JP7037124B2 - 盛土補強構造 - Google Patents

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本発明は、河川における堤防の盛土(提体)を補強する盛土補強構造に関する。
大きな河川の両岸には盛土式の堤防が構築されている。洪水時に盛土が崩壊して堤防が決壊すると沿岸地域に大きな被害をもたらすため、盛土の崩壊を防止するための対策が必要である。
このような対策のための従来工法として、たとえばコンクリートなどの遮水性の高い表面材で盛土の表面を被覆する方法がある。この方法によれば、盛土内部への水の浸透や盛土内側への漏水、洪水時における盛土内の浸潤線の変動による構造の不安定化等を抑止することは可能である。しかし、盛土の構造自体の強度を向上させるわけではないため、地震や大洪水等の大きな外力による盛土の破壊や、基礎地盤の軟化、変形に伴う堤体の不安定化を防止することはできない。このため、盛土への亀裂・破壊の発生や盛土高さの低下が生じれば、たとえ局所的であっても河川の氾濫につながってしまうという問題がある。
また、『軟弱地盤ハンドブック』(株式会社建設産業調査会)および『液状化対策工法設計・施工マニュアル(案)』(建設省土木研究所他)には、盛土の崩壊を防止するための対策として、盛土の法尻(のりじり)付近に鋼矢板壁等を打設する補強方法も掲載されている。このうち河川堤防の場合のものとして、法尻付近に打設した対向する鋼矢板間にタイロッドを架設するものが示されている。タイロッド架設に代えて自立の鋼矢板を打設することも行われる。
このような構造のものは、地震時における盛土基礎地盤の安定化に一定の効果があるが、頂部が法尻付近に位置する鋼矢板では、盛土高さを越える大規模洪水による洗掘、越水、浸透等による盛土自体の破壊を防止することができない。
これらをうけて、想定外の集中豪雨などで急激に水位が上昇することによる浸透破壊や越水による破堤を防止する目的で、盛土内に鋼矢板を設置し複合構造とする研究が行われている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、盛土内の左右の法肩部に鋼矢板を連結した地中鋼製壁体を配置すること(以下、(a)の構造)や、盛土の天端の中央部に鋼矢板を連結した地中鋼製壁体を配置すること(以下、(b)の構造)が記載されている。これらによれば、越水時にも地中鋼製壁体が天端の高さを確保し、破堤により堤外側(河川側)から堤内側(民家などが存在する側)へ水が一気に流入することを防止することができるため、盛土構造物の補強として効果的である。
しかし(a)の構造では、天端付近から雨水が流入した場合や、地中鋼製壁体の経年変化によって地下水が浸透した場合に、締め切り構造のため流入した水が抜けず、盛土のコア部分(構造骨格部)がゆるむため、地震時に盛土部も液状化し、地中鋼製壁体に作用する土圧が増大する危険性がある。
また、(b)の構造においても、鋼矢板壁付近に水みちが形成され、浸透によって盛土コア部分の損傷や沈下が生じるおそれがある。地震や浸透によって盛土が変形し、鋼矢板が不安定な構造となった状態で、越水によって河川から遠い側(堤内側)の盛土が洗掘された場合、鋼矢板が自立して安定を保てず、補強効果を得られない可能性がある。
想定する地震の規模や盛土の規模が大きい場合に、地震時の盛土の変形を低減する方法として、例えば二重鋼矢板壁を繋ぐ隔壁を、盛土の連続方向に所定間隔で設ける方法(特許文献2参照)や、鋼矢板の一部に補強部材を取り付ける方法(特許文献3参照)が提案されている。これらは盛土のコア部分への水の滞留による地震時の土圧増大に対して、鋼矢板の剛性を高めて変形を防止する方法であるが、比較的大きな剛性が必要となるため、材料コスト・施工コストが大きく合理的ではないと言える。
盛土のコア部分に水が滞留することを防止する工夫としては、例えば特許文献4には、堤内側の鋼矢板の一部を短尺にして、盛土の下端付近までの長さとし、これによって、矢板壁間にスリットを形成して透水性を確保するという構造が提案されている。
また、特許文献5には、鋼矢板壁の長さを盛土下端付近に留め、鋼矢板の不同沈下(ばらばらに沈下すること)防止のための、一部の鋼矢板のみ支持層まで根入れするという構造も提案されている。
