JP7033035B2 - 水素化シラン組成物 - Google Patents

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Description

本開示の少なくとも1つの態様は、水素化シラン組成物に関する。本開示の少なくとも1つの態様は、詳しくは、鎖状水素化シランが低減された水素化シラン組成物に関するものである。
太陽電池、半導体等の用途には、薄膜シリコンが用いられており、この薄膜シリコンは、従来モノシランを原料とする気相成長製膜法(CVD法)によって製造されている。シリコン膜の他の製造方法としては、一般式(SiH2n(n=4,5,又は6)で表される環状シラン化合物を原料とするCVD法(特許文献1)、シクロヘキサシランを原料とするCVD法(特許文献2)、基板上にシクロペンタシランやシクロヘキサシランを溶質とする溶液層を形成し、光重合によりポリシランを作製する方法(特許文献3)などが報告されている。
環状水素化シランを製造する方法としては、特許文献4に、特定の配位化合物の存在下で、ハロシランの環化反応を行って環状ハロゲン化シラン中性錯体を得た後、これを還元することにより環状水素化シランを製造する方法が開示されている。
特開昭60-26664号公報 特表2013-537705号公報 特開2013-187261号公報 特開2015-134755号公報
この様に、環状水素化シランは、半導体の製膜材料として近年多用されており、半導体に好適に使用される製膜として均一な膜を得る観点から、環状水素化シランは、保存安定性を備えることが求められる。
例えば、環状水素化シランを含む組成物が鎖状水素化シランを含む場合、鎖状水素化シランは、同じケイ素原子数でも環状水素化シランよりも水素原子を多く含むことから、水素結合等が作用して蒸気圧が高くなる可能性がある。よって、この鎖状水素化シランが多く存在すると、例えば環状水素化シランの気化に影響を及ぼす虞があり、鎖状水素化シランの割合を制御することが必要と考えられる。特にSi原子数が5以下の比較的低次で蒸気圧の高い鎖状水素化シランの割合が多くなると環状水素化シランの蒸気圧が変化して気化安定性に乏しくなり、膜の均一性を損なう虜がある。
また、環状水素化シランを含む組成物中に鎖状水素化シランが多く含まれると、環状水素化シランの安定性が低下する傾向にあるため、気化安定性の点からだけではなく安定性の点からも環状水素化シランを含む組成物に含まれる鎖状水素化シランの割合を制御することが必要である。
上記事情に基づき、本開示の少なくとも1つの態様は、環状水素化シランの保存安定性を高めた水素化シラン組成物を提供することを課題として掲げた。
上記課題を解決した本開示の少なくとも1つの態様の水素化シラン組成物は、Si原子数が5~7の環状水素化シランに対するSi原子数が5以下の鎖状水素化シランの含有量比が0.009以下であり、環状水素化シランが少なくともシクロヘキサシランを含むものである。
本開示によれば、環状水素化シランの保存安定性を高めることができる。
本開示の水素化シラン組成物は、環状水素化シランに対するSi原子数が5以下の鎖状水素化シランの含有量比が0.009以下であり、前記環状水素化シランのSi原子数が5~7で、少なくともシクロヘキサシランを含む、水素化シラン組成物である。
上記Si原子数が5~7の環状水素化シランに対するSi原子数が5以下の鎖状水素化シランの含有量比は、質量基準であるが、例えば、下記ガスクロマトグラフィー条件で得られるクロマトグラムと下記式(1)に基づいて算出することができる。
(Si原子数が5以下の鎖状水素化シランのガスクロマトグラム面積の和)/(Si原子数が5~7の環状水素化シランのガスクロマトグラム面積の和) …式(1)
ガスクロマトグラフィー条件
検出:FID
カラム:Agilent J&W GCカラム DB-5ms Phenyl-Aryleneポリマー、0.25μm×0.25mm×30m
気化室温度:250℃
検出器温度:280℃
昇温条件:1)50℃5分保持、2)昇温速度20℃/分で250℃まで昇温、3)昇温速度10℃/分で280℃まで昇温、4)280℃で10分保持
前記ガスクロマトグラム面積は、例えば、ガスクロマトグラフィー条件で得られる環状または鎖状水素化シランそれぞれのガスクロマトグラム面積の総和を意味する。このガスクロマトグラム面積から各環状水素化シランや各鎖状水素化シランの比率を求めてもよい。
ガスクロマトグラム面積を用いた百分率法に変えて、検量線法(標準物質メシチレン)を用いて純度を求めてもよい。
本開示の水素化シラン組成物は、例えば、環状水素化シランのシクロヘキサシランを調製したものであってもよく、シクロヘキサシランを固液分離したものであってもよく、シクロヘキサシランを蒸留したものであってもよい。また、シクロヘキサシラン以外の環状又は鎖状水素化シランを製造した場合に、上記含有量比を満たすものは、本開示の水素化シラン組成物に含まれるものとする。
Si原子数が5~7の環状水素化シランに対するSi原子数が5以下の鎖状水素化シランの含有量比は、0.009以下であり、好ましくは0.004以下、より好ましくは0.003以下、さらに好ましくは0.002以下である。当該含有量比の下限は、例えば0以上であってもよく、0.00001以上、又は0.00005以上であってもよい。
上記含有量比を満たす場合、後述される通り、Si原子数が5以下の鎖状水素化シランが限りなく低減されている為、環状水素化シランの保存安定性が高められる。また、気化成膜する際の気化安定性も高められる。
環状水素化シランは、例えば、以下の式(2)で表される。
(SiH2n ・・・(2)
式(2)においてnは限定されず、例えば3~12であってもよいが、nが、5~7である。具体的には、シクロペンタシラン、シクロヘキサシランなどの分岐シリル基を有さない環状水素化シラン、シリルシクロペンタシラン、シリルシクロヘキサシランなどの分岐シリル基を有する環状水素化シランが挙げられる。
前記環状水素化シランは、分岐シリル基を有さない環状水素化シランであることがより好ましい。
本開示の少なくとも1つの態様において、水素化シラン組成物における環状水素化シランの含有量は、水素化シラン組成物100質量%中、97質量%以上であることが好ましく、97.5質量%以上であることがより好ましく、98.0質量%以上であることがさらに好ましく、限りなく100質量%であることが望ましいが、99.9質量%以下又は99.7質量%以下であってもよい。
環状水素化シランは、シクロペンタシラン、シクロヘキサシラン、シリルシクロペンタシラン、およびシリルシクロヘキサシランを含むことがさらに好ましい。尚、環状水素化シランは、シクロヘキサシランを少なくとも含み、このシクロヘキサシランを環状水素化シランの主たる成分(環状水素化シラン100質量%中50質量%以上の成分)として含む。
シクロヘキサシランの含有量は、環状水素化シラン100質量%中、95質量%以上であることが好ましく、より好ましくは95.5質量%以上、さらに好ましくは96.0質量%以上、さらにより好ましくは96.5質量%以上であり、限りなく100質量%であることが望ましいが、99.9質量%以下又は99.7質量%以下であってもよい。
シクロヘキサシランの含有量は、環状及び鎖状水素化シラン100質量%中、97質量%以上であることが好ましく、より好ましくは97.5質量%以上、さらに好ましくは98.0質量%以上であり、限りなく100質量%であることが望ましいが、99.9質量%以下又は99.7質量%以下であってもよい。
