以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、本明細書において、「所定」とは、「予め規定された」という意味で用いられている。
図1は、一実施例によるモータ1(回転電機の一例)の断面構造を概略的に示す断面図である。
図1には、モータ1の回転軸12が図示されている。以下の説明において、軸方向とは、モータ1の回転軸(回転中心)12が延在する方向を指し、径方向とは、回転軸12を中心とした径方向を指す。従って、径方向外側とは、回転軸12から離れる側を指し、径方向内側とは、回転軸12に向かう側を指す。また、周方向とは、回転軸12まわりの回転方向に対応する。
モータ1は、例えばハイブリッド車両や電気自動車で使用される車両駆動用のモータであってよい。ただし、モータ1は、他の任意の用途に使用されるものであってもよい。
モータ1は、インナロータタイプであり、ステータ21がロータ30の径方向外側を囲繞するように設けられる。ステータ21は、径方向外側がモータハウジング10に固定される。
ロータ30は、ステータ21の径方向内側に配置される。ロータ30は、ロータコア32と、ロータシャフト34とを備える。ロータコア32は、ロータシャフト34の径方向外側に固定され、ロータシャフト34と一体となって回転する。ロータシャフト34は、モータハウジング10にベアリング14a、14bを介して回転可能に支持される。なお、ロータシャフト34は、モータ1の回転軸12を画成する。
ロータコア32は、例えば円環状の強磁性体の積層鋼板から形成される。ロータコア32の内部には、永久磁石321が挿入される。永久磁石321の数や配列等は任意である。変形例では、ロータコア32は、磁性粉末が圧縮して固められた圧粉体により形成されてもよい。
ロータコア32の軸方向の両側には、エンドプレート35A、35Bが取り付けられる。エンドプレート35A、35Bは、ロータコア32を支持する支持機能の他、ロータ30のアンバランスの調整機能(切削等されることでアンバランスを無くす機能)を有してよい。
ロータシャフト34は、図1に示すように、中空部34Aを有する。中空部34Aは、ロータシャフト34の軸方向の全長にわたり延在する。中空部34Aは、油路として機能してもよい。例えば、中空部34Aには、図1にて矢印R1で示すように、軸方向の一端側から油が供給され、ロータシャフト34の径方向内側の表面を伝って油が流れることで、ロータコア32を径方向内側から冷却できる。また、ロータシャフト34の径方向内側の表面を伝う油は、ロータシャフト34の両端部に形成される油穴341、342を通って径方向外側へと噴出され(矢印R5、R6)、コイルエンド220A、220Bの冷却に供されてもよい。
なお、図1では、特定の構造のモータ1が示されるが、モータ1の構造は、溶接により接合されるステータコイル24(後述)を有する限り、任意である。従って、例えば、ロータシャフト34は、中空部34Aを有さなくてもよいし、中空部34Aよりも有意に内径の小さい中空部を有してもよい。また、図1では、特定の冷却方法が開示されているが、モータ1の冷却方法は任意である。従って、例えば、中空部34A内に挿入される油導入管が設けられてもよいし、モータハウジング10内の油路から径方向外側からコイルエンド220A、220Bに向けて油が滴下されてもよい。
また、図1では、ロータ30がステータ21の内側に配されたインナーロータ型のモータ1であるが、他の形態のモータに適用されてもよい。例えば、ステータ21の外側にロータ30が同心に配されたアウターロータ型のモータや、ステータ21の外側及び内側の双方にロータ30が配されたデュアルロータ型のモータ等に適用されてもよい。
次に、図2以降を参照して、ステータ21に関する構成を詳説する。
図2は、ステータコア22の単品状態の平面図である。図3は、ステータコア22に組み付けられる1対のコイル片52を模式的に示す図である。図3では、ステータコア22の径方向内側を展開した状態で、1対のコイル片52とスロット220との関係が示される。また、図3では、ステータコア22が点線で示され、スロット220の一部については図示が省略されている。図4は、ステータ21のコイルエンド220A周辺の斜視図である。図5は、同相のコイル片52の一部を抜き出して示す斜視図である。
ステータ21は、ステータコア22と、ステータコイル24とを含む。
ステータコア22は、例えば円環状の強磁性体の積層鋼板からなるが、変形例では、ステータコア22は、磁性粉末が圧縮して固められた圧粉体により形成されてもよい。なお、ステータコア22は、周方向で分割される分割コアにより形成されてもよいし、周方向で分割されない形態であってもよい。ステータコア22の径方向内側には、ステータコイル24が巻回される複数のスロット220が形成される。具体的には、ステータコア22は、図2に示すように、円環状のバックヨーク22Aと、バックヨーク22Aから径方向内側に向かって延びる複数のティース22Bとを含み、周方向で複数のティース22B間にスロット220が形成される。スロット220の数は任意であるが、本実施例では、一例として、48個である。
ステータコイル24は、U相コイル、V相コイル、及びW相コイル(以下、U、V、Wを区別しない場合は「相コイル」と称する)を含む。各相コイルの基端は、入力端子(図示せず)に接続されており、各相コイルの末端は、他の相コイルの末端に接続されてモータ1の中性点を形成する。すなわち、ステータコイル24は、スター結線される。ただし、ステータコイル24の結線態様は、必要とするモータ特性等に応じて、適宜、変更してもよく、例えば、ステータコイル24は、スター結線に代えて、デルタ結線されてもよい。なお、ステータコイル24は、中性点に係る部分及び動力線に係る部分を含むが、以下では、これら以外の部分を「一般部」と称する場合がある。
各相コイルは、複数のコイル片52を接合して構成される。図6は、一のコイル片52の概略正面図である。コイル片52は、相コイルを、組み付けやすい単位(例えば2つのスロット220に挿入される単位)で分割したセグメントコイルの形態である。コイル片52は、断面略矩形の線状導体(平角線)60を、絶縁被膜62で被覆してなる。本実施例では、線状導体60は、一例として、銅により形成される。ただし、変形例では、線状導体60は、鉄のような他の導体材料により形成されてもよい。
コイル片52は、ステータコア22に組み付ける前の段階では、一対の直進部50と、当該一対の直進部50を連結する連結部54と、を有した略U字状に成形されてよい。コイル片52をステータコア22に組み付ける際、一対の直進部50は、それぞれ、スロット220に挿入される(図3参照)。これにより、連結部54は、図3に示すように、ステータコア22の軸方向他端側において、複数のティース22B(及びそれに伴い複数のスロット220)を跨ぐように周方向に延びる。連結部54が跨ぐスロット220の数は、任意であるが、図3では3つである。また、直進部50は、スロット220に挿入された後は、図6において、二点鎖線で示すように、その途中で周方向に屈曲される。これにより、直進部50は、スロット220内において軸方向に延びる脚部56と、ステータコア22の軸方向一端側において周方向に延びる渡り部58と、になる。
なお、図6では、一対の直進部50は、互いに離れる方向に屈曲するが、これに限られない。例えば、一対の直進部50は、互いに近づく方向に屈曲されてもよい。また、ステータコイル24は、3相の相コイルの末端同士を連結して中性点を形成するための中性点用コイル片等も有することがある。後述する先端部40の形状は、これら連結用コイル片や、中性点用コイル片に適用されてもよい。
一つのスロット220には、図6に示すコイル片52の脚部56が複数、径方向に並んで挿入される。従って、ステータコア22の軸方向一端側には、周方向に延びる渡り部58が複数、径方向に並ぶ。図3及び図5に示すように、一つのスロット220から飛び出て周方向第1側(例えば時計回りの向き)に延びる一のコイル片52の渡り部58は、他のスロット220から飛び出て周方向第2側(例えば反時計回りの向き)に延びる他の一のコイル片52の渡り部58に接合される。
本実施例では、一例として、1つのスロット220に6つのコイル片52が組み付けられる。以下では、径方向で最も外側のコイル片52から順に、第1ターン、第2ターン、第3ターンとも称する。この場合、第1ターンのコイル片52と第2ターンのコイル片52とは、後述の接合工程により先端部40同士が接合され、第3ターンのコイル片52と第4ターンのコイル片52とは、後述の接合工程により先端部40同士が接合され、第5ターンのコイル片52と第6ターンのコイル片52とは、後述の接合工程により先端部40同士が接合される。