これらの構造では、盛土内の透水性を確保することは可能であるが、盛土地盤深さの鋼矢板の耐力が、盛土内の鋼矢板の耐力よりも小さくなる。地震時に盛土地盤の液状化が生じた場合や、越水時に堤内側の盛土法面が洗掘された場合に、鋼矢板に生じる曲げモーメントは、盛土地盤内で最大となる分布が多いため、盛土地盤内が弱点となる構造(特許文献4ではスリット部、特許文献5では長尺の矢板部)は望ましくない。
特開2003-13451号公報 特許第6082916号 特許第6287359号 特許第5407995号 特許第5445351号
背景技術で示したように、洪水時の盛土の崩壊による破堤を防ぐためには、越水による盛土内側の洗掘が生じても、不安定とならない堤防構造になるような盛土の補強が必要となる。
しかし、特許文献1に示すような、盛土の天端に鋼矢板を2列に打込む方法では、盛土のコア部分に水が滞留することにより、補強前には生じなかった盛土の液状化が地震時に生じ、鋼矢板に大きな力が作用するため、堤防構造の安定を保てない可能性がある。
これに対し、特許文献2や特許文献3に示すような、鋼矢板の剛性を上げる対応では、特に盛土の規模が大きい場合や想定する地震動が大きい場合では、補強のための材料コストや施工コストが大きく不経済的な設計となる。
一方、特許文献4や特許文献5のような、盛土内の排水性を高める対応では、透水性を高めるために盛土地盤内の鋼矢板の剛性を犠牲にしており、地震時や越水時に鋼矢板の安定を保てない可能性がある。
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、盛土内の透水性を確保しつつ、地震後や越水時においても安定した構造を保ち、破堤することのない盛土補強構造を提供することを目的とする。
(1)本発明に係る盛土補強構造は、盛土基礎地盤上に連続するように設けられた盛土に、連続方向に沿って打設された複数のハット形又はU形又はZ形の鋼矢板を連結して形成された地中鋼製壁体が設けられたものであって、
前記地中鋼製壁体は、前記盛土基礎地盤における支持層に根入れされた長尺鋼矢板と、前記盛土の下端近傍まで到達する短尺鋼矢板によって構成され、
前記長尺鋼矢板は連続することなく間隔をあけて配置され、前記短尺鋼矢板は前記長尺鋼矢板間に1枚又は複数枚配置され、
前記長尺鋼矢板における、前記盛土基礎地盤に位置する部位に、補強部材が設けられ、
該補強部材は、前記長尺鋼矢板の開口側を閉じて閉断面を形成する部材であることを特徴とするものである。
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、隣接する前記長尺鋼矢板の連続方向の中心間距離をaとしたときに、中心間距離aが下式を満たすことを特徴とするものである。
a≦b×I/I
ただし、I:長尺鋼矢板における補強部材が設けられた断面における断面二次モーメント(m4)
:短尺鋼矢板の断面二次モーメント(m4)
b:短尺鋼矢板幅(mm)
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記補強部材は、前記長尺鋼矢板におけるフランジ部及びウェブ部で形成される断面と面対称な断面形状を有する部材であることを特徴とするものである。
(4)また、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のものにおいて、前記補強部材は、複数が離散的に設けられており、補強部材間の距離Lが下式を満たすことを特徴とするものである。
Figure 0007037124000001
(5)また、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のものにおいて、前記地中鋼製壁体は2列設けられており、該地中鋼製壁体を構成する前記長尺鋼矢板は、開口側を外側に向けて、ウェブ部を対向させるように配置されていることを特徴とするものである。
本発明に係る盛土補強構造においては、地中鋼製壁体を、盛土基礎地盤における支持層に根入れされた長尺鋼矢板と、盛土の下端近傍まで到達する短尺鋼矢板によって構成し、前記長尺鋼矢板は連続することなく間隔をあけて配置され、前記短尺鋼矢板は前記長尺鋼矢板間に1枚又は複数枚配置され、前記長尺鋼矢板における、前記盛土基礎地盤に位置する部位に、補強部材が設けられ、該補強部材は、前記長尺鋼矢板の開口側を閉じて閉断面を形成する部材であることにより、盛土内の透水性を確保しつつ、地震後や越水時においても安定した構造を保ち、破堤を防止することができる。
