JP7032250B2 - 電力変換装置 - Google Patents
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Description
本発明は、電力変換装置に関し、特に、位置センサレス制御の電力変換装置に関する。
磁石モータとしては、磁石モータの回転子の表面に永久磁石を配置するSPM(Surface Permanent Magnet:表面磁石形)型と、回転子の内部に永久磁石を配置するIPM(Interior Permanent Magnet:埋め込み磁石形)型のモータが知られている。
一般に、SPMモータの磁気抵抗は、回転子の位置と無関係となるため、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqの比率(Lq / Ld を以下、突極比と呼ぶ)は、ほぼ1となる。一方、IPMモータでは、磁気抵抗の大きい永久磁石が存在するため、d軸方向の電流磁束は通りにくく、q軸方向の電流磁束は磁気抵抗の小さい回転子の鉄心内部を通るため、突極比は1以上となる。
このため、これまで高調波重畳方式の位置センサレス制御は、専用設計されたIPMモータのみに適用されてきた。
特許文献1は、IPMモータを前提としており、三相高調波電流振幅の交流振幅を演算により求め、高周波電流振幅の最大値と最小値の比を突極比として推定している。また、突極比の推定値があらかじめ定められた値を下回らないように、速度制御系の出力である電流指令のリミット値を決定する技術を開示している。
特許文献1では、電流指令値のリミット値を決定しているため、回転子に与える電流を下げることで磁石モータの突極比が1に近づくことによる脱調を防止するためのものである。
しかしながら、従来の技術では、id電流とiq電流からなる電流全体を下げることで、突極比の推定値があらかじめ定められた値を下回らないようにしているので、高トルクであっても安定駆動できる位置センサレス制御をすることは、困難である。また、SPMモータにおいても、高トルクであっても安定した位置センサレス制御を安定駆動させることは難しい。
本発明の目的は、高トルクであっても安定した位置センサレス制御ができる電力変換装置を提供することにある。
本発明の好ましい一例は、位置センサレス制御により、負荷装置を制御する電力変換装置であって、前記負荷装置の電流を検出する電流検出部と、検出した電流に基づいて、制御軸であるdc軸及びqc軸の高調波電流成分を演算する電流検出演算部と、前記dc軸及び前記qc軸の前記高調波電流成分に基づいて、突極比推定値を出力する突極比推定部と、前記突極比推定値と、定めておいた突極比との偏差に基づいて、回転子座標系のd軸の電流指令値を増減する電流成分を出力する突極比制御部とを有する電力変換装置である。
本発明によれば、高トルクであっても安定した位置センサレス制御ができる電力変換装置を実現することができる。
以下に、図面を用いて、実施例を詳細に説明する。
図1は、実施例1における電力変換装置と磁石モータを含むシステム構成図である。磁石モータ1は、永久磁石の磁束によるトルク成分と電機子巻線のインダクタンスによるトルク成分を合成したモータトルクを出力する。
電力変換器2は、スイッチング素子としての半導体素子を備える。電力変換器2は、3相交流の電圧指令値vu
*、vv
*、vw
*を入力し、電圧指令値vu
*、vv
*、vw
*に比例したゲート信号(オン、オフ)電圧を作成する。スイッチング素子の一例であるIGBTを使う場合には、ゲート信号に基づいて、IGBTがスイッチング動作をする。また、電力変換器2は、直流電圧源2aの出力である直流電圧Edcと、3相交流の電圧指令値vu
*、vv
*、vw
*に比例した電圧を出力し、磁石モータ1の出力電圧と回転数は可変にすることができる。
電流検出器3は、磁石モータ1の3相の交流電流iu、iv、iwを検出する。ここで磁石モータ1の3相の内の2相、例えば、u相とw相の相電流を検出し、交流条件(iu+iv+iw=0)から、v相の相電流をiv=-(iu+iw)として求めてもよい。本実施例では、電流検出器3は、電力変換装置内に設けた例を示したが、電力変換装置の外部に設けてもよい。
