JP7451067B2 - ズボン - Google Patents

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Description

本発明は、着用者が下半身に着用するズボンに関するものである。
従来、腰痛の予防や腰痛の軽減のために、腰部に装着する腰痛保護帯が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。また、着用者の身体に対する腰痛保護帯のズレを抑えるため、腰痛保護帯をズボンのウエスト部に固定した腰痛保護帯付きズボンが知られている(例えば、特許文献3参照)。
特許第3597228号公報 実用新案登録第3086242号公報 特開2008-81864号公報
しかしながら、従来の腰痛保護帯は着用者の骨盤を包み込むことが可能な幅を有しており、ズボンのずり下がりの防止を目的として使用される一般的なベルトと比べると幅が広くなっている。そのため、腰痛保護帯や腰痛保護帯付きズボンを着用していることが外部から分かりやすく、見栄えが悪くなるという課題がある。
本発明は、上記課題に着目してなされたもので、目立つことなく腰部の保護を行うことと、腰痛未経験の健常者に対して、一般のベルトの締め付けで腰痛予防を図ることができるズボンを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、ズボン本体と、前記ズボン本体の上端部に設けられて着脱可能に作業用ベルトが巻き付けられるウエスト部と、を備えた腰部負担軽減用のズボンである。前記ウエスト部は、着用時に着用者の骨盤を取り巻く位置に設けられ、ベルト芯と、胴回り方向の寸法を調整する寸法調整部と、を有している。そして、前記ベルト芯は、少なくとも前記骨盤の前側及び後側に対向し、前記作業用ベルトの幅寸法の1.3倍~2.6倍であって3.9cm~8.3cmの幅寸法に設定されると共に、カンチレバー法による剛軟度測定で185mm~300mmの剛軟度を有している。さらに、前記ウエスト部は、前記作業用ベルトの締付力を前記ベルト芯の全面から前記骨盤に向けてほぼ均等に伝達可能である。
これにより、本発明のズボンでは、目立つことなく腰部の保護を行うことができる。また、腰痛未経験の健常者に対して、一般のベルトの締め付けで腰痛予防を図ることができる。
実施例1のズボンの外観を示す平面図である。 実施例1のズボンの外観を示す側面図である。 実施例1のズボンの外側要部を示す展開図である。 実施例1のズボンの内側要部を示す展開図である。 図3におけるA-A断面図である。 図3におけるB-B断面図である。 図3におけるC-C断面図である。 実施例1のベルト芯及び比較例1、比較例2のベルト芯の剛軟度の測定結果を示す表である。 実施例1のベルト芯を介したベルトの締付力の伝達方向を示す説明図である。 第1試験及び第2試験における電極の装着位置を示す説明図である。 第1試験及び第2試験における試行状態を示す説明図である。 第1試験及び第2試験にて用いた一般的なベルトを示す説明図である。 第1検証の結果を示す表である 第2検証の結果を示す表である。 第3検証の結果を示す表である。 第2試験における第1条件から第4条件での平均標準化筋電位量を示す表である。 実施例2のズボンの外観を示す平面図である。 実施例2のズボンの外観を示す側面図である。 実施例2のズボンの外側要部を示す展開図である。 実施例2のズボンの内側要部を示す展開図である。 図19におけるD-D断面図である。 第1変形例のズボンの外側要部を示す展開図である。 第1変形例のズボンの内側要部を示す展開図である。 第2変形例のズボンの外観を示す側面図である。 第2変形例のズボンの外側要部を示す展開図である。 第2変形例のズボンの内側要部を示す展開図である。
以下、本発明のズボンを実施するための形態を、図面に示す実施例1及び実施例2に基づいて説明する。なお、以下の説明では、ズボン1を着用する着用者を基準として「上下」、「左右」、「前後」等の用語を用いる。
(実施例1)
実施例1のズボン1は、図1及び図2に示すように、着用者が下半身に着用する長ズボンであり、綿や化繊等で織られた布や不織布等からなる生地によって形成されている。ズボン1を形成する生地は、伸縮性や通気性、難燃性、撥水性等の任意の性質を有していてもよい。
実施例1のズボン1は、着用者の左右の足をそれぞれ覆う筒状の左足部11a及び右足部11bと、着用者の下腹部及び臀部を覆う胴部12と、を有するズボン本体10を備えている。また、ズボン本体10は、胴部12の前側中央が左右に分割されており、線ファスナー12a及びスナップボタン12b(図3及び図4参照)によって開閉可能にされている。
ここで、ズボン本体10は、前身頃13と後身頃14とを縫い合わせて形成されている。なお、ズボン本体10は、前身頃13と後身頃14の間に、左足部11aの裾から股部を通り、右足部11bの裾にわたるマチを設け、立体縫製としてもよい。
そして、ズボン本体10は、胴部12の上端部がウエスト部20になっている。ウエスト部20には、ズボン1のずり下がり防止を目的としてベルトB(図3参照)が着脱可能に巻き付けられる。また、ズボン本体10は、股上(左足部11aと右足部11bとの分かれ目から上の部分、胴部12の高さ)の長さHが、工場や工事現場等で着用される一般的な作業用ズボンよりも浅く(短く)設定されている。これにより、ウエスト部20は、ズボン本体10を着用したときに、着用者の骨盤(特に骨盤において前方に突出した部位、一般的に「上前腸骨棘」と呼ばれる部位の付近)を取り巻く位置に配置される。すなわち、ズボン本体10は、ベルトBを装着してズボン本体10を履いたときに、ベルトBが骨盤位置に装着されるように設計されている。
