以下に、添付図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。なお、以下、同じ部材または要素(あるいは同様の機能を有する部材または要素)については同じ符号を付して説明する。
図1~図10に示す切換ユニットおよびレール構造は、直線状に延び、ランナー(または走行部材)51が走行可能な基準レール1と、この基準レールの端部から複数の方向に分岐して延び、それぞれランナー51が走行可能な3つの分岐レール2,3,4と、前基準レール1および前記3つの分岐レール2,3,4の間の分岐部に介在して、ランナー51の進路を連絡(接続、切換、振替または転換)するために可動な可動レール部材15とを備えている。すなわち、前記3つの分岐レール2,3,4は、可動レール部材15を移動(または位置制御)することより、前記基準レール1とそれぞれ連絡可能であって;直線状に延び、かつ基準位置において連絡可能な所定の分岐レール(基準分岐レールまたは内方分岐レール)3と;この基準分岐レールの両側部にそれぞれ湾曲して配設され、かつ所望の移動位置において連絡可能な2つの分岐レール(移動分岐レールまたは最外分岐レール)2,4とを備えており、ランナー51の進路を前記基準レール1から3方向に分岐可能である。
図1~2および図9~10に示されるように、前記レール[基準レール1および3つの分岐レール(基準分岐レール3および移動分岐レール2,4)]は、それぞれ、アルミニウムまたはその合金などの金属の押出成形により、断面I字状の形態に形成され、長手方向に延びる細幅の支持壁(板状支持壁)5と、この支持壁の両端部(上下部)に形成され、両側部方向に延出して形成された走行壁6(上部走行壁6aおよび下部走行壁6b)と、この走行壁6の上壁面(内壁面)に断面U字状(湾曲した凹状溝)に形成され、かつランナー51の車輪部54が走行可能な走行路7(上部走行路7aおよび下部走行路7b)と、走行壁6の外壁のうち、前記支持壁5との交点部に形成され、長手方向に延びるアリ溝状の溝部(連結孔)8(上部壁溝部8aおよび下部壁溝部8b)とを備えている。なお、この溝部(連結孔)8は、連結ピン(連結部材)9を利用してレール部材とレール本体とを連結するのに利用できる。支持壁5の両側壁には、縦方向に間隔をおいて、長手方向に延びる複数の溝部10が形成されている。具体的には、支持壁5は、走行壁6の基部側が厚肉の断面三角形状に形成された補強傾斜壁部と、これらの補強傾斜壁部を連結する平坦支持壁と、この平坦支持壁の両側壁(両壁面)に、縦方向に等間隔に、長手方向に延びて形成された5つの溝部10とを有している。
このようなレールは、前記複数の溝部10を利用して、長手方向に対して横方向に曲げ加工可能である。そのため、直線状の走行路と屈曲または湾曲した走行路とを組み合わせて複数のステーション[被移送体の交換もしくは積み卸し場、または移動体(または利用者)の目的地]を経由可能なレール構造(移送路または搬送路)を形成でき、ランナー51に接続または連結された被移送体または移動体(または利用者)を所定のステーションに移送または搬送できる。
図1~2および図9に示されるように、前記基準レール1は、基準レール1の長手方向の端部を形成する短尺の直線状の基準レール部材1aと、連結ピン9を利用して、この基準レール部材1aと連結または接続可能で長尺な基準レール本体1bとを備えており、複数の分岐レール2,3,4も、それぞれ複数の分岐レール2,3,4の長手方向の端部を形成する複数の短尺の直線状の分岐レール部材2a,3a,4a(基準分岐レール部材または内方分岐レール部材3aおよび移動分岐レール部材または最外分岐レール部材2a,4a)と、連結ピン9を利用して、短尺の直線状の分岐レール部材2a,3a,4aと連結または接続可能で長尺な複数の分岐レール本体2b,3b,4b(基準分岐レール本体または内方分岐レール本体3bおよび移動分岐レール本体または最外分岐レール本体2b,4b)とを備えている。なお、以下の説明において、基準位置で基準レール(または基準レール部材)と連絡可能な分岐レール(または分岐レール部材)を基準分岐レール(または基準分岐レール部材)、移動位置で基準レール(または基準レール部材)と連絡可能な分岐レール(または分岐レール部材)を移動分岐レール(または移動分岐レール部材)と記載している。
さらに、前記基準レール部材1aと前記複数の分岐レール部材2a,3a,4aとは、それぞれ所定間隔をおいて、天井壁または上部空間に取り付け固定または配置可能な取付プレート11に取り付けられている。すなわち、平板状であり、かつ天井壁などに取り付け可能な取付プレート11には、基準レール部材1aと基準分岐レール部材3aとが間隔をおいて対向して(または軸線を同じくして対峙して)、前記レール部材1a,2a,3a,4aの両側部の鍔状の走行壁6(上部走行壁6a)を、ネジ部材13を用いて挟着固定部材12と取付プレート11とで挟着して取り付けられ、移動分岐レール部材2a,4aは、基準分岐レール部材3aの両側部に間隔をおいて隣接し(平行な形態で隣接し)、前記移動分岐レール部材2a,4aの走行壁6(上部走行壁6a)を、ネジ部材13を用いて挟着固定部材12と取付プレート11とで挟着して取り付けられている。
前記基準レール部材1aと、基準分岐レール部材3aおよび移動分岐レール部材2a,4aとの間の分岐部には、可動レール部材15が配設され、基準レール部材1aとの連絡路が、基準分岐レール部材3aおよび移動分岐レール部材2a,4aのいずれかに振り分けられる。すなわち、前記基準レール部材1aの端部には、可動レール部材15がヒンジピン(ヒンジ部)16によりヒンジ式に回動可能に取り付けられており、基準位置において、この可動レール部材15は、基準レール部材1aと基準分岐レール部材3aとを直線的に連絡し、移動位置において、可動レール部材15は、基準レール部材1aと移動分岐レール部材2a,4aとが連絡可能である。前記可動レール部材15は、ヒンジ部(ヒンジピン)16を中心として、前記基準レール部材1aと、移動分岐レール部材2a,4aとの方向に向く回動範囲(可動範囲または可動域)で回動可能である。
なお、前記可動レール部材15は、前記レール[基準レール1および3つの分岐レール2,3,4]と同様の断面形状を有している。また、この可動レール部材15の回動に対応させて、基準分岐レール部材3aおよび移動分岐レール部材2a,4aの端面(可動レール部材15と対向可能な端面)は、可動レール部材15の回動軌跡に沿った形態で形成されているため、ランナー51が円滑にまたは安定して走行可能である。
より詳細には、図2~3および図6に示されるように、取付プレート11に取り付け可能な可動レール部材15の上端部のうち、長手方向の異なる部位[ヒンジ部16側(基準レール部材1a側)の部位および可動域の広い先端部側(分岐レール部材2a,3a,4a側)の部位]は切り欠かれ、これらの切り欠き部17a,17bを含む前記上端部の前記溝部8(上部壁溝部8a)には、補強軸部材または補強ピン18が嵌入して装着されて可動レール部材15が補強されており、これらの切り欠き部17a,17bでは、補強軸部材または補強ピン18が遊離(または露出)している。すなわち、切り欠き部17a,17bは、前記溝部(連結孔)8(上部壁溝部8a)よりも上部の位置まで刳り抜かれて形成され、補強軸部材または補強ピン18と切り欠き部17a,17bの下部壁との間には、配置空間が形成されている。これらの切り欠き部17a,17bの配置空間には、補強軸部材または補強ピン18を下部から支持した形態で細幅の板状支持部材19(19a,19b)が配設され、この板状支持部材19(19a,19b)の両側部は、ネジ部材20により前記取付プレート11に取り付けまたは固定されている。このような形態では、補強軸部材または補強ピン18を板状支持部材19a,19bにより複数箇所で支持可能なため、切り欠き部17a,17bを形成しても、可動レール部材15を大きく補強できるとともに、板状支持部材19a,19bを補強軸部材または補強ピン18が摺接しつつ、可動レール部材15が回動可能である。
なお、板状支持部材19a,19bは、補強軸部材または補強ピン18(および可動レール部材15)を支持するために、可動域(回動範囲)において可動レール部材15と交差する方向に配置され、この例では、基準位置の可動レール部材15(可動域の中心方向、または基準レール部材1の長さ方向)に対して直交する方向にそれぞれ配置されている。また、可動レール部材15の可動範囲(回動範囲)に対応して、ヒンジ部16側の支持部材19aの長さは、先端部側の支持部材19bの長さよりも小さく形成されている。
図2~3および図6に示されるように、板状支持部材19のうち先端部側の支持部材19bの両側部位(この例では、板状支持部材19bと取付プレート11との間)には、金属製のブロック材で形成され、可動レール部材15の可動範囲(回動範囲)を規定するための停止部材(ストッパー)21(第1および第2の停止部材21a,21b)が取り付けられている。この停止部材(ストッパー)21(21a,21b)に対して可動レール部材15を押し当てる(接触または当接させる)ことで、過度な移動を規制して可動レール部材15を停止(固定または保持)できるため、この停止位置[可動域の両端部位(最外部位)]に対応させて前記移動分岐レール部材(または最外分岐レール部材)2a,4aを配置することで、これらの移動分岐レール部材(または最外分岐レール部材)2a,4aに対して可動レール部材15を容易に位置合わせ(対向または配向)可能である。すなわち、停止部材21(21a,21b)と、可動レール部材15の移動機構とで、接触(当接)を利用して位置決めするための接触位置合わせ機構を形成できる。
このように停止部材21(21a,21b)で規定された停止位置[可動域の両端部位(最外部位)]では、分岐レール部材(最外分岐レール部材2a,4a)に対する位置合わせが容易な一方で、停止部材を配設できない可動域の内側(内部)で連絡または接続する分岐レール部材[基準分岐レール部材(または内方分岐レール部材)3a]に対しては、可動レール部材15との接触(当接)を利用した位置合わせが困難なため、図2~4に示されるように、内方分岐レール部材3aと可動レール部材15との対向面(接続面または各端面)において、一対のマグネット部材22(第1および第2のマグネット部材22a,22b)を互いに吸着可能に配設、すなわち、内方分岐レール部材3aと可動レール部材15との連絡状態において、互いに反対の磁極を向けた形態で配設し、この一対のマグネット部材22(22a,22b)による強力な磁気的吸着力を利用して位置合わせを可能としている。
詳しくは、可動レール部材15端面(分岐レール側の端面)の下部壁溝部8bには、棒状の第1のマグネット部材(ネオジム磁石)22aが、対応(または対向)する内方分岐レール部材3a端面の下部壁溝部8bには、棒状の第2のマグネット部材(ネオジム磁石)22bがそれぞれ嵌入して装着されている。前述のように可動レール部材15および内方分岐レール部材3aが同様の断面形状を有していることから、各レール部材15,3aに対応する同じ位置(各下部壁溝部8b)にそれぞれ装着された一対のマグネット部材22(22a,22b)が互いに引き合うことで、必然的に各レール部材15,3a(またはこれらの各走行路7)が同一軸線上に揃えられ、進路を円滑にまたは安定して連絡可能である。そのため、前記停止部材を利用した位置合わせ(前記接触位置合わせ機構)が困難な分岐レール部材[可動域の内側(内部)で連絡する内方分岐レール部材3a]に対しても、可動レール部材15を内方分岐レール部材3aの方向に向けて近づける(または近傍に移動または回動させる)だけで、一対のマグネット部材22(22a,22b)による吸着力を遠隔的に作用でき、高い精度で容易に位置合わせ可能である。換言すると、一対のマグネット部材22(22a,22b)は、非接触状態(または離間状態)でも作用可能な電磁気的な力(電磁気的相互作用)により、可動レール部材15を所定位置(接続位置または連絡位置)に自発的に位置決め(配向または指向)させるための電磁位置合わせ機構[非接触(または遠隔)位置合わせ機構]を形成している。
なお、第1および第2のマグネット部材22a,22bは互いにわずかに離間した非接触状態で取り付けられているため、可動レール部材15の回動運動を大きく妨げることなく、円滑にまたは長期間に亘って安定して進路切換が可能である。
このような電磁位置合わせ機構では、停止部材などへの接触または当接を利用することなく、非接触状態であっても位置合わせ可能なため、切換ユニット(可動レール部材またはその移動機構)に対して、想定外の外力(移動機構で生じるまたは作用する力とは異なる外力)が作用し易い環境下または条件下で使用しても、前記外力による位置ずれを有効に抑制でき、長期に亘って安定して位置合わせ可能である。
また、これらの位置合わせ機構を備えることで、移動機構によって可動レール部材15の移動先の位置を正確(または精密)に制御しなくても位置決め可能になるため、移動機構では大まかな(ラフな)または遊びをもった位置制御(方向制御)が可能であればよい。そのため、構造または構成を簡素化し易く、生産性またはメンテナンス性も向上できる。
図2~5に示されるように、このような可動レール部材15の移動機構は、原動軸(または駆動軸)の回転または揺動運動(回動運動)を、可動レール部材15の揺動(回動)運動に変換(または伝動)可能な運動伝達機構(クランク機構またはリンク機構)23で形成されており、この運動伝達機構(クランク機構またはリンク機構)23は、可動レール部材15の長手方向の側部位で取付プレート11に配設されたモーター(ギヤードモーターまたは駆動部)24と;このモーター24に備え付けられ、かつ取付プレート11面に直交する方向(上下方向または縦方向)に延びる原動軸(駆動軸または回転軸)24aと;この原動軸24aから直交する方向に細幅の板状(または腕状)に延びて形成され、かつ原動軸24aの回転により回転または揺動(回動)可能な可動アーム(モーターアームまたは腕)25と;この可動アーム25の先端に一方の端部が回動可能に軸支され、他方の端部側が可動レール部材15に連結されたリンク部材(アームリンク、ロッド部材または連杆)26とを備えている。このような移動機構[運動伝達機構(クランク機構またはリンク機構)23]では、原動軸24aの回転運動[または可動アーム25の回動もしくは揺動運動]を、リンク部材26を介して可動レール部材15の揺動(回動)運動に変換(または伝動)でき、各分岐レール部材2a,3a,4aに向けて進路を振り分け可能である。
この例では、前記モーター24の両側部位において、原動軸24aの回転運動[または可動アーム25の回動範囲]を制御または規制するための一対のスイッチ部材(検出部材、この例ではリミットスイッチ(またはリミッタースイッチ))24b,24cが取り付けられている。この一対のスイッチ部材(検出部材)24b,24cに接触させるまたは押すために(または検出させるために)、可動アーム25の原動軸24aとの取付位置側における両側部(可動アーム25の長さ方向に対する両側部)には、原動軸24aの半径方向に突出する一対の突起部(またはドグ)25a,25bが形成または取り付けされている。このスイッチ部材24b,24cに可動アーム25の一対の突起部(またはドグ)25a,25bが回動して接触すると、モーター24への電源(電力)供給が遮断されて(ONからOFFになって)原動軸24aの回転が停止し、可動アーム25の位置が可動域の端部(最外部)で固定または保持される。
