以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
本明細書においては、半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は重力方向、または、半導体装置の実装時における基板等への取り付け方向に限定されない。
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。本明細書では、半導体基板の上面と平行な面をXY面とし、半導体基板の深さ方向をZ軸とする。
各実施例においては、第1導電型をN型、第2導電型をP型とした例を示しているが、第1導電型をP型、第2導電型をN型としてもよい。この場合、各実施例における基板、層、領域等の導電型は、それぞれ逆の極性となる。
図1aは、本実施形態に係る半導体装置100の上面の一例を部分的に示す図である。本例の半導体装置100は、トランジスタ部70およびダイオード部80を備える半導体チップである。トランジスタ部70は、IGBT等のトランジスタを含む。ダイオード部80は、半導体基板の上面においてトランジスタ部70と隣接して設けられ、FWD(Free Wheel Diode)等のダイオードを含む。境界部90は、トランジスタ部70のうちダイオード部80と隣り合う領域である。図1aにおいては、チップ端部周辺のチップ上面を示しており、他の領域を省略している。
また、図1aにおいては、半導体装置100における半導体基板の活性領域を示すが、半導体装置100は、活性領域を囲んでエッジ終端構造部を有してよい。活性領域は、半導体装置100をオン状態に制御した場合に電流が流れる領域を指す。エッジ終端構造部は、半導体基板の上面側の電界集中を緩和する。エッジ終端構造部は、例えばガードリング、フィールドプレート、リサーフおよびこれらを組み合わせた構造を有する。
本例の半導体装置100は、半導体基板の内部に設けられ、且つ、半導体基板の上面に露出するゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15を備える。また、本例の半導体装置100は、半導体基板の上面の上方に設けられたエミッタ電極52およびゲート金属層50を備える。エミッタ電極52およびゲート金属層50は、互いに分離して設けられる。
エミッタ電極52およびゲート金属層50と、半導体基板の上面との間には層間絶縁膜が形成されるが、図1aでは省略している。本例の層間絶縁膜には、コンタクトホール56、コンタクトホール49およびコンタクトホール54が、当該層間絶縁膜を貫通して形成される。
また、エミッタ電極52は、コンタクトホール56を通って、ダミートレンチ部30内のダミー導電部と接続される。エミッタ電極52とダミー導電部との間には、不純物がドープされたポリシリコン等の、導電性を有する材料で形成された接続部25が設けられてよい。接続部25と半導体基板の上面との間には、酸化膜等の絶縁膜が形成される。
ゲート金属層50は、コンタクトホール49を通って、ゲートランナー48と接触する。ゲートランナー48は、不純物がドープされたポリシリコン等で形成される。ゲートランナー48は、半導体基板の上面において、ゲートトレンチ部40内のゲート導電部と接続される。ゲートランナー48は、ダミートレンチ部30内のダミー導電部とは接続されない。本例のゲートランナー48は、コンタクトホール49の下方から、ゲートトレンチ部40の先端部まで形成される。ゲートランナー48と半導体基板の上面との間には、酸化膜等の絶縁膜が形成される。ゲートトレンチ部40の先端部において、ゲート導電部は半導体基板の上面に露出している。ゲートトレンチ部40は、ゲート導電部の当該露出した部分にて、ゲートランナー48と接触する。
エミッタ電極52およびゲート金属層50は、金属を含む材料で形成される。例えば、各電極の少なくとも一部の領域は、アルミニウムまたはアルミニウム‐シリコン合金で形成される。各電極は、アルミニウム等で形成された領域の下層にチタンやチタン化合物等で形成されたバリアメタルを有してよい。また、各電極は、コンタクトホール内においてタングステン等で形成されたプラグを有してもよい。
1つ以上のゲートトレンチ部40および1つ以上のダミートレンチ部30は、所定の配列方向(本例ではY軸方向)に沿って所定の間隔で配列される。本例のゲートトレンチ部40は、半導体基板の上面に平行であって配列方向と垂直な延伸方向(本例ではX軸方向)に沿って延伸する2つの延伸部分39と、2つの延伸部分39を接続する接続部分41を有してよい。接続部分41の少なくとも一部は、曲線状に形成されることが好ましい。ゲートトレンチ部40の2つの延伸部分39の端部を接続することで、延伸部分39の端部における電界集中を緩和できる。ゲートランナー48は、ゲートトレンチ部40の接続部分41において、ゲート導電部と接続してよい。
本例のダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40と同様に半導体基板の上面においてU字形状を有してよい。即ち、本例のダミートレンチ部30は、延伸方向に沿って延伸する2つの延伸部分29と、2つの延伸部分29を接続する接続部分31を有してよい。
エミッタ電極52は、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15の上方に形成される。ウェル領域11は第2導電型である。ウェル領域11は、ゲート金属層50が設けられる側の活性領域の端部から、予め定められた範囲で形成される。ウェル領域11の拡散深さは、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の深さよりも深くてよい。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の、ゲート金属層50側の一部の領域は、ウェル領域11に形成される。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の延伸方向の端の底は、ウェル領域11に覆われてよい。
トランジスタ部70において、コンタクトホール54は、コンタクト領域15およびエミッタ領域12の各領域の上方に形成される。ダイオード部80において、コンタクトホール54は、ベース領域14の上方に形成される。いずれのコンタクトホール54も、X軸方向両端に配置されたベース領域14およびウェル領域11の上方には配置されていない。
