JP6848129B1 - 固定子の製造方法および固定子の製造装置 - Google Patents
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Abstract
Description
実施形態の固定子の製造装置は、中心軸線に対して傾斜した押圧面を一端に有する一対の直線部と前記一対の直線部の他端同士を連結した架橋部とを有する平角導体で形成された複数のコイルセグメントの前記直線部が、固定子鉄心の一端面側から前記固定子鉄心に設けられた複数のスロットに挿通されるとともに前記固定子鉄心の他端面側から所定長さ軸方向に延出端部として突出し、各スロットに複数の前記直線部が径方向に並べて配置されることにより、前記複数の延出端部が前記固定子鉄心と同軸の4層以上の複数層の円筒状に配列された固定子組立体の前記押圧面のそれぞれを、前記固定子鉄心の軸方向に前記他端面に向かって押圧する押圧部を備えるとともに、前記固定子鉄心の中心軸に対する周方向の相対位置が可変に構成された第1押圧治具と、前記固定子鉄心の前記他端面に沿うように折り曲げられた前記複数の延出端部の前記押圧面に重ねて前記延出端部を前記固定子鉄心の軸方向に前記他端面に向かって押圧する第2押圧治具と、前記延出端部を径方向の両側から押圧する、前記円筒状に配列された最外層の複数の延出端部の外周面に当接する環状の外壁治具および前記円筒状に配列された最内層の複数の延出端部の内周面に当接する環状の内壁治具と、を備える。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
初めに、実施形態に係る固定子が適用される回転電機の一例について説明する。
図1は、実施形態に係る回転電機の縦断面図であり、中心軸線C1を中心として片側の半分だけを示している。図2は、回転電機の横断面図である。
以下の説明では、中心軸線C1の延在方向を軸方向、中心軸線C1回りに回転する方向を周方向、軸方向および周方向に直交する方向を径方向と称する。
複数のスロット20を形成することにより、固定子鉄心16の内周部は、中心軸線C1に向かって突出する複数(例えば、本実施形態では48個)のティース21を構成している。ティース21は、周方向に沿って等間隔を置いて配置されている。このように、固定子鉄心16は、円環状のヨーク部と、ヨーク部の内周面から中心軸線C1に向かって径方向に突出した複数のティース21とを一体に有している。
ケーシング30は、ほぼ円筒状の第1ブラケット32aと、お椀形状の第2ブラケット32bと、を有している。第1ブラケット32aは、固定子鉄心16の駆動端側に位置する鉄心押え26に連結されている。第2ブラケット32bは、反駆動端側に位置する鉄心押え26に連結されている。第1および第2ブラケット32a、32bは、例えば、アルミニウム合金等で形成されている。第1ブラケット32aの先端側に、環状のベアリングブラケット34がボルトにて同軸的に締結されている。ベアリングブラケット34の中央部に、例えば、ころ軸受35を内蔵した第1軸受部36が締結されている。第2ブラケット32bの中央部に、例えば玉軸受37を内蔵した第2軸受部38が締結されている。
平角導体は、長手方向に垂直な断面(横断面)が略矩形の形状をしているか、少なくとも、長手方向に垂直な断面の形状が対向する2長辺を有する。平角導体の長手方向に垂直な断面(横断面)が矩形である場合、四隅は直角である必要はなく、面取りやR加工がされていてもよい。また、長手方向に垂直な断面(横断面)が対向する2長辺を有する場合、例えば長円状など、断面においてこれらの対向する2長辺の端部を結ぶ部分は曲線であってもよい。
図3に示すように、コイル18の内、3本のコイルに、それぞれU相接続端子TU、V相接続端子TV、W相接続端子TWが接続されている。
図6は、固定子鉄心16および円筒状に配列されたコイルセグメント19を示す斜視図である。