次に、電力変換器を制御する制御部の各構成要素について、説明する。座標変換部4は、位置推定値θdcを基準にして、前記3相の交流電流iu、iv、iwの検出値iuc、ivc、iwcからdc軸およびqc軸の電流検出値idc、iqcを出力する。
ここで、回転子座標系と制御軸などについて、説明をしておく。d軸とq軸により定義されるdq軸座標系は、回転子の磁極位置を表すための回転子座標系であり、負荷装置のひとつである磁石モータ1の回転子と同期して回転する。磁石モータ1が永久磁石同期電動機の場合、d軸は一般的に回転子に取り付けられた永久磁石の位相を基準にとられる。d軸は、磁極軸とも呼ばれ、q軸はトルク軸とも呼ばれる。dc軸とqc軸は、磁極位置の推定位相、すなわち、電流検出演算部5などの制御部が行う制御において想定している、d軸とq軸の方向をそれぞれ表している。dc軸は制御軸とも呼ばれ、dc軸に直交する軸をqc軸としたdc-qc軸座標系が定義される。
電流検出演算部5は、前記dc軸およびqc軸の電流検出値idc、iqcからdc軸およびqc軸の高調波電流の振幅値Δidc_ver、Δiqc_verと平均値idc_ver、iqc_verを出力する。
位相誤差推定部6は、dc軸およびqc軸の電流検出値idc、iqcより位相誤差の推定値Δθcを出力する。
位相・速度推定部7は、前記位相誤差の推定値Δθcより速度推定値ωrc
^および位置推定値θdcを出力する。
突極比推定部8は、dc軸およびqc軸の高調波電流の振幅値Δidc_ver、Δiqc_verより突極比の推定値Ldq
^を出力する。
突極比制御部9は、突極比の推定値Ldq
^よりd軸の直流電流成分の補正値Δid
*を出力する。
加算部10は、d軸の電流指令id
*とd軸の直流電流成分の補正値Δid
*を加算して、第2のd軸の電流指令id
**を出力する。
ベクトル制御演算部11は、第2のd軸の電流指令id
**と平均値idc_verとの偏差および、q軸の電流指令iq
*と平均値iqc_verとの偏差、磁石モータ1の電気定数、速度推定値ωrc
^に基づいて、dc軸およびqc軸の電圧指令vdc
*、vqc
*を出力する。
高調波電圧発生部12は、高調波電圧の波高値および周波数を設定し、dc軸の高調波電圧Δvdc
*、およびqc軸の高調波電圧Δvqc
*を出力する。
座標変換部13は、位置推定値θdcを基準にして、電圧指令vdc
*、vqc
*と高調波電圧Δvdc
*、Δvqc
*の加算値であるvdc
**、vqc
**から、3相交流の電圧指令vu
*、vv
*、vw
*を、電力変換器に対して出力する。
最初に、高調波重畳方式の基本動作について説明する。まず、ベクトル制御による電圧制御と位相制御の基本動作について説明する。
電圧制御の基本動作は、ベクトル制御演算部11は、第2のd軸の電流指令id
**と平均値idc_verとの偏差および、q軸の電流指令iq
*と平均値iqc_verとの偏差に基づいて、d軸電流制御のPI制御出力Δvdc_pi、d軸電流制御のI制御出力Δvdc_i、q軸電流制御のPI制御出力Δvqc_pi、q軸電流制御のI制御出力Δvqc_iを演算する。
また、ベクトル制御演算部11は、dc軸およびqc軸の電流制御の出力であるd軸電流制御のPI制御出力Δvdc_pi、d軸電流制御のI制御出力Δvdc_i、q軸電流制御のPI制御出力Δvqc_pi、q軸電流制御のI制御出力Δvqc_iと、速度推定値ωrc
^、および磁石モータ1の電気定数(R、 Ld、 Lq、 Ke)を用いて式(1)に従い電圧指令vdc
*、vqc
*を演算する。
ここで、式(1)の各記号の定義は、次の通りである。
R :磁石モータの全体の抵抗値
Ld :d軸インダクタンス値、 Lq :q軸インダクタンス値
Ke :誘起電圧係数 * :設定値を示す
Δvdc_pi:d軸電流制御のPI制御出力、Δvdc_i:d軸電流制御のI制御出力、Δvqc_pi:q軸電流制御のPI制御出力、Δvqc_i:q軸電流制御のI制御出力。
R :磁石モータの全体の抵抗値
