JP7036624B2 - 硬質表面用殺黴洗浄剤組成物 - Google Patents
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特許文献2にはフェノキシエタノールと両性界面活性剤、及び塩化マグネシウムを含有し、洗浄時や濯ぎ時のぬるつきが改善された抗菌性の液体洗浄剤組成物が開示されている。
特許文献3には、アニオン性、非イオン性、カチオン性、双極性、両性界面活性剤及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種類の界面活性剤と、少なくとも1種類の有機溶媒及び/又は少なくとも1種類のヒドロトロープと、単一の抗菌性活性物質及び/又は少なくとも1種類の金属イオン封鎖剤と、を含む、洗浄及び消毒用食器手洗い用液体洗剤組成物が開示されている。
<(a)成分>
本発明の(a)成分は、水溶性無機塩である。
ここで、(a)成分の無機塩について、水溶性であるとは、25℃の脱イオン水100gに5g以上溶解するものを指す。
本発明の(b)成分は、非イオン性殺菌剤である。
(b)成分は、殺黴効果の観点から、置換基を有してもよい芳香族基及びヒドロキシ基を有し、且つ分子量が106以上300以下の非イオン性殺菌剤が好ましい。芳香族基は、芳香族炭化水素基であり、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基が挙げられ、これら芳香族基は置換基を有してもよい。置換基としては、フルオロ基、クロロ基などのハロゲノ基、メチル基、エチル基、イソプロピル基などのアルキル基、カルボキシ基、アミノ基、スルホ基、アルコキシ基などが挙げられ、これらの置換基は1種又は2種以上を有してもよい。
R1bO-(R2bO)l-H (b-1)
(式中、R1bは、芳香族基を有し、且つ総炭素数6以上11以下の炭化水素基であり、lは0又は1の整数であり、R2bは炭素数2以上4以下のアルキレン基である。但し、該化合物の分子量は106以上300以下である。)
lは、殺黴効果の観点から、0が好ましい。
本発明の(c)成分は、非イオン界面活性剤(但し(b)成分を除く)である。非イオン界面活性剤としては、炭素数8以上18以下のアルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル、炭素数8以上18以下のアルケニル基を有するポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、炭素数8以上18以下の脂肪酸基を有するポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、炭素数8以上18以下のアルキル基を有するアルキルグリコシド、炭素数8以上18以下のアルキル基を有するアルキルポリグリコシド、炭素数8以上18以下の脂肪酸基を有するショ糖脂肪酸エステル、炭素数8以上18以下のアルキル基を有するアルキルポリグリセリルエーテル等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。中でも洗浄性の観点から、炭素数8以上18以下のアルキル基を有しエチレンオキサイド平均付加モル数が2以上50以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。
R1c-O-[(C2H4O)s(C3H6O)t]-H (c1)
〔式中、R1cは、炭素数8以上、好ましくは10以上、そして、18以下、好ましくは16以下のアルキル基又はアルケニル基である。s及びtは平均付加モル数であって、sは2以上、好ましくは4以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは10以上、そして、50以下、好ましくは40以下、より好ましくは20以下の数、tは0以上、好ましくは1以上、そして、5以下、好ましくは3以下の数であり、tは0であってもよい。(C2H4O)と(C3H6O)はランダム重合体又はブロック重合体であってもよい。〕
本発明の作用機序は明らかではないが以下のように考えられる。
黴は細胞膜より外側に厚い細胞壁を有することが知られており、黴の細胞壁はグルカン・キチン等で構成される多糖層、メラニン層、ハイドロフォービン層等により構成される。この細胞壁の存在により、大腸菌等の一般細菌と比較して、黴は細胞内部への殺菌剤の浸透性が低く、短時間で十分な殺黴効果が得られないことが課題であると考えられる。本発明の(a)成分を特定濃度含有する水溶液をハイドロフォービン等のタンパク質に作用させるとタンパク質の構造変化を引き起こし、その結果、本発明の(b)成分である非イオン性殺菌剤の黴菌の細胞内への浸透量が増加し、殺黴効果を付与できるものと考えられる。
しかしながら、この技術を洗浄剤に応用した場合、界面活性剤を含有すると殺黴効果が損なわれるという課題が生じる。これは(b)成分が界面活性剤に取り込まれるためと考えられる。本発明硬質表面用殺黴洗浄剤組成物では、(a)成分と(b)成分に、更に特定の界面活性剤を特定量含有することで殺黴性能及び皮脂洗浄力に優れる硬質表面用殺黴洗浄剤組成物を提供しえるものと考えられる。
(d)成分は、下記の(d1)~(d3)の化合物から選ばれる1種以上の溶剤が好ましい。
(d1):分子量が60以上500以下の脂肪族アルコール