ここで、実施例1のズボン1に装着されるベルトBは、一般的な作業用のベルトである。ベルトBは、3cm程度の幅を有し、伸縮性が低く、バックル等を用いて締め付け長さを調整可能であることが望ましい。ベルトBは、例えばポリプロピレンやナイロン製の布ベルト、皮革製の革ベルト、高剛性のゴム製ベルト等を用いることができる。
また、ウエスト部20には、ベルト芯21と、ゴムベルト30と、が設けられている。
ベルト芯21は、ここでは図3に示すように、骨盤の前側に対向する領域αと、骨盤の後側に対向する領域βと、に設けられている。すなわち、ベルト芯21は、骨盤の前側に対向する第1ベルト芯21aと、骨盤の後側に対向する第2ベルト芯21bと、を有している。ここで、「骨盤の前側に対向する領域α」は、着用者を腹部側(正面)から見たときに、左右の上前腸骨棘の間の領域とする。また、「骨盤の後側に対向する領域β」は、着用者を背中側(背面)から見たときに、骨盤の仙骨に対向する領域とする。なお、骨盤の前側に対向する領域αに設けられた第1ベルト芯21aは、胴部12の前側正面が左右に分割されていることで、さらに左第1ベルト芯21cと右第1ベルト芯21dに分かれている(図1参照)。
また、ゴムベルト30は、骨盤の側方に対向する領域γ(骨盤の前側と後側の間の領域)に設けられている。ベルト芯21が、骨盤の前側に対向する領域αと、骨盤の後側に対向する領域βとに設けられ、ゴムベルト30が骨盤の側方に対向する領域γに設けられたことで、ベルト芯21とゴムベルト30とは重ならず、着用者の胴回り方向に沿って交互に配置される。
第1ベルト芯21aは、図5に示すように、半分に折られた帯状のベルト布22の内側に挟み込まれ、ベルト布22を前身頃13の上端に縫着することでウエスト部20に取り付けられる。なお、ベルト布22は、ズボン本体10を形成する生地と同じ生地が使用されることが一般的であるが、異なる生地を使用してもよい。また、ベルト布22には、内側に接着芯が貼り付けられてもよい。さらに、第2ベルト芯21bも、第1ベルト芯21aと同様に、半分に折られた帯状のベルト布22の内側に挟み込まれ、ベルト布22を後身頃14の上端に縫着することでウエスト部20に取り付けられる。
また、ベルト芯21は、図2に示すように、骨盤の前側に対向する領域αに設けられた第1ベルト芯21aの幅寸法(上下方向の長さ)W1aが、骨盤の後側に対向する領域βに設けられた第2ベルト芯21bの幅寸法W1bよりも細い幅寸法に設定されている。
さらに、第1ベルト芯21aの幅寸法W1aは、ベルトBの幅寸法W2より太い幅寸法に設定されている(図5参照)。すなわち、ベルト芯21は、骨盤の前後いずれにおいても、ベルトBの幅寸法W2よりも太い幅寸法に設定されている。なお、ベルト芯21の幅寸法W1a、W1bは、ベルトBの幅寸法W2の1.3~2.6倍程度の長さに設定されることが望ましい。実施例1では、一般的なベルトBの幅寸法W2が3cmであるのに対し、第1ベルト芯21aの幅寸法W1aが6cmに設定され、第2ベルト芯21bの幅寸法W1bが8cmに設定されている。
さらに、ベルト芯21は、ズボン本体10やベルト布22を形成する生地よりも剛軟度が高く、ベルトBの締付力を骨盤(特に仙骨の付近)に向けて伝達可能な剛軟度を有している。ここで「剛軟度」とは、ベルト芯21の曲げ剛性(すなわち、ベルト芯21のコシの強さ)を示す指標である。「剛軟度が高い」とはベルト芯21の曲げ剛性が高いことを意味し、「剛軟度が低い」とはベルト芯21の曲げ剛性が低いことを意味する。「ベルトBの締付力を骨盤に向けて伝達可能な剛軟度」とは、図9に示すように、ベルトBを装着してズボン1を着用した際、ベルト芯21がベルトBの締付力に抗して着用者SへのベルトBの食い込みを抑え、ベルト芯21の全面から骨盤Kに向かってベルトBの締付力をほぼ均等に伝達することができる剛軟度である。なお、「骨盤K」は、左右の寛骨(腸骨、恥骨、座骨)と仙骨と尾骨とで構成される骨格である。
すなわち、ベルト芯21は、剛軟度が低いとベルトBの締付力に抗することができずに内側に屈曲し、ベルトBが着用者に食い込んでしまう。この場合、ベルトBが対向する領域に締付力が集中し、骨盤や腹部に対する圧迫が強くなりすぎる。一方、ベルト芯21の剛軟度が高すぎると、ウエスト部20が硬くなるため、座位姿勢やしゃがんだ姿勢をとることでウエスト部20が腹部で挟まれたときに、ウエスト部20が変形せずに腹部に食い込んでしまう。そのため、ベルト芯21の剛軟度は、ベルトBの締付力を骨盤に向けて伝達可能であって、ウエスト部20の腹部への食い込みを抑えることが可能な程度に設定されることが望ましい。
実施例1では、ポリエステル製のベルト芯21が使用されている。そして、図8に示すように、実施例1のベルト芯21は、JIS K 6253-3準拠の硬度計及び日本ゴム協会標準規格(SRIS)に規定されているアスカー硬度計C型を用いた剛軟度測定では、測定結果がいずれも85ポイントになる剛軟度を有している。また、実施例1のベルト芯21は、JIS K 6548準拠の割れ試験機を用いて荷重をかけた際、400Nの加圧力をかけて8.8mm伸長したときに破損する剛軟度を有している。
さらに、実施例1のベルト芯21は、カンチレバー法による剛軟度測定では、測定結果が185mmとなる剛軟度を有している。カンチレバー法とは、45°の傾斜を持つ水平台に試験片をおき、斜面の方向に試験片を滑らせて、試験片の一端の中央点が斜面に接したときの位置を水平台のスケールから読み取り、試験片が移動した長さで剛軟度を評価する布の剛軟度試験である。
