JP7229817B2 - 環状水素化シラン化合物の製造方法 - Google Patents

環状水素化シラン化合物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は環状水素化シラン化合物の製造方法に関する。
太陽電池、半導体等には薄膜シリコンが用いられており、従来、該薄膜シリコンはモノシランを原料とする気相成長製膜法(CVD法)によって製造されている。近年、より簡便な薄膜シリコンの製造方法として、水素化ポリシラン溶液を塗布し、焼成する方法が注目されている。前記水素化ポリシランは、シクロペンタシラン、シクロヘキサシランなどの環状水素化シラン化合物から製造される(非特許文献1など)。
環状水素化シラン化合物の製造方法として、例えば、特許文献1には環状ハロシラン化合物の塩とルイス酸化合物とを接触させて環状ハロシラン化合物を得て、得られた環状ハロシラン化合物を金属水素化物と接触させて還元する方法が開示されている。該特許文献1には、より具体的には、テトラデカクロロシクロヘキサシラン・ジアニオンのホスホニウム塩を含む白色固体と塩化アルミニウムとをベンゼン中で4日間攪拌して反応させ、得られた反応液から減圧下でベンゼンを留去して、Si6Cl12を含む白色固体を得、この白色固体(Si6Cl12)をベンゼンに入れ、水素化リチウムアルミニウムを添加して還元し、シクロヘキサシランを製造することが記載されている。
特開2017-95324号公報
T.Shimoda et al., "Solution-processed silicon films and transistors", Nature, vol.440, p783 (2006)
特許文献1においてテトラデカクロロシクロヘキサシラン・ジアニオンのホスホニウム塩を含む白色固体と塩化アルミニウムとをベンゼン中で反応させた後、減圧下でベンゼンを留去しているのは、ベンゼンと共に低分子量のケイ素化合物を除去し、最終生成物であるシクロヘキサシランの純度を高めるためである。しかし留去工程を設けると目的物の製造効率が低下する。またテトラデカクロロシクロヘキサシラン・ジアニオンの反応生成物(Si6Cl12)を、ベンゼン溶媒のまま水素化リチウムアルミニウムで還元すると、ベンゼンの融点が約6℃と高いために、反応温度を低くするのが難しくなる。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、環状水素化シラン化合物を効率よく製造できる方法を提供することにある。
本発明は、以下の発明を含む。
[1] 環状ハロシラン化合物の塩とルイス酸化合物とを溶媒の存在下で接触及び反応させて環状ハロシラン化合物を含む反応液(A)を得る第1反応工程、
前記反応液(A)に固体として含まれるルイス酸化合物の塩を除去し、環状ハロシラン化合物を含む溶液を得る固液分離工程、
環状ハロシラン化合物を含む前記溶液を、金属水素化物と接触させて環状水素化シラン化合物を含む反応液(B)を得る第2反応工程、
を含む環状水素化シラン化合物の製造方法。
[2] 前記第1反応工程での溶媒が、前記第2反応工程の溶媒の少なくとも1種である[1]に記載の環状水素化シラン化合物の製造方法。
[3] 第2反応工程での反応開始時の環状ハロシラン化合物の濃度が1質量%以上、60質量%以下である[1]又は[2]に記載の環状水素化シラン化合物の製造方法。
[4] 前記溶媒が炭化水素系溶媒である[1]~[3]のいずれかに記載の環状水素化シラン化合物の製造方法。
本発明によれば、環状ハロシラン化合物の塩から調製される環状ハロシラン化合物を含む反応液(A)を固液分離し、環状ハロシラン化合物を含む溶液を金属水素化物と接触させているため、環状水素化シラン化合物を効率よく製造できる。
本発明の製造方法は、環状ハロシラン化合物の塩を環状ハロシラン化合物にする工程(第1反応工程)と、環状ハロシラン化合物を環状水素化シラン化合物にする工程(第2反応工程)と、第1反応工程及び第2反応工程の間に実施され、第1反応工程の反応液に固体として含まれるルイス酸化合物の塩を除去する固液分離工程とを有する。即ち、第1反応工程、固液分離工程、および第2反応工程をこの順で連続して行う。
I.第1反応工程
前記第1反応工程は、より詳細には、環状ハロシラン化合物の塩とルイス酸化合物とを溶媒の存在下で接触及び反応させて環状ハロシラン化合物を含む反応液(A)を得る工程である。
上記環状ハロシラン化合物の塩としては、ケイ素原子が連なって単素環を形成し、該単素環を構成する少なくとも1つのケイ素原子にハロゲン原子が結合した構造を有しており、塩を形成している化合物が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
上記単素環を構成するケイ素原子の数は特に限定されないが、3以上が好ましく、4以上がより好ましく、5以上がさらに好ましく、また8以下が好ましく、7以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。
環状ハロシラン化合物は、単素環を構成しないケイ素原子を含むものであってもよく、例えば、単素環を構成するケイ素原子に、ケイ素原子を含む置換基(例えば、シリル基など)が結合していてもよい。但し、単素環を構成しないケイ素原子が含まれると、環状ハロシラン化合物の塩や環状ハロシラン化合物の保管時や、得られた環状ハロシラン化合物を還元して環状水素化シラン化合物を製造する工程において、シランガスの発生量が増加したり、環状水素化シラン化合物の収率が低下する傾向にあるので、単素環を構成しないケイ素原子は極力含まないことが好ましい。
ケイ素原子から形成された単素環には、少なくとも1つのハロゲン原子が結合していることが好ましく、単素環を構成するケイ素原子のそれぞれにハロゲン原子が1つまたは2つ結合していることがより好ましく、単素環を構成するケイ素原子のそれぞれにハロゲン原子が2つ結合していることが更に好ましい。
上記環状ハロシラン化合物の塩としては、下記式(1)で表される塩を用いることが好ましい。
