JP7053567B2 - 活性炭スラリーの供給方法 - Google Patents
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Description
ここで、本発明において、「工程Aの終了前」は、工程A2の後に工程A1が行われる湿式粉砕法においては「工程A1の終了前」(つまり、例えば、後述する活性炭懸濁水中の原料活性炭を粉砕して粉砕活性炭を調製しつつ活性化スラリーを得る前の段階)とすることができる。また、本発明において、「工程Aの終了前」は、工程A1の後に工程A2が行われる乾式粉砕法においては「工程A2の終了前」(つまり、例えば、後述する原料水および粉砕活性炭を含む粉砕活性炭水を混合して活性化スラリーを得る前の段階)とすることができる。
なお、本発明において、原料活性炭および粉砕活性炭の「粒子径」は、レーザー回折散乱法にて測定した粒子径分布(体積基準)において、小径側から計算した累積体積が50%となる体積平均粒子径(D50)を指す。
なお、本発明において、「工程Bの終了までに要する時間」とは、活性炭スラリーを希釈水で希釈することなく被処理水と混合する場合には被処理水との混合地点まで活性炭スラリーを移送するのに要する時間を指し、活性炭スラリーを希釈水と混合してから被処理水と混合する場合には希釈水との混合地点まで活性炭スラリーを移送するのに要する時間を指す。
なお、本発明において、「ランゲリア指数」とは、例えば、Langelier, W. F.著、"The Analytical Control of Anticorrosion Water Treatment”、J.American Water Works、第28巻、1936年発行、p.1500に記載の通り、水中での炭酸カルシウムの飽和度を示す指標である。
そして、本発明において、「ランゲリア指数」は、厚生労働省・水道課公示の方法(水質管理目標設定項目の検査方法-平成15年10月10日付健水発第101001号-別添4)に従って算出することができる。
ここで、本発明の活性炭スラリーの供給方法は、例えば、上水処理、用水処理、下水処理、排水処理などの各種水処理において被処理水を活性炭処理する際に活性炭を供給する方法として使用することができる。なお、本発明の方法で供給する活性炭スラリーは、粉砕活性炭および原料水を含んでおり、活性炭スラリー中に含まれている活性炭の比表面積が大きいので、被処理水の不快臭および不快味などを効率的に低減することができる。従って、本発明の活性炭スラリーの供給方法は、上述した中でも、上水道における活性炭処理といった浄水プロセスに特に好適に使用することができる。
図1(A)に示す乾式粉砕法を取り入れた活性炭スラリーの供給フロー1では、まず、原料活性炭が配管11を通じて粉砕機3に流入される。流入された原料活性炭は粉砕機3中で粉砕され、原料活性炭の粒子径よりも小さな粒子径を有する粉砕活性炭が粉砕機3から流出される<工程A1>。次に、粉砕機3から流出された粉砕活性炭は配管31を通じて混合機2に流入されると共に、原料水も配管12を通じて混合機2に流入され、混合機2中で粉砕活性炭および原料水を含む粉砕活性炭水が得られる。更に、粉砕活性炭水は混合機2中で撹拌などにより良好に混合され、粉砕活性炭および原料水を含む活性炭スラリーが混合機2から流出される<工程A2>。
