以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
[1.第1実施形態]
[1-1.シート製造装置の全体構成]
図1は、シート製造装置100の構成を示す模式図である。
シート製造装置100は、繊維を含む原料MAを繊維化して、新しいシートSに再生する再生処理を実行する。シート製造装置100は、複数の種別のシートSを製造可能であり、例えば、原料MAに添加物を混合することにより、用途に合わせて、シートSの結合強度や白色度の調製や、色、香り、難燃等の機能を付加することもできる。また、シート製造装置100は、シートSの密度や厚さ、サイズ、形状を調整可能である。シートSの代表的な例として、A4やA3の定型サイズの印刷用紙、床掃除用シート等の掃除用シート、油汚れ用シート、トイレ掃除用シート等のシート状の製品の他に、紙皿形状等が挙げられる。シート製造装置100は、本発明の繊維原料再生装置、及び、繊維処理装置に相当する。
シート製造装置100は、供給部10、粗砕部12、解繊部20、選別部40、第1ウェブ形成部45、回転体49、混合部50、堆積部60、第2ウェブ形成部70、搬送部79、成形部80、及び、切断部90を備える。粗砕部12、解繊部20、選別部40、及び、第1ウェブ形成部45は、原料MAを微細化してシートSの材料を得る解繊処理部101を構成する。また、回転体49、混合部50、堆積部60、第2ウェブ形成部70、成形部80、及び、切断部90は、解繊処理部101で得られる材料を処理してシートSを製造する製造部102を構成する。
供給部10は、原料MAを収容し、粗砕部12に原料MAを連続的に投入する自動投入装置である。原料MAは、繊維を含むものであればよく、例えば、古紙、廃棄紙、パルプシートである。
粗砕部12は、供給部10によって供給された原料MAを裁断する粗砕刃14を備え、原料MAを粗砕刃14により空気中で裁断して、数cm角の細片にする。細片の形状や大きさは任意である。粗砕部12は、例えばシュレッダーを用いることができる。粗砕部12で裁断された原料MAは、ホッパー9により集められて、管2を介して解繊部20に搬送される。
解繊部20は、粗砕部12によって裁断された粗砕片を解繊する。解繊とは、複数の繊維が結着された状態の原料MAを、1本または少数の繊維に解きほぐす加工である。原料MAは、被解繊物と呼ぶこともできる。解繊部20が原料MAを解繊することにより、原料MAに付着した樹脂粒やインク、トナー、にじみ防止剤等の物質を、繊維から分離させる効果も期待できる。解繊部20を通過したものを解繊物という。解繊物は、解きほぐされた解繊物繊維の他に、繊維を解きほぐす際に繊維から分離された樹脂粒や、インク、トナーなどの色剤や、にじみ防止材、紙力増強剤等の添加剤を含んでいてもよい。解繊物に含まれる樹脂粒は、原料MAの製造時に複数の繊維同士を結着させるために混合された樹脂である。解繊物に含まれる繊維の形状は、ひも(string)状や平ひも(ribbon)状である。解繊物に含まれる繊維は、他の繊維と絡み合っていない、独立した状態で存在してもよい。或いは、他の解きほぐされた解繊物と絡み合って塊状となり、いわゆる「ダマ」を形成している状態で存在してもよい。解繊部20は、微細化部に相当する。また、後述する解繊物MBは微細化物に相当する。
解繊部20は、乾式で解繊を行う。乾式とは、液体中ではなく、大気中(空気中)等の気中において、解繊等の処理を行うことを指す。解繊部20は、例えば、インペラーミルなどの解繊機を用いて構成することができる。具体的には、解繊部20は、回転するローター(図示略)、及び、ローター(図示略)の外周に位置するライナー(図示略)を備え、粗砕片をローターとライナーとの間に挟んで解繊する。
粗砕部12から解繊部20には、気流により粗砕片が搬送される。この気流を解繊部20が発生する構成であってもよいし、粗砕片や解繊物の搬送方向における解繊部20の上流または下流側にブロアー(図示略)を設けて、気流を発生させてもよい。また、解繊物は、気流により、解繊部20から管3を介して選別部40に移送される。解繊物を選別部40に搬送する気流は、解繊部20が発生させてもよいし、上述したブロアーの気流を利用してもよい。
選別部40は、解繊部20により解繊された解繊物に含まれる成分を繊維のサイズによって選別する。繊維のサイズとは、主に繊維の長さを指す。選別部40は、ドラム部41に解繊物を導入する導入口42、及び、ドラム部41から後述する第2選別物を排出する排出口44を有する。排出口44は管8により解繊部20に接続され、選別部40は、第2選別物を、管8を通じて解繊部20に戻す。
第1ウェブ形成部45は、選別部40で分離された材料をウェブ状に成形することにより、第1ウェブW1を形成する。
図2は、選別部40及び第1ウェブ形成部45の概略構成を示す図であり、要部側面視図である。
図1及び図2に示すように、選別部40は、ドラム部41と、ドラム部41を収容するハウジング部43とを有する。
ドラム部41は、例えば、篩を用いて構成される。具体的には、ドラム部41は、開口を有して篩として機能する網、フィルター、スクリーン等を備える。具体的には、ドラム部41は円筒形状であり、第1篩モーター40a(駆動部、篩駆動部)によって、円筒の軸を中心として回転駆動される。ドラム部41の周面の少なくとも一部が網となっている。ドラム部41の網は、金網、切れ目が入った金属板を引き延ばしたエキスパンドメタル、パンチングメタル等で構成される。図2に、ドラム部41の開口を符号41aで示す。第1篩モーター40aの動力によりドラム部41が動作する動作速度を、速度VBとする。速度VBはドラム部41の回転速度ということもできる。なお、ドラム部41の回転方向は図2に示す方向に限定されず、逆方向であってもよいし、第1篩モーター40aが回転方向を切り換えることによって往復動作してもよい。速度VBは、図2に矢印で示す方向の速度に限定されず、静止状態に対するドラム部41の相対的な速度を指す。
ドラム部41は、本発明の篩部に相当する。また、ドラム部41に導入される解繊物MB、及び、開口41aを通って篩われる第1選別物MCは、材料に相当する。
第1ウェブ形成部45は、メッシュベルト46と、張架ローラー47と、吸引部48と、を備える。メッシュベルト46は、無端形状の金属製ベルトであり、複数の張架ローラー47に架け渡される。メッシュベルト46は、張架ローラー47により構成される軌道を周回する。メッシュベルト46の軌道の一部は、ドラム部41の下方で平坦であり、メッシュベルト46は平坦面を構成する。
張架ローラー47のうちの1つは、メッシュベルト46を駆動する駆動ローラー47aである。駆動ローラー47aは、第1ベルトモーター47bによって駆動されて回転し、図中矢印で示す方向にメッシュベルト46を駆動する。第1ベルトモーター47bの駆動力によりメッシュベルト46が動作する動作速度を、速度VAとする。速度VAはメッシュベルト46の搬送速度ということもできる。
第1篩モーター40a、及び第1ベルトモーター47bには、サーボモーター、ステッピングモーター等の公知のモーターを用いることができる。第1篩モーター40aとドラム部41との間に、動力を伝達するギヤ、リンク、その他の伝達機構を設けてもよい。駆動ローラー47aと第1ベルトモーター47bとの間も同様である。
導入口42からドラム部41の内部に導入された解繊物MBは、ドラム部41の回転により、ドラム部41の開口41aを通過する通過物と、開口41aを通過しない残留物とに分けられる。開口41aを通過する通過物は、開口41aより小さい繊維または粒子を含み、これを第1選別物とし、符号MCで示す。残留物は、開口41aより大きい繊維や未解繊片やダマを含み、これを第2選別物と呼ぶ。第1選別物MCは、ハウジング部43内の内部を、第1ウェブ形成部45に向けて下降する。第2選別物は、上述したように、排出口44から管8により解繊部20に搬送される。
ドラム部41の回転により、開口41aを通過した第1選別物MCは、ハウジング部43の内部を、メッシュベルト46に向けて降下する。メッシュベルト46には、多数の開口が形成されている。ドラム部41から降下する第1選別物MCのうち、メッシュベルト46の開口より大きい成分がメッシュベルト46に堆積する。また、第1選別物MCのうちメッシュベルト46の開口より小さい成分は、開口を通過する。メッシュベルト46の開口を通過する成分を第3選別物Dとする。第3選別物Dは、解繊物に含まれる繊維のうちメッシュベルト46の開口より短い繊維や、解繊部20によって繊維から分離された樹脂粒、インク、トナー、にじみ防止剤等を含む粒子を含む。第1ウェブ形成部45は本発明の堆積部に相当し、メッシュベルト46は、本発明の受け部に相当する。第1篩モーター40aは篩駆動部に相当し、第1ベルトモーター47bは駆動部に相当する。
吸引部48は、メッシュベルト46の下方から空気を吸引する。吸引部48は、管23を介して第1集塵部27に連結される。第1集塵部27は、第3選別物を気流から分離するフィルターを有する。第1集塵部27の下流には、第1捕集ブロアー28が設置され、第1捕集ブロアー28は、第1集塵部27から空気を吸引する。
この構成により、メッシュベルト46に降下した第1選別物MCのうちサイズの小さい第3選別物Dは、第1捕集ブロアー28の吸引力によって吸引され、第1集塵部27のフィルターによって捕集される。第1集塵部27のフィルターを通過した空気は、管29により排出される。
吸引部48が吸引する気流により、ドラム部41から降下する第1選別物MCがメッシュベルト46に引き寄せられるので、堆積を促進する効果がある。
メッシュベルト46に堆積した第1選別物MCはウェブ形状となり、第1ウェブW1を構成する。
第1ウェブW1は、第1選別物に含まれる成分のうち、メッシュベルト46の開口より大きい繊維を主たる成分としており、空気を多く含み柔らかくふくらんだ状態に形成される。第1ウェブW1は、メッシュベルト46の移動に伴い回転体49に搬送される。
図1に戻り、回転体49は、モーター等の駆動部(図示略)に連結された基部49aと、基部49aから突出する突部49bを備え、基部49aが方向Rに回転することにより、突部49bが基部49aを中心として回転する。突部49bは、例えば、板状の形状を有している。図1の例では、基部49aに、4つの突部49bが等間隔に設けられている。
回転体49は、メッシュベルト46の軌道のうち平坦部分の端部に位置する。この端部ではメッシュベルト46の軌道が下方に屈曲しているため、メッシュベルト46が下方に屈曲して移動する。このため、メッシュベルト46が搬送する第1ウェブW1は、メッシュベルト46から突出して、回転体49に接触する。第1ウェブW1は、突部49bが第1ウェブW1に衝突することによって解きほぐされ、小さい繊維の塊となる。この塊は、回転体49の下方に位置する管7を通り、混合部50に搬送される。第1ウェブW1は、上述のように、繊維がメッシュベルト46に堆積して形成された柔らかい構造であるため、回転体49に衝突した際に容易に分断される。
回転体49の位置は、突部49bが第1ウェブW1と接触可能な位置であり、突部49bがメッシュベルト46と接触しない位置に設けられている。突部49bとメッシュベルト46とが最も接近する位置における相互間の距離は、例えば、0.05mm以上0.5mm以下とすることが好ましい。
混合部50は、第1選別物と、添加物とを混合する。混合部50は、添加物を供給する添加物供給部52と、第1選別物と添加物とを搬送する管54と、混合ブロアー56と、を有する。