Ld :d軸インダクタンス値、 Lq :q軸インダクタンス値
Ke :誘起電圧係数 * :設定値を示す
Δvdc_pi:d軸電流制御のPI制御出力、Δvdc_i:d軸電流制御のI制御出力、Δvqc_pi:q軸電流制御のPI制御出力、Δvqc_i:q軸電流制御のI制御出力。
高調波電圧発生部12は、振幅値vhと周波数fhの矩形波あるいは正弦波の高調波電圧Δvdc
*、Δvqc
*を出力し、式(2)に示すように電圧指令vdc
*、vqc
*と加算して、vdc
**、vqc
**を演算し、電力変換器2を制御する3相の電圧指令vu
*、vv
*、vv
*を制御する。
一方、位相制御の基本動作については、位相誤差演算部6は磁極位置を推定できるのであれば、どのような方法を用いても構わない。例えば、参考文献として、電気学会論文誌D(産業応用部門誌)、123 巻 (2003) 2 号 140-148の「IPMモータの停止時・初期位置推定方式」がある。
高調波信号発生部12では、振幅値Vhと周波数fhの矩形波あるいは正弦波の高調波電圧Δvdc
*、Δvqc
*をdc、qc軸に重畳し、位相誤差推定部6において式(3)に従い位相誤差の推定値Δθcを演算する。
ここで、式(3)の各記号の定義は、次の通りである。
Ld :d軸インダクタンス値、 Lq :q軸インダクタンス値、
Vvdc * :dc軸に重畳した高調波電圧指令、Vvqc * :qc軸に重畳した高調波電圧指令、Vidc :dc軸の高調波電流、Viqc :qc軸の高調波電流。
Ld :d軸インダクタンス値、 Lq :q軸インダクタンス値、
Vvdc * :dc軸に重畳した高調波電圧指令、Vvqc * :qc軸に重畳した高調波電圧指令、Vidc :dc軸の高調波電流、Viqc :qc軸の高調波電流。
また、位置・速度推定部7では、位相誤差の推定値Δθcを「零」とするように、式(4)に示す演算により、速度推定値ωrc
^と位置推定値θdcを制御する。
ここで、式(4)の各記号の定義は、次の通りである。
Kp:比例ゲイン、Ki:積分ゲイン、s:ラプラス演算子。
Kp:比例ゲイン、Ki:積分ゲイン、s:ラプラス演算子。
次に磁石モータ1の突極比が1近傍であり、突極比推定部8、突極比制御部9を用いない制御特性について述べる。図2は、磁石モータ1を負荷運転したときの比較例としてのトルクと位相誤差の特性を示す図である。
図2の上側は、トルクと時間との関係を示し、下側は、位相誤差と時間との関係を示す図である。時刻(A)点からランプ状に負荷トルクTLを与えているが、図2の下側に示す位相誤差Δθが、無負荷の状態から-50degしており位相誤差が発生し不安定であることがわかる。
このとき電力変換器2の半導体スイッチング素子の電流耐量(最大電流)などから決定される過電流レベルに到達することがあり、磁石モータ1を駆動することは不可能になってしまう。このように、磁石モータ1の突極比が1近傍の場合、電力変換装置が過電流に陥りやすく運転不能となる問題があった。
そこで、本実施例の特徴である電流検出演算部5、突極比推定部8、突極比制御部9を用いれば、この問題を改善することができる。
以下、これらを用いた場合の制御特性について述べる。図3は、電流検出演算部5の構成を示す図である。
5a、5bはL.P.F(Low Pass Filter)であり電流検出値idc、iqcに含まる高調波電流を除去して電流検出値の平均値idc_ver、iqc_verを出力する。
また電流検出値idc、iqcと電流検出値の平均値idc_ver、iqc_verを用いて、式(5)に従い高周波電流Δidc、Δiqcを演算する。
また電流検出値idc、iqcと電流検出値の平均値idc_ver、iqc_verを用いて、式(5)に従い高周波電流Δidc、Δiqcを演算する。
5cは、FFT(Fast Fourier Transform)演算部であり電流検出値idc、iqcに含まる高調波電流Δidc、Δiqcの振幅値であるΔidc_ver、Δiqc_verを出力する。
