JP7046539B2 - 保持パッド及びその搬送又は保管方法 - Google Patents

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Description

本発明は、保持パッド及びその搬送又は保管方法に関する。
従来、半導体デバイス、電子部品等の材料、特に、Si基板(シリコンウェハ)、GaAs(ガリウム砒素)基板、ガラスやLCD(液晶ディスプレイ)用基板等の薄型基板(被研磨物)の表面(加工面)では、平坦性が求められるため、研磨パッドをスラリーと共に用いる化学機械研磨加工が行われている。このような研磨加工、中でも片面研磨加工においては、被研磨物を保持するための保持パッドが使用されることがある。特に、大型の被研磨物に対応した大型の保持パッドとしては、大型の粘着材(例えば両面テープ)の入手が容易でないため、複数の粘着材を樹脂シートの片面に貼り付けた保持パッドが検討されている。
例えば、特許文献1には、大型のガラス基板等の大型の被研磨物の研磨を精度良く行うことができ且つ取り扱い性に優れた大型の研磨材固定用両面粘着テープ及びその製造方法を提供することを目的として、基材フィルムの両面に粘着剤層が積層一体化されてなる研磨材固定用両面粘着テープであって、上記基材フィルムは単一フィルムからなると共に、上記粘着剤層は、2以上の小幅粘着剤層部が上記基材フィルム上に並列することによって構成され、上記小幅粘着剤層部における対向する端面間の継ぎ目による隙間が形成されており、上記基材フィルムの一面に積層一体化されている上記粘着剤層の小幅粘着剤層部間に形成された隙間と、上記基材フィルムの他面に積層一体化されている上記粘着剤層の小幅粘着剤層部間に形成された隙間とが上記基材フィルムの厚み方向に重複していないことを特徴とする研磨材固定用両面粘着テープが開示されている。
特許第5640076号
まず、被研磨物を保持するための保持部を有する樹脂シートは、一般に軟質性の樹脂からなるため、外力を受けたときやその自重によって変形が生じやすい。特に、保持パッドを保管したり搬送したりする際には、樹脂シートに加えて粘着層及び離型シートをその順に備える保持パッドが捲回又は積層されており、保持パッド同士が押し付けあうこと等により、樹脂シートに圧力がかかる。ここで、保持パッドは、例えば大型の場合の保持パッドが、樹脂シートと、複数の粘着層と、複数の離型シートとをこの順に備え、かつ、複数の粘着層及び複数の離型シートをそれぞれ並べて配置することにより形成される隙間を有していることに起因して、樹脂シートに対する厚さ方向への圧力が、厚さ方向に隙間が存在する部分にはかかりにくく、隙間が存在しない部分にはかかりやすい。その結果、樹脂シートに、保持パッドに形成されている隙間によって変形することでスジが発生しやすい。そのような樹脂シートを備える保持パッドで被研磨物を保持して研磨すると、被研磨物の平坦化が不十分となる場合がある。
また、特許文献1に記載されるような両面粘着テープを備えた保持パッドを用いても、捲回又は積層した場合に、保持パッドに備えられる複数の粘着層及び複数の離型シートをそれぞれ並べて配置することにより形成される隙間を有していることに起因して、樹脂シートへの圧力の偏りを十分に抑制することができず、樹脂シートにスジが生じる場合がある。
そこで、本発明は、捲回又は積層される場合においても、樹脂シートに上記隙間に対応したスジが生じることを十分に抑制する保持パッドを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来技術の課題を解決すべく鋭意検討した結果、被研磨物を保持するための保持部を有する樹脂シートと、複数の第一粘着層と、複数の離型シートと、緩衝フィルムとを、この順に備える保持パッドであり、該保持パッドは、複数の第一粘着層及び複数の離型シートをそれぞれ並べて配置することにより形成される隙間を有し、緩衝フィルムは、該隙間の少なくとも一部を覆っている保持パッドを用いることで、捲回又は積層される場合においても、樹脂シートに上記隙間に対応したスジが生じることを十分に抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
被研磨物を保持するための保持部を有する1枚の樹脂シートと、複数の第一粘着層と、複数の離型シートと、緩衝フィルムとを、この順に備える保持パッドであり、
