JP2022079091A - ポリエステルフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】ロール巻取り性とドライフィルムレジスト工程における配線描写性に優れたポリエステルフィルムを提供する。【解決手段】次の(1)、(2)の要件を満たすポリエステルフィルム。(1) 片側表面をA面、反対面をB面とし、A面の算術平均表面粗さをSaA(nm)およびB面の平均粗さをSaB(nm)とした場合に、SaA≦SaBを満たす。(2) 前記A面が突起を有し、前記A面における高さ100nm以上の突起個数をN100(個/mm2)とした場合、N100が 0.1以上10以下。【選択図】なし

Description

ロール巻取り性とドライフィルムレジスト工程における配線描写性に優れたポリエステルフィルムに関する。
ポリエステル樹脂はその加工性の良さから、様々な工業分野に利用されている。また、これらポリエステル樹脂をフィルム状に加工した製品は工業用途、光学製品用途、包装用途、磁気記録テープ用途など今日の生活において重要な役割を果たしている。近年、電子情報機器において、小型化、高集積化が進み、それに伴って、電子情報機器の配線も微細化が進展している。これら電子情報機器の微細な配線の作製には、透明なフィルムを支持体とし、表面に光硬化性の樹脂層(レジスト層)を設けたものを薄膜銅が張り合わされた基板と密着させ、フィルムごとフォトレジスト技術を用いて銅配線形状を描写し、フィルム剥離後ドライフィルムレジスト工法を用いることが多く、次世代製品では配線幅が2~5μmと非常に精細な加工を行うことが必要となってくる。
一般に、ポリエステルフィルムは、製造工程にて製膜した後、ロール状に巻き取られる。この時、フィルム表面が平滑すぎるとフィルム同士が密着するため、フィルムの巻取り性が悪化する。そのため、フィルムの巻取り性を担保するためにフィルムに粒子を添加・含有させることで、フィルム表面を一定程度荒らす(フィルム表面に突起を形成させる)方法が知られている。添加する粒子の量を低減させたり、添加粒子の粒径を小径化したりすることでレジスト配線描写に寄与するフィルムの透明性を高めることができるため、例えば特許文献1および特許文献2では、特定の粒子径を有する粒子を表層のみに含有させることで製造工程でのロール巻き取り性と透明性を制御する技術が、特許文献3では、微小な粒子を多量に含む薄膜の塗布層を設けることで易滑性と工程ロールとの傷つき性を向上させる技術が報告されている。
特開2002-341546号公報 特開2016-049654号公報 特開2019-143129号公報
これまで、ドライフィルムレジスト支持体用フィルムとしては、透明性や表面平滑性を高めることで、レーザー光がフィルム内部で光散乱することを低減することが求められる。近年の配線幅が2~5μmの微細配線領域においては前項に加え、ドライフィルムレジスト用支持体フィルムにはレジスト層との密着性を適切に調整することが重要である。具体的には、レジスト層との密着性が低く、密着不良により支持体フィルムとレジスト層とが剥離し微小な気泡が発生することでレジスト用レーザー光が散乱し、レジスト配線形成時の不良が発生することを防ぐ必要がある。加えて、レジスト層との密着性が高く、レジスト後のフィルム引きはがし工程において、硬化したレジスト層が支持体フィルムと共に剥離することで、その後、未反応のレジスト層を溶解させる現像工程、およびレジスト層が無くなり露出した銅薄膜部分のみを除去し銅配線を形成するエッチング工程において配線パターンが正しく描写されず欠損が発生することを防ぐ必要がある。
特許文献1、特許文献2に記載されているようなサイズの粒子をフィルムに含有させる場合、フィルム製造工程でのロール巻き取り性が向上する一方で、含有する粒子サイズが大きいことから、レジスト層との密着性制御がある程度行えるものの次世代電子情報機器に向けた微細配線描写においては光散乱を誘発する可能性があり改善の余地がある。また、特許文献3に記載の粒子含有の塗布層では粒子を緻密に敷き詰めることで平滑性が制御でき工程での傷つきを防止できる一方で、多量の粒子を含有することで、次世代電子情報機器に向けた微細配線描写においては光散乱の影響が無視できなくなり、欠陥が多発しやすい。また薄膜な塗布層に含有される粗大粒子が脱落することで製膜工程を汚染しやすく、また塗布層自体が支持体フィルムと剥離する可能性があるため、レジスト層との密着性制御は著しく困難となる。
本発明は上記事情に鑑み、ロール巻取り性とドライフィルムレジスト工程における配線描写性に優れたポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意検討したところ、片側表面において、特定高さの突起個数を特定範囲内に収めることで、ロール巻取り性とドライフィルムレジスト工程における配線描写性に優れたポリエステルフィルムとすることができると判明した。
すなわち、本発明の好ましい一態様は以下の構成を有する。
[I]次の(1)、(2)の要件を満たすポリエステルフィルム。
(1) 片側表面をA面、反対面をB面とし、A面の算術平均表面粗さをSaA(nm)およびB面の平均粗さをSaB(nm)とした場合に、SaA≦SaBを満たす。
(2) 前記A面が突起を有し、前記A面における高さ100nm以上の突起個数をN100(個/mm)とした場合、N100が 0.1以上10以下。
[II]前記A面において、高さ10nm以上の突起個数をN10(個/mm)とした場合、N10が1000以上5000以下である[I]に記載のポリエステルフィルム。
[III]前記A面において、高さ10nm以上の突起個数をN10(個/mm)とした場合、前記A面において、N10(個/mm)に対するN100(個/mm)の比率であるN100/N10が1.0×10-4以上4.0×10-3以下である[I]または[II]に記載のポリエステルフィルム。
[IV]前記A面の算術平均表面粗さSaA(nm)が1.0以上2.5以下である[I]~[III]のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
[V]前記B面の算術平均表面粗さをSaB(nm)が2.1以上5.5以下である[I]~[IV]のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
[VI]前記A面を構成する層(P1層)が粒子を含有し、当該粒子の個数基準粒度分布測定を行い、横軸に粒子径、縦軸に粒子の存在比率をプロットしたとき、粒子径が30nm以上100nm未満の領域と、粒子径が100nm以上400nm以下の領域にそれぞれ1つ以上のピークを有する[I]~[V]のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
[VII]前記A面を構成する層(P1層)が粒子を含有し、当該粒子の個数基準粒度分布測定を行い、横軸に粒子径、縦軸に粒子の存在比率をプロットしたとき、粒子径が500nmを超える領域にはピークを有さない[I]~[VI]のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
[VIII]前記P1層と、前記B面を構成する層(P2層)との間に粒子を実質的に含まないP3層を有する[I]~[VII]のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
[IX]前記A面から前記B面までの厚みが10μm以上50μm以下である[I]~[VIII]のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
[X]ドライフィルムレジスト支持体用途に用いられる[I]~[IX]のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
ロール巻取り性とドライフィルムレジスト工程における配線描写性に優れたポリエステルフィルムを提供することができる。
本発明のポリエステルフィルムのA面の一態様をあらわす概念図である。 本発明のポリエステルフィルムの2層構成をあらわす概念図である。 本発明のポリエステルフィルムの3層構成をあらわす概念図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明はポリエステルフィルムに関する。
(ポリエステル)
本発明で言うポリエステルフィルムとは、ポリエステル樹脂を主成分とするフィルムを示す。ここでいう主成分とはフィルムの全成分100質量%において、50質量%を超えて含有している成分を示す。
また、本発明で言うポリエステル樹脂はジカルボン酸構成成分とジオール構成成分を重縮合してなるものである。なお、本明細書内において、構成成分とはポリエステルを加水分解することで得ることが可能な最小単位のことを示す。