Figure 0007229817000001
上記式(1)において、X1とX2はそれぞれ独立してハロゲン原子を表し、Lはアニオン性配位子を表し、pは配位子Lの価数として-2~-1の整数を表し、Kは対カチオンを表し、qは対カチオンKの価数として+1~+2の整数を表し、nは0~5の整数を表し、aとbとcはそれぞれ0~2n+6の整数(ただし、a+b+c=2n+6であり、aとcは同時に0ではない)を表し、dは0~3の整数(ただし、aとdは同時に0ではない)、eは0~3の整数(ただし、d+e=3)を表し、mは1~2であり、sは1以上の整数を表し、tは1以上の整数を表す。
上記式(1)中、nは単素環を構成するケイ素原子の数を表し、その値は0~5の整数であり、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、また4以下が好ましく、3以下がより好ましい。nは特に3であることが好ましく、すなわち式(1)で表される化合物は6員のケイ素単素環であることが好ましい。
上記式(1)中、X1は環を構成するケイ素原子に結合するハロゲン原子を表し、X2は環を構成するケイ素原子に結合したシリル基のハロゲン原子を表す。X1とX2のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子または臭素原子であり、より好ましくは塩素原子である。上記X1が複数ある場合は、複数のX1は同一であっても異なっていてもよい。上記X2が複数ある場合は、複数のX2は同一であっても異なっていてもよい。
上記式(1)中、aは環を構成するケイ素原子に結合するハロゲン原子の数を表し、bは環を構成するケイ素原子に結合する水素原子の数を表し、cは環を構成するケイ素原子に結合するシリル基の数を表す。また、dは環を構成するケイ素原子に結合したシリル基のハロゲン原子の数を表し、eは環を構成するケイ素原子に結合したシリル基の水素原子の数を表す。cが2以上のとき、環を構成するケイ素原子に結合した複数のシリル基は同一であっても異なっていてもよい。aとbとcは0~2n+6の整数(ただし、a+b+c=2n+6であり、aとcは同時に0ではない)を表し、aは1~2n+6の整数で、bとcは0~n+5の整数であることが好ましく、aはn+6~2n+6の整数で、bとcは0~nの整数であることがより好ましい。
なお、上記式(1)中、cが0であれば、ルイス酸化合物と反応させた際にカップリング反応等の副反応が起こることが抑えられたり、環状ハロシラン化合物の塩やそれから製造される環状ハロシラン化合物の保管安定性が向上したり、得られた環状ハロシラン化合物を還元して環状水素化シラン化合物を製造する工程においてシランガスの発生が抑制されたり、環状水素化シラン化合物の収率を高めることができる点で、さらに好ましい。また、aが2n+6であり、bとcが0であることが特に好ましい。
上記式(1)中、Lは環を構成するケイ素原子に配位したアニオン性の配位子を表し、pは配位子Lの価数(-2~-1の整数)を表し、mは配位子Lの数(1~2)を表す。上記アニオン性の配位子としては、ハロゲン化物イオン、硝酸イオン、シアン化物イオン等が挙げられる。
上記式(1)中、Kは対カチオンを表し、qは対カチオンKの価数(+1~+2の整数)を表し、配位子Lの価数と数および対カチオンKの価数に応じて、sとtの値がそれぞれ定められる。上記対カチオンKとしては、オニウム類(例えば、ホスホニウムイオンやアンモニウムイオンなど)、ポリアミン・SiH2Cl+(例えば、ペデタ・SiH2Cl+、テエダ・SiH2Cl+など)等が挙げられる。
なお、上記対カチオンKがポリアミン・SiH2Cl+である場合は、ルイス酸化合物と反応させた際に自然発火性ガスであるシランガスが発生することから、このようなシランガスの発生を抑えるために、対カチオンKはオニウム類であることが好ましい。また、対カチオンKがオニウム類であれば、環状ハロシラン化合物の塩と接触させて環状ハロシラン化合物を製造するときの環状ハロシラン化合物の収率が向上する点からも好ましい。
上記対カチオンKのオニウム類としては、下記式(2)で表されるホスホニウムイオンまたは下記式(3)で表されるアンモニウムイオンが好ましい。
Figure 0007229817000002
Figure 0007229817000003
上記式(2)におけるR1~R4および上記式(3)におけるR5~R8は、各々独立して、水素原子、アルキル基、アリール基を表す。
上記式(2)において、R1~R4は各々異なっていてもよいが、全て同じ基であることが好ましい。上記式(3)において、R5~R8は各々異なっていてもよいが、全て同じ基であることが好ましい。上記R1~R4および上記R5~R8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロへキシル基等の炭素数1~16のアルキル基が好ましく挙げられ、炭素数1~8のアルキル基がより好ましい。上記R1~R4および上記R5~R8のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6~18のアリール基が好ましく挙げられ、炭素数6~12のアリール基がより好ましい。
上記式(1)で表される環状ハロシラン化合物の塩としては、具体的には、テトラデカクロロシクロヘキサシラン・ジアニオン錯体([Si6Cl14 2-])の塩や、テトラデカブロモシクロヘキサシラン・ジアニオン錯体([Si6Br14 2-])の塩等が挙げられる。また、その対イオンとしては、ホスホニウムイオンまたはアンモニウムイオンが好ましい。
上記式(1)で表される環状ハロシラン化合物の塩としては、下記式(4)または下記式(5)で表される化合物を用いることが好ましい。環状ハロシラン化合物の塩としてこのような化合物を用いれば、環状ハロシラン化合物の塩とルイス酸化合物と反応させる際に、副生物の生成や自然発火性ガスであるシランガスの生成が抑えられるため、環状ハロシラン化合物を容易に製造できる。また、得られた環状ハロシラン化合物を還元して環状水素化シラン化合物を効率よく製造できる。