ここで、硬度計及びカンチレバー法の剛軟度測定では、測定結果の数値が大きいほど試験片の剛軟度が高いと判断される。また、割れ試験機では、破損時の加圧力が大きく、破損時の伸長長さが長いほど試験片の剛軟度が高いと判断される。
なお、一般的な作業用ズボンに使用されている比較例1のベルト芯の剛軟度及び比較例2のベルト芯の剛軟度は、図8に示す通りである。すなわち、比較例1のベルト芯は、JIS K 6253-3準拠の硬度計及び日本ゴム協会標準規格(SRIS)に規定されているアスカー硬度計C型を用いた剛軟度測定では、測定結果がいずれも83ポイントになる剛軟度を有している。また、比較例1のベルト芯は、JIS K 6548準拠の割れ試験機を用いて荷重をかけた際、145Nの加圧力をかけて6.3mm伸長したときに破損する剛軟度を有している。また、比較例1のベルト芯は、カンチレバー法による剛軟度測定では、測定結果が180mmとなる剛軟度を有している。一方、比較例2のベルト芯は、JIS K 6253-3準拠の硬度計を用いた剛軟度測定では、測定結果が75ポイントになる剛軟度を有し、日本ゴム協会標準規格(SRIS)に規定されているアスカー硬度計C型を用いた剛軟度測定では、測定結果が80ポイントになる剛軟度を有している。また、比較例2のベルト芯は、JIS K 6548準拠の割れ試験機を用いて荷重をかけた際、230Nの加圧力をかけて8.0mm伸長したときに破損する剛軟度を有している。さらに、比較例2のベルト芯は、カンチレバー法による剛軟度測定では、測定結果が160mmとなる剛軟度を有している。
このように、比較例1及び比較例2のベルト芯は、いずれも実施例1のベルト芯21よりも剛軟度が低い(柔らかい)。そのため、例えば、比較例1や比較例2のベルト芯をウエスト部20に設けた場合、ベルトBの締付力によりベルト芯が屈曲し、結果的にベルトBが着用者に食い込み、骨盤や腹部に対する圧迫が強くなり過ぎる。
なお、例えば、比較例2のベルト芯を二枚重ねてウエスト部20に設けた場合では、座位姿勢やしゃがんだ姿勢をとったときにウエスト部20が腹部に食い込んでしまう。すなわち、比較例2のベルト芯を二枚重ねた程度の剛軟度(カンチレバー法による剛軟度が320mm程度)では、ウエスト部20が硬くなりすぎることが分かった。このため、実施例1のベルト芯21の剛軟度は、カンチレバー法によって測定した際190~300mmであることが望ましい。
ゴムベルト30は、帯状のゴム紐(平ゴム)である。ゴムベルト30は、長さ方向に伸縮して、ウエスト部20の胴回り方向の寸法を調整する寸法調整部を構成する。ゴムベルト30は、図6に示すように、半分に折られた帯状のベルト布22の内側に挟み込まれ、ベルト布22を前身頃13あるいは後身頃14の上端に縫着することでウエスト部20に取り付けられる。
なお、ゴムベルト30を挟み込むベルト布22は、ゴムベルト30の伸長に追従するためにギャザーが寄せられている。さらに、ゴムベルト30の長手方向の両端部は、ベルト布22に縫い付けられてもよいし、ベルト芯21の長手方向の端部に縫い付けられていてもよい。
また、ズボン本体10には、ベルトBをウエスト部20に保持する複数のベルトループ40が設けられている。ベルトループ40は、上下方向に延びる帯状の布片であり、上部40aが上側固定部41によってズボン本体10に固定され、下部40bが下側固定部42によってズボン本体10に固定されている。そして、図5に示すように、上側固定部41と下側固定部42との間隔W3は、ベルトBの幅寸法W2とほぼ同じ長さに設定されている。しかも、上側固定部41及び下側固定部42は、ベルトBの幅方向中心位置O2を少なくとも第1ベルト芯21aの幅方向中心位置O1に一致させる位置に設けられている(図5参照)。
さらに、ズボン本体10は、後身頃14にスペース14aが形成されている。スペース14aは、後身頃14の着用者の腰部背面に対向する領域(ここでは、着用者の背骨を中心として左右方向に仙骨の幅の1.5倍~3倍程度の長さ(ほぼ30cm)であって、ウエスト部20から下方に仙骨の上下方向の長さの1.0倍~1.5倍程度の長さの領域)を切り欠くことで形成されている。
そして、スペース14aには、図7に示すように、内側(着用者側)から順に重ねられ
た伸縮性生地51と、覆い布52と、が設けられている。
伸縮性生地51は、後身頃14よりも伸縮性(弾力性)を備えた生地、例えばパワーネット生地等で形成された生地である。一般的に、パワーネット生地は、ストレッチ性を備えた細かいネット状の織物であり、例えば、ナイロン等の繊維とポリウレタン等の弾性繊維とを互いに交差して形成される。
伸縮性生地51は、スペース14aとほぼ同じ面積を有する矩形状に形成されており、上端縁51aが第2ベルト芯21bを挟み込むベルト布22の下端縁に挟み込まれて縫製されている(図7参照)。また、伸縮性生地51は、下端縁51bと左右端縁51c、51dが後身頃14に縫製されている。
覆い布52は、左右方向の寸法が伸縮性生地51とほぼ等しく、上下方向の寸法が伸縮性生地51よりも大きい矩形状に形成されている。覆い布52は、図7に示すように、左右方向に伸びた一対の折り目53でそれぞれ山折り、谷折りに180°折り返されて襞状に形成されている(プリーツになっている)。なお、覆い布52は、折り目53で折り曲げられることで、上下方向の寸法が、伸縮性生地51の上下方向の寸法とほぼ等しくされる。覆い布52は、後身頃14と同じ生地が使用され、伸縮性生地51よりも伸縮性が低い。
