JP7040137B2 - ドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルム - Google Patents

ドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルム Download PDF

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Description

本発明は、ドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルムに関するものである。
ドライフィルムレジスト(以下DFRと呼ぶ場合がある)は、プリント配線基板、半導体パッケージ、フレキシブル基板などの回路を形成するために用いられている。DFRは、感光層(フォトレジスト層)を、支持体としてのポリエステルフィルム上に積層させた後、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルムなどからなる保護フィルム(カバーフィルム)で挟んだ構造をしている。このDFRを用いて導体回路を作成するには、一般的に次のような工程で行われる。
1)DFRから保護フィルムを剥離し、露出したレジスト層の表面と、基板上の銅箔などの導電性基材層の表面とが密着するように、基板・導電性基材層とラミネートする工程。
2)次に、導体回路パターンを焼き付けたフォトマスクを、ポリエステルフィルムからなる支持体上に置き、その上から、感光性樹脂を主体としたレジスト層に紫外線を照射して、露光させる工程。
3)その後、フォトマスクおよびポリエステルフィルムを剥離した後、溶剤によってレジスト層中の未反応分を溶解、除去する工程。
4)次いで、酸などでエッチングを行い、導電性基材層中の露出した部分を溶解、除去する工程。
4)の工程の後には、レジスト層中の光反応部分とこの光反応部分に対応する導電性基材層部分がそのまま残り、その後、残ったレジスト層を除去する工程を経て、基板上の導体回路が形成されることになる。このため、支持体であるポリエステルフィルムには、紫外線を効率的に透過できることが要求される。これにより、導体回路パターンが、正確にレジスト層上に反映される。とくに近年では、IT機器など小型化、軽量化などに伴い、プリント配線板の微細化、高密度化が進んでおり、配線の幅や配線の間隔が5μm程度といった微細パターンを形成し、高解像化を達成できるドライフィルムレジスト支持体用ポリエステルフィルムが要求されている。また、支持体としてのポリエステルフィルムは、支持体上にレジスト層を形成してレジストフィルムを製造する際のハンドリング性を良好にするために、適度なすべり性を有することが重要であるが、適度なすべり性を付与するために易滑材としての粒子を含有させた場合、含有させた粒子が凝集し、露光工程時の紫外線照射の際、粒子による光散乱が透過、反射共に引き起こされ、レジストの解像度を低下させてしまうという問題が生じていた。
そこで、フィルムの表面を高平滑にして、かつヘイズ値を低くすることや、波長365nmにおける透過率を一定範囲内とすることを特徴とするドライフィルムレジスト支持体用ポリエステルフィルムが提案されている(特許文献1)。また、帯電防止剤の配合によりレジスト用ポリエステルフィルムを製造する際のハンドリング性、ゴミや異物の付着防止や、該フィルムを用いたレジストフィルム自身のハンドリング性、ゴミや異物の付着防止を向上させる技術が開示されている(特許文献2、3、4)。また、含有させる粒子を任意の製造段階で添加することにより分散性を改善し粒子の凝集を防止する技術が開示されている(特許文献5)。
特開2016-87854号公報 特開2001-117237号公報 特開2006-327158号公報 特開2007-254640号公報 特開2014-98136号公報
しかしながら、これらの提案でも、高解像度化の要求を満足することは難しく、現像後のレジストのパターニングにゆがみや、抜け、レジストパターン壁面の状態が悪いなどの欠点が十分に解消できず、特に、近年では配線の幅や配線の間隔が5μm程度といった微細パターンが要求されており、2μm程度の粗大物は、レジストの欠陥につながり、依然として、高解像度化への品質向上が求められている。粗大物を減らすために、ベースフィルムに含有させる粒子の凝集を防ぐために添加量を減らしたり、含有させる粒子のサイズを小さくした結果、すべり悪化により上記DFR製造工程で搬送中に金属と擦れ、摩擦帯電により環境塵埃を巻き込む上に、金属プレートに静電気で張り付きフィルム破れが発生し収率が低下する問題が発生している。
これら事情に鑑み、本発明は、一方の面に帯電防性能を持たせることで巻き込み塵埃とフィルム破れを改善した上に、帯電防止剤の金属触媒量を制限することで、帯電防止剤由来の金属触媒の粗大物形成を抑制し露光阻害への影響を低減することで、帯電防止性能に優れ、欠陥の少ないレジスト形成を達成することができる二軸配向ポリエステルフィルムを提供することを課題とする。
本発明は、以下の特徴を有する。
<1>少なくとも2層の積層構成を有し、一方の層に帯電防止剤含有ポリマーを含み、その表面(フィルム表面(A))について、フィルム厚み方向1μm×長手方向220μm×幅方向290μmの領域をレーザー顕微鏡により150視野観察したときに存在する長径2μm以上のボイドの数nAが3~30個であるドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルム。
<2>3層以上の積層構成を有し、フィルム表面(A)とは反対側の表面(フィルム表面(B))について、厚み方向1μm×長手方向220μm×幅方向290μmの領域をレーザー顕微鏡により150視野観察したときに存在する長径2μm以上のボイドの数nBが2個以下である、<1>に記載のドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルム。
<3>フィルム表面(A)について、フィルム厚み方向1μm×長手方向220μm×幅方向290μmの領域をレーザー顕微鏡により150視野観察したときに存在する長径2μm以上のボイドのうち、フィルム表面をプラズマ低温灰化処理で除去後、ボイドを形成している固形物を表面に露出させ、固形物を走査型電子顕微鏡(SEM)の倍率1,000倍で観察したとき、固形物が長径2μm以下で、かつ固形物をエネルギー分散型X線分光法(EDX)で元素分析を行ったときに、帯電防止剤由来の元素と金属触媒の元素とが検出されるボイドの個数nA’が1個以上である、<1>または<2>に記載のドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルム。
<4>フィルム表面(A)を構成する層(A層)について、体積平均粒子径0.3~0.5μmの粒子合計含有量が、0.01質量%以上0.1質量%未満である、請求項1~3のいずれかに記載のドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルム。
<5>フィルムヘイズが1.0%未満である、<1>~<4>のいずれかに記載のドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルム。