Figure 0007229817000004
Figure 0007229817000005
上記式(4)および上記式(5)において、X1、R1~R4、R5~R8、nおよびaは上記と同じ意味であり、X3はハロゲン原子を表す。なお、X3は、上記式(4)および上記式(5)ではイオンの形態で存在し、ハロゲン化物イオンとなっている。
上記X3のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子または臭素原子であり、より好ましくは塩素原子である。上記X3が複数ある場合は、複数のX3は同一であっても異なっていてもよい。上記X1と上記X3は同一であっても異なっていてもよい。上記式(4)および上記式(5)において、X1とX3が全て塩素原子であれば、環状水素化シラン化合物を安価に製造できる。
上記式(4)および上記式(5)において、nは0~5の整数を表し、aは1~2n+6の整数を表すが、nは3であることが特に好ましく、この場合、aは6以上が好ましく、9以上がより好ましく、12が特に好ましい。
上記環状ハロシラン化合物の塩は、ルイス酸化合物との反応に先立って、必要に応じて精製を行ってもよい。上記環状ハロシラン化合物の塩を精製して純度を高めることにより、ルイス酸化合物との反応で副生物の生成を抑えることができる。上記環状ハロシラン化合物の塩の精製は、固液分離、蒸留(溶媒留去)、晶析、抽出等の公知の精製方法を用いればよい。
第1反応工程では、上記環状ハロシラン化合物の塩をルイス酸化合物と反応させる。ルイス酸化合物の種類は特に限定されないが、金属ハロゲン化物を用いることが好ましい。
上記金属ハロゲン化物を構成する金属元素としては、例えば、チタン、ジルコニウム等の4族元素、銅、銀、金等の11族元素、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム等の13族元素、カルシウム、鉄、亜鉛等が挙げられ、これらの中でも13族元素が好ましく、アルミニウムがより好ましい。
上記金属ハロゲン化物としては、金属フッ化物、金属塩化物、金属臭化物、金属ヨウ化物等が挙げられるが、反応性や反応の制御の容易性の点から、金属塩化物を用いることが好ましい。
上記ルイス酸化合物としては、具体的には、塩化チタン、臭化チタン等のハロゲン化チタン;塩化ジルコニウム、臭化ジルコニウムなどのハロゲン化ジルコニウム;塩化銅、臭化銅等のハロゲン化銅;塩化銀、臭化銀等のハロゲン化銀;塩化金、臭化金等のハロゲン化金;三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素等のハロゲン化ホウ素;塩化アルミニウム、臭化アルミニウム等のハロゲン化アルミニウム;塩化ガリウム、臭化ガリウム等のハロゲン化ガリウム;塩化インジウム、臭化インジウム等のハロゲン化インジウム;塩化タリウム、臭化タリウム等のハロゲン化タリウム;塩化カルシウム、臭化カルシウム等のハロゲン化カルシウム;塩化鉄、臭化鉄等のハロゲン化鉄;塩化亜鉛、臭化亜鉛などのハロゲン化亜鉛;等が挙げられる。
上記ルイス酸化合物の使用量は、環状ハロシラン化合物の塩とルイス酸化合物との反応性に応じて適宜調整すればよいが、例えば、環状ハロシラン化合物の塩1molに対して0.5mol以上が好ましく、1.5mol以上がより好ましく、また20mol以下が好ましく、10mol以下がより好ましい。
第1反応工程で使用する前記溶媒としては、有機溶媒が好ましく、例えば、炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル等のエーテル系溶媒;等が挙げられ、炭化水素系溶媒が好ましい。該炭化水素系溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒;が挙げられ、脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレンなどがより好ましく、脂肪族炭化水素系溶媒が特に好ましい。後述する様に、第1反応工程での溶媒が、第2反応工程の溶媒の少なくとも1種であることが好ましく、第2反応工程の溶媒を脂肪族炭化水素系溶媒にすると、反応系を効率よく冷却することができる。また本発明では第1反応工程の後、固体として含まれるルイス酸化合物の塩を除去する固液分離工程(ろ過工程など)を行うところ、第1反応工程に脂肪族炭化水素系溶媒を用いれば、前記固液分離工程で、第1反応工程での副生物(ルイス酸化合物の塩)の除去選択性を高めることができ、また第2反応工程においても使用する金属水素化物から生成する反応残渣(金属塩)を分離し易くなる。
なお、上記反応溶媒は、その中に含まれる水や溶存酸素を取り除くため、事前に蒸留や脱水等の精製を施しておくことが好ましい。
上記反応溶媒の使用量は特に限定されないが、通常、環状ハロシラン化合物の塩の濃度が0.005mol/L以上、10mol/L以下となるように調整することが好ましく、より好ましい濃度は0.01mol/L以上、さらに好ましい濃度は0.10mol/L以上であり、より好ましい濃度は5mol/L以下、さらに好ましい濃度は1mol/L以下である。
上記反応溶媒中で環状ハロシラン化合物の塩とルイス酸化合物とを接触させる方法は特に限定されないが、例えば、(1)環状ハロシラン化合物の塩およびルイス酸化合物のそれぞれを予め溶媒中に溶解または分散させることによって、環状ハロシラン化合物の塩の溶液(または分散液)とルイス酸化合物の溶液(または分散液)を調製した後、これらの溶液(または分散液)を混合する方法、(2)溶媒に、環状ハロシラン化合物の塩とルイス酸化合物を同時にまたは順次加える方法、(3)環状ハロシラン化合物の塩の溶液(または分散液)にルイス酸化合物を加える方法、(4)環状ハロシラン化合物の塩とルイス酸化合物とを仕込み、そこに溶媒を加える方法;等が挙げられる。