図6に示すように、まず、多数本のコイルセグメント19を用意し、これらを円筒状に配列する。図示していないが、それぞれ円筒状に配列された3組のコイルセグメント19を用意する。1組(48本)のコイルセグメント19は、固定子鉄心16の複数のスロット20に沿って円筒形状に配列されている。1組のコイルセグメント19は、U相用の2本のコイルセグメント19U1と19U2、V相用の2本のコイルセグメント19V1と19V2、およびW相用の2本のコイルセグメント19W1と19W2の合計6本を最小ユニットとして、8ユニットから構成されている。円筒状に配列された1組において、コイルセグメント19の直線部19aは、径方向に2列に並んでいる。すなわち、多数(48本×2)の直線部19aは、径の異なる2層の円筒状に配列されている。
図7に示すように、各組のコイルセグメント19は、固定子鉄心16の一端面16a側からスロット20に挿入される。コイルセグメント19の直線部19aは、スロット20に差し込まれ、固定子鉄心16の他端面16bから所定長さだけ突出し、延出端部19bを構成する。円筒状に配列された1組(48本)のコイルセグメント19の両端に位置する96個(48×2)の直線部19aは、対応する48個のスロット20において、2層分の円筒に相当し、例えば6層目(最外層)と5層目の位置に差し込まれる。円筒状に配列された3組(144本、48本×3)のコイルセグメント19が、固定子鉄心16の一端面16a側から対応する48個のスロット20に挿入される。3組のコイルセグメント19の直線部19aおよび延出端部19bは、同芯で径の異なる6層の円筒状に配列される。各スロット20において、直線部19aは、6層目(最外層)から1層目(最内層)まで径方向に並んで配置される。
図8および図9に示すように、コイルセグメント19が装着された固定子鉄心16(固定子鉄心組立体)は、後述するコイルセグメント19の延出端部19bの成形のために、上下の向きが反転される。各スロット20に挿通された6本の直線部19aは、固定子鉄心16の径方向に並んで位置している。以下、径方向において、最外層(6層目)に位置するコイルセグメント、直線部、延出端部、押圧面を19P、19Pa、19Pb、19Pcとし、5層目に位置するコイルセグメント、直線部、延出端部、押圧面を19Q、19Qa、19Qb、19Qcとし、4層目に位置するコイルセグメント、直線部、延出端部、押圧面を19R、19Ra、19Rb、19Rcとし、3層目に位置するコイルセグメント、直線部、延出端部、押圧面を19S、19Sa、19Sb、19Scとし、2層目に位置する直線部、延出端部、押圧面を19T、19Ta、19Tb、19Tcとし、最内層(1層目)に位置するコイルセグメント、直線部、延出端部、押圧面を19Ua、19Ub、19Ucと称する。
径方向に並んだ押圧面19Pc、19Qc、19Rc、19Sc、19Tc、19Ucの傾斜方向は、交互に逆向きにしている。すなわち、6層目、4層目、2層目の押圧面19Pc、19Rc、19Tcは同一方向に傾斜し、5層目、3層目、1層目の押圧面19Qc、19Sc、19Ucは、逆方向に傾斜している。
図10に示すように、円筒状に配列された最内層の延出端部19Ubの内側に内壁治具101が配置される。内壁治具101は、円筒形状に形成され、支持面と機能する外周面101aを有している。内壁治具101は、十分な剛性を備えた金属から形成されている。内壁治具101の直径は、最内層の延出端部19Ubによって構成される円筒の内径とほぼ等しく形成されている。なお、内壁治具101は、円筒形状に限らず、中実の円柱形状に形成されていてもよい。
内壁治具101は、固定子鉄心16と同軸的に配置され、最内層の延出端部19Ubの内側に挿通される。これにより、内壁治具101の外周面101aは、延出端部19Ubの内周側の側面に隣接対向している。最内層の延出端部19Ubを固定子鉄心16の周方向に折曲げ成形する際、内壁治具101は、延出端部19Ubが固定子鉄心16の径方向内側に向かって傾斜しないように、延出端部19Ubを内周側から支持する。ここで、1層目(最内層)に位置する延出端部19Ubは、固定子鉄心16の径方向内側に隣接する他の延出端部19bが存在しない。そのため、1層目(最内層)に位置する延出端部19Ubを内壁治具101によって径方向内側から支持することにより、径方向内側に向かって倒れることを防止する。