半導体基板の上面と平行な方向において、各トレンチ部の延伸方向と垂直な方向には、各トレンチ部に隣接してメサ部が設けられる。メサ部とは、隣り合う2つのトレンチ部に挟まれた半導体基板の部分であって、半導体基板の上面から、各トレンチ部の最も深い底部の深さまでの部分であってよい。各トレンチ部の延伸部分を1つのトレンチ部としてよい。つまり、2つの延伸部分に挟まれる領域をメサ部としてよい。
トランジスタ部70においては、各トレンチ部の延伸方向に垂直な配列方向(本例ではY軸方向)において、各トレンチ部の一方の側に隣接して第1メサ部60が設けられる。また、配列方向において各トレンチ部の他方の側に隣接して第2メサ部62が設けられる。また、トランジスタ部70のダイオード部80に隣り合う領域には境界部90が設けられる。境界部90は、境界メサ部64を有する。境界部90は、ダイオード部80とは逆側において境界メサ部64と隣接する第2メサ部62を有してもよい。一例として、境界部90にはダミートレンチ部30が配置されており、ゲートトレンチ部40が配置されていない。トランジスタ部70のうち、境界部90以外の領域には、ゲートトレンチ部40が配置されており、ダミートレンチ部30が配置されていない。また、ダイオード部80においては、隣り合うダミートレンチ部30に挟まれた領域にダイオードメサ部66が設けられる。ダイオード部80において、一つのダイオードメサ部66にコンタクトホール54が複数形成されてよい。トランジスタ部70においても、一つの第2メサ部62にコンタクトホール54が複数形成されてもよい。
第1メサ部60および第2メサ部62は、各トレンチ部の延伸方向に垂直な配列方向に交互に設けられてよい。各第1メサ部60および各第2メサ部62のX軸方向における両端部には、一例としてベース領域14が設けられている。なお、図1aにおいては、X軸方向の一方の端部のみを示している。
第1メサ部60の上面には、ゲートトレンチ部40と隣接してエミッタ領域12が設けられる。エミッタ領域12は、第1メサ部60の+Y軸方向に接するゲートトレンチ部40に接し、第1メサ部60の-Y軸方向に接するゲートトレンチ部40に接する。エミッタ領域12は、第1メサ部60を挟むように接する2本のゲートトレンチ部40をつなぐように形成されてよい。本例のエミッタ領域12はN+型である。
また、第1メサ部60の上面には、ベース領域14よりもドーピング濃度の高い第2導電型のコンタクト領域15が設けられる。コンタクト領域15は、第1メサ部60の+Y軸方向に接するゲートトレンチ部40に接し、第1メサ部60の-Y軸方向に接するゲートトレンチ部40に接する。コンタクト領域15は、第1メサ部60を挟むように接する2本のゲートトレンチ部40をつなぐように形成されてよい。
第1メサ部60において、エミッタ領域12およびコンタクト領域15は、ゲートトレンチ部40の延伸方向に交互に隣接して設けられてよい。第1メサ部60の上面において、エミッタ領域12はダミートレンチ部30と隣接して設けられてよく、離れて設けられてもよい。図1aの例におけるエミッタ領域12は、ダミートレンチ部30と隣接して設けられている。
第2メサ部62の上面には、ベース領域14よりもドーピング濃度の高い第2導電型のコンタクト領域15が設けられる。また、第2メサ部62の上面には、ゲートトレンチ部40と隣接してエミッタ領域12が設けられてよいが、設けられなくてもよい。図1aは、第2メサ部62の上面にエミッタ領域12が設けられない一例を示している。第2メサ部62の上面において、コンタクト領域15はダミートレンチ部30と隣接して設けられてよく、離れて設けられてもよい。図1aの例におけるコンタクト領域15は、ダミートレンチ部30と隣接して設けられている。
半導体装置100は、半導体基板の内部において、ベース領域14の下方に第1導電型の蓄積領域16を有する。図1aにおいて、蓄積領域16が形成される範囲を破線で示している。蓄積領域16は、半導体基板の上面視で、-X軸方向の端のコンタクト領域15とコンタクトホール54とが重なる領域から、+X軸方向側に形成される。なお、第2メサ部62には、蓄積領域16が設けられなくてもよい。
第2メサ部62のY軸方向の幅Wwmは、第1メサ部60のY軸方向の幅Wmよりも大きい。Wwmとは、XY面内において、第2メサ部62を挟む2つのトレンチ部に挟まれた、半導体基板のY軸方向の幅である。Wmとは、XY面内において、第1メサ部60を挟む2つのトレンチ部に挟まれた、半導体基板のY軸方向の幅である。Wwmは、Wmの2倍以上あってよく、5倍以上あってもよい。
境界メサ部64の上面には、ベース領域14よりドーピング濃度の高い第2導電型のコンタクト領域15が設けられる。当該コンタクト領域15は、境界メサ部64のX軸方向における両端部に設けられるベース領域14に挟まれる領域全体に設けられてよい。
ダイオードメサ部66の上面には、X軸方向における両端部にコンタクト領域15が設けられる。また、当該コンタクト領域15に挟まれる領域にベース領域14が設けられる。ベース領域14は、当該コンタクト領域15に挟まれる領域全体に設けられてよい。
本例の半導体装置100は、ダイオード部80においてダミートレンチ部30が設けられる。本例では、一例として、それぞれのダミートレンチ部30の直線状の延伸部分29が接続部分31で接続される。それぞれのダミートレンチ部30に挟まれる領域に、ダイオードメサ部66が設けられる。
ダイオードメサ部66には、エミッタ領域12が形成されなくてよく、されてもよい。本例ではエミッタ領域12が形成されない。ダイオードメサ部66には、コンタクト領域15またはベース領域14が、ダイオードメサ部66を挟む一方のダミートレンチ部30から、他方のダミートレンチ部30に渡って形成されている。即ち、半導体基板の上面において、ダイオードメサ部66のY軸方向の幅と、ダイオードメサ部66に設けられたコンタクト領域15またはベース領域14のY軸方向の幅は等しい。
ダイオード部80は、半導体基板の下面側において、第1導電型のカソード領域82を有する。本例のカソード領域82はN+型である。図1aに、半導体基板の上面視でカソード領域82が設けられる領域を破線部で示している。ダイオード部80は、カソード領域82を半導体基板の上面に投影した領域であってよい。カソード領域82を半導体基板の上面に投影した領域は、コンタクト領域15から+X軸方向に離れていてよい。
