JP7052238B2 - コイル装置 - Google Patents

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Description

本発明は、コイル装置に関する。
特許文献1には、コアの底面にコイルのリード部が配置してあるコイル装置が記載されている。特許文献1に記載のコイル装置では、コアの底面に窪みが形成してあり、窪みの内部に長手方向に沿ってリード部が配置してある。また、端子電極は、窪みに入り込むように形成してあり、窪みの内部に配置してあるリード部と接続してある。そのため、コアの底面からリード部が不要に突出することがなく、コイル装置の低背化を図ることができる。
しかしながら、特許文献1に記載のコイル装置では、コアを窪ませた分だけコアの体積が減少し、インダクタンス値などの磁気特性が劣化するおそれがある。
特開2005-210055号公報
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、磁気特性に優れた低背型のコイル装置を提供することである。
上記目的を達成するために、本発明に係るコイル装置は、
コイル状に巻回してあるワイヤからなるコイル部と、
前記コイル部を内部に有し、前記コイル部のリード部の外周面の一部が露出部として底面から露出し、残りの一部が埋設部として内部に埋設してある素子本体と、
前記素子本体の底面に形成され、前記露出部に接続してある端子電極とを有し、
前記埋設部における前記リード部の外周の長さは、前記リード部の外周の長さの略半分よりも長いことを特徴とする。
本発明に係るコイル装置では、コイルのリード部の外周面の一部が露出部として素子本体の底面から露出し、残りの一部が埋設部として素子本体の内部に埋設してある。しかも、埋設部におけるリード部の外周の長さが、リード部の外周の長さの略半分よりも長い。
そのため、リード部の長手方向に垂直な横断面において、リード部の略半分以上が素子本体の内部に埋設してあり、素子本体の底面から露出した部分は僅かしかない。したがって、素子本体の底面からリード部が不要に突出することがなく、コイル装置の低背化を図ることができる。素子本体の底面から露出したリード部の一部は、端子電極により覆われて端子電極に電気的に接続される。すなわち、本発明のコイル装置では、従来とは異なり、素子本体の底面に形成してある窪みに埋め込むように端子電極を形成することがない。したがって、コアの体積減少が少なく、磁気特性の劣化が小さいと共に、コイル装置の低背化を図ることができる。
前記露出部における前記リード部の外周の長さは、前記リード部の外周の長さの略半分よりも短くてもよい。素子本体の底面から突出したリード部の全部を除去することが可能であるが、このような場合でも、露出部におけるリード部の外周の長さは、リード部の外周の長さの略半分よりも短くなる。
好ましくは、前記素子本体は、前記コイル部を支持する支持部を持つ第1層を有する。このような構成とすることにより、コイル部が支持部によって支持され、素子本体の内部におけるコイル部の位置ずれなどを有効に防止することができる。
好ましくは、前記コイル部を支持する表面とは反対側に位置する前記支持部の底面には、前記リード部が配置される段差部が形成してあり、前記段差部の段差の高さは、前記リード部の外径よりも小さい。このような構成とすることにより、段差部にコイル部のリード部を配置したときに、リード部の外周部の一部が、支持部の底面よりも下方にはみ出す。たとえば、支持部の底面と面一となるように、段差部の内部に第2層を充填することにより、リード部の外周面の一部が第2層の底面から露出して露出部となる素子本体を形成することができる。リード部の外周面の一部である露出部は、端子電極により覆われて電気的に接続される。
好ましくは、前記素子本体は、巻芯部を有し、前記巻芯部は、前記支持部の表面に形成してあり、前記コイル部の内側に位置するように構成してある。このような構成とすることにより、コイル部を巻芯部に対して容易に位置決めされ、素子本体の内部でのコイル部の位置ずれなどを効果的に防止することができる。
好ましくは、前記素子本体は、前記第1層よりも透磁率の小さな第2層を有する。このような構成とすることにより、素子本体の磁気飽和特性を向上させることができる。また、透磁率の小さな第2層を構成する材料は、流動性が良好で成形性がよく、狭い隙間にも第2層を充填することができる。さらに、第1層は、透磁率が大きいため、素子本体のインダクタンスなどの磁気特性を向上させることができる。
