JP3190864U - アーク溶接用エンドタブ - Google Patents

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Abstract

【課題】アーク溶接によって母材をその他の母材に溶接する際に溶接用裏当て金と共に用いられるエンドタブであって、溶接欠陥の発生を比較的低く抑えることができだけでなくエンドタブの除去作業を比較的容易に行い得るエンドタブを提供する。【解決手段】開先加工した母材の開先端面を別の母材に向かい合わせてその間に開先溝部を形成し、開先溝部の底部を形成するように両母材に亘って溶接用裏当て金を配置し、アーク溶接によって開先溝部に溶融金属層を順次積層させて両母材の溶接を行う際に、エンドタブ10は溶接用裏当て金の上面に開先溝部の一端部の外部側で両母材の少なくとも一方の母材の側面と接して設置させられる。エンドタブは、セラミック製のタブ本体11と、エンドタブが所定位置に設置させられた際に、溶融金属層の初期の層に相当するタブ本体の部分に形成された鋼製層12とを具備する。【選択図】図1

Description

本考案はMAG(Metal Active Gas)溶接等のアーク溶接によって母材をその他の母材に溶接する際に溶接用裏当て金と共に用いられるエンドタブに関する。
建築鉄骨の組立においては、自動アーク溶接機或いは半自動アーク溶接機によって種々の母材が互いに溶接させられる。このような従来の溶接方法の一例として、溶接用裏当て金及びエンドタブを用いて2つの母材例えば梁フランジを互いに溶接する場合について説明すると、一方の梁フランジの端部は開先加工により傾斜端面即ち開先端面として形成され、他方の梁フランジの端面は垂直端面として成形される。これら双方の梁フランジは、一方の梁フランジの開先端面を他方の梁フランジの垂直端面に向かい合わせてその間に略V字形横断面の開先溝部を形成するように配置され、双方の梁フランジの端部底面間にはそこを跨るように溶接用裏当て金が適用されて該開先溝部の底部とされる。溶接用裏当て金は双方の開先溝部の長さより長く、このための溶接用裏当て金の両端部は双方の梁フランジの端部の側面から突出させられ、この突出させられた両端部上には開先溝部の端部を塞ぐようにエンドタブが配置される。
次に、自動アーク溶接機或いは半自動アーク溶接機が作動させられ、これにより溶接ワイヤ用の送給ヘッドが開先溝部の一方の端部即ち第1の端部側に移動させられて所定高さに位置決めされる。次いで、送給ヘッドから溶接ワイヤが送給され、その先端が開先溝部の第1の端部側の底部に接触させられると、母材側と溶接ワイヤとの間には所定電圧が印加されているので、その間に過剰な短絡電流が流される。溶接ワイヤに短絡電流が流されると、その先端が加熱のために溶けてその間にアークが発生されられ、これにより溶接作業が開始されることになる。即ち、溶接ワイヤは送給ヘッドから所定の送り量で送給されつつ送給ヘッドは開先溝部の他方の端部側即ち第2の端部側に向かって移動させられ、これにより開先溝部の底部に溶融金属の初層即ち第1の溶融金属層が形成される。送給ヘッドが開先溝部の第2の端部側に到達すると、送給ヘッドは所定量だけ上昇させられ、次いで送給ヘッドの移動が反転させられる。即ち、送給ヘッドは開先溝部の第2の端部側からその第1の端部側に向かって移動させられ、これにより第1の溶融金属層上に第2の溶融金属層が形成される。このような溶接作業を繰り返すことにより、開先溝部内に溶融金属層が順次積層され、これにより該開先溝部内は溶融金属で充填されて溶接ビードが形成される。
なお、上述の例では、開先溝部の第1及び第2の端部間でアークを往復させつつ溶融金属層を順次積層しているが、第1の溶融金属層が形成された後にアークの発生を一旦停止させ、送給ヘッドを開先溝部の第2の端部側からその第1の端部側に戻し、そこで再びアークを発生させて開先溝部の第2の端部側に向かって溶接作業を再開して第1の溶融金属層上に第2の溶融金属層を形成してもよい。