図11では、一例として8個の成形治具102を図示している。成形治具102は、後述する図12等に示すように、48個を1組として構成し、ほぼ均等な間隔で円筒状に配置されている。1組の成形治具102は、固定子鉄心16に装着されているコイルセグメント19のうち、各1層の48本の延出端部19bを同時に押圧して折曲げ成形する。
図12に示すように、1組の成形治具102の間隔を調整し、最外層の延出端部19Pbからなる円筒の径とほぼ一致する径に配列する。48個の成形治具102が48本の延出端部19Pbと整列する位置に成形治具102を配置し、押圧部102bを延出端部19Pbの先端面(押圧面)19Pcに当接させ、フランジ部102cを延出端部19Pbの外周側の側面に当接させる。この状態で、成形治具102を軸方向に下降させ押圧面19Pcを介して延出端部19Pbを押圧するとともに、固定子鉄心16を中心軸線の回りで押圧面19Pcの傾斜方向、ここでは、反時計方向CCWに回動する。これにより、最外層の48本の延出端部19Pbが折曲げられ、押圧面19Pcは、固定子鉄心16の他端面16bに沿った状態になる。なお、本実施形態においては固定子鉄心16を中心軸線の回りに回動させているが、成形治具102の固定子鉄心16の中心軸線に対する周方向の相対位置が変わればよく、成形治具102を固定子鉄心16の中心軸線の回りに回動させても、もしくは、固定子鉄心16と成形治具102の両者をそれぞれ逆方向に固定子鉄心16の中心軸線の回りに周方向に回動させても構わない。
図13および図15(A)に示すように、折曲げ成形する直前の状態において、延出端部19Pbは、固定子鉄心16の軸方向に沿って、固定子鉄心16の他端面16bから上方に突出している。延出端部19Pbの押圧面19Pcは、中心軸線に対して傾斜している。成形治具102の押圧部102bは押圧面19Pcに当接し、フランジ部102cは延出端部19Pbの外側面を固定子鉄心16の径方向内側に向かって支持している。
図16に示すように、1組の成形治具102は、互いの間隔を最も狭めるように移動され、最内層の延出端部19Ubの径に一致する径に調整される。調整後、成形治具102は、固定子鉄心16の中心軸線方向に下降し、最内層に位置する48個の延出端部19Ubの押圧面Ucを同時に押圧する。
折曲げ成形の間、成形治具102のフランジ部102cは、延出端部19Ubの外周側の側面を支持し、延出端部19Ubの径方向外側への移動、変形を防止する。更に、折曲げ成形の間、延出端部19Ubの内周側の側面を内壁治具101の外周面101aで支持することにより、延出端部19Ubの径方向内方への移動、変形を防止している。すなわち、1層目(最内層)の延出端部19Ubは、固定子鉄心16の径方向内側に隣接する他の延出端部19bが存在していないため、押圧工程に伴って径方向内側に変形し易いが、内壁治具101の外周面101aによって延出端部19Ubを押えることにより、延出端部19Ubの径方向内側への変形、倒れを防止することができる。
コイルセグメント19の折曲げ成形後、1組の成形治具102は、内壁治具101の上方まで引き上げられ、コイルセグメント19から離間する。
図示のように、成形治具102をコイルセグメント19から離間させた状態において、コイルセグメント19の延出端部19Pb、19Qb、19Rb、19Sb、19Tb、19Ubは、折曲げ成形後にスプリングバックが発生している。これにより、コイルセグメント19の押圧面19Pc、19Qc、19Rc、19Sc、19Tc、19Ucは、固定子鉄心16の他端面16bから離れる方向(上方)と、固定子鉄心16の径方向外方に向かって、それぞれ位置ずれしている。この結果、各々の押圧面19cは、固定子鉄心16の他端面16bに対して傾斜しつつ、固定子鉄心16の径方向外側に向かって突出している。
これに伴い、図20に示すように、固定子鉄心16の径方向に沿って隣合うコイルセグメント19の押圧面19cには、互いに重なり合う重複部分19x1が発生している。すなわち、押圧面19Qcは、押圧面19Pcに部分的に乗り上げている。また、押圧面19Scは、押圧面19Rcに部分的に乗り上げている。同様に、押圧面19Ucは、押圧面19Tcに部分的に乗り上げている。コイルセグメント19の重複部分19x1は、製造を良好に進めるために、縮小することが望ましい。