好ましくは、前記リード部は、第1リード部と、前記第1リード部と略平行に延びる第2リード部とを有し、前記段差部は、第1段差部と、第2段差部とを有し、前記第1リード部は前記第1段差部に沿って延びており、前記第2リード部は前記第2段差部に沿って延びている。これらの第1段差部および第2段差部には、第2層が充填される。このような構成とすることにより、コイル部の各リード部の外周面の一部が底面から露出した素子本体を容易に作製することができる。リード部の外周面の一部である露出部は、端子電極により覆われて電気的に接続される。
上記目的を達成するために、本発明に係るコイル装置の製造方法は、
コイル状に巻回してあるワイヤからなる少なくとも1個のコイル部を、当該コイル部のリード部が底面に配置されるように第1層に備える工程と、
前記リード部の外周面の一部が露出するように、前記第1層を第2層で覆い、素子本体を形成する工程とを有する。
本発明に係るコイル装置の製造方法では、コイル部のリード部の外周面の一部が露出するように、第1層を第2層で覆い、素子本体を形成する。このような方法でコイル装置を製造することにより、コイル部のリード部の外周面の一部が第2層の底面から露出した素子本体を得ることができる。リード部の外周面の一部である露出部は、端子電極により覆われて端子電極と電気的に接続されることができる。本発明の方法によれば、本発明に係るコイル装置を容易に製造することができる。
本発明の方法は、前記第2層で覆われた前記第1層を切断し、前記素子本体を形成する工程を有していてもよい。このような方法でコイル装置を製造することにより、コイル部のリード部の外周面の一部が第2層の底面から露出した素子本体を、一度に多数で形成することができる。
前記第2層の底面から露出したリード部の外周面の一部に接続させるように、端子電極を前記素子本体の底面に形成する工程を有していてもよい。本発明の方法は、前記第2層の底面から露出したリード部の外周面の一部に接続させるように、端子電極を前記第1層および前記第2層の底面に形成した後に、前記第2層で覆われた前記第1層を切断し、前記素子本体を形成する工程を有してもよい。この方法でコイル装置を製造することにより、端子電極が形成してある素子本体を容易に得ることができ、コイル装置の製造効率を高めることができる。
前記第1層には、前記リード部が通過するための通路が形成してあり、当該通路を通じて前記第2層を構成する樹脂を流動させることにより、前記第1層を前記第2層で覆うようにしてもよい。このような方法でコイル装置を製造することにより、第1層を第2層で容易に覆うことができる。
前記第1層の底面には、実装面となる主面に対して所定の段差高さで引き込んであり、前記リード部が配置される段差部を形成してもよく、前記第1層の主面をシートの上に置き、前記通路を通して、前記段差部と前記シートの隙間に前記第2層を構成する樹脂を介在させてもよい。段差部の段差高さは、リード部の外径よりも小さい。そのため、段差部よりもはみ出したリード部の外周の一部は、シートの表面に食い込む。そのため、第2層を構成する樹脂の流動時に、リード部の外周面の全部が、第2層を構成する樹脂によって覆われることがなく、第2層の底面からリード部の外周面の一部が露出した素子本体を容易に形成することができる。
好ましくは、前記通路は、第1層に形成してある貫通孔または切り欠きである。このような構成とすることにより、貫通孔または切り欠きを通じて、第1層の表面から裏面に向けて(あるいは逆に裏面から表面に向けて)第2層を構成する樹脂を容易に流動させることができる。その結果、第2層は、第1層の大部分を覆うことができる。ただし、第1層の底面の内、実装面となる主面は、第2層で覆わなくてもよい。
図1Aは本発明の第1実施形態に係るコイル装置の斜視図である。 図1Bは図1Aに示すIB-IB線に沿う同コイル装置の断面図である。 図1Cは図1Aに示す同コイル装置を実装面側からみたときの斜視図である。 図1Dは図1Bに示すコイル装置の変形例を示す断面図である。 図1Eは図1Bに示すコイル装置の他の変形例を示す断面図である。 図1Fは図1Bに示すコイル装置の一部拡大断面図である。 図2A(a)および図2A(b)は同コイル装置を製造する過程を示す斜視図である。 図2B(a)および図2B(b)は図2Aの続きの工程を示す斜視図である。 図2Cは図2Bの続きの工程を示す断面図である。 図2D(a)および図2D(b)は図2Cの続きの工程を示す斜視図である。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
第1実施形態
