ズボン10は、たとえば、事務作業(デスクワーク)等の軽微な作業に使用される長ズボンであって、はいた場合に着用者の体(臍のところの水平ラインよりも下側の部位;腰部を含む腹部の下側の部位と足を含む下肢の部位;腰部を含む腹部の下側の部位と大腿部と下腿部)には密着しない構成、すなわち、着用者の皮膚との間にツナギほどではないにせよ若干の空間が存在する形態になっている。ただし、たとえば、ベルトラインのところ(ベルトラインと、ベルトラインからたとえば10cm〜20cm程度の若干量下がった部位との間の環状の箇所)では、着用者の皮膚に直接にもしくは下着を介して密着するようになっている。
また、ズボン10には、図5等で示すように、伸縮性生地201と覆い布203とが設けられている。伸縮性生地201は、図4等で示すように、たとえば、矩形状に形成されており、ズボン10の着用者の腰部に対応する部位(腰部から臀部の上側に対応する部位;仙骨部とこの仙骨部の水平方向左右両側の部位)に、仙骨部の幅の1.5倍〜3倍程度の幅で設けられている。
伸縮性生地201は、この上端縁(横方向に延伸している上側の辺の全長もしくはこの近傍の部位)が、環状のベルト部205の下端(下側の縁もしくはこの近傍)で、布帛等の伸縮性をほとんど有しないベルト布(ベルト部205を構成する布)207に一体的に接合されている(たとえば横方向に延びた縫い目209で縫合されている)。
ズボン10には、ベルト通し206が設けられており、ズボン10の着用者は、ほとんどの場合、ベルト部205の外周でベルト通し206にベルトを通し、ズボン10が落下しないようにベルトでウエストを適当に締め付け、ズボン10を着用する。
ベルト通し206は、ズボン10の前側では、図1で示すように、たとえば、斜め前方の2箇所(たとえば、左右の乳頭直下の部位)に設けられている。
なお、ズボン10の前側にベルト通し206を4つ設ける等の複数設けた構成であってもよい(図示せず)。ベルト通し206を4つ設けた構成では、2つのベルト通し(前内側ベルト通し)206は、左右の乳頭直下よりもやや内側に位置し、他の2つのベルト通し(前外側ベルト通し)206は、左右の乳頭直下よりもやや外側に位置している。また、前外側ベルト通し206は、ズボン10の前ポケットの開口部の上方に位置している。
また、ベルト通し206は、ズボン10の後側では、図3で示すように、たとえば、斜め後方の2箇所と真後の1箇所に設けられている。斜め後方の2箇所のベルト通しのうちの一方のベルト通し206は、伸縮性生地201と覆い布203との左端の上方に位置し、他方のベルト通し206は、伸縮性生地201と覆い布203との右端の上方に位置している。
図1や図3では、ベルト通し206の幅が異なっている。たとえば、図1の右側のベルト通し206は幅広になっており、図1の左側のベルト通し206は幅狭になっており、図3の真ん中のベルト通し206は幅広になっており、図3の左右のベルト通し206は幅狭になっている。
ここで、一部もしくは総てのベルト通し206を幅狭のタイプに変更してもよいし、逆に、一部もしくは総てのベルト通し206を幅広のタイプに変更してもよい。
ただし、図3の真ん中のベルト通し206を幅狭タイプに変更する場合には、2つのベルト通し206にすることが望ましい。すなわち、図3の真ん中の幅広のベルト通し206の左右方向の中間部を削除して、2つの幅狭のベルト通しにすることが望ましい。
また、ズボン10には、図3で示すように、一対の後ポケット208が左右の臀部のところに設けられている。後ポケット208は、たとえば、玉縁ポケットになっており、伸縮性生地201と覆い布203との左右端の下方に位置している。
すなわち、ズボン10の左右方向において、左側の後ポケット208の中心と、伸縮性生地201と覆い布203との左端との位置がお互いにほぼ一致しており、右側の後ポケット208の中心と、伸縮性生地201と覆い布203との右端との位置がお互いにほぼ一致している。
なお、後ポケット208の幅(左右方向の寸法)は、伸縮性生地201や覆い布203の幅(左右方向の寸法)の1/2程度が1/2よりも僅かに小さくなっている。
伸縮性生地201は、この下端縁(横方向に延伸している下側の辺の全長もしくはこの近傍の部位)が布帛等の伸縮性をほとんど有しない布で構成されている後身頃12に一体的に接合されている(横方向に延びた縫い目211で縫合されている)。
また、伸縮性生地201は、たとえばパワーネット生地で構成されている。パワーネット生地とは、ストレッチ性を備えた細かいネット状の編物である。ナイロン等の繊維とポリウレタンの弾性繊維とをお互いに交編して生成されており、伸びたときのキックバック性に優れている。
覆い布203は、幅寸法(横方向の寸法)が伸縮性生地201とほぼ等しく、上下方向の寸法が伸縮性生地201の上下方向の寸法よりも大きい矩形状に形成されている。覆い布203は、横方向(幅方向)に伸びた折り目213のところで折り返されて襞状もしくはジャバラ状に形成されている(プリーツになっている)。なお、襞状になっている覆い布の上下方向の寸法は、伸縮性生地201の上下方向の寸法とほぼ等しくなっている。
覆い布203は、ズボン10の着用者の腰部に対応する部位で、伸縮性生地201に重ねられて設けられている。覆い布203は、この上端縁(横方向に延伸している上側の辺の全長もしくはこの近傍の部位)が、環状のベルト部205の下端(下側の縁もしくはこの近傍)で、ベルト布207(ベルト部205)に、伸縮性生地201といっしょに一体的に接合されている(横方向に延びた縫い目209で縫合されている)。
