JP7026110B2 - 電力変換装置の冷却構造 - Google Patents

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Description

本開示は、電力変換装置の冷却構造に関する。
従来、回転電機システムでは、パワーモジュールは、ボルトによってインバータケースに固定されている。また、パワーモジュールはフィンと対向する面に設置されている。パワーモジュールのパワー半導体素子は、フィン等を介して、冷却流路を流れる冷却水に放熱している(例えば、特許文献1参照)。
特開2011-182480号公報
しかし、従来のシステムでは、パワーモジュールをインバータケースに固定するボルトを冷却することは開示されていない。このため、パワーモジュールの駆動時、パワー半導体素子の熱をそのボルトが受熱すると、ボルト周囲の雰囲気温度が上昇することに対して、検討の余地がある。
本開示は、上記問題に着目してなされたもので、固定ボルト周囲の雰囲気温度の上昇を抑えることを目的とする。
上記目的を達成するため、本開示の電力変換装置の冷却構造は、熱を発する電力変換器と、外部から流入する冷媒が流れる冷媒流路が形成された冷却器と、電力変換器と冷媒流路が対向配置された状態で、電力変換器を冷却器に固定する固定ボルトと、を有する。冷却器は、冷却器本体と冷却器カバーとから構成され、冷却器本体には、主経路溝と、主経路溝と連通する拡張経路溝と、固定ボルトが締結されるボス部と、が形成される。冷却器内に形成される冷媒流路のうち、電力変換器を冷却する冷媒流路を主経路といい、固定ボルトを冷却する冷媒流路を拡張経路というとき、主経路は、電力変換器と対向配置されて冷媒が流れる。拡張経路は、主経路から固定ボルトが締結されるボス部の位置まで流路を拡張させて冷媒が流れる。冷却器本体と冷却器カバーとを組み合わせたとき、主経路溝と冷却器カバーにより主経路が形成され、拡張経路溝と冷却器カバーにより拡張経路が形成される。主経路と拡張経路は、隔壁を介して、隣接する位置に配置される。拡張経路は、ボス部が配置され、冷媒流路を流れる冷媒を主経路に流入する流入側と、冷媒が主経路から流出する流出側と、に拡張された第1拡張経路である。主経路と第1拡張経路は、冷媒流路への冷媒流入から外部への冷媒流出へ向かう一方向の冷媒の流れに沿って形成される。
このように、冷却器内に形成される冷媒流路として、熱を発する電力変換器と対向配置されて冷媒が流れる主経路と、主経路から固定ボルトが締結されるボス部の位置まで流路を拡張させて冷媒が流れる拡張経路と、を有することで、固定ボルト周囲の雰囲気温度の上昇を抑えることができうる。
実施例1におけるインバータの冷却構造の断面図である。 実施例1~実施例3におけるパワーモジュールの平面図である。 実施例1における冷却器本体の裏面側の斜視図である。 実施例1におけるボス部の斜視図である。 実施例2におけるインバータの冷却構造の断面図である。 実施例2における冷却器本体の裏面側の斜視図である。 実施例2におけるバイパス経路付近の冷媒の流れを説明する説明図である。 実施例3におけるインバータの冷却構造の断面図である。 実施例3における冷却器本体の裏面側の斜視図である。 実施例3における冷却器カバーの表面側の斜視図である。 本開示のインバータの冷却構造における変形例の断面図である。 変形例における冷却器本体の裏面側の斜視図である。 本開示のボス部の第1変形例を示す斜視図である。 第1変形例におけるボス部付近の冷媒の流れを説明する説明図である。 本開示のボス部の第2変形例を示す斜視図である。
以下、本発明の電力変換装置の冷却構造を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1~実施例3に基づいて説明する。
まず、構成を説明する。
実施例1における冷却構造は、走行用駆動源などとしてレンジエクステンダ電気自動車(電動車両の一例)に搭載されるモータジェネレータのインバータ装置(電力変換装置の一例)に適用したものである。レンジエクステンダ電気自動車(EV)は、2つのモータジェネレータと発電専用のエンジンを有する。このレンジエクステンダ電気自動車は、その2つのモータジェネレータのうち、1つを駆動用(走行用)モータジェネレータとし、もう1つを発電用モータジェネレータとして用いる。なお、発電はエンジンを動力源として発電用モータジェネレータにより行われる。以下、実施例1の構成を、「インバータの冷却構造」、「冷却器の詳細説明」に分けて説明する。
[インバータの冷却構造]
図1は、実施例1におけるインバータの冷却構造の断面図を示し、図2は、実施例1におけるパワーモジュールの平面図を示す。なお、図1は、図2のI-I線における断面図である。以下、図1及び図2に基づいて、実施例1におけるインバータ1Aの冷却構造の詳細構成を説明する。
実施例1のインバータ1Aは、図1及び図2に示すように、インバータケース2と、2つのパワーモジュール3(電力変換器)と、駆動基板4と、冷却器5と、冷媒流路9と、固定ボルト10と、を備えている。このインバータ1Aは、パワーモジュール3と冷媒流路9が対向配置され、冷媒流路9を流れる冷媒(例えば、冷却水)によってパワーモジュール3と固定ボルト10を冷却する構造としている。
インバータケース2には、図1及び図2に示すように、パワーモジュール3や駆動基板4や冷却器5等が収容される。インバータケース2は、例えば、図外のモータジェネレータのモータハウジングの外周面から突出するケース取り付け部にネジ止めなどにより固定される。
パワーモジュール3は、半導体素子3aと、絶縁配線基板3bと、パワーモジュール3の駆動時に発生する熱を放熱するためのヒートスプレッダー3c(放熱部材)と、絶縁樹脂3eと、を有する一体モジュール部品として構成される。2つのパワーモジュール3のうち、1つを図外の駆動用モータジェネレータと電気的に接続し、もう1つを図外の発電用モータジェネレータと電気的に接続する。
パワーモジュール3の製造に際しては、半導体素子3aと絶縁配線基板3bとヒートスプレッダー3cをシート状はんだ材などによる接合部を介して重ねて実装する。その後、エポキシ樹脂などによるトランスファーモールドによって絶縁樹脂3eが形成される。2つのパワーモジュール3は、図2に示すように、絶縁樹脂3eにより一体になる。放熱部材であるヒートスプレッダー3cは、絶縁樹脂3eより寸法が大きな長方形状板とされ、絶縁樹脂3eの外周から突出する外周部を有する。そして、ヒートスプレッダー3cの両板面うち、絶縁樹脂3eが接着される板面の反対面が、冷却器5の表面5aに接触する放熱面3dとされる。つまり、パワーモジュール3は、冷却器5の表面5aに接触する放熱面3dを有するヒートスプレッダー3cを一体に備える構造とされる。なお、ヒートスプレッダー3cの素材としては、アルミ合金材などの高伝熱性金属材が用いられる。また、パワーモジュール3からは、強電系のPNバスバーやUVWバスバーが突出して設けられる。
