JP7035424B2 - 液体内容物包装用のシーラントフィルム、及び液体内容物用包装材料、液体内容物用包装体 - Google Patents
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しかしながら、このような包装材料は、臭気だけでなく、大気中の湿気をも吸着し、且つ、一度吸着した臭気を、脱離させてしまうという問題があるため、十分な臭気吸着効果が得られていない。
無機多孔体上に化学吸着剤を担持させてなる臭気吸着剤を含有した包装材料も知られているが(特許文献2)、主な吸着対象物は特定の官能基を有する臭気成分を吸着するのみであって、樹脂材料を選定しない状況では、官能基を有さない有機物の発生量を抑制できず、臭気成分を十分に吸着し得るものではない。
そして、且つ、一度吸着した臭気を脱離し難く効率的に臭気吸着を行うことが可能であるため臭気吸着能が低下せず、長期にわたって高い吸着効果を発揮し、液体内容物への耐臭味変化性に優れた液体内容物包装用のシーラントフィルム及び該シーラントフィルムを用いて作製した液体内容物用包装材料と液体内容物用包装体を提供することを目的とする。
1.少なくとも、臭気吸着層を有する、液体内容物包装用のシーラントフィルムであって、
前記シーラントフィルムは、低溶出性ポリエチレンを含有する樹脂組成物から形成され、前記臭気吸着層は、低溶出性ポリエチレンと、臭気吸着体を含有する樹脂組成物から形成され、
前記低溶出性ポリエチレンからなるフィルムに含まれる溶出性TOCの濃度は、1.5ppm以上、250ppm以下であり、
前記臭気吸着体は、SiO2/Al2O3モル比が、30/1~10000/1の疎水性ゼオライトを含む、
液体内容物包装用のシーラントフィルム。
2.前記臭気吸着体が、更に、化学吸着剤担持無機多孔体を含む、上記1に記載の、液体内容物包装用のシーラントフィルム。
3.前記低溶出性ポリエチレンの密度が、0.90g/cm3以上、0.94g/cm3以下である、上記1または2に記載の、液体内容物包装用のシーラントフィルム。
4.前記低溶出性ポリエチレンが、LLDPEである、上記1~3の何れかに記載の、液体内容物包装用のシーラントフィルム。
5.前記低溶出性ポリエチレンが、C4-LLDPE、C6-LLDPE、C8-LLDPEなる群から選ばれる1種または2種以上である、上記1~4の何れかに記載の、液体内容物包装用のシーラントフィルム。
6.前記低溶出性ポリエチレン単体からなる50μm厚のフィルムの、23℃における5000回のゲルボフレックス後のピンホール発生個数が、0個、または1個以上、160個以下である、上記1~5の何れかに記載の、液体内容物包装用のシーラントフィルム。7.前記臭気吸着体が、熱可塑性樹脂と、予め、臭気吸着体/熱可塑性樹脂の質量比が、0.5/99.5~40/60の割合で溶融混練されている、上記1~6の何れかに記載の、液体内容物包装用のシーラントフィルム。
8.前記熱可塑性樹脂のメルトフローレートは、0.2~10.0g/10分である、上記7に記載の、液体内容物包装用のシーラントフィルム。
9.前記臭気吸着体の含有量が、全シーラントフィルム中に0.3質量%以上、15質量%以下である、上記1~8の何れかに記載の、液体内容物包装用のシーラントフィルム。10.前記シーラントフィルムが、前記臭気吸着層の、表面及び/または裏面に、非臭気吸着層を有するものである、上記1~9の何れかに記載の、液体内容物包装用のシーラントフィルム。
11.前記化学吸着剤が、アルデヒド類、ケトン類、及びカルボン酸類なる群から選択される1種または2種以上との反応性を有する官能基を有するものである、上記1~10の何れかに記載の、液体内容物包装用のシーラントフィルム。
12.前記化学吸着剤が、アミノ基を有するものである、上記1~11の何れかに記載の、液体内容物包装用のシーラントフィルム。
13.前記疎水性ゼオライトの含有量が、全前記臭気吸着層中に0.3質量%以上、15質量%以下である、上記1~12の何れかに記載の、液体内容物包装用のシーラントフィルム。
