JP7026907B2 - はんだ製品の製造方法、プリント回路板、線材、フレキシブルプリント基板および電子部品 - Google Patents
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Description
本発明は、はんだ付けを行う際に、はんだの流動性が、よりよいはんだ製品等を提供することを目的とする。
また、本発明のフレキシブルプリント基板は、端子を有するフレキシブルプリント基板であり、端子の表面に、上記記載のはんだ製品の製造方法により製造されたはんだ製品を被覆したものである。
さらに、本発明の電子部品は、端子を有する電子部品であり、端子の表面に、上記記載のはんだ製品の製造方法により製造されたはんだ製品を被覆したものである。
[用語の定義]
最初に、本実施の形態で用いる、いくつかの用語の定義について説明を行う。
本実施の形態における「無鉛はんだ」とは、錫(Sn)を主成分とするとともに、鉛(Pb)以外の金属元素を副成分として含む、複数の金属元素の混合物をいう。
ここで、副成分となる金属元素は、鉛以外であれば、いかなる金属元素であってもよく、例えば銅(Cu)、銀(Ag)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)等を挙げることができる。そして、これらの中でも、安価に入手することが可能な、銅を用いることが望ましい。
また、副成分となる金属元素は、1種類だけでなく2種類以上(例えば銀および銅など)を含むものであってもよい。
なお、本実施の形態の「無鉛はんだ」は、「無鉛」と称してはいるものの、実際には、不可避不純物として鉛を含んでいることがあり得る。
また、本実施の形態の無鉛はんだは、上記金属元素の他に、炭素数が10以上20以下のカルボン酸を含む。詳しくは後述するが、カルボン酸を含むことで、酸化物等の固形物や針状結晶の混入がより少なくなる。
本実施の形態における「はんだ製品」とは、上述した「無鉛はんだ」によって対象となる金属材料を接合する、はんだ付けで用いられるものをいう。
ここで、「はんだ製品」としては、形状として、板状や棒状のもの(インゴット、板、棒)、線状のもの(ワイヤ)、球状のもの(ボール)等を挙げることができる。また、はんだ製品は、フラックスを含んでいてもよい。よって、例えば、微細なはんだ粉末をフラックスで混練したペースト状のクリームはんだ、フラックスを芯状に内包した糸状の糸はんだなどもはんだ製品に含まれる。
本実施の形態における「はんだ原料」とは、上述した「はんだ製品」を製造する際に、その原材料として用いられるものをいう。
ここで、「はんだ原料」としては、上述した主成分および副成分を構成する金属元素単体や、これらの合金等を挙げることができる。さらに、「はんだ原料」としては、上述した炭素数が10以上20以下のカルボン酸を挙げることができる。また、本実施の形態では、「はんだ原料」として、上述した「はんだ製品」を用いてはんだ付けを行うことに伴って生じた、はんだ屑を用いることもある。そして、これらの「はんだ原料」(特にはんだ屑)には、各種金属の酸化物や各種不純物が混入していることがあり得る。
本実施の形態における「はんだ」とは、上述した「はんだ製品」が、はんだ付けによる接合に伴って、接合の対象となる金属材料側に転移・付着したものをいう。
本実施の形態における「線材」とは、上述した「はんだ製品」を少なくとも一部に含む電線である。線材は、全てが上述した「はんだ製品」からなっていてもよく、一部に上述した「はんだ製品」を使用していてもよい。一部に使用する例としては、線状の導体に、上述した「はんだ製品」が被覆されている電線が挙げられる。線状の導体は、例えば、銅線である。即ち、この場合、線材は、銅線の外表面に上述した「はんだ製品」がコーティングされているものとなる。また、線材としては、被覆された「はんだ製品」の外表面を、さらに絶縁性の被膜により覆うようにしてもよい。絶縁性の被膜は、例えば、樹脂等からなる。つまり絶縁電線としてもよい。
