以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1に示されるように、走行レール1は、第1レール11及び第2レール21と、中間レール31と、第1付勢部材41と、を備えている。走行レール1は、例えば水平面に沿って延在する走行路2を構成しており、第1レール11、中間レール31及び第2レール21は、走行路2の一部を構成している。走行レール1は、例えば、クリーンルーム等に設置された天井搬送車システム(走行車システム)が備えるものである。その場合には、懸垂された無人搬送車50(図2参照)が走行レール1に沿って走行する。
以下の説明では、走行車である無人搬送車50の走行方向を「X方向」、水平面に平行且つX方向に垂直な方向を「Y方向」、鉛直方向を「Z方向」という。また、X方向における一方の側(図1においてX軸の矢印が指す側)を「X方向正側」、X方向における他方の側(図1においてX軸の矢印が指す側とは反対側)を「X方向負側」、Y方向における一方の側(図1においてY軸の矢印が指す側)を「Y方向正側」、Y方向における他方の側(図1においてY軸の矢印が指す側とは反対側)を「Y方向負側」、Z方向における上側を単に「上側」、Z方向における下側を単に「下側」という。
第1レール11は、中間領域R1のX方向正側に走行路2に沿って配置されている。第2レール21は、中間領域R1のX方向負側に走行路2に沿って配置されている。中間レール31は、第1レール11及び第2レール21の間の中間領域R1に走行路2に沿って配置されている。中間レール31は、第1レール11及び第2レール21と連通するように中間領域R1に設けられている。
中間レール31は、支持体40に支持されており、中間領域R1からX方向に対して斜め方向にずれた退避領域R2に退避可能である。退避領域R2は、中間領域R1に対してX方向負側且つY方向負側に位置している。中間レール31は、支持体40に設けられた第1付勢部材41により、中間領域R1から退避領域R2に向かう退避方向に付勢されている。第1付勢部材41は、例えば、中間レール31と支持体40とに掛け渡された引張コイルである。なお、第1付勢部材41は、中間レール31に接続されたワイヤと、当該ワイヤにより吊り下げられた錘と、を含むものであってもよい。
一具体例として、第1レール11は、第1建屋3(図1において一点鎖線のX方向正側)の天井に取り付けられており、第2レール21及び支持体40は、第2建屋4(図1において一点鎖線のX方向負側)の天井に取り付けられている。第1建屋3及び第2建屋4は、隣接しており、非常時には、防火用のシャッタ7(図6参照)が進出することで、第1建屋3及び第2建屋4の間で走行路2が遮られる。
図2に示されるように、第1レール11は、例えば矩形管状を呈している。第1レール11における下側の壁部には、X方向に延在する間隙が形成されている。第1レール11の下側には、一対の給電スペース5,6が設けられている。
無人搬送車50は、走行駆動部51と、受電部52と、物品保持部53と、を有している。走行駆動部51は、第1レール11内を走行する。物品保持部53は、第1レール11に形成された間隙及び一対の給電スペース5,6間の間隙を介して、走行駆動部51に懸垂されている。物品保持部53は、搬送対象の物品を保持する。受電部52は、一対の給電スペース5,6間の間隙に配置されるように、走行駆動部51及び物品保持部53の間に設けられている。受電部52は、一対の給電スペース5,6から電力の供給を受ける。なお、給電方式は、非接触給電であってもよいし、或いは、接触給電であってもよい。
図1に示されるように、第2レール21及び中間レール31は、第1レール11と同様に、例えば矩形管状を呈しており、それぞれにおける下側の壁部には、X方向に延在する間隙が形成されている。第2レール21及び中間レール31のそれぞれの下側には、第1レール11と同様に、一対の給電スペース5,6が設けられている。これにより、中間領域R1に中間レール31が位置している場合には、第1レール11、中間レール31及び第2レール21が連続すると共に、それぞれの下側に設けられた一対の給電スペース5,6が連続し、無人搬送車50が走行路2に沿って走行可能となる。
図3に示されるように、第1レール11は、本体部11aと、端部11bと、を有している。端部11bは、本体部11aのX方向負側に配置されている。本体部11aの上面のうちX方向負側の外縁領域には、ブラケット13が固定されている。ブラケット13には、X方向を長手方向とする長穴13aが形成されている。端部11bの上面のうちX方向正側の外縁領域には、Z方向に延在する軸14が固定されている。端部11bは、ブラケット13の長穴13aに軸14が係合されることで、本体部11aに取り付けられ、本体部11aに対して、X方向に移動可能となると共に例えば水平面に沿って揺動可能となっている。
