JP2019026013A - 車両の制動制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 アキュムレータを有する車両の制動制御装置において、圧力の調整精度が向上され得るものを提供する。
【解決手段】 制動制御装置には、蓄圧電動ポンプによって発生された液圧を蓄積するアキュムレータと、『アキュムレータ、増幅シリンダ、及び、弁体が形成された増幅ピストンを含んで構成され、「アキュムレータに蓄積された液圧が弁体によって調整され、該調整された液圧が導入され、ホイールシリンダの液圧を調整する増幅室」、及び、「増幅ピストンに対して増幅室とは反対側に位置するパイロット室」を有する増幅ユニット』と、『蓄圧電動ポンプとは別の調圧電動ポンプ、及び、電磁弁にて構成され、調圧電動ポンプ、及び、電磁弁によって、パイロット室の液圧を調整する調圧ユニット』と、パイロット室の液圧を検出する液圧センサと、液圧センサの検出値に基づいて、調圧電動ポンプ、及び、電磁弁を制御するコントローラと、が備えられる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、車両の制動制御装置に関する。
特許文献1には、「分離ピストン装置と圧力源または圧力媒体貯蔵容器の間の接続部に配置された2/2方向制御弁は、異なる長さの最大開放(パルス幅変調)を生じることになるので、この弁は第2のチャンバに供給された液圧をコントロールまたは調整するためにはあまり適していない。ブレーキ圧力調節(ブレーキ圧力配分)を大幅に改善するように、電子制御可能なブレーキ操作装置を改良するために、弁装置が滑り弁構造の多位置弁によって形成され、多位置弁と圧力源との間の接続部に切換えシート弁が配置される」ことが記載されている。
具体的には、特許文献1には、「外部圧力源(独立圧力源)として役立つ、高圧アキュムレータ21を備えたモータ−ポンプ装置20が設けられる。第3の液圧管路26は、ポンプ23の送出側または高圧アキュムレータ21を、電磁操作可能な3/3(3ポート3位置)方向制御滑り弁27の第1の入口ポートに接続している。この滑り弁の第2の入口ポートは、液圧管路28に接続される。この液圧管路は、他方では無圧の圧力媒体貯蔵容器3に接続される。3/3方向制御滑り弁27の出口ポートは、前述の分離ピストン装置16の第2のチャンバ19に接続される」ことが記載されている。
特許文献1の装置では、アキュムレータに蓄えられた高圧を元に、3ポート3位置の方向制御滑り弁によって、第2のチャンバ(「パイロット室」ともいう)内の圧力が制御される。電磁弁の制御には、分解能が存在するため、所望の圧力に対して、圧力調整の基礎となる元圧が、極めて大きい場合には、圧力の制御精度が確保され難い。一般的な車両では、摩擦材のフェード時にも適切な摩擦力が発生されるよう、アキュムレータには、制動液が、かなりの高圧で蓄積されている。このため、アキュムレータが採用される制動制御装置では、特に、低圧領域において、圧力制御精度が確保され得るものが望まれている。
特表2000−517270号公報
本発明の目的は、アキュムレータを有する、ブレーキ・バイ・ワイヤ構成の車両の制動制御装置において、圧力の調整精度が向上され得るものを提供することである。
本発明に係る車両の制動制御装置は、車両の車輪(WH)に備えられたホイールシリンダ(CW)の液圧(Pw)を調整するものであり、蓄圧電動ポンプ(DZ)によって発生された液圧(Pq)を蓄えるアキュムレータ(AZ)と、前記アキュムレータ(AZ)、増幅シリンダ(CZ)、及び、弁体(Vv)が形成された増幅ピストン(PZ)を含んで構成され、「前記アキュムレータ(AZ)に蓄えられた液圧(Pq)が前記弁体(Vv)によって調整され、該調整された液圧(Pv)が導入され、前記ホイールシリンダ(CW)の液圧を調整する増幅室(Ro)」、及び、「前記増幅ピストン(PZ)に対して前記増幅室(Ro)とは反対側に位置するパイロット室(Rp)」を有する増幅ユニット(KZ)と、前記蓄圧電動ポンプ(DZ)とは別の調圧電動ポンプ(DC)、及び、電磁弁(UC、UD)にて構成され、前記調圧電動ポンプ(DC)、及び、前記電磁弁(UC、UD)によって、前記パイロット室(Rp)の液圧(Pp、Pc)を調整する調圧ユニット(KC)と、前記パイロット室(Rp)の液圧(Pp、Pc)を検出する液圧センサ(PC)と、前記液圧センサ(PC)の検出値(Pp、Pc)に基づいて、前記調圧電動ポンプ(DC)、及び、前記電磁弁(UC、UD)を制御するコントローラ(ECU)と、を備える。
本発明に係る車両の制動制御装置では、前記コントローラ(ECU)は、前記車両の制動操作部材(BP)の操作量(Ba)に基づいて目標液圧(Pt)、及び、目標回転数(Nt)を演算し、前記調圧電動ポンプ(DC)の回転数(Na)が前記目標回転数(Nt)に近づくように前記調圧電動ポンプ(DC)を制御し、前記検出値(Pp、Pc)が前記目標液圧(Pt)に近づくように前記電磁弁(UC、UD)を制御する。
上記構成によれば、パイロット作動する増幅ユニットKZが、調圧ユニットKCによって駆動される。調圧ユニットKCの圧力源として、電動ポンプDCが採用され、その元圧が、「0」から増加されるため、低圧領域において、良好な調圧精度が確保される。加えて、弁体Vvを有する増幅ユニットKZによって、制動液BFの流量拡大が確実に実行され得る。更に、増幅ユニットKZによって、調圧ユニットKCとホイールシリンダCWとの間で、調圧ユニットKCとホイールシリンダCWとが流体的に分離される。このため、制動制御装置SCのフェイルセーフ性が向上され得る。
本発明に係る車両の制動制御装置SCの実施形態を説明するための全体構成図である。 増幅ユニットKZ、及び、分離ユニットKBを説明するための概略図である。 調圧制御の第1処理例を説明するための制御フロー図である。 2系統流体路の制動制御装置SCの構成例を説明するための全体構成図である。 調圧制御の第2処理例を説明するための制御フロー図である。 省電力制御の処理を説明するための制御フロー図である。 分離ユニットKBの他の構成例を説明するための概略図である。
<構成部材等の記号、記号末尾の添字、及び、運動・移動方向>
以下の説明において、「ECU」等の如く、同一記号を付された構成部材、演算処理、信号、特性、及び、値は、同一機能のものである。各種記号の末尾に付された添字「i」〜「k」は、それが何れの車輪に関するものであるかを示す包括記号である。具体的には、「i」は右前輪、「j」は左前輪、「k」は右後輪、「l」は左後輪を示す。例えば、4つの各ホイールシリンダにおいて、右前輪ホイールシリンダCWi、左前輪ホイールシリンダCWj、右後輪ホイールシリンダCWk、及び、左後輪ホイールシリンダCWlと表記される。更に、記号末尾の添字「i」〜「k」は、省略され得る。添字「i」〜「k」が省略された場合には、各記号は、4つの各車輪の総称を表す。例えば、「WH」は各車輪、「CW」は各ホイールシリンダを表す。
各種記号の末尾に付された添字「1」、「2」は、2つの制動系統において、それが何れの系統に関するものであるかを示す包括記号である。具体的には、「1」は第1系統、「2」は第2系統を示す。例えば、2つのマスタシリンダ流体路において、第1マスタシリンダ流体路HM1、及び、第2マスタシリンダ流体路HM2と表記される。更に、記号末尾の添字「1」、「2」は省略され得る。添字「1」、「2」が省略された場合には、各記号は、2つの各制動系統の総称を表す。例えば、「VM」は、各制動系統のマスタシリンダ弁を表す。
<本発明に係る車両の制動制御装置の実施形態>
図1の全体構成図を参照して、本発明に係る制動制御装置SCの実施形態について説明する。一般的な車両では、フェイルセーフのため、複数の制動系統(例えば、2系統)が採用され、冗長性が確保されている。各制動系統の構成は同じであるため、代表として、1つの制動系統が図示されている。車両は、駆動用の電気モータを備えたハイブリッド車両、又は、電気自動車である。制動制御装置SCでは、所謂、回生協調制御(回生ブレーキと摩擦ブレーキとの協調)が実行される。
制動制御装置SCを備える車両には、制動操作部材BP、ホイールシリンダCW、リザーバRV、マスタシリンダCM、及び、車輪速度センサVWが備えられる。
制動操作部材(例えば、ブレーキペダル)BPは、運転者が車両を減速するために操作する部材である。制動操作部材BPが操作されることによって、車輪WHの制動トルクが調整され、車輪WHに制動力が発生される。具体的には、車両の車輪WHには、回転部材(例えば、ブレーキディスク)KTが固定される。そして、回転部材KTを挟み込むようにブレーキキャリパが配置される。
ブレーキキャリパには、ホイールシリンダCWが設けられている。ホイールシリンダCW内の制動液BFの圧力(制動液圧)Pwが増加されることによって、摩擦部材(例えば、ブレーキパッド)が、回転部材KTに押し付けられる。回転部材KTと車輪WHとは、一体的に回転するよう固定されているため、このときに生じる摩擦力によって、車輪WHに制動トルク(摩擦ブレーキ力)が発生される。
リザーバ(大気圧リザーバ)RVは、作動液体用のタンクであり、その内部に制動液BFが貯蔵されている。リザーバRVの下部は、仕切り板SKによって、マスタシリンダ室Rmに接続されたマスタリザーバ室Ruと、調圧ユニットKCに接続された調圧リザーバ室Rdとに区画されている。リザーバRV内に制動液BFが満たされた状態では、制動液BFの液面は、仕切り板SKの高さよりも上にある。このため、制動液BFは、仕切り板SKを超えて、マスタリザーバ室Ruと調圧リザーバ室Rdとの間を自由に移動することができる。一方、リザーバRV内の制動液BFの量が減少し、制動液BFの液面が仕切り板SKの高さよりも低くなると、マスタリザーバ室Ruと調圧リザーバ室Rdとは独立した液だめとなる。
マスタシリンダCMは、制動操作部材BPに、ブレーキロッド等を介して、機械的に接続されている。制動操作部材BPが操作されていない場合には、マスタシリンダCMとリザーバRVとは連通状態にある。制動操作部材BPが操作されると、マスタシリンダCM内のピストンPSが押され、ピストンPSは前進する。この前進によって、マスタシリンダCMの内壁とピストンPSとによって形成された、マスタシリンダ室Rmは、リザーバRV(特に、マスタリザーバ室Ru)から遮断される。制動操作部材BPの操作が増加されると、マスタシリンダ室Rmの体積は減少し、制動液BFは、マスタシリンダCMから、ホイールシリンダCWに向けて圧送される。マスタシリンダCMによって、ホイールシリンダCWの液圧(制動液圧)Pwが調整(増減)される場合が、「マニュアル制動」と称呼される。