覆い布52は、伸縮性生地51の外側に重ねられ、伸縮性生地51と共に、上端縁52aが、ベルト芯21を挟み込むベルト布22の下端縁に挟み込まれて縫製されている(図7参照)。また、覆い布52は、伸縮性生地51と共に、下端縁52bと左右端縁52c、52dが後身頃14に縫製されている。
伸縮性生地51及び覆い布52は、上下方向に引っ張られた際、伸縮性生地51が弾性変形し、覆い布52の折り目53が広がって、いずれも上下方向に伸びる。なお、覆い布52は、折り目53が限界まで拡がると、上下方向に伸びなくなる。このため、覆い布52と一体となって縫製された伸縮性生地51はそれ以上伸びることができず、伸縮性生地51の伸長は、覆い布52によって規制される。
以下、実施例1のズボン1の作用を説明する。
実施例1のズボン1を着用するには、まず、着用者が左足部11aと右足部11bに左右の足をそれぞれ差し込んでからズボン本体10を引き上げ、胴部12の前側正面を閉じて、ズボン本体10を着用する。
そして、着用者はズボン本体10を着用したら、ベルトBをベルトループ40に通し、ベルトBをウエスト部20に巻き付ける。最後に、着用者がベルトBを締めることでベルトBを装着した状態でズボン1は着用される。
ここで、実施例1のズボン1は、ズボン本体10の股上の長さHが、一般的な作業用ズボンよりも浅く(短く)設定され、ベルト芯21が設けられたウエスト部20が、着用者の骨盤を取り巻く位置に配置されている。また、ベルト芯21は、骨盤の前側及び後側に対向し、ベルトBの幅寸法W2よりも太い幅寸法W1a、W1bに設定されている。さらに、ベルト芯21は、ベルトBの締付力を骨盤に向けて伝達可能な剛軟度を有している(図9参照)。
このため、実施例1のズボン1は、ベルトBの締付力でベルト芯21を締め付けることで、着用者の腹部を締め付けることができる。そして、腹部の前後が締め付けられた着用者は、腹圧が上昇することで、腹腔が柱の役割を果たし、腰椎の保護強化を高めて腰部の負担を軽減することができる。また、着用者は、腹圧が上昇すると、腹筋が補強され、正しい姿勢を維持することができる。このように、実施例1のズボン1は、着用者の腰部の保護を行うことができる。
また、実施例1のズボン1は、一般的なベルトBによってウエスト部20(ベルト芯21)を締め付けることで、着用者の腹部を締め付けて、腹圧を上昇させる。つまり、実施例1のズボン1は、一般的なベルトBを使用して腹圧を上昇させるため、腰部を保護していることが外部から分かりにくく、見栄えの悪化を防止することができる。よって、実施例1のズボン1は、目立つことなく腰部の保護を行うことができる。また、腰痛未経験の健常者に対して、一般のベルトBの締め付けで腰痛予防を図ることができる。
さらに、実施例1のズボン1は、ウエスト部20に、胴回り方向の寸法を調整する寸法調整部であるゴムベルト30が設けられている。このため、実施例1のズボン1は、ウエスト部20の胴回り方向の寸法を着用者の体格に合わせて伸縮させることができ、着用者の骨盤の前側及び後側にベルト芯21を適切に対向させることができる。これにより、着用者の腹部を適切に締め付けて、腹圧を上昇させることができる。
特に、実施例1のズボン1では、寸法調整部がゴムベルト30によって構成されている。このため、実施例1のズボン1は、ゴムベルト30が伸縮することでウエスト部20の胴回り方向の寸法を変化させることが可能であり、寸法調整部を簡易な構成で形成することができる。また、ゴムベルト30は、ベルト布22によって挟み込まれた状態でウエスト部20に取り付けられるため、ズボン1の外部から視認されない。そのため、実施例1のズボン1では、寸法調整部(ゴムベルト30)がウエスト部20に設けられていることが分かりにくく、見栄えの悪化を防止することができる。
以下、実施例1のズボン1による腰部の負担軽減効果を検証する検証試験を説明する。すなわち、実施例1のズボン1の腰部の負担軽減効果を検証するため、第1試験及び第2試験を実施し、第1検証~第3検証を行った。
第1試験は、成人男性三名(被検者A~被検者C)を対象として実施された。第2試験は、成人男性八名(被検者D~被検者K)を対象として実施された。
それぞれの試験では、まず、各被検者の腰部(第2腰椎と第3腰椎の間から右側に5cmずれた位置)に電極を装着する(図10参照)。次に、第1試験では、各被検者に一般的なベルトBを装着した状態又はベルトBを外した状態で、実施例1のズボン1或いは第1比較例のズボンを着用させる。第2試験では、各被検者にベルトBを装着した状態又はベルトBを外した状態で、実施例1のズボン1或いは第2比較例のズボンを着用させる。続いて、いずれの試験においても、各被検者に30°の立位体幹前屈で、腰の高さの台に置いた20kgのウエイトを約1cmの高さまで挙上させ、5秒間保持させる試行を行わせる(図11参照)。そして、各被検者に対し、1分間の休憩を挟んで上記の試行を3セット繰り返し実行させ、試行の実行中に筋電位量を測定する。
なお、「第1比較例のズボン」は、通常、専用の腰部保護ベルトを装着して着用されるズボンであり、以下の要件を備えている。
・ベルトが巻き付けられるウエスト部の位置は、骨盤を取り巻く位置に設定されている。
・ベルト芯は、骨盤の前側及び後側に対向する。
・ベルト芯は、ベルトの幅寸法よりも細い幅寸法に設定されている。
・ベルト芯は、実施例1のズボン1のベルト芯よりも剛軟度が低いものを使用する(比較例1のベルト芯を使用)。
・腰部背面に対向する位置に、伸縮性を有する伸縮性生地が設けられている。
また、「第2比較例のズボン」は、一般的な作業ズボンであり、以下の要件を備えている。
・ベルトが巻き付けられるウエスト部の位置は、骨盤よりも上側に設定されている。
・ベルト芯は、骨盤の前側及び後側に対向する。