本実施の形態における「はんだ付け製品」とは、上述した「はんだ製品」を介して被接続部材同士がはんだ付けされているものを含む製品をいう。ここで被接続部材は、はんだ付けにより接続される複数の部材であり、はんだ付けできるものであれば、特に限られるものではない。被接続部材は、例えば、金属からなる部材、陶磁器やガラス等のセラミックスからなる部材などである。被接続部材同士をはんだ付けしたものは、例えば、プリント基板、このプリント基板を用いた電気製品、ペンダントやブローチなどの装飾品、ステンドグラス、金属板同士をはんだ付けした筐体などが挙げられる。
したがって、本実施の形態では、「はんだ原料」を用いて、「無鉛はんだ」で構成された「はんだ製品」を製造し、さらに、この「はんだ製品」を用いて、対象となる金属材料にはんだ付けを行うことにより、金属材料に「はんだ」が転移・付着することになる。そして、この「はんだ製品」を用いて、はんだ付けされて製造された製品が、「はんだ付け製品」となる。
本実施の形態における「フレキシブルプリント基板(FPC(Flexible Printed Circuits))」とは、可撓性のある、プリント基板である。「フレキシブルプリント基板」は、例えば、薄膜状であり、絶縁体のベースフィルムの上に接着層を形成し、さらにその上に、導体箔が貼り合わされた構造をなす。この「フレキシブルプリント基板」は、コネクタ等と接続する端子を備える。この端子は、電極であると言うこともできる。そしてこの端子は、従来は、導電箔に金箔等が被覆される形態が一般的である。一方、本実施の形態の「フレキシブルプリント基板」の端子は、導電箔の表面に上述した「はんだ製品」が被覆されている。導電箔は、例えば、銅からなる銅箔である。即ち、この場合、「フレキシブルプリント基板」の端子は、銅箔の表面に上述した「はんだ製品」がコーティングされているものとなる。従来は、金箔をメッキするために、メッキ着床部を洗浄する必要があり、洗浄する際に使用する洗浄剤が、洗浄後に残存する場合があった。そして残存した洗浄剤が、接触不良、亀裂、接合部の劣化などの不具合の原因となっていた。本実施の形態では、端子を予め洗浄する必要はなく「はんだ製品」を被覆することができる。そのため、洗浄剤が残存することがない。よって、このような不具合が生じにくく、さらにCO2削減効果も期待できる。そして、詳しくは後述するが、本実施の形態の「はんだ製品」を用いたはんだの場合、狭いギャップでパターンを形成することができる。よって、同様に、「フレキシブルプリント基板」の複数の端子間のギャップについても、より狭くすることができる。
本実施の形態における「電子部品」とは、電子回路の部品であり、基板や他の電子部品等と電気的に接続する端子を有する。「電子部品」は、特に限られるものではなく、例えば、コンデンサ、抵抗、センサ、半導体、集積回路、コネクタ、マイクロLED(Micro LED Display)パネルなどである。この端子は、電極であると言うこともできる。そしてこの端子は、端子の表面に上述した「はんだ製品」が被覆されている。導線は、銅からなる銅線である。即ち、この場合、「電子部品」の端子は、銅線の表面に上述した「はんだ製品」がコーティングされているものとなる。そして、詳しくは後述するが、本実施の形態の「はんだ製品」を用いたはんだの場合、部品浮きやクラック発生が抑制できる。また、流動性や濡れ性の向上や均質な塗布量を実現できる。よって、同様に、「電子部品」の端子に本実施の形態の「はんだ製品」を被覆した場合も、部品浮きやクラック発生の抑制、流動性や濡れ性の向上、均質な塗布量の実現に効果的である。
本実施の形態における「溶湯」は、「はんだ製品」の原材料となる「はんだ原料」を、加熱により融解させたものをいう。
次に、本実施の形態におけるはんだ製品について説明を行う。
図1(a)~(b)は、本実施の形態のはんだ製品を示した図である。
このうち、図1(a)は、はんだ製品20を示し、図1(b)は、図1(a)に示したはんだ製品20の表面部の断面拡大図を示している。
図1(b)に図示するように、本実施の形態のはんだ製品20は、無鉛はんだ部21と、表面層22とを含む。