また、図21に示すように、一例として、固定子鉄心16の径方向に沿って隣合うコイルセグメント19Tの押圧面19Tcと、コイルセグメント19Uの押圧面19Ucは、固定子鉄心16の他端面16bに対して平行に位置決めされていない。このため、コイルセグメント19Tの押圧面19Tcと、コイルセグメント19Uの押圧面19Ucは、交差した状態になっている。すなわち、押圧面19Pc、19Qc、19Rc、19Sc、19Tc、19Ucは、固定子鉄心16の上方向および周方向に互いにずれて位置し、固定子鉄心16の径方向にジグザグに並んでいる。
このようなことから、6層目に押圧面19Pcと5層目の押圧面19Qcとの間、4層目の押圧面19Rcと3層目の押圧面19Scとの間、および2層目の押圧面19Tcと1層目の押圧面19Ucとの間には、重複部分19x1および隙間が生じている。
図22に示すように、矯正治具103(第2押圧治具)は、ほぼリング状の金属板で構成されている。矯正治具103には、上面103aから下面103bまで貫通した48個の開口部103cが、矯正治具103の周方向に一定の間隔で形成されている。開口部103cは、長孔で構成され、矯正治具103の中心に対して、放射方向に延びている。各開口部103cは、矯正治具103の外周面103d近傍から内周面103e近傍まで延びている。48個の開口部103cは、固定子鉄心16の48個のスロット20に対応する形状、大きさ、配設位置に形成されている。
矯正治具103は、延出端部19bの押圧面19cを固定子鉄心16の軸方向に他端面16bに向かって押圧して、押圧面19cが他端面16bとほぼ平行に位置するように延出端部19bを固定子鉄心16の軸方向に折曲げるために用いる治具である。複数の開口部103cは、後述する接合工程において、溶接に用いるレーザー光を通す開口として用いられる。
図23に示すように、矯正工程において、矯正治具103は、固定子鉄心16に形成された48個のスロット20に対向するように位置決めされる。すなわち、矯正治具103は、各開口部103cが、固定子鉄心16の径方向に沿って並んだ複数のコイルセグメント19の押圧面19cに対向するように位置決めされる。具体的には、各開口部103cは、6、5、4、3、2および1層目に位置する押圧面19Pc、19Qc、19Rc、19Sc、19Tcおよび19Ucを部分的に露出させるように、矯正治具103に形成されている。特に、開口部103cは、固定子鉄心16の径方向に隣合う押圧面19cの境界部に対向して位置される。
位置決めされた矯正治具103は、図示しない駆動機構により、固定子鉄心16の他端面16b側に移動され、コイルセグメント19の押圧面19cに押し付けられる。これにより、コイルセグメント19の押圧面19cは、矯正治具103の下面103bによって他端面16b側に押圧され、互いに重なることなく固定子鉄心16の他端面16bとほぼ平行な位置に矯正される。
図示のように、矯正工程の後、矯正治具103をコイルセグメント19から離間させた状態において、コイルセグメント19の押圧面19Pc、19Qc、19Rc、19Sc、19Tc、19Ucは、固定子鉄心16の他端面16bとほぼ平行な状態になっている。これにより、図25に示す固定子鉄心16の径方向に沿って隣合うコイルセグメント19の重複部分19x2は、図20に示すコイルセグメント19の重複部分19x1と比較して、大幅に縮小されている。
一方、延出端部19Pb、19Qb、19Rb、19Sb、19Tb、19Ubは、折曲げ成形後のスプリングバックによって、固定子鉄心16の径方向外側に向かって僅かに位置ずれしている。押圧面19Pc、19Qc、19Rc、19Sc、19Tc、19Ucは、固定子鉄心16の周方向に互いにずれて位置し、固定子鉄心16の径方向にジグザグに並んでいる。6層目に押圧面19Pcと5層目の押圧面19Qcとの間、4層目の押圧面19Rcと3層目の押圧面19Scとの間、および2層目の押圧面19Tcと1層目の押圧面19Ucとの間には、それぞれ僅かな隙間が生じている。