添加物供給部52には、添加物を蓄積する添加物カートリッジ52aがセットされる。添加物カートリッジ52aは、添加物供給部52に着脱可能であってもよい。添加物供給部52は、添加物カートリッジ52aから添加物を取り出す添加物取出部52bと、添加物取出部52bにより取り出された添加物を管54に排出する添加物投入部52cとを備える。添加物取出部52bは、添加物カートリッジ52a内部の微粉または微粒子からなる添加物を繰り出すフィーダー(図示略)を備え、一部または全部の添加物カートリッジ52aから添加物を取り出す。添加物取出部52bにより取り出された添加物は、添加物投入部52cに送られる。添加物投入部52cは、添加物取出部52bが取り出した添加物を収容する。添加物投入部52cは、管54との連結部に開閉可能なシャッター(図示略)を備え、シャッターを開くことで、添加物取出部52bが取り出した添加物が管54に送り出される。
添加物供給部52から供給される添加物は、複数の繊維を結着させるための樹脂(結着剤)を含む。添加物に含まれる樹脂は、成形部80を通過する際に溶融して、複数の繊維を結着させる。この樹脂は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂であり、例えば、AS樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、などである。これらの樹脂は、単独または適宜混合して用いてもよい。
添加物供給部52から供給される添加物は、繊維を結着させる樹脂以外の成分を含んでもよい。例えば、製造されるシートSの種類に応じて、繊維を着色するための着色剤や、繊維の凝集や樹脂の凝集を抑制するための凝集抑制剤、繊維等を燃えにくくするための難燃剤等が含まれていてもよい。また、添加物は繊維状であってもよく、粉末状であってもよい。
混合ブロアー56は、管7と、堆積部60とを繋ぐ管54に気流を発生させる。また、管7から管54に搬送される第1選別物と、添加物供給部52により管54に供給される添加物とは、混合ブロアー56を通過する際に混合される。混合ブロアー56は、例えば、モーター(図示略)と、モーターにより駆動されて回転する羽根(図示略)と、羽根を収容するケース(図示略)を備える構成とすることができ、羽根とケースとが連結された構成であってもよい。また、混合ブロアー56が、気流を発生させる羽根に加え、第1選別物と添加物とを混合させるミキサーを備えてもよい。混合部50で混合された混合物は、混合ブロアー56が発生する気流により、堆積部60に搬送され、堆積部60の導入口62に導入される。
堆積部60は、混合物の繊維をほぐして、空気中で分散させながら第2ウェブ形成部70に降下させる。添加物供給部52から供給される添加物が繊維状である場合、これらの繊維も堆積部60で解きほぐされ、第2ウェブ形成部70に降下する。第2ウェブ形成部70は、堆積部60から降下する混合物を堆積させて、第2ウェブW2を形成する。
図3は、堆積部60及び第2ウェブ形成部70の概略構成を示す図であり、要部側面視図である。
図1及び図3に示すように、堆積部60は、ドラム部61と、ドラム部61を収容するハウジング部63とを有する。
堆積部60は、ドラム部61と、ドラム部61を収容するハウジング部63と、を有する。ドラム部61は、構成される円筒形状の構造体である。
ドラム部61は、例えばドラム部61と同様に、篩を用いて構成される。具体的には、ドラム部61は、開口を有して篩として機能する網、フィルター、スクリーン等を備える。具体的には、ドラム部61は円筒形状であり、第2篩モーター60a(駆動部、篩駆動部)によって、円筒の軸を中心として回転駆動される。ドラム部61の周面の少なくとも一部が網となっている。ドラム部61の網は、金網、切れ目が入った金属板を引き延ばしたエキスパンドメタル、パンチングメタル等で構成される。図3に、ドラム部61の開口を符号61aで示す。ドラム部61は、第2篩モーター60aの動力によって回転し、篩として機能し、ドラム部61の回転によって解きほぐされた混合物が開口61aを通過して降下する。ここで、導入口62から導入される混合物を符号MXで示す。
第2篩モーター60aの動力によりドラム部61が動作する動作速度を、速度VDとする。速度VDはドラム部61の回転速度ということもできる。なお、ドラム部61の回転方向は図3に示す方向に限定されず、逆方向であってもよいし、第2篩モーター60aが回転方向を切り換えることによって往復動作してもよい。速度VDは、図3に矢印で示す方向の速度に限定されず、静止状態に対するドラム部61の相対的な速度を指す。
ドラム部61の下方には第2ウェブ形成部70が配置される。第2ウェブ形成部70は、例えば、メッシュベルト72と、張架ローラー74と、サクション機構76と、を有する。
メッシュベルト72は、メッシュベルト46と同様の無端形状の金属製ベルトで構成され、複数の張架ローラー74に架け渡される。メッシュベルト72は、張架ローラー74により構成される軌道を周回する。メッシュベルト72の軌道の一部は、ドラム部61の下方で平坦であり、メッシュベルト72は平坦面を構成する。また、メッシュベルト72には多数の開口が形成されている。
張架ローラー74のうちの1つは、メッシュベルト72を駆動する駆動ローラー74aである。駆動ローラー74aは、第2ベルトモーター74bによって駆動されて回転し、図中矢印で示す方向にメッシュベルト72を駆動する。第2ベルトモーター74bの駆動力によりメッシュベルト72が動作する動作速度を、速度VCとする。速度VCはメッシュベルト72の搬送速度ということもできる。
第2篩モーター60a、及び第2ベルトモーター74bには、サーボモーター、ステッピングモーター等の公知のモーターを用いることができる。第2篩モーター60aとドラム部61との間に、動力を伝達するギヤ、リンク、その他の伝達機構を設けてもよい。駆動ローラー74aと第2ベルトモーター74bとの間も同様である。
ドラム部61の回転により、ドラム部61の内部の混合物MXは、開口61aを通過して、メッシュベルト72に向けて降下する。ドラム部61から降下する混合物MXのうち、メッシュベルト72の開口より大きい成分がメッシュベルト72に堆積する。また、混合物のうちメッシュベルト72の開口より小さい成分は、開口を通過する。
サクション機構76は、管66に接続される。管66は、第2集塵部67を介して第2捕集ブロアー68に接続される。第2集塵部67は、メッシュベルト72を通過した粒子や繊維を捕集するフィルターを備える。第2捕集ブロアー68は、管66を通じて空気を吸引するブロアーであり、吸引した空気をシート製造装置100の外部、またはシート製造装置100内の所定位置に排出する。サクション機構76は、第2捕集ブロアー68の吸引力により、メッシュベルト72の下方から空気を吸引し、吸引した空気に含まれる粒子や繊維を第2集塵部67により捕集する。第2捕集ブロアー68が吸引する気流は、ドラム部61から降下する混合物をメッシュベルト72に引き寄せて、堆積を促進する効果がある。また、吸引部48の吸引気流は、ドラム部61から混合物が落下する経路にダウンフローを形成し、落下中に繊維が絡み合うことを防ぐ効果も期待できる。メッシュベルト72に堆積した混合物MXは、メッシュベルト72の平坦部でウェブ形状となり、第2ウェブW2を構成する。
図1に戻り、メッシュベルト72の搬送経路において、堆積部60の下流側には、調湿部78が設けられる。調湿部78は、水をミスト状にしてメッシュベルト72に向けて供給するミスト式加湿器である。調湿部78は、例えば、水を貯留するタンクや、水をミスト状にする超音波振動子を備える。調湿部78が供給するミストにより、第2ウェブW2の含有水分量が調整されるので、静電気によるメッシュベルト72への繊維の吸着等を抑制する効果が期待できる。
第2ウェブW2は、搬送部79によって、メッシュベルト72から剥がされて成形部80へと搬送される。搬送部79は、例えば、メッシュベルト79aと、ローラー79bと、サクション機構79cと、を有する。サクション機構79cは、ブロアー(図示略)を備え、ブロアーの吸引力によってメッシュベルト79aを通じて上向きの気流を発生させる。この気流により、第2ウェブW2はメッシュベルト72から離れてメッシュベルト79aに吸着される。メッシュベルト79aは、ローラー79bの回転により移動され、第2ウェブW2を成形部80に搬送する。
成形部80は、第2ウェブW2に対して熱を加えることにより、第2ウェブW2に含まれる第1選別物由来の繊維を、添加物に含まれる樹脂により結着させる。
成形部80は、第2ウェブW2を加圧する加圧部82、及び、加圧部82により加圧された第2ウェブW2を加熱する加熱部84を備える。加圧部82は、一対のカレンダーローラー85、85で構成される。加圧部82は、油圧によりカレンダーローラー85、85にニップ圧を与えるプレス機構(図示略)と、カレンダーローラー85、85を加熱部84に向けて回転させるモーター等の駆動部(図示略)とに連結される。加圧部82は、カレンダーローラー85、85によって第2ウェブW2を所定のニップ圧で加圧して、加熱部84に向けて搬送する。加熱部84は、一対の加熱ローラー86、86を備える。加熱部84は、加熱ローラー86の周面を所定温度まで加熱するヒーター(図示略)と、加熱ローラー86、86を切断部90に向けて回転させるモーター等の駆動部(図示略)とを備える。加熱部84は、加圧部82で高密度化された第2ウェブW2を挟んで熱を与え、切断部90に搬送する。第2ウェブW2は、加熱部84において、第2ウェブW2に含まれる樹脂のガラス転移点より高温に加熱され、シートSとなる。
切断部90は、成形部80で成形されたシートSを切断する。切断部90は、図中符号Fで示すシートSの搬送方向と交差する方向にシートSを切断する第1切断部92と、搬送方向Fに平行な方向にシートSを切断する第2切断部94と、を有する。切断部90は、シートSの長さおよび幅を所定のサイズにカットして、単票のシートSを形成する。切断部90でカットされたシートSは、排出部96に収容される。排出部96は、製造されたシートを収容するトレイやスタッカーを備え、トレイに排出されたシートSは、ユーザーが取り出して使用することができる。
シート製造装置100の各部は、解繊処理部101と、製造部102とを構成する。解繊処理部101は、少なくとも解繊部20を含み、選別部40および第1ウェブ形成部45を含んでもよい。解繊処理部101は、原料MAから解繊物、または、解繊物をウェブ状にした第1ウェブW1を製造する。解繊処理部101の製造物は、回転体49を経て混合部50に搬送するだけでなく、回転体49に移送せずに、シート製造装置100から取り出して貯留することも可能である。また、この製造物を所定のパッケージに封入し、搬送および取引可能な形態としてもよい。
製造部102は、解繊処理部101で製造された製造物をシートSに再生する機能部であり、加工部に相当する。製造部102は、混合部50、堆積部60、第2ウェブ形成部70、搬送部79、成形部80、および、切断部90を含み、回転体49を含んでもよい。また、添加物供給部52を含んでもよい。
シート製造装置100は、解繊処理部101と製造部102とを一体として構成してもよいし、別体として構成してもよい。この場合、解繊処理部101は、本発明の繊維原料再生装置に相当する。製造部102は、解繊物をシート形状に成形するシート成形部に相当する。また、これらのいずれも加工部に相当するといえる。
[1-2.第1ウェブの形成条件]
ここで、図2を参照して、第1ウェブ形成部45で形成される第1ウェブW1の形成条件について説明する。
第1ウェブW1の厚みは、メッシュベルト46に供給される材料である第1選別物MCの量と、メッシュベルト46の単位時間あたりの移動量とにより決定される。メッシュベルト46の単位時間あたりの移動量は、図中の速度VAである。
メッシュベルト46に供給される第1選別物MCの量、すなわち、開口41aを通過する第1選別物MCの量を決める要素として、速度VBが挙げられる。速度VBが高速であるほど、ドラム部41内で解繊物MBが速やかに解きほぐされ、第1選別物MCが開口41aを通過しやすくなる。また、速度VBが高速であるほど、第1選別物MCが開口41aを通過しやすい。このため、速度VBが速いほど、開口41aを通過する第1選別物MCの量が多くなる。