また、モーター24の動作または駆動をプログラムなどで制御したり、可動アーム25(または可動レール部材15)の位置を検出可能な検出部材(または検出ユニット、例えばリミットスイッチなど)からの検出信号に基づいて、モーター24の動作または駆動を制御することにより、可動アーム25を可動域の途中部(内方域)に固定または保持することもできる。すなわち、可動アーム25を可動域の任意の位置に調整可能なため、リンク部材26を介して可動レール部材15を所望の位置に移動(押進または牽引)できる。なお、前記一対のスイッチ部材(検出部材)24b,24cとは異なる検出部材(スイッチ部材)として、可動アームが稼働範囲内部の所定の位置に位置すること(または可動レール部材が所定の内方分岐レール部材と接続または連絡されていること)を検出可能な第3の検出部材(第3のスイッチ部材)が、取付られていてもよい。この例では、回動範囲の中央または中心付近に位置すること(または可動レール部材15が内方分岐レール部材3aと接続または連絡されていること)を検出可能な第3の検出部材(第3のスイッチ部材)としてのローラー付きリミットスイッチが、取り付けプレート11に取付または埋設されている(図示せず)。
具体的には図4~5に示されるように、モーター24(原動軸24a)を駆動させて可動アーム25を第1のスイッチ部材24b側に回動すると(図4中、反時計回りに回動すると)、リンク部材26を介して可動レール部材15を押進し第1の停止部材21a(接触位置合わせ機構)に押し当てることができ、第1の最外分岐レール部材2aに連絡可能となる。このとき、第1の突起部(またはドグ)25aは第1のスイッチ部材24bと接触して原動軸24aの回転が停止し、第1の最外分岐レール部材2aとの連絡状態が固定または保持されるとともに、第1のスイッチ部材(検出部材)24bは前記連絡状態(可動レール部材15が第1の最外分岐レール部材2aと接続または連絡されていること)を示す検出信号をマイコンなどの制御ユニットに送信できる。
逆に、第2のスイッチ部材24c側に回動すると(図4中、時計回りに回動させて図5の状態にすると)、可動レール部材15を牽引し第2の停止部材21b(接触位置合わせ機構)に引き付けることができ、第2の最外分岐レール部材4aに連絡できる。このとき、第2の突起部(またはドグ)25bは第2のスイッチ部材24cと接触して原動軸24aの回転が停止し、第2の最外分岐レール部材4aとの連絡状態が固定または保持されるとともに、第2のスイッチ部材(検出部材)24cは前記連絡状態(可動レール部材15が第2の最外分岐レール部材4aと接続または連絡されていること)を示す検出信号をマイコンなどの制御ユニットに送信できる。
一方、プログラム制御などにより可動アーム25を可動域の中心付近に位置または停止させることで、リンク部材26を介して可動レール部材15の先端部(分岐レール部材側の端部)を基準分岐レール部材(または内方分岐レール部材)3aの近傍(基準位置の近傍)に対向または位置させることができるとともに、前記一対のマグネット部材22(22a,22b)(電磁位置合わせ機構)の接近に伴う磁気的吸着力の作用により、基準分岐レール部材(または内方分岐レール部材)3aと容易かつ正確に位置決めされて連絡可能となる。なお、可動アーム25は、前記第3の検出部材(ローラー付きリミットスイッチ)からの検出信号(可動域の中心付近に位置することを示す検出信号)を受信したマイコンなどの制御ユニットが、モーター24(駆動ユニット)に停止信号を送信することで、可動域の中心付近に停止させてもよい。
なお、この例における前記リンク部材26は、図4~5に示されるように、可動レール部材15と交差する方向(特に直交する方向)に直線的に延び、全体として棒状(ロッド状)に形成されており、可動アーム25に一方の端部が軸支された細幅の板状リンク部材26aと、この板状リンク部材26aの他方の端部に接合(結合または固定)されて同一方向(同一軸線上)に延び、かつ側面(周面)に螺旋溝(ネジ溝)が切られた棒状リンク部材(ボルト状リンク部材)26bとを備えている。この棒状リンク部材(ボルト状リンク部材)26bは、可動レール部材15の支持壁5の所定位置に形成または穿設された貫通孔を、挿通可能かつ抜け不能な形態で貫通(遊挿または遊貫)している。すなわち、可動レール部材15と移動機構(またはリンク部材26)とは、遊びをもって連結されているため(緊密または強固に接合されていないため)、移動機構では、可動レール部材15にある程度の遊びをもたせた形態で位置制御(方向制御)可能である。そのため、電磁位置合わせ機構による自発的な移動(位置合わせのための移動または位置修正)が移動機構により大きく妨げられることなく前記遊びによって許容され、移動機構で可動域の途中部(内方域)に移動または位置させても、容易にまたは効率よく位置決め可能となる。また、遊びをもって連結されているため(緊密または強固に接合されていないため)、可動レール部材15および/または移動機構に想定外のまたは過度な外力が作用しても、前記遊びによって外力による衝撃または負荷を軽減または逃がすこともできるのみならず、仮に前記外力で移動機構の位置制御(方向制御)に若干のズレ(例えば、プログラム制御などにより当初設定した可動アーム25の停止位置からのズレなど)が生じてしまっても、精密な位置決めを移動機構ではなく前記位置合わせ機構に委ねているため、安定して位置合わせ可能で耐久性を向上できる。
さらに、図3~5に示されるように、この例の前記棒状リンク部材(ボルト状リンク部材)26bには、貫通(遊挿または遊貫)する可動レール部材15の支持壁5(または貫通孔)の両側部において、一対のワッシャー部材27(27a,27b)、一対のバネ部材(スプリング、緩衝部材または弾性部材)28(28a,28b)および一対のナット部材(抜け止め部材、アジャスターまたは調整部材)29(29a,29b)がこの順に前記支持壁5から離れる形態で、それぞれ前記支持壁5を介して対称に挿通または取り付けされている。この一対のナット部材29(29a,29b)は、可動レール部材15からの抜け[ならびに前記ワッシャー部材27(27a,27b)およびバネ部材28(28a,28b)の抜け]を規制するために、棒状リンク部材(ボルト状リンク部材)26bに螺合して取り付け(または固定)されているのに対し、前記一対のワッシャー部材27(27a,27b)および一対のバネ部材28(28a,28b)は、遊離状態でまたは遊びをもって棒状リンク部材26bに挿通(遊挿または遊貫)または取り付けされており、前記支持壁5(または貫通孔)および一対のナット部材29(29a,29b)の間を軸方向に(棒状リンク部材26bに沿って)可動である。このように、遊びをもって連結された可動レール部材15およびリンク部材26の連結部にバネ部材28(28a,28b)を介在させることにより、移動機構[運動伝達機構(クランク機構またはリンク機構)23]からの動力を可動レール部材15に滑らかに伝動することができるのみならず、所定位置に移動した可動レール部材15をその位置に保持し易くなる。
詳しくは、第1の移動分岐レール部材(最外分岐レール部材)2aに連絡させる場合、リンク部材26の押進に伴って、一対のナット部材29(29a,29b)のうち手前側(可動アーム25側)に位置する第2のナット部材29bが、手前側に位置する第2のワッシャー部材27bおよび第2のバネ部材28bを介して滑らかに(衝撃を吸収しつつ)、可動レール部材15を第1の停止部材21aに押し当てて停止する。このとき、奥側(可動アーム25の反対側)に位置する第1のワッシャー部材27aおよび第1のバネ部材28aは軸方向に可動な遊離状態を維持しているのに対し、手前側の第2のワッシャー部材27bおよび第2のバネ部材28bは非遊離状態(第2のバネ部材28bが縮んだ圧縮状態)となる。そのため、想定外のまたは過度な外力が作用しても[例えば、可動レール部材15が第1の停止部材21aから離れる方向に外力が作用したり、振動などの外力の影響で移動機構による制御位置(または制御方向)に多少のズレが生じても(可動アーム25からの押付力が緩んでしまっても)]、圧縮状態の第2のバネ部材28bの復元力により第1の停止部材21aへの押圧力(押し付け圧)を確保でき、第1の最外分岐レール部材2aとの連絡状態を有効に保持できる。
逆に、図5に示されるように、第2の移動分岐レール部材(最外分岐レール部材)4aに連絡させる場合には、対応する各要素(または部材)の関係性が反転する。すなわち、リンク部材26の牽引に伴って、奥側の第1のナット部材29aが、奥側の第1のワッシャー部材27aおよび第1のバネ部材28aを介して滑らかに可動レール部材15を第2の停止部材21bに引き付けて停止する。このとき、手前側の第2のワッシャー部材27bおよび第2のバネ部材28bが遊離状態を維持しているのに対し、奥側の第1のワッシャー部材27aおよび第1のバネ部材28aは非遊離状態(第1のバネ部材28aが縮んだ圧縮状態)となり、想定外のまたは過度な外力が作用しても、圧縮状態の第1のバネ部材28aの復元力により第2の停止部材21bへの牽引力(押し付け圧)を確保でき、第2の最外分岐レール部材4aとの連絡状態を有効に保持できる。
これらと同様に、基準分岐レール部材(内方分岐レール部材)3aに連絡する場合においても、リンク部材26の移動(押進または牽引)に伴うナット部材29(29a,29b)からの動力は、バネ部材28(28a,28b)を介して滑らかに(衝撃を吸収しつつ)可動レール部材15に伝達される。なお、内方分岐レール部材3aとの連絡状態では、一対のバネ部材28(28a,28b)は双方とも遊離状態を維持しており、前記電磁位置合わせ機構による 位置決めを阻害しない。しかも、仮に想定外のまたは過度な外力などの作用により一対のマグネット部材22(22a,22b)の磁力(吸着力)に抗して可動レール部材15がいずれの方向(基準位置とは異なる方向)に移動しようとしても、両側部のバネ部材28(28a,28b)により移動機構(またはリンク部材26)への直接的な衝撃(負荷)を吸収または緩和できるとともに、バネ部材28(28a,28b)に接触した際の反発力(復元力または弾性力)を利用して元の方向または位置(基準位置)に矯正または指向させることができる。
このように、可動レール部材15および移動機構(リンク部材26)の連結部に介在する一対のバネ部材28(28a,28b)は、衝撃(負荷)を吸収可能な衝撃吸収機構(緩衝機構)、および所望の位置に移動した可動レール部材15をその位置(方向)に保持する配向保持機構(可動レール部材15の配向を補助または矯正する配向補助機構)を形成できる。
なお、ナット部材(抜け止め部材、アジャスターまたは調整部材)29(29a,29b)の固定位置を変更することで、バネ部材28(28a,28b)の遊離状態(軸方向の可動範囲または部材間のクリアランスなど)および圧縮状態(最外分岐レール部材2a,4aとの連絡状態における復元力など)を容易に調整できるため、前記配向保持機構(配向補助機構)の動作または可動レール部材15の保持状態を容易に調整可能である。そのため、仮に前記外力で移動機構の位置制御(方向制御)に若干のズレが生じてしまっても、前記ズレに対応させてナット部材29(29a,29b)の固定位置を調整することで、前記配向保持機構(配向補助機構)を適切に動作させて、前記ズレを容易に修正または矯正できる。例えば、プログラム制御などで当初設定した可動アーム25の停止位置からのズレなどが生じ、内方分岐レール部材3aとの連絡状態でバネ部材28(28a,28b)の一方が圧縮状態、他方が遊離状態となってしまっても、ナット部材29(29a,29b)の固定位置をそれぞれズレに対応させて移動することで、双方のバネ部材28(28a,28b)が遊離状態となるように(図4に示す正常な状態となるように)容易に調整でき、前記配向保持機構(配向補助機構)を正常に動作させることできる。
すなわち、本発明の切換ユニットでは、移動機構による位置制御(方向制御)にズレが生じても、可動レール部材15および移動機構(リンク部材26)の連結部の遊びと、ナット部材(抜け止め部材、アジャスターまたは調整部材)29(29a,29b)の固定位置調整とによって、ズレを許容できるのみならず、容易に調整(矯正または修正)できるためメンテナンス性も高く、長期間に亘って安定した進路切換が可能となり耐久性を有効に向上できる。
このような構造において、基準レール部材1aから基準分岐レール部材3aにランナー51が移行または移動した状態で、可動レール部材15が移動位置に回動すると、基準分岐レール部材3aに沿ってランナー51が逆行して脱落するおそれがある。さらに、基準レール部材1aから移動分岐レール部材2aまたは4aにランナー51が移行または移動した状態でも、可動レール部材15が基準位置に復帰すると、移動分岐レール部材2aまたは4aに沿ってランナー51が逆行して脱落するおそれがある。
そのため、前記可動レール部材15には、ランナー51が分岐レール部材2a,3a,4a側に移行または進行した後に可動レール部材15の連絡または接続状態が切断されても、ランナー51が前記基準レール部材1a(可動レール部材15)の方向に走行して脱落または脱輪するのを規制するための板状規制部材(脱落防止壁、逆走防止板またはシャッター)30が取り付けまたは固定されている。この例では、可動レール部材15には、基準分岐レール部材3aと連絡した基準位置において、基準レール部材1a(可動レール部材15)と移動分岐レール部材2a,4aとの連絡路を遮断し、移動分岐レール部材2a,4aのいずれか一方と連絡した移動位置において、他方の分岐レール部材および基準分岐レール部材3aとの連絡路を遮断するための板状規制部材30が取り付けられ、分岐レール部材2a,3a,4a側に移行したランナー51が基準レール部材1a(可動レール部材15)の方向に逆走または後退して脱輪するのを規制または防止している。この板状規制部材30は、前記移動機構の押進または牽引動(可動レール部材15の回動動作)と連動して、取付プレート11に固定された案内部材31の案内溝31aに沿って可動である。
なお、板状規制部材(逆走防止板)30は、可動レール部材15と連絡した分岐レール部材の一方の側部に位置する分岐レール部材との連絡路を遮断するための第1の板状部30aと、他方の側部に位置する分岐レール部材との連絡路を遮断するための第2の板状部30bとを備えている。すなわち、板状規制部材(逆走防止板)30のうち、可動レール部材15の軸方向に対応する部位には、ランナー51が走行または通過可能な切り欠き開口部(通過部)が形成されている。
また、稼働レール部材15先端側(分岐レール部材側)の上端部は、板状規制部材(逆走防止板)30を取り付けるため、さらには案内部材31に衝突または干渉することなく円滑に回動可能とするために、切り欠き部17cが形成されている。