パワーモジュール3は、冷却器5の表面5aのうち、冷媒流路9と対向する表面5aの位置に締結固定される。そして、パワーモジュール3の締結固定状態において、図1に示すように、冷却器5と接触するヒートスプレッダー3cの放熱面3dが、表面5aに対して密着状態とされる。
駆動基板4は、絶縁体からなる一体の板の表面や内部に電気回路配線が形成されたものである。駆動基板4は、例えば、複数枚の基板が積層された多層基板である。駆動基板4は、パワーモジュール3とスペースを空けて配置される。
冷却器5は、冷却器本体51と、冷却器カバー52と、シール材53と、から構成される。冷却器本体51と冷却器カバー52との間にシール材53を配置し、冷却器本体51と冷却器カバー52とを組み合わせる。また、パワーモジュール3の冷却方式が、間接冷却型(間接水冷構造)である。なお、冷却器5の詳細構成については後述する。
固定ボルト10は、パワーモジュール3と冷媒流路9が対向配置された状態で、パワーモジュール3を冷却器本体51に固定する。固定ボルト10は、ヒートスプレッダー3cの外周部に形成される貫通孔から挿通され、冷却器本体51に形成されるボス部12に締結される。なお、貫通穴に挿通される前に、ワッシャ10bを固定ボルト10に挿通させる。また、図2に示すように、1つのパワーモジュール3を冷却器本体51に固定する際、固定ボルト10で複数箇所(例えば4か所)を固定する。この固定ボルト10の素材としては、伝熱性の金属材が用いられる。なお、ボス部12の内周には雌ネジが形成されている。
[冷却器の詳細構成]
図3は、実施例1における冷却器本体の裏面側の斜視図を示す。図4は、実施例1におけるボス部の斜視図を示す。なお、冷却器本体の裏面側とは、図3において冷却器カバーの面側である。以下、図1と図3と図4に基づいて、実施例1における冷却器の詳細構成を説明する。
冷却器本体51には、2つの主経路溝6と、2つの拡張経路溝7(第1拡張経路溝)と、隔壁8と、が形成される。拡張経路溝7は、流入側拡張経路溝71と、流出側拡張経路溝72と、から構成される。各溝は、図3に示すように、X方向において、流入側拡張経路溝71、主経路溝6、流出側拡張経路溝72、流入側拡張経路溝71、主経路溝6、流出側拡張経路溝72の順で配置される。
主経路溝6は、流入側拡張経路溝71と流出側拡張経路溝72に挟まれている。主経路溝6は、隔壁8を介して、流入側拡張経路溝71と流出側拡張経路溝72と隣接する位置に配置される。2つの主経路溝6の間に配置された流出側拡張経路溝72と流入側拡張経路溝71は、隔壁8を介して、隣接する位置に配置される。また、隣接する2つの溝は、一部で連通される。即ち、各溝は交互に連通され、溝全体で、1つの溝になるように連通される。拡張経路溝7の高さ(深さ、Z方向)は、主経路溝6の高さ(深さ、Z方向)と同じである。即ち、流入側拡張経路溝71と流出側拡張経路溝72の高さは、主経路溝6の高さと同じ高さである。言い換えると、流入側拡張経路溝71と流出側拡張経路溝72は、主経路溝6の高さ方向に対して全域が拡張されている。
2つの主経路溝6の間に配置されていない流入側拡張経路溝71は、冷却器5に外部から冷媒を流入させる冷媒流入路(不図示)と連通される(矢印参照)。流入側拡張経路溝71と冷媒流入路は、流入側拡張経路溝71のY方向(長手方向)において主経路溝6と連通されていない側で連通される。2つの主経路溝6の間に配置されていない流出側拡張経路溝72は、冷却器5から外部へ冷媒を流出させる冷媒流出路(不図示)と連通される(矢印参照)。流出側拡張経路溝72と冷媒流出路は、流出側拡張経路溝72のY方向において主経路溝6と連通されていない側で連通される。
また、主経路溝6には、図3に示すように、複数(例えば4つ)のフィン11が形成される。フィン11は、矩形形状であり、主経路溝6のY方向に延びている。フィン11は、主経路溝6のX方向(短手方向)に等間隔に配置される。また、フィン11の高さ(Z方向)は、図1に示すように、主経路溝6の高さよりも低い。
流入側拡張経路溝71と流出側拡張経路溝72のそれぞれには、図3に示すように、固定ボルト10が締結される複数(例えば2つ)のボス部12が形成される。ボス部12のエッジは、図4に示すように、フィレット形状に形成される。なお、ボス部12のエッジとは、冷却器本体51の裏面側に突出しているボス部12の先端部分であり、固定ボルト10がボス部12に固定された際に、固定ボルト10のボルト端10aが位置する部分である。また、ボス部12の高さ(Z方向)は、図1に示すように、流入側拡張経路溝71と流出側拡張経路溝72の高さよりも低い。
冷却器本体51と冷却器カバー52とを組み合わせたとき、図1に示すように、冷却器本体51と冷却器カバー52との間に、冷媒流路9が形成される。即ち、冷媒流路9として、主経路91と拡張経路92(第1拡張経路)が形成される。
主経路91は、主経路溝6と冷却器カバー52により形成される。また、拡張経路92は、流入側拡張経路92aと流出側拡張経路92bにより構成される。流入側拡張経路92aは、流入側拡張経路溝71と冷却器カバー52により形成される。流出側拡張経路92bは、流出側拡張経路溝72と冷却器カバー52により形成される。このため、冷媒流路9として、主経路91と流入側拡張経路92aと流出側拡張経路92bとを有する。
主経路91は、パワーモジュール3を冷却器本体51に固定したとき、パワーモジュール3と対向配置される。また、拡張経路92は、主経路91から固定ボルト10のボルト端10aまで流路を拡張させた経路である。
次に、作用を説明する。
実施例1のインバータ1Aの冷却構造における作用を、「冷媒の流れ作用」、「ボルト周囲の雰囲気温度の上昇メカニズム」、「インバータの冷却構造の基本作用」、「インバータの冷却構造の特徴作用」に分けて説明する。
[冷媒の流れ作用]
以下、図1と図3に基づいて、冷媒の流れを説明する。なお、図3の冷却器本体51に冷却器カバー52が取り付けられたものとして説明する。このため、図3において、主経路溝6を主経路91とし、流入側拡張経路溝71を流入側拡張経路92aとし、流出側拡張経路溝72を流出側拡張経路92bとするので、各符号の後ろに各経路の符号を括弧書きで表記する。