鎖状水素化シランは、例えば、以下の式(3)で表される。
Sin2n+2 ・・・(3)
式(3)において、nは限定されず、例えば1~12であってもよいが、本開示の水素化シラン組成物は、nが1~5のものの含有量が所定の範囲であることが好ましい。
具体的な鎖状水素化シランは、モノシラン、ジシラン、トリシラン、テトラシラン、およびペンタシランが例示される。
水素化シラン組成物(好ましくは環状水素化シラン、より好ましくはシクロヘキサシラン)を、特定の加熱工程を経て調製する場合、鎖状水素化シラン量が増加する傾向にある。水素化シラン組成物において、Si原子数が5以下の鎖状水素化シランの含有量を所定の範囲とすることにより、環状水素化シランの保存安定性が向上する傾向にある。
Si原子を5以下有する鎖状水素化シランは、水素化シラン組成物100質量%中、好ましくは0.9質量%以下、より好ましくは0.4質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下、特に好ましくは0.2質量%以下である。
Si原子数が5以下の鎖状水素化シランは、水素化シラン組成物100質量%中、限りなく0質量%であることが望ましいが、例えばその合計が0.001質量%以上、0.01質量%以上であってもよい。
本開示の水素化シラン組成物は、Si原子数が6以上の鎖状水素化シランを含んでいても良いが、それらの含有量はそれぞれ水素化シラン組成物100質量%中、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以下であることが特に好ましい。Si原子数が6以上の鎖状水素化シランの合計の含有量が、上記範囲であることがより好ましい。なお、Si原子数が6以上の鎖状水素化シランの合計の含有量は0でも構わないが、例えば1ppb以上であっても良い。本開示の水素化シラン組成物は、前記シリルシクロペンタシランおよびシリルシクロヘキサシランの合計の含有量に対するSi原子数が6以上の鎖状水素化シランの含有量が前記範囲であることも好ましい形態の一つであり、前記シリルシクロペンタシランおよびシリルシクロヘキサシランの合計の含有量に対するノルマルヘキサシランの含有量が前記範囲であることも好ましい形態の一つである。前記Si原子数が6以上の鎖状水素化シランあるいはノルマルヘキサシランの含有量は、質量基準であるが、例えば前記に記載した通り、ガスクロマトグラフィー条件で得られるクロマトグラムの面積比に基づいて算出することができる。
本開示の少なくとも1つの態様において、水素化シラン組成物は、モノシラン、ジシラン、トリシラン、テトラシラン、およびペンタシランの含有量が、上記の範囲であることが好ましい。
本開示の水素化シラン組成物は、環状水素化シランを含むが、該環状水素化シランはシリルシクロペンタシラン、およびシリルシクロヘキサシランから選択される分岐シリル基を有する環状水素化シランを少なくとも1種以上含む。本開示の水素化シラン組成物は、前記シリルシクロペンタシランおよびシリルシクロヘキサシランの合計の含有量比が質量基準でSi原子数が5~7の環状水素化シランに対して10ppb以上であり、100ppb以上であることがさらに好ましく、1ppm以上であることが特に好ましい。上記範囲で分岐シリル基を有する環状水素化シランを含有することにより、例えばCVD等の気相成膜に本開示の水素化シラン組成物を使用する場合に、成膜性が向上する傾向にある。本開示の水素化シラン組成物は、保存安定性をさらに向上する観点から、Si原子数が5~7の環状水素化シランに対する前記シリルシクロペンタシランの含有量比が0.0080以下であることがより好ましく、0.0020以下であることが特に好ましい。
前記と同様の観点から本開示の水素化シラン組成物において、Si原子数が5~7の環状水素化シランに対する前記シリルシクロヘキサシランの含有量の比が、0.05以下であることがより好ましく、0.015以下であることが特に好ましい。前記シリルシクロペンタシランおよびシリルシクロヘキサシランの合計の含有量は、質量基準であるが、例えば前記に記載した通り、ガスクロマトグラフィー条件で得られるクロマトグラムの面積比に基づいて算出することができる。
本開示の少なくとも1つの態様において、水素化シラン組成物は、シクロペンタシラン、シリルシクロペンタシラン、およびシリルシクロヘキサシランを、それぞれ10ppb以上含んでいても良い。
本開示の少なくとも1つの態様において、水素化シラン組成物は、種々の方法で得られた環状水素化シランを含む水素化シラン組成物から適切な方法で鎖状水素化シランを低減することによって得ることができる。鎖状水素化シラン量が低減される前の環状水素化シランを含む水素化シラン組成物の製造方法は、特に限定されず、種々の公知の製造方法を採用できる。中でも、ハロシランの環化により得られる環状ハロシランを還元する方法が好適である。
上記ハロシラン(ハロゲン化シラン)としては、例えば、ジクロロシラン、ジブロモシラン、ジヨードシラン、ジフルオロシラン等のジハロシラン;トリクロロシラン、トリブロモシラン、トリヨードシラン、トリフルオロシラン等のトリハロシラン;テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、テトラヨードシラン、テトラフルオロシラン等のテトラハロシラン;等を用いることができる。これらの中でも好ましくはトリハロシランであり、特に好ましくはトリクロロシランである。
上記ハロシランを環化する方法は特に制限されないが、例えば、下記(A)または(B)の方法が好ましい。
(A)ハロシラン(ハロゲン化モノシラン)と、ホスホニウム塩および/またはアンモニウム塩とを接触させる工程を含み、環状ハロシランの塩を得る方法[以下、方法Aという場合がある]。
(B)ハロシランと、下記(I)および(II)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物とを接触させる工程を含み、環状ハロシラン中性錯体を得る方法[以下、方法Bという場合がある]。
(I)XRnとして表される化合物[以下、化合物Iという場合がある]。XがPまたはP=Oのときはn=3であり、Rは同一または異なって置換または無置換のアルキル基またはアリール基を表す。XがS、S=O、Oのときはn=2であり、Rは同一または異なって置換または無置換のアルキル基またはアリール基を表す。XがCNのときはn=1であり、Rは置換または無置換のアルキル基またはアリール基を表す。但し、XRn中のアミノ基の数は0または1である。
(II)環中に非共有電子対を有するN、O、SまたはPを含む置換または無置換の複素環化合物からなる群より選択される少なくとも1種の複素環化合物[以下、化合物IIという場合がある]。但し、複素環化合物が有する置換基としての第3級アミノ基の数は0または1である。
まず、上記方法Aについて説明する。
上記ホスホニウム塩は、第4級ホスホニウム塩であることが好ましく、下記式(11)で表される塩が好ましく挙げられる。下記式(11)において、R1~R4は各々異なっていてもよいが、全て同じ基であることが好ましい。
Figure 0007033035000001
また、上記アンモニウム塩は、第4級アンモニウム塩であることが好ましく、下記式(12)で表される塩が好ましく挙げられる。下記式(12)において、R5~R8は各々異なっていてもよいが、全て同じ基であることが好ましい。