覆い布203は、この下端縁(横方向に延伸している下側の辺の全長もしくはこの近傍の部位)が、後身頃12に、伸縮性生地201といっしょに一体的に接合されている(横方向に延びた縫い目211で縫合されている)。
また、覆い布203は、たとえば布帛等のほとんど伸縮しない布で構成されている。
上述したように伸縮性生地201と覆い布203とが設けられていることで、ズボン10の腰部(ズボン10の着用者の腰部に対応する部位)には、上下方向で伸縮する腰部伸縮部(アクティブリッジ)215が設けられていることになる。
矩形状の伸縮性生地201の横方向(上下方向に直交する方向)の一端縁(上下方向に延伸している左側の辺もしくはこの近傍の部位)は、図4で示すように、後身頃12に一体的に接合されている(上下方向に延びた縫い目217で縫合されている)。同様にして、伸縮性生地201の横方向の他端縁(上下方向に延伸している右側の辺もしくはこの近傍の部位)が後身頃12に一体的に接合されている(上下方向に延びた縫い目219で縫合されている)。
覆い布203の1本目の折り目213(213A)は、覆い布203の上側で覆い布203の全幅にわたり横方向に延びており、1本目の折り目213Aのところで覆い布203がたとえば山折り(ズボン10の外側から見て山折り)でほぼ180°折り返されている(図5参照)。
覆い布203には、複数の折り目213が形成されている場合がある。これによって、覆い布203が複数段の襞状になる場合がある。
折り目213が設けられている覆い布203について詳しく説明する。覆い布203の2本目の折り目213Bは、覆い布203の道のりにおいて覆い布203の上端縁から離れる方向で、1本目の折り目213Aから所定の距離だけ離れて、覆い布203の全幅にわたり横方向に延びている。2本目の目213Bのところでは、覆い布203がたとえば谷折り(ズボン10の外側から見て谷折り)でほぼ180°折り返されている(図5参照)。
また、2本よりも多くの折り目213が設けられている場合、3本目以降の折り目213は、1本目や2本目の折り目213A,213Bと同様にして、覆い布203の全幅にわたり横方向に延びている。
3本目以降の折り目213C,213D・・・は、覆い布203の道のりにおいて覆い布203の上端縁から離れる方向で、その前の折り目(たとえば2本目の折り目213B)よりも下側でその前の折り目(たとえば2本目の折り目213B)から所定の距離だけ離れている。また、3本目以降の折り目213は、奇数本目の折り目213で山折りされており、偶数本目の折り目213で谷折りされている。
そして、折り目213がたとえば2本だけ設けられている場合にあっては、上述したように襞状に形成された覆い布203の上端縁がベルト布207に接合され覆い布203の下端縁が後身頃12に接合されていることで、上端縁と1本目の折り目213Aとの間における覆い布203の部位では、上端縁から1本目の折り目213Aにかけて上から下に向かって覆い布203が延伸しており、1本目の折り目213Aと2本目の折り目213Bとの間における覆い布203の部位では、1本目の折り目213Aから2本目の折り目213Bにかけて下から上に向かって覆い布203が延伸しており、2本目の折り目213Bから下端縁との間における覆い布203の部位では、2本目の折り目213Bから下端縁にかけて上から下に向かって覆い布203が延伸していることになる。
同様にして、折り目213がたとえば2本よりも多くの数設けられている場合にあっては、偶数本目(n本目)の折り目213と、前記偶数本目の折り目213と次の奇数本目(n+1本目)の折り目213との間における覆い布203の部位では、偶数本目(n本目)の折り目213から奇数本目(n+1本目)の折り目213にかけて上から下に向かって覆い布203が延伸しており、奇数本目(n+1本目)の折り目213と、前記奇数本目の折り目213の次の偶数本目(n+2本目)の折り目213との間における覆い布203の部位では、奇数本目(n+1本目)の折り目213から偶数本目(n+2本目)の折り目213にかけて下から上に向かって覆い布203が延伸している。
各折り目213のところで、180°折り返されて襞状で矩形状になっている覆い布203の横方向の寸法は、伸縮性生地201の幅寸法(伸縮性生地201に引っ張り力等の外力が加わっておらず伸縮性生地201に伸びが発生していない状態における幅寸法)とほぼ等しくなっている。
また、各折り目213のところで、180°折り返されて襞状で矩形状になっている覆い布203の上下方向の寸法は、伸縮性生地201の上下方向の寸法(伸縮性生地201に引っ張り力等の外力が加わっておらず伸縮性生地201に伸びが発生していない状態における上下方向の寸法)とほぼ等しくなっている。
そして、伸縮性生地201が覆い布203の内側(ズボン10の着用者の腰側)に位置するようにして、伸縮性生地201の全体と、各折り目213のところで180°折り返されて矩形な襞状になっている覆い布203の全体とがお互いに重なっている。したがって、ズボン10の外側には伸縮性生地201が現れないようになっている。