本発明の実施の形態に係る盛土補強構造の説明図である。 図1に示した盛土補強構造の要部の斜視図である。 図1に示した盛土補強構造における鋼矢板壁の説明図である。 図3に示した鋼矢板壁における長尺鋼矢板の好ましい配置間隔を決定する方法の説明に関し、解析条件の説明図である(その1)。 図3に示した鋼矢板壁における長尺鋼矢板の好ましい配置間隔を決定する方法の説明に関し、解析条件の説明図である(その2)。 解析結果を示すグラフである。 図3に示した長尺鋼矢板における好ましい補強間隔を決定する方法の説明に関し、解析条件の説明図である。 図3に示した長尺鋼矢板における好ましい補強間隔を決定する方法の説明図である(その1)。 図3に示した長尺鋼矢板における好ましい補強間隔を決定する方法の説明図である(その2)。 図3に示した長尺鋼矢板における好ましい配置の向きを決定する方法に関し、解析条件の説明図である。 図3に示した長尺鋼矢板における好ましい配置の向きを決定する方法に関し、正曲げ、負曲げの説明図である。 解析結果を示すグラフである。 実施の形態の盛土補強構造によって得られる効果を説明する図である。 実施の形態の盛土補強構造の他の態様の説明図である(その1)。 実施の形態の盛土補強構造の他の態様の説明図である(その2)。 実施例の数値解析において補強対象とした盛土の説明図である。 実施例における比較例として二重鋼矢板を連続配置した場合の盛土補強構造の説明図である。 実施例における発明例の盛土補強構造の説明図である。 実施例における解析条件の説明図であって、盛土のメッシュと地震波を示す図である。 補強なしの場合の解析結果を示す図である。 鋼矢板を連続配置した場合の解析結果を示す図である。 本発明例の解析結果を示す図である。 実施例における解析結果を示すグラフであって、盛土の沈下量の時間変化を示すグラフである。 実施例における解析結果を説明する図であって、地震後の鋼矢板の形状を示す図である。
本実施の形態に係る盛土補強構造1は、図1、図2に示すように、盛土基礎地盤3上に連続するように設けられた盛土5に、連続方向に沿って打設された複数のハット形の長尺鋼矢板7及び短尺鋼矢板9を連結して形成された地中鋼製壁体11が設けられたものである。
以下、各構成要素を詳細に説明する。
<盛土>
盛土5は、河川13の両側の盛土基礎地盤3上に形成されており、盛土基礎地盤3の下方には支持層15が形成されている。盛土基礎地盤3は、上方の地層が地震時において液状化する液状化層となり、液状化層の下方は非液状化層となる(図16参照)。
<地中鋼製壁体>
地中鋼製壁体11は、前述のように、長尺鋼矢板7と短尺鋼矢板9によって形成され、図1に示すように、盛土5内に配置されている短尺部、その下方であって長尺鋼矢板7に後述の補強部材19が取り付けられた補強部、その下方の長尺部から構成されている。
本実施の形態では、2枚の地中鋼製壁体11が互いに対向して法肩付近に打設され、両者がタイロッド等の連結材17で連結されている。
以下、長尺鋼矢板7と短尺鋼矢板9について詳細に説明する。
《長尺鋼矢板》
長尺鋼矢板7は、フランジ部7aとウェブ部7bを有するハット形の鋼矢板であり、その下端が支持層15に根入れされている。
そして、長尺鋼矢板7における、盛土基礎地盤3に位置する部位の一部に、補強部材19が離散的に設けられている。長尺鋼矢板7に補強部材19を取り付けることで、鋼矢板の変形性能を確保しつつ、盛土基礎地盤3においても連続鋼矢板壁と同等以上の剛性を確保することができるようになる。
また、本実施の形態の補強部材19は、図2に示すように、長尺鋼矢板7や短尺鋼矢板9と同じようにフランジ部19aとウェブ部19bを有するハット形断面の部材である。そして、補強部材19のウェブ部19bを長尺鋼矢板7のウェブ部7bに対向させて、長尺鋼矢板7の開口側を閉じて閉断面を形成するように接合されている。
このように、長尺鋼矢板7における補強部分を、長尺鋼矢板7と同一断面の補強部材19を面対称に接合した閉断面とすることで、地中鋼製壁体11が安定して自立するとともに、長尺鋼矢板7の引き抜き耐力も向上するため、越水時における地中鋼製壁体11の倒壊に対する抵抗力も大きくなる。
