以下に、本発明の実施の形態を説明する。
なお、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、これらの実施形態を、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、変更または変形することができる。
本発明の車両用合わせガラスは、車内外で信号の送受信を行う情報取得装置を搭載する車両用の合わせガラスであって、該情報取得装置による信号の送受信は合わせガラスを介して行われる。本発明の車両用合わせガラスは、例えば、フロントガラス、リヤガラス、サイドガラス、ルーフガラス等に適用可能であり、フロントガラスへの適用が好適である。
本明細書において「上」および「下」の表記は、フロントガラスを車両に搭載した際のそれぞれ上および下を示す。フロントガラスの「上部」とは、フロントガラスが車両に搭載された場合の上側の部分のことであり、また、その「下部」とは、フロントガラスが車両に搭載された場合の下側の部分のことである。
また、本明細書において、ガラス板の周縁部とは、ガラス板の端部から主面の中央部に向かって、ある一定の幅を有する領域を意味する。本明細書において、車両用合わせガラスの主面において中央部から見て外周側を外側、外周からみて中央部側を内側という。本明細書において、「略同形、同寸」とは、人の見た目において同じ形状、同じ寸法を有することをいう。他の場合においても、「略」は上記と同様の意味を示す。また、数値範囲を表す「~」では、上下限を含む。
図1は実施形態に係る車両用合わせガラスの一例の平面図である。図1に示す車両用合わせガラスはフロントガラスに適用される車両用合わせガラスの例であり、図1は車両用合わせガラスを車内側から見た平面図である。図2は図1に示す車両用合わせガラスのX-X線における断面図である。車両用合わせガラスを、以下単に「合わせガラス」という。
図1および図2に示す、合わせガラス10Aは、互いに略同形、同寸の1対のガラス板1、2と、該1対のガラス板1、2に挟持される中間接着膜3Aを有する。中間接着膜3Aは、1対のガラス板1、2と略同形、同寸に形成される。合わせガラス10Aにおいてガラス板1は車外側に設けられ、ガラス板2は車内側に設けられる。中間接着膜3Aは、車内に配置され車外と光の信号の送受信を行う情報取得装置の前記信号の送受信のための光学開口部4を含む連続した一つの透過領域3yと、光学開口部4の全周の周囲にその一部を除いて設けられる遮光領域3xとを有する。
合わせガラス10Aが有する中間接着膜3Aにおける遮光領域3xは、中間接着膜3Aの周縁部の全体に帯状に設けられるとともに、上辺中央付近において、上辺の他の部分より幅広く設けられている。さらに、遮光領域3xは、中間接着膜3Aの上辺中央付近の幅広く設けられた部分の下辺が凹部を有するようにその一部が切り欠かれた形状である。該凹部で囲まれた領域、言い換えれば遮光領域3xの切り欠かれた領域が光学開口部4であり、透過領域3yの一部で構成される。すなわち、光学開口部4は3辺が遮光領域3xで囲まれた台形状の領域であり、光学開口部4は、その下辺で、透過領域3yの光学開口部4以外の領域と繋がって構成されている。
中間接着膜3Aにおける透過領域3yは、遮光領域3xを除く全領域である。合わせガラス10Aにおいては、中間接着膜3Aの透過領域3yは連続した一つの領域であり、遮光領域3xも連続した一つの領域である。このような構成とすることで、光学開口部4に対し、遮光領域3xから独立した透過領域を設ける必要がなくなり、中間接着膜3Aの製造における工数を少なくでき生産性の点で有利である。
なお、上記の遮光領域3xの形状において、中間接着膜3Aの上辺中央付近に遮光領域3xが幅広く設けられた部分の下辺に凹部を有する代わりに、左右の辺のいずれかに凹部、すなわち切り欠きを有する形状であってもよい。
本発明の合わせガラスにおいて光学開口部の位置は、フロントガラスにおいては、合わせガラス10Aと同様に、信号の送受信性の観点から上部中央付近とすることが多いがこれに限定されない。光学開口部4の周囲に遮光領域3xを有することから、光学開口部の位置は運転視野を妨げない位置とする。また、合わせガラスがフロントガラス以外のリヤガラス、サイドガラス、ルーフガラス等の車両用窓ガラスに用いられる場合、光学開口部の位置は各窓ガラスに応じて適宜調整すればよい。
本発明の合わせガラスにおいて、中間接着膜の遮光領域は、光学開口部の全周の周囲にその一部を除いて設けられる以外、配設領域は適宜選択できる。すなわち、遮光領域は少なくとも光学開口部の周囲に存在すればよい。中間接着膜の遮光領域は、光学開口部の全周の25~90%を取り囲むように設けられることが好ましく、30~80%を取り囲むように設けられることがより好ましく、40~75%を取り囲むように設けられることがさらに好ましい。
中間接着膜の遮光領域は、光学開口部の周囲以外に、合わせガラス10Aと同様に、合わせガラスの周縁部の全周に額縁状に設けられてもよく、周縁部の一部に帯状に設けられてもよい。フロントガラスの場合、合わせガラスの周縁部の全周に幅5~200mm程度の額縁状に設けられることが好ましい。その場合、中間接着膜の遮光領域の幅は、上下左右の辺で同じであっても異なってもよく、各辺内で幅の増減があってもよい。
合わせガラス10Aは、正面視で中間接着膜3Aの透過領域3yおよび遮光領域3xに略一致する透過領域10yおよび遮光領域10xを有する。合わせガラス10Aの遮光領域10xは可視光透過率が3%以下である。遮光領域10xの可視光透過率が3%以下であれば、光学開口部の周りの外光を十分に遮断できる。さらに、通常、光学開口部の近傍の車内に配置される情報取得装置や情報取得装置の取り付けを遮光領域にすることで、取り付け等に用いる接着剤の紫外線の照射による劣化が抑制される。また、車内に配置される情報取得装置や接着剤が見えなくなり意匠性が向上する。さらに、情報取得装置以外に車内に配置される部品に対しても同様の効果が得られる。
中間接着膜3Aにおける光学開口部4は、透過領域3yの一部であり、中間接着膜3Aにおける光学開口部と合わせガラス10Aにおける光学開口部は正面視で一致する。以下、合わせガラス10Aおよび中間接着膜3Aに共通して、光学開口部4として説明する。