ここで、伸縮性生地201の全体と、各折り目213のところで180°折り返されて矩形状になっている覆い布203の全体とをお互いに重ね、さらに、伸縮性生地201の上端縁と覆い布203の上端縁とをお互いに縫い合わせ、伸縮性生地201の下端縁と覆い布203の下端縁とをお互いに縫い合わせた状態を、伸縮性生地覆い布準接合状態とする。
上記伸縮性生地覆い布準接合状態で、伸縮性生地201と覆い布203とを上下方向に伸ばす引っ張り力を、伸縮性生地201と覆い布203との上端縁と、伸縮性生地201と覆い布203との下端縁とに加えると、伸縮性生地201と覆い布203とが上下方向で伸びるが(伸縮性生地201は弾性変形し覆い布203は折り目213で形成されている襞によって延びるが)、覆い布203が伸びきって覆い布203の折り目213が消滅すると、覆い布203に邪魔されて、伸縮性生地201と覆い布203とがそれ以上伸びないようになっている。なお、覆い布203が伸びきった状態であっても伸縮性生地201は完全には伸びきっていないものとする。
また、覆い布203は、各折り目213で折り返されている状態(畳まれている襞状になっている状態)で、覆い布203の横方向の一端縁(上下方向に延伸している左側の辺もしくはこの近傍の部位)が、伸縮性生地201といっしょに後身頃12に一体的に接合されている(上下方向に延びた縫い目217で縫合されている)。同様にして、覆い布203の横方向の他端縁(上下方向に延伸している右側の辺もしくはこの近傍の部位)が、伸縮性生地201といっしょに後身頃12に一体的に接合されている(上下方向に延びた縫い目219で縫合されている。
なお、ズボン10の着用者が直立姿勢であるときには、伸縮性生地201はほとんど延びていない。また、後身頃12の部位であって伸縮性生地201や覆い布203が設置される部位には、後身頃12が矩形状に切り欠かれている(図4参照)。
さらに、伸縮性生地201と覆い布203とは、ズボン10の着用者の仙骨部よりも大きく形成されている。より具体的には、伸縮性生地201と覆い布203との幅寸法が仙骨部の幅に対して1.5〜3.0倍(より好ましくは1.5倍〜2.0倍)程度になっており、伸縮性生地201と覆い布203との上下方向の寸法が仙骨部の上下方向の寸法に対して1.0〜1.5倍程度になっている。
そして、ズボン10を履いた着用者を後方から見ると、伸縮性生地201と覆い布203とが、ズボン10の着用者の仙骨部とこの周辺部(臀部の一部)とを覆っている。
また、ズボン10の覆い布203にはたとえば4本(5本以上であってもよい。)の折り目213(213A,213B,213C,213D)が形成されている。各折り目213のうちで上から偶数本目の折り目213B,213Dのところもしくは偶数本目の折り目213B,213Dの近傍で、覆い布203が伸縮性生地201に一体的に接合されている(覆い布203の横方向の全長にわたって伸びた縫い目221で接合されている)。これにより、覆い布・伸縮性生地接合部位225が形成されている。
そして、ズボン10の着用者がしゃがんだ姿勢をとったときにおける着用者の皮膚の伸び(上下方向での皮膚の伸び)に対応して、各覆い布・伸縮性生地接合部位225と、ベルト布207に接合されている伸縮性生地201や覆い布203の上端縁の部位と、後身頃12に接合されている伸縮性生地201や覆い布203の下端縁の部位とのうちでお互いが隣接している部位間の距離が、上下方向でお互いに異なっている。たとえば、図5に示す寸法LAと寸法LBとの値がお互いに異なっており、寸法LBのほうが寸法LAよりも大きくなっている。
例を掲げてより具体的に説明すると、覆い布203には、折り目213(213A,213B,213C,213D)が4本形成されており、これらの折り目213は、上側から下側に向かって第1の折り目(1本目の折り目)213A、第2の折り目(2本目の折り目)213B、第3の折り目(3本目の折り目)213C、第4の折り目(4本目の折り目)213Dの順に並んでいる(図5参照)。
覆い布203の上端縁と第1の折り目213Aとの間における覆い布203の部位(上端縁・第1折り目間部位)では、前述したように、上端縁から第1の折り目213Aにかけて上から下に向かって覆い布203が延伸している。
覆い布203の第1の折り目213Aと第2の折り目213Bとの間における覆い布203の部位(第1折り目・第2折り目間部位)では、前述したように、第1の折り目213Aから第2の折り目213Bにかけて下から上に向かって覆い布203が延伸している。また、上記第1折り目・第2折り目間部位では、覆い布203が、伸縮性生地201と上記上端縁・第1折り目間部位との間で、上記上端縁・第1折り目間部位よりも短く延伸している(上下方向で短く延伸している)。
覆い布203の第2の折り目213Bと第3の折り目213Cとの間における覆い布203の部位(第2折り目・第3折り目間部位)では、前述したように、第2の折り目213Bから第3の折り目213Cにかけて上から下に向かって覆い布203が延伸している。また、上記第2折り目・第3折り目間部位では、覆い布203が、上記第1折り目・第2折り目間部位よりも長く延伸している(上下方向で長く延伸している)。
覆い布203の第3の折り目213Cと第4の折り目213Dとの間における覆い布203の部位(第3折り目・第4折り目間部位)では、第3の折り目213Cから第4の折り目213Dにかけて下から上に向かって覆い布203が延伸している。また、上記第3折り目・第4折り目間部位では、覆い布203が、伸縮性生地201と上記第2折り目・第3折り目間部位との間で、上記第2折り目・第3折り目間部位よりも短く延伸している(上下方向で短く延伸している)。
