JP2014172063A - サブマージアーク溶接方法、当該サブマージアーク溶接方法を用いる鋼管を製造する方法、溶接継手、及び当該溶接継手を有する鋼管 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】板厚が40mmを超える管状に成形された鋼板を両面溶接するサブマージアーク溶接方法であって、前記鋼板は、一面側の第1開先部82内の断面積が他面側の第2開先部83内の断面積よりも大きく形成された開先形状の接合部81を有し、1パス1層で低入熱の溶接を第1開先部82に対して施し、第1溶接部91を形成する工程と、第2開先部83内の溶接金属が前記鋼板の表面を超えるまで、高入熱の一層溶接を第2開先部83に対して施し、第2溶接部92を形成する工程と、多層溶接を第1開先部82に施し、第3溶接部93を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【選択図】図4
Description
また、一般的に、サブマージアーク溶接方法を用いて所定の板厚(40mmを超えるもの)を溶接する場合には、ガウジングを用いた多層溶接方法が知られている。以下では、この技術を、図10を参照しながら説明する。なお、図10における符号tは、曲げられた鋼板の板厚を示す。
また、前記高入熱は、55kJ/cm未満であると、溶け込み不足となることがある。また、前記高入熱が175kJ/cmを超えると、溶け落ちが発生することがある。その為、溶け込み不足防止の観点から、好ましくは前記高入熱が60kJ/cm以上、溶け落ち防止の観点から、好ましくは前記高入熱が160kJ/cm以下であるのがよい。
また、前記入熱は、30kJ/cm未満であると、効率が悪い。また、前記入熱が、175kJ/cmを超えると、1パスごとの厚さが厚くなり、低温割れが発生することがある。その為、溶接を効率よく行うという観点から、好ましくは入熱が45kJ/cm以上、低温割れ防止の観点から、好ましくは入熱が160kJ/cm以下であるのがよい。
また、サブマージアーク溶接方法は、第1開先部に対して多層溶接を施す。したがって、本発明に係るサブマージアーク溶接方法によれば、各層の厚さを調整することが可能であり、低温割れを極めて低減することができる。
また、この溶接継手は、第1開先部内の溶接金属が複層構造をなす。したがって、本発明に係る溶接継手によれば、製造工程において各層の厚さを調整することが可能であり、低温割れを極めて低減することができる。
以下、本発明の実施するための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、参照する図面において、本発明を構成する部材の寸法は、説明を明確にするために誇張して表現されている場合がある。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
図1に示す溶接機構1は、本発明に係るサブマージアーク溶接方法(以下、省略して「本溶接方法」と呼ぶ場合がある)を実現するための溶接機構の構成例である。すなわち、溶接機構1はあくまで例示であり、後記する本溶接方法は、この溶接機構1で実現される溶接操作に限定されるものではない。本溶接方法は、一般的な溶接機構により実現可能である。
図3を参照して、本発明に係るサブマージアーク溶接方法の概要について説明する。本溶接方法では、接合部81に第1溶接部91、第2溶接部92、第3溶接部93の3つの溶接部を形成する。ここで、第1溶接部91及び第3溶接部93は、主に溶接による溶接金属で構成される。第2溶接部92は、主に溶接による溶接金属とこの溶接による熱影響を受けた母材(鋼板80)の部分とで構成される。
最初に、本溶接方法は、接合部81の外面側開先部82を1パス1層の低入熱で溶接を行う。これにより、外面側開先部82には、1層の溶接金属で構成される「第1溶接部91」が形成される(図4(a)参照)。第1溶接部91を形成する工程は、例えば、外面側の溶接機10のL極(先行極)によって行うのがよい。ただし、第1溶接部91を形成する工程は、T極(後行極)を用いてもよく、L極に限定されるものではない。
続いて、本溶接方法は、第1溶接部を形成する工程とは溶接条件を変更して、接合部81の外面側開先部82に第3溶接部93の一部を形成する。この溶接操作は、外面側開先部82内の溶接金属が4〜30mmの高さになるまで、複数パスに分けて行われる。これにより、外面側開先部82内の第1溶接部91の上部には、4〜30mmの高さまで「第3溶接部93の一部」が形成される(図4(b)参照)。第3溶接部93の一部を形成する工程は、例えば、外面側の溶接機10のL極(先行極)及びT極(後行極)によって行うのがよい。ただし、第3溶接部93の一部を形成する工程は、L極及びT極の何れか一方のみを用いてもよく、L極及びT極のタンデム溶接に限定されるものではない。
