JP7047326B2 - 車両の制動制御装置 - Google Patents

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本発明は、車両の制動制御装置に関する。
特許文献1には、「スレーブシリンダを駆動するモータの温度上昇に伴って当該モータの出力を低減しても、制動力の不足を抑制する」ことを目的に、「モータ温度判定部は、スレーブシリンダを駆動するモータの温度を判定する。モータ出力制限部は、モータ温度判定部で判定されたモータの温度が所定温度以上になった場合は、モータの出力を制限し、スレーブシリンダで発生する制動力を抑制する。この場合には、車両挙動安定化制御部で、車両挙動安定化装置を制御して制動力を発生させる」ことが記載されている。
更に、特許文献1には、「正常作動時には、第1遮断弁および第2遮断弁が、マスタシリンダと各車輪を制動するディスクブレーキ機構との連通を遮断した状態で、スレーブシリンダが、モータの駆動により発生するブレーキ液圧を用いてディスクブレーキ機構を作動させて、各車輪を制動する。一方、スレーブシリンダなどが不作動である異常時において、第1遮断弁および第2遮断弁をそれぞれ開弁状態とし、マスタシリンダで発生するブレーキ液圧をディスクブレーキ機構に伝達して、各車輪を制動する。スレーブシリンダの制動力の低減分を補うように、車両挙動安定化装置で制動力を発生させる」旨が記載されている。
特許文献1の装置では、装置が適正に作動する場合には、第1、第2遮断弁(「マスタシリンダ弁」ともいう)が閉位置にされ、スレーブシリンダに係る構成要素(「第1調圧ユニット」ともいう)によって、ホイールシリンダの液圧(制動液圧)が調整される。一方、第1調圧ユニットが不調である場合には、車両挙動安定化装置(「第2調圧ユニット」ともいう)によって、制動液圧が増加される。第2調圧ユニットでは、モータによって駆動されるポンプによって、制動液が、マスタシリンダ弁を介して、汲み上げられて、制動液圧が増加される。
通常、マスタシリンダ弁の弁座孔は、制動開始時に、直ちに、閉弁されるよう、小径に設定されている。しかし、弁座孔は、オリフィスとして作用するため、第2調圧ユニットによって制動液圧が増加される場合には、その増圧応答性の向上が望まれている。
特開2015-231821号公報
本発明の目的は、第1調圧ユニットが不調の場合に、第2調圧ユニットによって制動液圧を増加する制動制御装置において、その増圧応答性が向上され得るものを提供することである。
本発明に係る車両の制動制御装置は、車両の車輪(WH)に備えられたホイールシリンダ(CW)内の制動液(BF)の制動液圧(Pw)を調整するものであり、第1電気モータ(MC、MZ、MD)を駆動源にして、前記制動液(BF)を第1液圧(Pc)にする第1調圧ユニット(YC)と、「ピストン(PB)、及び、シリンダ(CB)にて構成され、前記ピストン(PB)の外周部(Bp)と前記シリンダ(CB)の内周部(Bc)とをシールし、前記第1液圧(Pc)が導入される調圧室(Rc)を形成する後方シール部材(SM)と、前記ピストン(PB)の外周部(Bp)と前記シリンダ(CB)の内周部(Bc)とをシールし、前記ピストン(PB)に対して前記調圧室(Rc)とは反対側に位置する加圧室(Ra)を形成する前方シール部材(SL)とを有する分離ユニット(YB)」と、「第2電気モータ(ML)によって駆動され、前記加圧室(Ra)に接続される流体ポンプ(QL)、及び、調圧弁(UP)にて構成され、前記流体ポンプ(QL)が吐出する前記制動液(BF)を、前記調圧弁(UP)によって第2液圧(Pp)に調整し、前記ホイールシリンダ(CW)に付与する第2調圧ユニット(YL)」と、前記後方シール部材(SM)、及び、前記前方シール部材(SL)の間で、前記シリンダ(CB)と前記車両のリザーバ(RV)とを接続する吸込み流体路(HS)を備える。そして、前記流体ポンプ(QL)は、前記前方シール部材(SL)と前記外周部(Bp)との接触部(Ms)を介して、前記リザーバ(RV)から前記制動液(BF)を吸引するよう構成されている。例えば、前記前方シール部材(SL)として、カップシールが採用される。
分離ユニットYBにおいて、前方シール部材SLと後方シール部材SMとの間で、分離シリンダCBが、吸込み流体路HSを介してリザーバRVに直接接続される。そして、前方シール部材SLでは、加圧室RaからリザーバRVへの制動液BFの移動は封止されるが、リザーバRVから加圧室Raへの制動液BFの移動は可能である。上記構成によれば、流体ポンプQLにおいて、制動液BFは、分離ユニットYBを介して、リザーバRVからも吸引され得る。これにより、第2調圧ユニットYLによる加圧(特に、非制動操作時の自動制動制御による加圧)の応答性が向上され得る。
本発明に係る車両の制動制御装置SCの第1の実施形態を説明するための全体構成図である。 分離ユニットYBの詳細について説明するための概略図である。 作動モードの選択処理を説明するための制御フロー図である。 ステップS200の通常調圧制御の処理を説明するための制御フロー図である。 目標減速度Gtの演算を説明するための機能ブロック図である。 ステップS300の不調時調圧制御の処理を説明するための制御フロー図である。 本発明に係る車両の制動制御装置SCの第2の実施形態を説明するための全体構成図である。 第1調圧ユニットYCの他の構成例を説明するための概略図である。
<構成部材等の記号、記号末尾の添字、及び、運動・移動方向>
以下の説明において、「ECU」等の如く、同一記号を付された構成部材、演算処理、信号、特性、及び、値は、同一機能のものである。各種記号の末尾に付された添字「i」~「l」は、それが何れの車輪に関するものであるかを示す包括記号である。具体的には、「i」は右前輪、「j」は左前輪、「k」は右後輪、「l」は左後輪を示す。例えば、4つの各ホイールシリンダにおいて、右前輪ホイールシリンダCWi、左前輪ホイールシリンダCWj、右後輪ホイールシリンダCWk、及び、左後輪ホイールシリンダCWlと表記される。更に、記号末尾の添字「i」~「l」は、省略され得る。添字「i」~「l」が省略された場合には、各記号は、4つの各車輪の総称を表す。例えば、「WH」は各車輪、「CW」は各ホイールシリンダを表す。
各種記号の末尾に付された添字「1」、「2」は、2つの制動系統において、それが何れの系統に関するものであるかを示す包括記号である。具体的には、「1」は第1系統、「2」は第2系統を示す。例えば、2つのマスタシリンダ流体路において、第1マスタシリンダ流体路HM1、及び、第2マスタシリンダ流体路HM2と表記される。更に、記号末尾の添字「1」、「2」は省略され得る。添字「1」、「2」が省略された場合には、各記号は、2つの各制動系統の総称を表す。例えば、「VM」は、各制動系統のマスタシリンダ弁を表す。
制動制御装置SCの作動が適正状態(又は、一部不調状態)であり、制動制御装置SCによって行われる制動が、「制御制動」と称呼される。制動制御装置SCの作動の全てが不調状態である場合において、運転者の操作力のみによる制動が、「マニュアル制動」と称呼される。従って、マニュアル制動では、制動制御装置SCは利用されない。
<本発明に係る車両の制動制御装置の第1の実施形態>
図1の全体構成図を参照して、本発明に係る制動制御装置SCの第1の実施形態について説明する。一般的な車両では、2系統の流体路が採用され、冗長性が確保されている。ここで、流体路は、制動制御装置の作動液体である制動液BFを移動するための経路であり、制動配管、流体ユニットの流路、ホース等が該当する。流体路の内部は、制動液BFが満たされている。なお、流体路において、リザーバRVに近い側(ホイールシリンダCWから遠い側)が、「上流側」、又は、「上部」と称呼され、ホイールシリンダCWに近い側(リザーバRVから遠い側)が、「下流側」、又は、「下部」と称呼される。
第1の実施形態では、2系統の流体路のうちの第1系統(第1マスタシリンダ室Rm1に係る系統)は、ホイールシリンダCWi、CWlに接続される。2系統の流体路のうちの第2系統(第2マスタシリンダ室Rm2に係る系統)は、ホイールシリンダCWj、CWkに接続される。つまり、第1の実施形態では、2系統流体路として、所謂、ダイアゴナル型(「X型」ともいう)のものが採用されている。
車両は、駆動用の電気モータGNを備えたハイブリッド車両、又は、電気自動車である。駆動用の電気モータGNは、エネルギ回生用のジェネレータ(発電機)としても機能する。例えば、ジェネレータGNは、前輪WHi、WHjに備えられる。
車両には、物体(障害物等)との衝突を回避するよう(又は、衝突時の被害を軽減するよう)、運転支援システムが備えられる。運転支援システムは、相対距離センサOB、及び、運転支援コントローラECJにて構成される。コントローラECJから制動コントローラ(上部、下部コントローラECU、ECL)に要求減速度Gr(目標値)が送信され、自動的に車両が減速される(即ち、自動制動制御が実行される)。
制動制御装置SCを備える車両には、制動操作部材BP、ホイールシリンダCW、リザーバRV、マスタシリンダCM、及び、車輪速度センサVWが備えられる。
制動操作部材(例えば、ブレーキペダル)BPは、運転者が車両を減速するために操作する部材である。制動操作部材BPが操作されることによって、車輪WHの制動トルクが調整され、車輪WHに制動力が発生される。具体的には、車両の車輪WHには、回転部材(例えば、ブレーキディスク)KTが固定される。そして、回転部材KTを挟み込むようにブレーキキャリパが配置される。ブレーキキャリパには、ホイールシリンダCWが設けられている。ホイールシリンダCW内の制動液BFの圧力(制動液圧)Pwが増加されることによって、摩擦部材(例えば、ブレーキパッド)が、回転部材KTに押し付けられる。回転部材KTと車輪WHとは、一体的に回転するよう固定されているため、このときに生じる摩擦力によって、車輪WHに制動トルク(摩擦ブレーキ力)が発生される。