開口41aを通過する第1選別物MCの量は、ドラム部41が停止状態から始動するときに変動する。ドラム部41内では、ドラム部41の回転により第1選別物MCに含まれる繊維と繊維との間に摩擦を生じるため、第1選別物MCが帯電する。この静電気により第1選別物MCが凝集すると、開口41aを通過しにくくなる。一方、ドラム部41が停止している間は、帯電した第1選別物MCの電荷が放電されるので、第1選別物MCに含まれる繊維の凝集が解かれる。従って、ドラム部41が停止状態から回転を開始するとき、すなわち始動時には、第1選別物MCが開口41aを通過しやすい状態である。このような状態では、開口41aを通過する第1選別物MCの量が一時的に多くなる。
また、開口41aを通過する第1選別物MCの量は、ドラム部41内の湿度の影響を受ける。ここで、湿度は、相対湿度(RH)ということができる。ドラム部41内の湿度が高いと、第1選別物MCに含まれる繊維の帯電が緩和されるため、繊維の凝集が抑えられるので、繊維の凝集が解かれる量が少ない。このため、ドラム部41内の湿度が高いほど、開口41aを通過する第1選別物MCの量の変動が少なくなる。また、ドラム部41内の湿度が低いと、第1選別物MCに含まれる繊維の帯電が緩和されにくいため、繊維の凝集が大きく発生しやすいので、繊維の凝集が解かれる量が大きい。このため、ドラム部41内の湿度が低いほど、開口41aを通過する第1選別物MCの量の変動が大きくなる。
また、開口41aを通過する第1選別物MCの量は、第1選別物MCに含まれる繊維の長さにより変動する。短い繊維は開口41aを通過しやすい。このため、第1選別物MCが含む繊維が短いほど、開口41aを通過する第1選別物MCの量が多くなる。
つまり、ドラム部41からメッシュベルト46に供給される第1選別物MCの量を決定する最も大きな要素は、ドラム部41の速度VBである。また、第1選別物MCの量を変動させる要素として、ドラム部41が始動時であるか否か、ドラム部41内の湿度、及び、第1選別物MCに含まれる繊維の長さが挙げられる。
第1ウェブW1の厚みが変動すると、第1ウェブ形成部45より後の工程に供給される材料の量の変動を招き、シート製造装置100が製造するシートSの品質に影響する。
そこで、シート製造装置100は、第1ウェブW1の厚みの変動を抑えるための制御を、制御部150により実行する。
第1ウェブW1の厚みに関する制御を行うため、シート製造装置100は、速度VAを検出する第1ベルト速度検出部322(図4)、及び、速度VBを検出する第1篩速度検出部321(図4)を備える。
また、シート製造装置100は、ドラム部41内の湿度を検出可能である。本実施形態では、一例として、第1温湿度検出部323(湿度検出部)を備える。第1温湿度検出部323は、温度センサーおよび湿度センサーを備えるセンサーユニットとして構成することができる。温度センサーは、例えば、サーミスター、測温抵抗体、熱電対、IC温度センサー等の素子を用いることができる。湿度センサーは、相対湿度を検出できればよく、抵抗式湿度センサーや静電容量式湿度センサーを用いることができる。第1温湿度検出部323は、ドラム部41の内部空間における温度、及び、相対湿度を検出する。第1温湿度検出部323は、温度や湿度の検出値として、アナログ信号を出力してもよいし、検出値を示すデジタルデータを出力してもよい。また、温度の検出値と湿度の検出値とが統合されたデータを出力してもよい。
シート製造装置100は、第1厚み検出部324を備える。第1厚み検出部324は、第1ウェブW1の厚みを検出するセンサーである。例えば、第1厚み検出部324は、光源と受光センサーとを備え、第1ウェブW1に光を照射して、第1ウェブW1を透過する光の量を検出することで第1ウェブW1の厚みを検出する光学式厚みセンサーであってもよい。また、例えば、第1厚み検出部324は、第1ウェブW1に接触する接触子と、接触子の位置を検出するエンコーダーとを備え、第1ウェブW1の表面とメッシュベルト46の表面との間の距離を検出する接触式の厚みセンサーであってもよい。また、第1厚み検出部324は、超音波式の厚みセンサーであってもよく、その他の方式で厚みを検出するセンサーであってもよい。
制御装置110は、第1厚み検出部324の検出値に基づき、第1ウェブW1の厚みを調整する制御を行ってもよい。例えば、制御装置110は、第1厚み検出部324の検出値が、予め設定された範囲を逸脱した場合に、シート製造装置100を停止させてもよいし、報知を行ってもよい。
[1-3.第2ウェブ形成部の構成]
図3に示すように、シート製造装置100は、ドラム部61内の湿度を検出するための構成として、第2温湿度検出部333を備えてもよい。第2温湿度検出部333は、第1温湿度検出部323と同様に、温度センサーおよび湿度センサーを備えるセンサーユニットとして構成することができる。温度センサーは、例えば、サーミスター、測温抵抗体、熱電対、IC温度センサー等の素子を用いることができる。湿度センサーは、相対湿度を検出できればよく、抵抗式湿度センサーや静電容量式湿度センサーを用いることができる。第2温湿度検出部333は、ドラム部61の内部空間における温度、及び、相対湿度を検出する。第2温湿度検出部333は、温度や湿度の検出値として、アナログ信号を出力してもよいし、検出値を示すデジタルデータを出力してもよい。また、温度の検出値と湿度の検出値とが統合されたデータを出力してもよい。
また、シート製造装置100は第2厚み検出部334を備える。第2厚み検出部334は、第2ウェブW2の厚みを検出するセンサーである。例えば、第2厚み検出部334は、光源と受光センサーとを備え、第2ウェブW2に光を照射して、第2ウェブW2を透過する光の量を検出することで第2ウェブW2の厚みを検出する光学式厚みセンサーであってもよい。また、例えば、第2厚み検出部334は、第2ウェブW2に接触する接触子と、接触子の位置を検出するエンコーダーとを備え、第2ウェブW2の表面とメッシュベルト72の表面との間の距離を検出する接触式の厚みセンサーであってもよい。また、第2厚み検出部334は、超音波式の厚みセンサーであってもよく、その他の方式で厚みを検出するセンサーであってもよい。
制御装置110は、第2厚み検出部334の検出値に基づき、シート製造装置100を制御してもよい。例えば、制御装置110は、第2厚み検出部334の検出値が、予め設定された範囲を逸脱した場合に、シート製造装置100を停止させてもよいし、報知を行ってもよい。
[1-4.制御装置の構成]
図4は、シート製造装置100の制御系の構成を示すブロック図である。
シート製造装置100は、シート製造装置100の各部を制御するメインプロセッサー111を有する制御装置110を備える。
制御装置110は、メインプロセッサー111、ROM(Read Only Memory)112、およびRAM(Random Access Memory)113を備える。メインプロセッサー111は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置であり、ROM112が記憶する基本制御プログラムを実行することにより、シート製造装置100の各部を制御する。メインプロセッサー111は、ROM112、RAM113等の周辺回路や他のIPコアを含むシステムチップとして構成されてもよい。
ROM112は、メインプロセッサー111が実行するプログラムを不揮発的に記憶する。RAM113は、メインプロセッサー111が使用するワークエリアを形成して、メインプロセッサー111が実行するプログラムや処理対象のデータを一時的に記憶する。
不揮発性記憶部120は、メインプロセッサー111が実行するプログラムや、メインプロセッサー111が処理するデータを記憶する。
表示パネル116は、液晶ディスプレイ等の表示用のパネルであり、例えば、シート製造装置100の外装に設置される。表示パネル116は、メインプロセッサー111の制御に従って、シート製造装置100の動作状態、各種設定値、警告表示等を表示する。
タッチセンサー117は、使用者によるタッチ操作や押圧操作を検出する。タッチセンサー117は、例えば、表示パネル116の表示面に重ねて配置され、表示パネル116に対する操作を検出する。タッチセンサー117は、操作に対応して、操作位置や操作位置の数を含む操作データをメインプロセッサー111に出力する。メインプロセッサー111は、タッチセンサー117の出力により、表示パネル116に対する操作を検出し、操作位置を取得する。メインプロセッサー111は、タッチセンサー117により検出した操作位置と、表示パネル116に表示中の表示データ122とに基づき、GUI(Graphical User Interface)操作を実現する。
制御装置110はセンサーI/F(インターフェイス)114を介して、シート製造装置100の各部に設置されたセンサーに接続される。センサーI/F114は、センサーが出力する検出値を取得してメインプロセッサー111に入力するインターフェイスである。センサーI/F114は、センサーが出力するアナログ信号をデジタルデータに変換するA/D(Analogue/Digital)コンバーターを備えてもよい。また、センサーI/F114は、各センサーに駆動電流を供給してもよい。また、センサーI/F114は、各々のセンサーの出力値を、メインプロセッサー111が指定するサンプリング周波数に従って取得し、メインプロセッサー111に出力する回路を備えてもよい。
センサーI/F114には、原料センサー301、および、排紙センサー302が接続される。また、センサーI/F114には、第1篩速度検出部321、第1ベルト速度検出部322、第1温湿度検出部323、及び、第1厚み検出部324が接続される。また、センサーI/F114には、第2篩速度検出部331、第2ベルト速度検出部332、第2温湿度検出部333、及び、第2厚み検出部334が接続される。
第1篩速度検出部321は、速度VBを検出する。第1篩速度検出部321は、ドラム部41の回転軸や周面に接して回転速度を検出するセンサーやロータリーエンコーダーを備えてもよい。また、第1篩速度検出部321は、第1篩モーター40aの内部に設けられ、或いは、第1篩モーター40aの一部として構成され、第1篩モーター40aの回転数や回転速度を示す信号を出力する回路であってもよい。また、制御装置110が、第1篩速度検出部321として機能し、第1篩モーター40aの駆動電流に基づき第1篩モーター40aの回転速度を求めてもよい。
第2篩速度検出部331は、ドラム部61の動作速度である速度VDを検出する。第2篩速度検出部331は、第1篩速度検出部321と同様の構成であってもよい。
第1ベルト速度検出部322は、メッシュベルト46の動作速度である速度VAを検出する。第1ベルト速度検出部322は、メッシュベルト46の移動速度、張架ローラー74の回転速度、或いは、第1ベルトモーター47bの回転速度を検出する。第1ベルト速度検出部322は、速度センサーやロータリーエンコーダーを備えてもよい。また、第1ベルト速度検出部322は、第1ベルトモーター47bの内部に設けられ、或いは、第1ベルトモーター47bの一部として構成され、第1ベルトモーター47bの回転数や回転速度を示す信号を出力する回路であってもよい。また、制御装置110が、第1ベルト速度検出部322として機能し、第1ベルトモーター47bの駆動電流に基づき第1ベルトモーター47bの回転速度を求めてもよい。
第2ベルト速度検出部332は、メッシュベルト72の動作速度である速度VCを検出する。第2ベルト速度検出部332は、第2篩速度検出部331と同様の構成であってもよい。
原料センサー301は、供給部10が収容する原料MAの残量を検出する。排紙センサー302は、排出部96が有するトレイ或いはスタッカーに蓄積されたシートSの量を検出する。
