JP2020032833A - 車両の制動制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ブレーキ・バイ・ワイヤ構成の制動制御装置において、制動操作特性が良好であり、通常制動時には2つの制動系統が流体的に分離されたものを提供する。【解決手段】 制動制御装置は、4つのホイールシリンダのうちの2つが接続される第1流体路と、4つのホイールシリンダのうちの別の2つが接続される第2流体路と、第1、第2流体路を流体的に分離するピストンと、第1、第2流体路とは流体的に分離され制動操作部材に操作力を付与するシミュレータと、リザーバに接続される電動ポンプと、電動ポンプが吐出する制動液を調整液圧に調節する調圧弁と、調圧弁を通過した制動液を電動ポンプの吸込み部に戻す還流路と、第1、第2流体路及びシミュレータとは流体的に分離され調整液圧によってピストンを介して第1、第2流体路の液圧を調整するサーボ室と、電動ポンプ及び調圧弁を制御するコントローラと、を備える。【選択図】 図1
Description
本発明は、車両の制動制御装置に関する。
特許文献1には、「装置の体格を小さく抑え、レイアウト性を向上する」ことを目的に、「マスタシリンダMCを圧力室1と背圧室2とに区画する大径ピストン11にドライバのブレーキ操作を受ける小径ピストン10を挿通し、背圧室2と後輪側のホイールシリンダWCRL,WCRRとを接続すると共に圧力室1と前輪側のホイールシリンダWCFL,WCFRとを挿通し、背圧室2の圧力がブレーキペダルストロークに応じた背圧室目標液圧となるように、背圧室2に圧力を供給するポンプ301,302を駆動する」ことが記載されている。
特許文献2には、「ホイールシリンダ液圧の増圧応答性を向上することができるブレーキ装置を提供する」ことを目的に、「運転者のブレーキ操作により作動し、第1油路11を介してホイールシリンダ8と接続し、ホイールシリンダ液圧を増圧可能なマスタシリンダ5と、第1油路11を介してホイールシリンダ8と接続し、ホイールシリンダ液圧を増圧可能なポンプ7と、マスタシリンダ5又はポンプ7によるホイールシリンダ液圧の増圧を補助する補助増圧部(補助増圧部106及びストロークシミュレータ27)と、を備える」ことが記載されている。
特許文献1の装置では、ストロークシミュレータ等を省略するため、2つのポンプ301、302の吐出先の油路p3、p4が、電磁弁211、212にて、適宜、切り替えられる。そして、ブレーキペダルBPのペダル反力(操作力)は、ポンプ301、302から流入するブレーキ液量と比例電磁弁202から油路p6へ流出する液量の関係、及び、反力スプリング16の特性によって発生される。該構成では、背圧室2の圧力は、ポンプ301、302の圧力変動(ポンプ脈動)の影響を受け易い。特に、ポンプ301、302の回転数に起因する液圧脈動が、反力スプリング16の固有振動数の近傍になると共振現象が生じる蓋然性が高まる。このため、回生協調制御等を実行するためのブレーキ・バイ・ワイヤ構成では、ブレーキペダルBPの操作力の発生部(例えば、シミュレータ)は、調圧部から流体的に分離されることが望ましい。
なお、特許文献1の装置では、電気系統の失陥時には、ドライバがブレーキペダルBPを踏み込むことで小径ピストン10を前進させ、小径ピストン10の前進により制限部材15が大径ピストン11に当接すると、小径ピストン10と大径ピストン11の両方を前進させてホイールシリンダWCにブレーキ液(制動液)を送り、圧力室1のブレーキ液圧を立ち上げることができる(特許文献1の図10を参照)。このとき、背圧室2の容積は拡大され、制動液は、カップシールを介して、リザーバタンクRSVから吸い込まれる。しかし、ブレーキペダルBPが戻されても、背圧室2内の制動液は、比例電磁弁202が閉位置にあるため、リザーバタンクRSVには戻されず、ブレーキ液圧が減少されない。特許文献1では、この点の改良も必要である。
特許文献2の装置では、通常制動時(補助増圧時、踏力ブレーキ時、踏力ブレーキから倍力制御への切換え時、倍力制御(増圧)時、及び、倍力制御(減圧)時の作動状態)では、連通弁23P、23Sが開位置にされ、2系統の流体路は連通されている(特許文献2の図3〜図7を参照)。該構成では、万一、1つのホイールシリンダにて破損が発生すると、多量の制動液が装置外に流出することが生じ得る。このため、2系統の流体路は、少なくとも通常制動時には流体的に分離されていることが望ましい。
本発明の目的は、回生協調制御を達成するブレーキ・バイ・ワイヤ構成の制動制御装置において、制動操作部材の操作特性が良好であるとともに、少なくとも通常制動時には2つの制動系統が流体的に分離された状態にあるものを提供することである。
本発明に係る車両の制動制御装置は、車両の4つのホイールシリンダ(CWi〜CWl)のうちの2つである第1ホイールシリンダ(CW1、CWf)が接続される第1流体路(HM1、HMf)と、前記4つのホイールシリンダ(CWi〜CWl)のうちで前記第1ホイールシリンダ(CW1、CWf)とは別の2つである第2ホイールシリンダ(CW2、CWr)が接続される第2流体路(HM2、HR)と、前記第1流体路(HM1、HMf)と前記第2流体路(HM2、HR)を流体的に分離するピストン(PG、PM)と、前記第1、第2流体路(HM1、HMf、HM2、HR)とは流体的に分離され、前記車両の制動操作部材(BP)に操作力(Fp)を付与するシミュレータ(SS)と、前記車両のリザーバ(RV)に接続される電動ポンプ(DC)と、前記電動ポンプ(DC)が吐出する制動液(BF)を調整液圧(Pa)に調節する調圧弁(UA)と、前記調圧弁(UA)を通過した制動液(BF)を前記電動ポンプ(DC)の吸込み部(Qs)に戻す還流路(A)と、前記第1、第2流体路(HM1、HMf、HM2、HR)、及び、前記シミュレータ(SS)とは流体的に分離され、前記調整液圧(Pa)によって前記ピストン(PG、PM)を介して前記第1、第2流体路(HM1、HMf、HM2、HR)の液圧(Pm1、Pm2、Pmf、Pmr)を調整するサーボ室(Rs)と、前記電動ポンプ(DC)、及び、前記調圧弁(UA)を制御するコントローラ(ECU)と、を備える。
上記構成によれば、2つの流体路(HM1とHM2、HMfとHR)は、ピストンPG、PMによって流体的に分離されている。つまり、「力」は伝達可能であるが、2系統の流体路間では、制動液は移動されない。更に、シミュレータSSは、第1、第2流体路HM1、HMf、HM2、HR、及び、サーボ室Rsとは流体的に分離される。そして、サーボ室Rsに供給される調整液圧PaによってピストンPG、PMを介して第1、第2流体路HM1、HMf、HM2、HRの液圧Pm1、Pm2、Pmf、Pmrが調整される。回生協調制御を含む通常制動時(スリップ制御の非実行時)には、制動系統(流体路)は、2系統に分離されているため、フェールセイフ上、好適である。また、シミュレータSSは、サーボ室Rs等とは流体的に分離されているため、操作力Fpにおいて、電動ポンプDCの液圧脈動の影響を受け難い。結果、制動操作部材BPの良好な操作特性が確保され得る。
本発明に係る車両の制動制御装置は、タンデム型マスタシリンダ(CM)と、前記タンデム型マスタシリンダ(CM)の第1、第2マスタ室(Rm1、Rm2)と前記第1、第2流体路(HM1、HM2)とを連通状態にするとともに前記第1、第2流体路(HM1、HM2)と前記サーボ室(Rs)とを非連通状態にする第1状態(VM1&VM2:開、VZ1&VZ2:閉)、及び、前記第1、第2マスタ室(Rm1、Rm2)と前記第1、第2流体路(HM1、HM2)とを非連通状態にするとともに前記第1、第2流体路(HM1、HM2)と前記サーボ室(Rs)とを連通状態にする第2状態(VM1&VM2:閉、VZ1&VZ2:開)を選択的に実現する切り替えユニット(YZ)と、前記第1、第2ホイールシリンダ(CW1、CW2)内の制動液(BF)を前記吸込み部(Qs)に排出することによって、前記第1、第2ホイールシリンダ(CW1、CW2)の液圧(Pwi〜Pwl)を個別に減少する流体ユニット(YL)と、を備える。そして、前記コントローラ(ECU)は、前記車両の車輪(WH)のロックを抑制するアンチスキッド制御、及び、前記車両のヨー運動を安定化する車両安定性制御のうちの少なくとも1つであるスリップ制御を実行し、前記切り替えユニット(YZ)は、前記スリップ制御が実行されない場合には前記第1状態(VM1&VM2:開、VZ1&VZ2:閉)を実現し、前記スリップ制御が実行される場合には前記第2状態(VM1&VM2:閉、VZ1&VZ2:開)を実現する。
本発明に係る車両の制動制御装置は、シングル型マスタシリンダ(CM)と、前記シングル型マスタシリンダ(CM)のマスタシリンダ室(Rm)と前記第1流体路(HMf)とを連通状態にするとともに前記第1流体路(HMf)と前記第2流体路(HR)とを非連通状態にする第1状態(VM:開、VZ:閉)、及び、前記マスタシリンダ室(Rm)と前記第1流体路(HMf)とを非連通状態にするとともに前記第1流体路(HMf)と前記第2流体路(HR)とを連通状態にする第2状態(VM:閉、VZ:開)を選択的に実現する切り替えユニット(YZ)と、前記第1、第2ホイールシリンダ(CWf、CWr)内の制動液(BF)を前記吸込み部(Qs)に排出することによって、前記第1、第2ホイールシリンダ(CWf、CWr)の液圧(Pwi〜Pwl)を個別に減少する流体ユニット(YL)と、を備える。前記コントローラ(ECU)は、前記車両の車輪(WH)のロックを抑制するアンチスキッド制御、及び、前記車両のヨー運動を安定化する車両安定性制御のうちの少なくとも1つであるスリップ制御を実行し、前記切り替えユニット(YZ)は、前記スリップ制御が実行されない場合には前記第1状態(VM:開、VZ:閉)を実現し、前記スリップ制御が実行される場合には前記第2状態(VM:閉、VZ:開)を実現する。
上記構成によれば、スリップ制御(アンチスキッド制御、車両安定性制御の総称)の実行時には、流体ユニットYLによって、制動液BFが、リザーバRVの側(即ち、流体ポンプHPの吸込み部Qs)に排出されることで制動液圧Pwが個別に減少されるとともに、切り替えユニットYZにより制動系統が1系統にされ、調圧弁UAによる液圧Paにて制動液圧Pwが増加される。このため、スリップ制御の実行するために、別の電動ポンプが必要とされない。即ち、制動液圧Pwを減圧するために、リザーバRVの側に戻された制動液は、制動液圧Pwの増加が必要な場合には単独の電動ポンプDCによってリザーバRVの側からホイールシリンダCWの側に戻される。付加的な電動ポンプが不要であるため、制動制御装置SCの簡素化、小型化が達成され得る。
