JP7057879B2 - コーティング剤組成物 - Google Patents

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Description

本発明はコーティング剤組成物に関し、自動車の車体部材、特に好適には樹脂材料からなる自動車の車体部材に対し、帯電防止機能に優れた薄膜コーティング層を得ることができるコーティング剤組成物に関する。
従来より、自動車や鉄道車両、重機、船舶、航空機、農作業機械、建機等の外装に対し、保護、防汚、撥水、撥油、美観向上、褪色予防等を目的として、耐久性や施工性の良さから、シリコーンやフルオロシリコーン等を主成分としたコーティング剤が用いられ、当該コーティング剤による処理が多用されてきた(例えば特許文献1など)。
一方で社会構造の転換点にある現在、自動車の電動化、スマート化が進展しており、これらと併せて車体の軽量化や安全性の向上がより高い次元で求められている。これらの要求に応えるため、素材が軽量であることや、衝突時の衝撃吸収等の観点から、車体部材を従来の金属材料からプラスチックや繊維強化プラスチック(FRP)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等の樹脂材料への置換が進んでいる。しかしながらこれら樹脂材料は金属材料と異なり、空気や空気中の埃、その他様々な物体と接触、摩擦することで、静電気等が蓄積される。これらの蓄積量が増大すると、制御系の電子回路や走行系の信号に悪影響を及ぼす虞があり、また当該静電気そのものが空気に対する抵抗となって走行性能を低下させる。その為、樹脂材料からなる自動車の車体部材等に施与して静電気の蓄積を抑制できる、換言すると帯電防止機能を有したコーティング剤は、十分には検討されていない状況であった。
ここで特許文献2には、主に水中構造体へ施与して水生生物の付着、生育を防止することを目的とした、ジオルガノポリシロキサン、加水分解性シラン化合物、イオン性液体を含有する、防汚性のコーティング層を形成するための組成物が開示されている。特許文献3には、ヒドロカルビルシリケート類、塩基性触媒、グリコールエーテル、低級アルコール、特定構造のリチウム塩或いはオニウム塩から選ばれるイオン性化合物を含有する、親水性の帯電防止性を付与するための組成物が開示されている。
特開平10-36771号公報 特開2006-83211号公報 特開2010-111806号公報
しかしながら特許文献2に記載の組成物は、薄膜でコーティング層を形成できるものではないため、自動車や鉄道車両等の外装といった、一定の美観が求められる部材に施与できるようなものではなく、また反応性の原料を含む組成であるため、貯蔵安定性にも難があるものであり、さらに帯電防止機能についても特段言及されているものでは無い。特許文献3に記載の組成物は、プラスチックフィルム等への施与を前提としたものであり、コーティング層を形成する際には加熱の必要があるため、やはり自動車や鉄道車両等の外装といった大型の物品に対しては、容易に施与を行えるものではなく、また被処理面に撥水性を付与できるものでもない。
斯様に、従来のコーティング剤組成物では必要とする特性を満たすことが困難であったところ、本発明ではこれら特性を改善するため鋭意検討した結果、以下構成のコーティング剤組成物を用いることにより、これを達成できることを見いだした。すなわち本発明の第一の実施態様は、以下の(a)~(c)を含んでなるコーティング剤組成物である。
(a)水分散性ポリオルガノシロキサン 組成物全体に占める組成量が、固形分として1~20質量%
(b)ピリジニウム塩系イオン液体 組成物全体に占める組成量が、0.7~4.2質量%
(c)水
また本発明は以下の実施態様も含む。
第二の実施態様は、前記(b)がカウンターアニオンにフッ素を含む構造の化合物である、前記第一の実施態様に記載のコーティング剤組成物である。
第三の実施態様は、前記(b)がカウンターアニオンにフッ化ホウ素系アニオンまたはフッ化リン系アニオンを含む化合物である、前記第一または第二のいずれかの実施態様に記載のコーティング剤組成物である。
第四の実施態様は、前記(a)/(b)の質量比が1.30~8.50の範囲である、前記第三の実施態様に記載のコーティング剤組成物である。
第五の実施態様は、前記(a)がシリコーンレジンを含むものである、前記第一乃至第四のいずれかの実施態様に記載のコーティング剤組成物である。