また、覆い布203の第4の折り目213Dと覆い布203の下端縁との間における覆い布203の部位(第4折り目・下端縁間部位)では、第4の折り目213Dから下端縁にかけて上から下に向かって覆い布203が延伸している。また、上記第4折り目・下端縁間部位では、覆い布203が、上記第3折り目・第4折り目間部位よりも長く延伸している(上下方向で長く延伸している)。
ところで、図5で示すように、覆い布203の第2の折り目213Bの近傍(第2の折り目213Bと第3の折り目213Cとの間における第2の折り目213Bの近傍)で、覆い布203の全幅にわたって横方向に延びた縫い目221によって、覆い布203が伸縮性生地に縫合されている(第2の覆い布・伸縮性生地接合部位225Bが形成されている。)
また、覆い布203の第4の折り目213Dの近傍(第4の折り目213Dと下端縁との間における第4の折り目213Dの近傍)で、覆い布203の全幅にわたって横方向に延びた縫い目223によって、覆い布203が伸縮性生地201に縫合されている(第4の覆い布・伸縮性生地接合部位225Dが形成されている。)。
なお、第2の覆い布・伸縮性生地接合部位225Bは、第4の覆い布・伸縮性生地接合部位225Dよりも上方に位置している。
そして、伸縮性生地201においては、伸縮性生地201の上端縁(ベルト布207への接合部)と第2の覆い布・伸縮性生地接合部位225Bとの間の距離(上下方向での距離)LAが、第2の覆い布・伸縮性生地接合部位225Bと第4の覆い布・伸縮性生地接合部位225Dとの間の距離(上下方向での距離)LBよりも小さくなっている。
これにより、ズボン10の着用者がしゃがんだ姿勢等をとって腰部や臀部の皮膚が伸びたとき、この皮膚の伸びに応じて、伸縮性生地201が適宜伸び、ズボン10の着用者に違和感(腹部での圧迫等)が発生することを回避することができる。すなわち、伸縮性生地201を設けていないと、図22(b)で示すように、着用者がしゃがんだときズボンのベルト部(ベルト)が、下方に下がってしまい、前側ではベルトによって着用者の腹部が圧迫されてしまう。さらに腹部の圧迫によって着用者の背骨も圧迫され、腰痛が発生するおそれがある。しかし、ズボン10では、図22(a)示すように、伸縮性生地201が伸びるので、腹部が圧迫されず腰痛が発生することは無い。
さらに説明すると、ズボン10の着用者がしゃがんだ姿勢等をとると、ズボン10の腰部から臀部にかけては、腰部から臀部(上から下)に向かうにしたがって、皮膚の伸びる量が多くなる(臀部上方よりも臀部下部(臀溝部)のほうが皮膚の伸び率が大きい)。そこで、上述したように、上側(伸縮性生地201の上端縁と第2の覆い布・伸縮性生地接合部位225Bとの間)よりも下側(第2の覆い布・伸縮性生地接合部位225Bと第4の覆い布・伸縮性生地接合部位225Dとの間)で伸縮性生地201が大きく伸びるようにすることで、ズボン10の着用者がしゃがんだ姿勢等になったときに発生する腰部や臀部の違和感や腹部の圧迫感を小さくすることができ腰痛の発生を無くすことができる。
なお、第4の覆い布・伸縮性生地接合部位225Dと覆い布203の下端縁(後身頃12との接合部)との間(図5で示すLCの部位)では、上下方向で、平板状の覆い布203と平板状の伸縮性生地201とがお互いに重なっているので、ズボン10の着用者がしゃがんだ姿勢等をとったときであっても、覆い布203に邪魔されて伸縮性生地201が伸びることは無い。したがって、図5で示すLCの部位において、伸縮性生地201を削除してもよい。
また、覆い布203の第1の折り目213Aの近傍と第3の折り目213Cの近傍とには、図5で示すように、縫い目(覆い布の幅の全長にわたって延びている縫い目)227が設けられており、覆い布203がお互いに重なっている。これにより、折り目213A,213Dの形状が維持されるようになっている。
また、ズボン10では、着用者の股に対応する部位に襠部13が設けられている。これについて、以下図面を参照しつつ詳しく説明する。
図6は実施形態のズボン10の正面図、図7はズボン10の後面図である。なお、図6、図7は、主に「U」字状の襠部13を説明するための図であるので、図6、図7では、腰部伸縮部(アクティブリッジ)225の表示を省略している。また、図8〜図18においても同様にして腰部伸縮部(アクティブリッジ)225の表示は省略している。
図8はズボン10の上半部の左側から見た側面図、図9はズボン10の左足部分を右足部分の上に股下位置で折り曲げて重ねた状態を示す要部構成図、図10はズボン10の着用時における図8のX−X線に沿う断面図、図11はズボン10を構成する前身頃(布帛等の伸縮性をほとんど有しない布で構成されている前身頃)11と後身頃と襠部(布帛等の伸縮性をほとんど有しない布で構成されている襠部)13の構成を示す平面図、図12は前身頃と後身頃だけでズボンを構成する一般の場合の右足部分の型紙の平面図、図13〜図18は図12の型紙を元に襠部の型紙を作成する場合の手順を示す図で、図13は最初の工程を示す図、図14は図13の次の工程を示す図、図15は図14の次の工程を示す図、図16は図15の次の工程を示す図、図17は図16の次の工程を示す図、図18は図13〜図17までの工程で得られた本実施形態のズボンの右足部分の型紙の構成を示す平面図である。