かかるポリエステルを構成するジカルボン酸構成成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、もしくはそのエステル誘導体が挙げられる。
また、かかるポリエステルを構成するジオール構成成分としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール等の脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどの脂環式ジオール類、上述のジオールが複数個連なったものなどが挙げられる。
本発明において用いられるポリエステル樹脂としては、機械特性、透明性の観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート(PEN)、およびPETのジカルボン酸成分の一部にイソフタル酸やナフタレンジカルボン酸を共重合したもの、PETのジオール成分の一部にシクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、ジエチレングリコールを共重合したポリエステルが好適に用いられ、その中でも特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは二軸配向していることが好ましい。二軸配向していることにより、フィルムの機械強度が向上することでシワが入りにくくなり、巻取り性が向上させることができ、また延伸工程において均一な延伸応力をかけることで表面の平滑性をフィルム全域において均一にすることができる。さらに、延伸を行うことで後述する粒子を含有させた場合において粒子を均一に分散させフィルム表面の凹凸形状を制御することが容易となる。ここでいう二軸配向とは、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。ポリエステルフィルムは、一般に未延伸状態の熱可塑性樹脂シートをシート長手方向および幅方向に延伸し、その後熱処理を施し結晶配向を完了させることにより得ることができる。詳しくは後述する。
本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムの両面の算術平均表面粗さSa(nm)を測定した際、Saの値が低い面をA面とし、前記A面とは反対のSaの値が高い面をB面することで、当該A面の算術平均表面粗さをSaA(nm)とし、B面の算術平均表面粗さをSaB(nm)とした場合において、SaA≦SaBを満たし、且つ、前記A面が突起を有し、前記A面における高さ100nm以上の突起個数をN100(個/mm)とした場合、N100が 0.1以上10以下であることが好ましい。A面、およびB面の算術平均表面粗さは、後述の方法に従って走査型白色干渉顕微鏡(“VertScan”(登録商標))測定を行い、走査型白色干渉顕微鏡付属のソフトウェアにより求まるISO 25178に基づき、後述する解析方法により求まる値である。
ポリエステルフィルムの両面の算術平均表面粗さSa(nm)を測定した際、両面のSa両面の算術平均表面粗さSa(nm)が一致する場合は、任意の面をA面とし、その反対の面をB面として取り扱い、A面やB面が本願の好ましい態様に該当するか判断する。その後、上記でA面とした面をB面、その反対の面をA面として取り扱い、A面やB面が本願の好ましい態様に該当するか判断する。2回の判断において、少なくとも1回以上、A面やB面が本願の好ましい態様に該当する場合は、ポリエステルフィルムが本願で規定する好ましい態様に該当すると判断する。
(A面を有する層:P1層)
本発明のポリエステルフィルムにおける高さ100nm以上の突起個数をN100(個/mm)とした場合、N100が 0.1以上10以下であることは、A面が一定程度の大きさを有する表面凹凸を少量有していることを表す。これらA面に存在する一定程度の大きさを有する表面凹凸はポリエステルフィルムを巻き取る際に、A面とB面が接触する際に先んじてB面に接触することでA面とB面の接触する面積(以下、接触面積と称することがある)を低下させる役割を担うことができる。また、レジスト層をA面と接触するように積層させた場合においては、一定程度の大きさを有する表面凹凸がレジスト層との接触面積を増加させることでレジスト層との密着性を高めることに寄与する。このため、N100(個/mm)を10以下にすることで、レジスト層との密着性が過剰となることを抑制し、光硬化後のレジスト層がポリエステルフィルムによって引き剥がされ、現像・エッチング工程での配線形成不良が発生するのを防ぐことができる。また、高さ100nm以上の突起個数N100(個/mm)を0.1以上とすることで、レジスト層との密着性が向上し、レジスト層を積層した際に、レジスト層とポリエステルフィルムとの間で剥離して生じる気泡を抑制でき、当該気泡による光散乱や浮きに起因して発生するレジスト配線の欠点を抑制できる。加えて、ロール巻取り時にはフィルム同士の接触面積を低下させることで、シワが発生し品位が低下することを防ぐことができる。同様の観点から、高さ100nm以上の突起個数N100(個/mm)は1.0以上6.0以下がより好ましく、1.5以上4.0以下が最も好ましい。
本発明のポリエステルフィルムのA面において、高さ100nm以上の突起個数N100(個/mm)を0.1以上10以下とするための方法は特に限定されないが、例えば、ナノインプリントのようにモールドを用いて表面に形状を転写させる方法、粒子を少量含有させ二軸延伸を行いフィルム表面に含有させた粒子に由来する突起を形成させる手法などが挙げられる。インラインでの製膜適応性の観点からは、特定の粒径を有する粒子を特定量含有させた後、特定の延伸手法を用いて分散性良くA面内に突起凹凸を形成させる手法がより好ましい。粒子を少量含有させ二軸延伸する場合は、粒子含有量が0.1質量%以上2質量%未満の粒子マスターペレットを用い、平均1次粒子径が100nm以上380nm以下の粒子をP1層に濃度が0.001質量%以上0.02質量%未満となるよう添加し、かつP1層に含有される粒子径が500nm以上の領域にピークを持つ粒子の含有量を0.001質量%未満とすることが好ましい。N100(個/mm)を1.0以上5.0以下とするためには、平均1次粒子径が130nm以上280nm以下の粒子をP1層に濃度0.006質量%以上0.015質量%以下となるよう添加することが好ましい。N100(個/mm)を1.5以上3.5以下とするためには、平均1次粒子径が150nm以上270nm以下の粒子をP1層に濃度0.007質量%以上0.013質量%以下となるよう添加することが好ましい。詳しくは後述する。
本発明のポリエステルフィルムは前記A面における高さ10nm以上の突起個数をN10(個/mm)とした場合、N10が1000以上5000以下であることが好ましい。高さ10nm以上の突起個数N10(個/mm)が1000以上5000以下であることは、A面の地肌部近傍の領域に微小な突起が多数存在することを表す。高さ10nm以上の突起個数N10(個/mm)が1000以上であることにより地肌部に多くの突起が存在し、製膜工程における工程ロールとの接触面積が低下することでフィルム表面の傷つきを抑制することができる。前記A面における高さ10nm以上の突起個数N10(個/mm)を5000以下とすることで、P1層とレジスト層とが過度に密着することを抑制し、レジスト配線を形成した際の線状欠陥の発生を抑制できる。同様の観点から前記A面における高さ10nm以上の突起個数N10(個/mm)のより好ましい範囲としては1100以上4000以下、更に好ましくは1100以上3000以下である。
本発明のポリエステルフィルムのA面において、高さ10nm以上の突起個数N10(個/mm)を上記の範囲とするための方法は特に限定されないが、例えば、ナノインプリントのようにモールドを用いて表面に形状を転写させる方法、粒子を少量含有させ二軸延伸を行いフィルム表面に含有させた粒子に由来する突起を形成させる手法などが挙げられる。粒子を少量含有させ二軸延伸する場合は、粒子含有量が0.1質量%以上2質量%未満の粒子マスターペレットを用い、平均1次粒子径が25nm以上90nm未満の粒子をP1層に濃度が0.01質量%以上0.1質量%未満となるよう添加する方法を好ましく挙げることができる。詳しくは後述する。