ここで、図1(A)に示す乾式粉砕法を取り入れた活性炭スラリーの供給フロー1では、通常、上記工程A2の終了(つまり、粉砕活性炭と原料水とを含む粉砕活性炭水の混合が終了して活性炭スラリーが得られること)が「工程Aの終了」に相当する。なお、得られた粉砕活性炭は、粉砕機3および混合機2の間の任意の箇所に設けられた貯留槽(図示せず)に一旦貯留されてもよい。そして、混合機2から流出された活性炭スラリーは、図1(A)に実線で示すように、希釈水と混合されることなく、配管21を通じて被処理水との混合機5まで移送され、被処理水と混合されてもよいし、図1(A)に破線で示すように、配管21を通じて希釈水との混合機4まで移送され、希釈水と混合された後に、更に、配管41を通じて被処理水との混合機5まで移送され、被処理水と混合されてもよい。
ここで、図1(B)に示す湿式粉砕法を取り入れた活性炭スラリーの供給フロー1では、通常、上記工程A1の終了(つまり、活性炭懸濁水中の原料活性炭の粉砕が終了して活性炭スラリーが得られること)が「工程Aの終了」に相当する。なお、得られた活性炭懸濁水は、混合機2および粉砕機3の間の任意の箇所に設けられた貯留槽20(図3(B)参照)に一旦貯留されてもよい。そして、粉砕機3から流出された活性炭スラリーは、図1(B)に実線で示すように、希釈水と混合されることなく、配管31を通じて被処理水との混合機5まで移送され、被処理水と混合されてもよいし、図1(B)に破線で示すように、配管31を通じて希釈水との混合機4まで移送され、希釈水と混合された後に、更に、配管41を通じて被処理水との混合機5まで移送され、被処理水と混合されてもよい。
<工程A>
図1には、活性炭スラリーの供給フローにおける工程Aの範囲を示す。工程Aでは、粉砕活性炭および原料水を含む活性炭スラリーを得る。また、工程Aでは、活性炭スラリーを得るにあたり、粉砕活性炭を調製する工程A1、並びに、原料活性炭または粉砕活性炭と原料水とを混合する工程A2を順不同で有する。例えば、乾式粉砕法を取り入れて活性炭スラリーを得る場合には、図1(A)に示すように、工程A1を乾式で行った後に工程A2を行うことができる。また、湿式粉砕法を取り入れて活性炭スラリーを得る場合には、図1(B)に示すように、工程A2の後に工程A1を湿式で行うことができる。
ここで、原料活性炭が微粉化された粉砕活性炭は被処理水と大きな比表面積で接触できるため、高い吸着効果を奏することができる。また、原料活性炭を粉砕することにより、比較的粒子径が大きく安価な一般市販品の原料活性炭を少量用いた場合であっても十分な吸着効果が得られるため、コスト低減を図ることができる。更には、例えば、乾式粉砕法を取り入れて活性炭スラリーを得れば、粉砕活性炭の粒度分布および活性炭スラリーの濃度などを容易に制御し易い。一方、例えば、湿式粉砕法を取り入れて活性炭スラリーを得れば、粉塵の発生を抑制して作業環境を良好にしたり、粉砕活性炭の二次凝集を抑制しつつ良好に分散した活性炭スラリーを容易に得たりし易い。
工程A1では、原料活性炭を粉砕機で粉砕して原料活性炭の粒子径よりも小さな粒子径を有する粉砕活性炭を調製する。ここで、図1(A)に示すように、乾式粉砕法にて粉砕活性炭を調製する場合は、工程A1では、乾燥状態の原料活性炭を単独で粉砕機3中で粉砕することができる。また、図1(B)に示すように、湿式粉砕法にて粉砕活性炭を調製する場合は、工程A1では、原料活性炭および原料水が混合された活性炭懸濁水に含まれている原料活性炭を、湿式環境下で、粉砕機3中で粉砕することができる。
原料活性炭としては、特に制限されず、例えば、ヤシ穀炭、石炭、オガ屑、木材チップ等の炭素物質を出発材料とし、塩化亜鉛、燐酸等による化学的賦活処理、または水蒸気、二酸化炭素、空気、燃焼ガス等による物理的賦活処理を施して得られる一般的な活性炭を挙げることができる。