上記環状ハロシラン化合物の塩と上記ルイス酸化合物とを接触させて反応を行うときの温度は、反応性に応じて適宜調整すればよいが、例えば、-80℃以上が好ましく、-50℃以上がより好ましく、-30℃以上がさらに好ましく、また200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、100℃以下がさらに好ましい。
上記環状ハロシラン化合物の塩と上記ルイス酸化合物との接触を行うときの時間は、反応温度、反応の進行の程度に応じて適宜設定すればよいが、例えば、1時間以上が好ましく、2時間以上がより好ましく、3時間以上がさらに好ましい。また上記反応時間は、48時間以下が好ましく、24時間以下がより好ましく、15時間以下がさらに好ましい。
上記環状ハロシラン化合物の塩と上記ルイス酸化合物との反応を促進させるために、加熱および/または撹拌を行ってもよい。
上記環状ハロシラン化合物の塩と上記ルイス酸化合物とを接触させて反応を行うときの雰囲気は特に限定されないが、環状ハロシラン化合物およびその塩の酸化を抑制するために、当該雰囲気の酸素濃度は9体積%以下が好ましく、5体積%以下がより好ましく、3体積%以下がさらに好ましく、1体積%以下が特に好ましい。
また、環状ハロシラン化合物およびその塩の加水分解を抑えるために、上記雰囲気の水分濃度は2000ppm(体積基準)以下が好ましく、1500ppm(体積基準)以下がより好ましく、1000ppm(体積基準)以下がさらに好ましく、500ppm(体積基準)以下がさらにより好ましく、150ppm(体積基準)以下が特に好ましく、10ppm(体積基準)以下が最も好ましい。
上記環状ハロシラン化合物の塩と上記ルイス酸化合物との反応は、不活性ガス(例えば、窒素ガスやアルゴンガスなど)雰囲気下で行うことも好ましく、また遮光下で行うことも好ましい。
第1反応工程では、例えば、上記式(1)で表される環状ハロシラン化合物の塩から下記式(6)で表される環状ハロシラン化合物を得ることができる。
Figure 0007229817000006
上記式(6)において、X1、X2、a~e、nは上記と同じ意味を表す。
II.固液分離工程
上記の様にして調製された環状ハロシラン化合物を含む反応液(A)は、目的物である環状ハロシラン化合物が溶解している一方で、副生物であるルイス酸化合物の塩が固体として析出している。そこで固液分離工程によって、固体(ルイス酸化合物の塩)を除去し、液体(環状ハロシラン化合物が溶解している液)を回収する。この固液分離工程としては、ろ過、沈殿分離、遠心分離、デカンテーション等が挙げられ、ろ過が好ましい。ろ過によれば、固液分離を簡便かつ精度よく行うことができる。
前記固液分離工程では、分離された固体を適当な溶媒で洗浄し、この洗浄液をろ液と混合してもよい。洗浄液を加えることで、環状ハロシラン化合物の回収率を高めることができる。洗浄液に使用する溶媒は、第1反応工程で例示した反応溶媒と同様の範囲から選択でき、第1反応工程で使用した反応溶媒と同じであってもよい。好ましい洗浄溶媒は、脂肪族炭化水素系溶媒である。
なお環状ハロシラン化合物を含む反応液(A)の調製後であって前記固液分離工程の前、及び/又は前記分離工程の後において、環状ハロシランの溶解状態を維持できる限り、第1反応工程で使用した反応溶媒を留去する工程(例えば、濃縮工程)を行ってもよい。また第1反応工程で使用した反応溶媒の留去前、留去中、及び留去後から選ばれる少なくとも1つの段階で、留去する溶媒と同じ溶媒又は異なる溶媒を追加してもよく、溶媒の留去と追加を組み合わせた工程は、濃度調整工程又は溶媒置換工程などと称される。これら濃縮工程、濃度調整工程、溶媒置換工程などを行った場合であっても、調製される環状ハロシラン化合物を含む溶液は、第1反応工程で用いた溶媒を含有していることが好ましい。
III.第2反応工程
第2反応工程は、第1反応工程及び固液分離工程で得られた環状ハロシラン化合物を含む溶液を金属水素化物と接触させて環状水素化シラン化合物を含む反応液(B)を得る工程である。
金属水素化物としては、例えば、水素化リチウムアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム等の水素化アルミニウム化合物;水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化ホウ素ニッケル、水素化ホウ素亜鉛等の水素化ホウ素化合物;水素化トリブチルスズ等の水素化スズ化合物;水素化遷移金属化合物;等が挙げられる。これらの金属水素化物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記金属水素化物の使用量は適宜設定すればよく、例えば、環状ハロシラン化合物の有するケイ素-ハロゲン結合1個に対する金属水素化物のヒドリドの当量が0.5当量以上となることが好ましく、0.8当量以上がより好ましく、0.9当量以上がさらに好ましく、また15当量以下が好ましく、5当量以下がより好ましく、2当量以下がさらに好ましい。上記金属水素化物の使用量が少なすぎると、収率が低下する傾向にあるため好ましくない。一方、上記金属水素化物の使用量が多すぎると、後処理に時間を要し、生産性が低下する傾向にあるため好ましくない。
第2反応工程では、環状ハロシラン化合物を含む溶液が含有する溶媒をそのまま反応溶媒として使用することが好ましいが、必要により、前記第2反応工程の溶媒として第1反応工程で用いた溶媒以外の溶媒を含んでいてもよい。第1反応工程で用いた溶媒以外の溶媒は、第2反応工程の開始後に加えてもよく、金属水素化物を溶解又は分散させるための溶媒であってもよい。第2反応工程で使用する溶媒は、第1反応工程の溶媒として例示したものから適宜選択して使用できる。
第2反応工程で使用される全溶媒100質量%中、第1反応工程と共通する溶媒の量は、例えば、30質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、100質量%であってもよい。