合わせガラス10Aはフロントガラスである場合、透過領域10yは日射透過率(Te)が60%以下であり、かつ、可視光透過率(Tv)が70%以上であることが好ましい。日射透過率(Te)は55%以下がより好ましく、48%以下が特に好ましい。また、日射反射率(Re)は、5%以上が好ましく、7%以上が特に好ましい。さらに、熱吸収の量を表すAe(Ae=100-Te-Re)は、20%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、45%以上が特に好ましい。
可視光透過率(Tv)は72%以上がより好ましく、73%以上が特に好ましい。また、透過領域10yのヘイズ値は1.0%以下であることが好ましく、0.8%以下がより好ましく、0.6%以下が特に好ましい。
なお、日射透過率(Te)、日射反射率(Re)および可視光透過率(Tv)は、分光光度計等により、少なくとも300~2100nmが含まれる波長域の透過率、反射率を測定し、それぞれJIS R3106(1998年)およびJIS R3212(1998年)で規定される計算式から算出される値である。本明細書において、特に断りのない限り、日射透過率、日射反射率および可視光透過率は、上記の方法で測定、算出される日射透過率(Te)、日射反射率(Re)および可視光透過率(Tv)をいう。
また、合わせガラスがフロントガラス以外のリヤガラス、サイドガラス、ルーフガラス等の車両用窓ガラスに用いられる場合、透過領域10yは各窓ガラスに求められる光学特性に合せて特性を調整すればよい。なお、いずれの窓ガラスにおいても、遮光領域10xにおける可視光透過率は3%以下である。
光学開口部4において、可視光透過率(Tv)、日射透過率(Te)、日射反射率(Re)やヘイズ値は、特に制限されず、上記のとおり透過領域10yと同様とできる。ここで、光学開口部4においては、赤外線透過率、具体的には、分光光度計等により測定される600~1100nmの波長の光に対する平均透過率が30%以上であることが好ましく、40%以上がより好ましい。
上記赤外線透過率は光学開口部4に求められる特性である。したがって、このような光学開口部4に求められる特性に応じて、透過領域10yの光学開口部4のみを光学開口部4以外の領域と異なる特性に変更してもよい。例えば、後述する透過領域10yの中間接着層3Aの構成材料を、適宜、光学開口部4の領域のみ光学開口部4以外の領域の材料と異なる材料に変更することができる。具体的には光学開口部4に対応する箇所の中間接着層3Aを、光学開口部4以外の領域とは別の中間接着層に置き換えても構わない。
光学開口部4は、車内に設置される情報取得装置が信号の送受信を行う際に、該信号が実際に透過する信号透過領域の全域をその領域内に含むように設けられる。光学開口部4の大きさは、好ましくは、光学開口部4の外周と信号透過領域の外周の距離が、最も短い箇所でも1mm以上であるように、最も長い箇所でも10mm以下であるように設計される。
本発明の車両用合わせガラスにおいては、光学開口部と境界をなす遮光領域が、中間接着膜の遮光領域により形成されていることから、光学開口部と遮光領域の境界は歪みを殆ど有することがない。したがって、光学開口部の形成領域は信号透過領域と一致していてもよい。しかしながら、情報取得装置の取り付け位置のずれ等により信号透過領域が設計の位置よりずれた場合や、光学開口部の形成位置が設計の位置よりずれた場合等に信号の送受信の不具合が発生する懸念がある。したがって、光学開口部と信号透過領域の好ましい大きさおよび位置が上記のとおりとなる。
また、情報取得装置は、例えば、車内側のガラス板の車内側の主面の所定領域に取り付け可能である。合わせガラス10Aにおいては、情報取得装置の取り付け領域は、図1において破線で囲まれた取り付け領域Aとすることができる。取り付け領域Aは、正面視で光学開口部の外縁から外側の遮光領域10x内に設けられる。情報取得装置は、カメラやセンサ等の光学機器が筐体内に収容されて構成され、通常は、カメラやセンサ等の光学機器の位置が光学開口部4に対応するように位置合わせをしたうえで、筐体が取り付け領域Aに接着剤等を介して取り付けられる。
以下、合わせガラス10Aの各構成要素について説明する。
[ガラス板]
ガラス板1、2の厚みは、その組成、中間接着膜3Aの組成、合わせガラス10Aの用途によっても異なるが、一般的には0.1~10mmである。
ガラス板1、2のうち車内側となるガラス板2の厚みは、0.5~2.0mmが好ましく、0.7~1.8mmがより好ましい。車外側となるガラス板1の厚みは、耐飛石衝撃性が良好となることから、1.6mm以上が好ましい。両者の厚みの差は、0.3~1.5mmが好ましく、0.5~1.3mmがより好ましい。車外側となるガラス板1の厚みは、1.6~2.5mmが好ましく、1.7~2.1mmがより好ましい。ガラス板の板厚が薄いと、セラミックス遮光層を設けた近傍に透視像の歪みが一層発生しやすくなるため、本発明の効果が一層発揮される。よって、ガラス板1とガラス板2との板厚の合計が4.1mm以下であることが軽量化の観点から好ましく、3.8mm以下であることがより好ましく、3.6mm以下であることがさらに好ましい。
ガラス板1、2は、無機ガラス、有機ガラス(樹脂)から構成することができる。無機ガラスとしては、通常のソーダライムガラス(ソーダライムシリケートガラスともいう)、アルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が挙げられる。これらのうちでもソーダライムガラスが特に好ましい。無機ガラスとしては、例えば、フロート法等により成形されたフロート板ガラスが挙げられる。無機ガラスとしては、風冷強化、化学強化等の強化処理が施されたものも使用できる。
有機ガラス(樹脂)としては、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ハロゲン化ビスフェノールAとエチレングリコールとの重縮合物、アクリルウレタン樹脂、ハロゲン化アリール基含有アクリル樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、芳香族系ポリカーボネート樹脂等のポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート系アクリル樹脂等のアクリル樹脂が好ましく、ポリカーボネート樹脂がより好ましい。さらに、ポリカーボネート樹脂のなかでも、特に、ビスフェノールA系ポリカーボネート樹脂が好ましい。なお、上記樹脂は、2種以上が併用されてもよい。