図4は、突極比推定部8の構成を示す図である。8aは除算部であり、高調波電流の振幅値であるΔiqc_verとΔidc_verの比率を出力する。8bはL.P.F(Low Pass Filter)であり、除算部8aの出力における高調波成分を除去して突極比の推定値Ldq
^を出力する。
図5は、突極比制御部9の構成を示す図である。9aは、定めておいた突極比Ldq_lmtである。9bは、PI(比例+積分)制御部であり、所定の突極比Ldq_lmtと突極比の推定値Ldq
^の偏差(Ldq
^-Ldq_lmt)が入力され、偏差が零となるようにd軸の直流電流成分の補正値Δid*を演算し出力する。d軸電流指令id*を増減させることで、d軸インダクタンスを間接的に制御し、突極比を1、0より大きくすることができる。
図6は、実施例1におけるトルクと位相誤差の特性を示す図である。図2に用いた条件で、Ldq_lmt=1、5に設定している。図2と図6に開示したトルクと位相誤差の特性を比較すれば効果は明らかであるが、磁石モータ1の突極比を制御することで200%の高トルクでも安定な位置センサレス制御を実現できている。
ここで、図7は、実施例1を採用した場合の検証方法を説明する図である。磁石モータ1を駆動する電力変換装置22に電流検出器20を取り付け、磁石モータ1のシャフトにエンコーダ21を取り付ける。
高調波電流および突極比の計算部23には、電流検出器20の出力である三相交流の電流検出値(iuc、 ivc、 iwc)とエンコーダ21の出力である位置θが入力され、電流検出演算部5および突極比推定演算8と同様な演算を行うことで、高調波電流Δidc、Δiqcあるいは高調波電流の振幅値Δidc_ver、Δiqc_verと、突極比の推定値Ldq
^を出力する。
各部波形の観測部24では、Δidc、ΔiqcあるいはΔidc_ver、Δiqc_verとLdq
^の関係を観測し、Ldq
^が一定であれば、本発明を採用していることが明白である。またエンコーダ21を取り付けられない場合は、三相交流の電流検出値(iuc、 ivc、 iwc)の零近傍における電流リプルをΔidc、その振幅値をΔidc_ver、電流検出値が最大近傍における電流リプルをΔiqc、その振幅値をΔiqc_verとして突極比を推定してもよい。
実施例1によれば、d軸の電流指令値を、q軸の電流指令値とは、別に、独立して調整し、磁石モータ1の突極比を大きく出来る。そのために、センサレス制御が安定し、大きなトルクを出力できる。つまり、実施例1では、高トルクでも安定な位置センサレス制御を実現できる。さらに、IPMモータだけではなく、突極比がほぼ1になる、表面磁石型の突極比が小さな磁石モータでも、運転範囲を拡大して安定駆動することができる。
図8は、実施例2における電力変換装置と磁石モータを含むシステム構成図である。
実施例1では、突極比の推定値を高調波電流の振幅値より演算する実施例であったが、実施例2では、高調波電流の振幅値よりインダクタンスLd ^、Lq ^を算出し、それらの比率より突極比の推定値Ldq ^を演算する。
図8の突極比推定部81以外は、図1と同様なので、説明は省略する。
実施例1では、突極比の推定値を高調波電流の振幅値より演算する実施例であったが、実施例2では、高調波電流の振幅値よりインダクタンスLd ^、Lq ^を算出し、それらの比率より突極比の推定値Ldq ^を演算する。
図8の突極比推定部81以外は、図1と同様なので、説明は省略する。
図9は、実施例2における突極比推定部81の構成を示す。
突極比推定部81は、高調波電圧の振幅値Vh *である定数81a、高調波の周波数fccである定数81b、除算部81c、除算部81e、L.P.F81fより構成され、式(6)よりd軸およびq軸のインダクタンスLd ^、Lq ^の推定値を演算する。
突極比推定部81は、高調波電圧の振幅値Vh *である定数81a、高調波の周波数fccである定数81b、除算部81c、除算部81e、L.P.F81fより構成され、式(6)よりd軸およびq軸のインダクタンスLd ^、Lq ^の推定値を演算する。
ここで、高調波電圧の振幅値Vh
*は、図1のdc軸の高調波電圧Δvdc*、およびqc軸の高調波電圧Δvqc*の振幅値となる。さらに、式(7)より突極比の推定値Ldq