ここで、コイル片52は、上述した通り、絶縁被膜62で被覆されているが、先端部40だけは、当該絶縁被膜62が除去される。これは、先端部40にて他のコイル片52との電気的接続を確保するためである。また、図5及び図6に示すように、コイル片52の先端部40のうち、最終的に軸方向外側端面42、すなわち、コイル片52の幅方向一端面を、軸方向外側に凸の円弧面としている。
図7は、互いに接合されたコイル片52の先端部40及びその近傍を示す図である。なお、図7には、溶接対象箇所90の周方向の範囲D1が模式的に示される。図8は、溶接対象箇所90を通る図7のラインA-Aに沿った断面図である。
コイル片52の先端部40を接合する際には、互いに接合される2つの先端部40を、それぞれの円弧面(軸方向外側端面42)の中心軸Oが一致するように、その厚み方向に重ねて接合されてよい。このように中心軸を合わせて重ねることで、屈曲角度αが比較的大きい場合や小さい場合でも、互いに接合される2つの先端部40の軸方向外側のラインが一致し、適切に、重ね合わせることができる。
ここで、本実施例では、コイル片52の先端部40を接合する際の接合方法としては、溶接が利用される。そして、本実施例では、溶接方法としては、TIG溶接に代表されるアーク溶接ではなく、レーザビーム源を熱源とするレーザ溶接が採用される。TIG溶接に代えて、レーザ溶接を用いることで、コイルエンド220A、220Bの軸方向の長さを低減できる。すなわち、TIG溶接の場合は、当接させるコイル片の先端部同士を軸方向外側に屈曲させて軸方向に延在させる必要があるのに対して、レーザ溶接の場合は、かかる屈曲の必要性がなく、図7に示すように、当接させるコイル片52の先端部40同士を周方向に延在させた状態で溶接を実現できる。これにより、当接させるコイル片52の先端部40同士を軸方向外側に屈曲させて軸方向に延在させる場合に比べて、コイルエンド220A、220Bの軸方向の長さを低減できる。
レーザ溶接では、図5に模式的に示すように、当接された2つの先端部40における溶接対象箇所90に溶接用のレーザビーム110を当てる。なお、レーザビーム110の照射方向(伝搬方向)は、軸方向に略平行であり、当接された2つの先端部40の軸方向外側端面42に、軸方向外側から向かう方向である。レーザ溶接の場合は、局所的に加熱できるため、先端部40及びその近傍のみを加熱することができ、絶縁被膜62の損傷(炭化)等を効果的に低減できる。その結果、適切な絶縁性能を維持したまま、複数のコイル片52を電気的に接続できる。
溶接対象箇所90の周方向の範囲D1は、図7に示すように、2つのコイル片52の先端部40同士の当接部分における軸方向外側端面42の周方向の全範囲D0のうちの、両端を除く部分である。両端は、軸方向外側端面42の凸の円弧面に起因して、十分な溶接深さ(図7の寸法L1参照)を確保し難いためである。溶接対象箇所90の周方向の範囲D1は、コイル片52間での必要な接合面積や必要な溶接強度等が確保されるように適合されてよい。
溶接対象箇所90の径方向の範囲D2は、図8に示すように、2つのコイル片52の先端部40同士の当接面401を中心とする。溶接対象箇所90の径方向の範囲D2は、レーザビーム110の径(ビーム径)に対応してよい。すなわち、レーザビーム110は、照射位置が径方向に実質的に変化することなく周方向に沿って直線的に変化する態様で、照射される。
次に、図9を参照してステータ21の製造の流れについて概説する。図9は、ステータ21の製造の流れを概略的に示すフローチャートである。
ステータ21の製造方法は、まず、ステータコア22を準備し、かつ、ステータコイル24を形成するための、真っ直ぐなコイル片52(成形前のコイル片52)を準備する工程(S12)を含む。
続いて、ステータ21の製造方法は、コイル片52の先端部40(始端及び終端)の絶縁被膜62を除去する除去工程(S14)を含む。この絶縁被膜62の除去方法としては、任意であるが、例えば、絶縁被膜62は、刃具を用いて機械的に除去されてもよいし、エッチング等により化学的に除去されてもよい。また、絶縁被膜62は、レーザを用いて熱的に除去されてもよい。
なお、コイル片52同士を接合するためには、少なくとも、先端部40のうち実際に接合される面の絶縁被膜62のみが除去されていればよく、その他の面(裏面または表面の他方の面、及び、側面)の絶縁被膜62は、残っていてもよい。
続いて、ステータ21の製造方法は、除去工程後に、真っ直ぐなコイル片52を、金型等を用いて屈曲させ、成形する成形工程(S16)を含む。例えば、コイル片52を、図6に示したような、一対の直進部50と、一対の直進部50を連結する連結部54と、を有した略U字状に成形する。なお、ステップS16及びステップS14の順番は入れ替わっていてもよい。
続いて、ステータ21の製造方法は、成形工程後に、コイル片52を、ステータコア22のスロット220に挿入する装着工程(S18)を含む。挿入工程は、全てのコイル片52の挿入が完了した段階で完了する。
続いて、ステータ21の製造方法は、挿入工程後に、直進部50のうち、各スロット220から突出している部分を、専用の治具を用いて、周方向に倒す変形工程(S20)を含む。これにより、直進部50は、スロット220内において軸方向に延びる脚部56と、軸方向一端側において周方向に延びる渡り部58とになる。
続いて、ステータ21の製造方法は、変形工程後に、周方向第1側(例えば時計回りの向き)に延びる一のコイル片52の渡り部58の先端部40と、周方向第2側(例えば反時計回りの向き)に延びる他の一のコイル片52の渡り部58の先端部40と、を接合する接合工程(S22)を含む。本実施例では、上述のように、2つの先端部40は、溶接により接合される。接合工程(レーザ溶接による接合工程)の詳細は、上述のとおりである。2つの先端部40ごとに溶接が実行され、すべての組の2つの先端部40が溶接されると、接合工程が終了する。
続いて、ステータ21の製造方法は、接合工程後に、仕上げ工程(S24)を含む。仕上げ工程は、例えば上述のようにコイル片52を組み付けることで形成されるコイルエンド220A、220Bに対して絶縁処理を行う工程等を含んでよい。なお、絶縁処理は、コイルエンド220A、220Bの全体を封止する態様で樹脂をモールドする処理であってよいし、ワニス等を塗布する処理であってもよい。
次に、図10以降を参照して、上述した接合工程(図9のステップS22)について詳説する。
図10は、接合工程(図9のステップS22)における各工程の流れを示すフローチャートである。図11は、図10の説明図であり、複数のステーションST1~ST4の説明図である。図12は、図10の説明図であり、複数のステーションST1~ST4間のワークの流れの説明図である。図12では、状態1から開始され、状態2、状態3等へと移行していく時系列で、各状態においてステーションST1~ST4のそれぞれで処理されるワークが示される。
本実施例では、接合工程は、一例として、4つのステーションST1~ST4を用いて実現される。なお、ステーションの数は、2以上であれば任意である。ステーションST1~ST4のそれぞれには、ワークが搬入される。ここで、ワークとは、ステータ組み付け用のワークであり、具体的には、図9のステップS22の処理対象となるワークである。
図10を参照するに、まず、ステップS220では、ワークがステーションST1~ST4のそれぞれに搬入される。なお、ステーションST1~ST4のそれぞれに搬入されるワークは、個体として異なるワークである。例えば、図12に示す例において状態3に後続する状態4は、ステーションST1にワークk4が搬入完了され、ステーションST2にワークk3が搬入完了され、ステーションST3にワークk2が搬入完了され、かつ、ステーションST4にワークk1が搬入完了された状態である。なお、ステーションST1~ST4のそれぞれへの、対応するワークの搬入タイミングは、好ましくは、同時であるが、有意な時間差を有してもよい。
続くステップS222では、ステーションST1~ST4のそれぞれにおいて、ステーションST1~ST4のそれぞれに割り当てられた所定の工程が実行される。本実施例では、一例として、ステーションST1には、第1溶接工程が割り当てられ、第1溶接工程は、ワークにおけるステータコイル24の第1部分の溶接を完了させる工程である。また、ステーションST2には、第2溶接工程が割り当てられ、第2溶接工程は、ワークにおけるステータコイル24の第2部分の溶接を完了させる工程である。また、ステーションST3には、第3溶接工程が割り当てられ、第3溶接工程は、ワークにおけるステータコイル24の第3部分の溶接を完了させる工程である。また、ステーションST4には、第4溶接工程が割り当てられ、第4溶接工程は、ワークにおけるステータコイル24の第4部分の溶接を完了させる工程である。