このような切換ユニットおよびレール構造では、基準レール1と分岐レール2,3,4との分岐部(交差部)において、ランナー51の進路を所定の方向に誘導または案内して切り換えることができ、分岐したレール構造(特に、基準レールから3以上の方向に分岐したレール構造)でもランナー51を円滑に、かつ安定して方向転換できる。
さらに、図10に示されるように、前記レールに沿って走行可能なランナー51は、対向する両側壁52a,52bおよび下部壁(または底部壁)52cを有し、上部が開放した断面コ字状の支持部52と、この支持部の両側壁52a,52bに対向して、かつ走行方向に間隔をおいて取り付けられた二対の軸部材53(53a,53b)と、これらの軸部材53(53a,53b)に回転可能に取り付けられ、レールの走行路7を走行可能な二対の車輪部(回転体、または外周部が樹脂または金属で被覆されたボールベアリング)54(54a,54b)とを備えている。なお、車輪部54の外周は、前記レールの走行路7に対応して、断面形状において、外方向に湾曲してタイヤ状に形成されている。また、ランナー51(支持部52)を補強するため、断面コ字状の支持部52の屈曲コーナー部には、長手方向に間隔をおいて、所定幅で内側に凹状に窪んだ陥没部(または刻設部)55が(この例では、二対の軸部材53(53a,53b)の取り付け位置の下方に4つ)形成されている。支持部52の下部壁52cには、軸部材56が周方向に回転可能に取り付けられ、この軸部材56には、接続または連結手段として、被移送体(被搬送体)を着脱可能に取付または連結するためのリング部材57が揺動可能に取り付けられている。
このようなランナー51が、リング部材57に懸垂状態で被移送体を取り付けた状態で、レールに沿って走行すると、前記レールの支持壁5の両側部の走行壁6において、車輪部54がボールベアリングにより円滑に回転可能であるため、大きな速度でランナー51を走行できるとともに、大きな速度で走行させても車輪部54が脱輪することなく円滑に走行できる。さらに、ランナー51の断面コ字状の支持部52の屈曲コーナー部には、両側壁52a,52bが外方向に開くのを防止するため、内側に凹状に窪んだ補強用陥没部(または刻設部)55が形成され、しかも長手方向に間隔をおいて両側壁52a,52bに取り付けられた二対の車輪部54で被移送体を支持できるため、重量の大きな被移送体であっても円滑に移送できる。さらには、二対の車輪部54が両側壁52a,52bの長手方向に間隔をおいて取り付けられているため、可動レール部材15と、基準レール1および分岐レール2,3,4との連絡部の幅が広くても、ランナー51が脱輪することがなく、円滑に走行できる。
なお、図10~13に示されるように、リング部材57と被移送体(被搬送体)とは、通常、チェーンなどの吊り具部材(スリング部材)58などを介して取付または連結されており、この吊り具部材(スリング部材)58には、移送者(搬送者または使用者)が被移送体(被搬送体)を移送する際に吊り具部材(スリング部材)58を掴み易く(または円滑に移送)するための把持部材59と、この把持部材59の上端部に取り付けまたは装着され、かつ移送者(搬送者または使用者)が切換ユニットの進路を遠隔操作するための操作盤(リモコン)71とが取り付けられていてもよい。
把持部材59は、略断面コ字状の把持部材本体部(または前面部)60と、この本体部(または前面部)60の開口部(開放面)60aを閉じて、吊り具部材(吊り索部材またはスリング部材)58を収容または内包するための断面C字状のカバー部(背面カバー部または押さえ板)61とを備えた全体として中空状または筒状の形態で、この中空部(内部)に通した吊り具部材(吊り索部材またはスリング部材)58の所定の位置に取付または固定されている。
この例では、本体部(または前面部)60の開口部(開放面)60aは進行方向側に位置しており、この開口部(開放面)60aと対向する面(閉鎖面または移送者側の面)60bの内壁には、開口部(開放面)60a側に向かって延びる挿通部材(固定部材またはスタッドボルト)62が所定の間隔をおいて(この例では2つ)取り付けられている。一方、カバー部(背面カバー部または押さえ板)61の対応する位置には、挿通部材(スタッドボルト)62を挿通可能な挿通孔61aが穿設されている。そのため、本体部60の挿通部材(スタッドボルト)62を吊り具部材(スリング部材)58(この例ではチェーンのリング(またはリンク))に挿通し、さらに、カバー部61の挿通孔61aに挿通して、ナット部材(ノブまたはツマミ)63で固定することで吊り具部材(スリング部材)58を本体部(または前面部)60およびカバー部61で挟着または収容でき、所望の位置に取付可能である。このような把持部材では、吊り具部材(吊り索部材またはスリング部材)の形状やサイズなどに依らず(例えば、チェーンを構成するリングの大小などに依らず)、容易に収容または取付できる。
なお、把持部材本体部(または前面部)60の閉鎖面(または搬送者(移送者)側の面)60bの外壁側(移送者側、または進行方向に対して後方側)の両側部には、互いに対向する断面L字状の一対の爪部64が形成されている。すなわち、閉鎖面(または移送者側の面)60bを底部壁とし、一対の爪部64を両側壁とした溝状(またはアリ溝状)の装着凹部(溝部)65が所定の長さで形成されており、この装着凹部(溝部)65には、一対の爪部64に対応して装着可能な一対の凹部66aを備えたグリップ部材(弾性またはゴム部材)66が装着または嵌入(または挿入)されている。このグリップ部材(弾性またはゴム部材)66は、装着凹部(溝部)65側(内側)に位置して板状に形成された板状部(板状嵌入部)66bと、この板状部66bから一対の凹部66aを介して外側(移送者側、または進行方向に対して後方側)に向かって湾曲して膨出した膨出部(湾曲部)66cとを備えており、この膨出部66c側は中空状に形成されている。このようなグリップ部材(弾性またはゴム部材)66では、板状部66bにより装着凹部(溝部)65からの抜けが抑制されるとともに、膨出部66cが一対の爪部64の先端部を覆うように膨出して中空状に形成されるためか、把持する際に握り易く、搬送者(移送者)の疲労を有効に軽減できる。
なお、切換ユニットは、移動機構(モーター24など)の動作などを電気的に制御するための電気制御機器(例えば、制御基板、電気配線、電源、無線モジュールまたはアンテナなど)(図示せず)を備えていてもよく、前記電気制御機器はモーター24などとともにカバーまたはケース(または電気制御ボックス)41に収容されていてもよい。
前記カバーまたはケース(または電気制御ボックス)41には、切換ユニットの状態(稼働または動作状態)をランプの点灯および/または点滅などにより表示するための表示灯42,43,44や、音(または音声)により報知するためのブザー(電子ブザーなど)またはスピーカー(図示せず)などが取り付けられていてもよい。
この例では、図8に示すように、表示灯として、電源から電気が供給され、切換ユニットが稼働状態であることを示す主電源表示灯42;可動レール部材15がいずれの進路(分岐レール部材)に連絡または接続しているか表示するための進路表示灯(または誘導ランプ列)43(43a,43b,43c);走行トラブル(例えば、挟まれ、モーター過負荷など)などを検知した際に警告するための警告灯(または非常停止警告灯)44が取り付けられている。各表示灯の表示する色は互いに同一または異なっていてもよく、この例では、主電源表示灯42は黄色、右側(2a側)進路表示灯43aは緑色、中央(3a側)進路表示灯43bは白色、左側(4a側)進路表示灯43cは青色、警告灯44は赤色である。
またブザー(電子ブザーなど)またはスピーカー(図示せず)は、表示灯の表示に合わせて作動してもよい。例えば、電源投入時に主電源表示灯42の点灯とともに、可動レール部材15の進路の切換動作完了時に進路表示灯(または誘導ランプ列)43a,43b,43cの点灯とともに、および/または走行トラブル発生時に警告灯44の点灯とともにブザー音を鳴らしてもよい。ブザー音は1または複数回鳴らしてもよく、例えば、進路表示灯43a,43b,43cの点灯とともに鳴らす場合、連絡した進路に応じて規定回数鳴らしてもよく(例えば、進路表示灯43aの点灯では1回、43bの点灯では2回、43cの点灯では3回など)、警告灯44の点灯とともに鳴らす場合、例えば、連続して8回程度鳴らしてもよい。
なお、走行トラブルを検知した場合、警告灯44およびブザーによる警告とともに、モーターが逆転して基の位置(初期位置)に戻る(または動作前の状態に復帰もしくはリセットする)ように制御基板(マイコンなど)でプログラム制御してもよい。
また、把持部材59に取り付けられた操作盤(リモコン)71は着脱可能であってもよく、必ずしも把持部材59に取り付けられていなくてもよいが、把持部材59(特にその上端部)に一体的に取り付けられているため、ランナー51[または移送者(搬送者または使用者)]が分岐部に差し掛かった際に、把持部材59を把持した手を大きく離さなくても(例えば、親指などで)簡単に操作盤(リモコン)71を操作でき、被移送体(被搬送体)の移送を止めることなく容易に進路を切換または選択可能なため、所望の進行方向に向かって円滑に移送できる。
なお、操作盤(リモコン)71は、切換ユニットの進路を切換または選択可能であればよく、通常、切換ユニットの電気制御ボックス41に収容された前記電気制御機器(無線モジュール(子機)またはアンテナ)に対して、制御信号(または電気信号)などを送受信可能な無線モジュール(親機)またはアンテナが内蔵され(図示せず)、進路を選択するための進路制御ボタン72,73と、操作盤(リモコン)71の電源(ON/OFF)を制御するための電源スイッチ74とが取り付けられている。この例では、進路制御ボタン72aにより進路を右側(2a側)に、進路制御ボタン72bにより進路を中央(3a側)に、進路制御ボタン72cにより進路を左側(4a側)にそれぞれ切換または選択するための制御信号(電気信号)を送信できる。また、進路制御ボタン(バネ戻り式のトグルスイッチまたはレバー)73により、進路を所定の方向に順次に変更または切換するための制御信号を送信でき、例えば、進路制御ボタン(トグルスイッチ)73を一回押すごとに「右側(2a側)→中央(3a側)→左側(4a側)→中央(3a側)→ … (以下、繰り返し)」の順に進路を切り換えることなどができる。
このように切換ユニット(または移動機構)の動作(作動または駆動)は、ランナーを誘導または案内するための誘導装置(制御装置)の制御ユニットにより制御してもよい。すなわち、誘導装置(制御装置)は、入力操作ユニット(例えば、操作盤(リモコン)71など)、受信ユニットなどの入力ユニットと;所定のプログラムやデータなどが格納された記憶ユニット(記憶手段またはメモリ手段)と;前記入力ユニットからの信号と前記記憶ユニットのプログラムやデータとに基づいて、判別、比較、選択(または照合)、演算などの処理をするための演算ユニットと;この演算ユニットの結果[処理信号またはデータ(制御信号)など]などを出力するための出力ユニット(アクチュエータまたは駆動ユニット、例えば、モーター24など)と;これらのユニットとの間で信号および/またはデータを授受する制御ユニットとを備えている。なお、誘導装置(制御装置)は、前記演算ユニットおよび制御ユニットが一つになった中央処理装置(CPUなど)を備えていてもよく、中央処理装置には、さらに記憶ユニットも含まれていてもよい。誘導装置(制御装置)は、通常、カバーまたはケース(または電気制御ボックス)41に収容され、取付プレート11に取り付けられており、操作盤(リモコン)71などの入力操作ユニットは、取付プレート11から分離していてもよい。
前述の例では、入力操作ユニットとしてのリモコン71は、ランナー51の進行方向を選択可能な進路制御ボタン72(選択ボタン)を備えており、この選択ボタンに応答して、モーター24を作動させ、可動レール部材15を選択した分岐レール部材に接続または連絡させる。すなわち、リモコン71の進路制御ボタン(選択ボタン)72に対応するデータが記憶手段(メモリ手段またはメモリ回路)に記憶されており、図16に示されるように、ステップST1で、リモコン71を操作して所定の進行方向(分岐方向、または対応する選択ボタン72)を選択すると、進行方向(または選択ボタン72)に対応する選択信号(または選択データ)が送信され、ステップST2において、この選択信号(または選択データ)は受信ユニット(受信回路;入力ユニット)で受信され、制御ユニット(または制御回路)を介して、この受信した選択信号(または選択データ)と、記憶ユニット(メモリ手段)に格納されたデータ(所定のアドレスに格納されたデータ)とが、照合手段または選択手段(演算ユニットまたは演算回路)で照合または選択されて、前記選択信号に対応する駆動データまたは制御データ(駆動信号または制御信号)が読み取られる。ステップST3では、読み取られた駆動信号または制御信号(前記選択信号に対応する駆動または制御データ)が、制御ユニット(または制御回路)によりモーター24(出力ユニットまたは駆動ユニット)の駆動回路に与えられ、モーター24が前記駆動信号(制御信号)に基づいて作動し、可動レール部材15が前述したように移動および位置合わせされ、選択した所定のレールと接続または連絡し、プログラムが終了する。
なお、前述したように、カバーまたはケース(または電気制御ボックス)41には、可動レール部材の接続または連絡状態を報知する報知手段として、複数の発光ダイオードを備えた進路表示灯(または誘導ランプ列)43(43a,43b,43c)がそれぞれ形成されており、これらの進路表示灯(または誘導ランプ列)43(43a,43b,43c)は、ステップST3において、前記選択ボタン(またはモーター24の作動)に応答して点灯可能であってもよい。すなわち、選択手段としてのリモコン71を操作することにより、前記制御ユニットは、受信した前記選択信号に対応する読み取りデータ(駆動信号)を、所定の進路表示灯(または誘導ランプ列)43(43a,43b,43c)(例えば、図8において、選択された進行方向(または分岐レール4a)に対応する誘導ランプ列43c)の駆動回路に与え、報知手段としての進路表示灯(または誘導ランプ列)43を駆動して点灯または表示できる。なお、点灯した所定の進路表示灯(または誘導ランプ列)43(43a,43b,43c)は、対応する進行方向(または分岐レール)に可動レール部材が接続または連絡状態において、点灯または点滅して表示してもよく、所定時間経過後に消灯してもよく、接続または連絡状態にある限り、消灯することなく点灯または点滅を保持して表示し続けてもよい。また、ステップST3では、報知手段としての発音手段(音声ガイドや、ブザーなどの所定の規則に基づく発音回数などが発音可能な発音ユニット)を駆動して進行方向を音声または発音で報知してもよい。