14.上記1~13の何れかに記載の液体内容物包装用のシーラントフィルムを用いて作製された、液体内容物用包装材料。
15.上記14に記載の液体内容物用包装材料から形成された、液体内容物用包装体。
これらの効果によって、本発明の液体内容物用包装材料を用いて液体内容物用包装体を作製した場合に、充填された液体内容物中に溶出する有機物の量を低減し、臭味変化を抑制することができる。
したがって、本発明の液体内容物用包装材料は、殺菌・滅菌処理に付される、液体の食品や医薬品、医療品の包装材料として好適である。
本発明の液体内容物包装用のシーラントフィルムは、少なくとも、臭気吸着層を有する液体内容物包装用のシーラントフィルムであって、シーラントとして機能する層のみであってもよく、臭気吸着層3のみからなる層であってもよく、基材層や接着剤層を含んでいてもよい。
更に、シーラントフィルム1は、図1、2のように、臭気吸着層3と、臭気吸着体を含有しない非臭気吸着層2との多層構造でもよく、図2の場合は。シール強度及び層間接着強度を向上させることができる。
また、図3に示されるように、臭気吸着層3は、主体となる低溶出性ポリエチレンの種類や、臭気吸着体の種類や含有量が同一または異なる3a、3b等の多層構造であってもよい。
本発明のシーラントフィルムは、ヒートシール性を有し、有機物の溶出量が少ない、低溶出性ポリエチレンを含有する。
有機物の溶出量が少ないことによって、本発明のシーラントフィルムを用いた液体内容物用包装体に充填された液体内容物中に溶出する有機物の濃度を低減して、臭味変化を抑制することができる。
Total Organic Carbon)の濃度によって示される。
TOCは、水中の酸化され得る有機物(有機炭素体)全量の濃度を炭素量の濃度で示したものであり、代表的な水質指標の一つとして用いられているものであって、JIS K0805(有機体炭素(TOC)自動計測器)等で規格化されている。
前記低溶出性ポリエチレンからなるフィルムに含まれる溶出性TOCの濃度は、1.5ppm以上、250ppm以下である。
本発明における低溶出性ポリエチレンからなる、15cm×44cm×50μm厚のパウチ包装袋内に、充填水として蒸留水を1kg充填して溶出させた後の、前記充填水中のTOCの増加濃度は、0.01ppm以上、1.5ppm以下であることが好ましく、0.02ppm以上、1.45ppm以下であることがより好ましく、0.025ppm以上、1.4ppm以下であることが更に好ましい。
充填水中のTOCの増加濃度が1.5ppmよりも大きいと、充填水の臭味の変化を抑制することが困難であり、0.01ppmよりも小さいものを得る為には費用が高くなる一方で効果は限定的である。コストと性能の両立の観点から、上記の範囲であることが好ましい。
パウチ袋比重:S[g/cm3]
パウチ袋サイズ:15cm×44cm×50μm厚
パウチ袋重量:W=15×44×50×10-4×2×S=6.6×S[g]
パウチ袋中に含まれる溶出性TOCの濃度:C[ppm]
とすると、
パウチ袋中に含まれる溶出性TOCの全重量=C×W[g]
これが水1000gに溶出するので、
充填水中のTOCの増加濃度=C×W/1000=C×6.6×S×10-3[ppm]
例えば、パウチ袋を構成する低溶出性ポリエチレンフィルムの比重が0.92、含有される溶出性TOCの濃度が1.7ppmの場合は、
充填水中のTOCの増加濃度=1.7×6.6×0.92×10-3=0.01[ppm]
のように算出される。
そして、得られた充填水のTOC増加濃度と、充填水質量部とシーラントフィルム質量部から、シーラントフィルムに含有されていた溶出性TOC濃度を算出する。
ポリエチレンを製造する際に、未反応原料残存量や低分子量生成物や副生成物の量を低減したり、重合触媒を除去することが効果的である。具体的には、原料純度を向上したり、反応温度や圧力等の条件を精密に制御したり、蒸留や洗浄によって未反応原料や低分子量生成物や副生成物や重合触媒を除去したり、高温のままで空気中の酸素に触れることによる酸化を防止したりする方法が挙げられる。