図6、図7に示すように、このズボン10は、左右一対の前身頃11と、左右一対の後身頃12と、内股側の襠部13とを縫い合わせたものである。襠部13は、右足部分10Rの裾から左足部分10Lの裾まで連続して設けられている。
図8に示すように、前身頃11の股内側側縁11aと後身頃12の股内側側縁12aの位置は、開脚時に大きく伸縮する領域と伸縮しにくい領域との境界線P(図13参照)の位置までそれぞれ前側と後側にずらして設定されている。図中Qで示す線は、襠部13を追加しない従来の場合の前身頃の股内側側縁と後身頃の股内側側縁との縫い目の位置である。なお、図8の左側は前側F、右側は後側Rである。
襠部13は、前側と後側にずらした位置にある前身頃11の股内側側縁11aと後身頃12の股内側側縁12aの間のスペースに介在されており、この襠部13の前後方向中央部の腿上部の丈方向寸法L2は、位置をずらす前の前身頃の股内側側縁と後身頃の股内側側縁の位置(Qの位置)における腿上部の丈方向寸法L1よりも長く設定されている。これにより、図9に示すように、襠部13の股下中央部分の開脚方向の長さL3が従来のものよりも長くなっている。
そして、図11に示すように、裁断された3パーツ13A,13B,13Cからなる襠部13を縫い合わせて一体の襠部13を作製し、この襠部13と同じく裁断された前身頃11と後身頃12とを縫い合わせることで、実施形態のズボン10が作製されている。即ち、左右それぞれの襠部13の前側側縁13aと前身頃11の股内側側縁11aとを縫い目22にて縫い合わせると共に、襠部13の後側側縁13bと後身頃12の股内側側縁12aとを縫い目23にて縫い合わせ、左右の前身頃11の股外側側縁11bと後身頃12の股外側側縁12bとを図示しない縫い目で縫い合わせ、更に、左右の前身頃11の胴部同士をチャック部材(図示せず)を介して縫い合わせ、左右の後身頃12の胴部同士を縫い目21で縫い合わせて胴部を拵えることにより、実施形態のズボン10が作製されている。
この縫い合わせた状態で、前身頃11および後身頃12の各股内側側縁11a、12aと襠部13の縫い目22、23の位置が、前方および後方から見た際に股内側の目立たない位置にある。又、前身頃11および後身頃12の各股内側側縁11a,12aと襠部13の縫い目22,23の位置は、閉脚時と開脚時で内股側の皮膚の伸縮が多い位置と少ない位置の境界に設定されている。つまり、この実施形態では双方の条件が一致する位置となっている。
また、襠部13は、少なくとも股下部分において両足側が縫い目無しで一体に構成されており、ここでは、股下部分131が一体の連続布で形成され、それに連なる腿下部分132が、縫い目24にて別の布を継いで構成されている。
次に、このズボン(ベルト部205や腰部伸縮部215を除いたズボン)10を得るための製造方法について説明する。
最終的には、図11に示すような形状に布を裁断して縫製するのであるが、まず、型紙を作る手順について、図12〜図18を参照しながら述べる。ここでは、右足側の型紙だけを図に示して説明する。また、型紙と布の符号を同一にして説明する。
最初に、前身頃と後身頃だけでズボンを構成する従来の場合の型紙を用意する。図12は従来の型紙を示し、11は前身頃で、11aは股内側側縁、11bは股外側側縁、12は後身頃で、12aは股内側側縁、12bは股外側側縁である。
この型紙の段階で、図13に示すように、前身頃11および後身頃12の開脚時に大きく伸縮する領域S2と伸縮しにくい領域S1との境界線Pを決定する。
次に、図14に示すように、その境界線Pで型紙をカット(裁断)し、前身頃11の型紙の股内側側縁11aと、後身頃12の型紙の股内側側縁12aの各位置を、カットした位置に新たに設定する。つまり、開脚時に大きく伸縮する領域S2と伸縮しにくい領域S1との境界線Pの位置で型紙を裁断することにより、境界線Pの位置まで、前身頃11の股内側側縁11aと、後身頃12の股内側側縁12aの位置をそれぞれ前側と後側にずらす。
次に、図15に示すように、カットにより前身頃11の型紙より切り離された第1片111と後身頃12の型紙より切り離された第2片112の前後側縁が曲線を描く膝上側の部分を、それぞれ上下方向に複数の小片111a、112aに多分割する。
そして、図16に示すように、第1片111側の複数の小片111aを、第1片111の前側側縁111cの丈方向寸法を維持しつつ、各小片111の後側側縁111dが第1片111の裾Eから直上する線R1上に並ぶように置き直すことで、第1片111の形状を修正する。つまり、各小片111aの図中K1点を基点として、直線R1上に後側側縁111dが並ぶように、小片111aを置き直すことで、第1片111の形状を修正する。
また、同様に、第2片112側の複数の小片112aを、第2片112の後側側縁112cの丈方向寸法を維持しつつ、各小片111の前側側縁112dが第2片112の裾Eから直上する線R2上に並ぶように置き直すことで、第2片112の形状を修正する。つまり、各小片112aの図中K2点を基点として、直線R2上に前側側縁112dが並ぶように、小片112aを置き直すことで、第2片112の形状を修正する。