また、上記観点から、本発明のポリエステルフィルムは前記A面における高さ10nm以上100nm未満の突起個数が1000個/mm以上5000個/mm以下であることが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは前記A面における高さ10nm以上の突起個数N10(個/mm)、および高さ100nm以上の突起個数N100(個/mm)の比率であるN100/N10が1.0×10-4以上4.0×10-3以下であることが好ましい。N100/N10は高い突起の個数比率を表すもので有り、地肌部に広がる微小凹凸平面に散在する高い突起凹凸による接触面積の増加度合いを反映しており密着性に寄与するパラメータである。N100/N10が1.0×10-4以上であることにより、レジスト層との密着性が向上し、レジスト層を積層した際に、レジスト層とポリエステルフィルムとの間で剥離して生じる気泡を抑制でき、当該気泡による光散乱や浮きに起因して発生する描写した複数の配線にまたがる弧状もしくは直線状の欠損(線状欠陥)を抑制することができる。また、N100/N10が4.0×10-3以下であることにより、レジスト層とA面との密着性が過剰に高くなることを抑制でき、フォトレジスト後のフィルム剥離工程にて、光硬化した部分がポリエステルフィルムと共に剥離して描写された配線形状において高さ方向に欠損が発生することを軽減できる。同様の観点からN100/N10のより好ましい範囲としては、5.0×10-4以上3.5×10-3以下であり更に好ましくは、1.0×10-3以上3.0×10-3以下である。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、前記A面の突起パラメータであるN100(個/mm)、N10(個/mm)、N100/N10を好ましい範囲に制御する手法としては上述の通りであるが、なかでもP1層に粒子を含有させた後、二軸延伸を行いA面内に粒子に由来する突起を分散させる手法を用いることがより好ましい。その場合において、P1層に含有させる粒子種に関しては特に限定されず、無機粒子、有機粒子どちらを用いても良く、2種類以上の組成の異なる粒子を併用してもよい。無機粒子としては例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、リン酸カルシウム、アルミナ(αアルミナ、βアルミナ、γアルミナ、δアルミナ)、マイカ、雲母、雲母チタン、ゼオライト、タルク、クレー、カオリン、フッ化リチウム、フッ化カルシウム、モンモリロナイト、ジルコニア、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカなどが好ましく挙げられる。有機粒子としては例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などを構成成分とする粒子や、前記樹脂を複数種類用いることで作られるコアシェル型の有機粒子などが好ましく例示できる。
本発明のポリエステルフィルムに含有される粒子としては、2種類以上の粒子径の異なる粒子を用いることが好ましく、更には、P1層が含有する粒子は、当該粒子の個数基準粒度分布測定を行い、横軸に粒子径、縦軸に粒子の存在比率をプロットしたとき、粒子径が30nm以上100nm未満の領域と、粒子径が100nm以上400nm以下の領域にそれぞれ1つ以上のピークを有することが好ましい。このような2種類のサイズの異なる粒子が入ることで、A面に形成された微細な突起凹凸の中に特定量の高い突起凹凸を有する表面を作り出すことができ、巻取り性を向上でき、またレジスト層との層間密着性を適度なものとでき、レジスト配線を形成した際の欠陥発生を抑制できる。
前記P1層に含有させる粒子の粒子径ピークを400nm以下とすることで、含有粒子の光散乱によってレジスト配線を形成した際において欠点が生じることを抑制でき、また、前記P1層に含有させる粒子径ピークを30nm以上とすることで、粒子同士の凝集力を押さえることで粒子の分散を良好なものとでき、後述する延伸方式や、マスターペレット濃度を採用する際においてA面の突起個数の制御を容易なものとすることができる。同様の観点から、粒子径が30nm以上90nm未満の領域と、粒子径が100nm以上400nm以下の領域にそれぞれ1つ以上のピークを有することがより好ましい。
また、同様の観点から、(粒子径が30nm以上100nm未満の領域に現れるピーク高さが最も大きいピークの高さ)/(粒子径が100nm以上400nm以下の領域に現れるピーク高さが最も大きいピークの高さ)の値が0.50以上100以下であることが好ましい。
粒子径が30nm以上100nm未満の領域と、粒子径が100nm以上400nm以下の領域にそれぞれ1つ以上のピークを有するための方法は特に限定されないが、例えば、ナノインプリントのようにモールドを用いて表面に形状を転写させる方法、粒子を少量含有させ二軸延伸を行いフィルム表面に含有させた粒子に由来する突起を形成させる手法などが挙げられる。粒子を少量含有させ二軸延伸する場合は、粒子含有量が0.1質量%以上2質量%未満の粒子マスターペレットを用い、平均1次粒子径が25nm以上90nm未満の粒子(以下、粒子Xと称することがある。)をP1層に濃度が0.01質量%以上0.1質量%未満となるよう添加し、加えて同様な粒子含有量の粒子マスターペレットを用い、平均1次粒子径が90nm以上330nm以下の粒子(以下、粒子Yと称することがある。)をP1層に濃度が0.001質量%以上0.02質量%未満となるよう添加する方法を好ましく挙げることができる。粒子Xの含有濃度を0.01質量%以上とすることで、A面に高さ10nm以上の突起凹凸を形成させフィルムロールのキズ発生を抑制でき、粒子Xの含有濃度を0.1質量%以下とすることで、ドライフィルムレジスト工程において粒子に由来する光散乱の影響を最小限に抑えることができる。同様の観点から、粒子Xの含有濃度を0.03質量%以上0.08質量%以下とすることがより好ましい。粒子Yの含有濃度を0.001質量%以上とすることで、A面に高さ100nm以上の突起凹凸を形成させフィルムロールのシワ発生を抑制でき、粒子Yの含有濃度を0.02質量%未満とすることで、ドライフィルムレジスト工程において粒子に由来する光散乱の影響を最小限に抑えることができる。同様の観点から、粒子Yの含有濃度を0.004質量%以上0.015質量%以下とすることがより好ましく、平均1次粒子径が130nm以上280nm以下の粒子の含有濃度を0.006質量%以上0.015質量%以下とすることがさらに好ましく、粒子Yの含有濃度を0.007質量%以上0.013質量%以下とすることが特に好ましく、平均1次粒子径が150nm以上250nm以下の粒子の含有濃度を0.007質量%以上0.013質量%以下とすることが最も好ましい。
本発明のポリエステルフィルムのP1層は、前記粒子の個数基準粒度分布測定において粒子径が500nmを超える領域にはピークを有さないことが好ましい。また、本発明のポリエステルフィルムのP1層に含有される粒子として粒子径が500nm以上の領域にピークを持つ粒子(以下、粒子Cと称することがある)の含有量が0.001質量%未満と実質的に含有しないことが好ましい。粒子径が500nm以上の粒子の含有量が非常に少ないことで、光散乱の影響による配線欠損を抑制でき、レジスト層を積層した際にレジスト層との間に浮きが生じ広範囲にわたる配線形成に欠点が生じることを軽減できる。
本発明のポリエステルフィルムに粒子を含有させる方法としては、予め粒子とポリエステル樹脂とを二軸押出機を用い高剪断をかけて混練し、粒子を分散させた粒子マスターペレットを用いて含有させることが好ましい。ポリエステル樹脂に粒子マスターペレットを希望の粒子含有濃度になるよう添加し再度混練し押し出すことで、粗大な凝集粒子の形成を抑制し粒子を均一に分散させることができる。使用する粒子マスターペレットにおける粒子含有量は0.1質量%以上2質量%未満であることが好ましい。粒子マスターペレットは作製時の剪断熱により主成分とするポリエステル樹脂の熱劣化が進行していることがあるため、粒子マスターペレットの粒子含有量を0.1質量%以上とすることで、ポリエステルフィルムへの粒子マスターペレット含有量を減らすことができ、ポリエステルフィルムの機械特性低下を抑制することができる。また、粒子マスターペレットの粒子含有量を2質量%未満とすることで、粒子同士の凝集を抑制することができ、ポリエステルフィルムを製膜した際も粒子の分散を良好なものとすることができる。
粒子マスターペレットに含有される粒子は1種類でも、2種類以上でも良いが、2種類以上の粒子を同じ粒子マスターペレット内に含有させた場合、複数粒子の複合体が形成することで、狙いとする粒子径ピークを制御することが困難になる場合があるため、1種類の粒子を含有する粒子マスターペレットを用いることが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムのP1層は、本発明の効果が損なわれない範囲で、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、帯電防止剤、有機系/無機系の易滑剤、核剤、染料、分散剤、カップリング剤、波長変換材料等の添加剤が配合されていてもよい。
本発明のポリエステルフィルムにおける前記A面の算術平均表面粗さSaA(nm)は1.0以上2.5以下とすることが好ましい。前記A面の算術平均表面粗さSaA(nm)はA面の突起形成に応じた表面荒れを表すパラメータであり、1.0以上とすることで表面に突起が形成しているため、フィルムの易滑性が向上し、ロールキズの発生を抑制することができる。一方で、前記A面の算術平均表面粗さSaA(nm)を2.5以下とすることで、ドライフィルムレジスト工程において光散乱の影響を無視できる程度にまで抑制できる。同様の観点から、前記A面の算術平均表面粗さSaA(nm)は1.8以上2.4以下であることがより好ましい。