上記一般的な活性炭は、通常、多孔質構造を有する無定形炭素の一種であり、繊維状、ハニカム状、円柱状、破砕状、粒状(粒子径150μm以上)、粉末状(粒子径150μm未満)等、任意の形状を有する。また、一般的な活性炭が有する細孔は細孔径によりミクロ孔、メソ孔、マクロ孔に分類され、例えば、20Å以下の細孔径はミクロ孔、20Å超500Å未満の細孔径はメソ孔、500Å以上の細孔径はマクロ孔と呼ばれている。加えて、一般的な活性炭が有する比表面積は500m2/g以上2500m2/g以下である。
そして、原料活性炭としては、市販されている活性炭を用いることもできる。中でも、工程Aにて原料活性炭を良好に粉砕する観点からは、粉末状の活性炭を用いることが好ましい。
粉砕機3としては、原料活性炭を粉状に砕くことが可能な機器であれば特に限定されず、例えば、粉砕メディアとしてビーズ、ボール、ロッドを用いたビーズミル、転動ボールミル、振動ボールミル、アトライターミル、またはジェットミルなどの微粉砕装置を好適例として挙げることができる。
なお、粉砕メディア径、粉砕メディア充填率、粉砕速度、粉砕時間、粉砕温度等の粉砕条件は、所望の活性炭スラリーの性状に応じて適宜選択することができる。
また、工程A2では、原料水および原料活性炭、或いは、原料水および粉砕活性炭を混合機で混合する。ここで、図1(A)に示すように、乾式粉砕法にて粉砕活性炭を調製する場合は、工程A2では、上記工程A1で得られた粉砕活性炭と原料水とを含む粉砕活性炭水を混合機2中で混合することができる。また、図1(B)に示すように、湿式粉砕法にて粉砕活性炭を調製する場合は、工程A2では、原料活性炭および原料水を混合機2中で混合して活性炭懸濁水を得ることができる。
なお、工程A2で使用し得る原料活性炭としては、工程A1の段落で上述したのと同様の原料活性炭を使用することができる。
原料水としては、被処理水が目的の水質に改質されることを阻害しなければ特に制限されることなく、例えば、本発明の供給方法を含む浄化方法により浄化された浄化処理水、本発明の供給方法を含む浄化方法により浄化されている途中の処理水、水道水、工業用水、精製水、被処理水そのもの等を用いることができる。
混合機2としては、特に限定されず、例えば、ミキサー等の既知の混合機を挙げることができる。また、混合時間、混合温度などの各種混合条件は、所望の活性炭スラリーの性状に応じて適宜選択することができる。
そして、工程Aで得られる活性炭スラリーの活性炭濃度は、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。活性炭スラリーの活性炭濃度が上記上限超であると、活性炭スラリーの粘性が高まり、ポンプ送液の困難化、配管の詰まりなどが生じ得るからである。加えて、活性炭スラリーの活性炭濃度が上記上限超の場合は、通常、活性炭懸濁水の粘性も高まるため、例えば、活性炭懸濁水中の原料活性炭の粉砕が困難となるからである。また、活性炭スラリーの活性炭濃度が上記下限未満であると、水処理の際の活性炭スラリーの添加量が多くなるため、活性炭スラリーの添加設備が大型化すること、当該添加設備で送液可能な上限量を超えることなどの事態を招き得るからである。
工程Bでは、工程Aで得られた活性炭スラリーを、希釈水との混合地点または被処理水との混合地点まで移送する。より具体的な例としては、工程Bでは、例えば、図1(A)および(B)に実線で示すように、混合機2または粉砕機3から流出した活性炭スラリーを被処理水との混合地点(混合機5)まで直接移送してもよく、図1(A)および(B)に破線で示すように、混合機2または粉砕機3から流出した活性炭スラリーを希釈水との混合地点(混合機4)まで移送し、活性炭スラリーを希釈水で希釈した後に、更に、混合機4から流出した活性炭スラリーを被処理水との混合地点(混合機5)まで移送してもよい。なお、工程Bでは、例えば、活性炭スラリーおよび希釈水を混合する混合機4を、配管を通じることなく混合機2または粉砕機3と直接連結させることにより、活性炭スラリーを得た直後に希釈してもよい(図示せず)。