第六の実施態様は、前記(b)が100℃以下の融点を有する化合物である、前記第一乃至第五のいずれかの実施態様に記載のコーティング剤組成物である。
第七の実施態様は、前記コーティング剤組成物が、樹脂材料からなる自動車の車体部材に施与されるものである、前記第一乃至第六のいずれかの実施態様に記載のコーティング剤組成物である。
第八の実施態様は、前記第一乃至第六のいずれかの実施態様に記載のコーティング剤組成物を基材表面に施与し、水分を揮散させることで硬化塗膜を形成する、コーティング層形成方法である。
第九の実施態様は、前記第八の実施態様に記載のコーティング層形成方法により形成されたコーティング層である。
本発明のコーティング剤組成物を用いることにより、自動車の車体への施工に適した、帯電防止性に優れた薄膜コーティング層を施与することができる。
以下より本発明の詳細について説明する。本発明のコーティング剤組成物に含まれる(a)は、水分散性ポリオルガノシロキサンであり、本発明のコーティング剤組成物を、プラスチック、繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチックなどの樹脂材料をはじめ、その他ガラスや金属、塗装鋼板等の各種基材表面に施工した際に、塗膜を形成する主要な成分となるものである。ここでいう水分散性ポリオルガノシロキサンとは、水中にポリオルガノシロキサン、すなわちアルコキシシランがシロキサン結合で重合した化合物、すなわち所謂シリコーンオイル、シリコーンオリゴマーまたはシリコーンレジンが水中に均一に分散してなるものをいう。
前記シリコーンオイル、シリコーンオリゴマー、シリコーンレジンの相違は、アルコキシシランが直鎖状に重合した構造のものがシリコーンオイル、ランダムに分岐した構造で比較的重合度が小さい(分子量が概ね1000程度まで)ものがシリコーンオリゴマー、重合度が大きい(分子量が概ね1000を超える)ものがシリコーンレジンである。当該ポリオルガノシロキサンを水中に均一に分散させる手法としては、ポリオルガノシロキサン分子自体が水と馴染むように親水性基で変性されたものであっても良く、また界面活性剤を少量添加して、これの作用によりエマルジョン化やサスペンション化させる等して水と馴染ませたものであっても良い。本発明においては、アニオンまたはノニオン系の界面活性剤によりエマルジョン化されたポリオルガノシロキサンであることが望ましい。
またこれらシリコーンオイル、シリコーンオリゴマー、シリコーンレジンは、各種の機能付与を目的として、分子中に各種官能基を有したものであってもよい。例えば各種基材表面または化合物との反応性を高めることを目的として、分子鎖の末端にアルコキシシリル基を有した加水分解性シリコーンオイルや、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、カルボキシル基等の官能基が分子鎖の末端、または側鎖についた変性シリコーンオイル、或いは構造中にこれらの官能基が一つ以上存在する変性シリコーンオリゴマー及び同レジン等を用いても良く、これらは複数種組み合わせて用いても良い。本発明のコーティング剤組成物においては、塗膜の強度等の観点から、当該(a)として変性または未変性のシリコーンレジンを含んでいることが望ましく、貯蔵時の安定性等の観点から特に好適には、アニオンまたはノニオン系の界面活性剤によりエマルジョン化されたシリコーンレジンを含んでいることがより望ましい。
本発明において好適に用いることのできる(a)の市販品としては、特に制限は無いが、例えば東レ・ダウコーニング株式会社製品のBY22-736EX(固形分45%、ジメチルシリコーンオイルとシリコーンレジンがノニオン系乳化剤により分散したエマルジョン)、BY-22-749SR(固形分72%、ジメチルシリコーンオイルと大粒径シリコーンレジンがノニオン系乳化剤により分散したエマルジョン)、MEM-3422(固形分53%、ジメチルシリコーンオイルとシリコーンレジンがノニオン系乳化剤により分散したエマルジョン)、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製品のKP2601(固形分23%、アミノ変性ジメチルシリコーンオイルがノニオン系乳化剤により分散したエマルジョン)、KP2609(固形分40%、アミノ変性ジメチルシリコーンオイルがノニオン系乳化剤により分散したエマルジョン)、KP2611(固形分26%、アミノ変性ジメチルシリコーンオイルがノニオン系乳化剤により分散したエマルジョン)、C800(固形分80%、ジメチルシリコーンオイルがノニオン系乳化剤により分散したエマルジョン)、SLJ1320(固形分60%、ジメチルシリコーンオイルがノニオン系乳化剤により分散したエマルジョン)、NP2412(固形分60%、ジメチルシリコーンオイルがノニオン系乳化剤により分散したエマルジョン)、R2701(固形分40%、シリコーンレジンがアニオン系乳化剤により分散したエマルジョン)、NP2804(固形分40%、シリコーンレジンがアニオン系乳化剤により分散したエマルジョン)等を適宜選択することができ、これらは複数種を組み合わせて使用しても良い。