本発明のポリエステルフィルムにおけるP1層の厚みとしては、0.5μm以上1.9μm以下とすることが好ましい。P1層の厚みを0.5μm以上とすることでP1層がフィルム生産工程の工程ロールやその後の加工工程の装置部品と接触し応力がかかった場合に、P1層と後述のP2層(もしくは後述のP3層)との界面まで応力が届きにくくなることで、P1層が削り取れることを防ぎ、結果として生産・加工工程が削りカスにより汚染されることを防ぐことができる。P1層厚みを1.9μm以下とすることで、フィルム全体の光学特性を低下させることなく突起形成を制御することができる。同様の観点から、さらに好ましい範囲としては0.8μm以上1.5μm以下である。
P1層はポリエステル樹脂を主成分とする層であることが好ましい。好ましいポリエステル樹脂は上記ポリエステルフィルムにおけるポリエステル樹脂の好ましい態様を好ましく採用することができる。
(A面の反対面であるB面を有する層:P2層)
本発明のポリエステルフィルムにおいて、A面の反対面であるB面を有するP2層の原料組成としては、前記P1層と同様のポリエステル樹脂および粒子を用いることができる。なお、本発明のポリエステルフィルムが単層である場合、P1層=P2層となる。
本発明のポリエステルフィルムにおける前記B面の算術平均表面粗さSaB(nm)は2.1以上5.5以下とすることが好ましい。
前記B面の算術平均表面粗さSaB(nm)はB面の突起形成に応じた表面荒れを表すパラメータであり、SaB(nm)を2.1以上とすることで、A面の突起個数を上記好ましい態様とした際におけるロールの巻取り性を良好なものとすることができ、ロールのシワ発生を抑制することができる。これはロール巻取り時にA面とB面とが接する際に、高さ10nm以上の突起個数として現れるA面が有する地肌部分の低い突起が、B面の表面凹凸を受け止めて微少な空隙を作ることに加え、A面が有する高さ100nm以上の突起がB面の凸部分と接触することで前記空隙を広げるためである。巻取り時のロールシワの抑制は前記B面の算術平均表面粗さSaB(nm)の増加により向上させることが可能である。前記B面の算術平均表面粗さSaB(nm)を5.5以下とすることで、B面側からレジスト用レーザー光を照射した場合にB面が荒れていることに由来した表面散乱の発生を抑制できるため、前記P1層を上記好ましい態様とした際において、レジスト配線の欠点発生を抑制することができる。同様の観点から、前記B面の算術平均表面粗さSaB(nm)は2.2以上3.5以下がより好ましい。
前記B面の算術平均表面粗さSaB(nm)を好ましい範囲に制御する手法としては、P2層に特定の粒子径を有する粒子を特定の濃度含有させる手法を好ましく挙げることができる。具体的には、P2層に2種類以上のサイズの異なる粒子を含有させ、P2層が含有する粒子が、当該粒子の個数基準粒度分布測定を行い、横軸に粒子径、縦軸に粒子の存在比率をプロットしたとき、粒子径が100nm以上1000nm未満の領域に少なくとも2つ以上のピークを有するようにすることを好ましく挙げることができる。粒子径の範囲としては100nm以上500nm未満の領域および500nm以上900nm未満の領域に少なくとも1つ以上ピークを有することがより好ましく、100nm以上500nm未満の領域および500nm以上700nm未満の領域に少なくとも1つ以上ピークを有することがさらに好ましい。
前記P2層に含有される粒子の含有量としては、含有される100nm以上1000nm未満の粒子のうち、最も小さい粒子径ピークを有する粒子の濃度が0.02質量%以上、0.10質量%以下であることが好ましい。また、P2層に含有される100nm以上1000nm未満の粒子のうち、最も大きい粒子径ピークを有する粒子の濃度が0.005質量%以上、0.02質量%以下であることが好ましい。上記範囲とすることで、前記SaBを好ましい範囲とすることが可能となり、本発明のポリエステルフィルムの巻取り性とレジスト配線の欠点抑制性を良好なものとすることができる。
本発明のポリエステルフィルムにおけるP2層の厚みとしては、0.5μm以上1.0μm以下とすることが好ましい。P2層の厚みを0.5μm以上とすることで、P2層がフィルム生産工程の工程ロールやその後の加工工程の装置部品と接触し応力がかかった場合に、P2層とP1層(もしくは後述するP3層)との界面まで応力が届きにくくなることで、P2層が削り取れることを防ぎ、結果として生産・加工工程が削りカスにより汚染されることを防ぐことができる。P2層の厚みを1.0μm以下とすることで、フィルム全体の光学特性低下を抑えつつ突起形成を制御することができる。同様の観点から、さらに好ましい範囲としては0.6μm以上0.9μm以下である。
(中間層:P3層)
本発明のポリエステルフィルムは、単層のポリエステルフィルムであっても良く、P1層及びP2層を有する2層以上の積層ポリエステルフィルムであってもよい。P1層、P2層に含有する粒子・添加剤による光学特性への影響を最小限に留めることを目的として、P1層とP2層の間に、実質的に粒子を含まないP3層を設けた3層以上の積層ポリエステルフィルムであることが好ましい。粒子を実質的に含有しないとは、当該層におけるポリエステル樹脂に対する粒子の含有量が0.001質量%未満であることを表す。
(ポリエステルフィルム)
本発明のポリエステルフィルムにおいて、フィルム固有粘度(IV)は、0.50dl/g以上であることが好ましく、より好ましくは0.60dl/g以上である。IVは、分子鎖の長さを反映した数字であり、分子鎖が長い方が延伸後に分子鎖どうしが配向することに伴う配向結晶化がより進行しフィルムの機械物性を向上させることができるため好ましい。また、IVが0.50dl/g未満の場合、分子鎖が短いことで結晶化が進行しやすくなるため、延伸工程で破断が頻発し製膜が困難になる場合がある。
本発明のポリエステルフィルムは、上述のP1層、P2層からなり、前記表面とその反対面が最表面に配される2層以上の構成(P1層/P2層、およびP1層/P3層/P2層)であることが好ましい。特に光学特性の観点からは、2層構成(P1層/P2層)とする場合、より大きな粒子を含有するP2層の厚みを前記の好ましい範囲内とし、P1層厚みにて全層厚みを制御することが好ましい。最も好ましい構成としては3層構成とし、実質的に粒子を含有しないP3層の両側に、前記好ましい厚み範囲に制御したP1層とP2層とを積層した構成である。なお、本発明において、実質的に粒子を含有しない、とはその層における粒子含有量が0.001質量%未満であることをいい、以下同様である。
P1層とP2層、P3層等の樹脂層を積層する方法としては特に制限されないが、後述する共押出法や、製膜途中のフィルムに他の樹脂層原料を押出機に投入して溶融押出して口金から押出しながらラミネートする方法(溶融ラミネート法)、製膜後のフィルム同士を接着剤層とを介して積層する方法などを用いることができ、中でも生産性の観点から共押出法が好ましく用いられる。
本発明のポリエステルフィルムの前記A面から前記B面までの厚み(以下、全層厚みと称することがある。)としては、10μm以上50μm以下とすることが好ましい。全層厚みを10μm以上とすることでフィルムにコシ(折り曲げ時の機械特性)が向上し、ロールを巻取る際にロール内に巻き込まれた空気により塑性変形してシワが発生することを抑制できる。全層厚みを50μm以下とすることで、レジスト用レーザー光がフィルム通過時の光吸収によって低減しレジスト配線の形成効率が低下することを防ぐことができる。同様の観点から、全層厚みの好ましい範囲としては10μm以上40μm以下である。
本発明のポリエステルフィルムは、巻取り性の観点からA面とB面間の静摩擦係数(μs)が1.3以下であることが好ましい。静摩擦係数が1.3以下であることにより、フィルム同士が密着してロール巻取り時にキズが入り品位が低下することを抑制できる。同様の観点から、より好ましい範囲としては1.0以下であり、更に好ましい範囲としては、0.9以下である。静摩擦係数を上記の範囲とする方法としては、例えば、前記A面の高さ10nm以上の突起個数N10(個/mm)を上述の範囲内とすることや、前記A面の算術平均表面粗さSaA(nm)を上述の好ましい範囲とすること、前記B面の算術平均表面粗さSaB(nm)を上述の好ましい範囲とすることが挙げられる。
次に、本発明のポリエステルフィルムの製造方法について、以下記載のポリエステルフィルムを例に挙げて説明するが、本発明は、かかる例によって得られる物のみに限定して解釈されるものではない。