制御装置110は、駆動部I/F(インターフェイス)115を介して、シート製造装置100が備える各駆動部に接続される。シート製造装置100が備える駆動部は、モーター、ポンプ、ヒーター等である。駆動部I/F115は、モーターに直接接続される構成のほか、制御装置110の制御によりモーターに駆動電流を供給する駆動回路や駆動IC(Integrated Circuit)に接続されてもよい。
駆動部I/F115には、制御装置110の制御対象として、粗砕部311、解繊部312、添加物供給部313、ブロアー314、調湿部315、ドラム駆動部316、分断部317、および切断部318が接続される。
粗砕部311は、粗砕刃14を回転させるモーター等の駆動部を含む。解繊部312は、解繊部20が備えるローター(図示略)を回転させるモーター等の駆動部を含む。添加物供給部313は、添加物を送り出すスクリューフィーダーを駆動するモーター、シャッターを開閉するモーターやアクチュエーター等の駆動部を含む。
ブロアー314は、第1捕集ブロアー28、混合ブロアー56、第2捕集ブロアー68等を含む。これらの各ブロアーは個別に駆動部I/F115に接続されてもよい。
調湿部315は、調湿部78が備える超音波振動発生装置(図示略)やファン(図示略)、ポンプ(図示略)等を含む。
ドラム駆動部316は、ドラム部41を回転させるモーター、ドラム部61を回転させるモーター等の駆動部を含む。
分断部317は、回転体49を回転させるモーター(図示略)等の駆動部を含む。
切断部318は、切断部90の第1切断部92および第2切断部94のそれぞれにおいて刃を動作させるモーター(図示略)等を含む。
また、駆動部I/F115には、カレンダーローラー85を駆動するモーターや加熱ローラー86を加熱するヒーター等を接続してもよい。
また、駆動部I/F115には、第1篩モーター40a、第1ベルトモーター47b、第2篩モーター60a、及び、第2ベルトモーター74bが接続される。制御装置110は、これらのモーターに対し、回転開始、回転停止を制御することができる。また、110は、第1篩モーター40a及び第1ベルトモーター47bの回転速度を制御できる。
図5は、制御装置110の機能ブロック図である。
制御装置110は、メインプロセッサー111によってプログラムを実行することにより、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって各種の機能部を実現する。図5は、これらの機能部を有するメインプロセッサー111の機能を、制御部150として示す。また、制御装置110は、不揮発性記憶部120の記憶領域を利用して、論理的な記憶装置である記憶部160を構成する。ここで、記憶部160は、ROM112やRAM113の記憶領域を利用して構成されてもよい。
制御部150は、検出制御部151、および、駆動制御部152を備える。これらの各部はメインプロセッサー111によりプログラムを実行することで実現される。制御装置110は、シート製造装置100を制御するための基本制御プログラムとして、アプリケーションプログラムのプラットフォームを構成するオペレーティングシステム(OS)を実行してもよい。この場合、制御部150の各機能部を、アプリケーションプログラムとして実装してもよい。
図5には、制御部150の制御対象の検出部として、第1篩速度検出部321、第1ベルト速度検出部322、第1温湿度検出部323、及び、第1厚み検出部324を示す。また、第2篩速度検出部331、第2ベルト速度検出部332、第2温湿度検出部333、及び第2厚み検出部334を示す。また、これらの他のセンサーをまとめてセンサー300として示す。
また、図5に、制御部150の制御対象の駆動部として、第1篩モーター40a、第1ベルトモーター47b、第2篩モーター60a、及び、第2ベルトモーター74bを示す。また、これらの他の駆動部をまとめて駆動部310として示す。
記憶部160は、制御部150により処理される各種データを記憶する。例えば、記憶部160は、設定データ161、基準値データ162、及び、速度設定データ163を記憶する。
設定データ161は、タッチセンサー117の操作により、或いは、制御装置110が備える通信インターフェイス(図示略)を介して入力されるコマンドやデータに基づき、生成され、記憶部160に記憶される。
設定データ161は、シート製造装置100の動作に関する各種の設定値等を含む。例えば、設定データ161は、シート製造装置100により製造するシートSの数、シートSの種類や色、シート製造装置100の各部の動作条件等の設定値を含む。また、設定データ161は、シート製造装置100が処理する原料MAの繊維の長さについて、タッチセンサー117により入力された設定値を含む。例えば、原料MAが、シート製造装置100により製造されたシートSであってシート製造装置100によって複数回処理された繊維を含む場合や、広葉樹由来の繊維を含む場合、原料MAは短い繊維を含む。設定データ161は、原料MAの種類など、原料MAの繊維の長さに関係する項目で入力された値を、原料MAの繊維の長さのデータとして含んでもよい。
基準値データ162は、シート製造装置100でシートSを製造する動作条件を判定する基準値を含む。具体的には、基準値データ162は、第1温湿度検出部323が検出する湿度が多いか少ないかを区別する基準値を含む。
また、基準値データ162は、第1篩速度検出部321、第1ベルト速度検出部322、第2篩速度検出部331、及び第2ベルト速度検出部332により検出される速度に関して判定を行うための基準値を含んでもよい。
また、基準値データ162は、第1厚み検出部324及び第2厚み検出部334の検出値について判定を行うための基準を含んでもよい。
基準値データ162が含む基準値は、一つの値であってもよいし、値の上限の基準値と下限の基準値とからなる範囲の基準であってもよい。
速度設定データ163は、制御部150が第1ベルトモーター47bの速度を制御するためのデータを含む。制御部150は、シート製造装置100の始動時に第1篩モーター40a及び第1ベルトモーター47bを加速させて、ドラム部41及びメッシュベルト46をシートSの製造に適した速度で動作させる。シート製造装置100の始動時とは、シート製造装置100が停止状態からシートSを製造する動作を開始するときを指す。この過程で、制御部150は、第1ウェブW1の厚みの変動を抑えるように、速度VAを、速度0から加速させる。速度設定データ163は、メッシュベルト46の停止状態から速度VAを加速する場合の速度に関するデータを含む。例えば、速度設定データ163は、メッシュベルト46を速度0から加速する場合の時間と速度VAとの相関を規定する速度条件に関するデータを含む。速度条件は、速度の変化を規定する条件であってもよく、この場合は速度パターンということもできる。
検出制御部151は、センサー300による検出を制御し、各センサーの検出値を取得する。また、検出制御部151は、第1篩速度検出部321、第1ベルト速度検出部322、第1温湿度検出部323、及び、第1厚み検出部324の検出値を取得する。また、検出制御部151は、第2篩速度検出部331、第2ベルト速度検出部332、第2温湿度検出部333、及び、第2厚み検出部334の検出値を取得する。
駆動制御部152は、検出制御部151により取得されたセンサー300の検出値に基づき、駆動部310を制御することにより、設定データ161の設定値に従ってシート製造装置100の各部を動作させ、シートSを製造する。
また、駆動制御部152は、第1篩モーター40a、第1ベルトモーター47b、第2篩モーター60a、及び、第2ベルトモーター74bを駆動する。ここで、駆動制御部152は、検出制御部151により取得された第1篩速度検出部321、及び、第1ベルト速度検出部322の検出値に基づき、第1篩モーター40aおよび第1ベルトモーター47bの速度を制御する。これにより、速度VA、VBが、設定された速度に調整される。
また、駆動制御部152は、検出制御部151により取得された第2篩速度検出部331、及び、第2ベルト速度検出部332の検出値に基づき、第2篩モーター60aおよび第2ベルトモーター74bの速度を制御する。これにより、速度VC、VDが、設定された速度に調整される。
また、駆動制御部152は、ドラム部41及びメッシュベルト46を停止状態から始動させる場合に、第1ベルトモーター47bの速度条件を設定する。速度条件は、第1ベルトモーター47bの停止状態から加速する昇速の態様を規定するデータである。駆動制御部152は、検出制御部151が取得した第1温湿度検出部323の検出値と、設定データ161、基準値データ162、及び速度設定データ163とに基づいて、速度条件を設定する。
[1-5.シート製造装置の動作]
図6及び図7は、シート製造装置100の動作を示すフローチャートであり、シート製造装置100が停止している状態からシート製造装置100を始動する場合の動作を示す。図6及び図7の動作は、制御部150が駆動制御部152により実行する。
制御部150は、第1ベルトモーター47bの動作に関する設定処理を行う(ステップST1)。ステップST1の設定処理は、第1篩モーター40aを始動する際の第1ベルトモーター47bの速度に関する設定を行う処理である。設定処理については図7を参照して後述する。
制御部150は、設定処理の後、始動シーケンスを開始する(ステップST2)。始動シーケンスは、シート製造装置100の停止状態から、シート製造装置100の各部を順に始動させる一連の動作を指す。具体的には、粗砕部12、解繊部20、選別部40、第1ウェブ形成部45、回転体49、混合部50、堆積部60、第2ウェブ形成部70、成形部80及び切断部90が停止している状態から、これらの各部を始動させる。
始動シーケンスを開始すると、制御部150は、調湿部315を制御して、調湿部78の動作を開始させる(ステップST3)。シート製造装置100が、調湿部78以外に加湿する装置を備えている場合、当該装置はステップST3で始動する。
続いて、制御部150は、ブロアー314を始動させ(ステップST4)、解繊部312を始動させ、これにより解繊部20が回転を開始し、加速する(ステップST5)。この後、解繊部20は、予め設定された速度まで加速され、その後は一定速度で動作する。
制御部150は、粗砕部311を始動させる(ステップST6)。ステップST6の後に、粗砕部311に繊維を含んだ材料が供給される。
さらに、制御部150は、第1篩モーター40a及び第1ベルトモーター47bを始動させて、選別部40のドラム部41及びメッシュベルト46の駆動を開始する(ステップST7)。ステップST7では、ステップST1で設定した条件に従って、第1ベルトモーター47bを始動させるとともに、第1ベルトモーター47bの速度を加速する。また、ステップST7で、制御部150は、第1篩モーター40aを始動させ、予め設定された目標速度および加速度に従って第1篩モーター40aを加速させる。
制御部150は、第2篩モーター60a及び第2ベルトモーター74bを始動させて、ドラム部61及びメッシュベルト72の駆動を開始する(ステップST8)。その後、制御部150は、成形部80のカレンダーローラー85及び加熱ローラー86の動作を開始させて(ステップST9)、始動シーケンスを終了する。
図7は、図6のステップST1の設定処理を詳細に示すフローチャートである。
制御部150は、ドラム部41の内部に解繊物MBがあるか否かを判定する(ステップST21)。解繊物MBの有無は、例えば、タッチセンサー117による入力に基づき判定してもよい。
ドラム部41の内部に解繊物MBがないと判定した場合(ステップST21;NO)、制御部150は、第1ベルトモーター47bの速度を加速する条件として、第1速度条件を設定して(ステップST22)、設定処理を終了する。
ドラム部41の内部に解繊物MBがあると判定した場合(ステップST21;YES)、制御部150は、第1温湿度検出部323により検出された湿度が、基準値データ162に含まれる基準値以上であるか否かを判定する(ステップST23)。湿度が基準値以上である場合(ステップST23;YES)、制御部150は、解繊物MBに含まれる繊維の長さが、基準値データ162に含まれる基準値以上であるか否かを判定する(ステップST24)。