ダイオード部80のうち、半導体基板の下面の隣接する領域においてカソード領域82が形成されていない領域には、P+型のコレクタ領域が形成されてよい。本例では、半導体基板の下面のカソード領域82を投影した半導体基板の上面のダミートレンチ部30またはダイオードメサ部66について、当該ダイオードメサ部66のコンタクトホール54の外周側(-X軸方向の向き)の端部を半導体基板の下面に投影した位置には、コレクタ領域が形成されている。一例として、半導体基板の下面の一部にカソード領域82が形成されたダミートレンチ部30またはダイオードメサ部66で、ダミートレンチ部30の延伸方向の端部(U字状につながる部分も含む)までのダミートレンチ部30またはダイオードメサ部66は、半導体基板の下面にコレクタ領域が形成されていても、便宜的にダイオード部80としてよい。
トランジスタ部70は、コレクタ領域を半導体基板の上面に投影した領域のうち、トレンチ部またはメサ部が形成されている領域であってよい。また、トランジスタ部70のうち、ダミートレンチ部30、および、ダミートレンチ部30で挟まれたメサ部が形成されている領域を、境界部90としてよい。
図1bは、図1aにおけるa-a'断面の一例を示す図である。a-a'断面は、トランジスタ部70およびダイオード部80において、エミッタ領域12、コンタクト領域15およびベース領域14を通過するYZ面である。本例の半導体装置100は、a-a'断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。エミッタ電極52は、半導体基板10の上面21および層間絶縁膜38の上面に形成される。
コレクタ電極24は、半導体基板10の下面23に形成される。エミッタ電極52およびコレクタ電極24は、金属等の導電材料で形成される。本明細書において、エミッタ電極52とコレクタ電極24とを結ぶ方向を深さ方向(Z軸方向)と称する。
半導体基板10は、シリコン基板であってよく、炭化シリコン基板であってよく、窒化ガリウム等の窒化物半導体基板等であってもよい。本例の半導体基板10はシリコン基板である。
本例の半導体基板10は、第1導電型のドリフト領域18を備える。本例のドリフト領域18はN-型である。ドリフト領域18は、他のドーピング領域が形成されずに残存した領域であってよい。また、ドリフト領域18の下方にはN+型のバッファ領域20が形成される。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。バッファ領域20は、ベース領域14の下面側から広がる空乏層が、P+型のコレクタ領域22およびN+型のカソード領域82に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。
ダイオード部80は、バッファ領域20の下方にN+型のカソード領域82を有する。カソード領域82は、トランジスタ部70のコレクタ領域22と同じ深さに設けられてよい。カソード領域82がトランジスタ部70のコレクタ領域22と同じ深さに設けられることにより、ダイオード部80は、インバータ等の電力変換回路で、他の半導体装置100のトランジスタ部70がターンオフする時に、逆方向に導通する還流電流を流す還流ダイオード(FWD)として機能してよい。
トランジスタ部70において、バッファ領域20の下方には、P+型のコレクタ領域22が形成される。当該コレクタ領域22は、境界メサ部64の下面23側の領域まで延伸していてよい。境界メサ部64の下面23までコレクタ領域22が延伸していることにより、トランジスタ部70のエミッタ領域12と、ダイオード部80のカソード領域82との距離を確保することができる。このため、トランジスタ部70のエミッタ領域12を含むゲート構造部からドリフト領域18に注入される電子が、ダイオード部80のカソード領域82に流出するのを防ぐことができる。
本例においては、カソード領域82が境界メサ部64の直下まで設けられる場合と比べて、境界メサ部64のコンタクト領域15と、ダイオード部80のカソード領域82との距離も長くすることができる。これにより、ダイオード部80が導通するときに、ベース領域14よりも高いドーピング濃度のコンタクト領域15から、カソード領域82への正孔の注入を抑えることができる。
第1メサ部60においては、ドリフト領域18の上方に第1導電型の蓄積領域16が設けられる。蓄積領域16は、ゲートトレンチ部40に隣接して設けられる。蓄積領域16のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。蓄積領域16を設けることで、キャリア注入促進効果(IE効果)を高めて、オン電圧を低減することができる。
第1メサ部60においては、蓄積領域16の上方に第2導電型のベース領域14が設けられる。ベース領域14は、ゲートトレンチ部40に隣接して設けられる。さらに、第1メサ部60においては、ベース領域14と上面21との間にエミッタ領域12が設けられる。エミッタ領域12は、ゲートトレンチ部40と隣接して設けられる。エミッタ領域12のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。エミッタ領域12のドーパントの一例はヒ素(As)である。
第2メサ部62においては、ドリフト領域18の上方に第2導電型の中間領域17が設けられる。中間領域17は、ゲートトレンチ部40に隣接して設けられる。また、第2メサ部62においては、中間領域17の上方に第1導電型の蓄積領域16が設けられてよいが、設けられなくてもよい。図1bは、蓄積領域16が設けられる一例を示している。また、第2メサ部62の上面21において、中間領域17の上方にコンタクト領域15が設けられる。コンタクト領域15は、ゲートトレンチ部40と隣接して設けられる。コンタクト領域15は、半導体基板10の深さ方向において、第1メサ部60のエミッタ領域12よりも深く設けられてよい。
境界メサ部64においては、ドリフト領域18の上方に第1導電型の蓄積領域16が設けられる。蓄積領域16は、ゲートトレンチ部40に隣接して設けられる。また、境界メサ部64においては、蓄積領域16の上方に第2導電型のコンタクト領域15が設けられる。コンタクト領域15は、ゲートトレンチ部40に隣接して設けられる。境界メサ部64には、エミッタ領域12が設けられなくてよい。
本例の半導体装置100においては、複数のゲートトレンチ部40が第2メサ部62を介して隣り合って設けられる。隣り合うゲートトレンチ部40の間にはダミートレンチ部30が設けられなくてよい。なお、図1bのダイオード部80のY軸方向負側には、不図示のトランジスタ部70が存在してよい。ダイオード部80とトランジスタ部70とは、Y軸方向において交互に配置されてよい。それぞれのトランジスタ部70において、境界部90以外の領域には、ゲートトレンチ部40が設けられ、ダミートレンチ部30が設けられていなくてよい。つまり、それぞれのトランジスタ部70において、ダイオード部80との境界部90以外には、ダミートレンチ部30が設けられていない。ダミートレンチ部30が少なくすることで、ダミートレンチ部30の絶縁膜のスクリーニング等を効率よく実行できる。また、第2メサ部62のY軸方向の幅Wwmは、第1メサ部60のY軸方向の幅Wmよりも大きい。Wwmは、Wmの2倍以上あってよい。