なお、調圧が電動シリンダによって行われる装置(電気モータの回転運動がピストンの往復運動に変換されて液圧調整が行われるもの)では、ピストン変位の制限があるため、スリップ制御の増圧作動時において、制動液BFの液量に制限がある。このため、十分なシリンダ容量が確保されるか、又は、リザーバから制動液を吸引する吸液制御が必要となる(特開2016−147646号公報等を参照)。しかし、本発明の構成によれば、液圧調整が還流路(A)でのオリフィス効果によって行われるため、制動液BFの液量に制限がない。このため、制動制御装置SCの小型化が容易に達成され得る。
<構成部材等の記号、及び、記号末尾の添字>
以下の説明において、「ECU」等の如く、同一記号を付された構成部材、演算処理、信号、特性、及び、値は、同一機能のものである。各車輪に係る記号末尾に付された添字「i」〜「l」は、それが何れの車輪に関するものであるかを示す包括記号である。具体的には、「i」は右前輪、「j」は左前輪、「k」は右後輪、「l」は左後輪を示す。例えば、4つの各ホイールシリンダにおいて、右前輪ホイールシリンダCWi、左前輪ホイールシリンダCWj、右後輪ホイールシリンダCWk、及び、左後輪ホイールシリンダCWlと表記される。更に、記号末尾の添字「i」〜「l」は、省略され得る。添字「i」〜「l」が省略された場合には、各記号は、4つの各車輪の総称を表す。例えば、「WH」は各車輪、「CW」は各ホイールシリンダを表す。
以下の説明において、「ECU」等の如く、同一記号を付された構成部材、演算処理、信号、特性、及び、値は、同一機能のものである。各車輪に係る記号末尾に付された添字「i」〜「l」は、それが何れの車輪に関するものであるかを示す包括記号である。具体的には、「i」は右前輪、「j」は左前輪、「k」は右後輪、「l」は左後輪を示す。例えば、4つの各ホイールシリンダにおいて、右前輪ホイールシリンダCWi、左前輪ホイールシリンダCWj、右後輪ホイールシリンダCWk、及び、左後輪ホイールシリンダCWlと表記される。更に、記号末尾の添字「i」〜「l」は、省略され得る。添字「i」〜「l」が省略された場合には、各記号は、4つの各車輪の総称を表す。例えば、「WH」は各車輪、「CW」は各ホイールシリンダを表す。
ダイアゴナル型の制動系統に係る記号の末尾に付された添字「1」、「2」は、2つの制動系統において、それが何れの系統に関するものであるかを示す包括記号である。具体的には、「1」は第1系統、「2」は第2系統を示す。例えば、2つのマスタシリンダ流体路において、第1マスタシリンダ弁VM1、及び、第2マスタシリンダ弁VM2と表記される。更に、記号末尾の添字「1」、「2」は省略され得る。添字「1」、「2」が省略された場合には、各記号は、2つの各制動系統の総称を表す。例えば、「VM」は、各制動系統のマスタシリンダ弁を表す。
前後型の制動系統に係る記号の末尾に付された添字「f」、「r」は、それが前後輪の何れの系統に関するものであるかを示す包括記号である。具体的には、「f」は前輪系統、「r」は後輪系統を示す。例えば、各車輪のホイールシリンダCWにおいて、前輪ホイールシリンダCWf(=CWi、CWj)、及び、後輪ホイールシリンダCWr(=CWk、CWl)と表記される。更に、記号末尾の添字「f」、「r」は省略され得る。添字「f」、「r」が省略された場合には、各記号は、2つの各制動系統の総称を表す。例えば、「CW」は、前後の制動系統におけるホイールシリンダを表す。
流体路において、リザーバRVに近い側(ホイールシリンダCWから遠い側)が「上部」と称呼され、ホイールシリンダCWに近い側(リザーバRVから遠い側)が「下部」と称呼される。また、制動液BFの還流(A)において、流体ポンプHPの吐出部Qtに近い側が「上流側」と称呼され、該吐出部Qtから離れた側が「下流側」と称呼される。
<制動制御装置SCの第1実施形態>
図1の全体構成図を参照して、本発明に係る制動制御装置SCの第1の実施形態について説明する。第1の実施形態では、2系統の流体路として、所謂、ダイアゴナル型(「X型」ともいう)のものが採用されている。ここで、流体路は、制動制御装置SCの作動液体である制動液BFを移動するための経路であり、制動配管、流体ユニットの流路、ホース等が該当する。
図1の全体構成図を参照して、本発明に係る制動制御装置SCの第1の実施形態について説明する。第1の実施形態では、2系統の流体路として、所謂、ダイアゴナル型(「X型」ともいう)のものが採用されている。ここで、流体路は、制動制御装置SCの作動液体である制動液BFを移動するための経路であり、制動配管、流体ユニットの流路、ホース等が該当する。
車両は、駆動用の電気モータGNを備えたハイブリッド車両、又は、電気自動車である。駆動用の電気モータGNは、エネルギ回生用のジェネレータ(発電機)としても機能する。例えば、ジェネレータGNは、前輪WHi、WHj(=WHf)に備えられる。ジェネレータGNは、駆動コントローラECDによって制御される。駆動コントローラECDと制動コントローラECUとは、信号を共有できるよう、通信バスBSを介して接続されている。
車両には、制動操作部材BP、ホイールシリンダCW、車輪速度センサVW、操舵角センサSA、ヨーレイトセンサYR、横加速度センサGY、及び、前後加速度センサGXが備えられる。
制動操作部材(例えば、ブレーキペダル)BPは、運転者が車両を減速するために操作する部材である。制動操作部材BPが操作されることによって、車輪WHの制動トルクが調整され、車輪WHに制動力が発生される。具体的には、車両の車輪WHには、回転部材(例えば、ブレーキディスク)KTが固定される。そして、回転部材KTを挟み込むようにブレーキキャリパが配置される。
ブレーキキャリパには、ホイールシリンダCWが設けられている。ホイールシリンダCW内の制動液BFの圧力(制動液圧)Pwが増加されることによって、摩擦部材(例えば、ブレーキパッド)が、回転部材KTに押し付けられる。回転部材KTと車輪WHとは、一体的に回転するよう固定されているため、このときに生じる摩擦力によって、車輪WHに制動トルク(摩擦制動力)が発生される。
各車輪WHには、車輪速度Vwを検出するよう、車輪速度センサVWが備えられる。車両の車体には、車両のヨーレイトYrを検出するヨーレイトセンサYR、車両の前後方向における加速度(前後加速度)Gxを検出する前後加速度センサGX、及び、車両の横方向における加速度(横加速度)Gyを検出する横加速度センサGYが設けられる。
≪制動制御装置SC≫
制動制御装置SCは、操作量センサBA、マスタユニットYM、調圧ユニットYA、回生協調ユニットYK、下部流体ユニットYL、切り替えユニットYZ、及び、コントローラECUにて構成される。
制動制御装置SCは、操作量センサBA、マスタユニットYM、調圧ユニットYA、回生協調ユニットYK、下部流体ユニットYL、切り替えユニットYZ、及び、コントローラECUにて構成される。
運転者による制動操作部材(ブレーキペダル)BPの操作量Baを検出するよう、操作量センサBAが設けられる。操作量センサBAとして、制動操作部材BPの操作変位Spを検出する操作変位センサSPが設けられる。制動操作部材BPの操作力Fpを検出するよう、操作力センサFPが設けられる。また、操作量センサBAとして、ストロークシミュレータSS内の液圧(シミュレータ液圧)Psを検出するよう、シミュレータ液圧センサPSが設けられる。回生協調ユニットYKの入力室Rn内の液圧(入力液圧)Pnを検出するよう、入力液圧センサPNが設けられる。操作量センサBAは、上述の操作変位センサSP等の総称であり、制動操作量Baとして、操作変位Sp、操作力Fp、シミュレータ液圧Ps、及び、入力液圧Pnのうちの少なくとも1つが採用される。検出された制動操作量Baは、コントローラECUに入力される。
[マスタユニットYM]
マスタユニットYMによって、第1、第2マスタシリンダ室Rm1、Rm2を介して、第1ホイールシリンダCW1(=CWi、CWl)内の液圧(第1制動液圧)Pw1(=Pwi、Pwl)、及び、第2ホイールシリンダCW2(=CWj、CWk)内の液圧(第2制動液圧)Pw2(=Pwj、Pwk)が調整される。マスタユニットYMは、タンデム型のマスタシリンダCM、及び、プライマリマスタピストンPM、セカンダリマスタピストンPG、及び、第1、第2マスタ弾性体SM1、SM2を含んで構成される。
マスタユニットYMによって、第1、第2マスタシリンダ室Rm1、Rm2を介して、第1ホイールシリンダCW1(=CWi、CWl)内の液圧(第1制動液圧)Pw1(=Pwi、Pwl)、及び、第2ホイールシリンダCW2(=CWj、CWk)内の液圧(第2制動液圧)Pw2(=Pwj、Pwk)が調整される。マスタユニットYMは、タンデム型のマスタシリンダCM、及び、プライマリマスタピストンPM、セカンダリマスタピストンPG、及び、第1、第2マスタ弾性体SM1、SM2を含んで構成される。
タンデム型マスタシリンダCMは、底部を有する段付きのシリンダ部材である(即ち、小径部と大径部とを有する)。プライマリマスタピストンPM(単に、「プライマリピストン」ともいう)は、マスタシリンダCMの内部に挿入されたピストン部材であり、つば部(フランジ)Tmを有する。マスタシリンダCMとプライマリマスタピストンPMとは、シールSLにて封止されている。プライマリピストンPMは、制動操作部材BPの操作に連動して移動可能である。
タンデム型マスタシリンダCMの内部には、セカンダリマスタピストンPG(単に、「セカンダリピストン」ともいう)が挿入されている。プライマリピストンPMと同様に、セカンダリピストンPGも、マスタシリンダCMに対してシールSLにて封止されている。
マスタシリンダCMの内部は、2つのマスタピストンPM、PGによって、4つの液圧室Rm1、Rm2、Rs、Roに区画されている。プライマリ、セカンダリピストンPM、PGは、マスタシリンダCMの中心軸Jmに沿って、滑らかに移動可能である。
第2マスタシリンダ室(単に、「第2マスタ室」ともいう)Rm2は、「マスタシリンダCMの小径内周部、小径底部」、及び、セカンダリピストンPGの一方側端部によって区画された液圧室である。第2マスタ室Rmには、第2マスタシリンダ流体路HM2(「第2流体路」に相当)が接続され、下部流体ユニットYLを介して、ホイールシリンダCWj、CWk(「第2ホイールシリンダCW2」に相当)に接続される。
第1マスタシリンダ室(単に、「第1マスタ室」ともいう)Rm1は、「マスタシリンダCMの小径内周部」、「セカンダリピストンPGの他方側端部」、及び、プライマリピストンPMの端部によって区画された液圧室である。第1マスタ室Rm1には、第1マスタシリンダ流体路HM1(「第1流体路」に相当)が接続され、下部流体ユニットYLを介して、ホイールシリンダCWi、CWl(「第1ホイールシリンダCW1」に相当)に接続される。