Figure 0007033035000002
上記式(11)、上記式(12)において、R1~R4およびR5~R8は各々独立して、水素原子、アルキル基、アリール基を表し、A-は1価のアニオンを示す。
上記R1~R4およびR5~R8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロへキシル基等の炭素数1~16のアルキル基が好ましく挙げられ、炭素数1~8のアルキル基がより好ましい。
上記R1~R4およびR5~R8のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6~18のアリール基が好ましく挙げられ、炭素数6~12のアリール基がより好ましい。
上記R1~R4およびR5~R8は、アルキル基またはアリール基であることが好ましく、アリール基がより好ましい。R1~R4およびR5~R8がアリール基であれば、後述するように、環状ハロシランの塩を製造する際に、環状ハロシランの塩が反応液中で沈殿生成して、環状ハロシランの塩を高純度で得ることが容易になる。
上記式(11)、上記式(12)において、A-で示される1価のアニオンとしては、ハロゲン化物イオン(例えば、Cl-、Br-、I-等)、ボレートイオン(例えば、BF4 -)、リン系アニオン(例えば、PF6 -)等が挙げられる。これらの中でも入手の容易さの点からハロゲン化物イオンが好ましく、より好ましくはCl-、Br-、I-、特に好ましくはCl-、Br-である。
上記ホスホニウム塩とアンモニウム塩は、どちらか一方のみ用いてもよく、両方用いてもよい。ホスホニウム塩は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。アンモニウム塩は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、上記ホスホニウム塩とアンモニウム塩は反応系中において、対応する第3級ホスフィンや第3級アミンから発生させてもよい。
上記ホスホニウム塩および/またはアンモニウム塩の使用量(2種以上を用いる場合はその合計使用量)は、ハロシラン1molに対して、好ましくは0.01mol以上、より好ましくは0.05mol以上、さらに好ましくは0.08mol以上、また好ましくは1.0mol以下、より好ましくは0.7mol以下、さらに好ましくは0.5mol以下である。ホスホニウム塩および/またはアンモニウム塩の使用量が上記範囲であると、環状ハロシランの塩の収率が向上する傾向にある。
上記方法Aは、ポリエーテル、ポリチオエーテル、多座ホスフィン等のキレート型配位子の存在下で行うことが好ましい。環化カップリング反応をキレート型配位子の存在下で行うことにより、環状ハロシランの塩を効率良く製造できる。また、用いるキレート型配位子の種類を適宜選択することにより、得られる環状ハロシラン中の水素数や組成比を調整できる。
上記ポリエーテルとしては、例えば、1,1-ジメトキシエタン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジプロポキシエタン、1,2-ジイソプロポキシエタン、1,2-ジブトキシエタン、1,3-ジメトキシプロパン、1,3-ジエトキシプロパン、1,3-ジプロポキシプロパン、1,3-ジイソプロポキシプロパン、1,3-ジブトキシプロパン、1,4-ジメトキシブタン、1,4-ジエトキシブタン、1,4-ジプロポキシブタン、1,4-ジイソプロポキシブタン、1,4-ジブトキシブタン等のジアルコキシアルカン類、1,2-ジフェノキシエタン、1,3-ジフェノキシプロパン、1,4-ジフェノキシブタン等のジアリールオキシアルカン類等が挙げられる。これらの中でも、特に好ましくは1,2-ジメトキシエタンが挙げられる。
上記ポリチオエーテルとしては、前記例示したポリエーテルの酸素原子を硫黄原子に置換したものが挙げられる。
上記多座ホスフィンとしては、例えば、1,2-ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、1,2-ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、1,2-ビス(ジプロピルホスフィノ)エタン、1,2-ビス(ジブチルホスフィノ)エタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジメチルホスフィノ)プロパン、1,3-ビス(ジエチルホスフィノ)プロパン、1,3-ビス(ジプロピルホスフィノ)プロパン、1,3-ビス(ジブチルホスフィノ)プロパン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジメチルホスフィノ)ブタン、1,4-ビス(ジエチルホスフィノ)ブタン、1,4-ビス(ジプロピルホスフィノ)ブタン、1,4-ビス(ジブチルホスフィノ)ブタン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン等のビス(ジアルキルホスフィノ)アルカン類やビス(ジアリールホスフィノ)アルカン類が挙げられる。これらの中でも、特に好ましくは1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンが挙げられる。
上記キレート型配位子の使用量は適宜設定すればよいが、例えば、ハロシラン1molに対して、好ましくは0.01mol以上、より好ましくは0.05mol以上、さらに好ましくは0.1mol以上、また好ましくは50mol以下、より好ましくは40mol以下、さらに好ましくは30mol以下である。
上記方法Aで得られる環状ハロシランの塩は、例えば、下記式(13)で表されるものが好適である。
Figure 0007033035000003
上記式(13)において、X1とX2はそれぞれ独立してハロゲン原子を表し、Lはアニオン性配位子を表し、pは配位子Lの価数として-2~0の整数を表し、Kは対カチオンを表し、qは対カチオンKの価数として0~2の整数を表し、nは0~5の整数を表し、aとbとcは0以上、“2n+6”以下の整数(ただし、a+b+c=2n+6であり、aとcは同時に0ではない)を表し、dは0~3の整数(ただし、aとdは同時に0ではない)、eは0~3の整数(ただし、d+e=3)を表し、mは1~2であり、sは1以上の整数を表し、tは1以上の整数を表す。
上記環状ハロシランの塩は、ルイス酸と接触させて反応させることにより、フリーの環状ハロシランとしてもよい。フリーの環状ハロシランとは、例えば、Si5Cl10やSi6Cl12あるいは一部が水素原子で置換されたSi6Cl11Hなどの非錯体型の環状ハロシランを意味する。具体的には、環状ハロシランの塩をルイス酸と接触させると、ルイス酸が環状ハロシランの塩に含まれるアニオン性配位子に求電子的に作用して、環状ハロシランの塩からアニオン性配位子を引き抜くとともに対カチオンが遊離し、対応するフリーの環状ハロシランを得ることができる。