上述したように溶融金属層が略V字形横断面となった開先溝部内で順次積層させられると、溶融金属層は上層になればなる程、溶融金属層の幅は増大することになる。従って、各溶融金属層の形成時にその厚さを均一にするために、送給ヘッドが開先溝部の第1及び第2の端部側間を移動させられるとき、送給ヘッドを開先溝部の幅方向に振動させることによりアークが開先溝部に沿ってジグザグ状に移行させられ、しかもそのようなアークのジグザク移行の振幅については溶融金属層が上層になるに従って次第に増大させられる。
ところで、以上で述べた従来のアーク溶接方法においては、エンドタブとして鋼製のものやセラミック製のものが使用されている。鋼製のエンドタブの場合には、アーク溶接開始個所、即ちエンドタブの設置個所でエンドタブと溶接ワイヤ間にもアークが発生するので、エンドタブの付近での溶接欠陥の発生を比較的低く抑えることが可能である。一方、セラミック製のエンドタブの場合には、アーク溶接開始個所、即ちエンドタブの設置個所でエンドタブと溶接ワイヤ間にはアークが発生し得ず、またアーク発生時にはアークが安定しないために、エンドタブの付近での溶接欠陥が発生し易いという問題が起こる。
ところで、双方の母材の溶接が完了すると、エンドタブは除去されることになるが、鋼製のエンドタブは溶接ビードによって両母材にしっかり接合されているために、その除去作業は面倒で厄介なものとなる。一方、セラミック製のエンドタブは適当な工具を用いて衝撃を与えることにより容易に除去することが可能である。要するに、鋼製のエンドタブの場合には、溶接欠陥の発生を比較的低く抑えることができるという利点がある反面、エンドタブの除去作業が面倒で厄介であるという欠点があり、一方セラミック製のエンドタブの場合には、溶接欠陥の発生が発生し易いという欠点がある反面、エンドタブの除去作業が容易であるという利点がある。
特許文献1には、2つの母材を突き合わせ溶接する際に用いる溶接用L字型セラミックエンドタブが開示され、このL字型セラミックエンドタブは両母材間の開先溝部の両端部側のそれぞれに両母材の側壁面に対して適当なクランプ手段を用いて固定され、このときL字型セラミックエンドタブの角部が開先溝部の延長線上に配置させられる。L字型セラミックエンドタブの角部の内側にはその長さ方向に沿って溝が形成され、その溝には適当な導電体例えば溶接ワイヤが収容され、この溶接ワイヤは両母材に対して電気的に接続されている。要するに、特許文献1では、かかるL字型セラミックエンドタブを用いることにより、溶接開始時のアーク発生個所として該L字型セラミックエンドタブの溝内の溶接ワイヤを用いることが可能となり、在来のセラミックエンドに伴なう溶接欠陥が排除され得るとしている。
しかしながら、特許文献1に開示されたL字型セラミックエンドタブは所謂突合わせ溶接用のものであり、上述したような溶接用裏当て金を用いる溶接には適用し得るものではない。
特開平09−076097
従って、本考案の目的は、MAG(Metal Active Gas)溶接等のアーク溶接によって母材をその他の母材に溶接する際に溶接用裏当て金と共に用いられるエンドタブであって、溶接欠陥の発生を防止できるとともに、セラミックエンドタブの本来の機能、すなわち溶接後の取り外しやすさという機能を併せ持つエンドタブを提供することである。
本考案によるエンドタブは、 開先加工した母材の開先端面を別の母材に向かい合わせてその間に開先溝部を形成し、該開先溝部の底部を形成するように前記両母材に亘って溶接用裏当て金を配置し、アーク溶接によって前記開先溝部に溶融金属層を順次積層させて前記両母材の溶接を行う際に、前記開先溝部の一端部の外部側で前記両母材の少なくとも一方の母材の側面と接して設置させられるエンドタブであって、セラミック製のタブ本体と、前記エンドタブが前記所定位置に設置させられた際に、前記溶融金属層の初期の層に相当し、前記溶接用裏当て金に接触する部分である前記タブ本体の底部に形成された鋼製層とを具備したことを特徴とするものである。上述の溶融金属層の初期の層とは、好ましくは、少なくとも初層の厚さ分に相当する厚さを持ち得る。
本考案によるエンドタブにおいては、好ましくは、タブ本体の底部側には切欠き部が形成され、この場合、鋼製層は該切欠き部に収容される。