第1レール11の端部11bにおけるX方向負側の端面11cは、X方向に垂直な面である。第2レール21におけるX方向正側の端面21aは、Y方向負側の位置ほどX方向負側に位置するように傾斜した面である。中間レール31におけるX方向正側の端面31aは、X方向に垂直な面である。中間レール31におけるX方向負側の端面31bは、Y方向負側の位置ほどX方向負側に位置するように傾斜した面である。中間領域R1に中間レール31が位置している場合に、中間レール31の端面31aは、隙間を介して第1レール11の端面11cと向かい合っており、中間レール31の端面31bは、隙間を介して第2レール21の端面21aと向かい合っている。
走行レール1は、第1レール11と中間レール31とを連結する連結具10と、第2付勢部材33と、を備えている。連結具10は、第1磁石12と、第1吸着部材32と、を有している。走行レール1は、第2磁石22と、第2吸着部材34と、を更に備えている。
第1磁石12は、支持部材15を介して、第1レール11の端部11bに設けられている。支持部材15は、端部11bの上面のうちX方向負側の外縁領域に立設されている。支持部材15は、端部11bに形成された一対の長穴16に一対の軸17がそれぞれ係合されることで、端部11bに対して、X方向に移動可能となっている。これにより、第1磁石12は、端部11bに対して、X方向に移動可能となっている。第1磁石12は、Y方向負側に向くように支持部材15に取り付けられている。
第1吸着部材32は、中間レール31に設けられている。第1吸着部材32は、中間領域R1に中間レール31が位置している場合に、第1磁石12に吸着させられている。第1吸着部材32は、中間レール31の上面のうちX方向正側の外縁領域に設けられた軸35に支持されている。これにより、第1吸着部材32は、中間レール31に対して、例えばZ方向に延在する軸線回りに回動可能となっている。
第2付勢部材33は、中間レール31に設けられている。第2付勢部材33は、例えば、中間レール31と第1吸着部材32とに掛け渡された引張コイルである。第2付勢部材33は、第1磁石12と第1吸着部材32とが離間する方向に付勢する部材である。なお、第1吸着部材32が第1磁石12から離間する方向に回動した場合、ストッパ36に第1吸着部材32が接触することで、それ以上の回動が停止される。ストッパ36は、中間レール31の上面のうちX方向正側の外縁領域に立設されている。
第2磁石22は、支持部材23を介して、第2レール21に設けられている。支持部材23は、第2レール21の上面のうちX方向正側の外縁領域に立設されている。第2磁石22は、X方向負側且つY方向負側(すなわち、中間領域R1に対して退避領域R2が位置する側)に向くように支持部材23に取り付けられている。
第2吸着部材34は、中間レール31に設けられている。第2吸着部材34は、中間領域R1に中間レール31が位置している場合に、第2磁石22に吸着させられている。第2磁石22及び第2吸着部材24が互いに対向する方向は、第1磁石12及び第1吸着部材32が互いに対向する方向と交差している。
第1磁石12は、磁力を低下させることが可能であり、磁力が低下させられると、第1磁石12による第1吸着部材32の吸着が解除される。言い換えれば、第1磁石12は、第1吸着部材32を吸着する磁力を有する状態(以下、第1磁石12について「吸着状態」という)と、磁力が低下させられて第1吸着部材32の吸着が解除される状態(以下、第1磁石12について「吸着解除状態」という)とを切り替え可能である。本実施形態のシステムでは、第1磁石12の吸着状態と吸着解除状態とが制御部により切り替えられる。例えば、第1磁石12は、永久磁石により構成されている。また、第1磁石12は、通電を行うことにより第1磁石12の磁力を打ち消す方向の磁力を発生させるコイルを有する電気配線を備えている。その場合、制御部は、第1磁石12に対して電気配線による通電を行わない(遮断する)ことで第1磁石12を吸着状態とし、第1磁石12に対して電気配線による通電を行うことで第1磁石12を吸着解除状態とする。
第1磁石12は、吸着状態では、第2付勢部材33の付勢力により第1吸着部材32が第1磁石12から離間しない最小磁力以上の磁力を有している。言い換えれば、吸着状態では、第1磁石12と第1吸着部材32との吸着力が、第2付勢部材33が第1磁石12と第1吸着部材32とを引き離す力よりも大きい。その一方で、第1磁石12は、吸着解除状態では、第2付勢部材33の付勢力により第1吸着部材32が第1磁石12から離間する最大磁力以下の磁力(0の場合を含む)を有している。