リザーバ(大気圧リザーバ)RVは、作動液体用のタンクであり、その内部に制動液BFが貯蔵されている。リザーバRVの下部は、仕切り板SKによって、マスタシリンダ室Rmに接続されたマスタリザーバ室Ru1、Ru2と、調圧ユニットYCに接続された調圧リザーバ室Rdとに区画されている。リザーバRV内に制動液BFが満たされた状態では、制動液BFの液面は、仕切り板SKの高さよりも上にある。このため、制動液BFは、仕切り板SKを超えて、マスタリザーバ室Ruと調圧リザーバ室Rdとの間を自由に移動することができる。一方、リザーバRV内の制動液BFの量が減少し、制動液BFの液面が仕切り板SKの高さよりも低くなると、マスタリザーバ室Ruと調圧リザーバ室Rdとは独立した液だめとなる。
マスタシリンダCMは、制動操作部材BPに、ブレーキロッド、クレビス等を介して、機械的に接続されている。マスタシリンダCM(特に、第1、第2マスタシリンダ室Rm1、Rm2)には、第1、第2マスタシリンダ流体路HM1、HM2が接続される。マスタシリンダ流体路HMは、下部流体ユニットYL内で、ホイールシリンダ流体路HWに分岐される。各ホイールシリンダ流体路HWは、各々のホイールシリンダCWに接続される。従って、マスタシリンダCMの1つのマスタシリンダ室Rmは、流体路HM、HWを介して、2つのホイールシリンダCWに接続されている。
制動操作部材BPが操作されていない場合には、マスタシリンダCMとリザーバRVとは連通状態にある。制動操作部材BPが操作されると、マスタシリンダCM内のピストンPS1、PS2が、押されて前進する。この前進によって、マスタシリンダCMの内壁とピストンPS1、PS2とによって形成された、マスタシリンダ室Rm1、Rm2は、リザーバRV(特に、マスタリザーバ室Ru)から遮断される。制動操作部材BPの操作が増加されると、マスタシリンダ室Rmの体積は減少し、制動液BFは、マスタシリンダCMの液圧室(マスタシリンダ室)Rmから、マスタシリンダ流体路HMに向けて圧送される。なお、マスタシリンダCMによって、ホイールシリンダCWの液圧(制動液圧)Pwが調整(増減)される場合が、「マニュアル制動」と称呼される。
各車輪WHには、車輪速度Vwを検出するよう、車輪速度センサVWが備えられる。車輪速度Vwの信号は、車輪WHのロック傾向を抑制するアンチスキッド制御等に採用される。車輪速度センサVWによって検出された各車輪速度Vwは、下部コントローラECLに入力される。コントローラECLでは、車輪速度Vwに基づいて、車体速度Vxが演算される。
≪制動制御装置SC≫
ホイールシリンダCW内の制動液BFの液圧Pwを調整するよう、マスタシリンダCMに代えて、制動制御装置SCが設けられる。制動制御装置SCは、所謂、ブレーキ・バイ・ワイヤの構成である。制動制御装置SCによって、ホイールシリンダCWの液圧Pwが増減される場合が、「制御制動」と称呼される。制動制御装置SCは、制動操作量センサBA、操作スイッチST、ストロークシミュレータSS、シミュレータ電磁弁VS、マスタシリンダ電磁弁VM、調圧ユニットYC、分離ユニットYB、上部コントローラECU、下部コントローラECL、及び、下部流体ユニットYLにて構成される。
運転者による制動操作部材(ブレーキペダル)BPの操作量Baを検出するよう、操作量センサBAが設けられる。操作量センサBAとして、マスタシリンダCMの第1、第2マスタシリンダ室Rm1、Rm2の液圧(マスタシリンダ液圧)Pm1、Pm2を検出するよう、第1、第2マスタシリンダ液圧センサPM1、PM2が設けられる。「Pm1=Pm2」であるため、第1マスタシリンダ液圧センサPM1、及び、第2マスタシリンダ液圧センサPM2のうちの一方は、省略可能である。また、操作量センサBAとして、制動操作部材BPの操作変位Spを検出する操作変位センサSP、及び、制動操作部材BPの操作力Fpを検出する操作力センサFPが設けられる。つまり、制動操作量センサBAとして、第1、第2マスタシリンダ液圧センサPM1、PM2、操作変位センサSP、及び、操作力センサFPのうちの少なくとも1つが採用される。従って、制動操作量Baとして、マスタシリンダ液圧Pm、制動操作変位Sp、及び、制動操作力Fpのうちの少なくとも1つが検出される。
制動操作部材BPには、操作スイッチSTが設けられる。操作スイッチSTによって、運転者による制動操作部材BPの操作の有無が検出される。制動操作部材BPが操作されていない場合(即ち、非制動時)には、制動操作スイッチSTによって、操作信号Stとしてオフ信号が出力される。一方、制動操作部材BPが操作されている場合(即ち、制動時)には、操作信号Stとしてオン信号が出力される。
ストロークシミュレータ(単に、「シミュレータ」ともいう)SSが、制動操作部材BPに操作力Fpを発生させるために設けられる。シミュレータSSの内部には、ピストン、及び、弾性体(例えば、圧縮ばね)が備えられる。マスタシリンダCMから制動液BFがシミュレータSSに移動され、流入する制動液BFによりピストンが押される。ピストンには、弾性体によって制動液BFの流入を阻止する方向に力が加えられる。弾性体によって、制動操作部材BPが操作される場合の操作力Fpが形成される。
マスタシリンダCM内のマスタシリンダ室RmとシミュレータSSとの間には、シミュレータ弁VSが設けられる。シミュレータ弁VSは、開位置(連通状態)と閉位置(遮断状態)とを有する2位置の電磁弁(「オン・オフ弁」ともいう)である。シミュレータ弁VSは、コントローラECUからの駆動信号Vsによって制御される。非制動時等には、シミュレータ弁VSが閉位置にされ、マスタシリンダCMとシミュレータSSとが遮断状態(非連通状態)にされる。この場合、マスタシリンダCMからの制動液BFは、シミュレータSSで消費されない。制御制動時には、シミュレータ弁VSが開位置にされ、マスタシリンダCMとシミュレータSSとは連通状態にされる。この場合、制動操作部材BPの操作特性(操作変位Spと操作力Fpとの関係)は、シミュレータSSによって形成される。シミュレータ弁VSには、常閉型の電磁弁が採用される。なお、マスタシリンダ室Rmの容積が十分に大きい場合には、シミュレータ弁VSは省略され得る。
マスタシリンダ流体路HMの途中に、マスタシリンダ弁VMが設けられる。マスタシリンダ弁VMは、開位置(連通状態)と閉位置(遮断状態)とを有する2位置の電磁弁(オン・オフ弁)である。マスタシリンダ弁VMは、コントローラECUからの駆動信号Vmによって制御される。マニュアル制動時には、マスタシリンダ弁VMは開位置にされ、マスタシリンダCMとホイールシリンダCWとは連通状態となる。この場合、制動液圧Pwは、マスタシリンダCMによって調整される。制御制動時には、マスタシリンダ弁VMは閉位置にされ、マスタシリンダCMとホイールシリンダCWとは遮断状態(非連通状態)となる。この場合、制動液圧Pwは、制動制御装置SC(特に、調圧ユニットYC)によって制御される。マスタシリンダ弁VMには、常開型の電磁弁が採用される。
[第1調圧ユニットYC(還流型)]
制御制動時には、第1調圧ユニットYCによって、ホイールシリンダCW内の液圧(制動液圧)Pwが調整される。第1調圧ユニットYCは、第1電動ポンプDC、逆止弁GC、第1調圧弁UC、及び、調整液圧センサPCを備えている。第1調圧ユニットYCでは、第1電動ポンプDCが吐出する制動液BFが、第1調圧弁UCによって調整液圧Pc(「第1液圧」に相当)に調節される。調整液圧Pcは、分離ユニットYBを介して、ホイールシリンダCWに付与される。
還流用の第1電動ポンプDCは、1つの第1電気モータMC、及び、1つの第1流体ポンプQCの組によって構成される。第1電動ポンプDCでは、第1電気モータMCと第1流体ポンプQCとが一体となって回転するよう、電気モータMCと流体ポンプQCとが固定されている。還流電動ポンプDC(特に、第1電気モータMC)は、制御制動時に、ホイールシリンダCWの液圧(制動液圧)Pwを調整するための動力源である。第1電気モータMCは、駆動信号Mcに基づいて、上部コントローラECUによって制御される。
例えば、第1電気モータMCとして、3相ブラシレスモータが採用される。ブラシレスモータMCには、ロータ位置(回転角)Kaを検出する回転角センサKAが設けられる。回転角(実際値)Kaに基づいて、ブリッジ回路のスイッチング素子が制御され、電気モータMCが駆動される。つまり、3つの各相(U相、V相、W相)のコイルの通電量の方向(即ち、励磁方向)が、順次切り替えられ、ブラシレスモータMCが回転駆動される。なお、第1電気モータMCは、ブラシ付きモータでもよい。
第1流体ポンプQCの吸込口Qsには、リザーバ流体路HRが接続されている。また、流体ポンプQCの吐出口Qtには、調圧流体路HCが接続されている。電動ポンプDC(特に、流体ポンプQC)の駆動によって、制動液BFが、リザーバ流体路HRから、吸込口Qsを通して吸入され、吐出口Qtから調圧流体路HCに排出される。例えば、調整流体ポンプQCとしてギヤポンプが採用される。
調圧流体路HCには、逆止弁GC(「チェック弁」ともいう)が介装される。例えば、流体ポンプQCの吐出部Qtの近くに、逆止弁GCが設けられる。逆止弁GCによって、制動液BFは、リザーバ流体路HRから調圧流体路HCに向けては移動可能であるが、調圧流体路HCからリザーバ流体路HRに向けての移動(即ち、制動液BFの逆流)が阻止される。つまり、電動ポンプDCは、一方向に限って回転される。
第1調圧弁UCは、調圧流体路HC、及び、リザーバ流体路HRに接続される。第1調圧弁UCは、通電状態(例えば、供給電流)に基づいて開弁量(リフト量)が連続的に制御されるリニア型の電磁弁(「比例弁」、又は、「差圧弁」ともいう)である。調圧弁UCは、駆動信号Ucに基づいて、上部コントローラECUによって制御される。第1調圧弁UCとして、常開型の電磁弁が採用される。
制動液BFは、リザーバ流体路HRから、流体ポンプQCの吸込口Qsを通して汲み上げられ、吐出口Qtから排出される。そして、制動液BFは、逆止弁GCと第1調圧弁UCとを通り、リザーバ流体路HRに戻される。換言すれば、リザーバ流体路HR、及び、調圧流体路HCによって、還流路(制動液BFの流れが、再び元の流れに戻る流体路)が形成され、この還流路に、逆止弁GC、及び、調圧弁UCが介装される。