次いで、図17および図18に示すように、修正後のそれぞれ直線R1、R2上に位置する第1片111の後側側縁111dと第2片112の前側側縁112dとを合わせて第1片111と第2片112を合体した上で、前身頃11および後身頃12との縫い合わせ部分の寸法修正102〜103を上部に加えることにより、ずらした位置にある前身頃11の型紙の股内側側縁11aと後身頃12の型紙の股内側側縁12aの間のスペースに嵌まる襠部13の型紙を形成する。
そして、それら型紙に従い材料布より前身頃11と後身頃12と襠部13とを裁断し、左右それぞれの前身頃11の股内側側縁11aと襠部13の前側側縁13aとを縫い合わせ、後身頃12の股内側側縁12aと襠部13の後側側縁13bとを縫い合わせ、更に前身頃11の股外側側縁11bと後身頃12の股外側側縁12bとを縫い合わせた上で、左右の前身頃11と後身頃12を縫い合わせて胴部を拵えることにより、ズボン10を作製する。
このように作製したズボン10によれば、それぞれ前側と後側に位置をずらして設定した前身頃11の股内側側縁11aと後身頃12の股内側側縁12aの間のスペースに襠部13を介在させ、その襠部13の前後方向中央部の丈方向寸法L2を、位置をずらす前の前身頃の股内側側縁と後身頃の股内側側縁の丈方向寸法L1よりも長く設定しているので、見た目のスマートさを保ちつつ、良好な開脚運動性を発揮することができる。即ち、図10に示すように、内股部分に余裕を持たせることができ、開脚運動性を向上させることができる。尚、図10では、襠部13の寸法を明確化のため誇張して表示してある。
また、前身頃11および後身頃12の各股内側側縁11a、12aと襠部13の縫い目の位置を、前方および後方から見た際に股内側に隠れる位置に設定しているので、見た目を良くすることができる。また、前身頃11および後身頃12の各股内側側縁11a,12aと襠部13の縫い目22,23の位置を、閉脚時と開脚時で内股側の皮膚の伸縮がある位置とない位置の境界に設定しているので、閉脚時には襠部13によって突っ張り感が出ないため、開脚運動性を確実に向上させることができる。また、襠部13の範囲をできるだけ内股の領域に留めることができ、縫い目22,23を目立たないようにすることができる。また、このズボン10では、襠部13の繋ぎ用の縫い目24が股間部に位置しないため、縫い目24によるごわごわ感(こわばり感)を無くすことができる。
また、ズボン10では、図4等で示すように、環状のベルト部205の長手方向(着用者の胴回りの方向)の一部が、伸縮自在に構成されている。
たとえば、ベルト部205のうちで、ズボン10の着用者の腰の左右の側部に対応する部位が弾性を備えて伸縮自在になっている。この伸縮自在になっているベルト部205の部位は、ゴム紐等の弾性体を筒状のベルト布207で覆って構成されている。
さらに説明すると、伸縮自在に構成されているベルト部205の部位(一対のベルト部伸縮部)229(229A,229B)のうちの左側のベルト部伸縮部229Aの後側の端部229A1は、ズボン10の横方向において、腰部伸縮部215の左端とほぼ同じところに位置している(図4参照)。また、左側のベルト部伸縮部229Aの前側の端部229A2は、ズボン10の着用者の左の鼡径部のところ(鼡径部の左端)に位置している。
同様にして、右側のベルト部伸縮部229Bの後側の端部229B1は、ズボン10の横方向において、腰部伸縮部215の右端とほぼ同じところに位置している(図4参照)。また、右側のベルト部伸縮部229Bの前側の端部229B2は、ズボン10の着用者の右の鼡径部のところ(鼡径部の右端)に位置している。
ズボン10によれば、伸縮性生地201とこの伸縮性生地201を覆っている覆い布203とが着用者の腰部のところにのみに設けられているので、従来のズボンに比べても、覆い布203がたいして目立たなくなっており(変更部が目立ち難くなっており)、着用者の運動に伴って伸縮性生地201が適宜伸縮するので着用者が運動しやすくなっており、しかも、伸縮性生地201でのピリングやスナッキングが発生しないので、長時間の着用に耐え得るようになっている。
さらに、ズボン10によれば、着用者の腰部に対応する部位が伸縮性生地201になっており、さらに、伸縮性生地201を覆い布203で覆っているので、ズボン10の着用者(作業者)がしゃがんだ姿勢や立膝の姿勢等をとる等作業者が腰を屈曲したときに、見栄えが悪化することが防止され、作業者の腹部の圧迫が低減され、さらに腰痛を低減することができる。
すなわち、襞状の覆い布203で伸縮性生地201を覆っているので、ズボン10の着用者が腰を屈曲(前屈)させたときでも、覆い布203が適宜伸縮し伸縮性生地201が露出することがないので、見栄えが悪化することがない。
また、ズボン10の着用者(作業者)が腰を屈曲したことで作業者の腰部等の皮膚が上下方向で延びても、伸縮性生地201が上記皮膚の伸びに応じて伸びるので、ズボン10のベルト部205の後側の部位で、ズボン10のベルト部205の後側の部位と作業者の腰部との間に間隙が形成されることがほぼ無くなり、これにより、ズボン10のベルト部205での作業者の腹部への圧迫が低減され、腹部への圧迫の低減で腰痛を低減することができる。
さらに、ズボン10の着用者(作業者)が腰を屈曲したことで作業者の腰部等の皮膚が上下方向で延びて、伸縮性生地201が皮膚の伸びに応じて伸びても、襞状の覆い布203も同様に伸びるので、伸縮性生地201が露出せず、また、伸縮性生地201と覆い布203との伸びによりズボン10のベルト部205の後側の部位と作業者の腰部との間に間隙が形成されることがほぼ無くなるので、見栄えが悪化することが防止される。