ガラスは、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤等を含有してもよい。このようなガラスとして、グリーンガラス、紫外線吸収(UV)グリーンガラス等が挙げられる。なお、UVグリーンガラスは、SiO2を68質量%以上74質量%以下、Fe2O3を0.3質量%以上1.0質量%以下、かつFeOを0.05質量%以上0.5質量%以下含有し、波長350nmの紫外線透過率が1.5%以下、550nm以上1700nm以下の領域に透過率の極小値を有する。
ガラスは、透明であればよく、無色でも有色でもよい。また、ガラスは、2層以上が積層されたものでもよい。適用箇所にもよるが、無機ガラスが好ましい。
ガラス板1、2の材質は、同一でも異なってもよいが、同一であることが好ましい。ガラス板1、2の形状は、平板でもよいし、全面または一部に曲率を有してもよい。ガラス板1、2の大気に晒される表面には、撥水機能、親水機能、防曇機能等を付与するコーティングが施されてもよい。また、ガラス板1、2の対向面には、低放射性コーティング、赤外線遮光コーティング、導電性コーティング等、通常、金属層を含むコーティングが施されてもよい。
なお、車内側のガラス板2の車内側の主面には、光学開口部4を含む光学開口部4近傍に通電可能な導電層を有することが好ましい。なお、導電層はガラス板2の車外側の主面または、ガラス板1の車内側の主面に設けられてもよい。導電層は、例えば、銀ペースト焼成膜で構成される。導電層が光学開口部4の領域内に形成される場合は、信号の透過の妨げにならないように線状に形成されることが好ましい。導電層は、例えば、2つの端部を外部電源に接続することで、外気温が低く合わせガラス10Aが曇り易い環境下にある場合に、通電することで加熱して光学開口部4が曇ることを抑制することが可能である。
[中間接着膜]
中間接着膜3Aは、ガラス板1、2の互いに対向する主面の全面を接着する接着膜である。中間接着膜3Aは、上に説明した平面形状の透過領域3yと遮光領域3xからなる。
透過領域3yは、通常の合わせガラスの中間接着膜に用いられる熱可塑性樹脂を含む透明中間膜31からなる。熱可塑性樹脂の種類は特に制限されず、公知の中間接着膜を構成する熱可塑性樹脂の中から適宜選択することができる。
熱可塑性樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、単独でも、2種類以上が併用されてもよい。透明中間膜31は、熱可塑性樹脂を主成分として含有し、必要に応じてさらに可塑剤を含有する。
熱可塑性樹脂は、透明中間膜31に求められるガラス転移点、透明性、耐候性、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性等の諸性能のバランスを考慮して選択される。透明中間膜31のガラス転移点は、例えば、熱可塑性樹脂の種類、可塑剤量により調整できる。上記諸性能のバランスを考慮すると、透明中間膜31に用いる熱可塑性樹脂は、PVB、EVA、ポリウレタン樹脂等が好ましい。
透明中間膜31は、熱可塑性樹脂、可塑剤の他に、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、接着性調整剤、カップリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、脱水剤、消泡剤、帯電防止剤、難燃剤等の各種添加剤の1種類もしくは2種類以上を含有することができる。
中間接着膜3Aの遮光領域3xは、合わせガラス10Aの遮光領域10xにおける可視光透過率を3%以下とするために、3%以下の可視光透過率を有する。合わせガラス10Aにおいて、遮光領域3xは、従来のセラミックス遮光層が設けられていた領域の全てに設けられている。したがって、合わせガラス10Aにおいては、従来のセラミックス遮光層を有しない構成である。なお、本発明の合わせガラスにおいては、中間接着膜3Aの遮光領域3xと従来のセラミックス遮光層を組み合わせて用いてもよい。ただし、組み合わせる場合は、後述の別の例におけるように、セラミックス遮光層は、光学開口部4に隣接しないように設けられる。
遮光領域3xは、例えば、中間接着膜3Aの当該領域に、遮光領域10xにおいて可視光透過率が3%以下になるような着色中間膜34を設けることにより形成される。
着色中間膜34は、透過領域3yを構成する透明中間膜31の構成材料を着色することで作製できる。具体的には、上記透明中間膜31を構成する主として熱可塑性樹脂を含む組成物に着色剤を含有させることで着色中間膜34が得られる。着色中間膜34はガラス転移点を調整するための可塑剤を含有してもよい。
着色剤としては、可視光透過率を低下させるものであれば特に制限されず、染料、無機顔料、有機顔料等が挙げられる。これらの中でも、長期使用による退色のおそれが少ないことから無機顔料または有機顔料が好ましく、耐光性に優れることから無機顔料が好ましい。
有機顔料としては、アニリンブラック等の黒色顔料、アリザリンレーキ等の赤色顔料等が挙げられる。無機顔料としては、炭素系顔料、金属酸化物系顔料が挙げられる。例えば、カーボンブラック、アイボリーブラック、マルスブラック、ピーチブラック、ランプブラック、マグネタイト型四酸化三鉄等の黒色顔料、アンバー、バートンアンバー、イエローウォーカー、ヴァンダイクブラウン、シェンナ、バートンシェンナ等の茶色顔料、ベンガラ、モリブデンレッド、カドミウムレッド等の赤色顔料、赤口黄鉛、クロムバーミリオン等の橙色顔料、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー等の青色顔料、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、コバルトグリーン等の緑色顔料、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー等の黄色顔料、マンガンバイオレット、ミネラルバイオレット等の紫色顔料等が挙げられる。これらの着色剤は1種または2種以上を組合せて使用することができる。
着色剤の配合量は、遮光領域3xにより遮光領域10xの可視光透過率が3%以下になる量とする。着色中間膜34は、さらに、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、接着性調整剤、カップリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、脱水剤、消泡剤、帯電防止剤、難燃剤等の各種添加剤の1種類もしくは2種類以上を含有することができる。
