JP7046727B2 - 熱膨張性耐火材料および耐火成形体 - Google Patents

熱膨張性耐火材料および耐火成形体 Download PDF

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本発明は、建物などの防火区画を画成する防火壁や床などをケーブルや配管などの長尺体が貫通する長尺体貫通部の防火処理等に使用可能な熱膨張性耐火材料や耐火成形体に関するものである。特に、熱可塑性樹脂と熱膨張性黒鉛を主成分として混練された熱膨張性耐火材料及び、そのような熱膨張性耐火材料により成形された耐火成形体に関する。
建築物の防火区画壁や床には、ケーブル(プラスチック被覆電線)や配管などの貫通物(長尺体)が貫通するための貫通穴が設けられている。これらの貫通穴では、火災の際に貫通物が延焼して火災が広がるのを防止するために、貫通穴に防火処理を施す必要がある。
防火処理としては、貫通物と貫通穴の隙間を、直接パテ状防火材で覆う処理がある。こうした処理は、現場での施工の手間が大きく、工事期間・費用がかさむ上に、貫通物の追加や除去の融通性に欠けるものであった。
施工性が改善された防火処理の技術として、特許文献1には、熱膨張性黒鉛や熱膨張性ゴムを主材料に、円筒状本体の長手方向に割り溝を有するように形成された防火区画貫通部材を、ケーブルなどの周囲にワンタッチで装着して貫通穴の内部に敷設して防火処理をする技術が開示されている。また、特許文献2には、樹脂材料と膨張材料を主成分として混練された熱膨張性耐火材料において、加熱により収縮する棒状または繊維状の収縮性材料が、所定の方向に配向されて含まれるようにする技術が開示されている。
特許第3853718号公報 特開2010-279144号公報
特許文献1や特許文献2の技術によれば、あらかじめ特定の形状に形成された耐火部材を耐火処理の必要な部位に装着すれば耐火処理が簡潔に完了するとの利点がある。
特許文献1や特許文献2の技術では、樹脂材料に熱可塑性樹脂を用いると、火災の際に火炎や熱風に曝された熱膨張性耐火材料や耐火成形体が軟化しやすい。熱膨張性耐火材料や耐火成形体が軟化すると、いまだ膨張が不十分なうちに、熱膨張性耐火材料や耐火成形体の形状が変化して、配置された位置から流動するなどして失われてしまい、熱膨張性耐火材料の膨張を利用した防火処理が不十分となるおそれがある。特に、長尺体貫通部が垂直方向に貫通する場合などに、こうした軟化に伴う流動や、耐火材の喪失が生じやすくなる。
本発明の目的は、耐火処理が簡単であり、高温の空気に曝されても喪失しにくい熱膨張性耐火材料や耐火成形体を提供することにある。
発明者らは、熱膨張性耐火材料が、どのような場合に、軟化に伴って流動したり、喪失したりしやすくなるのかを検討した。そして、火炎が直接熱膨張性耐火材料や耐火成形体を加熱する部位では、膨張材料の膨張が活発であるため、耐火材料の流出や喪失はやや起こりにくい傾向がある一方で、火災や火炎の発生場所からやや離れた場所に高温の空気が流れていくような箇所において、熱膨張性耐火材料が十分に発泡しないまま、耐火材料の流出や喪失が起こりやすい傾向があることを突きとめた。
発明者は、上記発見に基づいて更なる検討を行い、熱膨張性黒鉛の膨張開始温度Teを低くする一方で、熱可塑性樹脂の融点Tmを前記膨張開始温度Teに対し所定の範囲に設定すると、熱膨張性耐火材料や耐火成形体が高温の空気に曝されても変形しにくくなって上記課題を解決できることを知見し、本発明を完成させた。
本発明は、熱可塑性樹脂と熱膨張性黒鉛を主成分として混練された熱膨張性耐火材料であって、膨張開始温度Teが135℃以下の熱膨張性黒鉛を含み、熱可塑性樹脂の融点Tmが、0℃<Te-Tm≦35℃を満たし、前記熱膨張性耐火材料を厚さ2.0mmの板状にプレス成形して、5mm×120mmの短冊状の試験サンプルを作成し、15mmx15mmの金属製角棒からなる2本の支持部材を、支持部材の間の距離が50mmとなるように配置し、前記試験サンプルを、水平に、前期支持部材の間に橋渡しするように支持し、常温でセットされた前記支持部材と前記試験サンプルを、150℃に加熱されたマッフル炉に入れて静置する評価試験を行い、初期形状からの垂れ下がりを評価試験開始から30分後に評価し、垂れ量が15mm以下である、熱膨張性耐火材料である(第1発明)。