^を演算する。
このような構成とすることで、演算で算出したd軸およびq軸のインダクタンスLd
^、Lq
^を、式(3)の位相誤差の推定演算式に反映できるメリットがある。
図10は、実施例3における電力変換装置と磁石モータを含むシステム構成図である。実施例1では、突極比の推定値を高調波電流の振幅値より演算する実施例であったが、実施例3は、d軸およびq軸のインダクタンスLd
^^、Lq
^^をテーブル参照型で呼び出す実施例である。図10において、突極比推定部82以外は、図1と同様なので説明を省略する。
図11は、実施例3における突極比推定部82を示す。
突極比推定部82は、d軸の電流指令id*、およびq軸の電流指令iq*を入力して、Ld ^^を出力するd軸インダクタンス参照テーブル82a、q軸の電流指令iq*を入力して、q軸のインダクタンスLq ^^を出力するq軸インダクタンス参照テーブル82bから構成される。
突極比推定部82は、d軸の電流指令id*、およびq軸の電流指令iq*を入力して、Ld ^^を出力するd軸インダクタンス参照テーブル82a、q軸の電流指令iq*を入力して、q軸のインダクタンスLq ^^を出力するq軸インダクタンス参照テーブル82bから構成される。
ここで、d軸インダクタンス参照テーブル82aは、d軸の電流指令id*に対応したLd
^^を保持している。また、q軸インダクタンス参照テーブル82bは、q軸の電流指令iq*に対応したq軸のインダクタンスLq
^^を保持している。
d軸インダクタンス参照テーブル82a、およびq軸インダクタンス参照テーブル82bは、汎用インバータの立ち上げ時に実施するオフライン・オートチューニングのときに作成することもできる。また、実施例1あるいは実施例2の方式により運転中して、テーブルのデータを学習し、学習が終わり次第、本実施例に切り替えるようにしてもよい。
また、上記の説明では、d軸の電流指令id*およびq軸の電流指令iq*に基づいて、d軸のインダクタンス、およびq軸のインダクタンスを算出していた。代わりに、d軸の電流指令id*およびq軸の電流指令iq*に対応した突極比の推定値Ldq
^を、オフライン・オートチューニングや、運転中に学習して、予め求めておくことができる。つまり、d軸の電流指令id*およびq軸の電流指令iq*に対応した突極比の推定値Ldq
^を保持した突極比参照テーブルと、d軸の電流指令id*およびq軸の電流指令iq*に基づいて、突極比の推定値Ldq
^を取得するようにしてもよい。
このような構成とすることで、オンラインでなくなるが、実施例1と同等の効果を得ることができる。
図12は、実施例4における電力変換装置と磁石モータを含むシステム構成図である。実施例1では、突極比の推定値を所定の突極比に追従するようにd軸の電流指令を増減する実施例であったが、実施例4では、突極比の推定値Ldq
^が所定の突極比Ldq_lmtより低下した場合にd軸の電流指令を増加する実施例である。
図12において、突極比制御部91以外は、図1と同様なので、説明を省略する。
図12において、突極比制御部91以外は、図1と同様なので、説明を省略する。
図13は、実施例4における突極比制御部91の構成図を示す。
91aは、設定する所定の突極比Ldq_lmtを示す。91bは、PI(比例+積分)制御部であり、突極比の推定値Ldq ^とLdq_lmtとの偏差が零となるようにd軸の電流指令の補正値Δid*を演算し出力する。
91aは、設定する所定の突極比Ldq_lmtを示す。91bは、PI(比例+積分)制御部であり、突極比の推定値Ldq ^とLdq_lmtとの偏差が零となるようにd軸の電流指令の補正値Δid*を演算し出力する。
91cは、設定する所定のd軸の直流電流成分の制限値id*_lmtを示す。92dは、d軸の電流指令の補正値Δid*の制限部で上限値はid*_lmt、下限値が0である。突極比Ldq_lmt91bの出力が、d軸の電流指令制限部92bに入力される。この結果、d軸の電流指令の補正値Δid*は、正極性の電流値を出力することになる。