ポリエチレンをフィルム化する際には、有機物の溶出量を上昇させてしまいそうな、滑剤、酸化防止剤、溶剤、その他、の添加剤の使用を制限し、高温による酸化を防止したりする方法が挙げられる。
これらの低溶出性ポリエチレンの中でも、タイプとしては、LLDPEが好ましく、また更には、C4、C6、C8の側鎖を有するLLDPEは、有機物の溶出量を低くし得る傾向にある為、C4-LLDPE、C6-LLDPE、C8-LLDPE等が更に好ましい。
ここで、C4、C6、C8とは、LLDPEと一部共重合して、記載数値数の炭素数のモノマーが側鎖に存在することを示している。例えば、C4はブテン-1、C6はヘキセン-1、または4メチルペンテン-1、C8はオクテン-1の構造の側鎖を表す。
また更に、本発明における低溶出性ポリエチレンは、単体でフィルムにした際に、屈曲に起因する耐ピンホール性に優れていることが好ましい。
本発明における低溶出性ポリエチレンの耐ピンホ-ル性は、例えば、低溶出性ポリエチ
レン単体からなる50μm厚のフィルムの、23℃における5000回のゲルボフレックス後のピンホール発生個数が、0個、または1個以上、160個以下であることが好ましい。
シーラントフィルムのピンホール発生個数が上記範囲であれば、ピンホール耐性が必要な用途の場合に、実用に耐え得る包装材料を作製することができる。
本発明における臭気吸着層は、上記の低溶出性ポリエチレンと、臭気吸着体として特定の疎水性ゼオライトとを含む樹脂組成物から形成される。
更には、汎用のポリエチレンや、ポリプロピレン、メチルペンテンポリマー、酸変性ポリオレフィン系樹脂、及びこれらの熱可塑性樹脂の混合物等を、シーラントフィルムの低溶出性やヒートシール性を阻害しない範囲内で含むことが可能であるが、これらの樹脂に限定されない。
本発明において、臭気吸着体には、特定の疎水性ゼオライトが含まれる。更には、化学吸着剤担持無機多孔体を含むこともできる。
<疎水性ゼオライト>
ゼオライトは、一般的にSiO2/Al2O3モル比が高い程、疎水性が高くなり、本発明において臭気吸着層に含有される疎水性ゼオライトは、SiO2/Al2O3モル比が、30~10000であることが好ましい。
疎水性ゼオライトは、シーラントフィルムまたはシーラントフィルムを用いた包装材料が230℃以上に晒される場合に特に臭気成分の吸着効果を発揮する。
疎水性ゼオライトは、球状、棒状、楕円状等の任意の外形形状であってよく、粉体状、塊状、粒状等いかなる形態であってもよいが、臭気吸着層の製膜性や、ポリエチレンへの均一な分散や混練特性等の観点から、粉体状が好ましい。
本発明において、疎水性ゼオライトの添加量は、臭気吸着層中に0.1質量%以上含有されていれば十分な臭気吸着性効果を発揮することが可能であるが、包装体として良好な臭気吸着性効果を得るためには、0.3質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。一方、積層体作製時に良好な製膜性を得るため、加えて、良好なヒートシール性を達成するためには、疎水性ゼオライトの添加量は15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
さらに、本発明における疎水性ゼオライトでは、SiO2/Al2O3モル比を30~10000と調整することで、水分の吸着を抑制でき、高い臭気吸着能を発現できる。
本発明において、化学吸着剤担持無機多孔体とは、無機多孔体に化学吸着剤を担持させたものであり、溶出性の有機物や、UV照射、γ線照射、EB照射や、ホットパック、ボイル等の殺菌・滅菌処理時に包装体から発生する臭気物質を吸着する機能を有するものである。
担持方法としては、公知または慣用の担持方法を適用することができ、例えば、下記で説明する化学吸着剤を含有する溶液を、無機多孔体に含浸させて、乾燥することにより、担持させることができる。
これらにより、高いシール強度が得られ、シーラントフィルムとして求められる優れたヒートシール性及び製膜性を保持することができる。