第1発明において、好ましくは、熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である(第2発明)。
また、本発明は、第1発明もしくは第2発明の熱膨張性耐火材料が筒状もしくは板状に成形された耐火成形体である(第3発明)。
本発明の熱膨張性耐火材料(第1発明)や耐火成形体(第3発明)によれば、耐火処理が簡単であり、高温の空気に曝されても、熱膨張性耐火材料や耐火成形体が軟化/溶融しにくく、熱膨張性耐火材料や耐火成形体が喪失しにくい。また、熱可塑性樹脂をポリオレフィン系樹脂とした場合には(第2発明)、熱膨張性耐火材料が成形性に優れたものとなり、耐火成形体を効率的に製造できる。
第1実施形態の耐火成形体の形状を示す図である。 第1実施形態の耐火成形体を用いて長尺体貫通部に耐火処理を行った状態を示す図である。 他の実施形態の耐火成形体の形状例を示す図である。¥
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。以下の説明では、防火処理部材である耐火成形体を用いて、防火区画を区画する防火壁(軽量発泡コンクリート製)に設けられた貫通穴に、長尺体として電力ケーブルが挿通された長尺体貫通部の防火処理を行う実施形態の例を中心に説明する。
図1には、第1実施形態に係る耐火成形体1を示す。耐火成形体1は、熱膨張性耐火材料を筒状に成形して構成されたものであり、例えば、図2に示すようにケーブル(長尺体)12,12を取り囲むように、貫通穴11の内周面に密着するように長尺体貫通部に配置されて防火処理に使用される。
まず、耐火成形体1を構成する熱膨張性耐火材料Mについて説明する。
熱膨張性耐火材料Mは、樹脂材料と膨張材料とを主成分として混練された耐火性樹脂組成物である。主成分として混練される樹脂材料と膨張材料の合計が樹脂組成物の50重量%を超えることが好ましい。ここで、樹脂材料は熱可塑性樹脂であり、膨張材料は熱膨張性黒鉛である。熱膨張性耐火材料Mは、これら主成分以外の成分を含んでいてもよい。例えば、熱膨張性耐火材料Mは、熱可塑性樹脂以外の樹脂材料を含んでいてもよいし、熱膨張性黒鉛以外の膨張材料を含んでいてもよい。
熱膨張性黒鉛は、加熱により膨張する黒鉛であり、膨張黒鉛とも称される。熱膨張性黒鉛は、硫酸などの物質が黒鉛の層間に導入されていて、加熱されるとこうした物質がガス化して膨張する。熱膨張性黒鉛は、後述するリン化合物等と反応したりすることがないように、中和処理されたものを使用するのが望ましい。本発明における膨張材料の好ましい膨張倍率は、体積膨張率で2.5倍~200倍、更に好ましくは5倍~150倍である。熱膨張性黒鉛は公知であり、伊藤黒鉛工業株式会社や富士黒鉛工業株式会社などから市販されている。
本発明の熱膨張性耐火材料Mにおいては、膨張開始温度Teが135℃以下である熱膨張性黒鉛が含まれる。膨張開始温度Teが125℃以下である熱膨張性黒鉛が含まれることが好ましい。このような熱膨張性黒鉛は、例えば、富士黒鉛工業株式会社のEXP-50S120(膨張開始温度120℃)などとして市販されている。膨張開始温度が135℃を超える熱膨張性黒鉛や膨張材料が熱膨張性耐火材料Mに含まれていてもよい。
本発明の熱膨張性耐火材料Mに主成分として含まれる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)樹脂やポリプロピレン(PP)樹脂やエチレン酢酸ビニル(EVA)樹脂といったポリオレフィン系樹脂や、ポリスチレン(PS)樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、熱可塑性エラストマー(特にオレフィン系熱可塑性エラストマー)などが使用できる。
