漏れ量までの耐久時間は10000時間であるが、シール部58’に印加される圧力が0.9MPa、クランク軸14の回転速度が1000rpmとなると、シール部58’の限界漏れ量までの耐久時間は500時間に大幅に低下してしまう。
図5は貫通部10aにおける従来のシール構造の他の例を示す模式図である。図5のシール部58’’は、図4のシール部58’に比べて4重リップのシール部材を用いることでシール性能の向上を図っている。シール部58’’では、シール部58’に印加される圧力が0.9MPa、クランク軸14の回転速度が1000rpmである場合、シール部58’の約4倍である2000時間の耐久時間が得られるのが限界である。
図6は図2の貫通部10a近傍の拡大断面図である。本実施形態では、貫通部10aに1重リップのシール部材である第1シール部材58a及び第2シール部材58bがクランク軸14の軸方向に沿って配置されている。シール部58は、このように複数のシール部材を含むため、良好なシール効果が得られる。
そして第1シール部材58a及び第2シール部材58bの間には、隙間62が形成されており、当該隙間62には、大気圧より高圧な圧縮気体が供給される。隙間62に供給される圧縮気体は、内部空間50(第1空間50a)と外部圧力との中間圧に設定される。これにより第1シール部材58aの両側における圧力差、及び、第2シール部材58bの両側における圧力差が緩和され、各シール部材の消耗が抑制され、長期にわたって良好なシール性能が得られる。
図6において、第1シール部材58aの両側における圧力差、及び、第2シール部材58bの両側における圧力差がそれぞれ0.45MPa(シール部58に印加される圧力が0.9MPa)になるように隙間62に圧縮気体が供給された場合、クランク軸14の回転速度が1000rpmである際の耐久時間は、シール部58’の約2倍を大きく上回る10000時間以上となる。
本実施形態では特に、クランクケース10の内部空間50のうち第1空間50aを隙間62に連通する第1連通ライン63aが設けられており、第1空間50aにある圧縮気体が第1連通ライン63aを介して隙間62に供給されるように構成されている。第1連通ライン63a上には減圧機構64が設けられており、第1連通ライン63aから隙間62に供給される圧縮気体の圧力が所定値に調整されている。ここで所定値は、内部空間50(第1空間50a)と外気圧との中間圧である。
また隔壁52に設けられたシール部60もまた、上述のシール部58と同様に、クランク軸14の軸方向に沿って配置された第1シール部材60a及び第2シール部材60bを備える。そして第1シール部材60a及び第2シール部材60bの間に形成される隙間65には、大気圧より高圧な圧縮気体が供給される。隙間65に供給される圧縮気体は、第1空間50aと第2空間50bとの中間圧に設定される。これにより第1シール部材60aの両側における圧力差、及び、第2シール部材60bの両側における圧力差が緩和され、各シール部材の消耗が抑制され、長期にわたって良好なシール性能が得られる。
図2では特に、クランクケース10の内部空間50のうち第2空間50bを隙間65に連通する第1連通ライン63bが設けられており、第2空間50bにある圧縮気体が第1連通ライン63bを介して隙間65に供給されるように構成されている。第1連通ライン63b上には減圧機構66が設けられており、第1連通ライン63bから隙間65に供給される圧縮気体の圧力が所定値に調整されている。ここで所定値は、第1空間50aと第2空間50bとの中間圧である。
図7は図6の第1変形例である。この例では、クランクケース10の内部空間50(第1空間50a)を加圧するための加圧ラインである吸気管4から分岐する第2連通ライン72を介して、シール部58の隙間62に圧縮気体が供給可能に構成される。
このように第1変形例では、クランクケース10を加圧するために加圧ラインである吸気管4を流れる圧縮気体を、吸気管4から分岐する第2連通ライン72を介してシール部58における隙間62に供給できる。ここではシール部58についてのみ説明したが、シール部60についても同様の構成を適用可能である。これにより、効率的な構成で上述の圧縮機1を実現できる。
図8は図6の第2変形例である。尚、図8では、理解しやすいように図3と同様に圧縮機1の構成を概略的に示している。この例では、低圧側気筒2LP1、2LP2、2LP3の吸気側にある吸気菅4を隙間62、65に連通する第3連通ライン74を介して、吸気側を流れる圧縮気体が隙間62,65に供給可能に構成される。尚、隙間62に連通する第3連通ライン74と、隙間65に連通する第3連通ライン74とが別々に設けられてもよい。
このように第2変形例では、ブースター圧縮機である圧縮機1に供給される予め加圧された圧縮気体を、第3連通ライン74を介してシール部58における隙間62、65に供給できる。これにより、効率的な構成で上述の圧縮機1を実現できる。