本発明における当該(a)の組成量としては、本発明のコーティング剤組成物中に占める固形分(分散媒である水その他希釈成分等の、揮発分を除いた成分)としての質量割合が1~20質量%であり、より好適には1.5~15質量%であることが望ましく、さらに好適には2~10質量%であることが特に好適である。当該範囲にあることで本発明のコーティング剤組成物は、優れた撥水性と滑水性を発現することができるようになる。
本発明のコーティング剤組成物に含まれる(b)はピリジニウム塩系イオン液体であり、本発明のコーティング剤組成物を各種基材表面に施工した際に、当該成分が前記(a)よりなる塗膜中に取り込まれ、これが基材表面で電気伝導作用を奏することで、帯電防止機能を発現する上で必要なものである。なお本発明におけるイオン液体とは、イオン結合性の化合物であって、その融点がイオン結合性の化合物においては比較的低温である200℃程度までの温度に存在する物質である。当該物質は常温程度ではほぼ蒸気圧が無く、構造によっては融点が特定されないものもあり、また引火性や可燃性が無い、または極めて低いことで知られている物質であるが、本発明においてはカチオン種がピリジニウム系のカチオンであることが必要である。機構は明確では無いが、本発明においては導電性を発現する成分としてカチオン種がピリジニウム系のカチオンであるイオン液体を用いることで、その他の構造のカチオン種からなるイオン液体と比して、特に優れた帯電防止機能と、撥水性、滑水性を兼ね備えることができるのである。
ここで前記ピリジニウム塩系イオン液体としては公知の物質を用いることができ、具体的には1-エチルピリジニウムクロライド(融点不明の固体)、1-エチルピリジニウムブロマイド(融点120℃)、1-プロピルピリジニウムクロライド(融点不明の固体)、1-ブチルピリジニウムクロライド(融点132℃)、1-ブチルピリジニウムブロマイド(融点104℃)、1-ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート(融点不明の常温液体)、1-ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート(融点75℃)、1-ヘキシルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート(融点48℃)、1-ブチル-3-メチルピリジニウムクロライド(融点不明の固体)、1-ブチル-3-メチルピリジニウムブロマイド(融点不明の固体)、1-エチル-3-メチルピリジニウムエチルスルフェート(融点不明の常温液体)、1-エチル-3-メチルピリジニウムビストリフルオロメタンスルホフォニルイミド(融点不明の常温液体)、1-エチル-3-ヒドロキシメチルピリジニウムエチルスルフェート(融点不明の常温液体)、1-ブチル-4-メチルピリジニウムクロライド(融点160℃)、1-ブチル-4-メチルピリジニウムブロマイド(融点137℃)、1-ブチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート(融点42℃)等を適宜選択することができ、これらは複数種を組み合わせて使用しても良い。
本発明において前記(b)は、100℃以下の融点を有する化合物であることが望ましく、より好適には90℃以下の融点であることがさらに望ましい。明確な融点を有さない化合物である場合、100℃において液体としての性状を呈し、分解等を起こさないものである。また本発明において前記(b)は、ピリジニウム系のカチオン種に対し、アニオン種(本発明ではカウンターアニオンとも言う)がフッ素を含む構造であることが望ましく、より好適にはフッ化ホウ素系アニオンまたはフッ化リン系アニオンであることがさらに望ましく、特に好適には当該カウンターアニオンがテトラフルオロボレート(四フッ化ホウ素)アニオン、ヘキサフルオロホスフェート(六フッ化リン)アニオンであることが最も望ましい。