トランジスタ部70の境界メサ部64と隣り合う領域においては、ダミートレンチ部30が設けられてよい。また、ダイオード部80においては、ダミートレンチ部30が設けられてよい。
ダイオードメサ部66においては、ドリフト領域18の上方に第2導電型の中間領域17が設けられてよい。中間領域17は、ダミートレンチ部30に隣接して設けられてよい。また、ダイオードメサ部66においては、中間領域17の上方に第1導電型の蓄積領域16が設けられてよい。蓄積領域16は、ダミートレンチ部30に隣接して設けられてよい。また、ダイオードメサ部66においては、蓄積領域16の上方にベース領域14が設けられてよい。ダイオードメサ部66においては、エミッタ領域12は設けられてもよいし、設けられなくてもよい。
上面21には、1つ以上のゲートトレンチ部40および1つ以上のダミートレンチ部30が形成される。各トレンチ部は、上面21からドリフト領域18まで設けられる。エミッタ領域12、コンタクト領域15および蓄積領域16の少なくともいずれかが設けられている領域においては、各トレンチ部はこれらの領域も貫通して、ドリフト領域18に到達する。トレンチ部がドーピング領域を貫通するとは、ドーピング領域を形成してからトレンチ部を形成する順序で製造したものに限定されない。トレンチ部を形成した後に、トレンチ部の間にドーピング領域を形成したものも、トレンチ部がドーピング領域を貫通しているものに含まれる。
ダミートレンチ部30は、図1bにおいて、ゲートトレンチ部40と同一の構造を有してよい。ダミートレンチ部30は、上面21側に形成されたダミートレンチ、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁を覆って形成される。ダミー導電部34は、ダミートレンチの内部に形成され、且つ、ダミー絶縁膜32よりも内側に形成される。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。
図2aは、本実施形態に係る半導体装置100の上面の他の一例を部分的に示す図である。図2aに示す半導体装置100は、図1aに示す半導体装置100において、ダイオードメサ部66の上面においてベース領域14が形成されている領域に、エミッタ領域12およびコンタクト領域15が接する境界がY軸方向と平行となるように、エミッタ領域12およびコンタクト領域15がX軸方向に交互に形成される点で、図1aに示す半導体装置100と異なる。
ダイオードメサ部66におけるエミッタ領域12およびコンタクト領域15は、図2aに示すように、ダイオード部80においてX軸方向に延伸する一方のダミートレンチ部30から、X軸方向に延伸し、接続部分31にて当該一方のダミートレンチ部30と接続される他方のダミートレンチ部30まで、ダイオードメサ部66のY軸方向全体にわたって設けられる。また、ダイオードメサ部66におけるエミッタ領域12およびコンタクト領域15は、当該一方のダミートレンチ部30および当該他方のダミートレンチ部30の双方に接して設けられる。
図2bは、図2aにおけるg-g'断面の一例を示す図である。図2bに示すように、本例の半導体装置100は、g-g'断面において、ダイオード部80における上面21にエミッタ領域12を有する。また、ダイオード部80におけるカソード領域82の上方に、フローティング領域84を有する。
ダイオードメサ部66においては、図2bに示すように、ドリフト領域18の上方に第2導電型の中間領域17が設けられてよい。中間領域17は、ダミートレンチ部30に隣接して設けられてよい。また、ダイオードメサ部66においては、中間領域17の上方に第1導電型の蓄積領域16が設けられてよい。蓄積領域16は、ダミートレンチ部30に隣接して設けられてよい。また、ダイオードメサ部66においては、蓄積領域16の上方にベース領域14が設けられてよい。ベース領域14の上方にエミッタ領域12が設けられてよい。
なお、図2bは、図2aにおけるg-g'断面の一例であるので、ベース領域14の上方にはエミッタ領域12が設けられている。図2aにおいてg-g'断面と平行な断面であって、g-g'断面よりもX軸方向正側または負側で、上面21においてコンタクト領域15が設けられる位置における断面においては、ベース領域14の上方にはコンタクト領域15が設けられる。
本例の半導体装置100は、ダイオードメサ部66に、エミッタ領域12およびコンタクト領域15が接する境界が、ダミートレンチ部30の延伸方向と直交する(Y軸方向と平行となる)ように、エミッタ領域12およびコンタクト領域15がX軸方向に交互に形成される。これにより、ダイオード部80において、ベース領域14もしくは中間領域17からドリフト領域18へのキャリアの注入(本例では正孔の注入)を抑制することができる。このため、ダイオード部80の逆回復損失を減少させることができる。また、本例の半導体装置100は、ダイオード部80に中間領域17およびフローティング領域84を有するので、ダイオード部80の逆回復サージを抑制することができる。
図3aは、本実施形態に係る半導体装置100の上面の他の一例を部分的に示す図である。図3aに示す半導体装置100は、図1aに示す半導体装置100において、ダイオードメサ部66の上面においてベース領域14が形成されている領域に、エミッタ領域12およびコンタクト領域15が接する境界がX軸方向と平行となるように、エミッタ領域12およびコンタクト領域15がY軸方向に交互に形成される点で、図1aに示す半導体装置100と異なる。
ダイオードメサ部66におけるエミッタ領域12は、図3aに示すように、コンタクトホール54の下方に、コンタクトホール54のY軸方向正側から負側にわたって設けられる。ダイオードメサ部66におけるコンタクト領域15は、図3aに示すように、コンタクトホール54の下方に、コンタクトホール54のY軸方向正側から負側にわたって設けられてよい。
ダイオードメサ部66においてY軸方向の最も正側に設けられるエミッタ領域12は、ダイオード部80におけるY軸方向正側のダミートレンチ部30と接してよい。ダイオードメサ部66においてY軸方向の最も負側に設けられるエミッタ領域12は、ダイオード部80におけるY軸方向負側のダミートレンチ部30と接してよい。本例においては、エミッタ領域12がダミートレンチ部30と接しているが、Y軸方向においてダミートレンチ部30とエミッタ領域との間にコンタクト領域15が設けられ、当該コンタクト領域15がダミートレンチ部30と接してもよい。