また、本考案によるエンドタブにおいては、鋼製層がタブ本体の底面側の少なくとも開先端面に対向する部分に延在するようにしてもよい。
更に、本考案によるエンドタブにおいては、タブ本体と鋼製層とにはその双方の材料を露出させた傾斜面が形成され、該エンドタブが溶接用裏当て金の上面に設置された際に該傾斜面が開先端面の延長面を為すようにしてもよい。
本考案によるアーク溶接方法は上述したようなエンドタブを用いるものであり、開先加工した母材の開先端面を別の母材に向かい合わせてその間に開先溝部を形成し、該開先溝部の底部を形成すべく両母材に溶接用裏当て金を適用する段階と、該エンドタブの鋼製層が溶接用裏当て金の上面に接触しかつ開先溝部の一端を臨むように該エンドタブを該開先溝部の一端部の外部側で該溶接用裏当て金の上面の所定位置に設置する段階と、該エンドタブの鋼製層に接近した個所で該鋼製層及び/又は溶接用裏当て金と溶接ワイヤとの間にアークを発生させ、該アークを開先溝部の他端部側に移行させつつ該開先溝部に溶融金属の初層を形成する段階とより成る。
本考案によるエンドタブによれば、溶接開始時に該エンドタブの鋼製層の個所でアークを発生させることができるので、溶接欠陥の発生を防止できるとともに、セラミックエンドタブの本来の機能、すなわち溶接後の取り外しやすさという機能を併せ持つ。
本考案によるエンドタブの第1の実施形態を示す斜視図である。 図1のエンドタブを用いてアーク溶接されるべき2つの梁フランジとこれら梁フランジに適用された溶接用裏当て金とを示す斜視図であるが参照符号15で全体的に示される。 第1の実施形態のエンドタブを用いるアーク溶接方法の一工程を示す斜視図である。 図2に示す工程に続く工程を示す斜視図である。 本考案によるエンドタブの第2の実施形態を示す斜視図である。 第2の実施形態のエンドタブを用いるアーク溶接方法の一工程を示す斜視図である。 図6に示す工程に続く工程を示す斜視図である。
図1を参照すると、本考案による一組のエンドタブ10及び10′が第1の実施形態として図示される。一組のエンドタブ10及び10′は互いに光学的に対象な構成とされる。即ち、これらエンドタブ10及び10′は鏡像対象な関係にある。
エンドタブ10は、セラミック製のタブ本体11と、このタブ本体11の底部に形成された切欠き部11aに収容された鋼製層12とから成り、鋼製層12は適当な接着剤で切欠き部11a内に固定される。なお、従来の場合にあっては、このようなエンドタブについては、その全体がセラミック製とされるが、本考案では、その一部が鋼製層12で置き換えられたものとなる。
タブ本体11は、例えばセラミック原材料を図示するような形態に成形加工した後に燒結処理することによって構成され、また鋼製層12は、例えば鋼素材をタブ本体11の形態に合わせて適宜機械加工することによって構成される。
エンドタブ10の対向壁面のそれぞれには窪み部10a及び10bが形成され、これら窪み部10a及び10bは実施的に同じ略台形状とされるが、しかし互いに逆向きとされる。即ち、エンドタブ10が図1に示すように設置されたとき、窪み部10aは倒立台形状とさせられるのに対して、窪み部10bは正立台形状とされる。
エンドタブ10の場合と同様に、エンドタブ10′も、セラミック製のタブ本体11′と、このタブ本体11′の底部に形成された切欠き部11a′に収容された鋼製層12′とから成り、鋼製層12′は適当な接着剤で切欠き部11a′内に固定される。また、タブ本体11′及び鋼製層12′もタブ本体11及び鋼製層12の場合と同様な態様で構成され得る。更に、エンドタブ10′の対向壁面にもエンドタブ10の場合と同様に倒立台形状の窪み部10a′及び正立台形状の窪み部10b′がそれぞれ形成される。
図2を参照すると、図1のエンドタブ10及び10′を用いてアーク溶接されるべき2つの母材が参照符号13及び14で全体的に示され、またこれら母材13及び14の溶接時に用いられる溶接用裏当て金が参照符号15で全体的に示される。