本発明に用いられるポリエステルを得る方法としては、常法による重合方法が採用できる。例えば、テレフタル酸等のジカルボン酸成分またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコール等のジオール成分またはそのエステル形成性誘導体とを公知の方法でエステル交換反応あるいはエステル化反応させた後、溶融重合反応を行うことによって得ることができる。また、必要に応じ、溶融重合反応で得られたポリエステルを、ポリエステルの融点温度以下にて、固相重合反応を行っても良い。
本発明のポリエステルフィルムは、従来公知の製造方法で得ることが出来る。具体的には本発明のポリエステルフィルムは、必要に応じて乾燥した原料を押出機内で加熱溶融し、口金から冷却したキャストドラム上に押し出してシート状に加工する方法(溶融キャスト法)を使用することができる。その他の方法として、原料を溶媒に溶解させ、その溶液を口金からキャストドラム、エンドレスベルト等の支持体上に押し出して膜状とし、次いでかかる膜層から溶媒を乾燥除去させてシート状に加工する方法(溶液キャスト法)等も使用することができる。
2層以上の積層ポリエステルフィルムを溶融キャスト法により製造する場合、積層ポリエステルフィルムを構成する層毎に押出機を用い、各層の原料を溶融せしめ、これらを押出装置と口金の間に設けられた合流装置にて溶融状態で積層したのち口金に導き、口金からキャストドラム上に押し出してシート状に加工する方法(共押出法)が好適に用いられる。該積層シートは、表面温度20℃以上60℃以下に冷却されたドラム上で静電気により密着冷却固化し未延伸シートを作製する。
次いで、未延伸フィルムを二軸延伸し、二軸配向せしめる。延伸方法としては、逐次二軸延伸法又は同時二軸延伸法を用いることができる。最初に長手方向、次に幅方向の延伸を行う逐次二軸延伸法が、延伸破れなく本発明のポリエステルフィルムを得るのに有効である。
(二軸延伸)
未延伸フィルムを二軸延伸する場合の延伸条件に関しては、本発明のポリエステルフィルムがポリエステルを主成分とする場合、長手方向の延伸としては、未延伸シートを70℃以上に加熱されたロール群に導き温め、ロールの回転速度差を利用することで長手方向(縦方向、すなわちシートの進行方向)に延伸し、20~50℃の温度のロール群で冷却することが好ましい。長手方向の延伸における加熱ロール温度の下限についてはシートの延伸性を損なわない限り特に制限はないが、使用するポリエステル樹脂のガラス転移温度を超えることが好ましい。また、長手方向の延伸倍率の好ましい範囲は3倍~5倍である。より好ましい範囲としては3倍~4.5倍である。長手方向の延伸倍率が3倍以上であると、配向結晶化が進行することでフィルムの機械強度が向上すると共に粒子を含有する場合は含有する粒子が面方向に均一に分散することを促進することができる。一方、延伸倍率を5倍以下とすることで、延伸に伴うポリエステル樹脂の過度な配向結晶化を抑制することができ、製膜時のフィルム破れ発生を抑制することができる。
本発明のポリエステルフィルムを長手方向に延伸する場合の更に好ましい形態としては、ロール群を用いた延伸において、連続した4本のロール間に存在する3区間にて分割して延伸を行う3段延伸を用いることが好ましい。特に3段延伸において初めの1区間目、2区間目では、延伸の始点に当たるロール(以後、延伸前ロールと称すことがある)を100℃以上に加熱しポリエステル未延伸シートを加熱し1.05倍以上2.0倍未満の低倍率にてそれぞれの区間で延伸することが好ましい。高温のロール群を用い低倍率延伸を用いることで、ポリエステル未延伸シートが延伸される過程において、形成する配向結晶の成長を過度に進行させることなく延伸できるため、粒子を含有する場合は含有される粒子が延伸に伴い配向結晶部分に阻まれること無く均一に分散させることができる。1区間目、2区間目を前記低倍率で延伸した場合、3区間目は延伸前ロールを90℃以上に加熱し低倍率で延伸されたポリエステルシートを再度加熱し2.0倍以上に延伸することが最終的なフィルムの機械強度を向上させる観点から好ましい。延伸に用いるロールの材質としては、高温の延伸ロールと延伸中のポリエステルフィルムとが粘着しフィルム破れやロールへの巻き付きを抑制する目的から、例えば、フッ素樹脂製、シリコーン樹脂製のロールや、ロール表面に金属酸化物、金属窒化物などのセラミック層を設けたロールや、DLC(Diamond-like-Carbon)膜を表面に設けたロールを用いるのが好ましい。
続いて、長手方向に直角な方向(幅方向)の延伸に関しては、フィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、70~160℃の温度に加熱された雰囲気中にて、長手方向に直角な方向(幅方向)への3倍~5倍の延伸、およびその後、延伸されたフィルムに熱処理を施すと共にリラックス処理(弛緩処理)を行うことで、伸びきった分子鎖を弛緩させると共にフィルム内部の分子配向構造の安定化を行うことが好ましい。
テンター装置内における熱処理に用いる最高温度としては、例えばポリエステル樹脂(融点255℃)が主成分である場合には、テンター内の最高温度が200℃以上250℃以下であるように設定することが好ましく、樹脂組成に応じて融点が前記ポリエステル樹脂とは異なった場合は、樹脂融点-55℃以上樹脂融点-5℃以下に設定することが好ましい。例示したポリエステル樹脂において熱処理温度を200℃以上とすることで、二軸配向ポリエステルフィルムの機械特性と寸法安定性が向上させることができ、250℃以下とすることでフィルムが融解しフィルム破れが多発、生産性が低下することを抑制できる。
熱処理工程にてフィルムの受けた熱履歴温度に関しては、後述する示差走査熱量計(DSC)にて測定される融点温度の直下に現れる微小吸熱ピーク(Tmetaと称することがある)温度にて確認することができ、ポリエステル樹脂を主成分とする場合、前述の理由からTmetaが190℃以上245℃以下であることが好ましい。
延伸倍率は、長手方向と幅方向それぞれ3~5倍とするが、その面積倍率(縦延伸倍率×横延伸倍率)は10~22倍であることが好ましく、10~20倍であることがより好ましい。面積倍率が10倍以上とすることで、得られるポリエステルフィルムの機械特性を向上させることができ、面積倍率が22倍以下とすることで製膜中のフィルム破れを抑制し生産性を良好なものとすることができる。
[特性の評価方法]
A.ポリマー・フィルム特性
(i)固有粘度(IV)
オルトクロロフェノール100mlに、測定試料(ポリエステル樹脂(原料)又はポリエステルフィルムのP1層のみを分離したもの)を溶解させ(溶液濃度C(測定試料質量/溶液体積)=1.2g/100ml)、その溶液の25℃での粘度を、オストワルド粘度計を用いて測定する。また、同様に溶媒の粘度を測定する。得られた溶液粘度、溶媒粘度を用いて、下記式(2)により、[η]を算出し、得られた値をもって固有粘度(IV)とする。
ηsp/C=[η]+K[η]・C ・・・(2)
(ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)-1、Kはハギンス定数(0.343とする)である。)
なお、測定試料を溶解させた溶液に無機粒子などの不溶物がある場合は、以下の方法を用いて測定を行う。
(1-1)オルトクロロフェノール100mLに測定試料を溶解させ、溶液濃度が1.2g/100mLよりも濃い溶液を作成する。ここで、オルトクロロフェノールに供した測定試料の質量を測定試料質量とする。
(1-2)次に、不溶物を含む溶液を濾過し、不溶物の質量測定と、濾過後の濾液の体積測定を行う。
(1-3)濾過後の濾液にオルトクロロフェノールを追加して、(測定試料質量(g)-不溶物の質量(g))/(濾過後の濾液の体積(mL)+追加したオルトクロロフェノールの体積(mL))が、1.2g/100mLとなるように調整する。
(例えば、測定試料質量2.0g/溶液体積100mLの濃厚溶液を作成したときに、該溶液を濾過したときの不溶物の質量が0.2g、濾過後の濾液の体積が99mLであった場合は、オルトクロロフェノールを51mL追加する調整を実施する。((2.0g-0.2g)/(99mL+51mL)=1.2g/100mL))
(1-4)(1-3)で得られた溶液を用いて、25℃での粘度をオストワルド粘度計を用いて測定し、得られた溶液粘度、溶媒粘度を用いて、上記式(3)により、[η]を算出し、得られた値をもって固有粘度(IV)とする。
(ii)末端カルボキシル基量(表中ではCOOH量と記載する。)
末端カルボキシル基量については、Mauliceの方法に準じて、以下の方法にて測定する。(文献M.J. Maulice, F. Huizinga, Anal.Chim.Acta,22 363(1960))