第1電動ポンプDCが作動している場合には、制動液BFは、破線矢印(A)で示すように、「HR→QC(Qs→Qt)→GC→UC→HR」の順で還流している。第1調圧弁UCが全開状態にある場合(常開型であるため、非通電時)、調圧流体路HC内の液圧(調整液圧)Pcは低く、略「0(大気圧)」である。第1調圧弁UCへの通電量が増加され、調圧弁UCによって還流路が絞られると、調整液圧Pcは増加される。該調圧方式が、「還流型」と称呼される。第1調圧ユニットYCでは、調整液圧(第1液圧)Pcを検出するよう、調圧流体路HC(特に、逆止弁GCと調圧弁UCとの間)に調整液圧センサ(第1液圧センサ)PCが設けられる。
調圧流体路HCは、部位Bc1、Bc2にて、第1、第2調圧流体路HC1、HC2に分岐(分流)される。第1、第2調圧流体路HC1、HC2は、第1、第2分離ユニットYB1、YB2(特に、調圧室Rc1、Rc2)に接続され、調整液圧Pcが、各々の調圧室Rcに供給される。最終的には、調整液圧Pcは、分離ユニットYB、及び、下部流体ユニットYLを介して、ホイールシリンダCWに加えられる。
[分離ユニットYB]
調圧ユニットYCとホイールシリンダCWとの間に、分離ユニットYBが設けられる。分離ユニットYBによって、調圧ユニットYCと、ホイールシリンダCWとが流体的に分離される。ここで、「流体的な分離」とは、圧力は伝達されるが、制動液BFの移動が発生しない状態のことである。具体的には、分離ユニットYBは、分離シリンダCBと分離ピストンPBとによって構成される。そして、分離シリンダCBの内部は、分離ピストンPBによって、2つのチャンバ(液圧室)Ra、Rcに仕切られている。加圧室Raと、調圧室Rcとは、分離ピストンPBを挟んで、相対するように配置されている。
調圧室Rcは、調圧流体路HCに接続される。また、加圧室Raは、加圧流体路HBに接続される。加圧流体路HBは、マスタシリンダ弁VMの下流部にて、マスタシリンダ流体路HMに接続される。制御制動時には、調圧ユニットYCからの調整液圧Pcによって、調圧室Rcが増加される。そして、調整液圧Pcによって、加圧室Ra内の液圧Paが増加され、最終的には、制動液圧Pwが上昇される。調圧ユニットYCによって発生される液圧は、「Pc→Pa→Pw」の順で伝達される。一方、調整液圧Pcが減少されると、加圧の場合とは逆に、制動液圧Pwは減少される。制動液BFの実際の流れ(移動)においては、分離ピストンPBによって分離されている。
[上部コントローラECU]
上部コントローラ(「電子制御ユニット」ともいう)ECUは、マイクロプロセッサMP等が実装された電気回路基板と、マイクロプロセッサMPにプログラムされた制御アルゴリズムにて構成されている。上部コントローラECUには、制動操作量Ba(Sp、Fp、Pmの総称)、制動操作信号St、調整液圧Pc、モータ回転角Ka、及び、要求減速度Grが入力される。上部コントローラECUでは、これら信号(Ba、Gr等)に基づいて、電気モータMC、及び、3種類の異なる電磁弁VM、VS、UCが制御される。
具体的には、マイクロプロセッサMP内の制御アルゴリズムに基づいて、各種電磁弁VM、VS、UCを制御するための駆動信号Vm、Vs、Ucが演算される。同様に、電気モータMCを制御するための駆動信号Mcが演算される。そして、駆動信号Vm、Vs、Uc、Mcに基づいて、電磁弁VM、VS、UC、及び、電気モータMCが駆動される。
上部コントローラECUは、車載の通信バスBSを介して、下部コントローラECL、及び、他システムのコントローラ(電子制御ユニット)とネットワーク接続されている。回生協調制御を実行するよう、上部コントローラECUから駆動用コントローラECDに回生量Rg(目標値)が、通信バスBSを通して送信される。「回生量Rg」は、駆動用モータ(回生用ジェネレータでもある)GNによって発生される回生制動の大きさを表す状態量(目標値)である。回生量の目標値Rgに基づいて、駆動用コントローラECDによって回生用ジェネレータGNが制御され、回生制動が行われる。
また、自動制動制御を実行するよう、運転支援コントローラECJから、制動コントローラECU、ECLに、通信バスBSを通して、要求減速度Grが送信される。「要求減速度Gr」は、車両の前方に存在する物体との衝突を回避するための車両減速度の目標値である。要求減速度Grに基づいて、上部コントローラECU、又は、下部コントローラECLによって自動制動制御が実行される。各コントローラECU、ECL、ECD、ECJには、車載の発電機AL、及び、蓄電池BTから電力が供給される。
上部コントローラECUには、電磁弁VM、VS、UC、及び、電気モータMCを駆動するよう、駆動回路DRが備えられる。駆動回路DRには、電気モータMCを駆動するよう、スイッチング素子(MOS-FET、IGBT等のパワー半導体デバイス)によってブリッジ回路が形成される。モータ駆動信号Mcに基づいて、各スイッチング素子の通電状態が制御され、電気モータMCの出力が制御される。また、駆動回路DRでは、電磁弁VM、VS、UCを駆動するよう、駆動信号Vm、Vs、Ucに基づいて、それらの通電状態(即ち、励磁状態)が制御される。なお、駆動回路DRには、電気モータMC、及び、電磁弁VM、VS、UCの実際の通電量Iaを検出する通電量センサIAが設けられる。例えば、通電量センサIAとして、電流センサが設けられ、電気モータMC、及び、電磁弁VM、VS、UCへの供給電流Iaが検出される。
[下部コントローラECL]
下部コントローラECLは、上部コントローラECUと信号、演算値を共有するよう、通信バスBSを介して接続される。下部コントローラECLには、各種センサ(VW等)の検出信号として、車輪速度Vw、ヨーレイトYr、操舵角Sa、前後加速度Gx、横加速度Gy、制動操作量Ba、要求減速度Gr、等が入力される。コントローラECLでは、車輪速度Vwに基づいて、車体速度Vxが演算される。
[下部流体ユニットYL]
下部流体ユニットYL(「第2調圧ユニット」に相当)は、下部コントローラECLによって制御される。例えば、下部流体ユニットYLでは、車輪速度Vwに基づいて、車輪WHの過度の減速スリップ(例えば、車輪ロック)を抑制するよう、アンチスキッド制御が実行される。また、下部流体ユニットYLでは、実際のヨーレイトYrに基づいて、車両の不安定挙動(過度のオーバステア挙動、アンダステア挙動)を抑制する車両安定化制御(所謂、ESC)が行われる。加えて、下部流体ユニットYL(第2調圧ユニット)では、制動制御装置SCの一部が不調である場合に、第1調圧ユニットYC(即ち、第1液圧Pc)に代わって、制御制動を継続するよう、第2液圧Ppを発生される。つまり、下部流体ユニットYLによって、制動制御装置SCの冗長性が確保されている。
上部流体ユニットYUと下部流体ユニットYLとは、マスタシリンダ流体路HMを介して接続される。下部流体ユニットYLには、第2電動ポンプDL、「低圧リザーバRL」、「チャージ弁UP(「調圧弁」に相当)」、「上部液圧センサPQ」、「下部液圧センサPP」、「インレット弁VI」、及び、「アウトレット弁VO」にて構成される。
第2電動ポンプDLは、1つの第2電気モータML、及び、2つの第2流体ポンプQL1、QL2(「流体ポンプ」に相当)にて構成される。第2電気モータMLは、下部コントローラECLによって、駆動信号Mlに基づいて制御される。電気モータMLによって、2つの第2流体ポンプQL1、QL2が一体となって回転され、駆動される。そして、第2電動ポンプDLの第2流体ポンプQLによって、チャージ弁(「チャージオーバ弁」ともいう)UP1、UP2の上流部Bo1、Bo2から制動液BFが汲み上げられ、チャージ弁UPの下流部Bp1、Bp2に吐出される。流体ポンプQLの吸込み側には、低圧リザーバRL1、RL2が設けられる。
第1調圧弁UCと同様に、第2調圧弁UP(チャージ弁UP)として、常開型のリニア調圧弁(通電状態によって開弁量が連続的に制御される電磁弁)が採用される。第2調圧弁UPは、下部コントローラECLによって、駆動信号Upに基づいて制御される。第2流体ポンプQLが駆動されると、「Bo→RL→QL→Bp→UP→Bo」の還流(循環する制動液BFの流れ)が形成される。マスタシリンダ流体路HMに設けられたチャージ弁UPによって、チャージ弁(第2調圧弁)UPの下流部の液圧(「下部液圧」と称呼され、「第2液圧」に相当)Ppが調節される。流体ポンプQLによって、チャージ弁UPの上流部Boから下流部Bpに向けて、制動液BFが移動され、チャージ弁UP(開弁部の絞り)によって、チャージ弁UPの上流部の上部液圧Pqと、チャージ弁UPの下流部の下部液圧Ppとの間の差圧(Pp>Pq)が調整される。
上部液圧Pqを検出するよう、上部液圧センサPQが設けられる。また、下部液圧(第2液圧)Ppを検出するよう、下部液圧センサPP(第2液圧センサ)が設けられる。検出された液圧信号Pq、Ppは、下部コントローラECLに入力される。なお、4つの液圧センサPQ1、PQ2、PP1、及び、PP2のうちの少なくとも1つは省略可能である。
マスタシリンダ流体路HMは、チャージ弁UPの下流側の分岐部Bwにて、各ホイールシリンダ流体路HWに分岐(分流)される。ホイールシリンダ流体路HWには、インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOが設けられる。インレット弁VIとして、常開型のオン・オフ電磁弁が採用される。また、アウトレット弁VOとして、常閉型のオン・オフ電磁弁が採用される。電磁弁VI、VOは、下部コントローラECLによって、駆動信号Vi、Voに基づいて制御される。インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOによって各輪の制動液圧Pwが独立して制御され得る。なお、インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOが駆動されていない場合には、制動液圧Pwは、下部液圧Ppと同じである。