繊維の長さが基準値以上である場合(ステップST24;YES)、制御部150は、第1ベルトモーター47bの速度を加速する条件として、第2速度条件を設定して(ステップST25)、設定処理を終了する。
また、繊維の長さが基準値より短い場合(ステップST24;NO)、制御部150は、第1ベルトモーター47bの速度を加速する条件として、第3速度条件を設定して(ステップST26)、設定処理を終了する。
一方、湿度が基準値より低い場合(ステップST23;NO)、制御部150は、解繊物MBに含まれる繊維の長さが、基準値データ162に含まれる基準値以上であるか否かを判定する(ステップST27)。
繊維の長さが基準値以上である場合(ステップST27;YES)、制御部150は、第1ベルトモーター47bの速度を加速する条件として、第4速度条件を設定して(ステップST28)、設定処理を終了する。
また、繊維の長さが基準値より短い場合(ステップST27;NO)、制御部150は、第1ベルトモーター47bの速度を加速する条件として、第5速度条件を設定して(ステップST28)、設定処理を終了する。
第1~第5速度条件は、ドラム部41の始動時に速度VBをゼロから加速する場合の基本的な条件であり、第1ベルトモーター47bの目標速度と、目標速度に達するまでの時間または第1ベルトモーター47bの加速度と、を含む。
図8は、メッシュベルト46の動作速度VAと第1ウェブW1の厚みの変化の例を示す図表である。図8の(1)は、第1ベルト速度検出部322により検出された速度VAを示し、(2)は第1厚み検出部324により検出された第1ウェブW1の検出値である。(3)は、第1篩速度検出部321により検出されたドラム部41の速度VBを示す。
縦軸は速度VA、VB、及び、第1ウェブW1の厚みであり、縦軸の座標0は、速度0(停止状態)、および、第1ウェブW1の厚み0を示す。図8の横軸は時間の経過であり、座標0は始動シーケンスの開始時点に相当する。始動シーケンスが開始された後、第1篩モーター40a及び第1ベルトモーター47bが回転を開始する時刻を時刻T1とする。
また、第1ウェブW1の厚みに関して設定される目標値を厚みTH1とする。この動作例では、第1ウェブW1の厚みが厚みTH1に保たれることが理想的である。厚みTH1は、例えば、2mm~10mmの範囲に含まれる値とすることができるが、より厚くてもよいし、薄くてもよい。
図8は第1速度条件に従って制御部150が第1篩モーター40a及び第1ベルトモーター47bを制御した例である。
図8及び後述する図9~図11の例では、速度VAの目標速度は、速度V1に設定される。目標速度V1は、シート製造装置100がシートSを製造する場合の速度VAであり、本発明の第1速度に相当する。目標速度V1は、例えば、50mm/s~1000mm/sの範囲に含まれる値とすることができるが、より低速であってもよいし、高速であってもよい。また、ドラム部41の速度VBは、例えば、50mm/s~1000mm/sの範囲に含まれる値とすることができる。制御部150は、図8に示すように、時刻T1で第1篩モーター40aを始動してから、速度VBが速度V11に達するように第1篩モーター40aを加速し、その後は速度VBを速度V11に保つ。速度V11は、シート製造装置100がシートSを製造する場合の速度VBであり、本発明の第3速度に相当する。
また、以下の説明では、メッシュベルト46の始動から、速度VAが目標速度V1になるまでの時間を、速度調整時間と呼ぶ。
第1速度条件は、時刻T2で速度VAが目標速度V1に達する条件である。換言すれば、速度調整時間は、時刻T1から時刻T2までの期間TE1である。期間TE1は、例えば、1秒~10秒の範囲に含まれる値とすることができるが、より短い時間であってもよいし、長時間であってもよい。第1速度条件において、速度調整時間は、第1ベルトモーター47bを加速するために必要な時間に等しい。制御部150は、第1ベルトモーター47bを始動させてから、デフォルトの加速度で第1ベルトモーター47bを加速させ、速度VAが目標速度V1に達したときに加速を終了する。この場合の加速に要する時間が、速度調整時間となる。
上述したように、ドラム部41の内部に解繊物MBが存在する状態でドラム部41を始動すると、ドラム部41から降下する第1選別物MCの量は、ドラム部41に解繊物MBが存在しない場合よりも一時的に多くなる。このため、第1篩モーター40aが回転を開始してからメッシュベルト46に降下する第1選別物MCの量が、シートSの製造に適した量よりも一時的に多くなる。その結果、図8(2)で示すように、第1ウェブW1の厚みは厚みTH1を超えてしまい、厚みのピーク値TH2は厚みTH1よりも大幅に大きくなっている。
図7の設定処理で、制御部150は、ドラム部41に解繊物MBが存在する場合に、第2~第5速度条件のいずれかを設定する。
第2~第5速度条件は、いずれも、速度調整時間を期間TE1よりも長くして、この速度調整時間に、速度VAを目標速度V1より高速にする期間を設ける。速度VAを目標速度V1より高速にすると、メッシュベルト46がドラム部41の下方を移動する速度が増すため、メッシュベルト46の単位面積あたりの第1選別物MCの量が減少する。従って、メッシュベルト46に堆積する第1ウェブW1の厚みが小さくなる。ドラム部41から降下する第1選別物MCの量が増大するタイミングで、速度VAを高速にすることで、第1ウェブW1の厚みの増加を抑制できる。この場合の速度調整時間は、速度VAが目標速度V1になるまでの時間であり、速度調整時間における速度VAは目標速度V1より高速であるが、一時的に目標速度V1より低速であってもよい。
第2速度条件は、ドラム部41に解繊物MBが存在し、第1温湿度検出部323が検出した湿度が基準値以上であり、繊維長が基準値以上である場合の場合に設定される。第2速度条件は、速度調整時間が期間TE1よりも長くなるように調整された条件である。第2速度条件では、速度調整時間において少なくとも一部の期間、速度VAが目標速度V1より高速となる。第2速度条件は、速度VAの最大値の設定値を指定する情報を含み、速度調整時間の長さを指定する情報を含んでもよい。また、速度調整時間における速度VAを変化の態様を指定する情報を含んでもよい。この場合、速度調整時間に速度VAを変化させることが可能となる。
第4速度条件は、ドラム部41に解繊物MBが存在し、第1温湿度検出部323が検出した湿度が基準値より低湿度であり、繊維長が基準値以上の場合に設定される。この場合は、第2速度条件が設定される場合に比べて、ドラム部41内の湿度が低いので、ドラム部41から降下する第1選別物MCの量が一時的に、より多くなる。このため、第4速度条件は、第2速度条件に比べて、メッシュベルト46に堆積する第1ウェブW1の厚みが、より薄くなるような条件である。第4速度条件は、速度調整時間の長さが第2速度条件よりも長い条件、及び/または、速度VAの最大値が第2速度条件よりも高速である条件に該当する。
第3速度条件は、ドラム部41に解繊物MBが存在し、第1温湿度検出部323が検出した湿度が基準値以上であり、繊維長が基準値より短い場合に設定される。この場合は、第2速度条件が設定される場合に比べて、繊維長が短いので、ドラム部41から降下する第1選別物MCの量が一時的に、より多くなる。このため、第3速度条件は、第2速度条件に比べて、メッシュベルト46に堆積する第1ウェブW1の厚みが、より薄くなるような条件である。第3速度条件は、速度調整時間の長さが第2速度条件よりも長い条件、及び/または、速度VAの最大値が第2速度条件よりも高速である条件に該当する。
また、第3速度条件と第4速度条件とを比較した場合、速度調整時間の長さ、及び/または、速度VAの最大値が同じであってもよいし、異なっていてもよい。速度調整時間の長短、及び、速度VAの最大値の大小は、ドラム部41内の湿度が第1選別物MCの降下量に与える影響と、解繊物MBの繊維長が第1選別物MCの降下量に与える影響とのどちらが大きいかを考慮して決定される。
ドラム部41内の湿度が第1選別物MCの降下量に与える影響が、解繊物MBの繊維長より大きい場合、第4速度条件は、第3速度条件よりも第1ウェブW1の厚みが薄くなるような条件に設定されることが好ましい。具体的には、第4速度条件は第3速度条件よりも速度調整時間が長いこと、及び、第4速度条件は第3速度条件よりも速度VAの最大値が高速であることの、少なくともいずれかに該当することが好ましい。
一方、ドラム部41内の湿度が第1選別物MCの降下量に与える影響が、解繊物MBの繊維長より小さい場合、第3速度条件は、第4速度条件よりも第1ウェブW1の厚みが薄くなるような条件に設定されることが好ましい。具体的には、第3速度条件は第4速度条件よりも速度調整時間が長いこと、及び、第3速度条件は第4速度条件よりも速度VAの最大値が高速であることの、少なくともいずれかに該当することが好ましい。
第5速度条件は、ドラム部41に解繊物MBが存在し、第1温湿度検出部323が検出した湿度が基準値より低湿度であり、繊維長が基準値より短い場合に設定される。第5速度条件は、第1~第4速度条件の全てに比べて、第1ウェブW1の厚みが薄くなるような条件である。具体的には、第5速度条件は、第1~第4速度条件と比較して、速度調整時間が長いこと、及び、速度VAの最大値が高速であることの、少なくともいずれかに該当する。
このように、制御部150は、ドラム部41からメッシュベルト46に降下する第1選別物MCの量が一時的に多くなる場合に、第1ベルトモーター47bの始動時に、速度調整時間において速度VAを目標速度V1よりも高速にする。これにより、制御部150は、第1ウェブW1の厚みの変動を抑制し、シート製造装置100がシートSを製造する工程において、第1ウェブ形成部45より後の工程に供給される第1選別物MCの量を安定させることができる。従って、シートSの品質の変動を抑制できるので例えば、シートSの品質の変動を抑制するための人為的な調整作業の負担を軽減できる。
図9、図10、及び図11は、メッシュベルト46の速度VAと第1ウェブW1の厚みの変化の例を示す図表であり、第2~第5速度条件を設定した場合の例を示す。これらの図において、(1)は第1ベルト速度検出部322により検出される速度VAを示し、(2)は第1厚み検出部324により検出される第1ウェブW1の厚みを示す。これらの各図における縦軸、横軸、目標速度V1、厚みTH1、TH2、時刻T1は図8と共通である。また、これらの各図には、比較のため、図8に示した時刻T2を図示する。
図9は、速度VAを段階的に変化させた例であり、特に、速度VAを2段階に変化させた例を示す。制御部150は、速度VAを目標速度V1に合わせる前に、目標速度V1より高速の中間速度V2で維持する期間を設ける。具体的には、制御部150は、時刻T1で第1ベルトモーター47bの回転を開始させ、時刻T2で速度VAが中間速度V2に達するように加速する。制御部150は、時刻T3まで速度VAを中間速度V2に維持し、時刻T3からT4で第1ベルトモーター47bを減速させて、時刻T4で目標速度V1に達するように制御する。
図9の例において速度調整時間を符号TE2で示す。速度調整時間TE2は、第1期間に相当する。速度調整時間TE2(時刻T1~T4)は、時刻T1~T2の期間より長い。また、速度調整時間TE2における速度VAは、目標速度V1より高速である。このように、制御部150は、第1ベルトモーター47bの回転を開始してから、速度調整時間TE2において、速度VAが目標速度V1よりも高い状態を維持する。図9(2)に示すように、第1厚み検出部324の検出値は時刻T2付近から変動しているが、第1ウェブW1の厚みのピーク値TH3は、図8に示した厚みのピーク値TH2よりも小さい。従って、第1ウェブW1の厚みの変動が抑制されていることが明らかである。