臭気吸着体の含有量は、全シーラントフィルム中に0.1質量%以上含有されていれば十分な吸着効果を発揮することが可能であるが、包装体として良好な吸着効果を得るためには、0.3質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。
一方、積層体作製時に良好な製膜性を得るため、加えて、良好なヒートシール性を達成するためには、臭気吸着体の含有量は、全シーラントフィルム中に15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
平均粒子径が0.01μmよりも小さい場合には臭気吸着体の凝集が生じ易く、低溶出性ポリエチレン内での臭気吸着体の分散性が低下する傾向にある。
また、平均粒子径が10μmよりも大きい場合には臭気吸着層の製膜性が劣るために、臭気吸着体を多くは含有し難い傾向となり、十分な吸着効果が得られない可能性が生じる。
本発明において、無機多孔体としては、その表面に多数の細孔を有する任意の無機化合物を用いることができ、例えば、ゼオライト、二酸化ケイ素、ケイ酸塩、活性炭、チタニア、燐酸カルシウム等の無機燐酸塩、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及びこれらの混合物が挙げられる。
特に、吸着対象物質の分子サイズやクラスターサイズに対して有効な孔サイズの多孔状態を有することや安全面の観点から、水酸化アルミニウム、ゼオライト、ケイ酸塩を適用することが好ましい。
また、これらは、球状、棒状、楕円状等の任意の外形形状であってよく、粉体状、塊状、粒状等いかなる形態であってもよいが、化学吸着剤を担持して臭気吸着体とした後で、臭気吸着層の製膜性や、熱可塑性樹脂への均一な分散や混練特性等の観点から、粉体状が好ましい。
平均粒子径が0.01μmよりも小さい場合には臭気吸着体の凝集が生じ易く、熱可塑性樹脂内での臭気吸着体の分散性が低下する傾向にあり、また、平均粒子径が10μmよりも大きい場合には臭気吸着層の製膜性が劣る傾向になるために、臭気吸着体を多くは含有し難い傾向となり、十分な消臭効果が得られない可能性が生じる。
本発明において、化学吸着剤とは、溶出性の有機物や、殺菌・滅菌処理時に樹脂の分解等により発生する臭気物質と化学反応を起こして結合する反応性官能基を有し、且つ、上記無機多孔体上に担持され得る化合物である。
より具体的には、UV照射、γ線照射、EB照射や、ホットパック、ボイル等の殺菌・滅菌処理時に生じる種々のアルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類等と結合する反応性を有する官能基を有する化合物である。
このような化合物としては、アミノ基を含有する化合物、例えばアルキルアミン、テトラメチレンジアミン等のポリアミン、エタノールアミン、ピペリジン、ヒドロキシル基等の塩基性官能基を有する化合物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄等の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩、炭酸水素塩、2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸等のアミド基含有化合物等が挙げられる。
例えば、吸着対象物質が酸系臭気物質である場合は、図4(a)に示すように、臭気吸着剤として、例えばヒドロキシル基を有する化合物を無機多孔体上に担持してなる臭気吸着剤を用いることができる。これにより、カルボキシル基とヒドロキシル基とが化学反応を起こして結合し、吸着対象物質が吸着される。
この際、化学吸着であることにより、一旦吸着した吸着対象物質は脱離することがなく、効率的に臭気吸着を行うことができる。
例えば、包装体形成時の内側表面から外側表面に向かって、増加傾向の濃度勾配をもって分散していてもよく、この構成により、ヒートシール性が向上する。これとは逆に、包装体形成時の内側表面から外側表面に向かって、減少傾向の濃度勾配をもって分散していてもよく、この構成により、層間接着強度が向上する。