<6>フィルム表面(A)を構成する層(A層)のカルシウム元素含有量が20ppm(質量基準)以下である、<1>~<5>のいずれかに記載のドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルム。
本発明によれば、帯電防止剤由来の金属触媒の粗大物形成を抑制し露光阻害への影響を低減することで、帯電防止性能に優れ、欠陥の少ないレジスト形成を達成することができるドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルムを提供することができる。
本発明のドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルム(以下、単に「本発明の二軸配向ポリエステルフィルム」ということがある)は、少なくとも2層の積層構成を有しており、一方の層に帯電防止剤含有ポリマーを含み、この一方の層の表面(フィルム表面(A))について、レーザー顕微鏡によりフィルム厚み方向1μm×長手方向220μm×幅方向290μmの領域を150視野観察したときに存在する長径2.0μm以上のボイドの数nAが3~30個である。ボイドの数nAはより好ましくは3~25個、最も好ましくは3~20個である。なお、本発明におけるボイドとは、ポリエステルフィルム中に相溶せず存在する固形物を核として延伸工程を経て、その核の周囲に形成される空隙のことを指す。また、本発明でいうボイドの長径とは、後述する測定方法により観察されるボイドが最も長く測定される長さを指す。
上記したボイドの数nAが30個を超える場合、ボイドの核である固形物がフィルム表面に凹凸を形成し、フィルムによりレジスト面に転写される凹凸による露光工程での光の入射角が不均一になることによる光の反射や散乱の影響を受けやすい。また、ボイドはポリエステルフィルムと屈折率が大きく異なるため、レジスト面から照射された紫外光線がポリエステルフィルムとボイドの界面で反射や屈折の影響により、レジストパターンの抜けを生ぜしめることがある。
また、ボイドの数nAが3個未満の場合、露光照射側であるフィルム表面(A)で露光工程での光を適度に散乱させることができず、均一な露光照射を達成することが困難となり、ボイドの数nAが3個以上の場合と比べ、高精細なレジストパターンを形成できなくなることがある。
ボイドの数nAを上述の範囲とする方法は特に限定されるものではなく、ポリエステルフィルムに含有させる粒子種、粒子径を制御する方法や、溶融製膜時に用いる異物捕集フィルターのメッシュサイズを制御する方法などが挙げられる。例えば、共押出し法により溶融製膜して得る場合、フィルム表面(A)を構成する層(以降、フィルム表面(A)を構成する層をA層という場合がある)に対応する押出機に長径5μm以上の異物を95%以上捕集する高精度のものを用いることが有効である。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、上述の通りボイドの数nAを満たすことができれば、2層であっても3層以上であってもよいが、後述するように異なる粒径の粒子を含有させたA層とB層からなる2層以上の積層構造とすると、フィルム表面(A)とフィルム表面(B)について、ボイドの数nAやnBを制御することが容易になるため好ましい。さらには、高透明性を満足するために、A層とB層の間に実質的に粒子を含まない中間層(C層)を設け、A層/C層/B層の3層積層構造とすることが最も好ましい形態の一つである。表層部であるA層およびB層に含有する粒子種、平均粒子径、含有量は、異なってもよい。表層を構成するポリエステル層には、粒子を塗布工程にて添加してもよいが、粒子の分散性の観点から、粒子を含有するポリエステル樹脂組成物を用いて、共押出し法により溶融製膜して得ることが好ましい。
上記構成において、フィルムの表面を構成する層(A層、B層)の積層厚さはそれぞれ0.1μm以上3μm未満が好ましい。より好ましくは0.1μm以上2μm未満であり、更に好ましくは0.4μm以上1.8μm未満である。厚みが0.1μm未満の場合にはポリエステル層に添加した粒子の脱落が大きくなり、3μm以上になると前述したヘイズを達成するためには添加している粒子の平均径および添加量を更に減少させることが必要になり、加工特性との両立が難しくなる場合がある。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、一方の表面をフィルム表面(A)、もう一方の表面をフィルム表面(B)としたとき、フィルム表面(B)について、レーザー顕微鏡によりフィルム厚み方向1μm×長手方向220μm×幅方向290μmの領域を150視野観察したときの領域に存在する長径2.0μm以上のボイドの数nBは2個以下であることが好ましい。ボイドの数nBはより好ましくは1個以下、最も好ましくは0個である。なお、この場合のボイド、長径の意味は上述の通りである。
ボイドの数nBが2個を超える場合、ボイドの中心にある固形物によりフィルム表面に凹凸を形成し、フィルムによりレジスト面に転写される凹凸による露光工程での光の入射角が不均一になることによる光の反射や散乱の影響を受けやすい。また、ボイドはポリエステルフィルムと屈折率が大きく異なるため、レジスト面から照射された紫外光線がポリエステルフィルムとボイドの界面で反射や屈折を生じる影響によりレジストパターンの抜けを生ぜしめることがある。
フィルム表面におけるボイドの数を上述の範囲とする方法は特に限定されるものではなく、ポリエステルフィルムに含有させる粒子種、粒子径を制御する方法や、溶融製膜時に用いる異物捕集フィルターのメッシュサイズを制御する方法などが挙げられる。例えば、共押出し法により溶融製膜して得る場合、フィルム表面(B)を構成する層(以降、フィルム表面(B)を構成する層をB層という場合がある)に対応する押出機に長径2μm以上の異物を95%以上捕集する高精度のものを用いることが有効である。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、表面(A)からレーザー顕微鏡によりフィルム厚み方向1μm×長手方向220μm×幅方向290μmの領域を150視野観察したときの領域に存在する長径2μm以上のボイドのうち、フィルム表面をプラズマ低温灰化処理で除去後、ボイドを形成している固形物を表面に露出させ、固形物を走査型電子顕微鏡(SEM)の倍率1,000倍で観察したとき、固形物が長径2μm以下で、かつ固形物をエネルギー分散型X線分光法(EDX)を用いて元素分析を行ったときに、帯電防止剤由来の元素と金属触媒の元素とが検出されるボイドの個数nA’が1個以上であることが好ましい。
通常、フィルム表面をEDXで元素分析を行った際、帯電防止剤由来の元素は検出されず、一方でボイドを形成している固形物からEDXの元素分析で帯電防止剤由来の元素を確認できる場合が多いことから、固形物近傍に添加した帯電防止剤の凝集物が析出していると考えられる。そのため、ボイドの個数nA’が1個未満になると、A層の表面近傍で凝集する帯電防止剤が少なく、水分がフィルム表面に形成されず、製造工程中にフィルム表面に蓄積した電荷を逃がすことが困難となるため、巻き込み塵埃の増加やDFR製造工程で金属プレートとフィルムが貼り付きフィルム破れを発生させる場合がある。