ステータコイル24の第1部分~第4部分は、例えば、互いに異なる部分であり、第1部分~第4部分の分け方は、任意である。本実施例では、一例として、ステータコイル24の第1部分は、第1ターン及び第2ターンのコイル片52であり、ステータコイル24の第2部分は、第3ターン及び第4ターンのコイル片52であり、ステータコイル24の第3部分は、第5ターン及び第6ターンのコイル片52であり、ステータコイル24の第4部分は、ステータコイル24の動力線や中性線に係るコイル片52である。なお、別の実施例では、ステータコイル24の第1部分は、第1群のスロット220に挿入される第1ターン~第6ターンのコイル片52であり、ステータコイル24の第2部分は、第1群とは別の第2群のスロット220に挿入される第1ターン~第6ターンのコイル片52であり、ステータコイル24の第3部分は、第1群及び第2群とは別の第3群のスロット220に挿入される第1ターン~第6ターンのコイル片52であり、ステータコイル24の第4部分は、ステータコイル24の動力線や中性線に係るコイル片52であってよい。
続くステップS224では、ステーションST1~ST4のそれぞれにおいて、それぞれに割り当てられた溶接工程が完了されたワークが、次工程へと搬出される。例えば、図12に示す例において状態4から状態5への移行時は、ステーションST1から、第1溶接工程での溶接が完了されたワークk4が搬出され、ステーションST2から、第2溶接工程での溶接が完了されたワークk3が搬出され、ステーションST3から、第3溶接工程での溶接が完了されたワークk2が搬出され、かつ、ステーションST4から、第4溶接工程での溶接が完了されたワークk1が搬出される。この場合、ステーションST1には、新たなワークk5が搬入され、ステーションST2には、第1溶接工程での溶接が完了されたワークk4が搬入され、ステーションST3には、第2溶接工程での溶接が完了されたワークk3が搬入され、かつ、ステーションST4には、第3溶接工程での溶接が完了されたワークk2が搬入される。
なお、ステップS224及び次のステップS222の実行タイミングは、好ましくは、同時であるが、有意な時間差を有してもよい。
このようにして、図10から図12に示す例によれば、各ワークは、複数のステーションST1~ST4を介して、接合工程(図9のステップS22)による溶接が実現される。
次に、第1溶接工程から第4溶接工程の各溶接工程について詳説する。なお、以下では、第1溶接工程から第4溶接工程のうちの特定の溶接工程に限られない任意の一の溶接工程を指すときは、単に「溶接工程」とも称する。
図13A及び図13Bは、第1溶接工程で適用可能な治具80の説明図であり、図13Aは、ワーク1300の上面視で治具80の配置を概略的に示す図であり、図13Bは、図13AのQ1部の拡大図である。図13A及び図13Bでは、理解しやすいように、治具80については断面視でないもののハッチングが付されている。なお、図13A等に示すワーク1300は、例えば図12に示したワークk1からワークk5のうちのいずれか1つに対応しうる。
治具80は、溶接対象のコイル片52の先端部40同士を当接した状態に保持する。ステーションST1に設けられる治具80は、第1ターンのコイル片52と第2ターンのコイル片52の先端部40同士を当接した状態に保持する。治具80は、溶接対象のコイル片52の先端部40を径方向、軸方向、及び周方向で拘束する態様で機能してよい。なお、治具80は、ステーションST1~ST4のそれぞれに別々に設けられる。図示しないがステーションST2に設けられる治具80は、第3ターンのコイル片52と第4ターンのコイル片52の先端部40同士を当接した状態に保持し、ステーションST3に設けられる治具80も同様である。
本実施例では、一例として、治具80は、図13Aに示すように、周方向に沿って30度間隔で配置され、全部で12個である。従って、ステーションST1における溶接対象のコイル片52の組は、全部で48組(48個のスロット220に対応)であるので、その1/4が12個の治具80で同時に保持されることになる。なお、溶接対象のコイル片52の組数に対する治具80の数は、任意であるが、溶接工程の効率化を図る観点からは、可能な限り多い方が望ましい。以下では、治具80が、保持対象のコイル片52を保持する動作を「チャック」とも称し、保持していたコイル片52から離れる動作を「アンチャック」とも称する。
図14は、レーザヘッド72とワーク1300との関係を示す概略図であり、図15Aから図15Cは、スキャンエリア1400A~1400Cの説明図である。図15Aから図15Cは、ワーク1300の上面視でスキャンエリア1400A~1400Cをハッチング領域で示す。なお、図14に示すワーク1300は、例えば図12に示したワークk1からワークk5のうちのいずれか1つに対応しうる。
第1溶接工程(第2溶接工程から第4溶接工程のついても同様)では、任意の波長のレーザビームが使用されてもよいが、本実施例では、赤外レーザではなく、グリーンレーザを利用する。なお、グリーンレーザとは、波長が532nmのレーザ、すなわちSHG(Second Harmonic Generation:第2高調波)レーザのみならず、532nmに近い波長のレーザをも含む概念である。なお、変形例では、グリーンレーザの範疇に属さない0.6μm以下の波長のレーザが利用されてもよい。グリーンレーザに係る波長は、例えばYAGレーザやYVO4レーザで生み出された基本波長を酸化物単結晶(例えば、LBO:リチウムトリボレート)に通して変換することで得られる。
グリーンレーザの場合、コイル片52の線状導体60の材料である銅に対して吸収率が約50%と高い。従って、本実施例によれば、赤外レーザを利用する場合に比べて、少ない入熱量で、コイル片52間での必要な接合面積を確保することが可能となる。
レーザヘッド72は、レーザビームを照射位置に向けて照射可能な装置である。レーザヘッド72は、照射位置の移動(走査)だけでワーク1300の全周にわたるステータコイル24の溶接対象箇所90をカバーできる場合は、ワーク1300の中心軸(モータ1の回転軸12に対応)に対して同心に配置されてもよい。この場合、一のワーク1300に対して溶接工程(ステップS222)を行う間、レーザヘッド72は、固定されてもよい。ただし、本実施例では、レーザヘッド72は、レーザビーム110の照射位置の移動だけでワーク1300の全周にわたるステータコイル24の溶接対象箇所90をカバーできないものとし、従って、可動である。この場合、レーザヘッド72は、ワーク1300の中心軸に平行な基準軸1304を有し、基準軸1304は、図14に示すように、ワーク1300の中心軸に対して偏心する。この場合、レーザヘッド72は、ワーク1300の中心軸まわりに回転することで(図14の矢印R130参照)、ワーク1300の全周にわたるステータコイル24の溶接対象箇所90をカバーできる。
すなわち、図15Aは、レーザヘッド72が、ある一の回転角度の位置(第1位置及び第3位置の一例)にあるときのスキャンエリア1400A(第1エリア及び第3エリアの一例)を示し、図15Bは、他の一の回転角度の位置(第2位置及び第4位置の一例)にあるときのスキャンエリア1400B(第2エリア及び第4エリアの一例)を示し、図15Cは、更なる他の一の回転角度の位置にあるときのスキャンエリア1400Cを示す。本実施例では、このように、3つの異なる位置に位置付けられることで、レーザヘッド72が、第1溶接工程での溶接対象のコイル片52の全組(48組)をカバーする。具体的には、スキャンエリア1400A~1400Cは、それぞれ、120度分を分担し、協動して360度の全周をカバーする。図15Aから図15Cには、それぞれ、スキャンエリア1400Aから1400Cのそれぞれでカバーされる角度位置であって治具80が機能する角度位置が、模式的に○P1~P12として示される。なお、ワーク1300は、回転軸12まわりに回転可能であり、7.5度の回転を3回行うことで、治具80がすべての組を保持できることになる。
次に、第1溶接工程及び第2溶接工程との関係(連携)について説明する。なお、第3溶接工程及び第4溶接工程に関しても、同様の連携が実現されてもよいが、ここでは説明を省略する。
図16Aは、本実施例で利用可能なヘッド移動型のレーザ照射装置70の一例を示す概略図である。図16Aには、レーザビーム110及び可視光112の経路(光路)がそれぞれ実線と点線で模式的に示される。また、図16Aには、関連する構成として、2つのモータ1600、1602が示される。