続いて、本溶接方法は、接合部81の内面側開先部83を1パス1層の高入熱で溶接を行う。ここで、内面側開先部83の開先深さd2(図2参照)は、1回の溶接操作で内面側開先部83が溶接金属によって満たされる寸法に設計してある。その為、本溶接方法では、1回の溶接操作を行うことにより、内面側開先部83に余盛が出る(内面側開先部83内の溶接金属が鋼板80の表面を超える)。また、第1溶接部91は、この溶接の熱影響により一部が溶け込む。このようにして、内面側開先部83には、1層の溶接金属とこの溶接による熱影響を受けた部分とで構成される「第2溶接部92」が形成される(図4(c)参照)。第2溶接部92を形成する工程は、例えば、内面側開先部83が溶接位置になるように鋼板80を適宜回転させた後に、内面側の溶接機10のL極(先行極)及びT極(後行極)によって行うのがよい。ただし、第2溶接部92を形成する工程は、L極及びT極の何れか一方のみを用いてもよく、L極及びT極のタンデム溶接に限定されるものではない。
続いて、本溶接方法は、接合部81の外面側開先部82の溶接を行う。この溶接操作は、外面側開先部82に余盛が出るまで(外面側開先部82内の溶接金属が鋼板80の表面を超えるまで)、複数パスに分けて行われる。これにより、外面側開先部82には、複数層の溶接金属で構成される「第3溶接部93」が形成される(図4(d)参照)。第3溶接部93の残りの部分を形成する工程は、例えば、外面側開先部82が溶接位置になるように鋼板80を適宜回転させた後に、外面側の溶接機10のL極(先行極)及びT極(後行極)を用いて第3溶接部93の一部を形成する工程と同様の溶接条件で行うのがよい。ただし、第3溶接部93の残りの部分を形成する工程は、L極及びT極の何れか一方のみを用いてもよく、L極及びT極のタンデム溶接に限定されるものではない。
低温割れ欄の内容は、溶接金属で低温割れが発生したか否かを示す情報である。
溶け落ち欄の内容は、溶け落ちが発生したか否かを示す情報である。
溶け残し欄の内容は、溶け残しが発生したか否かを示す情報である。
高温割れ、低温割れの確認は、「JIS Z 3060」に規定される鋼溶接部の超音波探傷試験方法に則って実施した。溶け残しは、断面マクロ組織試験片の目視により判断した。
最初に、本溶接方法は、接合部81の外面側開先部82を1パス1層の低入熱で溶接を行う。これにより、外面側開先部82には、1層の溶接金属で構成される「第1溶接部91」が形成される(図5(a)参照)。第1溶接部91を形成する工程は、例えば、外面側の溶接機10のL極(先行極)によって行うのがよい。ただし、第1溶接部91を形成する工程は、T極(後行極)を用いてもよく、L極に限定されるものではない。
続いて、本溶接方法は、第1溶接部を形成する工程とは溶接条件を変更して、外面側開先部82の第1溶接部93の上部に第3溶接部93を形成する。この溶接操作は、外面側開先部82に余盛が出るまで(外面側開先部82内の溶接金属が鋼板80の表面を超えるまで)、複数パスに分けて行われる。これにより、外面側開先部82には、複数層の溶接金属で構成される「第3溶接部93」が形成される(図5(b)参照)。第3溶接部93を形成する工程は、例えば、外面側の溶接機10のL極(先行極)及びT極(後行極)によって行うのがよい。ただし、第3溶接部93を形成する工程は、L極及びT極の何れか一方のみを用いてもよく、L極及びT極のタンデム溶接に限定されるものではない。
続いて、本溶接方法は、接合部81の内面側開先部83を1パス1層の高入熱で溶接を行う。ここで、内面側開先部83の開先深さd2(図2参照)は、1回の溶接操作で内面側開先部83が溶接金属によって満たされる寸法に設計してある。その為、本溶接方法では、1回の溶接操作を行うことにより、内面側開先部83に余盛が出る(内面側開先部83内の溶接金属が鋼板80の表面を超える)。また、第1溶接部91は、この溶接の熱影響により一部が溶け込む。このようにして、内面側開先部83には、1層の溶接金属とこの溶接による熱影響を受けた部分とで構成される「第2溶接部92」が形成される(図5(c)参照)。第2溶接部92を形成する工程は、例えば、内面側開先部83が溶接位置になるように鋼板80を適宜回転させた後に、内面側の溶接機10のL極(先行極)及びT極(後行極)によって行うのがよい。ただし、第2溶接部92を形成する工程は、L極及びT極の何れか一方のみを用いてもよく、L極及びT極のタンデム溶接に限定されるものではない。
記号「T6」における溶接方法のパス「1」〜「2」が第1溶接部91を形成する工程における溶接操作を示し、パス「3」〜「11」が第3溶接部93を形成する工程における溶接操作を示し、パス「12」が第2溶接部92を形成する工程における溶接操作を示す。この溶接方法で実際に溶接を行った結果、高温割れ、低温割れ、溶け落ち、及び溶け残しの何れもが発生しなかった。
また、本発明に係るサブマージアーク溶接方法は、外面側開先部82(第1開先部)に対して多層溶接を施す。したがって、本発明に係るサブマージアーク溶接方法によれば、第3溶接部93の各層の厚さを調整することが可能であり、溶接金属に低温割れが発生するのを極めて低減することができる。
本発明の実施例に係る溶接方法の比較例を図6Bに示す。