更に、臭気吸着層の厚み方向中心部から両表面に向かって、減少傾向の濃度勾配をもって分散していてもよく、この構成により、ヒートシール性と層間接着強度とが向上する。
また別の態様において、臭気吸着層は、2またはそれ以上の層が積層された多層構成であってもよく、ここで、各層は、主体となる低溶出性ポリエチレンの種類や、臭気吸着体の種類や含有量がそれぞれ異なる樹脂組成物からなっていてもよい。
本発明における非臭気吸着層は、低溶出性ポリエチレン、または低溶出性ポリエチレンを含む樹脂組成物(以降、両者を総称して、「低溶出性ポリエチレンを含む樹脂組成物」とも記載する)からなる層であるが、臭気吸着体を含有しない層である。
更には、高溶出性のポリエチレンや、ポリプロピレン、メチルペンテンポリマー、酸変性ポリオレフィン系樹脂、及びこれらの熱可塑性樹脂の混合物等を、シーラントフィルムの低溶出性やヒートシール性を阻害しない範囲内で含むことが可能であるが、これらの樹脂に限定されない。
(臭気吸着体の分散方法)
臭気吸着体と低溶出性ポリエチレンとを混練する方法としては、公知または慣用の混練方法を適用することができる。
臭気吸着体を直接、低溶出性ポリエチレンと混合して混練することも可能であり、或いは、臭気吸着体を高濃度で熱可塑性樹脂と混合した後に溶融混練してマスターバッチを作製し、これを、目標含有率に応じた比率で低溶出性ポリエチレンと混合、溶融混練する、いわゆるマスターバッチ方式によっても可能である。
マスターバッチ中の、疎水性ゼオライトの含有率は、0.5質量%以上、40質量%以下が好ましく、1質量%以上、20質量%以下がより好ましい。
マスターバッチ中の、化学吸着剤担持無機多孔体の含有率は、0.5質量%以上、40質量%以下が好ましく、1質量%以上、20質量%以下がより好ましい。
マスターバッチ方式の場合には、凝集が発生し易い臭気吸着体と低溶出性ポリエチレンの組み合わせであっても、均質に分散させることができる。
例えば、予め臭気吸着体と低溶出性ポリエチレンを溶融混合しておけば、再度、低溶出性ポリエチレンと混合または溶融混練した際に、均質で、良好な製膜性、ヒートシール性、層間接着強度及び臭気吸着性を得ることが可能である。
臭気吸着層中の低溶出性ポリエチレン以外の熱可塑性樹脂としては、汎用の非低溶出性のポリエチレン、ポリプロピレン、メチルペンテンポリマー、酸変性ポリオレフィン系樹
脂等のポリオレフィン系樹脂、及びこれらの樹脂の混合物等が挙げられるが、これらの樹脂に限定されない。
該熱可塑性樹脂は、本発明における低溶出性ポリエチレンと同等程度の低溶出性を有するものが好ましいが、シーラントフィルム全体からの有機物の溶出量に大きな悪影響を与えない範囲内で、汎用のものを用いることができる。
本発明において、シーラントフィルムの各層の製膜、積層方法は特に限定されず、公知または慣用の製膜方法、積層方法を適用することができる。
臭気吸着層や非臭気吸着層を、場合により接着層を介して、他の層上にエクストルージョンコーティングすることにより積層することや、例えば、複数の、臭気吸着層と非臭気吸着層とを、インフレーション法やキャスト法により共押出しにより形成することもできる。
エクストルージョンコーティングにより積層する場合においては、まず、臭気吸着層を形成する樹脂組成物や非臭気吸着層を形成する樹脂組成物を加熱して溶融させて、Tダイスで必要な幅方向に拡大伸張させてカーテン状に押出し、該溶融樹脂を被積層面上へ流下させて、ゴムロールと冷却した金属ロールとで挟持することで、臭気吸着層や非臭気吸着層の形成と被積層面への接着と積層を同時に行う。
インフレーション法を用いる場合においては、臭気吸着層に含まれる低溶出性ポリエチレンや非臭気吸着層に含まれる熱可塑性樹脂のメルトフローレート(MFR)は、0.2~10.0g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.2~9.5g/10分である。
MFRが0.2g/10min未満、又は10.0g/10分以上では加工適正の面で劣る傾向にある。