第2磁石22は、磁力を低下させることが可能であり、磁力が低下させられると、第2磁石22による第2吸着部材34の吸着が解除される。言い換えれば、第2磁石22は、第2吸着部材34を吸着する磁力を有する状態(以下、第2磁石22について「吸着状態」という)と、磁力が低下させられて第2吸着部材34の吸着が解除される状態(以下、第2磁石22について「吸着解除状態」という)とを切り替え可能である。本実施形態のシステムでは、第2磁石22の吸着状態と吸着解除状態とが制御部により切り替えられる。例えば、第2磁石22は、永久磁石により構成されている。その場合、制御部は、第2磁石22に対して電気配線による通電を行わない(遮断する)ことで第2磁石22を吸着状態とし、第2磁石22に対して電気配線による通電を行うことで第2磁石22を吸着解除状態とする。
第2磁石22は、吸着状態では、第1付勢部材41の付勢力により第2吸着部材34が第2磁石22から離間しない最小磁力以上の磁力を有している。言い換えれば、吸着状態では、第2磁石22と第2吸着部材34との吸着力が、第1付勢部材41が第2磁石22と第2吸着部材34とを引き離す力よりも大きい。その一方で、第2磁石22は、吸着解除状態では、第1付勢部材41の付勢力により第2吸着部材34が第2磁石22から離間する最大磁力以下の磁力(0の場合を含む)を有している。
以上説明したように、走行レール1では、第1磁石12及び第1吸着部材32が第1レール11及び中間レール31にそれぞれ設けられており、中間領域R1に中間レール31が位置している場合に、吸着状態の第1磁石12に第1吸着部材32が吸着させられることで、第1レール11に中間レール31が連結される。更に、第2磁石22及び第2吸着部材34が第2レール21及び中間レール31にそれぞれ設けられており、中間領域R1に中間レール31が位置している場合に、吸着状態の第2磁石22に第2吸着部材34が吸着させられることで、第2レール21に中間レール31が連結される。
そして、第1吸着部材32が、中間レール31に対して回動可能である。更に、第1レール11の端部11bが、第1レール11の本体部11aに対して揺動可能である。これにより、図4に示されるように、中間領域R1に中間レール31が位置している場合に、第1レール11及び第2レール21の間の位置関係に例えば水平面に沿ったずれが生じたとしても、そのずれを吸収するように第1吸着部材32が回動し且つ第1レール11の端部11bが揺動する。したがって、通常時には、第1レール11及び第2レール21の間の中間領域R1に中間レール31が安定して保持される。
また、第1磁石12が、第1レール11の端部11bに対してX方向に移動可能である。更に、第1レール11の端部11bが、第1レール11の本体部11aに対してX方向に移動可能である。これにより、中間領域R1に中間レール31が位置している場合に、第1レール11及び第2レール21の間の位置関係にX方向に沿ったずれが生じたとしても、そのずれを吸収するように第1磁石12及び第1レール11の端部11bが移動する。したがって、通常時には、第1レール11及び第2レール21の間の中間領域R1に中間レール31が安定して保持される。
また、第1磁石12と第1吸着部材32とが、X方向に沿った吸着面で相互に吸着している。これにより、第1磁石12と第1吸着部材32との吸着位置がX方向にずれたとしても、第1磁石12と第1吸着部材32との吸着面の面接触が維持され、第1磁石12と第1吸着部材32との吸着力の低下が抑制される。
また、非常時には、例えば、制御部が第1磁石12に対して電気配線による通電を行うことで、第1磁石12を吸着解除状態とする。第1磁石12が吸着解除状態とされると、図5に示されるように、第2付勢部材33の付勢力により第1吸着部材32が回動し、第1磁石12から第1吸着部材32が離間して、第1レール11と中間レール31との連結が解除される。このとき、第1磁石12が吸着状態に戻されたとしても、第1磁石12及び第1吸着部材32の間に物理的な距離が確保されているため、第1磁石12に第1吸着部材32が再び吸着されることが防止される。続いて、例えば、制御部が第2磁石22に対して電気配線による通電を行うことで、第2磁石22を吸着解除状態とする。第2磁石22が吸着解除状態とされると、図6に示されるように、第1付勢部材41の付勢力により、第2磁石22から第2吸着部材34が離間すると共に中間レール31が退避領域R2に退避させられる。
このように、第1磁石12による第1吸着部材32の吸着が解除され且つ第2磁石22による第2吸着部材34の吸着が解除された場合に、第1付勢部材41の付勢力により中間レール31が退避領域R2に退避させられる。したがって、中間レール31が退避領域R2に不意に退避させられるような事態が防止される。また、まず、第1磁石12による第1吸着部材32の吸着を解除し、その後に、第2磁石22による第2吸着部材34の吸着を解除することで、非常時には、中間レール31が退避領域R2に確実に退避させられる。退避領域R2に中間レール31が退避させられると、例えば、中間領域R1に防火用のシャッタ7が進出し、第1建屋3及び第2建屋4の間で走行路2が遮られる。