ホイールシリンダCWは、マスタシリンダCMに代えて、制動制御装置SCによっても加圧される。制動制御装置SCは、所謂、ブレーキ・バイ・ワイヤの構成である。即ち、ホイールシリンダCWは、マスタシリンダCM、及び、制動制御装置SCのうちの何れか1つによって加圧される。制動制御装置SCによって、ホイールシリンダCWの液圧Pwが調整(増減)される場合が、「制御制動」と称呼される。
各車輪WHには、車輪速度Vwを検出するよう、車輪速度センサVWが備えられる。車輪速度Vwの信号は、車輪WHのロック傾向を抑制するアンチスキッド制御等に採用される。車輪速度センサVWによって検出された各車輪速度Vwは、コントローラECUに入力される。コントローラECUでは、車輪速度Vwに基づいて、車体速度Vxが演算される。
マスタシリンダCM、ホイールシリンダCW、リザーバRV、及び、制動制御装置SCを、夫々、接続する各種流体路について説明する。流体路は、制動制御装置の作動液体である制動液BFを移動するための経路であり、制動配管、流体ユニットの流路、ホース等が該当する。なお、流体路において、リザーバRVに近い側(ホイールシリンダCWから遠い側)が、「上流側」、又は、「上部」と称呼され、ホイールシリンダCWに近い側(リザーバRVから遠い側)が、「下流側」、又は、「下部」と称呼される。
マスタシリンダ流体路HMは、マスタシリンダCMに接続される。ホイールシリンダ流体路HWは、ホイールシリンダCWに接続される。リザーバ流体路HRは、リザーバRV(特に、調圧リザーバ室Rd)、調圧ユニットKC(特に、調圧流体ポンプQC、電磁弁UC)、及び、増幅ユニットKZ(特に、蓄圧流体ポンプQZ、増幅室Ro)に接続される。中間流体路HVは、分離ユニットKB、及び、4つのホイールシリンダ流体路HWに接続される。具体的には、中間流体路HVは、分岐部Bwにて、各ホイールシリンダ流体路HWに分岐される。マスタシリンダ流体路HMは、接続部Bmにて、中間流体路HVに接続される。また、戻し流体路HSは、リザーバRVのマスタリザーバ室Ruに接続される。
調圧流体路HCは、調圧ユニットKC、及び、増幅ユニットKZ(特に、パイロット室Rp)に接続される。増幅流体路HTは、増幅ユニットKZ(特に、増幅室Ro)、及び、分離ユニットKB(特に、分離室Rb)に接続される。アキュムレータ流体路HZは、アキュムレータAZ、及び、増幅シリンダCZ(特に、弁体Vvの周辺)に接続される。なお、マスタシリンダCM、ホイールシリンダCW、及び、各流体路HM、HW、HR、HV、HS、HC、HT、HZは、制動液BFによって満たされている(即ち、制動液BFの液密状態が達成されている)。
≪制動制御装置SC≫
制動制御装置SCは、操作量センサBA、操作スイッチST、ストロークシミュレータSS、シミュレータ電磁弁VS、マスタシリンダ電磁弁VM、コントローラECU、調圧ユニットKC(電動ポンプDC、逆止弁GC、調圧流体路HC、リニア型電磁弁UC、調整液圧センサPC)、増幅ユニットKZ(電動ポンプDZ、アキュムレータAZ、アキュムレータ流体路HZ、アキュムレータ液圧センサPQ)、及び、分離ユニットKBにて構成される。制動制御装置SC内も、制動液BFによって液密状態にされている。
制動操作部材BPには、操作量センサBAが設けられる。操作量センサBAによって、運転者による制動操作部材(ブレーキペダル)BPの操作量Baが検出される。制動操作量センサBAとして、マスタシリンダCMの圧力Pmを検出する液圧センサPM、制動操作部材BPの操作変位Spを検出する操作変位センサSP、及び、制動操作部材BPの操作力Fpを検出する操作力センサのうちの少なくとも1つが採用される。つまり、操作量センサBAによって、制動操作量Baとして、マスタシリンダCM内の液圧(マスタシリンダ液圧)Pm、制動操作部材BPの操作変位Sp、及び、制動操作部材BPの操作力Fpのうちの少なくとも1つが検出される。制動操作量Baは、コントローラECUに入力される。
制動操作部材BPには、操作スイッチSTが設けられる。操作スイッチSTによって、運転者による制動操作部材BPの操作の有無が検出される。制動操作部材BPが操作されていない場合(即ち、非制動時)には、制動操作スイッチSTによって、操作信号Stとしてオフ信号が出力される。一方、制動操作部材BPが操作されている場合(即ち、制動時)には、操作信号Stとしてオン信号が出力される。制動操作信号Stは、コントローラECUに入力される。
ストロークシミュレータ(単に、「シミュレータ」ともいう)SSが、制動操作部材BPに操作力Fpを発生させるために設けられる。シミュレータSSの内部には、ピストン、及び、弾性体(例えば、圧縮ばね)が備えられる。マスタシリンダCMから制動液BFがシミュレータSSに移動され、流入する制動液BFによりピストンが押される。ピストンには、弾性体によって制動液BFの流入を阻止する方向に力が加えられる。弾性体によって、制動操作部材BPが操作される場合の操作力Fpが形成される。
マスタシリンダCM内のマスタシリンダ室RmとシミュレータSSとの間には、シミュレータ弁VSが設けられる。シミュレータ弁VSは、開位置(連通状態)と閉位置(遮断状態)とを有する2位置の電磁弁(「オン・オフ弁」ともいう)である。シミュレータ弁VSは、コントローラECUからの駆動信号Vsによって制御される。非制動時、又は、制動制御装置SCの不調時(マニュアル制動時)には、シミュレータ弁VSが閉位置にされ、マスタシリンダCMとシミュレータSSとが遮断状態(非連通状態)となる。この場合、マスタシリンダCMからの制動液BFは、シミュレータSSで消費されない。制御制動時には、シミュレータ弁VSが開位置にされ、マスタシリンダCMとシミュレータSSとは連通状態となる。この場合、制動操作部材BPの操作特性(操作変位Spと操作力Fpとの関係)は、シミュレータSSによって形成される。シミュレータ弁VSには、常閉型の電磁弁が採用される。なお、マスタシリンダ室Rmの容積が十分に大きい場合には、シミュレータ弁VSは省略され得る。
マスタシリンダ流体路HMの途中に、マスタシリンダ弁VMが設けられる。マスタシリンダ弁VMは、開位置(連通状態)と閉位置(遮断状態)とを有する2位置の電磁弁(オン・オフ弁)である。マスタシリンダ弁VMは、コントローラECUからの駆動信号Vmによって制御される。非制動時、又は、マニュアル制動時には、マスタシリンダ弁VMは開位置にされ、マスタシリンダCMとホイールシリンダCWとは連通状態となる。この場合、制動液圧Pwは、マスタシリンダCMによって調整される。制御制動時には、マスタシリンダ弁VMは閉位置にされ、マスタシリンダCMとホイールシリンダCWとは遮断状態(非連通状態)となる。この場合、制動液圧Pwは、制動制御装置SCによって制御される。マスタシリンダ弁VMには、常開型の電磁弁が採用される。
電子制御ユニット(「コントローラ」ともいう)ECUは、マイクロプロセッサMP等が実装された電気回路基板と、マイクロプロセッサMPにプログラムされた制御アルゴリズムにて構成されている。コントローラECUによって、制動操作量Ba、操作信号St、アキュムレータ液圧Pq、及び、調整液圧Pcに基づいて、2つの異なる電気モータMC、MZ、及び、3種類の異なる電磁弁VM、VS、UCが制御される。具体的には、マイクロプロセッサMP内の制御アルゴリズムに基づいて、各種電磁弁VM、VS、UCを制御するための駆動信号Vm、Vs、Ucが演算される。同様に、2つの電気モータMC、MZを制御するための駆動信号Mc、Mzが演算される。そして、これらの駆動信号Vm、Vs、Uc、Mc、Mzに基づいて、電磁弁VM、VS、UC、及び、電気モータMC、MZが駆動される。
コントローラECUは、車載通信バスBSを介して、他システムの電子制御ユニット(コントローラ)とネットワーク接続されている。コントローラECUには、回生協調制御を実行するよう、駆動用のコントローラから回生量Rgが送信される。「回生量Rg」は、駆動用モータによって発生される回生ブレーキの大きさを表す状態量である。コントローラECUには、車載の発電機AL、及び、蓄電池BTから電力が供給される。
コントローラECUには、電磁弁VM、VS、UC、及び、電気モータMC、MZを駆動するよう、駆動回路DRが備えられる。駆動回路DRには、電気モータMC、MZを駆動するよう、スイッチング素子(MOS−FET、IGBT等のパワー半導体デバイス)によってブリッジ回路が形成される。モータ駆動信号Mc、Mzに基づいて、各スイッチング素子の通電状態が制御され、電気モータMC、MZの出力が制御される。また、駆動回路DRでは、電磁弁VM、VS、UCを駆動するよう、駆動信号Vm、Vs、Ucに基づいて、それらの励磁状態が制御される。
調圧ユニットKCは、調圧電動ポンプDC、調圧流体路HC、逆止弁GC、電磁弁UC、及び、調整液圧センサPCを備えている。
調圧電動ポンプDCは、1つの調圧電気モータMC、及び、1つの調圧流体ポンプQCの組によって構成される。調圧電動ポンプDCでは、電気モータMCと流体ポンプQCとが一体となって回転するよう、電気モータMCと流体ポンプQCとが固定されている。調圧電動ポンプDC(特に、調圧電気モータMC)は、制御制動時に、パイロット室Rp内の液圧(パイロット液圧)Ppを調整するための動力源である。調圧電気モータMCは、コントローラECUによって制御される。なお、調圧電動ポンプDCは、後述の蓄圧電動ポンプDZとは別個のものである。
例えば、電気モータMCとして、3相ブラシレスモータが採用される。ブラシレスモータMCには、そのロータ位置(回転角)Kaを検出する回転角センサKAが設けられる。回転角(実際値)Kaに基づいて、ブリッジ回路のスイッチング素子が制御され、電気モータMCが駆動される。つまり、3つの各相(U相、V相、W相)のコイルの通電量の方向(即ち、励磁方向)が、順次切り替えられ、ブラシレスモータMCが回転駆動される。駆動回路DRには、電気モータMCの実際の通電量Ia(各相の総称)を検出する通電量センサが設けられる。例えば、通電量センサとして、電流センサが設けられ、電気モータMCへの供給電流Iaが検出される。
調圧流体ポンプQCの吸込口Qsには、リザーバ流体路HRが接続されている。また、調圧流体ポンプQCの吐出口Qtには、調圧流体路HCが接続されている。電動ポンプDC(特に、流体ポンプQC)の駆動によって、制動液BFが、リザーバ流体路HRから、吸込口Qsを通して吸入され、吐出口Qtから調圧流体路HCに排出される。例えば、流体ポンプQCとしてギヤポンプが採用される。