測定試料(ポリエステル樹脂(原料)またはポリエステルフィルムのP1層のみを分離したもの)2gをo-クレゾール/クロロホルム(質量比7/3)50mLに温度80℃にて溶解し、0.05NのKOH/メタノール溶液によって滴定し、末端カルボキシル基濃度を測定し、当量/ポリエステル1tの値で示す。なお、滴定時の指示薬はフェノールレッドを用いて、黄緑色から淡紅色に変化したところを滴定の終点とする。なお、測定試料を溶解させた溶液に無機粒子などの不溶物がある場合は、溶液を濾過して不溶物の質量測定を行い、不溶物の質量を測定試料質量から差し引いた値を測定試料質量とする補正を実施する。
(iii)融点温度の直下に現れる微小吸熱ピーク(Tmeta)
JIS K7121-1987に従って示差走査熱量計として、セイコーインスツルメンツ社製DSC(EXSTAR DSC6220)を用いて、ポリエステルフィルム試料5mgをアルミニウム製受皿上、室温(25℃)から300℃まで、昇温速度20℃/分で昇温する。そのとき、観測される融解の吸熱ピーク(融点ピーク)の直下の微小吸熱ピーク温度をTmetaとする。
(iv)各層の厚み
ポリエステルフィルムの厚みは、ダイヤルゲージを用い、JIS K7130(1992年)A-2法に準じて、フィルムを10枚重ねた状態で任意の5ヶ所について厚さを測定する。その平均値を10で除してフィルム厚みとする。
ポリエステルフィルムが積層フィルムである場合、下記の方法にて、各層の厚みを求める。フィルム断面を、フィルム幅方向に平行な方向にミクロトームで切り出す。該断面を走査型電子顕微鏡で5000倍の倍率で観察し、積層各層の厚み比率を求める。求めた積層比率と上記したポリエステルフィルム厚みから、前記A面からB面までの厚み、前記P1層の厚み、前記P2層の厚みを算出する。
B.含有粒子評価
(i)平均粒子径
本発明のポリエステルフィルムに関して、ミクロトームを用いて表面に対して垂直方向に切削した小片を作成し、その断面を電界放射走査型電子顕微鏡JSM-6700F(日本電子(株)製)を用いてP1層またはP2層を10000倍に拡大観察して撮影する。その断面写真よりP1層またはP2層中に存在する粒子の粒度分布を画像解析ソフトImage-Pro Plus(日本ローパー(株)製)を用いて求める。断面写真は異なる任意の測定視野から選び出し、断面写真中から任意に選び出した400個以上の粒子の面積円相当径を測定し個数基準平均粒子径を得る。
(ii)粒度分布解析
前記(i)にて記載の方法にて得られた粒子径に関して個数基準粒度分布解析を行う。ここで、個数基準粒度分布において横軸を担う粒子径は、0nmを初点とした10nm間隔毎の階級にて表す(0nmを超えて10nm以下の粒子径を有する粒子は10nmの階級に含め、10nmを超えて20nm以下の粒子径を有する粒子は20nmの階級に含めて存在比率をプロットする)。得られた粒子の粒度分布チャートから、極大を示すピークトップの粒子径を読みとる。
(iii)粒子含有量
本発明のポリエステルフィルムのP1層またはP2層部分を1N-KOHメタノール溶液200mlに投入して加熱還流し、ポリマーを溶解する。溶解が終了した該溶液に200mlの水を加え、ついで該液体を遠心分離器にかけて粒子を沈降させ、上澄み液を取り除く。粒子にはさらに水を加えて洗浄、遠心分離を2回繰り返す。このようにして得られた粒子を乾燥させ、その質量を量ることで各層に含有される粒子の含有量(質量%)を算出する。添加粒子に有機粒子が含まれる場合、ポリマーは溶解するが有機粒子は溶解させない溶媒を選択し、過熱還流すること無くポリマーを溶解し、粒子を遠心分離して粒子の含有量(質量%)を算出する。
C.走査型白色干渉顕微鏡による表面解析
ポリエステルフィルムより6cm×6cmのサンプリングを行い、それぞれのサンプルについて、走査型白色干渉顕微鏡(装置:日立ハイテクサイエンス社製 “VertScan”(登録商標) VS1540)を用い、ポリエステルフィルムにおける前記表面を、50倍対物レンズを使用して測定面積113μm×113μmで30視野測定を行う。サンプルセットは、測定Y軸がサンプルフィルムの長手方向(長手方向とは、フィルムが巻き取られている方向)となるようにサンプルをステージにセットして測定する。なお、長手方向が分からないサンプルの場合は、測定Y軸がサンプルフィルムの任意の1方向となるようして測定し、その後120度回転させた方向となるようして測定し、さらにその後120度回転させた方向となるようにして測定し、それぞれの測定結果の平均をそのサンプル有する突起個数とする。また測定するサンプルフィルムは、ゴムパッキンの入った2枚の金属フレームに挟み込むことで、フレーム内のフィルムが張った状態(サンプルのたるみやカールを除した状態)にしてサンプル表面の測定を行う。
得られた顕微鏡像について、該顕微鏡に内蔵された表面解析ソフトウェアVS-Viewer Version 10.0.3.0にて、下記条件にて画像処理を施すことで算術平均表面粗さ、および各高さの突起個数を求める。
(画像処理条件)
下記の順にて画像処理を行う。
・補間処理 :完全補間
・フィルタ処理:メジアン(3×3ピクセル)
・面補正 :4次。
(i)算術平均表面粗さ(Sa)
ポリエステルフィルムの片側表面に関して30視野の走査型白色干渉顕微鏡測定を行い前述の画像処理を行った後、各像に関して、表面解析ソフトウェア内の「ISOパラメータ」解析において以下の解析条件と共に「Height Parameters」を選択し得られた数値群をパラメータシート欄に出力することで得られる算術平均表面粗さSa(nm)を求め、30視野の平均値を測定面の算術平均表面粗さとする。同様にして前記測定面の反対表面に関して30視野測定の平均値から算術平均表面粗さSa(nm)を求める。両数値を比較し、数値の小さい方の表面をA面とし、その算術平均表面粗さをSaA(nm)、数値の大きな方の表面をB面とし、その算術平均表面粗さをSaB(nm)とする。この際、A面を含む層をP1層、B面を含む層をP2層とする。
(ISOパラメータ解析条件)
下記の条件にてISOパラメータ解析処理を行う。
・S-Filter:自動
・正規確率紙
分割数 :300
計算範囲の上限 :3.000
計算範囲の下限 :-3.000
・パラメータ :「Height Parameters」のみを選択
・出力 :「パラメータリスト」を選択
(パラメータシート出力)
上記ISOパラメータ解析によって表示される「ISOパラメータ」ウインドウ中の「Height Parameters」を選択し「パラメータシートに追加」を行うことで「パラメータシート」ウインドウの「ISOパラメータ」タブで表示される「Sq[nm]」を用いる。
(ii)各高さの突起個数解析(N100、N10、N100/N10
前記(i)と同様にして顕微鏡像観察と画像処理を施した後、該顕微鏡に内蔵された表面解析ソフトウェアVS-Viewer Version 10.0.3.0にて、下記条件にて粒子解析処理を行い、100nmの高さ閾値(R100nm、高さ閾値設定値:0.10μm)にて検出される「粒子解析」画面に表示される粒子の個数(個)を測定面積(113μm×113μm)で割ることで高さ100nm以上の突起個数N100(個/mm)を、10nmの高さ閾値(R10nm、高さ閾値設定値:0.01μm)にて検出される「粒子解析」画面に表示される粒子の個数(個)を測定面積(113μm×113μm)で割ることで高さ10nm以上のN10(個/mm)を求める。
(粒子解析条件)
下記の条件にて突起解析処理を行う。
・解析種類 :突解析
・画像補正 :なし
・処理
高さ閾値 : 0.10μmおよび0.01μm
粒子整形 : なし
基準高さ : ゼロ面
・判定対象
高さ/深さ : -10000μm≦h≦10000μm
最長径 : -10000μm≦d≦10000μm
体積 : V≧0.0000μm
アスペクト比: r≧0.0000
・ヒストグラム: 分割数 50
30視野すべてにおいて同様の操作を行い、それらの平均値をサンプルの有する高さ100nm以上の突起個数N100(個/mm)をおよび高さ10nm以上の突起個数N10(個/mm)とする。
さらに、更にサンプルの有する高さ100nm以上の突起個数N100(個/mm)を高さ100nm以上の突起個数N10(個/mm)で除することで、小数第5位まで求め、小数第5位を四捨五入した小数第4位までの値をサンプルの有する両突起の存在比率であるN10/N100とする。
D.フィルム両面での静摩擦係数(μs)
ポリエステルフィルムを23℃65%RHにて調湿した後、製膜ライン方向が長手となるように、幅75mm、長さ100mmの矩形状に2枚切り出してサンプルとし、スベリ係数測定装置(型式ST-200、(株)テクノニーズ製)を使用し、23℃65%RH雰囲気下にて測定する。該装置の測定資料台上に矩形状サンプルを該装置引っ張り方向が矩形サンプルの長手方向となり、また前記表面側が上になるようにセットし固定する。その上にもう1枚の矩形状サンプルを前記表面が上側、引っ張り方向が長手方向になるように置き、前記表面とその反対面とを接触させるとともに、サンプル端部を該装置の加重検出用Uゲージに固定する。その後フィルムを静置し、その上に、サンプル接触面が6.5cm×6.5cmの“テフロン”(登録商標)シートであり荷重が200gの錘を置きサンプル同士を密着させた後、上側のフィルムを以下の条件で引っ張った際の静摩擦係数を測定する。5回の測定の平均値をもって静摩擦係数(μs)とする。静摩擦係数(μs)は数値が小さいほどサンプルどうしが滑りやすいことを示しており、静摩擦係数(μs)が小さいほど巻取りロールのキズの発生が抑制される。