レーザ照射装置70は、図16Aに示すように、レーザ発振器71、レーザヘッド72、カメラ74、処理装置76等を含む。
レーザヘッド72は、例えば、ガルバノスキャニング型レーザヘッドである。レーザヘッド72は、レンズL1~L3や、ハーフミラーHM、ミラーM1、M2等を備える。レーザヘッド72には、レーザ発振器71からレーザビーム(種光)が入力される。レーザヘッド72は、入力されたレーザビームに基づいて、上述したレーザビーム110(図5参照)を生成する。具体的には、レーザヘッド72は、入力されたレーザビームを、レンズL1、ハーフミラーHM、レンズL2、ミラーM1、M2、レンズL3を順に介して溶接対象箇所90に向けて照射する。また、溶接対象箇所90で反射する可視光112は、レーザヘッド72が備えるレンズL3、ミラーM2、ミラーM1、レンズL2、ハーフミラーHMを順に介し、更にミラー75を介してカメラ74に入射される。このようにしてカメラ74は、溶接対象箇所90及びその周辺を含む画像を取得可能である。
カメラ74は、上述のように、溶接対象箇所90及びその周辺を含む画像を取得可能である。カメラ74により取得される画像は、処理装置76に入力される。
処理装置76は、例えばマイクロコンピュータを含んでなり、位置決定部760と、ヘッド位置制御部762と、照射位置データ記憶部766とを含む。なお、位置決定部760及びヘッド位置制御部762は、例えばCPU(Central Processing Unit)が、ROM(Read Only Memory)等の記憶装置内の1つ以上のプログラムを実行することで実現されてよい。照射位置データ記憶部766は、ROMにより、又は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)のような補助記憶装置により、実現されてよい。
位置決定部760は、カメラ74からの画像を処理することにより、レーザ照射位置を決定する。本実施例では、一例として、レーザヘッド72の位置(図15A~図15C参照)に応じたレーザ照射位置のノミナル値は、照射位置データ記憶部766に記憶されているものとする。この場合、位置決定部760は、カメラ74からの画像を処理することにより、レーザ照射位置のノミナル値を補正することで、最終的な、レーザ照射位置を決定する。以下では、このような位置決定部760の処理を、単に「位置補正」とも称する。
ヘッド位置制御部762は、モータ1600、1602を介して、レーザヘッド72の位置を制御する。モータ1600は、ワーク1300の中心軸まわりのレーザヘッド72の回転のための動力を発生する。また、モータ1602は、ステーションST1とステーションST2との間のレーザヘッド72の移動(後述)のための動力を発生する。
照射位置データ記憶部766は、上述のように、レーザヘッド72の位置(図15A~図15C参照)に応じたレーザ照射位置のノミナル値のデータを保存する。
図16Aに示すヘッド移動型のレーザ照射装置70によれば、図17Aにて矢印R1702で模式的に示すように、ステーションST1とステーションST2との間でレーザヘッド72を移動させることで、レーザ発振器71及びレーザヘッド72を、第1溶接工程及び第2溶接工程で共用することができる。すなわち、レーザ発振器71及びレーザヘッド72は、第1溶接工程及び第2溶接工程のいずれにおいても機能する。これにより、1組のレーザ発振器71及びレーザヘッド72で2つのステーションST1、ST2を賄う効率的な構成を実現できる。なお、図17A(後出の図17Bも同様)では、ステーションST1~ST4を通るワーク1300の流れが矢印R1700で模式的に示される。
図16Bは、本実施例で利用可能なヘッド切換型のレーザ照射装置70Aの他の一例を示す概略図である。図16Bには、レーザビーム110及び可視光112の経路(光路)が模式的に示される。また、図16Bには、関連する構成として、2つのモータ1600、1600Aが示される。図16Bにおいて、図16Aで示した構成要素と同一であってよい構成要素については同一の参照符号を付して説明を省略する場合がある。
図16Bに示すレーザ照射装置70Aは、図16Aに示したヘッド移動型のレーザ照射装置70に対して、レーザ発振器71がレーザ発振器71Aで置換され、処理装置76が処理装置76Aで置換され、第2溶接工程用に、更なるレーザヘッド72Aと更なる処理装置76Aとを含む点が異なる。この場合、レーザヘッド72は、第1溶接工程及び第2溶接工程のうちの、第1溶接工程においてのみ機能し、レーザヘッド72Aは、第1溶接工程及び第2溶接工程のうちの、第2溶接工程においてのみ機能する。
図16Bに示す例では、レーザヘッド72は、ステーションST1専用であり、ステーションST1とステーションST2との間で移動されることはない。従って、図16Bに示す例では、モータ1602は省略されている。
レーザ発振器71Aは、2つのレーザヘッド72、72Aに接続される。レーザ発振器71Aは、時分割方式で、レーザヘッド72、72Aのうちのいずれか1つにレーザビームを入力できる。すなわち、レーザ発振器71Aは、ビーム切り換え機能を有し、レーザヘッド72、72Aのうちのいずれか1つにレーザビームを入力できる。
レーザヘッド72Aは、ステーションST2専用であり、ステーションST1とステーションST2との間で移動されることはない。レーザヘッド72Aは、上述したレーザヘッド72と同様、例えば、ガルバノスキャニング型レーザヘッドである。レーザヘッド72Aは、レーザ発振器71Aからレーザビームが入力される。レーザヘッド72Aは、入力されたレーザビームに基づいて、上述したレーザビーム110(図5参照)を生成する。具体的には、レーザヘッド72Aは、入力されたレーザビームを、レンズL1、ハーフミラーHM、レンズL2、ミラーM1、M2、レンズL3を順に介して溶接対象箇所90に向けて照射する。
処理装置76Aは、例えばマイクロコンピュータを含んでなり、位置決定部760と、ヘッド位置制御部762Aと、照射位置データ記憶部766とを含む。なお、図16Bでは、レーザヘッド72用とレーザヘッド72A用の2つの処理装置76Aが示されるが、2つの処理装置76Aの機能は、1つの処理装置により実現されてもよい。
レーザヘッド72用の処理装置76Aのヘッド位置制御部762Aは、モータ1600を介して、レーザヘッド72の位置を制御する。レーザヘッド72A用の処理装置76Aのヘッド位置制御部762Aは、モータ1600Aを介して、レーザヘッド72Aの位置を制御する。モータ1600Aは、ワーク1300の中心軸まわりのレーザヘッド72Aの回転(図14参照)のための動力を発生する。
図16Bに示すヘッド切換型のレーザ照射装置70Aによれば、図17Bに模式的に示すように、ステーションST1用のレーザヘッド72とステーションST2用のレーザヘッド72Aとの間で、レーザ発振器71Aからのレーザビームの入力を切り換えることで、レーザ発振器71Aを、第1溶接工程及び第2溶接工程で共用することができる。すなわち、レーザ発振器71Aは、第1溶接工程及び第2溶接工程のいずれにおいても機能する。これにより、1つのレーザ発振器71Aで2つのステーションST1、ST2を賄う効率的な構成を実現できる。
本実施例によれば、図16Aに示すヘッド移動型のレーザ照射装置70又は図16Bに示すヘッド切換型のレーザ照射装置70Aを利用することで、ステーションST1での第1溶接工程とステーションST2での第2溶接工程とを連携させながら、効率的なステータ21の製造方法を実現できる。
次に、図18以降を参照して、図16Aに示すヘッド移動型のレーザ照射装置70又は図16Bに示すヘッド切換型のレーザ照射装置70Aを利用して実現可能な、ステーションST1での第1溶接工程とステーションST2での第2溶接工程との連携態様について説明する。以下では、特に言及しない限り、図16Bに示すヘッド切換型のレーザ照射装置70Aを利用した例について説明するが、図16Aに示すヘッド移動型のレーザ照射装置70を利用することも可能である。
図18は、ステーションST1での第1溶接工程とステーションST2での第2溶接工程との連携態様の一例の説明図である。
図18では、左側に、工程番号、工程内容、照射順序が示され、右側に、各工程番号の工程の実行期間E1~E20が棒状の各範囲で示される。各工程番号の工程の実行期間E1~E20は、右側に向かうほど時間が経過する時系列で示される。時間軸の原点“0”は、一のワーク1300に係る処理の開始時点に対応する。なお、区別しやすさの都合上、図18(後出の図19等も同様)では、実行期間E1~E20のうちの、第1照射工程及び第2照射工程に係る実行期間E3、E5、E7、E9、E13、E15、E17、及びE19が黒塗りされている。