調圧流体路HCには、逆止弁GC(「チェック弁」ともいう)が介装される。例えば、流体ポンプQCの吐出部Qtの近くに、逆止弁GCが設けられる。逆止弁GCによって、制動液BFは、リザーバ流体路HRから調圧流体路HCに向けては移動可能であるが、調圧流体路HCからリザーバ流体路HRに向けての移動(即ち、制動液BFの逆流)が阻止される。つまり、電動ポンプDCは、一方向に限って回転される。
電磁弁UCは、調圧流体路HC、及び、リザーバ流体路HRに接続される。電磁弁UCは、通電状態(例えば、供給電流)に基づいて開弁量(リフト量)が連続的に制御されるリニア型の電磁弁(「比例弁」、又は、「差圧弁」ともいう)である。電磁弁UCは、駆動信号Ucに基づいて、コントローラECUによって制御される。電磁弁UCとして、常開型の電磁弁が採用される。
制動液BFは、リザーバ流体路HRから、流体ポンプQCの吸込口Qsを通して汲み上げられ、吐出口Qtから排出される。そして、制動液BFは、逆止弁GCと電磁弁UCとを通り、リザーバ流体路HRに戻される。換言すれば、リザーバ流体路HR、及び、調圧流体路HCによって、還流路(制動液BFの流れが、再び元の流れに戻る流体路)が形成され、この還流路に、逆止弁GC、及び、電磁弁UCが介装される。
調圧電動ポンプDCが作動している場合には、制動液BFは、破線矢印(A)で示すように、「HR→QC(Qs→Qt)→GC→UC→HR」の順で還流している。電磁弁UCが全開状態にある場合(常開型であるため、非通電時)、調圧流体路HC内の液圧(調整液圧)Pcは低く、略「0(大気圧)」である。電磁弁UCへの通電量が増加され、電磁弁UCによって還流路が絞られると、調整液圧Pcが増加される。調整液圧Pcを検出するよう、調圧流体路HC(特に、逆止弁GCと電磁弁UCとの間)に調整液圧センサPCが設けられる。
調圧ユニットKCでは、操作量Ba、及び、回生量Rgと予め設定された特性(演算マップ)に基づいて、電動ポンプDCが回転駆動される。そして、調整液圧センサPCの検出結果(調整液圧Pc、パイロット液圧Pp)に基づいて、電磁弁UCが制御されて、調圧流体路HC内の液圧Pcが調整される。具体的には、目標液圧Ptが達成されるよう、電動ポンプDC(特に、電気モータMC)の回転数Naが制御され、電動ポンプDC(特に、流体ポンプQC)からの制動液BFの流れ(流量)が発生される。電磁弁UCによって、制動液BFの流れが絞られ、最終的に、目標液圧Ptが達成される。即ち、電磁弁UCのオリフィス効果によって調整液圧Pcの調節が行われる。
調圧ユニットKCの調整液圧Pcは、増幅ユニットKZのパイロット室Rpに導入される。従って、調圧液圧Pcと、パイロット室Rp内の液圧(パイロット液圧)Ppとは同一であり、調整液圧センサPCによって検出される。増幅ユニットKZは、蓄圧電動ポンプDZ、アキュムレータAZ、アキュムレータ流体路HZ、逆止弁GZ、アキュムレータ液圧センサ(「蓄圧センサ」ともいう)PQ、増幅シリンダCZ、及び、増幅ピストンPZを含んで構成されている。
調圧電動ポンプDCとは、別に、蓄圧電動ポンプDZが設けられる。蓄圧電動ポンプDZは、1つの蓄圧電気モータMZ、及び、1つの蓄圧流体ポンプQZの組によって構成される。蓄圧電動ポンプDCでは、電気モータMZと流体ポンプQZとが一体となって回転するよう、電気モータMZと流体ポンプQZとが固定されている。蓄圧電動ポンプDZ(特に、蓄圧電気モータMZ)は、アキュムレータAZ内の液圧(アキュムレータ液圧)Pqを高圧に維持するための動力源である。蓄圧電気モータMZは、コントローラECU(特に、駆動回路DR)によって回転駆動される。例えば、電気モータMZとして、ブラシ付モータが採用される。
蓄圧流体ポンプQZから吐出された制動液BFは、アキュムレータAZに蓄えられる。アキュムレータAZには、アキュムレータ流体路HZが接続され、アキュムレータAZと増幅シリンダCZ(特に、環状室Rv)とが流体接続される。アキュムレータAZ内に蓄えられた液圧(アキュムレータ液圧)Pqを検出するよう、アキュムレータ流体路HZには、蓄圧センサPQが設けられる。アキュムレータAZから制動液BFが逆流しないよう、蓄圧流体ポンプQZの吐出部には、逆止弁GZが設けられる。
アキュムレータ液圧Pqが所定範囲内に維持されるよう、コントローラECUによって、蓄圧電動ポンプDZ(特に、蓄圧電気モータMZ)が制御される。具体的には、アキュムレータ液圧Pqが、下限値(所定値)pn未満の場合には、電気モータMZが所定回転数で駆動される。また、アキュムレータ液圧Pqが、上限値(所定値)pf以上の場合には、電気モータMZは停止される。ここで、下限値pn、及び、上限値pfは、予め設定された所定の定数であり、「pn<pf」の関係にある。従って、アキュムレータAZ内の液圧Pqは、下限値pnから上限値pfの範囲に維持される。
増幅シリンダCZの内部は、増幅ピストンPZによって、3つのチャンバRp、Rv、Roに区画されている。パイロット室Rpは、調圧流体路HCを介して、調圧ユニットKCと接続されている。従って、パイロット室Rp内の液圧Ppは、調整液圧Pcと一致する。増幅ピストンPZには、弁体Vvが形成されている。アキュムレータ流体路HZは、弁体(弁部)Vvを介するように、環状室Rvに接続される。増幅ピストンPZには、貫通孔Aa、Abが設けられ、環状室Rvと増幅室Roとの間では、制動液BFは自由に移動可能である。従って、環状室Rv内の液圧Pvと増幅室Ro内の液圧Poとは同じである。増幅室Roには、増幅流体路HTが接続されている。増幅流体路HTによって、増幅シリンダCZの増幅室Roと、分離シリンダCBの分離室Rbとが流体接続される。
パイロット室Rp内の液圧Pp(=Pc)によって、増幅ピストンPZが移動されると、弁体Vvの開口量が変化される。そして、パイロット液圧Ppと環状室Rv内の液圧(修正液圧)Pv(即ち、増幅室Ro内の液圧Po)とが一致するよう、増幅ピストンPZの弁体Vvを通して、アキュムレータAZから制動液BFが供給される。つまり、高圧のアキュムレータ液圧Pqが、弁体Vvによって修正され(絞られ)、液圧Pvに調節される。このとき、弁体Vvの諸元によって、弁体Vvを通過する相当量の制動液BFが確保され得るため、増幅ユニットKZによって、制動液BFの流量増大が図られる。即ち、増幅ユニットKZにパイロット作動式の構成が採用され、調圧ユニットKCによって発生される流量が、増幅ユニットKZによって増幅されて、増幅流体路HTから出力される。なお、パイロット室Rpの受圧面積と、増幅室Roの受圧面積が同じである場合には、パイロット液圧Ppと増幅液圧Poとは、静的には同一である(ただし、増幅液圧Poは、動的には、パイロット液圧Ppに対して、僅かに遅れて発生される)。
増幅ユニットKZとホイールシリンダCWとの間に、分離ユニットKBが設けられる。分離ユニットKBによって、増幅ユニットKZ(特に、増幅流体路HT)と、ホイールシリンダCW(特に、中間流体路HV)とが流体的に分離される。ここで、「流体的な分離」とは、力(即ち、液圧)は伝達されるが、制動液BFの移動が発生しない状態である。具体的には、分離ユニットKBは、分離シリンダCBと分離ピストンPBとによって構成され、分離シリンダCBの内部は、分離ピストンPBによって、2つのチャンバRa、Rbに仕切られている。一方側のチャンバである加圧室Raと、他方側のチャンバである分離室Rbとは、分離ピストンPBを挟んで、相対するように配置される。つまり、分離室Rbが、分離ピストンPBに対して、加圧室Raとは反対側に設けられる。
加圧室Raは、中間流体路HVに流体接続される。中間流体路HVは、マスタシリンダ流体路HMに接続されるとともに、ホイールシリンダCWに接続される。また、分離室Rbは、調圧流体路HCに流体接続されている。
制御制動時(制動制御装置SCによる制動液圧Pwの調圧時)には、増幅ユニットKZを介した調圧ユニットKCによって、分離室Rb内の液圧(分離液圧)Pbが増加される。そして、分離液圧Pbによって、加圧室Ra内の液圧(加圧液圧)Paが増加され、最終的には、制動液圧Pwが上昇される。一方、調整液圧Pcが減少されると、加圧の場合とは逆に、制動液圧Pwは減少される。調圧ユニットKCによって発生される液圧は、「Pc→Pp→Pv(=Po)→Pb→Pa→Pw」の順で伝達される。しかし、制動液BFの実際の流れにおいては、分離ピストンPBによって分離されている。
分離ユニットKBは、省略され得る。増幅ユニットKZ内の増幅ピストンPZによって、調圧流体路HCと増幅流体路HTとは分離され得るため、増幅ユニットKZによって、分離ユニットKBと同様の効果が得られることに因る。分離ユニットKBが省略された場合には、増幅流体路HTが、マスタシリンダ流体路HM、及び、中間流体路HVに流体接続される。また、増幅室RoとリザーバRVとを接続する流体路、及び、ポートが廃止される(つまり、非制動時にも増幅室Roが密閉状態にされる)。或いは、増幅室RoとリザーバRVとを接続する流体路に常閉型電磁弁(オン・オフ弁)が設けられる。そして、非制動時に該電磁弁が開位置にされ、残圧が開放される。
<増幅ユニットKZ、及び、分離ユニットKB>
図2の概略図を参照して、増幅ユニットKZ(特に、増幅シリンダCZ)、及び、分離ユニットKBについて説明する。増幅ユニットKZの増幅シリンダCZ(特に、増幅室Ro)と、分離ユニットKBの分離シリンダCB(特に、分離室Rb)とは、増幅流体路HTによって流体接続されている。
先ず、増幅ユニットKZについて説明する。増幅ユニットKZは、増幅シリンダCZ、増幅ピストンPZ、及び、増幅弾性体SZを含んで構成されている。
増幅シリンダCZは、底部を有するシリンダ部材である。増幅ピストンPZは、増幅シリンダCZの内部に挿入されたピストン部材である。増幅シリンダCZの内周部Zcには、溝部が形成され、該溝部にシールSLがはめ込まれる。シールSLによって、増幅ピストンPZの外周部(外周円筒面)Zpと、増幅シリンダCZの内周部(内周円筒面)Zcと、が封止されている。増幅ピストンPZは、増幅シリンダCZの中心軸に沿って、滑らかに移動可能である。なお、シールSLは、省略可能である。
増幅シリンダCZの内部は、増幅ピストンPZによって、3つのチャンバRo、Rv、Rpに分離されている。増幅室Roは、増幅シリンダCZの内周部Zc、第1底部(底面)Zuと、増幅ピストンPZの第1端部Zrと、によって区画された液圧室である。増幅室Roには、増幅流体路HTが接続され、分離ユニットKBに流体接続されている。また、増幅室Roには、リザーバ流体路HRが接続され、非制動時には、リザーバRVの調圧リザーバ室Rdと増幅室Roとが連通状態にされる。