また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、二軸配向していることが重要である。本発明における二軸配向とは、未延伸(未配向)フィルムを、常法により、二次元方向に延伸された状態(広角X線回折で二軸配向のパターンを示すもの)を指す。延伸は、逐次二軸延伸、同時二軸延伸を採ることができる。逐次二軸延伸は、長手方向(縦)および幅方向(横)に延伸する工程を、縦-横の1回ずつ実施することもできるし、縦-横-縦-横など、2回ずつ実施することもできる。
ポリエステルの原料となる芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、などがあり、特にテレフタル酸が好ましい。これらの酸成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよく、イソフタル酸など他の芳香族ジカルボン酸、あるいは脂肪酸を一部共重合してもよい。
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、などを挙げることができる。中でもエチレングリコールが好ましく用いられる。これらのジオール成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムに用いられるポリエステルとして、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびその共重合体、ポリブチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンナフタレートおよびその共重合体、さらにはポリヘキサメチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリヘキサメチレンナフタレートおよびその共重合体等を挙げることができ、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
本発明に使用するポリエステルは、従来から知られている方法で製造することができる。例えば、酸成分をジオール成分と直接エステル化反応させた後、この反応の生成物を減圧下で加熱して余剰のジオール成分を除去しつつ重縮合させることによって製造する方法や、酸成分としてジアルキルエステルを用い、これとジオール成分とでエステル交換反応させた後、上記と同様に重縮合させることによって製造する方法などが採用できる。この際、必要に応じて、反応触媒として従来公知のアルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガン、コバルト、亜鉛、アンチモン、ゲルマニウム、チタン化合物などを用いることもできる。
上記ポリエステルの固有粘度は下限0.5dl/g、上限 0.8dl/gが好ましい。さらに好ましくは下限0.55dl/g、上限0.70dl/gである。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルムの全厚みが10μm以上50μm未満であることが好ましい。特に好ましくは12μm以上40μm未満である。全厚みが10μm未満では、強度が不足し加工工程での取り扱いが難しくなることがあり、50μm以上では、ヘイズ値を本発明範囲内にすることが難しくなる場合があり、また、経済性も悪化する。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムにおいては、寸法変化率が以下の範囲内であると、DFR加工工程での熱収縮による歪みやシワの発生を抑制できるため好ましい。寸法変化率は、製膜条件における弛緩・熱処理等の条件を公知の方法により適宜調整することにより達成できる。150℃における寸法変化率は長手方向で3.0%以下、幅方向で2.5%以下が好ましく、長手方向で0.5%以上2.0%以下、幅方向で1.0%以上2.0%以下がさらに好ましい。また、100℃における寸法変化率は長手方向、幅方向ともに1.0%以下が好ましく、0.2%以上0.8%以下の範囲であるとさらに好ましい。該寸法変化率において上記範囲の下限を下回ると、レジスト層を塗布する際にタルミによる平面性不良が発生し、上限を上回ると、レジスト層を塗布する際に収縮によりトタン状に収縮斑が発生し平面性不良となり、いずれの場合もレジスト層の塗布厚みに斑を生じさせることがある。
また、長手方向のフィルムが5%伸張したときの強度(以降この値のことをF-5値と称する)は70MPa以上150MPa未満であることが好ましい。長手方向のF-5値が70MPa未満では強度不足により傷の発生などにより加工特性が悪くなる場合がある。一方、長手方向のF-5値が150MPa以上では幅方向のF-5値との両立が困難となる場合がある。長手方向のF-5値は、好ましくは、80MPa以上140MPa未満、さらに好ましくは90MPa以上130MPa未満である。
さらに、幅方向のF-5値が80MPa以上160MPa未満であることが好ましい。幅方向のF-5値が80MPa未満では強度不足による傷の発生などによる加工特性が悪くなる場合があり、160MPa以上では長手方向のF-5値との両立が難しくなる場合がある。好ましくは90MPa以上150MPa未満であり、さらに好ましくは100MPa以上140MPa未満である。また、長手方向の破断強度は200MPa以上360MPa未満であるのが好ましく、220MPa以上340MPa未満の場合がさらに好ましい。幅方向の破断強度については260MPa以上420MPa未満であるのが好ましく、特に好ましくは280MPa以上400MPa未満である。上記、F-5値および破断強度は縦方向および横方向の延伸温度、延伸倍率を適宜調整することで達成できる。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルムヘイズが1.0%未満であることが好ましい。フィルムヘイズが1.0%以上になると、ポリエステルフィルムにレジスト層を積層した後、紫外線を照射して露光するにあたりレジスト層の支持体であるポリエステルフィルムによる紫外光線の散乱が大きくなるため、現像後のレジストのパターニングにゆがみや、抜け、レジストパターン壁面の状態が悪化したり、ポリエステルフィルムの透過率を阻害する場合がある。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、粒子を含んでいてもよい。粒子としては、有機、無機の粒子を用いることができるが、有機系としては、例えば、ポリイミド系樹脂、オレフィンあるいは変性オレフィン系樹脂、架橋ポリスチレン系樹脂、シリコーン樹脂などを、無機系としては、例えば、酸化珪素、炭酸カルシウム、凝集アルミナ、珪酸アルミニウム、マイカ、クレー、タルク、硫酸バリウムなどを挙げることができる。これらの粒子の採用にあたっては、光線透過率およびヘイズ値の上昇を抑制するため、粒子表面を界面活性剤などで表面改質し、ポリエステルとの親和性を改善する方法が添加粒子周辺でのボイド発生を抑制する点で好ましく採用できる。また、粒子形状が球状に近く、さらに、ポリエステルとの屈折率の差が少ない方が、フィルム層内を紫外線が通過時の散乱光を抑制することができ好ましく、コロイダルシリカ、有機粒子がとくに好ましく、さらに、シリコーン粒子、架橋ポリスチレン粒子が好適である。中でも、乳化重合で調整された、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体からなる架橋ポリスチレン粒子は粒子形状が真球に近く、粒子径分布が均一であり、均一な突起形成を図ることが可能で好ましい。スチレン-ジビニルベンゼン共重合体からなる架橋ポリスチレン粒子は表層(A層、B層)を構成するポリエステル樹脂組成物に含有させることが好ましい。