工程番号1から10は、ステーションST1で実行される各種工程であり、工程番号の若い順位に実行される。また、工程番号11から20は、ステーションST2で実行される各種工程であり、工程番号の若い順位に実行される。
具体的には、ステーションST1では、まず、工程番号1の第1配置工程が実行される。第1配置工程では、ステーションST1に新たな一のワーク1300が搬入されるとともに溶接完了後の一のワーク1300がステーションST1からステーションST2へと搬出される(E1参照)。
第1配置工程が完了して、新たなワーク1300の搬入が完了すると、第1溶接工程が実行される。第1溶接工程では、第1ターンと第2ターンとの間に係る48箇所の溶接対象箇所90のうち、12箇所の溶接対象箇所90ごとに、第1準備工程と、第1照射工程とが実行される。なお、第1準備工程は、第1照射工程を行うための準備工程である。すなわち、まず、工程番号2の第1準備工程として、最初の12箇所の溶接対象箇所90に係るコイル片52がステーションST1の治具80(第1治具の一例)によりチャックされ(E2参照)(図13A参照)、次いで、工程番号3の第1照射工程として、チャックされたコイル片52に係る12箇所の溶接対象箇所90に対して溶接が実行される(E3参照)。第1照射工程では、レーザヘッド72は、スキャンエリア(図15Aから図15C参照)を順次変えながら12箇所の溶接対象箇所90に対して順にレーザビーム110を照射する。次に、工程番号4の第1準備工程として、アンチャック後、ワーク1300が7.5度回転され、回転後に、治具80により次の別の12箇所の溶接対象箇所90に係るコイル片52がチャックされ(E4参照)、次いで、工程番号5の第1照射工程として、同様に溶接が実行される(E5参照)。このようにして12箇所ごとの第1準備工程と第1照射工程が繰り返され(E6からE9参照)、48箇所すべての溶接対象箇所90に係る溶接が完了すると、アンチャック(E10参照)により当該ワーク1300に係る第1溶接工程が終了となる。
ステーションST2においても、ステーションST1と同様の工程が実行される。
具体的には、ステーションST2では、まず、工程番号11の第2配置工程が実行される。第2配置工程では、ステーションST2に新たな一のワーク1300(ステーションST1からのワーク1300)が搬入されるとともに溶接完了後の一のワーク1300がステーションST2からステーションST3へと搬出される(E11参照)。
第2配置工程が完了して、新たなワーク1300の搬入が完了すると、第2溶接工程が実行される。第2溶接工程では、第3ターンと第4ターンとの間に係る48箇所の溶接対象箇所90のうち、12箇所の溶接対象箇所90ごとに、第2準備工程と、第2照射工程とが実行される。なお、第2準備工程は、第2照射工程を行うための準備工程である。すなわち、まず、工程番号12の第2準備工程として、最初の12箇所の溶接対象箇所90に係るコイル片52がステーションST2の治具80(第2治具の一例)によりチャックされ(E12参照)(図13A参照)、次いで、工程番号13の第2照射工程として、チャックされたコイル片52に係る12箇所の溶接対象箇所90に対して溶接が実行される(E13参照)。第2照射工程では、レーザヘッド72Aは、スキャンエリア(図15Aから図15C参照)を順次変えながら12箇所の溶接対象箇所90に対して順にレーザビーム110を照射する。次に、工程番号14の第2準備工程として、アンチャック後、ワーク1300が7.5度回転され、回転後に、治具80により次の別の12箇所の溶接対象箇所90に係るコイル片52がチャックされ(E14参照)、次いで、工程番号15の第2照射工程として、同様に溶接が実行される(E15参照)。このようにして12箇所ごとの第2準備工程と第2照射工程が繰り返され(E16からE19参照)、48箇所すべての溶接対象箇所90に係る溶接が完了すると、アンチャック(E20参照)により当該ワーク1300に係る第2溶接工程が終了となる。
ここで、図18に示す例では、図18にて実行期間E1~E20が示すように、第1照射工程と第2照射工程とは、時間差を有している。例えば、工程番号13の第2照射工程は、工程番号3の第1照射工程に後続して実行され(点線の矢印R180参照)、工程番号5の第1照射工程は、工程番号13の第2照射工程に後続して実行され(点線の矢印R181参照)、以下同様である。
このようにして、図18に示す例によれば、第1照射工程と第2照射工程とが時間差を有する態様で実行されるので、図16Bに示すヘッド切換型のレーザ照射装置70Aを利用して、第1照射工程と第2照射工程とを実現できる。すなわち、第1照射工程及び第2照射工程のそれぞれで用いられるレーザビーム110は、同じレーザ発振器71Aに基づいて生成される。これにより、共通のレーザ発振器71Aを利用して、効率的な第1溶接工程及び第2溶接工程を実現できる。
なお、図18に示す例では、第1照射工程と第2照射工程とが時間差を有するように、工程番号13の第2照射工程は、その前の工程番号12の第2準備工程(工程番号2の第1準備工程と並列で実行される準備工程)の完了後に、当該時間差に対応した時間だけ待機してから実行される。ただし、変形例では、同様の時間差が形成できる限り、工程番号12の第2準備工程についても、工程番号2の第1準備工程に対して時間差を有する態様で実行されてもよい。
また、図18に示す例では、第1照射工程と第2照射工程とは、第1照射工程が第2準備工程と同時に実行されかつ第2照射工程が第1準備工程と同時に実行される態様で、実行される。すなわち、工程番号4、6、8の各第1準備工程は、第2照射工程の実行期間E13、E15、E17を利用してそれぞれ実行され、かつ、工程番号12、14、16、18の各第2準備工程は、第1照射工程の実行期間E3、E5、E7、E9を利用してそれぞれ実行される。これにより、第1照射工程と第2照射工程との間の切り換えの際の待ち時間を最小化できる。
この点、図18に示す例では、第1照射工程と第2照射工程とは、第1照射工程が完了した直後に第2照射工程が開始される態様で、連続的に実行される。すなわち、第1照射工程と第2照射工程との間の切り換えの際の待ち時間は、実質的に0である。この場合、レーザ発振器71Aは、実質的に停止期間なしで、ビーム切り換え機能によりレーザヘッド72、72Aに交互にレーザビーム(種光)を入力する。すなわち、図18に示す例では、図16Bに示すヘッド切換型のレーザ照射装置70Aを利用して、レーザ発振器71Aとレーザヘッド72(第1レーザヘッドの一例)が接続される第1状態と、レーザ発振器71Aとレーザヘッド72A(第2レーザヘッドの一例)が接続される第2状態との間を切り換える工程(矢印R180、R181参照)が、実質的にレーザ発振器71Aの停止期間なしで実現されている。ただし、変形例では、第1照射工程と第2照射工程とは、第1照射工程が完了した直後に僅かな停止期間を介して第2照射工程が開始される態様で、実行されてもよい。
なお、図18に示す例では、工程番号5、7、9の各第1照射工程は、その実行期間の全体にわたって、工程番号14、16、18のうちの、対応する工程番号の第2準備工程と並列に実行されているが、これに限られない。すなわち、第1照射工程が第2準備工程と同時に実行される態様は、任意であり、第1照射工程の一部又は全部が、第2準備工程の一部又は全部と同時に実行される態様であってよい。これは、第2照射工程についても同様である。
また、図18に示す例において、第1準備工程及び第2準備工程は、上述した位置決定部760による位置補正を含んでもよい。上述した位置決定部760による位置補正は、治具80によるチャック後に実行されてよい。この場合、ワーク1300が7.5度回転するごとに、すべてのスキャンエリアに係る溶接対象箇所90(すなわち12箇所の溶接対象箇所90)に対して一括して、位置補正が実行されてよい。あるいは、上述した位置決定部760による位置補正は、第1溶接工程及び第2溶接工程においてスキャンエリアが変化される際に実行されてもよい。この場合、12箇所のうちの8箇所についての位置補正は、第1溶接工程及び第2溶接工程においてスキャンエリアが変化される際に実行されることになる。
また、図18に示す例では、図16Bに示すヘッド切換型のレーザ照射装置70Aが利用されるが、上述のように、図16Aに示すヘッド移動型のレーザ照射装置70が利用されてもよい。この場合、矢印R180、R181で示す切り換えの際に、レーザヘッド72をステーションST1とステーションST2との間で移動させる工程を実現すればよい。