図3bは、図3aにおけるh-h'断面の一例を示す図である、図3bに示すように、本例の半導体装置100は、h-h'断面において、ダイオード部80における上面21に、エミッタ領域12およびコンタクト領域15を有する。また、ダイオード部80におけるカソード領域82の上方に、フローティング領域84を有する。
ダイオードメサ部66においては、図3bに示すように、ドリフト領域18の上方に第2導電型の中間領域17が設けられてよい。中間領域17は、ダミートレンチ部30に隣接して設けられてよい。また、ダイオードメサ部66においては、中間領域17の上方に第1導電型の蓄積領域16が設けられてよい。蓄積領域16は、ダミートレンチ部30に隣接して設けられてよい。また、ダイオードメサ部66においては、蓄積領域16の上方にベース領域14が設けられてよい。ベース領域14の上方に、エミッタ領域12およびコンタクト領域15が設けられてよい。
本例の半導体装置100は、ダイオードメサ部66に、エミッタ領域12およびコンタクト領域15が接する境界が、ダミートレンチ部30の延伸方向(X軸方向)と平行となるように、エミッタ領域12およびコンタクト領域15がY軸方向に交互に形成される。これにより、ダイオード部80において、ベース領域14もしくは中間領域17からドリフト領域18へのキャリアの注入を抑制することができる。このため、ダイオード部80の逆回復損失を減少させることができる。また、本例の半導体装置100は、ダイオード部80に中間領域17およびフローティング領域84を有するので、ダイオード部80の逆回復サージを抑制することができる。
図4aは、図1aにおけるb-b'断面の一例を示す図である。図4aに示すように、ゲートトレンチ部40は、上面21に形成されたゲートトレンチ、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁を覆って形成される。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に形成される。ゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。
ゲート導電部44は、深さ方向において、ゲート絶縁膜42を挟んで第1メサ部60側で隣接するベース領域14と対向する領域を含む。ゲート導電部44に所定の電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチに接する界面の表層に電子の反転層によるチャネルが形成される。また、ゲート導電部44は、深さ方向において、ゲート絶縁膜42を挟んで第2メサ部62側で隣接するコンタクト領域15と対向する領域を含む。また、ゲートトレンチ部40は、上面21において層間絶縁膜38により覆われる。
第1メサ部60のメサ幅Wmは、図4aに示すように、上面21からゲートトレンチ底部の端までの深さWgdより小さくてよい。WmをWgdより小さくすることにより、トランジスタ部70の耐圧を大きくすることができる。メサ幅Wmは、深さWgdの半分以下であってよく、1/3以下であってもよい。
第2メサ部62においては、中間領域17の上方且つコンタクト領域15の下方に、ドリフト領域18よりもドーピング濃度の高い蓄積領域16が設けられてよい。図4aは、第2メサ部62において、蓄積領域16がゲートトレンチ部40と隣接して設けられる一例を示している。蓄積領域16がゲートトレンチ部40と隣接して設けられることにより、下面23側から上面21側へ移動する正孔は、蓄積領域16を必ず通過する。このため、正孔が下面23側から上面21側へ抜けることを抑制することができる。
中間領域17は、図4aに示す通り、ゲートトレンチ部40の底部の少なくとも一部を覆ってよい。ゲートトレンチ部40の底部とは、ゲートトレンチの内壁のYZ平面上での接線t-t'の半導体基板10の上面21に対する傾きの絶対値が、0度(即ち上面21と平行)以上45度以下の範囲となる部分であってよい。ただし、ゲートトレンチ部40の深さ方向の中央よりも上側において接線t-t'の傾きが上記範囲となっても、当該領域は底部に含まれない。中間領域17を、ゲートトレンチ部40の底部の少なくとも一部を覆う深さまで形成することで、ゲートトレンチ部40の底部を覆わない深さまで形成した場合よりも、トランジスタ部70の耐圧を大きくすることができる。また、中間領域17を設けることで下面23側から正孔を良好に引き抜くことができる。このため、オン電圧とターンオフ損失のトレードオフを良好にすることができる。中間領域17は、コンタクト領域15とP型の領域を介して接続されていてよく、接続されていなくともよい。
第2メサ部62におけるコンタクト領域15および中間領域17のドーピング濃度は、第1メサ部60におけるベース領域14のドーピング濃度よりも高くてよい。コンタクト領域15および中間領域17のドーピング濃度をベース領域14のドーピング濃度よりも高くすることで、トランジスタ部70の耐圧を大きくすることができる。
第2メサ部62におけるコンタクト領域15のドーピング濃度は、第1メサ部60におけるベース領域14のドーピング濃度と等しくてもよい。ここで、ドーピング濃度が等しいとは、コンタクト領域15のドーピング濃度が、ベース領域14のドーピング濃度と5%以内の誤差範囲を含む場合をいう。本明細書において「等しい」、「同じ」、「同一」等と記載した場合、5%以内の誤差を含んでよい。コンタクト領域15のドーピング濃度をベース領域14のドーピング濃度と等しくすることで、コンタクト領域15およびベース領域14を同一工程でドーピング可能となる。このため、コンタクト領域15およびベース領域14のドーピング工程を簡略化することができる。
図4bは、図1aにおけるb-b'断面の他の一例を示す図である。図4aとは、蓄積領域16がゲートトレンチ部40と離間して設けられる点で異なる。蓄積領域16がゲートトレンチ部40と離間して設けられることにより、正孔を容易に引き抜くことができる。また、蓄積領域16がゲートトレンチ部40と離間して設けられることにより、空乏層がコンタクトホール54から広がる。このため、蓄積領域16がゲートトレンチ部40と隣接して設けられる場合よりも、トランジスタ部70の耐圧を大きくすることができる。