測定距離:12mm
測定速度:210mm/min
検出範囲:測定開始後1000ms以内
E.空気抜け時間
デジベック平滑度試験機((株)東洋精機製作所製)を用いて、25℃、65%RHにて測定する。ポリエステルフィルムを5cm角サイズに2枚切り出し、その一方の中央部に1cm角の穴を空け、それぞれを以下の通りにセットし測定を行う。まず1cm角の穴を空けたサンプルの前記表面を持つ面が試料台と接するようにセットし、試料台に空いた穴が、サンプル中央部に空けた穴以外では、完全に覆われるようにセットする。続いてその上に穴の空いていないサンプルの前記表面を持つ面が、穴の空いたサンプルの前記表面を持つ面とは反対面と接し、かつ中央部に空いたサンプルの穴を完全に塞ぐように覆い被せてセットする。2枚のサンプルフィルムがセットされた状態で1kg/cmの荷重を加えて、初期減圧度を385mmHgに設定する。常圧より385mmHg減圧した後、常圧に戻ろうとするため、2枚のサンプルフィルム間から空気が流れ込んでいく。この時、減圧度が382mmHgから381mmHg になる時間(空気抜け時間)を測定する。
20サンプルに関して前述の空気抜け時間を測定し、数値の大きい方および小さい方からの3点ずつを除した残り14サンプルの平均値をポリエステルフィルムの有する空気抜け時間とする。空気抜け時間が小さいほど、サンプル間に存在する空気が抜けやすいことを表しており、フィルムをロールに巻き取る際に噛み込んだ空気が原因となり巻取りロールにてシワが発生することを抑制できる。
[用途特性の評価方法]
F.巻取り性
(i)巻取りロールのキズ評価
ポリエステルフィルムを、製膜速度が150m/分以上の条件にて製膜を行い、連続した5000mのロール巻取りを20回分採取する。得られた20のロールに関して、製膜時の欠点検出機にて検出された巻き等方向に長さ2cm以上のキズの有無を確認し、キズが発生したロールの本数を用いて巻取りロールのキズ評価を行う。
(ii)巻取りロールのシワ評価
前記(i)項にて採取した20本のロールに関して、シワの有無を確認し、シワが発生したロールの本数を用いて巻取りロールのシワ評価を行う。
G.フォトレジスト評価
(i)レジスト配線パターン作成
以下a.からc.の方法によりフォトレジスト評価を行う。
a.片面鏡面研磨した6インチSiウエハー上に、東京応化(株)製のネガレジストPMERN-HC600を塗布し、大型スピナーで回転させることによって厚み7μmのフォトレジスト層を作製する。次いで、窒素循環の通風オーブンを用いて70℃の温度条件で約20分間の前熱処理を行う。
b.ポリエステルフィルムにおいて、目視確認可能なシワやキズのない部分を選定し、前記表面をレジスト層と接触するように重ね、ゴム製のローラーを用いて、フォトレジスト層上にポリエステルフィルムをラミネートし、その上に、クロム金属でパターニングされたレチクルを配置し、そのレクチル上から投影レンズを具備したi線(波長365nmにピークをもつ紫外線)ステッパーを用いた分割縮小露光を行う。
c.フォトレジスト層からポリエステルフィルムを剥離した後、現像液N-A5が入った容器にフォトレジスト層を入れ約1分間の現像を行う。その後、現像液から取り出し、水で約1分間の洗浄を行う。現像後に作成されたレジスト配線パターンのL/S(μm)(Line and Space)=5/5μmの30本の状態を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて約800~3000倍率で観察する。
(ii)レジスト配線欠点抑制評価
前項(i)にて観察した30本のレジスト配線パターンに関して、配線が幅方向に1.5μm以上のサイズで失われた配線欠点を有する配線本数(不良配線本数)を確認し、ポリエステルフィルムのレジスト配線欠点抑制評価を行う。
(iii)レジスト層剥離に伴う線状欠陥抑制評価
前項(i)にて観察した30本のレジスト配線パターンに関して、配線描写領域において2本以上の配線を跨がる円弧状、もしくは直線状の線状欠陥の本数を確認し、欠陥線数を用いて線状欠陥抑制評価を行う。
(iv)反応後レジスト層剥離による配線高さ均一性評価
前項(i)にて観察した30本のレジスト配線パターンに関して、配線高さを配線長さ方向に観察した場合に、配線高さが10%以上減少している配線高さ不均一な不良配線の本数用いて配線高さ均一性評価を行う。
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
[PET-1の製造]テレフタル酸およびエチレングリコールから、三酸化アンチモンを触媒として、常法により重合を行い、実質的に粒子を含有しない溶融重合PETを得た。得られた溶融重合PETのガラス転移温度は81℃、融点は255℃、固有粘度は0.55であった。その後、常法により固相重合を行い、固相重合PETを得た。得られた固相重合PETのガラス転移温度は81℃、融点は255℃、固有粘度は0.65であった。
[MB-Aの製造]前項PET-1の重合に際し、表1に記載の通りPETに対する含有量が1.0質量%となるように、エチレングリコールに分散させた平均1次粒子径が60nmのシリカ粒子(シリカ-1)を添加し、PETベースマスターペレットMB-Aを得た。得られた溶融重合MB-Aのガラス転移温度は81℃、融点は255℃、固有粘度は0.63であった。
[MB-B~Nの製造]表1に記載の通り添加するシリカ粒子の種類を変更した以外はMB-Aと同様にして、MB-B~Nを得た。得られたMB-B~Nの特性は表1に示す通りであった。
[低濃度マスタ:MB-O、Pの製造]表1に記載の粒子種、含有量となるように変更した以外は、MB-Aと同様にして、低濃度マスタMB-O、Pを得た。
Figure 2022079091000001
(実施例1)
主成分となるポリエステル樹脂としてPET-1を、P1層に含有させる粒子XとしてマスターペレットMB-A(シリカ-1含有)、および粒子YとしてマスターペレットMB-B(シリカ-2含有)を、P2層に含有させる粒子としてマスターペレットMB-H(シリカ-8含有)、マスターペレットMB-I(シリカ-9含有)とをそれぞれ180℃で2時間半減圧乾燥した後、粒子含有量が表2に記載のP1層、P2層、P3層の量になるようにそれぞれ配合し、各原料を3台押出機に供給し、溶融押出してフィルタで濾過した後、フィードブロックにてP1層/P3層/P2層と積層するように合流させた後、Tダイを介し25℃に保った冷却ロール上に静電印可キャスト法を用いて巻き付け冷却固化して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムをロール温度が25℃に設定された除電ロールを通した後、逐次二軸延伸機により表3に記載の条件にて、長手方向に3段延伸を用いて4.0倍、および幅方向に4.5倍、トータル倍率18倍に延伸した。その後、定長下220℃で熱処理を施し、幅方向に弛緩処理を施すことで厚み16μmのポリエステルフィルムを得た。
Figure 2022079091000002
Figure 2022079091000003
得られたポリエステルフィルムの構成、含有粒子解析、表面特性、フィルム特性は表4、5に示す通りであった。生産適性・用途適性評価は表6に示す通りであり、巻取りロールのキズやシワが少なく、微細配線パターンのフォトレジスト評価においても、レジスト配線欠点、および線状欠陥が抑制され、配線高さ均一性が非常に良好なドライフィルムレジスト用途に好適に使用できるフィルムであった。
Figure 2022079091000004
Figure 2022079091000005
Figure 2022079091000006
(実施例2~4)
実施例2~4では、P1層に含有させる粒子などを表2、3に記載の通りとした以外は、実施例1と同様にして厚み16μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの構成、含有粒子解析、表面特性、フィルム特性は表4、5に示す通りであり、生産適性・用途適性評価を表6に示す通りであった。実施例2では、実施例1に比べてレジスト配線欠点および配線高さ均一性が悪化したが実用の範囲内であり、その他特性は実施例1と同様に良好なフィルムであった。実施例3、4ではロール巻取り時のシワおよび線状欠陥が実施例1に比べて若干悪化したが、どちらも実用の範囲内であった。その他特性は実施例1と同様に良好なフィルムであった。
(実施例5、6)