そして、1価の脂肪の中でも、炭素数が16のパルミチン酸であることが特に好ましい。パルミチン酸は、融点62.9℃、沸点351℃~352℃であり、はんだ付け温度範囲の200℃~300℃において、溶融液状として存在し、はんだが固形化した後に表面に固着しやすい。この場合、パルミチン酸は、無鉛はんだとの相性がよいと言うこともできる。また、はんだ付けする際のはんだの流動性が向上する。炭素数が16を超える場合、および炭素数が16未満であると、はんだ付け温度範囲で溶融液状とならない場合がある。また、はんだ付けする際のはんだの流動性が、パルミチン酸に比較して、低くなりやすい。
パルミチン酸は、例えば、ヤシ油やヤシ油廃棄物中に含まれ、これらから抽出することができる。よって、この点で、パルミチン酸は、植物製材料であり、再生可能な原料であると言うことができる。また、パルミチン酸は、人体皮膚への影響が少なく、安全性に優れる。なお、パルミチン酸は、ヤシ油等から抽出せずに、他の原料から抽出してもよく、化学合成により作成してもよい。
さらに、1価の脂肪酸でない脂肪酸としては、ジカルボン酸である2価の脂肪酸が挙げられる。これは、例えば、炭素数が10であるセバシン酸(HOOC-(CH2)8-COOH)、炭素数が13であるトリデカン二酸(HOOC-(CH2)11-COOH)などである。
またさらに、炭素数が12以上16以下でなく、炭素数が10以上20以下であるカルボン酸としては、炭素数が10であるセバシン酸(CH3-(CH2)8-COOH)、炭素数が18であるステアリン酸(CH3-(CH2)16-COOH)、炭素数が20のアラキジン酸(CH3-(CH2)18-COOH)などが挙げられる。
次に、本実施の形態におけるはんだについて説明を行う。ここでは、本実施の形態のはんだが使用されたプリント基板について説明を行う。
なお、以下で説明する従来のはんだは、銅を0.7wt.%とし残部を錫とした組成を有する無鉛はんだである。そして、本実施のはんだは、これに、上記カルボン酸を含む無鉛はんだである。
ここでは、プリント配線板上で、はんだにより所定の電極幅Fおよび所定のギャップGで、複数のパターンPを形成した場合を示している。この場合、電極幅Fは、10μmである。また、所定のギャップGは、5μm、10μm、20μm、40μm、80μm、160μm、320μmとしている。そして、図2(a)は、従来のはんだ20aにより、各パターンPを形成した場合を示し、図2(b)は、本実施の形態のはんだ製品20を使用したはんだ20bにより、各パターンPを形成した場合を示している。
また、本実施の形態のはんだ製品20の特徴点の1つとして、はんだ製品20を用いたはんだは、流動性がよく、プリント配線への濡れ性が、従来よりよいことが挙げられる。そのため、はんだが、パターンPから、膨れ出ることが生じにくい。
ここでは、基板111のパッド111aに、電子部品112の電極112aを、はんだ付けした場合を示している。そして、図3(a)は、従来のはんだ20aによりはんだ付けをした場合を示し、図3(b)は、本実施の形態のはんだ製品20を使用したはんだ20bによりはんだ付けをした場合を示している。なお、はんだ20a、20bの付着を防止するためのソルダレジスト250が形成されている。ソルダレジスト250以外の箇所にはんだ20a、20bが付着する。なお、ソルダレジスト250の作用については、以後説明する例でも、同様である。
ここでは、基板111のパッド111a上に、はんだをコーティングした場合を示している。図4(a)および図4(b)を比較すると、図4(a)は、従来のはんだ20aによりコーティングをした場合を示し、図4(b)は、本実施の形態のはんだ製品20を使用したはんだ20bによりコーティングした場合を示している。
ここでは、基板111のパッド111aに、電子部品112の電極112aを、はんだ付けするとともに、パッド111aおよび電極112aをはんだでコーティングした場合を示している。そして、図5(a)は、従来のはんだ20aによりはんだ付けをした場合を示し、図5(b)は、本実施の形態のはんだ製品20を使用したはんだ20bによりはんだ付けをした場合を示している。