冷媒は、外部から冷媒流入路へ流入される。次いで、冷媒流入路から流入された冷媒は、流入側拡張経路92aの一端へ流入される(矢印参照)。次いで、流入側拡張経路92aに流入された冷媒は、流入側拡張経路92aから主経路91へ流入される。即ち、流入側拡張経路92aは、冷媒流路9を流れる冷媒を主経路91に流入する。また、このとき、流入側拡張経路92aを流れる冷媒により、流入側拡張経路92aに配置されたボス部12の全体が覆われる。このため、ボス部12が冷却され、ボス部12に固定された固定ボルト10のボルト端10aが冷却される。これにより、固定ボルト10が冷却される。
次いで、主経路91に流入された冷媒は、主経路91から流出側拡張経路92bへ流出される。即ち、流出側拡張経路92bには、冷媒が主経路91から流出する。また、このとき、主経路91を流れる冷媒は、隔壁8やフィン11等の間を流れる。このため、フィン11により、半導体素子3aの発する熱が熱交換により放熱される。即ち、パワーモジュール3が冷却される。
次いで、流出側拡張経路92bに流出された冷媒は、流出側拡張経路92bから流入側拡張経路92aへ流入される。このとき、流出側拡張経路92bを流れる冷媒により、流出側拡張経路92bに配置されたボス部12の全体が覆われる。このため、上記の同様に、固定ボルト10が冷却される。
次いで、流入側拡張経路92aに流入された冷媒は、上記と同様に、主経路91に流入され、主経路91から流出側拡張経路92bへ流出される。このため、上記と同様に、冷媒により、パワーモジュール3や固定ボルト10が冷却される。冷媒の流れと冷却は、上記と同様なので説明を省略する。そして、流出側拡張経路92bに流出された冷媒は、流出側拡張経路92bから冷媒流出路へ流出される(矢印参照)。即ち、冷媒は、外部へ流出される。このように、パワーモジュール3や固定ボルト10が冷却される。
[ボルト周囲の雰囲気温度の上昇メカニズム]
以下、図1に基づいて、ボルト周囲の雰囲気温度の上昇メカニズムについて説明する。
パワーモジュール3の駆動時、半導体素子3aが発熱する。この熱は、パワーモジュール3からヒートスプレッダー3cへ伝導される。次いで、ヒートスプレッダー3cに伝導された熱は、矢印100に示すように、ヒートスプレッダー3cの放熱面3dから冷却器本体51や固定ボルト10へ放熱される。固定ボルト10に伝導された熱により固定ボルト10が熱せられる。そして、固定ボルト10から熱が発せられ、固定ボルト10周囲の雰囲気温度が上昇する。例えば、矢印101に示すように、固定ボルト10の頭部から熱が発せられ、パワーモジュール3と駆動基板4との間の雰囲気温度が上昇する。
このように、パワーモジュール3の駆動時、半導体素子3aの熱を固定ボルト10が受熱すると、固定ボルト10周囲の雰囲気温度が上昇する。
[インバータの冷却構造の基本作用]
上記のように、パワーモジュール3の駆動時、半導体素子3aの熱を固定ボルト10が受熱すると、ボルト周囲の雰囲気温度が上昇してしまう。これに対し、実施例1では、冷媒流路9として、パワーモジュール3と対向配置される主経路91と、主経路91から固定ボルト10のボルト端10aまで流路を拡張させた拡張経路92と、を有するインバータ1Aの冷却構造とした。即ち、拡張経路92を流れる冷媒により固定ボルト10のボルト端10aが冷却されて、固定ボルト10の冷却効率が上げられる。このため、固定ボルト10が半導体素子3aの熱を受熱しても、固定ボルト10の熱の上昇が抑制される。この結果、固定ボルト10周囲の雰囲気温度の上昇が抑えられる。
実施例1では、ボス部12は、拡張経路92に配置される構成とした。即ち、拡張経路92を流れる冷媒によりボス部12が冷却され、固定ボルト10の冷却効率がより上げられる。このため、固定ボルト10が半導体素子3aの熱を受熱しても、固定ボルト10の熱の上昇がより抑制される。従って、固定ボルト10周囲の雰囲気温度の上昇がより抑えられる。
実施例1では、冷却器本体51と冷却器カバー52の少なくとも一方(実施例1では冷却器本体51)に、主経路溝6と、拡張経路溝7と、が形成される。そして、冷却器本体51と冷却器カバー52とを組み合わせたとき、冷却器本体51と冷却器カバー52との間に、主経路溝6により主経路91が形成される。また、冷却器本体51と冷却器カバー52とを組み合わせたとき、冷却器本体51と冷却器カバー52との間に、拡張経路溝7により拡張経路92が形成される。従って、冷却器本体51と冷却器カバー52の少なくとも一方に経路溝6,7を形成するだけで、容易に冷媒流路9としての主経路91と拡張経路92を形成することができる。
[インバータの冷却構造の特徴作用]
実施例1では、冷却器本体51に、主経路溝6と、主経路溝6と連通する拡張経路溝7と、が形成される。そして、冷却器本体51と冷却器カバー52とを組み合わせたとき、主経路溝6と冷却器カバー52により主経路91が形成される。また、冷却器本体51と冷却器カバー52とを組み合わせたとき、拡張経路溝7と冷却器カバー52により拡張経路92が形成される。即ち、冷却器本体51に経路溝6,7を形成するだけで、冷媒流路9としての主経路91と拡張経路92を形成することができる。このため、冷却器カバー52に経路溝6,7を形成しなくて良い。従って、冷却器カバー52に経路溝6,7を形成する工数を減らすことができる。加えて、冷却器本体51に冷却器カバー52を被せるのみで冷媒流路9が形成される。
実施例1では、主経路91と拡張経路92は、隔壁8を介して、隣接する位置に配置される。そして、拡張経路92は、冷媒流路9を流れる冷媒を主経路91に流入する流入側拡張経路92aと、冷媒が主経路91から流出する流出側拡張経路92bと、に拡張された経路(第1拡張経路)である。即ち、流入側拡張経路92aと流出側拡張経路92bを流れる冷媒が、主経路91と同様に冷媒流路9を流れる冷媒の主流となる。このため、ボス部12全体が冷媒に覆われるので、固定ボルト10の冷却効率がより一層上げられる。このため、固定ボルト10が半導体素子3aの熱を受熱しても、固定ボルト10の熱の上昇がより一層抑制される。従って、固定ボルト10周囲の雰囲気温度の上昇がより一層抑えられる。
実施例1では、ボス部12のエッジが、フィレット形状に形成される。即ち、拡張経路92を流れる冷媒がボス部12に衝突するとき、ボス部12のエッジがフィレット形状に形成されているので、エッジがフィレット形状に形成されていない場合より、衝突した際の圧力損失を低減することができる。従って、拡張経路92(流入側拡張経路92aと流出側拡張経路92b)の圧力損失を低減することができる。