なお、被処理水および活性炭スラリーの混合割合、混合温度等の混合条件は、水処理によって得たい所望の水質、性状により適宜設定することができる。
なお、希釈された活性炭スラリーでは、カルシウム化合物が過飽和状態であっても、飽和状態であっても、未飽和状態であってもよい。
工程Cでは、少なくとも前記工程Aの終了前に酸を添加することを必要とする。換言すれば、工程Cでは、活性炭スラリーからのスケール析出を抑制しながら活性炭スラリーを供給するために、少なくとも工程Aで活性炭スラリーを得る前のいずれかの段階で酸を添加することを必要とする。例えば、図1(A)に示すように、乾式粉砕法を取り入れて活性炭スラリーを得る場合は、工程A2の終了前、即ち、粉砕活性炭および原料水を含む粉砕活性炭水を混合し終えて活性炭スラリーを得る前などの、活性炭スラリーを調製しているいずれかの段階で酸を添加することができる。また、図1(B)に示すように、湿式粉砕法を取り入れて活性炭スラリーを得る場合は、工程A1の終了前、即ち、活性炭懸濁水中の原料活性炭を粉砕活性炭に粉砕し終えて活性炭スラリーを得る前などの、活性炭スラリーを調製しているいずれかの段階で酸を添加することができる。
更に、乾式粉砕法を取り入れる場合において、混合機2に流入される前の原料水に酸を添加する具体的なタイミングとしては、図2(A)に示すように、(a)予め原料水に酸を添加してもよく、(b)配管12を通じて混合機2に移送中の原料水に酸を添加してもよい。
また、乾式粉砕法を取り入れる場合において、粉砕活性炭および原料水を含む粉砕活性炭水に酸を添加する具体的なタイミングとしては、図3(A)に示すように、混合機2中で粉砕活性炭と原料水とが撹拌、混合される前の粉砕活性炭水、および/または、撹拌、混合されている最中の粉砕活性炭水に対して酸を添加することができる。
中でも、上述した理由から、乾式粉砕法を取り入れる場合においては、少なくとも、図2(A)(a)予め原料水に酸を添加すること、または(b)配管12を通じて混合機2に移送中の原料水に酸を添加することが好ましい。
また、湿式粉砕法を取り入れる場合において、粉砕機3に流入する前の活性炭懸濁水に酸を添加するタイミングとしては、図3(B)に示すように、(a)および(c)配管21を通じて粉砕機3へと移送中の活性炭懸濁水に酸を添加してもよく、(b)活性炭懸濁水を混合機2および粉砕機3の間の任意の箇所に設けられた貯留槽20で一旦貯留し、当該貯留している活性炭懸濁水に酸を添加してもよい。これらは、何れのタイミングで酸を添加してもよく、上述した複数のタイミングを組み合わせて(連続して)酸を添加してもよい。
更に、湿式粉砕法を取り入れる場合において、粉砕機3中の活性炭懸濁水に酸を添加するタイミングとしては、図4に示すように、粉砕機3中にて活性炭懸濁水中の原料活性炭を粉砕活性炭に粉砕している間、が挙げられる。
酸は、酸を添加された原料水、粉砕活性炭水および/または活性炭懸濁水のpHを、添加前と比較して酸性側に調節することができれば特に限定されることない。原料水、粉砕活性炭水および活性炭懸濁水中に添加するハンドリング性の観点からは、酸としては気体または液体が好ましく、例えば、二酸化炭素、硫酸、硝酸、塩酸等が挙げられる。中でも、例えば、活性炭スラリーの供給に使用する金属配管等の腐食を抑制する観点からは、酸としては二酸化炭素または硫酸であることがより好ましい。更に、例えば、活性炭スラリーを飲み水等の浄水処理用に好適に用いることができる観点からは、酸としては二酸化炭素であることが更に好ましい。
CaCO3+H++H2O → Ca2++HCO3 -+H2O ・・・(1)