パイロット室Rpは、増幅シリンダCZの内周部Zc、第2底部(底面)Ztと、増幅ピストンPZの第2端部Zqと、によって区画された液圧室である。増幅室Roと、パイロット室Rpとは、増幅ピストンPZを挟んで、相対するように形成される。換言すれば、増幅シリンダCZの中心軸線において、パイロット室Rpは、増幅ピストンPZに対して、増幅室Roとは反対側に位置する。パイロット室Rpには、調圧流体路HCが接続される。従って、パイロット室Rpには、調圧ユニットKCによって調圧された圧力Pcが導入される。
増幅シリンダCZの第1底部Zuと増幅ピストンPZとの間には増幅弾性体(例えば、圧縮ばね)SZが設けられる。増幅弾性体SZは、増幅シリンダCZの中心軸線の方向に、増幅ピストンPZを増幅シリンダCZの第2底部Ztに対して押し付けている。非制動時には、第2端部Zqと第2底部Ztとが当接している。この状態での増幅ピストンPZの位置が、「増幅ユニットKZの初期位置」と称呼される。増幅ピストンPZが該初期位置にある場合には、増幅室Roは、リザーバ流体路HRを介して、リザーバRVと連通状態にされている。このため、増幅液圧Poは、「0(大気圧)」にされる(つまり、残圧が生じていない)。
増幅ピストンPZの胴体部には溝部(小径部)Zsが形成される。環状室Rvは、増幅シリンダCZの内周部Zcと、増幅ピストンPZの小径部Zsと、によって区画された液圧室である。増幅ピストンPZには、孔Aa、Abが形成され、環状室Rvと増幅室Roとが貫通状態にされている。このため、環状室Rvと増幅室Roとの間では、制動液BFは自由に移動可能である。
増幅ピストンPZには、弁体Vvが形成されている。例えば、弁体Vvとして、スプール弁が採用される。弁体Vvの近傍に、アキュムレータ流体路HZが設けられ、アキュムレータAZからアキュムレータ液圧Pqが供給される。増幅シリンダCZの中心軸方向に増幅ピストンPZが移動されることに応じて、弁体Vvの開口量(増幅シリンダCZの内周面Zcと、増幅ピストンPZの弁体Vvの外周面との隙間)が可変制御され、アキュムレータAZから供給される制動液BFの量が調整される。
制動操作部材BPが操作されると、調圧ユニットKCによって調整液圧Pcが発生され、パイロット液圧Pp(=Pc)が増加される。これにより、増幅ピストンPZが中心軸線に沿って前進方向(図中で左方向であり、制動液圧Pwの増加方向)Drに移動される。増幅ピストンPZの前進方向Drへの移動によって、増幅室RoとリザーバRVとの連通状態が遮断される(増幅ピストンPZに設けられたポートが閉じられる)。また、弁体Vvの開口面積が増加され、パイロット液圧Ppと環状室Rv内の液圧(修正液圧)Pvとが一致するよう、アキュムレータAZからの制動液BFの流入量が増加される。増幅ピストンPZに形成された貫通孔Aa、Abを介して、修正液圧Pvと増幅液圧Poとは等しいため、増幅室Roから分離室Rbに、増幅流体路HTを介して、制動液BFが圧送される。
逆に、制動操作部材BPが戻されると、調圧ユニットKCによって調整液圧Pcが減少される。そして、パイロット液圧Pp(=Pc)は、液圧Po(=Pw)よりも小さくなるため、増幅ピストンPZは後退方向(図中で右方向であり、制動液圧Pwの減少方向)Dsに移動される。制動操作部材BPが非操作状態にされると、圧縮ばねSZの弾性力によって、増幅ピストンPZは、増幅シリンダCZの第2底部Ztに接触する位置(増幅ユニットKZの初期位置)にまで戻される。増幅室Roは、リザーバRVと連通状態となり、増幅液圧Poは、「0」に戻される。
制動液圧Pwは、ホイールシリンダCWに流入する制動液BFの量に依存して増加される。制動液BPの流入量(体積)と、制動液圧Pwの増加量との関係は、車輪周りに配置された、ブレーキキャリパ、流体路(液圧配管、ホース)、摩擦材等の剛性に基づく。これらの部材に消費される制動液BFの量が、「消費液量」と称呼される。例えば、大型車両では、消費液量が非常に大きいため、液圧Pwの増加には、或る程度の制動液BFの流量が必要となる。
調圧ユニットKCによって調圧されたパイロット液圧Ppに基づいて、アキュムレータAZからの制動液BFが、増幅ピストンPZの弁体(弁が形成された部分)Vvによって、パイロット液圧Ppに近づくように調節される。このとき、増幅ユニットKZから出力される制動液BFの流量は、調圧ユニットKCから供給される制動液BFの流量に比較して増幅(増大)される。増幅ユニットKZにより、大流量が必要な大型車両において、制動液BFの要求流量が確保され得るとともに、装置全体の小型・軽量化が達成され得る。
加えて、パイロット液圧Ppを形成する調圧ユニットKCの圧力源として、調圧用の電動ポンプDCが採用される。電動ポンプDCによって発生された制動液BFの還流から、電磁弁UCによってパイロット液圧Ppが調整されるため、その元圧が、高圧ではなく、「0」から増加される。このため、低圧領域での制御分解能が向上され、良好な調圧精度が確保され得る。
次に、分離ユニットKBについて説明する。分離ユニットKBは、分離シリンダCB、分離ピストンPB、及び、分離弾性体SBにて構成される。
分離シリンダCBは、底部を有するシリンダ部材である。分離ピストンPBは、分離シリンダCBの内部に挿入されたピストン部材である。分離シリンダCBの内周部Bcには、溝部が形成され、該溝部に、2つのシールSLがはめ込まれる。2つのシールSLによって、分離ピストンPBの外周部(外周円筒面)Bpと、分離シリンダCBの内周部(内周円筒面)Bcと、が封止されている。分離ピストンPBは、分離シリンダCBの中心軸に沿って、滑らかに移動可能である。
分離シリンダCBの内部は、分離ピストンPBによって、2つのチャンバRa、Rbに分離される。加圧室Raは、分離シリンダCBの内周部Bc、第1底部(底面)Buと、分離ピストンPBの第1端部Brと、によって区画された液圧室である。加圧室Raには、中間流体路HVが接続され、最終的にはホイールシリンダCWに流体接続されている。また、中間流体路HVには、接続部Bmにて、マスタシリンダ流体路HMが接続される。
分離室Rbは、分離シリンダCBの内周部Bc、第2底部(底面)Btと、分離ピストンPBの第2端部Bqと、によって区画された液圧室である。加圧室Raと、分離室Rbとは、分離ピストンPBを挟んで、相対するように形成される。換言すれば、分離シリンダCBの中心軸線において、分離室Rbは、分離ピストンPBに対して、加圧室Raとは反対側に位置する。
分離室Rbには、増幅流体路HTが接続される。従って、分離室Rbには、増幅ユニットKZによって流量が増大されて、圧力Poが導入される。分離ユニットKB、増幅ユニットKZ、及び、調圧ユニットKCは、増幅流体路HT、及び、調圧流体路HCによって接続されるため、構造が簡略化され、各ユニットKB、KZ、KCの配置において自由度が高い。つまり、車両への搭載性が向上される。
分離シリンダCBの第1底部Buと分離ピストンPBとの間には分離弾性体(例えば、圧縮ばね)SBが設けられる。分離弾性体SBは、分離シリンダCBの中心軸線の方向に、分離ピストンPBを分離シリンダCBの第2底部Btに対して押し付けている。非制動時には、第2端部Bqと第2底部Btとが当接している。この状態での分離ピストンPBの位置が、「分離ユニットKBの初期位置」と称呼される。分離ピストンPBが該初期位置にある場合には、2つのシールSL(例えば、カップシール)の間は、戻し流体路HSを介して、リザーバRVのマスタリザーバ室Ruと連通状態にされている。このため、シールSLの間の液圧は、「0(大気圧)」にされる(つまり、背圧が生じていない)。なお、戻し流体路HSは省略され得る。
制動操作部材BPが操作されると、調圧ユニットKCによって調整液圧Pcが発生され、更に、調整液圧Pcに応じて増幅液圧Poが上昇され、分離室Rb内の液圧Pb(=Po)が増加される。分離液圧Pbによって、分離ピストンPBが中心軸に沿って前進方向(図中で左方向であり、制動液圧Pwの増加方向)Dpに移動される。分離ピストンPBの前進方向Dpへの移動によって、加圧室Raの体積は減少し、加圧室Ra内の制動液BFが中間流体路HVに圧送される。そして、ホイールシリンダCWの制動液圧Pwが増加される。
逆に、制動操作部材BPが戻されると、調圧ユニットKCによって調整液圧Pcが減少され、液圧Poが下降される。そして、分離室液圧Pb(=Po)は、加圧室液圧Pa(=Pw)よりも小さくなるため、分離ピストンPBは後退方向(図中で右方向であり、制動液圧Pwの減少方向)Dqに移動される。制動操作部材BPが非操作状態にされると、圧縮ばねSBの弾性力によって、分離ピストンPBは、分離シリンダCBの第2底部Btに接触する位置(分離ユニットKBの初期位置)にまで戻される。結果、加圧室Ra内の液圧Paは、「0」に戻される。
例えば、ホイールシリンダCWの周辺にて流体路の失陥が生じた場合、分離ピストンPBが前進しても加圧室Raの液圧Paは増加せず、「0」のままである。加圧室液圧Paが増加しないと、分離ピストンPBは、前進し続け、最終的には分離ピストンPBの第1端部Brが、分離シリンダCBの第1底部Buに当接するまで移動される。従って、分離ピストンPBの移動可能な範囲は所定距離lp(初期位置から該当接位置までの変位)に限定される。分離ユニットKBによって、ユニットKZ、KCとホイールシリンダCWとが流体的に分離され、ユニットKZ、KCとホイールシリンダCWとの間で制動液BFが移動されないため、上記失陥によって失われる制動液BFの量(所定距離lpに対応する体積)は限定的である。分離ユニットKBによって、制動制御装置SCの信頼度は、より向上され得る。
<調圧制御の第1処理例>
図3の制御フロー図を参照して、調圧制御の第1処理例について説明する。「調圧制御」は、調整液圧Pcを調整するための、電気モータMC、及び、電磁弁UCの駆動制御である。該制御のアルゴリズムは、コントローラECU内にプログラムされている。
ステップS110にて、制動操作量Ba、操作信号St、調整液圧Pc、回転角Ka、及び、回生量Rgが読み込まれる。操作量Baは、操作量センサBA(例えば、マスタシリンダ液圧センサPM、操作変位センサSP)によって検出される。操作信号Stは、制動操作部材BPに設けられた操作スイッチSTによって検出される。調整液圧Pc(即ち、パイロット液圧Pp)は、調圧流体路HCに設けられた調整液圧センサPCによって検出される。回転角Kaは、電気モータMCに設けられた回転角センサKAによって検出される。回生量Rgは、通信バスBSを介して、駆動用コントローラから送信される。