ところで、上述したステーションST1に設けられる治具80は、図13A及び図13Bを参照して上述したように、2つのターン(ステーションST1の場合は、第1ターンと第2ターン)に係るコイル片52を保持するものであるが、本実施例に適用可能な治具は、このような治具80に限られない。例えば、ステーションST1に設けられる治具は、第1ターンと第2ターンに係るコイル片52を保持する治具(以下、「治具80A」とも称する)と、第3ターンと第4ターンに係るコイル片52を保持する治具(以下、「治具80B」とも称する)と、第5ターンと第6ターンに係るコイル片52を保持する第3治具(以下、「治具80C」とも称する)の組み合わせにより実現されてもよい。
次に、ステーションST1及びステーションST2のそれぞれに、上述した治具80A~80Cが設けられる場合について説明する。なお、この場合、ステーションST1及びステーションST2のそれぞれにおいては、第1ターンと第2ターンと間の12箇所、第3ターンと第4ターンと間の12箇所、及び第5ターンと第6ターンと間の12箇所からなる合計48箇所の溶接対象箇所90に係るコイル片52を、同時に保持(チャック)できる。
以下では、区別のため、このようなタイプの治具を「6ターン保持タイプの治具」とも称し、図13A及び図13Bを参照して上述したタイプの治具80を「2ターン保持タイプの治具80」とも称する。
6ターン保持タイプの治具を用いる場合、2ターン保持タイプの治具80を用いる場合よりも、多くのコイル片52を保持できるので、その分だけ、溶接工程に要する時間を短くすることが可能となりうる。なお、本実施例では、第1ターンと第2ターンとの間に係る48箇所の溶接対象箇所90と、第3ターンと第4ターンとの間に係る48箇所の溶接対象箇所90と、第5ターンと第6ターンとの間に係る48箇所の溶接対象箇所90とが、一般部(中性点及び動力線に係る部分以外の部位)における溶接対象箇所90であり、合計48×3=244箇所である。
従って、2ターン保持タイプの治具80を用いる場合は、ステーションST1~ST3で協動して、244/12=12回、治具80によるチャックが必要である。この結果、ステーションST1~ST3のそれぞれでは、12/3=4回、治具80によるチャックが実行されてよい(図18参照)。
これに対して、6ターン保持タイプの治具を用いる場合、ステーションST1~ST3で協動して、244/36=4回、6ターン保持タイプの治具によるチャックが必要である。この場合、ステーションST1~ST3のそれぞれでの各溶接工程の時間を均等化するために、ステーションST1~ST3のそれぞれでは、2回ずつ、6ターン保持タイプの治具によるチャックが実行されてよい(図18参照)。この場合、2回のうちの1回は、スキャンエリア1400A~1400Cのすべての溶接の実行を伴い、残りの1回は、スキャンエリア1400A~1400Cのうちの1つの溶接の実行を伴ってよい(図18参照)。
図19は、6ターン保持タイプの治具を用いて実現可能な、ステーションST1での第1溶接工程とステーションST2での第2溶接工程との連携態様の一例の説明図である。図19では、前出の図18と同様、左側に、工程番号、工程内容、照射順序が示され、右側に、各工程番号の工程の実行期間E22~E42が棒状の各範囲で示される。各工程番号の工程の実行期間E22~E42は、右側に向かうほど時間が経過する時系列で示される。なお、図19では、スキャンエリア1400A~1400Cは、それぞれ、「スキャンエリアA~C」で表記されている。
工程番号22から31は、ステーションST1で実行される各種工程であり、工程番号の若い順位に実行される。この場合、工程番号22から29(符号1900参照)は、36箇所の溶接対象箇所90(スキャンエリア1400A~1400Cのすべて)に関し、工程番号30、31(符号1903参照)は、36箇所の溶接対象箇所90のうちの12箇所(スキャンエリア1400A~1400Cのうちの、スキャンエリア1400A)に関する。
また、工程番号33から42は、ステーションST2で実行される各種工程であり、工程番号の若い順位に実行される。この場合、工程番号33から40(符号1902参照)は、36箇所の溶接対象箇所90(スキャンエリア1400A~1400Cのすべて)に関し、工程番号41、42(符号1904参照)は、36箇所の溶接対象箇所90のうちの12箇所(スキャンエリア1400A~1400Cのうちの、スキャンエリア1400B)に関する。
具体的には、ステーションST1では、まず、工程番号22の第1配置工程が実行される。第1配置工程では、ステーションST1に新たな一のワーク1300が搬入されるとともに溶接完了後の一のワーク1300がステーションST1からステーションST2へと搬出される(E22参照)。
第1配置工程が完了して、新たなワーク1300の搬入が完了すると、第1溶接工程が実行される。第1溶接工程では、第1溶接工程での48箇所の溶接対象箇所90のうち、12箇所の溶接対象箇所90ごとに、第1準備工程と、第1照射工程とが実行される。すなわち、まず、工程番号23の第1準備工程として、ステーションST1の6ターン保持タイプの治具(第1治具の一例)を用いて、36箇所のチャックが実行されるとともに、スキャンエリア1400A(図15A)内の最初の12箇所の溶接対象箇所90に係る位置補正が実行される(E23参照)。次いで、工程番号24の第1照射工程として、チャックされたコイル片52に係る12箇所の溶接対象箇所90(スキャンエリア1400A内)に対して溶接が実行される(E24参照)。当該第1照射工程では、レーザヘッド72は、スキャンエリアをスキャンエリア1400A(図15A)に固定した状態で、12箇所の溶接対象箇所90に対して順にレーザビーム110を照射する。次に、工程番号25の第1準備工程として、スキャンエリアをスキャンエリア1400A(図15A)からスキャンエリア1400B(図15B)に切り換えるためにレーザヘッド72の120度の回転(図14参照)が実行され、スキャンエリア1400B(図15B)内の次の12箇所の溶接対象箇所90に係る位置補正が実行され(E25参照)、次いで、工程番号26の第1照射工程として、同様に溶接が実行される(E26参照)。このようにして12箇所ごとの第1準備工程と第1照射工程が繰り返され(E27、E28参照)、36箇所の溶接対象箇所90に係る溶接が完了すると、工程番号29の第1準備工程が実行される。工程番号29の第1準備工程では、アンチャック後に、ワーク1300が回転され(例えば反時計回りに7.5度)、回転後に、チャックされる(E29参照)。そして、工程番号30の第1準備工程として、スキャンエリア1400A(図15A)内の12箇所の溶接対象箇所90に係る位置補正が実行される(E30参照)。次いで、工程番号31の第1照射工程として、チャックされたコイル片52に係る12箇所の溶接対象箇所90(スキャンエリア1400A内)に対して溶接が実行される(E31参照)。このようにして12箇所ごとの第1準備工程と第1照射工程が繰り返され(E23からE31参照)、48箇所すべての溶接対象箇所90に係る溶接が完了すると、アンチャック(図19では図示せず、図18のE20参照)により当該ワーク1300に係る第1溶接工程が終了となる。
ステーションST2においても、ステーションST1と同様の工程が実行される。
具体的には、ステーションST2では、まず、工程番号33の第2配置工程が実行される。第2配置工程では、ステーションST2に新たな一のワーク1300(ステーションST1からのワーク1300)が搬入されるとともに溶接完了後の一のワーク1300がステーションST2からステーションST3へと搬出される(E33参照)。この際、ここでは、一例として、ワーク1300は、ステーションST1での状態に対して時計回りに15度回転された状態で配置されるものとする。