前記保持パッドは、前記複数の第一粘着層及び前記複数の離型シートをそれぞれ並べて配置することにより形成される隙間を有し、
前記緩衝フィルムは、前記保持パッドが捲回又は積層された際に、前記保持パッドの捲回又は積層によって前記樹脂シートの厚さ方向にかかる圧力が前記隙間を原因として偏在化することを緩衝するものであり、
前記緩衝フィルムの厚さが、0.2~2.0mmであり、
前記緩衝フィルムは、前記保持パッドが捲回又は積層された際に、少なくとも前記樹脂シートに接する前記隙間全体を覆っている、
保持パッド。
[2]
前記離型シートと前記緩衝フィルムとの間に、保護シートを更に備え、
前記保護シートは、前記隙間に埃が混入して前記第一粘着層の粘着力が低下することを抑制するために、前記保護シートの一部が前記離型シートに対して接合することにより前記隙間を覆うことができるものである、
[1]に記載の保持パッド。
[3]
下記式(1)を満たす、
[2]に記載の保持パッド。
0 < TA/TB ≦ 0.8 (1)
(式中、TAは、前記保護シートの厚さ分、前記樹脂シートを圧縮した際の圧縮応力を示し、TBは、前記保護シートの厚さ分、前記緩衝フィルムを圧縮した際の圧縮応力を示す。)
[4]
前記保持パッドが帯状である場合に、その幅が2000mm超であり、
前記保持パッドが矩形である場合に、少なくともその1辺が2000mm超であり、
前記保持パッドが円形又は略円形である場合に、その直径が2000mm超である、
[1]~[3]のいずれか一項に記載の保持パッド。
[5]
前記樹脂シートと前記第一粘着層との間に、複数の第二粘着層と、複数の基材とを、この順に更に備え、
前記保持パッドは、前記複数の第二粘着層、前記複数の基材、前記複数の第一粘着層、及び前記複数の離型シートをそれぞれ並べて配置することにより形成される隙間を有する、
[1]~[4]のいずれか一項に記載の保持パッド。
[6]
[1]~[5]のいずれかに記載の保持パッドを捲回又は積層して搬送又は保管する工
程を含む、
搬送又は保管方法。
本発明に係る保持パッドは、樹脂シートに上記隙間に対応したスジが生じることを十分に抑制することが可能である。
本実施形態に係る保持パッドの一例の一部を模式的に示す部分断面図である。 本実施形態に係る保持パッドの一例の一部を模式的に示す部分断面図である。 本実施形態に係る保持パッドの一例の緩衝フィルムの形態の一部を模式的に示す正面図である。 本実施形態に係る保持パッドの一例が捲回された形態の一部を模式的に示す斜視図である。 本実施形態に係る保持パッドの一例の保護シートの形態の一部を説明するための模式的な正面図である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明は下記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
本実施形態の保持パッドは、被研磨物を保持するための保持部を有する樹脂シートと、複数の第一粘着層と、複数の離型シートと、緩衝フィルムとをこの順に備える。また、複数の第一粘着層及び複数の離型シートをそれぞれ並べて配置することにより形成される隙間を有し、かつ、緩衝フィルムは、上記隙間の少なくとも一部を覆っている。このような保持パッドは、例えば、第一粘着層と、離型シートとを、この順に備える複数の両面テープ(例えば、ノンサポート型の両面テープ)を1枚の樹脂シートに貼り付け、更に緩衝フィルムを貼り付けることにより作製することができる。ここで、複数の第一粘着層及び複数の離型シートをそれぞれ並べる方向は、樹脂シートの面内方向であれば特に限定されない。
このような保持パッドが、樹脂シートに上記隙間に対応したスジが生じることを十分に抑制することができる要因は次のように考えている。ただし、要因はこれに限定されない。従来の保持パッドは、樹脂シートと、複数の粘着層と、複数の離型シートとをこの順に備え、かつ、複数の粘着層及び複数の離型シートをそれぞれ並べて配置することにより形成される隙間を有している場合がある。このような保持パッドでは、樹脂シートに対する厚さ方向への圧力が、厚さ方向に隙間が存在する部分にはかかりにくく、隙間が存在しない部分にはかかりやすい。一方、本実施形態の保持パッドは、それに備えられる緩衝フィルムが上記隙間の少なくとも一部を覆っていることにより、樹脂シートに対する厚さ方向への圧力が厚さ方向に隙間が存在する部分に対しても緩衝フィルムを介してかかりやすくなる。その結果、保持パッドに形成されている隙間に対応したスジが生じることが抑制される。