図27は、湾曲成形を示す斜視図、図28は、湾曲加工によるコイルセグメントの延出端部の一部を拡大して示す斜視図、図29は、図28の領域Mにおいて、矯正治具の開口部と溶接ポイントとの関係を模式的に示す斜視図である。
図27に示すように、湾曲成形では、矯正治具103により延出端部19bが固定子鉄心16の軸方向に押圧されている状態で、内壁治具101と外壁治具105とで延出端部19bを径方向両側から押圧することにより、延出端部19bを曲げ加工する。外壁治具105は、リング形状の部材を複数、例えば、4分割した4つの円弧状の分割治具105A、105B、105C、105Dで構成されている。外壁治具105は、押圧面として機能する内周面105aを有している。分割治具105A〜105Dを組み合わせてリング状の外壁治具105を構成した状態において、内周面105aの直径は、6層目(最外層)に位置する48個の延出端部19Pbによって構成される円筒の外径よりも僅かに小さい。分割治具105A〜105Dは、十分な剛性を備えた金属から形成されている。
図29に示すように、溶接ポイント19iを外すように、開口部103cは、各々のスロット20において、6層目に位置する押圧面19Pcと5層目に位置する押圧面19Qcとの境界部、4層目に位置する押圧面19Rcと3層目に位置する押圧面19Scとの境界部、2層目に位置する押圧面19Tcと1層目に位置する押圧面19Ucとの境界部と対向する位置に位置決めされる。
なお、本実施形態においては、矯正治具103によるコイルセグメント19の矯正成形を行なう矯正工程の後に内壁治具101と外壁治具105による湾曲成形を行なう湾曲成形工程を行なうものを例として示したが、矯正治具103による固定子鉄心16の軸方向への押圧(軸方向の押圧)と内壁治具101と外壁治具105による径方向両側からの押圧(径方向の押圧)とが同時に作用する時間が少なくとも一部にあれば、矯正工程と湾曲形成工程の順序は入れ替えても構わない。すなわち、本実施形態においては、矯正治具103による軸方向の押圧とともに内壁治具101と外壁治具105による径方向の押圧が行われる。
図示のように、曲げ加工を施すことにより、コイルセグメント19の延出端部19Pb、19Qb、19Rb、19Sb、19Tbおよび19Ubは、径方向外側への位置ずれおよび隙間が無くなり、押圧面19Pc、19Qc、19Rc、19Sc、19Tc、19Ucは、互いに隣接して固定子鉄心16の径方向にほぼ一列に並んでいる。これにより、6層目の押圧面19Pcと5層目の押圧面19Qcとの間の隙間、4層目の押圧面19Rcと3層目の押圧面19Scとの間の隙間、および2層目の押圧面19Tcと1層目の押圧面19Ucとの間の隙間、がほとんど無くなり、それぞれ接合が容易な状態となる。
本実施形態によれば、一例として、接合工程は、レーザー光による溶接によって押圧面を接合する。図31に示すように、折曲げ成形された6層の延出端部19bを矯正治具103と内壁治具101と外壁治具105とで挟んだ状態で、かつ、矯正治具103で押圧面19cを上から押えた状態で、押圧面19cをレーザー溶接する。
この際、接合工程に先立ち、調温器(ヒータ)104によって矯正治具103を常温よりも高い所定の温度に加熱する。調温器104は、一例として、電源104aと、電源104aと矯正治具103を電気的につなぐケーブル104bを含んで構成されている。矯正治具103は、電気抵抗率が十分に高い金属によって構成する。調温器104は、電源104aからケーブル104bを介して矯正治具103に電流を入力することにより、矯正治具103を電気抵抗によって加熱する。矯正治具103の加熱に伴い、延出端部19bの先端部も矯正治具103を介して所定の温度に加熱される。
なお、調温器104は、上記のように通電により矯正治具103を直接的に加熱する構成に限定されることなく、矯正治具103の上面103a等に加熱用のペルチェ素子や熱電対を設けて、矯正治具103を間接的に加熱する構成としてもよい。
以上の製造工程により、固定子鉄心16にコイル18を装着および接続し、固定子12が構成される。
