JP7054265B2 - レーザ溶接方法及びレーザ溶接システム - Google Patents
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Description
コイルセグメントの挿入方向先端部は予め絶縁被膜を除去されており、絶縁被膜を除去された先端部同士は、その矩形状の先端面が1つの平面を形成するように横並びに突き合わされた状態で、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接等のアーク溶接やYAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザ等のレーザ溶接により接合される。
これに対し、レーザ溶接では金属を局所的に溶融・凝固させることができて熱の影響範囲を狭くできるため、小型化や生産効率の向上、溶接品質の均一化への寄与が大きい。
コイルセグメントの先端部同士は、突き合わせ面の境界に隙間が生じないように把持部材(グリッパ)で加圧・挟持されるが、先端面の切断形状の不均一性等により完全に隙間が無くなることはむしろ少ない。換言すれば、隙間が無いように先端部同士を完全に密着させることは現実的に困難である。
このため、僅かな隙間が存在した場合にはその隙間から内部にレーザ光が入り込み、絶縁被膜を破壊することがあった。
溶接部位の下方には、他層のコイルセグメントや他相のコイルセグメントが重なるように存在しているため、レーザ光の進入位置が深いとこれらの絶縁被膜を破壊し、層間絶縁又は相間絶縁が断たれる虞があった。
この特許文献1で提案された導体接合方法は、その段落「0026」に記載されているように、裸導体の2つの対向面の一方に斜めに照射されたレーザ光により、その一方の対向面が局所的に溶融し、その熱で他方の対向面も溶融することにより、全体が溶融するというものである。
この斜め照射方式によれば、レーザ光が境界の隙間から内部に進入して絶縁被膜を破壊するという心配はない。
滑らかでない部分や角部が存在すると経時的な振動等によりクラックが生じて溶着部が分離する起点となったり、溶接の肉盛りの一部が脱落してコア内に入り込み、短絡の原因となったりしやすいからである。
また、特許文献1の如く斜め照射方式を採用した場合、上記の左右対称の滑らかな溶接形状は期待できない。
すなわち、前記各先端面に対して垂直に、前記レーザ光を、前記各先端面間の境界に対して対称でかつ前記各先端面間の境界を横切りながら移動する照射パターンで照射し、前記境界を横切るときは前記レーザ光の照射をオフする。
このレーザ溶接システム2は、コア4の端面4bから突出したコイルセグメントの先端部6cのうちコア4の径方向で対向する先端部6c同士を、該先端部6cの矩形状の先端面のコア4の軸方向における高さを略同じにしてコア4の径方向で突き合わせた状態でその各先端面にレーザ光を照射して溶接するレーザ溶接システムである。
そして、このレーザ溶接システム2は、レーザ光Lbを照射するレーザ光照射装置8と、レーザ光の移動軌跡が略同一の照射パターンで各先端面を照射するようにレーザ光照射装置8を制御する制御装置10と、溶接条件を入力するタッチパネル方式の入力装置12と、溶接対象の一対の先端部6c同士を加圧・挟持する後述のグリッパ機構と、溶接対象の一対の先端部6cの最先端を切断する切断機構23等を有している。
ここでは制御装置10と入力装置12とを分離して表示しているが、入力装置12が制御装置10に一体に設けられている構成でもよい。
レーザヘッド18は、光ファイバ20で伝送されるレーザ光を適切なスポット径に集光するための集光光学系(コリメートレンズや集光レンズ)を内蔵している。
溶接位置の位置変えは、レーザヘッド18の移動によって行ってもよい。
コア4の端面4bから突出したコイルセグメント6の先端部6cは、コア4の径方向に隣り合う層毎に、ツイスト加工によって周方向の異なる向きに折り曲げられる。
この状態で図7に示すように、剥離部6d同士がコア4の周方向の位置ずれを不図示の位置決め具で位置合わせされ、一対の把持部材26でコア4の径方向から加圧・挟持され、突き合わせられる。一対の把持部材26とこれらを駆動する不図示の駆動源とでグリッパ機構14が構成されている。
図7は切断後の状態を示しており、この状態、即ちコア4の軸方向における先端面6eの高さを略同じにして剥離部6d同士をコア4の径方向で突き合わせた状態で、レーザ溶接システム2によるレーザ溶接が行われる。
溶接部位の下方には、図6に示したように、他の層や相のコイルセグメントが重なるように存在するため、これらにレーザ光Lbが届いて絶縁被膜が破壊されると、層間又は相間の絶縁が断たれることになる。
このような溶接形状Wとなれば、溶接後の把持部材26の引き抜きもスムーズになされるとともに、応力集中によるクラックが生じにくいので、溶接部の一部が欠けて溶着部が分離する起点となるなどの不具合を抑制することができる。