ステップS120にて、制動操作量Ba、及び、制動操作信号Stのうちの少なくとも1つに基づいて、「制動操作中であるか、否か」が判定される。例えば、操作量Baが、所定値bo以上である場合には、ステップS120は肯定され、処理は、ステップS130に進む。一方、「Ba<bo」である場合には、ステップS120は否定され、処理は、ステップS110に戻される。ここで、所定値boは、制動操作部材BPの遊びに相当する、予め設定された定数である。また、操作信号Stがオンである場合には、ステップS130に進み、操作信号Stがオフである場合には、ステップS110に戻る。
ステップS130にて、常開型のマスタシリンダ弁VMが閉位置にされ、常閉型のシミュレータ弁VSが開位置にされる。つまり、初めてステップS120が満足された時点で、マスタシリンダCMによって制動液圧Pwが発生されるマニュアル制動から、制動制御装置SCによって制動液圧Pwが発生される制御制動に切り替えられる。
ステップS140にて、操作量Baに基づいて、要求液圧Prが演算される。要求液圧Prは、調整液圧Pcの目標値であり、車両の減速に対応する値である。要求液圧Prは、演算マップZprに従って、操作量Baが「0」から所定値boの範囲では、「0」に決定され、操作量Baが所定値bo以上では、操作量Baが増加するに伴い、「0」から単調増加するよう演算される。
ステップS150にて、要求液圧Pr、及び、回生量Rgに基づいて、目標液圧Ptが演算される。「回生量Rg」は、駆動用モータによって発生される回生ブレーキ量である。回生量Rgが、液圧の次元に換算されて、回生液圧Pgが演算される。要求液圧Prは車両減速に対応し、車両減速は回生ブレーキと摩擦ブレーキとによって達成される。このため、要求液圧Prから、回生液圧Pgが減じられて、最終的な液圧の目標値(目標液圧)Ptが決定される(Pt=Pr−Pg)。目標液圧Ptは、摩擦ブレーキが達成すべき液圧の目標値である。
ステップS160にて、目標液圧Ptに基づいて、目標回転数Ntが演算される。目標回転数Ntは、電気モータMCの回転数の目標値である。目標回転数Ntは、演算マップZntに従って、目標液圧Ptが「0」から所定値poの範囲では、所定回転数noに決定され、目標液圧Ptが所定値po以上では、目標液圧Ptが増加するに伴い、所定回転数noから単調増加するよう演算される。上述したように、調整液圧Pcは、電磁弁UCのオリフィス効果によって発生される。オリフィス効果を得るためには、或る程度の流量が必要となるため、目標液圧Ptが「0」から所定値poの範囲では、目標回転数Ntが、液圧発生において、最低限必要な値(予め設定された定数)noに決定される。なお、目標回転数Ntは、制動操作量Baに基づいて、直接、演算されてもよい。何れの場合であっても、目標回転数Ntは、制動操作量Baに基づいて決定される。
ステップS170にて、モータ回転角(検出値)Kaに基づいて、モータ回転速度(単位時間当りの回転数)Naが演算される。具体的には、回転角Kaが時間微分されて、実回転数Naが演算される。
ステップS180にて、目標回転数Nt、及び、実回転数Naに基づいて、電気モータMCの回転数フィードバック制御が実行される。このフィードバック制御では、電気モータMCの回転数が制御変数とされて、電気モータMCへの通電量(例えば、供給電流)が制御される。具体的には、回転数の目標値Ntと実際値Naとの偏差hN(=Nt−Na)に基づいて、回転数偏差hNが「0」となるよう(つまり、実際値Naが目標値Ntに近づくよう)、電気モータMCへの通電量が微調整される。「hN>nx」の場合には、電気モータMCへの通電量が増加され、電気モータMCは増速される。一方、「hN<−nx」の場合には、電気モータMCへの通電量が減少され、電気モータMCは減速される。ここで、所定値nxは、予め設定された定数である。
ステップS190にて、目標液圧Pt、及び、調整液圧Pcに基づいて、電磁弁UCの液圧フィードバック制御が実行される。このフィードバック制御では、調圧流体路HC内の制動液BFの圧力が制御変数とされて、常開・リニア型の電磁弁UCへの通電量が制御される。具体的には、目標液圧Ptと調整液圧Pcとの偏差hP(=Pt−Pc)に基づいて、液圧偏差hPが「0」となるよう(つまり、調整液圧Pcが目標液圧Ptに近づくよう)、電磁弁UCへの通電量が微調整される。「hP>px」の場合には、電磁弁UCへの通電量が増加され、電磁弁UCの開弁量が減少される。一方、「hP<−px」の場合には、電磁弁UCへの通電量が減少され、電磁弁UCの開弁量が増加される。ここで、所定値pxは、予め設定された定数である。
調圧ユニットKCでは、圧力源としての電動ポンプDCが回転されて、リザーバ流体路HR、調圧流体路HCで制動液BFが還流される(即ち、調整液圧Pcは発生されている場合には、常に、電動ポンプDCが回転されている)。そして、電磁弁UCへの通電量(供給電流)が制御されて、調圧流体路HC内の液圧Pcが調整される。
例えば、特許文献1のように、調圧の基礎となる元圧が、アキュムレータに蓄積された高圧である場合、該高圧が、電磁弁によって減少されて、調圧される。電磁弁の僅かな開弁量の変化で、調圧結果が大きく変わるため、特に、低圧における調圧精度(液圧分解能)が懸念される。一方、圧力源として、電動ポンプDCが採用される場合、元圧は、制動開始時に「0」から上昇される。電動ポンプDCを用いた調圧ユニットKCが、パイロット液圧Ppの調圧に採用されるため、低圧領域における制御精度が、好適に確保され得る。
<2系統流体路を有する制動制御装置SCの実施形態>
図4の全体構成図を参照して、流体路が2系統で形成される制動制御装置SCの構成例について説明する。該構成例では、分離ユニットKBが直列配置されたものが例示されている。また、図1を参照して説明した実施形態では、常開型の電磁弁UCによって調圧が行われたが、該構成例では、常開型の電磁弁UCに代えて、常閉型の電磁弁UDによって調圧が行われる。
上述したように、同一記号を付された構成部材、演算処理、信号、特性、及び、値は、同一機能のものである。各種記号末尾の添字「i」〜「k」では、「i」が右前輪、「j」が左前輪、「k」が右後輪、「l」が左後輪を示す。また、記号末尾の添字「i」〜「k」は、省略され得る。この場合、各記号は、4つの各車輪の総称を表す。加えて、各種記号末尾の添字「1」、「2」は、2つの制動系統において、「1」が第1系統、「2」が第2系統を示す。また、記号末尾の添字「1」、「2」は省略され得る。この場合、各記号は、2つの各制動系統の総称を表す。
2系統の流体路のうちの第1系統(第1マスタシリンダ室Rm1に係る系統)は、前輪ホイールシリンダCWi、CWjに流体接続される。2系統の流体路のうちの第2系統(第2マスタシリンダ室Rm2に係る系統)は、後輪ホイールシリンダCWk、CWlに流体接続される。つまり、2系統の流体路として、所謂、前後型(「H型」ともいう)のものが採用されている。なお、2系統流体路は、ダイアゴナル型(「X型」ともいう)のものでもよい。この場合、第1系統には、右前輪WHiのホイールシリンダCWi、及び、左後輪WHlのホイールシリンダCWlが、第2系統には、左前輪WHjのホイールシリンダCWj、及び、右後輪WHkのホイールシリンダCWkが、夫々、接続される。
制動装置は、マスタシリンダCMに近い側の上部流体ユニットHU、及び、ホイールシリンダCWに近い側の下部流体ユニットHLにて構成される。上部流体ユニットHUは、上部コントローラECUによって制御され、制動制御装置SCを含む流体ユニットである。下部流体ユニットHLは、下部コントローラECLによって制御され、アンチスキッド制御、車両安定化制御等を実行するための流体ユニットである。ここで、上部コントローラECUと下部コントローラECLとは、通信バスBSによって通信可能な状態で接続され、センサ信号、演算値が共有されている。
マスタシリンダCMは、タンデム型であり、第1、第2マスタピストンPS1、PS2によって、その内部が、第1、第2マスタシリンダ室Rm1、Rm2に分けられている。大気圧リザーバRVの内部は、仕切り板SKによって、3つの部位に区画されている。第1マスタリザーバ室Ru1は第1マスタシリンダ室Rm1に接続され、第2マスタリザーバ室Ru2は第2マスタシリンダ室Rm2に、夫々、接続される。また、調圧リザーバ室Rdは、リザーバ流体路HRによって、調圧ユニットKCに流体接続されている。
第1、第2マスタシリンダ室Rm1、Rm2には、第1、第2マスタシリンダ流体路HM1、HM2が接続される。第1、第2マスタシリンダ流体路HM1、HM2には、第1、第2マスタシリンダ弁VM1、VM2が介装される。第1、第2マスタシリンダ弁VM1、VM2には、常開型の電磁弁(オン・オフ型)が採用される。更に、第1、第2マスタシリンダ室Rm1、Rm2の液圧Pm1、Pm2を検出するように、第1、第2マスタシリンダ液圧センサPM1、PM2が設けられる。なお、「Pm1=Pm2」であるため、第1マスタシリンダ液圧センサPM1、及び、第2マスタシリンダ液圧センサPM2のうちの一方は、省略可能である。
第2マスタシリンダ室Rm2の出口には、第1、第2マスタシリンダ弁VM1、VM2が閉じられた場合(制御制動時)に、制動操作部材BPの操作力Fpを発生させるため、シミュレータSSが設けられる。第1、第2マスタシリンダ弁VM1、VM2が開けられた場合(マニュアル制動時)に、制動液BFがシミュレータSSによって消費されることを回避するよう、常閉型のシミュレータ弁VS(オン・オフ型)が、第2マスタシリンダ室Rm2とシミュレータSSとの間に設けられる。なお、シミュレータ弁VSは省略可能である。
調圧ユニットKCが、調圧電動ポンプDC、及び、調圧電磁弁UDを含んで構成される。電動ポンプDCを形成する1つの調圧流体ポンプQCの吸込口Qsにリザーバ流体路HRが接続され、流体ポンプQCの吐出口Qtに調圧流体路HCが接続される。調圧流体路HCには、1つの逆止弁GC、及び、1つの電磁弁UDが設けられる。常閉・リニア型の電磁弁UDの出口部はリザーバ流体路HRに接続される。調圧流体路HCは、逆止弁GCと電磁弁UDとの間で、増幅ユニットKZの増幅シリンダCZ(特に、パイロット室Rp)に流体接続される。つまり、電磁弁UDを含む調圧ユニットKCによって形成された調整液圧Pcが、増幅ユニットKZに導入される。電磁弁UDは、通電状態(例えば、供給電流)に基づいて開弁量(リフト量)が連続的に制御されるリニア型の電磁弁である。電磁弁UDは、常閉型であるため、通電量が増加されるに応じて、開弁量が増加される。電磁弁UDは、駆動信号Udに基づいて、コントローラECUによって制御される。電磁弁UDに基づく調圧制御(第2処理例)については後述する。