ホイールシリンダ流体路HW(分岐部BpとホイールシリンダCWとを結ぶ流体路)には、常開型のインレット弁VIが介装される。ホイールシリンダ流体路HWは、インレット弁VIの下流部にて、常閉型のアウトレット弁VOを介して、低圧リザーバRLに接続される。例えば、アンチスキッド制御等において、ホイールシリンダCW内の液圧Pwを減少するためには、インレット弁VIが閉位置にされ、アウトレット弁VOが開位置される。制動液BFのインレット弁VIからの流入が阻止され、ホイールシリンダCW内の制動液BFは、低圧リザーバRLに流出し、制動液圧Pwは減少される。また、制動液圧Pwを増加するため、インレット弁VIが開位置にされ、アウトレット弁VOが閉位置される。制動液BFの低圧リザーバRLへの流出が阻止され、チャージ弁UPを介した下部液圧Ppが、ホイールシリンダCWに導入され、制動液圧Pwが増加される。
<分離ユニットYB(シングル型)>
図2の概略図を参照して、分離ユニットYBについて説明する。分離ユニットYBは、分離シリンダCB、分離ピストンPB、及び、分離弾性体SBにて構成される。図2において、分離シリンダCBの中心軸線Jbの上部の状態は、分離ピストンPBが最も後退方向Hb(図では、右方向)の位置(「初期位置」という)にある場合を示す。また、中心線Jbの下部の状態は、分離ピストンPBが最も前進方向Ha(図では左方向)の位置(「限界位置」という)にある場合を示す。分離ピストンPBは、マスタシリンダCM内で、初期位置から限界位置までの間の距離dsに亘って、変位することができる。
分離シリンダCB(「シリンダ」に相当)は、底部を有するシリンダ部材である。分離ピストンPBは、分離シリンダCBの内部に挿入されたピストン部材である。分離シリンダCBの内周部Bcには、2つの溝部が形成され、該溝部の各々にシール部材SL、SMがはめ込まれる。2つのシール部材SL、SMによって、分離ピストンPBの外周部(外周円筒面)Bpと、分離シリンダCBの内周部(内周円筒面)Bcと、が封止されている。分離ピストンPBは、分離シリンダCBの中心軸Jbに沿って、滑らかに移動可能である。シール部材SL、SMとして、カップシール(「U字パッキン」ともいう)が採用される。
分離シリンダCBの内部は、分離ピストンPB(「ピストン」に相当)によって、2つのチャンバ(液圧室)Ra、Rcに分離される。加圧室Raは、分離シリンダCBの内周部Bc、分離シリンダCBの第1底部(底面)Bu、及び、分離ピストンPBの第1端部Brによって区画された液圧室である。加圧室Raにおいて、分離ピストンPBの外周部Bp、及び、分離シリンダCBの内周部Bcは、前方シール部材SLによってシールされる。加圧室Raには、加圧流体路HBが接続される。加圧流体路HBは、マスタシリンダ弁VMの下流部(マスタシリンダ弁VMと下部流体ユニットYLとの間)にてマスタシリンダ流体路HMに接続される。従って、加圧室Raは、最終的にはホイールシリンダCWに接続される。
調圧室Rcは、分離シリンダCBの内周部Bc、分離シリンダCBの第2底部(底面)Bt、及び、分離ピストンPBの第2端部Bqによって区画された液圧室である。調圧室Rcにおいて、分離ピストンPBの外周部Bp、及び、分離シリンダCBの内周部Bcは、後方シール部材SMによってシールされる。調圧室Rcには、調圧流体路HCが接続される。従って、調圧室Rcには、調整液圧Pcが供給される。
加圧室Raと、調圧室Rcとは、分離ピストンPBを挟み込むように、相対して形成される。換言すれば、分離シリンダCBの中心軸線Jbにおいて、分離ピストンPBに対して、加圧室Raと調圧室Rcとは、夫々が反対側に位置する。従って、調圧室Rc(即ち、調整液圧Pc)によって分離ピストンPBに加えられる前進方向Haの力(「前進力」という)Faと、加圧室Ra(即ち、制動液圧Pw)によって分離ピストンPBに加えられる後退方向Hbの力(「後退力」という)Fbとは、分離シリンダCBの中心軸線Jbの方向で互いに向き合い、対抗している。
分離シリンダCBの第1底部Buと分離ピストンPBとの間には分離弾性体(例えば、圧縮ばね)SBが設けられる。分離弾性体SBは、分離シリンダCBの中心軸Jb方向に、分離ピストンPBを分離シリンダCBの第2底部Btに対して押し付けている。非制動時には、第2端部Bqと第2底部Btとが当接し、分離ピストンPBは初期位置にある。以上で説明した分離ユニットYBは、加圧室Raが、1つであるため、「シングル型」と称呼される。
調圧ユニットYCによって調整液圧Pcが増加されると、調整液圧Pcによる前進力Faによって、分離ピストンPBが前進方向Haに移動される。分離ピストンPBの前進によって、加圧室Raの体積は減少し、加圧室Ra内の制動液BFが加圧流体路HBに圧送される。そして、ホイールシリンダCWの制動液圧Pwが増加される。逆に、調圧ユニットYCによって調整液圧Pcが減少され、後退力Fbが前進力Faよりも大きくなると、分離ピストンPBは後退方向Hbに移動される。調整液圧Pcが「0」になると、圧縮ばねSBの弾性力によって、分離ピストンPBは、初期位置にまで戻される。
例えば、ホイールシリンダCWの周辺にて流体路の失陥が生じた場合、分離ピストンPBが前進しても、制動液圧Pwは増加されず、「0」のままである。制動液圧Pwが増加しないと、分離ピストンPBは、前進し続け、最終的には、限界位置まで移動される。つまり、分離ピストンPBの移動可能な範囲は所定距離ds(初期位置から限界位置までの変位)に限定される。分離ユニットYBによって、調圧ユニットYCとホイールシリンダCWとが流体的に分離され、調圧ユニットYCとホイールシリンダCWとの間で制動液BFが移動されない。液圧は伝達されるが、制動液BFの移動が生じないため、上記失陥で失われる制動液BFの量は、所定距離dsに対応する体積に限定される。分離ユニットYBによって、制動制御装置SCの信頼度は、より向上され得る。
分離ユニットYBでは、分離シリンダCBは、前方シール部材SLと後方シール部材SMとの間で、吸込み流体路HSに接続される。吸込み流体路HSは、リザーバRV(特に、マスタリザーバ室Ru)に接続される。従って、2つのシール部材SL、SMの間は、吸込み流体路HSを介して、リザーバRVのマスタリザーバ室Ruと連通状態にされる。これにより、2つのシール部材SL、SMの間の液圧は、「0(大気圧)」になる(つまり、背圧が生じていない)。例えば、シール部材SL、SMとして、カップシール(U字パッキン)が採用される。カップシールは、シール背面が負圧になった場合に、制動液BFをシール背面の側から吸い込むことができる。
吹き出し部を参照して、A部(封止部)の詳細について説明する。
分離シリンダCBの内周部Bcには、2つの環状溝Mzが形成される。環状溝Mzには、前方、後方シール部材SL、SMがはめ込まれる。前方シール部材SL、及び、後方シール部材SMの間で、分離シリンダCBには貫通孔Acが設けられ、この貫通孔Acには、吸込み流体路HSが接続される。カップシールSL、SMは、外周リップ部Lg、内周リップ部Ln、及び、環状ベース部Lbにて形成される。
前方シール部材SLによって、加圧室Raが封止(シール)される。加圧室Ra内の液圧Pa(即ち、制動液圧Pw)は、前方シール部材SLによって維持される。前方シール部材SLの内周、外周リップ部Ln、Lgは、環状ベース部Lbに対して、前進方向Haを向くように取り付けられる。加圧室液圧Paによって、外周リップ部Lg、及び、環状ベース部Lbは、環状溝Mzに押し付けられ、密着される。また、内周リップ部Lnは、ピストン外周部Bpに押し付けられ、密着される。前方シール部材SLにより、加圧室RaからリザーバRV(特に、マスタリザーバ室Ru)への制動液BFの移動が阻止される。一方、前方シール部材SLは、リザーバRVから加圧室Raへの制動液BFの移動を許容する。例えば、電気モータMLが駆動され、流体ポンプQLが制動液BFを吸引する場合、加圧室Ra内が負圧(大気圧未満)になり得る。この場合、前方シール部材SLの内周リップ部Lnと、分離ピストンPBの外周部Bpとの接触部Msを通して、制動液BFが、加圧室Raに移動される。制動液BFが、リザーバRVから、接触部Msを介して、流体ポンプQLに供給可能であるため、流体ポンプQLの吸込み性が確保され、制動液圧Pwの増加応答性が向上され得る。
同様に、後方シール部材SMによって、調圧室Rcが封止(シール)される。後方シール部材SMの内周、外周リップ部Ln、Lgは、環状ベース部Lbに対して、後退方向Hbを向くように取り付けられる。調整室液圧Pcによって、外周リップ部Lg、及び、環状ベース部Lbは、環状溝Mzに密着されるとともに、内周リップ部Lnは、ピストン外周部Bpに密着される。これにより、調圧室Rc内の液圧Pcは、後方シール部材SMによって維持される。なお、後方シール部材SMとして、カップシールに代えて、他のシール(Oリング、Xリング等)が採用され得る。Oリング、Xリング等には、摺動性を向上するよう、その表面(特に、ピストン外周部Bpとの摺動面)に、低摩擦処理(例えば、フッ素樹脂コーティング)が施される。
<調圧制御の作動モード処理>
図3の制御フロー図を参照して、制動制御装置SCの作動モード処理について説明する。「調圧制御」は、運転者の制動操作部材BPの操作等に応じて、調整液圧Pc、又は、下部液圧Ppを調整するための演算処理である。更に、「作動モード」とは、調整液圧(第1液圧)Pc、及び、下部液圧(第2液圧)Ppのうちの何れによって、制動制御装置SCが制御されるかを選択する処理である。