前記A層、B層とも、前記した粒子とともに、凝集アルミナを併用することも望ましい形態のひとつである。ここで、凝集アルミナは、平均一次粒子径が5nm以上30nm未満の粒子が数個から数百個凝集したものを表す。凝集アルミナの平均一次粒子径は、8nm以上15nm未満の平均一次粒子径であることがより好ましい。当該凝集アルミナは、無水塩化アルミニウムを原料として火焔加水分解法、あるいはアルコキシドアルミナの加水分解などによって製造されたものが採用できる。凝集アルミナは、結晶型としてδ(デルタ)型、θ(シータ)型、γ(ガンマ)型などが知られているが、とくにδ(デルタ)型アルミナが好適に使用できる。これらの凝集アルミナについて、ポリエステル重合時に添加することで使用に供せるが、例えば、ポリエステル重合時の原料の一部であるエチレングリコールのスラリーとして、サンドグラインダーなどの粉砕、分散を行い、精密濾過を行うことによって、平均二次粒子径が0.01μm以上0.2μm未満の凝集アルミナを得ることができる。このようにして得られた凝集アルミナをフィルム中に添加した場合、二軸延伸によって、面方向に配置されるため、実質的突起を形成せず、表面粗さへの影響が少なく、また、透過性が良いため、光線透過率およびヘイズ値の劣化を抑制できる。凝集アルミナを含有せしめることにより、フィルム表面の地肌補強効果が大きく得られ、耐摩耗性が向上し、延伸時のロールとの接触時に発生する凹み欠点を抑制するという効果が得られる。
凝集アルミナは表層(A層、B層)を構成するポリエステル樹脂組成物に含有させることが好ましく、その含有量はポリエステル樹脂組成物全体に対して0.1質量%以上5質量%未満が好ましい。含有量が0.1質量%を下回る場合、レジスト塗布工程にてハンドリング性が悪化し、塗布が不安定となり、塗布斑が発生することや、塗布後の巻き取り時に、噛み込んだ空気が抜けにくくなることによる、巻きズレを起こすことがある。含有量が5質量%以上の場合、凝集アルミナ同士がさらに凝集しやすい傾向となり、露光工程での光の入射角が不均一になることによる光の反射や散乱の影響により、レジストパターンの抜けが生じることがある。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルム表面(A)を構成するポリエステル層(A層)が、体積平均粒子径DAが0.3μm未満の粒子Aと、体積平均粒子径DBが0.3μm以上0.5μm未満の粒子Bを含む2種類以上の粒子を含むことが好ましい。フィルム表面(B)においては、体積平均粒子径DAが0.3μm未満の粒子AがB層に含まれていることが好ましい。
上記の体積平均粒子径とは、後述する方法で求められる粒子の円相当径のデータの大きい方からの上位2%の中間値を表す。フィルム表面(B)の上に、レジスト層が積層される場合、B層に含有する粒子によって露光工程で照射される光の反射や散乱の影響を受け、レジスト層の形成に影響を与える。B層に含まれる粒子の体積平均粒子径が0.3μm以上の場合、粒子による影響がレジストパターンを形成する際のノイズとなり、レジストパターンの欠けを誘発することがある。
また、表面(A)はレジスト層と反対面を構成することになるが、A層に含有する粒子によって露光工程で照射される光の反射や散乱の影響を受けるとレジスト層の形成に影響を与える。A層に含まれる粒子の体積平均粒子径が0.5μm以上の場合、粒子による影響がレジストパターンを形成する際のノイズとなり、レジストパターンの欠けを誘発する場合がある。また、A層に含まれる粒子の体積平均粒子径が0.3μm未満では、レジスト塗布工程にてハンドリング性が悪化し、塗布が不安定となり、塗布斑が発生しやすい。また、塗布後の巻き取り時に、噛み込んだ空気が抜けにくくなることにより、巻きズレを起こすことがある。さらに具体的には、A層において、粒子Aとして凝集アルミナを、粒子Bとして架橋ポリスチレン粒子とを併用して含有させることにより、後述する帯電防止剤添加により悪化したすべり性を著しく向上させることが可能となる。
また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムのA層に含まれる添加粒子の体積平均粒子径が0.3μm以上0.5μm以下の粒子の合計含有量は、A層を構成するポリエステル樹脂組成物全体に対して0.01質量%以上0.1質量%未満であることが好ましい。合計含有量が0.01質量%を下回る場合、レジスト塗布工程にてハンドリング性が悪化し、塗布が不安定となり、塗布斑が発生することがある。また、塗布後の巻き取り時に、噛み込んだ空気が抜けにくくなることにより、巻きズレを起こすことがある。合計含有量が0.1質量%以上の場合、粒子同士が凝集しやすい傾向となり、延伸されると凝集した粒子を核としてボイド(空隙)を形成し、レジスト面から照射された紫外光線がポリエステルフィルムとボイドの界面で反射や屈折の影響により、レジストパターンの抜けが生じることがある。
本発明のドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルムのA層には、帯電防止剤を含有するポリマーが含まれている。A層を構成するポリマーに帯電防止剤を含有させることにより、レジスト用ポリエステルフィルムを製造する際の取り扱い性、ゴミや異物の付着防止や、該フィルムを用いたレジストフィルム自身の取り扱い性、ゴミや異物の付着防止を向上させることができる。また、DFRベースフィルムの走行面が製造工程にて金属プレートに接触時、静電気貼り付きによるフィルム破れを抑え生産性を向上させることが可能となる。
上記帯電防止剤は、帯電防止性を付与する目的で使用される化合物であり、スルホン酸塩基を有する不飽和単量体(例えば、ビニルスルホン酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウムなど)の1種以上の重合体からなる高分子型帯電防止剤や、アルキルスルホン酸塩(例えば、ペンタンスルホン酸ナトリウム、オクタンスルホン酸ナトリウムなど)、アリールスルホン酸塩(例えば、ベンジルスルホン酸ナトリウム、トルイルスルホン酸ナトリウムなど)、アルキル基を有する芳香族スルホン酸塩(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなど)の低分子型帯電防止剤などが挙げられる。