本発明における当該(b)の組成量としては、本発明のコーティング剤組成物中に占める割合が0.7~4.2質量%であり、より好適には0.8~4.1質量%であることが望ましく、さらに好適には0.9~4.0質量%であることが特に好適である。また本発明において好適には、組成物中の前記(a)/(b)の質量比が1.30~8.50の範囲にあることが望ましく、より好適には1.35~8.25の範囲にあることがさらに望ましく、特に好適には1.40~8.00の範囲にあることが最も望ましい。各数値が上記範囲にあることで、本発明のコーティング剤組成物は、優れた帯電防止性能、すなわち小さい表面抵抗値と低い埃付着性を発現することができるようになる。
本発明のコーティング剤組成物に含まれる(c)は水であり、本発明のコーティング剤組成物における前記(a)、(b)を均等に混合し、分散、希釈させる為の媒体である。当該水としては、不純物を含まないものであることが望ましく、例えば蒸留水、イオン交換水等、各種精製法により精製された水を用いることが望ましい。当該(c)の組成量は、前記(a)、(b)が所定の組成量範囲にある限りは特段の制限は無く、当該(a)、(b)を所定の組成量に希釈できるだけの質量を含めれば良い。なお貯蔵時に(a)、(b)いずれかの成分が分離や沈降等を起こすこともありうるが、使用時に貯蔵容器を軽く振る等して適宜混合攪拌をすることにより均質化すれば問題無い。なお前記(a)が予め当該水に分散された状態の原料を用いる場合は、当該原料に含まれる水分は(c)として算定する。
その他本発明のコーティング剤組成物においては、その特性を毀損しない範囲で適宜に任意の添加成分を加えることができる。たとえば、カップリング剤等の密着付与剤、可塑剤、老化防止剤、防錆剤、着色剤、界面活性剤、レオロジー調整剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、蛍光剤、研磨剤、香料、充填剤等の成分を選択することができる。
本発明のコーティング剤組成物は、金属、ガラス、セラミックス、プラスチック等の各種基材に対して施与することができるが、薄膜のコーティング層において撥水性、滑水性が特に求められる基材としての観点から、自動車の車体部材への施与が最も好適な利用である。さらに本発明の特徴である、優れた帯電防止機能としての特性から、特に樹脂材料からなる自動車の車体部材に対し好適に使用することができる。
さらに本発明は、前記コーティング剤によるコーティング層形成方法にも関する。本発明のコーティング層形成方法としては特段制限されるものではなく、例えば前記コーティング剤組成物を含浸させた繊維を用いた手塗り、刷毛塗り、自動機を用いた機械塗布等、適宜任意の手段を用いることができる。本発明において特に好ましくは、以下手順での施与である。すなわち本発明のコーティング剤組成物を、乾燥したスポンジやウエス等の繊維に適量含浸させ、これを手で基材表面に薄く塗り広げ、自然乾燥または乾燥機等を用いた強制乾燥により揮発成分を揮散させる。然る後、別の乾燥した布巾またはマイクロファイバーウエス等により当該被塗布面を拭き上げ平滑に均すことで仕上げを行う、という手順である。ここで、当該硬化塗膜の膜厚は、概ね0.01~100μm、好ましくは0.05~75μm、特に好ましくは0.1~50μmの範囲の膜厚となることが好ましい。コーティング層が当該範囲にあることで、良好な撥水性、滑水性と、優れた帯電防止特性を実現することができる。さらに本発明は、前記コーティング層形成方法により形成されたコーティング層にも関する。
以下、実施例により本発明の効果を詳説するが、これら実施例は本発明の態様の限定を意図するものでは無い。なお各実施例及び比較例等にて調製、評価を行ったコーティング剤組成物のことを、以後は単に「組成物」とも呼ぶ。
[組成物の調製法]
本発明の実施例、比較例にて評価した各コーティング剤組成物は、以下手順で調製した。すなわち25℃、50%RH環境下、前記(c)を満たしたガラス製容器中に前記(a)と前記(b)またはその比較物質を順次投入し、さらに10分間攪拌を続けたものをガラス製容器に密封充填した。それぞれの組成量は表1、2に示した質量比とした。
本発明のコーティング剤組成物の特性は、以下条件により評価を行い、評価結果は各表中に併せて記載した。なお、組成物を塗布せずに各評価を行った検体については参考例として補記した。
[接触角・滑落角測定]