詳述すると、母材13及び14はそれぞれは梁フランジとして構成され、梁フランジ13の一端部には予め開先加工が施されて傾斜端面即ち開先端面13aが形成される。梁フランジ13はその開先端面13aが梁フランジ14の垂直端面14a(図3及び図4)と向かい合うように配置されて、その双方の端面13a及び14a間に略V字形横断面の開先溝部16が形成される。
次に、図3及び図4を参照して、図1に示すエンドタブ10及び10′を用いるアーク溶接方法について説明する。
先ず、図3を参照すると、梁フランジ13及び14が図示されない適当な作業支持枠台上に設置され、梁フランジ13はその開先端面13aが梁フランジ12の垂直端面12aと向かい合うように配置されて、その間に略V字形横断面の開先溝部16が形成される。また、溶接用裏当て金15も上述の作業支持枠台上に適宜設置されて開先溝部16の底部を形成するように梁フランジ13及び14の下面に適用される。なお、梁フランジ13及び14と溶接用裏当て金15とは必要に応じて図示されない適当なクランプ手段により適宜固定される。
次に、図3に示すように、エンドタブ10及び10′が開先溝部16の両端部即ち第1及び第2の端部のそれぞれの開口を塞ぐように溶接用裏当て金15の両端部上に設置され、このときエンドタブ10及び10′のそれぞれの窪み部10a及び10a′が開先溝部16の該当端部の開口と向かい合わされ、このためエンドタブ10及び10′の鋼製層12及び12′はそれぞれ溶接用裏当て金15に対して電気的に接触させられた状態となる。なお、エンドタブ10及び10′は図示されない適当なくランプ手段或いは導電性接着剤等を用いて溶接用裏当て金15に対して適宜固定される。
次いで、図示されない自動アーク溶接機或いは半自動アーク溶接機が作動させられ、これにより溶接ワイヤ用の送給ヘッドがエンドタブ10及び10′の一方例えばエンドタブ10の窪み部10aの内方壁面に沿う上方に移動させられて所定高さに位置決めされる。続いて、送給ヘッドから溶接ワイヤが送給され、その先端がエンドタブ10の鋼製層12に隣接した溶接用裏当て金15の箇所に接触させられ、このとき溶接用裏当て金15と溶接ワイヤとの間には所定電圧が印加されているので、過剰な短絡電流が流され、その結果、該溶接ワイヤの先端がジュール熱のために溶け、これにより溶接ワイヤと溶接用裏当て金15及び/又は鋼製層12との間にアークが発生させられる。
アーク発生後、溶接ワイヤには定常電流よりも小さな電流例えばクレータ電流が流される。一方、送給ヘッドは開先溝部16の幅方向に振動されつつ該開先溝部16の第1の端部の開口に向かって移動させられる。即ち、アークは窪み部10a内で溶接用裏当て金15の長手方向に沿ってジグザグ状に開先溝部16の該当端部の開口に向かって移行させられる。この間、溶接ワイヤは送給ヘッドから所定の送り量で送給され、これにより溶融金属の初層としての溶融金属溜まりが窪み部10aで囲まれた溶接用裏当て金15上の部分に形成されることになる。なお、図3では、そのような溶融金属溜まりが参照符号M1で示すように便宜的に黒ベタ領域として描かれている。
アークが開先溝部16の第1の端部の開口に到達する頃には、アークの発生が安定させられ、溶接用裏当て金15と溶接ワイヤとの間には定常電流が流される。一方、開先溝部16の第1の端部側に接近した溶接用裏当て金15並びに梁フランジ13及び14のそれぞれの部分は溶融金属溜まりM1及びアーク発生時の熱のために予熱される。
アークが開先溝部16の第1の端部に到達すると、送給ヘッドの振動は開先溝部16の底部幅に合わせられると共に溶接ワイヤの送給量及び送給ヘッドの移動速度も再調整され、梁フランジ13及び14に対する溶接作業が開始される。
図4に示すように、送給ヘッドが開先溝部16の底部の幅方向に沿って振動されつつ開先溝部16の第2の端部側に向かって移動させられると、即ちアークが開先溝部16の長手方向に沿ってジグザグ状にその第2の端部側に向かって移行させられてエンドタブ10′に到達すると、開先溝部16の底部には溶融金属の初層即ち第1の溶融金属層が形成される。給送ヘッドがエンドタブ10′の箇所まで到達したとき、アークは該エンドタブ10′の鋼製層12′との間にも発生させられるので、開先溝部16の第2の端部側での溶接欠陥の発生も低く抑えることができる。第1の溶融金属層のアークが第1の金属溶融層の形成が完了すると、溶接作業は一旦中止される。なお、図4では、第1の溶融金属層は便宜的に黒ベタ領域ML1として描かれている。