図1は、本実施形態に係る保持パッドの一例の一部を模式的に示す部分断面図である。保持パッド110は、ポリウレタン製樹脂シート112(以下、単に「樹脂シート112」という。)と粘着層114と離型シート118と緩衝フィルム122とをこの順に積層して含む。ただし、離型シート118及び緩衝フィルム122は、主として搬送又は保管の際に保持パッドの品質を維持するために備えられているものであり、被研磨物を保持するために使用する際には、離型シート118を粘着層114から剥離することにより、離型シート118及び緩衝フィルム122は容易に除去され得る。
本実施形態の保持パッドは、特に限定されないが、図1に示す態様とは異なる態様として、樹脂シートと第一粘着層との間に、複数の第二粘着層と、複数の基材とを、この順に更に備える。また、複数の第二粘着層、複数の基材、複数の第一粘着層、及び複数の離型シートをそれぞれ並べて配置することにより形成される隙間を有する。このような保持パッドは、例えば、第一粘着層と、基材と、第二粘着層と、離型シートとを、この順に備える複数の両面テープを1枚の樹脂シートに貼り付け、更に緩衝フィルムを貼り付けることにより作製することができる。ここで、複数の第二粘着層、複数の基材、複数の第一粘着層、及び複数の離型シートをそれぞれ並べる方向は、樹脂シートの面内方向であれば特に限定されない。
図2は、本実施形態に係る保持パッドの一例の一部を模式的に示す部分断面図である。保持パッド210は、ポリウレタン製樹脂シート112と粘着層114aと基材116と粘着層114b(以下、粘着層114a、114bをまとめて「粘着層114」ともいう。)と離型シート118と保護シート120と緩衝フィルム122とをこの順に積層して含む。樹脂シート112と基材116とは、粘着層114aを介して互いに接合されており、基材116と離型シート118とは、粘着層114bを介して互いに接合されている。ただし、離型シート118、保護シート120、及び緩衝フィルム122は、主として搬送又は保管の際に保持パッドの品質を維持するために備えられているものであり、被研磨物を保持するために使用する際には、離型シート118を粘着層114bから剥離することにより、離型シート118、保護シート120、及び緩衝フィルム122は容易に除去され得る。以下、図1及び図2に示す保持パッドについて、特に区別しない場合には、包括して説明する。
本実施形態に係る樹脂シート112の密度(かさ密度)は、25℃において0.15~0.30g/cm2であると好ましい。この密度が0.15g/cm2以上であることにより、樹脂シート112の永久歪みが生じ難くなり、また、0.30g/cm2以下であることにより、樹脂シート112の全体に亘って被研磨物をより均一に保持しやすくなる。これらの結果、樹脂シート112の密度が上記範囲にあることにより、研磨加工時に被研磨物が保持パッド110、210に対して面内方向にずれたり、研磨加工時の研磨ムラが発生したりすることを更に抑制することができる。
樹脂シート112の厚さは特に限定されないが、例えば、0.2~1.5mmであってもよく、0.6~1.2mmであってもよい。なお、樹脂シート112の厚さは、JIS K 6550(1994)に記載された測定方法に準拠して測定される。つまり、樹脂シート112の厚み方向に初荷重として1cm2当たり100gの荷重をかけた(負荷した)ときの厚さである。
樹脂シート112の長さは特に限定されないが、例えば保持パッド110、210が帯状である場合に、樹脂シート112の幅が2000mm超であってもよく、2500mm以上であってもよく、3000mm以上であってもよい。また、例えば保持パッド110、210が矩形である場合に、少なくとも樹脂シート112の1辺が2000mm超であってもよく、2500mm以上であってもよく、3000mm以上であってもよい。更に例えば保持パッド110、210が円形又は略円形である場合に、樹脂シート112の直径が2000mm超であってもよく、2500mm以上であってもよく、3000mm以上であってもよい。また、保持パッド110、210の長さについても、上記樹脂シート112の長さと同様である。ここで、保持パッドが矩形、円形又は略円形である形状は、より具体的には保持パッドの平面形状を示す。