このとき、電力変換器2の半導体スイッチング素子の電流耐量(最大電流)などから所定の突極比id*_lmtを決定してもよい。
このような構成とすることで、軽トルク時に必要以上のd軸電流を流すことがなくなり高効率化のメリットがある。
このような構成とすることで、軽トルク時に必要以上のd軸電流を流すことがなくなり高効率化のメリットがある。
図14は、実施例5における電力変換装置と磁石モータなどを含むシステム構成図である。実施例1では、突極比の推定値を所定の突極比に追従するようにd軸の電流指令を増減する方式であったが、実施例5では、突極比の推定値を所定の突極比に追従するように位相誤差の指令を増減する方式である。
図14において、突極比制御部92と位置・速度推定部7以外は、図1と同様なので、説明は省略する。
図15は、実施例5における突極比制御部92の構成を示す図である。
92aは、設定する所定の突極比Ldq_lmtである。92bはPI(比例+積分)制御部であり、突極比の推定値Ldq ^とLdq_lmtとの偏差が零となるように式(8)に従い位相誤差の指令値Δθdc*を演算し出力する。
92aは、設定する所定の突極比Ldq_lmtである。92bはPI(比例+積分)制御部であり、突極比の推定値Ldq ^とLdq_lmtとの偏差が零となるように式(8)に従い位相誤差の指令値Δθdc*を演算し出力する。
ここで、式(8)の各記号の定義は、次の通りである。
Kp1:比例ゲイン、Ki1:積分ゲイン。
Kp1:比例ゲイン、Ki1:積分ゲイン。
位置・速度推定部7は、位相誤差の推定値Δθcを無くすように、位相誤差の指令値Δθdc
*に基づいて、位置推定値θdcを出力する。
実施例5により、実施例1と同様に突極比の小さな磁石モータでも安定に駆動することができる。
図16は、実施例6における電力変換器と磁石モータを含むシステム構成を示す図である。実施例6は、磁石モータ駆動システムに適用した例である。
磁石モータ1は、電力変換装置16により駆動される。電力変換装置16は、ソフトウェア16aとハードウェアからなる。ソフトウェア16aの各機能は、電力変換装置16のマイコンなどのプロセッサーにより実行される。
図1に示した座標変換部4、電流検出演算部5、位相誤差推定部6、位置・速度推定部7、突極比推定部8、突極比制御部9、加算部10、ベクトル制御演算部11、高調波電圧発生部12、座標変換部13は、図16のソフトウェア16aを構成している。
図1の電力変換器2、直流電圧源2a、電流検出器3は、ハードウェアとして実装されている。電力変換装置16のデジタル・オペレータ16b、もしくは、パーソナル・コンピュータ17、タブレット18、スマートフォン20などの上位装置により、ソフトウェア16a内の所定の突極比Ldq_lmtと、d軸の直流電流成分の制限値id*_lmtを設定することができる。
本実施例を磁石モータ駆動システムに適用すれば、突極比の小さな磁石モータでも安定運転を実現することができる。また、所定の突極比Ldq_lmt、d軸の直流電流成分の制限値id*_lmtは、上位装置であるプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)やコンピュータと接続するローカル・エリア・ネットワーク(LAN)上で設定してもよい。
さらに、実施例1に限らず、実施例2から実施例5の実施例を適用しても良い。
ここまでの実施例1から実施例5においては、電流指令値id**、iq*と電流検出値idc、iqcおよび磁石モータ1の回路定数を用いて、式(1)に示す演算を行ったが、電流指令値id**、iq*と電流検出値idc、iqcより、式(9)に示す演算により電圧補正値Δvdc、Δvdcを作成し、この電圧補正値と、式(10)に示すベクトル制御の電圧基準値を加算する式(11)に示す演算を行ってもよい。
ここで、式(9)の各記号の定義は、次の通りである。
Kpd:d軸電流制御の比例ゲイン、Kid: d軸電流制御の積分ゲイン、Kpq:q軸電流制御の比例ゲイン、Kiq :q軸電流制御の積分ゲインs:ラプラス演算子。