上記帯電防止剤は、押出機中でポリエステル層に練り込まれても、バインダー樹脂とともに塗布により積層させてもよいが、塗布方式で帯電防止剤を積層させた場合、塗布層の工程内でのロールなどでの削れによる帯電防止性能の消失や、裏面(レジスト面)への帯電防止剤成分裏移りによるレジストのパターニングでの不具合(ゆがみ、欠け、抜け)が発生することがあるため、押出機中でポリエステル層に練り込まれて適用される態様が好ましい。塗布方式で帯電防止剤を積層させた場合、削れ物の堆積による工程汚染、搬送ロールの白化等を招きやすい。
A層に含有させる上記帯電防止剤の含有量は、A層のポリエステルに対し、0.5質量%以上0.9質量%以下であり、より好ましくは、0.7質量%以上0.9質量%以下である。帯電防止剤の含有量が2質量%を超えると、本発明のドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルムにおけるヘイズが高くなることや、ブロッキングなどによりすべり性が著しく悪化し、取り扱い性が低下することがある。一方、帯電防止剤の含有量が0.5質量%未満だと、帯電防止性が不十分となる。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムのA層に含まれるカルシウム元素の含有量は20ppm(質量基準、以下同じ)以下であることが好ましい。好ましい含有量は15ppm以下、より好ましくは10ppm以下である。カルシウムがポリエステル中で形成する粒子は、マグネシウム等が形成させる粒子と比較してポリエステルへの溶解度が低く、微量でも粗大な異物を形成しやすいことから、カルシウム元素の含有量を規定量以下とすることにより、粗大な異物の発生を抑制することが可能となる。カルシウム元素の含有量が20ppmを超えると、ポリエステル樹脂組成物中の粗大な異物が増加し、延伸工程で金属触媒を核としたボイドを形成し、ポリエステルフィルムとボイドは屈折率が大きく異なるため、レジスト面から照射された紫外光線がポリエステルフィルムとボイドの界面で反射や屈折を生じて、レジストパターン抜けが生じることがある。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムのA層に含まれるマグネシウム元素の含有量は10~80ppmであることが好ましい。好ましい含有量は15~60ppm、より好ましくは20~40ppmである。マグネシウム元素を上記の範囲で含有することにより、粗大な異物およびアルデヒドの発生を抑制することが可能となり、かつ製膜性が良好となる。10ppm未満では、フィルム化においてキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化させる際に、静電印加性が不足するため、キャストドラムへの密着が不良となり、製膜性が悪化することがある。80ppmを超えると、マグネシウム元素が粗大な異物を形成し、またポリエチレングリコールの分解が促進され、アルデヒドの発生量が増加する傾向にある。
本発明のドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルム表面(A)の表面比抵抗値が1.0×1013Ω/□以下であることが好ましい。さらには、フィルム表面(A)の表面比抵抗値が1.0×1012Ω/□以下であることが好ましく、1.0×1011Ω/□以下であることがより好ましい。フィルム表面(A)の表面比抵抗値が1.0×1013Ω/□を超える場合は、フィルム表面の帯電が多くなり、レジスト用ポリエステルフィルムを製造する際の取り扱い性悪化、ゴミや異物の付着が増大することや、該フィルムを用いたレジストフィルム自身の取り扱い性悪化、ゴミや異物の付着が増大することがある。
フィルム表面(A)の表面比抵抗値を上述の範囲とするには、押出機中でポリエステル層のA層のみに帯電防止剤を練り込ませることが有効である。
次に本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法について説明する。
共押出し法による溶融製膜におけるポリエステルに不活性粒子を含有せしめる方法としては、例えばジオール成分であるエチレングリコールに不活性粒子を所定割合にてスラリーの形で分散せしめ、例えば長径2μm以上もしくは長径5μm以上の粗大粒子を95%以上捕集できる高精度濾過を行った後、このエチレングリコールスラリーをポリエステル重合完結前の任意段階で添加する。ここで、粒子を添加する際には、例えば、粒子を合成時に得られる水ゾルやアルコールゾルを一旦乾燥させることなく添加すると粒子の分散性が良好であり、粗大突起の発生を抑制でき好ましい。また粒子の水スラリーを直接、所定のポリエステルペレットと混合し、ベント方式の2軸混練押出機に供給しポリエステルに練り込む方法も本発明の効果に有効である。
このようにして、各層のために準備した、粒子含有マスターペレットと粒子などを実質的に含有しないペレットを所定の割合で混合し、乾燥したのち、公知の溶融積層用押出機に供給する。本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの製造における押出機は、1軸、2軸の押出機を用いることができる。また、ペレットの乾燥工程を省くために、押出機に真空引きラインを設けた、ベント式押出機を用いることもできる。また、中間層を設ける場合には、最も押出量が多くなるため、ペレットを溶融する機能と、溶融したペレットを一定温度に保つ機能をそれぞれの押出機で分担する、いわゆるタンデム押出機を用いることができる。本発明の二軸配向ポリエステルフィルムにおける表面を構成する層の押し出しには、二軸式ベント式押出機を用いることが、粒子の分散性を良好に保ち、粒子の凝集を抑制することができるため好ましい。
押出機で溶融して押出したポリマーは、フィルターにより濾過する。ごく小さな異物もフィルム中に入ると粗大突起欠陥となるため、フィルターには例えば長径2μm以上もしくは長径5μm以上の異物を95%以上捕集する高精度のものを用いることが有効である。続いてスリット状のスリットダイからシート状に押し出し、キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸フィルムを作る。すなわち、複数の押出機、複数層のマニホールドまたは合流ブロック(例えば矩形合流部を有する合流ブロック)を用いて積層し、口金からシートを押し出し、キャスティングロールで冷却して未延伸フィルムを作る。この場合、背圧の安定化および厚み変動の抑制の観点からポリマー流路にスタティックミキサー、ギヤポンプを設置する方法は有効である。
延伸方法は同時二軸延伸であっても逐次二軸延伸であってもよい。逐次延伸の場合、最初の長手方向の延伸が重要であり延伸温度は好ましくは90℃以上130℃未満、更に好ましくは100℃以上125℃未満である。延伸温度が90℃未満になるとフィルムが破断しやすく、延伸温度が130℃以上になるとフィルム表面が熱ダメージを受けやすくなる。また、延伸ムラ、およびキズを防止する観点からは延伸は2段階以上に分けて行うことが好ましく、トータル倍率は長さ方向に好ましくは3倍以上4.5倍未満、更に好ましくは3.5倍以上4.3倍未満であり、幅方向に好ましくは3.2倍以上5倍未満、更に好ましくは4.0倍以上4.6倍未満である。目標とするフィルムの破断強度を達成するため、適時倍率を選択できる。かかる温度、倍率範囲を外れると延伸ムラあるいはフィルム破断などを生じやすくなる。再縦延伸または横延伸した後、好ましくは200℃以上230℃未満、更に好ましくは210℃以上230℃未満で好ましくは0.5秒以上20秒未満、更に好ましくは1秒以上15秒未満の熱固定を行う。特に熱固定温度が200℃未満になるとフィルムの結晶化が進まないために構造が安定せず、目標とする熱収縮率などの特性が得られにくくなる。その後、長手及び/又は幅方向に0.1%以上7.0%未満の弛緩処理を施すことが好ましい。