・ベルト芯は、ベルトの幅寸法よりも細い幅寸法に設定されている。
・ベルト芯は、実施例1のズボン1よりも剛軟度が低い(比較例1又は比較例2のベルト芯を使用)。
さらに、各試験にて使用した「ベルトB」は、一般的に使用される作業用ベルトであり、ここでは、伸縮性がほとんどないポリプロピレン製のバックル付き布ベルトである。各試験では、図12に示されたベルト幅が約32mm、厚さが2.5mmのベルトBが使用された。また、ベルトBを装着して試験を行う際、各被検者は、自身の胴回り寸法と同程度のベルト長となるように締めた状態(通常の締め具合)から、さらにベルト長が5%短縮するように締めた。
そして、第1検証では、被検者がベルトBを外して第1比較例のズボンを着用した状態で測定した筋電位量に対し、被検者がベルトBを装着して第1比較例のズボンを着用した状態で測定した筋電位量の軽減率と、被検者がベルトBを装着して実施例1のズボン1を着用した状態で測定した筋電位量の軽減率を被検者ごとに算出した。第1検証の結果は図13に示されている。
また、第2検証では、被検者がベルトBを外して実施例1のズボン1を着用した状態で測定した筋電位量に対し、被検者がベルトBを装着して実施例1のズボン1を着用した状態で測定した筋電位量の軽減率を、被検者ごとに算出した。第2検証の結果は図14に示されている。
第3検証では、被検者がベルトBを外して第2比較例のズボンを着用した状態で測定した筋電位量に対し、被検者がベルトBを装着して第2比較例のズボンを着用した状態で測定した筋電位量の軽減率を、被検者ごとに算出した。第3検証の結果は図15に示されている。
図13に示された第1検証の結果から、第1比較例のズボンでは、専用の腰部保護ベルトの代わりに一般的なベルトBを装着した場合であっても、筋電位量の平均低減率が6.2%となり、腰部負担が軽減することが明らかとなった。一方で、ベルトBを装着して実施例1のズボン1を着用した場合では、筋電位量の平均低減率が18.9%となった。すなわち、第1検証の結果から、一般的に使用される作業用のベルトBを装着した場合における腰部の負担軽減効果は、第1比較例のズボンよりも実施例1のズボン1の方が大きいことが示された。
また、図14に示された第2検証の結果から、ベルトBを外して実施例1のズボン1を着用した場合に対し、ベルトBを装着して実施例1のズボン1を着用した場合では、筋電位量の平均低減率が12.48%になることが分かった。すなわち、第2検証の結果から、実施例1のズボン1において、一般的に使用される作業用のベルトBを装着して着用することで腰部の負担軽減効果が生じることが示された。
なお、第2試験では、図16に示された第2試験の全被検者の平均標準化筋電位量の結果に基づいて統計解析を行った。すなわち、第1条件~第4条件の各条件について一元配置分散分析を行った。そして、一元配置分散分析の結果、条件間に有意差が認められた(有意水準は5%未満)ため、ryan's methodを用いて条件毎の多重比較を行った。この結果、第1条件(ベルトBを装着して実施例1のズボン1を着用)と、第2条件(ベルトを外して実施例1のズボン1を着用)との間で有意差が認められた。よって、統計解析の結果からも、実施例1のズボンでは、ベルトBを締めることで、腰部負担が有意に軽減することが認められた。
さらに、図15に示された第3検証の結果から、ベルトBを外した状態で一般的な作業ズボンである第2比較例のズボンを着用した場合に対し、ベルトBを装着して第2比較例のズボンを着用した場合では、筋電位量の平均低減率が6.72%になることが分かった。すなわち、第3検証の結果から、第2比較例のズボンにおいても、ベルトBを装着して着用することで腰部の負担軽減効果が生じることが示された。しかしながら、ryan's methodを用いた条件毎の多重比較では、第3条件(ベルトBを装着して第2比較例のズボンを着用)と第4条件(ベルトを外して第2比較例のズボンを着用)との間に有意差が認められなかった。つまり、統計解析の結果からは、第2比較例のズボンでは、ベルトBを装着した場合による腰部負担の有意な軽減は認められなかった。
一方、第2検証と第3検証の結果を比べた場合、筋電位量の平均低減率は、実施例1のズボン1の方が高いことは明らかである。つまり、第2検証及び第3検証の結果から、一般的に使用される作業のベルトBの有無による腰部の負担軽減効果は、第2比較例のズボンと比べて実施例1のズボン1の方が大きいことが示された。
さらに、第2試験を行った際、ベルトBを装着して第2比較例のズボンを着用したときには、ベルトBを装着して実施例1のズボンを着用した場合と比べて腹部へのベルト食い込みが深いために腹部が痛い、苦しいといった被検者の感想が得られた。このような被検者の感想から、実施例1のズボン1は、第2比較例のズボンと比べてウエスト部20の腹部への食い込みを緩和できることが分かった。
よって、以上の検証結果より、実施例1のズボン1を着用し、一般的に使用される作業用のベルトBの締付力で着用者の腹部を締め付けて腹圧を上昇させたときの腰部の負担軽減効果は、第1比較例のズボンや第2比較例のズボンを着用した場合よりも大きいことが明らかとなった。つまり、実施例1のズボン1には、専用の腰部保護ベルトを使用しなくとも、腰部負担に対する顕著な軽減効果が認められることが分かった。
さらに、上記の効果から、ベルトBを装着した状態で実施例1のズボンを継続して着用することで、重量物を運搬する作業者や介護作業者等は、働きながら腰部の負担を累積的に軽減することが可能となると考えられる。