このような膨らみ部Waや角部Wbは、溶接後の把持部材26の引き抜きを阻害したり、把持部材26の引き抜きや経時的な振動で脱落して、コア4の内部に付着して短絡の原因になったりする虞がある。
本実施形態において、隙間が形成される図7に示した一対の先端面6e間の境界では、レーザ光を照射しない。これにより、境界における隙間の有無に関係なく、隙間からのレーザ光Lbの入り込みを来すことなくレーザ溶接を行うことができる。また、各先端面6e間の境界に対して対称となる照射パターンでレーザ光の照射を行っている。このことにより、図9Aや図9Bに示したような滑らかな円弧状の溶接形状を安定して得ることができる。
平面6eCの対角線に沿う一点鎖線で示すX状ラインの角消し用パターン32は、レーザ光Lbの移動軌跡による、平面6eCの対角線に沿った連続的な又は断続的なパターンの一例を示している。
上記「移動軌跡」とは、レーザ光のスポットが移動した後の線状の軌跡であり、レーザ光の移動方向や移動順序、移動速度などは問わない。
本実施形態では、平面6eCに対し、結果的に上記3つのパターンからなる照射パターンでレーザ光Lbを照射して溶接する。
予熱パターン30は、平面6eCの外周近傍を連続的又は断続的に一周する照射パターンである。連続的にとはレーザ光Lbの照射をオンにして移動することをいい、断続的にとはレーザ光Lbの照射のオン、オフを繰り返しながら移動することをいう。
予熱パターン30では、例えば平面6eCの右上隅を始点として左側へレーザ光Lbが直進移動し(移動軌跡30a)、境界28を横切って先端面6eLの左上隅まで直進移動する(移動軌跡30b)。
レーザ光Lbの照射オフ期間Δtは、各先端面ペアの境界28でランダムに形成される隙間の最大値に対応して設定されており、実験により求められる。照射オフ期間Δtは、レーザ光Lbの移動速度によっても異なる。
レーザ光Lbが先端面6eRの右下隅まで直進移動した後は向きを90°変えて始点まで直進移動する(移動軌跡30f)。
ここでは各移動軌跡30a~30fをそれぞれの範囲におけるレーザ光Lbの連続照射によって形成しているが、断続的な照射によって形成してもよい。
なお、予熱パターン30における始点は、上記に限定されず図2Aの矩形の移動軌跡のいずれの箇所でもよく、移動向きも限定されない。
角消し用パターン32は、図1に示した平面6eCの対角線に沿って連続的に移動する照射パターンであり、角消し用パターン32は、図9Dで示したような角部Wbが残って外側に突出した状態で凝固することを防止するために設けられるものである。
また、角消し用パターン32は、予熱パターン30と同様に平面6eCの予熱にも寄与するパターンでもある。
角消し用パターン32では、例えば平面6eCの右上隅を始点として左斜め下方へレーザ光Lbが直進移動し(移動軌跡32a)、境界28を斜めに横切って先端面6eLの左下隅まで直進移動する(移動軌跡32b)。
例えば図3に示すように、平面6eCの4つの角部を始点として、それぞれ平面6eCの中心に向かって直進移動する移動軌跡32a、32b、32c、32dからなる照射パターンとしてもよい。
この場合、レーザ光Lbはいずれの移動においても境界28を横切らないので、境界28での隙間からレーザ光Lbが内方に入り込む問題も生じない。
本溶接パターン34は、図1に示した平面6eCにおける予熱パターン30の内方を連続的に一周する照射パターンである。本溶接パターン34では、例えば平面6eCの右上を始点として左側へレーザ光Lbが直進移動し(移動軌跡34a)、境界28を横切って平面6eCの左上まで直進移動する(移動軌跡34b)。
ここで、境界28を横切るときはレーザ光Lbは照射されない。即ち、制御装置10は予め算出された先端面6eRにおける移動距離に基づいて境界28の手前でレーザ光Lbの照射をオフし、レーザヘッド18の照射口が境界28を越えて先端面6eLに入った直後にレーザ光Lbの照射をオンする制御を行う。
即ち、制御装置10は予め算出された先端面6eLにおける移動距離に基づいて境界28の手前でレーザ光Lbの照射をオフし、レーザヘッド18の照射口が境界28を越えて先端面6eRに入った直後にレーザ光Lbの照射をオンする制御を行う。いずれの場合も、レーザ光Lbの照射オフ期間の定め方は、予熱パターン30の場合と同様である。
なお、本溶接パターン34における始点は、上記に限定されず図2Cの矩形の移動軌跡のいずれの箇所でもよく、移動向きも限定されない。
実験では、レーザ光照射装置8として、トルンプ社製のTruDisk4002(4000W;YAGレーザ)を使用した。平面6eCの面積は14.7mm2であった。
さらにこのような場合には、平面6eCの予熱に重きをおいて、図1に示す予熱パターン30の範囲内でレーザ光LbをX状に移動させて第2の予熱パターンとしてもよい。即ち、予熱パターン30に、矩形輪郭の対角線に沿ってレーザ光Lbを移動させるX状の照射パターンを追加してもよい。