図1Aに示すように、本発明の第1実施形態に係るコイル装置(チップ部品)としてのインダクタ2は、略直方体形状(略六面体)からなる素子本体4を有する。なお、本発明に係るコイル装置としては、インダクタ2に限定されるものではなく、その他のコイル装置であってもよい。
素子本体4は、上面4aと、上面4aとはZ軸方向に反対側にある底面(実装面となる主面)4bと、4つの側面4c~4fとを有する。素子本体4の寸法は、特に限定されないが、たとえば素子本体4の縦(X軸)寸法は、好ましくは1.2~6.5mmであり、横(Y軸)寸法は、好ましくは0.6~6.5mmであり、高さ(Z軸)寸法は、好ましくは0.5~5.0mmである。
素子本体4は、コイル状に巻回してある導体としてのワイヤ6を内部に有する。本実施形態では、ワイヤ6は、たとえば絶縁被覆で覆われた銅線からなる丸線で構成してある。絶縁被覆としては、エポキシ変性アクリル樹脂などが用いられる。ワイヤ6は、素子本体4の内部において、1巻以上(図示の例では、5×5巻)にコイル状に巻回してあり、コイル部6αを構成している。
本実施形態では、コイル部6αは、一般的なノーマルワイズにより巻回してある空芯コイルで構成されるが、ワイヤ6をα巻きにより巻回してある空芯コイル、あるいはエッジワイズにより巻回してある空芯コイルでもよい。あるいは、ワイヤ6は、後述する巻芯部41bに直接に巻回してもよい。ワイヤ6の一端には第1リード部6aが形成してあり、他端には第2リード部6bが形成してある。
図1Aおよび図1Bに示すように、本実施形態における素子本体4は、第1層41と、第2層42とを有する。第1層41と第2層42は、たとえば同種の材料で構成し、第1層41の比透磁率μ1と、第2層42の比透磁率μ2を等しくしてもよいが、第2層42の比透磁率μ2を、第1層41の比透磁率μ1よりも小さくしてもよい。第1層41の比透磁率μ1は特に限定されないが、たとえば20~50である。
本実施形態では、素子本体4の第1層41および第2層42は、磁性材料で構成されることが好ましく、たとえばフェライト粒子または金属磁性体粒子を含む。フェライト粒子としては、Ni-Zn系フェライト、Mn-Zn系フェライトなどが例示される。金属磁性体粒子としては、特に限定されないが、たとえばFe-Ni合金粉、Fe-Si合金粉、Fe-Si-Cr合金粉、Fe-Co合金粉、Fe-Si-Al合金粉、アモルファス鉄などが例示される。
素子本体4の第1層41または第2層42には、合成樹脂が含まれていてもよく、含まれる合成樹脂としては、特に限定されないが、たとえばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂などが例示される。
図1Aに示すように、第1層41は、支持部41aと、巻芯部41bと、切り欠き部41cと、段差部41dとを有する。支持部41aは、X軸方向に沿って素子本体4の側面4e側に突出する第1鍔部41a1と、X軸方向に沿って素子本体4の側面4f側に突出する第2鍔部41a2と、Y軸方向に沿って素子本体4の側面4c側に突出する第3鍔部41a3と、Y軸方向に沿って素子本体4の側面4d側に突出する第4鍔部41a4とが形成してある。また、図1Bに示すように、支持部41aは、本体部41a5を有し、本体部41a5は、支持部41aの略中心部に形成してあり、第1鍔部41a1~第4鍔部41a4に囲まれている。
図1Aおよび図1Bに示すように、第1鍔部41a1~第4鍔部41a4および本体部41a5には、コイル部6αを載置することが可能となっている。すなわち、支持部41aは、コイル部6αを支持することができる。鍔部41a1,41a2は、鍔部41a3,41a4に比べて、厚みが薄くなるように形成してある。鍔部41a3,41a4は、本体部41a5と同じ厚みである。
巻芯部41bは、支持部41aのZ軸上表面に形成してあり、支持部41a(より正確には、本体部41a5)に一体形成してある。巻芯部41bは、上方に向かって突出する略楕円柱からなり、支持部41a上に配置してあるコイル部6αの内側に挿入されている。本実施形態では、予めワイヤ6を巻回してあるコイル部6αを巻芯部41bに固定しているが、ワイヤ6を巻芯部41bに巻回することで、コイル部6αを巻芯部41bに固定してもよい。なお、図1Eに示すように、巻芯部41bの上方に、鍔部41a1~41a4をさらに形成してもよい。なお、図1Eでは鍔部41a3および41a4の図示は省略してある。