第2反応工程の溶媒としては、飽和脂肪族炭化水素が特に好ましく、飽和脂肪族炭化水素の量は、第2反応工程の反応終了時の全溶媒100質量%中、例えば、30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。第2反応工程での飽和脂肪族炭化水素の量が多いほど、第2反応工程での副生物(金属水素化物の反応残渣である金属塩)を固液分離で除去することが容易になり、好ましい。
反応開始時の環状ハロシラン化合物の濃度(すなわち、前記環状ハロシラン化合物を含む溶液における環状ハロシラン化合物の濃度)は、環状ハロシラン化合物が溶解する範囲で設定でき、例えば、1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、例えば、80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
環状ハロシラン化合物を含む溶液と金属水素化物とを接触させる方法は特に限定されないが、例えば、(1)環状ハロシラン化合物の溶液と金属水素化物の一方を他方に加える方法、(2)環状ハロシラン化合物の溶液と、金属水素化物及び溶媒を含む溶液又は分散液とを調製し、適当な手順で両者を混合する方法;等が挙げられ、上記(2)の態様が好ましい。
上記(2)の態様としては、(A)反応容器内に環状ハロシラン化合物の溶液を仕込んでおき、これに金属水素化物の溶液または分散液を添加する態様、(B)反応器内に金属水素化物の溶液または分散液を仕込んでおき、これに環状ハロシラン化合物の溶液を添加する態様、(C)必要に応じて溶媒を仕込んでおいた反応器内に、環状ハロシラン化合物の溶液と金属水素化物の溶液または分散液とを同時または順次添加する態様が挙げられる。
上記環状ハロシラン化合物の溶液と金属水素化物の溶液又は分散液とを混合する場合、金属水素化物の濃度は、例えば、0.1mol/L以上、好ましくは0.3mol/L以上、より好ましくは0.5mol/L以上であり、例えば、20mol/L以下、好ましくは10mol/L以下、より好ましくは5mol/L以下である。
第2反応工程の反応温度は、例えば、-50℃以上が好ましく、-30℃以上がより好ましく、-20℃以上がさらに好ましく、また80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、60℃以下がさらに好ましく、50℃以下が特に好ましい。第2反応工程の反応時間は、反応の進行の程度に応じて適宜調整すればよく、例えば、10分以上が好ましく、1時間以上がより好ましく、2時間以上がさらに好ましく、また72時間以下が好ましく、48時間以下がより好ましく、24時間以下がさらに好ましい。
上記環状水素化シラン化合物は、禁酸素性物質である。そのため上記第2反応工程は、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
上記第2反応工程で得られた環状水素化シラン化合物は、純度を高めるために精製を行ってもよい。環状水素化シラン化合物の精製方法としては、固液分離、蒸留、晶析、抽出等の公知の精製方法を採用できる。例えば固液分離を行えば、金属水素化物の反応残渣である金属塩を簡便に除去できる。
また蒸留を行えば、環状水素化シラン化合物よりも低沸点の軽沸不純物や、環状水素化シラン化合物よりも高沸点の高沸不純物を除去できる。本発明では、第1反応工程で環状ハロシラン化合物を溶解する反応液(A)を得た後、環状ハロシラン化合物を濃縮固化することなく第2反応工程で使用しているため、反応液(A)に溶解する低沸点不純物(低分子量のケイ素化合物など)を第2反応工程の不純物として含んでおり、こうした低沸点不純物は、第2反応工程後の蒸留によって除去できる。
前記蒸留としては、短行程蒸留、薄膜式蒸留、分子蒸留などの精密蒸留、蒸留塔での蒸留などが挙げられ、これら蒸留を適宜組み合わせて行ってもよい。特に前記精密蒸留を行った後、蒸留塔で蒸留することが好ましい。
精密蒸留での圧力は、例えば、3kPa以下の減圧度(絶対圧力)で行うことが好ましく、より好ましくは1kPa以下、さらに好ましくは500Pa以下、特に好ましくは200Pa以下の減圧度(絶対圧力)である。精密蒸留での減圧度(絶対圧力)の下限は特に限定されないが、実操業上、1Pa以上が好ましく、10Pa以上がより好ましい。精密蒸留での蒸留温度は、例えば、25~80℃、好ましくは30~70℃、より好ましくは35~65℃である。
蒸留塔での蒸留は、5kPa以下の減圧度(絶対圧力)で行うことが好ましく、より好ましくは2kPa以下、さらに好ましくは1kPa以下、特に好ましくは200Pa以下の減圧度(絶対圧力)である。減圧度(絶対圧力)の下限は特に限定されないが、実操業上、5Pa以上が好ましく、10Pa以上がより好ましい。蒸留塔での蒸留の温度は、例えば、30~100℃であり、好ましくは35~90℃であり、さらに好ましくは40~85℃である。精密蒸留で採用した温度よりも高い温度に設定しておくことが好ましい。
第2反応工程で得られる環状水素化シラン化合物は、ケイ素原子が連なって構成される単素環を有し、ケイ素原子と水素原子から構成される化合物である。環状水素化シラン化合物は、単素環を構成するケイ素原子の全ての置換位置に水素原子が結合してもよく、単素環を構成するケイ素原子に無置換のシリル基が結合しているものであってもよい。ただし、保存安定性の観点から、単素環を構成するケイ素原子以外のケイ素原子を含まないことが好ましい。環状ハロシラン化合物の塩ではなく環状ハロシラン化合物を還元することによって、当該塩の対カチオンに由来するシランガスの発生がなく、全体としてシランガスの発生を抑制できるため、環状水素化シラン化合物を高収率かつ簡便に得ることができる。
環状水素化シラン化合物は、下記式(7)で表される化合物が好ましい。
Siz2z (7)
上記式(7)中、zは単素環を構成するケイ素原子の数を表し、zは3以上が好ましく、4以上がより好ましく、5以上がさらに好ましく、また8以下が好ましく、7以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。