Kpd:d軸電流制御の比例ゲイン、Kid: d軸電流制御の積分ゲイン、Kpq:q軸電流制御の比例ゲイン、Kiq :q軸電流制御の積分ゲインs:ラプラス演算子。
ここで、式(10)の各記号の定義は、次の通りである。
vdc0*:d軸電圧指令、vqc0*:q軸電圧指令、Tacr:電流制御の応答周波数相当の時定数、s:ラプラス演算子、Ke :誘起電圧係数。
vdc0*:d軸電圧指令、vqc0*:q軸電圧指令、Tacr:電流制御の応答周波数相当の時定数、s:ラプラス演算子、Ke :誘起電圧係数。
また、電流指令値id*、iq*と電流検出値idc、iqcから、ベクトル制御演算に使用する式(12)に示す中間的な電流指令値id**、iq**を作成し、速度推定値ωrc
^および磁石モータ1の回路定数を用いた式(13)に示す演算を行ってもよい。
また、d軸の電流指令id
*、qc軸の電流検出値iqc、速度指令値ωr
*および磁石モータ1の回路定数を用いた式(14)を演算するベクトル制御方式にも適用することができる。dc軸とqc軸の電圧指令値vdc
*、vqc
*を演算するベクトル制御方式を用いてもよい。
ここで、式(12)の各記号の定義は、次の通りである。
Kpd:d軸電流制御の比例ゲイン、Kid:d軸電流制御の積分ゲイン、Kpq:q軸電流制御の比例ゲイン、Kiq :q軸電流制御の積分ゲインs:ラプラス演算子。
Kpd:d軸電流制御の比例ゲイン、Kid:d軸電流制御の積分ゲイン、Kpq:q軸電流制御の比例ゲイン、Kiq :q軸電流制御の積分ゲインs:ラプラス演算子。
ここで、式(14)の各記号の定義は、次の通りである。
R1:磁石モータの一次抵抗、Td:q軸の電流指令iq *の遅れ時定数。
なお、実施例1から実施例5において、電力変換器2を構成するスイッチング素子としては、Si(シリコン)半導体素子であっても、SiC(シリコンカーバイト)やGaN(ガリュームナイトライド)などのワイドバンドギャップ半導体素子であってもよい。
R1:磁石モータの一次抵抗、Td:q軸の電流指令iq *の遅れ時定数。
なお、実施例1から実施例5において、電力変換器2を構成するスイッチング素子としては、Si(シリコン)半導体素子であっても、SiC(シリコンカーバイト)やGaN(ガリュームナイトライド)などのワイドバンドギャップ半導体素子であってもよい。
1…磁石モータ、2…電力変換器、3…電流検出器、5…電流検出演算部、6…位相誤差推定部、7…位置・速度推定部、8…突極比推定部、9…突極比制御部、11…ベクトル制御演算部、
Claims (13)
- 位置センサレス制御により、負荷装置を制御する電力変換装置であって、
前記負荷装置の電流を検出する電流検出部と、
検出した電流に基づいて、制御軸であるdc軸及びqc軸の高調波電流成分を演算する電流検出演算部と、
前記dc軸及び前記qc軸の前記高調波電流成分に基づいて、突極比推定値を出力する突極比推定部と、
前記突極比推定値と、定めておいた突極比との偏差に基づいて、回転子座標系のd軸の電流指令値を増減する電流成分を出力する突極比制御部とを有することを特徴とする電力変換装置。 - 請求項1に記載の電力変換装置において、
前記電流検出演算部は、前記dc軸および前記qc軸の電流に基づいて、前記dc軸および前記qc軸の高調波電流の振幅値を出力し、
前記突極比推定部は、前記dc軸および前記qc軸の前記高調波電流の振幅値に基づいて、前記突極比推定値を出力し、
前記突極比制御部は、前記突極比推定値と、定めておいた突極比との偏差に基づいて、PI制御をするPI制御部を有することを特徴とする電力変換装置。 - 請求項1に記載の電力変換装置において、
前記電流検出演算部は、
前記dc軸の電流成分および前記qc軸の電流成分に基づいて、前記dc軸および前記qc軸の高調波電流の振幅値を算出し、
前記突極比推定部は、
前記dc軸および前記qc軸の前記高調波電流の振幅値に基づいて、前記d軸のインダクタンス推定値とq軸のインダクタンス推定値を算出し、
前記d軸のインダクタンス推定値と前記q軸のインダクタンス推定値に基づいて、前記突極比推定値を出力することを特徴とする電力変換装置。 - 位置センサレス制御により、負荷装置を制御する電力変換装置であって、