このように、リモコン71を利用してランナー51の走行方向を選択することにより、進路を転換または切り換えることができ、利用者または移動体もしくは被搬送体を所定の走行方向に案内できるとともに、進路表示灯(または誘導ランプ列)43(43a,43b,43c)や前記発音手段などを利用して所定の方向に誘導できる。
なお、前記誘導装置(または制御装置)は、可動レール部材15の位置または状態(接続状態または連絡状態)に関する情報を取得するための位置情報取得手段(接続または連絡状態確認手段)を備えていてもよい。位置情報取得手段(接続または連絡状態確認手段)としては、可動レール部材の位置や接続状態または連絡状態を検出できる限り特に制限されず、慣用のセンサーやスイッチ類(例えば、分岐レールとの接続状態または連絡状態を検出できる前記スイッチ(リミットスイッチ)24b,24cや第3の検出部材(スイッチ部材、ローラー付きリミットスイッチ)など)を利用できる。前記誘導装置(または制御装置)が位置情報取得手段(接続または連絡状態確認手段)を備えていると、切換ユニットに生じたアクシデント(例えば、可動レール部材と分岐レール部材との間にランナーや物が挟まる事故など)などを容易に検出でき、モーター24などの出力ユニットまたは駆動ユニットへの過負荷を防止または抑制することもできる。
例えば、図17に示すように、ステップST11,ST12では、前記ステップST1,ST2と同様にして、選択した進行方向(分岐方向、または対応する選択ボタン72)に対応する選択信号(または選択データ)がリモコン71から送信され、受信された選択信号(または選択データ)が、制御ユニット(または制御回路)を介して、記憶ユニット(メモリ手段)に格納されたデータと、照合手段または選択手段で照合または選択され、前記選択信号に対応する駆動データまたは制御データ(駆動信号または制御信号)が読み取られる。ステップST13では、前記位置情報取得手段(接続または連絡状態確認手段)により、可動レール部材の位置(または接続状態もしくは連絡状態)に関する情報が取得され、ステップST14では、制御ユニット(または制御回路)を介して、ステップST12で受信された選択データあるいは駆動データまたは制御データと、ステップST13で得られた可動レール部材の位置情報(現在地情報または初期位置情報)とが、照合手段(演算ユニットまたは演算回路)で照合または比較されて、双方が一致する場合(選択した進行方向に可動レール部材が既に接続または連絡している場合)、プログラムは終了し、双方が一致しない場合(選択した進行方向に可動レール部材が接続または連絡していない場合)、ステップST15に進む。
このステップST15では、ステップST3と同様に、ステップST12で読み取られた駆動信号または制御信号(前記選択信号に対応する駆動または制御データ)が、制御ユニット(または制御回路)によりモーター24(出力ユニットまたは駆動ユニット)の駆動回路に与えられ、モーター24が前記駆動信号(制御信号)に基づいて作動するとともに、タイマー(タイマー手段または計時手段)を作動させて計時信号を生成する。ステップST16では、この計時信号に基づいて、規定時間以内(例えば0.5秒程度以内)に可動レール部材が移動を開始したか否かを確認する。すなわち、規定時間経過後(例えば0.5秒程度経過後)において、前記位置情報取得手段(接続または連絡状態確認手段)により、可動レール部材の位置(または接続状態もしくは連絡状態)に関する情報を取得し、得られた位置情報(規定時間経過後の位置情報)が、前記ステップST13で得られた位置情報(初期位置情報)と一致するか否かを照合手段(演算ユニットまたは演算回路)で照合または比較する。照合または比較の結果が一致した場合(初期位置から可動レール部材が移動していない場合)、ステップST17に進み、制御ユニット(または制御回路)により非常停止信号がモーター24(出力ユニットまたは駆動ユニット)の駆動回路に与えられ、モーター24(出力ユニットまたは駆動ユニット)の作動が停止する。また、前記非常停止信号は、報知手段としての警告灯(または非常停止警告灯)44および前記発音手段の駆動回路にも与えられ、警告灯(または非常停止警告灯)44の点灯または点滅、ブザーなどによる警告音とともに非常停止したことを報知して、プログラムが終了する。
一方、ステップST16において、可動レール部材の規定時間経過後の位置情報と、前記ステップST13で得られた位置情報(初期位置情報)との照合または比較結果が一致しない場合(初期位置から可動レール部材が移動した場合)は、ステップST18に進む。ステップST18では、ステップST15で生成した計時信号(計時データまたは時刻データ)に基づいて、規定時間以内(例えば1秒程度以内)に可動レール部材が、前記選択信号に対応するレールと接続または連絡したか否かを確認する。すなわち、規定時間経過後(例えば1秒程度経過後)において、前記位置情報取得手段(接続または連絡状態確認手段)により、可動レール部材の位置(または接続状態もしくは連絡状態)に関する情報を取得し、得られた位置情報(規定時間経過後の位置情報)が、前記ステップST12で受信した選択信号(選択データ)に対応する位置情報(目的とする進行方向または分岐方向)と一致するか否かを照合手段(演算ユニットまたは演算回路)で照合または比較する。照合または比較の結果が一致しない場合(目的の進行方向(分岐レール)への可動レール部材の接続または連絡が検出または確認できない場合)、ステップST19に進む。このステップST19では、前記ステップST17と同様にして、制御ユニット(または制御回路)により非常停止信号がモーター24(出力ユニットまたは駆動ユニット)、警告灯(または非常停止警告灯)44および前記発音手段の駆動回路に与えられ、非常停止およびその報知をする。
このように、ステップST18ではステップST16とは異なって、可動レール部材が移動を開始した後に発生したアクシデント(例えば、挟まれ、巻き込まれなど)を検出することができる。なお、ステップST19で非常停止した後、プログラムを終了してもよいが、さらに、ステップST20に進み、可動レール部材を初期位置(移動開始前の位置)に復帰または戻すための復帰手段またはリセット手段を経てからプログラムを終了してもよい。すなわち、ステップST20では、ステップST13で得られた初期位置情報に基づいて、初期位置(移動開始前の位置)に復帰または戻すための復帰信号(駆動信号または制御信号)を生成し、この復帰信号をモーター24(出力ユニットまたは駆動ユニット)の駆動回路に与えて、可動レール部材を初期位置に復帰または戻してもよい。そのため、ステップST13など得られた可動レール部材の位置情報は、(例えば、計時手段などで生成された時刻情報または時刻データなどとともに紐付けされて)可動レール部材の移動履歴として記憶手段(メモリ手段)に記録されていてもよく、この記憶手段(メモリ手段)に記録された移動履歴(例えば、移動履歴における最新の位置情報など)に基づいて、前記復帰信号を生成してもよい。
なお、ステップST18において、可動レール部材の規定時間経過後(例えば1秒程度経過後)の位置情報と、前記ステップST12で受信した選択信号(選択データ)に対応する位置情報(目的とする進行方向または分岐方向)とが一致した場合(目的の進行方向(分岐レール)への可動レール部材の接続または連絡が検出または確認できた場合)、ステップST21に進み、前記ステップST3と同様に、報知手段としての進路表示灯(または誘導ランプ列)43(43a,43b,43c)や、発音手段(音声ガイドや、ブザーなどの所定の規則に基づく発音回数などが発音可能な発音ユニット)を駆動信号(または制御信号)で駆動して、所望の進行方向に接続または連絡が完了したことを報知してもよい。
このような切換ユニットおよびレール構造では、レールおよびレール部材を所定箇所に安定かつ強固に配置でき、切換ユニットを利用して可動レール部材15の向きを切り換えることで、被移送体を懸垂状態で所望の方向に容易にまたは効率よく進行できるため、円滑に移送可能な移送システム(搬送システムまたは運搬システム)を形成できる。
[レール]
レールは、ランナーが走行可能な少なくとも1つの基準レールと、この基準レールから複数の方向に分岐して延び、それぞれランナーが走行可能な複数(少なくとも2つ)の分岐レールとを備えていればよく、用途および被搬送体の搬送ルートなどに応じて、基準レールは、複数(少なくとも2つまたは3つ)の基準レールを備えていてもよく、分岐レールは、3以上の複数の分岐レールを備えていてもよい。
電磁位置合わせ機構を備えた本発明の切換ユニットでは、可動レール部材の可動域内部または内方に位置する分岐レールを備えていても[特に、1つの基準レールから3以上の方向(3以上の複数の分岐レール)に分岐しても]容易に位置合わせできるため、少なくとも3つの分岐レールを備えているのが好ましく、分岐レール数は、例えば3~10(例えば3~8)、好ましくは3~6(例えば3~5)、さらに好ましくは3~4(特に3)であってもよい。
なお、前記基準レールは、直線状レールおよび/または湾曲したレールで形成してもよく、前記複数の分岐レールも直線状レールおよび/または湾曲したレールで形成してもよく、閉じた形態のループ状走行路を形成してもよい。このようなループ状走行路では、周方向に間隔をおいて、少なくとも2つ(特に少なくとも3つ)の分岐走行路(基準レールで形成された走行路)が分岐していてもよい。ループ状走行路の形態は特に制限されず、例えば、ループ状走行路は、多角枠状(正三角枠、二等辺三角枠などの三角枠、正四角枠、長方形状の枠などの四角枠、五角枠、六角枠など)、楕円枠状、円枠状(リング状)などの枠状の形態であってもよく、基準レールで形成された分岐走行路は、ループ状走行路から放射方向に延びていてもよい。
基準レールは、基準レール本体と、この基準レール本体と接続可能な基準レール部材とを備えていてもよく、複数の分岐レールは、複数の分岐レール本体と、このレール本体と接続可能な複数の分岐レール部材とを備えていてもよい。このような形態では、基準レール部材は、基準レールの長手方向の端部を形成し、複数の分岐レール部材は、複数の分岐レールの長手方向の端部を形成できる。そのため、基準レール部材と複数の分岐レール部材とを取付プレートに取り付けまたは固定することにより、基準レール本体と複数の分岐レール本体とが連絡または接続可能であってもよい。
なお、前記図に示す形態と異なり、基準レール(または基準レール部材)に対して、複数の分岐レールのうち所定の分岐レール(または分岐レール部材)は、所定間隔をおいて、対向している必要はなく、複数の分岐レール部材は、互いに平行に配置することなく、互いに異なる方向に向いて配置してもよい。
前記レール(基準レールおよび複数の分岐レール)の構造は、ランナーが走行可能な走行部を備えていれば特に制限されず、例えば、断面中空状(下部に長手方向に延びるスリット状開口部を有する断面中空状、例えば、四角枠中空状)の形態を有していてもよいが、好ましいレールは、通常、断面T字状(または逆T字状)またはI字状の形態を有している。
このようなレールは、長手方向に延びる支持壁(板状支持壁)と;この支持壁の少なくとも下端部(特に、両端部)に両側部方向に延出して形成された走行壁と、この走行壁に形成され、かつランナーの車輪部が走行可能な走行路とを備えていてもよい。このように、レールは、少なくとも下部走行壁を有していればよく、レールの上部(またはランナーの非走行部)は、必ずしも必要ではないが、天井壁又は上部空間に取り付けまたは配置可能な取付プレートなどの部材に対して取り付けまたは固定可能であってもよく、側部方向に延出した板状部などで形成してもよい。通常、上下左右の対称構造、例えば、上部走行壁及び下部走行壁を有する場合が多い。このような対称構造のレールを用いると、折り曲げ加工精度が高く、上下の方向性がなく、しかも右曲がりレールを反転させると左曲がりレールとして施工でき、施工性を高めることができ、変形も抑制できる。また、上部走行壁および下部走行壁にはアリ溝状の溝部8を形成する必要はないが、複数の隣接するレールの溝部8に連結ピンを装着または挿入し、連結ピンで複数のレールを接続または連結してもよく、補強軸部材または補強ピンを装着または挿入してレールを補強してもよく、マグネット部材などを装着または挿入して電磁位置合わせ機構を形成してもよい。
このようなレールは、左右および/または上下対称形状に形成してもよくランナーが垂下または懸垂状態で走行可能な前記下部走行壁に取り付け可能である。このようなレール部材において、支持壁に延びる溝10は必ずしも必要ではなく、走行路は、断面U字状に窪んで湾曲している必要はなく、断面凹状(または断面コ字状)に形成してもよく、断面凸状(または凸条もしくは周縁部の凸条)に形成してもよく、平坦であってもよい。なお、断面凸状の走行路は、走行路の幅方向の適所、例えば、中間部や外周部(外縁部)に形成してもよい。
レールは、必ずしも曲げ加工する必要はないが、施工箇所の形態などに応じて、長手方向に対して横方向(例えば、支持壁に対して直交する方向)に屈曲または曲げ可能であるのが好ましい。また、レールの支持壁の長手方向に延びる溝部10も必ずしも必要ではないが、支持壁の長手方向に少なくとも1つの溝部(例えば、レールの支持壁の高さに応じて、2~10、好ましくは3~7、さらに好ましくは4~6程度の複数の溝部)を形成すると、長手方向にいくにつれて屈曲または湾曲させる曲げ加工しても、歪みが生じることなく、平滑なレールを形成できる。
なお、機械的強度を大きくし、重量物の移送に利用しても耐久性を向上させるため、レールは大型化または厚肉化してもよい。例えば、レールの高さは30~100mm(例えば40~90mm、好ましくは50~80mm、さらに好ましくは55~75mm)、支持壁の厚みは3~15mm(例えば4~12mm、好ましくは5~10mm)、支持壁の長さは、レールの高さ全体の30~70%(例えば、35~65%、好ましくは40~60%)、延出部または走行壁(上部走行壁および下部走行壁)を含む上部壁および下部壁の幅(上端面および下端面全体の幅)はそれぞれ15~50mm(例えば20~45mm、好ましくは25~40mm、さらに好ましくは30~40mm)、走行壁(上部走行壁および下部走行壁)の厚みは2~10mm(例えば3~8mm、好ましくは4~6mm)程度であってもよい。さらに、走行路(走行壁)の最小厚みは、1~5mm(例えば1.2~3mm、好ましくは1.5~2.5mm)、溝部10の深さは0.1~1.5mm(例えば0.3~1.2mm、好ましくは0.5~1mm)程度であってもよい。
また、レールの材質は特に制限されないが、強度などの点から金属(例えば、金属の押出成形品など)であることが多い。例えば、鉄またはその合金などであってもよく、マグネット部材が磁気的に吸着可能な材質であってもよいが、簡便に位置合わせできる点から、アルミニウムまたはその合金などの磁気的に吸着不能な材質であるのが好ましい。
[切換ユニットの可動レール部材]
切換ユニットは、基準レールと複数の分岐レールとの分岐部(または交差部)に配置され、分岐したレール構造において、ランナーの進路を選択的に転換または案内(もしくは誘導)可能であればよい。