図10は、速度VBを段階的に変化させた例であり、特に、速度VBを多段階に変化させた例を示す。制御部150は、速度調整時間TE2(時刻T1~T10)において、速度VAを目標速度V1より高速の中間速度V3、V4、V5で維持する複数の期間を設ける。具体的には、制御部150は、時刻T1で第1ベルトモーター47bの回転を開始させ、時刻T2で速度VAが中間速度V3に達するように加速する。制御部150は、時刻T2から時刻T5まで速度VAを中間速度V3に維持し、時刻T5で第1ベルトモーター47bを減速させて、時刻T6で速度VAを中間速度V4に合わせる。制御部150は、時刻T6から時刻T7まで速度VAを中間速度V4に維持し、時刻T7で第1ベルトモーター47bを減速させて、時刻T8で速度VAを中間速度V5に合わせる。制御部150は、時刻T8から時刻T9まで速度VAを中間速度V3に維持し、時刻T9で第1ベルトモーター47bを減速させて、時刻T10で速度VAを目標速度V1に合わせるように制御する。
図10の例では、時刻T1から時刻T10が速度調整時間TE2である。速度調整時間TE2は、図8に示した時刻T1から時刻T2までの期間より長い。このように、制御部150は、第1ベルトモーター47bの回転を開始してから、速度調整時間TE2において、速度VAが目標速度V1よりも高い状態を維持する。
図10(2)に示すように、第1厚み検出部324の検出値は時刻T11付近から変動しているが、第1ウェブW1の厚みのピーク値TH4は、図8に示した厚みのピーク値TH2よりも小さい。特に、第1選別物MCの降下量が増大しやすいドラム部41の回転開始直後に、目標速度V1よりも高速で回転させる速度調整時間TE2を設けたことにより、厚みのピーク値TH4を低く抑えることに成功している。
図9及び図10に示す例のように、制御部150は、速度VAを段階的に変化させることが可能であり、速度VAの段階の数や、中間速度は任意に変更できる。例えば、速度VAを5段階以上に変化させてもよい。
また、制御部150は、速度調整時間TE2において、速度VAが一定速度を保たないような制御を行ってもよい。この場合、制御部150は、速度VAを線形的に変化させてもよい。すなわち、速度VAの変化率である加速度が一定値を保つように、第1ベルトモーター47bを動作させてもよい。また、制御部150は、速度調整時間TE2において、速度VAの加速度が変化するように第1ベルトモーター47bを制御してもよい。いずれの場合も、速度調整時間TE2が時刻T1~T2より長く、速度調整時間TE2において速度VAが目標速度V1より高速であれば、第1ウェブW1の変動を抑制する効果が期待できる。
図11は、制御部150が、第1厚み検出部324の検出値に基づき第1ベルトモーター47bの速度を制御する、いわゆるフィードバック制御を行う例である。この例では、第1ベルトモーター47bの動作条件として、速度調整時間TE2の長さが設定される。また、第1ベルトモーター47bの動作条件は、速度調整時間TE2における速度VAの最低値を含んでいてもよい。
図11の例で、制御部150は、時刻T1で第1ベルトモーター47bの加速を開始するとともに、第1厚み検出部324の検出値の取得を開始する。制御部150は、第1厚み検出部324の検出値と閾値との差分に対応して、第1ベルトモーター47bの回転数を増大または減少させる。第1厚み検出部324の検出値に対する閾値は、厚みTH1であってもよい。また、基準値データ162に含まれる他の値であってもよい。
図11の例では、速度調整時間TE2の少なくとも一部で速度VAが目標速度V1よりも高速である。制御部150は、速度条件で規定される速度調整時間TE2の長さに従って、時刻T11で第1ベルトモーター47bを減速させ、時刻T12で速度VAを目標速度V1に合わせる。
図11の例で、第2~第5速度条件は、速度調整時間TE2の長さを示す情報など、少数の情報を含んでいればよく、第2~第5速度条件を設定する処理が容易であるという利点がある。
第2~第5速度条件は、図9~図11に示した各例を採用できる。例えば、第2~第5速度条件の全てに、図9に示した2段階の加速パターンを適用できる。この場合、第2~第5速度条件は、速度調整時間TE2の長さを示す情報や、速度調整時間TE2における速度VAの最大値及び/または最小値を示す情報を含んでいればよい。また、第2~第5速度条件は、図9、図10に示したように速度VAを変化させる各種パラメーターを含んでもよい。
また、第2~第5速度条件における速度VAの変化の態様が共通でなくてもよい。例えば、第2~第5速度条件が、図9~図11に示した態様のうち異なる態様で速度VAを変化させる条件であってもよい。
また、図9~図10に示した例では、速度VAは目標速度V1に達した後は一定に維持されるが、シートSの製造中において、速度VAは目標速度V1で一定でなくてもよい。例えば、シートSの製造条件や、シート製造装置100の動作状態に対応して、速度VAを変化させることも可能である。
以上説明したように、本発明を適用した第1実施形態のシート製造装置100は、繊維を含む材料である第1選別物MCを篩うドラム部41と、ドラム部41から排出される第1選別物MCを堆積させる第1ウェブ形成部45と、を備える。シート製造装置100は、第1ウェブ形成部45に堆積した第1ウェブW1、すなわち第1選別物MCを加工する製造部102の各部を備える。シート製造装置100は、加工部による加工の実行中は、目標速度V1で第1ウェブ形成部45のメッシュベルト46を動作させる。ドラム部41が停止している状態から始動する場合、ドラム部41の始動後の速度調整時間TE2において、メッシュベルト46が目標速度V1よりも高速で動作する状態を含む始動動作がなされる。ここで、加工部は、第1ウェブ形成部45より後の工程のいずれであってもよく、例えば、製造部102を構成する各部から任意に選択される。
本発明の繊維処理装置、及び、繊維処理装置の制御方法を適用した第1実施形態のシート製造装置100によれば、速度調整時間TE2において、メッシュベルト46が動作する速度VAを目標速度V1より高速にする。これにより、ドラム部41から排出される第1選別物MCの量が一時的に増大しても、第1ウェブ形成部45に堆積する第1ウェブW1の厚みの増大を抑制できる。
また、シート製造装置100では、速度調整時間TE2において、第1ウェブ形成部45は目標速度V1より高速で動作する状態が維持されている。例えば、図9~図11に示す例のように、速度VAが目標速度V1に高速である状態を維持する。これにより、ドラム部41から降下する第1選別物MCの量が増大しやすいタイミングで、速度VAを目標速度V1よりも高速に維持するので、第1選別物MCの量の一時的な変動に伴う第1ウェブW1の厚みの変動を、効果的に抑制できる。
また、第1ウェブ形成部45は、第1選別物MCを面状に堆積させることが可能なメッシュベルト46を有し、メッシュベルト46が、張架ローラー47により構成される循環経路を循環して移動する。これにより、メッシュベルト46を移動させる速度VAを目標速度V1より高速にすることで、メッシュベルト46に堆積する第1ウェブW1の厚みの変動を抑制できる。
また、シート製造装置100は、加工部による加工の実行中は、目標速度V1でメッシュベルト46が動作され、速度調整時間TE2において、メッシュベルト46の動作速度は目標速度V1より高速の第2速度が維持されている。これにより、速度調整時間TE2において、シートSの製造時の速度VAの目標速度V1よりも高速で、メッシュベルト46が動作するので、第1選別物MCの量の一時的な変動に伴う第1ウェブW1の厚みの変動を、効果的に抑制できる。
また、シート製造装置100では、ドラム部41が停止している状態から始動する場合、ドラム部41が始動する前に、メッシュベルト46の動作速度が目標速度V1より高速になるまで加速を行ってもよい。この場合、第1ベルトモーター47bは、加速が完了してからの第2期間において、メッシュベルト46が目標速度V1より高速で動作する状態が維持される。この場合、ドラム部41から降下する第1選別物MCの量が増大しやすいタイミングで、速度VAを目標速度V1よりも高速にするので、第1選別物MCの量の一時的な変動に伴う第1ウェブW1の厚みの変動を、効果的に抑制できる。
また、シート製造装置100は、ドラム部41が停止している状態から始動する場合、解繊物MBがドラム部41に存在する状態で、始動動作を実行する。これにより、ドラム部41から降下する第1選別物MCの量が増大しやすいタイミングで、速度VAを目標速度V1よりも高速にするので、第1選別物MCの量の一時的な変動に伴う第1ウェブW1の厚みの変動を、効果的に抑制できる。また、ドラム部41から降下する第1選別物MCの量が変動しにくい状態では、通常の始動シーケンスを実行することにより、シートSの製造効率の低下を防止できる。
また、ドラム部41は円筒形状であり、ドラム部41の周面には開口が設けられ、円筒の軸を中心として回転する。ドラム部41の内部に解繊物MBが存在する状態でドラム部41を始動すると、始動時にメッシュベルト46に降下する第1選別物MCの量が一時的に変動しやすい。この構成で、制御部150の制御により、メッシュベルト46が目標速度V1より高速で移動する期間が確保されるので、第1選別物MCの量の変動に伴う第1ウェブW1の厚みの変動を、効果的に抑制できる。
本発明の繊維原料再生装置を適用したシート製造装置100は、繊維を含む原料MAを微細化する微細化部としての解繊部20を備える。シート製造装置100は、微細化部により微細化された解繊物MBを篩うドラム部41と、ドラム部41から排出される第1選別物MCを堆積させる堆積部としての第1ウェブ形成部45を備える。シート製造装置100は、第1ウェブ形成部45に堆積した第1ウェブW1を加工する加工部として、製造部102の各部を備える。シート製造装置100では、シートSの製造中は、目標速度V1で第1ウェブ形成部45が動作される。シート製造装置100では、ドラム部41が停止している状態から始動する場合、ドラム部41の始動後の速度調整時間TE2において、第1ウェブ形成部45が目標速度V1よりも高速で動作する状態を含む始動動作がなされる。これにより、ドラム部41から第1選別物MCが移動する量が変動しやすい状態で、第1ウェブ形成部45に堆積する第1ウェブW1の厚みの増大を抑制できる。
[2.第2実施形態]
以下、本発明を適用した第2実施形態について説明する。
第2実施形態では、始動動作において、駆動制御部152が、メッシュベルト46の速度VAと、ドラム部41の速度VBとを制御することにより、第1ウェブW1の厚みの変動を抑制する動作を説明する。第2実施形態におけるシート製造装置100の構成は第1実施形態と共通であるため、シート製造装置100の構成に関して図示及び説明を省略する。
第2実施形態において、制御部150は、図6の動作を第1実施形態と同様に実行する。ステップST7では、ステップST1で設定された動作条件に従って、第1ベルトモーター47bとともに、第1篩モーター40aを制御する。
図12は、図6のステップST1で実行される設定処理を示すフローチャートである。
第2実施形態では、設定処理において、第1篩モーター40aの制御に関する動作条件を設定する。第2実施形態で設定される動作条件は、第1ベルトモーター47bの動作に関する情報のほか、第1篩モーター40aの動作に関する情報を含む。上記第1実施形態では、第1~第5速度条件は、速度調整時間TE2の長さに関する情報と、速度VAの最大値や最小値に関する情報とを含むものとして説明した。第2実施形態の第1~第5速度条件は、速度VBを、シートSの製造中における速度V11に合わせるまでの加速時間TE3の長さに関する情報を含む。
図12の設定処理において、制御部150は、ドラム部41の内部に解繊物MBがあるか否かを判定する(ステップST31)。