矯正治具103(第2押圧治具)により、押圧面19cを他端面16bに対して傾斜した状態からほぼ平行な状態に矯正することで、図25に示すコイルセグメント19の重複部分19x2は、図20に示すコイルセグメント19の重複部分19x1と比較して、大幅に縮小することができる。これにより、6層目の押圧面19Pcと5層目の押圧面19Qcとの間における重複および隙間、4層目の押圧面19Rcと3層目の押圧面19Scとの間における重複および隙間、および2層目の押圧面19Tcと1層目の押圧面19Ucとの間における重複および隙間を大幅に減少させて、それぞれ接合が容易な状態にすることができる。
このような製造方法によれば、延出端部19bの先端部を把持することなく延出端部19bを折り曲げることが可能となる。そのため、コイルセグメント19の延出端部19bに把持部を設ける必要がなく、把持部の分だけ、延出端部19bを短く設定することができる。従って、形成されるコイル18のコイルエンド18bの突出高さ(固定子鉄心16の他端面16bからの突出高さ)を低く抑えることができる。この結果、コイル18および固定子12の小型化が可能となる。
以上のことから、本実施形態によれば、小型化を図りつつ複数のコイルセグメント19を良好に接合できる固定子12の製造方法が得られる。
図示のように、変形例によれば、矯正治具103の各開口部103cは、長孔に代えて、複数の小孔で構成されている。詳細には、矯正治具103は、前述した実施形態の矯正治具と同一の外径形状を有し、すなわち、リング状の金属板で構成されている。矯正治具103は、環状の上面103a、環状の下面103b、内周面103e、外周面103dを有している。矯正治具103には、上面103aから下面103bまで貫通した48組の開口部103cが、矯正治具103の周方向に一定の間隔で形成されている。各組の開口部103cは、矯正治具103の径方向に間隔を置いて並んで設けられた複数、例えば、3つの第1開口部103c1、第2開口部103c2および第3開口部103c3によって構成されている。各開口は、例えば、円形あるいは楕円形の小孔である、これら第1開口部103c1、第2開口部103c2および第3開口部103c3は、図23に示した製造工程において、矯正治具103を延出端部19bの押圧面19cに重ねて配置した際に、径方向に隣合う押圧面19cの境界部とそれぞれ対向する位置に配置されている。
具体的には、図34に示すように、溶接ポイント19iを外すように、各組の第1開口部103c1は、各々のスロット20において、6層目に位置する押圧面19Pcと5層目に位置する押圧面19Qcとの境界部と対向する位置に位置決めされる。各組の第2開口部103c2は、各々のスロット20において、4層目に位置する押圧面19Rcと3層目に位置する押圧面19Scとの境界部と対向する位置に位置決めされる。各組の第3開口部103c3は、各々のスロット20において、2層目に位置する押圧面19Tcと1層目に位置する押圧面19Ucとの境界部と対向する位置に位置決めされる。
例えば、コイルの巻数、コイルセグメントの設置数は、上述した実施形態に限定されることなく、適宜、増減可能である。例えば、1スロットに4本あるいは8本のセグメント直線部が配置されるように構成してもよい。回転子の寸法、材質、形状等は、前述した実施形態に限定されることなく、設計に応じて種々変更可能である。本実施形態に係る回転子および回転電機は、永久磁石界磁電動機に限らず、誘導電動機にも適用可能である。
18…コイル、18a,18b…コイルエンド、
19,19P,19Q,19R,19S,19T,19U…コイルセグメント、
19a…直線部、
19b,19Pb,19Qb,19Rb,19Sb,19Tb,19Ub…延出端部、
19c,19Pc,19Qc,19Rc,19Sc,19Tc,19Uc…押圧面、
19d…架橋部、19f…絶縁被膜、19g…溶接ビード、19i…溶接ポイント、
19x1…重複部分、19x2…重複部分、20…スロット
101…内壁治具、101a…外周面、102…成形治具(第1押圧治具)、
102a…本体部、102b…押圧部、102c…フランジ部、
103…矯正治具(第2押圧治具)、103a…上面、103b…下面、