表中に示した各組成物をティッシュペーパーの表面半分が湿る程度の量(約2ml)を該ティッシュペーパーに染み込ませ、基材である透明な黒色電着塗装板(寸法:50mm×20mm×5mm)の表面に手で薄く塗り拡げ、25℃の室内で10分間静置した後、余剰分を乾いたマイクロファイバー布で拭き取り、表面に組成物の斑が無い状態としたものを組成物が施与された試験片とした。この際の組成物の膜厚は、概ね1~50μm程度の範囲である。当該試験片表面にイオン交換水をスポイトで1滴(約0.005~0.05ml程度)滴下して、水の接触角を接触角計(DM-500、協和界面科学社製品)を用いて測定し、当該接触角の値で以て撥水性の評価を行った。本発明のコーティング剤組成物における撥水性として望ましい接触角は95°以上の値、より好適には98°以上の値、さらに好適には100°以上の値であることが最も望ましい。また前記試験片表面にイオン交換水をスポイトで1滴(約0.005~0.05ml程度)滴下し、この状態から試験片に対して徐々に傾斜をつけて行き、水滴が流れ始めた角度すなわち滑落角を測定することで、当該滑落角の値を滑水性(水滑落性)の指標として評価した。本発明のコーティング剤組成物における滑水性として好ましい滑落角は30°以下の値、より好適には28°以下の値、特に好適には25°以下の値であることが最も望ましい。
[表面抵抗測定]
基材を透明なPET板(寸法:80mm×80mm×2.0mm)とした他は、前記接触角・滑落角測定にて作成したものと同じ条件で表面抵抗評価用試験片を作成した。主電極の外径(外径φ50)とリング電極の内径の間が5mmとなるようにスクリーン印刷されたガラスエポキシ板を、試験片のコーティング面に接触させて表面抵抗値を測定した。(電極の材質は銅である)尚、この測定方法はJISK6271-1に準じたものである。本発明のコーティング剤組成物における望ましい表面抵抗値は、1.0×1012Ω/□以下、より好適には5.0×1011Ω/□以下の値、さらに好適には1.0×1011Ω/□以下の値であることが最も望ましい。尚、用いた測定器は「4339B High Resistance Meters」で、印加セルは「Agilent 16008B ResistivityCell」であり、どちらもアジレント・テクノロジー株式会社製のものである。
[埃付着性測定]
前記表面抵抗評価と同じ条件で作成した試験片を用い、評価を行った。仮想的な埃として、発泡スチロールブロック約10gを細かく砕き、直径が概ね5mm以下の破片を多量に作成した。これを、2Lのペットボトル中に詰め、上下に激しく摺動して摩擦をかけることにより帯電させた。静電気防止手袋を装着した状態で速やかに当該ペットボトルをカッターナイフにより縦に半分に切り裂き、発泡スチロールの破片近傍15cmの距離まで前記試験片のコーティング剤処理面を近づけて行き、前記発泡スチロール破片の試験片への付着個数で以て埃付着性を測定し、帯電防止機能を上記とは異なる側面から評価した。評価基準としては、試験片表面への付着した個数が0~5個であるものは埃付着性が非常に低いとして「○」と記載、6~20個であるものは埃付着性が低いとして「△」と記載、21個以上であるものは埃付着性が高いとして「×」と記載した。本発明のコーティング剤組成物における埃付着性は、低いほど望ましい。
[組成物の原料]
本発明の実施例、比較例で調製した各組成物に含まれる原料は以下の材料を用い、それぞれの組成量は表1に記載した。
(a)水分散性ポリオルガノシロキサン
・BY22-736EX:東レ・ダウコーニング株式会社製品、固形分45%、ジメチルシリコーンオイルとシリコーンレジンがノニオン系界面活性剤により分散したエマルジョン
・R2701:旭化成ワッカーシリコーン株式会社製品、固形分40%、シリコーンレジンがアニオン系界面活性剤により分散したエマルジョン
・SLJ1320:旭化成ワッカーシリコーン株式会社製品、固形分60%、ジメチルシリコーンオイルがノニオン系界面活性剤により分散したエマルジョン
・KP2601:旭化成ワッカーシリコーン株式会社製品、固形分23%、アミノ変性ジメチルシリコーンオイルがノニオン系界面活性剤により分散したエマルジョン
(b)ピリジニウム塩系イオン液体及びその比較成分
・1-ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート:bPyBF4と略記、東京化成化学工業株式会社製品、融点不明の常温液体