調圧流体路HCによって、調圧ユニットKCは、増幅ユニットKZに接続される。増幅ユニットKZは、アキュムレータAZ、及び、弁体Vvを有する増幅ピストンPZを含んで構成される。増幅ユニットKZでは、調整液圧Pcに基づいて、アキュムレータAZを利用し、制動液BFの流量が増大される。
増幅ユニットKZの出力は、増幅流体路HTによって、分離ユニットKBに導入される。分離ユニットKBとして、直列配置型のものが採用される。分離シリンダCBの内部に、2つの分離ピストンPB1、PB2が、分離シリンダCBの中心軸Jbと同軸で配置される。第2分離ピストンPB2の外周部と、分離シリンダCBの内周部とは、シールSLによって封止され、分離シリンダCBの一方側底部、分離シリンダCBの内筒部、及び、第2分離ピストンPB2の一方側端部によって第2加圧室Ra2が形成される。同様に、第1分離ピストンPB1の外周部と、分離シリンダCBの内周部とは、シールSLによって封止され、第2分離ピストンPB2の他方側端部、分離シリンダCBの内筒部、及び、第1分離ピストンPB1の一方側端部によって第1加圧室Ra1が形成される。また、第1分離ピストンPB1の他方側端部、分離シリンダCBの内筒部、及び、分離シリンダCBの他方側底部によって分離室Rbが形成される。中心軸Jbにおいて、分離室Rbは、第1、第2分離ピストンPB1、PB2に対して、第1、第2加圧室Ra1、Ra2とは反対側に位置する。
非制動時には、第1、第2分離ピストンPB1、PB2は、第1、第2分離弾性体(圧縮ばね)SB1、SB2によって、分離ユニットKBの初期位置(図では右方向に示す、最も後退方向Dqの位置)に押圧されている。また、非制動時には、第1組、第2組のシール間は、第1、第2戻し流体路HS1、HS2を介して、リザーバRVの第1、第2マスタリザーバ室Ru1、Ru2に連通状態にされている。なお、第1、第2戻し流体路HS1、HS2は、省略可能である。
制動操作部材BPが操作されると、コントローラECUによって、第1、第2マスタシリンダ弁VM1、VM2は閉位置にされ、シミュレータ弁VSが開位置にされる。そして、調圧ユニットKCを構成する、1つの調圧電動ポンプDC、及び、1つの調圧電磁弁UDが、操作量Baに基づいて、上部コントローラECUによって駆動される。具体的には、電磁弁UDが閉位置にされたままの状態で、調圧電動ポンプDCが回転され、制動液BFが、リザーバ流体路HRから調圧流体路HCに汲み上げられる。そして、操作量Baに基づいて決定された目標液圧Ptを達成するよう、電動ポンプDCが駆動される。ここで、逆止弁GCと電磁弁UDとの間の調圧流体路HCには、調整液圧Pc(パイロット液圧Ppでもある)を検出する調整液圧センサPCが設けられ、検出結果(実際の調整液圧)Pcが目標液圧Ptに一致するよう、調圧電気モータMCへの通電状態が制御される。
調整液圧Pcが増加されると、パイロット液圧Ppも増加される。パイロット液圧Ppの増加に応じて、増幅ピストンPZが前進方向Drに移動され、増幅室Roとリザーバ流体路HRとの接続部(ポート)が閉じられる。増幅ピストンPZには、弁体Vvが形成されており、増幅ピストンPZの前進に応じて、弁体Vvの開口部の面積が拡大され、アキュムレータAZ内に蓄積された液圧Pqが、環状室Rvを介して、増幅室Roに導入される。ここで、増幅室Ro内の液圧Poは、弁体Vvによって、パイロット液圧Ppに近づくように調整される。増幅ユニットKZによって、パイロット室Rpに流入する制動液BFの流量が増加され、増幅流体路HTを介して、増幅ユニットKZの増幅室Roから、分離ユニットKBの分離室Rbに導入される。
制動液BFが増幅室Roから分離室Rbへ流入されると、第1分離ピストンPB1が前進方向Dpに移動される(図中の左方向への動き)。第1分離弾性体SB1を介した第1分離ピストンPB1の前進によって、第2分離ピストンPB2が前進方向Dpに動かされる。第1、第2分離ピストンPB1、PB2が前進されると、第1、第2加圧室Ra1、Ra2内の液圧Pa1、Pa2が増加される。第1、第2加圧室Ra1、Ra2は、第1、第2中間流体路HV1、HV2を介して、ホイールシリンダCWに流体接続されている。従って、第1、第2加圧室Ra1、Ra2内の液圧Pa1、Pa2が増加されることによって、各ホイールシリンダCWi〜CWl内の制動液圧Pwi〜Pwlが増加される。なお、第1、第2マスタシリンダ流体路HM1、HM2は、第1、第2接続部Bm1、Bm2にて、第1、第2中間流体路HV1、HV2に接続される。
第1、第2マスタシリンダ弁VM1、VM2、シミュレータ弁VS、シミュレータSS、第1、第2マスタシリンダ液圧センサPM1、PM2、調整液圧センサPC、調圧ユニットKC、分離ユニットKBは、上部流体ユニットHUに含まれて、一体となって構成され得る。更に、上部流体ユニットHUは、コントローラECUを含んで構成され得る。上部流体ユニットHUは、下部流体ユニットHL(コントローラECLを含む)を介して、ホイールシリンダCWに接続される。下部流体ユニットHLは、アンチスキッド制御、車両安定化制御、等を実行するための公知の流体ユニットである。上部流体ユニットHUのコントローラECUと、下部流体ユニットHLのコントローラECLとは、通信バスBSによって接続され、情報共有がなされている。
上部流体ユニットHUと下部流体ユニットHLとは、第1、第2中間流体路HV1、HV2によって接続される。下部流体ユニットHLには、電気モータMLで駆動され、第1、第2低圧リザーバRL1、RL2から制動液BFを汲み上げる第1、第2流体ポンプQL1、QL2が設けられる。第1、第2中間流体路HV1、HV2には、常開型の第1、第2チャージオーバ弁VN1、VN2が設けられる。第1、第2チャージオーバ弁VN1、VN2への第1、第2入力液圧Pn1、Pn2を検出するよう、第1、第2入力液圧センサPN1、PN2が設けられる。なお、2つの入力液圧センサPN1、PN2のうちの何れか1つは、省略可能である。
第1、第2流体ポンプQL1、QL2によって発生された液圧が、第1、第2チャージオーバ弁VN1、VN2によって調整され、第1、第2チャージオーバ弁VN1、VN2の下流側(ホイールシリンダCWに近い側)の液圧が増加される。第1、第2チャージオーバ弁VN1、VN2と各ホイールシリンダCWとの間の第1、第2分岐部Bw1、Bw2にて、第1、第2中間流体路HV1、HV2は、各ホイールシリンダ流体路HWi〜HWlに分岐される。
下部流体ユニットHLにおいて、各車輪WHに係る構成は同じであるため、右前輪WHiに係る構成を例に説明する。右前輪用ホイールシリンダ流体路HWi(分岐部Bw1と右前輪ホイールシリンダCWiとを結ぶ流体路)には、常開型のインレット弁VIiが介装される。また、ホイールシリンダ流体路HWiは、常閉型のアウトレット弁VOiを介して、低圧リザーバRL1に流体接続される。例えば、アンチスキッド制御において、ホイールシリンダCWi内の液圧Pwiを減少するため、インレット弁VIiが閉位置にされ、アウトレット弁VOiが開位置される。ホイールシリンダCWi内の制動液BFは、低圧リザーバRL1に流出し、制動液圧Pwiは減少される。また、制動液圧Pwiを増加するため、インレット弁VIiが開位置にされ、アウトレット弁VOiが閉位置される。チャージオーバ弁VN1を介した液圧が、ホイールシリンダCWiに導入され、制動液圧Pwiが増加される。
直列配置型の分離ユニットKBの構成例おいても、各ユニットKB、KZ、KCは、流体路HT、HCを通して結ばれるため、簡単な構造で、車両への搭載が容易化され得る。また、分離ユニットKBでは、第1、第2分離ピストンPB1、PB2の移動可能な中心軸Jb方向の変位は、構成上、幾何的に限定される。このため、流体路に失陥が生じた場合であっても、制動装置の外部に流出される制動液BFの量は制限される。結果、制動装置のフェイルセーフ性が向上される。
加えて、制動液BFの流量において、増幅ユニットKZによって、調圧ユニットKCの出力(流量)が増加されるため、調圧ユニットKCの小型・軽量化が図られる。つまり、小型の電動ポンプDCが採用されるとともに、電磁弁UDの流量低減が達成され得る。また、調整液圧Pcの制御において、その元圧は、高圧ではなく、「0」から上昇されるため、低圧領域における制御分解能が十分に確保され、制御精度が向上され得る。
該構成例で、常閉型の電磁弁UDが採用されるため、制動操作終了後に、分離室Rb1、Rb2内に液圧が残留する場合が生じ得る。このため、制動終了時に、電磁弁UDが一旦開位置にされ、残圧が解放され得る。なお、第1、第2戻し流体路HS1、HS2は、省略してもよい。
直列配置型の分離ユニットKBに代えて、並列配置型のものが採用され得る。この場合、図2を参照して説明した分離ユニットKBが、2つ用意され、夫々が、1つの増幅ユニットKZに接続される。つまり、増幅ユニットKZからの増幅流体路HTが2つに分岐され、2つの分離ユニットKB1、KB2に接続される。そして、2つの分離ユニットKB1、KB2は、第1、第2中間流体路HV1、HV2を介して、各ホイールシリンダCWに接続される。
<調圧制御の第2処理例>
図5の制御フロー図を参照して、調圧制御の第2処理例について説明する。第1処理例では、電動ポンプDCによって制動液BFの流れ(流量)が確保されるよう、電気モータMCの回転数が制御された。そして、常開型電磁弁UCが制御され、電磁弁UCによる還流路(HR+HC)内のオリフィス効果によって、調整液圧Pcが制御された。一方、第2処理例では、電気モータMCによって、調整液圧Pcの増加が直接制御されるとともに、常閉型電磁弁UDによって、調整液圧Pcの減少が制御される。具体的には、電気モータMC、及び、電磁弁UDによって、調圧流体路HC内の制動液BFの量(体積)が調整され、調整液圧Pcが制御される。