熱膨張性耐火材料Mの主成分となる熱可塑性樹脂の融点Tmは、熱膨張性黒鉛の膨張開始温度Teよりも低くされる(即ち、0℃<Te-Tm)。融点Tmは膨張開始温度Teよりも5度以上低くされる(即ち、5℃≦Te-Tm)ことが好ましく、10度以上低くされる(即ち、10℃≦Te-Tm)ことが特に好ましい。
また、熱可塑性樹脂の融点Tmは、膨張開始温度Teとの差が35℃以下となるようにされる(即ち、Te-Tm≦35℃)。融点Tmと膨張開始温度Teとの差が30℃以下とされる(即ち、Te-Tm≦30℃)ことが好ましく、融点Tmと膨張開始温度Teとの差が25℃以下とされる(即ち、Te-Tm≦25℃)ことが特に好ましい。
熱膨張性黒鉛の膨張開始温度Teが120℃である場合には、例えば、主成分の熱可塑性樹脂の融点Tmが85℃以上115℃以下とされることが好ましく、90℃以上110℃以下とされることが特に好ましい。
熱膨張性耐火材料Mには、上記熱可塑性樹脂以外の成分、例えば、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂や、ゴム、等が含まれていてもよい。フェノール系樹脂は加熱により硬化・炭化するので、フェノール系樹脂を樹脂材料として混合すると、耐火成形体が加熱された際に容易に軟化・変形してしまうことが防止され、耐火成形体が当初の位置に保たれやすくなり、耐火断熱層を形成することに有効である。
また、熱膨張性耐火材料Mには、主成分の熱可塑性樹脂よりも融点が高い他の熱可塑性樹脂(例えば、ポリアミド樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂など)が含まれていてもよい。
本実施形態では、融点Tmが87℃のエチレン酢酸ビニル(EVA)樹脂に、膨張開始温度Teが120℃の熱膨張性黒鉛が主成分として配合されて、熱膨張性耐火材料Mが構成されている。
熱膨張性耐火材料Mには、その他、必要に応じて以下のものを適宜加えることができる。
赤リンやリン酸エステル、リン酸金属塩、ポリリン酸アンモニウム類などのリン化合物を加えると、難燃性を高め、耐火断熱効果を向上させることができる。特にポリリン酸アンモニウムの添加が好適である。
水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの含水無機物を加えると、加熱時に脱水反応が起こり、生成した水の吸熱作用によって耐火断熱性能を向上させることができる。
本発明における熱膨張性耐火材料Mの加熱時の体積膨張率の好ましい範囲は2倍~40倍であり、より好ましくは、5倍~30倍である。膨張倍率が低いと、防火性能を確保するために多量の熱膨張性耐火材料が必要となるために不経済であり、膨張倍率が高すぎると、膨張した耐火材料が散逸しやすくなり、形成される耐火断熱層がもろくなる。したがって、適度な膨張倍率と膨張後の耐火材料の強度や耐火性が得られるように、樹脂材料と膨張材料の配合比率を調整する。
また、熱膨張性耐火材料の混練作業や成形作業をたやすくするために、ステアリン酸化合物や金属石鹸などの滑剤を配合してもよい。
また、防火処理の施工性を高める観点から、耐火成形体1に適度な弾力性を与えるために熱膨張性耐火材料は弾力性を有する材料であることが好ましく、熱膨張性耐火材料の好ましい弾性の程度は、JIS K 7171に準拠して測定した曲げ弾性率で1MPa~1000MPaである。
熱膨張性耐火材料Mが適度な膨張倍率や弾力性を有するよう、主成分として含まれる熱可塑性樹脂100重量部に対し、熱膨張性黒鉛が50重量部から300重量部配合されることが好ましい。
次に、上記熱膨張性耐火材料Mにより構成される耐火成形体1(図1)について説明する。耐火成形体は、熱膨張性耐火材料Mを押出し成形や射出成型等により板状や筒状に成形した部材である。図1では、上側半分を断面図で、下側半分を外観図で示しており、本実施形態の耐火成形体1は、円筒状の筒状部1aの一端に、中空円盤状のフランジ1bが形成された形態となっている。