図4cは、図1aにおけるb-b'断面の他の一例を示す図である。図4aとは、蓄積領域16に開口19が設けられる点で異なる。蓄積領域16に開口19が設けられることにより、正孔を容易に引き抜くことができる。また、蓄積領域16に開口19が設けられることにより、空乏層がコンタクトホール54から広がる。このため、蓄積領域16に開口19が設けられない場合よりも、トランジスタ部70の耐圧を大きくすることができる。開口19は、図4cの例では、一つ設けられる例を示しているが、複数設けられてもよい。また、開口19は、図4cの例では第2メサ部62の中央に設けられる一例を示しているが、いずれかのゲートトレンチ部40の側に偏って形成されていてもよい。
図5aは、図4aにおける領域Aの拡大図である。図5aに示すように、ゲート導電部44の底部は、第1メサ部60に対向する側に第1の段差46-1を有する。第1の段差46-1は、Y軸方向においてゲート導電部44の表面から内部へ向かう方向に設けられる。第1の段差46-1の幅W1は、第1の段差46-1より上方のゲート導電部44の表面から、第1の段差46-1より下方のゲート導電部44の表面までのY軸方向における距離である。また、Wgdbは、Z軸方向において第1の段差46-1からゲートトレンチ部40の底部の端B1までの深さである。ゲートトレンチ部40の底部の端B1とは、図5aにおいて、ゲートトレンチ部40のZ軸方向の最下端をいう。ゲート導電部44に第1の段差46-1が設けられることで、第1の段差46-1が設けられない場合よりも、第1メサ部60側のゲートトレンチ部40の底部にP型反転層が生じることを抑制することができる。このため、当該P型反転層から正孔がエミッタ領域12に引き抜かれることによるターンオン損失を抑制することができる。また、中間領域17は、図5aに示すように、第1の段差46-1とゲートトレンチ部40の底部との間に、少なくとも一部が設けられる。
第1の段差46-1よりも上方において、第1メサ部60に対向する側のゲート絶縁膜42の厚さWgi1は、第2メサ部62に対向する側のゲート絶縁膜42の厚さWgi2と異なっていてよい。Wgi1およびWgi2は、図5aに示すように、Wgi1<Wgi2の関係にあってよい。即ち、Wgi2は、Wgi1よりも厚く形成してよい。Wgi2をWgi1よりも厚く形成することで、第2メサ部62におけるコレクタ電極24とゲートトレンチ部40との間の容量を、第1メサ部60におけるコレクタ電極24とゲートトレンチ部40との間の容量よりも小さくすることができる。このため、ターンオン損失を減らすことができる。また、ゲート導電部44の底部の端B2からゲートトレンチ部40の底部の端B1までの深さWgi3は、Wgi1およびWgi2よりも大きくてよい。即ち、Wgi1<Wgi2<Wgi3の関係にあってよい。Wgi3をWgi1およびWgi2よりも大きく形成することで、ゲートトレンチ部40の底部に生じるP型反転層を抑制することができる。このため、第1メサ部60において、当該P型反転層から正孔がエミッタ領域12に引き抜かれることによるターンオン損失を抑制することができる。
第1の段差46-1は、図5aの破線qに示すように、第1メサ部60の蓄積領域16の下面と略同じ深さに設けられてよい。蓄積領域16の下面とは、第1メサ部60における蓄積領域16が、ドリフト領域18よりも5倍高いドーピング濃度を示す境界を指してよい。他の例では、第2メサ部62における蓄積領域16および中間領域17の境界と略同一の深さ位置を、第1メサ部60の蓄積領域16の下面としてもよい。第1の段差46-1が蓄積領域16の下面と同じ高さに設けられることで、ゲートトレンチ部40の底部のP型反転層が、蓄積領域16に生ずることを抑制することができる。第1の段差46-1は、蓄積領域16の下面よりも上方に配置されてもよい。
ゲート導電部44の底部の端B2は、図5aに示すように、Y軸方向において、ゲートトレンチ部40の中央よりも第2メサ部62側に設けられてよい。ゲート導電部44の底部の端B2がゲートトレンチ部40の中央よりも第2メサ部62側に設けられるとは、図5aにおいて、ゲート導電部44のY軸方向の中心およびゲートトレンチ部40の底部の端B1を通るc-c'破線部よりも、ゲート導電部44の底部の端B2を通るd-d'破線部の方が、第2メサ部62側に位置することをいう。ゲート導電部44の底部の端B2が第2メサ部62側に設けられることで、ゲートトレンチ部40の底部に生じるP型反転層を、第1メサ部60側よりも第2メサ部62側に多く生じさせることができる。このため、第1メサ部60において、当該P型反転層から正孔がエミッタ領域12に引き抜かれることによるターンオン損失を抑制することができる。
図5bは、図5aにおいて第2の段差46-2が設けられる一例を示す図である。図5bに示すように、ゲート導電部44の底部は、第1の段差46-1のほか、第2メサ部62に対向する側に第2の段差46-2を有する。第2の段差46-2は、Y軸方向においてゲート導電部44の表面から内部へ向かう方向に設けられる。図5bに示すように、第2の段差46-2の幅W2は、第2の段差46-2より上方のゲート導電部44の表面から、第2の段差46-2より下方のゲート導電部44の表面までの距離である。本例においては、W1はW2よりも大きくてよい。W1をW2よりも大きくすることで、ゲートトレンチ部40の底部に生じるP型反転層を、第1メサ部60側よりも第2メサ部62側に多く生じさせることができる。このため、第1メサ部60において、当該P型反転層から正孔がエミッタ領域12に引き抜かれることによるターンオン損失を抑制することができる。
第2の段差46-2は、図5bの破線qおよび破線rに示すように、第1の段差46-1と略同じ深さに設けられてよい。また、第2の段差46-2は、図5bの破線rに示すように、第2メサ部62の蓄積領域16の下面と略同じ深さに設けられてよい。第1の段差46-1および第2の段差46-2が蓄積領域16の下面と略同じ高さに設けられることで、ゲートトレンチ部40の底部のP型反転層が、蓄積領域16に生ずることを抑制することができる。
ゲート導電部44の底部の端B2は、図5aと同様に、Y軸方向において、ゲートトレンチ部40の中央よりも第2メサ部62側に設けられてよい。ゲート導電部44の底部の端B2が第2メサ部62側に設けられることで、ゲートトレンチ部40の底部に生じるP型反転層を、第1メサ部60側よりも第2メサ部62側に多く生じさせることができる。このため、第1メサ部60において、当該P型反転層から正孔がエミッタ領域12に引き抜かれることによるターンオン損失を抑制することができる。