仮に、第1磁石12が吸着解除状態とされた際に、第2付勢部材33の付勢力により第1吸着部材32が回動しないと、第1磁石12が吸着状態に戻された場合に、吸着状態の第1磁石12に第1吸着部材32が再び吸着されてしまうため、第1磁石12による第1吸着部材32の吸着の解除、及び第2磁石22による第2吸着部材34の吸着の解除を順次に実施できない。つまり、第1磁石12による第1吸着部材32の吸着の解除、及び第2磁石22による第2吸着部材34の吸着の解除を同時に実施せざるを得ず、大きな電力が必要となる。特に、非常時に非常用の電源を使用する場合には、大電力の消費を避けたい。上述した走行レール1では、第1磁石12が吸着解除状態とされた際に、第2付勢部材33の付勢力により第1吸着部材32が回動するため、大電力の消費を避けることができる。
また、第1磁石12及び第1吸着部材32が互いに対向する方向が、第2磁石22及び第2吸着部材34が互いに対向する方向と交差している。これにより、第1磁石12による第1吸着部材32の吸着が第1付勢部材41の付勢力により不意に解除されるような事態が防止される。
また、第1磁石12が第1レール11に設けられており、第1吸着部材32が中間レール31に回動可能に設けられている。これにより、第1磁石12を吸着状態と吸着解除状態とに切り替えるための電気配線の取り回しが容易となる。同様に、第2磁石22が第2レール21に設けられており、第2吸着部材34が中間レール31に設けられている。これにより、第2磁石22を吸着状態と吸着解除状態とに切り替えるための電気配線の取り回しが容易となる。
本発明は、上述した実施形態に限定されない。例えば、第1レール11の端部11bは、第1レール11の本体部11aに対して揺動可能となっていなくてもよい。その場合にも、第1吸着部材32が、中間レール31に対して回動可能となっていれば、通常時には、第1レール11及び第2レール21の間の中間領域R1に中間レール31が安定して保持される。第1レール11及び第2レール21の間の位置関係にずれが生じたとしても、そのずれを吸収するように第1吸着部材32が回動するからである。
また、第1レール11の端部11bは、第1レール11の本体部11aに対してX方向に移動可能となっていなくてもよい。その場合にも、第1磁石12が、第1レール11の端部11bに対してX方向に移動可能となっていれば、通常時には、第1レール11及び第2レール21の間の中間領域R1に中間レール31が安定して保持される。第1レール11及び第2レール21の間の位置関係にX方向に沿ったずれが生じたとしても、そのずれを吸収するように第1磁石12が移動するからである。
また、第1レール11に第1吸着部材32が設けられ、中間レール31に第1磁石12が設けられてもよい。その場合、第1磁石12が、中間レール31に対して回動可能とされ、第1磁石12が、第1吸着部材32から離間するように第2付勢部材33により付勢される。
また、第1レール11に第1吸着部材32が設けられ、中間レール31に第1磁石12が設けられた場合に、第1吸着部材32が、第1レール11に対してX方向に移動可能とされてもよい。
また、第2レール21に第2吸着部材34が設けられ、中間レール31に第2磁石22が設けられてもよい。
また、第2磁石22及び第2吸着部材34の一方及び他方は、第2レール21及び中間レール31にそれぞれ設けられていなくてもよい。その場合にも、第1磁石12及び第1吸着部材32の一方及び他方が第1レール11及び中間レール31にそれぞれ設けられていれば、第1レール11及び第2レール21の間の中間領域R1に中間レール31が安定して保持される。
また、第1磁石12及び第1吸着部材32の一方が、第1レール11に対して回動可能とされ、第1磁石12及び第1吸着部材32の他方が、中間レール31に対して回動可能とされてもよい。その場合、第1磁石12及び第1吸着部材32の両方が、互いに離間するように付勢されてもよい。
このように、第1磁石12及び第1吸着部材32の他方のみが、中間レール31に対して回動可能である場合に限定されず、第1磁石12及び第1吸着部材32の一方のみが、第1レール11に対して回動可能であってもよいし、或いは、第1磁石12及び第1吸着部材32の一方及び他方が、それぞれ、第1レール11及び中間レール31に対して回動可能であってもよい。
また、第1磁石12は、電磁石により構成されてもよい。その場合、第1磁石12は、電気配線による通電が行われることで吸着状態となり、電気配線による通電が行われない(遮断される)ことで吸着解除状態となる。同様に、第2磁石22は、電磁石により構成されてもよい。その場合、第2磁石22は、電気配線による通電が行われることで吸着状態となり、電気配線による通電が行われない(遮断される)ことで吸着解除状態となる。