耐火成形体を筒状に成形する場合には、円筒状や角筒状の他、筒を半割れ状にした形状としてもよい。また、筒状に成形する場合には、本実施形態の耐火成形体1のように、筒状部1aに筒の軸方向に沿うように伸びるスリットSを設けてもよい。耐火成形体を板状に成形する場合には、短冊状の平板状としたり、板を曲げた曲げ板状としたり、波板状としたりできる。
必須ではないが、耐火成形体1には、部材の強度や剛性を高めたり、部材の取り付け性を良くする目的などのために、フランジ1bを設けたり、リブや凹凸条、係止部(係止穴や、係止爪、フック、突起等)を設けてもよい。部材の弾力性を利用して取り付けがしやすくなるよう、手指の力により耐火成形体1が適度に弾性変形可能なように形成されることが好ましい。
耐火成形体1を製造する際には、典型的には押出し成形や射出成型が利用されるが、シート成形や圧縮成形が利用されてもよい。成形の際に熱膨張性黒鉛が膨張してしまわないように、成形をなるべく低い温度で行うことが好ましい。
第1実施形態の耐火成形体1を用いた耐火処理について、図2を参照して説明する。図2では、長尺体12,12が、床や天井等を鉛直方向に貫通する長尺体貫通部の防火処理を図示している。耐火成形体1は、防火壁(床や天井)に設けられた貫通穴11の内周面に密着するように取り付けられる。なお、耐火成形体と貫通穴内周面の密着は必須ではない。
耐火成形体1が有するスリットSや弾力性を利用して、貫通穴11に耐火成形体1を押しこむようにすると、弾力性により耐火成形体の位置が維持されやすくなって好ましい。また、フランジ1bが床や天井の上面に係止するように、耐火成形体を配置すると、耐火成形体が下方向に抜け落ちにくくなって好ましい。
耐火成形体1の内側の空間に、長尺体(電力ケーブルなど)12,12が配置されれば、耐火処理が完了する。耐火成形体の膨張により、長尺体と耐火成形体の間の隙間が埋まるように、隙間の大きさを、貫通する長尺体の太さや本数、耐火成形体の厚みなどで調整することが好ましい。
耐火成形体1を配置するタイミングは、貫通穴11に長尺体12,12を通す前であってもよいし、長尺体12,12をすでに貫通穴11に通した後であってもよい。長尺体12,12を通した後に耐火成形体1を配置する場合には、耐火成形体1にスリットSがあることが好ましく、スリットSがあれば、スリットを利用して長尺体の途中に耐火成形体1が簡単に配置できる。
また、図2では、耐火成形体1が貫通穴11の内周面に密着するように取り付けられたが、耐火成形体は、長尺体12,12の外周面に接し、貫通穴11の内周面との間に隙間ができるように取り付けられてもよい。
耐火成形体1によって防火処理された部位に、火炎や熱風が到達すると、耐火成形体の温度が上昇して膨張が始まり、熱膨張性耐火材料Mが耐火性と断熱性を有する物質に変化する。そして、熱膨張性耐火材料Mが膨張した物質により、貫通穴11の内周面と長尺体12の間の隙間が充填されて、火炎や熱風が防火壁を貫通することが抑制される。
上記実施形態の熱膨張性耐火材料Mや耐火成形体1の作用及び効果について説明する。上記実施形態の熱膨張性耐火材料Mや耐火成形体1によれば、成形体を貫通穴や長尺体の周囲に配置するだけで耐火処理が完了するので、耐火処理が簡単である。熱膨張性耐火材料が筒状もしくは板状に成形されて耐火成形体が構成されていれば、このような取り扱いがしやすい。また、上記実施形態の熱膨張性耐火材料Mや耐火成形体1が高温の空気に曝されても、従来の熱膨張性耐火材料や耐火成形体に比べ、熱膨張性耐火材料や耐火成形体が喪失しにくい。
従来の熱膨張性耐火材料では、膨張材料の膨張開始温度Teと樹脂材料の融点Tmや軟化点は、通常60℃程度以上離されていた。また、従来の熱膨張性耐火材料では、耐火性を重視して、膨張材料の膨張開始温度は150℃以上、特に200℃以上に設定されることが多かった。火災や火炎から離れた場所で、高温の空気や熱風に曝されても、こうした従来の熱膨張性耐火材料はなかなか膨張せず、熱膨張性耐火材料が膨張を開始するころには、耐火成形体全体が軟化してしまい、熱膨張性耐火材料や耐火成形体が変形したり流動したりして喪失しやすくなることを発明者らは発見した。