切り欠き部41cは、素子本体4の側面4cと側面4eの交差部付近に形成してある第1切り欠き部41c1と、素子本体4の側面4cと側面4fの交差部付近に形成してある第2切り欠き部41c2と、素子本体4の側面4dと側面4eの交差部付近に形成してある第3切り欠き部41c3と、素子本体4の側面4dと側面4fの交差部付近に形成してある第4切り欠き部41c4(図示略)とを有する。図示の例では、切り欠き部41c1~41c4は、略正方形状に切り欠かれているが、他の形状に切り欠かれていてもよく、あるいは表裏面を貫通する貫通孔でもよい。
本実施形態では、第1切り欠き部41c1および第2切り欠き部41c2には、コイル部6αから引き出されたリード部6a,6bが通過する。すなわち、第1切り欠き部41cおよび第2切り欠き部41c2は、主として、リード部6a,6bが通過するための通路として利用される。ただし、これらの第1切り欠き部41cおよび第2切り欠き部41c2は、他の切り欠き41c3,41c4と共に、後述するように、第2層42を構成する成形材料が、第1層41の表面から裏面に流動する際の通路としても機能する。
段差部41dは、コイル部6を支持する表面とは反対側に位置する支持部6の底面、すなわち第1層41の底面に形成してある。段差部41dは、素子本体4の側面4e側に形成してある第1段差部41d1と、素子本体4の側面4f側に形成してある第2段差部41d2とを有する。第1段差部41d1は、第1鍔部41a1の下方に形成してあり、第2段差部41d2は第2段差部41a2の下方に形成してある。上述したように、鍔部41a1,41a2は、鍔部41a3,41a4に比べて、厚みが薄くなるように形成してあるため、鍔部41a1,41a2のZ軸方向の下方には、段差部41d1,41d2が形成される。
図1Fに示すように、段差部41d1,41d2の段差の高さHは、リード部6a,6bの外径Lよりも小さい。そのため、段差部41d1,41d2にコイル部6αのリード部6a,6bを配置すると、リード部6a,6bの外周の一部は、段差部41d1,41d2の内側に収容され、残りの外周の一部は段差部41d1,41d2の外側にはみ出し、本体部41a5(支持部41a)の底面よりも下方に位置する。なお、リード部6a,6bは、外周面の一部が鍔部41a1,41a2の下面に当接した状態で、段差部41d1,41d2に配置される。段差部の段差の高さHは、リード部6a,6bの外径Lに応じて、後述するようにして決定される。
図1Aに示すように、コイル部6αから引き出されたリード部6a,6bは、各々略平行に、Y軸方向に沿って延び、素子本体4の側面4cの近傍まで引き出される。また、リード部6a,6bは、素子本体4の側面4cの近傍において、Z軸方向に屈曲して、素子本体4の底面4bの近傍まで引き出される。そして、リード部6a,6bは、素子本体4の底面4bの近傍において、切り欠き部41c1,41c2を通過した後、Y軸方向に屈曲し、段差部41d1,41d2に沿って延び、段差部41d1,41d2の側面4d側のY軸方向端部まで引き出される。
このように、コイル部6のリード部6a,6bは、切り欠き部41c1,41c2を通過すると、支持部41aの上でコイル部6αから引き出された方向とは反対方向(略180°だけ反転)に向かって、鍔部41a1,41a2の下面の段差部41d1,41d2内に引き出される。
図1Bに示すように、第2層42は、第1層41を覆っている。より詳細には、第2層42は、支持部41aの上方を覆うとともに、切り欠き部41cおよび段差部41d1,41d2の内部に充填してあり、支持部41aの底面4bは覆っていない。
第2層42は、本体部41a5(支持部41a)の底面と略面一となるように、段差部41d1,41d2の内部に充填してある。そのため、本実施形態では、コイル部6αのリード部6a,6bの一部が、第2層42の底面4bから突出する。
したがって、本実施形態では、図1Fに示すように、リード部6a,6bの外周面の一部が露出部6a1,6b1として素子本体4の第2層42の底面から露出し、残りの一部が埋設部6a2,6b2として素子本体4の第2層42の内部に埋設される。
埋設部6a2,6b2におけるリード部6a,6bの外周の長さL2は、リード部6a,6bの外周の長さL0の略半分よりも長い。また、露出部6a1,6b1におけるリード部6a,6bの外周の長さL1は、リード部6a,6bの外周の長さL0の略半分よりも短い。好ましくは、露出部6a1,6b1におけるリード部6a,6bの外周の長さL1とリード部6a,6bの外周の長さLとの比はL1/Lは、5~49%、さらに好ましくは、25~40%である。
あるいは、図示の例では、埋設部6a2,6b2におけるリード部6a,6bの外周の長さL2は、露出部6a1,6b1におけるリード部6a,6bの外周の長さL1よりも長い。また、埋設部6a2,6b2におけるリード部6a,6bの体積V2は、露出部6a1,6b1におけるリード部6a,6bの体積V1よりも大きい。