更に、マスタシリンダCMの内部は、マスタピストンPMのつば部Tmによって、サーボ液圧室(単に、「サーボ室」ともいう)Rsと反力液圧室(単に、「反力室」ともいう)Roとに仕切られている。サーボ室Rsは、「マスタシリンダCMの大径内周部、大径底部」、及び、マスタピストンPMのつば部Tmによって区画された液圧室である。マスタ室Rmとサーボ室Rsとは、つば部Tmを挟んで、相対するように配置される。サーボ室Rsには、サーボ流体路HFが接続され、調圧ユニットYAから調整液圧Paが導入される。
反力室Roは、マスタシリンダCMの大径内周部、段付部、及び、マスタピストンPMのつば部Tmによって区画された液圧室である。反力室Roは、マスタシリンダCMの中心軸Jmの方向において、マスタ液圧室Rm(特に、Rm1)とサーボ液圧室Rsとに挟まれ、それらの間に位置する。従って、サーボ室Rsの体積が増加される場合に、反力室Roの体積が減少される。逆に、サーボ室体積が減少される場合には、反力室体積が増加される。反力室Roには、シミュレータ流体路HSが接続される。反力室Roによって、入力室Rnの制動液BFの液量が調節される。
マスタシリンダCMの小径底部とセカンダリマスタピストンPGの一方側端部との間には、第2マスタ弾性体(例えば、圧縮ばね)SM2が設けられる。セカンダリマスタピストンPGの他方側端部とプライマリマスタピストンPMの端部との間には、第1マスタ弾性体(例えば、圧縮ばね)SM1が設けられる。第1、第2マスタ弾性体SM1、SM2は、マスタピストンPM、PGを、マスタシリンダCMの中心軸Jmの方向に押している。非制動時には、プライマリマスタピストンPMは、マスタシリンダCMの大径底部に当接している。この状態でのマスタピストンPM、PGの位置が、「マスタユニットYMの初期位置」と称呼される。
マスタリザーバ(大気圧リザーバであり、単に「リザーバ」ともいう)RVは、作動液体用のタンクであり、その内部に制動液BFが貯蔵されている。リザーバRVの下部は、仕切り板SKによって、第1、第2マスタシリンダ室Rm1、Rm2に接続された第1、第2マスタリザーバ室Ru1、Ru2と、調圧ユニットYAに接続された調圧リザーバ室Rdと、に区画されている。リザーバRV内に制動液BFが満たされた状態では、制動液BFの液面は、仕切り板SKの高さよりも上にある。このため、制動液BFは、仕切り板SKを超えて、第1、第2マスタリザーバ室Ru1、Ru2と調圧リザーバ室Rdとの間を自由に移動することができる。一方、リザーバRV内の制動液BFの量が減少し、制動液BFの液面が仕切り板SKの高さよりも低くなると、マスタリザーバ室Ru1、Ru2と調圧リザーバ室Rdとは独立した液だめとなる。
タンデム型マスタシリンダCMには貫通孔が設けられ、制動操作部材BPが操作されていない場合には、該貫通孔を介して、第1、第2マスタ室Rm1、Rm2は、マスタリザーバ(大気圧リザーバ)RVに接続される。つまり、マスタピストンPM、PGが上記初期位置にある場合には、第1、第2マスタ室Rm1、Rm2は、リザーバRVと連通状態にされる。制動操作部材BPが操作され、マスタピストンPM、PGが前進方向Haに移動されると、第1、第2マスタ室Rm1、Rm2とリザーバRVとの連通状態は遮断される。そして、マスタピストンPM、PGが、更に、前進方向Haに移動されると、第1、第2マスタシリンダ液圧Pm1、Pm2が「0(大気圧)」から増加される。
第1、第2マスタ室Rm1、Rm2は、その内圧(「第1、第2マスタシリンダ液圧」であり、「第1、第2マスタ液圧」ともいう)Pm1、Pm2によって、中心軸Jmに沿った後退方向Hbの付勢力Fb(「後退力」という)を、マスタピストンPM、PGに対して付与する。ここで、「Pm1=Pm2」である。
サーボ室Rsは、その内圧(即ち、導入された調整液圧Pa)によって、後退力Fbに対向する前進方向Haの付勢力Fa(「前進力」という)を、マスタピストンPM、PGに付与する。マスタピストンPM、PGにおいて、サーボ室Rs内の液圧(調整液圧)Paによる前進力Faとマスタ室Rm1、Rm2内の液圧(マスタ液圧)Pm1、Pm2による後退力Fbとは、中心軸Jmの方向で互いに対抗し(向き合い)、静的には均衡している。つまり、マスタ液圧Pmが一定に維持される場合には、前進力Faと後退力Fbとは釣り合い、「Fa=Fb」である。マスタ液圧Pmが増加される場合には、調整液圧Paが増加され、「Fa>Fb」にされる。一方、マスタ液圧Pmが減少される場合には、調整液圧Paが減少され、「Fa<Fb」にされる。
第1、第2マスタ室Rm1、Rm2には、第1、第2マスタシリンダ流体路HM1、HM2(第1、第2流体路)が接続される。マスタシリンダ流体路HMには、マスタ液圧Pm(=Pm1、Pm2)を検出するよう、後述する第1、第2マスタシリンダ弁VM1、VM2の下部に、第1、第2マスタシリンダ液圧センサPQ1、PQ2が設けられる。「Pm1=Pm2」の関係にあるため、2つのマスタシリンダ液圧センサPQ1、PQ2のうちの何れか1つは省略可能である。
[調圧ユニットYA]
調圧ユニットYAによって、第1、第2ホイールシリンダCW1、CW2の液圧Pw1、Pw2が調節される。調圧ユニットYAは、電動ポンプDC、逆止弁GC、調圧弁UA、及び、調整液圧センサPAにて構成される。
調圧ユニットYAによって、第1、第2ホイールシリンダCW1、CW2の液圧Pw1、Pw2が調節される。調圧ユニットYAは、電動ポンプDC、逆止弁GC、調圧弁UA、及び、調整液圧センサPAにて構成される。
電動ポンプDCは、電気モータMC、及び、流体ポンプHPによって構成され、それらが一体となって回転する。流体ポンプHPにおいて、吸込口Qsは、第1リザーバ流体路HVに接続され、吐出口Qtは、調圧流体路HCの一方の端部に接続される。調圧流体路HCの他方の端部は、調圧弁UAを介して、第2リザーバ流体路HXに接続される。第1、第2リザーバ流体路HV、HXは、リザーバRVに接続される。調圧流体路HCには、逆止弁GCが設けられる。
調圧流体路HCには、調圧弁UAが設けられる。調圧弁UAは、通電状態(例えば、供給電流)に基づいて開弁量(リフト量)が連続的に制御されるリニア型の電磁弁(比例弁、差圧弁)である。調圧弁UAは、駆動信号Uaに基づいて、コントローラECUによって制御される。調圧弁UAとして、常開型の電磁弁が採用される。
電動ポンプDCが駆動されると、「HV→HP→GC→UA→HX→RV→HV」のように、制動液BFの還流(A)が形成される。換言すれば、制動液BFの還流路(A)には、流体ポンプHP、調圧弁UA、及び、リザーバRVが含まれている。なお、調圧弁UAは、部位Bvにて第1リザーバ流体路HVに接続されてもよい。この場合、還流路(A)は、「HV→HP→GC→UA→HV」のようになる。
調圧弁UAが全開状態にある場合(常開型であるため、非通電時)、調圧流体路HC内の液圧(調整液圧)Paは略「0(大気圧)」である。調圧弁UAへの通電量が増加され、調圧弁UAによって還流(A)が絞られると、調圧流体路HCにおいて、調圧弁UAの上流側の液圧(流体ポンプHPと調圧弁UAと間の液圧(調整液圧)Pa)が、「0」から増加される。つまり、調圧弁UAによって、調整液圧Paが、「0(大気圧)」から増加するよう調整される。調圧ユニットYAには、調整液圧Paを検出するよう、調整液圧センサPAが設けられる。なお、マスタユニットYMの諸元(マスタピストンPM、PGの受圧面積等)は既知であるため、調整液圧センサPAに代えて、マスシリンダ液圧センサPQが用いられてもよい。
調圧流体路HCは、流体ポンプHPと調圧弁UAとの間の部位Bdにて、サーボ流体路HFに分岐され、サーボ室Rsに接続される。従って、調整液圧Paは、サーボ室Rsに導入(供給)される。調整液圧Paによって、マスタピストンPM、PGには、前進方向Haの前進力Faが加えられ、マスタ室Rm内のマスタ液圧Pmが増加される。
[回生協調ユニットYK]
回生協調ユニットYK(「入力ユニット」ともいう)によって、摩擦制動と回生制動との協調制御(「回生協調制御」という)が達成される。例えば、回生協調ユニットYKによって、制動操作部材BPは操作されているが、制動液圧Pwが発生しない状態が形成される。回生協調ユニット(入力ユニット)YKは、入力シリンダCN、入力ピストンPK、入力弾性体SN、第1開閉弁VA、第2開閉弁VB、ストロークシミュレータSS、シミュレータ液圧センサPS、及び、入力液圧センサPNにて構成される。
回生協調ユニットYK(「入力ユニット」ともいう)によって、摩擦制動と回生制動との協調制御(「回生協調制御」という)が達成される。例えば、回生協調ユニットYKによって、制動操作部材BPは操作されているが、制動液圧Pwが発生しない状態が形成される。回生協調ユニット(入力ユニット)YKは、入力シリンダCN、入力ピストンPK、入力弾性体SN、第1開閉弁VA、第2開閉弁VB、ストロークシミュレータSS、シミュレータ液圧センサPS、及び、入力液圧センサPNにて構成される。
入力シリンダCNは、マスタシリンダCMに固定された、底部を有するシリンダ部材である。入力ピストンPKは、入力シリンダCNの内部に挿入されたピストン部材である。入力ピストンPKは、制動操作部材BPに連動するよう、クレビス(U字リンク)を介して、制動操作部材BPに機械的に接続されている。入力ピストンPKには、つば部(フランジ)Tnが設けられる。入力シリンダCNのマスタシリンダCMへの取付面と、入力ピストンPKのつば部Tnとの間には、入力弾性体(例えば、圧縮ばね)SNが設けられる。入力弾性体SNは、中心軸Jmの方向に、入力ピストンPKのつば部Tnを入力シリンダCNの底部に対して押し付けている。
非制動時には、プライマリマスタピストンPMの段付部がマスタシリンダCMの大径底部に当接し、入力ピストンPKのつば部Tnが入力シリンダCNの底部に当接している。そして、非制動時には、入力シリンダCNの内部にて、プライマリマスタピストンPMの端面Mqと入力ピストンPKの端面Mgとの隙間Ksは、所定距離ks(「初期隙間」という)にされている(即ち、「Ks=ks」)。即ち、ピストンPM、PG、PKが最も後退方向Hb(前進方向Haとは反対方向)の位置(各ピストンの「初期位置」という)にある場合(即ち、非制動時)に、プライマリピストンPMと入力ピストンPKとは、所定距離ksだけ離れている。ここで、所定距離ksは、回生量Rgの最大値に対応している。回生協調制御が実行される場合には、隙間(「離間変位」ともいう)Ksは、調整液圧Paによって制御(調節)される。
制動操作部材BPが、「Ba=0」の状態から踏み込まれると、入力ピストンPKは、その初期位置から、前進方向Ha(制動液圧Pwが増加する方向)に移動される。このとき、調整液圧Paが「0」に維持されれば、マスタピストンPM、PGは初期位置のままであるため、入力ピストンPKの前進に伴い、隙間Ks(端面Mgと端面Mqとの間の距離)は、徐々に減少する。一方、調整液圧Paが「0」から増加されると、マスタピストンPM、PGは、その初期位置から、前進方向Haに移動される。このため、隙間Ksは、調整液圧Paによって、「0≦Ks≦ks」の範囲で制動操作量Baとは独立して調整可能である。つまり、調整液圧Paが調整されることにより、入力ピストンPKとプライマリピストンPMとの隙間Ksが調節され、回生協調制御が実現される。