《短尺鋼矢板》
短尺鋼矢板9は、長尺鋼矢板7と同様にフランジ部9aとウェブ部9bを有するハット形の鋼矢板であり、その下端は盛土5の下端近傍まで打設されている。
上記のような長尺鋼矢板7と短尺鋼矢板9によって構成された地中鋼製壁体11は、前述のように、長尺鋼矢板7は連続することなく間隔をあけて配置され、短尺鋼矢板9は長尺鋼矢板7間に1枚又は複数枚配置されている。より具体的には、隣り合う長尺鋼矢板7の間に3枚の短尺鋼矢板9を配置している。
このように、長尺鋼矢板7が盛土5の連続方向に連続することなく、必ず短尺鋼矢板9が配置されるようにすることで、長尺鋼矢板7の間隔を大きくすることができ、地震時の液状化層から地中鋼製壁体11にかかる土圧を受け流すことができるとともに、施工期間の短縮とコストの縮減効果も期待できる。
本発明の特徴の一つとして、長尺鋼矢板7における盛土基礎地盤3に位置する部位に補強部材19を設けているが、その理由について以下説明する。
長尺鋼矢板7の断面二次モーメント(m4)をIL0、短尺鋼矢板9の断面二次モーメント(m4)をIS、補強部材19付きの長尺鋼矢板7の断面二次モーメント(m4)をIL、長尺鋼矢板7の中心間の距離(m)をa、短尺鋼矢板9の中心間の距離をbとすると(図3参照)、長尺鋼矢板7の平均的な断面二次モーメント(m4/m):IML0、補強部材19付きの長尺鋼矢板7の平均的な断面二次モーメント(m4/m):IML、短尺鋼矢板9の平均的な断面二次モーメント(m4/m):IMSはそれぞれ以下のようになる。
IML0=IL0×1/a ・・・(1)
IML=IL×1/a ・・・(2)
IMS=IS×1/b ・・・(3)
長尺鋼矢板7は間隔をあけて配置されているため、上式に示されるように、短尺鋼矢板9と同断面であれば、連続的に配置された短尺部よりも平均的な断面二次モーメントは小さくなる。
このとき、長尺鋼矢板7における補強部材19を設けた部位が、短尺鋼矢板9と同等以上の剛性を確保するためには、補強部材19付の長尺鋼矢板7の平均的な断面二次モーメントIMLが、短尺鋼矢板9の平均的な断面二次モーメントIMS以上となればよい。すなわち、IML≧IMSとなり、この式に上記の(2)式、(3)式を代入して整理すると、a≦b×IL/ISを満たす間隔aで長尺鋼矢板7を配置することで、盛土基礎地盤3においても盛土5内の連続鋼矢板壁と同等以上の剛性を確保することができるようになる。
補強部材19は、鋼矢板継手部が矢板幅方向に開く変形を拘束するように配置しているが、これは以下に示すような三次元数値解析の結果に基づくものである。
三次元数値解析は、図4に示すように、鋼矢板21を幅方向に連続に配置した場合(図4(a))、鋼矢板21を単独で配置した場合(図4(b))、鋼矢板21における継手部の幅方向の変形を拘束した状態で単独で配置場合(図4(c))、の3つのケースで境界条件を変更し、曲げ解析を行って変形性能を比較した。
なお、図4(a)の場合は、鋼矢板21の一端はxyz変位固定、他端はxz変位固定、中間部はx変位固定、yz回転固定とした。また、図4(b)の場合は、鋼矢板21の一端はxyz変位固定、他端はxz変位固定とした。また、図4(c)の場合は、鋼矢板21の一端はxyz変位固定、他端はxz変位固定、中間部はx変位固定とした。
解析は、図5に示すように、両端部に鋼矢板21の内側に向けた曲げ荷重を付与し、鋼矢板21の中間部の曲率を出力とした。
解析の結果、図6に示すように、単独で配置した場合には降伏モーメントに達した後に耐力低下が生じるため、変形性能が小さい。これに対して、連続に配置した場合及び継手部の幅方向の変形を拘束した場合には降伏モーメントに達した後も耐力低下が生じておらず、ほぼ同等に変形性能が向上していることが分かる。
なお、補強部材19は長尺鋼矢板7の一部に閉断面を形成できるものであればよいが、本実施の形態のように、長尺鋼矢板7と面対称な略コ字形状の補強部材19を用いることで、補強部の断面剛性を効率よく確保できるので好ましい。また、補強部分を面対称な閉合断面とすることで、地中鋼製壁体11が安定して自立するとともに、長尺部の引き抜き耐力も向上するため、越水時における地中鋼製壁体11の倒壊に対する抵抗力も大きくなる。補強部材19は、盛土基礎地盤3内の全部の長尺鋼矢板7に配置されても良いし、曲げモーメントが大きく発生する一部に連続的に設けられてもよい。さらに、長尺鋼矢板7の耐力低下を防ぎ変形性能を確保できるのであれば、離散的に補強部材19が配置されてもよい。