上記ルイス酸の種類は特に限定されないが、金属ハロゲン化物を用いることが好ましい。金属ハロゲン化物としては、例えば、金属塩化物、金属臭化物、金属ヨウ化物等が挙げられるが、反応性や反応の制御の容易性の点から、金属塩化物を用いることが好ましい。金属ハロゲン化物を構成する金属元素としては、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム等の13族元素、銅、銀、金等の11族元素、チタン、ジルコニウム等の4族元素、鉄、亜鉛、カルシウム等が挙げられる。ルイス酸としては、具体的に、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素等のハロゲン化ホウ素;塩化アルミニウム、臭化アルミニウム等のハロゲン化アルミニウム;塩化ガリウム、臭化ガリウム等のハロゲン化ガリウム;塩化インジウム、臭化インジウム等のハロゲン化インジウム;塩化タリウム、臭化タリウム等のハロゲン化タリウム;塩化銅、臭化銅等のハロゲン化銅;塩化銀、臭化銀等のハロゲン化銀;塩化金、臭化金等のハロゲン化金;塩化チタン、臭化チタン等のハロゲン化チタン;塩化ジルコニウム、臭化ジルコニウムなどのハロゲン化ジルコニウム;塩化鉄、臭化鉄等のハロゲン化鉄;塩化亜鉛、臭化亜鉛などのハロゲン化亜鉛;塩化カルシウム、臭化カルシウム等のハロゲン化カルシウム;等が挙げられる。
上記ルイス酸の使用量は、環状ハロシランの塩とルイス酸との反応性に応じて適宜調整すればよいが、例えば、環状ハロシランの塩1molに対して、好ましくは0.5mol以上、より好ましくは1.5mol以上、また好ましくは20mol以下、より好ましくは10mol以下である。
上記環状ハロシランの塩とルイス酸との反応は、溶媒または分散媒(これらを単に溶媒という)中で行うことが好ましい。反応において使用する溶媒(反応溶媒)としては、ヘキサン、トルエン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル等のエーテル系溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。なお反応溶媒は、その中に含まれる水や溶存酸素を取り除くため、反応前に蒸留や脱水等の精製を施しておくことが好ましい。
上記環状ハロシランの塩とルイス酸との反応を行う際の反応温度は、反応性に応じて適宜調整すればよいが、例えば、好ましくは-80℃以上、より好ましくは-50℃以上、さらに好ましくは-30℃以上、また好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。
次に、上記方法Bについて説明する。
上記化合物IのXRnでは、Xが環状ハロシランに配位して環状ハロシラン中性錯体を形成する。XがPまたはP=Oである場合、Xは3価であり、Rの数を示すnは3である。Rは同一または異なって置換または無置換のアルキル基またはアリール基を表す。Rは置換または無置換のアリール基であることがより好ましい。Rがアルキル基の場合は、直鎖、分岐状または環状のアルキル基が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロへキシル基等の炭素数1~16のアルキル基が好ましく挙げられる。また、Rがアリール基の場合は、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6~18程度のアリール基が好ましく挙げられる。
上記化合物IのXRnにおいて、XがNのときも、Xが環状ハロシランに配位して環状ハロシラン中性錯体を形成する。但し、XRn中のアミノ基の数は1である。XがNである場合、Xは3価であり、Rの数を示すnは3である。Rは同一または異なって置換または無置換のアルキル基またはアリール基を表す。Rは置換または無置換のアルキル基がより好ましい。Rがアルキル基の場合は、直鎖、分岐状または環状のアルキル基が挙げられ、炭素数1~16のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、炭素数1~3のアルキル基がさらに好ましいものとして挙げられる。また、Rがアリール基の場合は、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6~18程度のアリール基が好ましく挙げられる。
上記XがP、P=Oのときや、XがNのときのXRnにおいて、上記アルキル基が有していてもよい置換基としては、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基等が挙げられ、アリール基が有していてもよい置換基としては、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基等が挙げられる。アミノ基としては、ジメチルアミノ基やジエチルアミノ基が挙げられるが、アミノ基の数はXR3中1つ以下であり、第3級ポリアミンを除く趣旨である。なお、3個のRは、同一であっても、異なっていてもよい。
上記XがS、S=O、Oのとき、Xは2価であり、Rの数を示すnは2である。Rは、XがP、P=Oである場合のRと同じ意味であり、置換または無置換のアルキル基またはアリール基である。Rは置換または無置換のアリール基であることがより好ましい。また、XがCNのとき、Xは1価であり、Rの数を示すnは1である。この場合も、Rは、XがP、P=Oである場合のRと同じ意味であり、置換または無置換のアルキル基またはアリール基である。Rは置換または無置換のアリール基であることがより好ましい。
上記化合物Iの具体例としては、トリフェニルホスフィン(PPh3)、トリフェニルホスフィンオキシド(Ph3P=O)、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン(P(MeOPh)3)等のXがPまたはP=Oの化合物;ジメチルスルホキシド等のXがS=Oの化合物;p-トルニトリル(p-メチルベンゾニトリルともいう)等のXがCNの化合物等が挙げられる。
上記(II)の複素環化合物(化合物II)においては、環中に非共有電子対を有していることが必要であり、この非共有電子対が環状ハロシランに配位して環状ハロシラン中性錯体を形成する。このような複素環化合物としては、環中にローンペアを有するN,O,SまたはPを含む置換または無置換の複素環化合物1種以上が挙げられる。複素環化合物が有していてもよい置換基は、上記Rがアリール基の場合に有していてもよい置換基と同じである。複素環化合物としては、ピリジン類、イミダゾール類、ピラゾール類、オキサゾール類、チアゾール類、イミダゾリン類、ピラジン類、チオフェン類、フラン類等が挙げられる。具体例としては、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
上記化合物Iおよび上記化合物IIのうち、反応温度において液体である化合物は溶媒の役目も兼ねることができる。
上記化合物Iおよび上記化合物IIの使用量は適宜決定すればよく、ハロシラン6molに対し、上記化合物を、例えば、0.1~50mol用いてもよく、0.5~3mol用いることが好ましい。
上記方法Bで得られる上記環状ハロシラン中性錯体は、原料とするハロシランのケイ素原子が3~8個(好ましくは5個または6個、特に6個)から形成され、ケイ素原子が連なった環を含む錯体であり、一般式[Y]l[Sim2m-aa]で表すことができる。上記一般式で、Yは上記化合物Iまたは上記化合物IIであり、Zは、同一または異なって、Cl、Br、I、Fのいずれかのハロゲン原子を表し、lは1または2、mは3~8、好ましくは5または6、特に好ましくは6、aは0~2m-1、好ましくは0~mである。