延伸ロールを用いて延伸する場合、延伸ロールの表面粗さRaは、好ましくは0.005μm以上1μm未満、より好ましくは0.1μm以上0.6μm未満である。Raが1μm以上だと延伸時ロール表面の凸凹がフィルム表面に転写する場合がある。一方0.005μm未満だとロールとフィルム地肌が粘着し、フィルムが熱ダメージを受けやすくなる。延伸ロールの表面粗さを制御するためには、延伸ロールを研磨する研磨剤の粒度や、延伸ロールを研磨する回数などを適宜調整することが有効である。とくに延伸ロールについては、フィルム表面の凹み欠点の原因と懸念されるポリエステルの分解物、オリゴマーの付着、蓄積を回避するため、延伸ロールの研磨の回数を高くすることが好ましい。
さらに、延伸部におけるロールとフィルムのトータルの接触時間は好ましくは0.1秒未満、更に好ましくは0.08秒未満にすることがフィルムを製造する上で特に有効である。延伸ロールとフィルムの接触時間が0.1秒以上だと、延伸ロールの熱によりフィルム表面のみが局所的に加熱され、引いては熱負荷時の微小平面性悪化を引き起こすことがあり、あるいは、フィルムに傷を発生する場合がある。接触時間を短くする方法としては、例えばフィルムを延伸ロールに巻き付けず、ニップロール間で平行に延伸する方法が有効である。
二軸延伸後のフィルムは、搬送工程にて冷却させた後、エッジを切断後巻取り、中間製品を得る。この搬送工程にて、フィルムの厚みを測定し、該データをフィードバックして用いてダイ厚みなどの調整によってフィルム厚みの調整を行い、また、欠点検出器による異物検知を行う。
エッジの切断時には、切粉の発生を抑制することが、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムにおいて好ましい。エッジの切断は丸刃、シェアー刃、ストレート刃を使用して行うが、ストレート刃を用いる場合は、刃がフィルムに当たる箇所を、常に同じ箇所にさせないことが、刃の摩耗を抑制できるため好ましい。このため刃を上限までオシレーションする機構を有することが好ましい。また、フィルム切断箇所に吸引装置を設けて、発生した切り粉や、切断後のフィルム端部同士が削れて発生する削れ粉を吸引することが好ましい。
中間製品はスリット工程により適切な幅・長さにスリットして巻き取り、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムのロールが得られる。スリット工程におけるフィルムの切断時も、先述のエッジの切断と同様な切断の方式から選定できる。
中間製品を所望の幅にスリットを行い、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを得る。こうして得られる本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、良好な透過性、すべり性を有するため、ドライフィルムレジスト支持体用に好適に用いることができる。
以下実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定して解釈されるものではない。
(測定方法)
(1)粒子の体積平均粒子径
フィルム表面を構成する層については次のように測定する。フィルムからポリマーをプラズマ低温灰化処理法で除去し、粒子を露出させる。処理条件は、ポリマーは灰化されるが粒子は極力ダメージを受けない条件を選択する。処理後の試料を走査型電子顕微鏡(SEM;株式会社日立製作所製 S-4000型)で観察し、粒子画像をイメージアナライザ(株式会社ニレコ製 LUZEX_AP)に取り込み、等価円相当径を測定し、粒子の体積平均粒子径を求める。SEMの倍率は粒子径により、5,000~20,000倍から適宜選択する。任意に観察箇所をかえて、少なくとも粒子数5,000個の粒子の等価円相当径を測定する。
フィルム表面を構成しない層については、フィルム断面を透過型電子顕微鏡(TEM;株式会社日立製作所製H-600型)を用いて、粒子径により、3,000~20,000倍で観察する。TEMの切片厚さは約100nmとし、場所を変えて1,000個の粒子の等価円相当径を測定し、測定した等価円相当径データの大きい方から上位2%の粒子の等価円相当径の中間値から体積平均粒子径を求める。
なお、粒子の体積平均粒子径を測定する際に、SEMおよびTEMで観察した際に5,000倍で10視野確認しても、粒子が認められなかった場合には、粒子を実質的に含有しないと判断する。
(2)フィルムのヘイズ
JIS K7105-1981に準じ、フィルム幅方向の中央部から、長手4.0×幅3.5cmの寸法に切り出したものをサンプルとし、ヘイズを、ヘイズメータ(スガ試験機製HGM-2DP(C光源用))を用いて測定する。
(3)フィルム表面(A)のボイドの数nAおよびフィルム表面(B)のボイドの数nB
二軸配向ポリエステルフィルムを5cm×5cmに切り出し、レーザー顕微鏡(キーエンス製VK-X250)で50倍の対物レンズを用いてフィルム表面(A)およびフィルム表面(B)について、フィルム表面から深さ方向1μm(レーザー顕微鏡のレンズの位置を深さ方向に調節)×長手方向220μm×幅方向290μmの画像を取り込む。取り込んだ画像を閾値43000で2値化処理し、粒子解析モジュール(キーエンス製VK-H1XG)を用いて長径2μm以上の粗大物の数を計測した。同様の作業を150視野行い、その合計を求めた。ここで、フィルム表面(A)について観測された150視野分のボイドの合計数をnAとし、同様にフィルム表面(B)についてnBとした。
(4)上記した(3)記載のフィルム表面(A)からレーザー顕微鏡によりフィルム厚み方向1μm×長手方向220μm×幅方向290μmの領域を150視野観察したときに存在する長径2μm以上のボイドのうち、フィルム表面をプラズマ低温灰化処理で除去後、ボイドを形成している固形物を表面に露出させ、固形物が走査型電子顕微鏡(SEM)の倍率1,000倍で観察し、長径2.0μm以下で、かつ固形物をEDXで元素分析を行い、帯電防止剤由来の元素と金属触媒の元素を検出したボイドの数を合計した値をnA’とした。
(5)表面比抵抗
試料を温度23℃、相対湿度65%で24時間放置して調湿した後、同条件下でデジタル超高抵抗/微小電流計(アドバンテスト製R8340A)を用い、印加電圧100Vで測定を行った。単位はΩ/□であり、この値が小さいものほど、帯電防止性能が良好である。
(6)フィルムの元素の含有量
蛍光X線元素分析装置(堀場製作所社製、MESA-500W型)を用いて、各元素に対する蛍光X線強度を求め、あらかじめ作成しておいた検量線より求めた。
(7)レジスト解像度の目視検査
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムにおけるレジストの解像度の目視評価方法は、以下のような手順で行った。