本実施の形態では、長尺鋼矢板7に補強部材19を所定の間隔で離散的に設けているが、このような場合において、好ましい所定の間隔について検討したので、以下説明する。
図7は解析モデルの説明図であり、鋼矢板21の一端はxyz変位固定、他端はxz変位固定、中間部には所定間隔Lで補強部分を設けてx変位固定とした。
上述の解析で、鋼矢板21が単独で配置されている場合は、降伏モーメントに達した後に耐力低下が生じるため、鋼矢板21が連続的に配置されている場合に比べて、変形性能が小さいことが分かった。盛土5の補強効果を数値解析で検討する際は、鋼矢板21をはり要素としてモデル化する場合が多い。鋼矢板21の曲げモーメント-曲率の関係を、全塑性モーメントを折れ点とする完全バイリニアモデルとすることを想定し、はり要素における鋼矢板21の変位が急増する(ヒンジ化する)までの面積S0と、三次元数値解析における鋼矢板21の耐力低下が生じるまでの面積Sが同等となるための補強部材19の配置間隔Lを調べた(図8参照)。
解析は降伏強度が異なる三種類の鋼材について行った。面積S0については、図8(b)に示す関係から計算によって求めることができる。
Lを0.5mごとに大きい方から小さい方へ変化させ、解析によって得られる面積Sが面積S0より大きくなるときの最大値を縦軸に、(b/t)/(235/fy)0.5を横軸として整理すると、図9に示すようなグラフが得られる。図9に示すグラフの近似直線(y=-0.0788x+8.4265)を含む下方の領域であれば、完全バイリニアモデルの想定と同等以上の変形性能を確保できる。なお、図9の横軸のパラメータは、欧州構造基準Eurocodeにおける鋼矢板21の変形性能の分類パラメータを引用している。
よって、y≦-0.0788x+8.4265におけるyをLにxを、(b/t)/(235/fy)0.5に置き換えることで、下記に示す(4)式が得られ、(4)式を満たす間隔で補強部材19を配置することで、上述のように、完全バイリニアモデルの想定と同等以上の変形性能を確保できる。
Figure 0007037124000002
なお、地震時に長尺鋼矢板7にかかる力は、地盤の水平変位が生じることによる受動的な土圧となる。液状化層の厚さや盛土5の大きさ等によって長尺鋼矢板7に作用する土圧の分布は変化するが、一般的に支持層15付近の地盤の水平変位は小さいため、長尺鋼矢板7にかかる力は小さい。そのため、長尺鋼矢板7における支持層15付近には補強部材19を設けず、地震時に地盤の水平変位が大きい領域に補強範囲を限定することで経済的な設計となる。
また、盛土5の両法肩付近に地中鋼製壁体11を2列配置する場合、地震時における地盤の水平変位は、地中鋼製壁体11間の内側から外側に向かって生じる。地中鋼製壁体11の短尺部(図1参照)は、対称な断面をもつため、力がかかる方向によって抵抗力が変化することはない。しかし、長尺部(図1参照)は対称な断面ではないため、力のかかる向きによって、の抵抗力に差が生じる。この点について、3次元数値解析を行って確認した。
図10は解析モデルの説明図であり、鋼矢板21の一端はxyz変位固定、他端はxz変位固定とし、中間点を出力点とした。
解析の結果、図11(a)に示す正曲げの方向が、図11(b)に示す負曲げよりも抵抗力が大きいことが分かった(図12参照)。すなわち、長尺部は、鋼矢板21の継手の無い背面を盛土5側に向けること、換言すれば開口側を外側(法面側)に向けることで、より構造の安定度が増す。この場合、補強部材19は、図2に示すように、自ずと盛土5の法面側につくことになる。
以上のように構成された、本実施の形態の盛土補強構造1によれば、盛土5内の透水性を確保しつつ、地震後や越水時においても安定した構造を保ち、破堤を防止することができる。
このような本実施の形態の盛土補強構造1の効果を図13に基づいて具体的に説明する。
図13は、(a)に示すように、(i)補強なしの場合、(ii)支持層15まで打設した二重鋼矢板23による補強の場合、(iii)図1に示す発明例の場合、の3つの場合の比較を示す図である。