樹脂シート112は、樹脂等のマトリックスを構成する材料(以下、「マトリックス材料」という。)中に複数の気泡(図示しない。)を有するものであり、所謂湿式成膜法により形成されたものであっても、乾式成型法により形成されたものであってもよいが、本発明の目的をより有効かつ確実に達成する観点から、好ましくは湿式成膜法により形成されたものである。樹脂シート112が湿式成膜法により形成されたものである場合、保持面P側に図示しない緻密な微多孔が形成されたスキン層を有していてもよい。スキン層の表面はミクロな平坦性を有している。一方、スキン層のより内側(樹脂シート112の内部)には、スキン層の微多孔よりも大きな孔径で樹脂シート112の厚さ方向に沿って丸みを帯びた断面三角状の空孔(連続気泡;図示しない。)が形成されていてもよい。その空孔は、保持面P側の大きさが、保持面Pと反対の面側よりも小さく形成されていてもよい。樹脂シート112には、スキン層の微多孔よりも大きく空孔よりも小さいサイズの孔(図示しない。)が形成されていてもよい。スキン層の微多孔、空孔及び小さいサイズの孔は互いに連通孔で網目状につながっていてもよい。
樹脂シート112を構成するマトリックス材料は、例えばポリウレタン樹脂を最も多く含む組成であり、ここで、樹脂シート112は、そのマトリックス材料の全体量に対して、ポリウレタン樹脂を80~100質量%含むものであってもよい。樹脂シート112は、その全体量に対して、ポリウレタン樹脂をより好ましくは85~100質量%含み、更に好ましくは90~100質量%含み、特に好ましくは90~95質量%含む。
ポリウレタン樹脂としては、例えば、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂及びポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中では、本発明の目的をより有効且つ確実に奏する観点から、ポリエステル系ポリウレタン樹脂が好ましい。
ポリウレタン樹脂は、常法により合成してもよく、市販品を入手してもよい。市販品としては、例えば、クリスボン(DIC(株)社製商品名)、サンプレン(三洋化成工業(株)社製商品名)、レザミン(大日本精化工業(株)社製商品名)が挙げられる。ポリウレタン樹脂は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
樹脂シート112は、ポリウレタン樹脂以外に、ポリサルホン樹脂及び/又はポリイミド樹脂などの他の樹脂を含んでもよい。ポリサルホン樹脂は、常法により合成してもよく、市販品を入手してもよい。市販品としては、例えば、ユーデル(ソルベイアドバンストポリマーズ(株)社製商品名)が挙げられる。ポリイミド樹脂は、常法により合成してもよく、市販品を入手してもよい。市販品としては、例えば、オーラム(三井化学(株)社製商品名)が挙げられる。
樹脂シート112は、樹脂以外に、本発明の課題解決を阻害しない範囲で、保持パッドの樹脂シートに通常用いられる材料、例えば、撥水剤、カーボンブラックなどの顔料、親水性添加剤及び疎水性添加剤の1種又は2種以上を含んでもよい。更には、樹脂シート112には、樹脂シート112の製造過程において用いられた溶媒などの各種の材料が、本発明の課題解決を阻害しない範囲で残存していてもよい。
樹脂シート112の保持部Pには微細気孔が存在していてもよい。微細気孔は、例えば、樹脂シート112の成膜時に、保持面(スキン層)に微細気孔を形成させる添加剤を添加することにより形成することができる。
図2に示す保持パッド210に備えられる基材116は、樹脂シート112を支持するためのものであり、特に限定されず、従来の保持パッドに基材として含まれるものであってもよい。基材116としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」という。)フィルムなどの樹脂フィルムが挙げられる。
粘着層114は、従来知られている保持パッドに用いられている接着剤又は粘着剤を含むものであってもよい。粘着層114の材料としては、例えば、アクリル系、ニトリル系、ニトリルゴム系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリエステル系等の各種粘着剤が挙げられる。
離型シート118は、保持パッド110、210を搬送又は保管する際に粘着層114、または114bが表面露出することを防止するための離型性を有するものであり、特に限定されず、従来の保持パッドに離型シートとして含まれるものであってもよい。離型シート118としては、例えば、シリコーン系又は非シリコーン系の離型剤を表面にコーティングした紙が挙げられる。