記号「T8」における溶接方法の開先形状G4は、図7(d)に対応している。この比較例に係る溶接方法は、本溶接方法のように、内面側開先部83を1パス1層で溶接を行わないので、高温割れが発生する。記号「T9」〜「T12」における溶接方法は、開先形状G1が実施例1の記号「T1」における溶接方法(図6A参照)と同様である。これらの比較例に係る溶接方法は、本溶接方法の溶接条件を設定する際の参考となる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を変えない範囲で実施することができる。実施形態の変形例を以下に示す。
10 溶接機
12a 電極
80,380,480,580 鋼板
81 接合部
82 外面側開先部(第1開先部)
83 内面側開先部(第2開先部)
84 ルートフェイス
91 第1溶接部
92 第2溶接部
93 第3溶接部
Claims (16)
- 板厚が40mmを超える管状に成形された鋼板を両面溶接するサブマージアーク溶接方法であって、
前記鋼板は、一面側の第1開先部内の断面積が他面側の第2開先部内の断面積よりも大きく形成された開先形状の接合部を有し、
1パス1層で低入熱の溶接を前記第1開先部に対して施し、第1溶接部を形成する工程と、
前記第2開先部内の溶接金属が前記鋼板の表面を超えるまで、高入熱の一層溶接を前記第2開先部に対して施し、第2溶接部を形成する工程と、
多層溶接を前記第1開先部に施し、第3溶接部を形成する工程と、を含むことを特徴とするサブマージアーク溶接方法。 - 前記第1開先部において、前記第3溶接部の一部を前記第2溶接部よりも先に形成する、
ことを特徴とする請求項1に記載のサブマージアーク溶接方法。 - 前記接合部は、前記第1開先部が管状に成形された前記鋼板の外面に形成され、前記第2開先部が当該鋼板の内面に形成される、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2にサブマージアーク溶接方法。 - 前記接合部は、ルートフェイスが2〜15mmである、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のサブマージアーク溶接方法。 - 前記第2溶接部は、前記第1溶接部の少なくとも一部に溶け込むように施されることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のサブマージアーク溶接方法。
- 板厚が40mmを超える管状に成形された鋼板を両面溶接するサブマージアーク溶接方法であって、
前記鋼板は、一面側の第1開先部内の断面積が他面側の第2開先部内の断面積よりも大きく形成された開先形状の接合部を有し、
1パス1層で低入熱の溶接を前記第1開先部に対して施し、第1溶接部を形成する工程と、
多層溶接を前記第1開先部に施し、第3溶接部を形成する工程と、
前記第2開先部内の溶接金属が前記鋼板の表面を超えるまで、高入熱の一層溶接を前記第2開先部に対して施し、第2溶接部を形成する工程と、を含むことを特徴とするサブマージアーク溶接方法。 - 前記接合部は、前記第1開先部が管状に成形された前記鋼板の外面に形成され、前記第2開先部が当該鋼板の内面に形成される、
ことを特徴とする請求項6に記載のサブマージアーク溶接方法。 - 前記接合部は、ルートフェイスが2〜15mmである、
ことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のサブマージアーク溶接方法。 - 前記第2溶接部は、前記第1溶接部の少なくとも一部に溶け込むように施されることを特徴とする請求項6〜8の何れか1項に記載のサブマージアーク溶接方法。
- 前記第1溶接部を形成する工程は、前記低入熱が15〜50kJ/cmである、
ことを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載のサブマージアーク溶接方法。 - 前記第2溶接部を形成する工程は、前記高入熱が55〜175kJ/cmである、
ことを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載のサブマージアーク溶接方法。 - 前記第3溶接部を形成する工程は、入熱が30〜175kJ/cmである、
ことを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載のサブマージアーク溶接方法。 - 鋼管を製造する方法において、請求項1〜12の何れか1項に記載のサブマージアーク溶接方法を用いることを特徴とする鋼管を製造する方法。
- 開先形状の接合部が形成され、サブマージアーク溶接方法を用いて前記接合部を両面溶接された溶接継手であって、
鋼板の板厚が40mmを超え、
前記接合部は、一面側の第1開先部内の断面積を他面側の第2開先部内の断面積よりも大きく、前記第1開先部内の溶接金属が複層をなすと共に前記第2開先部内の溶接金属が単層をなし、
前記第2開先部内の溶接金属が前記鋼板の表面を超えている、ことを特徴とする溶接継手。 - 前記第2開先部内の溶接金属は、前記第1開先部内の溶接金属の少なくとも一部に溶け込んでいることを特徴とする請求項14に記載の溶接継手。
- 請求項14又は請求項15に記載の溶接継手を有することを特徴とする鋼管。
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