回生協調ユニットYKの入力室Rnと、マスタユニットYMの反力室Roとが、シミュレータ流体路HSにて接続される。シミュレータ流体路HSには、第1開閉弁VAが設けられる。第1開閉弁VAは、開位置、及び、閉位置を有する常閉型電磁弁(オン・オフ弁)である。シミュレータ流体路HSの第1開閉弁VAと反力室Roとの間の部位Bsに、第3リザーバ流体路HTが接続される。第3リザーバ流体路HTには、第2開閉弁VBが設けられる。第2開閉弁VBは、開位置、及び、閉位置を有する常開型電磁弁(オン・オフ弁)である。第1、第2開閉弁VA、VBは、駆動信号Va、Vbに基づいて、コントローラECUによって制御される。制動制御装置SCの起動時に、第1、第2開閉弁VA、VBへの通電が開始される。そして、第1開閉弁VAが開位置、第2開閉弁VBが閉位置にされる。
ストロークシミュレータSS(単に、「シミュレータ」ともいう)が、第1開閉弁VAと反力室Roとの間で、シミュレータ流体路HSに接続される。換言すれば、回生協調ユニットYKの入力室Rnは、シミュレータ流体路HSによって、シミュレータSSに接続される。回生協調制御時には、第1開閉弁VAが開位置にされ、第2開閉弁VBが閉位置にされる。第2開閉弁VBが閉位置によって、第3リザーバ流体路HTにおいて、リザーバRVへの流路は遮断されるため、制動液BFが、入力シリンダCNの入力室RnからシミュレータSS内に移動される。シミュレータSSのピストンには、弾性体にて、制動液BFの流入を阻止する力が加えられるため、制動操作部材BPが操作される場合の操作力Fpが発生される。
第3リザーバ流体路HTは、リザーバRVに接続される。第3リザーバ流体路HTは、その一部を第1、第2リザーバ流体路HV、HXと共用することができる。しかし、第1、第2リザーバ流体路HV、HXと第3リザーバ流体路HTとは、別々にリザーバRVに接続されることが望ましい。流体ポンプHPは、第1リザーバ流体路HVを介して、リザーバRVから制動液BFを吸引するが、このとき、第1リザーバ流体路HVには、気泡が混じり得る。このため、入力シリンダCN等に、気泡が混入することを回避するよう、第3リザーバ流体路HTは、直接、リザーバRVに接続される。
第1開閉弁VAと反力室Roとの間のシミュレータ流体路HSには、シミュレータSS内の液圧(「シミュレータ液圧」という)Psを検出するよう、シミュレータ液圧センサPSが設けられる。また、第1開閉弁VAと入力室Rnとの間のシミュレータ流体路HSには、入力室Rn内の液圧(「入力液圧」という)Pnを検出するよう、入力液圧センサPNが設けられる。シミュレータ液圧センサPS、及び、入力液圧センサPNは、上述した制動操作量センサBAの1つである。検出された液圧Ps、Pnは、制動操作量Baとして、コントローラECUに入力される。なお、第1、第2開閉弁VA、VBに通電が行われている場合には「Ps=Pn」であるため、シミュレータ液圧センサPS、及び、入力液圧センサPNのうちの何れか一方は省略可能である。
[下部流体ユニットYL]
下部流体ユニットYL(「流体ユニット」に相当し、「液圧モジュレータ」ともいう)は、アンチスキッド制御、車両安定性制御等の4輪独立で制動液圧Pwを個別に調整するためのものである。下部流体ユニットYLは、インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOにて構成される。
下部流体ユニットYL(「流体ユニット」に相当し、「液圧モジュレータ」ともいう)は、アンチスキッド制御、車両安定性制御等の4輪独立で制動液圧Pwを個別に調整するためのものである。下部流体ユニットYLは、インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOにて構成される。
マスタユニットYM(特に、タンデム型マスタシリンダCMの第1、第2マスタ室Rm1、Rm2)と下部流体ユニットYLとは、第1、第2マスタシリンダ流体路HM1、HM2にて接続される。第1マスタシリンダ流体路HM1(第1流体路)は、第1マスタシリンダ弁VM1の下部Bw1で、ホイールシリンダ流体路HWi、HWlに分岐され、第1ホイールシリンダCWi、CWl(=CW1)に接続される。同様に、第2マスタシリンダ流体路HM2(第2流体路)は、第2マスタシリンダ弁VM2の下部Bw2で、ホイールシリンダ流体路HWj、HWkに分岐され、第2ホイールシリンダCWj、CWl(=CW2)に接続される。インレット弁VIi〜VIlが、ホイールシリンダ流体路HWi〜HWlに設けられる。インレット弁VIは、開位置、及び、閉位置を有する常開型電磁弁(オン・オフ弁)である。インレット弁VIは、常開型のリニア弁でもよい。インレット弁VIは、駆動信号Viに基づいて、コントローラECUによって制御される。
ホイールシリンダ流体路HWi〜HWlには、インレット弁VIi〜VIlの下部Bei〜Belで、戻し流体路HYを介して、第1リザーバ流体路HVの部位Bn(即ち、流体ポンプHPの吸込み部Qs)に接続される。インレット弁VIi〜VIlの下部Bei〜Belと、戻し流体路HYとの間には、アウトレット弁VOi〜VOlが設けられる。アウトレット弁VOは、開位置、及び、閉位置を有する常閉型電磁弁(オン・オフ弁)である。アウトレット弁VOは、駆動信号Voに基づいて、コントローラECUによって制御される。各ホイールシリンダ流体路HWにおいて、インレット弁VI、アウトレット弁VO、及び、戻し流体路HYの構成は同じである。
[切り替えユニットYZ]
切り替えユニットYZによって、第1、第2ホイールシリンダCW1、CW2に対して、タンデム型マスタシリンダCMから第1、第2マスタ液圧Pm1、Pm2が供給される状態(「第1状態」という)と、調圧ユニットYAからの調整液圧Paが直接供給される状態(「第2状態」という)と、が切り替えられる(即ち、選択的に実現される)。第1状態は、回生協調制御を含む通常制動の場合に対応し、第2状態は、アンチスキッド制御、車両安定性制御等(後述するスリップ制御)が作動する場合に対応する。切り替えユニットYZは、第1、第2マスタシリンダ弁VM1、VM2、及び、第1、第2切り替え弁VZ1、VZ2にて構成される。
切り替えユニットYZによって、第1、第2ホイールシリンダCW1、CW2に対して、タンデム型マスタシリンダCMから第1、第2マスタ液圧Pm1、Pm2が供給される状態(「第1状態」という)と、調圧ユニットYAからの調整液圧Paが直接供給される状態(「第2状態」という)と、が切り替えられる(即ち、選択的に実現される)。第1状態は、回生協調制御を含む通常制動の場合に対応し、第2状態は、アンチスキッド制御、車両安定性制御等(後述するスリップ制御)が作動する場合に対応する。切り替えユニットYZは、第1、第2マスタシリンダ弁VM1、VM2、及び、第1、第2切り替え弁VZ1、VZ2にて構成される。
第1、第2マスタシリンダ弁VM1、VM2は、タンデム型マスタシリンダCMの第1、第2マスタ室Rm1、Rm2の出口において、第1、第2マスタシリンダ流体路HM1、HM2に設けられる。換言すれば、第1、第2マスタ室Rm1、Rm2は、第1、第2マスタシリンダ弁VM1、VM2を介して、第1、第2マスタシリンダ流体路HM1、HM2に接続される。第1、第2マスタシリンダ弁VM1、VM2によって、第1、第2マスタ室Rm1、Rm2と第1、第2マスタシリンダ流体路HM1、HM2との連通/非連通が切り替えられる。第1、第2マスタシリンダ弁VM1、VM2は、開位置、及び、閉位置を有する常開型電磁弁(オン・オフ弁)である。マスタシリンダ弁VMは、駆動信号Vmに基づいて、コントローラECUによって制御される。
第1マスタシリンダ流体路HM1は、第1連絡流体路HZ1を介して、サーボ流体路HFに接続される。つまり、サーボ流体路HFの部位Bz1と第1マスタシリンダ流体路HM1の部位Bx1との間に、第1連絡流体路HZ1が設けられる。そして、第1連絡流体路HZ1には、第1切り替え弁VZ1が設けられる。また、第1マスタシリンダ流体路HM1と第2マスタシリンダ流体路HM2との間(部位Bz2と部位Bx2との間)には、第2連絡流体路HZ2が設けられる。そして、第2連絡流体路HZ2には、第2切り替え弁VZ2が設けられる。第1、第2切り替え弁VZ1、VZ2は、開位置、及び、閉位置を有する常閉型電磁弁(オン・オフ弁)である。第1、第2切り替え弁VZ1、VZ2によって、サーボ流体路HF(即ち、調圧ユニットYA、及び、サーボ室Rs)と第1、第2マスタシリンダ流体路HM1、HM2とにおける「連通/非連通」が切り替えられる。切り替え弁VZは、駆動信号Vzに基づいて、コントローラECUによって制御される。
上記の第1状態では、マスタシリンダ弁VM、及び、切り替え弁VZが非通電にされる。つまり、第1、第2マスタシリンダ弁VM1、VM2が開位置にされるとともに、第1、第2切り替え弁VZ1、VZ2が閉位置にされる。第1、第2切り替え弁VZ1、VZ2が閉位置にされる場合には、第1、第2マスタシリンダ流体路HM1、HM2、及び、サーボ流体路HF(調圧ユニットYAとサーボ室Rsとの間の流体路)は、夫々、流体的に分離されている。このとき、サーボ室Rsに、調整液圧Paの制動液BFが供給されることによって、制動液BFが、第1、第2マスタ室Rm1、Rm2から、第1、第2マスタ液圧Pm1、Pm2にて、第1、第2ホイールシリンダCW1、CW2に向けて圧送される。なお、サーボ室Rsの受圧面積rsとマスタ室Rmの受圧面積rmとが同じ場合には、「Pm1=Pm2=Pa」が第1、第2ホイールシリンダCW1、CW2に出力される。第1状態は、スリップ制御が実行されない場合(即ち、回生協調制御を含む通常制動時)に実現(選択)される。
上記の第2状態では、マスタシリンダ弁VM、及び、切り替え弁VZに通電が行われる。つまり、第1、第2マスタシリンダ弁VM1、VM2が閉位置にされるとともに、第1、第2切り替え弁VZ1、VZ2が開位置にされる。第1、第2マスタシリンダ弁VM1、VM2が閉位置にされる場合、第1、第2マスタ室Rm1、Rm2は流体ロック(制動液BFの封じ込め)の状態にされるため、マスタピストンPM、PGは移動されず、サーボ室Rsに制動液BFは流入されない。このとき、第1、第2切り替え弁VZ1、VZ2が開位置にされるため、第1、第2マスタシリンダ流体路HM1、HM2(最終的には、第1、第2ホイールシリンダCW1、CW2)には、調圧弁UAによって調整された調整液圧Paが、第1、第2連絡流体路HZ1、HZ2(即ち、切り替えユニットYZ)を介して供給される。第2状態は、スリップ制御が実行される場合に実現(選択)される。
[コントローラECU]