次に、効果を説明する。
実施例1におけるインバータ1Aの冷却構造にあっては、下記に列挙する効果が得られる。
(1) 電力変換器(パワーモジュール3)と、冷媒流路9が形成された冷却器5と、電力変換器(パワーモジュール3)と冷媒流路9が対向配置された状態で、電力変換器(パワーモジュール3)を冷却器5に固定する固定ボルト10と、を有する。
冷媒流路9として、電力変換器(パワーモジュール3)と対向配置される主経路91と、主経路91から固定ボルト10のボルト端10aまで流路を拡張させた拡張経路92と、を有する。
このため、固定ボルト10周囲の雰囲気温度の上昇を抑える電力変換装置(インバータ1A)の冷却構造を提供することができる。
(2) 冷却器5には、固定ボルト10が締結されるボス部12が形成される。
ボス部12は、拡張経路92に配置される。
このため、(1)の効果に加え、固定ボルト10周囲の雰囲気温度の上昇をより抑えることができる。
(3) 冷却器5は、冷却器本体51と冷却器カバーとから構成される。
冷却器本体51と冷却器カバー52の少なくとも一方(実施例1では冷却器本体51)に、主経路溝6と、拡張経路溝7と、が形成される。
冷却器本体51と冷却器カバー52とを組み合わせたとき、冷却器本体51と冷却器カバー52との間に、主経路溝6により主経路91が形成され、拡張経路溝7により拡張経路92が形成される。
このため、(1)又は(2)の効果に加え、冷却器本体51と冷却器カバー52の少なくとも一方に経路溝6,7を形成するだけで、容易に冷媒流路9としての主経路91と拡張経路92を形成することができる。
(4) 冷却器本体51に、主経路溝6と、主経路溝6と連通する拡張経路溝7と、が形成される。
冷却器本体51と冷却器カバー52とを組み合わせたとき、主経路溝6と冷却器カバー52により主経路91が形成され、拡張経路溝7と冷却器カバー52により拡張経路92が形成される。
このため、(3)の効果に加え、冷却器カバー52に経路溝6,7を形成する工数を減らすことができる。
(5) 主経路91と拡張経路92は、隔壁8を介して、隣接する位置に配置される。
拡張経路92は、冷媒流路9を流れる冷媒を主経路91に流入する流入側(流入側拡張経路92a)と、冷媒が主経路91から流出する流出側(流出側拡張経路92b)と、に拡張された第1拡張経路(拡張経路92)である。
このため、(1)~(4)の効果に加え、固定ボルト10周囲の雰囲気温度の上昇をより一層抑えることができる。
(6) ボス部12のエッジが、フィレット形状に形成される。
このため、(2)~(5)の効果に加え、拡張経路92(流入側拡張経路92aと流出側拡張経路92b)の圧力損失を低減することができる。
実施例2は、拡張経路にボス部を配置することで、ボス部をバイパスするバイパス経路を形成した例である。
まず、構成を説明する。
実施例2における冷却構造は、実施例1と同様に、走行用駆動源などとしてレンジエクステンダ電気自動車(電動車両の一例)に搭載されるモータジェネレータのインバータ装置(電力変換装置の一例)に適用したものである。以下、実施例2の「冷却器の詳細説明」について説明する。なお、実施例2の「インバータ1Bの冷却構造」については、実施例1の「インバータの冷却構造」と同様であるので、図5において対応する構成に同一符号を付して説明を省略する。
図5は、実施例2におけるインバータの冷却構造の断面図を示す。図6は、実施例2の冷却器本体の裏面側の斜視図を示す。以下、図5と図6に基づいて、実施例2における冷却器の詳細構成を説明する。
冷却器本体51には、2つの主経路溝6と、8つの拡張経路溝7(第2拡張経路溝)と、が形成される。
図6に示すように、2つの主経路溝6は、一部で連通される。即ち、2つの主経路溝6で1つの溝になるように連通される。また、1つの主経路溝6のX方向の両側には、2つの拡張経路溝7が形成される。即ち、各拡張経路溝7は、主経路溝6の一部を拡張した溝である。各拡張経路溝7の高さ(深さ、Z方向)は、主経路溝6の高さ(深さ、Z方向)と同じである。言い換えると、各拡張経路溝7は、主経路溝6の高さ方向(Z方向)に対して全域が拡張されている。
一方の主経路溝6は、冷却器5に外部から冷媒を流入させる冷媒流入路(不図示)と連通される(矢印参照)。他方の主経路溝6は、冷却器5から外部へ冷媒を流出させる冷媒流出路(不図示)と連通される(矢印参照)。
また、主経路溝6には、図6に示すように、複数(例えば4つ)のフィン11が形成される。フィン11は、矩形形状であり、主経路溝6のY方向に延びている。フィン11は、主経路溝6のX方向に等間隔に配置される。また、フィン11の高さ(Z方向)は、図1に示すように、主経路溝6の高さよりも低い。
各拡張経路溝7には、図6に示すように、固定ボルト10が締結されるボス部12が形成される。ボス部12は、図5に示すように、拡張経路溝7の側壁7aから離れた位置に配置される。また、ボス部12の高さ(Z方向)は、図5に示すように、主経路溝6や各拡張経路溝7の高さと同じである。なお、実施例2のボス部12は、実施例1とは異なりフィレット形状に形成されていない。
冷却器本体51と冷却器カバー52とを組み合わせたとき、図5に示すように、冷却器本体51と冷却器カバー52との間に、冷媒流路9が形成される。即ち、冷媒流路9として、主経路91と拡張経路92(第2拡張経路)が形成される。
主経路91は、主経路溝6と冷却器カバー52により形成される。また、拡張経路92は、拡張経路溝7と冷却器カバー52により形成される。即ち、拡張経路92は、主経路91の一部を拡張した経路である。さらに、拡張経路溝7とボス部12と冷却器カバー52によりバイパス経路92cが形成される。即ち、拡張経路92に、バイパス経路92cが形成される。このため、冷媒流路9として、主経路91とバイパス経路92cとを有する。
主経路91は、パワーモジュール3を冷却器本体51に固定したとき、パワーモジュール3と対向配置される。また、拡張経路92は、主経路91から固定ボルト10のボルト端10aまで流路を拡張させた経路である。
次に、作用を説明する。
実施例2の上昇メカニズムは、実施例1と同様に、「ボルト周囲の雰囲気温度の上昇メカニズム」を示す。このため、図5において対応する構成に同一符号を付して説明を省略する。また、実施例2の作用は、実施例1と同様に、「インバータの冷却構造の基本作用」を示す。そして、以下に、実施例2のインバータ1Bの冷却構造における作用を、「冷媒の流れ作用」、「インバータの冷却構造の特徴作用」に分けて説明する。
[冷媒の流れ作用]