ここで、図2に示す保持パッド210における、粘着層114、基材116、及び離型シート118は、それらを備える両面テープ由来のものであってもよい。その両面テープは、基材116の両面に接着剤又は粘着剤を含む粘着層及び離型シートをそれぞれ有し、それぞれの粘着層が上記粘着層114a、114bに、一方の離型シートが上記離型シート118に相当する。他方の離型シートは、樹脂シート112に接着層114aを接合させる際に、剥離される。また、その両面テープは、1枚の樹脂シート112の一面に対して、2枚又は3枚以上の複数枚貼り付けて用いられており、貼り付けた複数枚の両面テープ由来の粘着層114、基材116、及び離型シート118の間には、微小な隙間Cが形成される。この隙間Cは、2枚の両面テープを貼り付ける位置を近づけすぎてしまうと、互いに重なってしまう場合があるため、ある程度の距離を置いて2枚の両面テープを貼り付けることにより形成されるものである。
隙間Cは、より具体的には溝形状であり、断面が矩形である。ただし、隙間Cは、貼り付ける両面テープの端部の形状によって、適宜変更が可能であり、例えば、断面が涙滴状や、矩形の両端からそれぞれ半円形又は略半円形を切り抜いた形状であってもよい。
緩衝フィルムは、保持パッドが捲回又は積層された際に、その捲回又は積層によって樹脂シートの厚さ方向にかかる圧力が上記隙間を原因として偏在化することを緩衝するものであれば、特に限定されず、公知のフィルムが用いられる。フィルムとしては、例えば、ウレタンシート、ポリエチレン等のスポンジフォーム、不織布、織布等が挙げられる。緩衝フィルムは、上記隙間の少なくとも一部を覆っていれば、保持パッドが捲回又は積層された際に、その捲回又は積層によって樹脂シートの厚さ方向にかかる圧力が上記隙間を起因として偏在化することを緩衝する。ただし、該偏在化を緩衝する効果をより高く得るためには、緩衝フィルムが隙間Cの全体を覆っていることが好ましい。緩衝フィルムが隙間Cの全体を覆っていることにより、隙間Cの全体に対して均一に上記偏在化を緩衝する効果を得ることができ、保持パッドに形成されている隙間に対応したスジが生じることがより抑制される。本明細書で、緩衝フィルムの「フィルム」は、可とう性を有する薄膜を意味する。
図3は、本実施形態に係る保持パッドの緩衝フィルムの形態の一部を模式的に示す正面図である。緩衝フィルム122は、隙間Cの開口面積よりも大きな面積を有しており、隙間Cの全体を超えて覆っているため、隙間Cの一部を覆っているよりも樹脂シート112に対する緩衝性がより高い。また、図4は、本実施形態に係る保持パッドが捲回された形態を模式的に示す斜視図である。保持パッドが捲回される方向は特に限定されないが、ここでは、離型シート118が外側、樹脂シート112が内側になるよう保持パッドが捲回されている。このように捲回されていることにより、保持パッドに対して外圧が直接樹脂シート112にかかりにくくなる。
緩衝フィルム122の厚さは特に限定されないが、例えば、0.2~2.0mmであってもよく、0.4~1.5mmであってもよい。なお、緩衝フィルム122の厚さは、JIS K 6550(1994)に記載された測定方法に準拠して測定される。つまり、樹脂シート112の厚み方向に初荷重として1cm2当たり100gの荷重をかけた(負荷した)ときの厚さである。
具体的な緩衝フィルム122として、例えば、湿式成膜法により作製された発泡構造を有するものであり、またその緩衝フィルムの各物性として、例えば、厚さが0.56mmであり、密度が0.21であり、圧縮率が44.3であり、弾性率が98.3であり、ショアA硬度が13である。このような緩衝フィルムを好適に使用することができる。
本実施形態の保持パッドは、離型シートと緩衝フィルムとの間に、保護シートを更に備えることが好ましい。保護シートは、上記隙間に埃等が混入して粘着層の粘着力が低下することを抑制するために、一部が離型シートに対して接合することにより上記隙間を覆うことができるシートであれば、特に限定されず、公知のテープが用いられる。保護シートは、隙間に埃等が混入することを抑制するため、一部が離型シートに接合している。よって、保護シートを更に備えた場合においても、その捲回又は積層によって樹脂シートの厚さ方向にかかる圧力が、上記隙間を起因として偏在化することは十分に抑制されない場合がある。しかし、緩衝フィルムは、隙間を覆う保護シートを介して、保持パッドが捲回又は積層された際に、その捲回又は積層によって樹脂シートの厚さ方向にかかる圧力が、上記隙間を起因として偏在化することを緩衝することができる。