あるいはまた、埋設部6a2,6b2におけるリード部6a,6bのX軸方向の最大幅W2maxは、露出部6a1,6b1におけるリード部6a,6bのX軸方向の最大幅W1maxよりも大きい。
なお、素子本体4の底面4bから露出したリード部6a,6bの一部あるいは全部を除去してもよい。この場合、露出部6a1は、素子本体4の第2層42の底面4bに沿って形成されることになる。
図1Aおよび図1Bに示すように、素子本体4の底面4bのX軸方向一端側(側面4e側)には、第1層41および第2層42に跨がるように、第1端子電極8aが形成してある。また、底面4bのX軸方向他端側(側面4f側)には、第1層41および第2層42に跨がるように、第2端子電極8bが形成してある。なお、端子電極8a,8bを、第1層41および第2層42に跨がることなく、第2層42の底面4bにのみ形成してもよい。
本実施形態では、側面にも端子電極が形成してある一般的な電子部品とは異なり、第1端子電極8aは、素子本体4の側面4c~4eに跨がることなく、底面面4bにのみ形成してもよい。第1端子電極8aは、Y軸方向に細長い形状を有し、底面4bの側面4c側のY軸方向一端から、側面4d側のY軸方向他端までを覆っている。図1Bに示すように、第1端子電極8aは、底面4bから露出した第1リード部6aの外周面の一部(露出部6a1)を覆っており、第1リード部6aに電気的に接続されている。
同様に、第2端子電極8bは、側面にも端子電極が形成してある一般的な電子部品とは異なり、素子本体4の側面4b~4d,4fに跨がることなく、底面4bにのみ形成してもよい。第2端子電極8bは、Y軸方向に細長い形状を有し、底面4bの側面4c側のY軸方向一端から、側面4d側のY軸方向他端までを覆っている。第2端子電極8bは、底面4bから露出した第2リード部6bの外周面の一部(露出部6b1)を覆っており、第2リード部6bに電気的に接続されている。
端子電極8a,8bは、たとえば下地電極膜とメッキ膜との積層電極膜で構成され、下地電極膜としては、Sn,Ag,Ni,Cなどの金属またはこれらの合金を含む導電ペースト膜で構成してあり、その下地電極膜の上に、メッキ膜が形成してあっても良い。この場合、下地電極膜の形成後、乾燥処理あるいは熱処理を行い、その後メッキ膜の形成を行う。メッキ膜としては、たとえばSn,Au,Ni,Pt,Ag,Pdなどの金属またはこれらの合金が例示される。なお、端子電極8a,8bをスパッタリングにより形成してもよい。端子電極8a,8bの厚みは、好ましくは3~30μmであり、段差部の高さHの約1/3以下である。
次に、本実施形態のインダクタ2の製造方法について説明する。本実施形態の方法では、まず、上述した第1層41に対応する図2A(a)に示す第1層成形体410と、図2B(a)に示す空芯コイル状に巻回してある複数(本実施形態では16個)のコイル部6αとを準備する。
図2A(a)に示すように、第1層成形体410は、上述した第1層41を複数(本実施形態では16個)連結させたような構成を有する。第1層成形体410は、圧粉成形や射出成形、あるいは削り出し加工などによって得ることができ、成形密度が高く、透磁率が高い材料で構成することができる。
第1層成形体410は、支持部410aと、複数(本実施形態では16個)の巻芯部410bと、支持部410aの外周に形成してある複数(本実施形態では16個)の切り欠き部410cと、複数(本実施形態では20個)の段差部410dとに加えて、支持部410aの内部に形成してある複数(本実施形態では9個)の貫通孔410eを有する。
支持部410aは、上述した支持部41aを連結させたような構成を有する。切り欠き部410cおよび貫通孔41eは、後述するように、第2層420を構成する樹脂が成形金型7(図2C参照)の内部で流動するための通路として利用される。図2A(b)に示す段差部410dは、主としてコイル部6αのリード部6a,6bを配置するために利用される。
図2A(a)に示す各巻芯部410bは、X軸方向に隣り合う巻芯部410b間の間隔と、Y軸方向に隣り合う巻芯部410b間の間隔とが略同一となるように格子状に配置してある。また、各貫通孔410eは、X軸方向に隣り合う貫通孔410e間の間隔と、Y軸方向に隣り合う貫通孔410e間の間隔とが略同一となるように格子状に配置してある。