経年変化による地下水の状態に関しては、図13(b)に示すように、(i)の補強なしの場合には、雨水が浸透するので、時間の経過によって地下水位は盛土5がない場合と同様の水位に戻る。(ii)の二重鋼矢板補強の場合には、盛土5から浸透した水が鋼矢板間で地下水として滞留する。(iii)の本発明例では、浸透した雨水は長尺鋼矢板7の隙間から外部に排水され、地下水の上昇にはならない。
地震時の影響に関しては、図13(c)に示すように、(i)補強なしの場合、液状化により盛土基礎地盤3が流動し、盛土5が沈下する可能性がある。(ii)の二重鋼矢板補強の場合には、地下水位が上昇しているため、盛土5部分も液状化し、鋼矢板21への作用力が大きくなり鋼矢板21が塑性化する恐れがある。(iii)の本発明例では、盛土5の沈下は避けられないが、鋼矢板21が天端を保持するので越水の危険を回避でき、かつ長尺鋼矢板7間に隙間があるので土圧を受け流すことができるため、鋼矢板21の塑性化の恐れがない。
洪水時の影響に関しては、図13(d)に示すように、(i)補強なしの場合、越水により盛土5背面が洗堀され、破堤によって被害が大きくなる可能性がある。(ii)の二重鋼矢板補強の場合には、洪水が地震後に生じた場合には二重鋼矢板23が塑性化している可能性が高く、越水時に二重鋼矢板23が不安定になる。(iii)の本発明例では、長尺鋼矢板7が安定しているので、越水時でも地中鋼製壁体11が不安定になることはない。
なお、越水時の破堤を防止する観点では、盛土5が沈下しても地中鋼製壁体11が鉛直高さを保って自立していれば問題ないが、例えば地震後に盛土5上を緊急車両が通行するといった想定で、盛土5の天端高さを確保する必要がある場合は、図14に示すように、地中鋼製壁体11を2列として鋼矢板頭部を一体化させた頂版25を設けることで、通行路を確保することができる。
上記の説明では、対向する地中鋼製壁体11を一対設ける例を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、図15に示すように、盛土5の幅方向中央部に1枚の地中鋼製壁体11を設ける場合も含まれる。この場合であっても、盛土5が沈下しても地中鋼製壁体11が鉛直高さを保って自立するので、越水時の破堤を防止するという効果を奏することはできる。
もっとも、地震後や越水時により安定した構造を確保するには、図1に示したように、地中鋼製壁体11を2列として、連結材17で互いに結合するのが望ましい。
以上、長尺鋼矢板7、短尺鋼矢板9とも、ハット形鋼矢板の場合について説明したが、ハット形鋼矢板以外にも、U形又はZ形鋼矢板の場合も本発明の適用が可能である。
地震時における本発明の効果を確認するために、数値解析を行ったので、以下これについて説明する。
数値解析は、図16に示す構造の盛土5について、(i)補強なしの場合、(ii)対向する2枚の鋼矢板からなる二重鋼矢板23を連続的に配置した場合(図17参照)、(iii)本発明を適用した場合(図18参照)を比較するというものである。なお、図16に示すN値は、JIS A 1219で定められた標準貫入試験より定まる値である。
使用した鋼矢板は45Hハット形鋼矢板であり、その仕様は以下の表に示す通りである。また、(iii)の本発明例では、長尺鋼矢板7を3.6mピッチで配置し、短尺部は8m、補強部は9m、長尺部は6mとした。また、(ii)、(iii)共に連結材17としてのタイロッド(φ36mm)を2.7mピッチで設置した。
Figure 0007037124000003
解析手法は、地盤の非線形性を考慮した、時刻歴応答解析である。図19(a)に示す盛土5の解析メッシュに、図19(b)で示すような地震波形を与えて地盤の変形を逐次計算し、地震後の盛土全体の変形形状と盛土天端の時間ごとの沈下量を比較した。また、(ii)の二重鋼矢板23を連続配置した場合と、(iii)の本発明を適用した場合については、地震後の鋼矢板の変形形状を比較した。