・1-ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート:bPyPF6と略記、東京化成化学工業株式会社製品、融点75℃
・テトラブチルホスフォニウムヘキサフルオロホスフェート:4bPPF6と略記、東京化成化学工業株式会社製品、融点245℃の固体
・テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート:4bAmPF6と略記、東京化成化学工業株式会社製品、融点不明の固体
・テトラブチルアンモニウムクロライド:4bAmClと略記、東京化成化学工業株式会社製品、融点70℃
(c)水
・イオン交換水:林純薬工業株式会社製品
Figure 0007057879000001
Figure 0007057879000002
表1の結果からは、本発明の構成を所定の組成比で含む組成物は、いずれも望ましい接触角・滑落角を有しており、かつ表面抵抗及び埃付着性においても好適な結果となっており、それぞれの評価により示される帯電防止機能が優れたものであることが確認された。但し(a)にシリコーンレジンを含まない材料を用いた組成(実施例7~12、19~24)においては、(a)にシリコーンレジンを含む組成と比して、僅かではあるが接触角、滑落角の値が悪化する傾向にあることが認められた。特に(a)がアミノ変性シリコーンオイルよりなるエマルジョンを用いた組成(実施例10~12、22~24)では、表面抵抗の値も若干悪化する傾向であることが認められた。
表2の結果からは、本発明の構成を所定の組成比で含まない組成物は、いずれも表面抵抗、埃付着性で評価される帯電防止機能または接触角、滑落角で評価される撥水・滑水機能のいずれか一つ以上が所望の特性とならないことが認められた。例えば(b)が本発明所定の組成量に満たない組成(比較例1,3,5,7,9,11)では、いずれも表面抵抗の値が過大なものとなり、なおかつ埃付着性においても不良であり、帯電防止コーティングとして不適であった。他方、(b)が本発明所定の組成量を超過した組成(比較例2,4,6,8,10,12)では、帯電防止機能、すなわち表面抵抗、埃付着の各特性においては、概ね問題無いものであったが、接触角、滑落角のいずれか一つ以上が適切な範囲に入らなかった。(b)を含まない組成(比較例25~28)と比しても接触角、滑落角の値が悪化していることから、当該(b)が本発明所定の範囲を越えると、(a)による塗膜の特性を損なうことが分かった。また(b)として、カチオン種がピリジニウム系のカチオンでない原料を用いた組成(比較例13~24)では、いずれも表面抵抗、埃付着性で評価される帯電防止機能が、(b)としてピリジニウム系のカチオンを含む実施例と比して劣る結果となっており、また一部の組成では接触角、滑落角に関しても劣ったものとなっていた。
本発明のコーティング剤組成物は、優れた帯電防止機能と、撥水・滑水性を兼ね備えたものであり、これらの特性が求められる用途、例えば自動車の車体部材、特に好適には、プラスチックや繊維強化プラスチック(FRP)類等の樹脂材料からなる自動車の車体部材への施工に適した有用なものである。

Claims (7)

  1. (a)水分散性ポリオルガノシロキサン 組成物全体に占める組成量が、固形分として1~20質量%
    (b)カウンターアニオンにフッ化ホウ素系アニオンまたはフッ化リン系アニオンを含むピリジニウム塩系イオン液体 組成物全体に占める組成量が、0.7~4.0質量%
    (c)水
    を含んでなるコーティング剤組成物。
  2. 前記(a)/(b)の質量比が1.30~8.50の範囲である、前記請求項1に記載のコーティング剤組成物。
  3. 前記(a)がシリコーンレジンを含むものである、前記請求項1または2のいずれか1項に記載のコーティング剤組成物。
  4. 前記(b)が100℃以下の融点を有する化合物である、前記請求項1~3のいずれか1項に記載のコーティング剤組成物。
  5. 前記コーティング剤組成物が、樹脂材料からなる自動車の車体部材に施与されるものである、前記請求項1~4のいずれか1項に記載のコーティング剤組成物。
  6. 前記請求項1~4のいずれか1項に記載のコーティング剤組成物を基材表面に施与し、水分を揮散させることで硬化塗膜を形成する、コーティング層形成方法。
  7. 前記請求項6に記載のコーティング層形成方法により形成されたコーティング層。
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