に従い、水中に溶解する。よって、活性炭スラリーに酸を含有させるほど、活性炭スラリー中の炭酸カルシウムの溶解度が高まり、スケール析出を抑制し易い。
従って、粉砕活性炭から水中に大量のカルシウム化合物が溶出する場合であっても、工程Cにおいて、上記所定のタイミングで酸を添加すれば、活性炭スラリーからのスケール析出を抑制し易くできる。つまり、粉砕活性炭から原料水、粉砕活性炭水および/または活性炭懸濁水中に大量のカルシウム化合物が溶出して、活性炭スラリー中の炭酸カルシウム等のカルシウム化合物が過飽和状態となっても、活性炭スラリーからのスケール析出を生じ難くすることができる。
CaCO3+CO2+H2O → Ca(HCO3)2 ・・・(2)
に従い、炭酸水素カルシウム(Ca(HCO3)2)として水中に溶解する。よって、活性炭スラリーに二酸化炭素を含有させるほど、活性炭スラリーにおけるスケール析出を抑制し易い。
従って、粉砕活性炭から原料水、粉砕活性炭水および/または活性炭懸濁水中に大量のカルシウム化合物が溶出する場合であっても、工程Cにおいて上述した所定のタイミングで二酸化炭素を添加すれば、活性炭スラリーからのスケール析出を抑制し易くできる。このように、工程Cにおいて上述した所定のタイミングで二酸化炭素を添加すれば、スケール析出を良好に抑制しながら、活性炭スラリーを浄水プロセス等に良好に供給することができる。
なお、本発明において、例えば、後述する手法により酸の添加量を予め定めた場合には、通常、活性炭スラリーの供給プロセスの途中で酸の添加量を調節、変更することなく、一定の設定値で連続稼働することができるため、作業性に優れる。
本発明の活性炭スラリーの供給方法は、上述した工程Cにおける酸の添加量を所定の方法で決定する工程Dを更に含むことが好ましい。具体的には、本発明の活性炭スラリーの供給方法は、後述する工程D1および工程D2を経て、所定の工程に要する時間および所定の待ち時間を考慮することにより、工程Cにおける酸の添加量を決定することが好ましい。本発明の活性炭スラリーの供給方法では、特に、原料活性炭が粉砕されて粒子径が小さくなった粉砕活性炭と原料水とが接触することに起因して、活性炭スラリー中のカルシウム濃度が顕著に高まり易いところ、所定の方法に従って定めた範囲の量の酸を添加すれば、活性炭スラリーからカルシウム化合物の析出が開始するまでの待ち時間を利用して活性炭スラリーからのスケール析出をより良好に抑制することができるからである。
まず、工程D1では、上述した工程A1または工程A2のいずれか後の工程の開始から工程Bの終了までに要する時間(以下、「時間TR」または「TR」と称することがある。)を求める。ここで、図1(A)に示す乾式粉砕法を取り入れた場合においては、時間TRは、工程A2(粉砕活性炭水の混合などの、粉砕活性炭および原料水の混合)の開始から工程Bの終了までに要する時間である。また、図1(B)に示す湿式粉砕法を取り入れた場合においては、時間TRは、工程A1(活性炭懸濁水中の原料活性炭の粉砕)の開始から工程Bの終了までに要する時間である。そして、当該時間TRは、例えば、図1(A)および(B)に示す活性炭スラリーの供給フロー1において、カルシウム化合物が最も析出しやすい区間の所要時間である。
次に、工程D2では、活性炭スラリーに含有させる酸の量(即ち、工程Cで添加する酸の量)と、活性炭スラリーからカルシウム化合物の析出が開始するまでの待ち時間(以下、「待ち時間TS」または「TS」と称することがある。)との関係に基づき、当該待ち時間TSが工程D1で求めた時間TRを超える(TS>TR)ために必要な酸の量を工程Cにおける酸の添加量として決定する。このように、TS>TRとすれば、活性炭スラリーを供給するに際に、被処理水または希釈水との混合地点までの間にスケールが発生するのを確実に抑制することができる。