さらに、実施例1のズボン1は、ズボン本体10にベルトBをウエスト部20に保持する複数のベルトループ40が設けられている。そして、ベルトループ40の上部40aをウエスト部20に固定する上側固定部41と、ベルトループ40の下部40bをウエスト部20に固定する下側固定部42との間隔W3が、ベルトBの幅寸法W2とほぼ同じ長さに設定されている。さらに、上側固定部41及び下側固定部42は、ベルトBの幅方向中心位置O2を少なくとも第1ベルト芯21aの幅方向中心位置O1に一致させる位置に設けられている。
これにより、実施例1のズボン1は、骨盤の前側に対向する領域αにおいて、第1ベルト芯21aの幅方向中心位置O1を中心にしてベルトBの締付力を骨盤に向けて伝達させることができる。ここで、骨盤の前側(腹部)は骨がなく、柔らかいため、ベルト芯21の食い込みが生じやすい。第1ベルト芯21aの幅方向中心位置O1を中心にベルトBの締付力を伝達させることで、ベルト芯21の全面を使って腰部を支えることができる。このため、実施例1のズボン1は、第1ベルト芯21aの着用者への食い込みを抑えつつ、腰部を安定的に支持することができ、腰部の保護性能の向上を図ることができる。
また、実施例1のズボン1では、ズボン本体10のウエスト部20の下側であって着用者の腰部背面に対向する位置に、伸縮性を有する伸縮性生地51と、伸縮性生地51を覆う覆い布52と、が設けられている。
このため、伸縮性生地51及び覆い布52は、ズボン1を着用した着用者がしゃがんだ姿勢や座位姿勢等をとって腰部や臀部の皮膚が伸びたとき、着用者の皮膚の伸びに応じて引っ張られて上下方向に伸びる。これにより、実施例1のズボン1は、ウエスト部20が下方に引っ張られることを抑え、着用者に違和感(腹部の圧迫等)が発生することを防止できる。
すなわち、ズボン本体10の腰部背面に対向する位置に伸縮性生地51や覆い布52が設けられていないズボンでは、着用者がしゃがんだ姿勢等をとることで腰部や臀部の皮膚が伸び、ウエスト部20が下方に引っ張られて、着用者の腹部にウエスト部20が食い込んでしまう。このため、着用者は腹部が圧迫され、さらに腹部の圧迫によって背骨が圧迫されて腰痛が生じるおそれがある。しかしながら、実施例1のズボン1は、伸縮性生地51が伸長すると共に覆い布52の折り目53が広がることでウエスト部20が下方に引っ張られることを緩和できる。このため、着用者は腹部が圧迫されず、腰痛の発生も抑制することができる。
また、実施例1のズボン1は、伸縮性生地51の外側に覆い布52を重ねられているため、外部から伸縮性生地51が見えず、一般的なズボンとの外観上の違いを分かりにくくできる。このため、実施例1のズボン1は、目立つことなく腰部の保護を行うことができる。
なお、覆い布52は、必ずしも設けられなくてもよい。ズボン1は、覆い布52が設けられていないことで、通気性を高めたり、伸縮性生地51の伸縮性を高めたりすることが可能となる。
さらに、実施例1のズボン1では、ベルト芯21のうち、骨盤の前側に対向する領域αに設けられた第1ベルト芯21aの幅寸法W1aが、骨盤の後側に対向する領域βに設けられた第2ベルト芯21bの幅寸法W1bよりも細い幅寸法に設定されている。
このため、実施例1のズボン1は、着用者がしゃがんだ姿勢等をとった際、第1ベルト芯21aの腹部への食い込みを緩和し、着用者に違和感(腹部の圧迫)が発生することを防止できる。
(実施例2)
実施例2のズボン1Aは、図17~図20に示すように、ズボン本体10Aのウエスト部60に設けられたベルト芯61が、着用者の骨盤の全周を取り囲んでいる。また、実施例2のズボン1Aでは、ウエスト部60に設けられて、ウエスト部60の胴回り方向の寸法を調整する寸法調整部が、ベルト芯61と一緒にウエスト部60を分割するスリット62と、スリット62を連結する伸縮性を有する伸縮部材63と、によって構成されている。
すなわち、実施例2の寸法調整部を構成するスリット62は、ズボン本体10Aの上端縁から下方に延び、下端側(ここでは、腰ポケットPの下端)が開き止まりになり、上端側が自由端に構成された切り込みである。スリット62は、ベルト芯61と一緒にウエスト部60を分割する。
ここで、スリット62は、図17に示すように、着用者の両側部にそれぞれ形成されている。このため、ウエスト部60は、スリット62により、着用者の腹部に対向する前側ウエスト部60aと、着用者の脇腹及び背中に対向する後側ウエスト部60bとに分割される。
また、ベルト芯61は、着用者の骨盤の全周を取り囲み、スリット62により、着用者の腹部に対向する前側芯61aと、着用者の脇部及び背中に対向する後側芯61bとに分割されている。そして、前側芯61aは、前側ウエスト部60aに設けられ、後側芯61bは、後側ウエスト部60bに設けられる。さらに、前側ウエスト部60aは、胴部12の前側正面が左右に分割されていることで、さらに左前側ウエスト部60cと右前側ウエスト部60dに分かれている。また、前側芯61aは、左前側芯61cと右前側芯61dに分かれている。
そして、実施例2のズボン1Aでは、前側芯61aの幅方向寸法と、後側芯61bの幅方向寸法とは、同じ寸法に設定されている。つまり、実施例2のベルト芯61は、着用者の骨盤を取り囲む全周にわたって一定の幅方向寸法にされている。
また、スリット62は、図18に拡大して示すように、伸縮性を有する伸縮部材63によって連結されている。なお、伸縮部材31は、ここでは、ベルト芯21とほぼ同じ幅の平ゴムである。また、実施例2のズボン1Aでは、ウエスト部60は、図18に示すように、スリット62によって分割された部分の両側(前側ウエスト部60aの後側領域64A、後側ウエスト部20bの前側領域64B)が重ね合わされている。つまり、前側ウエスト部20aの後側領域64Aは、後側ウエスト部60bの前側領域64Bの上に重ねられている。