さらに説明すると、従来のズボンでは、ツナギとは異なり、上衣が分離され下衣だけで構成されているので、図22(b)で示すように、ズボンの着用者が腰を屈曲(前屈)させると、ズボンのベルト部が、下方に下がってしまい、上述した間隙が形成される等して、着用者の腰の部分が露出してしまう。また、場合によってはズボンの中に入れておいたシャツ(裾部)がズボンの外に出てしまって見苦しくなる。腰の部分が露出することで、体が冷えてしまい、風邪をひきやすくなる等の弊害が発生する。
これに対してズボン10では、図22(a)で示すように、ズボンの着用者が腰を屈曲(前屈)させても、伸縮性生地201が皮膚の伸びに応じて伸びるので、腰部が露出することが無くなり、腰部が保温される。
また、ズボン10の着用者がしゃがんでも、ズボン10の裾(ベルト部のところ)から上衣等のシャツがはみ出す等の着崩れがなくなり、下着等の露出が無くなり、見た目が悪化することが回避され、ズボン10からはみ出したシャツが突出物に引っかかることが回避され、機械に巻き込まれてしまう事態の発生が回避される。
また、ズボン10の着用者がしゃがんでも、ズボン10の裾からズボン10内に汚物や破片や溶接作業等の火花が入り込むことが回避され、着用者が怪我をするおそれが回避される。
また、着崩れがほとんど発生しないので、着崩れを直す必要がほとんど無くなり、緊急時にも対応することができる。
さらに、伸縮性生地201を備えているので、汗でズボン10が着用者の皮膚に張り付いても、しゃがむ動作がし難くなることはない。
また、ズボン10によれば、通常の注意力を備えた者が認識することができる外見上の変更部分(従来のズボンに対する変更部分)が、覆い布203のところであるので、現在の社会通念においても、上品さ、ファッショナブル性、企業PRへの貢献度、親しみ易さ、集団美を満足していると言える。
また、ズボン10によれば、ツナギとは異なり、当然に上衣部が存在しないので、ズボン10の着用者が、文字を書き難くなったり、パーソナルコンピュータのキーボードやマウスの操作をし難くなったりすることがなく、しかも、ズボン10の着用者に肩こり(ズボン10に起因する肩こり)が発生することがない。
また、座位において、ズボン10の着用者の尻部のところで、ズボン10が着用者と椅子とに挟まれてしまっても、上衣部が存在しないので、腰を旋回(人の中心を通り水平面に対して直交する軸まわりにおける旋回)等する動作がし難くなる等、体を動かしにくくなってしまうことがない。
また、ズボン10によれば、上衣が分離され下衣だけで構成されているので、ツナギと比較して開口部が大きくなっており(特に腰の部分で大きくなっており)、通気性がよく、夏場に感じる暑苦しさを低減することができる。一方で、冬場においては、上述したように、腰部が保温される。
また、ズボン10によれば、覆い布203に複数の折り目213が形成されており覆い布203が複数段の襞状になっているので、覆い布203が1段の襞状になっている場合に比べて、覆い布203の伸び量を大きくすることができ、ズボン10の着用者がしゃがんだ姿勢等をとたっときに、ズボン10の着用者の腹部への圧迫を一層低減することができる。
すなわち、ズボン10の伸縮性生地201(覆い布203)に対応する着用者の腰部では、着用者が直立しているときに比べて着用者がしゃがんだ姿勢のとき、皮膚が130%〜150%伸びるのであるが、覆い布203が複数段の襞状に形成されていることで、上記皮膚の伸びに容易に対応することができる。
また、ズボン10によれば、「U」字状の襠部13と腰部伸縮部215とが設けられているので、「U」字状の襠部13と腰部伸縮部215との組み合わせにより、ズボン10の筒状部分(ズボン10の着用者の脚が入る部分)をたくしあげなくても、ズボン10の着用者がしゃがんだとき、ズボン10の着用者の股部や腿部で、ズボン10のひきつれを感じることがない。
すなわち、「U」字状の襠部13や腰部伸縮部215が設けられていない通常の形態のズボンを着用者が履いている場合、直立姿勢からしゃがもうとする前に、着用者はズボンの筒状部分を若干たくしあげる。このたくしあげをしないと、実際にしゃがんだときに、ズボンの腰部や膝部に対応する部位でズボンに大きな引っ張り力がかかり、着用者に突っ張り感やズボンが破れてしまいそうな感触を与えてしまう。
しかし、「U」字状の襠部13と腰部伸縮部215とを設けたズボン10では、ズボン10の着用者がしゃがむ場合にたくしあげをしなくとも、「U」字状の襠部13と腰部伸縮部215とが設けられていることで、ズボン10の腰部や膝部に対応する部位によって、着用者に突っ張り感やズボン10が破れてしまいそうな感触を与えることは無い。
また、ズボン10によれば、ベルト部205の長手方向(着用者の胴回りの方向)の一部が伸縮自在に構成されているので、ズボン10の着用者がしゃがむ等腰を屈曲したときであっても、腰部伸縮部215を設けたことと相まって、ズボン10の着用者の腹部にかかる圧迫力を一層低減することができる。
また、ズボン10によれば、襞状の覆い布203と伸縮性生地201とで、着用者の仙骨部とこの周辺の部位が、他の体の部位よりも厚い布(重なっている布)で覆われており、しかも、ベルトラインと、ベルトラインからたとえば10cm〜20cm程度(腰部伸縮部215の高さ寸法と同じか僅かに長い程度)の若干量下がった部位との間の環状の箇所(筒状の部位)では、着用者の皮膚に直接にもしくは下着を介してズボン10の部位が密着するようになっている。