図7は、実施例2における冷媒の流れを示す。以下、図5~図7に基づいて、冷媒の流れを説明する。なお、図6の冷却器本体51に冷却器カバー52が取り付けられたものとして説明する。このため、図6において、主経路溝6を主経路91とするので、符号の後ろに経路の符号を括弧書きで表記する。また、図6において、拡張経路溝7において側壁7aとボス部12との間をバイパス経路92cとするので、側壁7aの後ろに経路の符号を括弧書きで表記する。
冷媒は、外部から冷媒流入路へ流入される。次いで、冷媒流入路から流入された冷媒は、一方の主経路91の一端へ流入される(矢印参照)。次いで、一方の主経路91に流入された冷媒は、一方の主経路91から他方の主経路91へ流入される。
このとき、一方の主経路91を流れる冷媒は、フィン11等の間を流れる。このため、フィン11により、半導体素子3aの発する熱が熱交換により放熱される。即ち、パワーモジュール3が冷却される。
また、このとき、図7の矢印121に示すように、一方の主経路91を流れる冷媒の一部は、途中でバイパス経路92cへ流入される。さらに、バイパス経路92cに流入された冷媒は、拡張経路溝7の側壁7aとボス部12との間を流れる。そして、側壁7aとボス部12との間を流れた冷媒は、図7の矢印122に示すように、一方の主経路91へ流入される。即ち、冷媒流路9を流れる冷媒のうち、一方の主経路91を流れる冷媒が主流(図7の矢印120)になり、バイパス経路92cを流れる冷媒が副流になる。言い換えると、主流からバイパスさせて、バイパス経路92cに冷媒が供給される。このため、バイパス経路92cへ流入される冷媒は、ボス部12の周囲を流れる。これにより、ボス部12が冷却され、ボス部12に固定された固定ボルト10のボルト端10aが冷却される。よって、固定ボルト10が冷却される。なお、同様に、他のボス部12も冷却されるので、他の固定ボルト10も冷却される。
次いで、他方の主経路91に流入された冷媒は、他方の主経路91から冷媒流出路へ流出される(矢印参照)。即ち、冷媒は、外部へ流出される。また、他方の主経路91を流れる冷媒は、一方の主経路91を流れる冷媒と同様に、フィン11等の間を流れる。さらに、他方の主経路91を流れる冷媒の一部は、上記と同様に、途中でバイパス経路92cへ流入される(図7の矢印121参照)。そして、バイパス経路92cに流入された冷媒は、上記と同様に、他方の主経路91へ流入される(図7の矢印122参照)。このため、上記と同様に、冷媒により、パワーモジュール3や固定ボルト10が冷却される。冷媒の流れと冷却は、上記と同様なので説明を省略する。また、主流と副流についても、上記と同様なので説明を省略する。このように、パワーモジュール3や固定ボルト10が冷却される。
[インバータの冷却構造の特徴作用]
実施例2では、実施例1と同様に、冷却器本体51に、主経路溝6と、主経路溝6と連通する拡張経路溝7と、が形成される。そして、冷却器本体51と冷却器カバー52とを組み合わせたとき、主経路溝6と冷却器カバー52により主経路91が形成され、拡張経路溝7と冷却器カバー52により拡張経路92が形成される。従って、冷却器カバー52に経路溝6,7を形成する工数を減らすことができる。加えて、冷却器本体51に冷却器カバー52を被せるのみで冷媒流路9が形成される。
実施例2では、拡張経路92は、主経路91の一部を拡張した経路(第2拡張経路)である。この経路にボス部12を配置することで、ボス部12をバイパスするバイパス経路92cが形成される。即ち、冷媒流路9を流れる冷媒のうち、主経路91を流れる冷媒が主流になり、バイパス経路92cを流れる冷媒が副流になる。このため、ボス部12は、主流から外れた位置に配置されている。これにより、ボス部12による主流の圧力損失を削減することができる。また、バイパス経路92cへ流入される冷媒により、ボス部12は冷却されるので、固定ボルト10の冷却効率も上げられる。このため、固定ボルト10が半導体素子3aの熱を受熱しても、固定ボルト10の熱の上昇が抑制される。従って、ボス部12による主流の圧力損失の削減と、固定ボルト10周囲の雰囲気温度の上昇抑制を両立することができる。加えて、実施例2では、実施例1のように主流にボス部12を配置するよりも、ボス部12による主流の圧力損失を低減することができる。
次に、効果を説明する。
実施例2におけるインバータ1Bの冷却構造にあっては、実施例1の(1)~(4)に記載した効果が得られる。また、実施例2のインバータ1Bの冷却構造にあっては、下記(7)の効果を得ることができる。
(7) 拡張経路92は、主経路91の一部を拡張した第2拡張経路(拡張経路92)である。
第2拡張経路(拡張経路92)にボス部12を配置することで、ボス部12をバイパスするバイパス経路92cが形成される。
このため、(2)~(4)の効果に加え、ボス部12による主流の圧力損失の削減と、固定ボルト10周囲の雰囲気温度の上昇抑制を両立することができる。
実施例3は、冷却器カバーに拡張経路溝を形成し、拡張経路溝と冷却器本体により拡張経路を形成した例である。
まず、構成を説明する。
実施例3における冷却構造は、実施例1と同様に、走行用駆動源などとしてレンジエクステンダ電気自動車(電動車両の一例)に搭載されるモータジェネレータのインバータ装置(電力変換装置の一例)に適用したものである。以下、実施例3の構成を、「インバータの冷却構造」、「冷却器の詳細説明」に分けて説明する。
[インバータの冷却構造]
図8は、実施例3におけるインバータの冷却構造の断面図を示す。以下、図8に基づいて、実施例3におけるインバータ1Cの冷却構造の詳細構成を説明する。
冷却器本体51には、雌ネジ穴13が形成され、ボス部は形成されていない。
固定ボルト10は、ヒートスプレッダー3cの外周部に形成される貫通孔から挿通され、雌ネジ穴13に締結される。
なお、「インバータ1Cの冷却構造」における他の構成は、実施例1と同様であるので、対応する構成に同一符号を付して説明を省略する。
[冷却器の詳細説明]
図9は、実施例3における冷却器本体の裏面側の斜視図を示す。図10は、実施例3における冷却器カバーの表面側の斜視図を示す。以下、図8~図10に基づいて、実施例3における冷却器の詳細構成を説明する。なお、冷却器カバーの表面側とは、図8においてパワーモジュール3の面側である。
冷却器本体51には、2つの主経路溝6が形成される。
冷却器カバー52には、4つの拡張経路溝7が形成される。拡張経路溝7は、4つの拡張経路溝7のうち内側に配置された2つの内側拡張経路溝73と、4つの拡張経路溝7のうち外側に配置された2つの外側拡張経路溝74と、から構成される。各拡張経路溝7は、図10に示すように、X方向において、外側拡張経路溝74、内側拡張経路溝73、内側拡張経路溝73、外側拡張経路溝74の順で配置される。