ステップS110にて、各種信号が読み込まれる。具体的には、操作変位Sp、操作力Fp、マスタシリンダ液圧Pm、調整液圧Pc、回転角Ka、通電量Iaが読み込まれる。ステップS120にて、上部流体ユニットYUの各構成要素(YC、VM等)の作動が適正であるか、否かの適否判定が行われる。具体的には、制動制御装置SCへの電力供給状態、電子制御ユニットECU(例えば、メモリ)、駆動回路DR(例えば、スイッチング素子等のパワー半導体デバイス)、操作量センサBA(SP、FP、PM)、通電量センサIA、回転角センサKA、電気モータMC、電磁弁UC、VM、VSについての自己診断(作動確認)が実行される。例えば、初期診断(イニシャルチェック)のトリガ信号に基づいて、上記の各構成要素のうちの少なくとも1つの作動診断が実行される。トリガ信号は、通信バスBSから受信される信号に基づいて決定される。初期診断では、電気モータMC、及び、電磁弁UC、VM、VSに向けて、診断用信号が送信される。そして、各センサIA、KA、PCの検出結果が受信される。受信結果(の変化)に基づいて、これらが、正常に作動し得る状態(適正状態)であるか、否(不適状態)かが判断される。全ての作動が適正であり、ステップS120が肯定される場合には、処理は、ステップS130に進む。一方、各構成要素のうちの少なくとも1つの作動が不調であり、ステップS120が否定される場合には、処理は、ステップS300に進む。
ステップS130にて、制動操作量Ba、及び、制動操作信号Stのうちの少なくとも1つに基づいて、「制動操作中であるか、否か」が判定される。例えば、操作量Baが、所定値bo以上である場合には、ステップS130は肯定され、処理は、ステップS110に戻される。一方、「Ba<bo」である場合には、ステップS130は否定され、処理は、ステップS140に進む。ここで、所定値boは、制動操作部材BPの遊びに相当する、予め設定された定数である。また、操作信号Stがオフである場合には、ステップS140に進み、操作信号Stがオンである場合には、ステップS110に戻る。
ステップS140にて、常開型のマスタシリンダ弁VM、及び、常閉型のシミュレータ弁VSが駆動される。つまり、マスタシリンダ弁VMが閉位置にされ、シミュレータ弁VSが開位置にされる。ステップS150にて、電気モータMC、及び、調圧弁UCが駆動されて、自動加圧処理が実行される。自動加圧処理では、調整液圧Pcが、増加勾配dpで、「0」から所定液圧poにまで増加される。その後、調整液圧Pcは、減少勾配dqで、所定値poから「0」に戻される。ここで、値dp、dq、poは、予め設定された所定値である。
ステップS160にて、自動加圧処理中の調整液圧Pc、マスタシリンダ液圧Pm、実通電量Ia、及び、実回転角Kaの変化に基づいて、制動制御装置SC(特に、上部流体ユニットYU)の適否(作動が適切であるか、否か)が判定される。適否判定では、各構成要素の目標値と、その結果(実際値)とが比較され、目標値と実際値との偏差が予め設定された所定値未満の場合には適正状態が判定され、該偏差が所定値以上の場合に不適状態が判定される。また、各センサ信号Pc、Pm、Ia、Kaが、相互に比較され、構成要素の適否が判定される。例えば、回転角(検出値)Kaが増加されているにもかかわらず、調整液圧(検出値)Pcが増加されない場合には、マスタシリンダ弁VMが十分に閉じられていないこと、又は、調圧弁UCが閉じられないことが判定される。上部流体ユニットYUの全てが適正であり、ステップS160が肯定される場合には、処理は、ステップS200に進む。一方、部流体ユニットYUの一部が不調であり、ステップS160が否定される場合には、処理は、ステップS300に進む。
ステップS200にて、調整液圧Pc(第1液圧)によって、通常調圧制御が実行される。このとき、下部流体ユニットYL(特に、第2電気モータML、チャージ弁UP)は作動停止されている。従って、制動液圧Pwは、調圧ユニットYC(第1調圧ユニット)のみによって調整される。
ステップS300にて、下部液圧Pp(第2液圧)によって、不調時調圧制御が実行される。このとき、調圧ユニットYC(特に、第1電気モータMC、第1調圧弁UC)は作動停止され、調整液圧Pc(第1液圧)は「0」にされる。従って、下部流体ユニットYL(第2調圧ユニット)によって、下部液圧(第2液圧)Ppが形成され、下部液圧Ppによって、制動液圧Pwが調整される。
ステップS120からステップS160までの処理(適否判定処理)は、パワースイッチ(「イグニッションスイッチ」ともいう)の信号Svに基づいて開始される。ここで、「パワースイッチ」は、エンジン等の動力源を始動させるためのスイッチである。例えば、パワースイッチ(イグニッションスイッチ)がオフされ、スイッチ信号Svがオン状態からオフ状態に変更された時点(演算周期)をトリガに、適否判定処理が開始される。
適否判定処理は、パワースイッチがオフにされたときに加え、システム起動をトリガにして、開始されてもよい。ここで、システム起動時は、コントローラECU、ECLがオフからオンに切り替えられた時点である。例えば、システムは、ドアスイッチの開閉信号(つまり、ドアが開けられたこと)に基づいて起動される。また、オフにされていたパワースイッチが、初めてオンされた時点に基づいて、システム起動が行われ得る。
適否判定の結果に基づいて、2つの制御が切り替えられる。このため、適否判定処理は、制動操作部材BPが操作される前に実行されることが望ましい。制動操作部材BPの操作が行われていないことを前提条件にして、パワースイッチのオン時、及び/又は、システム起動時がトリガとされて適否判定処理が開始される。これにより、制動操作の開始前に適否判定の結果が判明しているため、制動操作中の制御切り替えが回避され得る。結果、操作特性が不連続となることが避けられ、運転者への違和が抑制され得る。
<通常調圧制御の処理>
図4の制御フロー図を参照して、ステップS200に示した通常調圧制御の処理について説明する。通常調圧制御では、制動制御装置SCの全てが適正に作動し、調整液圧Pcによって、制動液圧Pwが調整される。なお、通常調圧制御は、制御制動の1つである。
ステップS210にて、操作量Ba、操作信号St、調整液圧Pc、回転角Ka、及び、要求減速度Grが読み込まれる。操作量Baは、操作量センサBAによって検出される。操作信号Stは、制動操作部材BPに設けられた操作スイッチSTによって検出される。調整液圧Pcは、調圧流体路HCに設けられた調整液圧センサPCによって検出される。モータ回転角Kaは、電気モータMCに設けられた回転角センサKAによって検出される。要求減速度Grは、通信バスBSを介して、運転支援コントローラECJから受信される。
ステップS220にて、操作量Ba、操作信号St、及び、要求減速度Grのうちの少なくとも1つに基づいて、「制動指示があるか、否か」が判定される。つまり、ステップS220では、調整液圧Pcの増加の要否が判定される。例えば、制動操作部材BPの操作に基づいて、制動指示の有無が判定される。操作量Baが、所定値bo以上である場合には、ステップS220は肯定され、処理は、ステップS230に進む。一方、「Ba<bo」である場合には、ステップS220は否定され、処理は、ステップS210に戻される。ここで、所定値boは、制動操作部材BPの遊びに相当する、予め設定された定数である。また、操作信号Stがオンである場合には、ステップS230に進み、操作信号Stがオフである場合には、ステップS210に戻る。要求減速度Grに基づいて、制動指示の有無が判定される。該制動指示は、自動制動についての要求である。
ステップS230にて、常開型のマスタシリンダ弁VM、及び、常閉型のシミュレータ弁VSに通電が行われる。該通電によって、マスタシリンダ弁VMが閉位置にされ、シミュレータ弁VSが開位置にされる。ステップS240にて、操作量Ba、及び、要求減速度Grに基づいて、目標減速度Gtが演算される。目標減速度Gtは、車両の減速における減速度の目標値である。目標減速度Gtの演算方法の詳細については後述する。
ステップS250にて、目標減速度Gtに基づいて、回生量Rg(目標値)が決定される。例えば、目標減速度Gtが、所定回生量rg未満である場合には、回生量Rg(車両減速度に対応した値)が、目標減速度Gtに一致するように決定される。一方、目標減速度Gtが、所定回生量rg以上である場合には、回生量Rgが、所定回生量rgに一致するように決定される。ここで、所定回生量rgは、定数として、予め設定されている。また、所定回生量rgは、回生用ジェネレータGN、或いは、蓄電池BTの状態に基づいて設定され得る。演算結果(「Rg=Gt」、又は、「Rg=rg」)は、通信バスBSを介して、駆動用コントローラECDに送信される。コントローラECDでは、目標値Rgが達成されるように、ジェネレータGNの制御が行われる。
ステップS260にて、目標減速度Gt、及び、回生量Rgに基づいて、第1目標液圧Pt(第1液圧Pcの目標値)が決定される。例えば、目標減速度Gtが、所定回生量rg未満であり、「Rg=Gt」である場合には、目標液圧Ptが「0」に演算される。つまり、車両減速には、摩擦制動が採用されず、回生制動のみによって、目標減速度Gtが達成される。目標減速度Gtが、所定回生量rg以上である場合には、目標減速度Gtから所定回生量rgが減算された値が、液圧に変換されて、目標液圧Ptが演算される。つまり、目標減速度Gtのうちで、所定回生量rgに相当する分が、回生制動(ジェネレータGNにて発生される制動力)よって達成され、残り「Gt-rg」が摩擦制動(回転部材KTと摩擦材との摩擦にて発生される制動力)よって達成されるよう、目標液圧Ptが決定される。
ステップ270にて、第1目標液圧Ptに基づいて、目標回転数Ntが演算される。目標回転数Ntは、第1電気モータMCの回転数の目標値である。目標回転数Ntは、演算マップZntに従って、目標液圧Ptが増加するに伴い単調増加するよう演算される。上述したように、調整液圧Pcは、調圧弁UCのオリフィス効果によって発生される。オリフィス効果を得るためには、或る程度の流量が必要となるため、目標回転数Ntには所定の下限回転数no(予め設定された定数)が設けられる。なお、目標回転数Ntは、制動操作量Ba、及び、要求減速度Grに基づいて、直接、演算されてもよい。何れの場合であっても、目標回転数Ntは、制動操作量Ba、及び、要求減速度Grに基づいて決定される。