切換ユニットの可動レール部材は、基準レールと、複数の分岐レールとの間(または分岐部)に介在または配置され、前記基準レールと複数の分岐レールとを結ぶ方向に可動または配向可能(もしくは配列可能、振り分け可能)であればよく、例えば、複数の分岐レール部材のうち所定の分岐レール部材に向けて振り分け、前記基準レールと前記所定の分岐レールとを連絡してランナーを誘導または移行可能である。
可動レール部材は、移動機構と関連して、平行移動またはシフト可能であってもよく、例えば、回動または揺動機構、変向機構などにより、所定の分岐レール部材に向けて振り分けてもよく、基準レール(特に基準レール部材の端部)にヒンジ式に回動可能に連結され、基準レールとのヒンジ部を中心として回動または揺動可能であってもよい。また、回動可能な可動レール部材は、少なくとも複数の分岐レールに対して配向可能(または振り分け可能)な範囲で回動可能であってもよく、回動範囲の両端部位(最外部位)で接触位置合わせ機構を利用しなくても電磁位置合わせ機構により容易に位置決め可能であるため、必要であれば、回動範囲が、複数の分岐レールの範囲を超えてもよい。このような可動レール部材は、簡単な構造で、回動操作により、複数の分岐レールのうち所定の分岐レールに迅速に配向または振り分け可能である。
可動レール部材は、前記基準レールと複数の分岐レールのうち所定の分岐レール(例えば、前記基準分岐レール)とが連絡(または基準分岐レールに向いて配向または配列)可能な基準位置、および前記基準レールと複数の分岐レールのうち前記所定の分岐レール(例えば、前記基準分岐レール)以外の他の分岐レールとが連絡可能(または他の分岐レールに向いて配列可能)な移動位置(または第2の位置)のうち、最も離れた2つの位置の範囲で可動であってもよく、例えば、3つに分岐する場合(1つの基準分岐レールと、2つの移動分岐レールとを備える場合)、前記図に示す態様のように、2つの移動分岐レール(移動位置)間を連絡可能な範囲で可動であり、この可動範囲内に基準分岐レール(基準位置)が位置してもよく、前記図に示す態様とは異なって、基準位置と第1の移動分岐レール(第1の移動位置)との間を連絡可能な範囲で可動であり、この可動範囲内に第2の移動分岐レール(第2の移動位置)が位置してもよい(すなわち、移動分岐レールが内方分岐レールであってもよい)。
なお、基準位置は、例えば、可動範囲の任意の位置(例えば、隣接する複数の分岐レールと対向する位置、複数の分岐レールと対向せずに複数の分岐レールの間を向いた位置)であってもよく、前記図に示す態様のように、定常状態において、前記基準レールと前記基準分岐レールとをランナーが相互に走行可能な状態(基準レールと基準分岐レールとをランナーが走行するのを許容する状態)であってもよい。可動レール部材は、基準位置から移動位置に可動であってもよい。
可動レール部材の構造は、前記レール(基準レールおよび分岐レール)と同じく、ランナーが走行可能な走行部と、天井壁または上部空間に取り付けまたは配置可能な取付プレートなどの取付部材に対して取り付け可能または固定可能な取付部(側部方向に延出した板状部など)とを備えていればよく、長手方向に延びる支持壁と;この支持壁の少なくとも下端部で両側部方向に延出して形成され、ランナーが走行可能な走行壁と;この走行壁に形成され、かつランナーの車輪部が走行可能な走行路とを有していてもよい。
可動レール部材は、前記のように、ヒンジ部を利用して回動可能であってもよい。また、回動可能な可動レール部材では、取り付けプレートまたは取付部材に湾曲して形成されたスライド溝などに沿って回動な摺動部(摺動凸部など)を可動レール部材に形成し、この摺動部を利用して配向または回動させてもよく、必ずしも必要ではないが、前記図に示す態様のように、補強軸部材または補強ピンを利用して配向または回動させてもよい。
補強軸部材は、可動レール部材と一体化していればよく、必ずしも可動レール部材の前記溝を利用して装着または嵌入する必要はない。また、切り欠き部は、可動レール部材が取り付けプレートまたは取付部材に取り付けられる取付部側(前記の例では、支持壁の少なくとも上端部側)に形成すればよく、ランナーが走行可能である限り、長手方向に延びる補強軸部材で複数の可動レール部材片が間隔をおいて連結され、複数の可動レール部材片の間に切り欠き部が形成された形態であってもよい。切り欠き部は、ランナーの走行を阻害しない部位(非走行部または非走行域)に形成する場合が多い。
さらに、前記補強軸部材または補強ピンが貫通した形態の切り欠き部では、前記のように、支持部材が、前記補強軸部材または補強ピンを支持した形態で、スライドまたは摺動可能に取付プレートまたは取付部材に取付可能である。このような態様では、可動レール部材の移動に伴って、支持部材に対して補強軸部材または補強ピンが摺動する。そのため、補強軸部材または補強ピンを強靱で耐摩耗性の高い金属(例えば、鋼)やセラミックスで形成することにより、アルミニウムなどの金属に比べて、耐久性を向上できる。
なお、可動レール部材の可動範囲を規制する停止部材(ストッパー)は、必ずしも必要ではなく、停止部材(ストッパー)は、前記支持部材に形成することなく、取付プレート又は取付部材に形成してもよい。
切換ユニットにおいて、取付プレートは必ずしも必要ではなく、格子状、板状などの形態であってもよく、施工部位(天井壁や上部空間、もしくは側壁など)に取り付けてもよいが、レール構造の施工性を高めるためには、可動レール部材は、天井壁または上部空間に取り付けまたは配置可能な取付プレートまたは取付部材に取り付ける場合が多い。また、基準レールおよび複数の分岐レールは必ずしも取付プレートに取り付ける必要はなく、取付プレートの可動レール部材に対して、連絡または接続可能に配置してもよい。切換ユニットの施工性を高めるため、通常、取付プレートまたは取付部材には、可動レール部材と、前記基準レール部材と、前記複数の分岐レール部材とを取り付ける場合が多い。すなわち、基準レール部材と複数の分岐レール部材とを取付プレートまたは取付部材に取り付けまたは固定し、前記基準レール部材に対して基準レール本体を接続し、複数の分岐レール部材に対して、それぞれ、複数の分岐レール本体を接続するのが有利である。なお、前記のように、基準レール本体および複数の分岐レール本体は、それぞれ、ブラケットを利用して、施工部位(天井壁や上部空間、もしくは側壁など)に取り付け可能である。
[切換ユニットの位置合わせ機構]
切換ユニットは、可動レール部材とレール(レール部材)との位置を揃えて(位置決めして)、ランナーが円滑に走行可能な接続または連絡状態を形成するための位置合わせ機構(配向機構)として、少なくとも電磁位置合わせ機構(非接触または遠隔位置合わせ機構)を備えている。
電磁位置合わせ機構は、非接触(離間または遠隔)状態で作用可能な電磁気的な力(特に磁力)を作用させて、可動レール部材を所望の方向に配向(または指向)可能に位置制御できる機構であればよい。電磁気的な力の作用形態は特に制限されず、静電チャックなどを用いて電気的な力(静電気力など)を作用させてもよいが、生産性や施工性などの点から、磁性材料を含むマグネット部材(磁石または永久磁石)や電磁石などを用いて磁気的な力を作用させるのが好ましい。また、位置決め可能な限り、電磁気的吸着力または反発力のいずれを作用させてもよく、例えば、前記吸着力により可動レール部材を所望の方向に引き付けて配向させてもよく、可動レール部材に両側部から前記反発力を作用させて所望の方向に配向させてもよく、吸着力および反発力の双方を組み合わせて作用させてもよく、少なくとも吸着力(特に磁気的吸着力)を利用するのが簡便に位置決め可能な点で好ましい。
磁力を作用させる場合、一対のマグネット部材(永久磁石)を互いに吸着(または反発)させて電磁位置合わせ機構を形成してもよく、一方がマグネット部材であり、他方がこのマグネット部材に磁気的吸着可能な非マグネット部材[例えば、純鉄、ケイ素鉄、電磁ステンレス鋼(フェライト系またはマルテンサイト系ステンレス鋼)などの保磁力が低いまたは磁気(着磁または磁化)を長期間保持できない軟磁性体などを含む部材]であってもよい。配向性(または配向保持力)または位置決め精度を容易にまたは効率よく向上できる点から、少なくとも一対のマグネット部材を互いに反対の磁極を向けて配置し、その吸着力を利用して電磁位置合わせ機構を形成するのが好ましい。
また、互いに吸着(または反発)可能な部材は必ずしも一対である必要はなく、例えば、1つのマグネット部材に対して複数のマグネット部材(および/または前記非マグネット部材)を一組として吸着(または反発)可能に配置してもよく;このような吸着(または反発)可能な一組(また一対)の部材を複数組(または複数対)配置してもよい。具体的には、可動レール部材に取り付けられた1つのマグネット部材に対して、吸着可能な複数のマグネット部材(および/または前記非マグネット部材)を複数のレール(例えば、分岐レール)にそれぞれ取り付けて、前記複数のレール(複数の方向)に対して電磁位置合わせ機構を形成してもよく;可動レール部材と所定のレールとを位置決めまたは配向するために複数の(または複数組もしくは複数対の)マグネット部材(および/または前記非マグネット部材)を取り付け、高い吸着力(または反発力)で可動レール部材と前記所定のレールとの配向性(または配向保持力)または位置決め精度を向上してもよい。
マグネット部材(および/または前記非マグネット部材)の取付位置は、可動レール部材を位置決め可能であり、かつ可動レール部材の移動やランナーの走行などを大きく阻害しない限り特に制限されず、例えば、可動レール部材と、この可動レール部材に対向(または隣接)する部材とに互いに吸着可能に(例えば、互いに反対の磁極を向けて)それぞれ取り付けてもよく[例えば、可動レール部材とレール(基準レールまたは分岐レール)との対向部(対向面または端面(端部));可動レール部材の上部と取付プレートとの対向面;可動レール部材と、この可動レール部材を支持する板状支持部材との対向面などの可動レール部材と前記対向(または隣接)する部材との対向面などに互いに吸着可能にそれぞれ取り付けてもよく];また、必ずしも可動レール部材に取り付ける必要はなく、例えば、可動レール部材に連動して移動する板状規制部材(脱落防止壁または逆走防止板)と、その案内部材、取付プレートおよび/またはレールとの対向面などに互いに吸着可能にそれぞれ取り付けてもよく;これらを単独または二種以上組み合わせて取り付けてもよい。精度良く位置決め可能な点から、マグネット部材(および/または前記非マグネット部材)は少なくとも可動レール部材に取り付けるのが好ましく、特に、可動レール部材とレール(基準レールまたは分岐レール)との対向部(対向面または端面)に取り付けるのが好ましく、通常、可動レール部材およびレール(基準レールまたは分岐レール)の断面形状が同一である場合が多いため、前記図に示す態様における下部壁溝部8bのように、断面形状において同一の位置(例えば、レールを連結する際に連結ピンなどを挿入する位置など)に互いに対向して装着または挿入(または嵌入)すると、より一層高い精度で簡便に位置決めでき、生産性も向上できるため好ましい。
マグネット部材(および前記非マグネット部材)の形状は特に制限されず、棒状または柱状(円柱状、四角柱状などの多角柱状など)、板状(シート状またはフィルム状)、U字状またはC字状、リング状、球状またはボール状、複雑形状などであってもよい。取り付けまたは位置決めし易い点で、棒状または柱状(円柱状、四角柱状などの多角柱状など)、板状(シート状またはフィルム状)が好ましく、棒状または柱状がさらに好ましい。各マグネット部材の形状は、位置合わせ可能な限り、同一または異なっていてもよい。
なお、マグネット部材としては、例えば、フェライト磁石、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石などが挙げられ、ネオジム磁石が好ましい。また、マグネット部材は少なくとも磁性材料(鉄、ニッケル、コバルト、これらを含む合金などの強磁性体)を含んでいればよく、硬質マグネット部材であってもよく、軟質マグネット部材であってもよく、例えば、磁石に表面処理(コーティング処理、メッキ処理など)を施したマグネット部材、粉末状の磁性材料(磁性粉末)を樹脂(プラスチック)またはエラストマー(ゴムなど)と混合したマグネット部材などであってもよい。
マグネット部材の残留磁束密度、最大エネルギー積などの磁気特性は、レールの構造やサイズなどに応じて適宜選択でき、前記残留磁束密度は、例えば、1~20kG(好ましくは10~15kG、さらに好ましくは12~13kG)程度から選択してもよく;前記最大エネルギー積は、例えば、0.3~40MGOe(好ましくは20~40MGOe、さらに好ましくは35~40MGOe)程度から選択してもよい。
なお、必ずしも必要ではないが、位置合わせ機構は、可動レール部材の可動域端部で接続または連絡するレール(例えば、最外分岐レール)と容易に位置合わせできる点から、可動レール部材の可動域を制限または規制するための停止部材(可動レール部材のストッパー)などを利用して(接触または当接により)位置決めする接触位置合わせ機構(当接位置合わせ機構)を備えていてもよい。可動レール部材の停止部材(ストッパー)は、金属製ブロックなどで形成してもよく、可動域を制限または規制できる限り、その形状、数、および取付位置などは特に制限されない。
[切換ユニットの移動機構]
前記可動レール部材を所定の方向に移動させて基準レールと複数の分岐レールのうち所定の分岐レールとを連絡可能な移動機構(または運動伝達機構)は、必ずしも備えていなくてもよく、例えば、ヒンジ式に連結された可動レール部材にランナーを侵入または走行させ、このランナーを介して被移送体(被搬送体)を牽引(例えば、進行方向に対して横方向に牽引)することで、所望の進路(または分岐レール)に向かって手動で可動レール部材を移動させて切り換えてもよい。このように移動機構を備えていなくても電磁位置合わせ機構により容易に位置決めできるため(移動機構が位置合わせ機構を兼ねる必要がないため)、構造を簡素化して生産性またはメンテナンス性を向上することもできるが、より円滑にまたは効率よく進路を切り換えまたはランナーを走行できる点から、必要に応じて、移動機構を備えていてもよい。
移動機構の移動形態は特に制限されず、可動レール部材を平行移動させてもよく、可動レール部材を、前記基準レールとのヒンジ部を中心として回動または揺動形態で移動させてもよい。
代表的な移動機構としては、例えば、特開2019-142713号公報(特許文献2)に記載の移動機構(例えば、[0088]~[0094]に記載の移動機構など)などであってもよいが、本発明の切換ユニットでは電磁位置合わせ機構を備えているため、移動機構は必ずしも位置合わせ機構を兼ねる必要がなく、可動レール部材の大まかな(ラフな)方向または配向を変更可能な程度に位置制御できる機構であればよい。すなわち、電磁位置合わせ機構による位置合わせ動作を阻害することなく許容可能な移動機構が好ましく、例えば、可動レール部材を遊びをもった形態で位置制御(方向または配向制御)可能な移動機構(または移動手段)であってもよい。そのため、移動機構の構造を簡素化でき、生産性またはメンテナンス性を向上することもできる。