着色中間膜34は、透明中間膜の表面に暗色で印刷層を形成して着色中間膜34とする方法で作製してもよい。暗色の印刷層の形成方法は、通常の、樹脂基材への有色の材料を用いた印刷方法が適用できる。有色の材料としては、上記着色剤と同様の有機顔料や無機顔料が挙げられる。なお、この場合の印刷層は、セラミックス遮光層のようにガラスの軟化点付近の温度での耐久性は必要ないため、例えば、カーボンブラックを含む有機顔料の使用が可能である。印刷層の厚さは、遮光領域10xの可視光透過率が3%以下になる厚さであればよく、概ね3~10μmとすることができる。
中間接着膜3Aの膜厚は、耐貫通性の確保、合せガラスの重量制限、取扱い性確保の観点から0.5~3.0mm程度とできる。中間接着膜3Aにおいて、遮光領域3xと透過領域3yの膜厚は同一となるように形成されることが好ましい。
遮光領域3xは、1対の透明中間接着層の間に遮光フィルムが挟持された構成であってもよい。図3は、合わせガラス10Aにおいて、中間接着膜3Aの遮光領域3xが、1対の透明中間接着層32、33の間に遮光フィルム6が挟持された変形例の上部中央付近の上下方向の断面図を示す。図3に示す合わせガラス10Aの変形例では、中間接着膜3Aの遮光領域3x以外は、図1、2に示す合わせガラス10Aと同様の構成とできる。
遮光フィルム6としては、遮光ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、遮光ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、遮光ポリメチルメタクリレート(PMMA)フィルム等が挙げられる。遮光フィルム6の膜厚としては、用いる遮光フィルムに応じて、得られる遮光領域3xにより遮光領域10xの可視光透過率が3%以下になる膜厚とする。透明中間接着層32、33は、透明中間膜31の構成と膜厚を除いて同様とできる。透明中間接着層32、33の膜厚は、透明中間接着層32、33と遮光フィルム6の膜厚として、透明中間膜31の膜厚と同じになるように調整されることが好ましい。
また、上記において、必要に応じて、透明中間接着層32または透明中間接着層33を設けずに、透明中間接着層33とガラス板2の間に、またはガラス板1と透明中間接着層32との間に遮光フィルム6を挟持する構成により遮光領域3xを構成してもよい。さらに、透明中間接着層32、33を設けずに、遮光フィルム6のみで遮光領域3xを構成してもよい。
中間接着膜3Aの透過領域3yを構成する透明中間膜は、図1、2に示す透明中間膜31のような単層構造に限定されない。例えば、透明中間接着層を積層した多層膜を、透過領域3yを構成する透明中間膜として使用してもよく、その場合、例えば、ガラス転移点の異なる透明中間接着層を積層した遮音性を有する多層膜を、透過領域3yを構成する透明中間膜として使用してもよい。図4は、合わせガラス10Aにおいて、中間接着膜3Aの透過領域3yがガラス転移点の異なる3層の透明中間接着層35、36、37で構成された変形例の上部中央付近の上下方向の断面図を示す。なお、図4に示す合わせガラス10Aではガラス板2側から順に透明中間接着層35、36、37が積層されている。図4に示す合わせガラス10Aの変形例では、中間接着膜3Aの透過領域3y以外は、図1、2に示す合わせガラス10Aと同様の構成とできる。
図4に示す変形例の中間接着膜3Aにおける透過領域3yの透明中間接着層35、36、37の構成は、例えば、透明中間接着層36をガラス転移点が15℃未満のコア層とし、透明中間接着層35、37をガラス転移点が15℃以上のスキン層とする構成が挙げられる。
ここで、本明細書におけるガラス転移点とは、周波数1Hz、動的せん断歪み0.015%、昇温速度:3℃/分、測定温度範囲:-40℃~80℃の条件で、動的粘弾性試験により検体のtanδ(損失弾性率/貯蔵弾性率)の温度依存性を測定した際のtanδのピーク温度のことをいう。
tanδは、例えば、厚み0.6mm、直径12mmの円盤状に成形した検体を準備し、該検体を上記条件の下、測定治具:パラレルプレート(直径12mm)を用いて、動的粘弾性測定装置により測定できる。動的粘弾性測定装置としては、例えば、アントンパール社製、回転式レオメーターMCR301が挙げられる。
図4に示す合わせガラス10Aの変形例においては、遮光領域3xは着色中間膜34の単層構造である。このような構成とすれば、多層膜の端部で発生しやすい発泡を抑制することができ好ましい。
さらに、図4に示す合わせガラス10Aの変形例の、中間接着膜3Aにおける遮光領域3xを多層膜の構成としてもよい。その場合、例えば、遮光領域3xの多層膜の少なくともひとつの層に所定の遮光性を持たせればよい。合わせガラス10Aにおいて、遮光領域3xを多層膜にした変形例の上部中央付近の上下方向の断面図を図5Aに示す。図5Aに示す合わせガラス10Aの変形例において、遮光領域3x以外の構成は、図4に示す合わせガラス10Aの変形例と同様である。
図5Aに示す合わせガラス10Aの変形例において、遮光領域3xは、透過領域3yのガラス板1側の透明中間接着層37のみを、着色中間膜34に置き換えた構成である。このように、遮光領域3xが透過領域3yの多層膜のうち1層のみを着色中間膜34に置き換えた構成の場合、該1層の着色中間膜34のみで遮光領域3xにより遮光領域10xの可視光透過率を3%以下とできるように着色剤の配合量を調整する。ここで、透明中間接着層37を置き換える着色中間膜34は、ガラス転移点が透明中間接着層37と同等であることが遮音性の点から好ましい。
図5Aに示す合わせガラス10Aの変形例において、着色中間膜34に置き換えられる層は、透明中間接着層35であっても透明中間接着層36であってもよい。さらにこれら3層のうちのいずれか2層であってもよく、3層全てが置き換えられた構成であってもよい。複数層の着色中間膜34が設けられる場合、遮光領域3xにより遮光領域10xの可視光透過率を3%以下とできるように各層の着色剤の配合量を調整する。なお、複数層の着色中間膜34が設けられる場合、各着色中間膜34における着色剤の配合量は同じでも異なってもよい。また、透明中間接着層37の場合と同様、透明中間接着層35を置き換える着色中間膜34は、ガラス転移点が透明中間接着層35と同等であり、透明中間接着層36を置き換える着色中間膜34は、ガラス転移点が透明中間接着層36と同等であるのが好ましい。