変形形状と沈下量に関し、(i)の補強なしでは、形状の変形量が大きく(図20参照)、沈下の時間変化は図23に示す通りであり、最終的な沈下量は198cmであった。(ii)の二重鋼矢板23を連続配置した場合には、形状の変形量は小さく(図21参照)、沈下の時間変化は図23に示す通りであり、最終的な沈下量は73cmであった。(iii)の本発明を適用した場合には、形状の変形量は(ii)の場合より若干大きいものの(i)の場合よりは小さく(図22参照)、沈下の時間変化は図23に示す通りであり、最終的な沈下量は81cmであった。このように、(ii)の場合と(iii)の場合では、地震後の盛土5の変形形状に大きな差はなく、盛土天端の沈下量も同程度であることが分かる。
また、図24に示すように、地震後の鋼矢板の形状についても、(ii)の場合と(iii)の場合で同程度であることが分かる。
以上のように、地震後の盛土5の変形形状及び鋼矢板の形状ともに、本発明例は鋼矢板を連続的に配置したものと同等であり、これに加えて、本発明例は地下水の上昇による問題を生ずることがない。
1 盛土補強構造
3 盛土基礎地盤
5 盛土
7 長尺鋼矢板
7a フランジ部
7b ウェブ部
9 短尺鋼矢板
9a フランジ部
9b ウェブ部
11 地中鋼製壁体
13 河川
15 支持層
17 連結材
19 補強部材
19a フランジ部
19b ウェブ部
21 鋼矢板
23 二重鋼矢板
25 頂版

Claims (5)

  1. 盛土基礎地盤上に連続するように設けられた盛土に、連続方向に沿って打設された複数のハット形又はU形又はZ形の鋼矢板を連結して形成された地中鋼製壁体が設けられた盛土補強構造であって、
    前記地中鋼製壁体は、前記盛土基礎地盤における支持層に根入れされた長尺鋼矢板と、前記盛土の下端近傍まで到達する短尺鋼矢板によって構成され、
    前記長尺鋼矢板は連続することなく間隔をあけて配置され、前記短尺鋼矢板は前記長尺鋼矢板間に1枚又は複数枚配置され、
    前記長尺鋼矢板における、前記盛土基礎地盤に位置する部位に、補強部材が設けられ、
    該補強部材は、前記長尺鋼矢板の開口側を閉じて閉断面を形成する部材であり、
    隣接する前記長尺鋼矢板の連続方向の中心間距離をaとしたときに、中心間距離aが下式を満たすことを特徴とする盛土補強構造。
    a≦b×I /I
    ただし、I :長尺鋼矢板における補強部材が設けられた断面における断面二次モーメント(m 4 )
    :短尺鋼矢板の断面二次モーメント(m 4 )
    b:短尺鋼矢板幅(mm)
  2. 盛土基礎地盤上に連続するように設けられた盛土に、連続方向に沿って打設された複数のハット形又はU形又はZ形の鋼矢板を連結して形成された地中鋼製壁体が設けられた盛土補強構造であって、
    前記地中鋼製壁体は、前記盛土基礎地盤における支持層に根入れされた長尺鋼矢板と、前記盛土の下端近傍まで到達する短尺鋼矢板によって構成され、
    前記長尺鋼矢板は連続することなく間隔をあけて配置され、前記短尺鋼矢板は前記長尺鋼矢板間に1枚又は複数枚配置され、
    前記長尺鋼矢板における、前記盛土基礎地盤に位置する部位に、補強部材が設けられ、
    該補強部材は、前記長尺鋼矢板の開口側を閉じて閉断面を形成する部材であり、
    前記補強部材は、複数が離散的に設けられており、補強部材間の距離Lが下式を満たすことを特徴とする盛土補強構造。
    Figure 0007037124000004
  3. 隣接する前記長尺鋼矢板の連続方向の中心間距離をaとしたときに、中心間距離aが下式を満たすことを特徴とする請求項2に記載の盛土補強構造。
    a≦b×I /I
    ただし、I :長尺鋼矢板における補強部材が設けられた断面における断面二次モーメント(m 4 )
    :短尺鋼矢板の断面二次モーメント(m 4 )
    b:短尺鋼矢板幅(mm)
  4. 前記補強部材は、前記長尺鋼矢板におけるフランジ部及びウェブ部で形成される断面と面対称な断面形状を有する部材であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の盛土補強構造。
  5. 前記地中鋼製壁体は2列設けられており、該地中鋼製壁体を構成する前記長尺鋼矢板は、開口側を外側に向けて、ウェブ部を対向させるように配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の盛土補強構造。
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