または、予め製膜された臭気吸着層と非臭気吸着層とを、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、サンドラミネーション等により、接着層を介してラミネートしてもよい。
本発明では、シーラントフィルム-基材フィルム間、並びにシーラントフィルムの各層間に、接着層を設けて積層することも可能である。
接着層は、接着剤または任意のアンカーコート剤からなってよい。
接着剤は、熱硬化型、紫外線硬化型、電子線硬化型等であってよく、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型等のいずれの形態でもよく、また、その性状は、フィルム/シート状、粉末状、固形状等のいずれの形態でもよく、更に、接着機構については、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれの形態でもよい。
このような接着層を形成する成分としては、ポリ酢酸ビニルや酢酸ビニル-エチレン共重合体等のポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリアクリル酸とポリスチレン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル等との共重合体からなるポリアクリル酸系接着剤、シアノアクリレート系接
着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸等のモノマーとの共重合体からなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、LDPE等のポリオレフィン系接着剤、尿素樹脂又はメラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム等からなるエラストマー系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラス等からなる無機系接着剤等が挙げられる。
エクストルージョンコーティングにおいては、まず、接着剤を加熱し溶融させて、Tダイスで必要な幅方向に拡大伸張させてカーテン状に押出し、該溶融物を接着対象層上へ流下させて、ゴムロールと冷却した金属ロールとで挟持することで、接着層の形成と接着対象層への接着と積層を同時に行う。
ノンソルベントラミネート用接着剤を用いる場合は、溶媒へ分散または溶解せずに接着剤自身を層上に塗布し乾燥させて、もう一方の接着対象層を重ねて積層した後に、30~120℃で数時間~数日間エージングすることで、接着剤を硬化させて積層する。
シーラントフィルムの各層間をサンドラミネーションにより積層する場合に、接着層は、加熱溶融させて押出機で適用可能な任意の樹脂を用いることができる。具体的には、上記の非臭気吸着層に用いられる熱可塑性樹脂を好ましく使用できる。
本発明の液体内容物包装用包装材料は、本発明の液体内容物包装用のシーラントフィルムからなる層を含むものであり、シーラントフィルムのみからなるものであってもよく、必要に応じて、基材層、機能材層、接着層等を有することもできる。基材層、機能層、接着剤層には、公知のものを公知の方法で積層して用いることができる。
本発明の液体内容物包装体は、例えば、本発明の液体内容物包装用包装材料を製袋してなるものであり、ヒートシール性が良好な面が対向するように、包装材料を折り曲げるかまたは2枚を重ね合せ、その周辺端部を例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型等のヒートシール形態によりヒートシールすることにより作製することができる。
ヒートシールの方法としては、例えばバーシール、回転ロールシール、ベルトシール、
インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知方法を適用することができる。
本発明において、液体内容物とは、飲料水、ジュース類、点滴用輸液、醤油、ソース、等の調味液体、つゆ、はちみつ、タレ、ドレッシング等の液体全般を指すものである。
[低溶出性ポリエチレン及び高溶出性ポリエチレン]