第2配置工程が完了して、新たなワーク1300の搬入が完了すると、第2溶接工程が実行される。第2溶接工程では、第2溶接工程での48箇所の溶接対象箇所90のうち、12箇所の溶接対象箇所90ごとに、第2準備工程と、第2照射工程とが実行される。すなわち、まず、工程番号34の第2準備工程として、ステーションST2の6ターン保持タイプの治具(第2治具の一例)を用いて、36箇所のチャックが実行されるとともに、スキャンエリア1400A(図15A)内の最初の12箇所の溶接対象箇所90に係る位置補正が実行される(E34参照)。次いで、工程番号35の第2照射工程として、チャックされたコイル片52に係る12箇所の溶接対象箇所90(スキャンエリア1400A内)に対して溶接が実行される(E35参照)。当該第2照射工程では、レーザヘッド72Aは、スキャンエリアをスキャンエリア1400A(図15A)に固定した状態で、12箇所の溶接対象箇所に対して順にレーザビーム110を照射する。次に、工程番号36の第2準備工程として、スキャンエリアをスキャンエリア1400A(図15A)からスキャンエリア1400B(図15B)に切り換えるためにレーザヘッド72Aの120度の回転(図14参照)が実行され、スキャンエリア1400B(図15B)内の次の12箇所の溶接対象箇所90に係る位置補正が実行され(E36参照)、次いで、工程番号37の第2照射工程として、同様に溶接が実行される(E37参照)。このようにして12箇所ごとの第2準備工程と第2照射工程が繰り返され(E38、E39参照)、36箇所の溶接対象箇所90に係る溶接が完了すると、工程番号40の第2準備工程が実行される。工程番号40の第2準備工程では、アンチャック後に、ワーク1300が回転され(例えば反時計回りに15度)、回転後に、チャックされる(E40参照)。そして、工程番号41の第2準備工程として、スキャンエリア1400A(図15A)内の12箇所の溶接対象箇所90に係る位置補正が実行される(E41参照)。次いで、工程番号42の第2照射工程として、チャックされたコイル片52に係る12箇所の溶接対象箇所90(スキャンエリア1400A内)に対して溶接が実行される(E42参照)。このようにして12箇所ごとの第2準備工程と第2照射工程が繰り返され(E23からE31参照)、48箇所すべての溶接対象箇所90に係る溶接が完了すると、アンチャック(図19では図示せず、図18のE20参照)により当該ワーク1300に係る第2溶接工程が終了となる。
ここで、図19に示す例では、図19にて実行期間E22~E42が示すように、図18に示す例と同様、第1照射工程と第2照射工程とは、時間差を有している。例えば、工程番号35の第2照射工程は、工程番号24の第1照射工程に後続して実行され(点線の矢印R180参照)、工程番号26の第1照射工程は、工程番号35の第2照射工程に後続して実行され(点線の矢印R181参照)、以下同様である。
このようにして、図19に示す例によれば、第1照射工程と第2照射工程とが時間差を有する態様で実行されるので、図16Bに示すヘッド切換型のレーザ照射装置70Aを利用して、第1照射工程と第2照射工程とを実現できる。すなわち、第1照射工程及び第2照射工程のそれぞれで用いられるレーザビーム110は、同じレーザ発振器71Aに基づいて生成される。これにより、共通のレーザ発振器71Aを利用して、効率的な第1溶接工程及び第2溶接工程を実現できる。
なお、図19に示す例では、第1照射工程と第2照射工程とが時間差を有するように、工程番号35の第2照射工程は、その前の工程番号34の第2準備工程(工程番号23の第1準備工程と並列で実行される準備工程)の完了後に、当該時間差に対応した時間だけ待機してから実行される。ただし、変形例では、同様の時間差が形成できる限り、工程番号34の第2準備工程についても、工程番号23の第1準備工程に対して時間差を有する態様で実行されてもよい。
また、図19に示す例では、第1照射工程と第2照射工程とは、第1照射工程が第2準備工程と同時に実行されかつ第2照射工程が第1準備工程と同時に実行される態様で、実行される。すなわち、工程番号25、27、29の各第1準備工程は、第2照射工程の実行期間E35、E37、E39を利用してそれぞれ実行され、かつ、工程番号36、38、40(又は40)の各第2準備工程は、第1照射工程の実行期間E26、E28、E31を利用してそれぞれ実行される。これにより、第1照射工程と第2照射工程との間の切り換えの際の待ち時間を最小化できる。
この点、図19に示す例では、第1照射工程と第2照射工程とは、第1照射工程が完了した直後に第2照射工程が開始される態様で、連続的に実行される。すなわち、図19に示す例では、図16Bに示すヘッド切換型のレーザ照射装置70Aを利用して、レーザ発振器71Aとレーザヘッド72(第1レーザヘッドの一例)が接続される第1状態と、レーザ発振器71Aとレーザヘッド72A(第2レーザヘッドの一例)が接続される第2状態との間を切り換える工程(矢印R180、R181参照)が、実質的にレーザ発振器71Aの停止期間なしで実現されている。ただし、変形例では、第1照射工程と第2照射工程とは、第1照射工程が完了した直後に僅かな停止期間を介して第2照射工程が開始される態様で、実行されてもよい。
なお、図19に示す例では、工程番号26、28の各第1照射工程は、その実行期間の全体にわたって、対応する工程番号36、38の第2準備工程と並列に実行されているが、これに限られない。すなわち、第1照射工程が第2準備工程と同時に実行される態様は、任意であり、第1照射工程の一部又は全部が、第2準備工程の一部又は全部と同時に実行される態様であってよい。これは、第2照射工程についても同様である。
また、図19に示す例では、図16Bに示すヘッド切換型のレーザ照射装置70Aが利用されるが、上述のように、図16Aに示すヘッド移動型のレーザ照射装置70が利用されてもよい。この場合、矢印R180、R181で示す切り換えの際に、レーザヘッド72をステーションST1とステーションST2との間で移動させる工程を実現すればよい。
また、図19に示す例では、第1準備工程及び第2準備工程は、ともに、上述した位置決定部760による位置補正を含むが、かかる位置補正は、省略されてもよい。
また、図19に示す例では、位置補正は、第1溶接工程(第2溶接工程についても同様)において、第1照射工程ごとに、第1照射工程に先立って実行される。この場合、12箇所のうちの8箇所についての位置補正は、第1溶接工程及び第2溶接工程においてスキャンエリアが変化される際に実行されることになる。
ただし、変形例では、チャック後に、3つのスキャンエリア1400A~1400C内の36箇所の溶接対象箇所90に対して一括的に位置補正を行ってもよい。この場合は、第2溶接工程において1回目の第2照射工程の待機時間(当該第2溶接工程に係る第2準備工程が完了した時点から、第1溶接工程において1回目の第1照射工程が完了するまでの時間であり、以下、「溶接待ち時間」とも称する)が長くなるものの、図19に示す例と同様の効果を得ることができる。以下、このような変形例を、「第1変形例」とも称する。
具体的には、図20Aは、図19に示す例の場合の溶接待ち時間の説明図であり、図20Bは、第1変形例の場合の溶接待ち時間の説明図である。図20A及び図20Bには、照射工程(第1照射工程及び第2照射工程)や、各種の準備工程(第1準備工程及び第2準備工程)のような工程ごとに、実行時期が棒状の各範囲E22~E42、E50~E66により時系列で示される。なお、図20Aには、図19で示した実行期間E22~E42に実質的に対応する実行期間に、同様の符号E22~E42が付されている。この場合、実行期間E23(実行期間E34も同様)については、2つの分離した実行時期E23-1、E23-2で示される。
図20A及び図20Bを対比すると分かるように、図19に示す例の場合、第1変形例の場合に比べて、溶接待ち時間ΔT1を短くできる。
具体的には、第1変形例の場合、位置補正は、3つのスキャンエリア1400A~1400C内の36箇所の溶接対象箇所90に対して一括的に実行されるので、図20Bに示すように、位置補正の実行期間E52が、図19に示す例の場合(図20Aの実行期間E23-2等参照)に比べて長くなる。このため、第1変形例の場合、1回目の第2照射工程(36箇所の溶接対象箇所90に対する第2照射工程)を開始できるまでの待機時間、すなわち溶接待ち時間ΔT1が比較的長くなる。
これに対して、図19に示す例によれば、位置補正は、3つのスキャンエリア1400A~1400C内の36箇所の溶接対象箇所90に対して、12箇所ずつ分散して実行される(図19及び図20AのE23、E25、E27参照)。このため、図19に示す例の場合、1回目の第2照射工程(12箇所の溶接対象箇所90に対する第2照射工程)を開始できるまでの待機時間、すなわち溶接待ち時間ΔT1を、第1変形例の場合に比べて有意に短くできる。この結果、全体としての第1溶接工程及び第2溶接工程の時間の短縮を図ることができる。
また、第1変形例の場合、一の第2照射工程の実行期間E63が比較的長いので、2回目の第1照射工程(12箇所の溶接対象箇所90に対する第2照射工程)に係る溶接待ち時間ΔT2が長くなりやすい。これに対して、図19に示す例によれば、一の第2照射工程の実行期間E63が比較的短いので、第1変形例の場合に比べて、2回目以降の第1照射工程に係る溶接待ち時間を有意に短くすることができる(図19では、2回目以降の第1照射工程に係る溶接待ち時間は、0である)。