可動レール部材の位置(方向または配向)をレールとの接続位置(または連絡位置)に対して遊びをもって制御(移動または配向)可能な移動機構(または移動手段)は特に制限されず、例えば、可動レール部材に対して、遊びをもった形態で直接的または間接的に取り付けられたリンク部材を運動または移動させる機構[例えば、可動レール部材の側壁(または支持壁)などに、進退動可能(押進または牽引可能)なロッド部材の先端部などが遊びをもって抜け不能に貫通または遊嵌して接続または連結された機構(前記図4に示す態様において、一対のバネ部材28(28a,28b)を有しない態様など);可動レール部材の側壁(または支持壁)などに形成された収容部に、進退動可能(押進または牽引可能)なロッド部材の先端部などが遊びをもって抜け不能に遊嵌または接続された機構(例えば、特開2019-142713号公報(特許文献2)の[0091]~[0092]および図17に記載のシリンダー機構など)など];弾性部材(バネ部材、ゴム状部材など)および/または緩衝部材(クッション部材、ダンパーなど)を介して可動レール部材を直接的または間接的に移動させる機構[例えば、一方の端部が可動レール部材の側壁(または支持壁)などに直接的または間接的に取り付けられた弾性部材(バネ部材、ゴム状部材など)の他方の端部に、進退動可能(押進または牽引可能)なロッド部材の先端部などが直接的または間接的に取り付けられた機構など];これらを組み合わせた機構(前記図4に示す態様など)などが挙げられる。少なくとも前記弾性部材および/または緩衝部材を介して可動レール部材を直接的または間接的に移動させる機構を備えていると、想定外の外力などによる切換ユニット(可動レール部材および/または移動機構)への過度な衝撃(負荷)を吸収する衝撃吸収機構(緩衝機構)を形成して耐久性を向上でき、特に、弾性部材を用いるとその弾性力により可動レール部材を押圧または付勢できるため、接触位置合わせ機構と組み合わせた際に、可動レール部材の配向(接続または連絡状態)を保持(補助または矯正)する配向保持機構(配向補助機構)も形成できる。
好ましい移動機構は、前記図に示す態様のように、可動レール部材に遊びをもって貫通または遊嵌する形態で抜け不能に連結されたリンク部材(アームリンク、ロッド部材または連杆)と、このリンク部材に装着または挿通され、かつ可動レール部材を介して(または遊びをもって挟む形態で)互いに離間する一対の弾性部材(または緩衝部材)とを備えていてもよい。このように可動レール部材と移動機構(リンク部材)との連結部に一対の弾性部材(または緩衝部材)を(特に遊離状態でまたはスライド可能に)介在させると、接触位置合わせ機構のみならず、電磁位置合わせ機構に対しても有効に配向保持機構を形成できるとともに、前記衝撃吸収機構も形成できる。
一対の弾性部材(または緩衝部材)は、リンク部材に装着または挿通可能であれば特に制限されず、遊離状態で(またはスライド可能に)容易に装着できる点から中空状(バネ部材、中空状ゴム部材など)であるのが好ましく、特に、弾性力を有効に作用でき、配向保持機構を形成し易いバネ部材(スプリング)が好ましい。なお、前記図に示す態様では、一対の弾性部材(バネ部材)は、一対のワッシャー部材を介して可動レール部材と隣接させているが、この一対のワッシャー部材は必ずしも必要ではない。
リンク部材は、特に制限されないが、ロッド状であることが多く、単一の断面形状を有するロッド状であってもよいが、前記図に示す態様のように、板上部(板状リンク部材)と棒状またはボルト状部(棒状またはボルト状リンク部材)とが接合された形態などの全体としてロッド状の形態であってもよい。可動レール部材に対して遊びをもって抜け不能に接続または連結(貫通または遊嵌)する際に、一対の抜け止め部材(ナット部材、調整部材またはアジャスター)を容易に装着できる点から、可動レール部材との連結部(例えば、リンク部材の先端部)は少なくとも棒状またはボルト状(棒状またはボルト状リンク部材)であるのが好ましい。
なお、一対の抜け止め部材(ナット部材、調整部材またはアジャスター)は、可動レール部材(および一対の弾性部材(または緩衝部材))をリンク部材から抜け不能にできる限り特に制限されず、例えば、ナット部材、カラー部材(セットカラー)などであってもよく、リンク部材と一体的に形成されていてもよく、抜け止め部材の固定位置を調整し易くメンテナンス性を向上できる点でナット部材が好ましい。すなわち、一対の抜け止め部材(調整部材またはアジャスター)は、その位置(取付位置または固定位置)をリンク部材の長手方向に対して調整自在であるのが好ましい。
また、移動機構は、前記リンク部材の運動(または移動)を可動レール部材に伝達することで形成でき、例えば、リンク部材[可動レール部材の長さ方向(走行方向)に対して所定の角度(例えば45~135°程度、好ましくはほぼ直角)で交差する方向に延びるリンク部材]を軸方向に進退動する運動を可動レール部材に伝達して移動させる機構であってもよい。なお、可動レール部材がヒンジ部などの固定部を有する場合、運動または力を可動レール部材に容易にまたは効率よく伝達できる点から、リンク部材は、前記固定部から離れた位置で取り付けまたは連結されるのが好ましい。
リンク部材を運動させるための運動機構[例えば、リンク部材を進退動(押進または牽引)または往復可能な運動機構]は特に制限されず、例えば、直線運動または進退動(または往復運動)(進退動機構)、揺動運動(揺動機構)、回転運動(回転機構)などの種々の運動を利用または変換してリンク部材を運動させる運動機構(種々の機械要素などを組み合わせた運動変換機構)であってもよく、具体的には、複数のリンク(節)を対偶で結合(またはジョイント)するリンク機構(例えば、クランク機構、スライダクランク機構など)、シリンダー(油圧式シリンダー、空圧式シリンダーなど)やソレノイドなどを用いるシリンダー機構、歯車を用いる歯車機構(ラックおよびピニオン機構、ウォームおよびウォームホイール機構など)、カム(例えば、板カム、溝カムなどの平面カム、端面カム、円筒カムなどの立体カム)を用いるカム機構、ベルト(およびプーリ)を用いるベルト機構(調帯伝動機構)などが挙げられ、これらは単独でまたは二種以上組み合わせてもよい。
リンク部材を動かすための運動機構としては、電気的に制御し易い点から、モーターの回転運動または回動(または揺動)運動を利用してリンク部材の進退動または往復運動に変換可能な機構であるのが好ましい。モーターとしては、例えば、ウォームギヤなどにより停止したモーター軸(原動軸または駆動軸)の位置を固定または保持できるものが好ましく、具体的には、ギヤードモーター(直交軸ギヤードモーター、平行軸ギヤードモーターなど)などのステッピングモーターなどであってもよい。ステッピングモーターを用いると、通常、脱調などの不具合で制御性(同期性)が低下して制御位置のズレ(またはモーターの回転周期のズレ)が生じるおそれがあるが、本発明の切換ユニットでは、移動機構で正確または精密な位置制御をしなくても可動レール部材を位置合わせ可能なため、脱調などの不具合が生じても、前記ズレを許容して位置合わせできるのみならず、前記一対の抜け止め部材(ナット部材、調整部材またはアジャスター)を利用してズレを修正(調整)または解消できるため、耐久性またはメンテナンス性に優れている。
このように電気的に動作または制御可能な移動機構を利用すると、被搬送体を自動的に所定の搬送先または所定のステーションに移送することもできる。例えば、被搬送体に貼付または取り付けられ、搬送先または所定のステーションに関する情報を含むタグ(バーコードなどの情報を含む情報記録媒体)と、このタグの情報を読み取り可能なセンサー(光学センサーなど)と、このセンサーからの情報に基づいて、搬送先または所定のステーションに搬送するための切換信号を生成する制御ユニットと、この制御ユニットからの切換信号に基づいて、前記シリンダー(ソレノイド)、モーターを駆動するための駆動ユニットとを備えた制御システムを利用することにより、被搬送体を自動的に所定の搬送先または所定のステーションに移送できる。
なお、可動レール部材または分岐部へのランナーの進入を、圧力センサー、光学センサーなどで検出し、この検出信号(スイッチ信号)と制御ユニットの前記切換信号とを利用して、可動レール部材を所定の方向に振り分けまたは配向させてもよい。
さらに、前記と同様に、停止部材を利用して可動レール部材の可動域を規定してもよい。なお、停止部材の位置は、可動レール部材を停止できる限り形状や取付位置などは特に制限されず、前記図に示す例のように必ずしも板状支持部材の取付位置に取り付ける必要はなく、例えば、2つの板状支持部材の間の位置などに取り付けてもよい。また、可動域の規定に必ずしも停止部材を用いなくてもよく、例えば、センサーやスイッチを利用した機構(センサー機構またはスイッチ機構)などを用い、所定の位置(可動域の端部)にあることを検出し、得られた検出信号に基づいて駆動ユニット(モーターなど)に停止信号を送信し、可動レール部材の可動域を規定または制御してもよい。
なお、前記基準レールと複数の分岐レールのうち所定の分岐レールとが連絡可能な基準位置と移動位置とに可動な可動レール部材(複数の分岐レールの全てに向けて配向可能な範囲で可動な可動レール部材)を備えた切換ユニットにおいて、移動機構は、所定の位置で可動レール部材を固定またはロックするためのロック機構と、ロック位置(前記所定の位置)でロック状態を解除するためのロック解除機構とを備えていてもよい。このような移動機構では、ロック機構を利用して、前記可動レール部材を前記移動位置または基準位置で固定してランナーを円滑に分岐レールまたは基準レールに走行させることができ、ロック解除機構を利用して、前記ロック機構を解除して前記可動レール部材を前記基準位置または移動位置に移動または復帰させることができる。ロック機構およびロック解除機構は必ずしも必要ではなく、前記シリンダーなどの進退動機構、モーターなどの回転機構を利用する場合、ロック機構は、シリンダーなどの進退動機構の進退度、モーターなどの回転機構の回転数などに対応して作動させることができ、ロック解除機構は、所定位置からの進退動、回転動などに対応して作動させることができる。
[切換ユニットの規制または遮断手段]
なお、切換ユニットにおいて、ランナーが逆走して脱輪または脱落するのを防止するための規制手段(逆走防止手段または遮断手段)は、必ずしも必要ではないが、複数の分岐レールのうち所定の分岐レールに移行したランナーが基準レール(可動レール部材)の方向に走行して前記分岐レールから脱落または脱離するのを規制または防止するための規制手段を備えているのが好ましい。この規制手段は、前記可動レール部材が前記基準位置および移動位置に位置する状態で、それぞれ、前記分岐レール(可動レール部材と連絡可能な連絡分岐レールとしての基準分岐レールおよび移動分岐レール)に進入または移行したランナーが後退して前記分岐レール(連絡分岐レール)から脱輪(もしくは脱落)するのを規制または防止してもよい。すなわち、前記可動レール部材が前記基準位置および移動位置のうち一方の位置に位置するとき、一方の位置で前記可動レール部材を介して連絡する分岐レール(例えば、移動分岐レール)と基準レールとの間でランナーが走行するのを許容し、前記可動レール部材を前記一方の位置から他方の位置に切換または移動させたとき、前記分岐レール(例えば、移動分岐レール)と基準レールとの連絡路を遮断し、前記分岐レール(例えば、移動分岐レール)または基準レールに移行したランナーが逆送して前記分岐レール(例えば、移動分岐レール)または基準レールから脱輪するのを防止してもよい。
この規制手段には、板状の規制部材(逆走防止板)に限らず、ピンまたは棒状の規制部材、規制壁部材、シャッターなどの種々の遮断部材(移動規制部材)が利用できる。前記規制手段は、可動レール部材とは独立して作動可能であってもよく、構造を簡素化するためには、前記可動レール部材に取り付け、前記可動レール部材と連動して、前記基準位置と移動位置とでランナーの脱落を防止または規制してもよい。例えば、前記可動レール部材に板状規制部材(逆走防止板)を取り付け、前記移動機構と連動して、前記基準位置および移動位置では、それぞれ、ランナーが進入または移行した前記分岐レールと前記基準レールとの連絡路を遮断してもよい。なお、規制手段(板状規制部材など)は、可動レール部材の前方(軸方向)に対応する部位に、ランナーが走行(または通過)可能な切り欠き部(通過部)を形成し、前記可動レール部材に取り付けて、前記可動レール部材と連動可能としてもよい。また、規制手段(板状規制部材など)を案内する案内溝は必ずしも必要ではない。
なお、前記制御システムを利用する場合には、制御ユニットからの前記切換信号に応答して、シャッターなどの遮断部材(逆走防止板)を駆動させ、所定の連絡路を遮蔽してもよい。
[ランナー(または走行部材)]
ランナー(または走行部材)は前記レールに沿って走行可能であればよく、レールの構造(例えば、前記下部に長手方向に延びるスリット状開口部を有する断面中空状、例えば、四角枠中空状)に対応して、対向する両側壁から延びる1または複数の走行壁を走行可能な車輪部と、この車輪部を軸支する軸部と、この軸部を支持し、前記スリット状開口部から垂下する支持部と、この支持部に直接的または回動部材を介して取り付けられ、被搬送体を取り付けるための取付または接続手段(前記リング部材など)を有していてもよい。好ましいランナーは、対向する両側壁を有する断面コ字状の支持部と、この支持部の両側壁にそれぞれ対向して取り付けられた一対の軸部または軸部材(一対の対向軸部材)と、これらの軸部または軸部材に回転可能に取り付けられ、レール部材の走行路を走行可能な車輪部(例えば、ボールベアリングなどのベアリング部材が軸部材に回転可能に装着された回転体)と、前記支持部の底部壁または下部壁に取り付けられ、被移送体または被搬送体が接続または取り付け可能な接続または連結手段(取付部材)とを備えていてもよい。
なお、支持部の両側壁には、互いに対向して少なくとも一対の軸部材を取り付ければよく、走行方向(長手方向)に間隔をおいて複数対(例えば2~6対、好ましくは3~5対、さらに好ましくは3~4対)の軸部材を取り付けてもよい。複数対の軸部材を取り付けることにより、これらの軸部材に回転可能に取り付けられた複数対の車輪部により被移送体を有効に支持でき、重量の大きな被移送体(または被搬送体)も円滑に移送または搬送できる。さらに、レールの連絡部または分岐部であっても、脱輪することなく、ランナーを円滑に走行できる。
ランナーにおいて、断面コ字状の支持部の屈曲コーナー部には必ずしも陥没部は必要ではないが、所定幅で内側(内方)に凹状に窪んだ陥没部(刻設部)を形成すると、ランナーの強度を高めることができる。前記屈曲コーナー部には、少なくとも1つの陥没部を形成してもよく、長手方向に間隔をおいて複数の陥没部を形成してもよい。