図5は、本実施形態に係る保持パッドの保護シートの形態の一部を模式的に示す正面図である。保護シート120は、隙間Cの全体を覆っている。保護シート120を備えることにより、保護シートを介して離れた離型シート118同士が接合するため、保持パッドの使用時に一方の離型シート118を剥離することで、2つの離型シート118を容易かつ同時に剥離することができる。
保護シート120の厚さは特に限定されないが、例えば、0.03~0.1mmであってもよく、0.05~0.08mmであってもよい。なお、保護シート120の厚さは、JIS K 6550(1994)に記載された測定方法に準拠して測定される。つまり、樹脂シート112の厚み方向に初荷重として1cm2当たり100gの荷重をかけた(負荷した)ときの厚さである。
具体的な保護シート120として、例えば、厚さ25μmのポリエステルフィルム上にシリコーン系粘着層を積層し、全体の厚さとして55μmのものである。ここで、保護シート120は、特に限定されないが、シリコーン系粘着層側を離型シート118側に接し、ポリエステルフィルム側を緩衝フィルム122側に接するよう配置できる。
本実施形態の保持パッドは、下記式(1)を満たすことが好ましい。
0 < TA/TB ≦ 0.8 (1)
(式中、TAは、保護シートの厚さ分、樹脂シートを圧縮した際の圧縮応力を示し、TBは、保護シートの厚さ分、緩衝フィルムを圧縮した際の圧縮応力を示す。)
圧縮応力の比率(TA/TB)は、より好ましくは0.9以下であり、さらに好ましくは0.8以下であり、よりさらに好ましくは0.7以下である。圧縮応力の比率(TA/TB)が0.8以下であることにより、緩衝フィルムが保持パッドを捲回したときに保護シートから受ける応力を吸収することに起因して、樹脂シートにスジが生じることがより抑制される傾向にある。
圧縮応力(TA及びTB)の測定は、まず樹脂シート及び緩衝フィルムを構成する素材を、それぞれ12mm×12mm×15mmの矩形に切り出して試験片とし、当該試験片を例えば試験機(島津製作所製、マイクロオートグラフ、MST-I)の台上の中央に圧縮方向が15mmとなるよう設置し、さらに直径20mmの円形状の加圧板(平板)を0.1mm/minの速さで、0~8000gf/cm2の荷重を加えて、保護シートの厚さ分圧縮し、その際の応力を測定する。なお、試料片の圧縮方向の厚さが保護シートの5倍に満たない場合、複数枚試験片を重ねて、試料片の圧縮方向の厚さを保護シートの5倍以上に調整する。
本実施形態の搬送又は保管方法は、本実施形態の保持パッドを捲回又は積層して搬送又は保管する工程を含む。保持パッドは、例えば断面の直径が100~200mmとなるよう捲回することが取扱い性の観点から好ましく、長さが2000mmの保持パッドの場合に5~8回捲回、即ち2.5~4回転/m捲回して搬送又は保管される。
保持パッドを捲回又は積層する場合に、保持パッドの厚さ方向に対して、保持パッドが有する隙間が重なり合わないよう、隙間をずらして捲回又は積層することが好ましい。これにより、上記隙間を起因として偏在化することをより緩衝することができる。
次に、本実施形態の保持パッドの製造方法の一例について説明する。ここでは、樹脂シート112を湿式成膜法で作製する場合を説明するが、樹脂シート112の作製方法は、これに限定されない。この製造方法では、樹脂シート112を準備する工程と、樹脂シート112に粘着層114を接合して保持パッド210を得る工程とを有する。
樹脂シート112を準備する工程は、更に、樹脂と溶媒と必要に応じて添加剤とを含む樹脂溶液を調製する工程(樹脂溶液調製工程)と、樹脂溶液を成膜用基材の表面に塗布する工程(塗布工程)と、樹脂溶液中の樹脂を凝固再生して、前駆体シートを形成する工程(凝固再生工程)と、前駆体シートから溶媒を除去して樹脂シート112を得る工程(溶媒除去工程)と、樹脂シート112をバフ処理又はスライス処理により研削及び/又は一部除去する工程(研削・除去工程)とを有するものである。以下、各工程について説明する。