この様な現象は、火災により発生した熱風や高温の空気(典型的には200℃未満の空気)が流れていく場所で発生しやすい傾向がある。
発明者らは、上記実施形態のように膨張開始温度Teと樹脂材料の融点Tmが特定の範囲に入るようにすると、以下の作用が生じ、高温の空気にさらされても、熱膨張性耐火材料や耐火成形体が喪失しにくくなることを発見した。
即ち、熱膨張性耐火材料Mに含まれる熱膨張性黒鉛の膨張開始温度Teが135℃以下とされることにより、高温の空気や熱風に曝された熱膨張性耐火材料Mや耐火成形体1の表面で、熱膨張性黒鉛がより早期に膨張を開始することになる。そして、膨張が始まると、成形体の表層に耐火性の断熱層が形成されることになるので、高温の空気や熱風から耐火成形体の奥の部分に熱が伝わるのが抑制され、耐火成形体1の未膨張部分の温度上昇が抑制される。
さらに、上記実施形態の熱膨張性耐火材料Mや耐火成形体1では、膨張開始温度Teと熱可塑性樹脂の融点Tmが、関係式 0℃<Te-Tm≦35℃を満たし、熱可塑性樹脂は、加熱されながらもなかなか融点に達せず、熱膨張性黒鉛の膨張開始温度にかなり近づいた時点でようやく融点に達し、軟化・溶融することになる。したがって、高温の空気により加熱されている耐火成形体1においては、熱膨張性黒鉛が膨張を開始する部分では樹脂が融点に達していて膨張を妨げない一方で、未膨張である部分の大部分の熱膨張性耐火材料が、融点Tmに達していない状態となる。
この様に、上記実施形態の熱膨張性耐火材料Mや耐火成形体1では、耐火成形体表面の膨張を早期に開始し、成形体表面に耐火断熱層を形成する一方で、成形体の未膨張の部分は膨張直前まであまり軟化しない。これにより、上記実施形態の熱膨張性耐火材料Mにより形成された耐火成形体1は、従来の熱膨張性耐火材料で形成された耐火成形体に比べ、高温の空気や熱風等に曝されても、全体が軟化、溶融してしまいにくくなる。これにより、熱膨張性耐火材料や耐火成形体が喪失しにくくなる。
熱膨張性耐火材料Mや耐火成形体1の喪失を予防・抑制する観点からは、熱膨張性耐火材料Mに充填材料や繊維材料を加え、熱膨張性耐火材料Mの形状維持性を高めてもよい。
また、熱膨張性耐火材料Mの主成分となる熱可塑性樹脂をポリオレフィン系樹脂とすると、熱膨張性耐火材料Mが成形性に優れたものとなり、耐火成形体を効率的に製造できる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に本発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその説明を省略する。
図3には、耐火成形体の他の形態例を示す。
図3(a)は、熱膨張性耐火材料Mを短冊状の平板状(シート状)に成形した、弾力性を有する耐火成形体2である。弾力性を与えるためには、熱膨張性耐火材料Mが熱可塑性エラストマーを含むことが好ましい。このような耐火成形体2は、例えば、弾力性を利用して、長尺体の周囲に巻きつけた状態で、長尺体と貫通穴の間の空間に配置することができ、防火処理が簡単にできる。
図3(b)は、熱膨張性耐火材料Mを、円筒を中心軸に沿って割った形状(好ましくは半割れ状)に成形した、耐火成形体3である。このような耐火成形体3は、複数の耐火成形体3,3を組み合わせて円筒状にした状態で、長尺体と貫通穴の間の空間に配置することができ、防火処理ができる。配置に際し、耐火成形体3の弾力性を利用してもよい。
図3(c)は、熱膨張性耐火材料Mを、渦巻き形状に(好ましくは1周以上の渦巻き形状に)押出成形した、弾力性を有する耐火成形体4である。このような耐火成形体4は、長尺体の周囲に巻きつけるように取り付けて、長尺体と貫通穴の間の空間に配置することができ、防火処理ができる。また、このような耐火成形体4は、渦巻きの隙間と部材の弾力性を利用して、長尺体の外周に取り付けやすく、施工性に優れている。