図9は図6の第3変形例である。尚、図9では、理解しやすいように図3と同様に圧縮機1の構成を概略的に示している。この例では、圧縮機1の吐出側(配管59)を隙間62、65に連通する第4連通ライン76を介して、圧縮機1で生成された圧縮気体が隙間62、65に供給可能に構成される。尚、隙間62に連通する第4連通ライン76と、隙間65に連通する第4連通ライン76とが別々に設けられてもよい。
このように第3変形例では、圧縮機1で生成された圧縮気体を、第4連通ライン76を介してシール部58における隙間62に供給できる。これにより、効率的な構成で上述の圧縮機1を実現できる。
図10は図6の第4変形例である。尚、図10では、理解しやすいように図3と同様に圧縮機1の構成を概略的に示している。この例では、低圧側気筒2LP1、2LP2、2LP3の吐出側と高圧側気筒HPの吸気側とを接続する中間通路55a、55bと、隙間62、65に連通する第5連通ライン80a、80bを介して、圧縮機1で生成された圧縮気体が隙間62、65に供給可能に構成される。
このように第4変形例では、低圧側気筒2LP1、2LP2、2LP3で生成された圧縮気体を高圧側気筒2HPに供給するための中間通路55a、55bを流れる圧縮気体を、第5連通ライン80a、80bを介してシール部58、60における隙間62、65に供給できる。これにより、効率的な構成で上述の圧縮機1を実現できる。尚、本変形例では第5連通ライン80a、80bの両方を備える場合を例示しているが、いずれか一方のみを備えてもよい。
また第4変形例では、低圧側気筒2LP1、2LP2、2LP3と高圧側気筒2HPとの間の配管のうち中間冷却器82a、82bより下流側の配管55a、55bを隙間62,65に連通するように第5連通ライン80a、80bが構成されている。これにより、中間冷却器82a、82bで冷却された温度の低い圧縮気体を隙間62、65に供給できるので、シール部58、60の冷却も同時に行うことができる。
図11は図6の第5変形例である。この例では、シール部58として、軸方向に沿って配列された2つのシールリップ70a、70bを有する単一の軸シール部材70が用いられている。2つのシールリップ70a、70bの間には、隙間62に対して第1連通ライン63aを連通する通路70cが設けられており、第1連通ライン63aから導入される圧縮気体によって隙間62が加圧されるように構成されている。すなわち、本変形例では、単一の軸シール部材70が用いられているが、2つのシールリップ70a、70bを、上述の実施形態における第1シール部材58a及び第2シール部材58bとして機能させることにより、上述の実施形態と同様に良好なシール性能を発揮させることができる。
図12は図6の第6変形例である。この例では、シール部58として、一つのシールリップ77を有する単一の軸シール部材78が用いられている。シールリップ77は、第1連通ライン63aに対向する側において部分的に二又形状に分割されており、当該分割された一対のリップ部材77a、77bの間に形成される隙間77cを介して、第1連通ライン63aから隙間62に対して圧縮気体が供給されるように構成されている。すなわち、本変形例では、一つのシールリップを有する単一の軸シール部材70が用いられているが、当該シールリップが部分的に分割されており、一対ののリップ部材77a、77bが、上述の実施形態における第1シール部材58a及び第2シール部材58bとして機能させることにより、上述の実施形態と同様に良好なシール性能を発揮させることができる。
以上説明したように上記各実施形態によれば、加圧されたクランクケース10において、長期にわたって良好なシール性能を発揮可能な往復動式圧縮機1を提供できる。
本発明の少なくとも一実施形態は、シリンダ内のピストンの往復運動によって流体を圧縮可能な少なくとも1つの気筒を有する往復動式圧縮機に利用可能である。
1 往復動式圧縮機(圧縮機)
2 気筒
2HP 高圧側気筒
2LP1,2LP2,2LP3 低圧側気筒
4 吸気菅
6 フライホイールプーリ
8 冷却風
10 クランクケース
10a 貫通部
12 クランク機構
14 クランク軸
16 メインジャーナル
18a,18b,18c,18d クランクピン
20 第1ジャーナル部材
22 第2ジャーナル部材
24 挿入穴
26 バランスウエイト
28 本体部材
30 連結部材
32 連結部
34a,34b,34c,34d コネクティングロッド
36a,36b,36c,36d 軸受
38 シリンダ
40 ピストン
42 圧縮室
50 内部空間
50a 第1空間
50b 第2空間
52 隔壁
52a 貫通部
54,56 軸受
58,60 シール部
58a,60a 第1シール部材
58b,60b 第2シール部材
62,65 隙間
63a,63b 第1連通ライン
64,66 減圧機構
72 第2連通ライン
74 第3連通ライン
76 第4連通ライン
80a 第5連通ライン
82a、82b 中間冷却器

Claims (9)

  1. シリンダ内のピストンの往復運動によって流体を圧縮可能な少なくとも1つの気筒を有する往復動式圧縮機であって、
    回転軸と、
    前記回転軸の回転運動を前記ピストンの往復運動に変換可能なクランク機構と、