まず、樹脂溶液調製工程では、上述のポリウレタン樹脂などの樹脂と、その樹脂を溶解可能であって、後述の凝固液に混和する溶媒と、必要に応じて樹脂シート112にその他の材料(例えば、顔料、親水性添加剤及び疎水性添加剤、孔形成剤、撥水剤等)とを混合し、更に必要に応じて減圧下で脱泡して樹脂溶液を調製する。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」という。)及びN,N-ジメチルアセトアミドが挙げられる。樹脂溶液の全体量に対する樹脂の含有量は、特に限定されないが、例えば10~50質量%の範囲であってもよく、15~35質量%の範囲であってもよい。
次に、塗布工程では、樹脂溶液を、好ましくは常温下で、ナイフコータ等の塗布装置を用いて帯状の成膜用基材の表面に塗布して塗膜を形成する。このときに塗布する樹脂溶液の厚さは、最終的に得られる樹脂シート112の厚さが所望の厚さになるように、適宜調整すればよい。成膜用基材の材質としては、例えば、PETフィルムなどの樹脂フィルム、布帛及び不織布が挙げられる。これらの中では、液を浸透し難いPETフィルムなどの樹脂フィルムが好ましい。
次いで、凝固再生工程では、成膜用基材に塗布された樹脂溶液の塗膜を、樹脂に対する貧溶媒(例えばポリウレタン樹脂の場合は水)を主成分とする凝固液中に連続的に案内する。凝固液には、樹脂の再生速度を調整するために、樹脂溶液中の溶媒等の極性溶媒等の有機溶媒を添加してもよい。また、凝固液の温度は、樹脂を凝固できる温度であれば特に限定されず、例えば、15~65℃であってもよい。凝固液中では、まず、樹脂溶液の塗膜と凝固液との界面に皮膜(スキン層)が形成され、皮膜の直近の樹脂中に無数の緻密な微多孔が形成される。その後、樹脂溶液に含まれる溶媒の凝固液中への拡散と、樹脂中への貧溶媒の浸入との協調現象により、好ましくは連続気泡構造を有する樹脂の再生が進行する。このとき、成膜用基材が液を浸透し難いもの(例えばPETフィルム)であると、凝固液がその基材に浸透しないため、樹脂溶液中の溶媒と貧溶媒との置換がスキン層付近で優先的に生じ、スキン層付近よりもその内側にある領域の方に、より大きな空孔が形成される傾向にある。こうして成膜用基材上に前駆体シートが形成される。
次に、溶媒除去工程では、形成された前駆体シート中に残存する溶媒を除去して樹脂シート112を得る。溶媒の除去には、従来知られている洗浄液を用いることができる。また、溶媒を除去した後の樹脂シート112を、必要に応じて乾燥してもよい。樹脂シート112の乾燥には、例えば、内部に熱源を有するシリンダを備えたシリンダ乾燥機を用いることができるが、乾燥方法はこれに限定されない。シリンダ乾燥機を用いる場合、前駆体シートがシリンダの周面に沿って通過することで乾燥する。更に、得られた樹脂シート112をロール状に巻き取ってもよい。
次いで、研削・除去工程では、樹脂シート112の好ましくはスキン層側の反対側である裏面を、バフ処理又はスライス処理で研削及び/又は一部除去する。バフ処理やスライス処理により樹脂シート112の厚さの均一化を図ることができるため、被研磨物に対する押圧力を一層均等化し、被研磨物の損傷を更に抑制すると共に被研磨物の平坦性を向上させることができる。
次に、樹脂シート112に基材116を接合して保持パッド210を得る。この工程では、例えば基材116及び粘着層114を有する2枚の両面テープを用いて、それぞれ、1枚の樹脂シート112の保持部Pとは反対側の面上に粘着層114aを介して基材116を接合する。更に、その基材116の粘着層114aとは反対側に、2枚のそれぞれの両面テープの他方の粘着層114bと離形シート118とが備えられている。こうして、樹脂シート112の一面に対して、粘着層114a、基材116、粘着層114b、及び離形シート118が複数並べて配置するように積層され、並べて配置された間に隙間Cが形成される。その後、隙間Cに対して保護シート120を積層し、更に、緩衝フィルムをその上に置いて、保持パッド210が得られる。
以上、本実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記本実施形態に限定されるものではない。例えば、上記本実施形態では、樹脂シート112に粘着層114及び離型シート118を積層するために、基材116を用いているが、両面テープの代わりにノンサポート型粘着テープを用いて樹脂シート112に対して粘着層114及び離型シート118のみを積層してもよい。ただし、本発明の保持パッドは、保持パッドの取扱い性の観点から、基材を備えることが好ましい。また、両面テープの代わりにノンサポート型粘着テープ及び樹脂シート112と同じ大きさの基材を用いて、図2に示す保持パッド210において基材116のみ隙間Cを有しないように積層して保持パッドを作製してもよい。更に、保持パッドの製造方法において、研削・除去工程を省略してもよい。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