(i)片面鏡面研磨した6インチSiウエハー上に、東京応化(株)製のネガレジスト“PMER N-HC600”を塗布し、大型スピナーで回転させることによって厚み7μmのレジスト層を作製した。次いで、窒素循環の通風オーブンを用いて70℃の温度条件で、約20分間の前熱処理を行った。
(ii)ポリエステルフィルムのA層側表面をレジスト層と接触するように重ね、ゴム製のローラーを用いて、レジスト層上にポリエステルフィルムをラミネートし、その上に、クロム金属でパターニングされたフォトマスクを配置し、そのフォトマスク上からI線ステッパーを用いて露光を行った。
(iii)レジスト層からポリエステルフィルムを剥離した後、現像液N-A5が入った容器にレジスト層を入れ約1分間の現像を行った。その後、現像液から取り出し、水で約1分間の洗浄を行った。
(iv)現像後に作成されたレジストパターンのL/S(μm)(Line and Space)の状態を走査型電子顕微鏡SEMを用いて1,000倍率で観察した。レジストの解像度の評価は、以下の基準に従った。なお、○以上の評価が実用可能レベルとなる。
◎:L/S=8/8μmが明確に確認できる。
○:L/S=8/8μmは明確に確認できないが、L/S=10/10μmは明確に確認できる。
△:L/S=10/10μmは明確に確認できないが、L/S=15/15μmは明確に確認できる。
×:L/S=15/15μmが明確に確認できない。(生産適用不可)。
(8)レジストフィルムの取り扱い性(帯電性評価)
上記評価(7)で作製したレジストフィルムの製造時の取り扱い性として帯電性の評価は、以下の基準に従った。なお、○以上の評価が実用可能レベルとなる。
○:帯電が生じず、取り扱い性が良好。
△:帯電が生じ、取り扱い性に劣る。
×:帯電が生じ、取り扱い不可(生産適用不可)。
(原料)
(ポリエステルAの作成)
テレフタル酸86.5質量部とエチレングリコール37.1質量部を255℃で、水を留出しながらエステル化反応を行う。エステル化反応終了後、トリメチルリン酸0.02質量部、酢酸マグネシウム0.06質量部、酢酸リチウム0.01質量部、三酸化アンチモン0.0085質量部を添加し、引き続いて、減圧下、290℃まで加熱、昇温して重縮合反応を行い、固有粘度0.63dl/gのポリエステルペレットを得た(ポリエステルA)。
(ポリエステルB、Cの作成)
さらに別に、モノマーを吸着させる方法によって得た体積平均粒子径0.3μm、体積形状係数f=0.51のジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子の水スラリーを、上記の実質的に粒子を含有しないホモポリエステルペレットに、ベント式二軸混練機を用いて含有させ、体積平均粒子径0.3μmのジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子をポリエステルに対し2質量%含有するマスターペレットを得た(ポリエステルB)。
体積平均粒子径0.45μmのジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子含有マスターペレットは、ポリエステルに対しそれぞれ1質量%含有するマスターペレットを同様にして得た(ポリエステルC)。
(ポリエステルDの作成)
さらに、凝集アルミナとしてδ型-アルミナを10質量%含有するエチレングリコールスラリーを用意し、サンドグラインダーを用い、粉砕、分散処理を行い、さらに捕集効率95%の長径3μmフィルターを用いて濾過し、これを前記と同様に調整したエステル交換反応物に添加し、引き続き三酸化アンチモンを加え、重縮合反応を行い、凝集アルミナを2質量%含有する、固有粘度0.62dl/gのマスターペレットを得た(ポリエステルD)。
(ポリエステルEの作成)
上記と同様にポリエステルを製造するにあたり、エステル交換後、体積平均粒子径0.2μm、体積形状係数f=0.51、体積平均粒子径0.06μm、体積形状係数f=0.51、モース硬度7の球状シリカをそれぞれ添加し、重縮合反応を行い、粒子をポリエステルに対し1質量%含有するシリカ含有マスターペレットを得た(ポリエステルE)。なお、用いる球状シリカは、エタノールとエチルシリケートとの混合溶液を攪拌しながら、この混合溶液に、エタノール、純水、および塩基性触媒としてアンモニア水からなる混合溶液を添加し、得られた反応液を攪拌して、エチルシリケートの加水分解反応およびこの加水分解生成物の重縮合反応を行なった後に、反応後の攪拌を行い、単分散シリカ粒子を得た(ポリエステルE)。
(ポリエステルFの作成)
テレフタル酸86.5質量部とエチレングリコール37.1質量部を255℃で、水を留出しながらエステル化反応を行った。エステル化反応終了後、トリエチルホスホノアセテート0.069質量部、酢酸カルシウム0.09質量部、三酸化アンチモン0.03質量部、帯電防止剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)6質量部、ポリエチレングリコール(数平均分子量:4,000)8.4質量部を添加し、引き続いて、減圧下、290℃まで加熱、昇温して重縮合反応を行い、固有粘度0.62dl/gの帯電防止剤含有ペレットを得た(ポリエステルF)。
(ポリエステルGの作成)
添加した酢酸カルシウムの質量部を0.055に変更した点を除いて、上記ポリエステルとFと同様の製造方法で作成を行い、帯電防止剤含有マスターペレットを得た(ポリエステルG)。
(ポリエステルHの作成)
添加した酢酸カルシウムを酢酸マグネシウム質量部を0.06に変更した点を除いて、上記ポリエステルとFと同様の製造方法で作成を行い、帯電防止剤含有マスターペレットを得た(ポリエステルH)。
(ポリエステルIの作成)
添加した酢酸カルシウムを酢酸マグネシウム質量部を0.06に変更した点と添加した帯電防止剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)質量部を13に変更した点を除いて、上記ポリエステルとFと同様の製造方法で作成を行い、帯電防止剤含有マスターペレットを得た(ポリエステルI)。
(実施例1)
各層について表1に示した配合で調合した原料の混合物を、ブレンダー内で攪拌した後、表2に示した積層比となるように、A層、B層の原料は攪拌後の原料を、A層用、B層用のベント付き二軸押出機に供給し、C層の原料は160℃で8時間減圧乾燥し、C層用の一軸押出機に供給した。275℃で溶融押出し、A層は長径5μm以上の異物を95%以上捕集する高精度なフィルター、B層は長径2μm以上の異物を95%以上捕集する高精度なフィルターにて濾過した後、矩形の3層用合流ブロックで合流積層し、A層、B層、C層からなる3層積層とした。その後、285℃に保ったスリットダイを介し冷却ロール上に静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティングドラムに巻き付け冷却固化して未延伸積層フィルムを得た。