(d2):分子量が60以上500以下の脂肪族グリコールエーテル
(d3):分子量が60以上500以下の脂肪族ジオール
R1dO-(R2dO)n-H (d2)
(式中、R1dは炭素数1以上8以下の脂肪族炭化水素基であり、R2dは炭素数2又は3のアルキレン基であり、nは1以上4以下の整数である。)
nは、殺黴効果の観点から、好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。
R3d-CH(OH)-(CH2)q-CH2OH (d3)
(式中、R3dは水素原子、炭素数1以上8以下の脂肪族炭化水素基、又はR4dOであり、R4dは脂肪族炭素数1以上8以下の炭化水素基であり、qは0又は1以上6以下の整数である。但し、化合物中の総炭素数が4以上10以下である。)
R4dは、炭素数2以上8以下のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、炭素数3以上8以下のアルキル基又はアルケニル基がより好ましく、炭素数4以上8以下のアルキル基又はアルケニル基が更に好ましい。
qは、殺黴効果の観点から、好ましくは1以下である。
ジオール(分子量:104、logP:0.19)、1,2-オクタンジオール(分子量:146、logP:1.68)、ペンチルグリセリルエーテル(分子量:162、logP:0.69)、及び1,8-オクタンジオール(分子量:146、logP:1.44)から選ばれる1種以上が挙げられ、殺黴効果と配合安定性の両立という観点から、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ペンタンジオール、プロピレングリコール、ペンチルグリセリルエーテル及び1,6-ヘキサンジオールから選ばれる1種以上が好ましく、1,2-ヘキサンジオール、ペンチルグリセリルエーテル及び1,2-ペンタンジオールから選ばれる1種以上がより好ましく、1,2-ヘキサンジオール、及びペンチルグリセリルエーテルから選ばれる1種以上が更に好ましい。
一般式(e31)中、R3e及びR4eは、それぞれ独立に、好ましくはメチル基である。
本発明の硬質表面用殺黴洗浄剤組成物において、界面活性剤の合計含有量((c)成分と(e)成分の合計含有量)は、殺黴効果の観点から、10質量%以下、好ましくは9質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下、より更に好ましくは4質量%以下である。
金属封鎖剤としては、アミノカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシキホスホン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上の化合物が好ましい。
ヒドロキシカルボン酸及びその塩としては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸及びその塩から選ばれる化合物が好ましい。ヒドロキシカルボン酸及びその塩としては、リンゴ酸、クエン酸及びその塩から選ばれる化合物が挙げられる。
ヒドロキシキホスホン酸及びその塩としては、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)及びその塩から選ばれる化合物が挙げられる。
金属封鎖剤の塩は、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などが挙げられる。好ましくはアルカリ金属塩であり、より好ましくはナトリウム塩又はカリウム塩である。
またサッカロマイセス(Saccharomyces)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属、ピキア(Pichia)属真菌、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、Pseudomonas putida等のシュードモナス(Pseudomonas)属細菌、大腸菌(Escherichia coli)、アルカリジェネス(Alcaligenes faecalis)、クレブシエラ(Klebsiellapneumoniae)、プロテウス(Proteus vulgaris)、セラチア(Serratia marcescense)、メチロバクテリウム(Methylobacterium)等のグラム陰性菌;黄色ブドウ球菌(Staphylococcusaureus)に代表されるグラム陽性菌に対しても高い殺菌作用効果を示す。
本発明の硬質表面処理方法は、本発明の硬質表面用殺黴洗浄剤組成物を、黴が存在する硬質表面に接触させて、殺黴及び洗浄を同時に行う硬質表面処理方法である。
本発明では、本発明の硬質表面用殺黴洗浄剤組成物を硬質表面に接触させた後、該表面を洗浄することができる。また本発明では、本発明の殺黴剤組成物を基体に担持させた清掃用物品により硬質表面を洗浄することができる。
硬質表面としては、浴室、浴槽、洗面器、タイル、化粧室、洗面台、鏡、台所まわりのシンク、カウンタートップ、水道まわり等の硬質表面が好適である。