上記方法A、方法Bにおけるハロシランの環化反応は、第3級アミンを添加して行うことが好ましい。第3級アミンを添加することにより生成する塩酸を中和することができる。
上記環化反応で用いられる第3級アミンとしては、例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリイソブチルアミン、トリイソペンチルアミン、ジエチルメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、ジメチルブチルアミン、ジメチル-2-エチルヘキシルアミン、ジイソプロピル-2-エチルヘキシルアミン、メチルジオクチルアミン等が好ましく挙げられる。
上記第3級アミンは、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、第3級アミンには、環状ハロシランに配位するものも含まれ、例えば、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン等の、比較的嵩高くなく、対称性のアミン等は、比較的効率よく配位すると考えられる。しかし、前記化合物IのXRnで表される第3級アミンだけでは、環状ハロシラン中性錯体の収率が低くなる傾向にあるため、第3級アミン以外の化合物Iを併用することが好ましい。
上記第3級アミンは、ハロシラン1molに対して、0.5~4mol用いることが好ましく、同molとすることが特に好ましい。
なお、本開示の少なくとも1つの態様では、限定はされないが、炭素原子を2個以上有し、アミノ基を3個以上有する第3級ポリアミンは用いないことが好ましい。上記第3級ポリアミンを用いると、対カチオンにケイ素を含む環状ハロシランの塩が生成し、保管時や還元反応時にシランガスが発生するため、安全性の観点から好ましくない。
上記方法A、方法Bにおける上記ハロシランの環化反応は、必要に応じて有機溶媒中で実施できる。この有機溶媒としては、環化反応を妨げない溶媒が好ましく、例えば、炭化水素系溶媒(例えば、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン等)、ハロゲン化炭化水素系溶媒(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン等)、エーテル系溶媒(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル等)、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶媒が好ましく挙げられる。これらの中でも、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン等の塩素化炭化水素系溶媒が好ましい。なお、これら有機溶媒は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記有機溶媒の使用量は、特に制限されないが、通常、ハロシランの濃度が0.5~10mol/Lとなるように調整することが好ましく、より好ましい濃度は0.8~8mol/L、さらに好ましい濃度は1~5mol/Lである。
環化反応における反応温度は、反応性に応じて適宜設定でき、例えば0~120℃程度、好ましくは15~70℃程度である。また環化反応は、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが推奨される。
環化反応後は、環状ハロシランを含む反応液を非ハロゲン溶媒で洗浄する工程を含むことが好ましい。即ち、環化反応が終われば、環状ハロシラン(環状ハロシランの塩、フリーの環状ハロシラン、環状ハロシラン中性錯体等)の溶液あるいは分散液が生成する。これを濃縮あるいは濾過し、得られた固体を例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン溶媒やアセトニトリル、ヘキサンなどの非ハロゲン溶媒等で洗浄することで、精製してもよい。環状ハロシランを、非ハロゲン溶媒を用いて洗浄する工程を含むことにより、水素化シラン組成物に含まれるハロゲン元素等の不純物含有量が顕著に低減される傾向にある。
上記非ハロゲン溶媒で洗浄するに先立って、ハロゲン溶媒で洗浄する工程を含むことが好ましい。ハロゲン溶媒で洗浄することによりアミン塩酸塩を除去でき、非ハロゲン溶媒で洗浄することによりハロゲン溶媒を除去できる。ハロゲン溶媒は種々の還元剤と反応するため、このように環状ハロシランの固体中や溶液中に含有するハロゲン溶媒を低減させることにより、続く還元反応時の水素化シランの収率が向上する傾向がある。
上記ハロゲン溶媒を用いた洗浄、および上記非ハロゲン溶媒を用いた洗浄は、それぞれ1回ずつでもよいし、それぞれ2回以上であってもよい。
上記環状ハロシランは、精製により、高純度な固体として得ることが可能である。しかし、所望により、不純物を含む環状ハロシランを含む組成物として得ることも可能である。環状ハロシランを含む組成物は、環状ハロシランを80質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。上限は例えば99.99質量%である。上記不純物としては、溶剤や上記化合物Iまたは上記化合物IIの残渣、環状ハロシランの分解物やハロシランポリマー等である。環状ハロシランを含む組成物における上記不純物の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、下限は例えば0.01質量%である。
上記環状ハロシラン(環状ハロシランの塩、フリーの環状ハロシラン、環状ハロシラン中性錯体等)を、還元する工程(還元工程)を含むことにより、環状水素化シランを含む水素化シラン組成物を製造できる。上記還元工程は、好ましくは還元剤の存在下で行われる。
上記還元工程で用いることのできる還元剤は特に制限されないが、アルミニウム系還元剤、ホウ素系還元剤からなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましい。アルミニウム系還元剤としては、例えば、水素化リチウムアルミニウム(LiAlH4;LAH)、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム[「Red-Al」(シグマアルドリッチ社の登録商標)]等の金属水素化物等が挙げられる。ホウ素系還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリエチルホウ素リチウム等の金属水素化物や、ジボラン等が挙げられ、金属水素化物を用いることが好ましい。なお、還元剤は1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記還元工程における還元剤の使用量は、適宜設定すればよく、例えば、環状ハロシランのケイ素-ハロゲン結合1個に対する還元剤中のヒドリドの当量を、少なくとも0.9当量以上とすることが好ましい。上記還元剤の使用量は、より好ましくは1.0~50当量、さらに好ましくは1.0~30当量、特に好ましくは1.0~15当量、最も好ましくは1.0~2当量である。還元剤の使用量が多すぎると、後処理に時間を要し生産性が低下する傾向がある。一方、還元剤の使用量が少なすぎると、ハロゲンが還元されずに残り、収率が低下する傾向がある。還元反応時に使用する還元剤の量を減らすことにより、水素化シラン組成物中の鎖状水素化シランの含有量が減少する傾向にあり、分岐シリル基を有する環状水素化シランの含有量が適切な水素化シラン化合物が得られやすくなる傾向にある。