上記実施形態の説明では、熱膨張性耐火材料Mにより、耐火成形体が形成され、電力ケーブル等の長尺体が耐火壁を貫通する長尺体貫通部の耐火処理に用いられる例を説明したが、熱膨張性耐火材料Mや耐火成形体の具体的用途はこの例に限定されない。
例えば、長尺体貫通部における長尺体は電力ケーブルに限定されず、通信ケーブルや、樹脂管、樹脂ホース、樹脂製ダクト等であってもよい。
また、熱膨張性耐火材料Mや耐火成形体の具体的用途は長尺体貫通部の耐火処理に限定されず、例えば、熱膨張性耐火材料Mにより形成された耐火成形体によって、ケーブルやケーブルシース等の外周を覆って、その部位の耐火処理を行うようにしてもよい。
あるいは、長尺体が貫通していない通風口などを、火災に際し閉塞するために、熱膨張性耐火材料Mや耐火成形体を用いた耐火処理を行ってもよい。
あるいは、熱膨張性耐火材料Mにより形成された耐火成形体を火炎や熱風等の高熱に曝されうる部材(例えば2次電池等)に隣接して配置し、部材に火炎等の熱が伝わることを防ぐための断熱部材として利用することもできる。こうした用途においては、部材の取付け等に適した形状に耐火成形体を形成すればよい。
(実施例1)
熱膨張性耐火材料の主成分たる熱可塑性樹脂成分M1を100重量部に対し、熱膨張性黒鉛B1を95重量部、リン系難燃剤(ポリリン酸アンモニウム)を47重量部、充填材(水酸化アルミニウム)を47重量部、滑剤を6重量部配合して混練し、実施例1の熱膨張性耐火材料を調製した。
熱膨張性黒鉛B1:
富士黒鉛工業株式会社のEXP-50S120、膨張開始温度は120℃、
熱可塑性樹脂M1:
エチレン酢酸ビニル(EVA)樹脂(東ソー株式会社のウルトラセン,型番625)、融点は87℃である。
実施例1では、膨張開始温度Teと融点Tmの差は33℃になっている。
(比較例1)
実施例1に対し、熱可塑性樹脂成分を熱可塑性樹脂M2に変更し、他は同様にした比較例1の熱膨張性耐火材料を調整した。
熱可塑性樹脂M2:
α-オレフィン樹脂(三井化学株式会社のタフマー,型番S-0550S)、融点は50℃以下である。
比較例1では、膨張開始温度Teと融点Tmの差は70℃以上になっている。
(比較例2)
実施例1に対し、熱膨張性黒鉛を熱膨張性黒鉛B2に変更し、他は同様にした比較例2の熱膨張性耐火材料を調整した。
熱膨張性黒鉛B2:
富士黒鉛工業株式会社のEXP-50S150、膨張開始温度は150℃である。
比較例2では、膨張開始温度Teと融点Tmの差は63℃になっている。
(比較例3)
実施例1に対し、熱可塑性樹脂成分を熱可塑性樹脂M2に変更し、熱膨張性黒鉛を熱膨張性黒鉛B2に変更し、他は同様にした比較例3の熱膨張性耐火材料を調整した。
比較例3では、膨張開始温度と融点の差は100℃以上になっている。
(試験サンプルの作成)
各実施例や比較例の熱膨張性耐火材料を混練して、厚さ2.0mmの板状にプレス成形した後に、5mm×120mmの短冊状にカットして、各熱膨張性耐火材料によって形成した耐火成形体の試験サンプルとした。
(試験方法)
各実施例及び比較例の熱膨張性耐火材料で成形された耐火成形体の試験サンプルを水平にして、サンプルを2本の支持部材で支持して橋渡し状にした。支持部材は15mmx15mmの金属製角棒であり、支持部材(角棒)の間の距離が50mmとなるように支持部材を配置してこの間に橋渡しするように、各サンプルを並べて試験に供した。
常温でセットされた支持部材と試験サンプルを、150℃に加熱されたマッフル炉に入れて静置し、経過を観察した。この試験は、火災や火炎が発生している場所からやや離れた場所に、火災で加熱された高温の空気が続けて流れてくる状況を模した試験である。
試験開始から5分後、15分後、30分後に、それぞれのサンプルにおいて、膨張の程度や形状の維持度合い(垂れ)を評価した。
(評価方法)
膨張の程度(膨張具合)については、各評価時点(試験開始後、5分、15分、30分経過後)において、サンプルを取り出して、冷えたのちにカットし、サンプルの表面や断面を見て膨張具合を評価した。評価結果を表1に示すが、「×」は熱膨張性黒鉛の膨張が見られなかったことを意味する。また、「△」は、サンプルの表面部分で、熱膨張性黒鉛の粒が膨張したが、サンプル内部の黒鉛では膨張が見られなかったことを意味している。また、「○」は、サンプルが全体にわたって膨張したことを示している。