車輪部(ローラ)は、円滑に走行可能である限り、ベアリング部材および/または外周部の被覆樹脂は必ずしも必要ではない。円滑に回転させ、比較的大きな速度でランナーを走行させるためには、ベアリング部材(またはベアリング)を備えているのが好ましく、静音性を確保するためには外周部が樹脂で被覆又は形成されているのが好ましい。また、ベアリング部材(またはベアリング)の外輪(金属製外輪)を、車輪またはタイヤ状、例えば、外周方向(半径方向)に膨出(湾曲して膨出)した形態に金属などで形成し、耐久性を向上させてもよい。なお、車輪部の外周部は、レール部材の走行路に適合した形態を有している場合が多い。例えば、車輪部の外周部は、湾曲凹状、溝状または凸条の走行路に対応させて、断面湾曲凸状、コ字状または台形状の形態(周面に走行溝部が形成された形態)を有していてもよい。
前記支持部の底部壁または下部壁には、移動体または被移送体(または被搬送体)を接続または取り付けるための接続または連結手段が取り付け可能であり、この接続または連結手段は、前記支持体に回転可能に取り付けられた軸部材を利用して、支持体に対して回転可能であってもよい。また、接続または連結手段は、移動体または被移送体(または被搬送体)が着脱可能であればよく、前記リング部材に限らず、例えば、被移送体(または被搬送体)が係止可能なフック部などの係止部材などであってもよい。例えば、前記リング部材57に代えて、被搬送体をワンタッチ式に着脱可能に取付または連結するためのワンタッチ式リング部材を取り付けてもよく、このリング部材の開放部(側部などに形成された開放部)には、被搬送体をワンタッチ式に着脱するため、一方の端部が回動可能であり、他方の端部が開放部を閉止可能な開閉ピン(開閉可能な開閉ピン)を取り付けてもよい。
このように、本発明では、軽量物のみならず、重量物(例えば、20kg以上(例えば、30~500kg)、好ましくは30kg以上(例えば、40~400kg)、さらに好ましくは50kg以上(例えば、50~300kg)程度の重量の被搬送体)を搬送するのに有用であり;30kg以上(例えば、30~250kg、好ましくは40~200kg、さらに好ましくは50~150kg)程度の重量の被搬送体;100kg以上(例えば、100~450kg、好ましくは150~400kg、さらに好ましくは200~300kg)程度の重量の被搬送体を搬送するのにも適している。特に、複数対の車輪部および/または陥没部を有するランナーを用いると、機械的強度を大きくでき、重量物の搬送または移送に利用しても耐久性を向上できる。
なお、移動体または被移送体(または被搬送体)は、その形態(形状、重量など)に応じて、チェーン(チェーンスリング)、ワイヤー(ワイヤーロープスリング)、ベルト(ベルトスリング)などの吊り具部材(吊り索部材またはスリング部材)を介して接続または連結手段と取り付けられていてもよく、この吊り具部材(吊り索部材またはスリング部材)には、搬送者または移送者が把持可能な把持部材や切換ユニットの動作を操作可能な(または進路を切換可能な)操作盤(リモコン)などが取り付けられていてもよい。なお、前記図に示す例のように、操作盤(リモコン)は進路を選択するための進路制御ボタン72(各進路に対応した選択ボタン),73(各進路を所定の順序で切り換えるボタン)の双方を備えていなくてもよく、いずれか一方を備えていてもよく、少なくとも進路制御ボタン72(各進路に対応した選択ボタン)を備えていると、対応する選択信号に基づいて進路を制御し易い点で好ましい。例えば、複数の切換ユニットを用いた搬送システム(複数の分岐部を有する搬送路を備えた搬送システム)を形成して、各切換ユニット(各分岐部)の進路をホストコンピューターなどで管理する際においても、各進路に対応する前記選択信号を利用して容易に制御または管理できる。
また、必要に応じて、移動体または被移送体(または被搬送体)は、上下方向に昇降可能な昇降機(ホイスト、ウインチ、チェーンブロックなど)を介して接続または連結手段に取り付けられていてもよい。
例えば、図14に示す態様では、2つのランナー(第1のランナー)81a,81bの各リング部材87a,87bにホイスト82が接続または連結され、このホイスト82に移動体または被移送体(または被搬送体)が、吊り具部材(吊り索部材またはスリング部材)58[この例では把持部材59および操作盤(リモコン)71が取り付けられたチェーン]を介して接続または連結されている。なお、各ランナー(各第1のランナー)81a,81bの構成は、いずれも前記ランナー51と同様である。また、ホイスト82に電力を供給するための電線コード(電源コードまたは電源ケーブル)83は、前記第1のランナー81a,81bに後続する複数のランナー(第2のランナー)91a,91bの各リング部材97a,97bに結束バンドで取り付けまたは懸架されている。このような態様では、移動体または被移送体(または被搬送体)が重量物であっても、ホイスト82による上下動を利用して容易に昇降できるとともに、電線コード(電源コードまたは電源ケーブル)83が緩んだ状態で(またはレール長手方向に伸縮可能に)後続する複数の第2のランナー91a,91bに取り付けまたは懸架されており、電線(電源コードまたは電源ケーブル)83が移動体または被移送体(または被搬送体)の進路または動線を横断して移送または搬送を阻害することもないため、円滑または容易に効率よく移送または搬送できる。
なお、前記ランナー(第2のランナー)91a,91bの構成は、前記ランナー51とほぼ同様であってもよく、例えば、軸部材53および車輪部54の数をそれぞれ二対から一対とし、これに対応して断面コ字状の支持部52を長さ方向に短く、かつ陥没部(または刻設部)55を一対の軸部材の取り付け位置の下方に2つ形成したこと以外は同様の構成であってもよい。第2のランナー91a,91bでは、軸部材および車輪部の数が一対であるため、断面コ字状の支持部が前記軸部材を起点として前後方向に傾倒(揺動または回動)可能である。このような第2のランナー91a,91bでは、第1のランナー81a,81bを先行させて往路を進行する場合(図14中、左側へ向かう方向)は円滑に走行できる一方で、第2のランナー91a,91bを先行させて復路を進行する場合(図14中、右側へ向かう方向)は、移送者が複数の第2のランナー91a,91bを押し込むように進行することになるため、傾倒した第2のランナー91a,91bの断面コ字状の支持部同士が互いに進入または重なり合う(または乗り上げる)などして、円滑に走行できないおそれがある。そのため、ランナーは、隣接して走行するランナーとの過度な接触または重なり合い(進入または乗り上げ)を規制または抑制するための規制壁(規制部、規制手段、防護壁またはバンパー)を備えていてもよい。
図15は、第2のランナーの他の例を示す概略斜視図であり、前記規制壁を備える点以外は、前記ランナー91a,91bの構成と同様である。すなわち、前記レールに沿って走行可能な第2のランナー101は、対向する両側壁102a,102bおよび下部壁(または底部壁)102cを有し、上部が開放した断面コ字状の支持部102と、この支持部の両側壁102a,102bに対向して、かつ走行方向に間隔をおいて取り付けられた一対の軸部材103と、これらの軸部材103に回転可能に取り付けられ、レールの走行路7を走行可能な一対の車輪部(回転体、または外周部が樹脂または金属で被覆されたボールベアリング)104とを備えている。この一対の車輪部104の進行方向前方および後方には、前記支持部102の両側壁102a,102bの両側部から所定幅で互いに対向する方向に延びる二対の規制壁(規制部、防護壁またはバンパー)108a,108bが形成されている。なお、車輪部104の外周は、前記レールの走行路7に対応して、断面形状において、外方向に湾曲してタイヤ状に形成されている。また、第2のランナー101(支持部102)を補強するため、断面コ字状の支持部102の屈曲コーナー部には、所定幅で内側に凹状に窪んだ陥没部(または刻設部)105が(この例では、一対の軸部材103の取り付け位置の下方に2つ)形成されている。支持部102の下部壁102cには、軸部材106が周方向に回転可能に取り付けられ、この軸部材106には、接続または連結手段として、被移送体(被搬送体)を着脱可能に取付または連結するためのリング部材107が揺動可能に取り付けられている。このように規制壁(規制部、防護壁またはバンパー)を備えたランナーを用いると、隣接して走行する(先行または後続する)他のランナーとの接触または重なり合い(進入または乗り上げ)を有効に規制または抑制でき、複数のランナーを走行させる場合であっても円滑に移送または搬送できる。
なお、規制壁(規制部、防護壁またはバンパー)は、隣接するランナーとの接触または重なり合い(進入または乗り上げ)を規制または抑制できれば、形状や位置などは特に制限されず、必ずしも前記支持部の両側壁の両側部から延出または突出していなくてもよく、例えば、前記支持部の両側壁の上部を覆う形態で枠上に(例えば、車輪部を覆うフェンダーのように)形成してもよく;また、必ずしも車輪部の進行方向前方および後方に二対形成されていなくてもよく、前方または後方のいずれか一方に一対のみ形成してもよく、前方と後方とに互い違いに(一対ではなく)一つずつ形成してもよい。
また、規制壁(規制部、防護壁またはバンパー)は、第2のランナーに限らず、必要に応じて、前記第1のランナー51,81a,81bのように複数対の車輪部を有するランナーが備えていてもよい。
[ランナーのストッパー]
さらに、レールおよび/またはランナーには、必要により、ランナーの走行を停止させるためのストッパーを取り付けてもよい。例えば、レールの底部壁(下部壁の底面)には、ランナーとの接触により上下方向に弾性変形し、ランナーの走行を停止させるためのストッパーを配設してもよい。
代表的なストッパー(ランナーのストッパー)としては、特開2019-142713号公報(特許文献2)に記載のストッパー(例えば、[0051]~[0053]、[0122]~[0130]および図9~10に記載のストッパーなど)などが挙げられ、より具体的なストッパーとしては、例えば、バネ鋼材などで細幅の板状に形成され;長手方向の両側部に位置し、レールの下部壁(走行壁の下部壁)に取り付け可能な2つの板状取付部と;これらの板状取付部の間においてレールから遊離する遊離部(例えば、全体としてアーチ状または弓形状の形態を有する遊離部など)に、前記板状取付部に隣接して形成された2つの山形状弾性変形部とを備えたストッパー(例えば、常態において、2つの前記板状取付部から下方向に膨らんでアール状に湾曲した第1の湾曲部と、これらの第1の湾曲部の頂点から上方向に膨らんで緩やかに湾曲した谷部または第2の湾曲部とを有するストッパーなど)などが挙げられる。すなわち、レールまたはレール部材に取り付けられたストッパー(ランナーのストッパー)の弾性変形部は、前記ランナーの支持部の底部壁または下部壁に対して接触可能であってもよい。
このようなランナーのストッパーを備えていると、ランナーまたは被移送体(被搬送体)を所定のステーションで停止できる。そのため、開始ステーションでランナーの取付または接続手段(前記リング部など)に懸垂状態で被搬送体(被移送体)を取り付け、ランナーを走行させ、第1のステーションで、懸垂状態で取り付けられた被搬送体(被移送体)を取付または接続手段から取り外して、開始ステーションにランナーを返送することもでき、第1のステーションで、必要により新たな被搬送体(被移送体)を取付または接続手段に取り付けて(または新たな被搬送体(被移送体)に交換して)、後続の第2のステーションに搬送または移送することもできる。このようなストッパーは、少なくとも1つのステーションで被搬送体(被移送体)を着脱交換可能に移送するための搬送システム(移送システム)を形成するのに有用である。
[ブラケット]
レール(基準レール本体および複数の分岐レール本体など)は、ブラケットを利用して天井壁、側壁などの施工部位に直接的または間接的に取り付けてもよい。
代表的なブラケットとしては、特開2019-142713号公報(特許文献2)に記載のブラケット(例えば、[0054]~[0060]および図11~14に記載のブラケットなど)などが挙げられるが、特に制限されず、レールの構造および取付施工部位の形態に応じて、施工部位に、密着してまたは遊離して(例えば、吊り下げ状態、壁面と平行な形態で)種々の構造が採用できる。例えば、ブラケットは、レールに対する取付機構(係合機構、挟着機構など)と、天井壁または上部空間の取付部および/または側壁などに取り付けまたは固定可能な取付部とを備えていてもよい。
例えば、(a)天井壁または上部空間の取付部(上部壁)に取り付けまたは配置可能な取付部材(例えば、板状取付部材または取付プレート)と、この取付部材の両端部から屈曲または湾曲してレールの上部走行壁に係合または挟着可能な係合壁(例えば、屈曲して取付部材と平行に延びる係合壁)と、この係合壁と取付部材とを貫通して螺合可能な螺合部材とを備えていてもよい。このブラケット(a)では、螺合部材で取付部材を上部壁に取り付け、前記係合壁に螺合部材を螺合してレールの走行壁を下方から挟着してもよく、前記係合壁と取付部材とを貫通する螺合部材で前記取付部材を上部壁に取り付けてもよい。
また、ブラケットは、(b)取付部材の一方の端部から屈曲してレールの上部走行壁に係合可能な係合壁と、この係合壁が上部走行壁の一方の走行壁と係合した状態で、取付部材の他方の端部側の壁部(例えば、取付部材に対して直交する方向に延びる壁部)に回動可能に取り付けられ、回動に伴って進退動して上部走行壁の他方の走行壁と係合可能な回動部材(または回動爪)とを備えていてもよい。(c)この回動部材(または回動爪)に代えて、取付部材の他方の端部側の壁部に進退動可能に取り付けられ、この進退動に伴って上部走行壁の他方の走行壁と係合可能な進退動部材(ネジ部材、バネ部材により付勢された付勢部材などの進退動爪)とを備えていてもよい。このブラケット(b)(c)では、螺合部材で取付部材の他方の端部を上部壁などに取り付けてもよい。
さらに、前記取付部材(板状取付部材)には、側壁および/または上部壁などに取り付けるための補助ブラケット(二次ブラケット)、例えば、(d)前記取付部材に取り付け可能なベース部(溶着、ネジ部材などで取付部材と一体化可能なベース部)と、このベース部から断面L字状またはコ字状の形態で屈曲または立ち上がり、ネジ部材などの取り付け手段により、側壁または上部壁に取り付け可能な取付部(起立部または横部など)とを有する補助ブラケット(二次ブラケット)を備えていてもよい。また、施工部位が、壁部から側方に延出する延出部、天井壁から垂下し、下端部で側方に延出する延出部などの延出部であるとき、補助ブラケット(二次ブラケット)は、(e)前記ベース部に一体に取り付けられ、前記延出部が挿入または装着可能な断面コ字状またはU字状の受容部材と、この受容部材の上部壁から下部壁に向かって螺合可能であり、前記延出部を受容部材の下部壁に挟着するための挟着部材(例えば、ネジ部材)とを備えていてもよい。
[誘導装置(制御装置)]
本発明の切換ユニットは、誘導装置(制御装置)を備えていてもよい。誘導装置(制御装置)は、制御ユニットからの駆動信号に基づいて駆動または出力可能な駆動回路を備えた出力ユニット(駆動ユニットまたはアクチュエータ)を備えていてもよく、例えば、電磁ソレノイド(ソレノイドアクチュエータ)、ステッピングモーター、シリンダー(油圧式または気圧式シリンダー)などであってもよく、この出力ユニット(駆動ユニットまたはアクチュエータ)が前記移動機構を形成してもよい。