第1の溶融金属層ML1の形成後、溶接ワイヤ用の送給ヘッドは開先溝部16の第1の端部の開口の上方に移動させられて所定高さに位置決めされる。続いて、送給ヘッドから溶接ワイヤが送給され、従来と同様な態様で溶接作業が行われ、第1の溶融金属層ML1上に第2の溶融金属層(図示されない)が形成される。このような溶接作業を繰り返すことにより、開先溝部16内に溶融金属層が順次積層され、これにより該開先溝部16内には溶接ビードが形成される。
鋼製層12及び12′の厚さについては、溶融金属層の初期の層に相当する厚さとされる。ここで、溶融金属層の初期の層とは、溶融金属層の初層から数えて少なくとも3層分に相当する層とされる。即ち、鋼製層12及び12′の厚さは、好ましくは、溶融金属層の初層から数えて少なくとも3層分に相当する厚さとされる。鋼製層12及び12′が溶融金属層の初層から数えて少なくとも3層分に相当する厚さを持てば、それ以降に順次形成される溶融金属層はその直下の溶融金属層に対する溶込みが良好となるために、エンドタブ10及び10′に接近した箇所での溶接欠陥の発生が回避され得ることになる。
溶接作業が完了した後、適当な工具でエンドタブ10及び10′に衝撃を加えることにより、セラミック製のタブ本体11及び11′は容易に除去することができる。タブ本体11及び11′の除去後には、鋼製層12及び12′だけが溶接用裏当て金15上に残されることになるが、しかし鋼製層12及び12′はエンドタブ10及び10′の全体に比べれば遥かに小さなものであり、鋼製層12及び12′の除去作業は比較的容易なものとなる。
また、本考案によるエンドタブ10及び10′を用いた場合の利点として、比較的大きなタブ本体11及び11′を除去することにより、溶接ビードの外観検査がし易いということが挙げられる。また、別の利点としては、溶接開始時に発生し易い溶接欠陥の発生箇所がエンドタブ10の窪み部10a内となるので、開先溝部16内での溶接欠陥、特にその第1の端部側に接近した箇所での溶接欠陥の発生が大巾に低減し得る点も挙げられる。
ところで、図1に示すエンドタブ10及び10′は必要に応じて従来のセラミック製のエンドタブとして利用することも可能であり、その場合にはエンドタブ10及び10′が図4において入れ替えられることになる。即ち、エンドタブ10′はその窪み部10b′が開先溝部16の第1の端部の開口と向かい合うように溶接用裏当て金15の該当端部上に設置され、エンドタブ10はその窪み部10bが開先溝部16の第2の端部の開口と向かい合うように溶接用裏当て金15の該当端部上に設置されることになる。この場合、鋼性部材12及び12′はそれぞれのエンドタブ10及び10′の上面側に位置させられるので、エンドタブ10及び10′は従来のセラミック製のエンドタブとして機能することになる。勿論、エンドタブ10及び10′を従来のセラミック製のエンドタブとして使用しない場合には、エンドタブ10及び10′に窪み部10a及び10a′だけを形成して、窪み部10b及び10b′を排除することができる。
図5を参照すると、本考案によるエンドタブ20が第2の実施形態として図示される。
エンドタブ20は、セラミック製のタブ本体21と、このタブ本体21の底部に形成された切欠き部21aに収容された鋼製層22とから成り、鋼製層22は適当な接着剤で切欠き部11a内に固定される。なお、従来の場合にあっては、このようなエンドタブについては、その全体がセラミック製とされるが、本考案では、その一部が鋼製層22で置き換えられたものとなる。
第1の実施形態の場合と同様に、タブ本体21は、例えばセラミック原材料を図示するような形態に成形加工した後に燒結処理することによって構成され、また鋼製層22は、例えば鋼素材をタブ本体11の形態に合わせて適宜機械加工することによって構成される。