ここで、上述した通り、通常、酸の添加量が増すほど、活性炭スラリー中に溶解し得るカルシウム濃度は増大する。つまり、酸の添加量が増すほど待ち時間TSは長くなる傾向にある。従って、工程Dに従えば、工程Cにおいて添加する酸の好適最小量を決定することができる。
ここで、活性炭スラリーに含有させる酸の量と、活性炭スラリーからカルシウム化合物の析出が開始するまでの待ち時間TSとの関係は、作業コストおよび作業の簡便性の観点から、活性炭スラリーの供給プロセスを行う前に、例えば以下の方法を用いて実験室レベルで求めておくことができる。なお、以下に示す方法は一例であり、本発明はこれに限定されない。
即ち、具体的には、まず、原料活性炭が含有するカルシウム濃度を測定する。ここで、原料活性炭が含有するカルシウム濃度は、例えば、温度600℃で強熱した原料活性炭の灰分を塩酸または硝酸などの酸で溶解させた試料を、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)を用いて分析し、原料活性炭が含有するカルシウム化合物の量を算出することで測定できる。次に、測定した原料活性炭中のカルシウム化合物の量、並びに、実際の活性炭スラリーの供給プロセスにて使用する原料活性炭および原料水の配合割合に基づき、投入された原料活性炭に含有されるカルシウム化合物が全て原料水中に溶解したと仮定したときの、活性炭スラリー中のカルシウム濃度を算出する。そして、上述で算出したカルシウム濃度となるよう、塩化カルシウム等のカルシウム塩を実際の供給方法で用いる原料水中に溶解させる。なお、塩化カルシウムを溶解させる際には、得られるカルシウム水溶液が実際の供給方法で使用する活性炭スラリーのアルカリ度と同等のアルカリ度を有するよう、炭酸水素ナトリウムを更に溶解させて調節することができる。
ここで、本発明において、「アルカリ度」とは、活性炭スラリーに含まれ得る炭酸(H2CO3)、炭酸イオン(CO3 2-)、炭酸水素イオン(HCO3 -)、水酸化物イオン(OH-)の合計量を炭酸カルシウム(CaCO3)の量に換算した値(mg/L)」であり、滴定法によって求めることができる。また、得られるカルシウム水溶液のpHは、所望のpHに合わせて水酸化ナトリウムおよび/または硫酸を添加して調節することができる。更に、カルシウム水溶液を調製する際の温度は、実際の活性炭スラリーの供給プロセス温度に合わせればよい。
なお、上記のように、実験室レベルで求めたカルシウム水溶液中にカルシウム化合物が析出し始めるまでの時間TS’を、実際の供給プロセスにおける活性炭スラリーからカルシウム化合物の析出が開始するまでの待ち時間TSとして使用することができる。
次に、活性炭スラリーに含有させる酸の量と、活性炭スラリーからカルシウム化合物の析出が開始するまでの待ち時間TSとの関係に基づき、待ち時間TSが工程D1で求めた時間TRを超える(TS>TR)酸の量を工程Cにおける酸の添加量として決定する。具体的な一例としては、上述で得られた酸の量とTSとの関係から、TS=TRとなるときに活性炭スラリーに含有される酸の量(酸の量MIN)を求める。なお、当該酸の量MINは、TS=TRとなるときに活性炭スラリーが示すpH(pHMAX)として求めてもよい。そして、酸の量MIN超、または、pHMAX未満とするのに必要な任意の酸の量を、工程Cにおける酸の添加量として決定することができる。このように、TS>TRとすれば、活性炭スラリーを供給するにあたり、被処理水または希釈水との混合地点までの間にスケールが発生するのを確実に抑制することができる。