ドラム部41の内部に解繊物MBがないと判定した場合(ステップST31;NO)、制御部150は、第1篩モーター40a及び第1ベルトモーター47bの速度を加速する条件として、第1速度条件を設定して(ステップST32)、設定処理を終了する。
ドラム部41の内部に解繊物MBがあると判定した場合(ステップST31;YES)、制御部150は、第1温湿度検出部323により検出された湿度が、基準値データ162に含まれる基準値以上であるか否かを判定する(ステップST33)。湿度が基準値以上である場合(ステップST33;YES)、制御部150は、解繊物MBに含まれる繊維の長さが、基準値データ162に含まれる基準値以上であるか否かを判定する(ステップST34)。
繊維の長さが基準値以上である場合(ステップST34;YES)、制御部150は、第1篩モーター40a及び第1ベルトモーター47bの速度を加速する条件として、第2速度条件を設定して(ステップST35)、設定処理を終了する。
また、繊維の長さが基準値より短い場合(ステップST34;NO)、制御部150は、第1篩モーター40a及び第1ベルトモーター47bの速度を加速する条件として、第3速度条件を設定して(ステップST36)、設定処理を終了する。
一方、湿度が基準値より低い場合(ステップST33;NO)、制御部150は、解繊物MBに含まれる繊維の長さが、基準値データ162に含まれる基準値以上であるか否かを判定する(ステップST37)。
繊維の長さが基準値以上である場合(ステップST37;YES)、制御部150は、第1篩モーター40a及び第1ベルトモーター47bの速度を加速する条件として、第4速度条件を設定して(ステップST38)、設定処理を終了する。
また、繊維の長さが基準値より短い場合(ステップST37;NO)、制御部150は、第1篩モーター40a及び第1ベルトモーター47bの速度を加速する条件として、第5速度条件を設定して(ステップST38)、設定処理を終了する。
図13は、ドラム部41の速度VBと第1ウェブW1の厚みの変化の例を示す図表であり、図12の設定処理で第2~第5速度条件を設定した場合の例を示す。図13、及び、後述する図14で、縦軸、横軸、目標速度V1、厚みTH1、TH2、時刻T1は図8と共通である。
図13の(1)は第1篩速度検出部321により検出される速度VBを示し、(2)は第1ウェブW1の厚みを示す。速度V11は、上述のように、シートSの製造時における速度VBであり、始動動作において、制御部150は、第1篩モーター40aを加速してドラム部41の速度VBを速度V11まで加速する。第1篩モーター40a及び第1ベルトモーター47bの加速を開始する時刻T1は図8で説明した例と共通である。
制御部150が時刻T1で第1篩モーター40aを始動させてから、速度VBが速度V11に達するまでの時間を、期間TE3とする。
図13は、速度VBを段階的に変化させた例であり、特に、速度VBを2段階に変化させた例を示す。制御部150は、期間TE3において、速度VBを速度V11より低速の中間速度V12で維持する期間を設ける。具体的には、制御部150は、時刻T1で第1篩モーター40aの回転を開始させ、時刻T21で速度VBが中間速度V12に達するように加速する。制御部150は、時刻T21から時刻T22まで速度VBを中間速度V12に維持し、時刻T22から第1篩モーター40aをさらに増速させ、時刻T23で目標速度V1に達するように制御する。
図13の例では、速度VBが速度V11に達する時刻T23は、図8に示した時刻T2よりも後である。つまり、制御部150は、第1篩モーター40aの回転を開始してから、期間TE3(時刻T1~T23)で、速度VBが速度V11よりも低い状態を維持する。図11(2)に示すように、第1厚み検出部324の検出値は時刻T21付近から変動しているが、第1ウェブW1の厚みのピーク値TH11は、図8に示した厚みのピーク値TH2よりも小さい。従って、第1ウェブW1の厚みの変動が抑制されていることが明らかである。
第2~第5速度条件は、例えば、第1篩モーター40aの制御に関して、期間TE3の長さ、時刻T23、期間TE3における速度VB(例えば、中間速度V12)を指定する情報を含む。
さらに、制御部150は、第2~第5速度条件に従って、第1ベルトモーター47bの始動動作を実行する。つまり、第2実施形態の始動動作は、速度VAの制御と速度VBの制御とを含む。
図14は、メッシュベルト46の速度VAと第1ウェブW1の厚みの変化の例を示す図表であり、第2~第5速度条件を設定した場合の例を示す。図14の(1)は第1ベルト速度検出部322により検出される速度VAを示し、(2)は第1厚み検出部324により検出される第1ウェブW1の厚みを示す。
図14は、制御部150が、第1厚み検出部324の検出値に基づき第1ベルトモーター47bの速度を制御する、いわゆるフィードバック制御を行う例である。この例では、第1ベルトモーター47bの動作条件として、速度調整時間TE2の長さが設定される。また、第1ベルトモーター47bの動作条件は、速度調整時間TE2における速度VAの最低値を含んでいてもよい。
図14の例で、制御部150は、時刻T1で第1ベルトモーター47bの加速を開始するとともに、第1厚み検出部324の検出値の取得を開始する。制御部150は、第1厚み検出部324の検出値と閾値との差分に対応して、第1ベルトモーター47bの回転数を増大または減少させる。第1厚み検出部324の検出値に対する閾値は、厚みTH1であってもよい。また、基準値データ162に含まれる他の値であってもよい。
図14の例では、速度調整時間TE2(時刻T1~T25)の少なくとも一部で速度VAが目標速度V1よりも高速である。制御部150は、速度条件で規定される速度調整時間TE2の長さに従って、時刻T11で第1ベルトモーター47bを減速させ、時刻T25で速度VAを目標速度V1に合わせる。
図14の例で、第2~第5速度条件は、速度調整時間TE2の長さを示す情報など、少数の情報を含んでいればよく、第2~第5速度条件を設定する処理が容易であるという利点がある。
また、第2~第5速度条件は、図14の例に限らず、上述した図9及び図10に示した各例を採用できる。
このように,本発明を適用した第2実施形態のシート製造装置100は、加工部による加工の実行中において、ドラム部41を速度V11で動かしてドラム部41から材料を排出させる。シート製造装置100では、ドラム部41が停止している状態から始動する場合、速度調整時間TE2において、ドラム部41が第3速度と異なる速度で動作する状態を含む篩始動動作がなされる。篩始動動作は、例えば図13に示したように、設定処理(図12)で設定した速度条件に従ってドラム部41の速度を制御する動作である。
この例では、速度VAと、速度VBとを合わせて制御することにより、ドラム部41から降下する第1選別物MCの量が増大しやすい期間において、ドラム部41から降下する第1選別物MCの量と、メッシュベルト46の速度とを調整できる。これにより、第1ウェブW1の厚みの変動を、より一層効果的に抑制できる。
[3.第3実施形態]
以下、本発明を適用した第3実施形態について説明する。
上記第1及び第2実施形態では、始動動作において、駆動制御部152が、第1ベルトモーター47b及び/または第1篩モーター40aを制御することで、メッシュベルト46の速度VA及び/またはドラム部41の速度VBを調整する例を説明した。
第3実施形態では、駆動制御部152が、始動動作において、第2ベルトモーター74b及び/または第2篩モーター60aを制御することにより、ドラム部61の速度VDを調整する。
すなわち、制御部150は、第1実施形態で説明した第1ベルトモーター47bの制御を、第2ベルトモーター74bの制御に適用する。また、制御部150は、第2実施形態で説明した第1篩モーター40a及び第1ベルトモーター47bの制御を、第2篩モーター60a及び第2ベルトモーター74bの制御に適用する。
第3実施形態において、ドラム部61は篩部に相当し、第2篩モーター60aは篩駆動部に相当し、第2ウェブ形成部70は堆積部に相当し、メッシュベルト72は受け部に相当する。また、第2ベルトモーター74bは駆動部に相当する。第2温湿度検出部333は湿度検出部ということができる。
[3-1.第2ウェブの形成条件]
ここで、図3を参照して、第2ウェブ形成部70で形成される第2ウェブW2の形成条件について説明する。
第2ウェブW2の厚みは、メッシュベルト72に供給される材料である混合物MXの量と、メッシュベルト72の単位時間あたりの移動量とにより決定される。メッシュベルト72の単位時間あたりの移動量は速度VCである。
メッシュベルト72に供給される混合物MXの量、すなわち、開口61aを通過する混合物MXの量を決める要素として、速度VDが挙げられる。速度VDが高速であるほど、ドラム部61の内部で混合物MXが速やかに解きほぐされるので、混合物MXが開口61aを通過しやすくなる。また、速度VDが高速であるほど、混合物MXが開口61aを通過しやすい。このため、速度VDが速いほど、開口61aを通過する混合物MXの量が多くなる。
開口61aを通過する混合物MXの量は、ドラム部61が停止状態から始動するときに変動する。ドラム部61内では、ドラム部61の回転により混合物MXに含まれる繊維と繊維との間に摩擦を生じるため、混合物MXが帯電する。この静電気により混合物MXが凝集すると、開口61aを通過しにくくなる。一方、ドラム部61が停止している間は、帯電した混合物MXの電荷が放電されるので、混合物MXに含まれる繊維の凝集が解かれる。従って、ドラム部61が停止状態から回転を開始するとき、すなわち始動時には、開口61aを通過する混合物MXの量が一時的に多くなる。
また、開口61aを通過する混合物MXの量は、ドラム部61の内の湿度の影響を受ける。ここで、湿度は、相対湿度ということができる。ドラム部61の内の湿度が低いと、混合物MXが帯電され、繊維の凝集が発生しやすい。このため、ドラム部61内の湿度が低いほど、ドラム部61が停止状態から回転を開始するとき、すなわち始動時には、開口61aを通過する混合物MXの量が一時的に多くなる。
また、開口61aを通過する混合物MXの量は、混合物MXに含まれる繊維の長さにより変動する。短い繊維は開口61aを通過しやすい。このため、混合物MXが含む繊維が短いほど、開口61aを通過する混合物MXの量が多くなる。
つまり、ドラム部61からメッシュベルト72に供給される混合物MXの量を決定する最も大きな要素は、ドラム部61の速度VDである。また、混合物MXの量を変動させる要素として、ドラム部61が始動時であるか否か、ドラム部61内の湿度、及び、混合物MXに含まれる繊維の長さが挙げられる。
第2ウェブW2の厚みが変動すると、第2ウェブ形成部70より後の工程に供給される材料の量の変動を招き、シート製造装置100が製造するシートSの品質に影響する。
そこで、シート製造装置100は、第2ウェブW2の厚みの変動を抑えるための制御を、制御部150により実行する。
制御装置110は、第2ウェブW2の厚みに関する制御を行うため、第2厚み検出部334の検出値を取得することができる。また、図4に示したように、制御装置110は、第2篩モーター60a及び第2ベルトモーター74bの回転速度を制御できる。
[3-2.シート製造装置の動作]
制御部150は、駆動制御部152によって図6に示す動作を実行する。ステップST1の設定処理で、制御部150は、第2ベルトモーター74bの動作に関する設定を行う。この場合、制御部150は、図7の設定処理で、メッシュベルト72の速度VCに関する第1~第5速度条件を設定する。第1実施形態では速度VAに関して第1~第5速度条件を設定していたが、第1~第5速度条件は、速度VCについても設定可能である。
また、ステップST1の設定処理で、制御部150は、第2篩モーター60a及び第2ベルトモーター74bの動作に関する設定を行う。この場合、制御部150は、図12の設定処理で、ドラム部61の速度VD、及び、メッシュベルト72の速度VCに関する第1~第5速度条件を設定する。