ステップS280にて、第1電気モータMCにおいて、回転数に基づくサーボ制御(目標値に、実際値を素早く追従させる制御)が実行される。例えば、回転数サーボ制御として、目標回転数Nt、及び、実回転数Naに基づいて、第1電気モータMCの回転数フィードバック制御が実行される。ステップS180では、モータ回転角(検出値)Kaに基づいて、回転角Kaが時間微分されて、モータ回転速度(単位時間当りの実回転数)Naが演算される。そして、電気モータMCの回転数が制御変数とされて、電気モータMCへの通電量(例えば、供給電流)が制御される。具体的には、回転数の目標値Ntと実際値Naとの偏差hN(=Nt-Na)に基づいて、回転数偏差hNが「0」となるよう(つまり、実際値Naが目標値Ntに近づくよう)、電気モータMCへの通電量が調整される。「hN>nx」の場合には、電気モータMCへの通電量が増加され、電気モータMCは増速される。一方、「hN<-nx」の場合には、電気モータMCへの通電量が減少され、電気モータMCは減速される。ここで、所定値nxは、予め設定された定数である。
ステップS290にて、第1調圧弁UCにおいて、液圧に基づくサーボ制御が実行される。例えば、液圧サーボ制御として、第1目標液圧Pt、及び、調整液圧(第1液圧)Pc(第1液圧センサPCの検出値)に基づいて、調圧弁UCの液圧フィードバック制御が実行される。該フィードバック制御では、調圧流体路HC内の制動液BFの圧力Pcが制御変数とされて、常開・リニア型の調圧弁UCへの通電量が制御される。目標液圧Ptと調整液圧Pcとの偏差hP(=Pt-Pc)に基づいて、液圧偏差hPが「0」となるよう(つまり、実際の第1液圧Pcが第1目標液圧Ptに近づくよう)、調圧弁UCへの通電量が調整される。「hP>px」の場合には、調圧弁UCへの通電量が増加され、調圧弁UCの開弁量が減少される。一方、「hP<-px」の場合には、調圧弁UCへの通電量が減少され、調圧弁UCの開弁量が増加される。ここで、所定値pxは、予め設定された定数である。
<目標減速度Gtの演算>
図5の機能ブロック図を参照して、目標減速度Gtの演算方法について説明する。目標減速度Gtは、操作量Ba、及び、要求減速度Grに基づいて演算される。
車両には、自車両が走行している先に存在する物体(他の車両、固定物、自転車、人、動物等)と、自車両との間の距離(相対距離)Obを検出するよう、距離センサOBが設けられる。例えば、距離センサOBとして、カメラ、レーダ等が利用される。また、固定物が地図情報に記憶されている場合には、距離センサOBとして、ナビゲーションシステムが利用され得る。検出された相対距離Obは、運転支援コントローラECJに入力される。運転支援コントローラECJには、衝突余裕時間演算ブロックTC、車頭時間演算ブロックTW、及び、要求減速度演算ブロックGRが含まれる。
衝突余裕時間演算ブロックTCにて、車両前方の物体と自車両との相対的な距離Obに基づいて、衝突余裕時間Tcが演算される。衝突余裕時間Tcは、自車両と物体とが衝突に至るまでの時間である。具体的には、衝突余裕時間Tcは、車両前方の物体と自車両との相対的な距離Obが、障害物と自車両との速度差(即ち、相対速度)によって除算されることによって決定される。ここで、相対速度は、相対距離Obが時間微分されて演算される。
車頭時間演算ブロックTWにて、相対距離Ob、及び、車体速度Vxに基づいて、車頭時間Twが演算される。車頭時間Twは、前方の物体の現在位置に自車両が到達するまでの時間である。具体的には、車頭時間Twは、相対距離Obが、車体速度Vxにて除算されて演算される。なお、自車両前方の物体が静止している場合には、衝突余裕時間Tcと車頭時間Twとは一致する。車体速度Vxは、制動コントローラの下部コントローラECLから、通信バスBSを介して取得される。
要求減速度演算ブロックGRにて、衝突余裕時間Tc、及び、車頭時間Twに基づいて、要求減速度Grが演算される。例えば、要求減速度Grは、自車両と前方物体との衝突を回避するための自車両の減速度の目標値である。要求減速度Grは、演算マップZgrに従って、衝突余裕時間Tcが大きいほど、小さくなるよう(又は、衝突余裕時間Tcが小さいほど、大きくなるよう)、演算される。また、要求減速度Grは、車頭時間Twに基づいて調整され得る。車頭時間Twが大きいほど、要求減速度Grが小さくなるよう(又は、車頭時間Twが小さいほど、要求減速度Grが大きくなるよう)、車頭時間Twに基づいて、要求減速度Grが調整される。要求減速度Grは、通信バスBSを介して、制動コントローラECU、ECLに入力される。
制動コントローラECU、ECLには、指示減速度演算ブロックGS、及び、目標減速度演算ブロックGTが含まれる。
指示減速度演算ブロックGSにて、制動操作量Baに基づいて、指示減速度Gsが演算される。指示減速度Gsは、運転者による制動操作部材BPの操作によって発生される車両の減速度である。指示減速度Gsは、演算マップZgsに従って、制動操作量Baが、所定値bo未満では、指示減速度Gsは、「0」に演算される。そして、制動操作量Baが、所定値bo以上では、「0」から単調増加するよう、指示減速度Gsが演算される。
目標減速度演算ブロックGTにて、要求減速度Gr、及び、指示減速度Gsに基づいて、目標減速度Gtが演算される。目標減速度Gtは、自動制動制御における、最終的な車両減速度の目標値である。目標減速度演算ブロックGTでは、要求減速度Gr、及び、指示減速度Gsのうちで絶対値が大きい方の値が、目標減速度Gtとして決定される。従って、「Gt>Gs」の場合には、自動制動制御が実行される。しかし、「Gt<Gs」の場合には、運転者が既に車両減速を行っているため、自動制動制御は実行されない。
自動制動制御が実行されない場合には、要求減速度Grは「0」である。この場合には、目標減速度Gtは、指示減速度Gsに一致するよう決定される(即ち、「Gt=Gs」)。また、制動操作部材BPが操作されていない場合には、指示減速度Gsは「0」である。この場合には、目標減速度Gtは、要求減速度Grに一致するよう演算される(即ち、「Gt=Gr」)。
<不調時調圧制御の処理>
図6の制御フロー図を参照して、ステップS300に示した不調時調圧制御の処理について説明する。不調時調圧制御は、上部流体ユニットYUの構成要素のうちで、少なくとも1つが不調である場合の制御である。この場合、制動液圧Pwの調圧に、調圧ユニットYCは採用されず、下部流体ユニットYLのみによって、制動液圧Pwが調整される。なお、不調時調圧制御は、制御制動の1つである。
以下、通常調圧制御との相違点を中心に説明する。
ステップS310にて、操作量Ba、操作信号St、下部液圧Pp、車輪速度Vw、及び、要求減速度Grが読み込まれる。下部液圧(第2液圧)Ppは、下部液圧センサ(第2液圧センサ)PPによって検出される。車輪輪速度Vwは、各車輪WHに設けられた車輪速度センサVWによって検出される。
ステップS220と同様に、ステップS320にて、操作量Ba、操作信号St、及び、要求減速度Grのうちの少なくとも1つに基づいて、「制動指示があるか、否か」が判定される。ステップS320が肯定されると、処理はステップS330に進む。一方、ステップS320が否定されると、処理はステップS310に戻される。
ステップS330にて、マスタシリンダ弁VMが開位置にされ、シミュレータ弁VSが閉位置にされる。つまり、マスタシリンダ弁VM、及び、シミュレータ弁VSには通電が行われない。マスタシリンダ弁VMの開位置によって、マスタシリンダCMとホイールシリンダCWとは接続され、ブレーキ・バイ・ワイヤの状態が解消される。また、シミュレータ弁VSの閉位置によって、制動液BFがシミュレータSS内へ流入することが阻止される。不調時調圧制御において、制動操作部材BPの操作特性(操作変位Spに対する操作力Fpの関係)は、制動装置の剛性(キャリパの剛性、摩擦材の剛性、制動配管の剛性等)によって定まる。
ステップS240~ステップS260と同様に、ステップS340にて、操作量Ba、及び、要求減速度Grに基づいて、目標減速度Gtが演算される。ステップS350にて、目標減速度Gtに基づいて、回生量Rg(目標値)が決定される。ステップS360にて、目標減速度Gt、及び、回生量Rgに基づいて、第2目標液圧Pu(第2液圧Ppの目標値)が決定される。例えば、目標減速度Gtが、所定回生量rg未満であり、「Rg=Gt」である場合には、目標液圧Puが「0」に演算される。目標減速度Gtが、所定回生量rg以上である場合には、目標減速度Gtから所定回生量rgが減算された値が、液圧に変換されて、目標液圧Puが演算される。
不調時調圧制御では、ブレーキ・バイ・ワイヤの構成が解消され、運転者による操作力Fpによってもマスタシリンダ液圧Pmが発生される。このため、第2目標液圧Puは、この操作力Fpの影響が考慮されて、演算される。換言すれば、第2目標液圧Puによって、マスタシリンダ液圧Pmが増大されるよう制御される。即ち、運転者の操作力Fpを軽減する助勢制御が実行される。なお、不調時調圧制御が実行される際には、回生協調制御の実行は禁止されてもよい。この場合、回生量Rgは、「0」に決定され、目標減速度Gtは、第2液圧Pp、及び、運転者の操作力Fpによって達成される。
ステップS370にて、下部コントローラECLによって、第2電気モータMLが駆動される。これにより、第2流体ポンプQLによって、第2調圧弁(チャージ弁)UPの上流部Boから下流部Bpに向けて、制動液BFが吐出され、還流が形成される。チャージ弁UPが開位置(全開状態)にあり、第2流体ポンプQLを含む還流路が絞られていない場合には、チャージ弁UPの上部液圧Pqと下部液圧Ppとは概ね等しい。
ステップS380にて、第2目標液圧Puに基づいて、チャージ弁(第2調圧弁)UPにおいて、液圧に基づくサーボ制御(液圧サーボ制御)が実行される。具体的には、第2目標液圧Pu、及び、下部液圧(第2液圧)Pp(第2液圧センサPPの検出値)に基づいて、チャージ弁UPの液圧フィードバック制御が実行される。該フィードバック制御では、下部液圧Ppが制御変数とされて、常開・リニア型のチャージ弁UPへの通電量が制御される。目標液圧Puと下部液圧Ppとの偏差hQ(=Pu-Pp)に基づいて、液圧偏差hQが「0」となるよう(つまり、実際の第2液圧Ppが第2目標液圧Puに近づくよう)、チャージ弁UPへの通電量が調整される。「hQ>pz」の場合には、チャージ弁UPへの通電量が増加され、チャージ弁UPの開弁量が減少される。一方、「hQ<-pz」の場合には、チャージ弁UPへの通電量が減少され、チャージ弁UPの開弁量が増加される。ここで、所定値pzは、予め設定された定数である。