中間接着膜は、合わせガラスの平面形状と略一致する平面形状を有する透明中間膜と、該透明中間膜に対して中間接着膜の遮光領域3xに対応する領域にのみ積層された厚みが薄い着色中間膜とを有する構成でもよい。この場合、透明中間膜の着色中間膜が積層されていない領域が透過領域3yである。透明中間膜は、図1、2に示す透明中間膜のように単層膜であってもよく、図4に示すように透明中間接着層が積層された多層膜であってもよい。図5Bは、合わせガラス10Aにおいて、中間接着膜3Aを、合わせガラスの平面形状と略一致する平面形状を有する透明中間膜の遮光領域3xのみに薄い着色中間膜を積層した構成とした変形例の上部中央付近の上下方向の断面図を示す。
図5Bにおいて、中間接着膜3Aは、ガラス板2側から順に透明中間接着層35、36、37が積層された構成の透明中間膜を有する。透明中間接着層35、36、37は平面形状が合わせガラスの平面形状と略一致する以外は、図4に示す透明中間接着層35、36、37と同様にできる。図5Bにおいて、中間接着膜3Aは、透明中間接着層37のガラス板1側の主面上の遮光領域3xとなる領域に着色中間膜34を有する。なお、着色中間膜34は、透明中間接着層37上に設けられる代わりに、透明中間接着層35のガラス板2側の主面上の遮光領域3xとなる領域に設けられてもよい。
着色中間膜34は、例えば、図5Aにおける着色中間膜34と同様にポリビニルブチラール樹脂(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)等の熱可塑性樹脂組成物に無機顔料、有機顔料等の着色剤を分散させて得られる。着色剤を分散させて着色中間膜34とできる、熱可塑性樹脂フィルムとしては、特開2014-156390号公報に開示されたフィルムAが好適である。着色中間膜34においては、遮光領域3xにより遮光領域10xの可視光透過率を3%以下とできるように着色剤の配合量を調整する。
透明中間接着層35、36、37を合わせた透明中間膜の厚みは、上記のとおり0.5~3.0mm程度が好ましい。これに対して、着色中間膜34の厚みは20~80μmが好ましい。着色中間膜34の厚みが当該範囲であると、膜の取り扱い性がよく、また合わせガラス製造の脱気性も良好にできる。すなわち、図5Bに示すように、透明中間膜の着色中間膜34を有する領域と有しない領域の境界の段差が解消された合わせガラス10Aが得られる。
図5Cは、図5Bに示す合わせガラス10Aにおいて、着色中間膜34を透明中間膜の表面に暗色で印刷層を形成して着色中間膜34とした変形例の上部中央付近の上下方向の断面図を示す。図5Dに、図5Cに示す合わせガラス10Aの中間接着膜3Aの遮光領域3xの拡大断面図を示す。
図5Cおよび図5Dに示す合わせガラス10Aの変形例において、着色中間膜34の構成以外は、図5Bに示す合わせガラス10Aの変形例と同様にできる。図5Cおよび図5Dに示す着色中間膜34は、透明中間膜34aに印刷層34bが形成された構成である。透明中間膜34aは、図1、2に示す透明中間膜31と同様の材料で構成でき、特開2014-156390号公報に開示されたフィルムAが好適に使用できる。印刷層34bは、上に説明した印刷層と同様とできる。透明中間膜34aの厚みは20~80μmが好ましく、印刷層34bの厚みは3~10μmが好ましい。透明中間膜34aおよび印刷層34bの厚みが当該範囲であると、膜の取り扱い性がよく、また合わせガラス製造の脱気性も良好にできる。なお、図5Cおよび図5Dに示すように、着色中間膜34において印刷層34bがガラス板1の車内側面に接しない構成、すなわち、透明中間膜34aがガラス板1と接する構成が好ましい。このような構成とすることで、中間接着膜3Aとガラス板1との接着性が良好に保たれる。
なお、図5Cに示す着色中間膜34においては、透明中間膜34aの全面に印刷層34bが形成されている。すなわち、透明中間膜34aと印刷層34bの平面視における形状は一致する。着色中間膜34においては該構成に限定されず、印刷層34bの形成領域が中間接着膜3Aの遮光領域3xとなる領域と一致する限り、透明中間膜34aの形成領域は、印刷層34bの形成領域より大きくてもよい。例えば、図5Eに上部中央付近の上下方向の断面図で示す合わせガラス10Aの変形例では、着色中間膜34において、透明中間膜34aは、印刷層34bに対して、合わせガラス10Aの中央部に延在する構成である。着色中間膜34において厚みの大部分を占める透明中間膜34aの端部が光学開口部4近傍にあると、その影響により、光学開口部4近傍に歪が発生する可能性がある。図5Eに示す着色中間膜34の構成により、透明中間膜34aの端部を光学開口部4と所定距離だけ離間させることができ、カメラやセンサ等の光学機器への影響を防止できる。
合わせガラス10Aは、ガラス板1の車内面側に赤外線遮光コーティングを備える場合がある。図5Eに示す合わせガラス10Aの変形例として、ガラス板1の車内面側に赤外線遮光コーティングとして赤外線反射膜7を備える場合の例を図5Fに上部中央付近の上下方向の断面図で示す。図5Fに示す合わせガラス10Aは、ガラス板1の車内面側に赤外線反射膜7を有する以外は、図5Eに示す合わせガラス10Aと同様である。赤外線反射膜7は平面視で着色中間膜34の印刷層34bの形成領域と重ならないようにガラス板1の車内面の略全面に設けられる。赤外線反射膜7の端部が印刷層34bの形成領域内にあると、意匠性を損なう場合がある。また、赤外反射膜に由来する歪の光学開口部4への影響を抑えるためには、赤外反射膜7の端部と印刷層34bの端部の距離は、0mm以上5mm以内が好ましく、0mm以上3mm以内とすることがさらに好ましい。
例えば、ガラス板1の車内側面にセラミックス遮光層と赤外線反射層をともに形成する場合、セラミックス遮光層と赤外線反射層は形成方法および形成工程が異なり、厳密に両層を位置合わせすることが難しい。しかしながら、図5Fに示す合わせガラス10Aのように、着色中間膜34の印刷層34bにより合わせガラス10Aの遮光領域10xが形成される場合、印刷層34bと赤外線反射膜7の位置合わせが容易となる。
上に説明した透明中間膜34a上に印刷層34bが形成された着色中間膜34においては、印刷層34bは、光学開口部4に近い領域がドット状に設けられてもよい。ドットパターンは、後述のセラミックス遮光層におけるのと同様とできる。図5Gに、着色中間層34の印刷層34bが部分的にドットパターンを有し、ガラス板1の車内面側に赤外線反射層7を有する以外は、図5Eに示す合わせガラス10Aと同様の合わせガラス10Aの変形例の上部中央付近の上下方向の断面図を示す。図5Gに示す合わせガラス10Aにおいて、赤外線反射層7の端部は、印刷層34bのドットパターン形成領域に位置する。