誘導装置(制御ユニット)は、ランナー(移動体または被搬送体)の進行方向(分岐方向または進路)に関する情報を得るための第1の情報取得手段(入力ユニットとしての第1の情報取得手段)を備えていてもよく、この第1の情報取得手段からの情報に基づいて(または第1の情報取得手段からの信号に応答して)、前記出力ユニット(駆動ユニットまたはアクチュエータ)を駆動して、可動レール部材を所望の進行方向に接続または連絡してもよい。具体的な第1の情報取得手段は、ランナー(移動体または被搬送体)の進行方向を選択する選択手段(進路選択手段)であってもよく、ランナー(移動体または被搬送体)の進行方向を検出するための検出手段であってもよい。前記選択手段は、右、左、中央(直進など)などの進行方向に関する情報、所定の部屋などの移動部位または搬送部位などの場所(または目的地)に関する情報などを、前述のステップST1などのようにボタン選択などにより選択してもよく、音声認識ユニット(音声認識システム)を利用して発音または指示により選択してもよく、この選択手段からの選択信号に基づいて、制御ユニットは、前記出力ユニットの駆動回路に駆動信号を与えてもよい。また、前記検出手段は、光学センサー、速度センサー、加速度センサー、温度センサー、磁気センサー、移動体または被搬送体を識別可能なセンサー(画像センサーなど)などのセンサー;バーコード、QRコード(登録商標)などの識別コード、非接触タグ(ICタグなど)、ICカードなどの識別子(ID)[例えば、ランナー(移動体または被搬送体)に付与された識別子(ID)など]などを読み取りまたは識別(または検出)可能な読み取りユニット(読み取り手段または識別手段)などを利用して、ランナーの走行方向(移動体または被搬送体の移動または搬送方向)を検出してもよく、利用者(移動体、または被搬送体を搬送する搬送者)の脚部や足の動き、顔や眼球の向き(または移動方向)などに基づいて移動体または被搬送体の進行方向を検出してもよい。なお、前記識別子(ID)は、識別システム[例えば、顔認識システム、指紋認証システム、虹彩認識システム、声認証(声紋認証)システムなどの人に関する情報を認識可能な認識システム(生体認証システム)、物品の形状などの物品の特性情報を認識可能な認識システムなど]で認識または識別可能であってもよい。
ランナー(移動体または被搬送体)の進行方向は必ずしも手動で選択しなくてもよく、前記選択手段や検出手段を利用して自動的に行ってもよい。例えば、ランナー(移動体または被搬送体)の切換ユニット(または分岐部)への接近を前記センサーなどで検出または検知するとともに、前記読み取りユニットなどで取得した情報に応じた進行方向に、可動レール部材を自動的に接続または連絡してもよく;ランナー(移動体または被搬送体)に予め識別子(ID)を付与し、前記選択手段などにより事前に記憶ユニット(メモリ手段)に前記識別子(ID)に対応する進行方向に関する情報を登録または格納しておくことで、切換ユニット(または分岐部)に接近したランナー(移動体または被搬送体)に付与された識別子(ID)を前記検出手段などで検出(または検知)または識別(または特定)するとともに、記憶ユニット(メモリ手段)に事前に登録または格納した前記情報(前記識別子(ID)に対応する進行方向に関する情報)に応じた進行方向に、可動レール部材を自動的に接続または連絡してもよい。なお、切換ユニット(または分岐部)に接近したランナー(移動体または被搬送体)の検出(または検知)または識別(または特定)する方法は特に制限されず、前記センサー、前記読み取りユニットなどを利用する方法であってもよく、電波の送受信などを利用して直接的または間接的に位置情報(位置信号またはデータ)を検出または検知(または探知)する方法[例えば、ランナー(移動体または被搬送体)またはその付属部材(例えば、把持部材59など)などに取り付けられた発信機または受信機(GPS(グローバルポジショニングシステム)発信機、GPS受信機など)などを利用して探知する方法;利用者(移動体または搬送者)の所持する携帯端末(携帯電話、スマートフォンなど)の位置情報などをランナーの位置情報として関連付けて検出する方法など]であってもよい。
誘導装置(制御ユニット)は、切換ユニットの動作または状態[例えば、稼働状態(電源ON/OFF)、可動レール部材の接続または連絡状態、動作異常など]を報知するための報知手段(報知ユニット)を備えていてもよい。報知は、表示灯または誘導ランプ(発光または表示手段)、および発音手段の双方の報知手段で報知する必要はなく、少なくとも1つの報知手段で報知してもよい。報知手段は、例えば、表示灯または誘導ランプなどの発光または表示手段、発音(例えば、1回音が右方向、2回音が左方向などの所定の規則に基づく発音回数、警告音など)、音声ガイドなどを発する発音手段であってもよく、誘導ランプなどの表示手段は、進行方向を示すため、複数のランプで形成され、同時にまたは順次に点灯または点滅可能な誘導ランプ列であってもよく、進行方向を示す矢印マークなどであってもよい。なお、発光ダイオード(LED)などの指向性の高い光源でランプ列を形成すると、高い光の指向性を利用して、夜間などの暗所で、廊下などの歩行路または搬送路にランプ列の形態を反映または投影できるため、移動体または被搬送体を誘導するのに有用である。
前記誘導装置(または制御装置)は、可動レール部材の位置または状態(接続状態または連絡状態)に関する情報を取得するための位置情報取得手段(接続または連絡状態確認手段、第2の情報取得手段)を備えていてもよい。可動レール部材の位置情報取得手段は、可動レール部材の位置または接続状態もしくは連絡状態を検出または検知できれば特に制限されず、例えば、前記第1の情報取得手段で例示した前記検出手段などを利用してもよく、例えば、位置センサー、光学センサー、磁気センサー、画像センサーなどのセンサー;バーコード、QRコード(登録商標)などの識別コード、非接触タグ(ICタグなど)などの識別子(ID)[例えば、可動レール部材に取り付けられた識別子(ID)など]などを読み取りまたは識別(または検出)可能な読み取りユニット(読み取り手段または識別手段)、物品の形状などの物品の特性情報(例えば、可動レール部材の特性情報)を認識可能な認識システムなどなどを利用してもよい。
前記位置情報取得手段(接続または連絡状態確認手段、第2の情報取得手段)は、前記図17に示すように、計時手段またはタイマー手段と組み合わせることで、可動レール部材の動作異常[例えば、可動レール部材が移動しない、目的の進行方向(または位置)に接続または連絡できない、所定のレールに対して位置決めできないなど]を検出または検知するアクシデント検出(または検知)手段を形成してもよい。アクシデント検出(または検知)手段により、例えば、挟まれ、巻き込まれなどの偶発的な事故が生じてもすぐに検出できるとともに、制御ユニットから駆動ユニットの駆動回路に非常停止信号を与えることもでき、駆動ユニットへの過負荷を防止または抑制することもでき、耐久性を向上できる。
また、アクシデント検出(または検知)手段で可動レール部材の動作異常を検出した場合、報知手段(報知ユニット)の駆動回路に駆動信号(制御信号)を与えて、動作異常の検出を報知してもよく、例えば、注意を促すアラームまたは音声などを発音する発音手段または発信手段、注意を促すランプまたはメッセージなどを発光または表示させる発光手段または表示手段などであってもよい。
さらに、アクシデント検出(または検知)手段で可動レール部材の動作異常を検出した場合、前記図17に示すように、可動レール部材を初期位置(移動開始前の位置、基準位置など)に復帰または戻すための復帰手段またはリセット手段を備えていてもよい。復帰手段またはリセット手段では、基準位置などの所定の位置に復帰または戻してもよいが、可動レール部材の移動履歴に基づいて、動作異常の検出前に連絡または接続していた位置に復帰または戻してもよい。そのため、誘導装置(制御装置)は、前記位置情報取得手段(接続または連絡状態確認手段、第2の情報取得手段)で得られた可動レール部材の位置情報と、計時手段(またはタイマー手段)で生成した計時信号(計時データまたは時刻データ)とを紐付けして、可動レール部材の移動履歴(接続または連絡状態の履歴または時系列データなど)として記憶ユニット(記憶手段またはメモリ手段)に記録または格納してもよい。
誘導装置(制御装置)は、前記取付プレート[またはケースまたはカバー(電気制御ボックス)内]に限らず、レールなどの適所に取り付けてもよい。また、ケースまたはカバー(電気制御ボックス)は必ずしも必要ではなく、必ずしも表示灯または誘導ランプ列を取り付ける必要はない。外観品質を高めるためには、誘導装置(制御装置)を前記ケースまたはカバー(電気制御ボックス)でカバーしてもよい。
[セットおよび搬送システム]
本発明は、前記切換ユニットおよびレール構造のみならず、前記基準レール(基準レール本体および基準レール部材)、複数の分岐レール(分岐レール本体および分岐レール部材)、可動レール部材、取付プレート、可動レール部材を移動(回動)または振り分けるための移動機構、位置合わせ機構、複数の分岐レールからのランナーの脱落を防止するための規制手段、誘導装置(制御装置)を含むセットも包含する。このセットは、少なくとも、基準レール(基準レール本体および基準レール部材)、複数の分岐レール(分岐レール本体および分岐レール部材)、可動レール部材および位置合わせ機構を含んでいてもよく;さらに、取付プレート、移動機構、規制手段、誘導装置(制御装置)から選択された少なくとも1つを含んでいてもよい。前記取付プレートは、誘導装置(または制御装置)を備えた取付プレートであってもよい。
なお、必要であれば、レールの所定箇所(特に、走行路の末端部)には、ランナーの走行を停止させて脱落を防止するための脱落阻止手段[例えば、レールの両側壁を貫通し、ランナーの回転または車輪部(ボールベアリング)あるいは規制壁(規制部、防護壁またはバンパー)などと接触して走行を停止させるための脱落阻止部材など]を取り付けてもよい。この脱落阻止部材は、ランナーの走行を停止可能である限り、前記レールを横断する形態に限らず、レールの内壁に形成した突出部、レールの開口端部に装着可能な閉塞部材などで形成してもよい。
このようなセットは、被搬送体を搬送するための搬送システム(移送システムまたは運搬システム)を形成するのに有用である。搬送システムは、搬送路の分岐数に応じて、1または複数の前記切換ユニットを備えていてもよい。搬送システムを形成するため、前記セットは、さらに、前記ランナーの取付部材と被搬送体とを連結または接続するための連結部材または接続部材[例えば、取付部材と被搬送体とに対する連結部(フック部などの係止部など)を有する紐状体、チェーン、ワイヤーなどの吊り具部材(吊り索部材またはスリング部材)など];被搬送体を収容するための収容容器、この収容容器とランナーの取付部材とを着脱可能に連結し、吊り下げまたは懸垂するための連結部材または接続部材(収容容器に対して着脱可能な連結部(係止部など)と、ランナーの取付部材に対して着脱可能であってもよい連結部(係止部など)とを備えた紐状体、チェーン、ワイヤーなどの吊り索部材(またはスリング部材)など)などを備えていてもよい。
さらに、被搬送体を少なくとも上下動させるため、前記ランナーの取付部材には、着脱可能であってもよい形態(締結、係止、掛止などの形態(好ましくは係止の形態))で上下動機構(上下動ユニット)を取り付けてもよく、この上下動機構(上下動ユニット)は、被搬送体に対して直接的または間接的に着脱可能に連結または接続可能な連結部材または接続部材(例えば、係止部を有する紐状体、チェーン、ワイヤーなどの吊り索部材(またはスリング部材)など)を、少なくとも上下方向(上下方向、上下左右方向)に牽引可能であってもよい。なお、上下動機構は、前記ランナーの取付部材に対して、着脱可能であってもよい係止部と、被搬送体に対して直接的または間接的に着脱可能な係止部を有する前記連結部材または接続部材(例えば、係止部を有するワイヤーなど)を備えてする場合が多く、上下動機構の連結部材または接続部材の係止部と被搬送体との間には、前記のように、前記収容容器などが介在していてもよい。このような上下動機構(上下動ユニット)は、例えば、電動または手動ホイスト、電動または手動ウインチ、電動または手動チェーンブロックなどであってもよい。好ましい上下動機構は、操作が容易な電動または手動ウインチ、電動または手動チェーンブロックであってもよく、電動または手動ホイストであってもよい。
さらには、前記上下動機構に接続された電気コードを、前記上下動機構の移動(またはランナーの走行)に同伴させるため、前記上下動機構および/または被搬送体に取り付けられた第1のランナーに加えて、前記レールの走行路を走行可能な第2のランナーを備えていてもよい。なお、前記第2のランナーは1または複数備えていてもよい。
そのため、本発明の搬送システム(移送システムまたは運搬システム)は、前記第2のランナーを包含してもよい。搬送システムは、前記レール部材を走行可能な第1のランナーと、この第1のランナーの取付部材に取り付け可能であり、被搬送体を少なくとも上下動させるための電動の上下動機構(上下動ユニット)と、この上下動機構(上下動ユニット)に接続された電線コードと、前記レールを走行可能であり、かつこの電線コードが架け渡し可能な複数の第2のランナーとを備えており、少なくとも隣接する第2のランナーのうち、対向する第2のランナーの前記支持部の対向部(走行方向の前部および/または後部)に、隣接する第2のランナーが進入または乗り上げるのを規制するための規制部(規制壁部)が形成されている。
この規制部(規制壁部)は、第2のランナーの走行方向の両端部に形成でき、少なくとも幅方向(幅方向のうち内方向)に延びて形成してもよく;第2のランナーの走行方向の両端部から前後方向に突出していてもよく;前後方向に突出して幅方向に延びていてもよい。また、電線コードは、複数の第2のランナーの取付部材の取付け部に架け渡してもよく、架け渡しは、リング部での緩い締結または強固な締結に限らず、リング部への挿通、S字状部、鈎状部などのフック部への係合または係止、挿通部への挿通などを利用してもよい。
被搬送体(被運搬体、荷物)を搬送するための搬送システム(移送システムまたは運搬システム)において、前記レール部材は、少なくとも1つのステーションを経由する走行路を備えた搬送路を形成可能であればよく、前記のように、直線状走行路、湾曲状走行路、ループ状または閉じた形態の走行路、分岐部を有する分岐状走行路およびこれらの走行路を組み合わせた走行路を備えた搬送路を形成できる。そのため、レール部材は、複数のステーションを経由する搬送路を形成することもできる。前記ステーションでは、前記のように、被搬送体が着脱可能および/または交換可能であってもよく、被搬送体を積み込みまたは荷下ろし(積み卸し)可能であってもよい。