また、伸縮部材63は、図21に示すように一端部63aが前側ウエスト部60aの後側領域64Aに縫着され、他端部63bが後側ウエスト部60bの前側領域64Bに縫着されている。すなわち、伸縮部材63は、ウエスト部60の重ね合わされた部分(前側ウエスト部60aの後側領域64A、後側ウエスト部60bの前側領域64B)の間に設けられている。
なお、実施例2のズボン1Aは、後身頃14に伸縮性生地51や覆い布52が設けられていない構成となっている。
以下、実施例2のズボン1Aの作用を説明する。
実施例2のズボン1Aは、ウエスト部60の胴回り方向の寸法を調整する寸法調整部が、ベルト芯61と一緒にウエスト部60を分割するスリット62と、スリット62を連結する伸縮性を有する伸縮部材63と、によって構成されている。
このため、実施例2のズボン1Aは、伸縮部材63が伸縮することで、ウエスト部60の胴回り方向の寸法を着用者の体格に合わせることができ、ベルト芯61にシワが寄って着用者に対して部分的に強い力が作用することを抑制して、違和感を抑えることができる。また、実施例2のズボン2Aでは、ベルト芯61を、骨盤の全周を取り囲む状態で設けることができるため、ベルトBによって着用者の腹部の全周を適切に締め付け、腹圧を上昇させて、腰部の保護を効果的に行うことができる。
また、実施例2のズボン1Aでは、スリット62が、着用者の両側部に設けられ、ベルト芯61が、スリット62により、着用者の腹部に対向する前側芯61aと、着用者の脇部及び背中に対向する後側芯61bとに分割されている。このため、ズボン1Aは、着用された際、スリット62を目立たなくすることができ、外観の違和感をさらに抑制することができる。
さらに、実施例2のズボン1Aでは、ウエスト部60は、スリット62によって分割された部分の両側(前側ウエスト部60aの後側領域64A、後側ウエスト部60bの前側領域64B)が重ね合わされている。そして、伸縮部材63が、ウエスト部60の重ね合わされた部分(前側ウエスト部60aの後側領域64A、後側ウエスト部60bの前側領域64B)の間に設けられている。
これにより、実施例2のズボン1Aは、ウエスト部60を重ね合わせない場合よりも、スリット62や伸縮部材63を、さらに目立たなくして、外観の違和感をさらに抑えることができる。
以上、本発明のズボンを実施例1及び実施例2に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例2のズボン1Aでは、後身頃14に伸縮性を有する伸縮性生地51が設けられていない例が示された。しかしながら、図22及び図23に示された第1変形例1のズボン1Bのように、寸法調整部が、スリット62と伸縮部材63によって構成されている場合であっても、ウエスト部60の下側であって着用者の腰部背面に対向する位置(後身頃14)に、伸縮性を有する伸縮性生地51と、伸縮性生地51を覆う覆い布52が設けられていてもよい。
すなわち、第1変形例のズボン1Bは、後身頃14にスペース14aが形成され、スペース14aに、図22及び図23に示すように、内側(着用者側)から順に重ねられた伸縮性生地51と、覆い布52とが設けられている。
このような第1変形例のズボン1Bでは、ベルト芯61を、骨盤の全周を取り囲む状態で設けて着用者の腹部を適切に締め付けると共に、ベルト芯61にシワを寄せることなくウエスト部60の胴回り方向の寸法を着用者の体格に合わせることができる。さらに、第1変形例のズボン1Bは、着用者がしゃがんだ姿勢等をとることで腰部や臀部の皮膚が伸びた際、伸縮性生地51が伸長すると共に覆い布52の折り目53が広がり、ウエスト部60が下方に引っ張られることを緩和できる。
また、実施例2のズボン1Aでは、前側芯61aの幅寸法と後側芯61b幅寸法とが同じ寸法に設定され、ベルト芯61が着用者の骨盤を取り囲む全周にわたって一定の幅寸法にされた例が示された。しかしながら、図24~図26に示す第2変形例のズボン1Cのように、寸法調整部が、スリット62と伸縮部材63によって構成されている場合であっても、前側芯61aの幅寸法W5が、後側芯61bの幅寸法W6よりも細い幅寸法に設定されてもよい。
このような第2変形例のズボン1Cでは、ベルト芯61を、骨盤の全周を取り囲む状態で設けて着用者の腹部を適切に締め付けると共に、ベルト芯61にシワを寄せることなくウエスト部60の胴回り方向の寸法を着用者の体格に合わせることができる。さらに、第2変形例のズボン1Cは、前側芯61aの着用者の腹部への食い込みを抑えつつ、腰部を安定的に支持することができる。
また、実施例1では、ベルトループ40の上側固定部41と下側固定部42との間隔W3が、一般的なズボン1のずり下がり防止を目的としたベルトBの幅寸法W2とほぼ同じ長さに設定された例が示された。しかしながら、ベルトループ40は、実施例1に示したものに限らない。例えば、一般的なベルトBよりも幅が太く、腰部の保護を目的とする腰部保護ベルトを通すことが可能なベルトループをズボン本体10に設けてもよい。
これにより、着用者の要望に応じて腰部保護ベルトをズボン本体10に装着して着用することができる。なお、腰部保護ベルトをベルトループに通すことで、ズボン本体10と腰部保護ベルトとの位置ずれを防止し、着用者の姿勢に拘らず、腰部保護ベルトを適切な位置に巻き付けた状態を維持することができる。
さらに、ズボン1は、腰部保護ベルトに設けたスナップボタンを留めることが可能なスナップボタンを、ウエスト部20に上下方向に並んで複数設けてもよい。この場合、ズボン1は、腰部保護ベルトに設けたスナップボタンを留める位置に応じて、腰部保護ベルトが巻き付けられる位置を調整して保持することができる。