湿式成膜法により作製したポリウレタン製の1枚の樹脂シート(2500mm四方)の全面に対して、2枚の同じ大きさの両面テープをそれらの間に隙間を形成するように並べて貼りつけた。その後、厚さ0.055mmの保護シート(日立マクセル社製No.626050フィルム)、その保護シートよりも大きい緩衝フィルムの順に、2枚の両面テープの間に形成されている隙間を覆うように貼り付けて、図2、図3及び図5に示す保持パッドと同様の構成を有する保持パッドを作製した。なお、緩衝フィルムは湿式成膜法により作製されたポリウレタン製の樹脂であり、厚さが0.56mmであり、圧縮応力の比率(TA/TB)は0.8であった。
得られた保持パッドを図4に示す保持パッドと同様に捲回して24時間置き、その後目視にて保持パッドを確認したところ、樹脂シートに、両面テープの間に形成されている隙間に対応したスジは発生しておらず、その他の変形も生じていなかった。
(比較例1)
緩衝フィルムを用いない以外は、実施例1と同様にして保持パッドを確認したところ、樹脂シートに、両面テープの間に形成されている隙間に対応したスジが発生していた。
110、210…保持パッド、112…樹脂シート、114、114a、114b…粘着層、116…基材、118…離型シート、120…保護シート、122…緩衝フィルム、C…隙間、P…保持部。
本発明は、研磨加工分野の被研磨物の保持パッドとして産業上の利用可能性を有する。

Claims (6)

  1. 被研磨物を保持するための保持部を有する1枚の樹脂シートと、複数の第一粘着層と、複数の離型シートと、緩衝フィルムとを、この順に備える保持パッドであり、
    前記保持パッドは、前記複数の第一粘着層及び前記複数の離型シートをそれぞれ並べて配置することにより形成される隙間を有し、
    前記緩衝フィルムは、前記保持パッドが捲回又は積層された際に、前記保持パッドの捲回又は積層によって前記樹脂シートの厚さ方向にかかる圧力が前記隙間を原因として偏在化することを緩衝するものであり、
    前記緩衝フィルムの厚さが、0.2~2.0mmであり、
    前記緩衝フィルムは、前記保持パッドが捲回又は積層された際に、少なくとも前記樹脂シートに接する前記隙間全体を覆っている、
    保持パッド。
  2. 前記離型シートと前記緩衝フィルムとの間に、保護シートを更に備え、
    前記保護シートは、前記隙間に埃が混入して前記第一粘着層の粘着力が低下することを抑制するために、前記保護シートの一部が前記離型シートに対して接合することにより前記隙間を覆うことができるものである、
    請求項1に記載の保持パッド。
  3. 下記式(1)を満たす、
    請求項2に記載の保持パッド。
    0 < TA/TB ≦ 0.8 (1)
    (式中、TAは、前記保護シートの厚さ分、前記樹脂シートを圧縮した際の圧縮応力を示し、TBは、前記保護シートの厚さ分、前記緩衝フィルムを圧縮した際の圧縮応力を示す。)
  4. 前記保持パッドが帯状である場合に、その幅が2000mm超であり、
    前記保持パッドが矩形である場合に、少なくともその1辺が2000mm超であり、
    前記保持パッドが円形又は略円形である場合に、その直径が2000mm超である、
    請求項1~3のいずれか一項に記載の保持パッド。
  5. 前記樹脂シートと前記第一粘着層との間に、複数の第二粘着層と、複数の基材とを、この順に更に備え、
    前記保持パッドは、前記複数の第二粘着層、前記複数の基材、前記複数の第一粘着層、及び前記複数の離型シートをそれぞれ並べて配置することにより形成される隙間を有する、
    請求項1~4のいずれか一項に記載の保持パッド。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載の保持パッドを捲回又は積層して搬送又は保管する工程を含む、
    搬送又は保管方法。
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