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
例えば、上述した実施例では、6ターン保持タイプの治具を用いる場合、一般部の溶接は、ステーションST1、ST2、ST3で協動して実現されるが、これに限られない。例えば、6ターン保持タイプの治具を用いる場合、ステータコイル24の一般部の溶接は、ステーションST1、ST2、ST3に加えて、更なるステーションを含めた4つのステーションで協動して実現されてもよい。この場合、ステーションST1、ST2、ST3、及び更なるステーションを含めた4つのステーションのそれぞれでは、チャックの回数は1回だけでよくなり、更なる効率化を図ることができる。
また、上述した実施例では、2つのステーション間でレーザ発振器71及びレーザヘッド72(又はレーザ発振器71A)を共用しているが、3つ以上のステーション間でレーザ発振器71及びレーザヘッド72(又はレーザ発振器71A)を共用してもよい。
<付記>
以上の実施例に関し、更に以下を開示する。なお、以下で記載する効果のうちの、一の形態に対する追加的な各形態に係る効果は、当該追加的な各形態に起因した付加的な効果である。
(1)一の形態は、ステータコイル(24)がセグメントコイルの形態の複数のコイル片(52)により形成される回転電機(1)用ステータ(21)の製造方法であって、
第1ステーション(ST1)に、ステータ用の一のワークを配置する第1配置工程(E1)と、
前記第1ステーションにおいて、前記一のワークにおけるステータコイルの第1部分の溶接を完了させる第1溶接工程と、
第2ステーション(ST2)に、ステータ用の他の一のワークを配置する第2配置工程(E11)と、
前記第2ステーションにおいて、前記他の一のワークにおけるステータコイルの第2部分の溶接を完了させる第2溶接工程と、
前記第1溶接工程は、前記第1部分に係る溶接対象のコイル片に溶接用のレーザビーム(110)を照射する第1照射工程(E3、E5、E7、E9)とを含み、
前記第2溶接工程は、前記第2部分に係る溶接対象のコイル片に溶接用のレーザビームを照射する第2照射工程(E13、E15、E17、E19)を含み、
前記第1照射工程と前記第2照射工程とは、時間差を有し、前記第1照射工程及び前記第2照射工程のそれぞれで用いられる前記レーザビームは、同じ発振器(71、71A)に基づいて生成される、回転電機用ステータ製造方法である。
本形態によれば、第1照射工程と第2照射工程が時間差を有し、第1照射工程及び第2照射工程のそれぞれで用いられるレーザビームが同じ発振器に基づいて生成されるので、第1照射工程及び第2照射工程のそれぞれで用いられる発振器が異なる場合に比べて、効率的な回転電機用ステータ製造方法を実現できる。
(2)また、本形態においては、好ましくは、前記第1溶接工程は、前記第1照射工程を実行するための第1準備工程(E4、E6、E8)を更に含み、
前記第2溶接工程は、前記第2照射工程を実行するための第2準備工程(E14、E16、E18)を更に含み、
前記第1照射工程は、前記第2準備工程と同時に実行され、
前記第2照射工程は、前記第1準備工程と同時に実行される。
この場合、第1照射工程は第2準備工程を利用しかつ第2照射工程は第1準備工程を利用する態様で、交互に比較的短いインターバルで実現でき、効率的な回転電機用ステータ製造方法を実現できる。なお、第1照射工程が第2準備工程と同時に実行される態様としては、第1照射工程の一部又は全部が第2準備工程の一部と同時に実行される態様や、第1照射工程の一部又は全部が第2準備工程の全部と同時に実行される態様を含む。これは、第2照射工程と第1準備工程との関係も同様である。
(3)また、本形態においては、好ましくは、前記第1準備工程は、第1治具(80)により前記第1部分に係る溶接対象のコイル片の先端部(40)同士を当接させて保持する第1保持工程を含み、
前記第1準備工程は、第2治具(80)により前記第2部分に係る溶接対象のコイル片の先端部(40)同士を当接させて保持する第2保持工程を含み、
前記第1照射工程は、前記第2保持工程と同時に実行され、
前記第2照射工程は、前記第1保持工程と同時に実行される。
この場合、第1照射工程は第2保持工程を利用しかつ第2照射工程は第1保持工程を利用する態様で、交互に比較的短いインターバルで実現でき、効率的な回転電機用ステータ製造方法を実現できる。なお、第1照射工程が第2保持工程と同時に実行される態様としては、第1照射工程の一部又は全部が第2保持工程の一部と同時に実行される態様や、第1照射工程の一部又は全部が第2保持工程の全部と同時に実行される態様を含む。これは、第2照射工程と第1保持工程との関係も同様である。
(4)また、本形態においては、好ましくは、前記第1準備工程は、前記第1部分に係る溶接対象のコイル片を撮像して得られる第1画像に基づいて、前記第1照射工程での前記レーザビームの照射位置を決定する第1位置決定工程(E25、E27、E30)を含み、
前記第1準備工程は、前記第2部分に係る溶接対象のコイル片を撮像して得られる第2画像に基づいて、前記第2照射工程での前記レーザビームの照射位置を決定する第2位置決定工程(E36、E37、E41)を含み、
前記第1照射工程は、前記第2位置決定工程と同時に実行され、
前記第2照射工程は、前記第1位置決定工程と同時に実行される。
この場合、第1照射工程は第2位置決定工程を利用しかつ第2照射工程は第1位置決定工程を利用する態様で、交互に比較的短いインターバルで実現でき、効率的な回転電機用ステータ製造方法を実現できる。なお、第1照射工程が第2位置決定工程と同時に実行される態様としては、第1照射工程の一部又は全部が第2位置決定工程の一部と同時に実行される態様や、第1照射工程の一部又は全部が第2位置決定工程の全部と同時に実行される態様を含む。これは、第2照射工程と第1位置決定工程との関係も同様である。
(5)また、本形態においては、好ましくは、前記第1配置工程及び前記第2配置工程は、前記第2溶接工程で前記第2部分の溶接が完了した前記他の一のワークを前記第2ステーションから搬出する際に、前記第1溶接工程で前記第1部分の溶接が完了した前記一のワークを、前記第2ステーションに搬入し、かつ、前記第1ステーションに新たな一のワークを搬入することを含む。
この場合、各ステーションでの作業時間を均等化することで、ワークの搬入/搬出を同時に実現する効率的な態様を実現できる。
(6)また、本形態においては、好ましくは、前記第1照射工程は、第1レーザヘッド(72)から前記レーザビームを照射し、
前記第2照射工程は、前記第1レーザヘッドから前記レーザビームを照射し、
前記第1レーザヘッドを前記第1ステーションと前記第2ステーションとの間で移動させる工程を更に含む。
この場合、第1レーザヘッドを第1及び第2ステーション間で移動させることで、当該第1レーザヘッドを第1及び第2ステーション間で共用化できる。
(7)また、本形態においては、好ましくは、前記第1照射工程は、第1レーザヘッド(72)から前記レーザビームを照射し、
前記第2照射工程は、第2レーザヘッド(72A)から前記レーザビームを照射し、
前記発振器と前記第1レーザヘッドが接続される第1状態と、前記発振器と前記第2レーザヘッドが接続される第2状態との間を切り換える工程を更に含む。
この場合、第1及び第2レーザヘッドと発振器との接続状態を切り換えることで、当該発振器を第1及び第2ステーション間で共用化できる。
(8)また、本形態においては、好ましくは、前記レーザビームは、0.6μm以下の波長であり、
前記第1照射工程は、前記一のワークのうちの第1エリアをカバーする第1位置に位置付けられたレーザヘッドから、前記レーザビームを照射する工程と、前記一のワークのうちの第2エリアをカバーする第2位置に位置付けられたレーザヘッドから、前記レーザビームを照射する工程とを含み、
前記第2照射工程は、前記他の一のワークのうちの第3エリアをカバーする第3位置に位置付けられたレーザヘッドから、前記レーザビームを照射する工程と、前記一のワークのうちの第4エリアをカバーする第4位置に位置付けられたレーザヘッドから、前記レーザビームを照射する工程とを含む。
この場合、0.6μm以下の波長のレーザビーム(例えばグリーンレーザ)が利用されるので、赤外レーザを用いる場合に比べて、比較的少ない入熱量で、コイル片間での必要な接合面積を確保できる。また、赤外レーザの場合に比べてレーザ出力が低くワークからレーザヘッドまでの比較的長い距離(照射方向での距離)を確保できない場合でも、一のワークに対してレーザヘッドを移動させながら2つ以上のエリアをカバーできる。