上記還元工程では、還元助剤としてルイス酸触媒を上記還元剤と併用してもよい。ルイス酸触媒としては、塩化アルミニウム、塩化チタン、塩化亜鉛、塩化スズ、塩化鉄等の金属塩化物;臭化アルミニウム、臭化チタン、臭化亜鉛、臭化スズ、臭化鉄等の金属臭化物;ヨウ化アルミニウム、ヨウ化チタン、ヨウ化亜鉛、ヨウ化スズ、ヨウ化鉄等の金属ヨウ化物;フッ化アルミニウム、フッ化チタン、フッ化亜鉛、フッ化スズ、フッ化鉄等の金属フッ化物;等のハロゲン化金属化合物が挙げられる。これらは1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記還元工程における反応は、必要に応じて、有機溶媒の存在下で行うことができる。上記有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、トルエン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル等のエーテル系溶媒;等が挙げられる。これら有機溶媒は1種を用いてもよいし2種以上を併用してもよい。また、環状ハロシランを製造するときに得られた有機溶媒溶液を、そのまま還元工程における有機溶媒溶液として用いてもよいし、環状ハロシランを含む有機溶媒溶液から、有機溶媒を留去して、新たな有機溶媒を添加して還元工程を行ってもよい。なお、還元工程における反応に用いる有機溶媒は、その中に含まれる水や溶存酸素を取り除くため、反応前に蒸留や脱水等の精製を行っておくことが好ましい。
還元反応に用いる有機溶媒の使用量としては、環状ハロシランの濃度が0.01~1mol/Lとなるように調整することが好ましく、より好ましくは0.02~0.7mol/L、さらに好ましくは0.03~0.5mol/Lである。上記範囲で反応を行うことにより、水素化シラン組成物に含まれるハロゲン元素等の不純物含有量が顕著に低減される傾向にある。
還元は、環状ハロシランと還元剤とを接触させることにより行うことができる。環状ハロシランと還元剤との接触に際しては、溶媒の存在下で接触させることが好ましい。溶媒の存在下で環状ハロシランと還元剤とを接触させるには、例えば、(a)環状ハロシランの溶液または分散液に、還元剤をそのまま加える、(b)環状ハロシランの溶液または分散液に、還元剤を溶媒に溶解または分散させた溶液または分散液を加える、(c)溶媒中に環状ハロシランと還元剤を同時にもしくは順次加える、などの混合手順を採用すればよい。これらの中で特に好ましいのは上記(b)の態様である。
また環状ハロシランと還元剤との接触に際しては、還元を行う反応系内に、環状ハロシランの溶液または分散液と、還元剤の溶液または分散液との少なくともいずれか一方を滴下することが好ましい。このように環状ハロシランおよび還元剤の一方または両方を滴下することにより、還元反応で生じる発熱を滴下速度等でコントロールすることができるので、例えばコンデンサー等の小型化が可能になるなど、生産性の向上に繋がる効果が得られる。
環状ハロシランと還元剤の一方または両方を滴下する場合の好ましい態様としては、以下の3つの態様がある。即ち、A)反応器内に環状ハロシランの溶液または分散液を仕込んでおき、これに還元剤の溶液または分散液を滴下する態様、B)反応器内に還元剤の溶液または分散液を仕込んでおき、これに環状ハロシランの溶液または分散液を滴下する態様、C)反応器内に、環状ハロシランの溶液または分散液と還元剤の溶液または分散液とを同時または順次滴下する態様である。これらの中でも上記A)の態様が好ましい。
環状ハロシランと還元剤の一方または両方を上記A)~C)の態様で滴下する場合、環状ハロシランの溶液または分散液の濃度は、好ましくは0.01mol/L以上、より好ましくは0.02mol/L以上、さらに好ましくは0.04mol/L以上、特に好ましくは0.05mol/L以上である。環状ハロシランの濃度が低すぎると、目的生成物を単離する際に留去しなければいけない溶媒量が増えるので、生産性が低下する傾向がある。一方、環状ハロシランの溶液または分散液の濃度の上限は、好ましくは1mol/L以下、より好ましくは0.8mol/L以下、さらに好ましくは0.5mol/L以下である。
滴下時の温度(詳しくは、滴下用の溶液または分散液の温度)の下限は、好ましくは-198℃以上、より好ましくは-160℃以上、さらに好ましくは-100℃以上である。また、滴下時の温度の上限は、好ましくは+150℃以下、より好ましくは+100℃以下、さらに好ましくは+80℃以下、特に好ましくは+40℃以下である。なお、反応容器の温度(反応温度)は、環状ハロシランや還元剤の種類に応じて適宜設定すればよく、通常、下限を-198℃以上とすることが好ましく、より好ましくは-160℃以上、さらに好ましくは-100℃以上である。反応容器(反応溶液)の温度の上限は、+150℃以下が好ましく、より好ましくは+100℃以下、さらに好ましくは+80℃以下、特に好ましくは+40℃以下である。反応温度が低いと、中間生成物や目的物の分解や重合を抑制できるので、収量が向上する。反応時間は、反応の進行の程度に応じて適宜決定すればよく、通常、10分以上72時間以下、好ましくは1時間以上48時間以下、より好ましくは2時間以上24時間以下である。
一例として、上記方法Bにおいて、ハロシランとしてトリクロロシラン、化合物Iとしてトリフェニルホスフィン(PPh3)、第3級アミンとしてN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を用いたスキーム例を下記に示す。
Figure 0007033035000004
トリクロロシランを出発原料とし、上記化合物Iをトリフェニルホスフィン(PPh3)とすると、通常、上記スキームのように6員環のドデカクロロシクロヘキサシランを含む錯体(ドデカクロロシクロヘキサシランにトリフェニルホスフィンが配位した中性錯体([PPh32[Si6Cl12]))となる。この環状ハロシラン中性錯体は環構造を形成するケイ素原子以外にケイ素原子を含まないため、還元やアルキル化もしくはアリール化した際にシランガスや有機モノシランが発生しないか、発生してもその量を低く抑えることができる。
この環化反応で生じた環状ハロシラン中性錯体の収量・収率は、錯体が定量的に反応する下記スキームで表されるメチル化反応を利用して算出できる。
Figure 0007033035000005
上記環状ハロシラン中性錯体(例えば、[PPh32[Si6Cl12])を還元して環状水素化シラン(例えば、シクロヘキサシラン)を得る方法は、例えば、還元剤としてLiAlH4を用いた場合は、以下のスキームで表される。
Figure 0007033035000006
以下、水素化シラン組成物中の鎖状水素化シラン含有量低減手法を、上記手法を含め、複数提示するが、これら手法は鎖状水素化シランの低減度を参考に、適宜、組み合わせることが推奨される。即ち一つの手法で鎖状水素化シラン含有量を目的の量まで低減できない場合は、複数の手法を組み合わせて、目的の量まで低減すればよい。
還元反応は、通常、例えば、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。