ステップS210からステップS250までの処理は、ステップS110からステップS150までの処理に対応しているため、簡単に説明する。ステップS210にて、操作量Ba、操作信号St、調整液圧Pc、回転角Ka、及び、回生量Rg(回生ブレーキの大きさ)が読み込まれる。ステップS220にて、「制動操作中であるか、否か」が判定される。制動操作中である場合には、処理はステップS230に進む。制動操作中でない場合には、処理はステップS210に戻される。ステップS230にて、常開型のマスタシリンダ弁VMが閉位置にされ、常閉型のシミュレータ弁VSが開位置にされる。ステップS240にて、操作量Ba、及び、演算マップZprに基づいて、操作量Baが「0」から所定値boの範囲では、要求液圧Prが「0」に演算され、操作量Baが所定値bo以上では、操作量Baの増加に応じて、要求液圧Prが「0」から単調増加するように演算される。ステップS250にて、要求液圧Pr、及び、回生量Rgに基づいて、目標液圧Ptが演算される。具体的には、回生量Rgが、回生液圧Pgに変換され、「Pt=Pr−Pg」に基づいて、目標液圧Ptが決定される。
ステップS260にて、目標液圧Ptと検出液圧(実際値)Pcとの偏差hPが演算される。即ち、「hP=Pt−Pc」にて、液圧偏差hPが決定される。
ステップS270にて、液圧偏差hPに基づいて、「液圧偏差hPが所定値pz以上であるか、否か」が判定される。所定値(「増圧所定値」ともいう)pzは、判定用のしきい値であり、予め設定された、「0」より大きい定数である。「hP≧pz」であり、ステップS270が肯定される場合には、制御モードとして増圧モードが設定され、処理は、ステップS290に進む。ここで、「増圧モード」は、調整液圧Pcを増加するモードである。一方、「hP<pz」であり、ステップS270が否定される場合には、処理は、ステップS280に進む。
ステップS280にて、液圧偏差hPに基づいて、「液圧偏差hPが所定値−pg以上であるか、否か」が判定される。所定値(「減圧所定値」ともいう)「−pg」は、判定用のしきい値であり、予め設定された、「0」未満の定数である。「hP≧−pg」であり、ステップS280が肯定される場合には、制御モードとして保持モードが設定され、処理は、ステップS300に進む。一方、「hP<−pg」であり、ステップS280が否定される場合には、制御モードとして減圧モードが設定され、処理は、ステップS310に進む。ここで、「保持モード」は、調整液圧Pcを一定に維持するモードであり、「減圧モード」は、調整液圧Pcを減少するモードである。
ステップS290にて、増圧モードの処理が実行される。ステップS290では、常閉型の電磁弁UDが、閉位置のままに維持される。そして、電動ポンプDC(特に、電気モータMC)が液圧フィードバックされて、制動液BFがリザーバ流体路HRから調圧流体路HC内に移動され、調整液圧Pcが増加される。具体的には、液圧偏差hPに応じて電気モータMCの通電量の目標値(目標通電量)Itが決定される。そして、実通電量Iaが目標通電量Itに一致するように制御される。
ステップS300にて保持モードの処理が実行される。ステップS300では、電磁弁UDが閉位置のまま、維持されるとともに、電気モータMCの回転が停止される。保持モードにおいて、電磁弁UDが閉位置にされると、調圧流体路HC内の調整液圧Pcは、逆止弁GCと電磁弁UDとによって封じ込められる(つまり、制動液BFが、調圧流体路HCの外部に移動不可となる)。このため、電気モータMCへの通電量が「0(通電停止)」を含む所定値に向けて減少され得る。
ステップS310にて、減圧モードの処理が実行される。ステップS310では、コントローラECUにて決定された駆動信号Udに基づいて、電磁弁UDへの通電量が調整され、その開弁量(リフト量)が制御される。電磁弁UDを介して、制動液BFが、調圧流体路HCからリザーバ流体路HRに移動されるため、調整液圧Pcが減少される。このとき、電気モータMCの回転運動は停止される。保持モードと同様に、電気モータMCへの通電量が「0(通電停止)」を含む所定値に向けて減少され得る。
第1処理例では、制動制御中は常時、電動ポンプDCが回転駆動されるが、第2処理例では、調整液圧Pcの保持、及び、減圧モードでは、電動ポンプDCが回転停止される。この場合、逆止弁GCによって、電気モータMCへの通電量が減少され得るため、制動制御装置SCの省電力化が図られる。
<省電力制御の処理>
図6の制御フロー図を参照して、省電力制御の処理について説明する。制動制御装置SCにおいて、最も電力が消費されるのは、信号待ち等で、車両の停止状態を維持する状況である。例えば、オートマチックトランスミッションが搭載された車両では、アクセルペダルが操作されていなくても、エンジンのアイドリング状態によって、車両が前進しようとする(所謂、クリープ現象)。このため、車両の停止状態が維持されるためには、制動制御装置SCは車輪WHに制動トルクを付与し続ける必要がある。「省電力制御」は、このような状況において、制動制御装置SCの消費電力を低減する制御である。
ステップS410にて、操作量Ba、操作信号St、車輪速度Vwが読み込まれる。車輪速度Vwは、各車輪WHに備えられた車輪速度センサVWによって検出される。
ステップS420にて、車輪速度Vwに基づいて車体速度Vxが演算される。例えば、制動時には、4つの車輪速度Vwのうちで最速のものが車体速度Vxとして演算される。また、車両の加速中を含む非制動時には、4つの車輪速度Vwのうちの最遅のもが車体速度Vxとして決定される。なお、車体速度Vxは、下部コントローラECLによって演算されたものが、通信バスBSを介して送信されてもよい。
ステップS430にて、操作量Ba、及び、操作信号Stのうちの少なくとも1つに基づいて、「制動操作中であるか、否か」が判定される。制動操作中である場合には、処理はステップS440に進む。制動操作中でない場合には、処理はステップS410に戻される。
ステップS440にて、車体速度Vxに基づいて、「車両が停止中であるか、否か」が判定される。「Vx=0」であり、車両停止中である場合には、処理はステップS450に進む。車両が停止していない場合(即ち、車両が走行中)には、処理はステップS410に戻される。
ステップS450にて、操作量Baに基づいて、「操作量Baが一定であるか、否か」が判定される。操作量Baが一定ではない場合には、処理はステップS460に進み、上述した通常の調圧制御(通常制御)が実行される。操作量Baが一定である場合には、処理はステップS470に進む。
ステップS470にて、省電力制御が実行される。ステップS470では、電磁弁UC(又は、電磁弁UD)が全閉位置にされる。これにより、逆止弁GCと電磁弁UC(又は、電磁弁UD)の間の制動液BFは封じ込められ、調整液圧Pcが一定に保持される。電磁弁UC(又は、電磁弁UD)が全閉位置にされた後に、電気モータMCへの通電量が、「0(通電停止)」を含む所定値に向けて減少される。
車両が停止している場合、然程、液圧の応答性は必要とされない。このため、省電力制御中に制動操作部材BPの操作が増加された場合には、電気モータMCによって、必要、且つ、十分な、調整液圧Pcの応答性が確保され得る。
<分離ユニットKBの他の構成例>
図7の概略図を参照して、分離ユニットKBの他の構成例について説明する。先の構成例に対して、他の構成例では、流体路の接続方法、及び、作動が異なる。分離ユニットKBは、分離シリンダCB、分離ピストンPB、及び、分離弾性体SBにて構成される。
他の例でも、上述したように、分離シリンダCBは、底部を有するシリンダ部材である。分離ピストンPBが、分離シリンダCBの内部に挿入される。分離シリンダCBの内周部Bcには、溝部が形成され、該溝部に、2つのシールSL、SMがはめ込まれる。シールSL、SMによって、分離ピストンPBの外周部(外周円筒面)Bp、及び、分離シリンダCBの内周部(内周円筒面)Bcの間が封止される。分離ピストンPBは、分離シリンダCBの中心軸Jbに沿って、滑らかに移動(摺動)することが可能である。
分離シリンダCBの内部は、分離ピストンPBによって、2つのチャンバRa、Rbに分離される。加圧室Ra(図の下方のチャンバ)は、「分離シリンダCBの内周部Bc、第1底部(底面)Bu」と、「分離ピストンPBの外周部Bp、第1端部Br」とによって区画された液圧室である。加圧室Raには、流体路HVが接続される。流体路HVは、その下流部で分岐され、最終的にはホイールシリンダCWに流体接続される。
分離室Rb(図の上方のチャンバ)は、「分離シリンダCBの内周部Bc、第2底部(底面)Bt」と、「分離ピストンPBの外周部Bp、第2端部Bq」とによって区画された液圧室である。加圧室Raと、分離室Rbとは、分離ピストンPBを挟んで、相対するように形成される。換言すれば、分離シリンダCBの中心軸線Jbにおいて、分離室Rbは、分離ピストンPBに対して、加圧室Raとは反対側に位置する。分離室Rbには、増幅流体路HTが接続される。分離室Rbには、増幅室液圧Poが導入され、「Pb=Po」となる。
分離シリンダCBには、2つのシールSL、SMの間で、外周部と内周部Bcとを貫通するよう、ポートAmが設けられる。ポートAmには、マスタシリンダ流体路HMが接続される。分離シリンダCB内には、ポート(貫通孔)Amの周りに、内周円筒面Bc、外周円筒面Bp、及び、シールSL、SMで区画された空間Rcが形成される。
分離ピストンPBの第1端部Brには、窪み部(凹部)Bsが設けられ、第2端部Bqにも、窪み部Bvが設けられる。分離ピストンPBの第2端部Bqには、切欠きが設けられ、窪み部Bvと外周部Bp周辺との間で制動液BFが移動可能となっている。外周部Bp、及び、窪み部Bsには、貫通孔Apが設けられる。つまり、貫通孔(例えば、円孔)Apを介して、外周部Bp周辺と窪み部Bsとの間で制動液BFが自由に移動可能である。
分離シリンダCBの第1底部Buと分離ピストンPBの窪み部Bsとの間には分離弾性体(例えば、圧縮ばね)SBが設けられる。分離弾性体SBによって、分離シリンダCBの中心軸Jbに沿って、後退方向Dqに弾性力が発生される。「Pb(=Po)≒0」の場合には、該弾性力によって、分離ピストンPBは、分離シリンダCBの第2底部Bt(「端部」に相当)に押し付けられている。
図7(a)を参照して、非制動時、又は、マニュアル制動時の作動について説明する。非制動時には、分離ピストンPBが、分離弾性体(圧縮ばね)SBによって、分離ピストンPBの後退方向Dq(図中で上向き方向であり、前進方向Dpとは反対方向)に押し付けられ、分離ピストンPBの第2端部Bqと、分離シリンダCBの第2底部Btとが当接している。この状態での分離ピストンPBの位置が、「分離ユニットKBの初期位置」である。