コントローラECUでは、車輪速度Vwに基づいて、アンチスキッド制御が実行される。ここで、アンチスキッド制御は、車輪WHの過大な減速スリップ(即ち、車輪のロック傾向)を抑制するものである。具体的には、4つの車輪速度Vwに基づいて、車体速度Vxが演算される。各車輪速度Vwと車体速度Vxとの偏差に基づいて車輪スリップ速度Spが演算されるとともに、車輪速度Vwが時間微分されて、車輪加速度dVが演算される。そして、車輪スリップ速度Sp、及び、車輪加速度dVとそれらのしきい値との関係において、各制動液圧Pwが増減、又は、保持されるように、下部流体ユニットYLが制御される。
コントローラECUでは、車輪速度Vwに基づいて、アンチスキッド制御が実行される。ここで、アンチスキッド制御は、車輪WHの過大な減速スリップ(即ち、車輪のロック傾向)を抑制するものである。具体的には、4つの車輪速度Vwに基づいて、車体速度Vxが演算される。各車輪速度Vwと車体速度Vxとの偏差に基づいて車輪スリップ速度Spが演算されるとともに、車輪速度Vwが時間微分されて、車輪加速度dVが演算される。そして、車輪スリップ速度Sp、及び、車輪加速度dVとそれらのしきい値との関係において、各制動液圧Pwが増減、又は、保持されるように、下部流体ユニットYLが制御される。
また、コントローラECUでは、ヨーレイトYrに基づいて、車両安定性制御が実行される。車両安定性制御は、車両の横滑りを抑制し、ヨー運動を安定化するものである。具体的には、操舵角Saに基づいて、車両挙動の規範値が決定される。これと並行して、ヨーレイトYr、及び、横加速度Gyに基づいて、車両挙動の実際値が演算される。そして、規範値と実際値との偏差に基づいて、各制動液圧Pwが、独立、且つ、個別に制御される。なお、アンチスキッド制御、及び、車両安定性制御のうちの少なくとも1つが、「スリップ制御」と称呼される。つまり、スリップ制御は、アンチスキッド制御、車両安定性制御等の各輪個別制御の総称である。
コントローラECUでは、回生協調制御を実行し、制動操作量Baに応じた車両の減速を達成するよう、調圧ユニットYA、及び、回生協調ユニットYKが制御される。また、スリップ制御(アンチスキッド制御、及び、車両安定性制御のうちの少なくとも1つ)を実行するよう、調圧ユニットYA、回生協調ユニットYK、下部流体ユニットYL、及び、切り替えユニットYZが制御される。即ち、コントローラECUによって、電気モータMC、及び、電磁弁UA、VA、VB、VM、VI、VO、VZが制御される。具体的には、コントローラECUでは、電気モータMCを制御するための駆動信号Mcが演算される。同様に、各種電磁弁UA、VA、VB、VM、VI、VO、VZを制御するための駆動信号Ua、Va、Vb、Vm、Vi、Vo、Vzが演算される。そして、これら駆動信号(Mc等)に基づいて、電気モータMC、及び、電磁弁UA、VA、VB、VM、VI、VO、VZが制御される。
上述した様に、第1実施形態に係る制動制御装置SCは、回生協調制御を達成可能な、ブレーキ・バイ・ワイヤ型の装置である。ここで、回生協調制御は、回生ジェネレータGNによる回生制動力と制動液圧Pwによる摩擦制動力とを協調(連携)して制御するものである。制動制御装置SCでは、回生協調制御を含む通常の制動時には、第1マスタシリンダ流体路HM1(第1流体路)に係る部材(第1マスタ室Rm1、ホイールシリンダCWi、CWl等)、第2マスタシリンダ流体路HM2(第2流体路)に係る部材(第2マスタ室Rm2、ホイールシリンダCWj、CWk等)、サーボ室Rsに係る部材(サーボ流体路HF、調圧流体路HC等)、及び、シミュレータSSに係る部材(反力室Ro、入力室Rn、シミュレータ流体路HS等)は流体的に分離されている。ここで、「流体的な分離(流体分離)」とは、力(即ち、液圧)は伝達されるが、制動液BFの移動が発生しない状態である。
具体的には、第1マスタシリンダ流体路HM1に係る部材(第1マスタ室Rm1等)と、第2マスタシリンダ流体路HM2に係る部材(第2マスタ室Rm2等)とは、セカンダリピストンPGによって流体分離されている。また、第1、第2マスタシリンダ流体路HM1、HM2に係る部材と、サーボ室Rsに係る部材(サーボ流体路HF等)とは、プライマリピストンPMによって流体分離されている。そして、サーボ室Rsに係る部材(サーボ流体路HF等)と、シミュレータSSに係る部材(反力室Ro等)とは、プライマリピストンPM(特に、つば部Tm)、及び、マスタシリンダCMの大径底部によって流体分離されている。つまり、4つの液圧室Rm1(=HM1)、Rm2(=HM2)、Rs(=HF、YA)、Ro(=HS、SS)は、夫々、独立し、それらの間で制動液BFの移動は行われない。
制動制御装置SCでは、シミュレータSSは、第1マスタ室Rm1(=HM1)、第2マスタ室Rm2(=HM2)、及び、サーボ室Rs(=HF、HC、YA)から直接的に液圧変動の影響を受けない。シミュレータSSは、マスタピストンPM等を介して、液圧Paの変動の影響を受けるが、該変動は、シールSL等の摩擦抵抗、流体経路内の弾性、第1開閉弁VA内の絞り(弁座孔)等によって減衰される。このため、シミュレータSSは、流体ポンプHPの脈動の影響を受け難く、制動操作力Fpの変動が抑制され得る。結果、制動操作部材BPの良好な操作特性(操作変位Spと操作力Fpとの関係)が達成される。
通常、制動制御装置SCにおける失陥(破損)は、操作変位Spと制動液圧Pw(=Pm又はPa)との関係に基づいて判定される。しかし、該判定が適切に行われない場合であっても、第1マスタ室Rm1に係る部材、第2マスタ室Rm2に係る部材、及び、サーボ室Rsに係る部材は、マスタピストンPM、PGによって流体的に分離されているため、上記失陥に起因して装置外に排出される制動液BFの量は限定的である。つまり、これらの部材のうちの何れか1つに破損が生じ、且つ、判定が不十分な場合であっても、最悪、破損部材に対応するリザーバ室(Ru等の液だめ)にて、制動液BFの量が不足するに留まる。結果、制動制御装置SCの信頼度が向上され得る。
更に、制動制御装置SCには、「第1、第2マスタ室Rm1、Rm2と第1、第2マスタシリンダ流体路HM1、HM2とを連通状態にするとともに、第1、第2マスタシリンダ流体路HM1、HM2とサーボ室Rs(即ち、調圧流体路HC)とを非連通状態にする第1状態」、及び、「第1、第2マスタ室Rm1、Rm2と第1、第2マスタシリンダ流体路HM1、HM2とを非連通状態にするとともに、第1、第2マスタシリンダ流体路HM1、HM2とサーボ室Rs(=HC)とを連通状態にする第2状態」を選択的に実現可能な切り替えユニットYZが設けられる。通常制動時であって、スリップ制御(アンチスキッド制御、及び、車両安定性制御のうちの少なくとも1つ)が実行されない場合には、切り替えユニットYZでは第1状態を達成するよう、第1、第2マスタシリンダ弁VM1、VM2が開位置にされるとともに、第1、第2切り替え弁VZ1、VZ2が閉位置に制御される。結果、第1、第2ホイールシリンダCW1、CW2の第1、第2制動液圧Pw1、Pw2は、第1、第2マスタ室Rm1、Rm2によって調整(増減又は保持)される。
一方、スリップ制御が実行される場合には、切り替えユニットYZでは第2状態を達成するよう、第1、第2マスタシリンダ弁VM1、VM2が閉位置にされるとともに、第1、第2切り替え弁VZ1、VZ2が開位置にされる。第1、第2マスタシリンダ弁VM1、VM2の閉位置によって、第1、第2マスタ室Rm1、Rm2と第1、第2ホイールシリンダCW1、CW2とは遮断され、4つの液圧室Rm1、Rm2、Ro、Rsは流体ロックの状態にされる。制動液BFは、サーボ室Rsには流入されないため、第1、第2連絡流体路HZ1、HZ2、及び、第1、第2切り替え弁VZ1、VZ2を介して、第1、第2ホイールシリンダCW1、CW2に供給され、第1、第2制動液圧Pw1、Pw2が、インレット弁VIによって別個に増加される。つまり、第1、第2制動液圧Pw1、Pw2は、調圧ユニットYAによって、直接、増加される。第1、第2制動液圧Pw1、Pw2が別個に減少される場合には、流体ユニットYLにおいて、インレット弁VIが閉位置にされ、アウトレット弁VOが開位置にされることによって、第1、第2ホイールシリンダCW1、CW2内の制動液BFが、戻し流体路HYを介して、流体ポンプHPの吸込み部Qs(即ち、リザーバRV)に排出される。また、第1、第2制動液圧Pw1、Pw2が別個に保持される場合には、インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOが閉位置にされる。制動制御装置SCは、所謂、排出型であり、スリップ制御を実行するために、電動ポンプDCとは別の電動ポンプの追加が必要とされない。このため、制動制御装置SCが簡略化され、小型・軽量化され得る。
第1の実施形態に係る制動制御装置SCでは、流体路構成において、ダイアゴナル型のものが例示された。これに代えて、前後型のものが採用される。この場合、第1マスタ室Rm1(=Rmf)には、前輪ホイールシリンダCWi、CWj(=CWf)が接続されるとともに、第2マスタ室Rm2(=Rmr)には、後輪ホイールシリンダCWk、CWl(=CWr)が接続される。前後型の制動制御装置SCにおいても、上記同様の効果を奏する。
<調圧制御処理>
図2の制御フロー図を参照して、回生協調制御、及び、スリップ制御を含む調圧制御の処理について説明する。「調圧制御」は、調整液圧Paを調整するための、電気モータMC、及び、電磁弁UA、VA、VB、VM、VI、VO、VZの駆動制御である。該制御のアルゴリズムは、コントローラECU内のマイクロプロセッサMPにプログラムされている。
図2の制御フロー図を参照して、回生協調制御、及び、スリップ制御を含む調圧制御の処理について説明する。「調圧制御」は、調整液圧Paを調整するための、電気モータMC、及び、電磁弁UA、VA、VB、VM、VI、VO、VZの駆動制御である。該制御のアルゴリズムは、コントローラECU内のマイクロプロセッサMPにプログラムされている。
ステップS110にて、制動制御装置SCの初期化が行われる。ステップS110では、各構成要素の初期診断が実行される。ステップS120にて、常閉型の第1開閉弁VA、及び、常開型の第2開閉弁VBに通電が行われる。つまり、装置の起動スイッチが、オンされた場合に、第1開閉弁VAが開位置にされ、第2開閉弁VBが閉位置にされる。
ステップS130にて、各種のセンサ信号(検出値)が読み込まれる。制動操作量Ba(Sp、Fp、Ps、Pn)、調整液圧Pa、マスタ液圧Pm、車輪速度Vw、操舵角Sa、ヨーレイトYr、前後加速度Gx、及び、横加速度Gyが読み込まれる。操作量Baは、操作量センサBA(操作変位センサSP、操作力センサFP、入力液圧センサPN、シミュレータ液圧センサPS等)によって検出される。調整液圧Pa、マスタ液圧Pmは、調整液圧センサPA、マスタシリンダ液圧センサPQによって検出される。車輪速度Vw、操舵角Sa、ヨーレイトYr、前後加速度Gx、及び、横加速度Gyは、車輪速度センサVW、操舵角センサSA、ヨーレイトセンサYR、前後加速度センサGX、及び、横加速度センサGYによって、夫々、検出される。