前記還元反応で生成した環状水素化シランを含む水素化シラン組成物は、例えば、還元後に得られた反応液から固体(副生した塩等の不純物)を固液分離した後、溶媒を減圧蒸留させた後、水素化シラン組成物を蒸留するなどして、単離する。
上記固液分離の手法は、濾過が簡便であるため好ましく採用できるが、これに限定されるものではなく、例えば、遠心分離やデカンテーションなど公知の固液分離の手法を適宜採用できる。
水素化シラン組成物中の鎖状水素化シランの含有量は、上述したように、還元反応で得られた環状水素化シランを含む水素化シラン組成物を、非ハロゲン溶媒を用いて洗浄する方法や、上記固液分離を少なくとも2回行うことにより、低減する傾向にある。上記方法によれば、分岐シリル基を有する環状水素化シランの含有量が適切な水素化シラン化合物が得られやすくなる傾向にある。
例えば、環状ハロシランを還元した後は、固液分離を少なくとも2回行う工程を含むことが好ましい。例えば、水素化シラン組成物を含む液と固体とを一度固液分離した後(第1分離)、水素化シラン組成物を含む液を好ましくは濃縮して炭化水素系溶媒(ヘキサンなど)を希釈溶媒として加えた後、好ましくは濃縮して析出してきた固体を再度分離し(第2分離)、必要に応じて第1分離から第2分離までの操作を繰り返してもよい。第1分離後に、溶媒希釈、濃縮、固液分離を1回以上行うことがより好ましく、複数回繰り返してもよい。この様に固液分離を少なくとも2回行うことによって、鎖状水素化シランの副生を抑制でき、水素化シラン組成物中の鎖状水素化シラン含有量を低減できる。この様に、鎖状水素化シラン含有量が低減されると、無駄なエネルギーを要することなく環状水素化シラン(好ましくはシクロヘキサシラン)を蒸留することができる。
上記固液分離は、2回でもよいし、3回以上でもよい。上記固液分離の回数は特に限定されないが、生産性を考慮すると、上限は、5回程度以下である。
次に、上記固液分離により得られた水素化シラン組成物を含む溶液を必要によって濃縮した後、高濃度化した水素化シラン組成物(好ましくは環状水素化シラン、より好ましくはシクロヘキサシラン)を蒸留することが好ましい。この蒸留は、減圧蒸留であるのが好ましい。減圧蒸留する方法は特に限定されず、公知の蒸留塔で行えばよく、遮光条件下で行ってもよい。蒸留時の加熱温度を低く設定して蒸留ボトムの内温を低くすると、水素化シラン組成物中の鎖状水素化シランの含有量が減少する傾向にあり、分岐シリル基を有する環状水素化シランの含有量が適切な水素化シラン化合物が得られやすくなる傾向にある。上記蒸留は、留分を複数に分けて行うことが好ましく、得られた留分のうち、鎖状水素化シラン含有量を考慮して適切な留分のみを選択してもよい。例えば蒸留時の初留成分を多く除いた場合、水素化シラン組成物中の鎖状水素化シランの含有量が減少する傾向にあり、分岐シリル基を有する環状水素化シランの含有量が適切な水素化シラン化合物が得られやすくなる傾向にある。
特に水素化シラン組成物中の鎖状水素化シランの含有量を低減するための一つの手法として、前記蒸留(特に減圧蒸留)を2回以上行うことが挙げられる。例えば、水素化シラン組成物を含む溶液を減圧蒸留し、環状水素化シラン(特にシクロヘキサシラン)含有量が適切な留分を回収した後(第1蒸留)、この回収留分を再度減圧蒸留して環状水素化シラン(特にシクロヘキサシラン)含有量が適切な留分を回収し(第2蒸留)、さらに必要に応じて第2蒸留を繰り返す操作を行ってもよい。
減圧蒸留を2回以上行う場合は、先の減圧蒸留での液温(内温)は、好ましくは25~80℃、より好ましくは30~70℃、さらに好ましくは30~50℃で行うのがよく、後の減圧蒸留での液温(内温)は、好ましくは20~75℃、より好ましくは30~65℃、さらに好ましくは35~60℃で行うのがよい。先の減圧蒸留における液温と後の減圧蒸留における液温は同じでもよい。
減圧蒸留を2回以上行う場合は、先の減圧蒸留は、好ましくは5~400Pa、より好ましくは10~300Pa、さらに好ましくは15~300Paで行うのがよく、後の減圧蒸留は、好ましくは5~300Pa、より好ましくは10~200Pa、さらに好ましくは20~150Pa、さらにより好ましくは60Pa以上で行うのがよい。先の減圧蒸留における圧力と後の減圧蒸留における圧力は同じでもよい。
上記減圧蒸留は、環状水素化シランよりも高沸点の不純物および低沸点の不純物を分けるため、また水素化シラン組成物中の鎖状水素化シラン含有量を低減させるために、バッチ式で行ってもよい。
上記減圧蒸留においては、初留分を取り除くことが好ましい。特に、全蒸留分のうち初留分として、質量基準で2%以上を除くことが好ましい。
本開示の少なくとも1つの態様において、環状水素化シランの保存安定性は、遮光性、耐圧性を有する容器(例えばSUS製容器、好ましくは表面研磨されたSUS製容器、より好ましくは電解研磨されたSUS製容器)において、20℃で1ヶ月保存した場合、(20℃1ケ月保存した試料のGC純度(X)/試料のGC純度(Y)×100 式(Z))で評価されてもよい。
式(Z)の値は、環状水素化シランの長期保存安定性の点から、好ましくは98.0%以上、より好ましくは98.5%以上、さらに好ましくは99.0%以上、さらにより好ましくは99.5%以上である。式(Z)の上限は、例えば99.999%、又は99.99%程度であればよい。
本開示の少なくとも1つの態様において、水素化シラン組成物は、Si原子数が5~7の環状水素化シランに対するSi原子数が5以下の鎖状水素化シランの含有量比が、0.009以下に低減されている。よって、環状水素化シラン(好ましくはシクロヘキサシラン)の保存安定性を高めることができる。
以下、実施例を挙げて本開示をより具体的に説明するが、本開示はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本開示の技術的範囲に包含される。
(ガスクロマトグラフィー(GC)分析方法)
測定方法:GC FID法
分析装置:島津製作所社製 GC2014
カラム:DB-5MS 0.25μm(Film)×0.25mm(Diam)×30m(Length)(Agilent Technologies)
気化室温度:250度
検出器温度:280度
昇温条件:50度5分保持、20度/分で250度まで昇温、10度/分で280度に昇温10分保持
(1)製造例1(環状ハロシランの製造)
温度計、コンデンサー、滴下ロートおよび撹拌装置を備えた3L四つ口フラスコ内を窒素ガスで置換した後、当該フラスコ内に、配位化合物としてトリフェニルホスフィン155g(0.591mol)と、塩基性化合物としてジイソプロピルエチルアミン458g(3.54mol)と、溶媒として1,2-ジクロロエタン1789gとを入れた。続いて、フラスコ内の溶液を撹拌しながら、25℃条件下において、滴下ロートから、ハロシラン化合物としてトリクロロシラン481g(3.54mol)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、そのまま2時間撹拌し、続いて60℃で8時間加熱撹拌することにより環化カップリング反応を行い、均一な反応液を得た。得られた反応液を濃縮し、クロロホルム7200gを加えて室温で1時間撹拌し洗浄した後、ろ過を行い、ろ過残渣を減圧下で乾燥することにより、白色固形物(粗製品)を得た。