例えば、ガラス板1の車内側面にセラミックス遮光層を光学開口部4に近い領域がドット状となるように形成し、該ドットパターン形成領域に重ねてガラス板1上に赤外線反射層を形成する場合、重なった部分の赤外線反射層の発色が悪く、外観性、意匠性が低下することがある。ガラス板1上にドット状にセラミックス遮光層を形成する代わりに、図5Gに示す合わせガラス10Aのように、中間接着膜3Aが有する印刷層34bにドットパターンを形成することで、上記の意匠性の低下を改善できる。
中間接着膜3Aは、図1、2に示す合わせガラス10Aの場合、遮光領域3xの形状に成形した着色中間膜34の内側に透過領域3yの形状に成形した透明中間膜31を嵌め込んで、通常の合わせガラスと同様の方法で、ガラス板1、2間に挟持させればよい。図3および図4に示す変形例においても、遮光領域3xと透過領域3yを別々に成形後、両者を組み合わせればよい。
図5Aに示す変形例においては、例えば、透明中間接着層35、36を積層後、透明中間接着層36上に遮光領域3xを構成する着色中間膜34と遮光領域3x以外の領域を埋める透明中間接着層37を積層して中間接着膜3Aとする。
具体的には、透明中間接着層35、36、37、着色中間膜34の各層を形成するための樹脂シートを製造する。これらの樹脂シートは、例えば、透過領域3yおよび遮光領域3xの両領域を同時に形成できるような連続した大きさとする。一方、透明中間接着層37を形成するための樹脂シートは、透過領域3yのみを形成する大きさとする。また、着色中間膜34を形成するための樹脂シートは、遮光領域3xのみを形成する大きさとする。
図5B、図5Cに示す変形例においては、例えば、透明中間接着層35、36、37を透過領域3yおよび遮光領域3xの両領域を同時に形成できるような連続した大きさとして積層する。得られた積層体の、透明中間接着層37上に遮光領域3xのみを形成する大きさの着色中間膜34を積層する。
各樹脂シートは、各層に適した組成を有する樹脂組成物をシート状に成形して製造することができる。成形条件は、熱可塑性樹脂の種類により適宜選択することができる。これらの樹脂シートは、所定の順序に積層して加圧下に加熱して中間接着膜3Aとすることができる。なお、中間接着膜3Aは、一部または全部を共押出しにより形成してもよい。
なお、中間接着膜3Aの透過領域3yは、光学開口部のみを、上記のとおり、赤外線透過率の高い透明中間膜に置き換えてもよい。
中間接着膜3Aは、車両の乗員の太陽光による眩しさを低減する、いわゆるシェードバンド層を含んでいてもよい。シェードバンド層は合わせガラス10Aが車両に取り付けられた時に上辺となる辺の周縁部に設けられる。
また、合わせガラス10Aにおいて、1対のガラス板1、2の間には、中間接着膜3A以外の機能フィルムが設けられてもよい。機能フィルムは、例えば、中間接着膜3Aを構成する層間に配置される。機能フィルムとして、赤外線遮光フィルム等が挙げられる。なお、赤外線遮光フィルムを設ける場合は、通常、光学開口部を除く領域に設けられる。
次に、本発明の合わせガラスにおいて、合わせガラスの遮光領域を、中間接着膜の遮光領域とガラス板上に設けられる遮光層を組み合わせて構成した例を説明する。ガラス板上に設けられる遮光層は、通常、セラミックス遮光層であり、以下の例は、遮光層をセラミックス遮光層として説明するが、これに限定されない。また、以下の例において、遮光層は車内側のガラス板の車内側の主面上に設けられているが、遮光層はいずれのガラス板のいずれの主面上に設けられてもよい。
図6は実施形態に係る合わせガラスの一例の平面図である。図6に示す合わせガラス10Bはフロントガラスに適用される車両用合わせガラスの例であり、図6は合わせガラス10Bを車内側から見た平面図である。図7は図6に示す合わせガラス10BのX-X線における断面図である。図8は図6に示す合わせガラス10Bの上部中央付近の拡大平面図である。図9は図8に示す合わせガラス10Bの上部中央付近のY-Y線断面図である。図10Aは図6に示す合わせガラス10Bの構成部材の平面図である。
合わせガラス10Bは、合わせガラス10Aにおける中間接着膜3Aと透過領域3yおよび遮光領域3xの形成領域が異なる中間接着膜3Bを有し、車内側のガラス板2の車内側の主面2aにセラミックス遮光層5を有する以外は、合わせガラス10Aと同様の構成である。なお、図10Aにおいて、(a)は車外側のガラス板1の、(b)は中間接着膜3Bの、(c)はセラミックス遮光層5が車内側の主面に形成された車内側のガラス板2のそれぞれ車内側から見た平面図を示す。以下の説明において、合わせガラス10Bの合わせガラス10Aと同様の構成については説明を省略する。
合わせガラス10Bにおける遮光領域10xは中間接着膜3Bの遮光領域3xとセラミックス遮光層5の形成領域を合せた領域であり、合わせガラス10Aの遮光領域10xと略同じ範囲である。遮光領域3xは、光学開口部4の全周の周囲にその一部を除いて設けられている。セラミックス遮光層5は、光学開口部4を含まず、かつ、光学開口部4に隣接しないように、ガラス板2の車内側の主面2aの周縁部に額縁状に設けられている。
合わせガラス10Bにおける遮光領域10xは、中間接着膜3Bの遮光領域3xにのみ対応する領域、セラミックス遮光層5にのみ対応する領域、両者が重なる領域のいずれにおいても可視光透過率が3%以下であり、遮光領域に求められる上記機能を有する。
中間接着膜3Bの遮光領域3xは、図8および図10A(b)に示すとおり、正面視で上辺が合せガラス10Bの上辺と一致する略台形の下辺に凹部を有する形状である。光学開口部4は、3辺が遮光領域3xで囲まれた台形状の透過領域3yの一部であり、光学開口部4は、その下辺で、透過領域3yの光学開口部4以外の領域と繋がって構成されている。
なお、中間接着膜3Bは、図10Bに示すとおり、上記と別な構成により遮光領域3xと透過領域3yを有してもよい。図10Bは、図6~図10Aに示される合せガラス10Bにおいて、中間接着層Bが異なる以外は同様の合せガラス10Bの変形例における中間接着層Bの構成部材の平面図である。図10B(b)に示す中間接着層Bは、図10B(b1)に示す透明中間膜34aに印刷層34bを有する着色中間膜34を、図10B(b2)に示す、ガラス板2側から順に透明中間接着層35、36、37が積層された構成の透明中間膜30の透明中間接着層37上に積層して構成される。着色中間膜34は、印刷層34bが遮光領域3xを構成する位置となるように、かつ、印刷層34bが透明中間接着層37と接するように透明中間膜30上に積層される。