図5に示すように、エンドタブ20には傾斜面20aが形成され、この傾斜面20aにはタブ本体21と鋼製層22との双方の材料が露出させられる。
図5のエンドタブ20についても、例えば、図2に示すような梁フランジ13及び14の溶接のために溶接用裏当て金15と共に使用することができる。なお、この場合にはエンドタブ20の傾斜面20aの傾きは梁フランジ13の傾斜端面と同じ傾きとされる。
次に、図6及び図7を参照して、図5に示すエンドタブ20を用いるアーク溶接方法について説明する。
先ず、図6に示すように、梁フランジ13及び14と溶接用裏当て金15とが図示されない適当な作業支持枠台上に第1の実施形態の場合と同様な態様で設置される。即ち、梁フランジ13はその開先端面13aが梁フランジ12の垂直端面12aと向かい合うように配置されて、その間に略V字形横断面の開先溝部16が形成され、また溶接用裏当て金15が開先溝部16の底部を形成するように梁フランジ13及び14の下面に適用される。
次に、エンドタブ20が2つ用意され、これらエンドタブ20は図6に示すように梁フランジ13の側面に接触させた状態で溶接用裏当て金15上に設置させられ、このとき各エンドタブ20はその傾斜面20aが梁フランジ13の傾斜端面13aの延長面を為すように配置させられ、このため鋼製層22は溶接用裏当て金15に対して電気的に接触させられた状態となる。なお、第1の実施形態の場合と同様に、エンドタブ20のそれぞれは図示されない適当なくランプ手段或いは導電性接着剤等を用いて溶接用裏当て金15に対して適宜固定される。
次いで、図示されない自動アーク溶接機或いは半自動アーク溶接機が作動させられ、これにより溶接ワイヤ用の送給ヘッドが一方のエンドタブ20、例えば第1の実施形態で定義された開先溝部16の第1の端部側のエンドタブ20の傾斜面20aの外方先端縁の上方に移動させられて所定高さに位置決めされる。続いて、送給ヘッドから溶接ワイヤが送給され、その先端がエンドタブ20の傾斜面20aの外方先端縁に隣接した溶接用裏当て金15の箇所に接触させられ、このとき溶接用裏当て金15と溶接ワイヤとの間には所定電圧が印加されているので、過剰な短絡電流が流され、その結果、該溶接ワイヤの先端がジュール熱のために溶け、これにより溶接ワイヤと溶接用裏当て金15及び/又は鋼製層22との間にアークが発生させられる。
アーク発生後、溶接ワイヤには定常電流よりも小さな電流例えばクレータ電流が流される。一方、送給ヘッドは開先溝部16の幅方向に振動されつつ該開先溝部16の第1の端部の開口に向かって移動させられる。即ち、アークはエンドタブ20の傾斜面20aに沿ってジグザグ状に開先溝部16の第1の端部の開口に向かって移行させられる。この間、溶接ワイヤは送給ヘッドから所定の送り量で送給され、これにより溶融金属の初層としての溶融金属溜まりがエンドタブ20の傾斜面20aに沿う溶接用裏当て金15上の部分に形成されることになる。なお、図6では、そのような溶融金属溜まりが参照符号M2で示すように便宜的に黒ベタ領域として描かれている。
アークが開先溝部16の第1の端部の開口に到達する頃には、アークの発生が安定させられ、溶接用裏当て金15と溶接ワイヤとの間には定常電流が流される。一方、開先溝部16の第1の端部側に接近した溶接用裏当て金15並びに梁フランジ13及び14のそれぞれの部分は溶融金属溜まりM2及びアーク発生時の熱のために予熱される。
アークが開先溝部16の第1の端部に到達すると、送給ヘッドの振動は開先溝部16の底部幅に合わせられると共に溶接ワイヤの送給量及び送給ヘッドの移動速度も再調整され、梁フランジ13及び14に対する溶接作業が開始される。
図7に示すように、送給ヘッドが開先溝部16の底部の幅方向に沿って振動されつつ開先溝部16の第2の端部側に向かって移動させられると、即ちアークが開先溝部16の長手方向に沿ってジグザグ状にその第2の端部側に向かって移行させられて他方のエンドタブ20に到達すると、開先溝部16の底部には溶融金属の初層即ち第1の溶融金属層が形成される。給送ヘッドが他方のエンドタブ20の箇所まで到達したとき、アークは該他方のエンドタブ20の鋼製層22との間にも発生させられるので、開先溝部16の第2の端部側での溶接欠陥の発生も低く抑えることができる。第1の溶融金属層のアークが第1の金属溶融層の形成が完了すると、溶接作業は一旦中止される。なお、図7では、第1の溶融金属層は便宜的に黒ベタ領域ML2として描かれている。