図5cは、図1bにおける領域Sの拡大図である。図5cに示すように、ダイオード部80のダミートレンチ部30においても、図5aおよび図5bと同様にダミー導電部34に段差が設けられてよい。ダイオード部80におけるダミートレンチ部30のうち、図1b、図2bおよび図3bに示す境界メサ部64に隣接するダミートレンチ部30には、境界メサ部64に対向する側に、第1の段差46-1と略同じ深さ且つ第1の段差46-1の幅W1と同じ幅で、第3の段差46-3が設けられてもよい。
ダイオード部80におけるダミートレンチ部30のうち、図1b、図2bおよび図3bに示す境界メサ部64に隣接するダミートレンチ部30には、図5cに示すように、ダイオードメサ部66に対向する側に、第2の段差46-2と略同じ深さ且つ第2の段差46-1の幅W2と同じ幅で、第4の段差46-4が設けられてもよい。
ダイオード部80におけるダミートレンチ部30のうち、図1b、図2bおよび図3bに示す境界メサ部64に隣接する一方のダミートレンチ部30と接続部分31にて接続される他方のダミートレンチ部30には、ダイオードメサ部66と対向する側とY軸方向反対側に、第1の段差46-1と略同じ深さ且つ第1の段差46-1の幅W1と同じ幅で、第3の段差46-3が設けられてもよい。
ダイオード部80におけるダミートレンチ部30のうち、図1b、図2bおよび図3bに示す境界メサ部64に隣接する一方のダミートレンチ部30と接続部分31にて接続される他方のダミートレンチ部30には、ダイオードメサ部66と対向する側に、第2の段差46-2と略同じ深さ且つ第2の段差46-2の幅W2と同じ幅で、第4の段差46-4が設けられてもよい。中間領域17は、図5cに示すように、第3の段差46-3とダミートレンチ部30の底部との間に、少なくとも一部が設けられてよい。
図5dは、第1の段差46-1および第2の段差46-2を有するゲート導電部44の製造方法の一例を示す図である。工程(a)にてゲートトレンチを形成する。続いて、工程(b)にて、当該ゲートトレンチの底部の端B1からWgdbの高さまで、ゲート絶縁膜42を堆積する。続いて、工程(c)にて、当該ゲート絶縁膜42に、d-d'破線部を中心とする穴部43を形成する。続いて、工程(d)にて、当該穴部43にゲート導電部44として、ポリシリコン等の導電材料を充填する。続いて、工程(e)にて、当該ゲート絶縁膜42より上方のゲートトレンチの内壁を酸化または窒化して、ゲート絶縁膜42を形成する。続いて、工程(f)にて、ゲートトレンチにゲート導電部44として、ポリシリコン等の導電材料を充填する。以上により、第1の段差46-1および第2の段差46-2が形成される。
図6は、図5bにおいて第1の段差46-1および第2の段差46-2を有さず、ゲート導電部44がゲートトレンチのY軸方向中心に設けられる比較例を示す図である。比較例の半導体装置200においては、ゲートトレンチ部40の底部に段差を有しないため、ゲートトレンチ部40の底部にP型反転層が生じ易い。また、ゲート導電部44がゲートトレンチのY軸方向中心に設けられるため、第2メサ部62におけるコレクタ電極24とゲートトレンチ部40との間の容量を、第1メサ部60におけるコレクタ電極24とゲートトレンチ部40との間の容量よりも小さくすることができない。このため、図5bの半導体装置100と比較して、ターンオン損失が大きい。
図7は、図5aにおけるe-e'断面およびf-f'断面におけるドーピング濃度のプロファイルの一例を示す図である。図7から分かるように、第1メサ部60のe-e'断面のプロファイルは、第2メサ部62の中間領域17と同じ深さにおいて、ドーピング濃度のピークを有さない。第2メサ部62のf-f'断面のプロファイルは、中間領域17においてドーピング濃度のピーク(P1)を有する。第2メサ部62の中間領域17にドーピング濃度のピーク(P1)を有することで、トランジスタ部70の耐圧を大きくすることができる。なお、図7は、第2メサ部62に蓄積領域16を有する例で示しているが、第2メサ部62は蓄積領域16を有しなくてもよい。
中間領域17のピークは、図7に示すように、図5bのZ軸方向において第1の段差46-1および第2の段差46-2からゲートトレンチ部40の底部の端B1までの間に存在してよい。中間領域17のピークが、第1の段差46-1および第2の段差46-2からゲートトレンチ部40の底部までの間に存在することにより、トランジスタ部70の耐圧を大きくすることができる。
中間領域17のピークは、図7に示すように、Z軸方向において第1の段差46-1および第2の段差46-2からゲートトレンチ部40の底部の端B1までの深さWgdbの1/2よりも下方に存在してよい。中間領域17のピークが、第1の段差46-1および第2の段差46-2からゲートトレンチ部40の底部までの深さWgdbの1/2よりも下方に存在することにより、トランジスタ部70の耐圧をより大きくすることができる。
図8aは、図1aにおけるb-b'断面の他の一例を示す図である。図8aの半導体装置100は、図4aの半導体装置100において、第2メサ部62の蓄積領域16が、第1蓄積領域16-1および第2蓄積領域16-2を有する点で、図4aの半導体装置100と異なる。第2蓄積領域16-2は、第1蓄積領域16-1の下方且つ中間領域17の上方に設けられてよい。第1蓄積領域16-1のZ軸方向の厚さは、第2蓄積領域16-2のZ軸方向の厚さと同じでもよく、異なっていてもよい。図8aの例は、第1蓄積領域16-1のZ軸方向の厚さが、第2蓄積領域16-2の厚さよりも大きい一例を示している。本例の半導体装置100は、第2メサ部62において、蓄積領域16が第1蓄積領域16-1および第2蓄積領域16-2を有することで、図4aの半導体装置100よりも、正孔が下面23側から上面21側へ抜けることを抑制することができる。
図8bは、図1aにおけるb-b'断面の他の一例を示す図である。図8bの半導体装置100は、図8aの半導体装置100において、第1蓄積領域16-1が第1の開口19-1を有し、第2蓄積領域16-2が第2の開口19-2を有する点で、図8aの半導体装置100と異なる。第1の開口19-1および第2の開口19-2は、図8bに示すように、Y軸方向において異なった位置に設けられる。第1蓄積領域16-1および第2蓄積領域16-2は、ゲートトレンチ部40に接して設けられてよく、離れて設けられてもよい。また、開口19-1および開口19-2は、それぞれ第1蓄積領域16-1および第2蓄積領域16-2に複数設けられてもよい。図8bは、第1蓄積領域16-1および第2蓄積領域16-2がゲートトレンチ部40に接して設けられ、それぞれ第1の開口19-1および第2の開口19-2を一つずつ有する一例を示している。第1の開口19-1と第2の開口19-2の位置がY軸方向において異なることで、下面23側から上面21側に移動する正孔は、必ず蓄積領域16を通過する。このため、正孔が下面23側から上面21側へ抜けることを抑制することができる。また、第1の開口19-1および第2の開口19-2が設けられることで、空乏層がコンタクトホール54から広がる。このため、トランジスタ部70の耐圧を大きくすることができる。