透明中間膜34aに印刷層34bを有する着色中間膜34および透明中間接着層35、36、37が積層された透明中間膜30は、図5Eに示す合せガラス10Aの変形例における中間接着膜3Aと印刷層34bの形成領域が異なる以外略同様の構成であり、同様にして作製できる。図10B(b1)に示す着色中間膜34において、印刷層34bは、光学開口部4の全周の周囲にその一部を除いて設けられる、正面視で上辺が合せガラス10Bの上辺と一致する略台形の下辺に凹部を有する形状である。透明中間膜34aは、正面視で印刷層34bの外周より外側にその外周が位置する構成であり、透明中間膜34aの外周(端部)が光学開口部4内に存在しない大きさに形成される。
合わせガラス10Bにおけるセラミックス遮光層5は、図8および図10A(c)に示すとおり、正面視でその形成領域を光学開口部4の外縁近傍を含む形状とするために、上辺中央付近において、上辺の他の部分より幅広く設けられている。上記形状とすることでセラミックス遮光層5は、情報取得装置を取り付ける取り付け部Aを有することができる。セラミックス遮光層5上に情報取得装置を接着剤等により取り付けることで、情報取得装置の固定をより強固にでき、好ましい。
合わせガラス10Bにおいて、中間接着膜3Bの遮光領域3xとセラミックス遮光層5の形成領域は重なり部分を有するように形成されている。図7、8および9に遮光領域3xとセラミックス遮光層5の重なりの状態を示す。遮光領域3xとセラミックス遮光層5の重なり幅w1は、位置合わせ等を容易にするために1mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましい。一方、光学開口部4とセラミックス遮光層5の距離w2は、セラミックス遮光層5による光学開口部4への歪みの影響を抑えるために、3mm以上が好ましく、8mm以上がより好ましく、20mm以上がさらに好ましく、30mm以上が特に好ましい。
また、これらの条件を満たすために、遮光領域3xは光学開口部4の周囲に少なくとも幅wが4mm以上となるように設けられることが好ましく、幅wは8mm以上がより好ましい。
中間接着膜3Bの遮光領域3xと透過領域3yは、中間接着膜3Aにおける遮光領域3xと透過領域3yと形状が異なる以外は同様にできる。中間接着膜3Bの遮光領域3xは着色中間膜34により構成でき、透過領域3yは透明中間膜31により構成できる。また、上記合わせガラス10Aで示した中間接着膜3Aの変形例を、中間接着膜3Bに適用することも可能である。
セラミックス遮光層5は、従来公知の方法により、ガラス板2の車内面2aに形成できる。セラミックス遮光層5は、具体的には、耐熱性黒色顔料の粉末を低融点ガラス粉末とともに樹脂および溶剤に加えて混練した黒色セラミックスペーストを印刷等によって合わせガラス板2の車内面2aの所定の領域に塗布し、加熱して焼き付けることで形成できる。また、セラミックス遮光層の形成に用いる黒色顔料には、複数の有色顔料の組み合わせにより黒色となる顔料の組み合わせも含まれる。セラミックス遮光層5の厚みは、8~20μm程度が好ましく、10~15μmがより好ましい。
セラミックス遮光層5は、光学開口部4に近い領域がドット状に設けられてもよい。ドットパターンは従来公知のドットパターンが適用できる。例えば、ドットの形状は、円形に限定されず、楕円、長方形、多角形、星形等とすることもできる。また、ドットの部分を透明にして、他の部分にセラミックス遮光層を設けるドットパターンとすることもできる。セラミックス遮光層5をドットパターンで設けることにより、セラミックス遮光層5による光学開口部4への歪みの影響をより低減できる。上記のドットパターンを設ける領域は、セラミックス遮光層5の光学開口部4に近い端部から幅10mm以上の領域とするのが好ましく、幅20mm以上の領域がより好ましく、幅30mm以上の領域がさらに好ましい。
中間接着膜3Bの遮光領域3xとセラミックス遮光層5を有する合せガラス10Bにおいて、中間接着膜3Bの遮光領域3xの平面形状は図8に示す形状に限定されない。図11は、合せガラス10Bにおいて、合せガラス10Bと中間接着膜3Bの遮光領域3xの形状が異なる変形例の上部中央付近の拡大平面図を示す。図11に示す変形例は、中間接着膜3Bの遮光領域3xが、光学開口部4を囲む限られた範囲に形成された例である。中間接着膜3Bの遮光領域3xの形成領域は、合せガラス10Bとして求められる遮光領域10xの領域に応じて、セラミックス遮光層5の形成領域との組み合わせにおいて、適宜選択できる。セラミックス遮光層5の形成領域も同様である。
合せガラス10Bにおける、別の変形例の平面図を図12に示す。図12に示す合せガラス10Bの変形例は、光学開口部4を2個有する例である。該変形例においてはセラミックス遮光層5の形成領域と中間接着膜3Bの遮光領域3xの形成領域が異なる以外は、合せガラス10Bの構成と同様にできる。
図12に示す合せガラス10Bの変形例において、セラミックス遮光層5の形成領域は図12に示される領域であり、中間接着膜3Bの遮光領域3xは、例えば、それぞれの光学開口部4の周囲に、図8で示す形状や図11に示す形状で形成可能である。遮光領域3xは、あるいは、これらが連続して設けられた形状であってもよい。光学開口部4の数が3個以上の場合も、同様に、少なくとも光学開口部4の周囲にその全周の一部を除くように中間接着膜3Bの遮光領域3xを設け、それ以外の合せガラス10Bに求められる遮光領域10xをセラミックス遮光層5で形成する構成とすればよい。いずれの場合においても、中間接着膜3Bの遮光領域3xとセラミックス遮光層5の重なり幅、セラミックス遮光層5と光学開口部4の距離等は上記と同様の範囲とするのが好ましい。
なお、合せガラス10Aにおいても、光学開口部4を複数、例えば、図12に示す合せガラス10Bの変形例が有するように2個有する場合は、図12に示す合せガラス10Bの変形例の遮光領域10xの形状に中間接着膜3Aの遮光領域3xを形成する等で対応可能である。
合わせガラス10A、10Bが遮音性の中間接着膜3A、3Bを有する場合、そのSAE J1400に準拠して測定されるコインシデンス領域における音響透過損失は、35dB以上が好ましく、42dB以上がより好ましい。音響透過損失が35dB以上であれば、遮音性に優れると評価できる。