なお、薄膜シリコンの形成に有用となる点から、単素環を構成するケイ素原子の数は6(すなわちz=6)が特に好ましい。また、同様の観点から、第2反応工程に供する環状ハロシラン化合物は、下記式(8)で表される化合物が好ましく、下記式(9)で表される化合物がより好ましい。
Siz1 a(2z-a) (8)
Siz1 2z (9)
上記式(8)および上記式(9)中、X1とaの態様や好ましい態様は、特に言及する場合を除き、上記式(1)におけるX1とaとそれぞれ同じであり、zの態様や好ましい態様は、特に言及する場合を除き、上記式(7)におけるzと同じ意味を表す。
IV.環状ハロシラン化合物の塩の製造工程
なお、本発明の第1反応工程の原料である環状ハロシラン化合物の塩の製造方法は公知の方法を適宜採用でき、例えば、ハロシラン化合物と、第三級ポリアミンとを接触させたり、ハロシラン化合物と、ホスホニウム塩およびアンモニウム塩の少なくとも一方とを接触させることによって製造でき、ハロシラン化合物と、ホスホニウム塩およびアンモニウム塩の少なくとも一方とを接触させることによって製造することが好ましい。ハロシラン化合物と、ホスホニウム塩およびアンモニウム塩の少なくとも一方とを接触させると、ハロシラン化合物の環化カップリング反応が起こり、ハロシラン化合物のケイ素原子が連なって形成された環を含む環状ハロシラン化合物と、ホスホニウムイオンまたはアンモニウムイオンとの塩が得られる(以下、環化カップリング工程ということがある)。
上記ハロシラン化合物としては、ヘキサクロロジシラン、ヘキサブロモジシラン、ヘキサヨードジシラン等のハロゲン化ジシランや、ハロゲン化モノシラン化合物を用いることができ、ハロゲン化モノシラン化合物を用いることが好ましい。ハロゲン化モノシラン化合物を用いると、環構造を形成するケイ素原子以外にはケイ素原子を含まない環状ハロシラン化合物の塩を製造することができ、保存時や後反応でのシランガスの発生を抑制できる。
上記ハロゲン化モノシラン化合物としては、例えば、トリクロロシラン、トリブロモシラン、トリヨードシラン、トリフルオロシラン等のトリハロゲン化シラン;ジクロロシラン、ジブロモシラン、ジヨードシラン、ジフルオロシラン等のジハロゲン化シラン;テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、テトラヨードシラン、テトラフルオロシラン等のテトラハロゲン化シラン;等が挙げられ、これらの中でもトリハロゲン化シランが好ましく、トリクロロシランがより好ましい。
上記ホスホニウム塩は、第四級ホスホニウム塩であることが好ましく、下記式(10)で表される塩が好ましく挙げられる。また、上記アンモニウム塩は、第四級アンモニウム塩であることが好ましく、下記式(11)で表される塩が好ましく挙げられる。
Figure 0007229817000007
Figure 0007229817000008
上記式(10)におけるR1~R4および上記式(11)におけるR5~R8の態様や好ましい態様は、特に言及する場合を除き、上記式(2)および上記式(3)と同じ意味であり、A-は1価のアニオンを示す。
上記式(10)および上記式(11)において、A-で示される1価のアニオンとしては、ハロゲン化物イオン(例えば、Cl-、Br-、I-等)、ボレートイオン(例えば、BF4 -)、リン系アニオン(例えば、PF6 -)等が挙げられる。これらの中でも、入手の容易さの点から、Cl-、Br-、I-が好ましく、Cl-またはBr-が特に好ましい。
上記環化カップリング工程において、ホスホニウム塩とアンモニウム塩は、どちらか一方のみ用いてもよく、両方用いてもよい。上記ホスホニウム塩は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。上記アンモニウム塩は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記式(10)において、R1~R4は各々異なっていてもよいが、全て同じ基であることが好ましい。上記式(11)において、R5~R8は各々異なっていてもよいが、全て同じ基であることが好ましい。
上記式(10)で表されるホスホニウム塩や上記式(11)で表されるアンモニウム塩を用いることによって、上記式(4)や上記式(5)で表される環状ハロシラン化合物の塩を得ることができ、特に、6員のケイ素単素環を含み、この単素環を形成するケイ素原子以外にケイ素原子を含まない環状ハロシラン化合物の塩を容易に得ることができる。
例えば、ハロシラン化合物としてトリクロロシランを用い、ホスホニウム塩として上記式(10)中のA-が塩素イオン(Cl-)であり、R1~R4がフェニル基である化合物を用いた場合には、ドデカクロロジヒドロシクロヘキサシラン・ジアニオン塩(例えば、[Ph4+2[Si62Cl122-)、トリデカクロロヒドロシクロヘキサシラン・ジアニオン塩(例えば、[Ph4+2[Si6HCl132-)、テトラデカクロロシクロヘキサシラン・ジアニオン塩(例えば、[Ph4+2[Si6Cl142-)等の、環状ハロシラン化合物のジアニオンとホスホニウムイオンとからなる塩が得られる。
また、ハロシラン化合物としてトリクロロシランを用い、アンモニウム塩として上記式(11)中のA-が臭素イオン(Br-)であり、R5~R8がエチル基である化合物を用いた場合には、ドデカクロロジヒドロシクロヘキサシラン・ジアニオン塩(例えば、[Et4+2[Si62Cl122-)、トリデカクロロヒドロシクロヘキサシラン・ジアニオン塩(例えば、[Et4+2[Si6HCl132-)、テトラデカクロロシクロヘキサシラン・ジアニオン塩(例えば、[Et4+2[Si6Cl142-)等の、環状ハロシラン化合物のジアニオンとアンモニウムイオンとからなる塩が得られる。
上記ホスホニウム塩および/またはアンモニウム塩の使用量(2種以上を用いる場合はその合計使用量)は、ハロシラン化合物1molに対して、0.01mol以上が好ましく、0.05mol以上がより好ましく、0.08mol以上がさらに好ましく、また1.0mol以下が好ましく、0.7mol以下がより好ましく、0.5mol以下がさらに好ましい。上記ホスホニウム塩および/または上記アンモニウム塩の使用量が少なすぎると、ハロシラン化合物が未反応となり、環状ハロシラン化合物の塩の収率が低下するおそれがある。一方、上記ホスホニウム塩および/または上記アンモニウム塩の使用量が多すぎると、環状ハロシラン化合物の塩の純度が低下するおそれがある。