図9に示すように、2つの主経路溝6は、一部で連通される。即ち、2つの主経路溝6で1つの溝になるように連通される。また、1つの主経路溝6のX方向の両側には、2つの雌ネジ穴が配置される。
一方の主経路溝6は、冷却器5に外部から冷媒を流入させる冷媒流入路(不図示)と連通される(矢印参照)。他方の主経路溝6は、冷却器5から外部へ冷媒を流出させる冷媒流出路(不図示)と連通される(矢印参照)。
また、主経路溝6には、図9に示すように、複数(例えば4つ)のフィン11が形成される。フィン11は、矩形形状であり、主経路溝6のY方向に延びている。フィン11は、主経路溝6のX方向に等間隔に配置される。また、フィン11の高さ(Z方向)は、図1に示すように、主経路溝6の高さよりも低い。
図10に示すように、2つの内側拡張経路溝73は、一部で連通される。即ち、2つの内側拡張経路溝73で1つの溝になるように連通される。図10に示すように、2つの外側拡張経路溝74は、一部で連通される。即ち、2つの外側拡張経路溝74で1つの溝になるように連通される。また、内側拡張経路溝73と外側拡張経路溝74は連通されていない。
冷却器本体51と冷却器カバー52とを組み合わせたとき、図8に示すように、2つの主経路溝6と4つの拡張経路溝7が連通され、冷却器本体51と冷却器カバー52との間に、冷媒流路9が形成される。即ち、冷媒流路9として、主経路91と拡張経路92が形成される。
主経路91は、主経路溝6と冷却器カバー52により形成される。また、拡張経路92は、内側拡張経路92dと外側拡張経路92eにより構成される。内側拡張経路92dは、内側拡張経路溝73と冷却器本体51により形成される。外側拡張経路92eは、外側拡張経路溝74と冷却器本体51により形成される。また、内側拡張経路92dと外側拡張経路92eは、主経路91を通じて連通される。このため、冷媒流路9として、主経路91と内側拡張経路92dと外側拡張経路92eとを有する。
主経路91は、パワーモジュール3を冷却器本体51に固定したとき、パワーモジュール3と対向配置される。また、拡張経路92は、主経路91から固定ボルト10のボルト端10aまで流路を拡張させた経路である。
次に、作用を説明する。
実施例3の上昇メカニズムは、実施例1と同様に、「ボルト周囲の雰囲気温度の上昇メカニズム」を示す。このため、図8において対応する構成に同一符号を付して説明を省略する。また、以下に、実施例3のインバータ1Cの冷却構造における作用を、「冷媒の流れ作用」、「インバータの冷却構造の基本作用」、「インバータの冷却構造の特徴作用」に分けて説明する。
[冷媒の流れ作用]
以下、冷媒の流れについて、図8~図10に基づいて冷媒の流れを説明する。なお、図9の冷却器本体51に図10の冷却器カバー52が取り付けられたものとして説明する。このため、図9において主経路溝6を主経路91とするので、符号の後ろに経路の符号を括弧書きで表記する。また、図10において、内側拡張経路溝73を内側拡張経路92dとし、外側拡張経路溝74を外側拡張経路92eとするので、各符号の後ろに各経路の符号を括弧書きで表記する。
冷媒は、外部から冷媒流入路へ流入される。次いで、冷媒流入路から流入された冷媒は、一方の主経路91の一端へ流入される(矢印参照)。このとき、図8の矢印130に示すように、冷媒流入路から流入された冷媒は、一方の主経路91を通じて、一方の内側拡張経路92dと一方の外側拡張経路92eへ流入される。
次いで、一方の主経路91に流入された冷媒は、一方の主経路91から他方の主経路91へ流入される。同様に、一方の内側拡張経路92dに流入された冷媒は、一方の内側拡張経路92dから他方の内側拡張経路92dへ流入される。また、一方の外側拡張経路92eに流入された冷媒は、一方の外側拡張経路92eから他方の外側拡張経路92eへ流入される。
このとき、一方の主経路91を流れる冷媒は、フィン11等の間を流れる。このため、フィン11により、半導体素子3aの発する熱が熱交換により放熱される。即ち、パワーモジュール3が冷却される。
また、一方の内側拡張経路92dと一方の外側拡張経路92eを流れる冷媒は、ボルト端10aの下方を流れる。このため、冷媒により固定ボルト10のボルト端10aが冷却される。これにより、固定ボルト10が冷却される。
他方の主経路91と他方の内側拡張経路92dと他方の外側拡張経路92eに流入された冷媒は、他方の主経路91から冷媒流出路へ流出される(矢印参照)。言い換えると、他方の内側拡張経路92dと他方の外側拡張経路92eを流れる冷媒は、他方の主経路91を通じて、冷媒流出路へ流出される。即ち、冷媒は、外部へ流出される。また、他方の主経路91を流れる冷媒は、一方の主経路91を流れる冷媒と同様に、フィン11等の間を流れる。さらに、他方の内側拡張経路92dと他方の外側拡張経路92eを流れる冷媒は、一方の内側拡張経路92dと一方の外側拡張経路92eを流れる冷媒と同様に、ボルト端10aの下方を流れる。このため、上記と同様に、冷媒により、パワーモジュール3や固定ボルト10が冷却される。
[インバータの冷却構造の基本作用]
実施例3では、実施例1と同様に、冷媒流路9として、パワーモジュール3と対向配置される主経路91と、主経路91から固定ボルト10のボルト端10aまで流路を拡張させた拡張経路92と、を有するインバータ1Aの冷却構造とした。この結果、固定ボルト10周囲の雰囲気温度の上昇が抑えられる。
実施例3では、冷却器本体51に主経路溝6が形成され、冷却器カバー52に主経路溝6と連通する拡張経路溝7が形成される。そして、冷却器本体51と冷却器カバー52とを組み合わせたとき、冷却器本体51と冷却器カバー52との間に、主経路溝6により主経路91が形成される。また、冷却器本体51と冷却器カバー52とを組み合わせたとき、冷却器本体51と冷却器カバー52との間に、拡張経路溝7により拡張経路92が形成される。従って、冷却器本体51と冷却器カバー52に経路溝6,7を形成するだけで、容易に冷媒流路9としての主経路91と拡張経路92を形成することができる。
[インバータの冷却構造の特徴作用]