ステップS140にて、車体速度Vx、及び、スリップ状態量Jsが演算される。車体速度Vxは、車輪速度Vwに基づいて演算される。スリップ状態量Jsは、スリップ制御における状態量(状態変数)である。スリップ制御がアンチスキッド制御である場合には、スリップ状態量Jsは、車輪スリップ速度Sp(車輪速度Vwと車体速度Vxとの速度差)、及び、車輪加速度dV(車輪速度Vwの時間微分値)に基づいて演算される。また、スリップ制御が車両安定性制御である場合には、スリップ状態量Jsは、車両挙動状態量における、規範値と実際値との偏差に基づいて決定される。ここで、規範値は操舵角Saに基づいて演算され、実際値はヨーレイトYr、横加速度Gyに基づいて演算される。
ステップS150にて、スリップ状態量Jsに基づいて、「スリップ制御が実行されるか、否か」が判定される。具体的には、スリップ状態量Jsが、所定量jxを超過した場合に、スリップ制御が実行される。所定量jxは、予め設定された定数であり、スリップ制御の実行におけるしきい値である。ステップS150が否定される場合には、処理はステップS160に進む。ステップS150が肯定される場合には、処理はステップS240に進む。
ステップS160〜S230は、回生協調制御を含む通常制動時の処理である。ステップS160では、常開型のマスタシリンダ弁VM、及び、常閉型の切り替え弁VZの非通電状態が維持される。即ち、マスタシリンダ弁VMは開位置にされ、切り替え弁VZは閉位置にされる。
ステップS170にて、ブロックX170に示す様に、操作量Baに基づいて、要求制動力Fdが演算される。要求制動力Fdは、車両に作用する総制動力Fの目標値であり、「制動制御装置SCによる摩擦制動力Fm」と「ジェネレータGNによる回生制動力Fg」とを合わせた制動力である。要求制動力Fdは、演算マップZfdに従って、操作量Baが「0」から所定値boの範囲では、「0」に決定され、操作量Baが所定値bo以上では、操作量Baが増加するに伴い、「0」から単調増加するよう演算される。
ステップS180にて、ブロックX180に示す様に、車体速度Vx、及び、演算マップZfxに基づいて、回生制動力の最大値(「最大回生力」という)Fxが演算される。ジェネレータGNの回生量は、駆動コントローラECDのパワートランジスタ(IGBT等)の定格、及び、バッテリの充電受入性によって制限される。例えば、ジェネレータGNの回生量は、所定の電力(単位時間当りの電気エネルギ)に制御される。電力(仕事率)が一定であるため、ジェネレータGNによる車輪軸まわりの回生トルクは、車輪WHの回転数(つまり、車体速度Vx)に反比例する。また、ジェネレータGNの回転数Ngが低下すると、回生量は減少する。更に、回生量には、上限値が設けられる。
最大回生力Fx用の演算マップZfxでは、車体速度Vxが、「0」以上、第1所定速度vo未満の範囲では、車体速度Vxの増加に従って、最大回生力Fxが増加するように設定される。また、車体速度Vxが、第1所定速度vo以上、第2所定速度vp未満の範囲では、最大回生力Fxは、上限値fxに決定される。そして、車体速度Vxが、第2所定速度vp以上では、車体速度Vxが増加するに従って、最大回生力Fxが減少するように設定されている。例えば、最大回生力Fxの減少特性(「Vx≧vp」の特性)では、車体速度Vxと最大回生力Fxとの関係は双曲線で表される(即ち、回生電力が一定)。ここで、各所定値vo、vpは予め設定された定数である。なお、演算マップZfxでは、車体速度Vxに代えて、ジェネレータGNの回転数Ngが採用され得る。
ステップS190にて、要求制動力Fd、及び、最大回生力Fxに基づいて、「要求制動力Fdが、最大回生力Fx以下であるか、否か」が判定される。つまり、運転者によって要求されている制動力Fdが、回生制動力Fgのみによって達成可能か、否かが判定される。「Fd≦Fx」であり、ステップS190が肯定される場合には、処理はステップS200に進む。一方、「Fd>Fx」であり、ステップS190が否定される場合には、処理はステップS210に進む。
ステップS200にて、回生制動力Fgが、要求制動力Fdに決定される(即ち、「Fg=Fd」)。また、ステップS200では、目標摩擦制動力Fmが、「0」に演算される。目標摩擦制動力Fmは、摩擦制動によって達成されるべき制動力の目標値である。この場合、車両減速には、摩擦制動が採用されず、回生制動のみによって、要求制動力Fdが達成される。
ステップS210にて、回生制動力Fgが、最大回生力Fxに決定される(即ち、「Fg=Fx」)。また、ステップS210では、目標摩擦制動力Fmが、要求制動力Fd、及び、最大回生力Fxに基づいて演算される。具体的には、目標摩擦制動力Fmは、要求制動力Fdから、最大回生力Fxが減算されて決定される(即ち、「Fm=Fd−Fx」)。つまり、要求制動力Fdにおいて、回生制動力Fg(=Fx)では不足する分が、目標摩擦制動力Fmによって補われる。
ステップS220にて、回生制動力Fgに基づいて、回生量Rgが演算される。回生量Rgは、ジェネレータGNの回生量の目標値である。回生量Rgは、通信バスBSを介して、制動コントローラECUから駆動コントローラECDに送信される。そして、駆動コントローラECDによって、目標の回生量Rgが達成されるよう、ジェネレータGNが制御される。
ステップS230にて、電気モータMC、及び、調圧弁UAが制御される。具体的には、先ず、摩擦制動力の目標値Fmに基づいて、目標液圧Ptが演算される。目標液圧Ptは、調整液圧Paの目標値である。目標摩擦制動力Fmが液圧換算されて、目標液圧Ptが決定される。そして、電気モータMCが駆動され、流体ポンプHPを含んだ制動液BFの還流(A)が形成される。目標液圧Pt、及び、調整液圧(整液圧センサPAの検出値)Paに基づいて、調整液圧Paが目標液圧Ptに近づき、一致するよう、調圧弁UAのフィードバック制御が実行される。以上で説明したように、通常制動時の処理においては、電磁弁VM、VI、VO、VZは、非通電の状態が維持される。
ステップS240〜S280は、スリップ制御時の処理である。この場合、回生協調制御は実行されない(即ち、「Fg=0」)。ステップS240では、マスタシリンダ弁VM、及び、切り替え弁VZが、通電状態にされる。即ち、マスタシリンダ弁VMは閉位置にされ、マスタユニットYMと下部流体ユニットYLとの流体接続が遮断され、非連通状態にされる。また、切り替え弁VZは開位置にされ、第1マスタシリンダ流体路HM1、第2マスタシリンダ流体路HM2、及び、サーボ流体路HFが連通状態にされる。つまり、第1、第2ホイールシリンダCW1、CW2とサーボ室Rsとが連通状態にされる。
ステップS250にて、ブロックX170と同様の演算マップZfd、及び、操作量Baに基づいて、操作量Baが「0」から所定値boの範囲では、「0」に決定され、操作量Baが所定値bo以上では、操作量Baが増加するに伴い、「0」から単調増加するよう、要求制動力Fdが演算される。スリップ制御時においては、要求制動力Fdは、摩擦制動力Fmのみによって達成される。
ステップS260にて、要求制動力Fd、及び、スリップ状態量Jsのうちの少なくとも1つに基づいて、目標液圧Ptが演算される。例えば、スリップ制御がアンチスキッド制御である場合には、要求制動力Fdに基づいて、目標液圧Ptが演算される。スリップ制御が車両安定性制御である場合には、要求制動力Fd、及び、スリップ状態量Jsに基づいて、車両のヨー運動を安定化するために、4つの車輪の摩擦制動力が個別に演算される。そして、それらのうちの最大のものに基づいて、目標液圧Ptが決定される。
ステップS270にて、目標液圧Ptに基づいて、電気モータMC、及び、調圧弁UAが制御される。ステップS230と同様に、電気モータMCが駆動され、流体ポンプHPを含んだ制動液BFの還流(A)が形成され、調整液圧Paが目標液圧Ptに近づき、一致するよう、調圧弁UAのフィードバック制御が実行される。
ステップS280にて、下部流体ユニットYLのインレット弁VI、及び、アウトレット弁VOが制御され、各制動液圧Pwが、個別に制御される。制動液圧Pwの減少が必要な場合には、インレット弁VIが閉位置にされ、アウトレット弁VOが開位置にされる。ホイールシリンダCWの制動液BFは、流体ポンプHPの吸込み部Qs(即ち、リザーバRV)に排出されるため、制動液圧Pwが減少される。制動液圧Pwの増加が必要な場合には、インレット弁VIが開位置にされ、アウトレット弁VOが閉位置にされる。ホイールシリンダCWには、切り替えユニットYZを介して、調整液圧Paが供給されるため、制動液圧Pwが増加される。制動液圧Pwの維持が必要な場合には、インレット弁VIが閉位置にされ、アウトレット弁VOが閉位置にされる。制動液BFは、ホイールシリンダCWに流入も、排出もされないため、制動液圧Pwが保持される。
<制動制御装置SCの第2実施形態>
図3の全体構成図を参照して、本発明に係る制動制御装置SCの第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、2系統の流体路にダイアゴナル型が採用され、マスタシリンダCMにタンデム型が採用された。第2の実施形態では、2系統流体路に前後型が採用され、マスタシリンダCMにシングル型が採用される。流体路は、作動液体である制動液BFを移動するための経路であって、制動配管、流体ユニットの流路、ホース等が相当する。
図3の全体構成図を参照して、本発明に係る制動制御装置SCの第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、2系統の流体路にダイアゴナル型が採用され、マスタシリンダCMにタンデム型が採用された。第2の実施形態では、2系統流体路に前後型が採用され、マスタシリンダCMにシングル型が採用される。流体路は、作動液体である制動液BFを移動するための経路であって、制動配管、流体ユニットの流路、ホース等が相当する。
上記同様、同一記号を付された構成部材、演算処理、信号、特性、及び、値は、同一機能のものである。各車輪に係る記号末尾に付された添字「i」〜「l」は、それが何れの車輪に関するものであるかを示す包括記号である。具体的には、「i」は右前輪、「j」は左前輪、「k」は右後輪、「l」は左後輪を示す。記号末尾の添字「i」〜「l」は、省略され得る。この場合には、各記号は、4つの各車輪の総称を表す。前後型の制動系統に係る記号の末尾に付された添字「f」、「r」は、それが前後輪の何れの系統に関するものであるかを示す包括記号であり、「f」は前輪系統、「r」は後輪系統を示す。また、ダイアゴナル型の制動系統に係る記号の末尾に付された添字「1」、「2」は、それが何れの系統に関するものであるかを示す包括記号であり、「1」は第1系統、「2」は第2系統を示す。記号末尾の添字「f」、「r」、「1」、「2」は省略され得る。この場合には、各記号は、2つの各制動系統の総称を表す。また、流体路において、ホイールシリンダCWから遠い側が「上部」、ホイールシリンダCWに近い側が「下部」と称呼される。還流路(A)において、流体ポンプHPの吐出部Qtに近い側が「上流側」、遠い側が「下流側」とされる。