合わせガラス10A、10Bは、公知の方法により製造できる。すなわち、合わせガラス10Aにおいては、1対のガラス板1、2の間に中間接着膜3Aを配置して前駆体とし、これをゴムバッグのような真空バッグの中に挿入する。そして、減圧しながら70~110℃に加熱することで、1対のガラス板1、2を中間接着膜3Aにより接着する。その後、必要に応じて、圧着処理として加熱加圧を行う。圧着処理により、さらに耐久性を向上させることができる。
また、合わせガラス10Bにおいては、合わせガラス10Aの製造方法において、ガラス板2として、ガラス板2の一方の主面に予め上記の方法でセラミックス遮光層5を形成した、セラミックス遮光層5付きガラス板2を用い、中間接着膜3Aに替えて中間接着膜3Bを用い、セラミックス遮光層5が中間接着膜3Bと反対側になるようにセラミックス遮光層5付きガラス板2を積層する以外は、上記合わせガラス10Aと同様の方法で製造できる。
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明される実施例に限定されない。以下の実施例1および比較例1において、図13に平面図を示す、透過領域50yと遮光領域50xとを有する合せガラス50を作製した。実施例1においては中間膜により遮光領域50xを構成し、比較例1ではセラミックス遮光層により遮光領域50xを構成した。
[実施例1]
中間膜として、合せガラス50の透過領域50yに対応する透過領域と、合せガラス50の遮光領域50xに対応し、3%以下の可視光透過率を有する遮光領域とを有するものを用意した。
透過領域に用いられる中間膜は、車外側より第1のスキン層(厚み0.33mm)、コア層(厚み0.1mm)、第2のスキン層(厚み0.33mm)をこの順に有するものとした。
なお、各スキン層の組成は同一であり、いずれもPVB(ガラス転移点;30℃)からなる。また、コア層はPVB(ガラス転移点;3℃)からなる。スキン層、コア層は、いずれもPVBからなる樹脂シートを積層して形成した。合計の厚みは0.76mmであった。
遮光領域に用いられる中間膜は、単層の構造であり、PVB(ガラス転移点;30℃)と着色剤とを含有するものとした。着色剤として、カーボンブラックを用いた。着色剤の含有量は、PVBおよび着色剤の合計中、0.1質量%とし、厚みは0.76mmとした。
なお、中間膜は、以下のようにして作製した。まず、横1500mm、縦1000mmの大きさを持つ透過領域用中間膜を準備し、長辺側中央から図13に示す形状で遮光領域に相当する部分を切り出した。ついで、切り出した遮光領域に相当する部分と同様の大きさを持つ遮光領域用中間膜を切り出し、前述の透過領域用中間膜にはめ込んで、周辺の一部が着色剤を含有する遮光中間膜で囲まれた光学開口部を形成した。この工程は、遮光領域用中間膜の内部をさらにくり抜き、別の透過領域用中間膜をはめ込んで光学開口部周辺全体に遮光領域用中間膜を配置する工程に比べ、大幅に生産性を向上させることができた。
その後、ホットプレス成形機を用いてプレスを行うことにより中間膜を製造した。プレス条件は、150℃、300秒間、プレス圧50kg/cm2とした。なお、上記した各層の厚みは、プレス後の厚みである。
次に、車外側となるガラス板(厚さ2.0mm)と車内側となるガラス板(厚さ2.0mm)との間に中間膜を配置して積層体とした。車外側および車内側のガラス板は、いずれもソーダライムガラスからなり、1500×1000mmの大きさとした。
その後、積層体を真空バッグに入れて、真空バッグ内が-60kPa以下の減圧度となるように脱気を行いながら110℃に加熱して圧着を行った。さらに、温度140℃、圧力1.3MPaの条件下で圧着を行った。このようにして、透過領域と遮光領域とを有する中間膜が一対のガラス板に挟持された合わせガラス50を製造した。
[比較例1]
中間膜として、全体が実施例1の透過領域と同様の積層構造を有するもの、すなわち透過領域のみで構成される中間膜を用いるとともに、車内側となるガラス板の車内側表面に実施例1に用いた中間膜の遮光領域と同一形状、すなわち合せガラス50の遮光領域50xに対応する形状のセラミックス遮光層を設けたことを除いて、実施例1と同様にして合わせガラス50を製造した。
なお、セラミックス遮光層は、車内側となるガラス板にセラミックスペーストを塗布し、焼き付けて形成した。セラミックスペーストには顔料とガラスフリットを用い、実施例1の遮光領域に相当する部分にスクリーン印刷により塗布した。また、焼き付けは、800℃の条件により行った。
次に、実施例1および比較例1の合わせガラスについて、以下のようにして透過像の歪みを評価した。まず、図14に示すように、合わせガラスを自動車に取り付けるときと同様の角度に傾斜させて配置するとともに、その車外側にゼブラパターン60を配置した。ゼブラパターン60は、白地に複数の黒線61が設けられたものである。黒線61は、ゼブラパターン60の下辺に対して45度の角度となるように、かつ互いに平行となるように設けた。
図15Aは、ゼブラパターン60を合わせガラス50の車内側から見た例を示したものである。なお、図15Aは、図13の合せガラス50において点線で囲んだ付近を拡大して示し、ゼブラパターン60に歪みが発生した状態を示している。ここで、合わせガラス50は、透過領域50yと遮光領域50xとを有する。透過領域50yは、実施例1の場合、中間膜の透過領域が位置する部分であり、比較例1の場合、セラミックス遮光層が設けられていない部分である。一方、遮光領域50xは、実施例1の場合、中間膜の遮光領域が位置する部分であり、比較例1の場合、セラミックス遮光層が設けられている部分である。
通常、図示されるように、透過領域50yと遮光領域50xとの境界51付近でゼブラパターン60の黒線61が湾曲するように歪んで見える。このため、黒線61の左辺をそのまま延長した延長線Lが境界51に交わる位置と、実際に黒線61が境界51に交わる位置との距離を歪み(W)として評価した。
その結果、比較例1の合わせガラスは、歪み(W)が7mmと大きくなることが認められた。一方、実施例1の合わせガラスは、図15Bに示すように、歪み(W)が0mmと抑制されていること、すなわち、黒線61が歪まずに直線に見えることが認められた。このような違いは、セラミックス遮光層を形成するときの焼き付けに起因すると考えられる。実施例1の合わせガラスは焼き付けを行う必要がないことから、歪みの発生が抑制されたと考えられる。