第1の溶融金属層ML2の形成後、溶接ワイヤ用の送給ヘッドは開先溝部16の第1の端部の開口の上方に移動させられて所定高さに位置決めされる。続いて、送給ヘッドから溶接ワイヤが送給され、従来と同様な態様で溶接作業が行われ、第1の溶融金属層ML1上に第2の溶融金属層(図示されない)が形成される。このような溶接作業を繰り返すことにより、開先溝部16内に溶融金属層が順次積層され、これにより該開先溝部16内は溶融金属で充填されて溶接ビードが形成される。
溶接作業が完了した後、適当な工具でエンドタブ20のそれぞれに衝撃を加えることにより、セラミック製のタブ本体21のそれぞれは容易に除去することができる。タブ本体21の除去後には、鋼製層22だけが溶接用裏当て金15の両端側に残されることになるが、しかし鋼製層22はエンドタブ20の全体に比べれば遥かに小さなものであり、鋼製層22の除去作業は比較的容易なものとなる。
また、第1の実施形態の場合と同様に、本考案によるエンドタブ20を用いた場合の利点として、比較的大きなタブ本体21を除去することにより、溶接ビードの外観検査がし易いということが挙げられ、また別の利点としては、溶接開始時に発生し易い溶接欠陥の発生箇所がエンドタブ20の傾斜面側20aとなるので、開先溝部16内での溶接欠陥、特にその第1の端部側に接近した箇所での溶接欠陥の発生が大巾に低減し得る点も挙げられる。
また、第1の実施形態の場合と同様な理由のために、鋼製層22の厚さについては、溶融金属層の初期の層に相当する厚さとされる。即ち、鋼製層22の厚さは、好ましくは、溶融金属層の初層から数えて少なくとも3層分に相当する厚さとされる。
10・10′:エンドタブ
10a・10b・10a′・10b′:窪み部
11・11′:タブ本体
12・12′:鋼製層
13:梁フランジ
13a:傾斜端面
14:梁フランジ
14a:垂直端面
15:溶接用裏当て金
16:開先溝部
M1:溶融金属溜まり
ML1:第1の溶融金属層(溶融金属の初層)
20:エンドタブ
20a:傾斜面
21:タブ本体
21a:切欠き部
22:鋼製層
M2:溶融金属溜まり
ML2:第1の溶融金属層(溶融金属の初層)

Claims (5)

  1. 開先加工した母材の開先端面を別の母材に向かい合わせてその間に開先溝部を形成し、該開先溝部の底部を形成するように前記両母材に亘って溶接用裏当て金を配置し、アーク溶接によって前記開先溝部に溶融金属層を順次積層させて前記両母材の溶接を行う際に、前記開先溝部の一端部の外部側で前記両母材の少なくとも一方の母材の側面と接して設置させられるエンドタブであって、
    セラミック製のタブ本体と、前記エンドタブが前記所定位置に設置させられた際に、前記溶融金属層の初期の層に相当し、前記溶接用裏当て金に接触する部分である前記タブ本体の底部に形成された鋼製層とを具備したことを特徴とするエンドタブ。
  2. 請求項1に記載のエンドタブにおいて、前記溶融金属層の初期の層が少なくとも初層の厚さ分に相当する厚さを持っていることを特徴とするエンドタブ。
  3. 請求項1又は2に記載のエンドタブにおいて、前記タブ本体の底部には切欠き部が形成され、前記鋼製層が該切欠き部に収容されていることを特徴とするエンドタブ。
  4. 請求項1又は2に記載のエンドタブにおいて、前記鋼製層が前記タブ本体の底面側の少なくとも開先端面に対向する部分に延在していることを特徴とするエンドタブ。
  5. 請求項1に記載のエンドタブにおいて、前記タブ本体と前記鋼製層とにはその双方の材料を露出させた傾斜面が形成され、前記エンドタブが前記溶接用裏当て金の上面に設置された際に該傾斜面が前記開先端面の延長面を為すことを特徴とするエンドタブ。
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