所定のプログラムは、予熱パターン30に沿ってレーザ光Lbを照射するステップと、角消し用パターン32に沿ってレーザ光Lbを照射するステップと、本溶接パターン34に沿ってレーザ光Lbを照射するステップとをこの順に実行させるようにプログラミングされている。
予熱パターン30に沿ってレーザ光Lbを照射するステップと、角消し用パターン32に沿ってレーザ光Lbを照射するステップとは順序を逆にしてもよい。
入力装置12により溶接条件が入力されると、制御装置10は入力された溶接条件に基づいて参照テーブル11から対応するレーザ光の出力及び/又は移動速度を選択してレーザ光照射装置8の条件設定を行う。
平面6eCの段差、平面6eCの平面度、平面6eCの表面性状、コイルセグメント6の温度は、予め官能パラメータとしてレベルを段階的に設定し、オペレータが目視や手触りで判断して入力するようにしてもよい。
制御装置10は、以上の決定に基づきレーザ光照射装置8を制御し(S15)、コイルセグメント6の先端面6eR、6eLにレーザ光Lbを照射して、コイルセグメント6を溶接する。
さらに、平面6eCに照射するレーザ光Lbは1本に限定されない。例えば、レーザ光照射装置8で発振されたレーザ光Lbを、ハーフミラー等のビームスプリッタで分岐し、2本のレーザ光Lbで先端面6eR、6eLを略同一の照射パターンにより個別に照射する構成としてもよい。
Claims (5)
- コアの端面から突出したコイルセグメントの先端部のうち該コアの径方向で対向する先端部同士を、該各先端部の矩形状の先端面の前記コアの軸方向における高さを略同じにして前記コアの径方向で突き合わせた状態で前記各先端面にレーザ光を照射して溶接するレーザ溶接方法であって、
前記各先端面に対して垂直に、前記レーザ光を、前記各先端面間の境界に対して対称でかつ前記各先端面間の境界を横切りながら移動する照射パターンで照射し、前記境界を横切るときは前記レーザ光の照射をオフすることを特徴とするレーザ溶接方法。 - コアの端面から突出したコイルセグメントの先端部のうち該コアの径方向で対向する先端部同士を、該各先端部の矩形状の先端面の前記コアの軸方向における高さを略同じにして前記コアの径方向で突き合わせた状態で前記各先端面にレーザ光を照射して溶接するレーザ溶接方法であって、
前記各先端面に対し、前記レーザ光を、前記各先端面間の境界に対して対称となる照射パターンで照射し、
前記照射パターンが、前記各先端面を合わせた一つの平面の外周近傍を連続的に又は断続的に一周する第1パターンと、前記第1パターンの照射の後で、該第1パターンの内側を連続的に又は断続的に一周する第2パターンとを含むことを特徴とするレーザ溶接方法。 - コアの端面から突出したコイルセグメントの先端部のうち該コアの径方向で対向する先端部同士を、該各先端部の矩形状の先端面の前記コアの軸方向における高さを略同じにして前記コアの径方向で突き合わせた状態で前記各先端面にレーザ光を照射して溶接するレーザ溶接方法であって、
前記各先端面に対し、前記レーザ光を、前記各先端面間の境界に対して対称となる照射パターンで照射し、
前記照射パターンが、前記各先端面を合わせた一つの平面の対角線に沿った連続的又は断続的なパターンを含むことを特徴とするレーザ溶接方法。 - コアの端面から突出したコイルセグメントの先端部のうち該コアの径方向で対向する先端部同士を、該各先端部の矩形状の先端面の前記コアの軸方向における高さを略同じにして前記コアの径方向で突き合わせた状態で前記各先端面にレーザ光を照射して溶接するレーザ溶接システムであって、
レーザ光を照射するレーザ光照射装置と、前記レーザ光が、前記各先端面間の境界に対して対称となる照射パターンで前記各先端面を照射するように前記レーザ光照射装置を制御する制御装置とを有し、
前記制御装置は、前記各先端面に対して前記レーザ光が垂直に照射されて前記先端面間の境界を横切りながら移動するように、且つ前記レーザ光が前記境界を横切るときは前記レーザ光の照射をオフするように前記レーザ光照射装置を制御することを特徴とするレーザ溶接システム。 - コアの端面から突出したコイルセグメントの先端部のうち該コアの径方向で対向する先端部同士を、該各先端部の矩形状の先端面の前記コアの軸方向における高さを略同じにして前記コアの径方向で突き合わせた状態で前記各先端面にレーザ光を照射して溶接するレーザ溶接システムであって、
レーザ光を照射するレーザ光照射装置と、前記レーザ光が、前記各先端面間の境界に対して対称となる照射パターンで前記各先端面を照射するように前記レーザ光照射装置を制御する制御装置とを有し、
溶接条件を入力する入力装置と、
前記先端面の面積を含む溶接条件と、前記レーザ光の出力及び/又は移動速度との関係が予め求められた参照テーブルと、
を有し、
前記制御装置は、前記入力装置により入力された前記溶接条件に基づいて前記参照テーブルから対応する前記レーザ光の出力及び/又は移動速度を選択して前記レーザ光照射装置を制御することを特徴とするレーザ溶接システム。
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