下部液圧センサPPは、省略され得る。この場合には、チャージ弁UPの制御において、車輪の減速スリップ(単に、「車輪スリップ」ともいう)Swを状態変数として、スリップサーボ制御が実行される。車輪スリップSwに基づくサーボ制御は、車輪の減速スリップSwが過大ではない場合(即ち、車輪スリップSwが所定の範囲内にある場合)には、車輪スリップSwと車輪制動力とが比例関係にあることに基づく。例えば、車輪スリップ(状態量)Swとして、車輪速度Vwと車体速度Vxと偏差hVが用いられる。また、車輪スリップSwとして、上記偏差hVが車体速度Vxにて除算された車輪スリップ率が採用され得る。具体的には、スリップサーボ制御では、ステップS380にて、第2目標液圧Puが、目標スリップSuに変換される。また、実際のスリップSwが、車輪速度Vw、及び、車体速度Vxに基づいて演算される。そして、車輪スリップSw(実際値)が、目標スリップSu(目標値)に近づき、一致するように、チャージ弁(第2調圧弁)UPへの通電量が調整される。
上部流体ユニットYUの一部が不調である場合、シミュレータSSによる操作特性の確保が、適正に達成されない場合がある。このため、不調時調圧制御では、シミュレータSSが利用されず、マニュアル制動時と同様に、制動装置(ブレーキキャリパ、摩擦材、制動配管等)の剛性によって、制動操作部材BPの操作特性が確保される。更に、不調時調圧制御では、制御制動の動力源として、下部流体ユニットYL(特に、第2電気モータML)が利用される。つまり、下部流体ユニットYLによって、運転者の操作が助勢される。このため、制動操作部材BPの操作に応じた、十分な制動液圧Pwが確保され得る。また、下部流体ユニットYLは、車両安定化制御等のための既存のデバイスであるため、新たなデバイスが付加されることなく、制動制御装置SCの冗長性が確保され得る。
下部流体ユニットYLによって、制動液圧Pwを増加するには、マスタシリンダCMから制動液BFが吸引される必要がある。つまり、制動液BFは、マスタシリンダ弁VMを通して吸引される必要がある。しかし、マスタシリンダ弁VMの弁座孔は、通常調圧制御の際に、直ちに閉じられるよう、小径にされている。流体ポンプQLが制動液BFを吸い込む際、マスタシリンダ弁VMの弁座孔がオリフィスとして作用するため、流体ポンプQLの吸引が阻害され得る。特に、この課題は、制動操作部材BPの操作が行われていない場合(非制動操作時)に顕著となる。課題解決には、マスタシリンダ弁VMの弁座孔の拡大、又は、流体ポンプQLを駆動する電気モータMLの出力増大が要求される。しかし、該対策は、制動制御装置SCの大型化につながる。
本発明に係る制動制御装置SCでは、分離ユニットYBにおいて、前方、後方シール部材SL、SMの間で、分離シリンダCBが、吸込み流体路HSを介してリザーバRVに接続される。そして、前方シール部材SLでは、加圧室RaからリザーバRVへの制動液BFの移動は封止されるが、リザーバRVから加圧室Raへの制動液BFの移動は可能である。従って、流体ポンプQLにおいて、制動液BFは、マスタシリンダCMから吸い込まれるとともに、分離ユニットYBを介してリザーバRVからも吸引され得る。これにより、下部流体ユニットYLによる加圧(特に、非制動操作時の自動制動制御による加圧)の応答性が、制動制御装置SCが大型化されることなく、向上され得る。
<車両の制動制御装置SCの第2の実施形態>
図7の全体構成図を参照して、本発明に係る車両の制動制御装置SCの第2の実施形態について説明する。上述したように、同一記号を付された構成部材、演算処理、信号、特性、及び、値は、同一機能のものである。各種記号末尾の添字「i」~「l」では、「i」が右前輪、「j」が左前輪、「k」が右後輪、「l」が左後輪を示す。記号末尾の添字「i」~「l」は、省略され得る。この場合、各記号は、4つの各車輪の総称を表す。加えて、各種記号末尾の添字「1」、「2」は、2つの制動系統において、「1」が第1系統、「2」が第2系統を示す。記号末尾の添字「1」、「2」は省略され得る。制動制御装置SCによって行われる制動が、「制御制動」であり、運転者の操作力のみによる制動が、「マニュアル制動」である。
第1の実施形態では、還流型の調圧ユニットYC、及び、シングル型の分離ユニットYBが採用された。第2の実施形態では、これらに代えて、タンデム型の分離ユニットYBが採用されるとともに、調圧ユニットYCとして、アキュムレータが利用される(「アキュムレータ型」という)。以下、第1の実施形態との相違点について説明する。
[分離ユニットYB(タンデム型)]
分離ユニットKBとして、タンデム型のものが採用される。分離シリンダCBの内部に、2つの分離ピストンPB1、PB2が、分離シリンダCBの中心軸Jbと同軸で直列に配置される。第2分離ピストンPB2の外周部と、分離シリンダCBの内周部とは、2つのシール部材SL2、SM2によって封止される。分離シリンダCBの一方側底部、分離シリンダCBの内周部、及び、第2分離ピストンPB2の一方側端部によって第2加圧室Ra2が形成される。同様に、第1分離ピストンPB1の外周部と、分離シリンダCBの内周部とは、2つのシール部材SL1、SM1によって封止され、第2分離ピストンPB2の他方側端部、分離シリンダCBの内周部、及び、第1分離ピストンPB1の一方側端部によって第1加圧室Ra1が形成される。また、第1分離ピストンPB1の他方側端部、分離シリンダCBの内周部、及び、分離シリンダCBの他方側底部によって調圧室Rcが形成される。中心軸Jbにおいて、調圧室Rcは、第1、第2分離ピストンPB1、PB2に対して、第1、第2加圧室Ra1、Ra2とは反対側に位置する。
制動操作部材BPが操作されない非制動時には、第1、第2分離ピストンPB1、PB2は、第1、第2分離弾性体(圧縮ばね)SB1、SB2によって、初期位置(最も後退方向Hbの位置)に押圧されている。また、第1、第2前方シール部材SL1、SL2、及び、第1、第2後方シール部材SM1、SM2の間は、夫々、第1、第2吸込み流体路HS1、HS2を介して、リザーバRVの第1、第2マスタリザーバ室Ru1、Ru2に連通状態にされている。第1、第2前方シール部材SL1、SL2によって、第1、第2加圧室Ra1、Ra2からリザーバRVへの制動液BFの移動が阻止される。従って、第1、第2加圧室Ra1、Ra2内の液圧Pa1、Pa2は保持される。一方、リザーバRVから第1、第2加圧室Ra1、Ra2への制動液BFの移動は、第1、第2前方シール部材SL1、SL2と第1、第2分離ピストンPB1、PB2との接触部Msを通して可能である。このため、第2流体ポンプQL1、QL2の吸込み性が向上され、制動液圧Pwの増加応答性が確保され得る。
[調圧ユニットYC(アキュムレータ型)]
調圧ユニットYCによって、調整液圧Pcが調整される。調圧ユニットYCは、電動ポンプDZ、アキュムレータAZ、アキュムレータ液圧センサ(「蓄圧センサ」ともいう)PZ、増加調圧弁UA、減少調圧弁UB、及び、調整液圧センサPC(第1液圧センサ)にて構成される。調圧ユニットYCは、アキュムレータが利用される「アキュムレータ型」である。
調圧ユニットYCには、アキュムレータAZ内に加圧された制動液BFが蓄えられるよう、蓄圧電動ポンプDZが設けられる。蓄圧電動ポンプDZは、1つの蓄圧電気モータMZ(「第1電気モータ」に相当)、及び、1つの蓄圧流体ポンプQZの組によって構成される。蓄圧電動ポンプDCでは、電気モータMZと流体ポンプQZとが一体となって回転するよう、電気モータMZと流体ポンプQZとが固定されている。蓄圧電動ポンプDZ(特に、蓄圧電気モータMZ)は、アキュムレータAZ内の液圧(アキュムレータ液圧)Pzを高圧に維持するための動力源である。蓄圧電気モータ(第1電気モータ)MZは、上部コントローラECUによって駆動される。例えば、電気モータMZとして、ブラシ付モータが採用される。
蓄圧流体ポンプQZから吐出された制動液BFは、アキュムレータAZに蓄えられる。アキュムレータAZには、アキュムレータ流体路HZが接続され、アキュムレータAZと増加調圧弁UAとが接続される。アキュムレータAZ内に蓄えられた液圧(アキュムレータ液圧)Pzを検出するよう、アキュムレータ流体路HZには、蓄圧センサPZが設けられる。アキュムレータAZから制動液BFが逆流しないよう、蓄圧流体ポンプQZの吐出部には、逆止弁GZが設けられる。
アキュムレータ液圧Pzが所定範囲内に維持されるよう、コントローラECUによって、蓄圧電動ポンプDZ(特に、蓄圧電気モータMZ)が制御される。具体的には、アキュムレータ液圧Pzが、下限値(所定値)pl未満の場合には、電気モータMZが所定回転数で駆動される。また、アキュムレータ液圧Pzが、上限値(所定値)pu以上の場合には、電気モータMZは停止される。ここで、下限値pl、及び、上限値puは、予め設定された所定の定数であり、「pl<pu」の関係にある。アキュムレータAZ内の液圧Pzは、下限値plから上限値puの範囲に維持される。
調圧ユニットYCには、常閉型の増加調圧弁UA、及び、常開型の減少調圧弁UBが設けられる。増加調圧弁UAと減少調圧弁UBとの間が、調圧流体路HCによって接続される。また、減少調圧弁UBは、リザーバ流体路HRに接続される。増加、減少調圧弁UA、UBは、通電量(例えば、供給電流)に基づいて開弁量が連続的に制御されるリニア型の電磁弁(比例弁)である。調圧弁UA、UBは、駆動信号Ua、Ubに基づいて、コントローラECUによって制御される。調整液圧Pcが増加して調節される場合には、増加調圧弁UAに通電が行われ、アキュムレータ流体路HZを介して、アキュムレータAZから調圧流体路HCに制動液BFが流入される。また、調整液圧Pc(実際値)に基づいて、減少調圧弁UBに通電が行われ、調整液圧Pcが減少するよう調節される。第1の実施形態と同様に、調整液圧(第1液圧)Pcを検出するよう、調整液圧センサPCが設けられる。第2の実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。