前記硬質表面用殺黴洗浄剤組成物を希釈せずに硬質表面に接触させるとは、該硬質表面用殺黴洗浄剤組成物を、意図的に水などで希釈した後、硬質表面と接触させないことである。例えば、前記硬質表面用殺黴洗浄剤組成物を水滴等が付着した硬質表面と接触させたり、前記硬質表面用殺黴洗浄剤組成物を硬質表面に接触させた後、硬質表面に水滴が付着したりする場合は、前記硬質表面用殺黴洗浄剤組成物を希釈せずに、硬質表面に接触させると理解できる。
本発明の硬質表面処理方法は、前記硬質表面用殺黴洗浄剤組成物を、原液で、硬質表面に接触させるには、ボトルから直接塗布又は噴霧してもよく、ボトルとしては、例えば、スクイズボトル、スプレーボトル等が挙げられる。
また本発明の硬質表面用殺黴洗浄剤組成物を含浸させた清掃用物品使用時に、別途本発明の硬質表面用殺黴洗浄剤組成物を、被清掃物又は前記清掃用物品に、噴霧しながら使用してもよい。当該使用方法によって、より広い面積を清掃することができる。
放置した後は、通常、水ですすぐ。すすぐ際は、手などで機械力(物理的力)を掛けてもよく、単に水流ですすいでもよい。
なお、放置する際の温度は、室温でよく、例えば、10℃以上30℃以下が挙げられる。
(a)成分
・Na2SO4:硫酸ナトリウム、和光純薬工業(株)製
・フェノキシエタノール:和光純薬工業(株)製、分子量138
・ベンジルアルコール:和光純薬工業(株)製、分子量108
・エマルゲン108:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、一般式(c-1)中、R1cが炭素数12のアルキル基、sが6、tが0の化合物、花王(株)製
・BDG:ブチルジグリコール(分子量:162、logP:0.66)、日本乳化剤(株)製、(d2)
・ES-4.0K:ポリオキシエチレン(平均付加モル数4)アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、花王(株)製
住環境優先糸状菌Cladosporium属の環境分離株Cladsporiumsp. PA-4を、ポテトデキストロース平板寒天培地(BectonDickinson社製のPotato Dextrose Agar試薬を能書どおりに調製)上で25℃/7日間培養後、同寒天プレート上に胞子回収液((株)大塚製薬工場製の生理食塩水で調製した和光純薬工業(株)製の0.05%Tween80溶液)を4mL滴下して、コンラージ棒(日水製薬(株)製)でなでるように軽くこすることで菌液を回収した。その後回収した菌液を、ミラクロス(CALBIOCHEM社製)を用いて濾過することで菌糸を除去し、得られた液を遠心処理(10,000rpm,25℃,5min)し、上澄みを除去した。これらの操作を2、3回繰り返し、菌濃度を3.0×107~7.0×108CFU/mLに調製して試験胞子液とした。
浴室の浴槽に付着する皮脂汚れの組成をもとに調製したモデル皮脂汚れをクロロホルムに溶解させ、5質量%モデル皮脂汚れ溶液を調製した。この溶液にポリ塩化ビニル製プレート(サイズ7cm×2cm)を10秒間浸漬することにより、モデル皮脂汚れを前記プレートに製膜した後、1晩自然乾燥させた。なお、モデル皮脂汚れの組成は、リノール酸40質量%、オレイン酸20質量%、パルミチン酸20質量%、コレステロール10質量%及び流動パラフィン10質量%である。プレートの汚れ部分に、表1の硬質表面用殺黴洗浄剤組成物10μlを滴下し、25℃で1分放置後、水洗し、目視により下記基準で洗浄力を評価した。
◎:前記組成物を滴下した箇所の汚れが全て落ちた
〇:前記組成物を滴下した箇所の汚れが全ては落ちなかったが、半分以上の汚れは落ちた
△:前記組成物を滴下した箇所の汚れが落ちたが、半分より少ない量の汚れしか落ちなかった
×:前記組成物を滴下した箇所の汚れがほとんど落ちなかった
Claims (6)
- (a)アルカリ金属硫酸塩、アルカリ土類金属硫酸塩、アルカリ金属塩化物、及びアルカリ土類金属塩化物から選ばれる1種以上の水溶性無機塩[以下、(a)成分という]を0.1質量%以上5質量%以下、(b)非イオン性殺菌剤[以下、(b)成分という]を0.05質量%以上7質量%以下、(c)非イオン界面活性剤[但し(b)成分を除く、以下、(c)成分という]、及び水を含有し、(a)成分と(b)成分の合計含有量が1.5質量%以上10質量%以下であり、且つ界面活性剤の合計含有量が10質量%以下であり、25℃におけるpHが12未満である、硬質表面用殺黴洗浄剤組成物。
- (b)成分が、置換基を有してもよい芳香族基、及びヒドロキシ基を有し、且つ分子量が106以上300以下の非イオン性殺菌剤である、請求項1に記載の硬質表面用殺黴洗浄剤組成物。
- (b)成分が、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、フェニルジグリコール、トリクロサン、ダイクロサン、及びイソプロピルメチルフェノールから選ばれる1種以上の非イオン性殺菌剤である、請求項1又は2に記載の硬質表面用殺黴洗浄剤組成物。
- さらに(d)溶剤(但し、(b)成分を除く)を含有する、請求項1~3の何れか1項に記載の硬質表面用殺黴洗浄剤組成物。
- 25℃におけるpHが5以上9以下である、請求項1~4の何れか1項に記載の硬質表面用殺黴洗浄剤組成物。
- 請求項1~5の何れか1項に記載の硬質表面用殺黴洗浄剤組成物を、黴が存在する硬質表面に接触させて、殺黴及び洗浄を同時に行う硬質表面処理方法。
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