第2の実施形態に係る制動制御装置SCでは、調圧ユニットYA、回生協調ユニット(入力ユニット)YK、下部流体ユニットYL、及び、コントローラECUは、第1の実施形態に係る制動制御装置SCと同じであるため、説明を省略する。以下、第1の実施形態に係る制動制御装置SCとは異なる、マスタユニットYM、及び、切り替えユニットYZについて説明する。
[マスタユニットYM]
マスタユニットYMは、シングル型のマスタシリンダCM、マスタピストンPM、及び、マスタ弾性体SMを含んで構成される。前輪ホイールシリンダCWi、CWj(=CWf)内の液圧(前輪制動液圧)Pwfは、前輪マスタシリンダ流体路HMf(「第1流体路」に相当)を介して、マスタユニットYMによって調整される。一方、後輪ホイールシリンダCWk、CWl(=CWr)内の液圧(後輪制動液圧)Pwrは、後輪サーボ流体路HR(「第2流体路」に相当)を介して、調整液圧Paに調節された制動液BFが、直接、供給されることによって調整される。ここで、後輪サーボ流体路HRは、サーボ流体路(前輪サーボ流体路)HFと同様に、部位Bdにて、調圧流体路HCに接続される。
マスタユニットYMは、シングル型のマスタシリンダCM、マスタピストンPM、及び、マスタ弾性体SMを含んで構成される。前輪ホイールシリンダCWi、CWj(=CWf)内の液圧(前輪制動液圧)Pwfは、前輪マスタシリンダ流体路HMf(「第1流体路」に相当)を介して、マスタユニットYMによって調整される。一方、後輪ホイールシリンダCWk、CWl(=CWr)内の液圧(後輪制動液圧)Pwrは、後輪サーボ流体路HR(「第2流体路」に相当)を介して、調整液圧Paに調節された制動液BFが、直接、供給されることによって調整される。ここで、後輪サーボ流体路HRは、サーボ流体路(前輪サーボ流体路)HFと同様に、部位Bdにて、調圧流体路HCに接続される。
シングル型マスタシリンダCMとマスタピストンPMとは、シールSLにて封止されている。マスタピストンPMは、制動操作部材BPの操作に連動して移動可能である。シングル型マスタシリンダCMの内部は、マスタピストンPMによって、3つの液圧室Rm、Rs、Roに区画されている。マスタピストンPMは、マスタシリンダCMの中心軸Jmに沿って、滑らかに移動可能である。
マスタシリンダ室(単に、「マスタ室」ともいう)Rmは、前輪マスタシリンダ弁VMfを介して、前輪マスタシリンダ流体路HMf(第1流体路)に接続される。前輪マスタシリンダ流体路HMfは、下部流体ユニットYLを介して、前輪ホイールシリンダCWf(「第1ホイールシリンダ」に相当)に接続される。更に、シングル型マスタシリンダCMの内部は、サーボ室Rsと反力室Roとに仕切られている。サーボ室Rsには、前輪サーボ流体路HFが接続され、調圧ユニットYAから調整液圧Paが導入される。反力室Roは、中心軸Jmの方向において、マスタ室Rmとサーボ室Rsとに挟まれる。サーボ室体積が増加される場合に、反力室体積が減少され、サーボ室体積が減少される場合には、反力室体積が増加される。反力室Roによって、入力室Rnの制動液BFの液量が調節される。反力室Roには、シミュレータ流体路HSが接続される。
マスタリザーバ(大気圧リザーバ)RVの下部は、仕切り板SKによって、マスタシリンダ室Rmに接続されたマスタリザーバ室Ruと、調圧ユニットYAに接続された調圧リザーバ室Rdと、に区画されている。制動液BFの液面は、仕切り板SKの高さよりも上にある状態では、制動液BFは、仕切り板SKを超えて、マスタリザーバ室Ruと調圧リザーバ室Rdとの間を自由に移動可能である。制動液BFの液面が仕切り板SKの高さよりも低くなると、マスタリザーバ室Ruと調圧リザーバ室Rdとは独立した液だめとなる。
マスタシリンダCMには貫通孔が設けられ、制動操作部材BPの非操作時には、該貫通孔を通して、マスタ室RmとリザーバRVとは連通状態にされる。制動操作部材BPが操作され、マスタピストンPMが、前進方向Haに移動されると、マスタ室RmとリザーバRVとの連通状態は遮断され、マスタ液圧Pmが「0(大気圧)」から増加される。マスタ室Rmは、マスタシリンダ液圧Pmによって、中心軸Jmに沿った後退方向Hbの付勢力Fb(後退力)を、マスタピストンPMに対して付与する。サーボ室Rsは、調整液圧Paによって、後退力Fbに対向する前進方向Haの付勢力Fa(前進力)を、マスタピストンPMに付与する。マスタピストンPMにおいて、前進力Faと後退力Fbとは、中心軸Jmの方向で互いに対抗し(向き合い)、静的には均衡している。つまり、マスタ液圧Pmが一定に維持される場合には、「Fa=Fb」である。マスタ液圧Pmが増加される場合には、調整液圧Paが増加され、「Fa>Fb」にされ、マスタ液圧Pmが減少される場合には、調整液圧Paが減少され、「Fa<Fb」にされる。マスタ液圧Pmを検出するよう、前輪マスタシリンダ弁VMfの下部には、マスタシリンダ液圧センサPQfが設けられる。
[切り替えユニットYZ]
切り替えユニットYZによって、前輪ホイールシリンダCWfに対して、シングル型マスタシリンダCMからマスタ液圧Pmが供給される状態(第1状態)と、調圧ユニットYAからの調整液圧Paが直接供給される状態(第2状態)と、が切り替えられる(即ち、選択的に実現される)。第1状態は、回生協調制御を含む通常制動の場合に対応し、第2状態は、アンチスキッド制御、車両安定性制御等(後述するスリップ制御)が作動する場合に対応する。切り替えユニットYZは、前輪マスタシリンダ弁VMf、及び、切り替え弁VZにて構成される。
切り替えユニットYZによって、前輪ホイールシリンダCWfに対して、シングル型マスタシリンダCMからマスタ液圧Pmが供給される状態(第1状態)と、調圧ユニットYAからの調整液圧Paが直接供給される状態(第2状態)と、が切り替えられる(即ち、選択的に実現される)。第1状態は、回生協調制御を含む通常制動の場合に対応し、第2状態は、アンチスキッド制御、車両安定性制御等(後述するスリップ制御)が作動する場合に対応する。切り替えユニットYZは、前輪マスタシリンダ弁VMf、及び、切り替え弁VZにて構成される。
シングル型マスタシリンダCMのマスタ室Rmは、前輪マスタシリンダ弁VMfを介して、前輪マスタシリンダ流体路HMfに接続される。前輪マスタシリンダ弁VMfによって、マスタ室Rmと前輪マスタシリンダ流体路HMfとの連通/非連通が切り替えられる。前輪マスタシリンダ弁VMfは、開位置、及び、閉位置を有する常開型電磁弁(オン・オフ弁)である。マスタシリンダ弁VMは、駆動信号Vmに基づいて、コントローラECUによって制御される。
前輪マスタシリンダ流体路HMfは、連絡流体路HZを介して、前輪、後輪サーボ流体路HF、HRに接続される。つまり、前輪マスタシリンダ流体路HMf(第1流体路)の部位Bzfと後輪サーボ流体路HR(第2流体路)の部位Bzrとの間に、連絡流体路HZが設けられる。そして、連絡流体路HZには、切り替え弁VZが設けられる。切り替え弁VZは、開位置、及び、閉位置を有する常閉型電磁弁(オン・オフ弁)である。切り替え弁VZによって、後輪サーボ流体路HR(即ち、前輪サーボ流体路HF、調圧ユニットYA、及び、サーボ室Rs)と前輪マスタシリンダ流体路HMfとの連通/非連通が切り替えられる。切り替え弁VZは、駆動信号Vzに基づいて、コントローラECUによって制御される。
第1状態では、前輪マスタシリンダ弁VMf、及び、切り替え弁VZが非通電にされる。つまり、前輪マスタシリンダ弁VMfが開位置にされるとともに、切り替え弁VZが閉位置にされる。切り替え弁VZが閉位置にされる場合には、前輪マスタシリンダ流体路HMf、及び、後輪サーボ流体路HR(調圧ユニットYA、サーボ室Rsに接続される流体路)の夫々は、マスタユニットYM(特に、マスタピストンPM)を介して流体的に分離される。このとき、サーボ室Rsには、調整液圧Paが供給され、制動液BFが、マスタ室Rmから、マスタ液圧Pmにて、前輪ホイールシリンダCWfに向けて圧送される。なお、サーボ室Rsの受圧面積rsとマスタ室Rmの受圧面積rmとが同じ場合には、「Pm=Pa」が前輪ホイールシリンダCWfに出力される。また、調整液圧Paは、後輪ホイールシリンダCWr(第2ホイールシリンダ)に直接、供給される。第1状態は、スリップ制御が実行されない、回生協調制御を含む通常制動時に、実現(選択)される。
第2状態では、前輪マスタシリンダ弁VMf、及び、切り替え弁VZに通電が行われる。つまり、前輪マスタシリンダ弁VMfが閉位置にされるとともに、切り替え弁VZが開位置にされる。前輪マスタシリンダ弁VMfが閉位置にされる場合、マスタ室Rmは流体ロック(制動液BFの封じ込め)の状態にされるため、マスタピストンPMは移動されず、サーボ室Rsに制動液BFは流入されない。このとき、切り替え弁VZが開位置にされるため、前輪マスタシリンダ流体路HMf(最終的には、前輪ホイールシリンダCWf)には、調圧弁UAによって調整された調整液圧Paが、連絡流体路HZ(即ち、切り替えユニットYZ)を介して導入される。つまり、前輪ホイールシリンダCWfには、調整液圧Paが、直接、供給される。なお、後輪ホイールシリンダCWrには、調整液圧Paが、直接、供給されている。第2状態は、スリップ制御が実行される場合に実現(選択)される。
第2実施形態に係る制動制御装置SCも、回生協調制御(ジェネレータGNによる回生制動力と制動液圧Pwによる摩擦制動力との協調)を達成可能な、ブレーキ・バイ・ワイヤ型の装置である。制動制御装置SCでは、回生協調制御を含む通常の制動時には、前輪ホイールシリンダCWfに係る部材(マスタシリンダ室Rm、前輪マスタシリンダ流体路HMf、前輪ホイールシリンダCWf等)、後輪ホイールシリンダCWrに係る部材(サーボ室Rs、前輪、後輪サーボ流体路HF、HR、調圧流体路HC等)、及び、シミュレータSSに係る部材(反力室Ro、入力室Rn、シミュレータ流体路HS等)は流体的に分離されている。「流体的な分離(流体分離)」の状態とは、力(即ち、液圧)は伝達されるが、制動液BFが移動されない状態である。