実施例5、6では、P1層に含有させる粒子などを表2、3に記載の通りとした以外は、実施例1と同様にして厚み16μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの構成、含有粒子解析、表面特性、フィルム特性は表4、5に示す通りであった。
生産適性・用途適性評価は表6に示す通りであった。レジスト配線欠点が悪化したが実用に問題の無い範囲であった。また、線状欠陥が実施例1に比べて悪化したが、こちらも実用の範囲内であった。その他特性は実施例1と同様に良好なフィルムであった。
(実施例7)
実施例7では、表3に記載の通り、縦延伸の延伸方式を1段延伸とした以外は実施例1と同様にして厚み16μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの構成、含有粒子解析、表面特性、フィルム特性は表4、5に示す通りであった。
生産適性・用途適性評価は表6に示す通りであり、巻取ったロールのキズおよびシワの発生が実施例1に比べて悪化するとともにレジスト配線欠点と線状欠陥が実施例1に比べて悪化したが、実用の範囲内であった。その他特性は実施例1と同様に良好なフィルムであった。
(実施例8、9)
実施例8、9では、粒子YとしてP1層に含有させた粒子(シリカ-2)の濃度を表2に記載の通りに変更した以外は実施例1と同様にして厚み16μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの構成、含有粒子解析、表面特性、フィルム特性は表4、5に示す通りであった。
生産適性・用途適性評価は表6に示す通りであり、実施例8では、レジスト配線欠点および配線高さ均一性が実施例1に比べ悪化したが、どちらも実用の範囲内であった。その他特性は実施例1と同様に良好なフィルムであった。
実施例9では、実施例1より巻取りロールのシワおよび線状欠陥が悪化したが、どちらも実用の範囲内であった。その他特性は実施例1と同様に良好なフィルムであった。
(実施例10、11)
実施例10、11では、P2層に含有させる粒子などを表2、3に記載の通りとした以外は実施例1と同様にして厚み16μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの構成、含有粒子解析、表面特性、フィルム特性は表4、5に示す通りであった。
生産適性・用途適性評価は表6に示す通りであり、実施例10では、レジスト配線欠点が実施例1より悪化したが実用の範囲内であった。その他特性は実施例1と同様に良好なフィルムであった。
実施例11では、巻取りロールのシワ発生は実施例1より悪化したが実用の範囲内であった。その他特性は実施例1と同様に良好なフィルムであった。
(実施例12)
P1層に含有させる粒子のマスターペレットを、表2に記載の通り低濃度マスタに変更した以外は実施例1と同様にして厚み16μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの構成、含有粒子解析、表面特性、フィルム特性は表4、5に示す通りであった。
生産適性・用途適性評価は表6に示す通りであり、特性は実施例1と同様に良好なフィルムであった。
(実施例13、14)
二軸延伸後のフィルム厚みをそれぞれ10μm(実施例13)、および40μm(実施例14)とした以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの構成、含有粒子解析、表面特性、フィルム特性は表4、5に示す通りであり、生産適性・用途適性評価は表6に示す通りであり、厚みによらず特性は実施例1と同様に優れるフィルムであった。
(実施例15~17)
P1層に含有させる粒子などを表2、3に記載の通りとした以外は、実施例1と同様にして厚み16μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの構成、含有粒子解析、表面特性、フィルム特性は表4、5に示す通りであった。
生産適性・用途適性評価は表6に示す通りであり、実施例1と同様に良好なフィルムであった。
(比較例1)
P1層に粒子を含有させない以外は実施例1と同様の方法にて厚み16μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの構成、含有粒子解析、表面特性、フィルム特性は表4、5に示す通りであった。
生産適性・用途適性評価は表6に示す通りであり、実施例1に比べて巻取ったロールのキズ、シワが大幅に劣り、レジスト評価においてシワやキズのない部分に関する評価を行うことが困難であり、結果としてレジスト配線欠点、線状欠陥が大幅に劣るフィルムであった。このため、ドライフィルムレジスト用途には不適なフィルムであった。
(比較例2~5)
P1層に粒子を含有させる粒子濃度などを表2、3に記載の通りとした以外は実施例1と同様の方法にて厚み16μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの構成、含有粒子解析、表面特性、フィルム特性は表4、5に示す通りであった。
生産適性・用途適性評価は表6に示す通りであり、比較例2~4ではレジスト配線欠点が実施例1に比べて大幅に劣るフィルムとなった。
また、比較例5は比較例1と同様に、実施例1に比べてロール巻取り時のシワが大幅に劣り、レジスト評価においてその影響が排除できず実施例1よりレジスト配線欠点、線状欠陥が大幅に劣るフィルムとなった。
本発明のポリエステルフィルムは良好な巻取り性と感光性樹脂組成物(レジスト層)との密着性に優れるため、片面に感光樹脂組成物を堆積して使用することで、次世代向け微細配線を加工する工程にて好適に用いることができる。
1.前記A面を有する層(P1層)
2.突起を有する表面(A面)
3.走査型白色干渉顕微鏡測定におけるA面側の基準面(高さ0nm)
4.高さ10nm線(R10nm
5.高さ100nm線(R100nm
6.A面に存在する突起
7.前記A面とは反対の面を有する層(P2層)
8.中間層(P3層)

Claims (10)

  1. 次の(1)、(2)の要件を満たすポリエステルフィルム。
    (1) 片側表面をA面、反対面をB面とし、A面の算術平均表面粗さをSaA(nm)およびB面の平均粗さをSaB(nm)とした場合に、SaA≦SaBを満たす。
    (2) 前記A面が突起を有し、前記A面における高さ100nm以上の突起個数をN100(個/mm)とした場合、N100が 0.1以上10以下。
  2. 前記A面において、高さ10nm以上の突起個数をN10(個/mm)とした場合、N10が1000以上5000以下である請求項1に記載のポリエステルフィルム。
  3. 前記A面において、N10(個/mm)に対するN100(個/mm)の比率であるN100/N10が1.0×10-4以上4.0×10-3以下である請求項1または請求項2に記載のポリエステルフィルム。
  4. 前記A面の算術平均表面粗さSaA(nm)が1.0以上2.5以下である請求項1~3のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  5. 前記B面の算術平均表面粗さをSaB(nm)が2.1以上5.5以下である請求項1~4のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  6. 前記A面を構成する層(P1層)が粒子を含有し、当該粒子の個数基準粒度分布測定を行い、横軸に粒子径、縦軸に粒子の存在比率をプロットしたとき、粒子径が30nm以上100nm未満の領域と、粒子径が100nm以上400nm以下の領域にそれぞれ1つ以上のピークを有する請求項1~5のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  7. 前記A面を構成する層(P1層)が粒子を含有し、当該粒子の個数基準粒度分布測定を行い、横軸に粒子径、縦軸に粒子の存在比率をプロットしたとき、粒子径が500nmを超える領域にはピークを有さない請求項1~6のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  8. 前記P1層と、前記B面を構成する層(P2層)との間に粒子を実質的に含まないP3層を有する請求項1~7のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  9. 前記A面から前記B面までの厚みが10μm以上50μm以下である請求項1~8のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  10. ドライフィルムレジスト支持体用途に用いられる請求項1~9のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
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