上記環化カップリング工程は、キレート型配位子の存在下で行ってもよい。環化カップリング反応をキレート型配位子の存在下で行うことによって、環状ハロシラン化合物の塩を効率良く製造できる。また、用いるキレート型配位子の種類を適宜選択することによって、得られる環状ハロシラン化合物中の水素数や組成比を調整できる。上記キレート型配位子としては、例えば、ポリエーテル化合物、ポリチオエーテル化合物、多座ホスフィン化合物等を用いることができる。
上記ポリエーテル化合物としては、例えば、1,1-ジメトキシエタン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジプロポキシエタン、1,2-ジイソプロポキシエタン、1,2-ジブトキシエタン、1,2-ジフェノキシエタン、1,3-ジメトキシプロパン、1,3-ジエトキシプロパン、1,3-ジプロポキシプロパン、1,3-ジイソプロポキシプロパン、1,3-ジブトキシプロパン、1,3-ジフェノキシプロパン、1,4-ジメトキシブタン、1,4-ジエトキシブタン、1,4-ジプロポキシブタン、1,4-ジイソプロポキシブタン、1,4-ジブトキシブタン、1,4-ジフェノキシブタン等のジアルコキシアルカン類が挙げられる。これらの中でも、特に好ましくは1,2-ジメトキシエタンが挙げられる。
上記ポリチオエーテル化合物としては、前記例示したポリエーテル化合物の酸素原子を硫黄原子に置換したものが挙げられる。
上記多座ホスフィン化合物としては、例えば、1,2-ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、1,2-ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、1,2-ビス(ジプロピルホスフィノ)エタン、1,2-ビス(ジブチルホスフィノ)エタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジメチルホスフィノ)プロパン、1,3-ビス(ジエチルホスフィノ)プロパン、1,3-ビス(ジプロピルホスフィノ)プロパン、1,3-ビス(ジブチルホスフィノ)プロパン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジメチルホスフィノ)ブタン、1,4-ビス(ジエチルホスフィノ)ブタン、1,4-ビス(ジプロピルホスフィノ)ブタン、1,4-ビス(ジブチルホスフィノ)ブタン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン等のビス(ジアルキルホスフィノ)アルカン類やビス(ジアリールホスフィノ)アルカン類が挙げられる。これらの中でも、特に好ましくは1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンが挙げられる。
上記キレート型配位子の使用量は適宜設定すればよいが、例えば、ハロシラン化合物1molに対して0.01mol以上が好ましく、0.05mol以上がより好ましく、0.1mol以上がさらに好ましく、また50mol以下が好ましく、40mol以下がより好ましく、30mol以下がさらに好ましい。
上記環化カップリング工程は、塩基性化合物の存在下で行うことが好ましい。上記塩基性化合物としては、例えば、(モノ-、ジ-、トリ-、ポリ-)アミン化合物が挙げられるが、中でもモノアミン化合物が好ましく用いられる。具体的には、例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリイソブチルアミン、トリイソペンチルアミン、ジエチルメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルブチルアミン、ジメチル-2-エチルヘキシルアミン、ジイソプロピル-2-エチルヘキシルアミン、メチルジオクチルアミン等が好ましく、トリブチルアミンが特に好ましい。上記塩基性化合物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記塩基性化合物の使用量(2種以上を用いる場合はその合計使用量)は、その種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、モノアミン化合物であれば、ハロシラン化合物1molに対して、0.1mol以上が好ましく、0.2mol以上がより好ましく、0.4mol以上がさらに好ましく、また2mol以下が好ましく、1.8mol以下がより好ましく、1.5mol以下がさらに好ましい。上記塩基性化合物(モノアミン化合物)の量が少なすぎると、ハロシラン化合物が未反応となり、環状ハロシラン化合物の塩の収率が低下するおそれがある。一方、上記塩基性化合物(モノアミン化合物)の量が多すぎると、環状ハロシラン化合物の塩の収率低下や純度低下を引き起こすおそれがある。
なお、上記塩基性化合物としてジアミン化合物、トリアミン化合物、ポリアミン化合物を用いることもできるが、その場合、それら塩基性化合物(ジ-、トリ-、ポリ-アミン)の使用量(合計使用量)は、ポリアミンに由来する不純物の副生を抑制するうえで、ハロシラン化合物1molに対して0.5mol以下が好ましく、より好ましくは0.4mol以下、さらに好ましくは0.3mol以下である。
上記環化カップリング工程は、溶媒中で行うことが好ましい。ここで用いる溶媒(以下、反応溶媒ということがある)としては、有機溶媒が好ましい。上記有機溶媒としては、環化カップリング反応を妨げない溶媒が好ましく、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒;等が好ましく挙げられる。これらの中でも、ハロゲン化炭化水素系溶媒がより好ましく、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン等の塩素化炭化水素系溶媒が好ましく用いられ、ジクロロメタンが特に好ましい。