・ケスモンNS-241:東亞合成(株)社製、アミノ基含有化合物担持無機多孔体。平均粒子径3.5μm。
・ダッシュライトM:(株)シナネンゼオミック製、アミノ基含有化合物担持無機多孔体。平均粒子径6~7μm。
[疎水性ゼオライト]
・ミズカシーブスEX-122:水澤化学工業(株)製。SiO2/AL2O3モル比=32/1、平均粒子径=2.5~5.5μm。
・シルトンMT100:水澤化学工業(株)社製。SiO2/AL2O3モル比=100/1、平均粒子径=3~4.5μm。
・シルトンMT400:水澤化学工業(株)社製。SiO2/AL2O3モル比=400/1、平均粒子径=5~7μm。
・シルトンMT2000:水澤化学工業(株)社製。SiO2/AL2O3モル比=2000/1、平均粒子径=2~4μm。
・シルトンMT-8000:水澤化学工業(株)製。SiO2/AL2O3モル比=8000/1、平均粒子径=0.8μm。
マスターバッチは下記のように調整して作製した。
(マスターバッチ1の調整)
低溶出性ポリエチレンのLLDPEであるウルトゼックス1520Lと、化学吸着剤担持無機多孔体であるケスモンNS-241とを下記の割合でメルトブレンドし、マスターバッチ1(MB1)を得た。
ウルトゼックス1520L 90質量部
ケスモンNS-241 10質量部
(マスターバッチ2~9の調整)
表2の配合に従って、マスターバッチ1と同様に、熱可塑性樹脂と、臭気吸着体または疎水性ゼオライトとをメルトブレンドし、マスターバッチ2~9(MB2~9)を得た。
上記で得たマスターバッチ1と、マスターバッチ6と、ウルトゼックス1520Lとを下記の割合でドライブレンドして、臭気吸着層用の混合物を得た。
マスターバッチ6 12.52質量部
ウルトゼックス1520L 83.3質量部
そして、上記で得た混合物と、非臭気吸着層用のウルトゼックス1520Lとを、160℃でインフレーション製膜によって積層し、非臭気吸着層10μm/臭気吸着層30μm/非臭気吸着層10μmなる3層構成のシーラントフィルムを得た。
積層体の詳細構成及び評価結果を表3に示す。
表3~5の記載の配合に従って、実施例1と同様に、臭気吸着層用の混合物を得て、シーラントフィルムを作成し、評価した。
積層体の詳細構成及び評価結果を表3~5に示す。
高溶出性ポリエチレンであるLLDPEのエボリューSP2020を用いて、160℃でインフレーション製膜し、シーラントフィルム(50μm)を得た。
次いで、実施例1と同様に評価した。積層体の構成及び評価結果を表5に示す。
[製膜性]
の外観を観察し、官能的に評価した。評価基準は以下の通りである。
○:フィルムに皺やぶつが生じることなく製膜が可能。
×:フィルムに皺やぶつが多数生じ、製膜が困難。
[ヒートシール性]
実施例及び比較例で作製したシーラントフィルムと、PETフィルム(厚さ12μm、エスペット T4102:東洋紡(株)製)と、アルミニウム箔(厚さ7μm、東洋アルミニウム(株)製)とを、ドライラミネート用接着剤(RU004/H-1:ロックペイント(株)製、塗布量 各接着層につき3.5g/m2、乾燥温度70℃)を介して貼り
合せ、PETフィルム/接着層/アルミニウム箔/接着層/シーラントフィルムの積層体を作製した。
ヒートシール条件
温度:160℃
圧力:1kgf/cm2
時間:1秒
引張強度試験条件
試験速度:300mm/分
荷重レンジ:50N
合否判定
○:30N/15mm以上であり、合格。
×:30N/15mm未満であり、不合格。
実施例及び比較例で作製したシーラントフィルムをA4サイズ(30cm×21cm)に断裁し、ゲルボフレックステスター(テスター産業(株)社製、BE-1005)で、屈曲後、各サンプルの30cm×21cmの面内に発生したピンホールの数をカウントした。
温度:23℃
ゲルボ屈曲回数:5000回
実施例及び比較例で得られた各シーラントフィルムを用いて、パウチ袋(15cm×44cm)を作製し、各積層体の内面には予めUV照射殺菌処理を施した。