ここでは、基板111のパッド111aに、電子部品112の電極112aを、はんだ付けした状態を示している。そして、図6(a)は、従来のはんだ20aによりはんだ付けをした場合を示し、図6(b)は、本実施の形態のはんだ製品20を使用したはんだ20bによりはんだ付けをした場合を示している。
また、酸化物等の固形物、針状結晶、ボイドDfが含まれにくいことから、接合強度についても、はんだ20aよりも、はんだ20bの方が高くなる。
ここでは、基板111のパッド111aに、電子部品112の電極112aを、はんだ付けした状態を示している。この場合、はんだ付け後の経時変化について図示している。そして、図7(a)は、従来のはんだ20aによりはんだ付けをした場合を示し、図7(b)は、本実施の形態のはんだ製品20を使用したはんだ20bによりはんだ付けをした場合を示している。
なお、本実施の形態のはんだ20bを形成するのに、窒素リフロー装置で行うことを排除するものではなく、この装置を使用しない場合に比べ、ドロスの発生のさらなる抑制が期待できる。
ここでは、基板111のパッド111aに、電子部品112の電極112aを、はんだ付けした状態を示している。そして、図8(a)は、従来のはんだ20aによりはんだ付けをした場合を示し、図8(b)は、本実施の形態のはんだ製品20を使用したはんだ20bによりはんだ付けをした場合を示している。
ここでは、電子部品112は、電極112aに予めはんだをコーティングした場合を示している。そしてこの状態から、電子部品112を、図8で示したように、さらにはんだ付けし、基板111と接合させる場合がある。
このうち、図9(a)は、従来のはんだ20aによりコーティングをした場合を示し、図9(b)は、本実施の形態のはんだ製品20を使用したはんだ20bによりコーティングをした場合を示している。
そして、図9(b)のはんだ20bの方が図9(a)のはんだ20aよりも、より均質にはんだ20bがコーティングされるため、部品浮きが発生しにくく、ボイドDfやクラックKrが生じにくくなる。
ここでは、電子部品を実装する前のプリント基板について示している。このプリント基板は、プリント回路板とも言われる。そして、図10(a)は、従来のプリント基板200を示し、図10(b)は、本実施の形態のはんだ製品20を使用したプリント基板200を示している。
図11は、電子部品112を実装したプリント基板200を示した図である。
この場合、電子部品112は、はんだコート260にはんだ付けにより接合する場合を示している。具体的には、電子部品112の電極112aが、はんだ20bによりはんだ付けされ、はんだコート260に接合する。なおこの場合、はんだ20bによるはんだ付けの際、はんだ20bとはんだコート260とは、双方ともいったん溶融した後、一体化して固形化する。よって、図示するように、これらの区別は付かなくなる。またこの場合、はんだコート260を構成するはんだ20bとはんだ付けするはんだ20bとは、同じ組成であってもよく、上述した範囲内であれば、異なる組成であってもよい。ただし、組成に関係なく、粗大化した固形物や針状結晶を含まないはんだコート260やはんだ20bの方が接合強度が向上しやすい。
また、図10(a)に示した従来のプリント基板200に対し、電子部品112をはんだ20bにより接合するようにしてもよい。この場合、電子部品112を装着する前のプリント基板200は、従来と同じであるが、はんだ付けの際に本実施の形態のはんだ20bを使用することで、接合強度が向上し、経時変化が生じにくくなる。つまり、はんだ20bは、従来のはんだ20aに対し、酸化物等の固形物、針状結晶、ボイドDf等が含まれにくい。そのため、プリント基板200と電子部品112との接合部の密着度が向上し、接合強度が向上しやすい。そしてその結果、経時変化が生じにくい。
次に、本実施の形態におけるはんだ製品20の製造方法について説明を行う。