次に、コイル部6αを、リード部6a,6bが底面に配置されるように第1層成形体410に備える(コイル設置工程)。より詳細には、図2B(a)および図2B(b)に示すように、コイル部6αを、巻芯部41bがコイル部6αの内部に位置するように、第1層成形体410の支持部410aに格子状に配置する。なお、巻芯部410bにワイヤ6を巻回することにより、コイル部6αを第1層成形体410の支持部410aに備えてもよい。
次に、コイル部6αのリード部6a,6bを、各々略平行となるように向きを揃え、Y軸方向に沿って所定距離だけ引き出すとともに、Z軸方向に屈曲させ、Z軸方向に沿って所定距離だけ引き出す。さらに、リード部6a,6bを、Y軸方向に屈曲させ、Y軸方向に沿って所定距離だけ引き出し、段差部410dに配置する。この結果、リード部6a,6bの一部は、支持部41aの底面よりも下方にはみ出す。
次に、図2Cに示すように、コイル部6αが配置してある第1層成形体410を、成形金型7に配置する。成形金型7のキャビティの内面には、予め離形フィルム(シート)8が敷いてある。離形フィルム9としては、PETフィルムなど、可撓性のあるシート状の部材が用いられる。なお、図2Cでは、説明の容易化のために、単一の巻芯部410bのみが形成してある第1層成形体410が図示してあるが、多数の巻芯部410bが形成してある第1層成形体410を金型7の内部に配置してもよい。
図1Bに示すように、本実施形態では、第1層41(支持部41a)の下方にコイル部6αのリード部6a,6bの一部が位置しているため、コイル部6αのリード部6a,6bを離形フィルム9上に配置すると、リード部6a,6bの一部が離形フィルム9に食い込む。これにより、離形フィルム9は、リード部6a,6bの外周形状に追随して変形し、リード部6a,6bに密着する。この結果、リード部6a,6bの一部(支持部410aの下方にはみ出している部分)は、離形フィルム9で覆われることになる。
次に、リード部6a,6bの外周面の一部が露出するように、第1層成形体410を第2層420で覆い、第1層成形体410および第2層420からなる基板400(図2D参照)を形成する(基板形成工程)。第2層420を成形するための方法としては、特に限定されないが、たとえば金型7の内部に第1層成形体410を配置して成形するインサート射出成形が用いられる。この成形によれば、切り欠き部410cあるいは貫通孔410eを通じて、第2層420を構成する成形材料が成形体410の表面から裏面に流動し、段差部410dの内部にまで行き渡ることができる。
すなわち、第2層420を構成する成形材料の一部は、切り欠き部410cあるいは貫通孔410dを通じて、段差部410dと離形フィルム9の隙間に充填される。このとき、離形フィルム9で覆われているリード部6a,6bの外周面の一部には、第2層420を構成する樹脂が付着しない。すなわち、本実施形態では、段差部410dと離形フィルム9の隙間に不要に樹脂が回り込んで、リード部6a,6bの外周面の全部が樹脂で覆われることがない。そのため、リード部6a,6bの外周面の一部が露出した基板400を形成することができる(図2D(b)参照)。
なお、リード部6a,6bの外周面の全部が第2層420を構成する樹脂で覆われたとしても、基板400の底面をフラットに研磨することにより、リード部6a,6bの外周面の一部を露出させることは可能である。
第2層420を構成する材料としては、成形時に流動性のある材料が用いられ、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂をバインダーとした複合磁性材料が用いられる。また、なお、成形金型7の材料は、特に限定されるものではなく、成形時の圧力に耐え得るものであれば、プラスチックや金属など適宜選択してよい。
次に、図2D(a)および図2D(b)に示すように、成形金型7から基板400を取り出し、X軸方向に延びる切断予定線10A、およびY軸方向に延びる切断予定線10Bに沿って、基板400を切断し、基板400を16個に個片化する(切断工程)。これにより、図1Aに示すような内部に単一のコイル部6αが埋設してある素子本体4を得る。基板400の切断方法としては、特に限定されず、ダイシングソーやワイヤソーなどの切断具、またはレーザなどを用いてもよい。なお、切断容易性の観点では、切断面が鋭利であるダイシングソーを用いることが好ましい。
次に、図1Bに示すように、ワイヤ6が埋設してある素子本体4の底面4bに、端子電極8a,8bをペースト法および/またはメッキ法により形成し、必要に応じて乾燥処理あるいは熱処理を施す(端子電極形成工程)。なお、スパッタリング、あるいは銀ペーストを用いて、スクリーン印刷により端子電極8a,8bの形成を行うことが好ましい。これらの方法では、端子電極8a,8bを薄く形成することができるからである。