初期位置(分離ピストンPBが端部Btに押圧された位置)にある場合には、貫通孔Apは、空間Rcと接続状態にある。従って、マスタシリンダ流体路HMは、貫通孔Apを介して、加圧室Raに接続されている。つまり、マスタシリンダCMとホイールシリンダCWとが、分離ユニットKBの加圧室Raを通して、連通状態にされている。この状態で、マニュアル制動が実行されると、マスタシリンダCMから圧送された制動液BFは、直接、ホイールシリンダCWに導入される。結果、制動液圧Pwが、制動制御装置SCに依らず、運転者の操作力のみによって発生される。
図7(b)を参照して、制御制動の作動について説明する。制動操作部材BPが操作されると、調圧ユニットKCによって調整液圧Pcが発生され、増幅室液圧Poが増加される。この液圧Poは、分離室Rbに導入され、分離室Rb内の液圧Pb(=Po)が増加される。液圧Pbによる分離ピストンPBの前進方向Dp(図中で下向き方向)の力が、分離弾性体SBによる後退方向Dqの弾性力よりも大きくなると、分離ピストンPBが中心軸Jbに沿って、前進方向Dpに移動され、分離室Rbの体積が増加される。
分離ピストンPBの前進方向Dpへの動きによって、分離ピストンPBの外周部Bpに形成された貫通孔ApがシールSMを通過すると、空間Rcと加圧室Raとの連通状態が遮断される。結果、マスタシリンダ流体路HM(即ち、マスタシリンダCM)と、加圧室Raとは、非連通状態にされる。更に、分離ピストンPBが前進方向Dpに移動されると、加圧室Raの体積は減少し、加圧室Ra内の制動液BFが流体路HV、HWに圧送される。これにより、ホイールシリンダCWの制動液圧Pwが増加される。
逆に、制動操作部材BPが戻されると、調圧ユニットKCによって調整液圧Pcが減少される。そして、分離室液圧Pb(=Po=Pc)は、加圧室液圧Pa(=Pw)よりも小さくなるため、分離ピストンPBは後退方向Dqに移動される。制動操作部材BPが非操作状態になると、圧縮ばねSBの弾性力によって、分離ピストンPBは、分離シリンダCBの第2底部Btに接触する位置(初期位置)にまで戻される。そして、加圧室Raとマスタシリンダ流体路HMとは、貫通孔Apを介して連通状態となり、加圧室Ra内の液圧Paは、「0」に戻される。
先の構成例と同様に、分離ピストンPBの移動可能な範囲は所定距離lp(初期位置から該当接位置までの変位)に限定されるとともに、ホイールシリンダCWとの間で制動液BFが移動されない。分離ユニットKBによって、流体路の失陥によって失われる制動液BFの体積が限定されるため、制動制御装置SCの信頼度が向上され得る。
他の構成例では、分離ユニットKBによって、制御制動時に、マスタシリンダCMとホイールシリンダCWとの流体接続が閉ざされるため、マスタシリンダ弁VMは省略され得る。しかしながら、分離ユニットKBによる上記遮断は、貫通孔Ap、及び、シールSMの形状に依存する。つまり、或る程度、分離ピストンPBの変位した後(即ち、貫通孔Apが、シールSMを通過し、完全に加圧室Ra内に移動した後)に、マスタシリンダCMとホイールシリンダCWとの遮断が達成される。具体的には、マスタシリンダCMとの遮断には、分離ピストンPBが、少なくとも「貫通孔Apの直径+シールSMの幅」だけ変位する必要がある。このため、制動初期における制動操作部材BPの操作特性(操作変位Spと操作力Fpとの関係)への影響が懸念される。従って、制動操作部材BPの操作特性を好適に維持するためには、マスタシリンダ弁VMを設けることが望ましい。
<他の実施形態>
上述したように、パイロット作動する増幅ユニットKZが、調圧電動ポンプDC(蓄圧電動ポンプDZとは異なる)によって元圧を発生する調圧ユニットKCによって駆動される。このため、低圧領域において、調整液圧Pc(即ち、パイロット液圧Pp)の調圧精度が好適に確保されとともに、制動液BFの流量拡大が確実に実行され得る。調圧ユニットKC、増幅ユニットKZ、及び、分離ユニットKBが、流体路(配管、流体ユニット内の流路等)で接続されるため、シンプルな構造で、且つ、レイアウトの自由度が高い。分離ユニットKB、及び/又は、増幅ユニットKZによって、ユニットKC、KZとホイールシリンダCWとの間で制動液BFが移動されないよう、ユニットKC、KZとホイールシリンダCWとが流体的に分離される。このため、制動制御装置SCのフェイルセーフ性が向上され得る。更に、車両停止中に、操作量Baが一定に保持された場合、省電力制御によって、電気モータMCへの通電量が減少されるため、制動制御装置SCの省電力化が達成され得る。
以下、他の実施形態について説明する。他の実施形態においても、上記同様の効果を奏する。
2系統流体路用の分離ユニットKBにおいて、直列配置型のものと、並列配置型のものと、が例示された。また、調圧ユニットKC用の電磁弁として、常開型リニア電磁弁UCと、常閉型リニア電磁弁UDと、が例示された。これらの構成は組み合わせ自由である。つまり、「直列配置型の分離ユニットKB+電磁弁UCを含む調圧ユニットKC」、「並列配置型の分離ユニットKB+電磁弁UCを含む調圧ユニットKC」、「直列配置型の分離ユニットKB+電磁弁UDを含む調圧ユニットKC」、及び、「並列配置型の分離ユニットKB+電磁弁UDを含む調圧ユニットKC」のうちの何れか1つが採用され得る。何れの構成においても、同様の効果を奏する。
上記実施形態では、車両が、駆動用モータを有する電気自動車、又は、ハイブリッド車両とされた。これに代えて、駆動用モータを持たない一般的な内燃機関を有する車両にも、制動制御装置SCが適用され得る。この場合、駆動用モータによる回生ブレーキは発生されないため、制動制御装置SCにおいて、回生協調制御は実行されない。つまり、車両は、制動制御装置SCによる摩擦ブレーキのみによって減速される。なお、調圧制御では、「Pt=Pr(即ち、Rg=0)」として制御が実行される。
上記実施形態では、リニア型の電磁弁UC、UDには、通電量に応じて開弁量が調整されるものが採用された。例えば、電磁弁UC、UDは、オン・オフ弁ではあるが、弁の開閉がデューティ比で制御され、液圧が線形に制御されるものでもよい。
上記実施形態では、増幅ピストンPZの弁体Vvとして、スプール型のものが例示された。これに代えて、弁体Vvとして、ポペット型、或いは、スライド型のものが採用され得る。なお、ポペット型の弁体Vvには、形状が、ボール形状のもの、又は、ニードル形状のものが用いられ得る。
上記実施形態では、分離ユニットKBが省略され得るとした。この場合、1つの増幅ユニットKZが、第1、第2中間流体路HV1、HV2に接続される。ここで、1つの増幅ユニットKZは、1つのアキュムレータAZ、1つの蓄圧用電動ポンプDZ、1つの蓄圧センサPQ、及び、1組の増幅用のシリンダCZ/ピストンPZにて構成される。
また、増幅ユニットKZが、1つのアキュムレータAZ、1つの蓄圧電動ポンプDZ、1つの蓄圧センサPQ、2組の増幅用のシリンダCZ/ピストンPZにて構成されてもよい。該構成では、2組の増幅シリンダCZ/ピストンPZのうちの一方の組が、第1中間流体路HV1に接続され、他方の組が、第2中間流体路HV2に接続される。2つの増幅ピストンPZの弁体部分Vvには、1つのアキュムレータAZから高圧の制動液BFが供給される。
上記実施形態では、ディスク型制動装置(ディスクブレーキ)の構成が例示された。この場合、摩擦部材はブレーキパッドであり、回転部材はブレーキディスクである。ディスク型制動装置に代えて、ドラム型制動装置(ドラムブレーキ)が採用され得る。ドラムブレーキの場合、キャリパに代えて、ブレーキドラムが採用される。また、摩擦部材はブレーキシューであり、回転部材はブレーキドラムである。
上記実施形態では、流体ポンプQCの駆動源として、ブラシレスモータが採用された。電気モータMCとして、ブラシレスモータに代えて、ブラシ付モータ(単に、ブラシモータともいう)が採用され得る。この場合、ブリッジ回路として、4つのスイッチング素子(パワートランジスタ)にて形成されるHブリッジ回路が用いられる。ブラシレスモータの場合と同様に、電気モータMCには、回転角センサKAが設けられ、駆動回路DRには、通電量センサが設けられる。
上記実施形態では、2系統流体路として、前後型(「H型」ともいう)が例示された。これに代えて、ダイアゴナル型流体路(「X型」ともいう)の構成が採用され得る。ダイアゴナル型流体路では、第1マスタシリンダ流体路HM1(即ち、第1系統)には、右前輪ホイールシリンダCWi、及び、左後輪ホイールシリンダCWlが流体接続される。また、第2マスタシリンダ流体路HM2(即ち、第2系統)には、左前輪ホイールシリンダCWj、及び、右後輪ホイールシリンダCWkに流体接続される。
BP…制動操作部材、CM…マスタシリンダ、CW…ホイールシリンダ、KZ…増幅ユニット、PZ…増幅ピストン、CZ…増幅シリンダ、Vv…弁体、AZ…アキュムレータ、DZ…蓄圧用電動ポンプ、KB…分離ユニット、PB…分離ピストン、CB…分離シリンダ、KC…調圧ユニット、DC…調圧用電動ポンプ、UC…電磁弁(常開・リニア型)、UD…電磁弁(常閉・リニア型)、ECU…コントローラ、BA…操作量センサ、PC…調整液圧センサ。


Claims (2)

  1. 車両の車輪に備えられたホイールシリンダの液圧を調整する車両の制動制御装置であって、
    蓄圧電動ポンプによって発生された液圧を蓄えるアキュムレータと、
    前記アキュムレータ、増幅シリンダ、及び、弁体が形成された増幅ピストンを含んで構成され、「前記アキュムレータに蓄えられた液圧が前記弁体によって調整され、該調整された液圧が導入され、前記ホイールシリンダの液圧を調整する増幅室」、及び、「前記増幅ピストンに対して前記増幅室とは反対側に位置するパイロット室」を有する増幅ユニットと、
    前記蓄圧電動ポンプとは別の調圧電動ポンプ、及び、電磁弁にて構成され、前記調圧電動ポンプ、及び、前記電磁弁によって、前記パイロット室の液圧を調整する調圧ユニットと、
    前記パイロット室の液圧を検出する液圧センサと、
    前記液圧センサの検出値に基づいて、前記調圧電動ポンプ、及び、前記電磁弁を制御するコントローラと、を備える車両の制動制御装置。
  2. 請求項1に記載の車両の制動制御装置において、
    前記コントローラは、
    前記車両の制動操作部材の操作量に基づいて目標液圧、及び、目標回転数を演算し、
    前記調圧電動ポンプの回転数が前記目標回転数に近づくように前記調圧電動ポンプを制御し、
    前記検出値が前記目標液圧に近づくように前記電磁弁を制御するよう構成された、車両の制動制御装置。
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