この未延伸フィルムを表面粗さRaが0.2μmの延伸ロールを用い、110℃で長手方向4.2倍に延伸した。さらに、引き続いてステンタにて115℃の熱風下で幅方向に4.5倍延伸後、定張下、215℃で4秒間熱処理し、その後長手方向に0.1%、幅方向に3.2%の弛緩処理を施し、厚さ16μmの二軸配向ポリエステルフィルムの中間製品を得た。この中間製品をスリッターにてスリットし、厚さ16μmの二軸配向ポリエステルフィルムのロールを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示した。このように本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは取り扱い性(帯電性評価)、レジスト解像度に優れるものであった。
(実施例2)
表1に記載のA層、B層、C層の組成、表裏同じ組成を持つ三層系、B層は長径5μm以上の異物を95%以上捕集する高精度なフィルターにした点と、表2に示した積層比に変更した点以外は実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示した。このように本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは実施例1同様に、取り扱い性(帯電性評価)には優れていたが、両面ともに添加粒子のサイズと添加量が多く、露光阻害を与えるボイドを形成しやすいため、実施例1に比べレジスト解像度に劣るものであった。
(実施例3)
表1に記載のA層、B層の組成、A/B二層系、表2に示した積層比に変更した以外は実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示した。このように本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは実施例1同様に、取り扱い性(帯電性評価)には優れていたが、両面ともに添加粒子のサイズと添加量が多く、露光阻害を与えるボイドを形成しやすいため、実施例1に比べレジスト解像度に劣るものであった。
(実施例4)
A層、B層、C層の組成を表1に記載のように変更する以外は実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示した。このように本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは実施例1同様に、取り扱い性(帯電性評価)には優れていたが、レジスト解像度は実施例1に比べると劣るが、実施例2や3に比べ優れているものであった。
(実施例5)比較例4と読み替える。
A層、B層、C層の組成を表1に記載のように変更する以外は実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示した。しかし、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、A面の帯電防止剤由来の金属触媒を核とするボイドが多く、実施例1や4に比べレジスト解像度に劣るものであった。

(比較例1)
A層、B層、C層の組成を表1に記載のように変更する以外は実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示した。しかし、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、露光阻害を与えるA面のボイドが多く、レジスト解像度は実施例2や3に比べ劣り、生産適用としては不十分であった。
(比較例2)
A層、B層、C層の組成を表1に記載のように変更する以外は実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示した。本発明の二軸配向ポリエステルフィルムのレジスト解像度は実施例1並に優れていたが、A面の帯電防止剤由来の金属触媒を核とするボイドが無く、取り扱い性(帯電性評価)に劣るものであった。
(比較例3)
A層、B層、C層の組成を表1に記載のように変更し、A層に5μm以上の異物を95% 以上捕集する高精度なフィルターを使用したこと以外は実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示した。しかし、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、露光阻害を与えるA面のボイドが多く、レジスト解像度は実施例2や3に比べ劣り、生産適用としては不十分であった。
Figure 0007040137000001
Figure 0007040137000002

Claims (6)

  1. 少なくとも2層の積層構成を有し、一方の層に帯電防止剤含有ポリマーを当該層の質量に対して0.5質量%以上0.9質量%以下含み、その表面(フィルム表面(A))について、フィルム厚み方向1μm×長手方向220μm×幅方向290μmの領域をレーザー顕微鏡により150視野観察したときに存在する長径2μm以上のボイドの数nAが3~30個であるドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルム。
  2. 3層以上の積層構成を有し、フィルム表面(A)とは反対側の表面(フィルム表面(B))について、厚み方向1μm×長手方向220μm×幅方向290μmの領域をレーザー顕微鏡により150視野観察したときに存在する長径2μm以上のボイドの数nBが2個以下である、請求項1に記載のドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルム。
  3. フィルム表面(A)について、フィルム厚み方向1μm×長手方向220μm×幅方向290μmの領域をレーザー顕微鏡により150視野観察したときに存在する長径2μm以上のボイドのうち、フィルム表面をプラズマ低温灰化処理で除去後、ボイドを形成している固形物を表面に露出させ、固形物を走査型電子顕微鏡(SEM)の倍率1,000倍で観察したとき、固形物が長径2μm以下で、かつ固形物をエネルギー分散型X線分光法(EDX)で元素分析を行ったときに、帯電防止剤由来の元素と金属触媒の元素とが検出されるボイドの個数nA’が1個以上である、請求項1または2に記載のドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルム。
  4. フィルム表面(A)を構成する層(A層)について、体積平均粒子径0.3~0.5μmの粒子合計含有量が、0.01質量%以上0.1質量%未満である、請求項1~3のいずれかに記載のドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルム。
  5. フィルムヘイズが1.0%未満である、請求項1~4のいずれかに記載のドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルム。
  6. フィルム表面(A)を構成する層(A層)のカルシウム元素含有量が20ppm(質量基準)以下である、請求項1~5のいずれかに記載のドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルム。
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