続いて、上記で得られた白色固形物に対して5倍量(質量基準)の脱水ヘキサンを加えて室温で24時間撹拌し洗浄した後、ろ過を行った。得られたろ過残渣に対し、上記と同じ手順によりヘキサンで洗浄・ろ過を再度行い、得られたろ過残渣を減圧下で乾燥することで、環状ハロシラン化合物(ビス(トリフェニルホスフィン)ドデカクロロシクロヘキサシラン([Ph3P]2[Si6Cl12]))の精製品を得た。洗浄から乾燥までの工程はすべて窒素雰囲気下で行った。得られた精製品をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、精製品には、ハロゲン化炭化水素化合物としてクロロホルムが1質量%、アミン塩(アミン塩酸塩)が1質量%含まれていた。
(2)実施例1(環状水素化シランを含む水素化シラン組成物の製造)
窒素雰囲気下で15Lフラスコに、上記製造例1で得られた環状ハロシランの精製品1000gとジエチルエーテル4970gを入れ、-40℃で撹拌した。この中に、LiAlHの1Mジエチルエーテル溶液1917gを滴下ロートから滴下した。滴下終了後、-40℃で3時間撹拌し、還元反応を行った。その後、反応液を室温まで昇温した後、窒素雰囲気下で固液分離(デカンテーション)し、減圧下でジエチルエーテル溶媒を留去した後、脱水ヘキサンを3250g加えた。その後、再度減圧下にてジエチルエーテルおよびヘキサンを留去して濃縮した後、固液分離(0℃条件で濾過)を行うことで析出固体を取り除いた。得られた濾液から溶媒をさらに留去して追出した後、濾過することで濾液としてシクロヘキサシランの粗製品141gを得た。
上記を2バッチ行い、得られたシクロヘキサシラン粗製品273gを遮光条件下、ビグリューカラムを備えたガラス製蒸留装置(フラスコ、ビグリューカラム、分留管、コンデンサー(冷却管)、受器を備える)を用いて減圧蒸留(条件:内液温31~45℃、圧力16~26Pa)することにより、シクロヘキサシラン粗蒸留品(留分1~4)を181g得た(GC純度(Area-%):94.1%~98.5%)。次いで得られたシクロヘキサシラン粗蒸留品101gを同じく遮光条件下、ビグリューカラムを備えたガラス製蒸留装置(フラスコ、ビグリューカラム、分留管、コンデンサー(冷却管)、受器を備える)を用いて減圧蒸留(条件:内液温39~50℃、圧力63~130Pa)することにより、シクロヘキサシラン本蒸留品(留分1~5)を85g得た(GC純度(Area-%):97.9~99.4%)。各留分の取得条件は表1の通りであった。
Figure 0007033035000007
(3)試験例1(環状水素化シランと鎖状水素化シランの含有量分析)
実施例1で得られたシクロヘキサシラン本蒸留品について、各分析サンプル中の鎖状水素化シランの含有量(面積%)と環状水素化シランの含有量(面積%)をGC装置を用いて測定した。
(分析用サンプルの調製)
窒素雰囲気下のグローブボックス中において、GCバイアルにテトラデカンを500μl入れた。ついで、シクロヘキサシラン本蒸留品を20μl入れ、分析用サンプルを準備した。
Lot.A(留分4)とLot.B(留分4)における、環状水素化シランと鎖状水素化シランのガスクロマトグラフィー測定結果を以下の表2~4に示す。
表2~4の数値は、いずれも面積%として示す。
表4に示す通り、Si原子数が5~7の環状水素化シランに対するSi原子数を5以下含む鎖状水素化シランの含有量比は、Lot.A(留分4)のサンプルにおいて0.0014、またLot.B(留分4)のサンプルにおいては0.0088であり、いずれも0.009以下であった。
また、環状水素化シランは、シクロペンタシラン、シクロヘキサシラン、シリルシクロペンタシラン、シリルシクロヘキサシランを含んでおり、シリルシクロペンタシランおよびシリルシクロヘキサシランの合計の含有量比はSi原子数5~7の環状水素化シランに対して、Lot.A(留分4)において0.007、Lot.B(留分4)において0.010であり、いずれも10ppb以上であった。
(4)試験例2(環状水素化シランの保存安定性)
上記実施例1で得られたシクロヘキサシランの本蒸留品のうち、Lot.Aの留分4(GC純度(Area-%)99.4%)を窒素雰囲気下のグローブボックス内において、ステンレス製(SUS製)耐圧容器に入れて、室温(20℃)で保管した。1か月経過時点でガスクロマトグラフィー装置を用いて、シクロヘキサシランのGC純度を測定したところ、99.2%であった。
上記の結果から明らかなようにSi原子数が5~7の環状水素化シランとSi原子数が5以下の鎖状水素化シランの含有量比が0.009以下である水素化シラン組成物は良好な保存安定性を有していた。
Figure 0007033035000008
Figure 0007033035000009
Figure 0007033035000010
主な略号
CPS: シクロペンタシラン
CHS: シクロヘキサシラン
SiCPS: シリルシクロペンタシラン
SiCHS: シリルシクロヘキサシラン
(5)比較例1
実施例1と同条件で得られたシクロヘキサシラン粗製品 2000gを用いて、減圧蒸留(条件:33~37℃、圧力:15~50Pa)することにより、シクロヘキサシラン蒸留品(留分1~6)1320gを得た。各留分の取得条件は表5の通りであった。
Figure 0007033035000011
ガスクロマトグラフィー測定の結果(数値は面積%)、得られた蒸留品の内、留分6は表6に示す通り、Si原子数が5~7の環状水素化シランに対するSi原子数を5以下含む鎖状水素化シランの含有量比がそれぞれ、Lot.C(留分6)において0.042、またLot.D(留分6)において0.056であり、いずれも0.009超であった。
これらLot.C(留分6)およびLot.D(留分6)のサンプルを窒素雰囲気下、ステンレス製(SUS製)耐圧容器に入れて室温(20℃)で保管した。1か月経過時点でガスクロマトグラフィー装置を用いて、シクロヘキサシランの純度を測定したところ、どちらもGC純度(Area-%)が5.4%低下しており良好な保存安定性を確認出来なかった。
Figure 0007033035000012

Claims (5)

  1. Si原子数が5~7の環状水素化シランに対するSi原子数が5以下の鎖状水素化シランの含有量比が0.009以下であり、前記環状水素化シランが少なくともシクロヘキサシランを含み、前記環状水素化シランはさらにシリルシクロペンタシラン、およびシリルシクロヘキサシランから選択される分岐シリル基を有する環状水素化シランを少なくとも1種以上含み、前記シリルシクロペンタシランおよびシリルシクロヘキサシランの合計の含有量比がSi原子数5~7の環状水素化シランに対して質量基準で10ppb以上である、水素化シラン組成物。
  2. 前記環状水素化シランが、シクロペンタシラン、シクロヘキサシラン、シリルシクロペンタシラン、およびシリルシクロヘキサシランを含む請求項1に記載の水素化シラン組成物。
  3. 前記鎖状水素化シランが、モノシラン、ジシラン、トリシラン、テトラシラン、およびペンタシランを含む請求項1または2に記載の水素化シラン組成物。
  4. 前記シクロヘキサシランの含有量が、環状水素化シラン100質量%中、95質量%以上である請求項1~3のいずれかに記載の水素化シラン組成物。
  5. 前記シクロヘキサシランの含有量が、環状及び鎖状水素化シラン100質量%中、97質量%以上である請求項1~4のいずれかに記載の水素化シラン組成物。
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