103c…開口部、103c1…第1開口部、103c2…第2開口部、
103c3…第3開口部、103d…外周面、103e…内周面、104…調温器、
105…外壁治具、105A,105B,105C,105D…分割治具、
105a…内周面、106…レーザー光源、107…ガルバノミラー
Claims (5)
- 中心軸線に対して傾斜した押圧面を一端に有する一対の直線部と前記一対の直線部の他端同士を連結した架橋部とを有し平角導体で形成された複数のコイルセグメントを用意し、
前記複数のコイルセグメントの前記直線部を、固定子鉄心の一端面側から複数のスロットに挿通し、前記固定子鉄心の他端面側から所定長さ軸方向に突出した複数の延出端部を構成し、各スロットに複数の前記直線部を径方向に並べて配置することにより、前記複数の延出端部を前記固定子鉄心と同軸の4層以上の複数層の円筒状に配列し、
第1押圧治具の押圧部により前記押圧面を前記固定子鉄心の軸方向に前記他端面に向かって押圧しながら、前記固定子鉄心および前記第1押圧治具の少なくともいずれかを周方向に回動させて、前記押圧面が前記他端面に沿うように前記延出端部を前記固定子鉄心の周方向に折曲げ、
前記折曲げられた前記複数の延出端部の押圧面に重ねて第2押圧治具を配置し、前記第2押圧治具により前記延出端部を前記固定子鉄心の軸方向に前記他端面に向かって押圧し、
前記第2押圧治具による押圧とともに、前記円筒状に配列された最外層の複数の延出端部の外周面に当接する環状の外壁治具と前記円筒状に配列された最内層の複数の延出端部の内周面に当接する環状の内壁治具とにより、前記複数層の延出端部を前記固定子鉄心の径方向外側および径方向内側から押圧する固定子の製造方法。 - 前記第2押圧治具は、それぞれ前記押圧面に対向する複数の開口部を有し、
接合は、前記第2押圧治具、前記外壁治具、および前記内壁治具により前記複数の延出端部を押圧した状態で、前記開口部を通してレーザー光を前記押圧面に照射し、前記固定子鉄心の径方向に隣合う前記押圧面を互いに溶接して接合する請求項1に記載の固定子の製造方法。 - 前記接合は、前記第2押圧治具を常温よりも高い温度に温めた後、前記レーザー光を前記押圧面に照射して行う請求項2に固定子の製造方法。
- 前記第2押圧治具は、前記開口部が前記径方向に隣合う前記押圧面の間の境界部と対向する位置に配置され、前記接合は、前記開口部を通して前記境界部にレーザー光を照射して行う請求項2に記載の固定子の製造方法。
- 中心軸線に対して傾斜した押圧面を一端に有する一対の直線部と前記一対の直線部の他端同士を連結した架橋部とを有する平角導体で形成された複数のコイルセグメントの前記直線部が、固定子鉄心の一端面側から前記固定子鉄心に設けられた複数のスロットに挿通されるとともに前記固定子鉄心の他端面側から所定長さ軸方向に延出端部として突出し、各スロットに複数の前記直線部が径方向に並べて配置されることにより、前記複数の延出端部が前記固定子鉄心と同軸の4層以上の複数層の円筒状に配列された固定子組立体の前記押圧面のそれぞれを、前記固定子鉄心の軸方向に前記他端面に向かって押圧する押圧部を備えるとともに、前記固定子鉄心の中心軸に対する周方向の相対位置が可変に構成された第1押圧治具と、
前記固定子鉄心の前記他端面に沿うように折り曲げられた前記複数の延出端部の前記押圧面に重ねて前記延出端部を前記固定子鉄心の軸方向に前記他端面に向かって押圧する第2押圧治具と、
前記延出端部を径方向の両側から押圧する、前記円筒状に配列された最外層の複数の延出端部の外周面に当接する環状の外壁治具および前記円筒状に配列された最内層の複数の延出端部の内周面に当接する環状の内壁治具と、を備える固定子の製造装置。
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JP2017085806A (ja) * | 2015-10-29 | 2017-05-18 | トヨタ自動車株式会社 | ステータ用セグメントコイルのコイルエンド接合方法 |
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