図8cは、図1aにおけるb-b'断面の他の一例を示す図である。図8cの半導体装置100は、図8aの半導体装置100において、深さ方向に第1メサ部60に蓄積領域16-1および蓄積領域16-2を有し、第2メサ部62に蓄積領域16-1、蓄積領域16-2および蓄積領域16-3を有する点で、図8aの半導体装置100と異なる。即ち、第1メサ部60には2個の蓄積領域が設けられ、第2メサ部62には3個の蓄積領域が設けられる。第2メサ部62に第1メサ部60よりも多い蓄積領域16-3を有することで、第1メサ部60よりも第2メサ部62の方が、正孔の下面23側から上面21側への抜けを抑制することができる。このため、第1メサ部60において、正孔がエミッタ領域12に引き抜かれることによるターンオン損失を抑制することができる。
蓄積領域16の個数は、第1メサ部60の蓄積領域16の個数をN個、第2メサ部62の蓄積領域16の個数をM個とすると、N<Mであればよい。図8cは、N=2およびM=3の場合の一例である。
図9は、図1aにおけるb-b'断面の他の一例を示す図である。図9の半導体装置100は、図4aの半導体装置100において、中間領域17がコンタクト領域15の下方に、コンタクト領域15と接して設けられる点で、図4aの半導体装置100と異なる。また、図9の半導体装置100は、図4aにおいて、第2メサ部62に蓄積領域16が設けられない点で、図4aの半導体装置100と異なる。
図10は、図9のg-g'断面におけるドーピング濃度のプロファイルの一例を示す図である。図10に示すように、第2メサ部62のg-g'断面のプロファイルは、コンタクト領域15から中間領域17にわたり、ドーピング濃度が連続的に変化する。ドーピング濃度が連続的に変化するとは、図10のh-h'線で示すコンタクト領域15から中間領域17への境界において、ドーピング濃度が、コンタクト領域15から中間領域17にわたり滑らかに変化することをいう。図10は、コンタクト領域15のドーピング濃度が、深さ方向に単調に減少する一例を示しているが、コンタクト領域15にドーピング濃度のピークを有してもよい。
中間領域17においては、図7の例と同様にドーピング濃度のピーク(P2)を有してよい。また、中間領域17のピーク(P2)は、Z軸方向において第1の段差46-1および第2の段差46-2からゲートトレンチ部40の底部の端B1までの間に存在してよい。また、中間領域17のピークは、Z軸方向において第1の段差46-1および第2の段差46-2からゲートトレンチ部40の底部の端B1までの深さWgdbの1/2よりも下方に存在してよい。本例においては、第2メサ部62が第2導電型のコンタクト領域15および中間領域17で形成されるため、図4aの例よりも空乏層がコンタクトホール54からより広がる。このため、図4aの半導体装置100よりもトランジスタ部70の耐圧を大きくすることができる。なお、また、中間領域17において、図10に示すピーク(P2)以外のピークを有してもよい。
図11は、図1aにおけるb-b'断面の他の一例を示す図である。図11の半導体装置100は、図4aの半導体装置100において、第2メサ部62の上方にコンタクトホール54が複数設けられる点で、図4aの半導体装置100と異なる。コンタクトホール54は、層間絶縁膜38に形成される。第2メサ部62にコンタクトホール54が複数設けられることにより、図4aの半導体装置100よりも空乏層がコンタクトホール54からより広がる。このため、図4aの半導体装置100よりもトランジスタ部70の耐圧を大きくすることができる。
図12は、図1aにおけるb-b'断面の他の一例を示す図である。図12の半導体装置100は、図4aの半導体装置100において、中間領域17がゲートトレンチ部40の底部まで形成されない点で、図4aの半導体装置100と異なる。本例においては、中間領域17はゲートトレンチ部40の側面(XZ面)のみに形成される。本例においては、中間領域17が図4aの半導体装置100よりも浅く形成されているため、図4aの半導体装置100ほどトランジスタ部70の耐圧を得ることができない。しかし、第2メサ部62の蓄積領域16の下方に中間領域17が設けられない場合よりも、トランジスタ部70の耐圧を向上させることができる。
図13は、図1aにおけるb-b'断面の他の一例を示す図である。図13の半導体装置100は、図8aの半導体装置100において、中間領域17がゲートトレンチ部40の底部まで形成されない点で、図8aの半導体装置100と異なる。本例においては、中間領域17はゲートトレンチ部40の側面(XZ面)のみに形成される。本例においては、中間領域17が図8aの半導体装置100よりも浅いため、図8aの半導体装置100ほどトランジスタ部70の耐圧を得ることができない。しかし、第2メサ部62の蓄積領域16の下方に中間領域17が設けられない場合よりも、トランジスタ部70の耐圧を向上させることができる。
図14は、図1aにおけるb-b'断面の他の一例を示す図である。図14の半導体装置100は、図9の半導体装置100において、中間領域17がゲートトレンチ部40の底部まで形成されない点で、図9の半導体装置100と異なる。本例においては、中間領域17はゲートトレンチ部40の側面(XZ面)のみに形成される。本例においては、中間領域17が図9の半導体装置100よりも浅いため、図9の半導体装置100ほどトランジスタ部70の耐圧を得ることができない。しかし、第2メサ部62の蓄積領域16の下方に中間領域17が設けられない場合よりも、トランジスタ部70の耐圧を向上させることができる。
図15は、図1aにおけるb-b'断面の他の一例を示す図である。図15の半導体装置100は、図11の半導体装置100において、中間領域17がゲートトレンチ部40の底部まで形成されない点で、図11の半導体装置100と異なる。本例においては、中間領域17はゲートトレンチ部40の側面(XZ面)のみに形成される。本例においては、中間領域17が図11の半導体装置100よりも浅いため、図11の半導体装置100ほどトランジスタ部70の耐圧を得ることができない。しかし、第2メサ部62の蓄積領域16の下方に中間領域17が設けられない場合よりも、トランジスタ部70の耐圧を向上させることができる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。