図12は、本実施の形態のはんだ製品20の製造手順を示すフローチャートである。
ステップ10では、はんだ原料として、錫を主成分とし、鉛以外の金属元素を含むはんだ原料を準備する。このとき、各金属元素の組成比は、基本的に、目標とするはんだ製品20での組成比と同じにすることが望ましい。なお、ステップ10で準備されるはんだ原料には、実際には、不可避不純物として鉛が含まれていることがあり得る。また、ステップ10では、はんだ原料として、炭素数が10以上20以下のカルボン酸を準備する。
ステップ20では、上述したはんだ原料が融解するのであれば、その温度については適宜設定してかまわないが、いわゆる無鉛はんだからなるはんだ製品20を製造する場合には、300℃~400℃程度とすることが望ましい。
また、カルボン酸として、パルミチン酸を使用した場合、この酸素の吸着能力が、特に優れる。
ステップ40では、得たいはんだ製品20の形状(インゴット、ワイヤ、ボール等)に応じて、適宜冷却方法を選択することが可能である。例えばインゴット状のはんだ製品20を得たい場合には、上述したろ過後の溶湯を、酸化鉄等で構成された型枠に流し込んで固めてやればよい。
図13は、ステップ30のろ過工程の概要を説明するための図である。
ここで、図13(a)は、ろ過工程で用いるろ過装置10の概要を説明するための図である。また、図13(b)は、ろ過装置10に設けられたフィルタ12(詳細は後述する)の構成例を説明するための図である。さらに、図13(c)は、フィルタ12の他の構成例を説明するための図である。
ろ過装置10は、ろ過前の溶湯1が供給されるとともにろ過前の溶湯1を収容する容器11と、容器11に取り付けられ且つろ過前の溶湯1をろ過することでろ過後の溶湯2を排出するフィルタ12と、フィルタ12を加熱するヒータ13とを備えている。ここで、図13(a)に示す例では、ろ過前の溶湯1の温度がろ過前温度T1となっており、ろ過後の溶湯2の温度がろ過後温度T2となっているものとする。
容器11は、例えば筒状(円筒状)を呈しており、容器11に設けられた2つの開口部が、鉛直方向(上下方向)に向くように配置されている。この容器11は、いかなる材料で構成してもかまわないが、ろ過前の溶湯1に対する酸化物等の混入を抑制するという観点からすれば、セラミックス材料よりも金属材料を用いることが望ましい。また、各種金属材料の中でも、ろ過前の溶湯1に対する溶け込みを少なくするという観点からすれば、ステンレス材料、特に、SUS316Lを用いることが望ましい。
フィルタ12は、例えば板状(円板状)を呈しており、上述した容器11の底部を塞ぐように取り付けられている。そして、本実施の形態のフィルタ12の目開きsは、10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下に設定されている。また、特に好ましくは、1μm以下に設定されている。このフィルタ12も、いかなる材料(例えば無機材料、金属材料、有機材料)で構成してもかまわないが、ろ過前の溶湯1に対する酸化物等の混入を抑制するという観点からすれば、セラミックス材料よりも金属材料を用いることが望ましい。また、各種金属材料の中でも、ろ過前の溶湯1に対する溶け込みを少なくするという観点からすれば、ステンレス材料、特に、SUS316Lを用いることが望ましい。さらに、金属材料からなるフィルタ12を採用する場合、上述した目開きsを得ることが可能であれば、金属線を編み込んでなる金網または金属板に穴開けを施してなるパンチングメタルのどちらを採用してもかまわない。ただし、フィルタ12としては、より小さな目開きsを容易に得ることが可能な、金網を用いることが望ましい。そして、フィルタ12として金網を採用する場合、目開きsのずれを抑制するという観点からすれば、焼結処理を施した金網を用いることが望ましい。なお、フィルタ12として使用することが可能な有機材料としては、各種アラミド樹脂や炭素繊維(カーボンファイバ)等を挙げることができる。