上記環化カップリング工程に用いる溶媒の使用量は特に制限されないが、通常、ハロシラン化合物の濃度が0.5mol/L以上、10mol/L以下となるように調整することが好ましく、より好ましい濃度は0.8mol/L以上、さらに好ましい濃度は1mol/L以上であり、より好ましい濃度は8mol/L以下、さらに好ましい濃度は5mol/L以下である。
上記環化カップリング工程の反応温度は、反応性に応じて適宜調整すればよく、例えば、0~120℃程度、好ましくは15~70℃程度である。ここで反応温度とは、反応器内の液温を意味する。
上記環化カップリング反応の反応時間は、反応温度、反応の進行の程度に応じて適宜設定すればよく、例えば、1時間以上が好ましく、2時間以上がより好ましく、3時間以上がさらに好ましく、また48時間以下が好ましく、24時間以下がより好ましく、12時間以下が特に好ましい。さらに、反応中に、反応を促進させるために、加熱と同時に撹拌を行ってもよい。
上記環化カップリング反応は、実質的に無水条件下で行うことが望ましく、例えば、乾燥ガス(特に窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス)雰囲気下で行うことが好ましい。
第1反応工程の原料となる環状ハロシラン化合物の塩は、固液分離、蒸留、晶析、抽出等の公知の手段によって適宜精製してもよい。この際の固液分離手段は特に限定されず、ろ過、沈殿分離、遠心分離、デカンテーション等の公知の固液分離手段を用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限を受けるものではなく、前記および後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
(1)環状ハロシラン化合物の塩の調製
温度計、コンデンサー、滴下ロートおよび撹拌装置を備えた2L四つ口フラスコ内を窒素ガスで置換した後、このフラスコ内に、テトラエチルアンモニウムブロミド123.5g(0.59mol)と、トリブチルアミン490.0g(2.64mol)と、ジクロロメタン702.7gとを入れた。次いでフラスコ内の溶液を撹拌しながら、25℃条件下において、滴下ロートよりトリクロロシラン238.1g(1.76mol)とジクロロメタン117.2gからなる溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、そのまま2時間撹拌し、引き続き50℃で6時間加熱還流しながら撹拌することにより、環化カップリング反応を行った。反応後、得られた固体をろ過および精製して、環状ハロシラン化合物の塩([Et4N]2[Si6Cl14])(分子量925)102.7gを含む白色固体を得た(収率38%)。
(2)環状ハロシラン化合物を含む溶液の調製
窒素雰囲気下、撹拌装置を備えた300mL三つ口フラスコに、上記(1)で得られた環状ハロシラン化合物の塩15.0gと粉末状の塩化アルミニウム(AlCl3)4.6g(粒径2.0mm以下)を入れ、さらにノルマルヘキサン98.7gを加えた。窒素雰囲気下、遮光した状態で、24℃条件下、3時間反応させた後、ろ過を行い、環状ハロシラン化合物(Si6Cl12)(分子量594)を含んだ溶液115.7g(濃度:4.8質量%)を得た(収率58%)。尚、収率は得られた溶液の一部を濃縮し、質量から算出した。
(3)環状水素化シラン化合物の調製
滴下ロートおよび撹拌装置を備えた100mL三つ口フラスコに、上記(2)で得られた環状ハロシラン化合物含有溶液100.0gを入れた。フラスコ内を窒素ガスで置換した後、フラスコ内の溶液を撹拌しながら、0℃条件下において、滴下ロートより還元剤として水素化リチウムアルミニウムのジエチルエーテル溶液(濃度:約1.0mol/L)38mLを徐々に滴下し、次いで20℃で3時間撹拌することによって還元反応を行った。反応後、得られた反応液を窒素雰囲気下においてろ過し、生成した塩を取り除き、得られたろ液についてガスクロマトグラフィー(GC)を用いて分析したところ、シクロヘキサシラン(Si612)が生成していることを確認した(収率90%)。また、得られたろ液を減圧下で濃縮した後、蒸留精製を行うことで、高純度のシクロヘキサシランを無色透明の液体として得た。
本発明によれば、環状水素化シラン化合物を製造できる。環状水素化シラン化合物は、例えば、太陽電池や半導体等に用いられるシリコン原料として有用である。また半導体分野では、Ge化合物と混合または反応させることにより、SiGe化合物の製造や、SiGe膜の製造にも利用できる。

Claims (4)

  1. 環状ハロシラン化合物の塩とルイス酸化合物とを溶媒の存在下で接触及び反応させて環状ハロシラン化合物を含む反応液(A)を得る第1反応工程、
    前記反応液(A)を固液分離する工程であって、この反応液(A)に固体として含まれるルイス酸化合物の塩を除去し、環状ハロシラン化合物と前記反応液(A)の溶媒を含む溶液を得る固液分離工程、
    前記固液分離工程で得られた前記溶液を、溶液状態を維持したまま金属水素化物と接触させて環状水素化シラン化合物を含む反応液(B)を得る第2反応工程、
    を含む環状水素化シラン化合物の製造方法。
  2. 前記第1反応工程での溶媒が、前記第2反応工程の溶媒の少なくとも1種である請求項1に記載の環状水素化シラン化合物の製造方法。
  3. 前記第2反応工程での反応開始時の環状ハロシラン化合物の濃度が1質量%以上、60質量%以下である請求項1又は2に記載の環状水素化シラン化合物の製造方法。
  4. 前記溶媒が脂肪族炭化水素系溶媒である請求項1~3のいずれかに記載の環状水素化シラン化合物の製造方法。
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