そして、得られた各包装体に、65℃の水(高速液体クロマトグラフィー用蒸留水、純正化学)1000gをホットパック充填して包装体液体充填物を作製し、35℃、2週間保管後に、(株)島津製作所社製TOC-L全有機体炭素計により充填水のTOC濃度を測定した。
各包装体におけるTOC増加濃度を下記式から求めた。
TOC増加濃度=保管後の充填水TOC濃度-充填前の水のTOC濃度
充填前の水のTOC濃度:0.02ppm
UV照射殺菌処理条件
UV波長:253.7nm
照射時間:10秒
温度:25℃
低溶出性ポリエチレンを用いた全実施例の包装体は良好な、製膜性、シール強度、突き刺し強度、TOC増加濃度を示した。
2.非臭気吸着層
3.臭気吸着層
3a.臭気吸着層(濃度a)
3b.臭気吸着層(濃度b)
Claims (15)
- 少なくとも、臭気吸着層を有する、液体内容物包装用のシーラントフィルムであって、
前記シーラントフィルムは、低溶出性ポリエチレンを含有し、
前記臭気吸着層は、前記シーラントフィルムが含有している溶出性の有機物と共に、殺菌・滅菌処理の際に前記シーラントフィルムを構成する樹脂から発生する臭気物質を吸着するための層であり、低溶出性ポリエチレンと、臭気吸着体を含有し、
フィルム化された前記低溶出性ポリエチレンの溶出性TOCの濃度は、42ppm以上、99ppm以下であり、
前記臭気吸着体は、SiO2/Al2O3モル比が、30/1~10000/1の疎水性ゼオライトを含む、
液体内容物包装用のシーラントフィルム。 - 前記臭気吸着体が、更に、化学吸着剤担持無機多孔体を含む、請求項1に記載の、液体内容物包装用のシーラントフィルム。
- 前記低溶出性ポリエチレンの密度が、0.90g/cm3以上、0.94g/cm3以下である、請求項1または2に記載の、液体内容物包装用のシーラントフィルム。
- 前記低溶出性ポリエチレンが、LLDPEである、請求項1~3の何れか1項に記載の、液体内容物包装用のシーラントフィルム。
- 前記低溶出性ポリエチレンが、C4-LLDPE、C6-LLDPE、C8-LLDPEなる群から選ばれる1種または2種以上である、請求項1~4の何れか1項に記載の、液体内容物包装用のシーラントフィルム。
- 前記低溶出性ポリエチレン単体からなる50μm厚のフィルムの、23℃における5000回のゲルボフレックス後のピンホール発生個数が、0個、または1個以上、160個以下である、請求項1~5の何れか1項に記載の、液体内容物包装用のシーラントフィルム。
- 前記臭気吸着体が、熱可塑性樹脂と、予め、臭気吸着体/熱可塑性樹脂の質量比が、0.5/99.5~40/60の割合で溶融混練されている、請求項1~6の何れか1項に記載の、液体内容物包装用のシーラントフィルム。
- 前記熱可塑性樹脂のメルトフローレートは、0.2~10.0g/10分である、請求項7に記載の、液体内容物包装用のシーラントフィルム。
- 前記臭気吸着体の含有量が、全シーラントフィルム中に0.3質量%以上、15質量%以下である、請求項1~8の何れか1項に記載の、液体内容物包装用のシーラントフィルム。
- 前記シーラントフィルムが、前記臭気吸着層の、表面及び/または裏面に、非臭気吸着層を有するものである、請求項1~9の何れか1項に記載の、液体内容物包装用のシーラントフィルム。
- 前記化学吸着剤が、アルデヒド類、ケトン類、及びカルボン酸類なる群から選択される1種または2種以上との反応性を有する官能基を有するものである、請求項1~10の何れか1項に記載の、液体内容物包装用のシーラントフィルム。
- 前記化学吸着剤が、アミノ基を有するものである、請求項1~11の何れか1項に記載の、液体内容物包装用のシーラントフィルム。
- 前記疎水性ゼオライトの含有量が、全前記臭気吸着層中に0.3質量%以上、15質量%以下である、請求項1~12の何れか1項に記載の、液体内容物包装用のシーラントフィルム。
- 請求項1~13の何れか1項に記載の液体内容物包装用のシーラントフィルムを用いて作製された、液体内容物用包装材料。
- 請求項14に記載の液体内容物用包装材料から形成された、液体内容物用包装体。
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