これにより、ズボン10の着用者の腰が冷えることが防止される(腰が保温される)。冬場、ズボン10を履いて家の外を歩くとき、腰部がポカポカと温かく、腰痛等の障害をもっていない健常者においても、至極快適である。特に、伸縮性生地201が細かいネット状になっているので、伸縮性生地201の細かな網目部に溜まっている空気が断熱材としての機能を発揮し、腰が一層保温されるようになっているのである。
これに対して特許文献1や特許文献2のツナギでは、ツナギの腰部のところが厚い布(重なっている布)で覆われていても、ツナギと着用者の腰部との間に空間が存在しているので、ズボン10のような着用者の腰部の保温を期待することはできない。
ここで、ズボン10を履いたときにおける着用者の腹部や腰部における衣服圧の測定結果等を示す。
衣服圧の測定は、着用者がズボン10(パンツ)もしくは従来のズボン(パンツ)を履き、ベルト部205の外周にベルト通し206にベルトを通してベルトを設置し、ベルトでズボン10が落下しないようにウエストを適宜締め付けた状態で、ベルト部205とベルトとの間に、圧力センサを設置して行った。
圧力センサの設置位置は、図19で示すように、左肩甲骨直下部P1、左腋直下部P2、左乳頭直下部P3、正中線部P4、右乳頭直下部P5、右腋直下部P6、右肩甲骨直下部P7の7箇所とした。
着用者は、図21(a)に示す直立姿勢(起立姿勢)、図21(b)に示す立て膝姿勢、図21(c)に示す椅子座り姿勢をとり、このとき圧力センサでベルトとベルト部205との間の圧力を測定した。なお、ズボン10における直立姿勢での圧力の測定は省略している。
着用者は、甲、乙2名である。甲は、身長172cm、体重78kg、ウエスト88cmの体格の男性である。乙は、身長169cm、体重72.5kg、ウエスト90cmの体格の男性である。
図20に、圧力センサによる圧力の測定結果を示す。なお、図20に示した値(単位はkPa)は、平均値である。この平均値は、10秒間の測定時間における平均値であり、より具体的には、10秒間で1秒毎に11回測定した圧力の平均値である。
図20(a)は、従来の普通のパンツを甲が履いて、直立姿勢、立て膝姿勢、椅子座り姿勢をとったときの、圧力の測定結果(7箇所の測定結果)を示している。
図20(b)は、ズボン10を甲が履いて、立て膝姿勢、椅子座り姿勢をとったときの、圧力の測定結果(7箇所の測定結果)を示している。
図20(c)は、従来の普通のパンツを乙が履いて、直立姿勢、立て膝姿勢、椅子座り姿勢をとったときの、圧力の測定結果(7箇所の測定結果)を示している。
図20(d)は、ズボン10を乙が履いて、立て膝姿勢、椅子座り姿勢をとったときの、圧力の測定結果(7箇所の測定結果)を示している。
図20から明らかなように、直立姿勢に比べて、立て膝姿勢、椅子座り姿勢をとったときのほうが、圧力センサの検出した圧力(衣服圧)が大きくなっている。また、甲乙の個人差はあるが、通常のパンツの衣服圧とズボン10の衣服圧とを比べると、特に立て膝姿勢をとったときに、着用者の前面(腹側)にかかる衣服圧が、ズボン10で低減されている。なお、椅子座り姿勢をとったときにおいても、立て膝姿勢ほどではないが、着用者の前面(腹側)にかかる衣服圧が、ズボン10で低減されている。
さらに、衣服圧については、一般的に3.92kPaが許容限界とされているが、ズボン10では、最大の値が2.83kPaであり、いずれの衣服圧も上記許容値を下回っている。
これにより、ズボン10では、着用者の、腰痛の発生の防止等の上述した効果に加えて、血圧の上昇、脈拍の上昇、発汗等の生理現象、倦怠感、頭痛、嘔吐感を抑制することができる。
次に、ズボン10のアンケート結果について、図23を参照しつつ説明する。
アンケートは、(1)着用感と、(2)素材について行った。アンケート対象者は、A社およびB社の社員である。A社B社は岩手県の会社であり、A社は、労働派遣業、電気・通信機器部品,自動車部品および光学機器部品等のデザインモデルや製作品の設計・製造、金型,同部品の設計・製造、プラスチック樹脂等の成形加工品の設計・製造を行っている会社である。A社のアンケート回答者は2人である。
B社は、鉄道輸送関連業務、ビルメンテナンス業務、警備業務を行っている会社である。B社のアンケート回答者は10人である。
(1)の着用感に関してしゃがみ姿勢をとったとき、とても動き易いが2人(A社1人、B社1人)、動き易いが9人(A社1人、B社8人)、普通が1人(A社0人、B社8人)、動きにくいは0人であった。
(1)の着用感に関して開脚姿勢をとったとき、とても動き易いが2人(A社0人、B社2人)、動き易いが7人(A社2人、B社5人)、普通が3人(A社0人、B社3人)、動きにくいは0人であった。
(2)の素材の耐久性に関しては、とても丈夫は0人、丈夫が5人(A社0人、B社5人)、普通が5人(A社1人、B社4人)、破れ易いは0人であった。
(2)の素材の吸汗拡散性に関しては、汗がとても乾き易いは0人(A社0人、B社0人)、乾き易いが4人(A社2人、B社2人)、普通が8人(A社0人、B社8人)、乾きにくいは、0人であった。
上記アンケート結果により、ズボン10が動き易さや耐久性等が、向上していることが明らかになっている。