    大気圧より高圧に設定された内部空間に前記クランク機構を収容し、前記回転軸が貫通する貫通部を有する壁部材を含むクランクケースと、
    前記貫通部に前記回転軸の軸方向に沿って配置された第1シール部材及び第2シール部材を含むシール部と、
    を備え、
    前記第1シール部材及び前記第2シール部材の間に形成される隙間に圧縮気体が供給され
    前記クランクケースの前記内部空間を前記隙間に連通する第1連通ラインを介して、前記圧縮気体が前記隙間に供給可能に構成される、往復動式圧縮機。
  2. 前記圧縮気体は、前記大気圧と前記内部空間の圧力との中間圧に設定される、請求項1に記載の往復動式圧縮機。
  3. シリンダ内のピストンの往復運動によって流体を圧縮可能な少なくとも1つの気筒を有する往復動式圧縮機であって、
    回転軸と、
    前記回転軸の回転運動を前記ピストンの往復運動に変換可能なクランク機構と、
    大気圧より高圧に設定された内部空間に前記クランク機構を収容し、前記回転軸が貫通する貫通部を有する壁部材を含むクランクケースと、
    前記貫通部に前記回転軸の軸方向に沿って配置された第1シール部材及び第2シール部材を含むシール部と、
    を備え、
    前記第1シール部材及び前記第2シール部材の間に形成される隙間に圧縮気体が供給され、
    前記クランクケースの前記内部空間を加圧するための加圧ラインから分岐する第2連通ラインを介して、前記圧縮気体が前記隙間に供給可能に構成される、往復動式圧縮機。
  4. シリンダ内のピストンの往復運動によって流体を圧縮可能な少なくとも1つの気筒を有する往復動式圧縮機であって、
    回転軸と、
    前記回転軸の回転運動を前記ピストンの往復運動に変換可能なクランク機構と、
    大気圧より高圧に設定された内部空間に前記クランク機構を収容し、前記回転軸が貫通する貫通部を有する壁部材を含むクランクケースと、
    前記貫通部に前記回転軸の軸方向に沿って配置された第1シール部材及び第2シール部材を含むシール部と、
    を備え、
    前記第1シール部材及び前記第2シール部材の間に形成される隙間に圧縮気体が供給され、
    前記少なくとも一気筒の吸気側を前記隙間に連通する第3連通ラインを介して、前記圧縮気体が前記隙間に供給可能に構成される、往復動式圧縮機。
  5. シリンダ内のピストンの往復運動によって流体を圧縮可能な少なくとも1つの気筒を有する往復動式圧縮機であって、
    回転軸と、
    前記回転軸の回転運動を前記ピストンの往復運動に変換可能なクランク機構と、
    大気圧より高圧に設定された内部空間に前記クランク機構を収容し、前記回転軸が貫通する貫通部を有する壁部材を含むクランクケースと、
    前記貫通部に前記回転軸の軸方向に沿って配置された第1シール部材及び第2シール部材を含むシール部と、
    を備え、
    前記第1シール部材及び前記第2シール部材の間に形成される隙間に圧縮気体が供給され、
    前記少なくとも一気筒の吐出側を前記隙間に連通する第4連通ラインを介して、前記圧縮気体が前記隙間に供給可能に構成される、往復動式圧縮機。
  6. シリンダ内のピストンの往復運動によって流体を圧縮可能な少なくとも1つの気筒を有する往復動式圧縮機であって、
    回転軸と、
    前記回転軸の回転運動を前記ピストンの往復運動に変換可能なクランク機構と、
    大気圧より高圧に設定された内部空間に前記クランク機構を収容し、前記回転軸が貫通する貫通部を有する壁部材を含むクランクケースと、
    前記貫通部に前記回転軸の軸方向に沿って配置された第1シール部材及び第2シール部材を含むシール部と、
    を備え、
    前記第1シール部材及び前記第2シール部材の間に形成される隙間に圧縮気体が供給され、
    前記少なくとも一気筒は、第1圧力の加圧気体を生成可能な低圧側気筒と、前記第1圧力より高圧な第2圧力の加圧気体を生成可能な高圧側気筒と、を含み、
    前記第1気筒の吐出側と前記第2気筒の吸気側とを連通する中間通路を前記隙間に連通する第5連通ラインを介して、前記圧縮気体が前記隙間に供給可能に構成される、往復動式圧縮機。
  7. 前記中間通路上に設置された中間冷却器を更に備え、
    前記第4連通ラインは、前記中間通路のうち前記中間冷却器より下流側を前記隙間に連通するように構成される、請求項に記載の往復動式圧縮機。
  8. 前記内部空間は、前記低圧側気筒に対応する第1空間と、前記高圧側気筒に対応する第2空間と、を含み、
    前記壁部材は、前記第1空間と前記第2空間とを隔離する前記クランクケースの内壁である、請求項1からのいずれか一項に記載の往復動式圧縮機。
  9. 前記壁部材は、前記クランクケースの前記内部空間を外部空間から隔離するための外壁である、請求項1からのいずれか一項に記載の往復動式圧縮機。
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