回転子座標系のd軸の電流指令に対応した前記d軸のインダクタンス推定値を保持したd軸インダクタンス参照テーブルと、回転子座標系のq軸の前記電流指令に対応した前記q軸のインダクタンス推定値を保持したq軸インダクタンス参照テーブルとを有し、前記d軸の前記電流指令と前記q軸の前記電流指令に基づいて、前記d軸インダクタンス参照テーブルと前記q軸インダクタンス参照テーブルを参照し、前記d軸のインダクタンス推定値と前記q軸のインダクタンス推定値を算出し、前記d軸のインダクタンス推定値と前記q軸のインダクタンス推定値に基づいて、突極比推定値を出力する突極比推定部と、
前記突極比推定値と、定めておいた突極比との偏差に基づいて、d軸電流指令値を増減する電流成分を出力する突極比制御部とを有することを特徴とする電力変換装置。 - 位置センサレス制御により、負荷装置を制御する電力変換装置であって、
回転子座標系のd軸の電流指令とq軸の前記電流指令に対応した突極比推定値を保持した突極比参照テーブルを有し、前記d軸の前記電流指令と前記q軸の前記電流指令に基づいて、前記突極比参照テーブルを参照し、前記突極比推定値を出力する突極比推定部と、
前記突極比推定値と、定めておいた突極比との偏差に基づいて、d軸電流指令値を増減する電流成分を出力する突極比制御部とを有することを特徴とする電力変換装置。 - 請求項1に記載の電力変換装置において、
前記突極比制御部は、
前記突極比推定値と、定めておいた突極比との偏差に基づいて、PI制御をするPI制御部と、
前記d軸の前記電流指令値の制限値を保持し、前記制限値に基づいて、前記d軸の前記電流指令値を制限するd軸電流制限部とを有することを特徴とする電力変換装置。 - 請求項1に記載の電力変換装置において、
前記定めておいた突極比を入力する外部装置を有することを特徴とする電力変換装置。 - 位置センサレス制御により、負荷装置を制御する電力変換装置であって、
前記負荷装置の電流を検出する電流検出部と、
検出した電流に基づいて、制御軸であるdc軸及びqc軸の高調波電流成分を演算する電流検出演算部と、
前記dc軸及び前記qc軸の前記高調波電流成分に基づいて、突極比推定値を出力する突極比推定部と、
前記突極比推定値と、定めておいた突極比との偏差に基づいて、位相誤差の指令値を出力する突極比制御部とを有することを特徴とする電力変換装置。 - 請求項1に記載の電力変換装置において、
前記電流検出部は、三相電流を検出し、
座標変換部が、前記三相電流を前記dc軸及び前記qc軸の電流検出値に座標変換し、
前記電流検出演算部は、
前記dc軸及び前記qc軸の電流検出値に基づいて、
前記dc軸及び前記qc軸の高調波電流の振幅値と平均値を出力することを特徴とする電力変換装置。 - 請求項1に記載の電力変換装置において、
前記負荷装置は、磁石モータであり、
前記磁石モータの回転子の表面に永久磁石を配置した表面磁石型、および前記磁石モータの前記回転子の内部に永久磁石を配置した埋め込み磁石型から選択した前記磁石モータであることを特徴とする電力変換装置。 - 請求項1に記載の電力変換装置において、
前記負荷装置と接続する電力変換器と、
前記dc軸および前記qc軸の高調波電圧を出力する高調波電圧発生部とを有することを特徴とする電力変換装置。 - 請求項1に記載の電力変換装置において、
前記d軸の電流指令値を増減する電流成分を加算した第2のd軸電流指令値と、前記dc軸の高調波電流の平均値との偏差と、
q軸の電流指令値と、前記qc軸の高調波電流の平均値の偏差と、
速度推定値に基づいて、前記dc軸および前記qc軸の電圧指令を出力するベクトル制御演算部を有することを特徴とする電力変換装置。 - 請求項12に記載の電力変換装置において、
スイッチング素子を有する電力変換器と、高周波電圧を発生する高周波電圧発生部とを有し、
前記高周波電圧と前記ベクトル制御演算部の出力とに基づいて、前記電力変換器は、制御されることを特徴とする電力変換装置。
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