制御部150は、図7、図12の設定処理を速度VC、または、速度VCと速度VDの両方に関して実行する。第1~第5速度条件は、ドラム部61の始動時に速度VDをゼロから加速する場合の基本的な条件であり、第2篩モーター60aの目標速度と、目標速度に達するまでの時間または第2篩モーター60aの加速度と、を含む。
速度VCの始動に係る制御は、図9~図11、図14に示した態様を採用することができる。すなわち、上記各図に(1)で示した速度VAを、第2ベルト速度検出部332の検出値に基づく速度VCとすることで、速度VCの速度に関するデータとして扱うことができる。また、図13に(1)で示した速度VBを、第2篩速度検出部331の検出値に基づく速度VDとすることで、速度VDの速度に関するデータとして扱うことができる。
ここで、速度VCの目標速度V1は、速度VAの目標速度V1と同様であってもよいし、異なる速度であってもよい。
また、第2~第5速度条件における速度調整時間は、速度VCに関する速度調整時間として同様に理解することができる。また、速度VBに関する加速時間も同様である。各速度条件における速度調整時間の長短、及び、速度調整時間における速度VCの最大値の関係も、上記第1、第2実施形態と同様である。
速度VCに関して設定される第1~第5速度条件は、第1実施形態で説明した第1~第5速度条件と同一であってもよいが、ドラム部61の動作に関して最適化された第1~第5速度条件を用いてもよい。速度VDに関して設定される第1~第5速度条件についても同様である。
第3実施形態では、制御部150の制御により、ドラム部61からメッシュベルト72に降下する混合物MXの量が一時的に多くなる場合に、メッシュベルト72の速度VCを制御することによって、第2ウェブW2の厚みの変動を抑制する。これにより、シート製造装置100がシートSを製造する工程において、第2ウェブ形成部70より後の工程に供給される混合物MXの量を安定させることができ、シートSの品質の変動を抑制できる。例えば、シートSの品質の変動を抑制するための人為的な調整作業の負担を軽減できる。
本発明の繊維処理装置、及び、繊維処理装置の制御方法を適用した第3実施形態のシート製造装置100は、繊維を含む材料である混合物MXを篩うドラム部61と、ドラム部61から排出される混合物MXを堆積させる第2ウェブ形成部70と、を備える。シート製造装置100は、第2ウェブ形成部70に堆積した第2ウェブW2、すなわち混合物MXを加工する加工部を備える。ここで、加工部は、第2ウェブ形成部70より後の工程のいずれであってもよく、例えば、成形部80や切断部90である。シート製造装置100は、加工部による加工の実行中に、目標速度V1でメッシュベルト72を動作させる。シート製造装置100では、ドラム部61が停止している状態から始動する場合、ドラム部61の始動後の速度調整時間において、メッシュベルト72が目標速度V1よりも高速で動作する状態を含む始動動作がなされる。これにより、ドラム部61から排出される混合物MXの量が一時的に増大しても、第2ウェブ形成部70に堆積する第2ウェブW2の厚みの増大を抑制できる。従って、シート製造装置100がシートSを製造する工程において、第2ウェブ形成部70より後の工程に供給される混合物MXの量を安定化できる。例えば、シートSの品質の変動を抑制でき、シートSの品質を安定化させるための人為的な調整作業の負担を軽減できる。
また、シート製造装置100では、速度調整時間において、メッシュベルト72が目標速度V1より高速で動作する状態が維持される。これにより、ドラム部61から降下する混合物MXの量が増大しやすいタイミングで、速度VCを目標速度V1よりも高速に維持するので、混合物MXの量の変動に伴う第2ウェブW2の厚みの変動を、効果的に抑制できる。
また、第2ウェブ形成部70は、混合物MXを面状に堆積させることが可能なメッシュベルト72を有し、メッシュベルト72が、張架ローラー74により構成される循環経路を循環して移動する。これにより、メッシュベルト72を移動させる速度VCを目標速度V1より高速にすることで、メッシュベルト72に堆積する第2ウェブW2の厚みの変動を抑制できる。
また、シート製造装置100は、加工部による加工の実行中に目標速度V1でメッシュベルト72を動作させる。シート製造装置100では、速度調整時間において、メッシュベルト72の動作速度は目標速度V1より高速の第2速度が維持される。これにより、速度調整時間において、シートSの製造時の速度VCの目標速度V1よりも高速で、メッシュベルト72が動作するので、混合物MXの量の変動に伴う第2ウェブW2の厚みの変動を、効果的に抑制できる。
また、シート製造装置100は、ドラム部61が停止している状態から始動する場合、メッシュベルト72の動作速度が目標速度V1より高速になるまで加速を行い、加速が完了してからの第2期間において、メッシュベルト72が目標速度V1より高速で動作する状態が維持される。これにより、ドラム部61から降下する混合物MXの量が増大しやすいタイミングで、速度VCを目標速度V1よりも高速にするので、混合物MXの量の変動に伴う第2ウェブW2の厚みの変動を、効果的に抑制できる。
また、シート製造装置100では、ドラム部61が停止している状態から始動する場合、混合物MXがドラム部61に存在する状態で、始動動作を実行する。これにより、ドラム部61から降下する混合物MXの量が増大しやすいタイミングで、速度VCを目標速度V1よりも高速にするので、混合物MXの量の変動に伴う第2ウェブW2の厚みの変動を、効果的に抑制できる。また、ドラム部61から降下する混合物MXの量が変動しにくい状態では、通常の始動シーケンスを実行することにより、シートSの製造効率の低下を防止できる。
また、ドラム部61は円筒形状であり、ドラム部61の周面には開口が設けられ、円筒の軸を中心として回転する。このため、ドラム部61の内部に混合物MXが存在する状態でドラム部61を始動すると、始動時にメッシュベルト72に降下する混合物MXの量が変動しやすい。この構成で、制御部150の制御により、メッシュベルト72が目標速度V1より高速で移動する期間が確保されるので、混合物MXの量の変動に伴う第2ウェブW2の厚みの変動を、効果的に抑制できる。
さらに、第2実施形態で説明した第1篩モーター40aの制御を、第2篩モーター60aの制御に適用できる。つまり、ドラム部41の速度の制御を、ドラム部61の速度の制御に適用できる。この場合、ドラム部61が停止している状態から始動する場合に、速度調整時間において、ドラム部61がシートSの製造中の速度V11と異なる速度で動作する状態を含む篩始動動作を実行する。この場合、速度VCと、速度VDとを合わせて制御することにより、ドラム部61から降下する混合物MXの量が増大しやすい期間において、降下する混合物MXの量と、メッシュベルト72の速度とを調整できる。これにより、第2ウェブW2の厚みの変動を、より一層効果的に抑制できる。
[4.他の実施形態]
上述した各実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明を実施する具体的態様に過ぎず、本発明を限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、例えば以下に示すように、種々の態様において実施することが可能である。
上述した第1実施形態では、制御部150がメッシュベルト46の速度の制御に関して、図7の設定処理を実行し、設定された速度条件に基づきステップST7でメッシュベルト46及びドラム部41を始動させる例を説明した。第2実施形態では、制御部150が図12の設定処理を実行し、設定された速度条件に基づきステップST7でメッシュベルト46及びドラム部41を始動させる例を説明した。また、第3実施形態では、制御部150がメッシュベルト72の速度の制御、或いは、メッシュベルト72とドラム部61との速度の制御に関して、図7や図12の設定処理を実行する例を説明した。
本発明はこれらの実施形態に限定されず、例えば、制御部150が、メッシュベルト46、72の両方の速度の制御に関して図7の設定処理を実行してもよい。また、制御部150は、ドラム部41、61、メッシュベルト46、72の各々に対し、図12の設定処理を実行してもよい。つまり、制御部150は、メッシュベルト46の速度VA、ドラム部41の速度VB、メッシュベルト72の速度VC、及び、ドラム部61の速度VDに対し、本発明を適用した制御を行うものであってもよい。この場合、制御部150は、第1篩モーター40a、第2篩モーター60a、第1ベルトモーター47b、及び、第2ベルトモーター74bの各々を制御すればよい。
また、上記各実施形態で、堆積部に相当するメッシュベルト46、及びメッシュベルト72は、開口を有するメッシュベルトとして説明した。本発明はこれに限定されず、例えば、開口を有しないベルト、或いは平板を、堆積部として採用してもよい。
また、篩部は、ドラム形状のドラム部41、61に限定されない。例えば、開口を有する円盤状の篩を用いてもよい。
また、上記各実施形態で、第1温湿度検出部323を設置する位置は、ドラム部41内部でなくてもよく、例えば、ハウジング部43の内部であってもよい。第2温湿度検出部333も同様に、ドラム部61に設置される例に限らず、ハウジング部63内部に設置してもよい。また、供給部10に、温度センサーや原料MAに含まれる水分を検出するセンサーを設けてもよく、この場合、制御部150は、原料MAに含まれる温度及び/または水分の検出値に基づき、ドラム部41内部やドラム部61内部の湿度を推定できる。また、管2及び管3に温湿度センサーを配置して、解繊部20の前後の温度及び/または湿度を検出する構成であってもよい。この場合、制御部150は、解繊部20の処理の前後における温度及び/または湿度の変化に基づき、ドラム部41内部やドラム部61内部の湿度を推定できる。また、シート製造装置100の筐体内部の温度及び/または湿度を検出する温湿度センサーを設けてもよい。
また、第3実施形態において、堆積部60及び第2ウェブ形成部70に本発明を適用した場合、選別部40の代わりに、解繊物MBを第1選別物MC、第2選別物、及び第3選別物Dに選別および分離する分級機を備えてもよい。分級機は、例えば、サイクロン分級機、エルボージェット分級機、エディクラシファイヤーである。
また、駆動制御部152が、第1篩モーター40a、第2篩モーター60a、第1ベルトモーター47b、及び第2ベルトモーター74bの速度を制御する具体的な構成は任意である。例えば、各モーターに供給される駆動電流の電圧を変化させてもよいし、その他の方法により回転数を制御してもよい。
また、シート製造装置100は、シートSに限らず、硬質のシート或いは積層したシートで構成されるボード状、或いは、ウェブ状の製造物を製造する構成であってもよい。また、製造物は紙に限らず不織布であってもよい。シートSの性状は特に限定されず、筆記や印刷を目的とした記録紙(例えば、いわゆるPPC用紙)として使用可能な紙であってもよいし、壁紙、包装紙、色紙、画用紙、ケント紙等であってもよい。また、シートSが不織布である場合、一般的な不織布のほか、繊維ボード、ティッシュペーパー、キッチンペーパー、クリーナー、フィルター、液体吸収材、吸音体、緩衝材、マット等としてもよい。
また、上記実施形態では、本発明の繊維処理装置、及び、繊維原料再生装置として、原料を気中で解繊することにより材料を得て、この材料と樹脂とを用いてシートSを製造する乾式のシート製造装置100を説明した。本発明の適用対象はこれに限定されず、水等の溶媒中に繊維を含む原料を溶解または浮遊させ、この原料をシートに加工する、いわゆる湿式のシート製造装置にも適用できる。また、気中で解繊された繊維を含む材料をドラムの表面に静電気等により吸着させ、ドラムに吸着された原料をシートに加工する静電方式のシート製造装置にも適用できる。