また、実施例1では、寸法調整部を構成するゴムベルト30が着用者の両側部に形成された例が示され、実施例2や第1、第2変形例では、寸法調整部を構成するスリット62及び伸縮部材63が着用者の両側部に形成された例が示された。しかしながら、寸法調整部を設ける位置は任意に設定できる。また、寸法調整部は、ズボン本体10~10Cに一つ以上形成されていればよく、三つ以上形成されてもよい。
さらに、寸法調整部は、ゴムベルト30や、スリット62及び伸縮部材63によって構成されたものに限らない。寸法調整部は、ウエスト部20、60の胴回り方向の寸法を調整できればよいので、例えば、スリットとボタン及びボタンホールや、スリットとホック及び複数のホック受け等によって寸法調整部を構成してもよい。さらに、寸法調整部は、スリットを形成することなく、着用者の体格に合わせて余ったウエスト部を折り畳んで留めることでウエスト部の胴回り方向の寸法を調整する構成であってもよい。
また、実施例1では、ズボン本体10の胴部12の前側中央が左右に分割され、ベルト芯21の第1ベルト芯21aが左第1ベルト芯21cと右第1ベルト芯21dに分かれている例が示された。しかしながら、胴部12は、必ずしも前側が左右に分割されている必要はない。ズボン本体10は、いわゆる総ゴム仕様のズボンのように、寸法調整部であるゴムベルト30を広げることで着用可能になっていてもよい。
また、実施例1のズボン1では、ズボン本体10に設けられた複数のベルトループ40が、ベルトBの幅方向中心位置O2を第1ベルト芯21aの幅方向中心位置O1に一致させる位置に設けられた例が示された。しかしながら、ベルトループ40の位置は、これに限らない。ベルトループ40によって保持されるベルトBの幅方向中心位置O2が、第1ベルト芯21aの幅方向中心位置O1に対して上下方向にずれる位置にベルトループ40の上側固定部41及び下側固定部42を設けてもよい。
また、実施例2のズボン1Aでは、ウエスト部60のスリット62によって分割された部分の両側(前側ウエスト部60aの後側領域64A、後側ウエスト部60bの前側領域64B)が重ね合わされた例が示された。しかしながら、スリット62によって分割された部分の両側は、必ずしも重なっている必要はない。スリット62の両側(前側ウエスト部60aの後側領域64A、後側ウエスト部60bの前側領域64B)は、端部が突き合せられていてもよいし、離れていてもよい。
1、1A、1B、1C ズボン
10、10A、10B、10C ズボン本体
21、61 ベルト芯
21a 第1ベルト芯
21b 第2ベルト芯
21c 左第1ベルト芯
21d 右第1ベルト芯
30 ゴムベルト(寸法調整部)
40 ベルトループ
41 上側固定部
42 下側固定部
51 伸縮性生地
52 覆い布
B ベルト
62 スリット(寸法調整部)
63 伸縮部材(寸法調整部)

Claims (7)

  1. ズボン本体と、前記ズボン本体の上端部に設けられて着脱可能に作業用ベルトが巻き付けられるウエスト部と、を備えたズボンであって、
    前記ウエスト部は、着用時に着用者の骨盤を取り巻く位置に設けられ、ベルト芯と、胴回り方向の寸法を調整する寸法調整部と、を有し、
    前記ベルト芯は、少なくとも前記骨盤の前側及び後側に対向し、前記作業用ベルトの幅寸法の1.3倍~2.6倍であって3.9cm~8.3cmの幅寸法に設定されると共に、カンチレバー法による剛軟度測定で185mm~300mmの剛軟度を有し
    前記ウエスト部は、前記作業用ベルトの締付力を前記ベルト芯の全面から前記骨盤に向けてほぼ均等に伝達可能である
    ことを特徴とする腰部負担軽減用のズボン。
  2. 請求項1に記載されたズボンにおいて、
    前記寸法調整部は、伸縮可能なゴムベルトによって構成されている
    ことを特徴とするズボン。
  3. 請求項1に記載されたズボンにおいて、
    前記寸法調整部は、前記ベルト芯と一緒に前記ウエスト部を分割するスリットと、前記スリットを連結する伸縮性を有する伸縮部材と、によって構成されている
    ことを特徴とするズボン。
  4. 請求項3に記載されたズボンにおいて、
    前記スリットは、前記着用者の両側部に形成され、
    前記ベルト芯は、前記スリットにより、前記着用者の腹部に対向する前側芯と、前記着用者の背中に対向する後側芯とに分割されている
    ことを特徴とするズボン。
  5. 請求項3又は請求項4に記載されたズボンにおいて、
    前記ウエスト部は、前記スリットによって分割された部分の両側が重ね合わされ、
    前記伸縮部材は、前記ウエスト部の重ね合わされた部分の間に設けられている
    ことを特徴とするズボン。
  6. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載されたズボンにおいて、
    前記ズボン本体は、前記ウエスト部の下側であって前記着用者の腰部背面に対向する位置に、伸縮性を有する伸縮性生地が設けられている
    ことを特徴とするズボン。
  7. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載されたズボンにおいて、
    前記ベルト芯は、前記骨盤の前側に対向する領域の幅寸法が、前記骨盤の後側に対向する領域の幅寸法よりも細い幅寸法に設定されている
    ことを特徴とするズボン。
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