原料活性炭および原料水が混合された活性炭懸濁水中の原料活性炭を粉砕機(湿式ビーズミル)で粉砕して得た活性炭スラリーを、上水処理システム中を流れる被処理水と混合する地点まで移送する活性炭スラリーの連続供給システムにおいて、粉砕機中の活性炭懸濁水に対して二酸化炭素を吹き込んだ。具体的には、活性炭スラリーのpHが低下しなくなる(活性炭スラリーに含まれる粉砕活性炭1kgあたりの二酸化炭素量が15ノルマルLとなる)時点まで、2.0ノルマルL/分の速度で、二酸化炭素の吹き込みを続けた。次に、粉砕機中の活性炭懸濁水に対して硫酸を添加して、活性炭スラリーのランゲリア指数が0となるpH(6.3)にまで調整した。
そして、連続供給システムでの運用1ヵ月後に配管中のスケール析出の有無を目視で確認したところ、スケールは確認されなかった。
なお、原料活性炭としては、市販の上水処理用粉末活性炭(平均粒子径15μm)を用い、原料水としては水道水を用いた。
温度600℃下で2時間強熱した原料活性炭に硝酸を加えることにより、原料活性炭に含有される成分を溶解させた試料液を調製した。次に、得られた試料液について、ICP-MSを用いて、原料活性炭に含有されているカルシウム濃度を測定した。測定された原料活性炭中のカルシウム濃度は2.9g/kgであった。そして、測定したカルシウム濃度、並びに、実際の連続供給システムで用いる原料活性炭および原料水の配合割合から、活性炭スラリー中に存在し得るカルシウム化合物の最大濃度を理論的に算出した。そして、溶質としての塩化カルシウムおよび溶媒としての水道水(原料水)を用いて、カルシウム濃度が上記最大濃度となるようにカルシウム水溶液を調製した。
次に、得られたカルシウム水溶液中に、活性炭スラリーのアルカリ度と同等のアルカリ度を有するよう、炭酸水素ナトリウムを添加した。更に、調整するpHに合わせて、水酸化ナトリウム水溶液または硫酸を添加することにより、カルシウム水溶液のpHを6.0~9.0の範囲で0.1ずつそれぞれ調整した。その後、各カルシウム水溶液において、pHの調整時点からカルシウム化合物が析出し始める時点までの待ち時間TS’を計測した。なお、カルシウム化合物が析出し始める時点は、カルシウム水溶液をろ紙(グレード:GF/B)によりろ過し、滴定法により測定したろ液のカルシウム濃度が1%超低下した時点とした。
そして、調製したpHをx軸に、当該pHに対応する待ち時間TS’をy軸にプロットすることにより、カルシウム水溶液についてのpH-待ち時間TS’の関係を示すグラフを得た。得られたグラフは、pHが小さくなるにつれて待ち時間TS’が指数関数的に増大するグラフであった。
続いて、得られたグラフにおいて、y軸が、上記連続供給システムにおける原料活性炭の粉砕開始(活性炭懸濁水の粉砕機への流入時点)から、活性炭スラリーを被処理水との混合地点へと移送するまでに要する時間TR=5時間となるときのpH’=7.3を確認した。また、上述の厚生労働省による方法に従って、活性炭スラリーのランゲリア指数をゼロとするために必要なpH’’=6.3と算出した。
そして、活性炭スラリーのpHが、上記pH’’以上pH’未満、つまり6.3以上7.3未満の範囲内である、pH=7.0となるよう、二酸化炭素を、0.5ノルマルL/分の速度で、活性炭スラリーに含まれる粉砕活性炭1kgあたりの二酸化炭素の量が6ノルマルLとなるように吹き込んだ以外は実施例1と同様にして、活性炭スラリーを連続供給した。なお、このとき、活性炭スラリー中の炭酸カルシウムは過飽和状態であった。
そして、実施例1と同様にして配管中のスケール析出の有無を目視で確認したところ、スケールは確認されなかった。これにより、実施例2では、実施例1よりも少量の酸を添加して、スケール析出をより効率的に防止することができた。
上記連続供給システムにおいて、二酸化炭素を吹き込まなかった以外は実施例1と同様にして、活性炭スラリーを連続供給した。