ヒータ13は、ろ過前の溶湯1以外の加熱源を用いて、フィルタ12を加熱するものである。したがって、ヒータ13は、通電等によってフィルタ12を直接加熱するものであってもよいし、容器11や図示しない他の部材を介して、熱伝導によりフィルタ12を間接的に加熱するものであってもよい。
ここで、ろ過前溶湯1のろ過前温度T1と、ろ過後溶湯2のろ過後温度T2との関係について説明しておく。
上述したように、ステップ20の加熱工程では、はんだ原料が300℃~400℃程度に加熱されることで融解する。ただし、ろ過前溶湯1のろ過前温度T1は、230℃~260℃、より好ましくは235℃~250℃程度であり、最高温度が、融解時と比べて若干下げられている。
一方、ろ過後溶湯2のろ過後温度T2は、230℃~260℃程度とすることが望ましい。ここで、ろ過後温度T2が低すぎると、ろ過工程の実行中あるいはろ過工程の実行直後にろ過後の溶湯2が凝固し始めてしまい、はんだ製品20の生産効率が著しく低下することになってしまう。
では、ステップ30のろ過工程におけるろ過装置10の動作について、より具体的に説明を行う。
まず、ステップ20の加熱工程で、はんだ原料を300℃~400℃に加熱することで得たろ過前溶湯1を、ろ過前温度T1(230℃~260℃)となるように温度調整しておく。また、事前に、ヒータ13を用いてフィルタ12を加熱しておく。
なお、炭素数が10以上20以下のカルボン酸を含むことにより、酸化物等の固形物や針状結晶の発生を抑制できるため、はんだ製品20に要求される性能に応じ、上述したステップ30のろ過工程を行わなくてよい場合がある。
ここでは、錫(主成分)と銅(副成分)とを含む、Sn-Cu系と称される2元系のはんだ製品20を例として説明を行った。ただし、ここでは詳細な説明を行わないが、錫を主成分とする他のはんだ製品20においても、同様の結果が得られている。
ここで、Sn-Cu系以外の2元系のはんだ製品20としては、例えばSn-Ag系、Sn-Bi系およびSn-Zn系を挙げることができる。また、3元系のはんだ製品20としては、Sn-Ag-Cu系、Sn-Ag-Bi系、Sn-Ag-In系、Sn-Zn-Bi系およびSn-Zn-Al系を挙げることができる。さらに、4元系のはんだ製品20としては、Sn-Ag-Cu-Bi系およびSn-Ag-In-Bi系を挙げることができる。さらにまた、5元系のはんだ製品20としては、Sn-Ag-Cu-Ni-Ge系を挙げることができる。そして、6元系以上のはんだ製品20についても、同様の結果を得ることが可能である。
Claims (5)
- 錫を主成分とし且つ副成分として鉛以外の金属元素と、炭素数が10以上20以下のカルボン酸と、を含む原材料を、加熱により融解させて溶湯とする加熱工程と、
230℃~260℃に設定された前記溶湯から、10μm超となる径を有し且つ当該溶湯中に存在する固形物を取り出す取出工程と、
前記固形物が取り出された前記溶湯を、冷却により凝固させるとともに、前記カルボン酸を表面側に析出させる冷却工程と
を含むはんだ製品の製造方法。 - 基板と、
前記基板上に薄膜状に形成され、配線パターンをなす配線パターン層と、
前記配線パターン層上に薄膜状に形成され、請求項1に記載のはんだ製品の製造方法により製造されたはんだ製品を使用したはんだを含む層であるはんだ層と、
を備え、
前記はんだ層のはんだは、錫を主成分とし且つ副成分として鉛以外の金属元素と、表面側に主に分布して表面層をなし、炭素数が10以上20以下のカルボン酸と、を含むプリント回路板。 - 請求項1に記載のはんだ製品の製造方法により製造されたはんだ製品を少なくとも一部に含むことを特徴とする線材。
- 端子を有するフレキシブルプリント基板であり、
前記端子の表面に、請求項1に記載のはんだ製品の製造方法により製造されたはんだ製品を被覆したフレキシブルプリント基板。 - 端子を有する電子部品であり、
前記端子の表面に、請求項1に記載のはんだ製品の製造方法により製造されたはんだ製品を被覆した電子部品。
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