<調圧ユニットYCの他の構成例(電動シリンダ型)>
図8の概略図を参照して、調圧ユニットYCの他の構成例について説明する。図1を参照して還流型の調圧ユニットYC、及び、図7を参照してアキュムレータ型の調圧ユニットYCについて説明した。これらに代えて、調圧ユニットYCの第3の構成例では、調圧用の電気モータMDによって、調圧シリンダCD内に設けられた調圧ピストンPDが押圧される。これにより、調整液圧Pcの調圧が行われる。該調圧方式が、「電動シリンダ型」と称呼される。なお、電動シリンダ型の調圧ユニットYCでは、流体ポンプ、及び、調圧弁は利用されない。
第1調圧ユニットYCは、調圧用の電気モータ(「第1電気モータ」に相当)MD、減速機GS、回転・直動変換機構(ねじ機構)NJ、押圧部材PO、調圧シリンダCD、調圧ピストンPD、及び、戻し弾性体SDにて構成される。
調圧用電気モータ(調圧モータ)MDは、調圧ユニットYCが制動液圧Pwを調整(増減)するための動力源である。調圧モータ(第1電気モータ)MDは、上部コントローラECUによって、駆動信号Mdに基づいて駆動される。例えば、調圧モータMDとして、ブラシレスモータが採用され得る。
減速機GSは、小径歯車SK、及び、大径歯車DKにて構成される。減速機GSによって、電気モータMDの回転動力が減速されて、ねじ機構NJに伝達される。具体的には、小径歯車SKが、電気モータMDの出力軸に固定される。大径歯車DKが、小径歯車SKとかみ合わされ、大径歯車DKの回転軸がねじ機構NJのボルト部材BTの回転軸と一致するように、大径歯車DKとボルト部材BTとが固定される。ねじ機構NJにて、減速機GSの回転動力が、押圧部材POの直線動力Feに変換される。押圧部材POにはナット部材NTが固定される。ねじ機構NJのボルト部材BTが大径歯車DKと同軸に固定される。ナット部材NTの回転運動はキー部材KYによって拘束されるため、大径歯車DKの回転によって、ボルト部材BTと螺合するナット部材NT(即ち、押圧部材PO)が大径歯車DKの回転軸の方向に移動される。即ち、ねじ機構NJによって、調圧モータMDの回転動力が、押圧部材POの直線動力Feに変換される。
押圧部材POによって、調圧ピストンPDが移動される。調圧ピストンPDは、調圧シリンダCDの内孔に挿入され、ピストンとシリンダとの組み合わせが形成されている。具体的には、調圧ピストンPDの外周には、シールSNが設けられ、調圧シリンダCDの内孔(内部の円筒面)との間で液密性が確保される。即ち、調圧シリンダCDと調圧ピストンPDとによって区画される液圧室(調圧シリンダ室)Reが形成される。調圧ユニットYCの調圧シリンダ室Re内には、戻し弾性体(圧縮ばね)SDが設けられる。戻し弾性体SDによって、調圧モータMDへの通電が停止された場合に、調圧ピストンPDが初期位置(ストッパ部Sqに当接する位置)に戻される。
調圧シリンダ室Reは、調圧流体路HCに接続されている。調圧ピストンPDが中心軸方向に移動されることによって、調圧シリンダ室Reの体積が変化する。これによって、調整液圧Pcが調整される。具体的には、調圧モータMDが正転方向に回転駆動されると、調圧シリンダ室Reの体積が減少するように調圧ピストンPDが、前進方向(図では左方向)Heに移動される。これにより、調整液圧Pcが増加されて、制動液BFが調圧シリンダCDから調圧流体路HCに排出される。一方、調圧モータMDが逆転方向に回転駆動されると、調圧シリンダ室Reの体積が増加するように調圧ピストンPDが、後退方向(図では右方向)Hgに移動される。そして、調整液圧Pcが減少されて、制動液BFが、調圧流体路HCを介して調圧シリンダ室Re内に戻される。調圧モータMDが正転、又は、逆転方向に駆動されることによって、調整液圧(第1液圧)Pcが調整(増減)される。上記同様、調圧流体路HCには、調整液圧Pcを検出するよう、調整液圧センサPCが設けられる。
調圧モータMDは、第1目標液圧Pt、及び、調整液圧Pc(検出値)に基づいて制御される。先ず、目標液圧Ptに基づいて、目標液圧Ptが「0」から増加するに従って、指示通電量Isが、「0」から単調増加するように演算される。そして、目標液圧Ptと調整液圧Pcとの偏差hPに基づいて、補償通電量Iuが演算される。「hP>py(所定値)」の場合には、液圧偏差hPの増加に応じて、補償通電量Iuは正符号の値(調圧モータMDの正転方向に対応)として増加される。「hP<-py(所定値)」の場合には、液圧偏差hPの減少に応じて、補償通電量Iuは負符号の値(調圧モータMDの逆転方向に対応)として減少される。「-py≦hP≦py」の場合には、「Iu=0」に演算される。ここで、所定値pyは、予め設定された定数である。最終的には、目標通電量Itは、指示通電量Isと補償通電量Iuとが合算されて演算される。調圧モータMDにて、目標通電量It、及び、実通電量Ia(検出値)に基づいて、通電量(電流)フィードバック制御が実行される。実通電量Iaは、調圧モータMDの駆動回路DRに設けられた通電量センサ(電流センサ)IAによって検出される。
<他の実施形態>
以下、他の実施形態について説明する。他の実施形態においても、上記同様の効果を奏する。
上記の第1実施形態では、「還流型調圧ユニットYC+シングル型分離ユニットYB」の構成(図1参照)が例示された。第2実施形態では、「アキュムレータ型調圧ユニットYC+タンデム型分離ユニットYB」の構成(図7参照)が例示された。更に、調圧ユニットYCの例として、「電動シリンダ型調圧ユニットYC」の構成(図8参照)が例示された。これらの各構成要素は、組み合わせ自由である。従って、制動制御装置SCの構成として、表1の一覧表に示した6組のうちの1つが採用される。
Figure 0007047326000001
上記実施形態では、車両が、駆動用モータを有する電気自動車、又は、ハイブリッド車両とされた。これに代えて、駆動用モータを持たない一般的な内燃機関(ガソリンエンジン、ジーゼルエンジン)を有する車両にも、制動制御装置SCが適用され得る。制動制御装置SCは、制動液圧Pwの応答性が高いため、例えば、高応答な衝突被害軽減ブレーキ(所謂、AEB)が要求される車両にも適している。ジェネレータGNを有さない車両では、回生制動は発生されないため、制動制御装置SCにおいて、回生協調制御は不要であり、実行されない。つまり、車両は、制動制御装置SCによる摩擦制動のみによって減速される。なお、調圧制御では、「Rg=0」として制御が実行される。
上記実施形態では、リニア型の調圧弁UC、UA、UB、UPには、通電量に応じて開弁量が調整されるものが採用された。例えば、調圧弁UC、UA、UB、UPは、オン・オフ弁ではあるが、弁の開閉がデューティ比で制御され、液圧が線形に制御されるものでもよい。
上記実施形態では、2系統流体路として、ダイアゴナル型流体路が例示された。これに代えて、前後型(「H型」ともいう)の構成が採用され得る。前後型流体路では、第1マスタシリンダ流体路HM1(即ち、第1系統)には、前輪ホイールシリンダCWi、CWjが流体接続される。また、第2マスタシリンダ流体路HM2(即ち、第2系統)には、後輪ホイールシリンダCWk、CWlに流体接続される。
上記実施形態では、下部流体ユニット(第2調圧ユニット)YLは、上部流体ユニットYUの一部不調時に駆動された。上部流体ユニットYUが適正作動する場合であっても、下部流体ユニットYLが、自動制動制御のために駆動され得る。下部流体ユニットYLの第2流体ポンプQLは、分離ユニットYBを介して、リザーバRVから制動液BFを吸い込むことができるため、自動制動制御の応答性が向上され得る。また、車両安定化制御が実行される際にも、第2流体ポンプQLは、分離ユニットYBを通して、制動液BFを吸引できるため、制御効果が効率的に発揮され得る。
BP…制動操作部材、CM…マスタシリンダ、CW…ホイールシリンダ、RV…大気圧リザーバ、HS…吸込み流体路、YU…上部流体ユニット、ECU…上部コントローラ、YC…第1調圧ユニット、MC…第1電気モータ、QC…第1流体ポンプ、UC…第1調圧弁、YB…分離ユニット、PB…分離ピストン、CB…分離シリンダ、SL…前方シール部材、SM…後方シール部材、YL…下部流体ユニット(第2調圧ユニット)、ECL…下部コントローラ、ML…第2電気モータ、QL…第2流体ポンプ、UP…第2調圧弁、BA…操作量センサ、PC…調整液圧センサ。


Claims (2)

  1. 車両の車輪に備えられたホイールシリンダ内の制動液の制動液圧を調整する車両の制動制御装置であって、
    第1電気モータを駆動源にして、前記制動液を第1液圧にする第1調圧ユニットと、
    ピストン、及び、シリンダにて構成され、
    前記ピストンの外周部と前記シリンダの内周部とをシールし、前記第1液圧が導入される調圧室を形成する後方シール部材と、
    前記ピストンの外周部と前記シリンダの内周部とをシールし、前記ピストンに対して前記調圧室とは反対側に位置する加圧室を形成する前方シール部材とを有する分離ユニットと、
    第2電気モータによって駆動され、前記加圧室に接続される流体ポンプ、及び、調圧弁にて構成され、
    前記流体ポンプが吐出する前記制動液を、前記調圧弁によって第2液圧に調整し、前記ホイールシリンダに付与する第2調圧ユニットと、
    前記後方シール部材、及び、前記前方シール部材の間で、前記シリンダと前記車両のリザーバとを直接接続する吸込み流体路を備え、
    前記流体ポンプは、前記前方シール部材と前記外周部との接触部を介して、前記リザーバから前記制動液を吸引するよう構成された、車両の制動制御装置。
  2. 請求項1に記載の車両の制動制御装置において、
    前記前方シール部材として、カップシールが採用された、車両の制動制御装置。
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