形状の維持度合い(垂れ)については、初期状態では水平に橋渡しされたサンプルが、各評価時点において、初期形状から何mm垂れ下がった状態となったかで評価した。「○」は垂れ量が15mm以下であり、評価サンプルがやや垂れるよう変形しながらも、自己の形状をサンプルだけで保てたことを意味している。一方「×」は、垂れ量が15mmに達してしまい、垂れ下がった試験サンプルが支持部材と支持部材の間で試験台の上面に溶け落ちるように変形してしまい、試験サンプル単独では自己の形状を維持できなかったことを意味している。
Figure 0007046727000001
表1に示されたように、実施例1によれば、150℃の熱風であっても、15分ないし30分経過したころには、熱膨張性耐火材料が膨張し、耐火断熱機能を発揮しうる状態となったことがわかる。また、実施例1の試験サンプルは、30分経過時点でも、垂れ量が15mmに達せず、サンプルが単独で形状を維持できており、垂れの評価が○を維持できている。
比較例1のサンプルでは、実施例1と同様に、15分ないし30分経過したころには、熱膨張性耐火材料が膨張し、耐火断熱機能を発揮しうる状態となった。しかしながら、比較例1のサンプルは、実施例1に比べ垂れ量が大きく、加熱時間が30分に達する頃には、垂れ下がった試験サンプルが支持部材と支持部材の間で試験台の上面に溶け落ちるように変形してしまい、試験サンプル単独では自己の形状を維持できなかった。
比較例2及び比較例3のサンプルでは、15分ないし30分経過しても、熱膨張性耐火材料が膨張せず、耐火断熱機能を発揮しうる状態にはならなかった。また、比較例2及び比較例3のサンプルは、実施例1に比べ垂れ量が大きく、加熱時間が15分に達する頃には、垂れ下がった試験サンプルが支持部材と支持部材の間で試験台の上面に溶け落ちるように変形してしまい、試験サンプル単独では自己の形状を維持できなかった。
以上により、実施例1のサンプルが、高温の空気に曝された際に、膨張して耐火断熱性を発揮しながらも、熱膨張性耐火材料や耐火成形体が軟化/溶融しにくくなっており、熱膨張性耐火材料や耐火成形体が喪失しにくいことが確認できた。
本発明の熱膨張性耐火材料および耐火成形体は、防火区画を画成する壁や床に設けられた貫通穴にケーブルなどの長尺体が貫通する長尺体貫通部の防火処理に利用できる。
1 耐火成形体
11 貫通穴
12 ケーブル(長尺体)
2,3,4 耐火成形体

Claims (3)

  1. 熱可塑性樹脂と熱膨張性黒鉛を主成分として混練された熱膨張性耐火材料であって、
    膨張開始温度Teが135℃以下の熱膨張性黒鉛を含み、
    熱可塑性樹脂の融点Tmが、0℃<Te-Tm≦35℃を満たし、
    前記熱膨張性耐火材料を厚さ2.0mmの板状にプレス成形して、5mm×120mmの短冊状の試験サンプルを作成し、
    15mmx15mmの金属製角棒からなる2本の支持部材を、支持部材の間の距離が50mmとなるように配置し、
    前記試験サンプルを、水平に、前期支持部材の間に橋渡しするように支持し、
    常温でセットされた前記支持部材と前記試験サンプルを、150℃に加熱されたマッフル炉に入れて静置する評価試験を行い、
    初期形状からの垂れ下がりを評価試験開始から30分後に評価し、垂れ量が15mm以下である、
    熱膨張性耐火材料。
  2. 熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である
    請求項1に記載の熱膨張性耐火材料。
  3. 請求項1もしくは請求項2に記載の熱膨張性耐火材料が筒状もしくは板状に成形された耐火成形体。
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