具体的には、前輪マスタシリンダ流体路HMf(第1流体路)に係る部材(マスタ室Rm、前輪ホイールシリンダCWf等)と、後輪サーボ流体路HR(第2流体路)に係る部材(後輪ホイールシリンダCWr、サーボ室Rs、前後輪サーボ流体路HF、HR等)とは、マスタピストンPMによって流体分離されている。また、サーボ室Rsに係る部材(前輪、後輪サーボ流体路HF、HR等)と、シミュレータSSに係る部材(反力室Ro、シミュレータ流体路HS等)とは、マスタピストンPM(特に、つば部Tm)、及び、マスタシリンダCMの大径底部によって流体分離されている。つまり、3つの液圧室Rm(=HMf)、Rs(=HF、YA)、Ro(=HS、SS)は、夫々、独立し、それらの間で制動液BFの移動は行われない。
第2の実施形態でも、第1の実施形態と同様に、シミュレータSSは、マスタ室Rm(=HMf)、及び、サーボ室Rs(=HF、HC)から直接的に液圧変動の影響を受けない。シミュレータSSは、マスタピストンPM等を介して、力の変動の影響を受けるが、該変動は、シールSL等の摩擦抵抗、流体経路内の弾性、第1開閉弁VAの弁座孔の絞り等によって減衰される。このため、シミュレータSSは、流体ポンプHPの脈動の影響を受け難く、操作力Fpの変動が抑制され得る。結果、好適な操作特性(操作変位Spと操作力Fpとの関係)が達成される。
マスタ室Rmに係る部材、及び、サーボ室Rsに係る部材は、マスタピストンPMによって流体的に分離されている。失陥判定が適切に行われない場合であっても、上記失陥に起因して装置外に排出される制動液BFの量は制限される。つまり、最悪、破損部分に対応するリザーバ室Ru、Rdにて、制動液BFの量が不足するに留まるため、制動制御装置SCの信頼度が向上され得る。
更に、切り替えユニットYZによって、「シングル型マスタシリンダCMのマスタシリンダ室Rmと前輪マスタシリンダ流体路HMfとを連通状態にし、前輪マスタシリンダ流体路HMf(第1流体路)と後輪サーボ流体路HR(第2流体路)とを非連通状態にする第1状態」、及び、「マスタシリンダ室Rmと前輪マスタシリンダ流体路HMfとを非連通状態にし、前輪マスタシリンダ流体路HMfと後輪サーボ流体路HRとを連通状態にする第2状態」が選択的に実現される。スリップ制御が実行されない通常制動時には、第1状態が選択され、前輪マスタシリンダ弁VMfが開位置にされるとともに、切り替え弁VZが閉位置に制御される。前輪ホイールシリンダCWfの前輪制動液圧Pwfは、マスタ室Rmによって調整されるとともに、後輪ホイールシリンダCWrの後輪制動液圧Pwrは、調整液圧Paによって調整される。
一方、スリップ制御が実行される場合には、第2状態が選択され、前輪マスタシリンダ弁VMfが閉位置にされるとともに、切り替え弁VZが開位置にされる。前輪マスタシリンダ弁VMfの閉位置によって、マスタ室Rmと前輪ホイールシリンダCWfとは遮断され、3つの液圧室Rm、Ro、Rsは流体ロックの状態にされる。制動液BFは、サーボ室Rsには流入されないため、切り替えユニットYZ(=HZ、VZ)を介して、前輪ホイールシリンダCWfに供給され、前輪制動液圧Pwfが増加される。つまり、スリップ制御時には、後輪制動液圧Pwrのみならず、前輪制動液圧Pwfも、調圧ユニットYAによって、直接、増加される。前輪、後輪制動液圧Pwf、Pwrが個別に減少される場合には、インレット弁VIが閉位置にされ、アウトレット弁VOが開位置にされることによって、ホイールシリンダCW内の制動液BFが、戻し流体路HYを介して、流体ポンプHPの吸込み部Qs(即ち、リザーバRV)に排出される。また、前輪、後輪制動液圧Pwf、Pwrが保持される場合には、インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOが閉位置にされる。制動液圧Pwが個別に増加される場合には、インレット弁VIが開位置にされ、アウトレット弁VOが閉位置にされ、調整液圧Paの制動液BFが供給される。スリップ制御を実行するために、電動ポンプDCとは別の電動ポンプの追加が必要とされないため、制動制御装置SCが簡略化され、小型・軽量化され得る。
<他の実施形態>
上記実施形態では、前輪WHfにジェネレータGNが備えられたが、後輪WHrに備えられてもよい。また、ジェネレータGNを持たない一般的な内燃機関を有する車両にも、制動制御装置SCが適用され得る。この場合、ジェネレータGNによる回生ブレーキは発生されないため、制動制御装置SCにおいて、回生協調制御は実行されない。つまり、車両は、摩擦制動力のみによって減速される。他の実施形態においても、上記同様の効果(良好な操作特性、装置の小型・軽量化、信頼性の向上)を奏する。
上記実施形態では、前輪WHfにジェネレータGNが備えられたが、後輪WHrに備えられてもよい。また、ジェネレータGNを持たない一般的な内燃機関を有する車両にも、制動制御装置SCが適用され得る。この場合、ジェネレータGNによる回生ブレーキは発生されないため、制動制御装置SCにおいて、回生協調制御は実行されない。つまり、車両は、摩擦制動力のみによって減速される。他の実施形態においても、上記同様の効果(良好な操作特性、装置の小型・軽量化、信頼性の向上)を奏する。
SC…制動制御装置、GN…回生ジェネレータ、BP…制動操作部材、YM…マスタユニット、CM…マスタシリンダ、PM…プライマリマスタピストン(マスタピストン)、PG…セカンダリマスタピストン、CW…ホイールシリンダ、YA…調圧ユニット、DC…電動ポンプ、MC…電気モータ、HP…流体ポンプ、UA…調圧弁、YK…回生協調ユニット、SS…ストロークシミュレータ、YL…下部流体ユニット、VI…インレット弁、VO…アウトレット弁、YZ…切り替えユニット、VM…マスタシリンダ弁、VZ…切り替え弁、HZ…連絡流体路、ECU…コントローラ、BA…操作量センサ、PA…調整液圧センサ、HM1…第1マスタシリンダ流体路(第1流体路)、HM2…第2マスタシリンダ流体路(第2流体路)、HMf…前輪マスタシリンダ流体路(第1流体路)、HR…後輪サーボ流体路(第2流体路)。
Claims (3)
- 車両の4つのホイールシリンダのうちの2つである第1ホイールシリンダが接続される第1流体路と、
前記4つのホイールシリンダのうちで前記第1ホイールシリンダとは別の2つである第2ホイールシリンダが接続される第2流体路と、
前記第1流体路と前記第2流体路を流体的に分離するピストンと、
前記第1、第2流体路とは流体的に分離され、前記車両の制動操作部材に操作力を付与するシミュレータと、
前記車両のリザーバに接続される電動ポンプと、
前記電動ポンプが吐出する制動液を調整液圧に調節する調圧弁と、
前記調圧弁を通過した制動液を前記電動ポンプの吸込み部に戻す還流路と、
前記第1、第2流体路、及び、前記シミュレータとは流体的に分離され、前記調整液圧によって前記ピストンを介して前記第1、第2流体路の液圧を調整するサーボ室と、
前記電動ポンプ、及び、前記調圧弁を制御するコントローラと、
を備える、車両の制動制御装置。 - 請求項1に記載の車両の制動制御装置であって、
タンデム型マスタシリンダと、
前記タンデム型マスタシリンダの第1、第2マスタ室と前記第1、第2流体路とを連通状態にするとともに前記第1、第2流体路と前記サーボ室とを非連通状態にする第1状態、及び、前記第1、第2マスタ室と前記第1、第2流体路とを非連通状態にするとともに前記第1、第2流体路と前記サーボ室とを連通状態にする第2状態を選択的に実現する切り替えユニットと、
前記第1、第2ホイールシリンダ内の制動液を前記吸込み部に排出することによって、前記第1、第2ホイールシリンダの液圧を個別に減少する流体ユニットと、
を備え、
前記コントローラは、
前記車両の車輪のロックを抑制するアンチスキッド制御、及び、前記車両のヨー運動を安定化する車両安定性制御のうちの少なくとも1つであるスリップ制御を実行し、
前記切り替えユニットは、
前記スリップ制御が実行されない場合には前記第1状態を実現し、
前記スリップ制御が実行される場合には前記第2状態を実現する、車両の制動制御装置。 - 請求項1に記載の車両の制動制御装置であって、
シングル型マスタシリンダと、
前記シングル型マスタシリンダのマスタシリンダ室と前記第1流体路とを連通状態にするとともに前記第1流体路と前記第2流体路とを非連通状態にする第1状態、及び、前記マスタシリンダ室と前記第1流体路とを非連通状態にするとともに前記第1流体路と前記第2流体路とを連通状態にする第2状態を選択的に実現する切り替えユニットと、
前記第1、第2ホイールシリンダ内の制動液を前記吸込み部に排出することによって、前記第1、第2ホイールシリンダの液圧を個別に減少する流体ユニットと、
を備え、
前記コントローラは、
前記車両の車輪のロックを抑制するアンチスキッド制御、及び、前記車両のヨー運動を安定化する車両安定性制御のうちの少なくとも1つであるスリップ制御を実行し、
前記切り替えユニットは、
前記スリップ制御が実行されない場合には前記第1状態を実現し、
前記スリップ制御が実行される場合には前記第2状態を実現する、車両の制動制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018160191A JP2020032833A (ja) | 2018-08-29 | 2018-08-29 | 車両の制動制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018160191A JP2020032833A (ja) | 2018-08-29 | 2018-08-29 | 車両の制動制御装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2020032833A true JP2020032833A (ja) | 2020-03-05 |
Family
ID=69666759
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2018160191A Pending JP2020032833A (ja) | 2018-08-29 | 2018-08-29 | 車両の制動制御装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2020032833A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2023157874A1 (ja) * | 2022-02-21 | 2023-08-24 | 株式会社アドヴィックス | 車両の制動制御装置 |
-
2018
- 2018-08-29 JP JP2018160191A patent/JP2020032833A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2023157874A1 (ja) * | 2022-02-21 | 2023-08-24 | 株式会社アドヴィックス | 車両の制動制御装置 |
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