実施例3では、冷却器本体51に、主経路溝6が形成される。冷却器カバー52に、拡張経路溝7が形成される。冷却器本体51と冷却器カバー52とを組み合わせたとき、主経路溝6と拡張経路溝7が連通され、主経路溝6と冷却器カバー52により主経路91が形成され、拡張経路溝7と冷却器本体51により拡張経路92が形成される。即ち、スペースの制約等により冷却器本体51の板厚(Z方向の厚さ、高さ方向の厚さ)が薄く、冷却器本体51に拡張経路溝7を形成できない場合でも、拡張経路溝7を冷却器カバー52に形成することができる。このため、拡張経路92を流れる冷媒により固定ボルト10のボルト端10aが冷却されて、固定ボルト10の冷却効率が上げられる。このため、固定ボルト10が半導体素子3aの熱を受熱しても、固定ボルト10の熱の上昇が抑制される。また、冷却器5全体のZ方向の厚さを、実施例1や実施例2よりも低くできる。従って、冷却器本体51に拡張経路溝7を形成できない場合でも、拡張経路溝7を冷却器カバー52に形成することで、固定ボルト10周囲の雰囲気温度の上昇が抑えられる。
加えて、主経路溝6が形成された既存の冷却器本体51に、拡張経路溝7が形成された冷却器カバー52を組み合わせるだけで、冷却器本体51と冷却器カバー52との間に、冷媒流路9としての主経路91と拡張経路92が形成される。このため、既存の冷却器本体51を使用することができる。
次に、効果を説明する。
実施例3におけるインバータ1Cの冷却構造にあっては、実施例1と同様に、実施例1の(1)と(3)に記載した効果が得られる。また、実施例3のインバータ1Cの冷却構造にあっては、下記(8)の効果を得ることができる。
(8) 冷却器本体51に、主経路溝6が形成される。
冷却器カバー52に、拡張経路溝7が形成される。
冷却器本体51と冷却器カバー52とを組み合わせたとき、主経路溝6と拡張経路溝7が連通され、主経路溝6と冷却器カバー52により主経路91が形成され、拡張経路溝7と冷却器本体51により拡張経路92が形成される。
このため、(1)又は(3)の効果に加え、冷却器本体51に拡張経路溝7を形成できない場合でも、拡張経路溝7を冷却器カバー52に形成することで、固定ボルト10周囲の雰囲気温度の上昇を抑えることができる。
以上、本開示の電力変換装置の冷却構造を実施例1~実施例3に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1では、冷却器本体51に隔壁8を形成する例を示した。しかし、隔壁8は無くても良い。このとき、拡張経路は、主経路の全部をX方向に拡張した経路となる。
実施例2では、ボス部12を拡張経路溝7の側壁7aから離れた位置に配置する例を示した。しかし、ボス部を拡張経路溝の側壁と接する位置に配置しても良い。このとき、主経路から拡張経路に流入される冷媒は、ボス部の周囲を流れる。従って、このようにボス部を配置しても、実施例2と同様に固定ボルトが冷却される。
実施例1と実施例2では、拡張経路溝7に、固定ボルト10が締結されるボス部12が形成される例を示した。しかし、ボス部を形成せず、実施例3のように、冷却器本体に、雌ネジ穴のみを形成しても良い。
実施例1と実施例2では、拡張経路溝7の高さ(深さ)を、主経路溝6の高さ(深さ)と同じとする例を示した。しかし、拡張経路溝7の高さ(深さ)を、主経路溝6の高さ(深さ)より低くしても良い。言い換えると、拡張経路溝7は、主経路溝6の高さ方向(Z方向)に対して一部が拡張されても良い。例えば、本開示のインバータの冷却構造における変形例(インバータ1D)として、図11及び図12に示すように、各拡張経路溝7は主経路溝6の高さ方向に対して一部が拡張され、さらに拡張経路溝7にボス部12が形成されていない構成としても良い。このように構成しても、実施例1の(1)と(3)と(4)に記載した効果が得られる。加えて、拡張経路溝7は主経路溝6の高さ方向に対して一部が拡張されているので、拡張経路溝7は主経路溝6の高さ方向に対して全域が拡張されるよりも、冷媒流路9の圧力損失を低減することができる。なお、他の構成は、実施例の「インバータの冷却構造」と同様であるので、図11及び図12において対応する構成に同一符号を付して説明を省略する。
実施例1では、ボス部12のエッジをフィレット形状に形成する例を示した。しかし、これに限られない。例えば、ボス部200の形状は、図13Aと図13Bに示すように、拡張経路を流れる冷媒の流れ方向に対し、冷媒の分流(矢印201)と合流(矢印202)が円滑な凸部形状であっても良い。即ち、拡張経路を流れる冷媒がボス部に衝突するとき、ボス部の形状が凸部形状であるので、ボス部の形状が凸部形状でない場合より、衝突した際の圧力損失を低減することができる。従って、拡張経路92の圧力損失を低減することができる。
また、例えば、図14に示すように、ボス部210に拡張経路を流れる冷媒の流れ方向にボス部用フィン211を設けても良い。これにより、ボス部に対して流れてきた冷媒の流れを安定させることができる。また、ボス部用フィン211により、固定ボルトの発する熱が熱交換により放熱される。即ち、ボス部用フィン211が冷却機能を果たすことで、固定ボルトの冷却性能を向上させることできる。このため、固定ボルト周囲の雰囲気温度の上昇がより抑えられる。
さらに、実施例2のボス部12の場合には、ボス部12の周囲に、拡張経路を流れる冷媒の流れ方向にボス部用フィンを設けても良い。このように構成しても、上記と同様に、ボス部用フィンが冷却機能を果たすことで、固定ボルトの冷却性能を向上させることできる。このため、固定ボルト周囲の雰囲気温度の上昇がより抑えられる。
実施例1~実施例3では、本開示の電力変換装置の冷却構造を、パワーモジュール3の冷却方式が間接冷却型(間接水冷構造)であるものに対して適用する例を示した。しかし、これに限られない。例えば、本開示の電力変換装置の冷却構造を、直接冷却型や冷却器一体型に対しても適用することができる。
実施例1~実施例3では、本開示の電力変換装置の冷却構造を、2つのパワーモジュール3に対して適用する例を示した。しかし、本開示の電力変換装置の冷却構造を、1つのパワーモジュールに対しても適用することができる。
実施例1~実施例3では、電力変換器をパワーモジュール3とする例を示した。しかし、電力変換器としては、パワーモジュール以外に、例えば、平滑コンデンサ、放電抵抗などのうち、1つや2つ以上の組み合わせ部品とする例であっても良い。
実施例1~実施例3では、本開示の電力変換装置の冷却構造を、モータジェネレータの交流/直流の変換装置として用いられるインバータに適用する例を示した。しかし、本開示の冷却構造は、電力変換器を用い、電圧・電流・周波数・位相・相数・波形などの電気特性のうち、一つ以上を実質的な電力損失を抑えて変換するインバータ以外の様々な電力変換装置に対しても適用することができる。

Claims (7)

  1. 熱を発する電力変換器と、
    外部から流入する冷媒が流れる冷媒流路が形成された冷却器と、