端子電極形成工程では、素子本体4の側面4cから側面4dまでを覆い、素子本体4の底面4b(第2層42の底面)から露出している各ワイヤ6のリード部6a,6bの外周面の一部に接続されるように、端子電極8a,8bを素子本体4の底面4aに形成する。
なお、図1Aに示す例では、端子電極8a,8bは、素子本体4の上面4aと側面4cの交差部から、素子本体4の上面4aと側面4dの交差部までを連続的に覆っているが、断続的に覆っていてもよい。また、端子電極形成工程あるいは切断工程を行う前に、予め露出部6a1,6b1におけるリード部6a,6bの被膜を除去してもよい。被膜除去は、機械研磨やブラスト、あるいはレーザなどの熱によって行うことができる。
以上のような製造方法によれば、コイル部6αのリード部6a,6bの外周面の一部が第2層42の底面から露出した素子本体4を効率的に生産することができ、本実施形態のインダクタ2の生産効率を向上させることができる。
なお、上記製造方法では、複数のコイル部6αが内部に埋設してある基板400(成形体)を得た後、切断工程、端子電極形成工程、バレル研磨加工工程の順に各工程を行ったが、端子電極形成工程の後に、切断工程を行ってもよい。
すなわち、図2D(a)および図2D(b)において、第2層420の底面から露出したリード部6a,6bの外周面の一部に接続させるように、端子電極パターンを基板400(第1層成形体410および第2層420)の底面にY軸方向に沿って形成した後(端子電極形成工程)、基板400を切断し(切断工程)、素子本体4を形成してもよい。以上のような製造方法によれば、端子電極8a,8bが形成してある素子本体4を有するインダクタ2の生産効率を向上させることができる。
本実施形態に係るインダクタ2では、リード部6a,6bの長手方向に垂直な横断面において、リード部6a,6bの略半分以上が素子本体4の内部に埋設してあり、素子本体4の底面4bから露出した部分は僅かしかない。したがって、素子本体4の底面4aからリード部6a,6bが不要に突出することがなく、インダクタ2の低背化を図ることができる。
また、素子本体4の底面4bから露出したリード部6a,6bの一部は、端子電極8a,8bにより覆われて端子電極8a,8bに電気的に接続される。すなわち、本実施形態のインダクタ2では、従来とは異なり、素子本体4の底面4bに形成してある窪みに埋め込むように端子電極8a,8bを形成することがない。したがって、コアとして機能する素子本体4の体積減少が少なく、磁気特性の劣化が小さいと共に、インダクタ2の低背化を図ることができる。
また、素子本体4は、コイル部6αを支持する支持部41aを持つ第1層41を有する。そのため、コイル部6αが支持部41aによって支持され、素子本体4の内部におけるコイル部6αの位置ずれなどを有効に防止することができる。
また、素子本体4は、巻芯部41bを有し、巻芯部41aは、支持部41aの表面に形成してあり、コイル部6a,6bの内側に位置するように構成してある。そのため、コイル部6a,6bが支持部41aによって支持され、素子本体4の内部におけるコイル部6αの位置ずれなどを有効に防止することができる。
また、コイル部6a,6bを支持する表面とは反対側に位置する支持部41aの底面には、リード部6a,6bが配置される段差部41d1,41d2が形成してあり、段差部41d1,41d2の段差の高さHは、リード部6a,6bの外径Lよりも小さい。このような構成とすることにより、段差部41d1,41d2にコイル部6αのリード部6a,6bを配置したときに、リード部6a,6bの外周部の一部が、支持部41aの底面よりも下方にはみ出す。たとえば、支持部41aの底面と面一となるように、段差部41d1,41d2の内部に第2層42を充填することにより、リード部6a,6bの外周面の一部が第2層42の底面から露出して露出部6a1,6b1となる素子本体4を形成することができる。リード部6a,6bの外周面の一部である露出部6a1,6a2は、端子電極により覆われて電気的に接続される。
さらに、素子本体4は、第1層41よりも透磁率の小さな第2層42を有する。このような構成とすることにより、素子本体41の磁気飽和特性を向上させることができる。また、透磁率の小さな第2層42を構成する材料は、流動性が良好で成形性がよく、段差部41d1,41d2である狭い隙間にも第2層42を構成する成形材料を充填することができる。さらに、第1層41は、透磁率が大きいため、素子本体40のインダクタンスなどの磁気特性を向上させることができる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。たとえば上記実施形態では、ワイヤ6の巻回形状を楕円螺旋状としたが、たとえば円形らせん状、あるいは角形らせん状、同心円状であってもよい。