そして、実施例1と同様にして配管中のスケール析出の有無を目視で確認したところ、スケール析出が確認された。
上記連続供給システムにおいて、二酸化炭素を、原料水、粉砕機に流入する前の活性炭懸濁水および粉砕機中の活性炭懸濁水の何れに対しても吹き込まず、得られた活性炭スラリーに対してのみ吹き込んだ以外は実施例1と同様にして、活性炭スラリーを連続供給した。
そして、実施例1と同様にして配管中のスケール析出の有無を目視で確認したところ、スケール析出が確認された。
上記連続供給システムにおいて、活性炭懸濁水中の原料活性炭を粉砕することなく(つまり、活性炭スラリーを得ることなく)、また、二酸化炭素を吹き込むことなく、原料活性炭と水とを含む活性炭懸濁水をそのまま供給した。
そして、実施例1と同様にして配管中のスケール析出の有無を目視で確認したところ、スケールは確認されなかった。
2 混合機
3 粉砕機
4 希釈水との混合機
5 被処理水との混合機
11,12,21,31,41 配管
20 貯留槽
Claims (6)
- 体積平均粒子径が10μm以下である粉砕活性炭および原料水を含む活性炭スラリーを得る工程Aと、前記活性炭スラリーを希釈水との混合地点または被処理水との混合地点まで移送する工程Bと、を含む活性炭スラリーの供給方法であって、
前記工程Aは、原料活性炭を粉砕機で粉砕して前記原料活性炭の粒子径よりも小さな粒子径を有する前記粉砕活性炭を調製する工程A1と、前記原料水および前記原料活性炭、或いは、前記原料水および前記粉砕活性炭を混合機で混合する工程A2と、を順不同で有し、
前記工程Aにおいて前記粉砕活性炭と接触する前の前記原料水に対し酸を添加する工程Cを更に含むことを特徴とする、活性炭スラリーの供給方法。 - 前記工程Cにおける酸の添加量を決定する工程Dを更に含み、
前記工程Dは、前記工程A1または前記工程A2のいずれか後の工程の開始から前記工程Bの終了までに要する時間を求める工程D1と、活性炭スラリーに含有させる酸の量および活性炭スラリーからカルシウム化合物の析出が開始するまでの待ち時間の関係に基づき、前記待ち時間が前記工程D1で求めた時間超になる酸の量を前記工程Cにおける酸の添加量として決定する工程D2と、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の活性炭スラリーの供給方法。 - 前記工程D2で決定する酸の添加量が、活性炭スラリーのランゲリア指数をゼロとするために必要な酸の量以下であることを特徴とする、請求項2に記載の活性炭スラリーの供給方法。
- 前記工程Aでは前記工程A1の後に前記工程A2を行い、
前記工程A2では、前記工程A1で得られた粉砕活性炭および前記原料水を含む粉砕活性炭水を混合機で混合して前記活性炭スラリーを得、
前記工程Cでは、前記混合機に流入する前の前記原料水に前記酸を添加することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の活性炭スラリーの供給方法。 - 前記工程Aでは前記工程A2の後に前記工程A1を行い、
前記工程A1では、前記原料活性炭および前記原料水が混合された活性炭懸濁水中の原料活性炭を粉砕機で粉砕して前記活性炭スラリーを得ることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の活性炭スラリーの供給方法。 - 前記酸が二酸化炭素または硫酸であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の活性炭スラリーの供給方法。
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