    前記電力変換器と前記冷媒流路が対向配置された状態で、前記電力変換器を前記冷却器に固定する固定ボルトと、を有し、
    前記冷却器は、冷却器本体と冷却器カバーとから構成され、
    前記冷却器本体には、主経路溝と、前記主経路溝と連通する拡張経路溝と、前記固定ボルトが締結されるボス部と、が形成され、
    前記冷却器内に形成される前記冷媒流路のうち、前記電力変換器を冷却する前記冷媒流路を主経路といい、前記固定ボルトを冷却する前記冷媒流路を拡張経路というとき、
    前記主経路は、前記電力変換器と対向配置されて前記冷媒が流れ、
    前記拡張経路は、前記主経路から前記固定ボルトが締結される前記ボス部の位置まで流路を拡張させて前記冷媒が流れ
    記冷却器本体と前記冷却器カバーとを組み合わせたとき、前記主経路溝と前記冷却器カバーにより前記主経路が形成され、前記拡張経路溝と前記冷却器カバーにより前記拡張経路が形成され
    記主経路と前記拡張経路は、隔壁を介して、隣接する位置に配置され、
    前記拡張経路は、前記ボス部が配置され、前記冷媒流路を流れる冷媒を前記主経路に流入する流入側と、前記冷媒が前記主経路から流出する流出側と、に拡張された第1拡張経路であり、
    前記主経路と前記第1拡張経路は、前記冷媒流路への冷媒流入から外部への冷媒流出へ向かう一方向の冷媒の流れに沿って形成される
    ことを特徴とする電力変換装置の冷却構造。
  2. 熱を発する電力変換器と、
    外部から流入する冷媒が流れる冷媒流路が形成された冷却器と、
    前記電力変換器と前記冷媒流路が対向配置された状態で、前記電力変換器を前記冷却器に固定する固定ボルトと、を有し、
    前記冷却器は、冷却器本体と冷却器カバーとから構成され、
    前記冷却器本体には、主経路溝と、前記主経路溝と連通する拡張経路溝と、前記固定ボルトが締結されるボス部と、が形成され、
    前記冷却器内に形成される前記冷媒流路のうち、前記電力変換器を冷却する前記冷媒流路を主経路といい、前記固定ボルトを冷却する前記冷媒流路を拡張経路というとき、
    前記主経路は、前記電力変換器と対向配置されて前記冷媒が流れ、
    前記拡張経路は、前記主経路から前記固定ボルトが締結される前記ボス部の位置まで流路を拡張させて前記冷媒が流れ
    記冷却器本体と前記冷却器カバーとを組み合わせたとき、前記主経路溝と前記冷却器カバーにより前記主経路が形成され、前記拡張経路溝と前記冷却器カバーにより前記拡張経路が形成され
    記拡張経路は、前記主経路の一部を拡張した第2拡張経路であり、
    前記第2拡張経路に前記ボス部を配置することで、前記ボス部をバイパスするバイパス経路が形成され、
    前記主経路と前記第2拡張経路は、前記冷媒流路への冷媒流入から外部への冷媒流出へ向かう一方向の冷媒の流れに沿って形成される
    ことを特徴とする電力変換装置の冷却構造。
  3. 請求項1に記載された電力変換装置の冷却構造において、
    前記ボス部のエッジが、フィレット形状に形成される
    ことを特徴とする電力変換装置の冷却構造。
  4. 請求項1に記載された電力変換装置の冷却構造において、
    前記ボス部の形状は、前記拡張経路を流れる冷媒の流れ方向に対し、前記冷媒の分流と合流が円滑な凸部形状である
    ことを特徴とする電力変換装置の冷却構造。
  5. 請求項1又は請求項2に記載された電力変換装置の冷却構造において、
    前記ボス部には、前記拡張経路を流れる冷媒の流れ方向に、フィンが設けられる
    ことを特徴とする電力変換装置の冷却構造。
  6. 熱を発する電力変換器と、
    外部から流入する冷媒が流れる冷媒流路が形成された冷却器と、
    前記電力変換器と前記冷媒流路が対向配置された状態で、前記電力変換器を前記冷却器に固定する固定ボルトと、を有し、
    前記冷却器は、冷却器本体と冷却器カバーとから構成され、
    前記冷却器本体には、主経路溝と、前記固定ボルトが締結される雌ネジ穴と、が形成され、
    前記冷却器カバーには、拡張経路溝が形成され、
    前記冷却器内に形成される前記冷媒流路のうち、前記電力変換器を冷却する前記冷媒流路を主経路といい、前記固定ボルトを冷却する前記冷媒流路を拡張経路というとき、
    前記主経路は、前記電力変換器と対向配置されて前記冷媒が流れ、
    前記拡張経路は、前記主経路から前記固定ボルトが締結される前記冷却器本体のボルト締結位置まで流路を拡張させて前記冷媒が流れ
    記冷却器本体と前記冷却器カバーとを組み合わせたとき、前記主経路溝と前記拡張経路溝が連通され、前記主経路溝と前記冷却器カバーにより前記主経路が形成され、前記拡張経路溝と前記冷却器本体により前記拡張経路が形成され、
    前記主経路と前記拡張経路は、前記冷媒流路への冷媒流入から外部への冷媒流出へ向かう一方向の冷媒の流れに沿って形成される
    ことを特徴とする電力変換装置の冷却構造。
  7. 熱を発する電力変換器と、
    外部から流入する冷媒が流れる冷媒流路が形成された冷却器と、
    前記電力変換器と前記冷媒流路が対向配置された状態で、前記電力変換器を前記冷却器に固定する固定ボルトと、を有し、
    前記冷却器は、冷却器本体と冷却器カバーとから構成され、
    前記冷却器本体には、主経路溝と、前記主経路溝と連通する拡張経路溝と、前記固定ボルトが締結される雌ネジ穴と、が形成され、
    前記雌ネジ穴は、前記冷却器本体のうち、溝深さを前記主経路溝の溝深さより浅くした前記拡張経路溝の位置に形成され、
    前記冷却器内に形成される前記冷媒流路のうち、前記電力変換器を冷却する前記冷媒流路を主経路といい、前記固定ボルトを冷却する前記冷媒流路を拡張経路というとき、
    前記主経路は、前記電力変換器と対向配置されて前記冷媒が流れ、
    前記拡張経路は、前記主経路から前記固定ボルトが締結される前記冷却器本体のボルト締結位置まで流路を拡張させて前記冷媒が流れ
    記冷却器本体と前記冷却器カバーとを組み合わせたとき、前記主経路溝と前記冷却器カバーにより前記主経路が形成され、前記主経路溝の溝深さより浅くした前記拡張経路溝と前記冷却器カバーにより前記拡張経路が形成され、
    前記主経路と前記拡張経路は、前記冷媒流路への冷媒流入から外部への冷媒流出へ向かう一方向の冷媒の流れに沿って形成される
    ことを特徴とする電力変換装置の冷却構造。
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