なお、ワイヤ6としては、エナメル被覆の銅線または銀線を用いてもよく、また図1Dに示す平角線で構成してもよい。また、絶縁被覆ワイヤに限定されず、絶縁被覆されていないワイヤであってもよい。また、ワイヤの種類としては、丸線に限定されず、図1Dに示すような平角線(平角ワイヤ)、四角線、あるいはリッツ線であってもよい。さらに、ワイヤの芯線の材質としては、銅および銀に限らず、これらを含む合金、あるいはその他の金属または合金であってもよい。
ワイヤ6としては、絶縁被膜付きワイヤが好ましく用いられる。素子本体4を構成する主成分に金属磁性体粉が分散されていたとしても、ワイヤ芯線と素子本体4の金属磁性体粉末とが短絡するおそれが少なく、耐電圧特性が向上すると共に、インダクタンスの劣化防止にも寄与するからである。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例
段差部41dに第2層42が充填されているインダクタ2(実施例)と、段差部41dに第2層42が充填されていないインダクタ(比較例)とを作製した。外形寸法が3.2mm×2.5mm×1.0mmである場合において、実施例のインダクタ2のインダクタンス値が11.52μHであったのに対して、比較例のインダクタ2のインダクタンス値が10.90μHであった。すなわち、本実施形態に係るインダクタ2によれば、比較例のインダクタ2に比較して、インダクタンス値を5.4%向上させることができることが明らかになった。
2… インダクタ(コイル装置)
4… 素子本体
40… 基板
41… 第1層
41a,410a… 支持部
41a1… 第1鍔部
41a2… 第2鍔部
41a3… 第3鍔部
41a4… 第4鍔部
41b,410b… 巻芯部
41c,410c… 切り欠き部
41c1… 第1切り欠き部
41c2… 第2切り欠き部
41c3… 第3切り欠き部
41c4… 第4切り欠き部
41d,410d… 段差部
41d1… 第1段差部
41d2… 第2段差部
410e… 貫通孔
42… 第2層
6… ワイヤ
6α… コイル部
6a,6b… リード端
7… 成形金型
8a,8b… 端子電極
9… 離形フィルム
10A,10B… 切断予定線
410… 第1層成形体
420… 第2層成形体

Claims (5)

  1. コイル状に巻回してあるワイヤからなるコイル部と、
    前記コイル部を内部に有し、前記コイル部のリード部の外周面の一部が露出部として底面から露出し、残りの一部が埋設部として内部に埋設してある素子本体と、
    前記素子本体の底面に形成され、前記露出部に接続してある端子電極とを有し、
    前記埋設部における前記リード部の外周の長さは、前記リード部の外周の長さの略半分よりも長く、
    前記素子本体は、前記コイル部を支持する支持部を持つ第1層と、前記第1層を覆う第2層とを有し、
    前記コイル部を支持する表面とは反対側に位置する前記支持部の底面には、前記リード部が配置される段差部が形成してあり、
    前記段差部の段差の高さは、前記リード部の直径よりも小さく、
    前記第2層は、前記段差部に充填され、前記段差部を埋める充填部を有し、
    前記充填部の高さは、前記段差部の段差の高さと略等しくなっており、
    前記端子電極は、前記段差部の外側に位置することを特徴とするコイル装置。
  2. 前記露出部における前記リード部の外周の長さは、前記リード部の外周の長さの略半分よりも短いことを特徴とする請求項1に記載のコイル装置。
  3. 前記素子本体は、巻芯部を有し、前記巻芯部は、前記支持部の表面に形成してあり、前記コイル部の内側に位置するように構成してあることを特徴とする請求項1または2に記載のコイル装置。
  4. 前記素子本体は、前記第1層よりも透磁率の小さな前記第2層を有することを特徴とする請求項1~3のいずれかの請求項に記載のコイル装置。
  5. 前記リード部は、第1リード部と、前記第1リード部と略平行に延びる第2リード部とを有し、
    前記段差部は、第1段差部と、第2段差部とを有し、
    前記第1リード部は前記第1段差部に沿って延びており、前記第2リード部は前記第2段差部に沿って延びていることを特徴とする請求項1~4のいずれかの請求項に記載のコイル装置。
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